説明

撮像装置およびこれを備える顕微鏡システム

【課題】撮影に要する時間を短縮可能としながら、色再現性のより高い画像を生成することができる技術を提供する。
【解決手段】撮像装置100は、被写体の分光特性を計測する分光計測部120と、被写体像を複数の色に色分解して撮影し、複数セットの分光画像を生成可能な分光画像撮像部101と、分光画像撮像部101で色分解して撮影する際の色分解特性を、分光計測部120で計測して得られた被写体の分光特性に基づいて決定する色分解特性決定部であって、分光画像撮像部101で色分解して撮影する際の色分解数と、色分解それぞれに対応する分光帯域とを決定する、色分解特性決定部134とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、被写体の分光情報を収集してより正確な色再現を可能とする撮像装置およびこれを用いた顕微鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
撮像装置において、4以上の数で色分解して撮影し、再現可能な色域を拡大してより高い色再現性を得る技術が知られている。また、マルチバンドで撮影を行うことにより被写体の分光特性を得ることを可能とし、観察者メタメリズムの影響や、撮影時に被写体を照明していた照明光の分光特性の影響を排除した画像を再現する技術が知られている。
【0003】
特許文献1には、色分類装置が開示される。この色分類装置は、それぞれが分光透過特性の異なる複数のフィルタを有する検査用フィルタの群と測定用フィルタの群を備える。検査用フィルタを切り換えながら対象物の測定を行うことにより、対象物の分光特性が得られる。そして、検査用フィルタを用いて検出された結果に基づき、測定用フィルタの群中、有効な測定用フィルタが切り換え選択される。
【0004】
特許文献2には、第1の空間解像度と第1の波長解像度とを有する第1の画像センサと、第1の画像センサの有する空間解像度よりも高い第2の空間解像度と、第1の画像センサの有する第1の波長解像度よりも低い第2の波長解像度とを有する分光画像生成装置が開示される。この分光画像生成装置では、第1の画像センサで得た画像データから変換マトリクスが生成される。そして、第2の画像センサで得た画像データに変換マトリクスを作用させて分光画像を得る構成が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−61244号公報
【特許文献2】特開2009−237817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
より高い精度の色再現性を得るためには、より多い数で色分解をすることが有効である。しかし、色数を増すと、1画素あたりの色の情報量が増すので、画像データのデータ量が増す。また、色分解に際してフィルタを切り換えながら撮影を繰り返し行う方法では、色数を増すと撮影の回数も増す。したがって、一連の撮影に要する時間が増し、動きのある被写体の撮影が難しくなる。
【0007】
特許文献1に開示されるものは、検査用のフィルタを用いて検査して得られた対象物の分光特性をもとに有効な測定用フィルタが選択される構成を有する。しかし、対象物の分光特性を得る際に、分光透過特性の異なる複数の検査用フィルタを切り換えながら検査を行う必要があるので、測定が行われる前の、検査の段階で時間を要する。
【0008】
特許文献2には、空間解像度および波長解像度の異なる二つの画像センサを用いる構成が開示される。より高い波長解像度を有する第1のセンサで得られた画像データから変換マトリクスが生成される。第1の画像センサの空間解像度よりも高く、第1の画像センサの波長解像度よりも低い波長解像度を有する第2の画像センサで得た画像データに対して上記変換マトリクスを作用させることにより、空間解像度および波長解像度の高い分光画像を得る。特許文献2の技術では、第1の画像センサは被写体の分光特性を得るために用いられ、第2の画像センサは記録用の画像を得るために用いられる。第2の画像センサの波長解像度は第1の画像センサの波長解像度よりも低いため、第2の画像センサのハードウェア構成を単純化することができる。しかし、生成される画像データのデータ量が増すことに変わりはない。また、色情報のより少ない画像データから、色情報のより多い画像データを生成する際に、多くの演算を必要とする。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、撮影に要する時間を短縮し、画像データのデータ量を削減しながら、色再現性のより高い画像を生成可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の代表的な一例を示せば以下の通りである。すなわち、撮像装置が、
被写体の分光特性を計測する分光計測部と、
被写体像を複数の色に色分解して撮影し、複数セットの分光画像を生成可能な分光画像撮像部と、
前記分光画像撮像部で色分解して撮影する際の色分解特性を、前記分光計測部で計測して得られた被写体の分光特性に基づいて決定する色分解特性決定部であって、前記分光画像撮像部で色分解して撮影する際の色分解数と、前記色分解それぞれに対応する分光帯域とを決定する、色分解特性決定部と、
を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、撮影に要する時間を短縮し、画像データのデータ量を削減しながら、色再現性のより高い画像を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る撮像装置の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る撮像装置の内部構成を示すブロック図である。
【図3】分光計測部で得られた被写体の分光特性から色分解特性を決定する際の手順を概念的に説明する図である。
【図4】コントローラで実行される撮影制御手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第1の実施の形態の変形例に係る撮像装置の内部構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る撮像装置の構成を示す図であり、顕微鏡に装着される例を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る撮像装置の内部構成を、顕微鏡の構成要素の一部とともに示すブロック図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態の変形例に係る撮像装置の内部構成を、顕微鏡の構成要素の一部とともに示すブロック図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態に係る撮像装置の内部構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の第4の実施の形態に係る撮像装置の構成を示す斜視図である。
【図11】フィルターターレットに内蔵されるターレット板の構成を概略的に示す斜視図である。
【図12】本発明の第4の実施の形態に係る撮像装置の内部構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
− 第1の実施の形態 −
