説明

撮像装置

【課題】 複数の撮像素子を配置して画像を取得し観察する際、撮像素子間の非撮像領域で反射、吸収された光による画質の低下を低減することができる撮像装置を提供する。
【解決手段】 照明光学系(100)により光源(110)からの光を対象物(225)に照明し、撮像光学系(300)を介して前記対象物の像を複数の撮像素子(430)を用いて取得する撮像装置(1)であって、前記照明光学系は複数のインテグレータ(121)を有し、前記複数のインテグレータのうち一つのインテグレータから射出される光が、前記複数の撮像素子のうち少なくとも一つを照明し、前記残りのインテグレータから射出される光が、前記複数の撮像素子のうち前記一つのインテグレータから射出される光によって照明される撮像素子以外の少なくとも一つを照明する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標本の画像を撮像する撮像装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、標本全体から細胞組織までの外形情報を電子化画像として取り込んで、モニターに表示させることができる撮像装置が注目されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、解像度の高い高倍率での撮影画像をつなぎ合わせ、標本全体の画像として形成するという方法が開示されている。しかしながら、この方法では、標本全体に対して多くの高倍率画像を取得する必要があるため、全体画像を得るための時間が多大にかかる場合が多い。そこで、特許文献2や特許文献3では、視野が大きく且つ解像度の高い対物レンズを用意し、撮像部に撮像素子を複数配置し、高速で高倍率撮像をする方法が開示されている。
【0004】
ここで、複数の撮像素子を用いた例を図2に示す。図2(a)は、撮像対象物を、図2(b)は撮像装置の撮像部を表す。220は、撮像対象物である標本225を保持する標本保持部(たとえばスライドガラス)であり、228は照明されている領域を表す。そして、225Cは撮像対象物の像であり、420は電気基板であり、430は撮像素子であり、228Cは照明領域228が像面で結像する領域である。図2(a)のように標本に対して照明された光(照明領域228)は、図2(b)のように電気基板420および複数の撮像素子430を含む領域(領域228C)に結像される。
【0005】
複数の撮像素子430を隙間無く配置することは配線等の理由により困難であるため、撮像素子間には隙間ができてしまう。そのため、標本もしくは撮像部を複数回駆動して位置を変えつつ、そのたびに撮像し、撮像した画像を合成して全体画像を形成することで、標本全体の外形情報を画像として取得する。ここで複数の撮像素子を用いるのは、広い視野に対して一括撮像できる大きな撮像素子を用意することが、非常に困難だからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2008−510201
【特許文献2】特開2009−003016
【特許文献3】特開2009−063665
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
複数の撮像素子を用いた場合、図2(a)のように標本全体に対して光軸対称な領域全体を照明すると、像面では図2(b)のように各撮像素子の間や外側にも標本の像が結像する。この時、各撮像素子の間や外側で結像する光は、電気基板や機械部に当たって反射し、他の電気基板、機械部、撮像光学系のレンズ等に当たって、最後はフレア等の撮像に対して好ましくない光として撮像素子に入射する場合がある。そうすると、画質の低下につながる可能性がある。
【0008】
また、各撮像素子の間や外側で反射しない場合、電気基板にそのまま熱として吸収されるが、撮像素子の特性は熱によって変わってしまうため、この熱によって画質が低下してしまう可能性がある。
【0009】
