説明

撮像装置、撮像装置の制御方法、及びコンピュータプログラム

【課題】複数の撮像光学系が自動焦点調節処理及び自動露出処理の対象として互いに異なる対象を選択することを防止する撮像装置、撮像装置の制御方法、及びコンピュータプログラムの提供を目的とする。
【解決手段】撮像装置が、第1、第2の撮像光学系を通過した光像から各々画像信号を取得し、取得した画像信号に基づいて、合焦すべき被写体領域を検出する。撮像装置が、検出された合焦すべき被写体領域から、第1の撮像光学系の焦点調節のための第1の指標を決定する。また、撮像装置が、第1の指標に基づいて、第2の撮像光学系の焦点調節のための第2の指標を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置、撮像装置の制御方法、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
立体的な画像を撮影する方法として、2つの撮像光学系によって画像を撮像するステレオカメラを用いる方法が提案されている。また、近年では、多くのデジタルカメラが、顔検出機能を備えている。デジタルカメラは、顔を基準として、自動焦点調節処理(AF:Auto Focus)や自動露出調節処理(AE:Auto Exposure)を実行している。
特許文献1には、画像データの中から目的とする対象を含んだ領域を検出し、この検出された領域を認識できるようにするための指標を、画像データから生成された画像に重畳して表示する画像処理装置が開示されている。この画像処理装置は、同時に表示する指標の数の上限を変更する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−38750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示された従来技術をステレオカメラに適用した場合、以下のような問題がある。すなわち、ステレオカメラが視差を持つので、2つの撮像光学系で顔領域の検出結果が違う場合に、それぞれの撮像光学系についての自動焦点調節処理及び自動露出処理の指標となる主被写体が互いに異なってしまう。
【0005】
図5は、従来技術の問題点を説明する図である。図5では、従来の撮像装置が備える2つの撮像光学系のうち、1つの撮像光学系からのみ顔領域が検出される例を示す。撮像装置が、人物Pを撮影する。撮像装置が、撮像装置の左側の撮像光学系101により得られる画像L’と、右側の撮像光学系102から得られる画像R’とから、それぞれ顔領域の検出を行う。顔領域の検出の方法によっては、被写体が横を向いている時には検出ができなくなる。図5に示す例では、右側の撮像光学系102からのみ太線の矩形の枠で囲った顔領域が検出される。その結果、右側の撮像光学系102により得られる画像R’からのみ主被写体が選択され、左側の撮像光学系101により得られる画像L’からは主被写体が選択されない。
また、人物Pが斜めを向いている場合、一方の撮像光学系からは横顔画像、他方の撮像光学系からは正面画像が得られ、顔領域の検出の結果が異なる場合が考えられる。このような場合には、2つの撮像光学系について選択される主被写体が異なってしまう。各々の撮像光学系は、選択された主被写体を自動焦点調節処理及び自動露出処理の対象とするので、2つの撮像光学系について選択される主被写体が異なると、撮像された画像が、合焦位置のずれた2枚の画像からなるステレオ画像となるという問題がある。
上記の課題を鑑み、本発明は、複数の撮像光学系が自動焦点調節処理及び自動露出処理の対象として互いに異なる対象を選択することを防止する撮像装置、撮像装置の制御方法、及びコンピュータプログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態の撮像装置は、第1、第2の撮像光学系と、前記第1、第2の撮像光学系を通過した光像から各々画像信号を取得する第1、第2の撮像手段と、前記第1、第2の撮像光学系の焦点調節処理を行う第1、第2の焦点調節手段と、取得した画像信号に基づいて、合焦すべき被写体領域を検出する領域検出手段と、前記焦点調節処理のための指標を決定する指標決定手段とを備える。前記指標決定手段は、前記第1の撮像手段によって取得した画像信号に基づいて検出された合焦すべき被写体領域から第1の指標を決定するとともに、当該第1の指標に基づいて前記第2の撮像光学系の焦点調節のための第2の指標を決定する。
