説明

撮像装置

【課題】多様な特性を有する画像を同時に撮像する。
【解決手段】撮像装置は、結像レンズと、受光素子を複数有する受光部と、複数の前記受光素子にそれぞれ対応して設けられ、前記結像レンズの射出瞳における予め定められた瞳領域を通過した被写体光を、対応する受光素子にそれぞれ受光させる複数の光学要素と、前記複数の受光素子の撮像信号から、被写体の画像を生成する画像生成部とを備え、前記複数の光学要素のうちの複数の第1光学要素は、前記結像レンズの光軸を中心とする円形状または円環形状の第1の領域および前記射出瞳における第1瞳領域を通過する被写体光を、対応する受光素子へ入射させ、前記複数の光学要素のうちの複数の第2光学要素は、前記結像レンズの光軸を中心とする円環形状の領域であって、前記第1の領域より外周に位置する第2の領域および前記射出瞳における第2瞳領域を通過する被写体光を、対応する受光素子へ入射させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関し、特に多様な画質の画像を同時に取得する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に撮像レンズは、各種収差をできるだけ補正し、よりシャープな画像を撮影できるように設計されている。その一方で、ソフト描写の効果を出した撮影を行いたい場合もある。このような撮影を行う場合、ソフトフォーカスレンズやソフトフォーカスフィルタを用いることが知られている。
【0003】
ソフトフォーカスレンズは、球面収差などの収差を適当に残すことで、鮮鋭な像の周囲にやわらかな感じのにじみを作り、ソフトフォーカス効果を得るレンズである。またソフトフォーカスフィルタは、レンズ前面に取り付けられることで、撮像レンズにより結合された像の先鋭度を低下させ、ソフト描写の効果を出す光学フィルタである。
【0004】
しかしながら、ソフトフォーカスレンズを用いる場合には、通常のレンズからソフトフォーカスレンズに交換する必要がある。またソフトフォーカスフィルタを用いる場合も、フィルタを取り付ける必要がある。
【0005】
したがって、レンズ交換やフィルタ取り付けをしている間にシャッタチャンスを逃すことがある。また、ソフトフォーカスレンズは、レンズ交換のできないコンパクトカメラには使用できない。またコンパクトカメラでは、フィルタの取り付け部も備えられていないことが一般的であり、ソフトフォーカスフィルタを取り付けることもできない。
【0006】
このような課題に対し、特許文献1には、正屈折力の第一レンズ群及び正屈折力の第二レンズ群を前後に配した通常撮影レンズの光学系に対して、一のソフトフォーカス形成レンズを追加又は置換することにより、光学系全体の球面収差が、開放F値の三倍以上の絞り領域で所定の収差以下となり、かつ開放で所定の収差以上となるように設定したソフトフォーカスレンズが開示されている。
【0007】
この技術によれば、開放F値の三倍以上の絞り領域では球面収差が極めて小さくなり、開放における球面収差はある像高付近から急激にアンダー側に振れるので、絞りを切り替えるだけで、シャープな描写とソフトな描写を切り替えることができる。
【0008】
また特許文献2には、正の誘電異方性のネマチック液晶と、この液晶の常光線屈折率のほぼ同じ屈折率を有する高分子とを互いに分散配向させた調光層を透明電極が形成された一対の透明基板間に挟持されて液晶素子を形成してなり、該液晶素子に電圧を印加することによりソフトフォーカス効果を付与する可変ソフトフォーカスフィルタが開示されている。
【0009】
この技術によれば、必要なときにだけ拡散状態が実現でき、通常の使用時には透明状態とすることができるため、シャープな描写とソフトな描写を瞬時に切り替えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−301883号公報
【特許文献2】特開平10−48589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1、2の技術においても、シャープな画像とソフトフォーカスの画像を同時に撮像することはできない。したがって、両方の画像を撮像するためには、時分割で撮像する必要がある。
【0012】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、複数の異なる空間周波数特性を有する画像を同時に取得することができる撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために本発明に係る撮像装置は、結像レンズと、受光素子を複数有する受光部と、複数の前記受光素子にそれぞれ対応して設けられ、前記結像レンズの射出瞳における予め定められた瞳領域を通過した被写体光を、対応する受光素子にそれぞれ受光させる複数の光学要素と、前記複数の受光素子の撮像信号から、被写体の画像を生成する画像生成部とを備え、前記複数の光学要素のうちの複数の第1光学要素は、前記結像レンズの光軸を中心とする円形状または円環形状の第1の領域および前記射出瞳における第1瞳領域を通過する被写体光を、対応する受光素子へ入射させ、前記複数の光学要素のうちの複数の第2光学要素は、前記結像レンズの光軸を中心とする円環形状の領域であって、前記第1の領域より外周に位置する第2の領域および前記射出瞳における第2瞳領域を通過する被写体光を、対応する受光素子へ入射させることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、複数の異なる空間周波数特性を有する画像を、同時に、かつ独立に分離した画像データとして取得することができる。これにより、従来は不可能であった同期撮影や動画撮影が可能となる。
【0015】
前記画像生成部は、前記射出瞳のいずれの瞳領域を通過した被写体光により前記被写体の画像を生成すべきかを選択し、選択した瞳領域を通過した被写体光を受光する複数の受光素子の撮像信号を用いて、前記被写体の画像を生成することが好ましい。
【0016】
これにより、被写体に適した多様な画像を生成することができる。
【0017】
前記複数の光学要素はそれぞれ、前記予め定められた瞳領域を通過した被写体光を対応する受光素子に受光させるプリズム要素であってもよい。
【0018】
これにより、適切に予め定められた瞳領域を通過した被写体光を対応する受光素子に受光させることができる。
【0019】
前記プリズム要素は、屈折率が互いに異なる第1液体と第2液体との間の液体界面でプリズム界面が形成される液体プリズム要素であり、前記撮像装置は、前記結像レンズの光軸に対する前記プリズム界面の傾きを制御することにより、複数の前記プリズム要素にそれぞれ対応する前記受光素子の受光する光束の向きを制御する制御部をさらに備えることが好ましい。
【0020】
これにより、受光素子に対応する空間周波数特性を高速に切り替えることができる。
【0021】
前記第1液体および前記第2液体を保持するプリズムハウジングと、前記プリズムハウジングの内部を、前記光軸に沿って前記第1液体が充填される第1領域と前記第2液体が充填される第2領域とに分割する仕切板とをさらに有し、前記仕切板には、複数の前記液体プリズム要素が形成される位置に対応して複数の貫通孔が形成され、前記制御部は、前記複数の貫通孔のそれぞれの第1側面部における前記液体界面の位置および第1側面部に対向する第2側面部における前記液体界面の位置を制御することにより、前記光軸に対する前記プリズム界面の傾きを制御することが好ましい。
【0022】
これにより、適切にプリズム界面の傾きを制御することができる。
【0023】
前記制御部は、前記射出瞳における前記光軸を含む瞳領域を通過した被写体光を前記受光素子に受光させる場合に、前記光軸に対して前記液体界面を略直交させ、前記射出瞳における前記光軸を含まない瞳領域を通過した被写体光を前記受光素子に受光させる場合に、前記光軸に対して前記液体界面を傾斜させてもよい。
【0024】
これにより、適切に受光素子に受光させる光を切り替えることができる。
【0025】
前記制御部は、前記射出瞳における前記光軸を含まない瞳領域を通過した被写体光を前記受光素子に受光させる場合に、前記光軸に対して前記液体界面を第1の傾きに傾斜させ、前記射出瞳における前記光軸を含まない他の瞳領域を通過した被写体光を前記受光素子に受光させる場合に、前記光軸に対して前記液体界面を第2の傾きに傾斜させてもよい。
【0026】
これにより、適切に受光素子に受光させる光を切り替えることができる。
【0027】
前記複数の貫通孔のうち少なくともいずれかの貫通孔は、互いに厚さが異なる前記第1側面部および前記第2側面部を持ち、前記制御部は、前記第1側面部と前記第2側面部とで囲まれる領域内に前記第1液体が充填された状態と、当該領域内に第2液体が充填された状態との間で切り替えることにより、前記光軸に対する前記液体界面を異なる傾きに切り替えることを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載の撮像装置。
【0028】
これにより、適切に受光素子に受光させる光を切り替えることができる。
【0029】
前記複数の受光素子はマトリクス状に配置され、前記仕切板は、列方向に延伸する第1仕切部と、前記列方向に延伸する第2仕切部とが、行方向に交互に設けられて形成され、前記第1仕切部は、前記光軸方向に沿って第1の厚さの側面部を両側部に持ち、前記第2仕切部は、前記光軸方向に沿って第2の厚さの側面部を両側部に持ち、前記複数の貫通孔は、前記第1仕切部の側面部と、前記第1仕切部に隣り合う前記第2仕切部の側面部とによりそれぞれ形成され、前記第1仕切部および前記第2仕切部の前記第1液体側は略同一平面を形成し、前記制御部は、前記光軸に対する前記液体界面の傾きを前記行方向に互いに異ならせるべく、前記第1側面部と前記第2側面部とで囲まれる領域内に前記第1液体が充填された状態に制御することが好ましい。
【0030】
これにより、適切にプリズム界面の傾きを制御することができる。
【0031】
前記制御部は、前記第1液体を保持する領域の内圧を制御することにより、前記光軸に対する前記界面の傾きを制御してもよい。
【0032】
これにより、適切にプリズム界面の傾きを制御することができる。
【0033】
前記複数の光学要素は、それぞれ前記予め定められた瞳領域を通過した被写体光を、対応する前記受光素子に受光させるべく光軸を前記受光素子の受光開口に対して偏倚して設けられたマイクロレンズであってもよい。
【0034】
これにより、適切に予め定められた瞳領域を通過した被写体光を対応する受光素子に受光させることができる。
【0035】
前記複数の光学要素はそれぞれ、対応する受光素子に対し前記予め定められた瞳領域への指向性を持つ開口が形成された遮光要素であってもよい。
【0036】
これにより、適切に予め定められた瞳領域を通過した被写体光を対応する受光素子に受光させることができる。
【0037】
前記遮光要素の開口は、円形状または円環形状であることが好ましい。
【0038】
これにより、予め定められた円形状または円環形状の瞳領域を通過した被写体光を対応する受光素子に受光させることができる。
【0039】
前記複数の光学要素は、複数の前記瞳領域において互いに異なる偏光成分を透過する第1偏光フィルタと、前記複数の受光素子にそれぞれ対応して設けられ、前記異なる偏光成分をそれぞれ透過する第2偏光フィルタとを有してもよい。
【0040】
これにより、適切に予め定められた瞳領域を通過した被写体光を対応する受光素子に受光させることができる。
【0041】
前記複数の光学要素は、複数の前記瞳領域において互いに異なる波長成分を透過する第1波長フィルタと、前記複数の受光素子に対応して設けられ、前記異なる波長成分をそれぞれ透過する第2波長フィルタを複数有してもよい。
【0042】
これにより、適切に予め定められた瞳領域を通過した被写体光を対応する受光素子に受光させることができる。