第1の実施の形態においては、本発明を静止画撮像装置に適用する例を説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係る撮像装置100の概略的構成を説明する図である。図2は、撮像装置100の内部構成を概略的に説明するブロック図である。撮像装置100は、撮像部102と、チューナブルフィルタ(図2ではTFと表記される)110と、撮影レンズ104と、分光計測部120と、コントローラ130とを備える。
【0014】
撮像部102は、シャッタと、撮像素子と、撮像素子から出力される画像信号を処理して画像データを生成する画像処理部とを備える。撮影レンズ104は、被写体の像を撮像部102内の撮像素子の受光面上に形成する。撮影レンズ104は、撮像部102に着脱不能に固定されていても、交換可能に装着されていてもよい。
【0015】
撮影レンズ104と撮像部102との間にチューナブルフィルタ110が介装される。チューナブルフィルタ110は、液晶チューナブルフィルタまたは音響光学可変波長フィルタを用いることが可能である。チューナブルフィルタは、分光透過特性可変のバンドパスフィルタである。つまり、チューナブルフィルタ110は、バンドパス特性、すなわち透過可能な光の波長帯域の幅とその中心波長とを可変に構成されるバンドパスフィルタである。
【0016】
以上の撮像部102、チューナブルフィルタ110、撮影レンズ104によって分光画像撮像部が構成される。以下では、分光画像撮像部101と称する。つまり、チューナブルフィルタ110の分光透過特性を変化させながら撮像部102で撮影することを複数回行うことにより、撮影レンズ104により形成される被写体像を複数の色に色分解して撮影して複数セットの分光画像を生成することが可能となる。
【0017】
分光計測部120は、分光センサ124と、集光レンズ122とを備える。分光センサ124は、被写体の分光放射輝度特性を計測可能に構成される。一例としては、入射光を平行光にしてグレーティング(回折格子)に導き、回折されて分光された光をラインセンサで受光し、各画素から出力される信号の大きさから分光放射輝度を計測するものが利用可能である。以下ではこのような分光計測の方式を回折分光計測方式と称する。あるいは、画素が二次元配列されたエリアセンサの画素上に多くの色数のオンチップカラーフィルタを形成し、各画素から出力される信号の大きさから分光放射輝度を計測することも可能である。すなわち、通常の単板式イメージセンサは、二次元配列された画素上に青、緑、赤等のオンチップカラーフィルタがベイヤ配列等の方式で規則正しく配列されて構成されるが、このオンチップカラーフィルタの色数を増すことにより、分光計測をすることができる。その際の色数については、撮像装置100の仕様等に応じて様々に設定可能である。以下ではこのような分光計測方式をイメージャ分光計測方式と称する。イメージャ分光計測方式の場合、例えば横方向に8色、縦方向に8色の合計64色のオンチップカラーフィルタが形成された64の画素を一つの分光計測ユニットとして、その分光計測ユニットをさらに縦、横に並べて多点計測が可能な分光測光用の素子を形成することも可能である。
【0018】
集光レンズ122は、分光計測部120の測定画角(測定視野)を画定する。分光計測部120の測定視野は、撮影レンズ104の視野と一致させることが可能である。あるいは、撮影レンズ104の視野内の一部で被写体の分光放射輝度特性を計測するように集光レンズ122の焦点距離などが定められていてもよい。分光センサ124がイメージャ分光計測方式のもので、上記のように多点計測が可能に構成されるものである場合、測定視野内の複数の位置それぞれにおいて被写体の分光放射輝度特性を計測することも可能である。
【0019】
以上では分光計測部120が被写体の分光放射輝度特性を計測するものとして説明をしたが、例えば分光分布が既知の照明光を被写体に照射して分光計測部120で計測を行うことにより、被写体の分光反射率特性を計測することも可能である。
【0020】
コントローラ130は、例えばパーソナル・コンピュータ(PC)と、PC上で実行されるソフトウェアとによって構成されていてもよいし、専用のハードウェアによって構成されていてもよい。コントローラ130は、計測制御部132と、色分解特性決定部134と、記憶部136と、制御部138と、撮像制御部140とを備える。
【0021】
制御部138は、計測制御部132、色分解特性決定部134、および撮像制御部140において以下に説明する動作が行われる際の動作タイミングを制御する。撮像部102での撮影動作に先立ち、制御部138から計測制御部132に対して計測開始の制御信号が発せられる。同じく、制御部138から色分解特性決定部134に色分解特性決定処理開始の制御信号が発せられる。この制御信号を受け、計測制御部132は分光計測部120に制御信号を発する。その結果、分光計測部120では被写体の分光特性の計測が行われる。分光計測部120での計測結果に基づき、被写体分光情報が分光計測部120から色分解特性決定部134に出力される。
【0022】
色分解特性決定部134は、分光計測部120から受信した被写体分光情報に基づき、色分解特性を決定する。この色分解特性は、分光画像撮像部101において被写体像を複数の色に色分解して撮影し、複数セットの分光画像を生成する際の色分解数とそれぞれの色分解に対応して分光画像撮像部101で設定される分光波長帯域とに関するものである。
【0023】
ここで図3を参照し、色分解特性決定部134で色分解特性、すなわち色分解数とそれぞれの色分解に対応して分光画像撮像部101で設定される分光波長帯域とを決定する際の手順について説明する。図3は、分光計測部120で計測して得られた被写体の分光強度の例を示す図であり、横軸には波長が、縦軸には分光強度の相対値が示されている。図3に例示される分光強度曲線は二つのピークP1およびP2を有する。ピークP1は波長540nm(緑色)の近傍に位置し、ピークP2は波長600nm(橙色)の近傍に位置する。ピークP1の相対強度は1を、ピークP2の相対強度は0.5を、それぞれ示している。図3の例ではピークP1の前後の波長域においてプロファイルは比較的急峻なものとなっており、ピークP2の前後の波長域においてプロファイルは比較的なだらかなものとなっている。
【0024】
色分解特性決定部134は、図3に例示される分光強度曲線からピーク位置または谷(ディップ)の位置を特定する。ピーク位置を特定するか、ディップ位置を特定するかは、被写体の種類に応じて適宜選択することが可能である。例えば、照明光によって照明された一般的な被写体を撮影する場合にはピーク位置を特定することが望ましい。一方、ステンドグラスや顕微鏡のプレパラートがその裏面から照明されたような、透過照明された被写体である場合には、ディップ位置を中心として特定した方が色の特徴を捉えやすい。ここでは被写体が一般的なものであるとして、ピーク位置を特定する例について説明する。
【0025】
図3に示される例では分光強度曲線を解析して二つのピークP1およびP2が検出される。次に、それぞれのピーク値(P1:1 P2:0.5)をもとに下限値LL1およびLL2が設定される。一例として、下限値LL1は、ピークP1のピーク値1に0.3を乗じた値をピーク値1から減じた値である0.7に設定される。下限値LL2も同様に、ピークP2のピーク値0.5に0.3を乗じた値をピーク値0.5から減じた値である0.35に設定される。つまり、ピーク値の70%が下限値として導出される。この下限値を導出するには、様々の方法を適用可能である。例えば、各ピーク値から一律の値を減じて下限値を求めるものであってもよい。
【0026】
