説明

撮像装置、撮像方法、およびプログラム

【課題】生体の表面から血管までの深さを測定する場合において、安定的な測定結果を得ること。
【解決手段】撮像装置は、被写体に対して光を発光する発光部と、被写体からの第1波長領域の光、および被写体からの第1波長領域と異なる第2波長領域の光を受光する受光部と、発光部が発光する光および受光部が受光した光に基づいて、被写体による第1波長領域の光の第1反射率、および被写体による第2波長領域の光の第2反射率を算出する反射率算出部と、第1反射率および第2反射率に基づいて、被写体の表面から、受光部が受光した光の像に含まれる被写体の内部のオブジェクトまでの深さを特定する深さ特定部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を撮像する撮像装置、撮像方法、およびプログラムに関する。本発明は、特に、被写体の内部のオブジェクトの深さを特定できる撮像装置、撮像方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
被写体に照射する照明光の波長領域を制限することにより、生体組織の表面近傍の組織情報を視認する技術が考案されている(たとえば、特許文献1、特許文献2、および特許文献3参照。)。
【特許文献1】特開2002−95635号公報
【特許文献2】特開2002−34893号公報
【特許文献3】特開2002−34908号公報
【0003】
また、生体から発せられた自家蛍光成分から抽出した短い波長領域の蛍光成分と長い波長領域の蛍光成分とに基づいて、生体の病変部を検出する技術が考案されている(たとえば、特許文献4参照。)。また、波長領域が異なる2つの画像の差分を演算することにより、酸化ヘモグロビンの分布状態を示す画像を生成する技術が考案されている(たとえば、特許文献5および特許文献6参照。)。
【特許文献4】特開平10−225436号公報
【特許文献5】特開2002−272744号公報
【特許文献6】特開2006−326153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記技術では、生体の表面から血管までの深さを測定することができない。たとえば、生体からの光の反射光量に基づいて生体の表面から血管までの深さを測定する方法を用いた場合、生体の表面の起伏による影、光源の動きなどに起因する光量の変化の影響を受けてしまうので、安定的な測定結果を得ることができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の第1の形態においては、撮像装置であって、被写体に対して光を発光する発光部と、被写体からの第1波長領域の光、および被写体からの第1波長領域と異なる第2波長領域の光を受光する受光部と、発光部が発光する光および受光部が受光した光に基づいて、被写体による第1波長領域の光の第1反射率、および被写体による第2波長領域の光の第2反射率を算出する反射率算出部と、第1反射率および第2反射率に基づいて、被写体の表面から、受光部が受光した光の像に含まれる被写体の内部のオブジェクトまでの深さを特定する深さ特定部とを備える。
【0006】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0008】
図1は、実施形態に係る撮像装置100のブロック構成の一例を示す。撮像装置100は、発光制御部112、発光部114、受光部130、反射率算出部142、深さ特定部144、深さ格納部146、画像処理部140、および表示部150を備える。
【0009】
撮像装置100は、内視鏡であってよい。撮像装置100が内視鏡である場合、発光部114、および受光部130は、生体内に挿入される内視鏡の挿入部の先端に設けられてよい。他の例においては、発光部114は、挿入部の外部に設けられ、内視鏡の挿入部に設けられたライトガイドを介して、生体に光を照射してもよい。また、受光部130は、挿入部の外部に設けられ、内視鏡の挿入部に設けられたライトガイドを介して、生体からの光を受光してもよい。
【0010】
発光部114は、被写体に対して光を発光する。一例として、発光部114は、第1波長領域の光および第2波長領域の光を含む光を発光する。たとえば、発光部114は、第1波長領域の一例としてのR成分(600nm〜750nm)の波長領域の光、および第2波長領域の一例としてのG成分(490nm〜600nm)の波長領域の光を含む光を発光する。
【0011】
発光部114は、第3波長領域の光をさらに含む光を発光してもよい。たとえば、発光部114は、第3波長領域の一例としてのB成分(400nm〜490nm)の波長領域の光をさらに含む光を発光してもよい。発光部114は、第1波長領域の光および第2波長領域の光を含む光として、白色光を発光してもよい。
【0012】
他の例として、発光部114は、第1波長領域の光と第2波長領域の光とを順次発光してもよい。たとえば、発光部114は、第1波長領域の一例としてのR成分の波長領域の光と、第2波長領域の一例としてのG成分の波長領域の光とを順次発光してもよい。発光部114は、第1波長領域の光を発光する第1発光素子と、第2波長領域の光を発光する第2発光素子とを有してもよい。発光部114は、第1波長領域の光を主に透過する第1発光フィルタと、第2波長領域の光を主に透過する第2発光フィルタとを有してもよい。
【0013】
発光部114は、第3波長領域の光をさらに順次発光してもよい。たとえば、発光部114は、第3波長領域の一例としてのB成分の波長領域の光をさらに順次発光してもよい。発光部114は、第3波長領域の光を発光する第3発光素子をさらに有してもよい。発光部114は、第3波長領域の光を主に透過する第3発光フィルタをさらに有してもよい。
【0014】
発光制御部112は、発光部114による第1波長領域の光および第2波長領域の光の発光を制御する。発光制御部112は、第1発光素子および第2発光素子を制御することにより、発光部114による第1波長領域の光および第2波長領域の光の発光を制御してもよい。発光制御部112は、第1発光フィルタおよび第2発光フィルタを制御することにより、発光部114による第1波長領域の光および第2波長領域の光の発光を制御してもよい。
【0015】
発光制御部112は、発光部114による第3波長領域の光の発光をさらに制御してもよい。発光制御部112は、第3発光素子を制御することにより、発光部114による第3波長領域の光の発光を制御してもよい。発光制御部112は、第3発光フィルタを制御することにより、発光部114による第3波長領域の光の発光を制御してもよい。
【0016】
