説明

操作された神経支配組織を生成する方法およびその使用

本発明は、操作された神経支配組織の関連するインビトロモデルを生成するための方法、ならびにこのような組織の使用を提供する。一実施形態において、操作された神経支配組織を調製するための方法が提供され、この方法は:パターン化バイオポリマーを含む固体支持構造体を提供する工程;未成熟細胞を該パターン化バイオポリマーに播種する工程;異方性組織が形成されるように、該細胞を培養する工程;該異方性組織にニューロンを播種する工程;および該ニューロンを播種した該異方性組織を培養して、神経ネットワークが埋め込まれた異方性組織を形成し、それによって、操作された神経支配組織を調製する工程を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
この出願は、2010年2月22日に出願された米国仮出願第61/306,736号(この全体の内容は、この参照によって本明細書に援用される)に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
推定で14,000個のニューロンが、ヒトの心臓に分布して、心臓機能に影響を及ぼしている(非特許文献1)。心臓の神経系は、例えば、心筋収縮力、収縮速度、および伝導速度を変化させることによって、心筋機能(例えば、戦闘または逃亡反応およびストレス応答)を微細に同調させている。上記心臓の神経系の破壊は、心房細動、頻脈、心臓突然死、および他の不整脈、ならびに心筋梗塞および虚血に寄与し得る(非特許文献2;非特許文献3;Cao,J.S.ら,(2000) Circulation Research 86:816−821)。実際に、虚血性心不全は、毎年第1位の死亡原因であり、全世界で約710万人が死亡している。
【0003】
上記心臓の神経系は、末梢自律神経系の一部であり、外因性および内因性のニューロンのネットワークからなる(例えば、図15を参照のこと)。外因性ニューロンは、心臓の外から起こり、脊髄を介して脳から心臓への交感神経系入力および副交感神経系入力を提供する。交感神経系入力は、アドレナリン作動性ニューロンを介して心臓機能を刺激し、心拍数、伝導速度および収縮力を増大させる一方で、副交感神経系入力は、コリン作動性ニューロンを介して相反する効果を生じる(非特許文献2)。内因性ニューロンは、心臓自体の周りに存在し、複雑なフィードバックループにおいて互いにおよび心臓の細胞と連絡している。近年になって、科学者らは、内因性の心臓の神経系を「心臓にある小さな脳」と名付けた。これは、神経入力の最終的な調整因子としてシステムの役割をほのめかし、局所的な電気的かつ機械的な心臓機能に影響を及ぼす(非特許文献1;非特許文献2;Waldmann,M.ら,(2006) Journal of Applied Physiology 101:413−419)。
【0004】
上記心臓の神経系は、高度に発生した、複雑な入力ネットワークであり、これはすべて、正常な心臓機能に寄与し、理想的には、心臓のいかなる臨床的操作も、これら複雑な効果を考慮しなければならない。しかし、基本的なものですら神経心臓学上の問題の現在の理解は乏しい。例えば、心臓移植の後、心拍数の変動性は、非常に少なくなるが、いくつかの症例においては、手術後数ヶ月の間に徐々に増大する。上記器官の自律神経の再神経支配は、神経心臓機能の獲得の理由として提唱されてきたが、実際の原因の理解は、臨床適用には不十分なままである(Sanatani,S.ら,(2004) Pediatric Cardiology 25:114−118)。
【0005】
より複雑な例が、1年につき約300,000人の死亡を生じる心臓突然死を取り囲んでいる。非常に多くの証拠から、頻脈(1分間あたり100回を超える心拍数)、および心臓突然死の原因として、心筋梗塞後の異質の心臓神経支配が指摘されている。しかし、現在までのところ、心臓突然死および他の形態の不整脈(例えば、心室不整脈および心室細動)は、臨床的な予防的処置をほとんど有さない(Chen,L.S.ら,(2007) Journal of Cardiovascular Electrophysiology 18:123)。
【0006】
