説明

撮像装置

【課題】部品の位置決めや調整の手間を抑制しつつ、撮像装置の姿勢を正確に検出できるようにする。
【解決手段】撮像装置であって、互いに直交する第1の測定軸27と第2の測定軸28とを有する加速度センサ26であって、撮像装置の撮像光軸と直交する平面上に、第1の測定軸と第2の測定軸が鉛直方向に対して略45度傾いた状態で配置された加速度センサと、第1の測定軸による重力加速度の検出結果と、第2の測定軸による重力加速度の検出結果の比の逆正接関数を算出することにより、撮像装置のローリング方向の傾斜度合いを求める演算部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラ等の撮像装置における電子水準器の制御技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、画像を傾きなく撮影するために、水平面からのカメラの傾きの程度、傾きの方向を知らせる機能や、撮像した画像の傾き量を検出して後処理により画像の傾きを補正する機能を備えるデジタルカメラ等の撮像装置が提案されている。このような撮像装置では、傾きを検出するために加速度センサを備えている。
【0003】
例えば、特許文献1においては、2軸の測定軸を有する傾斜センサ(加速度センサ)の一方の測定軸を水平方向に、もう一方の測定軸を垂直方向に向くように配置し、カメラの横位置と縦位置の各々の姿勢においてカメラの傾斜度合いの検出を行なっている。特許文献1に記載されている技術では、加速度センサの敏感度が高い測定軸に切り替えて使用するという考えから、カメラの姿勢によって、測定軸を変化させる。例えば横位置の時には、その状態においてセンサの敏感度が高い水平方向である第1の測定軸、カメラが縦位置の場合は、その状態においてセンサの敏感度が高い水平方向である第2の測定軸を用いて水平面からの傾斜度合いを測定している。これにより精度の良い傾斜度合いの検出を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−343476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、加速度センサを基板に配置する場合に、撮像光軸を中心としたロール方向において、部品の実装位置、部品を実装した基板の取り付け位置を厳密に位置決めする必要がある。なぜならば、測定軸を水平方向と殆どズレ無く配置にしなければ、たとえ、水平点のオフセット調整を行なったとしても、カメラをピッチ方向にあおった時には、測定軸の水平点がピッチ方向の重力の影響を受けてずれてしまうからである。また、加速度センサの敏感度等の特性が温度により変化する場合には、環境温度の変化につれて水平点がずれてしまう問題がある。また、カメラの姿勢に応じて測定軸が異なるため、工場出荷時に水平点のオフセット調整を行なう場合、カメラの二つの姿勢をつくって、2つの測定軸に対してオフセット調整を行なう必要があり、調整工程が複雑化してしまうという問題がある。
【0006】
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、部品の位置決めや調整の手間を抑制しつつ、撮像装置の姿勢を正確に検出できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係わる撮像装置は、撮像装置であって、前記撮像装置に加わる、互いに交わる第1の測定軸方向と第2の測定軸方向の加速度を測定する加速度センサと、前記第1の測定軸によって測定された重力加速度と、前記第2の測定軸によって測定された重力加速度の比の逆正接関数を算出することにより、前記撮像装置の撮像光軸周りの傾斜度合いを求める演算手段とを有し、前記加速度センサは、前記撮像装置を横位置にした場合に、前記第1の測定軸と前記第2の測定軸が鉛直方向の軸に対して対称となるように、前記撮像光軸と直交する平面に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、部品の位置決めや調整の手間を抑制しつつ、撮像装置の姿勢を正確に検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係わる撮像装置の第1の実施形態としてのデジタル一眼レフカメラの構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態におけるカメラ本体への加速度センサの配置図である。