受光部130は、被写体からの第1波長領域の光、および被写体からの第1波長領域と異なる第2波長領域の光を受光する。具体的には、受光部130は、被写体の表面から被写体の内部のオブジェクトまでの深さによる、被写体による反射率への依存度が異なる、第1波長領域の光および第2波長領域の光を受光する。たとえば、受光部130は、被写体からの第1波長領域の一例としてのR成分の波長領域の光、および被写体からの第1波長領域と異なる第2波長領域の一例としてのG成分の波長領域の光を受光する。
【0017】
本実施例では、受光部130は、第1波長領域の光を受光する複数の第1受光素子132と、第2波長領域の光を受光する複数の第2受光素子134とを有する。これに対応して、受光部130は、第1波長領域の光を主に透過する複数の第1受光フィルタと、第2波長領域の光を主に透過する複数の第2受光フィルタとを有してもよい。
【0018】
本実施例では、受光部130は、第3波長領域の光を受光する複数の第3受光素子136をさらに有する。これに対応して、受光部130は、第3波長領域の光を主に透過する複数の第3受光フィルタをさらに有してもよい。受光部130には、複数の第1受光素子132、複数の第2受光素子134、および複数の第3受光素子136が規則的に配列されていてもよい。これに対応して、受光部130には、複数の第1受光フィルタ、複数の第2受光フィルタ、および複数の第3受光フィルタが規則的に配列されていてもよい。
【0019】
発光部114が第1波長領域の光と第2波長領域の光とを順次発光する場合、受光部130は、第1波長領域の光と第2波長領域の光とを順次受光してもよい。発光部114が第3波長領域の光をさらに順次発光する場合、受光部130は、第3波長領域の光をさらに順次受光してもよい。
【0020】
受光部130は、第1受光素子132、第2受光素子134、および第3受光素子136が規則的に配列されたCCDまたはCMOSであってよい。他の例においては、第1受光素子132、第2受光素子134、および第3受光素子136は、それぞれ異なるCCDまたはCMOSであってよい。
【0021】
反射率算出部142は、発光部114が発光する光および受光部130が受光した光に基づいて、被写体による第1波長領域の光の第1反射率、および被写体による第2波長領域の光の第2反射率を算出する。たとえば、反射率算出部142は、発光部114が発光した第1波長領域の光の強度と、受光部130が受光した第1波長領域の光の強度との除算により、第1反射率を算出する。たとえば、反射率算出部142は、発光部114が発光した第2波長領域の光の強度と、受光部130が受光した第2長領域の光の強度との除算により、第2反射率を算出する。
【0022】
反射率算出部142は、発光部114が発光する第1波長領域の光および第2波長領域の光の光量を、発光制御部112から取得してもよい。また、反射率算出部142は、発光部114が発光する第1波長領域の光および第2波長領域の光の光量を、当該光量が予め格納されているメモリなどの記録媒体から取得してもよい。
【0023】
反射率算出部142は、所定数の受光素子に対応する部分領域毎に、第1反射率および第2反射率を算出してもよい。たとえば、反射率算出部142は、2×2画素、4×4画素、または8×8画素を含む部分領域毎に、第1反射率および第2反射率を算出してもよい。
【0024】
反射率算出部142は、部分領域に含まれる複数の画素の第1反射率の平均または合計を、当該部分領域の第1反射率として算出してもよい。同様に、反射率算出部142は、部分領域に含まれる複数の画素の第2反射率の平均または合計を、当該部分領域の第2反射率として算出してもよい。
【0025】
反射率算出部142は、部分領域に含まれる複数の画素の第1波長領域の光の受光量の合計と、発光部114が発光した第1波長領域の光の発光量との除算により、当該部分領域の第1反射率を算出してもよい。同様に、反射率算出部142は、部分領域に含まれる複数の画素の第2波長領域の光の受光量の合計と、発光部114が発光した第2波長領域の光の発光量との除算により、当該部分領域の第2反射率を算出してもよい。
【0026】
反射率算出部142は、部分領域に含まれる複数の画素の第1波長領域の光の受光量の合計と、発光部114が発光した第1波長領域の光の発光量のうちの当該部分領域分の発光量との除算により、当該部分領域の第1反射率を算出してもよい。同様に、反射率算出部142は、部分領域に含まれる複数の画素の第2波長領域の光の受光量の合計と、発光部114が発光した第2波長領域の光の発光量のうちの当該部分領域分の発光量との除算により、当該部分領域の第2反射率を算出してもよい。
【0027】
深さ特定部144は、反射率算出部142が算出した第1反射率および第2反射率に基づいて、被写体の表面から、受光部130が受光した光の像に含まれる被写体の内部のオブジェクトまでの深さを特定する。たとえば、深さ特定部144は、第1反射率と第2反射率との差分または比率に対応づけて深さ格納部146に格納されている深さを特定する。反射率算出部142が部分領域毎に第1反射率および第2反射率を算出した場合、深さ特定部144は、部分領域毎に、被写体の表面からオブジェクトまでの深さを特定してもよい。
【0028】
深さ格納部146は、被写体による第1波長領域の光の反射率と第2波長領域の光の反射率との差分または比率に対応づけて、被写体の内部においてオブジェクトが存在する深さを示す深さ情報を予め格納する。
【0029】
画像処理部140は、受光部130が受光した光による像に画像処理を施して、被写体の内部のオブジェクトの像を含む被写体の像である被写体画像を生成する。画像処理部140が生成した被写体画像は表示部150に供給され、表示部150により表示される。なお、画像処理部140は、深さ特定部144が特定した深さに応じた画像処理を、被写体画像に施してよい。深さに応じた画像処理としては、画像中のオブジェクトの像を深さに応じた色で着色するなど、深さに応じた色処理などを例示することができる。
【0030】
表示部150は、深さ特定部144が特定した深さ情報を表示する。たとえば、表示部150は、被写体画像と同時に、深さ情報を表示する。表示部150は、被写体画像と深さ情報とを並べて表示してもよい。表示部150は、被写体画像と深さ情報とを重畳して表示してもよい。
【0031】
表示部150は、複数の被写体画像を含む動画である被写体動画と同時に、深さ情報を表示してもよい。表示部150は、被写体動画と深さ情報とを並べて表示してもよい。表示部150は、被写体動画と深さ情報とを重畳して表示してもよい。
【0032】
表示部150は、深さ情報をテキスト表示してもよい。表示部150は、深さ情報をイメージ表示してもよい。たとえば、表示部150は、深さに応じた色にオブジェクトが着色された被写体画像をカラー表示してもよい。
【0033】
