説明

撮像装置及びフィルター

【課題】赤外光あるいは紫外光と可視光とを同じように検出することを可能とする撮像装置を提供する。
【解決手段】撮像装置1Aは、レンズ系20、及び、レンズ系20を通過した光が入射する撮像部10を備えており、撮像部10は、第1波長帯の光を受光する複数の第1撮像素子11、及び、第1波長帯と異なる第2波長帯の光を受光する複数の第2撮像素子12を有し、レンズ系20あるいは撮像部10には、第2波長帯の光の光量よりも少ない光量の第1波長帯の光を撮像部に到達させる光学素子30Aが備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、撮像装置及びフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
CCDイメージセンサーやCMOSイメージセンサー等の単板式カラー固体撮像装置は、光電変換素子、及び、光電変換素子の上方に配設された赤色、緑色あるいは青色を透過するカラーフィルターから構成された撮像素子を有する。そして、カラー映像の情報を得るために、カラーフィルターを通過し、光電変換素子によって受光された可視光を、光電変換素子から信号として出力する。一方、近年、可視光以外の成分、即ち、赤外光を検知する単板式カラー固体撮像装置(例えば、特開2008−091753参照)の開発も進められており、可視光のみを検知する場合では実現し得ない新たなアプリケーションの検討も行われている。具体的には、例えば、可視光と赤外光とを同時に検知し、検知した赤外光に関する情報に基づき、高感度化を図り、あるいは又、可視光を検出する光電変換素子に漏れ込む赤外光の影響を抑制し、あるいは又、赤外光を検出することで人の動きを検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−091753
【特許文献2】特開平4−110803号
【特許文献3】特開昭61−015491号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、通常の撮像装置にあっては、図8に模式的に示すように、光電変換素子を構成する材料の特性に起因して、可視光を検出する光電変換素子の感度よりも、赤外光を検出する光電変換素子の感度の方が低い。尚、図8の横軸は光電変換素子に入射する光の波長、縦軸は光電変換素子の光感度である。従って、赤外光を十分に検出しようとした場合、可視光を検出する光電変換素子が飽和してしまい、画質の低下を招くといった問題がある。上記の特開2008−091753においては、赤外光を検出する光電変換素子の構成、構造を、可視光を検出する光電変換素子の構成、構造と異ならせて、赤外光に対する光電変換素子の感度を向上させている。特開2008−091753に提案された光電変換素子の構成、構造は、可視光を検出する光電変換素子の感度と赤外光を検出する光電変換素子の感度を揃えることに関して効果的であるが、赤外光を検出する光電変換素子の構成、構造と可視光を検出する光電変換素子の構成、構造とを同じとすることが、撮像装置の製造プロセスの観点から望ましい。
【0005】
赤外光を透過させる一方、可視光を透過させないフィルターが、例えば、特開平4−110803号から周知であるが、このようなフィルターを撮像装置に取り付けたのでは、光電変換素子によって可視光を検出することができない。また、赤色光及び緑色光よりも青色光をより多く光電変換素子に導入するためのスペクトル・フィルター装置が、例えば、特開昭61−015491号から周知であるが、このようなスペクトル・フィルター装置を、可視光及び赤外光を検出する光電変換素子を備えた撮像装置に取り付けても、これらの光電変換素子によって赤外光及び可視光を同じような感度で検出することはできない。尚、紫外光と可視光との関係に関しても、同じような問題、即ち、紫外光及び可視光を同じような感度で検出することができないといった問題がある。
【0006】
従って、本開示の目的は、赤外光あるいは紫外光と可視光とを同じように検出することを可能とする撮像装置、及び、係る撮像装置での使用に適したフィルターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本開示の撮像装置は、
レンズ系、及び、レンズ系を通過した光が入射する撮像部を備えており、
撮像部は、
第1波長帯の光を受光する複数の第1撮像素子、及び、
第1波長帯と異なる第2波長帯の光を受光する複数の第2撮像素子、
を有し、
第2波長帯の光の光量よりも少ない光量の第1波長帯の光を撮像部に到達させる光学素子が備えられている。
【0008】
上記の目的を達成するための本開示の第1の態様に係るフィルターは、円形若しくは正多角形の外形形状を有する第1領域、及び、第1領域を取り囲む環状の第2領域から構成されており、
第1領域は、第1波長帯の光、及び、第1波長帯と異なる第2波長帯の光を通過させ、
第2領域において、第1波長帯の光の光透過率は第2波長帯の光の光透過率よりも低い。
【0009】
上記の目的を達成するための本開示の第2の態様に係るフィルターは、第1波長帯の光、及び、第1波長帯と異なる第2波長帯の光を通過させるフィルターであって、
第1波長帯の光の光透過率は第2波長帯の光の光透過率よりも低い。
【発明の効果】
【0010】
本開示の撮像装置には、第2波長帯の光の光量よりも少ない光量の第1波長帯の光を撮像部に到達させる光学素子が備えられている。また、本開示の第1の態様に係るフィルターにあっては、第2領域において、第1波長帯の光の光透過率は第2波長帯の光の光透過率よりも低い。更には、本開示の第2の態様に係るフィルターおいて、第1波長帯の光の光透過率は第2波長帯の光の光透過率よりも低い。従って、光学素子全体として、あるいは又、フィルター全体として、第2波長帯の光はより多くの光量で撮像部に到達し、第1波長帯の光はより少ない光量で撮像部に到達する。その結果、撮像部において、第1波長帯の光と第2波長帯の光とを同じような感度で検出することが可能となる。尚、撮像装置において、通常、不所望の波長を有する赤外光をカットするためのIRカットフィルターが配されているが、本開示の第2の態様に係るフィルターにあっては、その構成、構造、配置に依存するが、IRカットフィルターを代替することが可能であり、この場合には、撮像装置の大幅な設計変更、製造工程の変更は不要である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例1の撮像装置の概念図及び実施例1のフィルターの模式的な断面図であり、図1の(C)は、実施例2のフィルターの模式的な断面図である。
【図2】図2の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例1の撮像装置の撮像部における撮像素子の配列を模式的に示す図、及び、第1撮像素子の模式的な一部断面図である。
【図3】図3の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例3の撮像装置の概念図及び実施例3のフィルターの模式的な断面図である。
【図4】図4の(A)、(B)及び(C)は、それぞれ、実施例5の撮像装置の概念図、実施例5のフィルターの模式的な断面図、及び、実施例5のフィルターの模式的な正面図であり、図4の(D)は、実施例6のフィルターの模式的な断面図である。
【図5】図5は、実施例8の撮像装置の概念図である。
【図6】図6の(A)、(B)及び(C)は、実施例1のフィルターの光透過率、IRカットフィルターの光透過率、及び、実施例1のフィルター及びIRカットフィルターの組合せにおける光透過率を模式的に示す図である。
【図7】図7の(A)、(B)及び(C)は、実施例4のフィルターの光透過率、UVカットフィルターの光透過率、及び、実施例4のフィルター及びUVカットフィルターの組合せにおける光透過率を模式的に示す図である。
【図8】図8は、可視光を検出する光電変換素子の感度よりも、赤外光を検出する光電変換素子の感度の方が低いことを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本開示を説明するが、本開示は実施例に限定されるものではなく、実施例における種々の数値や材料は例示である。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本開示の撮像装置、本開示の第1の態様及び第2の態様に係るフィルター、全般に関する説明
2.実施例1(本開示の撮像装置及び本開示の第1の態様に係るフィルター)
3.実施例2(実施例1の変形)
4.実施例3(実施例1の別の変形)
5.実施例4(実施例1の更に別の変形)
6.実施例5(本開示の撮像装置及び本開示の第2の態様に係るフィルター)
7.実施例6(実施例5の変形)
8.実施例7(実施例5の別の変形)
9.実施例8(実施例1〜実施例7の変形)
10.実施例9(実施例1〜実施例8の変形)、その他
【0013】
[本開示の撮像装置、本開示の第1の態様及び第2の態様に係るフィルター、全般に関する説明]