【発明の効果】
【0007】
本実施形態の撮像装置によれば、複数の撮像光学系が自動焦点調節処理及び自動露出処理の対象として互いに異なる対象を選択することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態の撮像装置の構成例を示す図である。
【図2】本発明の実施例1に係る撮像装置の動作処理フローの例を示す図である。
【図3】実施例1を説明する図である。
【図4】本発明の実施例2に係る撮像装置の動作処理例を説明する図である。
【図5】従来技術の問題点を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本実施形態の撮像装置の構成例を示す図である。図1(A)は本実施形態の撮像装置の全体構成図を示す。図1(A)に示す撮像装置は、複数の撮像光学系である第1の撮像光学系1、第2の撮像光学系2と、制御部3と、顔検出部4と、表示部5と、ズームスイッチ6と、外部入出力端子部7と、シャッタレリーズスイッチ8と、記憶部9と、電源部10とを備える。また、この撮像装置は、撮像素子31、34と、撮像信号処理部32、35と映像信号処理部33、36とを備える。
第1の撮像光学系1は、ズームレンズ11、シャッタ・絞りユニット12、シフトレンズ13、フォーカスレンズ14、ズーム駆動制御部15、シャッタ・絞り駆動制御部16、シフトレンズ駆動制御部17、フォーカス駆動制御部18を備える。第2の撮像光学系2は、ズームレンズ21、シャッタ・絞りユニット22、シフトレンズ23、フォーカスレンズ24、ズーム駆動制御部25、シャッタ・絞り駆動制御部26、シフトレンズ駆動制御部27、フォーカス駆動制御部28を備える。第2の撮像光学系2が備える各処理部は、第1の撮像光学系1が備える各処理部と同様の機能を有するので、第2の撮像光学系2が備える各処理部についての詳細な説明は省略する。
【0010】
各々の撮像光学系が備える光学系は3群構成である。例えば、ズームレンズ11は、ズーム制御に関与する1群レンズである。シフトレンズ13は振れ補正を実行する2群レンズである。フォーカスレンズ14は、焦点調節処理を実行する3群レンズである。ズームレンズ11は、光軸方向に沿って位置を変更可能に構成されており、倍率変更を行う。ズーム駆動制御部15は、ズームレンズ11を駆動する。ズームレンズ11の後段に配置されているシャッタ・絞りユニット12は、露光量を調節する。シャッタ・絞り駆動制御部16は、シャッタ・絞りユニット12を駆動制御して、露光量の調節すなわち露出調節処理を行う露出調節手段である。シフトレンズ13は、光軸に対して略垂直な平面内での位置を変更することが可能に配置されており、振れ補正光学系を構成する。シフトレンズ駆動制御部17は、シフトレンズ13を駆動制御する。フォーカスレンズ14は、ピント調整用レンズである。フォーカスレンズ14は光軸方向に沿って位置を変更可能に構成されている。フォーカス駆動制御部18は、フォーカスレンズ14を駆動制御して、焦点調節処理を実行する第1の焦点調節手段としての機能を有する。なお、第2の撮像光学系2が備えるフォーカス駆動制御部28は、フォーカスレンズ24を駆動制御して、焦点調節処理を実行する第2の焦点調節手段としての機能を有する。
【0011】
第1の撮像手段としての撮像素子31は、第1の撮像光学系1の1群レンズ乃至3群レンズを通過した光像を受光して、受光した光像を画像信号としての電気信号に変換する。撮像信号処理部32は、撮像素子31が出力した画像信号を映像信号に変換し、映像信号に変換した画像信号を出力する。映像信号処理部33は、撮像信号処理部32が出力した画像信号に対して所定の処理を施して表示部5に表示可能な画像信号とし、該画像信号を出力する。また、第2の撮像手段としての撮像素子34は、第2の撮像光学系2の1群レンズ乃至3群レンズを通過した光像を受光して、受光した光像を画像信号としての電気信号に変換する。撮像信号処理部35は、撮像素子34が出力した画像信号を映像信号に変換し、映像信号に変換した画像信号を出力する。映像信号処理部36は、撮像信号処理部35が出力した画像信号に対して所定の処理を施して表示部5に表示可能な画像信号とし、該画像信号を出力する。