図2は、受光部130が有する受光素子および受光フィルタの構成例を示す。受光部130は、R成分の波長領域の光を主に受光する複数の第1受光素子132を有する。また、受光部130は、G成分の波長領域の光を主に受光する複数の第2受光素子134を有する。また、受光部130は、B成分の波長領域の光を主に受光する複数の第3受光素子136を有する。
【0034】
受光部130においては、複数の第1受光素子132、複数の第2受光素子134、および複数の第3受光素子136が、規則的に配列されている。また、受光部130において、第1受光素子132の前には、R成分の波長領域の光を主に透過する複数の第1受光フィルタが配置されている。また、受光部130において、第2受光素子134の前には、G成分の波長領域の光を主に透過する複数の第2受光フィルタが配置されている。また、受光部130において、第3受光素子136の前には、B成分の波長領域の光を主に透過する複数の第3受光フィルタが配置されている。
【0035】
受光部130は、複数の部分領域に区分けされている。複数の部分領域のそれぞれは、複数の受光素子および複数のフィルタを含む。たとえば、図2に示す例では、複数の部分領域のそれぞれは、4×4画素の受光素子およびフィルタを含む。
【0036】
図3は、受光部130が有する受光素子の受光特性の一例を示す。点線は、第1受光素子132の受光特性を示す。たとえば、第1受光素子132は、R成分(600nm〜750nm)の波長領域を主に有する第一波長領域の光に対して、主に受光感度を有する。
【0037】
一点鎖線は、第2受光素子134の受光特性を示す。たとえば、第2受光素子134は、G成分(490nm〜600nm)の波長領域を主に有する第2波長領域の光に対して、主に受光感度を有する。
【0038】
実線は、第3受光素子136の受光特性を示す。たとえば、第3受光素子136は、B成分(400nm〜490nm)の波長領域を主に有する第1波長領域の光に対して、主に受光感度を有する。
【0039】
図4は、被写体による光の反射特性の一例を示す。図4に示すグラフにおいて、横軸は、生体に照射される光の波長を示す。また、縦軸は、生体による光の反射率を示す。
【0040】
また、点線は、生体の表面から生体内部の血管までの深さが70umの場合の、生体による光の反射特性を示す。また、一点鎖線は、生体の表面から生体内部の血管までの深さが100umの場合の、生体による光の反射特性を示す。
【0041】
また、二点鎖線は、生体の表面から生体内部の血管までの深さが200umの場合の、生体による光の反射特性を示す。また、実線は、生体の表面から生体内部の血管までの深さが300umの場合の、生体による光の反射特性を示す。
【0042】
図5は、被写体による光の反射特性の他の一例を示す。図5に示すグラフにおいて、縦軸は、生体による光の反射率を示す。また、横軸は、生体の表面から生体内部の血管までの深さを示す。
【0043】
一点鎖線は、R成分の波長領域(600nm〜700nm)の光の反射特性を示す。また、点線は、G成分の波長領域(500nm〜600nm)の光の反射特性を示す。また、実線は、B成分の波長領域(400nm〜500nm)の光の反射特性を示す。
【0044】
図4および図5が示すように、たとえば、R成分の波長領域(600nm〜700nm)においては、生体の表面から生体内部の血管までの深さの差異による、生体による光の反射特性の差異がほとんど生じていない。一方、G成分の波長領域(500nm〜600nm)においては、生体の表面から生体内部の血管までの深さの差異による、生体による光の反射特性の差異が大きく生じている。
【0045】
そこで、本実施形態の撮像装置100は、G成分の波長領域の光の反射率とR成分の波長領域の光の反射率との比率を算出したうえで、算出された比率と、深さ格納部146に格納されている深さ情報とに基づいて、生体の表面から血管までの深さを特定する。これにより、本実施形態の撮像装置100によれば、生体からの光の反射量に基づいて生体の表面から血管までの深さを測定する場合であっても、測定対象に照射される光の光量の変化の影響をうけることなく、安定的な測定結果を得ることができる。
【0046】
図6は、深さ格納部146が格納する深さ情報の一例を示す。図6に示すグラフにおいて、横軸は、被写体の表面から、被写体の内部のオブジェクトの一例としての血管までの深さを示す。また、縦軸は、被写体による第1波長領域の一例としてのR成分の波長領域の光の反射率と、第2波長領域の一例としてのG成分の波長領域の光の反射率との比率を示す。
【0047】
たとえば、深さ特定部144は、反射率算出部142が算出した第1反射率と、反射率算出部142が算出した第2反射率との差分または比率を算出する。そして、深さ特定部144は、算出した差分または比率と、深さ格納部146が格納する深さ情報とに基づいて、被写体の表面から血管までの深さを特定できる。
【0048】
図7は、表示部150による表示処理の一例を示す。図7では、生体を撮像した被写体動画であって、表示部150によって表示された被写体動画を示す。
【0049】
被写体動画には、生体内部のオブジェクトである血管が含まれている。たとえば、表示部150は、深さに応じた色に血管が着色された被写体動画をカラー表示してもよい。
【0050】
このように、本実施形態の撮像装置100によれば、被写体の表面から生体内部のオブジェクトまでの深さの変動による光の反射特性の変動量が異なる二つの波長領域の反射率の差または比率に基づいて上記深さを測定する。このため、本実施形態の撮像装置100によれば、被写体からの光の反射量に基づいて被写体の表面から生体内部のオブジェクトまでの深さを測定する場合であっても、測定対象に照射される光の光量の変化の影響をうけることなく、安定的な測定結果を得ることができる。
【0051】
図8は、被写体による光の反射特性の他の一例を示す。図8に示すグラフにおいて、横軸は、生体に照射される光の波長を示す。また、縦軸は、生体による光の反射率を示す。
【0052】
また、点線は、血管のヘモグロビン酸素飽和度が25%の場合の、生体による光の反射特性を示す。また、一点鎖線は、血管のヘモグロビン酸素飽和度が50%の場合の、生体による光の反射特性を示す。
【0053】
また、二点鎖線は、血管のヘモグロビン酸素飽和度が75%の場合の、生体による光の反射特性を示す。また、実線は、血管のヘモグロビン酸素飽和度が0%および100%の場合の、生体による光の反射特性を示す。
【0054】
たとえば、G成分の波長領域(500nm〜600nm)においては、血管のヘモグロビン酸素飽和度の差異による、生体による光の反射特性の差異がほとんど生じていない。一方、R成分の波長領域(600nm〜700nm)においては、血管のヘモグロビン酸素飽和度の差異による、生体による光の反射特性の差異が大きく生じている。