【0043】
前記複数の光学要素は、焦点距離をそれぞれ異ならせたマイクロレンズと円環形状の開口を形成する遮光要素であってもよい。
【0044】
これにより、適切に予め定められた円形状または円環形状の瞳領域を通過した被写体光を対応する受光素子に受光させることができる。
【0045】
前記複数の光学要素の各光学要素はマイクロレンズであり、1つの前記マイクロレンズに対応して複数の受光素子がマトリクス状に配置されていてもよい。
【0046】
これにより、適切に予め定められた円形状または円環形状の瞳領域を通過した被写体光を対応する受光素子に受光させることができる。
【0047】
1つの前記マイクロレンズに対応してn×m個の受光素子がn行m列のマトリクス状に配置されており、前記画像生成部は、前記射出瞳のいずれの瞳領域を通過した被写体光により前記被写体の画像を生成すべきかを選択し、前記マトリクス状に配置された受光素子のうち、前記マイクロレンズの結像中心からの距離が概等しい位置の受光素子の撮像信号であって、前記選択した瞳領域を通過した被写体光を受光する受光素子の撮像信号を用いて、前記被写体の画像を生成してもよい。
【0048】
これにより、適切に予め定められた円形状または円環形状の瞳領域を通過した被写体光を受光し、被写体の所望の画像を生成することができる。
【0049】
1つの前記マイクロレンズに対応して25個の受光素子が5行5列のマトリクス状に配置されており、前記画像生成部は、前記射出瞳のいずれの瞳領域を通過した被写体光により前記被写体の画像を生成すべきかを選択し、前記マトリクス状に配置された受光素子のうち、中央に配置された1個の第1の受光素子の撮像信号と、該第1の受光素子に隣接して配置された8個の第2の受光素子の撮像信号と、該第2の受光素子に隣接して配置された16個の第3の受光素子の撮像信号と、のうち前記選択した瞳領域を通過した被写体光を受光する受光素子の撮像信号を用いて、前記被写体の画像を生成してもよい。
【0050】
これにより、25個の受光素子を5行5列のマトリクス状に配置した場合に、適切に予め定められた円形状または円環形状の瞳領域を通過した被写体光を受光し、被写体の所望の画像を生成することができる。
【発明の効果】
【0051】
本発明によれば、複数の異なる空間周波数特性を有する画像を、同時に、かつ独立に分離した画像データとして取得することができる。これにより、従来は不可能であった同期撮影や動画撮影が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】撮像装置10のブロック構成の一例を模式的に示す図
【図2】結像原理による領域毎のMTF特性を説明するための図
【図3】偏向部、マイクロレンズ部および受光部の構成の模式図
【図4】光軸に垂直な面で偏向部を切断した模式断面図
【図5】被写界深度が拡大された合成画像を生成する処理の一例を示す図
【図6】偏向部の構成の他の一例を模式的に示す図
【図7】仕切板の変形例を示す図
【図8】他の偏向光学要素を備える受光ユニットの一例を模式的に示す図
【図9】他の偏向光学要素を備える受光ユニットの一例を模式的に示す図
【図10】他の偏向光学要素を備える受光ユニットの一例を模式的に示す図
【図11】各受光素子上に形成される遮光マスクの形状を示す斜視図
【図12】レンズ系、マイクロレンズ、遮光マスク、受光素子を模式的に示す俯瞰図
【図13】受光ユニットの一例を模式的に示す図
【図14】受光ユニットの一例を模式的に示す図
【図15】マイクロレンズに入射した光と受光素子が受光する光の関係を示す図
【図16】マイクロレンズに入射した光と受光素子が受光する光の関係を示す図
【図17】マイクロレンズに入射した光と受光素子が受光する光の関係を示す図
【図18】マイクロレンズと対応する受光素子群を光軸方向から見た模式図
【図19】各瞳領域を通過した光を受光する受光素子を示す図
【図20】受光素子が6行6列のマトリクス状に配置された受光素子群を示す図
【図21】受光素子が6行5列のマトリクス状に配置された受光素子群を示す図
【図22】アスペクト比が正方でない受光素子群を示す図
【図23】受光素子が15行15列のマトリクス状に配置された受光素子群を示す図
【図24】受光素子が15行15列のマトリクス状に配置された受光素子群を示す図
【図25】撮像装置の他のブロック構成の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0054】
図1は、撮像装置10のブロック構成の一例を模式的に示す。本実施形態に係る撮像装置10は、空間周波数特性(ボケ味)が異なる画像を撮像する機能を提供する。特に、撮像装置10に係る光学構成は、固定の撮像レンズ(結像レンズ)を用いて当該機能をコンパクトに実装できる撮像装置を提供する。撮像装置10は、レンズ系100、受光ユニット20、画像生成部170、制御部180および画像記録部190を備える。受光ユニット20は、光学装置115および受光部160を有する。
【0055】
レンズ系100は、単一の撮像用のレンズ系である。レンズ系100は、1以上のレンズ110を備える。レンズ系100を通過した被写体光は、光学装置115を通過して、受光部160によって受光される。
【0056】
レンズ系100は、結像原理によって、入射した光が透過する領域毎、すなわち光軸からの距離毎にMTF特性(高周波強調特性)が異なる。
【0057】
例えば、図2(a)に示すように、レンズ系100の光軸を中心とした所定の半径を有する円形領域を105a、レンズ系100の光軸を中心とした円環形状の領域であって、領域105aの周辺の円環形状領域を105b、およびレンズ系100の光軸を中心とした円環形状の領域であって、領域105bの周辺の円環形状領域(レンズ系100の外周領域)を105cとし、それぞれの領域のMTF特性をそれぞれ第1MTF特性、第2MTF特性、第3MTF特性とすると、結像原理によって第1〜第3MTF特性は図2(b)のように表される。
【0058】
図2(b)に示すように、第1MTF特性、第2MTF特性、第3MTF特性の順にカットオフ周波数が高くなり、空間周波数に対するMTFが高くなる。このように、光軸からの距離に応じてMTF特性が異なり、またカットオフ周波数は、瞳直径により異なってくる。本例では、レンズ系100の光軸からの距離が概等しい瞳領域に対応する光を分離して受光することで、それぞれ異なるMTF特性の画像を取得する。
【0059】
光学装置115は、レンズ系100の射出瞳120の瞳領域122aを通過した光、瞳領域122bを通過した光および瞳領域122cを通過した光を、受光部160上の異なる領域に受光させる。ここで、瞳領域122aはレンズ系100の領域105aに、瞳領域122bはレンズ系100の領域105bに、瞳領域122cはレンズ系100の領域105cに、それぞれ対応した瞳領域である。
【0060】
受光部160は、当該異なる領域で受光した光による信号を画像信号として画像生成部170に供給する。画像生成部170は、当該画像信号から、異なるボケ味の画像を生成する。画像記録部190は、画像生成部170が生成した画像を記録する。画像記録部190は、不揮発性メモリに当該画像を記録してよい。当該不揮発性メモリは、画像記録部190が有してよい。また、当該不揮発性メモリは、撮像装置10に対して着脱可能に設けられた外部メモリであってよい。画像記録部190は、撮像装置10の外部に画像を出力してもよい。
【0061】
光学装置115は、偏向部140およびマイクロレンズ部150を有する。偏向部140は、偏向光学要素の一例としての複数のプリズム要素142a〜cを含む。マイクロレンズ部150は、複数のマイクロレンズ152a〜cを含む。受光部160は、複数の受光素子162a〜cを有する。本図では、説明を分かり易くするために、3個の受光素子162a〜c、3個のマイクロレンズ152a〜c、3個のプリズム要素142a〜cを図示しているが、これらの光学要素をそれぞれ3個しか有さないことを示しているわけではない。被写体を撮像すべく任意の数を各光学要素が有することはいうまでもない。複数のマイクロレンズ152a〜cを、マイクロレンズ152または複数のマイクロレンズ152と総称する場合がある。また、複数の受光素子162a〜cを、受光素子162または複数の受光素子162と総称する場合がある。他の光学要素も同様に、符号の添え字を省略することで光学要素を総称する場合がある。
【0062】
複数の受光素子162は、MOS型撮像素子を形成してよい。複数の受光素子162は、MOS型撮像素子の他、CCD型撮像素子などの固体撮像素子を形成してよい。
【0063】
マイクロレンズ152は、複数の受光素子162にそれぞれ対応して設けられる。複数のマイクロレンズ152は、レンズ系100により結像された被写体光をそれぞれ再結像して、対応する受光素子162にそれぞれ受光させる。例示したマイクロレンズ152a〜cは、それぞれ受光素子162a〜cに対応して設けられる。マイクロレンズ152aは、レンズ系100により結像された被写体光を再結像して、受光素子162aに受光させる。同様に、マイクロレンズ152b、cは、レンズ系100により結像された被写体光をそれぞれ再結像して、それぞれ受光素子162b、cに受光させる。マイクロレンズ152は、受光素子162のそれぞれへの光束が通過する射出瞳120の大きさを制限する。例えば、マイクロレンズ152は、射出瞳120の一部領域を通過した光を各受光素子162に受光させる大きさの屈折力を持つ。例えばマイクロレンズ152は、射出瞳120の1/4以下の面積の領域を通過した光を各受光素子162に受光させる屈折力を有することができる。
【0064】
プリズム要素142は、複数の受光素子162に対応して設けられる。プリズム要素142、マイクロレンズ152、および、受光素子162は、互いに一対一に対応して設けられる。例えば、プリズム要素142aは、マイクロレンズ152aおよび受光素子162aに対応して設けられる。プリズム要素142、マイクロレンズ152および受光素子162のうちの互いに対応する光学要素の組は、符号の添え字a〜cで区別される。
【0065】
プリズム要素142は、予め定められた瞳領域122を通過した被写体光を、対応する受光素子162にそれぞれ受光させる光学要素の一例である。具体的には、プリズム要素142aは、レンズ系100の射出瞳120における瞳領域122aを通過した被写体光130aを、マイクロレンズ152aを介して受光素子162aに受光させる。また、プリズム要素142bは、レンズ系100の射出瞳120における瞳領域122bを通過した被写体光130bを、マイクロレンズ152bを介して受光素子162bに受光させる。一方、プリズム要素142cは、レンズ系100の射出瞳120における瞳領域122cを通過した被写体光130cを、マイクロレンズ152cを介して受光素子162cに受光させる。
【0066】
具体的には、プリズム要素142a〜cは、それぞれ瞳領域122a〜cを通過した被写体光130a〜cを、それぞれ受光素子162a〜cに受光させるプリズム角を持つ。瞳領域122aを通過し受光素子162aに入射する被写体光130a、瞳領域122bを通過し受光素子162bに入射する被写体光130b、および、瞳領域122cを通過し受光素子162cに入射する被写体光130cは、レンズ系100の互いに異なる光学面を通過する。このため、受光素子162a〜cは、結像原理的にMTF特性が異なった光を受光する。
【0067】