本開示の撮像装置において光学素子をフィルターから構成する場合、また、本開示の第1の態様若しくは第2の態様に係るフィルターにおいて、フィルターは、フィルター基材、及び、フィルター基材上に形成されたフィルター材料層から成る形態とすることができるし、あるいは又、例えば、フィルター材料がフィルター基材に練り込まれ、あるいは又、分散されて成る形態とすることができる。「フィルターの材料」とは、前者の形態の場合、フィルター材料層を構成する材料(フィルター材料)を意味し、後者の形態の場合、フィルター基材に練り込まれ、あるいは又、分散された材料(フィルター材料)を意味する。あるいは又、フィルターは、フィルター基材、及び、フィルター基材上に形成されたフィルター構造層(例えば、誘電体多層膜)から成る形態とすることができる。
【0014】
本開示の撮像装置において、第1波長帯のピーク波長は、第2波長帯のピーク波長よりも短い形態とすることができるし、あるいは又、第1波長帯のピーク波長は、第2波長帯のピーク波長よりも長い形態とすることができる。前者の場合、第1波長帯は可視光帯に相当し、第2波長帯は赤外光帯に相当する。一方、後者の場合、第1波長帯は可視光帯に相当し、第2波長帯は紫外光帯に相当する。
【0015】
そして、本開示の撮像装置のこれらの好ましい形態において、光学素子はフィルターから成り;フィルターにおいて、第1波長帯の光の光透過率は第2波長帯の光の光透過率よりも低い構成とすることができる。尚、フィルターを構成する材料を適宜選択することで、即ち、第1波長帯の光の光透過率が第2波長帯の光の光透過率よりも低い材料からフィルターを構成することで、第1波長帯の光の光透過率を第2波長帯の光の光透過率よりも低くすることができる。尚、係る構成の撮像装置を、便宜上、『本開示の撮像装置−A−1』と呼ぶ場合がある。あるいは又、フィルターを誘電体多層膜から構成することで、第1波長帯の光の光透過率を第2波長帯の光の光透過率よりも低くすることもできる。尚、係る構成の撮像装置を、便宜上、『本開示の撮像装置−A−2』と呼ぶ場合がある。本開示の撮像装置−A−2にあっては、第2波長帯における不所望の波長の光をカットするフィルターとすることもできる。また、本開示の撮像装置−A−1及び本開示の撮像装置−A−2を総称して、便宜上、『本開示の撮像装置−A』と呼ぶ場合がある。
【0016】
本開示の第2の態様に係るフィルターにおいて、第1波長帯の光の光透過率は第2波長帯の光の光透過率よりも低いが、本開示の第2の態様に係るフィルターにあっても、フィルターを構成する材料を適宜選択することで、即ち、第1波長帯の光の光透過率が第2波長帯の光の光透過率よりも低い材料からフィルターを構成することで、第1波長帯の光の光透過率を第2波長帯の光の光透過率よりも低くすることができる。尚、係る構成のフィルターを、便宜上、『本開示の第2−1の態様に係るフィルター』と呼ぶ場合がある。あるいは又、フィルターを誘電体多層膜から構成することで、第1波長帯の光の光透過率を第2波長帯の光の光透過率よりも低くすることもできる。尚、係る構成のフィルターを、便宜上、『本開示の第2−2の態様に係るフィルター』と呼ぶ場合がある。本開示の第2−2の態様に係るフィルターにあっては、第2波長帯における不所望の波長の光をカットするフィルターとすることもできる。
【0017】
ここで、本開示の撮像装置−Aあるいは本開示の第2の態様に係るフィルターにおいて、第1波長帯の波長400nm以上、650nm未満における平均光透過率は、0%を超え、80%以下であり;第2波長帯における平均光透過率は、80%以上である構成とすることができる。尚、第2波長帯の波長として、650nm乃至1200nm、あるいは、400nm未満を例示することができる。そして、このような好ましい構成を含む本開示の撮像装置−A−1あるいは本開示の第2−1の態様に係るフィルターにおいて、フィルターは、赤色を透過する赤色透過層と、青色を透過する青色透過層とが積層されて成る構成とすることができる。尚、この場合、フィルターは、マゼンタのような分光特性となる。あるいは又、赤色を透過する赤色透過層と、緑色を透過する緑色透過層と、青色を透過する青色透過層とが積層されて成る構成とすることができる。具体的には、赤色透過層は、撮像素子を構成する光電変換素子の上方に設けられた赤色を透過するカラーフィルターと同じ材料(赤色カラーフィルター材料)から構成することができるし、緑色透過層は、撮像素子を構成する光電変換素子の上方に設けられた緑色を透過するカラーフィルターと同じ材料(緑色カラーフィルター材料)から構成することができるし、青色透過層は、撮像素子を構成する光電変換素子の上方に設けられた青色を透過するカラーフィルターと同じ材料(青色カラーフィルター材料)から構成することができる。このような赤色透過層と青色透過層とが積層された構造、あるいは、赤色透過層と緑色透過層と青色透過層とが積層された構造を有するフィルターにあっては、材料(カラーフィルター材料)、並びに、赤色透過層、緑色透過層、青色透過層の層厚を適切に選択することで、第1波長帯の光の光透過率が第2波長帯の光の光透過率よりも低いフィルターを作製することができる。そして、このような構成のフィルターにあっては、赤色透過層、緑色透過層、青色透過層を、薄膜が積層された多層膜干渉フィルターから構成するのではないので、フィルターへの光の入射角に対する依存性を抑制することができる。赤色透過層、緑色透過層、青色透過層の積層構造をその上に形成するためのフィルター基材を構成する材料として、光学ガラスや透明な樹脂を挙げることができる。あるいは又、フィルター基材がフィルター材料としても機能する材料からフィルターを構成することもできる。あるいは又、上記の好ましい構成を含む本開示の撮像装置−A−1あるいは本開示の第2−1の態様に係るフィルターにおいて、フィルターは、2枚の透明電極あるいはグラフェン電極で挟まれたエレクトロクロミック材料層から構成され、あるいは又、2枚の透明電極あるいはグラフェン電極で挟まれた液晶材料層から構成することができ、これらにあっては、電極に印加する電圧を制御することで、エレクトロクロミック材料層あるいは液晶材料層を通過する光の光透過率の制御を行うことができる。あるいは又、上記の好ましい構成を含む本開示の撮像装置−A−2あるいは本開示の第2−2の態様に係るフィルターにおいて、フィルターを、前述したとおり、誘電体多層膜から構成することもできる。この場合、例えば、高屈折率材料として、TiO2、Ta25、Nb25、Si34等を挙げることができるし、低屈折率材料として、SiO2、MgF2等を挙げることができる。
【0018】
更には、以上に説明した各種の好ましい構成を含む本開示の撮像装置−A−1あるいは本開示の第2−1の態様に係るフィルターにおいて、フィルターはレンズ系の前面部に取り付けられている構成とすることができる。フィルターのレンズ系の前面部への取付けは、レンズ鏡筒の前面部への螺合といった周知の方法に基づき行うことができる。但し、フィルターのレンズ系への取付けはこのような方法に限定するものではない。あるいは又、フィルターは、レンズ系に備えられた絞り部に隣接して配置されている構成とすることもできる。そして、これらの場合、撮像部内に、不所望の波長を有する赤外光をカットするIRカットフィルターを配することが望ましい。一方、以上に説明した各種の好ましい構成を含む本開示の撮像装置−A−2あるいは本開示の第2−2の態様に係るフィルターは、レンズ系のどの部分に配してもよく、例えば、レンズ系の前面部に取り付けてもよいし、レンズ系に備えられた絞り部に隣接して配置してもよく、また、不所望の波長を有する赤外光をカットする誘電体多層膜からフィルターを構成し、しかも、このフィルターを撮像部内に配せば、従来の不所望の波長を有する赤外光をカットするIRカットフィルターが不要となる。
【0019】
あるいは又、上記の好ましい形態において、
光学素子はフィルターから成り、
フィルターは、円形若しくは正多角形の外形形状を有する第1領域、及び、第1領域を取り囲む環状の第2領域から構成されており、
第1領域は、第1波長帯及び第2波長帯の光を通過させ、
第2領域において、第1波長帯の光の光透過率は第2波長帯の光の光透過率よりも低い構成とすることができる。尚、係る構成の撮像装置を、便宜上、『本開示の撮像装置−B』と呼ぶ。
【0020】
そして、本開示の撮像装置−Bあるいは本開示の第1の態様に係るフィルターにあっては、第1領域と第2領域との境界における第2領域の部分から、第2領域の外周に向けて、第1波長帯の光の光透過率が、暫時、低下している構成とすることができる。このような構成にすることで、第1領域と第2領域との境界において、光の回折の発生を抑制することが可能となり、レンズ系の第1波長帯におけるMTF(Modulation Transfer Function)の低下を防止することができる。尚、第1波長帯の光の光透過率の暫時の低下は、例えば、ガウス関数を用いて表現することができる。
【0021】
