説明

撮影レンズ及びそれを有する撮像装置

【課題】 基準状態と防振状態の両方で良好な光学性能を実現したインナーフォーカス方式の撮影レンズを提供する。
【解決手段】 物体側より像側へ順に、正の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第2レンズ群、正の屈折力の第3レンズ群、正の屈折力の第4レンズ群、負の屈折力の第5レンズ群より構成され、物体距離無限遠から近距離側へのフォーカシングに際して、第1レンズ群、第3レンズ群、第5レンズ群は不動であり、第2レンズ群は像側へ移動し、第4レンズ群は物体側へ移動し、第5レンズ群は、物体側より像側へ順に、負の屈折力の第5aレンズ群と、正の屈折力の第5bレンズ群より構成され、第5aレンズ群は光軸に対して垂直方向の成分を持つように移動して結像位置を変位させるレンズ群であり、第3レンズ群の焦点距離f3、全系の焦点距離f、第5aレンズ群の焦点距離f5a、第5bレンズ群の焦点距離f5bが適切に設定された撮影レンズ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は写真用カメラ、ビデオカメラ、電子スチルカメラ等に好適な撮影レンズに関し、特に、撮影倍率が等倍程度の近距離撮影(マクロ撮影)が可能で、手ぶれ等による像ぶれを光学的に補正することができる撮影レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撮影倍率が等倍程度の近距離撮影を主目的とした撮影レンズにマクロレンズがある。マクロレンズは、無限遠物体から撮影倍率が等倍程度の近距離物体までを撮影することができ、特に近距離物体の撮影時(マクロ撮影時)に高い光学性能が得られるように設計されている。
【0003】
一般に、マクロレンズを含む撮影レンズにおいては、撮影倍率が大きくなるにつれて、フォーカシングに伴う諸収差の変動が大きくなり、光学性能が低下してくる。そこで、近距離物体へのフォーカシングの際に複数のレンズ群を移動させて収差を補正する、フローティング方式を採用している撮影レンズがある。
【0004】
また、撮影レンズのうち最も物体側に配置されている第1レンズ群を物体側に移動させてフォーカシングを行う場合、第1レンズ群の最も物体側のレンズ面と被写体との間隔であるワーキングディスタンスが短くなるため、好ましくない。そこで、フォーカシングに際して第1レンズ群を不動とし、像側のレンズ群を移動させてフォーカシングを行うインナーフォーカス型のマクロレンズが提案されている(特許文献1)。
【0005】
さらに、マクロレンズの一部を光軸に対して垂直方向の成分を持つように移動させることにより結像位置を変位させて像ぶれを補正することができるマクロレンズが提案されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開2003−329919号公報
【特許文献2】特開2000−214380号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近距離撮影においては、被写界深度を確保するために、開口絞りを絞り込んで(Fナンバーを大きくして)撮影するのが一般的である。しかし、開口絞りの開口を小さくすると、シャッター速度が遅くなるため、撮影時の手ぶれが問題になりやすい。また、被写体距離が近距離であるほど、手ぶれが撮影画像に与える影響が大きくなる。
【0007】
本発明は、マクロ撮影が容易で、手ぶれによる像ぶれを補正することができ、レンズ群を偏心させていない状態(基準状態)と、レンズ群を偏心させた状態(防振状態)の両方で良好な光学性能を実現することができる撮影レンズ及びそれを有する撮像装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の撮影レンズは、物体側より像側へ順に、正の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第2レンズ群、正の屈折力の第3レンズ群、正の屈折力の第4レンズ群、負の屈折力の第5レンズ群より構成されている。物体距離無限遠から近距離側へのフォーカシングに際して、第1レンズ群、第3レンズ群、第5レンズ群は不動であり、第2レンズ群は像側へ移動し、第4レンズ群は物体側へ移動する。第5レンズ群は、物体側より像側へ順に、負の屈折力の第5aレンズ群と、正の屈折力の第5bレンズ群より構成され、第5aレンズ群は光軸に対して垂直方向の成分を持つように移動して結像位置を変位させるレンズ群である。第3レンズ群の焦点距離をf3、全系の焦点距離をf、第5aレンズ群の焦点距離をf5a、第5bレンズ群の焦点距離をf5bとするとき、
1.5<f3/f<3.0
0.35<│f5a/f5b│<0.60
なる条件式を満足することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、マクロ撮影が容易で、手ぶれによる像ぶれを光学的に補正することができ、基準状態と防振状態の両方で良好な光学性能を得ることができる撮影レンズが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の撮影レンズ及びそれを有する撮像装置の実施の形態を添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