このように、プリズム要素142は、レンズ系100における予め定められた円形又は円環形状の領域、および射出瞳120における予め定められた瞳領域122を通過した被写体光を、複数の受光素子162のうちの対応する受光素子162にそれぞれ受光させる。具体的には、複数のプリズム要素142のうちのプリズム要素142aを含む複数の第1プリズム要素は、レンズ系100の第1MTF特性を持つ領域および瞳領域122aを通過する被写体光を、対応する受光素子162へ入射させる。複数のプリズム要素142のうちのプリズム要素142bを含む複数の第2プリズム要素は、レンズ系100の第2MTF特性を持つ領域および射出瞳120における瞳領域122bを通過する被写体光を、対応する受光素子162へ入射させる。複数のプリズム要素142のうちのプリズム要素142cを含む複数の第3プリズム要素は、レンズ系100の第3MTF特性を持つ領域および瞳領域122cを通過する被写体光を、対応する受光素子162へ入射させる。
【0068】
受光素子162は、受光量に応じた強度の撮像信号を、画像生成部170に出力する。画像生成部170は、複数の受光素子162の撮像信号から、被写体の画像を生成する。具体的には、画像生成部170は、受光素子162から供給された撮像信号から、異なるボケ味の画像を示す画像信号を生成する。本例では、受光素子162a〜cが受光できる光は、それぞれ瞳領域122a〜cを通過したものに制限される。したがって、画像生成部170は、瞳領域122aを通過した光を受光する一部の受光素子162の撮像信号から、第1ボケ味の画像の信号を生成する。また、画像生成部170は、瞳領域122bを通過した光を受光する一部の受光素子162の撮像信号から、第2ボケ味の画像の信号を生成する。また、画像生成部170は、瞳領域122cを通過した光を受光する一部の受光素子162の撮像信号から、第3ボケ味の画像の信号を生成する。なお、これらの画像の信号を、ボケ味を用いてそれぞれ第1ボケ味画像、第2ボケ味画像および第3ボケ味画像と呼ぶ場合がある。
【0069】
画像生成部170は、異なるボケ味の画像を組み合わせて1つの画像を生成してもよい。例えば、主要被写体についてはボケの無い鮮明な像とし、主要被写体以外をボケ味の大きい像として1つの画像を生成する。このように、異なるボケ味の画像を組み合わせて1つの画像を生成することで、撮像装置10は様々な表現の画像を生成することができる。なお、画像生成部170は、異なるボケ味の画像をそれぞれ別個の画像として生成してもよい。このように、光学装置115によれば、単一のレンズ系100を用いて、ボケ味が異なる画像をワンショットで得ることができる。また、レンズ系100を駆動させないので、コンパクトな撮像装置を提供できる。
【0070】
撮像装置10は、カメラ機能付きの携帯電話、デジタルカメラなどの撮像機器であってよい。なお、レンズ系100、光学装置115および受光部160の、画像生成部170および制御部180の機能ブロックを、撮像機器用の撮像デバイスとして提供してよい。例えば、撮像デバイスは、撮像機器に組み込まれる撮像モジュールであってよい。
【0071】
なお、本図では、受光素子162がマイクロレンズ152の作用により射出瞳120のうちの特定の部分領域を通過した光を受光することを分かり易く示すことを目的として、射出瞳120のうちの瞳領域122a〜cを白ヌキで示した。そして、瞳領域122a〜c以外の領域を、斜線で示した。このことは、瞳領域122a〜c以外の領域を被写体光が通過しないことを示すものではない。
【0072】
なお、制御部180は、偏向部140が被写体光を偏向させる向きを制御する。例えば、制御部180は、プリズム要素142のプリズム角を制御する。偏向部140による偏向の向きを制御部180が制御することより、例えば、各受光素子にいずれの瞳領域を通過する光を受光させるかを制御することができる。制御部180による具体的な制御内容については後述する。
【0073】
図3は、偏向部140、マイクロレンズ部150および受光部160の構成の一例を模式的に示す。本例において、偏向部140が有する複数のプリズム要素142は、屈折率が互いに異なる液体の界面で形成される液体プリズム要素である。プリズム要素142のプリズム角は、液体界面の角度で定まる。
【0074】
偏向部140は、第1液体および第2液体を保持するハウジング200、仕切板242、駆動部290を有する。仕切板242は、ハウジング200の内部を、レンズ系100の光軸に沿って第1液体が充填される第1液体領域210と第2液体が充填される第2液体領域220とに分割する。第1液体と第2液体は、屈折率が互いに異なり、かつ、水と油のように接触状態において互いに混合しない性質を持つ。第1液体および第2液体の組み合わせとして、PDMS(Poly−Dimethyl−Siloxane)および純水を例示することができる。ここでは第2液体の屈折率よりも第1液体の屈折率の方が大きいとする。また、第1液体および第2液体のそれぞれの密度は実質的に等しいことが好ましい。
【0075】
仕切板242には、複数のプリズム要素142a〜dが形成される位置に対応して複数の貫通孔250a〜dが形成される。図1に例示したプリズム要素142a〜cは、それぞれ貫通孔250a〜cが形成された位置に形成される。ハウジング200の物体側の面または像側の面から見た貫通孔250の形状は、正方形、長方形、台形、円または楕円等であってよく、その他の種々の形状であってよい。
【0076】
ハウジング200の物体側の面および像側の面には、ガラスなどの透光性の材料で形成された透光部が形成される。透光部は、貫通孔250、マイクロレンズ152および受光素子162に対応する位置に形成され、被写体光は物体側の面に形成された透光部、貫通孔250、像側の面に形成された透光部を通過して、対応するマイクロレンズ152に入射する。なお、ハウジング200の物体側の面および像側の全面が、ガラスなどの透明な材料から形成されてもよい。
【0077】
仕切板242は、仕切部240−1〜5を含む。貫通孔250は、対向する仕切部240の間の空間で形成される。仕切部240は第1液体と第2液体とを接触させない。第1液体および第2液体は、貫通孔250内で互いに接触して、プリズム要素142となる界面を形成する。
【0078】
貫通孔250aは、側面部252a(第1側面部に相当)および側面部254a(第2側面部に相当)を持つ。側面部252aおよび側面部254aは、それぞれ仕切部240−1および仕切部240−2の対向する側面部である。側面部252aは、レンズ系100の光軸方向に沿って第1の厚さを持ち、側面部254aは、レンズ系100の光軸方向に沿って第2の厚さを持つ。つまり、貫通孔250aは、厚さの異なる仕切板242の側面部252aおよび側面部254aを含む側面に包囲されて形成される。例えば、貫通孔250aが四角形の開口を持つ場合、貫通孔250aは、側面部252aと、側面部254aと、側面部252aおよび側面部254aを結合する2の側面部とにより包囲されて形成される。ここでは第2の厚さが第1の厚さより大きいとする。
【0079】
貫通孔250bは、側面部252bおよび側面部254bを持つ。側面部252bおよび側面部254bは、それぞれ仕切部240−2および仕切部240−3の対向する側面部である。側面部252bは、レンズ系100の光軸方向に沿って第2の厚さを持ち、側面部254bは、レンズ系100の光軸方向に沿って第3の厚さを持つ。第3の厚さは、第1の厚さより大きく第2の厚さより小さいとする。貫通孔250aとは異なり、貫通孔250bは、複数の貫通孔250が並ぶ方向に、第1の厚さの側面部252b、第3の厚さの側面部254bを順に有する。その他の点は、貫通孔250aと同様であるので説明を省略する。
【0080】
貫通孔250cは、側面部252cおよび側面部254cを持つ。側面部252cおよび側面部254cは、それぞれ仕切部240−3および仕切部240−4の対向する側面部である。貫通孔250cは、第3の厚さを有する側面部252cと、第4の厚さを有する側面部254cとにより形成される。第4の厚さは、第1の厚さより小さいとする。ここで、第2の厚さと第3の厚さとの差は、第3の厚さと第4の厚さとの差とは異なるとする。
【0081】
貫通孔250dは、貫通孔250aと同様の形状を持つ。貫通孔250dは、第1の厚さを有する側面部252dと、第2の厚さを有する側面部254dとにより形成される。側面部252dおよび側面部254dは、それぞれ仕切部240−4および仕切部240−5によって提供される。仕切部240−4は、一方の側に第4の厚さの側面部254cを持ち、他方の側に第1の厚さの側面部252dを持つ。本例では貫通孔250dまでしか例示していないが、仕切板242には、貫通孔250a、貫通孔250b、貫通孔250cがこの順で等間隔に繰り返して一列に形成される。
【0082】
第1液体領域210に充填された第1液体の圧力を特定の圧力にすると、当該圧力に応じて、液体の圧力差と表面張力とが釣り合うように平面状の界面が形成される。各貫通孔250内において第2液体が充填された状態で釣り合った状態となるよう第1液体の圧力を第1圧力にすると、プリズム要素282のように本図の破線で示す液体界面が形成される。具体的には、各貫通孔250において、側面部252の第1液体領域210側の端部と側面部254の第1液体領域210側の端部で液体界面が担持される。仕切板242は第1液体側において略平面状の端面を持つ。すなわち、仕切部240のそれぞれの第1液体側は略同一平面を形成する。当該端面はハウジング200の像側と平行であるので、破線で示す液体界面は、プリズム効果を実質的に有さない。
【0083】
一方、各貫通孔250内において第1液体が充填された状態で釣り合った状態となるよう、第1液体の圧力を第1圧力より高めて第2圧力にすると、液体界面の位置は第2液体側に移動して、プリズム要素281のように本図の実線で示す液体界面が形成される。例えば、各貫通孔250において、側面部252の第2液体領域220側の端部および側面部254の第2液体領域220側の端部に液体界面が担持される。この液体界面の傾きは、各貫通孔250を形成する側面部の厚さに応じた傾きになる。したがって、この状態では、異なる3種類の角度のプリズム角を持つプリズムが順に繰り返し形成されたプリズム列が形成される。
【0084】
マイクロレンズ部150および受光部160の構成について説明する。複数のマイクロレンズ152は、複数の貫通孔250に対応して透明基板上に設けられる。受光部160は、複数のカラーフィルタ260、遮光部262、および、複数の受光素子162を有する。複数のカラーフィルタ260および複数の受光素子162は、貫通孔250に対応して設けられる。すなわち、マイクロレンズ152、カラーフィルタ260および受光素子162は、複数の貫通孔250に対応してそれぞれ設けられる。
【0085】
カラーフィルタ260は、対応する貫通孔250およびマイクロレンズ152を通過した被写体光のうち、予め定められた波長域の光を選択的に透過して対応する受光素子162にそれぞれ受光させる。カラーフィルタ260は、赤に属する波長域の光を透過するカラーフィルタ、緑に属する波長域の光を透過するカラーフィルタ、青に属する波長域の光を透過するカラーフィルタのいずれかであってよい。カラーフィルタ260は、カラー画像を撮像すべく、予め定められたパターンで受光素子162に配列される。
【0086】
遮光部262は、隣接画素との間の干渉を防ぐべく、複数の受光素子162のそれぞれの受光開口を画定する開口264が、複数の受光素子162のそれぞれに対応する位置に形成されている。被写体光は、貫通孔250、マイクロレンズ152、カラーフィルタ260を通じて受光素子162に向かう。複数の受光素子162は、対応する開口264を通過した光をそれぞれ受光して、光電変換により撮像信号を形成する電圧信号をそれぞれ生成する。
【0087】
本図の破線で示した液体界面が形成されている状態では、当該液体界面はプリズム効果を有しない。このため、この状態では、受光素子162は、射出瞳120のうちの光軸を中心とする領域を通過した光を受光する。したがって、複数の受光素子162によって形成される画像は、レンズ系100の光軸近傍領域が持つMTF特性に基づくボケ味の画像となる。この場合、1つのMTF特性での撮影となるが、高解像度の画像を得ることができる。
