説明

撮像装置、画像補正方法およびプログラム

【課題】 多視点の撮像装置において、大きな領域の画素欠陥を良好に補正する。
【解決手段】S1では、第1撮像部2aまたは第2撮像部2bの撮像した画像である補正対象画像I1から、欠陥領域を特定する。S2では、欠陥領域を包含する所定形状の領域を探索領域とする。次に、第2撮像部2b(基準撮像系)の撮像した画像である基準画像I2のうち、第1撮像部1b・第2撮像部2bの撮像範囲が融合する共通領域を走査して、探索領域の欠陥領域以外の部分領域の色情報と一致する色情報を有する基準画像内の領域(対応領域)を探索する。S3では、基準画像I2から対応領域を抽出する。S4では、欠陥領域を対応領域で置換することで補正対象画像I1を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多視点から画像を取得可能な撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、画素欠陥のアドレスを記憶し、周辺画素信号を平均化して欠陥画素を補正する。
【0003】
特許文献2では、欠陥画素の周辺画素について、補正処理に使用可否の情報テーブルを持ち、加算平均しやすい個数を選択することで処理を簡略化する。
【0004】
特許文献3では、画素値の傾きから孤立点を検出し、それを画素欠陥とみなして補正する。
【特許文献1】特開昭59−56768号公報
【特許文献2】特開平11−191866号公報
【特許文献3】特開2005−236749号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
撮像素子の画素欠陥や光学系内のゴミ付着により、撮影画像に欠陥領域が生じる場合があるが、特に多視点の撮像装置にそれが生じると、立体画像を視覚したときに視野闘争が生じ、目の疲労を誘発する。
【0006】
従来技術の隣接画素情報による補正を多視点の撮像装置に適用し、欠陥画素を補正しようとすると、ゴミ付着による陰りなどで生じる比較的大きな領域の画素欠陥の補正誤差が大きくなり、2D画像以上に欠陥画素が目立ってしまう。
【0007】
本発明は、多視点の撮像装置において、大きな領域の画素欠陥を良好に補正することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る撮像装置は、所望の基準光学系および基準光学系以外の1または複数の補正対象光学系の各々を介して結像した被写体像を撮像素子により光電変換して複数の画像を出力する撮像部と、撮像部の補正対象光学系を介して撮像素子の撮影した画像である補正対象画像から、欠陥領域を特定する欠陥領域特定部と、撮像部の基準光学系を介して撮像素子の撮影した画像である基準画像から、欠陥領域に対応する領域を特定する対応領域特定部と、対応領域特定部が基準画像から特定した対応領域に基づいて欠陥領域を補正する補正部と、を備える撮像装置。
【0009】
対応領域特定部は、補正対象画像の欠陥領域の周辺領域と基準画像とをマッチングすることで対応領域を特定する。
【0010】
こうすることで、撮影距離の違いや光軸変動により対応領域が変動しても、その都度破綻なく補正できる。
【0011】
本発明に係る画像補正方法は、所望の基準光学系および基準光学系以外の1または複数の補正対象光学系の各々を介して結像した被写体像を撮像素子により光電変換して複数の画像を出力する撮像部を備えた撮像装置が、撮像部の補正対象光学系を介して撮像素子の撮影した画像である補正対象画像から、欠陥領域を特定するステップと、撮像部の基準光学系を介して撮像素子の撮影した画像である基準画像から、欠陥領域に対応する領域を特定するステップと、基準画像から特定した対応領域に基づいて欠陥領域を補正するステップと、を実行する。
【0012】
この画像補正方法を撮像装置に実行させるためのプログラムも本発明に含まれる。
【発明の効果】
【0013】
ゴミなどによる大きな画像欠陥があっても、立体画像に破綻が生じないような補正ができ、観者に違和感なく疲れにくい良好な立体画像を視覚させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1はカメラ1の電気的構成を示す。第1撮像部2aは、レンズ光軸L1に沿って配列された第1ズームレンズ11、第1絞り12、第1フォーカスレンズ13、及び第1イメージセンサ14によって構成されている。第1ズームレンズ11にはレンズモータ15、が接続されている。モータ15の動作はCPU19によって制御され、モータ15の実際の駆動開始および終了はCPU19の制御に従ってモータドライバ29が指示する。