【図3】第1の実施形態における加速度センサの出力特性を示す図である。
【図4】第1の実施形態における電子水準器の表示例を示す図である。
【図5】第1の実施形態における動作フローチャートである。
【図6】第2の実施形のデジタルカメラの構成を示すブロック図である。
【図7】第2の実施形態におけるカメラ本体が横位置の場合の加速度センサの配置図である。
【図8】第2の実施形態におけるカメラ本体が縦位置の場合の加速度センサの配置図である。
【図9】第2の実施形態における加速度センサの出力特性を示す図である。
【図10】第2の実施形態における縦位置時にピッチ方向に傾いたときの加速度センサの出力特性を示す図である。
【図11】第2の実施形態における横位置時の電子水準器の表示例を示す図である。
【図12】第2の実施形態における縦位置時の電子水準器の表示例を示す図である。
【図13】第2の実施形態における動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、本発明に係わる撮像装置の第1の実施形態としてのデジタル一眼レフカメラの構成を示すブロック図である。
【0011】
図1において、1はカメラ本体であり、2は被写体像をカメラ本体1内の撮像素子12に結像させるための撮影レンズである。3はMPUであり、カメラ本体1の全体を制御するためのマイクロプロセッサである。MPU(Micro Processing Unit)3は、被写体のピントを合わせるためのAFセンサ4の制御、AFセンサ4から得られた像に基づいてピントを合わせるための演算、その演算結果に基づき撮影レンズ2のフォーカス駆動機構21を駆動させるためのレンズMPU20への通信を行う。また、被写体を測光するためのAEセンサ5の制御、AEセンサ5より得られた情報に基づき、設定されたISO感度に応じて、シャッター速度と絞り値の組み合わせを決める露出演算プログラム制御を行う。また、レリーズボタン、電子ダイアル等を含みユーザーインターフェイスとなるSW操作系(スイッチ操作系)7からの情報を受け取る。また、撮影レンズ2により結像された被写体像をファインダ系と撮像系へ分離するためのメインミラー(不図示)を駆動させるためのミラー駆動機構8の制御も行う。さらに、AEセンサ5により得られた情報を用いてカメラ内のプログラムにより決められたシャッター速度に応じ、先幕、後幕を有するフォーカルプレーンシャッターを駆動するシャッター駆動機構9の制御を行う。
【0012】
また、26はカメラ本体1の撮影光軸回りのロール方向(ローリング方向)の傾斜角度を検出する加速度センサであり、MPU3に接続されている。MPU3は加速度センサ26から得られる情報を用いて、ロール方向の傾斜角度を算出し、DSP(Digital Signal Processor)10を介してカメラ本体の傾斜度合いを表示部15に表示させる。
【0013】
次に、撮影レンズ2の動作について説明する。撮影レンズ2のレンズMPU20は、MPU3により演算されたピント情報をMPU3から受信し、その結果にもとづき、フォーカス調整用レンズを駆動させるフォーカス駆動機構21を制御し、ピントを合わせる。また、レンズMPU20は、MPU3により演算された絞り値をMPU3から受信し、その結果にもとづき、絞り羽根を制御する絞り駆動機構22を制御し、所定の露出値が得られるようにする。
【0014】