制御部3はシステム全体を制御する。具体的には、制御部3は、第1、第2の撮像光学系が備えるズーム駆動制御部15、25、シャッタ・絞り駆動制御部16、26、シフトレンズ駆動制御部17、27、フォーカス駆動制御部18、28を制御する。また、制御部3は、撮像素子31、34、撮像信号処理部32、35、映像信号処理部33、36の処理を制御する。また、制御部3は、顔検出部4、表示部5、外部入出力端子部7、記憶部9を制御する。制御部3は、図示を省略するCPU(Central Processing Unit)等により解釈及び実行されるプログラムに従って処理を実行する。
【0012】
本実施形態に特有の動作として、制御部3は、後述する顔検出部4によって検出された、合焦すべき被写体領域としての顔領域に基づいて、焦点調節処理の指標を決定する指標決定手段として機能する。例えば、制御部3は、撮像信号処理部32、35から画像信号を受け取り、受け取った画像信号を顔検出部4に渡す。制御部3は、顔検出部4が撮像信号処理部32から取得した画像信号から検出した顔領域のうち、一つの顔領域を主被写体として選択し、選択した主被写体を第1の撮像光学系1の焦点調節のための第1の指標として決定する。第1の指標は撮像光学系1についての主被写体の顔領域に対応する。そして、制御部3は、第1の指標に基づいて、第2の撮像光学系2の焦点調節のための第2の指標を決定する。例えば、制御部3は、顔検出部4が撮像信号処理部35から取得した画像信号が示す画像領域のうち、第1の指標の座標に対応する座標の画像領域を第2の指標として決定する。制御部3は、検出された顔領域について評価値を演算し、演算された評価値に基づいて、前述した第1の指標を決定する。制御部3が、少なくとも上記検出された顔領域の位置と大きさとに基づいて評価値を演算するようにしてもよい。
【0013】
また、制御部3が、第1の撮像光学系1、第2の撮像光学系について検出された合焦すべき被写体領域から、同一人物に対応する顔領域を検出し、検出された同一人物に対応する顔領域を、上記第1及び第2の指標として決定するようにしてもよい。その際に、制御部3が、検出された合焦すべき被写体領域としての顔領域について評価値を演算し、演算された評価値の合致度に基づいて、同一人物に対応する顔領域を検出するようにしてもよい。なお、顔検出部4が、検出した合焦すべき被写体領域に含まれる人物の顔の特徴量を出力し、制御部3が、出力された特徴量に基づいて、同一人物に対応する顔領域を検出するようにしてもよい。
また、制御部3は、表示部5に指示して、映像信号処理部33、36が出力した画像信号を表示画面上に画面表示させる。表示部5は、撮像光学系毎に画像信号を画面表示する。また、制御部3は、表示部5に指示して、制御部3が決定した各々の撮像光学系についての指標を表示画面上に表示させる。
【0014】
顔検出部4は、撮像信号処理部32、35から画像信号を受け取り、受け取った画像信号に基づいて、各々の撮像光学系について、合焦すべき被写体領域としての人物の顔を含む顔領域を検出する領域検出手段として機能する。顔検出部4は、検出した顔領域の情報を制御部3に渡す。表示部5は、制御部3の指示に従った画面表示処理を実行する。ズームスイッチ6は、ズームレンズ11を操作する操作手段である。ズームスイッチ6は、ユーザの操作入力に応じて、操作信号を入力し、入力した操作信号を制御部3に送信する。外部入出力端子部7は、図示を省略する外部装置との間の通信を媒介する。具体的には、外部入出力端子部7には、映像信号及び音声信号が入力される。また、映像信号及び音声信号が外部入出力端子部7から出力される。