【0015】
レンズモータ15は、操作部9からのズーム操作に応じて、第1ズームレンズ11をレンズ光軸L1に沿ってTELE側(繰り出し側)、或いはWIDE側(繰り込み側)に移動させ、ズーム倍率を変化させる。CPU19は、AE(Auto Exposure)動作時にドライバを制御して第1絞り12の開口値(絞り値)を変化させて光束を制限し、露出調整を行う。CPU19は、AF(Auto Focus)動作時にドライバを制御して第1フォーカスレンズ13をレンズ光軸L1に沿ってNEAR側(繰り出し側)、或いはINF側(繰り込み側)に移動させて合焦位置を変え、ピント調整を行う。
【0016】
第1イメージセンサ14は、CCDやCMOSなどの固体撮像素子で構成され、第1ズームレンズ11、第1絞り12、及び第1フォーカスレンズ13によって結像された被写体光を受光し、受光素子に受光量に応じた光電荷を蓄積する。第1イメージセンサ14の光電荷蓄積・転送動作は、図示しないタイミングジェネレータ(TG)によって制御され、TGから入力されるタイミング信号(クロックパルス)により、電子シャッタ速度(光電荷蓄積時間)が決定される。第1イメージセンサ14は、撮影モード時には、1画面分の画像信号を所定周期ごとに取得し、順次、撮像回路28aに入力する。
【0017】
第2撮像部2bは、第1撮像部2aと同一の構成であり、レンズモータ24が接続された第2ズームレンズ20、第2絞り21、第2フォーカスレンズ22、第2イメージセンサ23によって構成されている。モータ24の動作はCPU19およびモータドライバ29によって制御される。第1撮像部2aと第2撮像部2bとは、基本的にTGのタイミング信号に連動して動作を行うが、各々個別に動作させることも可能となっている。
【0018】
第1及び第2イメージセンサ14,23から出力された撮像信号は、それぞれ撮像回路28a、b(まとめて撮像回路28と表記)に含まれる相関二重サンプリング回路(CDS)に入力される。CDSは、第1及び第2イメージセンサ14,23の各受光素子の蓄積電荷量に正確に対応したR,G,Bの画像データを、撮像回路28に含まれる増幅器(AMP)に入力する。AMPは、入力された画像データを増幅し、撮像回路28に含まれるA/D変換器に入力する。A/D変換器は、入力された画像データをアナログからデジタルに変換する。撮像回路28に含まれるCDS、AMP、A/D変換器を通して、第1イメージセンサ14の撮像信号は第1画像データ(左眼用画像データ)として、第2イメージセンサ23の撮像信号は第2画像データ(右眼用画像データ)として出力される。
【0019】
画像信号処理回路31は、階調変換、ホワイトバランス補正、γ補正処理などの各種画像処理をA/D変換器から入力された第1及び第2画像データに施す。フレームメモリ32は、画像信号処理回路31で各種画像処理が施された第1及び第2画像データを一時的に格納する。
【0020】
評価値算出回路33は、フレームメモリ32に格納された第1及び第2画像データの各々からAF評価値及びAE評価値を算出する。AF評価値は、各画像データの全領域又は所定領域(例えば中央部)について輝度値の高周波成分を積算することにより算出され、画像の鮮鋭度を表す。輝度値の高周波成分とは、隣接する画素間の輝度差(コントラスト)を所定領域内について足し合わせたものである。また、AE評価値は、各画像データの全領域又は所定領域(例えば中央部)について輝度値を積算することにより算出され、画像の明るさを表す。AF評価値及びAE評価値は、公知のAF動作(自動焦点制御)及びAE動作(自動露出制御)においてそれぞれ使用される。
【0021】
立体画像処理回路34は、フレームメモリ32に格納されている第1及び第2画像データを、表示部10が立体表示を行うための立体画像データに合成する。撮影モード時に表示部10が電子ビューファインダとして使用される際には、立体画像処理回路34によって合成された立体画像データが、表示制御部35を介して表示部10にスルー画として表示される。
【0022】