そこで、本発明では、複数の撮像素子を配置した撮像装置において、撮像素子以外に光が照射されることによる画質の低下を低減することができる撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、光源を含み前記光源からの光を被照射面に導く照明光学系と、前記被照射面を撮像するための撮像光学系と、前記撮像光学系の像面に配置された複数の撮像素子と、を有する撮像装置であって、前記照明光学系は第1および第2のインテグレータを含む複数のインテグレータを有し、前記第1のインテグレータから射出される光束が、前記複数の撮像素子のうち少なくとも一つを照明し、前記第2のインテグレータから射出される光束が、前記複数の撮像素子のうち前記第1のインテグレータから射出される光束によって照明される撮像素子以外の少なくとも一つを照明する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数の撮像素子を配置した撮像装置において、撮像素子以外に光が照射されることによる画質の低下を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の撮像装置全体の説明図
【図2】光軸対称な領域を照明した場合の照明状態についての説明図
【図3】図1のオプティカルインテグレータ部の実施例の説明
【図4】図1のオプティカルインテグレータ部の実施例の説明
【図5】オプティカルロッドのインテグレート効果の説明図
【図6】図1のオプティカルインテグレータ部/標本部/撮像部の照明・結像状態の説明図
【図7】図1において複数回の撮像による全体像取得の説明図
【図8】図1において複数回の撮像による全体像取得の説明図
【図9】図1のオプティカルインテグレータ部/標本部/撮像部の照明・結像状態の説明図
【図10】図1の撮像部における照明部と撮像素子の関係についての説明図
【図11】図1のオプティカルインテグレータ部の実施例の説明
【図12】図1のオプティカルインテグレータ部の実施例の説明
【図13】図1のオプティカルインテグレータ部の実施例の説明
【図14】図1の光源ユニットから標本部の実施例の説明図
【図15】図1の光源ユニットからオプティカルインテグレータ部の実施例の説明図
【図16】1本のオプティカルロッドに複数の光源からの光を入射させる構成の説明図
【図17】複数の光源チャンネルを持った光源ユニットの説明図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の様々な実施例の撮像装置について説明する。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態の撮像装置の概要図である。図1において、撮像装置1は、光源ユニット110からの光を撮像対象物225が配置されている被照射面Bに導く照明光学系100と、標本部200を有する。更に、被照射面上の撮像対象物の像を結像するための撮像光学系300と、撮像光学系300の像面に複数の撮像素子430を配置した撮像素子部(撮像部)400を有している。
【0015】
照明光学系100は、光源ユニット110と、複数のオプティカルロッド121(第1のインテグレータ、第2のインテグレータ)を有するオプティカルインテグレータ部120と、例えばミラー135やレンズ等を含む共役光学系130で構成される。光源ユニット110は、標本部200の標本を照明するための光束を放射しており、例えば、1つまたは複数のハロゲンランプやキセノンランプ、LED等で構成されている。
【0016】
光源ユニット110は、複数のオプティカルロッド121にのみ光を供給する。例えば、図3に示すように、光源111からの発散光を、平行化レンズ112で平行化し、レンズアレイ113にて所望の位置及び角度で集光する。もしくは、図4に示すように、電気基板115上に配置した複数の光源111からの光を、その後段にあるオプティカルロッドに各々に独立して入射させる。また、複数の光源111と各オプティカルロッド121の間に、集光レンズがあってもよい。
【0017】
オプティカルロッドは、均一な照明面を形成する方法として知られているが、そのしくみを図5にて簡潔に記す。図5のオプティカルロッド121は、長さがL、ロッド端一辺の長さが2rの正方形となっている。ここで、角度をもった光がロッド端面aの中心点P0に入射する場合のみを考える。
【0018】
光線が光軸に対してαの角度でロッド端面aに入射し、ロッド内で光軸に対してα’の角度で進行するならば、αとα’にはsinα=nsinα’(ただし、空気中の屈折率を1、ロッドの屈折率をnとする)の関係がある。ロッド内での光線角度α’に着目するとき、0≦α’<α1のなら、光線はロッド側面に当たることなくロッドのもう一方の端bに到達する。ロッド端面bから見た場合、この光線は点P0からのみ発せられたように見える。
【0019】