【0055】
このように、血管のヘモグロビン酸素濃度を測定対象とした場合であっても、生体による光の反射特性において、測定対象の変動に依存するR成分の波長領域と、測定対象の変動に依存しないG成分の波長領域とをそれぞれ有する。そこで、たとえば、深さ格納部146に、被写体によるG成分の波長領域の光の反射率とR成分の波長領域の光の反射率との差分または比率に対応づけて、血管のヘモグロビン酸素飽和度を示す情報を予め格納しておく。
【0056】
そして、G成分の波長領域の光の反射率とR成分の波長領域の光の反射率とをそれぞれ算出する。さらに、算出した二つの反射率の比率を算出したうえで、算出された比率と、深さ格納部146に格納されている情報とに基づいて、血管のヘモグロビン酸素飽和度を特定できる。このように、本実施形態の撮像装置100によれば、被写体からの光の反射量に基づいて血管のヘモグロビン酸素飽和度を測定する場合であっても、測定対象に照射される光の光量の変化の影響をうけることなく、安定的な測定結果を得ることができる。
【0057】
図9は、発光部114が発光して被写体に照射される光のスペクトルの一例を示す。スペクトル900は、R成分の波長領域の光、G成分の波長領域の光、およびB成分の波長領域の光を含む白色光のスペクトルの一例である。このような光が照射されている場合には、人間の眼による観察に適した被写体画像が得られる。
【0058】
深さ格納部146は、第2受光素子134が受光することができる比較的に広い波長領域の光の反射率と、第1受光素子132が受光することができる比較的に広い波長領域の光の反射率との差分または比率に対応づけて、オブジェクトまでの深さを情報を、予め格納してよい。なお、反射率算出部142は、第2受光素子134が受光することができる比較的に広い波長領域の光の反射率、および、第1受光素子132が受光することができる比較的に広い波長領域の光の反射率を、第1受光素子132および第2受光素子134のそれぞれからの信号、および、発光部114が発光するスペクトルに基づき、算出してよい。これにより、深さ特定部144は、人間の眼による観察に適した被写体画像を得るための白色光を用いて、深さを算出することができる。この場合、オブジェクトまでの深さをリアルタイムに算出することができる。
【0059】
深さをより正確に算出するためには、深さ測定用の光として、比較的に狭い波長領域の光を被写体に照射することが望ましい。例えば、発光部114は、第1波長領域の光の一例として、スペクトル910aで示される光を発光してよい。また、発光部114は、第2波長領域の光の一例として、スペクトル910bで示される光を発光してよい。深さ格納部146は、スペクトル910bに対応する波長領域の光の反射率と、スペクトル910aに対応する波長領域の光の反射率との差分または比率に対応づけて、オブジェクトまでの深さを情報を格納しておく。これにより、比較的に広い波長領域の光に基づき深さを算出する場合に比べて、深さをより正確に算出することができる。
【0060】
なお、発光部114は、スペクトル900で示されるような人間による観察用の被写体画像を得るための白色光に重畳して、スペクトル910aおよびスペクトル910bに対応する比較的に狭い波長領域の光を、被写体に照射してもよい。深さ測定用の比較的に狭い波長領域の光の強度が十分に大きい場合には、深さ特定部144は、深さ格納部146が比較的に狭い波長領域での光の反射率の差分または比率に対応づけて格納している深さを用いて、高精度で深さを算出することができる。なお、深さ測定用の光を白色光に重畳して照射する場合には、第1受光素子132および第2受光素子134が受光することができる波長領域において白色光の強度を低減することにより、深さ測定用の比較的に狭い波長領域の光の強度を高めてもよい。
【0061】
なお、発光部114は、観察用の被写体画像を得るための白色光(以下、観察光と呼ぶ場合がある。)および、深さ測定用の比較的に狭い波長領域の光(以下、測定光と呼ぶ場合がある。)を発光することができる。例えば、発光部114は、観察光の光源の一例としてのキセノンランプと、測定光の光源の一例としてLEDなどの半導体素子とを含むことができる。発光制御部112は、観察用の被写体画像を得る場合には、LEDを発光させず、キセノンランプを発光させて、観察光を被写体に照射させる。一方、発光制御部112は、深さを測定する場合には、キセノンランプが発光した光をフィルタ等によりカットするとともに、LEDを発光させて、測定光を被写体に照射させる。
【0062】
図10は、撮像装置100による撮像タイミングの一例を被写体画像とともに示す。撮像装置100は、時刻t1200、t1201、t1202、t1203、・・・において、被写体からの戻り光により被写体画像を撮像する。また、発光部114は、時刻t1200、t1201、およびt1203を含む第1のタイミングにおいて、被写体に照射される観察光を発光する。
【0063】
そして、受光部130は、第1のタイミングにおいて観察光が照射された被写体からの戻り光を受光する。これにより、画像処理部140は、時刻t1200、時刻t1201、および時刻t1203のそれぞれにより代表されるタイミングにおいて各受光素子が受光した受光量に基づき、被写体画像1220a、被写体画像1220b、および被写体画像1220dを生成する。これにより、観察に適した被写体画像1220a、被写体画像1220b、および被写体画像1220dが、表示部150に表示される。被写体画像1220aは血管画像1222aおよび血管画像1224aを含み、被写体画像1220bは血管画像1222bおよび血管画像1224bを含み、被写体画像1220dは血管画像1222dおよび血管画像1224dを含む。
【0064】
また、発光部114は、時刻t1202を含む第2のタイミングにおいて、被写体に照射される測定光を発光する。そして、受光部130は、時刻t1202に代表されるタイミングにおいて測定光が照射された被写体からの戻り光を受光する。反射率算出部142は、時刻t1202に代表されるタイミングにおける第1受光素子132からのR信号、および、時刻t1202に代表されるタイミングにおける第2受光素子134からのG信号から、それぞれ反射率を算出する。深さ特定部144は、算出された反射率を用いて、血管までの深さを示す深さデータ1250を算出する。
【0065】
ここで、画像処理部140は、時刻t1201に代表されるタイミングにおける第1受光素子132からのR信号、時刻t1201に代表されるタイミングにおける第2受光素子134からのG信号、および、時刻t1202に代表されるタイミングにおける第3受光素子136からのB信号に基づき、血管画像1232cおよび血管画像1234cを含む被写体画像1230cを生成する。被写体画像1230cは、時刻t1202に代表されるタイミングにおいて得られるべき、観察光による被写体画像とみなすことができる。なお、深さデータ1250は、表示部150による深さ情報の表示、被写体画像1230c、被写体画像1220dなどに対する画像処理部140での画像処理などに利用され得る。