上記の好ましい構成を含む本開示の撮像装置−Bあるいは本開示の第1の態様に係るフィルターにおいて、フィルターはアポダイゼーション・フィルターから成る構成とすることができる。尚、アポダイゼーション・フィルターの構成は周知の構成とすることができる。あるいは又、アポダイゼーション・フィルターの構成として、第2領域を、赤色を透過する赤色透過層と、青色を透過する青色透過層とが積層されて成り、赤色透過層の厚さ及び青色透過層の厚さが、第1領域と第2領域との境界における第2領域の部分から、第2領域の外周に向けて、厚くなる構成を挙げることができる。あるいは又、第2領域を、赤色を透過する赤色透過層と、緑色を透過する青色透過層と、青色を透過する青色透過層とが積層されて成り、赤色透過層の厚さ、緑色透過層の厚さ及び青色透過層の厚さが、第1領域と第2領域との境界における第2領域の部分から、第2領域の外周に向けて、厚くなる構成を挙げることができる。具体的には、赤色透過層、緑色透過層、青色透過層は、前述したカラーフィルター材料から構成すればよいし、フィルター基材を構成する材料も前述した材料から構成すればよい。
【0022】
更には、以上に説明した好ましい構成を含む本開示の撮像装置−Bあるいは本開示の第1の態様に係るフィルターにおいて、第1領域の面積は可変である構成とすることができる。第1領域の面積を可変とするためには、例えば、フィルターを、所謂絞り羽根と同様の構造とすればよく、この場合、フィルターを構成する絞り羽根を、例えば、前述したフィルター基材を構成する材料から作製すればよい。尚、フィルターを構成する絞り羽根の一方の面にフィルター材料層を形成すればよい。あるいは又、フィルター基材がフィルター材料としても機能する材料からフィルターを構成することもできる。そして、このような第1領域の面積が可変である構成を有するフィルターとすることで、第1波長帯における被写界深度を深くすることができる。あるいは又、本開示の撮像装置−Bあるいは本開示の第1の態様に係るフィルターにおいて、フィルターは、2枚の透明電極あるいはグラフェン電極で挟まれたエレクトロクロミック材料層から構成され、あるいは又、2枚の透明電極あるいはグラフェン電極で挟まれた液晶材料層から構成することができ、これらにあっては、電極に印加する電圧を制御することで、エレクトロクロミック材料層あるいは液晶材料層を通過する光の光透過率の制御、及び、第1領域の面積の制御を行うことができる。あるいは又、本開示の撮像装置−Bあるいは本開示の第1の態様に係るフィルターにおいて、フィルターを、上述したと同様に、誘電体多層膜から構成することもできる。
【0023】
更には、以上に説明した好ましい構成を含む本開示の撮像装置−Bあるいは本開示の第1の態様に係るフィルターにおいて、フィルターは、レンズ系に備えられた絞り部に隣接して配置されている構成とすることができる。尚、この場合、撮像部内に、不所望の波長を有する赤外光をカットするIRカットフィルターを配することが望ましい。
【0024】
更には、以上に説明した好ましい構成を含む本開示の撮像装置−Bあるいは本開示の撮像装置−Aにおいて、フィルターは、レンズ系に対して脱着自在に配設される構成とすることができる。ここで、レンズ系に対してフィルターを脱着自在に配設するためには、例えば、レンズ系において、フィルターと開口とが併設された部材を、レンズ系の光軸と平行な回動軸を中心として回動可能にこの回動軸に取り付け、係る部材を回動軸を中心として回動させることで、レンズ系を通過する光線が開口を通過し、あるいは、フィルターを通過する構成、構造を挙げることができる。あるいは又、レンズ系において、フィルターと開口とが併設された部材を、例えばレンズ系の光軸と直交する方向に滑動自在にレンズ系に取り付け、係る部材を滑動させることで、レンズ系を通過する光線が開口を通過し、あるいは、フィルターを通過する構成、構造を挙げることができる。そして、これらの場合、フィルターと開口とが併設された部材は、1つの部材から構成されていてもよいし、複数の部材片から構成されていてもよい。開口には赤外光吸収フィルターを配してもよい。あるいは又、フィルターをレンズ系から外した場合、必要に応じて、赤外光吸収フィルターを、例えば、レンズ鏡筒の前面部への螺合し、撮像部に入射する赤外光をカットしてもよい。
【0025】
更には、以上に説明した好ましい構成、形態を含む本開示の撮像装置−Aあるいは撮像装置−Bを含む本開示の撮像装置において、撮像装置によってカラー画像を得るために、第1撮像素子は、赤色・撮像素子、緑色・撮像素子及び青色・撮像素子から成る撮像素子ユニットから構成されている形態とすることができ、この場合、1つの撮像素子ユニット及び1つの第2撮像素子から1画素が構成されている形態、即ち、4つの撮像素子によって1画素が構成されている形態とすることができる。尚、第2撮像素子は、赤外光を検出するための赤外光・撮像素子から構成されており、あるいは又、紫外光を検出するための紫外光・撮像素子から構成されている。1つ撮像素子ユニット及び1つの第2撮像素子によって1画素が構成されている場合の撮像素子の配列形態として、ベイヤ配列を例示することができる。ここで、このような4つの撮像素子によって構成された1画素を、便宜上、『赤外光/紫外光有感・撮像素子ユニット』と呼ぶ。また、1つの赤色・撮像素子、2つの緑色・撮像素子及び1つの青色・撮像素子から構成され、ベイヤ配列を有する画素を、便宜上、『可視光有感・撮像素子ユニット』と呼ぶ。撮像部は、2次元マトリクス状に配列された赤外光/紫外光有感・撮像素子ユニットから構成されていてもよい。あるいは又、赤外光/紫外光有感・撮像素子ユニットが1列、配設され、この列に隣接した1列又は複数列に可視光有感・撮像素子ユニットが配列された構成とすることもできるし、あるいは又、赤外光/紫外光有感・撮像素子ユニットが格子状(井桁状)に配設され、残りの領域には可視光有感・撮像素子ユニットが配された構成とすることもできるし、あるいは又、赤外光/紫外光有感・撮像素子ユニットが格子点上に配設され、残りの領域には可視光有感・撮像素子ユニットが配された構成とすることもできる。撮像素子の配列形態は、ベイヤ配列に限定するものではなく、その他、例えば、インターライン配列、GストライプRB市松配列、GストライプRB完全市松配列、市松補色配列、ストライプ配列、斜めストライプ配列、原色色差配列、フィールド色差順次配列、フレーム色差順次配列、MOS型配列、改良MOS型配列、フレームインターリーブ配列、フィールドインターリーブ配列等とすることもできる。
【0026】
あるいは又、以上に説明した好ましい構成、形態を含む本開示の撮像装置−Aあるいは撮像装置−Bを含む本開示の撮像装置において、撮像装置によって白黒(グレー)の画像を得るために、1つの撮像素子ユニット及び1つの第2撮像素子から1画素が構成されている形態とすることもできる。
【0027】
更には、以上に説明した好ましい構成、形態を含む本開示の撮像装置−Aあるいは撮像装置−Bを含む本開示の撮像装置において、撮像装置は、第2波長帯の光を出射する照明装置を更に備えている形態とすることができ、この場合、照明装置が出射する第2波長帯の光には、1つのあるいは複数のピーク波長が含まれる形態とすることができる。照明装置が出射する第2波長帯の光に複数の(例えば、N個の)ピーク波長が含まれる形態とする場合、照明装置を構成する光源として、N種類の光源、例えば、それぞれの発光ピーク波長が異なるN種類のLEDを挙げることができる。照明装置をN回発光させ、異なるピーク波長の第2波長帯の光によって撮像をN回行うことで、あるいは又、フィルターの光透過率特性に依るが、照明装置を1回、N種類のLEDを同時に発光させ、異なるピーク波長の第2波長帯の光によって撮像を1回行うことで、第2撮像素子においては、N種類の画像データを得ることができ、これらのN種類の画像データを解析することで、種々の情報を得ることができる。光源に合わせて、光学素子の第2波長帯の光の光透過率の最適化を図ってもよい。即ち、N種類の光源に合わせて、光学素子の第2波長帯の光の光透過率の最適化、N種類の光源からの光に対する光透過率の割合の最適化、分光スペクトルの最適化を図ってもよい。複数の光源は、全てが赤外光を出射する光源であってもよいし、全てが紫外光を出射する光源であってもよいし、赤外光及び紫外光を出射する光源が混在していてもよい。尚、照明装置の発光強度に依存するが、第1波長帯の光の光透過率が第2波長帯の光の光透過率よりも低い光学素子が好ましい場合もあるし、第1波長帯の光の光透過率が第2波長帯の光の光透過率よりも高い光学素子が好ましい場合もある。照明装置を使用する場合と使用しない場合で、光学素子を交換してもよいし、複数の光学素子を使い分けてもよい。
【0028】
本開示の撮像装置におけるフィルターにあっては、第1波長帯の光を撮像部に到達させるが故に、フィルターにおける第1波長帯の光の光透過率は0%を超える値を有する。本開示の第2の態様に係るフィルターにおいても、第1波長帯の光を通過させるが故に、第1波長帯の光の光透過率は0%を超える値を有する。
【0029】
本開示の撮像装置−Aあるいは本開示の第2の態様に係るフィルターにおいて、第1波長帯の光に対する減光係数をV、第2撮像素子の感度最大値をD2、第2撮像素子の感度最大値D2に相当する光束が第1撮像素子に入射したときの第1撮像素子の飽和レベルをX1(単位:lux)としたとき、
V≦X1/D2
を満足するように、減光係数Vを設定すればよい。また、撮像装置の自動露出機構におけるAE目標設定値が、第1撮像素子の飽和レベルX1に対して1/Y1であるとしたとき、AE目標設定値を(V/Y1)、あるいは、それ以下に設定すればよく、「V」の下限値は撮像装置のダイナミックレンジ設定に依存する。