圧縮伸張処理回路36は、フレームメモリ32に記憶された第1及び第2画像データに対して、JPEG方式等の圧縮形式により圧縮処理を施す。メモリ制御部37は、圧縮伸張処理回路36によって圧縮処理された各画像データをメモリカード等の記録媒体38に記録させる。
【0023】
このようにして記録媒体38に記録された第1及び第2画像データを表示部10に再生表示する場合、記録媒体38の各画像データは、メモリ制御部37によって読み出され、圧縮伸張処理回路36によって伸張処理が行われ、立体画像処理回路34によって立体画像データに変換された後、表示制御部35を介して表示部10に再生画像として表示される。
【0024】
表示部10の詳細な構造は図示しないが、表示部10は、その表面にパララックスバリア表示層を備えている。表示部10は、立体表示を行う際に、パララックスバリア表示層に光透過部と光遮蔽部とが交互に所定のピッチで並んだパターンからなるパララックスバリアを発生させるとともに、その下層の画像表示面に左右の像を示す短冊状の画像断片を交互に配列して表示することで擬似的な立体視を可能にする。なお、第1撮像部2aおよび第2撮像部2bから得られた平面画像を短冊状の画像断片に再構成してこれらを交互に配列せず、第1撮像部2aまたは第2撮像部2bの一方から得られた右あるいは左の像のみを短冊状の画像断片に再構成してこれらを交互に配列すれば、観者の右目も左目も同一の平面画像を視覚することになる。
【0025】
CPU19は、立体カメラ1の全体の動作を統括的に制御する。CPU19には、前述のシャッタボタン5、操作部9のほか、不揮発性メモリであるEEPROM39が接続されている。EEPROM39は、各種制御用のプログラムや設定情報などを格納している。CPU19は、このプログラムや設定情報に基づいて各種処理を実行する。
【0026】
シャッタボタン5は2段押しのスイッチ構造となっている。撮影モード中に、シャッタボタン5が軽く押圧(半押し)されると、CPU19はAF動作及びAE動作を開始し撮影準備処理がなされる。この状態でさらにシャッタボタン5が強く押圧(全押し)されると、CPU19は撮影処理を開始し、1画面分の第1及び第2画像データがフレームメモリ32から記録媒体38に転送されて記録される。
【0027】
AF動作は、CPU19がドライバを制御して第1及び第2フォーカスレンズ13,22をそれぞれ所定方向に移動させながら、順次に得られる第1及び第2画像データの各々から評価値算出回路33が算出したAF評価値の最大値を求めることによりなされる。AE動作は、AF動作が完了した後、評価値算出回路33が算出したAE評価値に基づいて、CPU19が、第1及び第2絞り12,21の開口値(絞り値)、及び第1及び第2イメージセンサ14,23の電子シャッタ速度をEEPROM39に予め格納されたプログラム線図に従って設定することによりなされる。
【0028】
図2はCPU19が実行を制御する補正処理のフローチャートである。この処理をCPU19に実行させるプログラムはEEPROM39に記憶されている。
【0029】
S1では、第1撮像部2aまたは第2撮像部2bの撮像した画像である補正対象画像から、欠陥領域を特定する。欠陥領域の特定の仕方は公知のものが採用でき、例えば輝度が所定の値に達しない閉じ領域を欠陥領域とする。あるいは、第1撮像部2a・第2撮像部2bがそれぞれ撮像した画像同士を比較し、両画像のうち相対的に明るさ(輝度)が暗い領域を欠陥領域としてもよい。あるいは、特定した欠陥画素の位置情報をEEPROM39に記憶しておき、以後その位置情報で示される領域を欠陥領域とするような学習機能を操作部9の操作でオン・オフできてもよい。
【0030】
以下では説明の簡略のため、第1撮像部2aが補正対象撮像系、第2撮像部2bが基準撮像系とするが、両者が入れ代わってもよい。要するに、欠陥画素を出力した撮像系が補正対象撮像系であり、欠陥画素が存在しない画像を出力した撮像系が基準撮像系である。補正対象撮像系、基準撮像系はそれぞれ単一である必要はなく、複数でもよい。図3では第1撮像部2aが撮影した補正対象画像I1のうち黒くつぶれた領域Pが補正対象領域であるものとする。
【0031】
S2では、欠陥領域を包含する所定形状の領域を探索領域とする。例えば、欠陥領域を包含する矩形領域を探索領域とする。図3では領域Pが補正対象領域であるため、図4に示すように領域Pを含む矩形領域Dが探索領域となる。
【0032】
