説明

撮像装置および画像処理プログラム

【課題】クランプ処理後に行われるデジタルゲイン処理によって、横スジが悪化するのを抑える。
【解決手段】オプティカルブラック領域および有効領域に第1受光感度で第1画像信号を生成する第1受光素子と第1の受光感度よりも高感度の第2受光感度で第2画像信号を生成する第2受光素子とをそれぞれ含む画素を複数有する撮像素子と、第1および第2画像信号に対しオプティカルブラック領域の出力に含まれる暗電流成分に基づくクランプ処理を行う補正部と、クランプ処理が施された第1および第2画像信号の何れか一方に対し感度比に基づくゲインを乗じて第3画像信号を生成するとともに、クランプ処理が施された第1および第2画像信号のうちゲインを乗じていない方の画像信号と第3画像信号との差分の平均値をクランプ処理により発生する横スジに沿った方向における画素列ごとに算出する算出部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置および画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、デジタル画像信号における基準レベルを補正するためのクランプ処理が行われている。このクランプ処理においては、実際の量子化ステップ以上のレベルばらつきが生じ横スジ状のノイズが発生する場合がある。
【0003】
そこで、特許文献1の発明では、このようなクランプ処理による横スジを低減するために有効な乱数発生回路を備えたクランプ回路を提案している。特許文献1の発明では、クランプレベルを小数点以下の精度で算出し、小数点以上の数値は画像信号一律に減算し、小数点未満の数値は小数点以上のクランプレベルに+1をするかしないかの確率として用いることにより、1ライン全体として、小数点未満の減算を可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−175546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、クランプ処理の後段の処理においては、様々なデジタルゲイン処理が行われる。そのため、上述したように横スジを低減した場合でも、多少の段差が残っていれば、その後のデジタルゲイン処理によって段差が大きく強調され、さらにノイズが悪化してしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、クランプ処理後に行われるデジタルゲイン処理によって、クランプ処理に起因する横スジが悪化するのを抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の撮像装置は、遮光されたオプティカルブラック領域と有効領域とからなり、前記オプティカルブラック領域および前記有効領域には、第1受光感度で第1画像信号を生成する第1受光素子と、同一条件下で前記第1の受光感度よりも高感度の第2受光感度で第2画像信号を生成する第2受光素子とをそれぞれ含む画素を複数有する撮像素子と、前記第1画像信号および前記第2画像信号に対して、前記オプティカルブラック領域の出力に含まれる暗電流成分に基づくクランプ処理を行う補正部と、前記クランプ処理が施された前記第1画像信号および前記第2画像信号の何れか一方に対して、前記第1受光感度および前記第2受光感度の感度比に基づくゲインを乗じて第3画像信号を生成するとともに、前記クランプ処理が施された前記第1画像信号および前記第2画像信号のうち、前記ゲインを乗じていない方の画像信号と、前記第3画像信号との差分の平均値を、前記クランプ処理により発生する横スジに沿った方向における画素列ごとに算出する算出部とを備える。
【0008】
なお、前記クランプ処理が施された前記第1画像信号および前記第2画像信号の少なくとも一方に基づき、記録用の画像データを生成する画像処理部と、前記差分の平均値と、前記画像データとを関連付けて記録する記録部とをさらに備えても良い。
【0009】
また、前記クランプ処理が施された前記第1画像信号および前記第2画像信号の少なくとも一方に基づき、記録用の画像データを生成するとともに、前記画像データの生成に際して乗じられるゲインと、前記差分の平均値とに基づいて、前記画像データに対して、前記横スジを低減する画像処理を行う画像処理部をさらに備えても良い。
【0010】
また、前記画像処理部は、前記画像データの生成に際して、ゲインを乗じる処理を複数回行う場合には、前記複数回の処理に用いる複数のゲインと、前記差分の平均値とに基づいて、前記画像処理を1回行っても良い。
【0011】
また、上記発明に関する構成を、処理対象の画像データに対する画像処理をコンピュータで実現するための画像処理プログラムに変換して表現したものも本発明の具体的態様として有効である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、クランプ処理後に行われるデジタルゲイン処理によって、クランプ処理に起因する横スジが悪化するのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態における電子カメラ11の構成例を示すブロック図である。