分光強度曲線中、相対強度が下限値LL1を超している波長範囲が帯域1として設定される。帯域2も同様である。但し、図3の例では、ピークP2よりも短波長側に存在するディップDの底の値(ローカルミニマム)が下限値LL2よりも大きいので下限値LL2と交差する点はピークP2の近傍には見つからない。このような場合には、さらに探索範囲を広げて、ピークP2の値を超す位置を帯域2の一端とすることが可能である。図3にはそのような例が示されている。一方、ピークP2よりも長波長側に位置する、帯域2の他端については、下限値LL2と交差する位置が図3の例では見つかり、帯域2が設定される。このようにして、図3に示される例では、帯域1として約510nmから550nmまでの約40nmの幅が設定され、帯域2として約560nmから640nmの約80nmの幅が設定される。
【0027】
以上のようにして、被写体の色を特徴付ける、分光強度のピークP1、P2の位置が検出されるのに続き、ピークP1、P2それぞれの前後の波長領域においてスペクトル変化の緩急に応じて帯域が設定される。つまり、スペクトル変化が比較的急である部分に対しては比較的狭い帯域幅(帯域幅1)が設定される。そして、スペクトル変化が比較的緩やかである部分に対しては比較的広い帯域幅(帯域幅2)が設定される。
【0028】
スペクトルパターンによっては、上述したアルゴリズムに基づいて帯域を設定すると、複数の帯域がオーバーラップする可能性がある。このような場合、複数の帯域をオーバーラップさせたままとしておいてもよいし、相隣するピーク波長間の中間の波長で帯域を分割し、オーバーラップしないようにしてもよい。
【0029】
どの帯域にも属さない波長領域については、別の帯域として割り当ててもよいし、不要な帯域として、それらの波長領域に対応する撮影は行わないようにすることも可能である。
【0030】
分光強度のディップ位置を検出して帯域幅を設定する場合には、下限値を設定するのに代えて、各ディップの値(ローカルミニマム値)をもとに上限値を設定し、分光強度の曲線が上限値と交差する波長でもって帯域幅を設置することができる。この場合、検出された各ディップのローカルミニマム値に一定の値(正の値)を加算したものを上限値としてもよいし、各ローカルミニマム値に1よりも大きい数を乗じて得た値を上限値としてもよい。設定される上限値が大きすぎて導出される帯域幅が広くなりすぎたり、分光強度曲線と上限値との交点が見つからなかったりした場合には上限値を漸次減じて帯域幅を導出しなおすようにしてもよい。
【0031】
色分解特性決定部134は、以上のようにして色分解数n(上記例ではn=2)と、それぞれの色分解撮影に対応する分光波長帯域(上記例では帯域幅1、帯域幅2)を決定する。以上の説明から明らかなように、被写体の分光特性によって撮影回数nは変化する。極端な例では、撮影時に被写体を照明する照明光が単波長あるいはそれに近い光であったり、被写体が単色や無彩色、あるいはそれに近いものであったりする場合には、撮影回数は1回となることもある。つまり、撮影に際して必要な回数、そして必要な分光波長帯域が設定されるので、不要な撮影動作や画像データの増加を抑制することが可能となる。
【0032】
色分解特性決定部134は、以上のようにして決定された色分解特性、すなわち、色分解数nと分光波長帯域1、分光波長帯域2、…、分光波長帯域nとを特定可能な情報を含む色分解特性情報を撮像制御部140に出力する。これと相前後して、制御部138から撮像制御部140に撮影動作開始の制御信号が発せられる。この制御信号を受け、撮像制御部140は、色分解特性決定部134から受信した色分解特性情報に基づいて撮像部102およびチューナブルフィルタ110のそれぞれに制御信号を出力する。チューナブルフィルタ110は、撮像制御部140から受信した制御信号に基づいて分光透過特性を変化させる。
【0033】
その結果、分光画像撮像部101では以下のように撮影動作が行われる。すなわち、チューナブルフィルタ110の分光透過特性が分光波長帯域1に対応するように設定されて一回目の撮影動作が行われる。続いて、チューナブルフィルタ110の分光透過特性が分光波長帯域2に対応するように設定されて二回目の撮影動作が行われる。以下、同様にしてチューナブルフィルタ110の分光透過特性の設定と撮影動作とが行われ、最後に、チューナブルフィルタ110の分光透過特性が分光波長帯域nに対応するように設定されてn回目の撮影動作が行われる。このようにして、分光画像撮像部101では異なる分光波長帯域を設定しながらn回の撮影動作が行われる。先にも説明したように、nは1のときもあるし、1を超す値であることもある。
【0034】
n回の撮影動作によって撮像部102で生成された画像データは、記憶部136に出力される。撮像制御部140により、この画像データにタグ情報が付加され、予め定められた命名規則に従ったファイル名が付与される。
【0035】
図4は、撮像装置100で撮影動作が行われる際にコントローラ130で実行される処理手順を説明する概略フローチャートである。図4に示される処理手順は、撮像装置100のユーザが撮影開始の操作をしたときに実行が開始される。
【0036】
S400においてコントローラ130は、分光計測開始の制御信号を分光計測部120に出力する。その結果、分光計測部120で分光計測動作が行われる。S400の処理が、図2における計測制御部132での処理に相当する。
【0037】
S402においてコントローラ130は、分光データを解析する。すなわち、分光計測部120で分光計測が行われて生成された被写体分光情報を分光計測部120から入力し、この被写体分光情報を解析する。続くS404においてコントローラ130は撮影時の分光特性、つまり先に説明した色分解特性を、図3を参照して説明した方法によって決定する。S402およびS404の処理が、図2における色分解特性決定部134での処理に相当する。
【0038】
S406においてコントローラ130は、フィルタの分光特性を切り換える。すなわち、S404で決定された色分解特性が得られるように、チューナブルフィルタ110の分光透過特性を制御する。コントローラ130はS408において、撮影・記録のための制御信号を撮像部102に出力する。S410においてコントローラ130は、全ての撮影を完了したか否かを判定し、この判定が否定される間、S406およびS408の処理を繰り返し行う。S410での判定が肯定されると処理はS412に進む。以上のS406、S408、S410の処理が、図2における撮像制御部140での処理に相当する。つまり、S406、S408での処理が色分解数nに対応する回数にわたり、繰り返し行われる。このときに、チューナブルフィルタ110の分光透過特性が順次切り替えられる。
【0039】
S410での判定が肯定された場合の分岐先であるS412においてコントローラ130は、一連の撮影動作で得られた全ての画像データをもとに分光画像データを生成して出力する処理を行う。この、分光画像データを出力する処理は、記憶部136に予め定められたファイルフォーマットで保存する処理、表示装置に表示する処理、他の情報処理装置等に出力する処理、印刷する処理等、様々な処理を含む。S410での分光画像データの出力処理の後、コントローラ130は一連の撮影処理手順を終える。
【0040】