【0066】
このように、画像処理部140は、測定光が照射されたタイミングにおいても、観察光により得られるべき被写体画像を生成することができる。表示部150は、被写体画像1220a、被写体画像1220b、被写体画像1230c、被写体画像1220d、・・・を連続的に表示することによって、コマ落ちのない映像を表示することができる。
【0067】
図11は、画像処理部140のブロック構成の一例を示す。図10では、説明を簡単にすべく、撮像装置100の動き、被写体の動きなど、撮像される画像の時間変化をもたらす要因を考慮せず、時刻t1201のタイミングでのR信号およびG信号と、時刻t1202のタイミングでのB信号とを多重化して、被写体画像1230cを生成する処理を一例として説明した。この処理では、撮像装置100の動き、被写体の動きなどに起因して、R信号およびG信号とB信号との間に有意なずれが生じる場合がある。
【0068】
本図以降の図を用いて、上記の動きなどによる被写体画像への影響を補正するための画像処理部140の動作および機能、ならびに画像処理部140の構成を説明する。画像処理部140は、動き特定部710および被写体画像生成部720を有する。
【0069】
動き特定部710は、複数のタイミングにおけるB信号による画像に基づき、当該画像における被写体像の動きを特定する。ここで、被写体像の動きは、被写体自身の動き、撮像装置100の動き、撮像装置100のズーム値の時間変化など、画像の時間変化をもたらす動きを含む。また、撮像装置100の動きは、撮像位置の時間変化、撮像装置100による撮像方向の時間変化を含む。
【0070】
図10に関連して説明した発光パターンを例として用いて説明すると、動き特定部710は、時刻t1201および時刻t1202におけるB信号の画像に基づき、動きを特定する。例えば、動き特定部710は、複数の画像からマッチングなどにより同じ被写体の像の位置を特定して、特定した位置の差に基づき動きを特定してよい。
【0071】
被写体画像生成部720は、当該動きに基づき時刻t1201のタイミングでのR信号およびG信号を補正して、時刻t1202のタイミングで得られるべきR信号およびG信号を生成する。そして、被写体画像生成部720は、補正後のR信号およびG信号と、時刻t1202のタイミングでのB信号とを多重化して、時刻t1202での被写体画像を生成する。
【0072】
図12および図13に関連して、上記の動きなどによる被写体画像への影響を補正するための画像処理部140の機能および動作、特に動き特定部710および被写体画像生成部720の動作を中心に説明する。ここで、画像1321b、画像1322b、画像1323bは、時刻t1201におけるそれぞれR信号、G信号、およびB信号の画像とする。画像1323cは、時刻t1202における第3受光素子136からのB信号の画像とする。
【0073】
動き特定部710は、画像1323bおよび画像1323cの画像内容に基づき、動きを特定する。具体的には、動き特定部710は、画像1323bおよび画像1323cから、同じ被写体の像を抽出する。本図の例では、動き特定部710は、画像1323bおよび画像1323cから、それぞれ被写体像1353bおよび被写体像1353cを、同じ被写体の像として抽出する。
【0074】
動き特定部710は、被写体像1353bと被写体像1353cとの間の位置の差を算出する。本図の例では、説明を簡単にすべく、当該位置の差が画像上のy方向に生じているとして、動き特定部710は、被写体像1353bの位置と被写体像1353cの位置との位置差Δy1を算出する。
【0075】
被写体画像生成部720は、算出した位置差Δy1に応じた量だけ画像1321bをy方向にずらすことによって、画像1321cを生成する。また、被写体画像生成部720は、算出した位置差Δy1に応じた量だけ画像1322bをy方向にずらすことによって、画像1322cを生成する。被写体画像生成部720は、画像1321c、画像1322c、画像1323cを合成することにより、被写体画像1330cを生成する。なお、ここでいう合成処理は、画像1321cを示すR信号、画像1322cを示すB信号、画像1323cを示すG信号を、所定の重みづけで多重化する多重化処理を含む。
【0076】
また、被写体画像生成部720は、R信号およびG信号の画像に対する動きの補正量を、画像領域毎に異ならせてよい。例えば、撮像装置100による撮像方向が被写体表面に垂直であり、撮像装置100が被写体表面に水平に移動しているとすると、オブジェクトの移動量はどの画像領域でも等しいとみなすことができる。一方、撮像方向が被写体表面に垂直でない場合には、撮像装置100から遠方の領域が撮像された画像領域における動き量は、撮像装置100に近い領域が撮像された画像領域より動き量が小さくなる場合がある。
【0077】
被写体画像生成部720が、R信号およびG信号の画像に対する動きの補正量を画像領域毎に算出するためには、被写体表面と撮像装置100との間の位置関係が既知または推定できれば、当該位置関係および画像領域の位置に基づき、動きの補正量を算出することができる。なお、被写体画像生成部720は、撮像装置100の位置・向きを制御する制御値、撮像装置100のズーム値を制御する制御値など、撮像装置100を操作する制御値を取得して、当該制御値に基づき、R信号およびG信号の画像に対する動きの補正量を算出してもよい。
【0078】
他にも、動き特定部710は動きを画像領域毎に算出してもよい。被写体画像生成部720は、画像領域毎の動きに基づき、各画像領域の画像に対する動きの補正量を算出してもよい。
【0079】
なお、動き特定部710は、画像領域毎に動きを特定する場合には、いずれの波長領域の光による画像を用いて動きを特定するかを、画像領域毎に決定してよい。例えば、動き特定部710は、画像領域毎に各画像のコントラストを算出する。そして、動き特定部710は、各画像領域について、より大きいコントラストが算出された波長領域の光による複数の画像を他の波長の画像より優先して選択して、選択した複数の画像を用いて動きを特定してよい。
【0080】
以上図12および図13に関連して説明したように、動き特定部710は、第1のタイミングにおいて複数の第3受光素子136が受光した光による画像、および、第2のタイミングにおいて複数の第3受光素子136が受光した光による画像に基づき、第1のタイミングおよび第2のタイミングの間における画像上の被写体像の動きを特定する。そして、被写体画像生成部720は、第1のタイミングにおいて第1受光素子132が受光した光、第2のタイミングにおいて第2受光素子134が受光した光、および当該動きに基づき、第2のタイミングにおける被写体画像を生成する。