【図2】本実施形態の撮像素子13の構成を示す模式図である。
【図3】本実施形態の撮像素子13の構成を示す別の模式図である。
【図4】CPU19の動作を示すフローチャートである。
【図5】図4のフローチャートに対応する流れ図である。
【図6】CPU19の動作を示す別のフローチャートである。
【図7】図6のフローチャートに対応する流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。
【0015】
図1は、本実施形態における電子カメラ11の構成例を示すブロック図である。電子カメラ11は、撮像レンズ12と、撮像素子13と、AFE14と、画像処理部15と、第1メモリ16と、第2メモリ17と、記録I/F18と、CPU19と、操作部20と、バス21とを備えている。ここで、画像処理部15、第1メモリ16、第2メモリ17、記録I/F18、CPU19は、バス21を介してそれぞれ接続されている。また、撮像素子13、AFE14、操作部20は、それぞれCPU19と接続されている。
【0016】
撮像素子13は、撮像レンズ12による結像を撮像する撮像デバイスである。本実施形態の撮像素子13は、任意の受光素子の画像信号をランダムアクセスで読み出し可能なCMOS型の固体撮像素子で構成される。なお、撮像素子13の出力はAFE14に接続されている。
【0017】
図2および図3は、本実施形態の撮像素子13の構成を示す模式図である。撮像素子13は、図2に示すように、有効画素領域とOB領域とから成る。「OB領域」とは、オプティカルブラック領域のことであり、この領域は遮光膜により遮光される。
【0018】
有効画素領域の受光面上には、図2に示すように、複数の画素がマトリクス状に配列されている。また、撮像素子13の各画素には、赤色(R)、緑色(Gr,Gb)、青色(B)のカラーフィルタが公知のベイヤ配列で配置されている。ただし、図2では、10×4個分の画素を部分的に示すが、実際の撮像素子13の受光面にはさらに多数の画素が配列されることはいうまでもない。
【0019】
また、撮像素子13の各画素は、図3に示すように、2つの受光素子をそれぞれ有している(例えば、「Gr」と「Gr‘」)。各画素において、2つの受光素子には、図3に示すように、同じ大きさのフォトダイオード(例えば、「P−Gr」と「P−Gr‘」)が配置される。また、各画素において、2つの受光素子の上には、図3に示すように、それぞれ集光率の異なるマイクロレンズ(図3中、「円」で示す)が配置される。マイクロレンズは、同一条件下では2つの受光素子における単位時間当たりの受光量が異なるように構成される。以下、単位時間当たりの受光量が相対的に多い受光素子を「主素子」と称し、「X(ただし、Xは、Gr,Gb,B,Rの何れか)」の記号を用いて表す。また、単位時間当たりの受光量が相対的に少ない受光素子を「副素子」と称し、「X’(ただし、Xは、Gr,Gb,B,Rの何れか)」の記号を用いて表す。なお、本実施形態では、一例として、主素子の感度は、副素子の感度の約3倍に設定されるものとする。
【0020】
主素子および副素子の出力については様々な利用法が考えられる。例えば、主素子または副素子の出力を選択的に利用して記録用の画像データを生成することも可能であるし、また、主素子および副素子の出力を適宜加算することにより記録用の画像データを生成することも可能である。以下の例では、一例として、主素子の出力のみを利用して記録用の画像データを生成する場合を例に挙げて説明する。
【0021】
一方、OB領域にも、図2に示すように、複数のOB画素がマトリクス状に配列されている。ただし、図2では、10×2個分の画素を部分的に示すが、実際の撮像素子13の受光面にはさらに多数の画素が配列されることはいうまでもない。また、OB領域の配置位置や配列については、この例に限定されない。OB領域の各画素も、有効画素領域の各画素と同様に、2つの受光素子をそれぞれ有している(例えば、「OB」と「OB‘」)。各画素においては、有効画素領域の各画素と同様に、2つの受光素子の上に、それぞれ集光率の異なるマイクロレンズが配置される。ただし、OB領域の画素は遮光膜により遮光されるため、2つの受光素子における単位時間当たりの受光量が異なっていても、同様の出力が得られることになる。
【0022】
図1において、AFE14は、不図示のアナログゲイン部やA/D変換部を含み、撮像素子13の出力に対してアナログ信号処理を施すアナログフロントエンド回路である。このAFE14は、相関二重サンプリングや、画像信号のゲインの調整や、画像信号のA/D変換を行う。そして、AFE14の出力は画像処理部15に接続されている。
【0023】