α’≧α1の場合は、光線はロッド側面に当たり、全反射する。光線角度α’がα1≦α’<α2の場合、光線はロッド側面で1回だけ全反射するが、ロッド端面bから見た場合、この光線は点P1から発せられたように見える。つまりP0とは異なる点から光が発せられ、ロッド端面bを照明しているように見える。光線角度α’がα2≦α’<α3の場合、光線はロッド端面で2回全反射するが、ロッド端面bから見た場合、この光線は点P2から発せられたように見える。つまりP0やP1とは異なる点から光が発せられ、ロッド端面bを照明しているように見える。
【0020】
このように反射回数が増すごとに、ロッド端面bを照明する虚像が増えることになり、複数の点から照明されていることになるため、結果としてロッド内の反射回数が増すごとに、ロッド端面bでの照度は均一度を増すことになる。定性的には、α’が大きいほど、rが小さいほど、またLが大きいほど反射回数が増える。ただし、内面反射により射出面で照度を均一化できるものであれば、図5の例のようなガラス状のロッドでなくともよい。たとえば、矩形の空洞部を形成した金属性のロッドに光を入射させると、空洞部内部では側面でのミラーの働きにより複数回反射が起こり、空洞部射出面で均一な照度の面を形成できる。
【0021】
以上が、オプティカルロッド121が、内面反射を複数回行うことにより、ロッド側面で光を漏らさず、ロッド射出面で均一な照度の面を形成するしくみである。
【0022】
図1に戻って、オプティカルインテグレータ部120は、光源ユニット110から放射される光束を側面に漏らすことなく導光し、各オプティカルロッド121の射出端面で均一な照明面を形成している。オプティカルインテグレータ部120の射出面を面Aとしたとき、この面Aは図6(a)に示すように、複数のオプティカルロッド121に対応して離散的に均一な照明分布を形成している。この面を共役光学系130で結像し、被照射面Bを照明する。なお、共役光学系130は、照明面Bで撮像に必要な均一性が得られるのであれば、標本面Bと面Aとが完全に共役な位置に配置されている必要は無く、略共役な位置に配置されていればよい。
【0023】
標本部200は、標本ステージ210と、標本保持部220で構成される。標本ステージ210は、標本保持部220の位置を光軸方向や光軸と垂直な方向、もしくは光軸に対して傾くように動かすことができる。標本保持部220は、例えばスライドガラスと標本225(図6(b))とカバーガラス(図不出)で構成され、標本225と被照射面Bが一致するように保持する。このとき、標本225は、図2(a)のように光軸対称に照明されるのではなく、図6(b)に示すように離散的に照明されており、各照明領域227は均一な照度となっている。
【0024】
撮像光学系300は、被照射面Bで照明された標本の像を、広画角かつ高い解像度で撮像面Cに結像する光学系である。撮像面Cにおいて、観察したい標本225は、撮像光学系300によって、図6(c)の点線で示すように像225Cとして結像される。
【0025】
ここで、撮像部400は、撮像ステージ410と、電気基板420と撮像素子430で構成されている。撮像素子430は、図6(c)で示すように、電気基板420上に隙間を空けて配置されており、撮像ステージ410で撮像光学系300の結像面Cに一致するように配置されている。撮像面Cでは、標本が照明されている領域の大きさ227Cと、撮像素子の大きさ430とを一致させる。図6(c)で示すように、あるオプティカルロッドである撮像素子を照明し、他のオプティカルロッドは、あるオプティカルロッドで照明された撮像素子以外の撮像素子を照明する。
【0026】
撮像光学系の光学系倍率をβ、共役光学系の光学系倍率をβ’としたとき、撮像素子430の大きさが□Tであれば、ロッド端面の大きさは、□T×(1/β)×(1/β’)となる。また、各撮像素子に標本の像が□T×a(mm)(ただしa>1)の領域だけ結像するように少し余裕を持たせてもよく、その場合、ロッドの端面の大きさは図6(a)に示すように□T×a×(1/β)×(1/β’)となる。その結果、撮像面Cでは、図2(b)のように撮像素子が配置されていない所に照射される光量を低減し、図6(c)のように撮像素子が配置されている所に物体からの光が結像する。
【0027】
本発明の撮像装置では、光軸と直交する面内において、オプティカルインテグレータ射出面Aと標本面Bと撮像面Cのうち、少なくとも一つ以上の面の相対位置を変えて、被照射面上の撮像対象物を複数回撮像している。