シャッタレリーズスイッチ8は、押し込み量に応じて、第1スイッチ( 以下「SW1」と記述) 及び第2スイッチ(以下「SW2」と記述)が順にオン状態となるように構成されている。具体的には、ユーザがシャッタレリーズボタン8を約半分押し込んだ場合に、SW1がオン状態となる。ユーザが、更に、シャッタレリーズボタン8を最後まで深く押し込んだ場合に、SW2がオン状態となる。そして、SW1、SW2がオン状態となったことを示す信号が制御部3に送信される。
【0015】
記憶部9には、撮像信号処理部32、35が出力した画像信号、映像信号処理部33、36が出力した画像信号等が記憶される。この際、なお、記憶部9には、制御部3によって解釈されて実行される、本実施形態の撮像装置の制御プログラムを記憶するためのメモリ装置も含まれる。電源部10は、図1に示す撮像装置の各処理部に対して、電源電圧を供給する。
本実施形態の撮像装置の制御方法は、図1に示す撮像装置が備える各処理部によって実現される。また、図1に示す撮像装置の機能は、CPUとその上で実行されるコンピュータプログラムにより実現される。このコンピュータプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に格納することができ、この記録媒体に記録して提供され、又は、通信インタフェースを介してネットワークを利用した送受信により提供される。
【0016】
次に、図1に示す撮像装置による、自動焦点調節(AF)処理、自動露出(AE)処理、及び、ズーム駆動制御処理について説明する。上述したように、シャッタレリーズスイッチ8の押し込み量に応じて、SW1及びSW2が順にオン状態となる。シャッタレリーズスイッチ8のSW1がオン状態となったことを示す信号が制御部3に入力されると、制御部3が、フォーカス駆動制御部18、28に指示して、制御部3が決定した指標を対象としてAF処理を実行させる。制御部3から指示を受けたフォーカス駆動制御部18、28は、フォーカスレンズ14、24を駆動することによって、上記指標に対応する被写体領域が合焦すべくAF処理を実行する。また、制御部3が、シャッタ・絞り駆動制御部16、26に指示して、制御部3が決定した指標を対象として、AE処理を実行させる。具体的には、シャッタ・絞り駆動制御部16、26が、シャッタ・絞りユニット12、22を駆動して、露光量を適正な値に設定する。
【0017】
SW2がオン状態となり、SW2がオン状態となったことを示す信号が制御部3に入力されると、制御部3が、撮像素子31、34に指示して、撮像素子31、34が受光した光像を画像信号として電気信号に変換させる。撮像素子31、34で取得した画像信号は、それぞれ、撮像信号処理部32、35により処理され、映像信号処理部33、36が、表示部5に表示する画像信号を出力する。制御部3は、撮像信号処理部32、35が出力した画像信号、映像信号処理部33、36が出力した画像信号を記憶部9に記憶する。また、ユーザがズームスイッチ6を操作すると、その操作信号が制御部3に入力され、制御部3がズーム駆動制御部15、25に指示を与える。ズーム駆動制御部15、25は、制御部3によって指示されたズーム位置へズームレンズを移動させる。これによって、ズーム駆動制御処理が実行される。
【0018】
図1(B)は、図1(A)中のフォーカス駆動制御部の構成例を示す。フォーカス駆動制御部18は、フォーカスモータ181、フォーカスモータ駆動回路182、リセット位置検出部183、フォーカス制御部184を備える。フォーカスモータ181は、フォーカスモータ駆動回路182の指示に従って駆動し、フォーカスレンズ14を移動させる。これによって、AF処理が行われる。フォーカスモータ駆動回路182は、フォーカスモータ181を駆動させるアナログ回路である。リセット位置検出部183は、フォーカスレンズ14の所定のリセット位置を検出する位置検出手段である。フォーカス制御部184は、リセット位置検出部183によって検出されたリセット位置に基づいて、フォーカスレンズ14の駆動制御に係る基準位置を判定する。
【0019】