これら複雑な効果を考慮するために、培養心筋細胞のインビトロモデルが、制御された環境において心臓を研究するために必要とされる。現在までのところ、心臓機能のインビトロモデルの標準は、新生仔ラット心筋細胞(cardiomycocyte)モデルである。このモデルは、入手しやすさ、使用しやすさおよび飼育しやすさ、短い妊娠期間、および各個々の動物が高い細胞数を生じるという利点を提供する。新生仔ラット心筋細胞はまた、「協力的細胞」である。なぜなら、それらは、多くの基材(substrate)に容易に接着し、成体心筋細胞とは異なって、最大1週間以上にわたって培養物中で生存するからである(Chlopcikova,S.ら,(2001) Biomedical Papers 145(2):49−55)。いくつかのグループは、上記新生仔ラット心筋細胞モデルを適切な神経支配心筋層へと適合させた(Chen,L.S.ら,(2007) Journal of Cardiovascular Electrophysiology 18:12312−14;1;.Horackova,M.ら (1989) Canadian Journal of Physiology and Pharmacology 67:740−750;Ogawa,S.,ら (1992) Journal of Clinical Investigation 89:1085−1093)。これらモデルは、広く変化するが、それらのすべてが、インビボでの関連性を欠いている。なぜなら、誰も上記組織の空間的組織化(spatial organization)を試みておらず、誰も個々の細胞構成を制御していないからである。さらに、それらの筋原線維構成を導く外部のきっかけなしにインビトロ環境に置かれた心筋細胞は、神経支配された心筋層の既存のモデルにおけるように、それらのインビボ形態および機能を失う。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Armour,J.A.ら、The Anatomical Record(1997)247:289〜298
【非特許文献2】Armour,J.A.ら、Experimental Physiology(2008)93:165〜176
【非特許文献3】Batulevicius,D.ら、Autonomic Neuroscience:Basic and Clinical(2008)138:4〜75
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、改善された治療剤を開発するために、例えば、虚血性心疾患を処置するために容易に生成され得る関連する生物学的特徴を有する神経支配された心筋層のより生理学的に関連するインビトロモデルが、当該分野で必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、少なくとも一部は、操作された神経支配組織を調製するための方法の発見に基づく。より具体的には、細胞(例えば、筋細胞(例えば、新生仔筋細胞)と、ニューロン(例えば、皮質ニューロン)とを、パターン化バイオポリマーを含む固体支持体の上で、適切な条件下で共培養(co−culture)することによって、神経支配組織が調製され得ることが発見された。本明細書に記載される方法は、操作された組織が神経支配され、以前に記載された方法を使用して培養された組織/細胞によって示される未成熟な特性ではなく、成熟組織の特性(例えば、成熟した電気生理学(例えば、成熟した活動電位形態、成熟したイオンチャネル発現、および成熟した収縮性))を示すという点で、上記操作された組織のより関連するインビトロモデルの調製を可能にする。
【0010】
よって、一局面において、本発明は、操作された神経支配組織を調製するための方法を提供する。上記方法は、パターン化バイオポリマーを含む固体支持構造体を提供する工程、未成熟細胞を上記パターン化バイオポリマーに播種する工程、異方性組織が形成されるように、該細胞を培養する工程、上記異方性組織にニューロンを播種する工程、および上記ニューロンを播種した上記異方性組織を培養して、神経ネットワークが埋め込まれた異方性組織を形成し、それによって、操作された神経支配組織を調製する工程を包含する。
【0011】
別の局面において、本発明は、培養細胞の成熟を促進するための方法を提供する。上記方法は、パターン化バイオポリマーを含む固体支持構造体を提供する工程、未成熟細胞を上記パターン化バイオポリマーに播種する工程、異方性組織が形成されるように、上記細胞を培養する工程、上記異方性組織にニューロンを播種する工程、および上記ニューロンを播種した上記異方性組織を培養して、神経ネットワークが埋め込まれた異方性組織を形成し、それによって、培養細胞の成熟を促進する工程を包含する。
【0012】
本発明の方法において使用するためのバイオポリマーは、細胞外マトリクスタンパク質、増殖因子、脂質、脂肪酸、ステロイド、糖および他の生物学的に活性な炭水化物、生物学的に得られるホモポリマー、核酸、ホルモン、酵素、薬剤、細胞表面リガンドおよびレセプター、細胞骨格フィラメント、モータータンパク質、絹、およびポリプロテインからなる群より選択され得る。一実施形態において、上記細胞外マトリクスタンパク質は、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、コラーゲン、フィブリノゲン、絹、および絹フィブロインからなる群より選択される。
