説明

擁壁ブロック、擁壁用パーツ及び擁壁の施工方法

【課題】設置されたところの環境になじみやすい擁壁ブロック、この擁壁ブロックを有する擁壁用パーツ及びこの擁壁用パーツを用いた擁壁の施工方法を提供することを目的とする。
【解決手段】横方向に並べると共に積み重ねて擁壁を形成する擁壁ブロック10であって、擁壁を形成したときに上に位置する擁壁ブロックに当接して支える支持部16を本体部11の上面12に突設し、上に位置する擁壁ブロックの本体部11の底面13と下に位置する擁壁ブロックの本体部11の上面12との間にできる隙間が支持部16の周りを囲むようにできることを特徴とする擁壁ブロック。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川などの擁壁に用いられる擁壁ブロック、この擁壁ブロックを有する擁壁用パーツ及びこの擁壁用パーツを用いた擁壁の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、鉄線(直径5mm)で編んだ網状のふとんかご(厚さ約40cm×控え長さ100cm〜120cm×長さ200cm)は、中に石が詰められた状態で、階段状に積み上げられて法面保護や土留め用などに使用されている。そして、このようなふとんかごは、災害復旧の工事や斜面崩壊を防止する小さな擁壁として、経済的な理由で採用されることが多くなっている。しかしながら、このようなふとんかごには、鉄線が用いられているため、錆びやすく、形状も整ったものではないことから景観上好ましくなかった。その上、最近では、中に詰められる玉石が高価になり、入手できないことが多くなったため、割栗石が代用されているが、外部から割栗石が見えることで、さらに景観上好ましくなくなっている。
【0003】
また、ふとんかごの中には、鉄線を亜鉛などの様々な金属により被覆することで耐食性を高め、経年劣化をしにくくすると共に、特許文献1記載のように、各辺を棒鋼や山形鋼などの鋼材で形成することで剛性を持たせ形状を整えた、いわゆる特殊(大型)ふとんかごがある。このような特殊ふとんかごは、中に割栗石や玉石が詰められた状態で、重力式のような形状で形成される擁壁などとして使用されている。
【0004】
一方、河川などの水際の護岸用としては、上記ふとんかご(特殊ふとんかごを含む)を積み上げた擁壁の他に、自然環境との調和を考慮して、いわゆる環境ブロックにより構成された擁壁がある。そして、この環境ブロックとしては、特許文献2記載のように、天然石又は擬石に係着部などを設けたものや、特許文献3記載のように、表面に天然石などを露出させた擬似ブロックや、特許文献4記載のように、大型のブロックに内空間とこの内空間に繋がる開口とを設けたものなどがある。
【0005】
しかしながら、擬似ブロックなどを用いた擁壁は、見た目は自然の環境に近いものになっているものの、擁壁表面により水域と陸上とが仕切られ、それが水中まで一つの面として続いていることから、水棲生物が産卵育成する場所を確保することが難しいものとなっていた。
【0006】
また、内空間とこの内空間に繋がる開口とを設けた大型のブロックは、この内空間が水棲生物の産卵育成する場所にはなるものの、内空間への水の循環が悪いため、水が淀む季節などにはブロック内でボウフラなどの繁殖が促される。また、大雨などで河川が増水すると砂礫や土砂などがブロック内に堆積して、内空間の機能が果たせなくなっていた。さらに、コンクリート面が連続していることから、水辺ではコンクリート面が目立ち景観上好ましくなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−116919号公報
【特許文献2】特開平11−310913号公報
【特許文献3】特開平9−3937号公報
【特許文献4】特開平8−284130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、設置されたところの環境になじみやすい擁壁を形成する擁壁ブロック、この擁壁ブロックを有する擁壁用パーツ及びこの擁壁用パーツを用いた擁壁の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の擁壁ブロックは、横方向に並べると共に積み重ねて擁壁を形成する擁壁ブロックであって、擁壁を形成したときに上に位置する擁壁ブロックに当接して支える支持部を本体部の上面に突設し、上に位置する擁壁ブロックの本体部の底面と下に位置する擁壁ブロックの本体部の上面との間にできる隙間が前記支持部の周りを囲むようにできることを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の擁壁用パーツは、上記擁壁ブロックを二個以上有し、前記擁壁ブロックを隣り合うもの同士の間に間隔をおいて連結していることを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の擁壁の施工方法は、上記擁壁用パーツを用い、積み重ねたときに上に位置する擁壁用パーツの少なくとも一部は、下に位置する隣り合う擁壁用パーツ同士の間を跨ぐようにして配置することを特徴とする。
【0012】
本発明ではないものの、参考発明の擁壁ブロックは、横方向に並べると共に積み重ねて擁壁を形成する擁壁ブロックであって、擁壁を形成したときに上に位置する擁壁ブロックに当接して支える支持部を本体部の上面に突設し、上部に係合突起を備え、本体部の底面に係合突起が嵌合する係合凹部が凹設され、擁壁を形成したときに擁壁の壁面部に勾配ができるよう、平面視における前記係合突起の中心位置と前記係合凹部の中心位置とがずれていることを特徴とする。