【0030】
本開示の撮像装置−Bあるいは本開示の第1の態様に係るフィルターにおいて、第1領域の外形形状を正多角形とする場合、正多角形として、例えば、正五角形、正六角形、正七角形、正八角形を挙げることができる。尚、正多角形には、疑似正多角形(各辺が曲線で構成された正多角形、頂点が丸みを帯びた正多角形)が包含される。更には、第2領域における第1波長帯の光の光透過率は、第2領域における第2波長帯の光の光透過率よりも低いが、第2領域における第1波長帯の光の光透過率には0%も含まれる。また、第1領域を開口部から構成することができる。第2領域は、前述した赤色透過層及び青色透過層の積層構造、赤色透過層、緑色透過層及び青色透過層の積層構造や、誘電体多層膜、可視光をカットする周知の市販されているフィルター材料から構成すればよい。更には、第2波長帯を赤外光とする場合、第2領域にUVカットフィルターを配してもよいし、第2波長帯を紫外光とする場合、第2領域にIRカットフィルターを配してもよい。また、第2領域をその上に形成するためのフィルター基材を構成する材料として、前述した材料を挙げることができ、あるいは又、フィルター基材がフィルター材料としても機能する材料からフィルターを構成することもできる。
【0031】
本開示の撮像装置は画像処理部を備え、この画像処理部は、第1撮像素子からの出力を調整する第1ゲイン調整部、及び、第2撮像素子からの出力を調整する第2ゲイン調整部を備えている形態とすることもでき、これによって、第1撮像素子によって得られる画像と、第2撮像素子によって得られる画像との間の輝度調整を容易に行うことができる。そして、この場合、第1ゲイン調整部による第1撮像素子からの出力に対する調整係数をGn1、第2ゲイン調整部による第2撮像素子からの出力に対する調整係数をGn2としたとき、
Gn1/Gn2≧1
を満足することが好ましい。(Gn1/Gn2)の値として、例えば、具体的には、2,4,8等を例示することができる。このような形態によって、第1撮像素子へ到達する第1波長帯の光の光量が低下して、第2撮像素子へ到達する第2波長帯の光の光量との差が大きく変化した場合にも、第1撮像素子によって得られる画像と、第2撮像素子によって得られる画像の間の明るさの差を小さくすることができる。第1撮像素子へ到達する第1波長帯の光の光量が低下して、第2撮像素子へ到達する第2波長帯の光の光量との差に応じて、調整係数Gn1,Gn2を、自動的にあるいは手動で変更可能とすることができる。第1ゲイン調整部における、例えば、赤色・撮像素子、緑色・撮像素子、青色・撮像素子からの出力の調整は、同じであってもよいし、場合によっては、異なっていてもよい。
【0032】
撮像部にあっては、第1波長帯の光及び第2波長帯の光以外の光が第1撮像素子及び第2撮像素子に到達しないように、光学的混色の発生を防止するため、また、不所望の環境光等を排除するために、第1波長帯の光及び第2波長帯の光以外の光をカットするフィルターを、レンズ系に配してもよいし、第1撮像素子及び第2撮像素子に、適宜、配してもよい。第2波長帯を赤外光とする場合、レンズ系にUVカットフィルターを配してもよいし、第2波長帯を紫外光とする場合、レンズ系にIRカットフィルターを配してもよい。あるいは又、上述したとおり、不所望の波長を有する赤外光をカットするIRカットフィルターをレンズ系あるいは撮像部内に配してもよい。第1波長帯の光の光透過率及び第2波長帯の光の光透過率は、撮像素子を構成する光電変換素子が設けられた半導体基板あるいは半導体層における第1波長帯の光及び第2波長帯の光の感度比に基づき決定すればよい。例えば、第1撮像素子と第2撮像素子との感度比をα:1とした場合、光学素子における第1波長帯の光の光透過率と第2波長帯の光の光透過率の比を(1/α):1とすればよいが、これに限定するものではない。また、レンズ系に備えられた光学素子は、第2波長帯の光の光量よりも少ない光量の第1波長帯の光を撮像部に到達させるが、云い換えれば、第1撮像素子からの出力値と、第2撮像素子からの出力値とが同程度となる(より具体的には、限定するものではないが、[第1撮像素子からの出力値/第2撮像素子からの出力値]の割合が、例えば、0.5乃至2となる)ように、光学素子の光透過率を設定し、及び/又は、調整係数Gn1,Gn2を制御すればよい。また、撮像部に入射する光の光量不足で露光時間(露出時間)を長くする必要がある場合、露光時間を長くするのではなく、調整係数Gn1,Gn2を制御することが、撮像された被写体の画像にブレを発生させないといった観点から望ましい。露光時間(露出時間)は、例えば、0.1秒以下とすることが望ましい。第1波長帯における光学素子の分光スペクトルは平坦である必要はない。また、特性の異なる光学素子(例えば、光透過率の異なる光学素子)を複数準備し、例えば、撮像環境に依存して使い分け、ダイナミックレンジの拡大を図ってもよい。
【0033】
以上に説明した好ましい構成、形態を含む本開示の撮像装置−Aあるいは撮像装置−Bを含む本開示の撮像装置において、第1波長帯に属する光の波長として、例えば、400nm以上650nm未満を例示することができ、第2波長帯に属する光の波長として、それ以上(例えば、650nm以上)、あるいは、それ未満(例えば、400nm未満)を例示することができる。第1撮像素子は、少なくとも、例えば、半導体基板あるいは半導体層に形成された光電変換素子、及び、光電変換素子の上方に形成されたカラーフィルターから構成されている。カラーフィルターは、上述したとおり、赤色・撮像素子にあっては赤色カラーフィルター材料から構成され、緑色・撮像素子にあっては緑色カラーフィルター材料から構成され、青色・撮像素子にあっては青色カラーフィルター材料から構成されている。但し、これらに限定するものではなく、場合によっては、フィルターを、シアン色、マゼンタ色、黄色等の特定波長を透過させるカラーフィルターから構成することもできる。また、第2撮像素子は、少なくとも、例えば、半導体基板あるいは半導体層に形成された光電変換素子から構成されている。第2撮像素子には、第1波長帯の光の第2撮像素子への入射をカットするフィルターを配してもよいし、あるいは又、第2波長帯の光以外の光が第2撮像素子へ入射することを防ぐフィルターを配してもよい。レンズ系は、単焦点レンズとしてもよいし、所謂ズームレンズとしてもよく、レンズやレンズ系の構成、構造は、レンズ系に要求される仕様に基づき決定すればよい。撮像素子として、CCD(Charge Coupled Devices)イメージセンサー、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサー、CMD(Charge Modulation Device)型の信号増幅型イメージセンサーを挙げることができる。撮像装置として、表面照射型の固体撮像装置あるいは裏面照射型の固体撮像装置といった固体撮像装置を挙げることができる。本開示の撮像装置から、例えば、デジタルスチルカメラやビデオカメラ、カムコーダ、所謂カメラ付きの携帯電話を構成することができる。本開示の撮像装置は、例えば、監視カメラやゲーム機に搭載されたカメラに適用することができるし、また、使用領域、適用領域として、物体検出、監視カメラ、医療機器、ヘルスケア、モーションキャプチャーを挙げることができる。
【実施例1】
【0034】
実施例1は、本開示の撮像装置、より具体的には、本開示の撮像装置−A、及び、本開示の第2の態様に係るフィルターに関する。図1の(A)に実施例1の撮像装置の概念図を示し、図1の(B)に、実施例1のフィルター(光学素子)の模式的な断面図を示す。更には、図2の(A)に撮像部における撮像素子の配列を模式的に示し、図2の(B)に第1撮像素子の模式的な一部断面図を示す。
【0035】
実施例1の撮像装置1A、あるいは、後述する実施例2〜実施例9の撮像装置は、レンズ系20、及び、レンズ系20を通過した光が入射する撮像部(撮像素子アレイ部)10を備えており、
撮像部(撮像素子アレイ部)10は、
第1波長帯の光を受光する複数の第1撮像素子11、及び、
第1波長帯と異なる第2波長帯の光を受光する複数の第2撮像素子12、
を有する。レンズ系20によって集光された光は、撮像部10において電気信号に変換される。そして、撮像装置には(即ち、レンズ系20あるいは撮像部10には)、第2波長帯の光の光量よりも少ない光量の第1波長帯の光を撮像部10に到達させる光学素子が備えられている。
【0036】
光学素子(具体的には、フィルター30A,30B,30C,30E,30F)は、第2波長帯の光の光量よりも少ない光量の第1波長帯の光を撮像部10に到達させ、且つ、第2波長帯の光の光透過率よりも第1波長帯の光の光透過率が低い。また、実施例1にあっては、第1波長帯のピーク波長は、第2波長帯のピーク波長よりも短い。具体的には、第1波長帯は可視光帯に相当し、第2波長帯は赤外光帯に相当する。尚、撮像部10には、紫外光をカットするUVカットフィルター(図示せず)が配されている。
【0037】