次に、カメラ本体1における符号10〜15で示されるデジタル部について説明する。12は被写体光を光電変換してアナログの画像信号を出力する撮像素子である。13はA/D変換器であり、撮像素子12から出力されたアナログの画像信号をデジタル画像信号へ変換する。また、TG(タイミングジェネレータ)14は、撮像素子12の駆動制御を行うとともに、撮像素子12から出力されるアナログ画像信号と同期し、A/D変換するための同期クロックをA/D変換器13へ送信する。また、TG14は、A/D変換器13から出力されたデジタルデータに対してデータラッチをおこなうタイミングクロック信号をDSP10に送信し、A/D変換器13からDSP10へデジタルデータを転送する制御を行う。メモリ群11は、データを加工するために一次的に記憶することが可能なRAMや、DSP10により加工された画像データを記録することが可能な記録メディア等からなる。15は液晶パネルからなる表示部であり、画像や撮影情報を表示する。
【0015】
次に、図2、図3を用いて加速度センサの配置とカメラの姿勢に応じた加速度センサの出力について説明する。
【0016】
まず、図2を用いて加速度センサ26のカメラ本体1への配置について説明する。ここで、角速度センサ26は2軸の測定軸を持っており、第1の測定軸方向の加速度と、第2の測定軸方向の加速度を測定できる。27は加速度センサ26の第1の測定軸でありX軸と定義する。また、28は加速度センサ26の第2の測定軸であり、本実施例においては第1の測定軸と直交しているものとし、この第2の測定軸をY軸と定義する。加速度センサ26は、加速度センサの2つの測定軸であるX軸とY軸からなる平面がカメラの光軸に対して垂直な平面上に配置され、且つ、X軸が重力方向(鉛直方向)から所定の角度A(29)だけ傾斜した状態で配置される。ここで、本実施例においては所定の角度A(29)は45度であり、Y軸はX軸と直交しているので、Y軸もX軸とは重力方向(鉛直方向)と対称なっており、ともに重力方向(鉛直方向)から45度傾いている。
【0017】
次に、図3を用いて、図2のカメラ本体1をロール方向へ傾斜させた場合の加速度センサ26の出力特性について説明する。図3のグラフは、横軸がカメラのロール方向、即ち撮像光軸周りの傾斜角度であるロール角を示し、縦軸は加速度センサが測定する重力加速度を示している。加速度センサの測定軸が重力方向と同じ方向を向いている時(重力方向と平行である時)は、加速度センサの出力は1.0g、加速度センサの測定軸が水平面の方向である時は、加速度センサの出力は0.0gとなる。なお、ここでgは重力加速度である。32は加速度センサの第1の測定軸すなわちX軸の出力、33は加速度センサの第2の測定軸すなわちY軸の出力である。また、34〜37はカメラ(加速度センサ26)のロール角方向の傾斜角に対する加速度センサの出力を示す。
【0018】
カメラ本体1が横位置の状態においては、34で示したように、X軸とY軸が重力方向から45度傾いており、X軸、Y軸の出力は、いずれもcos(45°)・g≒0.7gである。傾斜度合いは、下記の式(1)で算出される。
【0019】
傾斜度合い=arctan(X軸data/Y軸data) …(1)
ただし、X軸data,Y軸dataはそれぞれX軸、Y軸の出力であり、加速度センサが測定する重力加速度であるとする。よって、34の傾斜度合いは、arctan(0.7g/0.7g)=45°と算出される。
【0020】
同様にカメラ本体1のグリップ24を下にした縦位置の状態が35であり、35の傾斜度合いは、arctan(−0.7g/0.7g)=135°と算出される。
【0021】
同様にカメラ本体を上下逆にした状態が36であり、36の傾斜度合いは、arctan(−0.7g/−0.7g)=225°と算出される。
【0022】
また、同様にカメラ本体1のグリップを上にした縦位置の状態が37であり、37の傾斜度合いは、arctan(0.7g/−0.7g)=315°と算出される。
【0023】
カメラの傾斜度合いとして、通常の横位置を0度と定義すると、上記の算出結果から45度減算した角度がカメラの傾斜度合いとなる。また、上記の34、35、36、37の各姿勢において、加速度センサのいずれの測定軸においても、その最大敏感度の約70%程度の敏感度を使用しているため、十分に高い精度で各姿勢における水平点の検出精度を得ることが出来る。
【0024】