【0013】
また、別の参考発明の擁壁ブロックは、横方向に並べると共に積み重ねて擁壁を形成する擁壁ブロックであって、擁壁を形成したときに上に位置する擁壁ブロックに当接して支える支持部を本体部の上面に突設し、擁壁を形成したときに擁壁の壁面部が水平方向に湾曲するよう、壁面部の表側になる面と裏側になる面との幅が異なることを特徴とする。
【0014】
そして、これら参考発明の擁壁ブロックも、本発明の擁壁ブロックと同じように、二個以上の擁壁ブロックを有し、隣り合うもの同士の間に間隔をおいて連結していることを特徴とする擁壁用パーツに用いることができる。
【0015】
ここで、本発明における各要素の態様を以下に例示する。
【0016】
1.擁壁ブロック
擁壁ブロックは、積み重ねたときに上に位置する擁壁ブロックの本体部の底面と下に位置する擁壁ブロックの本体部の上面との間に隙間ができ、この隙間が上に位置する擁壁ブロックの本体部の底面と下に位置する擁壁ブロックの本体部の上面との間の上下空間となる。
擁壁ブロックの態様としては、特に限定はされないが、動植物の自然循環が起きやすくなることから、擁壁を形成したときに横方向に隣り合うもの同士は互いの間に植物を繁茂させ又は水棲生物を生息させるための空間をおいて連結されていることが好ましい。この横方向に隣り合うもの同士の間の空間には、擁壁を形成したときに、擁壁の正面から見て、左右方向に隣り合う擁壁ブロックの左に位置する擁壁ブロックの本体部の右側面と右に位置する擁壁ブロックの本体部の左側面との間の左右空間と、擁壁の正面から見て、前後方向に隣り合う擁壁ブロックの前に位置する擁壁ブロックの本体部の後側面と後に位置する擁壁ブロックの本体部の前側面との間の前後空間とがある。
また、上下に積まれた擁壁ブロック同士の水平方向への相対的位置ずれが起こりにくくなることから、上部に係合突起を備え、本体部の底面に係合突起が嵌合する係合凹部が凹設されていることが好ましい。さらに、擁壁を形成したときに互いに外力により破断を伴わない相対変位が可能になることから、隣り合うもの同士は棒鋼で連結されていることがより好ましい。
擁壁を形成したときに擁壁の壁面部に勾配ができるよう、平面視における係合突起の中心位置と係合凹部の中心位置とがずれていることが好ましい。
擁壁用ブロックの位置ずれが起こりにくくなることから、擁壁を形成したときに擁壁の壁面部の背後に充填される砕石中に埋没して拘束される拘束部を備えることが好ましい。
擁壁ブロックの本体部の形状としては、特に限定はされないが、角柱状、円柱状、角錐台状、円錐台状などが例示できる。
水平方向に湾曲している地形にも擁壁を形成することができることから、擁壁を形成したときに擁壁の壁面部が水平方向に湾曲するよう、壁面部の表側になる本体部の面と裏側になる本体部の面との幅が異なることが好ましい。
設置された場合に、太陽光などの光の反射が少なくなることから、擁壁ブロックの本体部の側面には割石模様などのレリーフが施されていることが好ましい。
擁壁ブロックの本体部の大きさとしては、特に限定はされないが、240〜350mmであることが好ましい。また、高さとしては、特に限定はされないが、150〜220mmであることが好ましい。
擁壁を形成したときに横方向に隣り合うもの同士の互いの間にある、植物を繁茂させ又は水棲生物を生息させるための空間、即ち、左右空間及び前後空間の幅(隣り合うもの同士の間隔)としては、特に限定はされないが、30〜50mmであることが好ましい。
擁壁ブロックの材質としては、特に限定はされないが、耐候性及び加工性に優れることからコンクリートであることが好ましい。
支持部の態様としては、特に限定はされないが、少なくとも一部が係合突起となっている態様が好ましい。
係合突起の形状としては、特に限定はされないが、角柱状、円柱状、角錐台状、円錐台状、半球状などが例示できる。また、係合突起の高さとしては、特に限定はされないが、50〜100mmであることが好ましい。
係合凹部の形状としては、特に限定はされないが、係合突起の形状に対応できるよう略同じ形状であることが好ましい。また、係合突起の上面が、上に位置する擁壁ブロックに当接して支える支持面である場合には、係合凹部の底面は係合突起の上面と面接触できるような面であることが好ましい。また、係合凹部の深さとしては、特に限定はされないが、50〜100mmであることが好ましい。
積み重ねたときにできる、上に位置する擁壁ブロックの本体部の底面とその下に位置する擁壁ブロックの本体部の上面との間の隙間、即ち、上下空間の高さとしては、特に限定はされないが、10〜30mmであることが好ましい。
拘束部の態様としては、特に限定はされないが、擁壁を形成したときに擁壁の壁面部の裏側になる本体部の面から突出した棒状部と棒状部の先端付近に形成された埋没体とを有する態様が例示できる。
【0017】
2.擁壁用パーツ
一つの擁壁用パーツが有する擁壁ブロックの個数としては、特に限定はされないが、30個以下であることが好ましい。30個を超えると擁壁用パーツは重く且つ大きくなるため取扱がしにくくなる。
擁壁用パーツ中での擁壁ブロックの並びとしては、特に限定はされないが、擁壁ブロックに左右空間又は前後空間のどちらかのみができるよう一列に並んでいてもよいし、擁壁ブロックに左右空間及び前後空間の両方ができるよう互いに平行な複数の列となるように並んでいてもよい。