画像処理部15は、AFE14から出力されたデジタルの画像信号に対して各種の画像処理(色補間処理、階調変換処理、ホワイトバランス調整など)を施す。また、画像処理部15は、クランプ処理による横スジを低減するための処理も行う(詳細は後述する)。
【0024】
第1メモリ16は、画像処理の前工程や後工程で画像のデータを一時的に記憶する。例えば、第1メモリ16は、揮発性の記憶媒体であるSDRAMにより構成される。また、第2メモリ17は、CPU19によって実行されるプログラムなどを記憶する不揮発性のメモリである。
【0025】
記録I/F18は、不揮発性の記憶媒体22を接続するためのコネクタを有している。そして、記録I/F18は、コネクタに接続された記憶媒体22に対して後述の本画像のデータの書き込み/読み込みを実行する。上記の記憶媒体22は、ハードディスクや、半導体メモリを内蔵したメモリカードなどで構成される。なお、図1では記憶媒体22の一例としてメモリカードを図示する。
【0026】
CPU19は、電子カメラ11の動作を統括的に制御するプロセッサである。例えば、CPU19は、被写体の撮影を行うための撮影モードでの動作時において、ユーザの撮像指示入力に応じて撮像素子13を駆動させて、不揮発性の記憶媒体22への記録を伴う本画像の撮像処理を実行する。
【0027】
操作部20は、ユーザの操作を受け付ける複数のスイッチを有している。この操作部20は、例えば、本画像の撮像指示を受け付けるレリーズ釦や、十字状のカーソルキーや、決定釦などで構成される。
【0028】
次に、クランプ処理について説明する。クランプ処理は、画像処理部15により行われる処理であり、画像信号における基準レベルを補正するための処理である。このクランプ処理においては、上述したように、実際の量子化ステップ以上のレベルばらつきが生じ横スジ状のノイズが発生する場合がある。この横スジは、図2において、y方向に沿って発生する。そこで、本実施形態では、y方向に沿った画素列に含まれる各画素の差分を求め、その平均値を用いて横スジを低減する画像処理を行う。
【0029】
図4は、横スジを低減する画像処理に用いる平均値Daveを求める際のCPU19の動作を示すフローチャートである。この処理は、同列同色の画素単位で行われる。以下では、Gr成分について、処理を行う例を示す。また、図2中の4つのGr画素(Gr(1)〜Gr(4))から始まり、y方向に伸びる4列を例に挙げて説明する。Gr画素の他の成分についても同様であり、また、他の色成分についても同様の処理を行うものとする。
【0030】
ステップS1において、CPU19は、算出対象である画素の主素子および副素子の出力を取得する。CPU19は、AFE14から読み出し、画像処理部15に供給する。図5(a)に主素子の出力を示し、図5(b)に副素子の出力を示す。
【0031】
ステップS2において、CPU19は、公知技術と同様に、OB値を算出する。CPU19は、処理範囲の座標の2ライン分上の行から算出を開始する。算出方法は、例えば移動平均とする。図5(c)に求められたOB値を示す。
【0032】
ステップS3において、CPU19は、画像処理部15を制御し、主素子および副素子の出力に対してクランプ処理を行う。クランプ処理は、図5(a)に示した主素子の出力値および図5(b)に示した副素子の出力値のそれぞれから、図5(c)に示したOB値を減算することにより行う。図5(d)および図5(e)にクランプ処理の結果を示す。
【0033】
ステップS4において、CPU19は、画像処理部15を制御して、ステップS3においてクランプ処理を施した副素子の画素値にゲインAを乗じる。ゲインAとは、以下の式により求められるゲインである。
【0034】
A=(主素子の感度)÷(副素子の感度) ・・・(式1)
本実施形態では、主素子の感度は、副素子の感度の約3倍に設定されているため、A=3となる。図5(f)にこの処理の結果を示す。
【0035】
ステップS5において、CPU19は、主素子および副素子の出力値が、「ともに飽和していない、かつ、0でない」か否を判定する。ただし、以降の処理において、主素子の出力値は、ステップS3におけるクランプ処理後の出力値であり、副素子の出力値は、ステップS3におけるクランプ処理と、ステップS4におけるゲインAを乗じる処理とが施された出力値である。この判定により、主素子および副素子の出力値が飽和または0である場合に、その画素を後述する平均値Daveの算出対象から除外することができる。CPU19は、肯定判定の場合にはステップS6に進み、否定判定の場合には後述するステップS8に進む。
【0036】
ステップS6において、CPU19は、主素子および副素子の出力値の差分値Dを算出する。差分値Dは以下の式により求められる。
【0037】
D=(副画素の出力値)−(主画素の出力値) ・・・(式2)
ただし、式2中の副画素の出力値は、上述したように、ステップS3におけるクランプ処理と、ステップS4におけるゲインAを乗じる処理とが施された出力値である。
【0038】