また、本実施形態では、加速度センサ26の取り付け精度のバラツキにより測定軸27が重力方向に対して45度の位置から多少ずれていても、ロール角検出時にピッチ角方向のあおりの影響を受けない。カメラ本体1がピッチ方向にあおられても、測定軸27,28は均等にピッチ角による重力加速度を測定するため、逆正接関数演算によってピッチ角の影響をキャンセルすることが出来る。例えば、測定軸27が約3度ずれて配置された場合には、ロール角の検出としては、
arctan{cos(42°)・g/cos(−48°)・g}=42deg
となり、オフセット調整により42degを水平点として定義するが、この状態において、カメラをピッチ方向に10度あおったとき時の演算としては、
arctan[{cos(42°)・g・sin(10°)}/{cos(−48°)・g・sin(10°)}]
=arctan{cos(42°)・g/cos(−48°)・g}=42deg
となり、ピッチ方向の影響がキャンセルされる。
【0025】
また、本実施形態では、加速度センサ26の敏感度が温度により変化する特性を持っていたとしても、測定軸27,28の敏感度の温度特性Tx,Tyは、略Tx≒Tyであるために、下記演算式の如く、測定軸27,28の逆正接関数演算をすることで温度変化による影響をキャンセルすることが出来る。
【0026】
arctan[{cos(45°)・g・Tx}/{cos(−45°)・g・Ty}]
≒arctan{cos(45°)・g/cos(−45°)・g}≒45deg
また、本実施形態では、常に、測定軸27,28の2つの結果よる逆正接関数により角度演算をしているため、ある1点の姿勢についてのみオフセット調整することで、2軸についてオフセット調整をすることが出来る。
【0027】
次に、図4、図5を用いて、撮像装置の水準器の動作について説明する。図4は、カメラ本体の背面に取り付けられた表示部に、撮像スルー画像表示と水準器表示を行った状態の例を示す図である。15はTFT液晶等からなる表示部、41はカメラの傾斜度合いを表示する水準器表示、42は傾斜度合いを示す表示バーであり、カメラ本体1がロール方向に傾斜すると、それに応じて表示バーと水準器表示の目盛りとの相対位置が変化し、傾斜量を表示する。また、44はスルー画像モードに入るためのボタンSW(スイッチ)であり、ボタンSW44の押下をMPU3が検出し、カメラはスルー画像モード(ライブビューモード)となる。また、43は水準器表示モードに入るためのボタンSWであり、ボタンSW43の押下をMPU3が検出し、カメラはスルー画像表示に水準器表示を付加させる。
【0028】
次に図5を用いて動作について説明する。カメラ本体1のSW操作系7に含まれるメインSWをONにすると(ステップS1)、MPU3が起動し(ステップS2)、カメラは一旦、光学ファインダによる撮影スタンバイモードに入る(ステップS11)。その後、スルー画像モードボタンであるボタンSW44を押下すると(ステップS3:Yes)、MPU3はミラー駆動機構8を動作させ、ミラーをミラーアップ状態にし、また、シャッター駆動機構9を動作させ、シャッターを開ける動作を行なう。また、同時に、DSP10にスルー画像を出力させるよう指令する。
【0029】
DSP10はTG14を制御することで、撮像素子12、A/Dコンバータ13を動作させ、撮像素子から逐次出力される画像信号にDSP10内部で所定の画像処理を施し、表示部15に対してスルー画像表示を行う(ステップS4)。そしてスルー画像表示による撮影スタンバイ状態となる(ステップS10)。その後、水準器表示モード用のボタンSW43(SW操作系7の一部)を押下すると(ステップS5:Yes)、MPU3は加速度センサ26を駆動させ、所定時間ごとに加速度センサのX軸、Y軸の出力を読み出す(ステップS6)。そして、式(1)のarctan{X軸data/Y軸data}の演算により、カメラのロール方向の傾斜度合いを算出する(ステップS7)。その結果を所定間隔でDSP10に通知し、DSP10はその結果に基づいて、水準器表示を表示部15のスルー画像に加えて表示する(ステップS8)。その結果、カメラは水準器表示を加えたスルー画像撮影モードとなり(ステップS9)、ユーザーは撮像画像の傾斜の有無を判定しながら撮影することが可能となる。