上下に積んだときに擁壁ブロックを容易に積み重ねることができり、隣り合う擁壁用パーツ同士の位置、即ち、擁壁ブロックが隣の擁壁ブロックと連結されていないところを、積み重ねられた段毎に変えることができることから、隣り合う擁壁ブロック同士の間隔は一定であることが好ましい。
擁壁用パーツ中での擁壁ブロックの並びが互いに平行な複数の列となる場合には、より少ない数の擁壁ブロックで擁壁を形成することができることから、擁壁ブロックが抜けている欠失箇所を有することが好ましい。
擁壁ブロック同士の間の間隔としては、特に限定はされないが、30〜50mmであることが好ましい。
ブロックを連結するための部材としては、特に限定はされないが、可撓性、強度及び耐食性に優れることから、アルミニウム、亜鉛、ニッケル又はそれらの合金で表面が被覆された棒鋼、ステンレス製の棒鋼などが好ましい。
これらの棒鋼の太さとしては、特に限定はされないが、5〜9mmであることが好ましい。
【0018】
3.擁壁
擁壁の形状としては、特に限定はされないが、擁壁用パーツを積み重ねて成形される擁壁の壁面部が上方になるほど斜面側に寄る階段状であることが好ましい。
また、擁壁の高さとしては、特に限定はされないが、水辺や河川などの擁壁の場合には、1〜3mであることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、設置されたところの環境になじみやすい擁壁を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例1の擁壁ブロックの斜視図である。
【図2】同擁壁ブロックの断面図である。
【図3】本発明の実施例1の擁壁ブロック及びそれを連結した擁壁用パーツの平面図である。
【図4】同擁壁用パーツを用いた護岸用擁壁の断面図及び1段目の一部の擁壁用パーツの平面図である。
【図5】同護岸用擁壁の天端部付近の断面図及び平面図である。
【図6】同護岸用擁壁の側端部付近の平面図である。
【図7】同擁壁用パーツを用いた法面保護用擁壁の断面図である。
【図8】同擁壁用パーツを用いた擁壁の一部の斜視図である。
【図9】同擁壁用パーツにより囲まれた空間に中詰め材を充填した擁壁の壁面部と控部との1段目から5段目までの斜視図である。
【図10】同擁壁の1段目から5段目までの擁壁用パーツの並びを示す平面模式図である。
【図11】同擁壁に繋ぎ擁壁用パーツを用いたときの擁壁の一部の斜視図である。
【図12】本発明の実施例1の擁壁ブロックを連結した擁壁用パーツにより囲まれた空間に中詰め材を充填した擁壁の断面図及び1段目の擁壁用パーツの並びを示す平面模式図である。
【図13】同擁壁用パーツにより囲まれた空間に中詰め材を充填した別の擁壁の断面図及び1段目の一部の擁壁用パーツの並びを示す平面模式図である。
【図14】同擁壁用パーツにより囲まれた空間に中詰め材を充填したまた別の擁壁の一部の斜視図である。
【図15】本発明の実施例2の擁壁ブロックの斜視図及び断面図である。
【図16】本発明の実施例2の別の擁壁ブロックの正面図及び平面図である。
【図17】本発明の実施例3の擁壁用パーツの平面図である。
【図18】本発明の実施例3の別の擁壁用パーツの平面図である。
【図19】同擁壁用パーツを用いた擁壁の壁面部の一部の斜視図及び1段目と2段目の擁壁用パーツの平面図である。
【図20】本発明の実施例3のまた別の擁壁用パーツの平面図である。
【図21】同擁壁用パーツを用いた擁壁の壁面部の一部の斜視図及び1段目の擁壁用パーツの平面図である。
【図22】同擁壁用パーツを用いた擁壁の壁面部の一部の斜視図である。
【図23】本発明の実施例3のさらに別の擁壁用パーツの平面図及び斜視図である。
【図24】本発明の実施例3のさらに別の擁壁用パーツの平面図及び斜視図である。
【図25】擁壁ブロック80の斜視図及び断面図である。
【図26】擁壁ブロック100の斜視図及び側面図である。
【図27】同擁壁ブロックを用いた擁壁の断面図及び1段目の擁壁ブロックの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0021】
本発明の実施例1の擁壁ブロック10及び擁壁ブロック10を連結した擁壁用パーツ20について、図1〜図14を用いて説明する。
【0022】
図1、図2に示すように、擁壁ブロック10は、正四角柱状の本体部11と、本体部11の上面12の略中央に突設された正四角錐台状の係合突起16とからなるコンクリート製のブロック(重さが約20Kg)である。
【0023】
本体部11の寸法は、一辺が243mmで、高さが150mmである。そして、本体部11は、その上面12の中央部にレリーフが形成され、側面15の全体に割石模様のレリーフが形成され、底面13の略中央に係合凹部14が正四角錐台状に凹設されている。係合凹部14は、係合突起16が余裕をもって嵌合できるよう、開口の一辺が132mm、底面19の一辺が95mm、深さが50mmとなっている。
【0024】
係合突起16は、底辺が112mm、上辺が75mm、上面12からの高さが70mmとなっている。そして、係合突起16の上面18の中央部にレリーフが形成され、係合突起16の側面17の全体に割石模様のレリーフが形成されている。
【0025】