ステップS7において、CPU19は、ステップS6で算出した差分値Dの絶対値が所定の閾値Th未満であるか否かを判定する。閾値Thは、予め定められた値である。この判定により、主素子および副素子の出力値の間に著しい差がある場合に、その画素を後述する平均値Daveの算出対象から除外することができる。CPU19は、肯定判定の場合には後述するステップS9に進み、否定判定の場合にはステップS8に進む。
【0039】
ステップS8において、CPU19は、ステップS1で算出対象とした画素のフラグをフラグ=0とする。「フラグ=0」とは、「この画素の出力値を平均値Daveの算出対象から除外する」ことを意味する。CPU19は、フラグ=0とすると、次の画素を算出対象として、ステップS1に戻る。
【0040】
ステップS9において、CPU19は、ステップS1で算出対象とした画素のフラグをフラグ=1とする。「フラグ=1」とは、「この画素の出力値を平均値Daveの算出対象とする」ことを意味する。
【0041】
ステップS10において、CPU19は、1ラインの全ての画素について処理を行ったか否かを判定する。例えば、図2において、画素Gr(1)に関しては、画素Gr(1)から始まり、y方向に伸びる1列を1ラインとする。CPU19は、肯定判定の場合にはステップS11に進み、否定判定の場合には同じラインの次の画素を算出対象として、ステップS1に戻る。
【0042】
ステップS11において、CPU19は、差分値Dの平均値Daveを算出する。このとき、CPU19は、フラグ=1である画素のみを算出対象として平均値Daveを算出する。平均値Daveは、以下の式により求められる。
【0043】
Dave=(ΣD)÷(フラグ=1である画素数) ・・・(式3)
図5(g)に平均値Daveの例を示す。図5(a)〜(f)は、ある画素における結果を示しているが、図5(g)は、1ライン分の画素に基づく平均値Daveを示している。すなわち、平均値Daveは、ライン毎に算出される。このように差分値の平均値を算出することにより、ランダムノイズを打ち消すことができる。
【0044】
なお、平均値Daveを算出する際に、フラグ=1である画素数と所定の閾値とを比較することにより、フラグ=1である画素数が少なすぎる場合には、ステップS2で算出したOB値を平均値Daveとして用いても良い。
【0045】
ステップS12において、CPU19は、ステップS11で算出したライン毎の平均値Daveを第1メモリ16、CPU19内の不図示のメモリ、メモリカード22などに記録する。このとき、CPU19は、平均値Daveと、主素子の出力に基づく画像データとを関連付けて記録しても良い。
【0046】
ステップS13において、CPU19は、全てのラインについて処理を行ったか否かを判定する。CPU19は、肯定判定の場合には一連の処理を終了し、否定判定の場合には次のラインの最初の画素を算出対象として、ステップS1に戻る。
【0047】
次に、上述した一連の処理により算出した平均値Daveを用いて、横スジを低減する画像処理を行う際のCPU19の動作について、図6に示すフローチャートを用いて説明する。以下説明する処理は、画像処理部15により画像処理が行われる際に実行される。なお、処理対象の画像については、図2を用いて説明した平均値Daveが予め求められているものとする。
【0048】
ステップS21において、CPU19は、画像処理部15においてデジタルゲイン処理が行われたか否かを判定する。CPU19は、画像処理部15においてデジタルゲイン処理が行われたか否かを監視し、デジタルゲイン処理が行われたと判定するとステップS22に進む。
【0049】
ステップS22において、CPU19は、上述したデジタルゲイン処理におけるゲインBを取得する。
【0050】
ステップS23において、CPU19は、画像処理部15を制御して、画像処理部15による画像処理対象の画像データ(主画素の出力値にゲインBを乗じた値)から減算する値Cを、ライン毎の平均値Daveと、ステップS22で取得したゲインBとに基づいて算出する。Cは、以下の式により求められる。
【0051】
C=Dave×B÷A ・・・(式4)
式4において、Aとは、図4のステップS4で説明したゲインである。
【0052】
図7(a)は、図5(d)と同じ図であり、図4のフローチャートのステップS3で説明したクランプ処理後の主画素の出力値を示す。また、図7(b)は、上述したデジタルゲイン処理において、ゲインBが乗じられた後の主画素の出力値を示す。図7(b)では、ゲインB=4である場合の例を示す。また、図7(c)は、図5(g)と同じ図であり、図4のフローチャートのステップS11で説明した平均値Daveを示す。
【0053】
Gr(1)においては、C=0×4÷3=0となり、Gr(2)においては、C=(+2)×4÷3=2.666…となる。この処理はデジタル処理であるため、小数点以下は四捨五入され、C=3となる。なお、Gr(1)およびGr(2)の例では、C≧0であるが、Dave,B,Aの値によっては、C<0となる場合もある。