【0088】
本図の実線で示した液体界面が形成されている状態では、貫通孔250a〜cには、異なるプリズム角を持つ液体界面が形成される。したがって、この状態では、受光素子162a〜cが受光する光束の向きは、射出瞳120の互いに異なる瞳領域122に向けられる。ここでは、貫通孔250aに形成される液体界面、貫通孔250bに形成される液体界面および貫通孔250cに形成される液体界面が、それぞれ図1で例示したプリズム要素142a、プリズム要素142bおよびプリズム要素142cを形成する。この状態では、複数のMTF特性に基づく複数のボケ味の画像を得ることができる。
【0089】
このように、プリズム要素142は、屈折率が互いに異なる第1液体と第2液体との間の液体界面でプリズム界面が形成される液体プリズム要素である。制御部180は、複数のプリズム要素142にそれぞれ対応する受光素子162の受光する光束の向きを制御すべく、レンズ系100の光軸に対するプリズム界面の傾きを制御する。具体的には、制御部180は、貫通孔250の側面部252における液体界面の位置および側面部252に対向する側面部254における液体界面の位置を制御することにより、光軸に対するプリズム界面の傾きを制御する。
【0090】
例えば、制御部180は、第1液体領域210に連通する液体領域230内の圧力を制御することにより、第1液体の圧力を制御する。具体的には、ハウジング200は、液体領域230内の第1液体に接する弾性面280を持つ。また、偏向部140は、液体領域230の体積を制御すべく弾性面280を変位させる駆動部290を有する。駆動部290としては、圧電素子を有することができる。圧電素子はピエゾ素子であってよい。制御部180は、圧電素子に印加する電圧を制御して圧電素子の形状を変化させ、それにより弾性面280に当接する先端部を紙面左右方向に変位させる。
【0091】
制御部180は、第1液体と第2液体の界面を貫通孔250の側面部に沿って物体側の方向に移動させる場合には、液体領域230の体積が減少する方向に駆動部290の先端部を変位させる。これにより、第1液体の内圧が高まり、液体界面は物体側の方向に移動する。制御部180は、貫通孔250の側面部に沿って像側方向に液体界面を移動させる場合には、液体領域230の体積が増加する方向に駆動部290の先端部を変位させる。これにより、第1液体の内圧が低下して、液体界面は像側の方向に移動する。
【0092】
本例の偏向部140のように、制御部180が液体領域210の内圧を制御することにより、貫通孔250の側面部252での液体界面の位置および当該側面部252に対向する側面部254での液体界面の位置が制御され、したがって光軸に対する液体界面の傾きが制御される。すなわち、制御部180は、液体領域210の内圧を制御することにより、プリズム要素142の傾きを制御することができる。特に本例の仕切板242のように、制御部180が仕切部240の両側面部で囲まれる領域内に第1液体が充填された状態と、当該領域内に第2液体が充填された状態との間で切り替えることにより、光軸に対する液体界面が異なる傾きに切り替えられる。本例の偏向部140によれば、制御部180は、射出瞳120における光軸を含む瞳領域を通過した被写体光130を受光素子162に受光させる場合に、光軸に対して液体界面を略直交させ、射出瞳120における光軸を含まない瞳領域122を通過した被写体光130を受光素子162に受光させる場合に、光軸に対して液体界面を傾斜させることができる。液体領域210の内圧を制御することにより受光素子162の受光する光束の向きを高速に制御することができるので、多MTFの撮影と高解像度の撮影とを高速に切り替えることができる。
【0093】
図4は、光軸に垂直な面で偏向部140を切断した模式断面を示す。本図は、図3の仕切板242を切断した模式断面を例示する。被写体光は紙面に向かって進行するとし、参照のために受光素子162の位置を破線で模式的に示した。図示されるように、仕切板242には貫通孔250がマトリクス状に形成される。受光素子162も貫通孔250に対応する位置に設けられる。すなわち、貫通孔250および複数の受光素子162はマトリクス状に配置される。貫通孔250および受光素子162は、行方向350および列方向360に略等間隔で設けられる。
【0094】
具体的には、仕切部240−1、仕切部240−2、仕切部240−3および仕切部240−4は、列方向360に延伸する部材である。これらの行の間は、行方向350に延伸する部材で仕切られる。これにより、貫通孔250a〜dの他に、行方向350に並ぶ貫通孔の列が、複数形成される。例えば、貫通孔250aを先頭とする行、貫通孔250eを先頭とする行、貫通孔250fを先頭とする行に、行方向350に並ぶ貫通孔の列が形成される。
【0095】
図3に関連して説明したように、仕切部240−1は、レンズ系100の光軸方向に沿って第1の厚さの側面部を側部に持つ。また、仕切部240−2は、レンズ系100の光軸方向に沿って第2の厚さの側面部を両側部に持つ。仕切部240−3は、レンズ系100の光軸方向に沿って第3の厚さの側面部を両側部に持つ。仕切部240−4は、レンズ系100の光軸方向に沿って第4の厚さの側面部と第1の厚さの側面部とを側部に持つ。つまり、仕切板242は、対向する側面部の間で厚さの差を呈する仕切部を持つ。また、隣り合う貫通孔250の間で当該厚さの差が異なるよう、2種類以上の仕切部が順次に形成される。これにより、行方向350に互いに異なるプリズム角を提供する貫通孔250が複数の行に順次に配置される。
【0096】
本図では3種類の傾きを持つプリズム角を同時に形成すべく3種類の仕切部を形成する仕切板242を例示した。2種類以上のプリズム角度を同時に形成する場合は、2種類の仕切部が交互に形成されるようにすればよい。つまり、レンズ系100の光軸方向に沿って第1の厚さの側面部を両側部に持つ第1仕切部と、光軸方向に沿って第2の厚さの側面部を両側部に持つ第2仕切部とによって、貫通孔250が形成されればよい。具体的には、貫通孔250は、第1仕切部の側面部と、第1仕切部に隣り合う第2仕切部の側面部とによりそれぞれ形成される。そして、制御部180が、仕切部240の側面部で囲まれる領域内に第1液体が充填された状態に制御することで、光軸に対する液体界面の傾きを列方向360に互いに異ならせることができる。
【0097】
また、貫通孔250a〜dは、液体領域210を介して連通している。液体領域210は複数の領域に区画されていてもよいが、区画されていなくてもよい。液体領域210が区画されている場合、区画された複数の液体領域210に対応してそれぞれ駆動部が設けられ、各駆動部は対応する液体領域210内の第1液体の圧力を制御する。本図の例では、行毎に駆動部290、駆動部291、駆動部292が設けられる。これにより、1の駆動部で第1液体領域の内圧を制御する場合と比較して、速やかにプリズム要素を制御することができる。なお、液体領域210が複数の領域に区画されておらず全貫通孔が液体領域210で連通している場合でも、駆動部を複数設けてもよい。すなわち、第1液体領域210の内圧を、複数の駆動部で制御してもよい。
【0098】
図5は、合成画像550を生成する処理の一例を模式的に示す。第1ボケ味画像510、第2ボケ味画像520、第3ボケ味画像530は、画像生成部170が生成した異なるボケ味の画像の一例であり、それぞれ第1MTF特性の第1光学面、第2MTF特性の第2光学面および第3MTF特性の第3光学面を通過した光による画像とする。
【0099】
第1ボケ味画像510には、被写体像512、514、および516が含まれる。また第2ボケ味画像520には、被写体像522、524、および526が含まれる。同様に、第3ボケ味画像530には、被写体像532、534、および536が含まれる。
【0100】
被写体像512、522、および532は、同一被写体による被写体像であり、それぞれボケ味が異なる。また、被写体像514、524、および534は、同一被写体による被写体像であり、それぞれボケ味が異なる。同様に、被写体像516、526、および536は、同一被写体による被写体像であり、それぞれボケ味が異なる。
【0101】
画像生成部170は、これらの被写体像を用いて合成画像550を生成する。これにより、それぞれの被写体に適したボケ味を選択した合成画像550を生成することができる。図5の例では、第1ボケ味画像510の被写体像512、第2ボケ味画像520の被写体像524、および第3ボケ味画像530の被写体像536を用いて合成画像550を生成している。どの被写体についてどのボケ味画像の被写体像を用いるかは、ユーザが自由に設定できるように構成すればよい。また、撮像装置10が自動的に判断してもよい。
【0102】
このように、画像生成部170は、射出瞳120のいずれの瞳領域122を通過した被写体光により被写体の画像を生成すべきかを選択し、選択した瞳領域122を通過した被写体光を受光する複数の受光素子162の撮像信号を用いて、被写体の画像を生成する。すなわち、被写体ごとにボケ味を選択することができる。このとき、画像生成部170は、2以上の瞳領域122を選択してよい。すなわち、画像生成部170は、受光部160の位置に結像する被写体光が通過する瞳領域122を少なくとも1つ選択する。
【0103】
図6は、偏向部140の構成の他の一例を模式的に示す。図3に例示した偏向部140は、第1状態で射出瞳120の異なる3つの瞳領域を通過する光束でそれぞれ撮像することができ、第2状態では射出瞳120の1つの瞳領域を通過する光束で撮像することができる。本例の偏向部140は、液体界面の状態として三の状態を有し、それぞれの状態で異なる3つの瞳領域を通過する光束でそれぞれ撮像することができる構成を有する。特に、第1液体側および第2液体側における仕切板242の面形状および貫通孔250を形成する側面部の構成が、図3に例示した仕切板242とは異なる。ここでは、その差異を中心に説明する。
【0104】
本例の貫通孔250aは、仕切部640−1が有する第1の厚さの側面部642aと、仕切部640−2が有する第4の厚さの側面部644aとによって形成される。第4の厚さは、第2の厚さよりも厚い。また、本例の貫通孔250aにおいて、両側面部の第2液体側の端点を結ぶ界面は、図3に例示した貫通孔250aの第2液体側で形成される界面と同じプリズム角を持つ。したがって、当該界面で形成されるプリズム要素は、受光素子162aが受光する光を瞳領域122aを通過したものに制限する。そして、本図の破線で示されるように、本例の貫通孔250aにおいて両側面部の第1液体側の端点を結ぶ界面は、光軸に垂直面から傾斜したプリズム角を持つ。当該プリズム角を持つプリズム要素142aは、受光素子162aが受光する光を、射出瞳120において光軸近傍領域と瞳領域122cと間の瞳領域を通過したものに制限する。
【0105】
本例の貫通孔250bは、仕切部640−2が有する第4の厚さの側面部642bと、仕切部640−3が有する第4の厚さの側面部644bとによって形成される。仕切部640−2と仕切部640−3とは、光軸方向に同位置に位置する。このため、第2液体側の端点および第1液体側の端点の双方で、光軸に垂直な界面が形成される。したがって、貫通孔250bに形成される界面は、受光部160bが受光する光を、射出瞳120の光軸近傍領域を通過したものに制限する。
【0106】
本例の貫通孔250cは、仕切部640−3が有する第4の厚さの側面部642cと、仕切部640−4が有する第1の厚さの側面部644bとによって形成される。本例の貫通孔250cにおいて、両側面部の第2液体側の端点を結ぶ界面は、図3に例示した貫通孔250cの第2液体側で形成される界面と同じプリズム角を持つとする。したがって、当該界面で形成されるプリズム要素は、受光素子162cが受光する光を瞳領域122cを通過したものに制限する。そして、本図の破線で示されるように、本例の貫通孔250cにおいて両側面部の第1液体側の端点を結ぶ界面は、光軸に垂直面から傾斜したプリズム角を持つ。当該プリズム角を持つプリズム要素142cは、受光素子162cが受光する光を、射出瞳120において光軸近傍領域と瞳領域122aと間の瞳領域を通過したものに制限する。