そして、擁壁ブロック10を積み重ねたときには、下に位置する擁壁ブロック10の係合突起16は、上に位置する擁壁ブロック10の係合凹部14に嵌合するようになっている。また、下に位置する擁壁ブロック10の係合突起16の上面18が、上に位置する擁壁ブロック10の係合凹部14の底面19に当接して上に位置する擁壁ブロック10を支える支持面となっていることから、係合突起16は支持部になっている。そして、下に位置する擁壁ブロック10の上面12と上に位置する擁壁ブロック10の底面13との間に20mmの隙間が係合突起16の周りを囲むようにできている。また、擁壁ブロック10を連結する場合には、側面15の中央付近に棒鋼21が嵌入されている。
【0026】
図3に示すように、本実施例の擁壁用パーツ20は、2〜6個の擁壁ブロック10を略直線状に並べて連結した5種類のものである。隣り合う擁壁ブロック10同士は、中心間距離を293mmにして、直径が5.5mmのステンレス製の異型棒鋼21で連結されており、隣り合う擁壁ブロック10同士の間隔は、50mmになっている。
【0027】
本実施例の擁壁ブロック10と5種類の擁壁用パーツ20とを用いた護岸用の擁壁30について、図4〜図6を用いて説明する。なお、擁壁30の説明においては、擁壁用パーツ20には、本実施例の5種類の擁壁用パーツ20と本実施例の擁壁ブロック10とが含まれ、擁壁ブロック10には、本実施例の擁壁ブロック10と本実施例の擁壁用パーツ20中の擁壁ブロック10とが含まれている。
【0028】
図4に示すように、擁壁30は、川底25から岸26へと繋がる斜面27に沿って、擁壁用パーツ20を積み重ねて階段状になっている壁面部34を備えている。
【0029】
具体的には、壁面部34の最下段である1段目を構成する擁壁用パーツ31は、川底25に砕石などを平らに敷設した基礎部28上に、擁壁ブロック10が岸26に沿って2列に並ぶように設置されている。また、隣り合う擁壁用パーツ20同士は、擁壁用パーツ20中の擁壁ブロック10同士の間の間隔(50mm)と同じ間隔(50mm)になるように設置されている。従って、1段目の擁壁ブロック10(2段目以降の擁壁ブロック10も同じである)は、擁壁の正面からみて左右方向の両方に左右空間Bがあり、擁壁の正面からみて前後方向の一方に前後空間Cがある。そして、左右空間B及び前後空間Cのそれぞれの幅(擁壁ブロック同士の間隔)は50mmとなっている。
【0030】
2段目を構成する擁壁用パーツ32は、1段目の擁壁用パーツ31の係合突起16を自身の係合凹部14に嵌合させて、1段目の擁壁用パーツ31の上に積み重ねられている。従って、1段目の擁壁ブロックは上に、2段目の擁壁ブロック10は下に(3段目以降の擁壁ブロック10も同じである)、上下空間Aがある。そして、上下空間の高さは20mmとなっている。また、2段目の擁壁用パーツ32の一部は、1段目の隣り合う擁壁用パーツ31同士を跨ぐようにして設けられている。
【0031】
3段目を構成する擁壁用パーツ33も、岸26に沿って擁壁ブロック10が2列に並ぶように設置されている。そして、階段状になるよう、沖側の列の擁壁ブロック10の係合凹部14にだけ、2段目の擁壁用パーツ32の係合突起16が嵌合するようにして、3段目の擁壁用パーツ33は2段目の擁壁用パーツ32の上に積み重ねられている。従って、互いに重ねられた、2段目の擁壁ブロック10は上に、3段目の擁壁ブロック10は下に(4段目以降の擁壁ブロック10も同じである)、上下空間Aがある。そして、上下空間Aの高さは20mmとなっている。また、3段目の擁壁用パーツ33の一部は、2段目の隣り合う擁壁用パーツ32同士を跨ぐようにして設けられている。
【0032】
このように、擁壁30は、下段の擁壁用パーツ20の係合突起16を上段の擁壁用パーツ20の係合凹部14に嵌合させるようにして、擁壁用パーツ20を積み重ねて壁面部34が形成されている。また、壁面部34と斜面27との間に裏込め材として砕石29(例えばS−40前後の単粒度砕石)などが充填されている。
【0033】
また、図5に示すように、擁壁30の天端部には、擁壁用パーツ20と斜面27との間に充填された砕石29上にコンクリート35が打設されている。
【0034】
また、図6に示すように、擁壁30の岸26に沿った方向の側端部には、平面視が台形状の擁壁ブロック36が連結された擁壁用パーツ37が用いられている。
【0035】
このような擁壁30によれば、次の(a)〜(g)の効果が得られる。
(a)擁壁ブロック10同士の間には、上下方向には係合突起16の周りを囲むように高さが20mmの上下空間Aがあり、横方向には幅が50mmの左右空間B及び前後空間Cがあり、左右空間B及び前後空間Cの上下にはそれぞれの空間と同じ幅で延設された延設空間があるので、上下空間A、左右空間B及び前後空間Cは全て連通し、且つそれらの空間は壁面部34の表面から裏面まで繋がっている。従って、擁壁30は、空間が多く、水中に生息する昆虫や水生植物などの生存を確保し、それらの自然循環をもたらすことができる。そのため、設置した環境になじみすい。
(b)上下空間A、左右空間B及び前後空間Cは水の流れを阻害しないため、擁壁30は、水が淀む季節などでもボウフラなどの繁殖が促されることがなく、また、大雨などにより増水しても砂礫や土砂などがこれらの空間に堆積しにくいことから、長年使用してもボウフラなどの繁殖が促されることがない。