図2は、本発明の実施例1に係る撮像装置の動作処理フローの例を示す図である。図2(A)は、撮像装置の全体動作処理の例を示す。まず、図1(A)に示す撮像装置の制御部3が、ユーザの操作入力に従って撮影モードに設定されたことを確認し、撮影処理を開始する。まず、ステップS1において、制御部3が、主被写体を選択し、第1、第2の指標を決定する。このステップS1の詳細な処理については、図2(B)乃至図3を参照して後述する。次に、ステップS2において、制御部3が、シャッタレリーズスイッチ8のSW1がオン状態になったかを判断する。制御部3が、SW1がオン状態になったと判断した場合には、ステップS3に進む。SW1がオン状態でない、すなわち、オフ状態であると判断した場合には、上記ステップS1に戻る。
次に、ステップS3において、上記ステップS1で決定したそれぞれの撮像光学系の指標に対してAE処理を実行する。これにより、主被写体となる顔領域に含まれる人物の顔の露出が適正になる。続いて、ステップS4において、上記ステップS1で決定したそれぞれの撮像光学系の焦点調節ための指標に対してAF処理を実行する。
【0020】
ステップS5において、制御部3が、シャッタレリーズスイッチ8のSW2がオン状態になったかを判断する。制御部3が、SW2がオン状態になったと判断した場合には、ステップS6に進む。制御部3が、SW2がオン状態でない、すなわち、オフ状態であると判断した場合には、上記ステップS5に戻る。ステップS6において、撮像装置の撮像光学系が撮影を開始する。露光が終了すると、ステップS7において、撮像光学系が、画像取り込み等の画像処理を実行する。そして、映像信号処理部33が表示部5に表示可能な画像信号を生成して出力する。そして、ステップS8において、制御部3が、第1、第2の指標を撮像素子31、34で取得した画像信号と関連付けて記憶部9に記憶して、撮影を終了する。すなわち、制御部3は、第1、第2の指標を第1、2の撮像手段で取得した画像信号と関連付けて記憶手段に記憶させる記憶制御手段としての機能を有する。これによりそれぞれの画像信号においての指標を後から確認したり、その位置に対応する被写体領域を拡大処理したりすることができる。
【0021】
図2(B)は、図2(A)のステップS1における指標決定処理の一例を示す。この例では、図1に示す撮像装置が備える第1、第2の撮像光学系がそれぞれ顔領域を検出した場合を想定する。2つの撮像光学系のうち、いずれか1つの撮像光学系のみが顔領域を検出する場合についても、図2(B)に示す処理と同様の処理となる。
ステップS11において、顔検出部4が、撮像信号処理部32が出力した画像信号を制御部3から受け取り、受け取った画像信号から顔領域を検出する。顔検出部4は、撮像光学系1の撮像信号処理部32、撮像光学系2の撮像信号処理部35がそれぞれ出力した画像信号毎に顔領域を検出する。例えば、図3(A)に示すように、本実施形態の撮像装置が備える第1の撮像光学系1から図3(A)中左側の画像Lが得られ、第2の撮像光学系2から右側の画像Rが得られたとする。画像Lについては、3人の人物A、B、Cそれぞれの顔領域が検出され、画像Rについては、2人の人物B、Cそれぞれの顔領域が検出される。それぞれの顔領域を、点線の矩形の枠で示す。
【0022】
図2(B)に戻って、ステップS12において、制御部3は、上記ステップS11の処理で検出された複数の顔領域の中から、主被写体を選択する。上記主被写体の選択処理について、以下に説明する。制御部3が、検出されたそれぞれの顔領域について評価値を演算する。例えば、顔検出部4が、顔領域について、人間の顔と思われる確からしさを公知の技術によって算出し、制御部3が、上記確からしさの大きさに応じて評価値を設定する。具体的には、確からしさが大きい顔領域に対して高い評価値を設定する。また、例えば、顔検出部4が、顔領域が検出された位置を出力し、制御部3が、顔領域が検出された位置に応じて評価値を設定する。具体的には、顔領域が検出された位置が撮像画像の中心部に近い顔領域に高い評価値を設定する。また、例えば、顔検出部4が、顔領域の大きさを出力し、制御部3が、顔領域の大きさに応じて評価値を設定する。具体的には、顔領域が大きい顔領域に高い評価値を設定する。