【0054】
図4において説明したように、平均値Daveは、ライン毎に算出される。したがって、CPU19は、ライン毎に値Cを算出する。
【0055】
ステップS24において、CPU19は、ライン毎に、主画素の出力値にゲインBを乗じた値からステップS23で算出した値Cを減算する。
【0056】
Gr(1)においては、3600−0=3600となり、Gr(2)においては、3604−3=3601となる。図7(d)にこの処理の結果を示す。図7(b)と図7(d)とを比較すると、図7(b)においては、ゲインBを乗じるデジタルゲインにより、Gr(1)およびGr(2)における値の差は4LSBに拡大している。この差は横スジとなる。これに対して、図7(d)においては、値Cを減算する処理により、Gr(1)およびGr(2)における値の差は1LSBに抑えられていることがわかる。
【0057】
ステップS25において、CPU19は、処理済みの画像を、第1メモリ16、CPU19内の不図示のメモリ、メモリカード22などに記録して、一連の処理を終了する。
【0058】
なお、図6のフローチャートで説明した画像処理は、画像処理部15においてデジタルゲイン処理が行われる度に実行しても良いし、まとめて実行しても良い。例えば、ホワイトバランス調整でゲインα、γ処理でゲインβが乗じられる場合には、α×βをステップS22におけるゲインBとして、同様の処理を行えばよい。このように処理をまとめることにより、演算を簡略化することができる。また、一部のデジタルゲイン処理については、ゲインをまとめて図6のフローチャートで説明した画像処理を行い、その他のデジタルゲイン処理については、デジタルゲイン処理が行われる度に、同様の画像処理を行っても良い。
【0059】
以上説明したように、本実施形態によれば、主素子と、同一条件下で主素子よりも高感度の副素子とをそれぞれ含む画素を複数有する撮像素子を備え、クランプ処理が施された副素子の出力値に対して、主素子および副素子の感度比に基づくゲインを乗じ、その値と、主素子の出力値との差分の平均値を、クランプ処理により発生する横スジに沿った方向における画素列ごとに算出する。したがって、この差分の平均値を用いた画像処理を行うことにより、クランプ処理後に行われるデジタルゲイン処理によって、クランプ処理に起因する横スジが悪化するのを抑えることができる。
【0060】
<変形例>
上記の実施形態では、主素子の出力値に基づいて記録用の画像データを生成する場合を例に挙げて説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、副素子の出力値に基づいて記録用の画像データを生成する場合には、上記の実施形態で説明した主素子と副素子とを全て入れ換えればよい。また、主素子および副素子の出力を適宜加算することにより記録用の画像データを生成する場合にも、本発明を適用することができる。
【0061】
また、画像を電子的に拡大する、いわゆる電子ズーム処理を行う場合には、該当部分のみを対象として、上記の実施形態で説明した処理を行えばよい。
【0062】
また、2つの受光素子の上にそれぞれ集光率の異なるマイクロレンズを配置して、2つの受光素子間で感度差を生じさせる構成とした。この場合には、2つの受光素子を同じ半導体プロセスで製造することが可能となる。ただし、本発明の撮像素子は上記構成に限定されるものではない。
【0063】
例えば、2つの受光素子の上にそれぞれ光の透過率の異なる同色のカラーフィルタを配置して、2つの受光素子間で感度差を生じさせるようにしてもよい。この場合も、2つの受光素子を同じ半導体プロセスで製造することも可能となる。
【0064】
さらに、1画素に光電変換の効率が異なる2つの受光素子を配置することで、2つの受光素子を構成してもよい。
【0065】
また、2つの受光素子の受光面積を異なる大きさとすることにより単位時間当たりの受光量を変化させても良い。
【0066】
さらに、上記の実施形態では、感度の異なる2つの受光素子を備える例を示したが、3種類以上の感度の異なる受光素子を備えても良い。
【0067】
また、上記の実施形態で説明した処理を実行可能な撮像素子も本発明の具体的態様として有効である。例えば、撮像素子13としてCCD撮像素子を備えても良い。この場合、全画素の出力を一旦出力した後に、上記の実施形態で説明した処理を行えばよい。
【0068】
また、上記の実施形態においてCPU197が行った処理の一部または全部を、コンピュータで実現する構成としても良い。この場合、コンピュータに、本実施形態のCPU19が行った処理(図4,図6)の一部または全部を実行するための画像処理プログラムを記憶しておき、この画像処理プログラムにより、同様の処理を行うことで、本実施形態と同等の効果を得ることができる。なお、画像処理プログラムで実現する際には、付帯情報などに適宜必要な情報を記憶しておき、この情報に基づいて、各処理を行えば良い。