【0107】
貫通孔250dは、仕切部640−3が有する第1の厚さの側面部642dと、仕切部640−5が有する第4の厚さの側面部644dとによって形成される。仕切部640−5は、仕切部640−2と同様の部材とする。このため、貫通孔250dに形成されるプリズム要素は、貫通孔250aに形成されるプリズム要素と同様となるので、説明を省略する。
【0108】
また、本例の仕切板242によれば、プリズム要素680−2のように本図の一点鎖線で示したプリズム要素が形成される。一点鎖線で示したプリズム要素は、プリズム要素680−1のような実線で示したプリズム角よりも傾斜が小さく、プリズム要素680−3のような破線で示したプリズム角よりも傾斜が大きいプリズム角を持つ。本図の一点鎖線で示したプリズム要素を安定して保持する構成については、図7に関連して説明する。
【0109】
制御部180は、液体領域210の内圧を制御することにより、本例の実線、破線、一点鎖線のいずれかの状態に液体界面の傾きを制御することができる。すなわち、制御部180は、射出瞳120における光軸を含まない瞳領域122を通過した被写体光130を受光素子162に受光させる場合に、光軸に対して液体界面を第1の傾きに傾斜させ、射出瞳120における光軸を含まない他の瞳領域122を通過した被写体光130を受光素子162に受光させる場合に、光軸に対して液体界面を第2の傾きに傾斜させる。
【0110】
本例の偏向部140によれば、本図の実線、一点鎖線および破線で示したように、液体界面は三の状態に制御することができる。このため、異なる組み合わせのプリズム角で撮像することができる。すなわち、各プリズム角に対応する瞳領域のMTF特性に基づくボケ味画像を取得することができる。
【0111】
図7は、仕切板242の変形例を示す。図6に例示した仕切板242の、特に図6のB部を取り上げて、仕切板242の変形例を説明する。
【0112】
側面部642aには、貫通孔250aの内側に向かう突起部700および突起部701が形成される。側面部644aには、貫通孔250aの内側に向かう突起部702、突起部703および突起部704が形成される。いずれの突起部も、液体界面がトラップされる程度の厚みを有する。突起部703は、光軸方向において、突起部700よりも液体領域220側に位置する。
【0113】
第1状態では、液体領域220側の端部の突起部700の先端と、液体領域220側の端部の突起部702の先端との間に界面が形成されて、プリズム要素680−1となる。第2状態では、液体領域210側の端部の突起部701の先端と、液体領域210側の端部の突起部704の先端との間に界面が形成されて、プリズム要素680−3となる。第3状態では、液体領域220側の端部の突起部700の先端と、側面部644aの突起部703の先端との間に界面が形成されて、プリズム要素680−2となる。
【0114】
本例によると、側面部642aおよび側面部644aが突起部を有しているので、液体界面が当該突起部の先端にトラップされやすくなる。そのため、プリズム角の制御を安定して行うことができる。
【0115】
本例では、図6のB部を取り上げて、貫通孔250aに形成される突起部を説明した。仕切板242が有する全ての貫通孔250に意図した位置に界面をトラップさせるべく突起部を形成してよく、図1から図5にかけて説明した仕切板242の貫通孔250にも、意図した位置に界面をトラップさせるべく突起部を形成してよいことはいうまでもない。
【0116】
このように、制御部180は、レンズ110aが有するMTF特性に基づいて、被写体光が受光部160に結像するよう、受光部160に受光させる瞳領域122の組み合わせを選択する。具体的には、制御部180は、対応する受光素子162が受光する光束の向きを、受光部160の位置に結像する被写体光が通過する瞳領域122に指向させるべく、プリズム界面の傾きを制御する。また、制御部180は、レンズ110aが有するMTF特性に基づいて、いずれの瞳領域122を通過した光で撮像するかを制御することができる。
【0117】
図8は、他の偏向光学要素を備える受光ユニット20の一例を模式的に示す。本例の受光ユニット20は、マイクロレンズ部150および受光部160を有する。マイクロレンズ部150は、複数のマイクロレンズ952を含む。受光部160は、複数のカラーフィルタ260、複数の受光素子162および遮光部262を含む。本例の受光ユニット20は、図1から7にかけて説明した偏向光学要素としてのプリズム要素142に替えて、マイクロレンズ952を偏向光学要素として有する。ここでは、図1から7にかけて説明した受光ユニット20との差異を中心に説明する。
【0118】
マイクロレンズ952には、射出瞳120の略全面を通過した光が入射する。本例においても、マイクロレンズ952は、射出瞳120の一部領域を通過した光を各受光素子162に受光させる大きさの屈折力を持つ。したがって、受光素子162が受光することができる光束の大きさは、射出瞳120の一部範囲を通過するものに制限される。本例の受光ユニット20では、マイクロレンズ952の光軸が、レンズ系100の光軸に垂直な面内において受光素子162の中心位置に対し偏倚して設けられる。受光素子162の中心位置とは、受光素子162が受光し光電変換に利用できる光が通過する領域の中心位置とする。本例において、受光素子162の中心位置とは、受光素子162の近傍に位置する遮光部262に形成された受光開口の中心であってよい。
【0119】
マイクロレンズ952は、予め定められた瞳領域122を通過した光を対応する受光素子162に受光させるべく、それぞれの偏倚量が設計されている。マイクロレンズ952の屈折力および偏倚により、受光素子162が受光することができる光束は、射出瞳120の一部領域を通過したものに制限される。本例では、マイクロレンズ952aは、受光素子162aが受光開口を通じて受光できる光を瞳領域122aを通過したものに制限する。同様に、マイクロレンズ952bおよびcは、対応する受光素子162aおよびcが受光開口を通じて受光できる光を、それぞれ瞳領域122bおよびcを通過したものに制限する。マイクロレンズ952dは、マイクロレンズ952aと同様、受光素子162dが受光開口を通じて受光できる光を瞳領域122aを通過したものに制限する。このように、複数のマイクロレンズ952は、それぞれ予め定められた瞳領域122を通過した被写体光を対応する受光素子162に受光させるべく、光軸を受光素子162の受光開口に対して偏倚して設けられる。
【0120】
なお、図1から図8にかけて説明したマイクロレンズ152またはマイクロレンズ952は、MTF特性の差が無視できる程度に瞳の広さを制限できればよい。したがって、制御部180は、MTF特性の差が無視できる程度に瞳の広さを制限するべく、マイクロレンズ152の屈折力を制御してよい。このとき、制御部180は、MTF特性毎に瞳の広さを異なる広さに制限すべく、マイクロレンズ152の屈折力を制御してよい。
【0121】
図9は、他の偏向光学要素を備える受光ユニットの一例を模式的に示す。本例の受光ユニット20は、マイクロレンズ部150および受光部160を有する。マイクロレンズ部150は、複数のマイクロレンズ1052を含む。受光部160は、複数のカラーフィルタ260、遮光部1060および遮光部1070、複数の受光素子162および遮光部262を含む。本例の受光ユニット20は、図1から図8にかけて説明した偏向光学要素としてのプリズム要素142に替えて、遮光部1060および遮光部1070を偏向光学要素として有する。ここでは、図1から図8にかけて説明した受光ユニット20との差異を中心に説明する。
【0122】
マイクロレンズ1052には、射出瞳120の略全面を通過した光が入射する。本例では、マイクロレンズ1052は、射出瞳120の略全面を通過した光を受光素子162に向けて集光する大きさの屈折力を持つ。マイクロレンズ1052が有する屈折力は、図1から図8に関連して説明したマイクロレンズ152またはマイクロレンズ952が有する屈折力よりも小さくてよい。本例の受光ユニット20では、遮光部1060および遮光部1070にはそれぞれ開口1062および開口1072が形成されている。マイクロレンズ1052により受光素子162に向けて集光される光のうち、開口1062および開口1072を通過した一部の光が、遮光部262に形成された受光開口を通じて受光素子162に入射する。
【0123】
開口1062および開口1072は、レンズ系100の光軸に垂直な面内において互いに偏倚して設けられる。開口1062および開口1072は、予め定められた瞳領域122を通過した光を対応する受光素子162に受光させるべく、それぞれの位置が設計されている。開口1062および開口1072の偏倚により、受光素子162が受光することができる光束は、射出瞳120の一部領域を通過したものに制限される。本例では、開口1062および開口1072は、受光素子162aが受光開口を通じて受光できる光を瞳領域122aを通過したものに制限する。受光素子162b〜dに対応する開口も同様であるので、説明を省略する。このように、遮光部1060および遮光部1070は、対応する受光素子162に対し予め定められた瞳領域122への指向性を持つ開口を有する。
【0124】
遮光部1060および遮光部1070ではなく、遮光部262が、対応する受光素子162に対し予め定められた瞳領域122への指向性を持つ開口を有していてもよい。
【0125】
図10は、本例の受光ユニットの一例を模式的に示す。本例の受光ユニット20は、図1から図6にかけて説明した偏向光学要素としてのプリズム要素142に替えて、遮光部262の開口1264を偏向光学要素として有する。
【0126】
マイクロレンズ1052には、射出瞳120の略全面を通過した光が入射する。本例では、マイクロレンズ1052は、射出瞳120の略全面を通過した光を受光素子162に向けて集光する大きさの屈折力を持つ。マイクロレンズ1052が有する屈折力は、図1から図6に関連して説明したマイクロレンズ152が有する屈折力よりも小さくてよい。
【0127】
本例の受光ユニット20では、遮光部262の開口1264が、レンズ系100の光軸に垂直な面内において受光素子162の中心位置に対し偏倚して設けられる。ここでは、受光素子162の中心位置とは、受光素子162が受光し光電変換に利用できる光が通過する領域の中心位置とする。
【0128】
開口1264は、予め定められた瞳領域122を通過した光を対応する受光素子162に受光させるべく、それぞれの偏倚量が設計されている。開口1264の偏倚により、受光素子162が受光することができる光束は、射出瞳120の一部領域を通過したものに制限される。本例では、開口1264aは、受光素子162aが受光できる光を瞳領域122aを通過したものに制限する。同様に、開口1264bおよびcは、対応する受光素子162aおよびcが受光できる光を、それぞれ瞳領域122bおよびcを通過したものに制限する。開口1264dは、開口1264aと同様、受光素子162dが受光できる光を瞳領域122aを通過したものに制限する。このように、遮光部262の複数の開口1264は、それぞれ予め定められた瞳領域122を通過した被写体光を対応する受光素子162に受光させるべく、受光素子162の中心位置に対し偏倚して設けられる。
【0129】
このように、遮光部262は、対応する受光素子162に対し予め定められた瞳領域122への指向性を持つ開口を有する。
【0130】
また、遮光部262の開口の形状を円形状または円環形状とした遮光マスクを偏向光学要素としてもよい。
【0131】