【0081】
図13は、動きが補正された被写体画像を生成する方法の他の一例を説明する図である。ここでは、動き特定部710は、時刻t1200のタイミングで得られたR信号の画像1421aおよび時刻t1201のタイミングで得られたR信号の画像1421bを用いて、動きを特定する。図12に関連して説明した方法と同様に、動き特定部710は、画像1421aおよび画像1421bから、同じ被写体の被写体像を抽出する。本図の例では、動き特定部710は、画像1421aおよび画像1421bから、それぞれ被写体像1451aおよび被写体像1451bを抽出する。
【0082】
そして、動き特定部710は、被写体像1451aおよび被写体像1451bのそれぞれの位置の差を算出する。本図の例でも、説明を簡単にすべく当該位置差が画像上のy方向に生じているとして、動き特定部710は、被写体像1451aの位置と被写体像1451bの位置との位置差Δy2を算出する。そして、図12に関連して説明した方法と同様に、被写体画像生成部720は、算出した位置差Δy2に応じた量だけ画像1421bをy方向にずらすことによって、画像1421cを生成する。同様に、被写体画像生成部720は、算出した位置差Δy2に応じた量だけ画像1422bをy方向にずらすことによって、画像1422cを生成する。被写体画像生成部720は、画像1421c、画像1422c、および、時刻t1202における第3受光素子136からのG信号の画像である画像1423cを合成することにより、被写体画像1430cを生成する。
【0083】
なお、上記においては画像1421aおよび画像1421bを用いて動きを特定したが、動き特定部710は、画像1421bと、時刻t1203で得られたR信号の画像とを用いて、動きを特定してもよい。このように、動き特定部710は、動きが補正された画像を生成する対象時刻である時刻t1201の前後の時刻のタイミングを含む複数のタイミングで得られた画像から、動きを特定してよい。被写体画像の表示をある程度遅延させることが許容できる場合には、後のタイミングの画像も用いることで、動きの特定精度をより高めることができる場合がある。
【0084】
また、上記においては、画像1421aおよび画像1421bを用いて特定された動きに基づき、画像1422bを補正したが、動き特定部710は、画像1422aおよび画像1422bを用いて、動きを特定してもよい。そして、被写体画像生成部720は、特定した動きを用いて、画像1422bをずらすことによって、画像1422cを生成してもよい。
【0085】
なお、動き特定部710が動きを特定するためにいずれの波長領域の画像を用いるかは、撮像された画像のコントラストに基づき決定してよい。例えば、動き特定部710は、コントラストがより大きい画像をより優先して用いて、動きを特定してよい。表面の微細構造の像が明瞭であるなど、微細構造の像を動き特定用のオブジェクトとして用いることができる場合には、B信号の画像を用いて動きをより正確に特定することができる場合がある。また、表面のより大きな凹凸構造の像が明瞭であるなど、凹凸構造の像を動き特定用のオブジェクトとして用いることができる場合には、R信号の画像を用いて動きをより正確に特定することができる場合がある。
【0086】
以上図13に関連して説明したように、動き特定部710は、第1のタイミングを含む第2のタイミング以外の複数のタイミングにおいて第1受光素子132が受光した第1波長領域の光による複数の画像に基づき、複数のタイミングの間における画像上の被写体像の動きを特定する。そして、被写体画像生成部720は、第1のタイミングにおいて第1受光素子132が受光した光、第1のタイミングにおいて第2受光素子134が受光した光、第2のタイミングにおいて第3受光素子136が受光した光、および動きに基づき、第2のタイミングにおける被写体画像を生成する。なお、図12および図13に関連して、動き特定処理の一例として、動き特定部710が2のタイミングで撮像された画像を用いて動きを特定する処理を説明したが、動き特定部710は、3以上のタイミングで撮像された画像を用いて動きを特定してもよい。
【0087】
図14は、発光部114による発光パターンの他の一例を示す。ここでは、上述した受光フィルタは設けられておらず、各受光素子は互いに略同一の波長領域の光を受光することができるとする。この構成において、発光部114は、観察光に含まれるべき各色成分の光を時分割で発光する。具体的には、発光部114は、時刻t1600に代表されるタイミング、時刻t1601に代表されるタイミング、時刻t1602に代表されるタイミングにおいて、それぞれR成分の光、G成分の光、およびB成分の光を発光する。
【0088】
被写体画像生成部720は、時刻t1600のタイミングで各受光素子から得られた画像信号であるR1に対して、時刻t1600と時刻t1602との間の動きを補正することによって、動きが補正された画像信号であるR1'を生成する。また、被写体画像生成部720は、時刻t1601のタイミングで各受光素子から得られた画像信号であるG1に対して、時刻t1601と時刻t1602との間の動きを補正することによって、動きが補正された画像信号であるG1'を生成する。なお、動き特定部710による各タイミングの間での動き特定処理としては、図11から図13にかけて説明した方法と同様に、異なる複数のタイミングにおいて各受光素子から得られた画像信号から特定することができるので、詳細については説明を省略する。
【0089】
そして、被写体画像生成部720は、補正後の画像信号R1'、補正後の画像信号G1'および時刻t1602のタイミングで各受光素子から得られた画像信号であるB1を多重化することにより、時刻t1602において得られるべき被写体画像1630を生成する。これにより、観察光に含まれるべき各色成分の光が時分割で発光される場合でも、動きを補正した被写体画像を生成することができる。
【0090】
また、反射率算出部142は、補正後の画像信号R1'および補正後の画像信号G1'を用いて、各波長領域における反射率を画像領域毎に算出する。そして、深さ特定部144は、算出された各波長領域における反射率に基づき、オブジェクトまでの深さを各領域毎に特定して、深さデータ1650を算出する。このように、R成分の光とG成分の光とが順次発光される場合には、深さ特定部144は、特定された動きに応じて補正された画像信号を用いてオブジェクトまでの深さを特定する。
【0091】