以上に説明したように、本発明の第1の実施の形態によれば、分光計測部120で得られた被写体の分光特性に基づき、撮影に際しての色分解特性が決定される。この色分解特性に基づいて分光画像撮像部101で撮影が行われることにより、被写体の分光特性に応じた色分解数と、それらの色分解に対応する分光波長帯域での撮影が行われる。このようにして、被写体の分光特性を解析し、被写体の分光情報を取得するのに最適な色分解数および分光波長帯域に限定して撮影が行われるので、一連の撮影を完了するまでの時間を短縮することが可能となり、画像データの量も減じることが可能となる。加えて、画像データの量が減じられることにより、画像データの処理のための負荷や時間を減じることも可能となる。また、画像データの転送に要する時間も短縮することが可能となる。
【0041】
− 変形例 −
以上では、分光計測部120がいわゆる外光式の構成を有する例について説明したが、TTL式の構成を有するものであってもよい。その例について、図5を参照して説明する。図5において、図2に示されるものと同様の構成要素には同じ符号を付してその説明を省略し、図2に示される構成との違いを中心に説明をする。
【0042】
図5において、撮像装置100Aは、分光画像撮像部101Aと、分光計測部120Aと、コントローラ130とを備える。分光画像撮像部101Aは、撮影レンズ104、チューナブルフィルタ110、撮像部102に加えて、光路分割部材としてのハーフミラー106を備える。このハーフミラー106は、撮影レンズ104とチューナブルフィルタ110との間において撮影レンズ104を透過した被写体光の光路上に配置される。そして、一部の被写体光は分光計測部120Aに導かれ、残りの被写体光はチューナブルフィルタ110に導かれる。なお、ハーフミラー106を全反射ミラー、あるいはそれに準じたものとし、一眼レフレックスカメラのメインミラーのように、撮影準備動作時と露光動作時とで、被写体光が分光計測部120Aおよび撮像部102のいずれかに導かれるよう、光路を切り換え可能に構成されていてもよい。
【0043】
分光計測部120Aは、図2に示される分光計測部120が備えている集光レンズ122を備えておらず、ハーフミラー106によって導かれた被写体光を受光する構成となっている。分光センサ124としては、先に説明したイメージャ分光計測方式のものを用いることが望ましい。分光センサ124に入射する被写体光の光路を横切る位置に空間周波数低減用の光学部材126が配設される。この光学部材126は、光学的ローパスフィルタ等を利用可能である。分光センサ124が、二次元配列された画素上に例えば横方向に6画素、縦方向に6画素の、計36色のオンチップカラーフィルタが形成されて36の画素で1ユニットの分光センサが構成され、そのユニットがさらに二次元配列されて構成されるものとして説明する。これらの36の画素と、当該画素上に形成される36色のオンチップカラーフィルタとを備えて構成される1ユニットの分光センサには、均一に混合された光束が入射することがより正確な分光計測を行う上で望ましい。光学部材126は、各分光センサユニットに入射する被写体光が、それぞれ均一に混合された光束となるようにその光学特性が設定されていることが望ましい。
【0044】
ところで、撮像部102の受光エリア(イメージエリア)の大きさと分光センサ124の受光エリアの大きさとが異なる場合、再結像光学系等をハーフミラー106と分光計測部120Aとの間に配置することが望ましい。そのようにすることにより、分光センサ124の受光面上に形成される被写体像の大きさを、分光センサ124の受光エリアの大きさに応じて縮小または拡大することができる。
【0045】
また、分光センサ124として先に説明した回折分光計測方式のものを用いる場合、光学部材126としては拡散板を用いることができる。拡散板としては、ガラスや樹脂等の透明基板の表面上に細かい凹凸を設けて磨りガラス状としたものや、乳白色の光拡散物質を内部に分散させたガラスや樹脂等の板を利用可能である。
【0046】
分光計測部120Aは、被写体の分光特性を、分光画像撮像部101Aの撮影視野と略同一の範囲において計測可能に構成されていても(測光に例えると、全面測光、平均測光等に相当する)、分光画像撮像部101Aの撮影視野の一部の範囲において計測可能に構成されていても(測光に例えると、部分測光、中央部重点測光、スポット測光等に相当する)よい。特に、分光センサ124としてイメージャ分光計測方式のものを光学的ローパスフィルタとともに用いると、撮影状況に応じて撮影範囲内の任意の領域を手動または自動で選択し、選択された領域に対応する分光特性を計測する(測光に例えると、多分割測光に相当する)ことが可能である。例えば、背景の影響を排除して主要被写体の色再現性を重点的に高めたい場合には、主要被写体の存在する範囲の分光特性を分光計測部120Aで計測し、その計測結果に基づいて色分解特性決定部134は色分解特性を決定する処理をすることができる。
【0047】
図5に示される構成によれば、撮影レンズ104が別の焦点距離のものに交換されたり、変倍操作されたりした場合でも、分光計測部120Aでは画角の変化に応じて被写体の分光情報を正確に取得することができる。また、撮影距離(撮影倍率)が変化した場合であっても、分光計測部120Aの測定視野に視差(パララックス)を生じることが無い。加えて、撮影レンズ104の分光透過特性も含めた被写体分光情報を得ることが可能となる。
【0048】
− 第2の実施の形態 −
第2の実施の形態においては、本発明に係る撮像装置100Bを顕微鏡に組み込む例を説明する。図6は、顕微鏡600に撮像装置100Bが装着される様子を示す図である。図6において、第1の実施の形態の撮像装置100が備えるものと同様の構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。撮像装置100Bは、顕微鏡用撮像装置として構成され、分光センサ124と、チューナブルフィルタ110と、撮像部102と、コントローラ130とを備える。
【0049】
顕微鏡600は、対物レンズ604と、接眼レンズ630と、ステージ634と、光源640とを備える。ステージ634上に載置された試料SPCは光源640により試料SPCの裏面側から照明され、対物レンズ604および接眼レンズ630によって拡大された像を観察可能に構成される。
【0050】
図7は、撮像装置100Bの内部構成を、顕微鏡600の一部の構成要素とともに示すブロック図である。図7において、第1の実施の形態の撮像装置100が備えるものと同様の構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。撮像装置100Bは、分光画像撮像部101Bと、分光計測部120Bと、コントローラ130とを備える。分光画像撮像部101Bは、撮像部102と、チューナブルフィルタ(図7ではTFと表記される)110と、結像光学系108と、ハーフミラー106とを備える。チューナブルフィルタ110の分光透過特性を切り換えながら撮像部102で撮影することを複数回行うことにより、撮影レンズ104により形成される被写体像を複数の色に色分解して撮影して複数セットの分光画像を生成することが可能となる。分光計測部120Bは、光学部材126と、分光センサ124とを備える。
【0051】
顕微鏡600は、対物レンズ604透過した試料SPCからの光(以下ではこれを被写体光と称する)を分割し、接眼レンズ630および分光画像撮像部101Bの双方に導くためのハーフミラー632を備える。
【0052】
ハーフミラー632を透過し、分光画像撮像部101Bに入射した被写体光は、ハーフミラー106によって一部は分光計測部120Bに導かれ、残りは結像光学系108に導かれる。
【0053】
光学部材126は、ハーフミラー106によって導かれた被写体光を拡散するための拡散板であり、ガラスや樹脂等の透明基板の表面上に細かい凹凸を設けて磨りガラス状としたものや、乳白色の光拡散物質を分散させたガラスや樹脂等の板を利用可能である。