【0013】
上記バイオポリマーは、ソフトリソグラフィーを介して上記固体支持構造体上に沈着させられてもよいし、スタンプ(例えば、ポリジメチルシロキサンスタンプ)で上記固体支持構造体にプリントされてもよい。一実施形態において、本発明の方法は、複数のバイオポリマー構造体(例えば、同じもしくは異なる)を、連続した積み重ねプリント(stacked printing)でプリントする工程をさらに包含する。上記パターン化バイオポリマーは、寸法約5〜40マイクロメートルを有する特徴を含み得る。
【0014】
本発明の方法において使用するための固体支持体は、カバーガラス、ペトリ皿もしくはマルチウェルプレートであり得、一実施形態においては、犠牲ポリマー層および移行ポリマー層をさらに含み得る。一実施形態において、上記犠牲ポリマーは、分解性バイオポリマーである。一実施形態において、上記移行ポリマーは、ポリジメチルシロキサンを含む。
【0015】
一実施形態において、上記未成熟細胞は、収縮性の細胞である。一実施形態において、上記収縮性の細胞は、筋細胞である。別の実施形態において、上記収縮性の細胞は、腺細胞もしくは平滑筋細胞である。別の実施形態において、上記収縮性の細胞は、幹細胞もしくは前駆細胞である。一実施形態において、上記筋細胞は、心筋細胞である。一実施形態において、上記ニューロンは、アセチルコリン、エピネフリンおよび/もしくはノルエピネフリンを分泌しないニューロンである。別の実施形態において、上記ニューロンは、皮質ニューロンである。
【0016】
一実施形態において、上記ニューロンは、少なくとも約1.5×10/ミリメートルの密度で播種される。一実施形態において、上記筋細胞は、上記ニューロンを播種する前に約24時間にわたって培養される。別の実施形態において、上記筋細胞は、上記ニューロンを播種する前に、約2時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、14時間、16時間、18時間、20時間、22時間、24時間、26時間、28時間、30時間、32時間、34時間、36時間、および48時間からなる群より選択される期間にわたって培養される。
【0017】
一実施形態において、上記固体支持構造体は、光学シグナル捕捉デバイス、および光学シグナルの変化を計算するための画像処理ソフトウェアを含む。
【0018】
一実施形態において、本発明の方法は、本発明の方法を介して形成される複数の組織を積み重ねて、多層組織足場を生成する工程をさらに包含する。別の実施形態において、本発明の方法は、上記組織足場における生細胞を増殖させて、三次元異方性心筋層を生成する工程をさらに包含する。別の実施形態において、本発明の方法は、上記組織足場における生細胞を増殖させて、置換器官を生成する工程をさらに包含する。なお別の実施形態において、本発明の方法は、上記バイオポリマーを三次元インプラントの周りに巻き付ける工程およびその後、上記インプラントを生物に挿入する工程をさらに包含する。
【0019】
別の局面において、本発明は、生物学的活性をアッセイするための方法を提供する。上記方法は、本明細書に記載されるように調製された操作された神経支配組織を提供する工程、および該組織の活性を評価し、それによって、生物学的活性をアッセイする工程を包含する。
【0020】
上記生物学的活性を評価する工程は、細胞の収縮性、上記細胞の機械的−電気的共役、細胞の機械的−化学的共役、および/もしくは種々の程度の基材剛性への細胞の応答性を評価する工程を包含し得る。
【0021】
なお別の局面において、本発明は、組織機能を調節する化合物を同定するための方法を提供する。上記方法は、本明細書に記載されるように調製された、操作された神経支配組織を提供する工程、上記組織と試験化合物とを接触させる工程、ならびに上記試験化合物の存在下および非存在下で組織機能に対する上記試験化合物の効果を決定し、それによって、組織機能を調節する化合物を同定する工程であって、ここで上記試験化合物の非存在下での上記組織機能と比較して、上記試験化合物の存在下での上記組織機能の調節は、上記試験化合物が組織機能を調節することを示す、工程を包含する。
【0022】
別の局面において、本発明は、組織疾患を処置もしくは予防するために有用な化合物を同定するための方法を提供する。上記方法は、本明細書に記載されるように調製された、操作された神経支配組織を提供する工程、上記組織と試験化合物とを接触させる工程、ならびに上記試験化合物の存在下および非存在下で組織機能に対する上記試験化合物の効果を決定し、それによって、組織疾患を処置もしくは予防するために有用な化合物を同定する工程であって、ここで上記試験化合物の非存在下での上記組織機能と比較して、上記試験化合物の存在下での上記組織機能の調節は、上記試験化合物が組織機能を調節することを示す、工程を包含する。