ここで、実施例1、実施例2あるいは実施例3のフィルター30A,30B,30Cは、第1波長帯の光、及び、第1波長帯と異なる第2波長帯の光を通過させるフィルター、具体的には、第2波長帯の光よりも短い波長を有する第1波長帯の光を通過させるフィルターである。そして、実施例1において、フィルター30Aは、第1波長帯の光の光透過率が第2波長帯の光の光透過率よりも低い材料(フィルター材料)から構成されており、フィルター材料層は単層構成である。より具体的には、フィルター30Aは、光学ガラスや透明な樹脂から成るフィルター基材31、及び、フィルター基材31の上に形成されたフィルター材料から成るフィルター材料層32から構成されている。実施例1及び実施例2におけるフィルター30A,30Bはレンズ系20の前面部に取り付けられている。具体的には、フィルター30A,30Bは、レンズ鏡筒(図示せず)の前面部に螺合されている。尚、フィルター基材31がフィルター材料としても機能する材料からフィルター30Aを構成することもできる。
【0038】
あるいは又、実施例1のフィルターを、高屈折率材料層と低屈折率材料層とが交互に複数層、積層されて成る誘電体多層膜から構成することもできる。これによっても、第2波長帯の光(赤外光)の光量よりも少ない光量の第1波長帯の光(可視光)を撮像部10に到達させることができる。
【0039】
また、撮像部10内には、具体的には、撮像部10の光入射側には、不所望の波長を有する赤外光をカットする、周知の構成、構造を有するIRカットフィルター13が配されている。
【0040】
実施例1のフィルター30Aにおいて、第1波長帯の波長(400nm以上、650nm未満)における平均光透過率は、0%を超え、80%以下、より具体的には約50%であり、第2波長帯の波長650nm乃至1200nmにおける平均光透過率は、80%以上、より具体的には、ほぼ100%である。図6の(A)に、実施例1のフィルター30Aの光透過率を模式的に示し、図6の(B)に、IRカットフィルター13の光透過率の光透過率を模式的に示し、図6の(C)に、実施例1のフィルター30A及びIRカットフィルター13の組合せにおける光透過率を模式的に示す。尚、図6の(C)に示す例にあっては、撮像装置の用途にも依るが、例えば、650nm乃至850nmの範囲にある不所望の波長を有する近赤外光がカットされる。あるいは又、撮像装置の用途にも依るが、例えば、650nm乃至800nmの範囲にある不所望の波長を有する近赤外光がカットされ、また、650nm乃至900nmの範囲にある不所望の波長を有する近赤外光がカットされる。更には、例えば、650nm乃至800nmの範囲にある不所望の波長を有する近赤外光をカットする場合、例えば、900nm乃至1200nmの範囲にある不所望の波長を有する近赤外光もカットすることが好ましい。但し、カットされる赤外光の波長範囲は、これらの波長範囲に限定するものではない。
【0041】
レンズ系20にあっては、レンズ鏡筒内に、撮影レンズ21、絞り部22及び結像レンズ23が納められており、ズームレンズとして機能する。撮影レンズ21は、被写体からの入射光を集光するためのレンズである。撮影レンズ21は、焦点を合わせるためのフォーカスレンズや、被写体を拡大するためのズームレンズ等を含み、一般に、色収差等を補正するために複数枚のレンズの組合せによって実現されている。絞り部22は、集光された光の量を調整するために絞り込む機能を有するものであり、一般に、複数枚の板状の絞り羽根を組み合わせて構成されている。少なくとも絞り部22の位置において、被写体の1点からの光は平行光となる。結像レンズ23は、光を撮像部10上に結像する。撮像部10は、カメラ本体部2の内部に配置されている。撮像装置から、例えば、デジタルスチルカメラやビデオカメラ、カムコーダが構成される。カメラ本体部2は、撮像部10の他に、例えば、画像処理手段3及び画像記憶部4を備えている。そして、撮像部10によって変換された電気信号に基づき画像データが形成される。画像処理手段3は、撮像部10から出力された電気信号を、画像データに変換して画像記憶部4に記録する。尚、撮像素子から得られた電気信号に対しては、例えば、周知のデモザイク処理を行えばよい。
【0042】
撮像素子11,12として、CCDイメージセンサーやCMOSイメージセンサーを挙げることができ、図示した例は、表面照射型である。第1撮像素子11は、赤色・撮像素子11r、緑色・撮像素子11g及び青色・撮像素子11bから成る撮像素子ユニットから構成されており、第2撮像素子12は、赤外光を検出するための赤外光・撮像素子から構成されている。そして、1つの撮像素子ユニット及び1つの赤外光・撮像素子から1画素が構成されている。撮像素子の配列形態は、ベイヤ配列であり、撮像部10にあっては、このような4つの撮像素子によって構成された1画素(赤外光/紫外光有感・撮像素子ユニット)が2次元マトリクス状に配列されている。
【0043】
模式的な一部断面図を図2の(B)に示すように、第1撮像素子11は、例えば、シリコン半導体基板40に設けられた光電変換素子41、並びに、その上に、第1平坦化膜42、カラーフィルター43、オンチップレンズ44、及び、第2平坦化膜45が積層されて成る。第2撮像素子12は、カラーフィルター43が設けられていない点を除き、第1撮像素子11と同じ構成、構造を有する。但し、これに限定するものではなく、第2撮像素子12に、第1波長帯の光をカットするフィルターを配してもよい。尚、参照番号46Aは遮光層を表し、参照番号46Bは配線層を表す。
【0044】
このように、実施例1の撮像装置1Aにおいて、レンズ系20には、第2波長帯の光の光量よりも少ない光量の第1波長帯の光を撮像部10に到達させ、しかも、第2波長帯の光の光透過率よりも第1波長帯の光の光透過率が低い光学素子(フィルター30A)が備えられている。また、実施例1のフィルター30Aは、第1波長帯の光の光透過率が第2波長帯の光の光透過率よりも低い。具体的には、実施例1において、フィルター30Aは、第1波長帯の光の光透過率が第2波長帯の光の光透過率よりも低い材料から構成されている。従って、フィルター30A全体として、第2波長帯の光はより多くの光量で撮像部10に到達し、第1波長帯の光はより少ない光量で撮像部10に到達する。その結果、撮像部10では、第1波長帯の光と第2波長帯の光とを同じような感度にて検出することが可能となる。
【実施例2】
【0045】
実施例2は、実施例1の変形である。実施例1にあってはフィルター材料層32を単層から構成した。一方、実施例2にあっては、模式的な断面図を図1の(C)に示すように、フィルター30Bは、赤色を透過する赤色透過層32rと青色を透過する青色透過層32bとが積層されて成る。具体的には、赤色透過層32rは、撮像素子における光電変換素子の上方に設けられた赤色を透過するカラーフィルターと同じ赤色カラーフィルター材料から構成されている。また、青色透過層32bは、撮像素子における光電変換素子の上方に設けられた青色を透過するカラーフィルターと同じ青色カラーフィルター材料から構成されている。赤色透過層32r及び青色透過層32bの厚さは、赤色透過層の厚さと光透過率との関係、青色透過層の厚さと光透過率との関係、及び、目標光透過率に基づき決定することができる。
【0046】
以上の点を除き、実施例2のフィルター、撮像装置の構成、構造は、実施例1にて説明したフィルター、撮像装置の構成、構造と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。また、実施例2のフィルターを、赤色を透過する赤色透過層と、緑色を透過する緑色透過層と、青色を透過する青色透過層とが積層されて成る構成とすることもできる。尚、緑色透過層は、撮像素子における光電変換素子の上方に設けられた緑色を透過するカラーフィルターと同じ緑色カラーフィルター材料から構成すればよい。赤色透過層、緑色透過層及び青色透過層の厚さは、赤色透過層の厚さと光透過率との関係、緑色透過層の厚さと光透過率との関係、青色透過層の厚さと光透過率との関係、及び、目標光透過率に基づき決定することができる。
【実施例3】
【0047】
実施例3も実施例1の変形であるが、本開示の撮像装置−A−2、及び、本開示の第2−2の態様に係るフィルターに関する。実施例3の撮像装置1Cの概念図及び実施例3のフィルターの模式的な断面図を、それぞれ、図3の(A)及び(B)に示す。実施例3にあっては、フィルター30Cを誘電体多層膜32Cから構成する。即ち、フィルター30Cを、高屈折率材料層と低屈折率材料層とが交互に複数層、積層されて成る誘電体多層膜32Cから構成する。これによって、第2波長帯の光(赤外光)の光量よりも少ない光量の第1波長帯の光(可視光)を撮像部10に到達させる。しかも、実施例3において、フィルター30Cは、図6の(C)に示した光透過率特性を有する。即ち、実施例3のフィルター30Cは、不所望の波長を有する赤外光をカットする誘電体多層膜から構成されており、NDフィルターとしての機能と、IRカットフィルターとしての機能を併せ持つ。更には、フィルター30Cは、撮像部10の内部、具体的には、撮像部10の光入射側に配置されている。これによって、従来の不所望の波長を有する赤外光をカットするIRカットフィルター13が不要となる。尚、フィルターを誘電体多層膜から構成すると、フィルターへの光の入射角に対する依存性が生じる場合があるので、このように撮像部10の内部に配置することが好ましい。以上の点を除き、実施例3のフィルター、撮像装置1Cの構成、構造は、実施例1にて説明したフィルター、撮像装置1Aの構成、構造と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。尚、場合によっては、フィルター30Cをレンズ系20に配置してもよい。