(c)上下空間A、左右空間B及び前後空間Cは水生植物や水棲動物などの生息空間になり、水の淀みがないため、擁壁30は、自然の循環が行われやすくなる。
(d)隣り合う擁壁ブロック10同士をステンレス製の異型棒鋼21で連結した擁壁用パーツ20を用いると共に、上下の擁壁ブロック10同士は、中詰めコンクリートによる接続や、噛み合わせ積みを行わず、下段の係合突起16が上段の係合凹部14に嵌合することで接続拘束されているため、擁壁ブロック10は互いに外力により破断を伴わない相対変位が可能になっていることから、擁壁30は、万が一の地震などによる地盤の沈下などにも柔軟に対応できる。
(e)擁壁30は、擁壁ブロック10が従来の環境ブロックに比べ、切れ目が多く連続した面が少ないため、景観上好ましく、また、上下空間A、左右空間B及び前後空間Cがあることで軟らかさを表現でき、周囲に溶け込むことができる。
(f)上下空間A、左右空間B及び前後空間C並びに壁面部34と斜面27との間に充填されている砕石29の空間により、擁壁30は、動く水の浄化作用を果たすことができる。
(g)擁壁30は、上下空間A及び左右空間Bがあるため、従来の環境ブロックを用いたものより太陽光がコンクリート面によって水面に反射される割合が少なくなり、魚類などに与える影響を小さくすることができる。
【0036】
次に、本実施例の擁壁ブロック10と5種類の擁壁用パーツ20とを用いた法面保護の擁壁40について、図7を用いて説明する。なお、擁壁40の説明においては、擁壁用パーツ20には、本実施例の5種類の擁壁用パーツ20と本実施例の擁壁ブロック10とが含まれ、擁壁ブロック10には、本実施例の擁壁ブロック10と本実施例の擁壁用パーツ20中の擁壁ブロック10とが含まれている。
【0037】
図7に示すように、擁壁40は、護岸用の擁壁30より、傾斜が急な斜面41(法面でもある)に設けられることから、斜面41に沿って並べられる擁壁ブロック10が4列である点と、斜面41を覆うように吸出し防止材42が設けられている点とが、護岸用の擁壁30と異なり、その他の点については、護岸用の擁壁30と略同じである。
【0038】
この擁壁40によれば、、次の(h)、(i)の効果が得られる。
(h)擁壁40は、擁壁用パーツ20を階段状に積み重ねることで法面(山などの斜面)保護擁壁としての機能を持ち、空間が多く、上下空間A、左右空間B及び前後空間Cでは植物が繁茂し、植物の自然循環が起きやすく、短い時間で自然を構成することができる。そのため、設置した環境になじみやすい。
(i)擁壁40は、上下空間A、左右空間B及び前後空間Cにより法面背後からの大雨や湧水も処理しやすく、また、隣り合う擁壁ブロック10同士をステンレス製の異型棒鋼21で連結した擁壁用パーツ20を用いると共に、上下の擁壁ブロック10同士は、下段の係合突起16が上段の係合凹部14に嵌合することで接続拘束されているため、擁壁ブロック10は互いに外力により破断を伴わない相対変位が可能になっていることから、大雨や湧水などが起きても、地盤沈下に追従して法面崩壊を防止することができる。
【0039】
次に、本実施例の擁壁ブロック10と5種類の擁壁用パーツ20とを用いた擁壁60について、図8を用いて説明する。なお、擁壁60の説明においては、擁壁用パーツ20には、本実施例の5種類の擁壁用パーツ20と本実施例の擁壁ブロック10とが含まれ、擁壁ブロック10には、本実施例の擁壁ブロック10と本実施例の擁壁用パーツ20中の擁壁ブロック10とが含まれている。
【0040】
図8に示すように、擁壁60は、斜面61に沿って、砕石29などにより形成された階段状の段丘部62と、段丘部62の各段毎に斜面61に沿って擁壁ブロック10を2列に並べて積み重ねた壁面部63とからなっている。
【0041】
この擁壁60は、主にふとんかごが用いられる施工箇所に用いることができ、擁壁30、擁壁40で得られる効果と同じ効果を得ることができる。
【0042】
次に、本実施例の擁壁ブロック10と5種類の擁壁用パーツ20とによって囲まれた中詰め空間56を形成し、中詰め空間56内に、中詰め材57を充填した護岸又は法面保護の擁壁について、図9〜図14を用いて説明する。なお、以下に述べるこれらの擁壁の説明においては、擁壁用パーツ20には、本実施例の5種類の擁壁用パーツ20と本実施例の擁壁ブロック10とが含まれ、擁壁ブロック10には、本実施例の擁壁ブロック10と本実施例の擁壁用パーツ20中の擁壁ブロック10とが含まれている。また、このような擁壁によれば、擁壁30、擁壁40で得られる効果と同じ効果を得ることができる。
【0043】
先ず、擁壁用パーツ20により形成される部位(具体的には、擁壁の壁面となる壁面部51と、壁面部51の背後に設けられる控部52とである。)について説明する。
図9、図10に示すように、擁壁用パーツ20は、各段毎に、互いに隣り合う位置が変わるよう、即ち、上段の擁壁用パーツ20の一部は、下段の隣り合う擁壁用パーツ20同士を跨げるよう、擁壁用パーツ20の種類(連結されている擁壁ブロック10の数がちがうもの)をかえたり、擁壁用パーツ20の並びを変えたりしている。なお、図9、図10においては、擁壁用パーツ20の外縁を実線で示し、擁壁ブロック10の外縁を破線で示している。また、図10においては、最下段を1段目とし、以下、下から順に2段目、3段目としている。
【0044】