このようにして、動き特定部710は、第1波長領域の光と第2波長領域の光とを発光部114が順次発光している間における被写体の動きを特定することができる。そして、反射率算出部142は、動き特定部710が特定した動きに基づき、被写体の動きによる位置ずれが補正された第1反射率および第2反射率を算出することができる。これにより、オブジェクトまでの深さをより正確に算出することができる。
【0092】
なお、本図の例では、観察光に含まれるべき各色成分の光が順次発光され、各色分の光に対する反射率から深さを特定する場合について説明したが、図10に関連して説明したように、発光部114は、さらに他のタイミングにおいて深さ測定用の測定光を発光してもよい。このような発光パターンで得られた画像信号に対する動き特定および動き補正についても、上記と同様の方法で処理することができるので、詳細については説明を省略する。
【0093】
なお、観察光に含まれるべき各色成分の光を順次で発光する発光部114の構成としては、観察光を発光する光源と、順次各色成分の光を選択的に透過するフィルタとを備える構成を例示することができる。このようなフィルタとしては、液晶フィルタなど、透過波長領域を時間的に制御することができるフィルタ、各色成分の光を選択的に透過する複数のフィルタ領域を有する回転式のフィルタを例示することができる。このようなフィルタにより被写体への光の波長領域を制御する方法は、図10などに関連して説明した観察光および測定光を時分割で照射する場合にも用いることができる。
【0094】
また、発光部114は、異なる波長領域の光を発光する複数の発光素子の発光を制御することにより、観察光と測定光とを時分割で発光したり、各色成分の光を順次発光したりすることができる。観察光用の発光素子としてはLEDなどの半導体素子を例示することができる。また、測定光用の発光素子としては、半導体レーザなどの、比較的に狭い波長領域の光を発光する半導体素子を例示することができる。なお、発光部114は、複数の発光素子のそれぞれの発光強度を各タイミングで制御することにより、観察光と測定光とを時分割で発光したり、各色成分の光を順次発光したりすることができる。
【0095】
また、撮像装置100が内視鏡である場合、発光素子は、スコープの先端部に設けられてもよい。当該発光素子は、電気励起により発光する発光素子であってよく、光励起により発光する発光素子であってもよい。このような発光素子としては蛍光体などの発光素子を例示することができる。発光素子が光励起により発光する発光素子である場合、発光部114は、当該発光素子を励起する励起用の光を発光する励起部と、当該発光素子とを含んでよい。ここで当該発光素子は、励起用の光の波長に応じて異なるスペクトルの光を発光してよい。この場合、発光部114は、当該励起部が発光する励起用の光の波長を各タイミングで制御することにより、照射光のスペクトルを制御することができる。また、同一の励起用の光により各発光素子が発光する光のスペクトルが、複数の発光素子の間で異なってもよい。
【0096】
図15は、撮像装置100のハードウェア構成の一例を示す。上述した撮像装置100の機能は、コンピュータなどの電子情報処理装置により実現され得る。撮像装置100は、CPU周辺部と、入出力部と、レガシー入出力部とを備える。CPU周辺部は、ホスト・コントローラ1582により相互に接続されるCPU1505、RAM1520、グラフィック・コントローラ1575、および表示デバイス1580を有する。入出力部は、I/Oコントローラ1584によりホスト・コントローラ1582に接続される通信I/F1530、ハードディスクドライブ1540、およびCD−ROMドライブ1560を有する。レガシー入出力部は、I/Oコントローラ1584に接続されるROM1510、FDドライブ1550、およびI/Oチップ1570を有する。
【0097】
ホスト・コントローラ1582は、RAM1520と、RAM1520をアクセスするCPU1505、およびグラフィック・コントローラ1575とを接続する。CPU1505は、ROM1510、およびRAM1520に格納されたプログラムに基づいて動作して、各部の制御をする。グラフィック・コントローラ1575は、CPU1505等がRAM1520内に設けたフレーム・バッファ上に生成する画像データを取得して、表示デバイス1580上に表示させる。これに代えて、グラフィック・コントローラ1575は、CPU1505等が生成する画像データを格納するフレーム・バッファを、内部に含んでもよい。
【0098】
I/Oコントローラ1584は、ホスト・コントローラ1582と、比較的高速な入出力装置であるハードディスクドライブ1540、通信I/F1530、CD−ROMドライブ1560を接続する。ハードディスクドライブ1540は、CPU1505が使用するプログラム、およびデータを格納する。通信I/F1530は、ネットワーク通信装置1598に接続してプログラムまたはデータを送受信する。CD−ROMドライブ1560は、CD−ROM1595からプログラムまたはデータを読み取り、RAM1520を介してハードディスクドライブ1540、および通信I/F1530に提供する。
【0099】
I/Oコントローラ1584には、ROM1510と、FDドライブ1550、およびI/Oチップ1570の比較的低速な入出力装置とが接続される。ROM1510は、撮像装置100が起動時に実行するブート・プログラム、あるいは撮像装置100のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。FDドライブ1550は、フレキシブルディスク1590からプログラムまたはデータを読み取り、RAM1520を介してハードディスクドライブ1540、および通信I/F1530に提供する。I/Oチップ1570は、FDドライブ1550、あるいはパラレル・ポート、シリアル・ポート、キーボード・ポート、マウス・ポート等を介して各種の入出力装置を接続する。
【0100】
CPU1505が実行するプログラムは、フレキシブルディスク1590、CD−ROM1595、またはICカード等の記録媒体に格納されて利用者によって提供される。記録媒体に格納されたプログラムは圧縮されていても非圧縮であってもよい。プログラムは、記録媒体からハードディスクドライブ1540にインストールされ、RAM1520に読み出されてCPU1505により実行される。CPU1505により実行されるプログラムは、撮像装置100を、図1から図14に関連して説明した撮像装置100が備える各機能部として機能させる。
【0101】
以上に示したプログラムは、外部の記憶媒体に格納されてもよい。記憶媒体としては、フレキシブルディスク1590、CD−ROM1595の他に、DVDまたはPD等の光学記録媒体、MD等の光磁気記録媒体、テープ媒体、ICカード等の半導体メモリ等を用いることができる。また、専用通信ネットワークあるいはインターネットに接続されたサーバシステムに設けたハードディスクまたはRAM等の記憶装置を記録媒体として使用して、ネットワークを介したプログラムとして撮像装置100に提供してもよい。