本発明の撮影レンズは、物体側より像側へ順に、正の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第2レンズ群、正の屈折力の第3レンズ群、正の屈折力の第4レンズ群、負の屈折力の第5レンズ群より構成されている。
【0012】
図1(A)、(B)は、本発明の実施例1の撮影レンズのレンズ断面図であり、それぞれ物体距離無限遠と等倍について示したものである。
【0013】
図2(A)、(B)は、本発明の実施例1の撮影レンズの収差図であり、それぞれ物体距離無限遠と等倍について示したものである。
【0014】
図3(A)、(B)は、本発明の実施例1の撮影レンズにおいて画角0.3°に相当する結像位置変位を行ったときの収差図であり、それぞれ物体距離無限遠と等倍について示したものである。
【0015】
図4(A)、(B)は、本発明の実施例2の撮影レンズのレンズ断面図であり、それぞれ物体距離無限遠と等倍について示したものである。
【0016】
図5(A)、(B)は、本発明の実施例2の撮影レンズの収差図であり、それぞれ物体距離無限遠と等倍について示したものである。
【0017】
図6(A)、(B)は、本発明の実施例2の撮影レンズにおいて画角0.3°に相当する結像位置変位を行ったときの収差図であり、それぞれ物体距離無限遠と等倍について示したものである。
【0018】
図7(A)、(B)は、本発明の実施例3の撮影レンズのレンズ断面図であり、それぞれ物体距離無限遠と等倍について示したものである。
【0019】
図8(A)、(B)は、本発明の実施例3の撮影レンズの収差図であり、それぞれ物体距離無限遠と等倍について示したものである。
【0020】
図9(A)、(B)は、本発明の実施例3の撮影レンズにおいて画角0.3°に相当する結像位置変位を行ったときの収差図であり、それぞれ物体距離無限遠と等倍について示したものである。
【0021】
各実施例の撮影レンズは撮影倍率が等倍程度の近距離物体の撮影(マクロ撮影)が可能な撮影レンズである。
【0022】
レンズ断面図において、左方が物体側(前方)で、右方が像側(後方)である。
【0023】
図1,4,7のレンズ断面図において、L1は正の屈折力の第1レンズ群、L2は負の屈折力の第2レンズ群、L3は正の屈折力の第3レンズ群、L4は正の屈折力の第4レンズ群、L5は、負の屈折力を持つ第5レンズ群である。
【0024】
物体距離無限遠から近距離側へのフォーカシングに際して、第1レンズ群、第3レンズ群、第5レンズ群は不動であり、第2レンズ群は像側へ移動し、第4レンズ群は物体側へ移動する。
【0025】
SPは絞り(主開口絞り)、SP2は副絞り(副開口絞り)であり、いずれも第3レンズ群L3に配置されている。
【0026】
IPは像面であり、デジタルスチルカメラやビデオカメラの撮影レンズとして使用する際には、CCDセンサやCMOSセンサ等の固体撮像素子(光電変換素子)の撮像面が置かれる。
【0027】
収差図において、FnoはFナンバーである。M、Sはそれぞれd線のメリディオナル像面、サジタル像面に対応している。倍率色収差はg線、F線、C線によって表している。倍率色収差の収差図における二点鎖線はg線であり、一点鎖線はC線であり、鎖線はF線である。Yは像高である。
【0028】
各実施例において、第1レンズ群L1が物体距離無限遠から近距離側へのフォーカシングに際して不動であるため、フォーカシングを行ってもワーキングディスタンスが変化せず、操作性の良いマクロレンズを実現することができる。
【0029】
また、物体距離無限遠から近距離側へのフォーカシングに際して、第2レンズ群を像側へ移動させると共に、第4レンズ群を物体側へ移動させている。このように、複数のレンズ群を移動させてフォーカシングを行うフローティング方式を採用しているため、全ての物体距離において収差を良好に補正することができる。
【0030】
第5レンズ群L5は、負の屈折力を持つ第5aレンズ群L5aと、正の屈折力を持つ第5bレンズ群L5bより構成されている。
【0031】
本発明の撮影レンズは、第5aレンズ群を光軸に対して垂直方向の成分を持つように移動させて結像位置を変位させることにより、手ぶれの影響を低減している。
【0032】
そして、第5aレンズ群L5aが偏心していない基準状態と、像ぶれを補正するために第5aレンズ群L5aが偏心した状態である防振状態の両方において良好な光学性能を実現するために、以下の条件式を満足することを特徴としている。
1.5<f3/f<3.0 ・・・(1)
ただし、f3は第3レンズ群L3の焦点距離、fは全系の焦点距離である。
【0033】
条件式(1)は、第3レンズ群L3の焦点距離を特定したものである。以下に、条件式(1)の意味を説明する。
【0034】
一般に、光学系を構成する一部のレンズ群を偏心させた防振状態において、偏心像面湾曲を完全に補正するためには、以下の条件式を満足しなければならない(松居吉哉 偏心の存在する光学系の3次の収差論 日本オプトメカトロニクス協会1989)。
【0035】
【数1】