【0028】
図7にて、複数の撮像素子430を格子状に配置し、標本保持部220を同図の斜め方向にずらしながらその都度撮影し、撮像画像を張り合わせている例を示す。図7(a)〜図7(c)は、標本保持部220を光軸に対して垂直なXY方向に、撮像素子430の有効寸法の半分だけずらした場合の撮像部400での撮像素子430と標本225の像225Cの関係を示す。
【0029】
図7(a)の位置で1回目の撮像を行った場合、標本225の像225Cは図7(d)に示すように撮像素子の存在する領域のみが離散的に撮像される。次に、標本保持部220をずらし、図7(b)の位置で2回目の撮像を行った場合、先に取得した画像と組み合わせると、図7(e)に示す部分を撮像していることになる。最後に、更に標本保持部220をずらして図7(c)の位置に標本225を移動させて撮像し、これまでの2回の撮像で取得した画像と重なり合わせると、図7(f)で示す撮像領域全体を画像化することができる。
【0030】
また、本実施例においては図8(a)〜図8(c)のように複数の撮像素子430を千鳥状に配置し、標本保持部220をX方向に撮像素子430のX方向の有効寸法だけずらしながら、その都度撮像し、撮像した画像を張り合わせる方法も適用できる。
【0031】
標本保持部220をX方向に対して移動させながら撮像を繰り返すとき、撮像素子430は、X方向から見たとき、画像を張り合わせるための重なりを持たせるように配置する。ただし、図8の場合、撮像素子430の形が長方形であるので、オプティカルロッド121の射出面の形は、撮像素子と相似関係にある長方形にする。このように、オプティカルロッド121の射出面の形状を撮像素子の形状に対応させることで、撮像素子外に照射される光量を低減し、且つ受光面積を有効に利用することが可能となる。ここで、対応させるとは、例えば、撮像素子の形状が矩形や六角形である場合、オプティカルロッドの射出面の形状もそれに合わせて矩形や六角形にすることである。撮像素子の形状とオプティカルロッドの射出面の形状を相似関係や、相似とまではいかなくともそれに近くすれば、撮像素子の受光面積をより有効に利用することが可能となる。
【0032】
このときのオプティカルインテグレータ射出面Aと標本面と撮像面の照明の様子を図9に示す。前述のように、撮像光学系の光学系倍率をβ、共役光学系の光学系倍率をβ’とする。そのとき、撮像素子430の大きさがX方向でTx、Y方向でTyであるならば、ロッド端面のX方向長さはTx×(1/β)×(1/β’)、Y方向長さはTy×(1/β)×(1/β’)とする。
【0033】
図8(a)の位置で1回目の撮像を行った場合、標本225の像225Cは図8(d)に示すように撮像素子の存在する領域のみが離散的に撮像される。
【0034】
次に、標本保持部220をずらし図8(b)の位置で2回目の撮像を行った場合、先に取得した画像と組み合わせると、図8(e)に示す部分を撮像していることになる。
【0035】
最後に、更に標本保持部220をずらして図8(c)の位置に標本225を移動させて撮像し、これまでの2回の撮像で取得した画像と重なり合わせると、図8(f)で示す撮像領域全体を画像化することができる。
【0036】
このようにして、複数枚の画像データを図1における画像処理手段510でつなぎ合わせ、その画像を記録手段530に格納し、画像表示手段520に表示する。
【0037】
本実施形態によれば、複数のオプティカルインテグレータから射出される各光束が各撮像素子を照明する、言い換えると、複数のオプティカルインテグレータから射出される各光束が撮像光学系を介して得られる各撮像素子の共役像を照明する。これにより、撮像素子が配列されている部分に標本の像を結像することが可能となる、言い換えると撮像素子以外の撮像に関係のない部分へ照射される光量を低減することができるため、撮像に対してフレア等の好ましくない光が発生しにくくなり、画質の劣化を低減できる。また、撮像部における電気基板等での反射、吸収の影響を少なくすることができるため、電気配線や機械部の配置の自由度が向上する。厳密には、共役光学系130や撮像光学系300の収差もしくはフォーカスずれなどで各照明領域がぼけて、撮像素子以外の領域に光が当たることが考えられる。しかしながら、各照明領域で発生するボケやボケの重なりがある部分の照度が撮像素子上での照度より低くなるようにしていれば、検体全体を一括照明する場合に対しては、光を効率的に利用しつつ、散乱光による画質低下を低減できると言える。