【0102】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることができることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】実施形態に係る撮像装置100のブロック構成の一例を示す。
【図2】受光部130が有する受光素子および受光フィルタの構成例を示す。
【図3】受光部130が有する各受光素子の受光特性の一例を示す。
【図4】被写体による光の反射特性の一例を示す。
【図5】被写体による光の反射特性の他の一例を示す。
【図6】深さ格納部146が格納する深さ情報の一例を示す。
【図7】表示部150による表示処理の一例を示す。
【図8】被写体による光の反射特性の他の一例を示す。
【図9】発光部114が発光して被写体に照射される光のスペクトルの一例を示す図である。
【図10】撮像装置100による撮像タイミングの一例を被写体画像とともに示す図である。
【図11】画像処理部140のブロック構成の一例を示す図である。
【図12】動きが補正された被写体画像を生成する方法の一例を説明する図である。
【図13】動きが補正された被写体画像を生成する方法の他の一例を説明する図である。
【図14】発光部114による発光パターンの他の一例を示す図である。
【図15】撮像装置100のハードウェア構成の一例を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体に対して光を発光する発光部と、
前記被写体からの第1波長領域の光、および前記被写体からの前記第1波長領域と異なる第2波長領域の光を受光する受光部と、
前記発光部が発光する光および前記受光部が受光した光に基づいて、前記被写体による前記第1波長領域の光の第1反射率、および前記被写体による前記第2波長領域の光の第2反射率を算出する反射率算出部と、
前記第1反射率および前記第2反射率に基づいて、前記被写体の表面から、前記受光部が受光した光の像に含まれる前記被写体の内部のオブジェクトまでの深さを特定する深さ特定部と
を備える撮像装置。
【請求項2】
前記被写体による前記第1波長領域の光の反射率と前記第2波長領域の光の反射率との差分または比率に対応づけて、前記被写体の内部において前記オブジェクトが存在する深さを予め格納している深さ格納部をさらに備え、
前記深さ特定部は、前記第1反射率と前記第2反射率との差分または比率に対応づけて前記深さ格納部に格納されている深さを特定する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記受光部は、前記被写体の表面から前記オブジェクトまでの深さによる、前記被写体による反射率への依存度が異なる、前記第1波長領域の光および前記第2波長領域の光を受光する請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記受光部は、複数の受光素子を有し、
前記反射率算出部は、所定数の前記受光素子に対応する部分領域毎に、前記第1反射率および前記第2反射率を算出し、
前記深さ特定部は、前記部分領域毎に、前記被写体の表面から前記オブジェクトまでの深さを特定する請求項2または3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記発光部は、前記第1波長領域の光および前記第2波長領域の光を含む光を発光し、
前記受光部は、前記第1波長領域の光を受光する複数の第1受光素子と、前記第2波長領域の光を受光する複数の第2受光素子とを有する請求項1乃至3のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項6】
前記発光部は、前記第1波長領域の光と前記第2波長領域の光とを順次発光し、
前記受光部は、前記第1波長領域の光と前記第2波長領域の光とを順次受光する請求項1乃至3のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項7】
前記第1波長領域の光と前記第2波長領域の光とを前記発光部が順次発光している間における前記被写体の動きを特定する動き特定部
をさらに備え、
前記反射率算出部は、前記動き特定部が特定した動きに基づいて、前記被写体の動きによる位置ずれが補正された前記第1反射率および前記第2反射率を算出する
請求項6に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記受光部は、前記第1波長領域であるR成分の波長領域の光、および前記第2波長領域であるG成分の波長領域の光を受光する
請求項1乃至3のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項9】
被写体に対して光を発光する発光部と、
前記被写体からの第1波長領域の光、および前記被写体からの前記第1波長領域と異なる第2波長領域の光を受光する受光部と
を備える撮像装置による撮像方法であって、
前記発光部が発光する光および前記受光部が受光した光に基づいて、前記被写体による前記第1波長領域の光の第1反射率、および前記被写体による前記第2波長領域の光の第2反射率を算出する反射率算出段階と、
前記第1反射率および前記第2反射率に基づいて、前記被写体の表面から、前記受光部が受光した光の像に含まれる前記被写体の内部のオブジェクトまでの深さを特定する深さ特定段階と
を備える撮像方法。
【請求項10】
被写体に対して光を発光する発光部と、
前記被写体からの第1波長領域の光、および前記被写体からの前記第1波長領域と異なる第2波長領域の光を受光する受光部と
を備える撮像装置用のプログラムであって、コンピュータを、
前記発光部が発光する光および前記受光部が受光した光に基づいて、前記被写体による前記第1波長領域の光の第1反射率、および前記被写体による前記第2波長領域の光の第2反射率を算出する反射率算出部、
前記第1反射率および前記第2反射率に基づいて、前記被写体の表面から、前記受光部が受光した光の像に含まれる前記被写体の内部のオブジェクトまでの深さを特定する深さ特定部
として機能させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−254794(P2009−254794A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−5854(P2009−5854)
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】