【0036】
ここで、Pは防振レンズ群のペッツバール和、Pは防振レンズ群よりも像側に配置されたレンズ群のペッツバール和、αは防振レンズ群に入射する光線の角度、α´は、防振レンズ群を出射する光線の角度である。
【0037】
つまり、偏心像面湾曲を0にするためには、(I)α´が0であること、すなわち防振レンズ群を出射する光線が光軸に対して平行(アフォーカル)であること、(II)防振レンズ群とその像側に配置されたレンズ群のペッツバール和が0であること、が求められる。
【0038】
インナーフォーカス方式のマクロレンズにおいて、条件式(A)を満足するような屈折力配置に近づけると、第4レンズ群L4の正の屈折力が小さくなり、第2レンズ群においてプラス側に発生する球面収差をマイナス側に補正する作用が弱まる。このため、球面収差を良好に補正することが困難になる。そこで、本発明では、第3レンズ群L3の正の屈折力を適切に設定し、第4レンズ群の正の屈折力を第3レンズ群に分担させることで、全ての物体距離において球面収差を良好に補正することができる。
【0039】
条件式(1)の上限を超えて第3レンズ群L3の屈折力が小さくなると、第4レンズ群の補正作用を第3レンズ群によって補うことが困難になり、球面収差がプラス側に発生してしまう。逆に、条件式(1)の下限を超えて第3レンズ群L3の屈折力が大きくなると、球面収差がマイナス側に発生してしまう。
【0040】
また、本発明の撮影レンズは、防振レンズ群である第5aレンズ群L5aとその像側に配置されたレンズ群である第5bレンズ群L5bのペッツバール和の合計の絶対値を小さくするために以下の条件式を満足している。
0.35<│f5a/f5b│<0.60 ・・・(2)
条件式(2)は第5aレンズ群L5aと第5bレンズ群L5bの屈折力の比を特定した条件式である。条件式(2)の上限を超えると基準状態での諸収差、特に像面湾曲を補正することが困難となる。条件式(2)の下限を超えると、条件式(A)から離れる方向となり防振状態での像面湾曲を補正することが困難となる。
【0041】
本発明において、更に好ましくは条件式(1)(2)の数値範囲を次の如く設定するのが良い。
1.7<f3/f<2.8 ・・・(1a)
0.40<│f5a/f5b│<0.50 ・・・(2a)
本発明は、以上の構成を満足することにより、基準状態と防振状態の両方で像面湾曲と球面収差が同時に良好に補正された良好な光学性能の撮影レンズを実現しているが、更に好ましくは、以下の条件式を満足するのが良い。
0.50<f4/f<0.70 ・・・(3)
条件式(3)は、第4レンズ群L4の焦点距離f4と全系の焦点距離fの比に関する条件式である。条件式(3)の上限を超えて第4レンズ群L4の屈折力が小さくなると、第2レンズ群L2でプラス側に発生する球面収差を補正することが困難となる。条件式(3)の下限を超えて第4レンズ群L4の屈折力が大きくなると、前述の条件式(A)を満たすことが困難となり、防振時の像面湾曲を補正することが困難になる。
【0042】
更に、以下の条件式を満足することが望ましい。
0.20<f4/f3<0.30 ・・・(4)
条件式(4)は、第4レンズ群L4の焦点距離f4と第3レンズ群L3の焦点距離f3の比に関する条件式である。条件式(4)の上限を超えて第3レンズ群L3の屈折力が大きくなると、マイナス方向に球面収差が発生し、フォーカシングに伴う球面収差の変動を補正することが困難になる。条件式(4)の下限を超えて第3レンズ群L3の屈折力が小さいと、第4レンズ群L4の屈折力が小さくなることによるプラス方向の球面収差を第3レンズ群L3で補正できなくなる。
【0043】
本発明の各実施例において、第5aレンズ群L5aは、負レンズと正レンズが接合された接合レンズで構成されている。このため、手ぶれの影響を低減するために、第5aレンズ群L5aを光軸に対して垂直方向の成分を持つように移動させた場合であっても、色収差が良好に補正された状態を保つことができる。
【0044】
また、単一の接合レンズで構成された小型軽量のレンズ群であるため、第5aレンズ群L5aを駆動する駆動部の大型化を防ぐことができる。
【0045】
また、一般にマクロレンズにおいては、撮影倍率βの変化に伴い、実効FナンバーFefが、
Fef =(1−β)・Fno
の式に従って変化していく。ここで、Fnoは光学系の無限遠状態におけるFナンバーである。そこで、本実施例ではその軸上光線の変化に伴い、副開口絞りSP2を変化させることで、絞り径を小さくすることにより、不要光をカットしている。
【0046】
次に本発明の実施例1のレンズ構成について説明する。
【0047】
図1(A)、(B)において、L1は正の屈折力の第1レンズ群、L2は負の屈折力の第2レンズ群、L3は開口絞りSPと副絞りSP2を含む正の屈折力の第3レンズ群、L4は正の屈折力の第4レンズ群、L5は負の屈折力の第5レンズ群である。
【0048】
無限遠物体から近距離物体へのフォーカシングに際して、第1レンズ群L1は不動(固定)であり、第2レンズ群L2は像側へ移動し、第3レンズ群L3は不動であり、第4レンズ群L4は物体側へ移動し、第5レンズ群L5は不動である。