【0038】
さらに、必要な部分にのみ照明することで、光源の利用効率を高めることもできる。光源は温度によって発光波長や発光量が変化する場合があるが、このように利用効率を高めると、光源の特性変動に関する画質劣化の低減にも効果がある。
【0039】
(第2実施形態)
撮像光学系の光学系倍率βや共役光学系の光学系倍率β’、撮像領域等の設計事項の制約により、第1実施形態のようにロッド1つと撮像素子1つを対応させるのが難しい場合、ロッド1つと複数の撮像素子を対応させてもよい。例えば、図10のように、撮像素子4つで占められる領域を均一に照明するために、1つのロッドから照明しても良い。この場合、第1実施形態を用いた場合ほどではなくとも、全撮像素子が撮像する領域を照明する従来の場合よりも、画質への影響を軽減することが出来る。
【0040】
(第3実施形態)
第1、第2実施形態では、オプティカルインテグレータ部120にオプティカルロッドを用いたが、レンズアレイを用いることもできる。その例を図11に示す。
【0041】
各光源111から放射された光を平行化レンズ群116の各レンズで平行化し、さらに微小なレンズからなるレンズアレイ122で集光もしくは発散させ、平行化レンズ群123の各レンズでオプティカルロッド射出面に相当する面Aを照明する。
【0042】
レンズアレイ122は、X方向の曲率とY方向の曲率が異なるトロイダル面を持った矩形のレンズが、複数つなぎあって形成されている。そして、レンズアレイ122の各レンズは、図12に示すように、円形ではなく矩形にし、二方向での曲率を変えることで照明面のx方向の大きさ(x)とy方向の大きさ(y)を変え、撮像素子の大きさに合わせた形状に光を整形する。もしくは、レンズアレイ122は、図13に示すように、片側の面に一方向のみ曲率をもつシリンドリカル面を持ち、もう片側の面が平面となるシリンドリカルレンズを組み合わせて用いてもよい。この例では、X方向から見ると、一つはX方向に曲率を持っており、もう一つは平板としてみなすことができる(図13(a))。また、Y方向から見ると、一つは平板で、もう1つはY方向に曲率を持っているとみなすことができる(図13(b))。
【0043】
図11に戻ると、レンズアレイ122と平行化レンズ123は、平行化レンズ群123のレンズの焦点距離fだけ離れており、さらにf離れた面Aを照明する。このとき、レンズアレイ122の複数のレンズからの光束は、平行化レンズ群123の各レンズに入射し(図11の光線で図示)、面Aで重畳され、均一な照明を形成する(ケーラー照明)。この例では、面Aにおいて、各光源に対応してケーラー照明で均一照明されている照明部が、離散的に複数形成されることになる。
【0044】
面Aでは空中像が形成できるため、共役光学系を取り除いて面Aと標本面Bを一致させても良いし、設計事情に合わせて変倍光学系として共役光学系を配置しても良い。こうすると、図6(c)で示したように、離散的に配置され撮像素子の大きさと配置に合わせて、離散的かつ均一な照明部を形成できる。その結果、撮像素子部以外の部分に照射される光を低減できるため、フレア等の発生を低減することができ、画質の劣化を低減することができる。
【0045】
(第4実施形態)
ところで、良好な画像を得るために、各撮像素子での撮影条件をそろえるべく、照度を均一にすることが重要であると上述した。
【0046】
この撮影条件は、像を受ける撮像素子ごとに、照度ばらつきや撮像素子ばらつき、光学系の透過率ばらつきなどの影響を受けるため、求める画像によっては、そのばらつきを厳しく補正しなければならない。以下に、そのばらつきを補正する方法を記す。
【0047】
ばらつきは、照度ばらつき、透過率ばらつき、撮像素子ばらつきがあるが、それらをまとめて各撮像素子に像として結像される物体(標本225)からの光を同じ条件にすればよい。そこで、撮像前に、標本面Bに何も置かないようにするか、標本がない硝子平板を挿入した状態で、標本部Bを照明する。このとき、本来ならどの撮像素子にも、同じ状態の照度で照明された像が撮像されるはずであるが、撮像素子ごとにばらつきが発生しているなら、各撮像素子の画像には差異が検出される。
【0048】
差異が検出された場合、その差異をすべての撮像素子に対してソフトウェアで校正し直せば、次回の撮像では差異が補正される。また、その結果を光源の発光量にフィードバックして、制御手段510(図1)にて光源を制御することで校正しても良い。光源の発光量の制御は、たとえば切り替え動作が迅速に行えるLEDにおいて、LEDに流す電流を制御する、もしくは高速でOn/Offさせながらその比を変更することで制御することが可能である。