【0054】
分光センサ124は、回折分光計測方式、イメージャ分光計測方式、いずれの方式のものも利用可能である。分光センサ124は、被写体としての試料SPCの分光特性を、対物レンズ604と分光画像撮像部101Bとの組み合わせによって画定される撮影視野と略同一の範囲において計測可能に構成されていても、当該撮影視野の一部の範囲において計測可能に構成されていてもよい。いずれの場合においても、分光センサ124の受光面には光学部材126によって混合された被写体光の光束が入射する。つまり、分光計測部120Bの測定視野内の光が全て混合された光束が入射する。
【0055】
ハーフミラー106を透過した被写体光は、結像光学系108によって結像され、撮像部102の受光面上に被写体像、すなわち試料SPCの像が形成される。
【0056】
観察時、ユーザは接眼レンズ630を通して試料SPCの拡大像を観察し、視野の中央部に試料SPC中の重要部分が位置するようにステージ634を操作する。その後、ユーザが撮影のための操作をすると、コントローラ130は第1の実施の形態で説明したように分光画像撮像部101Bおよび分光計測部120Bを制御し、一連の撮影動作が行われる。すなわち、分光計測部120Bで得られた試料SPCの分光特性に基づき、撮影に際しての色分解特性が決定される。この色分解特性に基づいて分光画像撮像部101Bで撮影が行われることにより、被写体、すなわち試料SPCの分光特性に応じた色分解数と、それらの色分解に対応する分光波長帯域での撮影が行われる。このようにして、試料SPCの分光特性が解析され、被写体の分光情報を取得するのに最適な色分解数および分光波長帯域に限定した撮影が行われるので、一連の撮影を完了するまでの時間を短縮することが可能となり、画像データの量も減じることが可能となる。加えて、画像データの量が減じられることにより、画像データの処理のための負荷や時間を減じることも可能となる。また、画像データの転送に要する時間も短縮することが可能となる。
【0057】
顕微鏡で生体組織等の観察を行う場合、一つの標本を染色するために用いられる色素は限られている。このとき、分光計測部120Bの測定視野内の光が混合された状態で被写体の分光特性が計測されると、測定視野内の平均的な被写体分光情報を得ることが可能となる。この平均的な被写体分光情報に基づいて決定された色分解特性情報に基づいて撮影を行うことにより、標本の分光特性に適した画像をより少ない色分解の数で得ることが可能となる。
【0058】
− 変形例 −
以上、図7を参照して、分光計測部120Bが固定された測定視野を有する例について説明した。以下ではこの変形例として、測定視野を可変とする例について図8を参照して説明する。図8は、撮像装置100Cの内部構成を、顕微鏡600の一部の構成要素とともに示すブロック図である。図8において、図7に示されるものと相違するのは分光計測部120Cの構成である。それ以外は図7に示されるものと同一である。
【0059】
分光計測部120Cは、結像光学系128と、視野絞り127と、光学部材126と、分光センサ124とを備える。結像光学系128は、対物レンズ604によって形成された試料SPCの拡大像を分光センサ124の受光面上に実像として結像する。視野絞り127は、虹彩絞りやターレット板等を用いた可変開口機構を備え、分光計測部120Cの測定視野を可変に構成される。以下では、視野絞り127が開放に設定されているときの分光計測部120Cの測定視野は撮影視野と一致するものとして説明をする。
【0060】
光学部材126は、図7に示されるものと同様、拡散板としての機能を備えるものであり、ガラスや樹脂等の透明基板の表面上に細かい凹凸を設けて磨りガラス状としたものや、乳白色の光拡散物質を分散させたガラスや樹脂等の板を利用可能である。分光センサ124は、回折分光計測方式、イメージャ分光計測方式、いずれの方式のものを利用可能であるが、より広い範囲で光を受光することが可能なイメージャ分光計測方式のものを用いることが望ましい。分光センサ124の受光面には、光学部材126によって混合された被写体光の光束が入射する。つまり、分光計測部120Cの測定視野内の光が全て混合された光束が入射する。
【0061】
観察時、ユーザは接眼レンズ630を通して試料SPCの拡大像を観察し、視野の中央部に試料SPC中の重要部分が位置するようにステージ634を操作する。その後、ユーザは視野絞り127の開口の大きさを調節する。例えば、分光画像撮像部101Bの撮影視野の大きさに対する撮影対象物の大きさが約1/2であったとする。その場合、ユーザは視野絞り127の開口径を、開放時の径に対して半分となるように操作する。
【0062】
その後、ユーザが撮影のための操作をすると、コントローラ130は第1の実施の形態で説明したように分光画像撮像部101Bおよび分光計測部120Cを制御し、一連の撮影動作が行われる。すなわち、分光計測部120Cで得られた試料SPCの分光特性に基づき、撮影に際しての色分解特性が決定される。
【0063】
この色分解特性に基づいて分光画像撮像部101Bで撮影が行われることにより、被写体、すなわち試料SPCの分光特性に応じた色分解数と、それらの色分解に対応する分光波長帯域での撮影が行われる。撮影対象物が例えば病理標本などの場合、撮影対象物の近傍に異物が存在する可能性がある。異物の分光特性が撮影対象物の分光特性と異なる場合、分光計測部120Cで計測して得られる被写体分光情報は異物の分光特性の影響を受ける。その被写体分光情報に基づいて色分解特性が決定されると、本来は必要のない分光波長帯域での撮影が行われることになる。この点、図8に示される構成のものでは、分光計測部120Cの測定視野を絞ることが可能なので、こうした異物の影響を減じて撮影対象物本来の分光情報を取得するのに最適な色分解数および分光波長帯域に限定して撮影を行うことが可能となる。
【0064】
ところで、図8に示される構成において、分光計測部120Cが多点計測式に構成されていてもよい。つまり、分光センサ124としてイメージャ分光計測方式のものを用い、この分光センサ124により、分光計測部120Cの測定視野内の複数の領域それぞれで独立して被写体分光情報を取得可能に構成されていてもよい。その場合、視野絞り127は省略可能である。また、光学部材126としては拡散板ではなく、光学的ローパスフィルタを用いることが望ましい。分光センサ124が、例えば第1の実施の形態でも説明したような、二次元配列された画素上に横方向に6画素、縦方向に6画素の、計36色のオンチップカラーフィルタが形成されて1ユニットの分光センサが構成され、そのユニットがさらに二次元配列されて構成されるものとして説明する。これらの分光センサのユニットには、それぞれ均一に混合された光束が入射するように光学部材126の光学特性を設定することが望ましい。このような構成の分光計測部120Cを用い、分光計測部120Cの測定視野内において、分光計測を行う領域を手動または自動で設定することにより、上述した異物の影響等を減じることが可能となる。
【0065】
以上、第2の実施の形態では光路分岐部材としてハーフミラー106、632が設けられる例について説明した。これらの光路分岐部材としては、可動式のミラー等を用い、必要に応じて顕微鏡600内の光学系の光路に対して挿脱可能に構成されていてもよい。
【0066】