図11(a)〜(c)は、それぞれ各受光素子上に形成される遮光マスク266−1、遮光マスク266−2、及び遮光マスク266−3の形状を示す斜視図である。遮光マスク266−1の開口部は、レンズ系100の領域105aと相似形状となっており、受光素子162の中心部のみに受光させる形状となっている。また遮光マスク266−2の開口部は、レンズ系100の領域105bと相似形状となっており、遮光マスク266−1の開口部の周辺部分に相当する円環形状部のみに受光させる形状となっている。さらに遮光マスク266−3の開口部は、レンズ系100の領域105cと相似形状となっており、遮光マスク266−2の開口部の周辺部分に相当する円環形状部のみに受光させる形状となっている。
【0132】
図12は、レンズ系100、各マイクロレンズ1052a〜1052c、各遮光部2262a〜2262c、及び各受光素子162a〜162cを模式的に示す俯瞰図である。また図13は、受光ユニットの一例を模式的に示す断面図である。
【0133】
本例の受光ユニット20は、これまでと同様に1つのマイクロレンズに対応して1つの受光素子が備えられている。図12、図13の例では、マイクロレンズ1052aに対応して受光素子162a、マイクロレンズ1052bに対応して受光素子162b、マイクロレンズ1052cに対応して受光素子162c、マイクロレンズ1052dに対応して受光素子162dがそれぞれ配置されている。なお、各マイクロレンズ1052の中心位置と各受光素子162の中心位置とは、一致するように配置されている。
【0134】
また、受光素子162aの受光面上には遮光部2262aが、受光素子162bの受光面上には遮光部2262bが、受光素子162cの受光面上には遮光部2262cが、対応して形成されている。ここで、遮光部2262aは遮光マスク266−1の形状、遮光部2262bは遮光マスク266−2の形状、遮光部2262cは遮光マスク266−3の形状を有する遮光部となっている。
【0135】
さらに受光素子162dの受光面上には、遮光部2262dが形成されている。この遮光部2262dは、遮光部2262aと同様に遮光マスク266−1の形状を有している。図では省略されているが、遮光マスク266−1〜266−3は、各受光素子162の受光面上に所定の規則に従って繰り返して配置される。
【0136】
各マイクロレンズ1052には、射出瞳120の略全面を通過した光が入射する。ここで、マイクロレンズ1052aを通過した光は、遮光マスク266−1の形状を有する遮光部2262aにより瞳領域122aを通過した光のみに制限され、瞳領域122aを通過した光のみが受光素子162aに受光される。したがって、受光素子162aには、第1MTF特性を有する領域105aを通過した光のみが受光される。
【0137】
同様に、遮光マスク266−2の形状の遮光部2262bにより、マイクロレンズ1052bを通過した光のうち、瞳領域122bを通過した光のみが受光素子162bに受光される。また遮光マスク266−3の形状の遮光部2262cにより、マイクロレンズ1052cを通過した光のうち、瞳領域122aを通過した光のみが受光素子162cに受光される。したがって、受光素子162bには、第2MTF特性を有する領域105bを通過した光のみが受光され、受光素子162cには、第3MTF特性を有する領域105cを通過した光のみが受光される。
【0138】
このように、複数の遮光部2262は、それぞれ予め定められた瞳領域122を通過した被写体光を対応する受光素子162に受光させるべく、各色フィルタと相似形状に設けられる。これにより、画像生成部170は、各受光素子162の撮像信号から、第1ボケ画像、第2ボケ画像、第3ボケ画像を得ることができる。
【0139】
図14は、本例に係る受光ユニットの一例を模式的に示す断面図である。本例では、それぞれ焦点距離の異なるマイクロレンズを偏向光学要素として用いる。
【0140】
本例の受光ユニット20は、これまでと同様に1つのマイクロレンズに対応して1つの受光素子が備えられている。図14の例では、マイクロレンズ1252aに対応して受光素子162a、マイクロレンズ1252bに対応して受光素子162b、マイクロレンズ1252cに対応して受光素子162c、マイクロレンズ1252dに対応して受光素子162dがそれぞれ配置されている。なお、各マイクロレンズ1252の中心位置と各受光素子162の中心位置とは、一致するように配置されている。
【0141】
また、各受光素子162の受光面上には、遮光部2362が配置されている。遮光部2362は、図11(b)に示す遮光マスク266−2と同様に、円形状の遮光マスク及び円環形状の遮光マスクからなり、円環形状の開口部を有している。この開口部の幅は、適切に各瞳領域を通過した光を分離できるように、適宜決定することができる。
【0142】
ここで、各マイクロレンズ1252は、それぞれ異なる焦点距離を有している。図14の例では、マイクロレンズ1252aの焦点距離は第1の焦点距離f1であり、受光素子162aの受光面上に焦点位置を有している。また、マイクロレンズ1252bの焦点距離は、第1の焦点距離f1よりも短い第2の焦点距離f2であり、受光素子162bの受光面よりも手前(マイクロレンズ側)に焦点位置を有する。また、マイクロレンズ1252cの焦点距離は、第2の焦点距離f2よりも短い第3の焦点距離f3あり、マイクロレンズ1252bの焦点位置よりもさらに手前(マイクロレンズ側)に焦点位置を有する。
【0143】
またマイクロレンズ1252dは、マイクロレンズ1252aと同様に構成されており、マイクロレンズ1252dの焦点距離は第1の焦点距離f1となっている。図では省略されているが、第1の焦点距離f1、第2の焦点距離f2、及び第3の焦点距離f3を有する各マイクロレンズ1252は、所定の規則に従って繰り返して配置される。
【0144】
次に、各マイクロレンズ1252に入射した光と対応する受光素子162が受光する光の関係について説明する。図15は、第1の焦点距離f1を有するマイクロレンズ1252aに入射した光と受光素子162aが受光する光の関係を示す図である。
【0145】
マイクロレンズ1252aには、射出瞳120の略全面を通過した光が入射する。ここで、射出瞳120のうち瞳領域122aを通過した光は、図15(a)に示すように、遮光部2362の中央の円形状の遮光マスクにより制限され、受光素子162aには入射しない。同様に、射出瞳120のうち瞳領域122bを通過した光も、図15(b)に示すように、遮光部2362の中央の円形状の遮光マスクにより制限され、受光素子162aには入射しない。
【0146】
これに対し、射出瞳120のうち瞳領域122cを通過した光は、図15(c)に示すように、遮光部2362の開口部から受光素子162aに入射する。
【0147】
このように、マイクロレンズ1252aを通過した光は、マイクロレンズ1252a及び遮光部2362により瞳領域122cを通過した光のみに制限され、瞳領域122cを通過した光のみが受光素子162aに受光される。したがって、受光素子162aには、第3MTF特性を有する領域105cを通過した光のみが受光される。
【0148】
図16は、第2の焦点距離f2を有するマイクロレンズ1252bに入射した光と受光素子162bが受光する光の関係を示す図である。
【0149】
マイクロレンズ1252bには、射出瞳120の略全面を通過した光が入射する。ここで、射出瞳120のうち瞳領域122aを通過した光は、図16(a)に示すように、遮光部2362の中央の円形状の遮光マスクにより制限され、受光素子162bには入射しない。
【0150】
これに対し、射出瞳120のうち瞳領域122bを通過した光は、図16(b)に示すように、遮光部2362の開口部から受光素子162bに入射する。
【0151】
また、射出瞳120のうち瞳領域122cを通過した光は、図16(c)に示すように、遮光部2362の円環形状の遮光マスクにより制限され、受光素子162bには入射しない。
【0152】
このように、マイクロレンズ1252bを通過した光は、マイクロレンズ1252b及び遮光部2362により瞳領域122bを通過した光のみに制限され、瞳領域122bを通過した光のみが受光素子162bに受光される。したがって、受光素子162bには、第2MTF特性を有する領域105bを通過した光のみが受光される。
【0153】
図17は、第3の焦点距離f3を有するマイクロレンズ1252cに入射した光と受光素子162cが受光する光の関係を示す図である。
【0154】
マイクロレンズ1252cには、射出瞳120の略全面を通過した光が入射する。ここで、射出瞳120のうち瞳領域122aを通過した光は、図17(a)に示すように、遮光部2362の開口部から受光素子162cに入射する。
【0155】
これに対し、射出瞳120のうち瞳領域122bを通過した光は、図17(b)に示すように、遮光部2362の円環形状の遮光マスクにより制限され、受光素子162cには入射しない。同様に、射出瞳120のうち瞳領域122aを通過した光も、図17(c)に示すように、遮光部2362の円環形状の遮光マスクにより制限され、受光素子162cには入射しない。
【0156】
このように、マイクロレンズ1252cを通過した光は、マイクロレンズ1252c及び遮光部2362により瞳領域122aを通過した光のみに制限され、瞳領域122aを通過した光のみが受光素子162cに受光される。したがって、受光素子162cには、第1MTF特性を有する領域105aを通過した光のみが受光される。
【0157】
以上のように、それぞれ予め定められた瞳領域122を通過した被写体光を対応する受光素子162に受光させるべく、各マイクロレンズ1252の焦点距離が設定され、遮光部2362が配置される。これにより、画像生成部170は、各受光素子162の撮像信号から、第1ボケ画像、第2ボケ画像、第3ボケ画像を得ることができる。
【0158】
次に、1つのマイクロレンズに対応して複数の受光素子を備える場合について説明する。 図18(a)は、本実施形態に係るマイクロレンズ152と対応する受光素子群1161を光軸方向から見た模式図である。同図に示すように、本例では、1つのマイクロレンズ152に対応して、25個の受光素子1162−1a〜1162−1e、1162−2a〜1162−2e、1162−3a〜1162−3e、1162−4a〜1162−4e、1162−5a〜1162−5eが5行5列のマトリクス状(略円形状)に配置された受光素子群1161が備えられている。また図18(b)は、図18(a)の破線B−Bにおける断面図である。
【0159】
このような受光素子群1161を有する撮像装置の作用について説明する。
【0160】
レンズ系100の射出瞳120のうち、瞳領域122aを通過した光は、マイクロレンズ152に入射する。この光は、マイクロレンズ152により、受光素子群1161のうち中央に配置された1つの受光素子1162−3cに受光される(図19(a))。すなわち、この受光素子は、第1MTF特性を有する領域105aを通過した光を受光する。
【0161】
また、レンズ系100の射出瞳120のうち、瞳領域122bを通過した光は、マイクロレンズ152に入射する。この光は、マイクロレンズ152により、受光素子群1161のうち中央の受光素子1162−3cの周辺に隣接して配置された受光素子1162−2b、2c、2d、3b、3d、4b、4c、4dに受光される(図19(b))。すなわち、これらの受光素子は、第2MTF特性を有する領域105bを通過した光を受光する。
【0162】
さらに、レンズ系100の射出瞳120のうち、瞳領域122cを通過した光は、マイクロレンズ152に入射する。この光は、マイクロレンズ152により、受光素子群1161のうち、受光素子1162−2b、2c、2d、3b、3d、4b、4c、4dの周辺に隣接して配置された受光素子(すなわち受光素子群1161の外周に配置された受光素子)1162−1a〜1e、2a、2e、3a、3e、4a、4e、5a〜5eに受光される(図19(c))。すなわち、これらの受光素子は、第3MTF特性を有する領域105cを通過した光を受光する。