【0049】
これらの校正作業をあらかじめ実施した後、実際に標本の撮像を行う。こうすることで、離散的に形成した全ての各照明部において均一な照度での照明をすることができるため、画質の向上を見込むことが出来る。
【0050】
また、ばらつきは、光量計を別途準備し、その計測結果を用いることでも補正することが出来る。例えば図14に示すように、共役光学系130内のミラー135をハーフミラーとして光束の一部を透過させ、標本部Bと等価な面B’に光量計136を配置する。光量モニター136は、ロッド一本毎に対応するために複数配置してもよいし、大型の撮像素子を配置してもよい。大型の撮像素子を配置する場合は、各照明区画に切り分け、各区間の照度を撮像素子の積算照度として算出する。131は共役光学系の前群、132は共役光学系の後群である。
【0051】
もしくは、ロッドに入射する前の光量を計測してもよい。図15において、光源111からの光をレンズアレイ112aで平行化し、レンズアレイ112bで再び集光化する光学系を考える。図15(a)は側面図であり、図15(b)は上面図である。レンズアレイ112の間に、ハーフミラー118を設けて光の一部を分割し、分割した光を光量計117で計測する。計測する場合は、図15の例のように複数の光量計を用いてもよいし、大型の撮像素子を使って、各ロッドに対応する各照明区画に切り分け、各区間の照度を積算照度として算出しても良い。
【0052】
図14、図15では、ロッドインテグレータを用いた例を示しているが、レンズアレイを用いた場合も同様に、ハーフミラーと光量計を用いて光量を計測してもよい。
【0053】
また、上述のように、ロッドインテグレータを複数配置する場合、各ロッド端に光を供給しなければならないが、光源を何度も取り替えずに済ませるため、ロッド一本に対して複数の光源からの光を供給するように光源部を構成してもよい。
【0054】
図16と図17にてその例を示す。図16(a)は、一本のロッドインテグレータ121に複数の光源111からの光を入射させる場合の側面図を示しており、図16(b)は、光源面から見た光源111とロッドインテグレータ121の位置関係を示す正面図を示している。図16では、複数の光源(図16では4つ)からなる光源群(図16では16対)がロッドインテグレータの配置に合うように配置された基板を用意し、ロッドインテグレータ一本に対して複数(図16では4つ)の光源から光を供給している。
【0055】
この例では、大型の光源を使用する代わりに、小さな光源を複数配置しているため、プリズム等の光源合成部を必要とせず、また冷却機構も必要としないか小さなものですむ。よって、光源を取り替える機会を減らせるだけでなく、光源部を小型に構成することもできる。
【0056】
図17で示す例では、複数の光源チャンネルを持ちつつ各々が光量調整可能な光源ユニット110があり、そこから複数のファイバー束114でロッドインテグレータ121に導光する構成になっている。この例では、ファイバー束がある分、光源部が大きくなるが、光の引き回しが容易なため、撮像装置上で配置しやすい場所に光源を配置してファイバーでロッドインテグレータまで導光すれば、装置全体の肥大化を抑制することが出来る。また、上記のように複数の光源で光量を増すことは、1つの光源の発光量を増すことよりも、熱や個体差による発光量の変動を受けにくくなるため、画質が安定しやすくなる(画質の低下を抑える)という効果も得ることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上、本発明の実施形態として顕微鏡に適用した場合について説明した。
【0058】
各実施形態では標本に照射する光の透過光を像面に結像する透過型の光学系について示したが、これに限らず反射型の光学系でも良い。また顕微鏡以外の撮像装置についても同様に適用できる。
【符号の説明】
【0059】
1 撮像装置
100 照明光学系
110 光源ユニット
112 平行化レンズ
113 レンズアレイ
116 平行化レンズ群
120 オプティカルインテグレータ部
121 オプティカルロッド
122 微小レンズアレイ
123 平行化レンズ群
130 共役光学系
200 標本部
225 標本
300 撮像光学系
400 撮像部