【実施例4】
【0048】
実施例4も、実施例1〜実施例3の変形である。但し、実施例4にあっては、第1波長帯のピーク波長は、第2波長帯のピーク波長よりも長い。具体的には、第1波長帯は可視光帯に相当し、第2波長帯は紫外光帯に相当する。そして、撮像部10内には、赤外光をカットするIRカットフィルター(図示せず)が配されている。実施例4の光学素子(フィルター)は、具体的には、第1波長帯の光よりも短い波長を有する第2波長帯の光を通過させるフィルターであり、高屈折率材料層と低屈折率材料層とが交互に複数層、積層されて成る誘電体多層膜から構成されている。実施例4にあっては、第1波長帯の波長(400nm以上、650nm未満)における平均光透過率は、0%を超え、80%以下、より具体的には、例えば、約50%であり(あるいは又、約25%であり、あるいは又、約12.5%であり)、第2波長帯の波長(400nm未満)における平均光透過率は、80%以上、より具体的には、約100%である。実施例4の撮像装置の構成、構造は、撮像部10に、IRカットフィルターが配されている代わりに、紫外光をカットするUVカットフィルターが配されている点を除き、実施例1あるいは実施例2の撮像装置と同じ構成、構造とすることができ、あるいは又、実施例3の撮像装置と同じ構成、構造とすることができるので、詳細な説明は省略する。実施例4のフィルターの光透過率、UVカットフィルターの光透過率、及び、実施例4のフィルター及びUVカットフィルターの組合せにおける光透過率を、図7の(A)、(B)及び(C)に模式的に示す。
【実施例5】
【0049】
実施例5は、本開示の撮像装置、より具体的には、本開示の撮像装置−B、及び、本開示の第1の態様に係るフィルターに関する。図4の(A)に実施例5の撮像装置1Eの概念図を示し、図4の(B)に実施例5のフィルター30Eの模式的な断面図を示し、図4の(C)に実施例5のフィルター30Eの模式的な正面図を示す。
【0050】
実施例5にあっては、実施例1と同様に、第1波長帯のピーク波長は、第2波長帯のピーク波長よりも短い。具体的には、第1波長帯は可視光帯に相当し、第2波長帯は赤外光帯に相当する。尚、撮像部10には、実施例1と同様に、紫外光をカットするUVカットフィルター(図示せず)が配されている。実施例5の光学素子(フィルター30E)、あるいは又、実施例5の光学素子(フィルター30F)は、円形若しくは正多角形(具体的には、正八角形)の外形形状を有する第1領域33、及び、第1領域33を取り囲む環状の第2領域34から構成されており、
第1領域33は、第1波長帯の光、及び、第1波長帯と異なる第2波長帯の光を通過させ(具体的には、第1波長帯の光よりも長い波長を有する第2波長帯の光を通過させ)、
第2領域34において、第1波長帯の光の光透過率は第2波長帯の光の光透過率よりも低い。
【0051】
ここで、フィルター30E,30Fにおいて、第1領域33の面積は可変である。フィルター30E,30Fは、例えば、絞り羽根と同様の構造を有する。このようなフィルター30E,30Fを構成するフィルター基材35は、光学ガラスや透明な樹脂から成る。そして、フィルター基材35上に、赤外光をカットする周知の市販のフィルター材料から成るフィルター材料層36が形成されている。フィルター基材35及びフィルター材料層36によって第2領域34が構成され、絞り羽根と同様の構造を有するフィルター30E,30Fにおける開口部によって第1領域33が構成されている。尚、図4の(B)のフィルター30Eの模式的な断面図においては、絞り羽根構造の重なりの図示を省略している。実施例5にあっては、フィルター材料層36の層厚は一定である。第1領域33の面積を可変とするための機構は、絞り部の絞り状態を制御する機構と同様とすればよい。フィルター30E,30Fは、レンズ系20に備えられた絞り部22に隣接して配置されている。あるいは又、フィルター30E,30Fは、レンズ系20に入射した光が、一旦、平行光とされ、最終的に撮像素子11,12上に集光(結像)されるとき、平行光の状態にあるレンズ系20の部分に配置されている。尚、フィルター基材35がフィルター材料としても機能する材料からフィルター30Eを構成することもできる。尚、フィルター30E,30Fを、実施例1において説明した誘電体多層膜から構成することもできる。
【0052】
このように、実施例5の撮像装置1Eにあっても、レンズ系20には、第2波長帯の光の光量よりも少ない光量の第1波長帯の光を撮像部10に到達させ、しかも、第2波長帯の光の光透過率よりも第1波長帯の光の光透過率が低いフィルター30Eが備えられている。また、実施例5のフィルター30Eにあっては、第2領域34において、第1波長帯の光の光透過率は第2波長帯の光の光透過率よりも低い。従って、フィルター30E全体として、第2波長帯の光はより多くの光量で撮像部10に到達し、第1波長帯の光はより少ない光量で撮像部10に到達する。その結果、第1波長帯の光と第2波長帯の光とを同じような感度にて検出することが可能となる。
【0053】
尚、絞り部22の開口部の大きさよりも第1領域33の大きさを小さくすることで、撮像部10に入射する可視光は、実体的には、第1領域33によって絞られる。また、絞り部22の開口部を通過する赤外光は、第1領域33及び第2領域34を通過して撮像部10に到達する。絞り部22とフィルター30Eの位置関係は、図示したように、フィルター30Eが撮像部側に位置してもよいし、これとは逆に、絞り部22が撮像部側に位置してもよい。
【実施例6】
【0054】
実施例6は、実施例5の変形である。模式的な断面図を図4の(D)に示すように、実施例6のフィルター30Fにあっては、第1領域33と第2領域37との境界における第2領域37の部分から、第2領域37の外周に向けて、第1波長帯の光の光透過率が、暫時、低下している。あるいは又、フィルター30Fはアポダイゼーション・フィルターから成る。
【0055】
具体的には、実施例6のフィルター30Fの第2領域37は、赤色を透過する赤色透過層38rと、青色を透過する青色透過層38bとが積層されて成り、赤色透過層38rの厚さ及び青色透過層38bの厚さが、第1領域33と第2領域37との境界における第2領域37の部分から、第2領域37の外周に向けて、厚くなる。赤色透過層38r及び青色透過層38bは、実施例2において説明したカラーフィルター材料から構成されている。
【0056】
より具体的には、赤色透過層38r及び青色透過層38bにあっては、第1領域33と第2領域37との境界における第2領域37の部分における厚さを0μm、第2領域37の外周の部分における厚さを、赤色透過層の厚さと光透過率との関係、青色透過層の厚さと光透過率との関係、及び、目標光透過率に基づき決定した。厚さはガウス関数に従い増加する。
【0057】
以上の点を除き、実施例6のフィルター、撮像装置の構成、構造は、実施例5にて説明したフィルター、撮像装置の構成、構造と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。尚、赤色透過層38r及び青色透過層38bは、例えば、膜厚傾斜(ウェッジ)成膜法、あるいは、特開2003−155556号公報に開示されたウエッジ形状膜の製造法に基づき形成することができる。また、フィルターの第2領域を、赤色を透過する赤色透過層と、緑色を透過する緑色透過層と、青色を透過する青色透過層とが積層されて成り、赤色透過層の厚さ、緑色透過層の厚さ及び青色透過層38bの厚さが、第1領域と第2領域との境界における第2領域の部分から、第2領域の外周に向けて、厚くなる構成とすることもできる。また、フィルター30E,30Fを、実施例1において説明した誘電体多層膜から構成することもできる。
【実施例7】
【0058】
実施例7も、実施例5あるいは実施例6の変形である。但し、実施例7にあっては、実施例4と同様に、第1波長帯のピーク波長は、第2波長帯のピーク波長よりも長い。具体的には、第1波長帯は可視光帯に相当し、第2波長帯は紫外光帯に相当する。そして、撮像部10には、紫外光をカットするUVカットフィルター(図示せず)が配されている。実施例7の光学素子(フィルター)は、具体的には、第1波長帯の光よりも短い波長を有する第2波長帯の光を通過させるフィルターである。実施例7にあっては、第1波長帯の波長(400nm以上、650nm未満)における平均光透過率は、0%を超え、80%以下、より具体的には、例えば、約50%であり(あるいは又、約25%であり、あるいは又、約12.5%であり)、第2波長帯の波長(400nm未満)における平均光透過率は、80%以上、より具体的には、約100%である。実施例7の撮像装置の構成、構造は、撮像部10に、IRカットフィルターが配されている代わりに、紫外光をカットするUVカットフィルターが配されている点を除き、実施例5あるいは実施例6の撮像装置と同じ構成、構造とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【実施例8】