【0069】
以上の詳細な説明により、実施形態の特徴点および利点は明らかになるであろう。これは、特許請求の範囲が、その精神および権利範囲を逸脱しない範囲で前述のような実施形態の特徴点および利点にまで及ぶことを意図する。また、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、あらゆる改良および変更に容易に想到できるはずであり、発明性を有する実施形態の範囲を前述したものに限定する意図はなく、実施形態に開示された範囲に含まれる適当な改良物および均等物によることも可能である。
【符号の説明】
【0070】
11…電子カメラ、13…撮像素子、14…AFE、15…画像処理部、19…CPU


【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮光されたオプティカルブラック領域と有効領域とからなり、前記オプティカルブラック領域および前記有効領域には、第1受光感度で第1画像信号を生成する第1受光素子と、同一条件下で前記第1の受光感度よりも高感度の第2受光感度で第2画像信号を生成する第2受光素子とをそれぞれ含む画素を複数有する撮像素子と、
前記第1画像信号および前記第2画像信号に対して、前記オプティカルブラック領域の出力に含まれる暗電流成分に基づくクランプ処理を行う補正部と、
前記クランプ処理が施された前記第1画像信号および前記第2画像信号の何れか一方に対して、前記第1受光感度および前記第2受光感度の感度比に基づくゲインを乗じて第3画像信号を生成するとともに、前記クランプ処理が施された前記第1画像信号および前記第2画像信号のうち、前記ゲインを乗じていない方の画像信号と、前記第3画像信号との差分の平均値を、前記クランプ処理により発生する横スジに沿った方向における画素列ごとに算出する算出部と
を備えたことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像装置において、
前記クランプ処理が施された前記第1画像信号および前記第2画像信号の少なくとも一方に基づき、記録用の画像データを生成する画像処理部と、
前記差分の平均値と、前記画像データとを関連付けて記録する記録部とをさらに備える
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項3】
請求項1に記載の撮像装置において、
前記クランプ処理が施された前記第1画像信号および前記第2画像信号の少なくとも一方に基づき、記録用の画像データを生成するとともに、前記画像データの生成に際して乗じられるゲインと、前記差分の平均値とに基づいて、前記画像データに対して、前記横スジを低減する画像処理を行う画像処理部をさらに備える
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項4】
請求項3に記載の撮像装置において、
前記画像処理部は、前記画像データの生成に際して、ゲインを乗じる処理を複数回行う場合には、前記複数回の処理に用いる複数のゲインと、前記差分の平均値とに基づいて、前記画像処理を1回行う
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項5】
処理対象の画像データに対する画像処理をコンピュータで実現するための画像処理プログラムであって、
遮光されたオプティカルブラック領域と有効領域とからなり、前記オプティカルブラック領域および前記有効領域には、第1受光感度で第1画像信号を生成する第1受光素子と、同一条件下で前記第1の受光感度よりも高感度の第2受光感度で第2画像信号を生成する第2受光素子とをそれぞれ含む画素を複数有する撮像素子と、前記第1画像信号および前記第2画像信号に対して、前記オプティカルブラック領域の出力に含まれる暗電流成分に基づくクランプ処理を行う補正部とを備えた撮像装置により生成された画像データを、前記処理対象の画像データとして取得する取得ステップと、
前記クランプ処理が施された前記第1画像信号および前記第2画像信号の何れか一方に対して、前記第1受光感度および前記第2受光感度の感度比に基づくゲインを乗じて第3画像信号を生成するとともに、前記クランプ処理が施された前記第1画像信号および前記第2画像信号のうち、前記ゲインを乗じていない方の画像信号と、前記第3画像信号との差分の平均値を、前記クランプ処理により発生する横スジに沿った方向における画素列ごとに算出する算出ステップと
を備えたことを特徴とする画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−38707(P2013−38707A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175156(P2011−175156)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】