次に、第2撮像部2b(基準撮像系)の撮像した画像である基準画像I2(図3)のうち、第1撮像部2a・第2撮像部2bの撮像範囲が融合する共通領域(図5の斜線部分)を走査して、探索領域の欠陥領域以外の部分領域の色情報と一致する色情報を有する基準画像内の領域(対応領域)を探索する(図4参照)。欠陥画素の位置情報が固定の場合でも、対応領域の位置情報は被写体距離や光軸誤差によって変化するので、撮影状況に応じてフォーカスレンズ13の位置やズームレンズ11の位置が変われば、共通領域も変わり、補正の都度走査が必要である。なお、「一致する」とは、完全に一致することの他、所定の確からしさで一致することも含むものとする。例えば、基準画像内の任意の位置に探索領域と同一形状・同一サイズの領域を設定し、その領域の色情報(色情報を表現する色座標はRGBやYCbCrなど任意)と探索領域の欠陥領域以外の部分領域の色情報との差分の絶対値の積算値を相関値と定義し、当該相関値が所定の値を下回る場合に両者が一致すると判断する。
【0033】
S3では、基準画像I2から対応領域を抽出する。対応領域が抽出できなかった場合は補正不能である旨のメッセージを表示部10に出力してもよい。
【0034】
S4では、欠陥領域を対応領域で置換することで補正対象画像I1を補正する(図6)。対応領域をそのままはめ込むと視点の相違から違和感が生じる可能性があるため、補正対象撮像系の視点に対応した歪み補正を対応領域に行ってから置換してもよい。
【0035】
以上の処理により、ゴミなどによる大きな画像欠陥があっても、立体画像に破綻が生じないような補正ができ、観者に違和感なく疲れにくい良好な立体画像を視覚させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】カメラのブロック図
【図2】補正処理のフローチャート
【図3】補正対象画像および基準画像の一例を示す図
【図4】探索領域の一例を示す図
【図5】共通領域を例示した図
【図6】補正の一例を示す図
【符号の説明】
【0037】
2a:第1撮像部、2b:第2撮像部、11:第1ズームレンズ、20:第2ズームレンズ、19:CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望の基準光学系および基準光学系以外の1または複数の補正対象光学系の各々を介して結像した被写体像を撮像素子により光電変換して複数の画像を出力する撮像部と、
前記撮像部の補正対象光学系を介して前記撮像素子の撮影した画像である補正対象画像から、欠陥領域を特定する欠陥領域特定部と、
前記撮像部の基準光学系を介して前記撮像素子の撮影した画像である基準画像から、前記欠陥領域に対応する領域を特定する対応領域特定部と、
前記対応領域特定部が前記基準画像から特定した対応領域に基づいて前記欠陥領域を補正する補正部と、
を備える撮像装置。
【請求項2】
前記対応領域特定部は、前記補正対象画像の欠陥領域の周辺領域と前記基準画像とをマッチングすることで前記対応領域を特定する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
所望の基準光学系および基準光学系以外の1または複数の補正対象光学系の各々を介して結像した被写体像を撮像素子により光電変換して複数の画像を出力する撮像部を備えた撮像装置が、
前記撮像部の補正対象光学系を介して前記撮像素子の撮影した画像である補正対象画像から、欠陥領域を特定するステップと、
前記撮像部の基準光学系を介して前記撮像素子の撮影した画像である基準画像から、前記欠陥領域に対応する領域を特定するステップと、
前記基準画像から特定した対応領域に基づいて前記欠陥領域を補正するステップと、
を実行する画像補正方法。
【請求項4】
請求項3に記載の画像補正方法を撮像装置に実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−206521(P2010−206521A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49747(P2009−49747)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.EEPROM
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】