【0049】
フォーカシングに際して第1レンズ群L1を不動にすることにより、レンズ全長(第1レンズ面から像面までの距離)が一定で操作性の良い撮影レンズを実現している。また、フォーカシングに際して複数のレンズ群を移動させるフローティング方式を採用することにより、フォーカシングに伴う収差変動を良好に補正している。
【0050】
第5レンズ群L5は負の屈折力の防振レンズ群である第5aレンズ群L5aと、正の屈折力の第5bレンズ群より構成されている。第5aレンズ群L5aは、負の屈折力のレンズと正の屈折力のレンズを接合した接合レンズより構成されている。第5aレンズ群L5aを光軸と垂直方向の成分を持つように移動させることで、結像位置を光軸と垂直方向に変位させて振動時の像ぶれを補正している。IPは像面である。
【0051】
第5aレンズ群L5aは物体側より像側へ順に、像側の面が凸形状の正レンズと、両凹形状の負レンズとを接合した接合レンズより成っている。このため、手ぶれの影響を低減するために、第5aレンズ群L5aを光軸に対して垂直方向の成分を持つように移動させた場合であっても、色収差が良好に補正された状態を保つことができる。
【0052】
また、単一の接合レンズで構成された小型軽量のレンズ群であるため、第5aレンズ群L5aを駆動する駆動部の大型化を防ぐことができる。
【0053】
次に実施例2のレンズ構成について説明する。
【0054】
図4(A)、(B)において、L1は正の屈折力の第1レンズ群、L2は負の屈折力の第2レンズ群、L3は正の屈折力の第3レンズ群、L4は正の屈折力の第4レンズ群、L5は負の屈折力の第5レンズ群である。第5レンズ群L5は、負の屈折力の防振レンズ群である第5aレンズ群L5aと、正の屈折力の第5bレンズ群L5bより構成されている。
【0055】
第5aレンズ群L5aは、負の屈折力のレンズと正の屈折力のレンズとを接合した接合レンズより成っている。第5aレンズ群L5aを光軸と垂直方向の成分を持つように移動させることで振動時の像ぶれを補正している。SPは開口絞り、SP2は副開口絞り、IPは像面である。
【0056】
無限遠物体から近距離物体へのフォーカシングに際して、第1レンズ群L1は不動であり、第2レンズ群L2は像側へ移動し、第3レンズ群L3は不動であり、第4レンズ群L4は物体側へ移動し、第5レンズ群L5は不動である。
【0057】
フォーカシングに際して、第1レンズ群L1を不動にすることにより、レンズ全長が一定の操作性の良い撮影レンズを実現している。また、フォーカシングに際して、複数のレンズ群を移動させるフローティング方式を採用することにより、フォーカシングに伴う収差変動を良好に補正している。
【0058】
光学系の構成は、実施例1と同様である。
【0059】
次に実施例3のレンズ構成について説明する。
【0060】
図7(A)、(B)において、L1は正の屈折力の第1レンズ群、L2は負の屈折力の第2レンズ群、L3は開口絞りSPと副絞りSP2を含む正の屈折力の第3レンズ群、L4は正の屈折力の第4レンズ群、L5は、負の屈折力の第5レンズ群である。
【0061】
第5レンズ群L5は負の屈折力の防振レンズ群である第5aレンズ群L5aと、正の屈折力の第5bレンズ群L5bより構成されている。
【0062】
第5aレンズ群L5aは、負の屈折力のレンズと正の屈折力のレンズとを接合した接合レンズから成っている。第5aレンズ群L5aを光軸と垂直方向の成分を持つように移動させることで振動時の像ぶれの補正を行う。IPは像面である。
【0063】
無限遠物体から近距離物体へのフォーカシングに際して、第1レンズ群L1は不動であり、第2レンズ群L2が像側へ移動し、第3レンズ群L3は不動であり、第4レンズ群L4は物体側へ移動し、第5レンズ群L5は不動である。
【0064】
フォーカシングに際して、第1レンズ群L1を不動にすることにより、レンズ全長が一定の操作性の良い撮影レンズを実現している。また、フォーカシングに際して複数のレンズ群を移動させるフローティング方式を用いることにより、フォーカシングに伴う収差変動を良好に補正している。
【0065】
光学系の構成は、第3レンズ群L3の開口絞りSP、SSPよりも物体側に正レンズを配置している点以外は、実施例1、2と同様である。
【0066】
次に、実施例1〜3に各々対応する数値実施例1〜3を示す。
【0067】
各数値実施例において、rは各面の曲率半径(単位:mm)、dは隣接する面の間隔(単位:mm)である。ndは部材のd線に対する屈折率である。νdは以下の式で表されるd線を基準とした部材のアッベ数である。
νd=(Nd−1)/(NF−NC)
Nd:d線(波長587.6nm)に対する屈折率
NF:F線(波長486.1nm)に対する屈折率
NC:C線(波長656.3nm)に対する屈折率
条件式(1)〜(4)と本発明の数値実施例との関係を表1に示す。






