【0059】
実施例8は、実施例1〜実施例7の変形である。実施例8の撮像装置の概念図を図5に示すように、実施例8にあっては、撮像装置1Hは、第2波長帯の光を出射する照明装置14を更に備えている。照明装置14は、一種のストロボ発光装置である。ここで、実施例8にあっては照明装置14が出射する第2波長帯の光には、複数(具体的には、実施例8にあっては2つ)のピーク波長が含まれる。ここで、ピーク波長として、850nm及び940nmを例示することができる。照明装置14を構成する光源は、N種類の光源(具体的には、ピーク波長850nmの赤外光を出射するLED、及び、ピーク波長940nmの赤外光を出射するLEDの2種類のLED)から成る。
【0060】
実施例8にあっては、照明装置14をN回(実施例8にあっては、具体的には2回)発光させ、異なるピーク波長の第2波長帯の光によって撮像をN回(具体的には、2回)行うことで、第2撮像素子12においては、N種類(具体的には、2種類)の画像データを得ることができる。あるいは又、フィルターの光透過率特性に依るが、照明装置14の全体を1回発光させ、異なるピーク波長の第2波長帯の光による撮像を1回行うことで、第2撮像素子12においては、N種類の画像データを得ることができる。そして、これらのN種類の画像データを解析することで、種々の情報を得ることができる。尚、光源に合わせて、光学素子の第2波長帯の光の光透過率の最適化を図ってもよい。即ち、N種類の光源に合わせて、光学素子の第2波長帯の光の光透過率の最適化、N種類の光源からの光に対する光透過率の割合の最適化、分光スペクトルの最適化を図ってもよい。
【0061】
以上の点を除き、実施例8の撮像装置は、実施例1〜実施例2、実施例5〜実施例6において説明した撮像装置と同じ構成、構造とすることができるので、詳細な説明は省略する。尚、照明装置14が出射する第2波長帯の光を紫外光とすれば、実施例4、実施例7において説明した撮像装置と同じ構成、構造とすることができる。
【実施例9】
【0062】
実施例9は、実施例1〜実施例8の変形である。実施例9の撮像装置にあっては、画像処理手段3に画像処理部が備えられている。この画像処理部は、第1撮像素子11からの出力を調整する第1ゲイン調整部、及び、第2撮像素子12からの出力を調整する第2ゲイン調整部を備えている。そして、第1ゲイン調整部による第1撮像素子11からの出力に対する調整係数をGn1、第2ゲイン調整部による第2撮像素子12からの出力に対する調整係数をGn2としたとき、
Gn1/Gn2≧1
を満足する。(Gn1/Gn2)の値として、例えば、具体的には、2,4,8等を例示することができる。これによって、撮影環境が変化し、第1撮像素子11へ到達する第1波長帯の光(可視光)の光量が低下して、第2撮像素子12へ到達する第2波長帯の光(赤外光あるいは紫外光)の光量との差が大きく変化した場合にも、第1撮像素子11によって得られる画像と、第2撮像素子12によって得られる画像の間の明るさの差を小さくすることができる。
【0063】
以上の点を除き、実施例9の撮像装置は、実施例1〜実施例8において説明した撮像装置と同じ構成、構造とすることができるので、詳細な説明は省略する。尚、第1撮像素子11へ到達する第1波長帯の光の光量が低下して、第2撮像素子12へ到達する第2波長帯の光の光量との差に応じて、調整係数Gn1,Gn2を、自動的にあるいは手動で変更すればよい。
【0064】
以上、本開示を好ましい実施例に基づき説明したが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例において説明した撮像装置、撮像素子、光学素子、フィルターの構成、構造は例示であり、適宜、変更することができる。撮像素子を、図示したような表面照射型としてもよいし、図示しないが、裏面照射型としてもよい。また、撮像部は、例えば、赤外光/紫外光有感・撮像素子ユニットが1列、配設され、この列に隣接した(2n−1)列(nは、例えば、1以上5以下の正の整数)に1つの赤色・撮像素子、2つの緑色・撮像素子及び1つの青色・撮像素子から構成された可視光有感・撮像素子ユニットが配列された構成とすることもできる。
【0065】
実施例5〜実施例7におけるフィルター30E,30Fは、レンズ系20に対して脱着自在に配設することもできる。具体的には、例えば、レンズ系20において、フィルター30と開口とが併設された部材を、レンズ系20の光軸と平行な回動軸を中心として回動可能にこの回動軸に取り付け、係る部材を回動軸を中心として回動させることで、レンズ系20を通過する光線が開口を通過し、あるいは、フィルター30を通過する。あるいは又、レンズ系20において、フィルター30と開口部とが併設された部材を、例えばレンズ系20の光軸と直交する方向に滑動自在にレンズ系20に取り付け、係る部材を滑動させることで、レンズ系20を通過する光線が開口部を通過し、あるいは、フィルター30を通過する。
【0066】
また、撮像装置によって白黒(グレー)の画像を得るために、1つの撮像素子ユニット及び1つの第2撮像素子から1画素が構成されている形態とすることもできる。実施例にあっては、光電変換素子をシリコン半導体基板に設けたが、使用する基板は、シリコン半導体基板に限定されず、例えば、Si−Ge基板や、Ge基板、Cu、In、Ga、Al、Se、S等から成るカルコパイライト系基板(例えば、Cu−In−Ga−Se基板)、GaAs基板等を用いることもでき、これによって、光電変換素子の受光感度波長帯の拡大や変更を図ることができる。
【0067】
本開示の撮像装置の使用領域、適用領域として、監視カメラ、医療機器、ヘルスケア、モーションキャプチャーを挙げることができる。具体的には、監視カメラへの本開示の撮像装置の適用にあっては、昼間は通常通りの撮像を行い、夜間は第1波長帯である可視光成分が少ないため、第2波長帯を含むLED光源から成る照明装置を用いて撮像するといった、昼夜兼用監視カメラを例示することができる。この場合、第2波長帯として赤外光を想定している。医療機器、ヘルスケアへの本開示の撮像装置の適用にあっては、可視光で通常の撮像を行い、同時に、第2波長帯を含むLED光源から成る照明装置を用いて撮像対象の第2波長帯での反射・吸収特性を求め、例えば、血液中の酸素飽和濃度等を計測することができ、患者の健康状態の診断に用いることができる。また、モーションキャプチャへの本開示の撮像装置の適用にあっては、可視光にて通常の撮像を行い、第2波長帯として近赤外光を用いて、通常撮像状態での距離情報や動き情報を取得し、第1波長領域である可視光で取得した画像に再合成することで、通常画像と距離・動き情報とを同時に取得することができる。
【0068】
また、以上に説明した本開示のフィルターの使用と併せて、あるいは、独立して、
第1撮像素子の光入射側には第1開口領域が形成されており、
第2撮像素子の光入射側には第2開口領域が形成されており、
第1開口領域は第2開口領域よりも小さい形態とすることができる。このような形態とすることで、第2撮像素子が受光する光量よりも第1撮像素子の受光する光量を低下させることができる。開口領域は、光電変換素子の光入射側に形成される遮光層に、所望の大きさの、即ち、所望の開口面積を有する開口領域を形成することで得ることができる。開口領域の平面形状として、円形、あるいは、正多角形(例えば、正五角形、正六角形、正七角形、正八角形)を挙げることができる。尚、正多角形には、疑似正多角形(各辺が曲線で構成された正多角形、頂点が丸みを帯びた正多角形)が包含される。
【0069】
尚、本開示は、以下のような構成を取ることもできる。
[1]《撮像装置》
レンズ系、及び、レンズ系を通過した光が入射する撮像部を備えており、
撮像部は、
第1波長帯の光を受光する複数の第1撮像素子、及び、
第1波長帯と異なる第2波長帯の光を受光する複数の第2撮像素子、
を有し、
第2波長帯の光の光量よりも少ない光量の第1波長帯の光を撮像部に到達させる光学素子が備えられている撮像装置。
[2]第1波長帯のピーク波長は、第2波長帯のピーク波長よりも短い[1]に記載の撮像装置。
[3]第1波長帯のピーク波長は、第2波長帯のピーク波長よりも長い[1]に記載の撮像装置。
[4]第1波長帯の波長400nm以上、650nm未満における光学素子の平均光透過率は、0%を超え、80%以下であり、
第2波長帯の波長における光学素子の平均光透過率は、80%以上である[2]又は[3]に記載の撮像装置。
[5]光学素子はフィルターから成り、
フィルターにおいて、第1波長帯の光の光透過率は第2波長帯の光の光透過率よりも低い[2]乃至[4のいずれか1項に記載の撮像装置。
[6]フィルターは、第1波長帯の光の光透過率が第2波長帯の光の光透過率よりも低い材料から成る[5]に記載の撮像装置。
[7]光学素子は、赤色を透過する赤色透過層と青色を透過する青色透過層とが積層されて成る[6]に記載の撮像装置。
[8]フィルターは誘電体多層膜から成る[5]に記載の撮像装置。