また、例えば、顔検出部4が、顔領域の、他の顔領域との相関位置を出力し、制御部3が、上記相関位置に応じて評価値を設定する。制御部3は、上記の評価値の設定方法のうち少なくとも一つを用いて評価値を設定する。制御部3は、評価値が設定された顔領域の中から、最も評価値が高い顔領域を主被写体として選択し、選択された主被写体を、上記顔領域に対応する撮像光学系についての、AF処理とAE処理の対象となる指標とする。制御部3が、最も評価値が高い顔領域の該評価値が所定の閾値を超えるかを判断し、評価値が閾値を超える場合に、この顔領域を主被写体として選択し、評価値が閾値を超えない場合に、この顔領域に対応する撮像光学系についての主被写体がないと判断してもよい。
【0023】
図3(A)を参照して、制御部3が、顔領域の検出された位置と顔領域の大きさに応じて評価値を設定する場合の、主被写体の選択例について説明する。制御部3は、画像Lにおける人物A、B、Cの顔領域と、画像Rにおける人物C、Bの顔領域という、図3(A)中の点線の矩形の枠で示される5つの顔領域の中から、一つの顔領域を主被写体として選択する。ここで、5つの顔領域のうち、顔領域の検出された位置と顔領域の大きさに応じて設定される評価値が最も高い顔領域は、例えば画像Lにおける人物Aの顔領域となる。従って、制御部3は、画像Lにおける人物Aの顔領域を主被写体として選択するとともに、この主被写体を第1の撮像光学系についての指標とする。
なお、制御部3が、評価値を用いる方法以外の方法で主被写体を選択するようにしてもよい。例えば、顔検出部4が、検出した顔領域に含まれる人物の顔の特徴量を出力する。そして、制御部3が、上記特徴量に基づいて、公知の個人認証技術を用いて、予め決められた人物の顔を特定し、特定した人物の顔を主被写体として選択する。
【0024】
次に、図2(B)のステップS13において、制御部3が、表示部5に指示して、映像信号処理部33が出力した画像信号を表示画面上に表示させる。そして、この表示画面上に、上記ステップS12において選択された主被写体を指標として表示する。これによって、ユーザが、主被写体となる顔領域を認識できるようになる。例えば、表示部5は、図3(B)中の画像L中に、主被写体である人物Aの顔領域を示す太線の矩形の枠を、指標として表示する。続いて、ステップS14において、制御部3は、ステップ12で選択された主被写体の顔領域の座標を検出する。そして、ステップ15において、制御部3は、主被写体が選択されていない方の撮像光学系から得られた画像における、上記ステップS14において検出された座標と同じ座標の画像領域を、該撮像光学系についての指標として決定する。上記ステップS15においては、更に、制御部3は、表示部5に指示して、決定された指標を画面表示させる。図3(B)に示す画面表示例においては、主被写体が選択されなかった画像は画像Rであり、この画像Rは第2の撮像光学系2から得られた画像である。画像Rにおいて、図3(B)の画像L内に表示された指標の座標と同じ座標の画像領域は、太線の矩形の枠で囲まれた画像領域である。従って、制御部3は、この太線の矩形の枠を第2の撮像光学系2についての指標として決定し、この指標を図3(B)の画像Rにおいて表示する。
【0025】
図2乃至図3を参照して説明した本発明の実施例1によれば、撮像装置が備える2つの撮像光学系について、同じ座標位置の指標を得ることができる。従って、撮像光学系が、それぞれ別個の被写体に対して自動焦点調節処理を行うことを防止することができる。また、いずれか1つの撮像光学系から得られた画像信号からのみ顔領域が検出された場合にも、他の撮像光学系について、上記顔領域が検出された画像信号に係る撮像光学系についての指標と同じ座標位置の指標を得ることができる。その結果、人物を綺麗に撮影することができる。
【0026】
図4は、本発明の実施例2に係る撮像装置の動作処理例を説明する図である。実施例2に係る撮像装置の全体動作処理については、前述した図2(A)に示す実施例1に係る撮像装置の全体動作処理と同様である。