数値実施例1
単位 mm

面データ
面番号 r d nd vd 有効径
1 131.951 5.7 1.72916 54.7 46.2
2 -125.378 0.15 45.57
3 44.495 5.2 1.72916 54.7 38.19
4 319.495 1.58 36.69
5 -182.557 1.8 1.801 35 36.36
6 40.762 0.78 31.75
7 38.343 5.78 1.497 81.5 31.13
8 -140.691 (可変) 29.82
9 -248.519 1.4 1.72047 34.7 27.19
10 27.422 4.3 24.65
11 -74.738 1.31 1.53172 48.8 24.71
12 29.897 4.4 1.84666 23.9 25.89
13 1984.002 (可変) 25.92
14 ∞ 2.14 26.83
15(絞り) ∞ 3.53 26.92
16 -64.028 2.12 1.801 35 27
17 -49.358 (可変) 27.35
18 124.805 3.85 1.618 63.4 28.21
19 -69.793 0.48 28.55
20 62.29 5.28 1.72916 54.7 28.88
21 -58.324 1.93 1.84666 23.9 28.62
22 177.251 (可変) 28.17
23 -252.715 2.89 1.84666 23.9 28.05
24 -68.669 1.44 1.71999 50.2 28.09
25 41.129 (可変) 28.03
26 -57.78 2.41 1.6134 44.3 29.47
27 -162.955 0.15 31.39
28 79.421 4.4 1.7432 49.3 33.48
29 -134.415 (可変) 33.82
像面 ∞