【0163】
このように、1つのマイクロレンズに対して複数の受光素子をマトリクス状(略円形状)に配置することで、レンズの光軸を中心とした円形状または円環形状の各領域を通過した光を分離して受光することができる。画像生成部170は、これら複数の受光素子1162の撮像信号から、被写体の画像を生成すればよい。
【0164】
本例では、複数の受光素子1162の面積が均一であり、第1MTF特性を通過した光を受光する受光素子が1画素、第2MTF特性を通過した光を受光する受光素子が8画素、第3MTF特性を通過した光を受光する受光素子が16画素となっている。したがって、各MTF特性の受光比率は1:8:16である。この受光比率は、各受光素子1162の面積を変更することで、調整することも可能である。
【0165】
また、本例では、1つのマイクロレンズに対して受光素子が5行5列のマトリクス状に配置された受光素子群を例に説明したが、受光素子の配列はこれに限定されるものではない。すなわち、受光素子をn行m列(n、mは正の整数)のマトリクス状に配置し、対応するマイクロレンズの結像中心からの距離が概等しい位置の受光素子からの画像信号を選択し、それらの画像信号を用いて画像を生成すればよい。このように、対応するマイクロレンズの結像中心からの距離が概等しい位置の受光素子からの画像信号を選択することで、所望の瞳領域を通過した被写体光を分離して受光することができる。このとき、距離を何段階に分割するのかは、用途や設計に応じて適宜決めればよい。
【0166】
例えば、図20に示す受光素子群1261のように、1つのマイクロレンズ(不図示)に対して各受光素子を6行6列のマトリクス状に配置してもよい。このように配置した場合には、図20(a)にハッチングで示す中央に配置された4つの受光素子1262a、当該4つの受光素子の周辺に隣接して配置された図20(b)にハッチングで示す12個の受光素子1262b、当該12個のさらに周辺に隣接して配置された図20(c)にハッチング出示す20個の受光素子1262c、のように、それぞれの瞳領域からの光を分離して受光することも可能である。この場合、受光素子1262aはレンズ系100の第1MTF特性を有する領域105aを通過した光を受光し、受光素子1262bは第2MTF特性を有する領域105bを通過した光を受光し、受光素子1262cは第3MTF特性を有する領域105cを通過した光を受光する。
【0167】
また、マトリクスの縦横の画素数は異なっていてもよい。例えば、図21に示す受光素子群1361のように、1つのマイクロレンズ(不図示)に対して各受光素子を6行5列のマトリクス状に配置してもよい。このように配置した場合には、図21(a)にハッチングで示す中央付近に配置された2つの受光素子1362a、当該2つの受光素子の周辺に隣接して配置された図21(b)にハッチングで示す10個の受光素子1362b、当該10個のさらに周辺に隣接して配置された図21(c)にハッチング出示す18個の受光素子1362c、のように、それぞれの瞳領域からの光を分離して受光することも可能である。
【0168】
このように、対応するマイクロレンズの光軸から概等しい距離に位置する受光素子からの画像信号を選択することで、領域105a、105b、105cを通過した光を分離して受光することができる。
【0169】
ここまでは、各受光素子の受光面(図2における開口264に相当)が正方形の場合を例に説明してきたが、受光面のアスペクト比は正方でなくてもよい。例えば、図22に示す受光素子群1461は、各受光素子が5行10列のマトリクス状に配置されており、各受光素子の受光面のアスペクト比は2:1となっている。
【0170】
図22のように配置されている場合でも、レンズ系100の領域105a、105b、105cの形状と相似形状となるように、受光素子群1461の各受光素子のうち、対応するマイクロレンズの光軸からの概等しい距離にある受光素子を同一グループの受光素子として扱うことで、レンズ系100の各領域および対応する瞳領域を通過した光を分離して受光することができる。
【0171】
すなわち、図22(a)にハッチングで示す中央付近に配置された2つの受光素子1462a、当該2つの受光素子の周辺に隣接して配置された図22(b)にハッチングで示す16個の受光素子1362b、当該16個のさらに周辺に隣接して配置された図22(c)にハッチング出示す32個の受光素子1362c、のように、それぞれの瞳領域からの光を分離して受光することも可能である。
【0172】
このように、各受光素子の受光面のアスペクト比は、自由に設定することができる。
【0173】
また、各受光素子を微細化し、1つのマイクロレンズに対して受光素子を多数形成することで、レンズ系100の領域105a、105b、105cの形状に対して、より相似形状に分離して受光することができる。
【0174】
例えば、図23に示す受光素子群1561のように、1つのマイクロレンズ(不図示)に対して各受光素子を15行15列のマトリクス状に配置した場合について考える。このように配置した場合には、図23(a)にハッチングで示す中央付近に配置された21個の受光素子1562a、当該21個の受光素子の周辺に隣接して配置された図23(b)にハッチングで示す68個の受光素子1562b、当該68個のさらに周辺に隣接して配置された図23(c)にハッチング出示す104個の受光素子1562c、のように、それぞれの瞳領域からの光を分離して受光することも可能である。このように、1つのマイクロレンズに対する受光素子の数が非常に多くなると、円形及び円環形状に近い領域に分離して、受光することができる。
【0175】
なお、図23に示す例では、受光素子群1561のうち4隅に位置する受光素子は使用していないが、使用しない受光素子が発生しても構わない。
【0176】
ここでは、レンズ系100の領域105a、105b、105cの3つの領域を通過した光をそれぞれ分離して受光しているが、いくつに分離して受光するかは適宜決めればよい。例えば、受光素子群1561を用いて、レンズ系100の光軸を中心とした所定の半径を有する円形領域1105a、レンズ系100の光軸を中心とした円環形状の領域であって、領域1105aの周辺の円環形状領域1105b、レンズ系100の光軸を中心とした円環形状の領域であって、円環形状領域1105bの周辺の円環形状領域1105c、レンズ系100の光軸を中心とした円環形状の領域であって、円環形状領域1105cの周辺の円環形状領域1105d、の4つの領域を通過する光をそれぞれ分離して受光することも可能である。
【0177】
この場合は、例えば図24(a)にハッチングで示す中央付近に配置された9個の受光素子1662a、当該9個の受光素子の周辺に隣接して配置された図24(b)にハッチングで示す36個の受光素子1662b、当該36個のさらに周辺に隣接して配置された図24(c)にハッチング出示す64個の受光素子1662c、当該64個のさらに周辺に隣接して配置された図24(d)にハッチング出示す84個の受光素子1662d、のように、それぞれ分離して受光すればよい。このように、全ての受光素子で受光し、画像生成部170が、必要な受光素子の画像信号を選択して画像を生成すればよい。
【0178】
図18〜図24に関連して説明したように、1つのマイクロレンズに対応して受光素子をn行m列(n、mは正の整数)のマトリクス状に配置することで、所望の瞳領域を通過した被写体光を分離して受光することができる。また、何段階に分割するのかは、用途や設計に応じて適宜決めることができる。
【0179】
図25は、撮像装置の他のブロック構成の一例を示す。本例の撮像装置1110は、レンズ系100、受光ユニット20、画像生成部170および画像記録部190を備える。受光ユニット20は、マイクロレンズ部150、偏光フィルタ部1140および受光部160を有する。本例の受光ユニット20は、図1から図7にかけて説明した偏向部140に替えて、偏光フィルタ部1140を偏向光学要素として有する。受光部160は、図1から図7にかけて説明した受光部160と同様の構成を持つので、説明を省略する。ここでは、図1から図7にかけて説明した撮像装置10との差異を中心に説明する。
【0180】
本例の撮像装置1110では、レンズ系100は、レンズ110および偏光フィルタ部1130を有する。ここでは、レンズ系100の光軸を中心とした所定の半径を有する円形領域を205a、レンズ系100の光軸を中心とした円環形状の領域であって、領域205aの周辺の円環形状領域を205bとする。
【0181】
またレンズ系100の射出瞳2220のうち、領域205aに対応する瞳領域を222a、領域205bに対応する瞳領域を222bとする。
【0182】
偏光フィルタ部1130は、射出瞳2220の近傍に設けられる。偏光フィルタ部1130には、瞳領域222aに対応して第1偏光フィルタ1132が、瞳領域222bに対応して第2偏光フィルタ1134が配置されている。すなわち、第1偏光フィルタ1132は所定の半径を有する円形形状のフィルタであり、第2偏光フィルタ1134は、第1偏光フィルタ1132の周辺に配置された円環形状のフィルタである。第1偏光フィルタ1132および第2偏光フィルタ1134は、レンズ効果を併せ持っていてもよい。
【0183】
第1偏光フィルタ1132および第2偏光フィルタ1134には、それぞれ対応する瞳領域222aおよび222bを通過した光が入射する。第1偏光フィルタ1132および第2偏光フィルタ1134は、それぞれ互いに直交する偏光成分を選択的に通過する。直交する偏光成分の組み合わせとしては、偏光方位が互いに直交する直線偏光成分を例示することができる。直交する偏光成分の組み合わせとして、他にも右回り円偏光成分と左回り円偏光成分との組み合わせを例示することができる。
【0184】
マイクロレンズ部150は複数のマイクロレンズ152を有する。本例では、マイクロレンズ152は、射出瞳の略全面を通過した光を受光素子162に向けて集光する大きさの屈折力を持つ。マイクロレンズ152が有する屈折力は、図1から図7に関連して説明したマイクロレンズが有する屈折力よりも小さくてよい。偏光フィルタ部1140は、複数の受光素子162に対応して設けられた複数の偏光フィルタ1142を持つ。偏光フィルタ1142のうち、偏光フィルタ1142aは、第1偏光フィルタ1132が透過する偏光成分を通過させ、第2偏光フィルタ1134が通過する偏光成分を通過させない。偏光フィルタ1142のうち、偏光フィルタ1142bは、第2偏光フィルタ1134が透過する偏光成分を通過させ、第1偏光フィルタ1132が通過する偏光成分を通過させない。偏光フィルタ部1140は、偏光フィルタ1142aおよび偏光フィルタ1142bの組を複数有する。
【0185】
受光素子162は、対応する偏光フィルタ1142が通過した光を受光する。具体的には、受光素子162aは、偏光フィルタ1142aが通過した光を受光する。受光素子162bは、偏光フィルタ1142bが通過した光を受光する。したがって、受光素子162aが受光する光は、第1偏光フィルタ1132を通過したものに制限される。受光素子162bが受光する光は、第2偏光フィルタ1134を通過したものに制限される。
【0186】
このため、受光素子162aと受光素子162bとは、レンズ系100の互いに異なるMTF特性を持つ光学面を通過した光を受光する。画像生成部170は、受光素子162aなど第1偏光フィルタ1132を通過した光を受光した受光素子162から第1ボケ味の画像を生成する。また、画像生成部170は、受光素子162bなど第2偏光フィルタ1134を通過した光を受光した受光素子162から第2ボケ味の画像を生成する。本例の撮像装置1110によっても、ボケ味が異なる画像を撮像することができる。
【0187】