また、図11に示すように、控部52同士の間隔が広く、壁面部51を構成している擁壁用パーツ20の切れ目、即ち、擁壁用パーツ20同士が隣り合うところが、控部52同士の中間にある場合には、壁面部51の擁壁用パーツ20同士を跨いで繋ぐように、繋ぎ用の擁壁用パーツ58が設けられることがある。なお、図11においても、擁壁用パーツ20の外縁を実線で示し、擁壁ブロック10の外縁を破線で示している。
【0045】
そして、このように、擁壁用パーツ20同士が隣り合うところを上に積み重ねられた擁壁用パーツ20が跨ぐことで、隣り合う擁壁用パーツ20同士が連結されている。また、このような擁壁によれば、中詰め材57が露出しないことから、景観に配慮する必要がなく、割栗石を中詰め材として用いることができる。
【0046】
次に、このように擁壁用パーツ20とによって囲まれた中詰め空間56に栗石又は単粒度砕石などの中詰め材57を充填した護岸又は法面保護の擁壁について説明する。
【0047】
このような擁壁の一つである擁壁50は、図12に示すように、壁面部51と、壁面部51の背後(法面55側)に設けられる控部52とが擁壁用パーツ20で構成されている。壁面部51は、砕石などを平らに敷設した基礎部28上に、法面55に沿って擁壁ブロック10が一列に並ぶようになっており、積み重ねられた擁壁用パーツ20が上段側になるほど、法面55側に寄るような階段状になっている。控部52は、互いに間隔を持って、壁面部51の背後に複数(5つ)設けられている。そして、壁面部51及び控部52で囲まれた中詰め空間56内には、中詰め材57が充填され、中詰め材57と法面55との間には、中詰め材と同じものが裏込め材59として充填されている。なお、1段目の擁壁用パーツの並びを示す平面模式図は、擁壁用パーツ20の外縁を実線で示し、擁壁ブロック10の外縁を破線で示している(図13も同じである)。
【0048】
また、このような擁壁の別の一つである擁壁65を、図13に示す。この擁壁65は、階段状の壁面部51の各段が法面55に沿って、擁壁ブロック10が二列に並ぶように設けられている点と、控部52同士の間隔が広いため、繋ぎ用の擁壁用パーツ58が用いられている点とが擁壁50と異なり、その他の点については、擁壁50と略同じである。
【0049】
また、このような擁壁のさらに別の一つである擁壁66を、図14に示す。この擁壁66は、勾配が急である点と、控部52の奥行が小さい(擁壁ブロック1個分)点とが擁壁50と異なり、その他の点については、擁壁50と略同じである。
【実施例2】
【0050】
次に、擁壁ブロック10と異なる態様の擁壁ブロックの実施例について説明する。なお、ここで説明する擁壁ブロックについても、擁壁ブロック10と同じように、二つ以上を棒鋼21で連結して、擁壁用パーツとして用いることができる。
【0051】
本実施例の擁壁ブロック70は、図15に示すように、本体部71の上面72のそれぞれの端から25mmの間隔をとった略中央に、上面72から20mm隆起し、その上面77に溝78が設けられた重ね部73が形成されている点、係合突起74の上面75には、互いに交差する二本の溝76が設けられ、段差のレリーフが形成されていない点が、擁壁ブロック10と異なり、その他の点については、擁壁ブロック10と略同じである。
【0052】
この擁壁ブロック70によれば、擁壁ブロック10を用いた場合に得られる効果に加え、擁壁ブロック70を積み重ねたときに、下に位置するものの重ね部73の上面77が上に位置するものの本体部71の底面79に当接し、支える支持面になっていることから、擁壁ブロック70は、係合突起74と重ね部73とが共に支持部になっている。従って、擁壁ブロック70の支持面の面積は、擁壁ブロック10の支持面(係合突起16の上面18のみ)の面積より大きいことから、積み重ねたときの安定度を増すことができる。
【0053】
上記に示した擁壁ブロックの他に、図16に示すように、実施例1の擁壁ブロック10を次のように変更した擁壁ブロックもある。
(1)係合突起91の側面が曲面になっている擁壁ブロック90を図16の(a)、(b)に示す。
(2)係合突起の上面に深さ約5mmの溝93が凹設されている擁壁ブロック92を図16の(c)、(d)に示す。
【実施例3】
【0054】
次に、複数の擁壁ブロック10が略直線状に並んだ列を互いに平行に二つ以上並べ、連結した擁壁用パーツについて説明する。ここで説明する擁壁用パーツには、実施例2で説明したような、擁壁ブロック10と異なる態様の擁壁ブロックを用いることもできる。また、本実施例の擁壁用パーツによれば、擁壁用パーツ20で得られる効果と同じ効果を得ることができ、さらに、擁壁ブロック10を並べた列を二つ以上並べて連結していることから、擁壁ブロック10に左右空間Bと前後空間Cとがある擁壁を容易に形成することができる。
【0055】
本実施例の擁壁用パーツ23は、図17に示すように、6個の擁壁ブロック10が一列に並んだ列を横に5つ並べ、互いに隣り合う擁壁ブロック10同士をステンレス製の異型棒鋼21で連結して30個の擁壁ブロック10が連結されたものである。隣り合う擁壁ブロック10同士の間の間隔は50mmとなっている。
【0056】
本実施例の擁壁用パーツ23によれば、ブロック同士の接触がなく、従来工法に比べてブロック周囲に空間を多く持つ、法面保護擁壁や河川、湖沼などの護岸擁壁を容易に形成することができる。
【0057】
本実施例の擁壁用パーツ43は、図18(a)に示すように、7個の擁壁ブロック10を用い、それらを二列に並べ、隣り合う擁壁ブロック10同士をステンレス製の異型棒鋼21で連結したものである。そして、隣り合う擁壁ブロック10同士の間隔は50mmになっている。さらに、それぞれの列には、擁壁ブロックが抜けている欠失箇所99ができている。