【0030】
(第2の実施形態)
図6は、本発明の第2の実施形態に係わるデジタルカメラのブロック構成を示す図である。第2の実施形態は、第1の実施形態のローリング方向の傾斜度合いの検出に加え、カメラのピッチング方向の傾斜度合いも検出する場合の例である。図6は第1の実施形態を示す図1と同一の部分が多いため、相違部分についてのみ説明し、図1と同一部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0031】
126はカメラ本体のロール方向(ローリング方向)の傾斜度合いを検出する加速度センサであり、MPU3に接続されている。MPU3は加速度センサ126から得られる情報より、ロール方向の傾斜度合いを演算し、DSP10を介してカメラ本体1の傾斜度合いを表示部15に表示させる。また、130はカメラのピッチ方向(ピッチング方向)の傾斜度合いを検出する加速度センサであり、MPU3に接続されている。MPU3は加速度センサ(第2の加速度センサ)130から得られる情報より、ピッチ方向の傾斜度合いを演算し、DSP10を介してカメラ本体1の傾斜度合いを表示部15に表示させる。
【0032】
次に、図7、図8、図9、図10を用いてロール角検出用の加速度センサとピッチ角検出用の加速度センサの配置と、カメラの姿勢に応じた各々の加速度センサの出力について説明する。
【0033】
まず、図7を用いて加速度センサ126、130のカメラ本体1への配置について説明する。図7はカメラ本体を通常の横位置に置いた状態を示している。図7の加速度センサ136の配置は第1の実施形態における加速度センサ36と同じであり、127,128、129は第1の実施形態における測定軸27,28所定の角度29と同じ方向である。また、角速度センサ130は2軸の測定軸を持っており、第3の測定軸方向の加速度と、第4の測定軸方向の加速度を測定できる。131はピッチ角検出用の加速度センサ130の第1の測定軸(第3の測定軸)でありX軸と定義する。また、132はピッチ角検出用の加速度センサ130の第2の測定軸(第4の測定軸)であり、本実施例においては測定軸131と直行しているものとし、この測定軸132をY軸と定義する。ピッチ角検出用の加速度センサ130は撮像装置を通常の横位置(図7)に置いた場合に撮像装置の撮像光軸と平行であり且つ、重力方向に対して平行である平面に配置される。さらに、第1の測定軸(X軸)を重力方向(鉛直方向)に対して所定の角度B(133)だけ傾けた状態で配置する。ここでは所定の角度B(133)は45度とする。また、Y軸はX軸と直交しているので、Y軸もX軸とは重力方向(鉛直方向)と対称なっており、ともに重力方向(鉛直方向)から45度傾いている。
【0034】
図8は、図7のカメラを縦位置(グリップ124が下の状態)に置いた状態であり、ロール方向の検出方法は横位置の場合と変らないが、ピッチ方向の検出方法は横位置と異なる。これについては、後に詳細に説明する。
【0035】
次に、図9を用いて、図8のカメラ本体1をロール方向へ傾斜させた時の加速度センサ126の出力信号の特性と、カメラ本体1をピッチ方向へ傾斜させた時の加速度センサ130の出力信号の特性について説明する。
【0036】
図9のグラフは、横軸がカメラの横位置、縦位置のロール方向における加速度センサ126の傾斜角を示し、且つ、カメラの横位置のピッチ方向における加速度センサ130の傾斜角を示す。また、縦軸は加速度センサが測定する重力加速度を示し、加速度センサの測定軸が重力方向と同じ方向を向いている時(重力方向と平行である時)1.0g、加速度センサの測定軸が水平面の方向である場合に0.0gとなる。また、145〜148はカメラのロール角方向の傾斜角に対する加速度センサの出力を示す。
【0037】
141は加速度センサ126及び130の第1の測定軸であるX軸の信号であり、142は加速度センサ126及び130の第2の測定軸であるY軸の信号である。
【0038】