図4(A)は、実施例2に係る撮像装置による指標決定処理の一例を示す。この例では、制御部3が、2つの撮像光学系から得られた画像信号から同一人物を検出できたかを判断し、判断結果に基づいて主被写体を選択する。まず、ステップS21において、顔検出部4が、撮像光学系1及び撮像光学系2の撮像信号処理部32が出力した画像信号を制御部3から受け取り、受け取った画像信号から顔領域を検出する。例えば、第1の撮像光学系1から図4(B)中左側の画像Lが得られ、第2の撮像光学系2から右側の画像Rが得られたとする。画像Lについては、3人の人物A、B、Cそれぞれの顔領域が検出され、画像Rについては、2人の人物B、Cそれぞれの顔領域が検出される。
【0027】
図4(A)に戻って、ステップ22において、制御部3は、上記ステップS21で検出された顔領域に含まれる顔から、同一人物の顔を検出する。例えば、制御部3は、それぞれの顔領域について、上述した評価値を演算し、算出された評価値同士の合致度が所定の値より大きい顔領域に対応する顔を同一人物の顔として検出する。顔領域の検出位置に基づいて評価値を設定する場合には、画像中心から離れている位置にある顔領域ほど評価値の合致度が低くなることが予想される。従って、制御部3が、顔領域の検出位置に応じて、合致度と比較する上記所定の値を変更するようにしてもよい。なお、制御部3が、顔領域に含まれる顔の特徴量の合致度に基づいて、同一人物の顔を検出するようにしてもよい。図4(B)に示す例では、画像Lにおける人物Bの顔と画像Rにおける人物Bの顔とが同一人物の顔として検出され、画像Lにおける人物Cの顔と画像Rにおける人物Cの顔とが同一人物の顔として検出される。すなわち、人物Bに対応する顔領域の組と人物Cに対応する顔領域の組とが、同一人物の顔に対応する顔領域の組として検出される。
【0028】
次に、ステップS23において、制御部3が、上記ステップS21の処理で検出された複数の顔領域の中から、主被写体を選択する。制御部3は、それぞれの顔領域に対して評価値を設定し、最も評価値が高い顔領域を主被写体として選択する。
ステップS23においては、制御部3が、上記ステップS22の処理によって検出された同一人物の顔に対応する顔領域に対して、同一人物の顔として検出されなかった顔に対応する顔領域の評価値よりも高い評価値を設定するようにしてもよい。これにより、同一人物の顔として検出された顔に対応する顔領域を優先的に主被写体として選択することができる。なお、制御部3は、同一人物の顔に対応する顔領域として検出された顔領域が複数組ある場合には、顔領域の評価値の大きさに基づいて、いずれかの顔領域の組を主被写体として選択する。例えば、制御部3は、図4(B)中に示す人物B、Cそれぞれについての顔領域の組のうち、顔領域の大きさが大きい人物Bについての顔領域の組を主被写体として選択する。
【0029】
次に、ステップS24において、制御部3が、表示部5に指示して、映像信号処理部33が出力した画像信号を表示画面上に表示させる。そして、この表示画面上に、上記ステップS23において選択された主被写体を指標として表示する。これによって、ユーザが、主被写体となる顔領域を認識できるようになる。例えば、表示部5は、図4(C)中の画像L中に、主被写体である人物Bの顔領域を太線の矩形の枠で囲って指標として表示する。続いて、ステップS25において、制御部3が、上記ステップS23の処理によって選択された主被写体が、両撮像光学系からの画像中に同一人物として存在するかを判断する。制御部3が、主被写体が、両撮像光学系からの画像信号中に同一人物として存在すると判断した場合は、ステップS26に進む。制御部3が、主被写体が、両撮像光学系からの画像信号中に同一人物として存在しないと判断した場合は、ステップS27に進む。
【0030】