焦点距離 100
Fナンバー 2.92
画角 12.21
像高 21.64
レンズ全長 162.90
BF 48.35

∞ -0.5× -1×
d8 1.31 9.90 20.32
d13 21.73 13.14 2.71
d17 18.54 9.21 1.91
d22 3.00 12.33 19.63
d25 6.97 6.97 6.97
d29 48.35 48.35 48.35

















































数値実施例2
単位 mm

面データ
面番号 r d nd vd 有効径
1 123.939 5.5 1.72916 54.7 46.21
2 -129.916 0.15 45.68
3 45.121 5 1.72916 54.7 38.41
4 261.572 1.58 36.99
5 -193.606 1.8 1.801 35 36.9
6 40.159 0.78 32.26
7 38.532 6 1.497 81.5 31.71
8 -144.418 (可変) 30.37
9 -309.953 1.4 1.72047 34.7 27.75
10 29.015 4.4 25.53
11 -68.881 1.3 1.53172 48.8 25.57
12 32.727 4.39 1.84666 23.9 26.77
13 -783.124 (可変) 26.81
14 ∞ 2.14 27.28
15(絞り) ∞ 3.66 27.33
16 -58.005 2.2 1.834 37.2 27.37
17 -47.059 (可変) 27.77
18 109.879 4 1.618 63.4 28.53
19 -76.894 0.5 28.86
20 68.986 5.48 1.72916 54.7 29.13
21 -63.781 2 1.84666 23.8 28.82
22 244.721 (可変) 28.42
23 -255.687 3 1.84666 23.9 28.24
24 -76.933 1.5 1.71999 50.2 28.25
25 38.715 (可変) 28.14
26 -89.278 2.5 1.6398 34.5 29.4
27 -170.526 0.15 30.85
28 52.375 4 1.7432 49.3 33.3
29 268.404 (可変) 33.42
像面 ∞

焦点距離 102.76
Fナンバー 2.92
画角 11.89
像高 21.64
レンズ全長 162.56
BF 47.33

∞ -0.5× -1×
d8 1.31 10.26 21.33
d13 22.56 13.61 2.54
d17 18.90 9.52 1.89
d22 3.00 12.38 20.01
d25 6.04 6.04 6.04
d29 47.33 47.33 47.33
数値実施例3
単位 mm

面データ
面番号 r d nd vd 有効径
1 114.942 5.89 1.72916 54.7 48.21
2 -142.878 0.15 47.65
3 46.758 5.21 1.72916 54.7 40.09
4 230.168 2.57 38.5
5 -148.763 1.8 1.801 35 37.21
6 42.577 0.73 32.75
7 39.606 6.31 1.497 81.5 32.2
8 -104.794 (可変) 30.97
9 -2039.621 1.4 1.72047 34.7 27.43
10 26.382 4.87 24.64
11 -58.839 1.3 1.53172 48.8 24.71
12 31.229 4.4 1.84666 23.9 26.01
13 -1411.125 (可変) 26.06
14 -770.878 2.2 1.83481 42.7 27.07
15 -150.612 1.5 27.14
16 ∞ 2.14 26.99
17(絞り) ∞ (可変) 26.84
18 135.63 4 1.64 60.1 27.04
19 -65.904 0.5 27.46
20 64.131 5.72 1.72916 54.7 27.78
21 -59.208 2 1.84666 23.9 27.43
22 166.52 (可変) 27.04
23 -250.206 2.9 1.84666 23.8 26.96
24 -71.103 1.45 1.71999 50.2 27.02
25 39.068 (可変) 27.04
26 -59.01 2.4 1.53172 48.8 30.1
27 -109.061 0.15 31.91
28 88.965 4.2 1.7432 49.3 34.06
29 -144.327 (可変) 34.39
像面 ∞