カメラ本体1が通常の横位置の状態においては、加速度センサ126及び130は、145で示した状態となり、X軸とY軸が重力方向から45度傾いた状態で配置され、X軸、Y軸の出力は、いずれもcos(45°)・g≒0.7gである。傾斜度合いの演算式は、下記の(2)式で表現される。
【0039】
傾斜度合い=arctan{X軸data/Y軸data} …(2)
この時は、arctan(0.7g/0.7g)=45度と算出される。同様に横位置、縦位置のロール角方向に傾斜させた場合は、図3で説明したのと同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0040】
ピッチ角検出用の加速度センサ130については、カメラ本体1が通常の横位置の状態において、ピッチ方向へ傾斜された場合、例えば、撮像レンズが重力方向と同じ方向を向くように傾けた場合は、146の状態となる。この時は、arctan(−0.7g/0.7g)=135度と算出される。同様に更にピッチ方向へ90度カメラを傾斜させた場合、すなわちカメラ本体を逆位置にした状態が147である。その時は、arctan(−0.7g/−0.7g)=225度として算出される。また、同様に更にピッチ方向へ90度カメラを傾斜させた場合、すなわち撮像レンズが重力方向と正反対の方向を向いている状態が148である。その時は、arctan(0.7g/−0.7g)=315度と算出される。カメラのピッチ角傾斜度合いとしては、通常の撮影レンズ2が正面を向いた正位置を0度と定義すると、上記の算出結果より45度減算した値がカメラのピッチ方向の傾斜角度となる。
【0041】
また、上記の各姿勢において、加速度センサのいずれの測定軸においても、その最大敏感度の約70%程度の敏感度を使用しているため、十分に高い精度で各姿勢における水平点の検出精度を得ることが出来る。
【0042】
次に、図10を用いてカメラ本体1の縦位置状態(図9の状態)において、ピッチ角方向にカメラを回転させた場合における加速度センサ130の出力信号の特性について説明する。
【0043】
図10のグラフは、横軸がカメラの縦位置のピッチ方向における加速度センサ130の傾斜角を示す。また、縦軸は加速度センサが測定する重力加速度であり、加速度センサの測定軸が重力方向と同じ方向を向いている時(重力方向と平行である時)1.0g、加速度センサの測定軸が水平面の方向である場合に0.0gとなる。また、153〜155は加速度センサ130の測定軸をカメラ本体が縦位置時(図8)に光軸側から見たときの、測定軸の方向をグラフの横軸と対応させたものである。151は加速度センサ130の第1の測定軸であるX軸の信号であり、152は加速度センサ130の第2の測定軸であるY軸の信号である。
【0044】
カメラ本体1が図8の縦位置の状態においては、加速度センサ130は、153で示した状態となり、X軸とY軸が重力方向から90度傾いた位置に配置され、X軸、Y軸の出力は、いずれもcos(90°)・g=0gである。傾斜度合いの演算式は、この加速度センサ130の測定軸がピッチ方向の回転角において最大に測定する重力加速度がsin(45°)・g≒0.7gであるため、下記の(3)式で表現される。
【0045】
傾斜度合い=arctan{(X軸data+0.7g)/(Y軸data+0.7g)}…(3)
従って、図8の縦位置の状態である153の位置においては、153の傾斜度は、arctan{(0g+0.7g)/(0g+0.7g)}=45度と算出される。このグラフでは出力結果を45度オフセットさせているため、ここでの横軸は90度である。
【0046】
同様にカメラ本体1のレンズをピッチ角方向でレンズが上向きとなる方向に45度傾けた状態が154である。
【0047】
154の傾斜度合いは、arctan{(0.5g+0.7g)/(−0.5g+0.7g)}=90度
と算出される。前記と同様このグラフは45度オフセットさせているためにここでの横軸は135度である。
【0048】
同様にカメラ本体を更に45度レンズが上向きとなる方向に傾けた状態、すなわちレンズが真上を向いている状態が155となり、