【0058】
本実施例の擁壁用パーツ44は、図18(b)に示すように、5個の擁壁ブロック10を用い、それらを二列に並べ、隣り合う擁壁ブロック10同士をステンレス製の異型棒鋼21で連結したものである。そして、隣り合う擁壁ブロック10同士の間隔は50mmになっている。さらに、それぞれの列には、擁壁ブロックが抜けている欠失箇所99ができている。
【0059】
本実施例の擁壁用パーツ45は、図18(c)に示すように、5個の擁壁ブロック10を用い、それらを二列に並べ、隣り合う擁壁ブロック10同士をステンレス製の異型棒鋼21で連結したものである。そして、隣り合う擁壁ブロック10同士の間隔は50mmになっている。さらに、それぞれの列には、擁壁ブロックが抜けている欠失箇所99ができている。なお、擁壁用パーツ44と擁壁用パーツ45とは面対称の関係にある。
【0060】
図19に示すように、擁壁用パーツ43、擁壁用パーツ44、擁壁用パーツ45及び二つの擁壁ブロック10を連結した実施例1の擁壁用パーツ20を組合わせて擁壁の壁面部を形成すると、擁壁用パーツ43、擁壁用パーツ44及び擁壁用パーツ45に欠失箇所99があることにより、擁壁を形成するときに使用する擁壁ブロック10の数を減らすことができる。
【0061】
本実施例の擁壁用パーツ46は、図20(a)に示すように、8個の擁壁ブロック10を用い、それらを二列に並べ、隣り合う擁壁ブロック10同士をステンレス製の異型棒鋼21で連結したものである。そして、隣り合う擁壁ブロック10同士の間隔は50mmになっている。さらに、一方の列には、擁壁ブロックが抜けている欠失箇所99ができている。
【0062】
本実施例の擁壁用パーツ47は、図20(b)に示すように、7個の擁壁ブロック10を用い、それらを二列に並べ、隣り合う擁壁ブロック10同士をステンレス製の異型棒鋼21で連結したものである。そして、隣り合う擁壁ブロック10同士の間隔は50mmになっている。さらに、一方の列には、擁壁ブロックが抜けている欠失箇所99ができている。
【0063】
図21、図22に示すように、擁壁用パーツ46及び擁壁用パーツ47を組合わせて擁壁の壁面部を形成すると、擁壁用パーツ46及び擁壁用パーツ47に欠失箇所99があることにより、擁壁を形成する時に使用する擁壁ブロック10の数を減らすことができる。
【0064】
本実施例の擁壁用パーツ48は、図23に示すように、7個の擁壁ブロック10を用い、それらを二列に並べ、隣り合う擁壁ブロック10同士をステンレス製の異型棒鋼21で連結したものである。そして、隣り合う擁壁ブロック10同士の間隔は50mmになっている。さらに、一方の列には、擁壁ブロックが抜けている欠失箇所99ができている。
【0065】
この擁壁用パーツ48は、欠失箇所99に砕石29などを充填して用いることができる。また、図14に示す擁壁66などを容易に形成することができる。
【0066】
本実施例の擁壁用パーツ49は、図24に示すように、12個の擁壁ブロック10を用い、それらを三列に並べ、隣り合う擁壁ブロック10同士をステンレス製の異型棒鋼21で連結したものである。そして、隣り合う擁壁ブロック10同士の間隔は50mmになっている。さらに、真中の列には、擁壁ブロックが抜けている欠失箇所99ができている。
【0067】
この擁壁用パーツ49は、擁壁ブロック10で囲まれた擁壁用パーツ49の中央(欠失箇所99)に砕石29などを充填して用いることができる。
【0068】
本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で、適宜変更して具体化することもできる。
【0069】
次に、本発明のものではない二種類の擁壁ブロックについて説明する。
擁壁ブロック80は、擁壁ブロック10と同じくコンクリート製であり、図25に示すように、本体部81は、長辺が350mm、短辺が243mm、高さが150mmの四角柱状をしている。そして、本体部81の上面82の一端から110mmのところから他端にかけて、20mm隆起した重ね部83が形成されている。そして重ね部83の上面87の略中央には、正四角錐台状の係合突起84が形成され、係合突起84は、底辺が112mm、上辺が75mm、上面82からの高さが70mmとなっている。また、本体部81の底面85の略中央には、正四角錐台状の係合凹部86が凹設されている。係合凹部86は、係合突起84が余裕をもって嵌合できるよう、擁壁ブロック10の係合凹部14と同じ大きさになっている。また、擁壁ブロック80は、擁壁ブロック10と同じように、隣り合うもの同士の間に擁壁を形成したときに植物を繁茂させ又は水棲生物を生息させるための空間をおいて棒鋼などで連結することもできる。
【0070】
この擁壁ブロック80によれば、重ね部83と係合突起84とが共に支持部となり、支持面が広いことから、積み重ねたときの安定度を増すことができる。また、平面視における係合突起84の中心位置と係合凹部86の中心位置とがずれていることから、積み重ねて擁壁を形成したときに壁面部に勾配(約3分)をつけることができる。また、上に位置する擁壁ブロック80の本体部81の底面85と下に位置する擁壁ブロック80の本体部81の上面82との間に20mmの隙間が擁壁の壁面部の表側にできている。
【0071】