このように、本例の撮像装置1110は、複数の瞳領域において互いに異なる偏光成分を透過する第1偏光フィルタ1132および第2偏光フィルタ1134と、複数の受光素子162に対応して設けられ、異なる偏光成分をそれぞれ透過する偏光フィルタ1142aおよびbをそれぞれ複数有する。
【0188】
図25に関連して、偏光フィルタによって瞳領域を分割する形態を説明したが、図25に例示した偏光フィルタに替えて波長フィルタを用いることができる。すなわち、撮像装置1110は、複数の瞳領域において互いに異なる波長成分を透過する第1波長フィルタと、複数の受光素子162に対応して設けられ、異なる波長成分をそれぞれ透過する第2波長フィルタをそれぞれ複数有してよい。波長フィルタとして、赤の波長域に属する2以上の部分波長域の光をそれぞれ透過する2以上の波長フィルタ、緑の波長域に属する2以上の部分波長域をそれぞれ透過する2以上の波長フィルタ、青の波長域に属する2以上の部分波長域をそれぞれ透過する2以上の波長フィルタを用いてよい。この場合、各ボケ味の画像は、赤の波長域、緑の波長域および青の波長域のそれぞれから選択された3つの部分波長域の光により形成し得る。このように、波長フィルタによっても瞳領域を制限しつつカラー画像を撮像することができる。
【0189】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0190】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0191】
10、1110…撮像装置、20…受光ユニット、100…レンズ系、105…領域、110…レンズ、115…光学装置、120、2220…射出瞳、122、222…瞳領域、130…被写体光、140…偏向部、142…プリズム要素、150…マイクロレンズ部、152、952、1052、1252…マイクロレンズ、160…受光部、162、1162−1、2、3…受光素子、170…画像生成部、180…制御部、190…画像記録部、200…ハウジング、210、220、230…液体領域、240、640…仕切部、242…仕切板、250…貫通孔、252、254、642、644…側面部、260…カラーフィルタ、262、2262…遮光部、264、1264…開口、266…遮光マスク、281、282、680…プリズム要素、290、291、292…駆動部、280…弾性面、350…行方向、360…列方向、400…像面、510…第1ボケ味画像、520…第2ボケ味画像、530…第3ボケ味画像、550…合成画像、700、701、702、703、704…突起部、1060、1070…遮光部、1062、1072…開口、1130、1140…偏光フィルタ部、1132…第1偏光フィルタ、1134…第2偏光フィルタ、1142…偏光フィルタ、1161…受光素子群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結像レンズと、
受光素子を複数有する受光部と、
複数の前記受光素子にそれぞれ対応して設けられ、前記結像レンズの射出瞳における予め定められた瞳領域を通過した被写体光を、対応する受光素子にそれぞれ受光させる複数の光学要素と、
前記複数の受光素子の撮像信号から、被写体の画像を生成する画像生成部と、
を備え、
前記複数の光学要素のうちの複数の第1光学要素は、前記結像レンズの光軸を中心とする円形状または円環形状の第1の領域および前記射出瞳における第1瞳領域を通過する被写体光を、対応する受光素子へ入射させ、
前記複数の光学要素のうちの複数の第2光学要素は、前記結像レンズの光軸を中心とする円環形状の領域であって、前記第1の領域より外周に位置する第2の領域および前記射出瞳における第2瞳領域を通過する被写体光を、対応する受光素子へ入射させることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記画像生成部は、前記射出瞳のいずれの瞳領域を通過した被写体光により前記被写体の画像を生成すべきかを選択し、選択した瞳領域を通過した被写体光を受光する複数の受光素子の撮像信号を用いて、前記被写体の画像を生成することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記複数の光学要素はそれぞれ、前記予め定められた瞳領域を通過した被写体光を対応する受光素子に受光させるプリズム要素であることを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記プリズム要素は、屈折率が互いに異なる第1液体と第2液体との間の液体界面でプリズム界面が形成される液体プリズム要素であり、
前記撮像装置は、
前記結像レンズの光軸に対する前記プリズム界面の傾きを制御することにより、複数の前記プリズム要素にそれぞれ対応する前記受光素子の受光する光束の向きを制御する制御部をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記第1液体および前記第2液体を保持するプリズムハウジングと、
前記プリズムハウジングの内部を、前記光軸に沿って前記第1液体が充填される第1領域と前記第2液体が充填される第2領域とに分割する仕切板と
をさらに有し、
前記仕切板には、複数の前記液体プリズム要素が形成される位置に対応して複数の貫通孔が形成され、
前記制御部は、前記複数の貫通孔のそれぞれの第1側面部における前記液体界面の位置および第1側面部に対向する第2側面部における前記液体界面の位置を制御することにより、前記光軸に対する前記プリズム界面の傾きを制御することを特徴とする請求項4に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記射出瞳における前記光軸を含む瞳領域を通過した被写体光を前記受光素子に受光させる場合に、前記光軸に対して前記液体界面を略直交させ、前記射出瞳における前記光軸を含まない瞳領域を通過した被写体光を前記受光素子に受光させる場合に、前記光軸に対して前記液体界面を傾斜させることを特徴とする請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記射出瞳における前記光軸を含まない瞳領域を通過した被写体光を前記受光素子に受光させる場合に、前記光軸に対して前記液体界面を第1の傾きに傾斜させ、前記射出瞳における前記光軸を含まない他の瞳領域を通過した被写体光を前記受光素子に受光させる場合に、前記光軸に対して前記液体界面を第2の傾きに傾斜させることを特徴とする請求項5に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記複数の貫通孔のうち少なくともいずれかの貫通孔は、互いに厚さが異なる前記第1側面部および前記第2側面部を持ち、
前記制御部は、前記第1側面部と前記第2側面部とで囲まれる領域内に前記第1液体が充填された状態と、当該領域内に第2液体が充填された状態との間で切り替えることにより、前記光軸に対する前記液体界面を異なる傾きに切り替えることを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記複数の受光素子はマトリクス状に配置され、
前記仕切板は、列方向に延伸する第1仕切部と、前記列方向に延伸する第2仕切部とが、行方向に交互に設けられて形成され、
前記第1仕切部は、前記光軸方向に沿って第1の厚さの側面部を両側部に持ち、
前記第2仕切部は、前記光軸方向に沿って第2の厚さの側面部を両側部に持ち、
前記複数の貫通孔は、前記第1仕切部の側面部と、前記第1仕切部に隣り合う前記第2仕切部の側面部とによりそれぞれ形成され、
前記第1仕切部および前記第2仕切部の前記第1液体側は略同一平面を形成し、
前記制御部は、前記光軸に対する前記液体界面の傾きを前記行方向に互いに異ならせるべく、前記第1側面部と前記第2側面部とで囲まれる領域内に前記第1液体が充填された状態に制御することを特徴とする請求項5から8のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記第1液体を保持する領域の内圧を制御することにより、前記光軸に対する前記界面の傾きを制御することを特徴とする請求項5から9のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記複数の光学要素は、それぞれ前記予め定められた瞳領域を通過した被写体光を、対応する前記受光素子に受光させるべく光軸を前記受光素子の受光開口に対して偏倚して設けられたマイクロレンズであることを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記複数の光学要素はそれぞれ、対応する受光素子に対し前記予め定められた瞳領域への指向性を持つ開口が形成された遮光要素であることを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項13】
前記遮光要素の開口は、円形状または円環形状であることを特徴とする請求項12に記載の撮像装置。
【請求項14】
前記複数の光学要素は、複数の前記瞳領域において互いに異なる偏光成分を透過する第1偏光フィルタと、前記複数の受光素子にそれぞれ対応して設けられ、前記異なる偏光成分をそれぞれ透過する第2偏光フィルタとを有することを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項15】
前記複数の光学要素は、複数の前記瞳領域において互いに異なる波長成分を透過する第1波長フィルタと、前記複数の受光素子に対応して設けられ、前記異なる波長成分をそれぞれ透過する第2波長フィルタを複数有することを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項16】
前記複数の光学要素は、焦点距離をそれぞれ異ならせたマイクロレンズと円環形状の開口を形成する遮光要素であることを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項17】
前記複数の光学要素の各光学要素はマイクロレンズであり、1つの前記マイクロレンズに対応して複数の受光素子がマトリクス状に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項18】
1つの前記マイクロレンズに対応してn×m個の受光素子がn行m列のマトリクス状に配置されており、
前記画像生成部は、前記射出瞳のいずれの瞳領域を通過した被写体光により前記被写体の画像を生成すべきかを選択し、前記マトリクス状に配置された受光素子のうち、前記マイクロレンズの結像中心からの距離が概等しい位置の受光素子の撮像信号であって、前記選択した瞳領域を通過した被写体光を受光する受光素子の撮像信号を用いて、前記被写体の画像を生成することを特徴とする請求項17に記載の撮像装置。
【請求項19】
1つの前記マイクロレンズに対応して25個の受光素子が5行5列のマトリクス状に配置されており、
前記画像生成部は、前記射出瞳のいずれの瞳領域を通過した被写体光により前記被写体の画像を生成すべきかを選択し、前記マトリクス状に配置された受光素子のうち、中央に配置された1個の第1の受光素子の撮像信号と、該第1の受光素子に隣接して配置された8個の第2の受光素子の撮像信号と、該第2の受光素子に隣接して配置された16個の第3の受光素子の撮像信号と、のうち前記選択した瞳領域を通過した被写体光を受光する受光素子の撮像信号を用いて、前記被写体の画像を生成することを特徴とする請求項18に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2012−253670(P2012−253670A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126461(P2011−126461)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】