また、以上では接眼レンズ630を介して撮影対象物(観察対象物)を観察する例について説明したが、コントローラ130に画像表示装置が接続されていて、撮像部102で得られた画像をこの画像表示装置に表示して観察するようにしてもよい。この場合、分光計測部120Cの測定視野内において分光計測を行う範囲を設定する際に、画像表示装置上に表示される顕微鏡像の上に分光計測を行う範囲を重畳して表示してもよい。そのようにすることにより、ユーザは撮影対象物の大きさや位置に応じて分光計測を行う範囲をより的確に設定することが可能となる。
【0067】
さらに、顕微鏡の種類や照明装置の種類については以上に説明したものに限られない。目的に応じて正立顕微鏡、倒立顕微鏡いずれのタイプであってもよく、照明の種類についても、透過照明、反射照明、いずれかを組み合わせて用いることが可能である。このとき、図3を参照して説明した色分解特性決定部134における色分解特性決定のアルゴリズムを、照明や顕微鏡のタイプに対応して変更することが可能である。
【0068】
− 第3の実施の形態 −
第3の実施の形態においては、本発明に係る撮像装置100Dが照明用光源を内蔵する接写型の撮像装置である例について説明する。図9は、撮像装置100Dの内部構成を概略的に説明するブロック図である。図9において、図2に示される第1の実施の形態の撮像装置100が備えるものと同様の構成要素には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0069】
撮像装置100Dは、カメラユニット900と、コントローラ130Aとを備える。カメラユニット900は、撮影レンズ104と、白色光源112、113と、有色光源114、115、116、117と、ハーフミラー106と、ミラー107と、光学部材126と、分光センサ124と、撮像部102とを備え、それらがカメラボディ902に収容されている。
【0070】
白色光源112、113は、撮像部102が有する分光感度帯域をカバーして略均一な分光放射輝度特性を有する光源であり、LEDや有機ELの発光素子等で構成される。図9において、二つの白色光源112、113を備える例が示されているが、その配設個数は任意の数とすることが可能である。有色光源114〜117は、それぞれが異なる分光放射輝度特性を有する光源である。図9においては四つの有色光源114〜117を備える例が示されているが、その配設個数は任意とすることが可能である。その際、撮影レンズ104の周囲を取り巻く同心円、あるいは螺旋状の円に沿って配列することにより、多数の有色光源を配置することが可能となる。
【0071】
これらの有色光源は、様々な分光放射輝度特性を有するものを備えることが望ましい。例えば、発光中心波長の異なるものを取り混ぜて、全体として撮像部102が有する感度帯域をカバーできるようにするだけでなく、同じような発光中心波長でありながら発光波長帯域が一方は広帯域、他方は狭帯域といったものを備えることが望ましい。有色光源114を上記のように構成することにより、色分解決特性定部134で色分解特性を決定する際の自由度を増すことが可能となる。有色光源としては、LED、有機EL発光素子、レーザダイオード等を利用可能である。また、これらの有色光源とともに、分光透過特性を切り換え可能なフィルタを備えることも可能である。
【0072】
ミラー107は、ハーフミラー106を透過せずに反射されて導かれた被写体光の一部を光学部材126および分光センサ124に導くための導光部材である。ミラー107としては、単純な平面鏡のみならず、反射面が曲面を有するものであってもよい。また、プリズムによって構成されていてもよい。ミラー107がプリズムによって構成される場合、プリズムの入射面、反射面、出射面のうちの一部または全部が結像作用を備える曲面で構成されていてもよい。また、ミラー107に加えて別の光学素子が光路上に配設されていてもよい。
【0073】
分光センサ124は、回折分光計測方式、イメージャ分光計測方式、いずれの方式のものを利用可能である。本実施の形態では、ハーフミラー106およびミラー107によって導かれた被写体光が拡散板の機能を有する光学部材126によって拡散されて分光センサ124に導かれるものとする。つまり、分光センサ124には、その測定視野内の被写体光が混合されて入射するものとする。
【0074】
以上に説明したカメラユニット900において、有色光源114〜117と、撮影レンズ104と、撮像部102とによって分光画像撮像部が構成される。つまり、有色光源114〜117のうち、発光させるものを切り換えて、有色光源全体としての分光放射輝度を変化させながら撮像部102で撮影することを複数回行うことにより、撮影レンズ104により形成される被写体像を複数の色に色分解して撮影して複数セットの分光画像を生成することが可能となる。
【0075】
そして、光学部材126と分光センサ124とによって分光計測部が構成される。なお、有色光源114〜117のうちの一部または全部を組み合わせて発光させることにより白色光、あるいはそれに準じた光を生成可能な場合には、白色光源112、113を省略することも可能である。図9に示されるように、平板上に載置された被写体OBJを覆うようにカメラユニット900を置き、後述する撮影操作をすることにより、被写体OBJの画像を得ることができる。
【0076】
続いてコントローラ130Aについて説明する。第1の実施の形態で説明したコントローラ130と異なるのは、コントローラ130Aが光源制御部142をさらに備える点と、計測制御部132Aが分光センサ124に加えて白色光源112、113の点灯/消灯を制御する点である。
【0077】
計測制御部132Aは、白色光源112、113の点灯/消灯を制御するとともに分光センサ124の分光計測動作タイミングを制御する。つまり、計測制御部132Aは、白色光源112、113を点灯させた状態で分光センサ124に分光計測開始の制御信号を出力し、それによって分光センサ124により被写体OBJの分光特性が計測される。
【0078】
色分解特性決定部134は、分光センサ124から入力した被写体分光情報に基づき、色分解数nと、それぞれの色分解撮影に対応する分光波長帯域とを決定する。すなわち、n回の撮影が行われるに同期して有色光源114〜117のうち、各撮影に対応してどの光源を発光させるかを決定する。このとき、一回の撮影に同期して複数の種類の有色光源を組み合わせて発光させて、一つの有色光源からでは得ることのできない発光中心波長および発光波長域の光を発するように設定することも可能である。その際、各有色光源の発光強度を独立して制御することも可能である。
【0079】
第3の実施の形態においても、被写体の分光特性によって撮影回数nは変化する。極端な例では、被写体の色が単色であったり無彩色であったりする場合には、撮影回数は1回となることもある。つまり、撮影に際して必要な回数、必要な分光波長帯域が設定されるので、不要な撮影動作や画像データの増加を抑制することが可能となる。
【0080】
以上のようにして決定された色分解特性情報が、色分解特性決定部134から撮像制御部140に出力される。また、制御部138から撮像制御部140に撮影動作開始の制御信号が発せられる。これらの制御信号を受け、撮像制御部140は、色分解特性決定部134から受信した色分解特性情報に基づいて撮像部102および光源制御部142のそれぞれに制御信号を出力する。
【0081】