430 撮像素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源を含み前記光源からの光を被照射面に導く照明光学系と、前記被照射面を撮像するための撮像光学系と、前記撮像光学系の像面に配置された複数の撮像素子と、を有する撮像装置であって、
前記照明光学系は第1および第2のインテグレータを含む複数のインテグレータを有し、
前記第1のインテグレータから射出される光束が、前記複数の撮像素子のうち少なくとも一つを照明し、
前記第2のインテグレータから射出される光束が、前記複数の撮像素子のうち前記第1のインテグレータから射出される光束によって照明される撮像素子以外の少なくとも一つを照明することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記第1のインテグレータから射出される光束と前記第2のインテグレータから射出される光束とが、前記撮像光学系の像面において重ならないことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記複数のインテグレータは、内面反射を複数回行うことによって照射面を形成するロッドインテグレータであることを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記複数のロッドインテグレータによって複数の離散的な照明面を形成することを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記複数のロッドインテグレータの各々の射出面から射出される光束は前記複数の撮像素子の各々を照明し、前記複数のロッドインテグレータの各々の射出面の形状は、前記各々の射出面から射出された光束が照明する前記複数の撮像素子の各々の形状に対応していることを特徴とする請求項4に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記複数のインテグレータは複数のレンズアレイで構成されており、ケーラー照明によって離散的に照射面を形成することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記複数のレンズアレイの各々の照明面から射出される光束は前記複数の撮像素子の各々を照明し、前記複数のレンズアレイで形成された各々の照明面の形状は、前記各々の照明面から射出された光束が導かれる前記複数の撮像素子の各々の形状に対応していることを特徴とする請求項6に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記光源は、前記複数のインテグレータによって形成される複数の離散的な照明面に、各々に独立して光を供給することを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記複数の撮像素子に入射する光量を計測する計測手段と、
前記計測手段の計測結果から前記複数の撮像素子の各々に入射する光量を制御する制御手段と、を有することを特徴とする請求項8に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記複数の撮像素子の各々に入射する光量のばらつきが小さくなるように前記光量を制御することを特徴とする請求項9に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記計測手段は、前記撮像素子であることを特徴とする請求項9または10に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記計測手段は、前記被照射面と共役な面に配置された光量計であることを特徴とする請求項9または10に記載の撮像装置。
【請求項13】
前記被照射面に配置された撮像対象物と前記複数の撮像素子との相対位置を光軸と垂直な方向に変えて、前記撮像対象物の撮像を複数回行うことで、1つの画像を取得することを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−78784(P2012−78784A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136534(P2011−136534)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】