155の傾斜度合いは、arctan{(0.7g+0.7g)/(−0.7g+0.7g)}=135度
と算出される。前記と同様このグラフは45度オフセットさせているためにここでの横軸は180度である。
【0049】
また、上記の縦位置の姿勢(図8)においては、加速度センサ130のいずれの測定軸においても、最大敏感度を使用しているため、十分に高い精度で各姿勢における水平点の検出精度を得ることが出来る。
【0050】
次に図11、図12、図13を用いて、撮像装置の水準器の動作について説明する。図11は、カメラ本体の背面に取り付けられた表示部に撮像スルー画像の表示と水準器表示を行った時の例を示している。図11は、通常の横位置でのカメラの配置を示しており、図12は、縦位置時のカメラの配置(ここではグリップ下側)を示している。
【0051】
15はTFT液晶等からなる表示部、161はカメラの傾斜度合いを表示する水準器表示である。162はロール方向の傾斜度合いを示す表示バーであり、カメラ本体がロール方向に傾斜するとそれに応じて表示バーと水準器表示のロール角方向の目盛りとの関係が変化していく。163はピッチ方向の傾斜度合いを示す表示バーであり、カメラ本体がピッチ方向に傾斜するとそれに応じて表示バーと水準器表示のピッチ角方向の目盛りとの関係が変化していく。また、44はスルー画像モードに入るためのボタンSWであり、ボタンSW44の押下をMPU3が検出し、カメラはスルー画像モードとなる。また、43は水準器表示モードに入るためのボタンSWであり、ボタンSW43の押下をMPU3が検出し、カメラはスルー画像表示に水準器表示を付加させる。
【0052】
次に図13を用いて動作について説明する。ステップS101からステップS105までの処理は実施例1と同じであるため、省略する。水準器表示モード用のボタンSW43(SW操作系107の一部)を押下すると(ステップS105:Yes)、MPU3はまず加速度センサ126のデータより、カメラが通常の横位置の状態にいるか、縦位置の状態にいるかを判定する(ステップS106)。具体的には加速度センサ126の出力データが図10の特性において145の位置±45度を横位置、146の位置±45度をグリップ下、148の位置±45度をグリップ上として認識する。
【0053】
次に、カメラが横位置と認識すると、MPU3は加速度センサ126を駆動させ、所定時間ごとに加速度センサのX軸、Y軸の測定値を読み出す(ステップS107)。そして、arctan(X軸data/Y軸data)の演算によりカメラのロール方向の傾斜度合いを算出する(ステップS108)。また、次に加速度センサ130を駆動させ、所定時間ごとに加速度センサのX軸、Y軸の測定値を読み出し(ステップS109)、arctan(X軸data/Y軸data)の演算によりカメラのピッチ方向の傾斜度合いを算出する(ステップS110)。次に、その結果を所定間隔でDSP10に通知し、DSP10ではその結果に基づいた、水準器表示を表示部115のスルー画像に加えて表示する(ステップS111)。その結果、カメラは水準器表示を加えたスルー画像撮影モードとなり(ステップS112)、ユーザーは撮像画像のロール方向、ピッチ方向の傾斜の有無を判定しながら、撮影することが可能となる。
【0054】
また、ステップS106において、カメラが縦位置と認識すると、MPU3は加速度センサ126を駆動させ、所定時間ごとに加速度センサのX軸、Y軸の測定値を読み出す(ステップS115)。そして、arctan(X軸data/Y軸data)の演算によりカメラのロール方向の傾斜度合いを算出する(ステップS116)。また、次に加速度センサ130を駆動させ、所定時間ごとに加速度センサのX軸、Y軸の測定値を読み出し(ステップS117)、arctan{(X軸data+0.7g)/(Y軸data+0.7g)}の演算によりカメラのピッチ方向の傾斜度合いを算出する(ステップS118)。次に、その結果を所定間隔でDSP10に通知し、DSP10ではその結果に基づいた、水準器表示を表示部115のスルー画像に加えて表示する(ステップS119)。その結果、カメラは水準器表示を加えたスルー画像撮影モードとなり(ステップS120)、ユーザーは撮像画像のロール方向、ピッチ方向の傾斜の有無を判定しながら撮影することが可能となる。