擁壁ブロック100は、擁壁ブロック10と同じくコンクリート製であり、壁面部の表側になる面が壁面部の裏側になる面より幅広であると共に、擁壁を形成したときに壁面部の背後に充填される砕石中に埋没して拘束される拘束部を備えている。
【0072】
擁壁ブロック100は、図26に示すように、本体部101は、高さが150mmの角柱状で、壁面部111の表側になる前面102の幅が240mm、壁面部111の裏側になる後面103の幅が160mmであり、前面102と後面103との間が240mmの平面視が台形状である。また、上面104には、略中央から後面103側の端まで20mm隆起した重ね部105が形成されている。
後面103には、ステンレス製の棒鋼108が突設され、後面103から150mm離れた、棒鋼108の先端には、高さが100mmの角柱状で、後面103と対峙する面107aの幅が100mmの平面視が台形状の埋没体107が設けられている。
【0073】
そして、擁壁ブロック100を積み重ねたときには、下に位置する擁壁ブロック100の重ね部105の上面106が、上に位置する擁壁ブロック100の本体部101の底面109に当接して支えることから、重ね部105が支持部となり、下に位置する擁壁ブロック100の本体部101の上面104と上に位置する擁壁ブロック100の本体部101の底面109との間に20mmの隙間ができるようになっている。
【0074】
擁壁ブロック100を用いた擁壁110について、図27を用いて説明する。図27(a)に示すように、擁壁110は、砕石などを平らに敷設した基礎部116上に設けられている。そして、壁面部111が斜面117の傾斜にあわせて上に行くほど斜面117側によるよう、擁壁ブロック100が積み重ねられている。また、各擁壁ブロック100の埋没体107は、壁面部111と斜面117との間に充填された砕石などの裏込め材115中に埋没している。
【0075】
また、図27(b)に示す、一段目の擁壁ブロック100の並びのように、各擁壁ブロック100は互いに間隔をとって、壁面部111の表面が曲面になるように並べられている。
【0076】
擁壁ブロック100によれば、次の効果がえられる。
・積み重ねられた上の擁壁ブロックの底面109と下の擁壁ブロックの上面104との間に20mmの隙間を擁壁の壁面部の表側に設けることができる。
・互いに略等間隔で並べることにより、水平方向に湾曲している地形にも擁壁を形成することできる。
・埋没体107が裏込め材115中に埋没することによるインターロック作用により、固定されることから、位置ずれが起こりにくくなる。
【符号の説明】
【0077】
10 擁壁ブロック
11 本体部
12 上面
13 底面
14 係合凹部
16 係合突起
20 擁壁用パーツ
21 棒鋼
23 擁壁用パーツ
30 擁壁
31 擁壁用パーツ
32 擁壁用パーツ
33 擁壁用パーツ
37 擁壁用パーツ
40 擁壁
43 擁壁用パーツ
44 擁壁用パーツ
45 擁壁用パーツ
46 擁壁用パーツ
47 擁壁用パーツ
48 擁壁用パーツ
49 擁壁用パーツ
50 擁壁
58 擁壁用パーツ
65 擁壁
66 擁壁
70 擁壁ブロック
71 本体部
73 重ね部
74 係合突起
79 底面
90 擁壁ブロック
91 係合突起
92 擁壁ブロック
A 上下空間
B 左右空間
C 前後空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横方向に並べると共に積み重ねて擁壁を形成する擁壁ブロックであって、
擁壁を形成したときに上に位置する擁壁ブロックに当接して支える支持部を本体部の上面に突設し、
上に位置する擁壁ブロックの本体部の底面と下に位置する擁壁ブロックの本体部の上面との間にできる隙間が前記支持部の周りを囲むようにできることを特徴とする擁壁ブロック。
【請求項2】
擁壁を形成したときに横方向に隣り合うもの同士は互いの間に植物を繁茂させ又は水棲生物を生息させるための空間をおいて連結されている請求項1記載の擁壁ブロック。
【請求項3】
上部に係合突起を備え、本体部の底面に係合突起が嵌合する係合凹部が凹設され、棒鋼により前記連結が行われ、擁壁を形成したときに前記擁壁ブロックは互いに外力により破断を伴わない相対変位が可能になっている請求項2記載の擁壁ブロック。
【請求項4】
前記支持部の少なくとも一部が前記係合突起となっている請求項3記載の擁壁ブロック。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の擁壁ブロックを二個以上有し、前記擁壁ブロックを隣り合うもの同士の間に間隔をおいて連結していることを特徴とする擁壁用パーツ。
【請求項6】
請求項5記載の擁壁用パーツを用い、積み重ねたときに上に位置する擁壁用パーツの少なくとも一部は、下に位置する隣り合う擁壁用パーツ同士の間を跨ぐようにして配置することを特徴とする擁壁の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2011−47190(P2011−47190A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−196143(P2009−196143)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(593087422)株式会社箱型擁壁研究所 (11)
【Fターム(参考)】