ステップS26において、制御部3は、上記ステップS23において選択された主被写体を両撮像光学系についての指標として決定する。制御部3は、例えば、図4(C)中に示される、主被写体である人物Bの顔領域を示す太線の矩形の枠を、第1の撮像光学系1、第2の撮像光学系2それぞれの指標として決定する。ステップS27においては、制御部3は、ステップ23で選択された主被写体の顔領域の座標を検出する。そして、ステップ28において、制御部3は、主被写体が選択されていない方の撮像光学系から得られた画像における、上記ステップS27において検出された座標と同じ座標の画像領域を、該撮像光学系についての指標として決定する。上記の実施例2によれば、例えば、各々の撮像光学系が、同一人物に対応する顔領域を主被写体として選択し、選択した主被写体を指標とすることができる。従って、各々の撮像光学系が、同じ人物を主被写体としてAE処理及びAF処理の対象とすることができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 第1の撮像光学系
2 第2の撮像光学系
3 制御部
4 顔検出部
5 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1、第2の撮像光学系と、
前記第1、第2の撮像光学系を通過した光像から各々画像信号を取得する第1、第2の撮像手段と、
前記第1、第2の撮像光学系の焦点調節処理を行う第1、第2の焦点調節手段と、
取得した画像信号に基づいて、合焦すべき被写体領域を検出する領域検出手段と、
前記焦点調節処理のための指標を決定する指標決定手段とを備え、
前記指標決定手段は、前記第1の撮像手段によって取得した画像信号に基づいて検出された合焦すべき被写体領域から第1の指標を決定するとともに、当該第1の指標に基づいて前記第2の撮像光学系の焦点調節のための第2の指標を決定することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記第1、第2の指標を前記第1、2の撮像手段で取得した画像信号と関連付けて記憶手段に記憶させる記憶制御手段を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記指標決定手段が、前記第1の指標として決定された被写体領域の座標に対応する第2の撮像手段で取得した画像信号の座標を前記第2の指標として決定する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記指標決定手段が、前記第1、第2の撮像光学系について検出された合焦すべき被写体領域から、同一人物に対応する顔領域を検出し、検出された同一人物に対応する顔領域を前記第1及び第2の指標として決定する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記指標決定手段が、前記第1、第2の撮像光学系について検出された合焦すべき被写体領域について評価値を演算し、演算された評価値の合致度に基づいて、前記同一人物に対応する顔領域を検出する
ことを特徴とする請求項4に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記領域検出手段が、前記検出した合焦すべき被写体領域に含まれる人物の顔の特徴量を出力し、
前記指標決定手段が、前記出力された特徴量に基づいて、前記同一人物に対応する顔領域を検出する
ことを特徴とする請求項4に記載の撮像装置。
【請求項7】
第1、第2の撮像光学系を備えた撮像装置の制御方法であって、
前記第1、第2の撮像光学系を通過した光像から各々画像信号を取得する工程と、
取得した画像信号に基づいて、合焦すべき被写体領域を検出する工程と、
前記第1、第2の撮像光学系の焦点調節処理のための指標を決定する工程とを有し、
前記指標を決定する工程は、前記取得した画像信号に基づいて検出された合焦すべき被写体領域から第1の指標を決定するとともに、当該第1の指標に基づいて前記第2の撮像光学系の焦点調節のための第2の指標を決定することを特徴とする撮像装置の制御方法。
【請求項8】
請求項7に記載した撮像装置の制御方法をコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−17754(P2011−17754A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−160566(P2009−160566)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】