その結果、以下のように撮影動作が行われる。すなわち、光源制御部142は有色光源114〜117を制御し、被写体OBJを照明する照明光の分光放射輝度特性を分光波長帯域1に対応したものとする。そして一回目の撮影動作が行われる。続いて、照明光の分光放射輝度特性が分光波長帯域2に対応するものに変更されて二回目の撮影動作が行われる。以下、同様にして、照明光の分光放射輝度特性の設定と撮影動作とが行われ、最後に、照明光の分光放射輝度特性が分光波長帯域nに対応するように設定されてn回目の撮影動作が行われる。このようにして、異なる分光波長帯域を設定しながらn回の撮影動作が行われる。
【0082】
ところで、第3の実施の形態で説明した照明装置、すなわち有色光源114〜117と、白色光源112、113とを、光源制御部142とともに第2の実施の形態で説明した顕微鏡用の撮像装置内に組み込むことも可能である。その場合、透過照明として用いることも、反射照明として用いることも可能である。顕微鏡用の撮像装置に第3の実施の形態で説明したような照明装置が組み込まれる場合、図7や図8に示されるチューナブルフィルタ110を省略してもよいし、チューナブルフィルタ110と照明装置とを併用してもよい。
【0083】
− 第4の実施の形態 −
第4の実施の形態においては、本発明に係る撮像装置100Eがターレット式のフィルタ切り換え装置を備える撮像装置である例について説明する。撮像装置100Eは、撮像部102と、フィルターターレット160と、撮影レンズ104と、分光計測部120Aと、コントローラ130とを備える。図11は、フィルターターレット160の内部に収容されるターレット板162A、162Bの構成例を示す図である。図12は、撮像装置100Eの内部構成を説明するブロック図である。図10、図12において、図1、図2に示される第1の実施の形態の撮像装置100が備える構成要素と同様の構成要素には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0084】
図10に示されるように、撮影レンズ104と撮像部102との間に分光計測部120Aとフィルターターレット160とが介装される。フィルターターレット160の内部には、図11に例示されるターレット板162A、162Bが収容される。図11では二枚のターレット板162A、162Bを収容する例が示されているが、フィルターターレット160内に収容されるターレット板は一枚でも複数枚でもよい。
【0085】
ターレット板162A、162Bは、円盤状の板の周縁部近くの円周上に沿って複数の開口が設けられている。各開口には様々な分光透過特性のフィルタ164が配置されている。なお、図11では、ターレット板162A、162Bのそれぞれにおいて一つの要素にのみ符号が付されている。ターレット板162A、162Bは軸Ax回りに回転可能に構成されており、いずれかのフィルタ164を撮影レンズ104の光路上に位置させることができる。ターレット板162A、162Bそれぞれには、フィルタ164の装着されない素通し部166A、166Bが設けられている。例えば、ターレット板162Aに備えられるフィルタ164を撮影レンズ104の光路上に位置させる場合、ターレット板162Bの素通し部166Bを撮影レンズ104の光路上に位置させればよい。同様に、ターレット板162Bに備えられるフィルタ164を撮影レンズ104の光路上に位置させる場合、ターレット板162Aの素通し部166Aを撮影レンズ104の光路上に位置させればよい。
【0086】
また、フィルタを用いないで撮影を行う必要がある場合には、両ターレット板162A、162Bの素通し部166A、166Bを撮影レンズ104の光路上に位置させればよい。なお、撮影レンズ104の光路上にフィルタ164が存在する場合と存在しない場合とでは、フィルターターレット160の部分における空気換算の光路長が変化する。それが問題となる場合には、素通し部166A、166Bに相当する位置に無色透明の平行平面板を配置することも可能である。そのようにすることにより、フィルターターレット160で設定される分光透過特性の如何によらず、撮影レンズ104の光路上には無色透明の平行平面板を含む2枚のフィルタを常に位置させることが可能である。
【0087】
あるいは、素通し部166A、166Bを設けておいて、それとは別にターレット板162A、162Bのいずれかに無色透明のフィルタも設け、有色フィルタが必要な場合には当該有色フィルタと素通し部166Aまたは166Bとの組み合わせとすることが可能である。一方、有色フィルタが不要な場合には、無色透明のフィルタと素通し部166A(あるいは素通し部166B)との組み合わせとすることが可能である。このようにして、撮影レンズ104の光路上には、設定される分光透過特性によらず、常に一枚のフィルタを位置させることが可能となる。その結果、空気換算の光路長を略一定とすることが可能となる。
【0088】
図12を参照し、フィルターターレット160は、ターレット板162A、162Bを内部に収容して外を覆うハウジング170と、ターレット板162A、162Bを駆動するフィルタ駆動部168とを備える。フィルタ駆動部168には、ターレット板162A、162Bそれぞれの角度位置、すなわちどのフィルタ164が撮影レンズ104の光路上に位置しているかを検出可能なエンコーダまたはスイッチが内蔵されるものとする。
【0089】
撮像部102、フィルターターレット160、撮影レンズ104によって分光画像撮像部101Cが構成される。つまり、フィルターターレット160の分光透過特性を切り換えながら撮像部102で撮影することを複数回行うことにより、撮影レンズ104により形成される被写体像を複数の色に色分解して撮影して複数セットの分光画像を生成することが可能となる。
【0090】
分光センサ124は、イメージャ分光計測方式のものであっても、回折分光形式のものであってもよい。ここでは第一の実施の形態の変形例で説明したイメージャ分光計測方式のものを用いるものとして説明をする。つまり、二次元配列された画素上に例えば横方向に6画素、縦方向に6画素の、計36色のオンチップカラーフィルタが形成されて1ユニットの分光センサが構成され、そのユニットがさらに二次元配列されて構成されるものとして説明する。無論、色数はこれよりも多くても少なくてもよい。分光センサ124に入射する被写体光の光路を横切る位置に空間周波数低減用の光学部材126が配設される。この光学部材126は、光学的ローパスフィルタの構成を備え、分光センサ124を構成する各分光センサユニットに入射する被写体光を、それぞれ均一に混合する。
【0091】
第一の実施の形態の変形例でも説明したように、撮像部102の受光エリアの大きさと分光センサ124の受光エリアの大きさとが異なる場合、再結像光学系等をハーフミラー106と分光計測部120Aとの間に配置することが望ましい。
【0092】
コントローラ130は、第1の実施の形態で説明したように分光画像撮像部101Cおよび分光計測部120Aを制御し、これにより一連の撮影動作が行われる。このとき、色分解特性決定部134は、分光計測部120Aで得られた被写体分光特性に基づき、撮影に際しての色分解特性を決定する。色分解特性決定部134には、フィルターターレット160に備えられる全てのフィルタの分光透過特性に関する情報が記憶されている。色分解特性決定部134は、決定した色分解特性に最も近い分光特性を有するフィルタを選択する。色分解特性決定部134は、選択したフィルタの種類を特定可能な情報、あるいはターレット板162A、162Bの角度位置を特定可能な情報を分光特性情報として撮像制御部140に出力する。
【0093】