【0055】
なお、第1の実施形態、第2の実施形態ともに2軸方向の加速度を測定する加速度センサを使用していたが、1軸方向の加速度センサを2つ使用して本実施例に書かれている測定軸方向の加速度を検出させても良い。また、本実施例においてはY軸とX軸が直交していたが、本願発明の効果が得られるのであれば、Y軸もX軸とは重力方向(鉛直方向)の軸と対称なっていれば、必ずしも直交している必要ない。
【0056】
以上説明したように、上記の実施形態において、撮像装置は、互いに交わる第1の測定軸方向と第2の測定軸方向の加速度を測定する加速度センサであって、第1の測定軸と第2の測定軸が鉛直方向の軸に対して対称となるように配置された加速度センサを有し、第1の測定軸によって測定された重力加速度と、第2の測定軸によって測定された重力加速度の比の逆正接関数を算出することにより、撮像装置の撮像光軸周りの傾斜度合いを求める。そのため、加速度センサの配置に関しては、撮像光軸のロール角方向に対する、基板実装精度や、実装基板の取り付け位置精度が多少ずれた場合においても、水平点のオフセット調整のみを実施することにより、カメラをピッチ角方向にあおった場合においても、ピッチ角方向の重力加速度の影響が各々の測定軸に対して、略均等にかかるために逆正接関数演算時にその影響が略キャンセルされ、水平点が大きくずれることは無い。つまり、いずれの姿勢状態においても高精度に水平点を検出することが可能である。
【0057】
また、加速度センサに敏感度等の温度特性が生じたとしても、2つの測定軸の各々に対して略同等の温度依存特性変化が生じるために、逆正接関数演算時にその影響が略キャンセルされ、温度環境下により水平点が大きくずれることは無い。そのため、温度環境下においても、傾斜度合いを高精度に検出することが可能である。
【0058】
また、カメラの何れの姿勢においても、常に、加速度センサの第1及び第2の2つの測定軸の測定結果からの逆正接関数演算で傾斜度合いを検出しているため、カメラの姿勢ごとにオフセット調整を行う必要がなくなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置であって、
前記撮像装置に加わる、互いに交わる第1の測定軸方向と第2の測定軸方向の加速度を測定する加速度センサと、
前記第1の測定軸によって測定された重力加速度と、前記第2の測定軸によって測定された重力加速度の比の逆正接関数を算出することにより、前記撮像装置の撮像光軸周りの傾斜度合いを求める演算手段とを有し、
前記加速度センサは、前記撮像装置を横位置にした場合に、前記第1の測定軸と前記第2の測定軸が鉛直方向の軸に対して対称となるように、前記撮像光軸と直交する平面に配置されることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記撮像装置に加わる、互いに交わる第3の測定軸方向と第4の測定軸方向の加速度を測定する第2の加速度センサを更に備え、
前記加速度センサは、前記撮像装置を横位置にした場合に、前記第3の測定軸と前記第4の測定軸が鉛直方向の軸に対して対称となるように、前記撮像装置の撮像光軸と平行であり且つ鉛直方向に対して平行である平面に配置され、
前記演算手段は、前記第3の測定軸によって測定された重力加速度と、前記第4の測定軸によって測定された重力加速度の比の逆正接関数を算出することにより、前記撮像装置の撮像光軸と鉛直方向の軸に対して互いに直交する軸の周りの傾斜度合いを求めることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−49772(P2011−49772A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195825(P2009−195825)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】