[9]光学素子はレンズ系に取り付けられている[2]乃至[8]のいずれか1項に記載の撮像装置。
[10]光学素子は撮像部に配置されている[8]に記載の撮像装置。
[11]光学素子はフィルターから成り、
フィルターは、円形若しくは正多角形の外形形状を有する第1領域、及び、第1領域を取り囲む環状の第2領域から構成されており、
第1領域は、第1波長帯及び第2波長帯の光を通過させ、
第2領域において、第1波長帯の光の光透過率は第2波長帯の光の光透過率よりも低い[2]乃至[4]のいずれか1項に記載の撮像装置。
[12]第1領域と第2領域との境界における第2領域の部分から、第2領域の外周に向けて、第1波長帯の光の光透過率が、暫時、低下している[11]に記載の撮像装置。
[13]フィルターはアポダイゼーション・フィルターから成る[11]に記載の撮像装置。
[14]第1領域の面積は可変である[11]乃至[13]のいずれか1項に記載の撮像装置。
[15]光学素子は、レンズ系に備えられた絞り部に隣接して配置されている[11]乃至[14]のいずれか1項に記載の撮像装置。
[16]光学素子は、レンズ系に対して脱着自在に配設される[11]乃至[15]のいずれか1項に記載の撮像装置。
[17]第1撮像素子は、赤色・撮像素子、緑色・撮像素子及び青色・撮像素子から成る撮像素子ユニットから構成されている[1]乃至[16]のいずれか1項に記載の撮像装置。
[18]1つの撮像素子ユニット及び1つの第2撮像素子から1画素が構成されている[17]に記載の撮像装置。
[19]1つの撮像素子ユニット及び1つの第2撮像素子から1画素が構成されている[1]乃至[16]のいずれか1項に記載の撮像装置。
[20]第1撮像素子の光入射側には第1開口領域が形成されており、
第2撮像素子の光入射側には第2開口領域が形成されており、
第1開口領域は第2開口領域よりも小さい[1]乃至[19]のいずれか1項に記載の撮像装置。
[21]第2波長帯の光を出射する照明装置を更に備えている[1]乃至[20]のいずれか1項に記載の撮像装置。
[22]照明装置が出射する第2波長帯の光には、複数のピーク波長が含まれる[21]に記載の撮像装置。
[23]《フィルター:第1の態様》
円形若しくは正多角形の外形形状を有する第1領域、及び、第1領域を取り囲む環状の第2領域から構成されたフィルターであって、
第1領域は、第1波長帯の光、及び、第1波長帯と異なる第2波長帯の光を通過させ、
第2領域において、第1波長帯の光の光透過率は第2波長帯の光の光透過率よりも低いフィルター。
[24]第1領域と第2領域との境界における第2領域の部分から、第2領域の外周に向けて、第1波長帯の光の光透過率が、暫時、低下している[23]に記載のフィルター。
[25]アポダイゼーション・フィルターから成る[23]又は[24]に記載のフィルター。
[26]第1領域の面積は可変である[23]乃至[25]のいずれか1項に記載のフィルター。
[27]《フィルター:第2の態様》
第1波長帯の光、及び、第1波長帯と異なる第2波長帯の光を通過させるフィルターであって、
第1波長帯の光の光透過率は第2波長帯の光の光透過率よりも低いフィルター。
[28]第1波長帯の波長400nm以上、650nm未満における平均光透過率は、0%を超え、80%以下であり、
第2波長帯における平均光透過率は、80%以上である[27]に記載のフィルター。
[29]第1波長帯の光の光透過率が第2波長帯の光の光透過率よりも低い材料から成る[27]又は[28]に記載のフィルター。
[30]赤色を透過する赤色透過層と青色を透過する青色透過層とが積層されて成る[29]に記載のフィルター。
[31]誘電体多層膜から成る[27]又は[28]に記載のフィルター。
【符号の説明】
【0070】
1A,1D,1E,1H・・・撮像装置、2・・・カメラ本体部、3・・・画像処理手段、4・・・画像記憶部、10・・・撮像部(撮像素子アレイ部)、11・・・第1撮像素子、11r・・・赤色・撮像素子、11g・・・緑色・撮像素子、11b・・・青色・撮像素子、12・・・第2撮像素子、13・・・IRカットフィルター、14・・・照明装置、20・・・レンズ系、21・・・撮影レンズ、22・・・絞り部、23・・・結像レンズ、30A,30B,30C,30E,30F・・・フィルター(光学素子)、31・・・フィルター基材、32・・・フィルター材料層、32r,38r・・・赤色透過層、32b,38b・・・青色透過層、32C・・・誘電体多層膜、33・・・第1領域、34,37・・・第2領域、35・・・フィルター基材、36・・・フィルター材料層、40・・・シリコン半導体基板、41・・・光電変換素子、42・・・第1平坦化膜、43・・・カラーフィルター、44・・・オンチップレンズ、45・・・第2平坦化膜、46A,46B・・・配線層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ系、及び、レンズ系を通過した光が入射する撮像部を備えており、
撮像部は、
第1波長帯の光を受光する複数の第1撮像素子、及び、
第1波長帯と異なる第2波長帯の光を受光する複数の第2撮像素子、
を有し、
第2波長帯の光の光量よりも少ない光量の第1波長帯の光を撮像部に到達させる光学素子が備えられている撮像装置。
【請求項2】
第1波長帯のピーク波長は、第2波長帯のピーク波長よりも短い請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
第1波長帯のピーク波長は、第2波長帯のピーク波長よりも長い請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
光学素子はフィルターから成り、
フィルターにおいて、第1波長帯の光の光透過率は第2波長帯の光の光透過率よりも低い請求項2又は請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
光学素子はフィルターから成り、
フィルターは、円形若しくは正多角形の外形形状を有する第1領域、及び、第1領域を取り囲む環状の第2領域から構成されており、
第1領域は、第1波長帯及び第2波長帯の光を通過させ、
第2領域において、第1波長帯の光の光透過率は第2波長帯の光の光透過率よりも低い請求項2又は請求項3に記載の撮像装置。
【請求項6】
第1領域と第2領域との境界における第2領域の部分から、第2領域の外周に向けて、第1波長帯の光の光透過率が、暫時、低下している請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
フィルターはアポダイゼーション・フィルターから成る請求項5に記載の撮像装置。
【請求項8】
第1領域の面積は可変である請求項5に記載の撮像装置。
【請求項9】
第1撮像素子は、赤色・撮像素子、緑色・撮像素子及び青色・撮像素子から成る撮像素子ユニットから構成されている請求項1に記載の撮像装置。
【請求項10】
1つの撮像素子ユニット及び1つの第2撮像素子から1画素が構成されている請求項9に記載の撮像装置。
【請求項11】
1つの撮像素子ユニット及び1つの第2撮像素子から1画素が構成されている請求項1に記載の撮像装置。
【請求項12】
第2波長帯の光を出射する照明装置を更に備えている請求項1に記載の撮像装置。
【請求項13】
照明装置が出射する第2波長帯の光には、複数のピーク波長が含まれる請求項12に記載の撮像装置。
【請求項14】
円形若しくは正多角形の外形形状を有する第1領域、及び、第1領域を取り囲む環状の第2領域から構成されたフィルターであって、
第1領域は、第1波長帯の光、及び、第1波長帯と異なる第2波長帯の光を通過させ、
第2領域において、第1波長帯の光の光透過率は第2波長帯の光の光透過率よりも低いフィルター。
【請求項15】
第1領域と第2領域との境界における第2領域の部分から、第2領域の外周に向けて、第1波長帯の光の光透過率が、暫時、低下している請求項14に記載のフィルター。
【請求項16】
アポダイゼーション・フィルターから成る請求項14に記載のフィルター。
【請求項17】
第1領域の面積は可変である請求項14に記載のフィルター。
【請求項18】
第1波長帯の光、及び、第1波長帯と異なる第2波長帯の光を通過させるフィルターであって、
第1波長帯の光の光透過率は第2波長帯の光の光透過率よりも低いフィルター。
【請求項19】
第1波長帯の波長400nm以上、650nm未満における平均光透過率は、0%を超え、80%以下であり、
第2波長帯における平均光透過率は、80%以上である請求項18に記載のフィルター。
【請求項20】
赤色を透過する赤色透過層と青色を透過する青色透過層とが積層されて成る請求項18に記載のフィルター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−85215(P2013−85215A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−39687(P2012−39687)
【出願日】平成24年2月27日(2012.2.27)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】