撮像制御部140は、色分解特性決定部134から受信した色分解特性情報に基づいて撮像部102およびチューナブルフィルタ110のそれぞれに制御信号を出力する。その結果、分光画像撮像部101Cでは、フィルターターレット160の分光透過率を切り換えながらn回の撮影動作が行われる。n回の撮影動作によって撮像部102で生成された画像データは、記憶部136に出力される。
【0094】
以上のように、本発明の第4の実施の形態によっても、分光計測部120Aで得られた被写体の分光特性に基づき、撮影に際しての色分解特性が決定される。そして、この色分解特性に基づいて分光画像撮像部101Cで撮影が行われることにより、被写体の分光特性に応じた色分解数と、それらの色分解に対応する分光波長帯域での撮影が行われる。一般に、光学フィルタは、分光透過特性を設定する際の自由度が高い。したがって、様々な分光透過特性の光学フィルタをフィルターターレット160内に組み込んでおくことにより、被写体の分光特性により適した色分解特性を設定可能となる。
【0095】
ところで、ターレット板162A、162Bの大きさや撮影レンズ104から出射する被写体光の光束の大きさによっては、備えることのできるフィルタの数は制約を受ける場合がある。しかし、異なる分光透過特性の組み合わせのターレット板を複数用意しておき、それらの中から選択したターレット板をフィルターターレット160内に組み込むことを可能とした構成を有していてもよい。例えば、被写体がどのようなものであるかが事前に分かっていれば、その被写体に対応した種類のフィルタを備えるターレット板を用いることも可能である。
【0096】
以上では撮影レンズ104の光路上に位置するフィルタの種類を機械的に切り換える構成としてターレット板を用いるものについて説明したが、他の構成を備えるものであってもよい。例えば、複数種類のフィルタを保持する部材を撮影レンズ104の光路に対して上下、左右等に移動させてフィルタの種類を切り換えることも可能である。また、フィルタを機械的に切り換えるものとともに、第1、第2の実施の形態で説明したチューナブルフィルタを併用することも可能である。
【0097】
以上に説明したターレット式のフィルタ切り換え装置を、第2の実施の形態で説明した顕微鏡用の撮像装置内に組み込むことも可能である。顕微鏡用の撮像装置に第4の実施の形態で説明したようなフィルタ切り換え装置が組み込まれる場合、図7や図8に示されるチューナブルフィルタ110を省略してもよいし、チューナブルフィルタ110とフィルターターレット160とを併用してもよい。
【符号の説明】
【0098】
100、100A、100B、100C、100D、100E … 撮像装置
101、101A、101B、101C … 分光画像撮像部
102 … 撮像部
104 … 撮影レンズ
106、632 … ハーフミラー
107 … ミラー
108、128 … 結像光学系
110 … チューナブルフィルタ
112、113 … 白色光源
114、115、116、117 … 有色光源
120、120A、120B、120C … 分光計測部
122 … 集光レンズ
124 … 分光センサ
126 … 光学部材
127 … 視野絞り
130、130A … コントローラ
132 … 計測制御部
134 … 色分解特性決定部
136 … 記憶部
138 … 制御部
140 … 撮像制御部
142 … 光源制御部
600 … 顕微鏡
604 … 対物レンズ
630 … 接眼レンズ
634 … ステージ
640 … 光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体の分光特性を計測する分光計測部と、
被写体像を複数の色に色分解して撮影し、複数セットの分光画像を生成可能な分光画像撮像部と、
前記分光画像撮像部で色分解して撮影する際の色分解特性を、前記分光計測部で計測して得られた被写体の分光特性に基づいて決定する色分解特性決定部であって、前記分光画像撮像部で色分解して撮影する際の色分解数と、前記色分解それぞれに対応する分光帯域とを決定する、色分解特性決定部と、
を備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記分光計測部は、前記分光画像撮像部の撮影視野と略同一の範囲において前記被写体の分光特性を計測可能に構成される
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記分光計測部は、前記分光画像撮像部の撮影視野内の一部の領域において前記被写体の分光特性を計測可能に構成される
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記分光計測部は、前記分光画像撮像部の撮影視野内における複数のエリアそれぞれにおいて前記被写体の分光特性を計測可能に構成される
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の撮像装置。
【請求項5】
前記分光画像撮像部は、結像光学系により形成された被写体像を光電変換して画像信号を生成する撮像部と、
前記結像光学系の光路上に配設され、前記撮像部に入射する前記被写体光の分光特性を変化させることのできる、分光透過特性可変のフィルタと
を備え、
前記色分解特性決定部はさらに、前記色分解数と、前記色分解それぞれに対応する分光帯域とに基づき、前記分光透過特性可変のフィルタの分光透過特性を決定する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の撮像装置。
【請求項6】
前記分光透過特性可変のフィルタは、液晶チューナブルフィルタまたは音響光学可変波長フィルタであることを特徴とする請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記分光透過特性可変のフィルタは、
分光透過特性が互いに異なる複数種類の光学フィルタと、
前記複数種類の光学フィルタのうち、いずれかが前記撮影光学系の光路上に位置するように切り換えるフィルタ切り換え装置と
を備えることを特徴とする請求項5または6に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記分光画像撮像部は、結像光学系により形成された被写体像を光電変換して画像信号を生成する撮像部と、
被写体に向けて照明光を照射する照明装置であって、前記被写体を照射する光の分光特性を変化させることのできる、分光放射輝度特性可変の照明装置と
を備え、
前記色分解特性決定部はさらに、前記色分解数と、前記色分解それぞれに対応する分光帯域とに基づき、前記照明装置の分光放射輝度特性を決定する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の撮像装置。
【請求項9】
前記照明装置はさらに、前記分光計測部が前記被写体の分光特性を計測する際に、前記被写体に向けて白色光を照射可能に構成される
ことを特徴とする請求項8に記載の撮像装置。
【請求項10】
顕微鏡装置と、当該顕微鏡装置により形成される拡大像を撮影する顕微鏡用撮像装置とを備える顕微鏡システムであって、前記顕微鏡用撮像装置として請求項1から9のいずれか一つに記載の撮像装置を備えることを特徴とする顕微鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−244277(P2012−244277A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110212(P2011−110212)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】