焦点距離 103
Fナンバー 2.92
画角 11.86
像高 21.64
レンズ全長 164.46
BF 44.41

∞ -0.5× -1×
d8 1.31 8.93 19.23
d13 20.23 12.60 2.30
d17 22.21 10.41 1.96
d22 3.00 14.80 23.25
d25 9.52 9.52 9.52
d29 44.41 44.41 44.41
【0068】
【表1】

【0069】
図10は前述の実施例1〜3に示した撮影レンズを用いたカメラ(撮像装置)を示しており、レンズ鏡筒10には、実施例1〜4に示した撮影レンズ11が内蔵されている。カメラ本体20内には、撮影レンズ11によって取り込まれた光束を上方に反射するミラー21、撮影レンズ11によって被写体像が形成される焦点板22、焦点板22からの光束を正立像に変換するペンタダハプリズム23、焦点板22上に形成された被写体像を観察するための接眼レンズ24、撮影レンズからの光束を受光するCCDセンサやCMOSセンサ等の固体撮像素子(光電変換素子)25等が設けられている。
【0070】
図10は、観察状態つまり撮影待機状態を表しているが、レリーズボタンを撮影者が操作することにより、ミラー21が図示の光路中から退避し、固体撮像素子25上に被写体像が取り込まれる。このように、実施例1〜3に示した撮影レンズをカメラに用いることにより、近距離撮影が可能なカメラを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施例1の撮影レンズのレンズ断面図
【図2】本発明の実施例1の撮影レンズの収差図
【図3】本発明の実施例1の撮影レンにおいて、画角0.3°に相当する結像位置変位を行ったときの収差図
【図4】本発明の実施例2の撮影レンズのレンズ断面図
【図5】本発明の実施例2の撮影レンズの収差図
【図6】本発明の実施例2の撮影レンズにおいて、画角0.3°に相当する結像位置変位を行ったときの収差図
【図7】本発明の実施例3の撮影レンズのレンズ断面図
【図8】本発明の実施例3の撮影レンズの収差図
【図9】本発明の実施例3の撮影レンズにおいて、画角0.3°に相当する結像位置変位を行ったときの収差図
【図10】本発明の実施例1〜3の撮影レンズを用いたカメラの概略構成図
【符号の説明】
【0072】
L1 第1レンズ群
L2 第2レンズ群
L3 第3レンズ群
L4 第4レンズ群
L5a 第5aレンズ群
L5b 第5bレンズ群
SP 開口絞り
SP2 副開口絞り
IP 像面
M メリディオナル像面
S サジタル像面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側より像側へ順に、正の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第2レンズ群、正の屈折力の第3レンズ群、正の屈折力の第4レンズ群、負の屈折力の第5レンズ群より構成され、
物体距離無限遠から近距離側へのフォーカシングに際して、前記第1レンズ群、前記第3レンズ群、前記第5レンズ群は不動であり、前記第2レンズ群は像側へ移動し、前記第4レンズ群は物体側へ移動し、
前記第5レンズ群は、物体側より像側へ順に、負の屈折力の第5aレンズ群と、正の屈折力の第5bレンズ群より構成され、前記第5aレンズ群は光軸に対して垂直方向の成分を持つように移動して結像位置を変位させるレンズ群であり、
前記第3レンズ群の焦点距離をf3、全系の焦点距離をf、前記第5aレンズ群の焦点距離をf5a、前記第5bレンズ群の焦点距離をf5bとするとき、
1.5<f3/f<3.0
0.35<│f5a/f5b│<0.60
なる条件式を満足することを特徴とする撮影レンズ。
【請求項2】
前記第4レンズ群の焦点距離をf4、全系の焦点距離をfとするとき、
0.50<f4/f<0.70
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1に記載の撮影レンズ。
【請求項3】
前記第4レンズ群の焦点距離をf4、前記の焦点距離をf3とするとき、
0.20<f4/f3<0.30
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の撮影レンズ。
【請求項4】
固体撮像素子に像を形成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撮影レンズ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の撮影レンズと該撮影レンズによって形成される像を受光する固体撮像素子とを有することを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−145830(P2010−145830A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−324167(P2008−324167)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】