【0023】
一実施形態において、上記組織機能は、生体力学的活性(biomechanical activity)(例えば、収縮性、細胞ストレス、細胞膨潤、および剛性)である。一実施形態において、上記組織機能は、電気生理学的活性(例えば、活動電位形態、活動電位持続時間、伝導速度、カルシウム(例えば、Ca2+イオン)、波伝播速度、カルシウム波形態、ならびに収縮期および/もしくは拡張期の間のカルシウムレベルの変化(例えば、コントロールに対する増大もしくは低下))である。
【0024】
別の局面において、本発明は、ペースメーカーを製造するための方法を提供する。上記方法は、基底層(base layer)を提供する工程、犠牲ポリマー層を上記基底層に被覆する工程、上記基底層より可撓性の高い可撓性ポリマー層を上記犠牲ポリマー層上に被覆する工程、上記可撓性ポリマー層に細胞を播種する工程、異方性組織が形成されるように、上記細胞を培養する工程、上記異方性組織にニューロンを播種する工程、上記ニューロンを播種した上記異方性組織を培養して、神経ネットワークが埋め込まれた異方性組織を形成する工程、および上記可撓性ポリマー層を上記基底層から外して、上記組織構造体を含むペースメーカー移植片を生成する工程を包含し、ここで上記組織構造体は、心外膜アタッチメント(epicardial attachment)のために構成され、貼付組織を介して活動電位を伝播するようにさらに構成されている。
【0025】
一実施形態において、上記細胞は、洞房結節に由来する。別の実施形態において、上記細胞は、房室結節に由来する。
【0026】
一実施形態において、上記方法は、上記細胞を洞房結節から採取する工程をさらに包含する。別の実施形態において、上記方法は、上記細胞を房室結節から採取する工程をさらに包含する。
【0027】
一局面において、本発明は、徐脈性不整脈を有する被験体を処置するための方法を提供し、上記方法は、本明細書に記載されるように調製したペースメーカーを上記被験体の心外膜に貼付し、それによって、上記徐脈性不整脈を有する被験体を処置する工程を包含する。
【0028】
別の局面において、本発明は、房室結節伝導障害(AV−node conduction defect)を有する被験体を処置するための方法を提供し、上記方法は、本明細書に記載されるように調製されたペースメーカーを、上記AV結節がバイパスされるように、上記被験体の心外膜に貼付する工程を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、発生における異なる時点で記録されたラット心室筋細胞の代表的活動電位を示す:1日目(A)、5日目(B)、10日目(C)および成体(D)。図を、Kilborn,M.,Fedida,D.(1990) Journal of Physiology 430:37−60から得た。
【図2】図2Aは、http://homepage.mac.comldtrapp/eChem.f/labB4.htmlから得られたイオンチャネルの模式図を示す;図2Bおよび図2cは、Kilborn,M.,Fedida,D. (1990) Journal of Physiology 430:37−60から改作した1日齢(B)もしくは成体(C)のラット心室活動電位の異なる部分に寄与するイオン流を示す模式図である。
【図3】図3は、心筋細胞を異方性単層に操作するために使用されるソフトリソグラフィー技術(A)およびマイクロパターン化技術(B)の模式図を示す。
【図4】図4は、サルコメアα−アクチニン、コネキシン43、およびDAPIに対して染色された、操作された心臓組織を示す。培養物は、白矢印によって示される異方性の水平軸、および細長いロッド様の細胞形態を示す。スケール:20μm。
【図5】図5は、播種順序の結果を示す。筋細胞の7日前にニューロンを播種すること(A)は、等方性パターンを作り出した。筋細胞を播種する2時間前にニューロンを播種すること(B)は、両方の細胞タイプの不十分な細胞接着を生成し、細胞死が増大させた(矢印)。筋細胞の播種の2時間後にニューロンを播種すること(C)は、良好な異方性パターン適用範囲(coverage)およびわずかな細胞死を生じた。スケール:40μm。
【図6】図6は、β−チューブリンIIIに対して染色した神経ネットワークの免疫蛍光画像を示す。カバーガラス表面のz平面において、神経突起が認められ得る(A)。より高いzにおいて、上記神経突起は、もはや焦点には存在しない;ネットワークにおいて上記ニューロンを繋げる軸索は、焦点が合っている(B)。核は、DAPI染色されている;筋細胞は、サルコメアα−アクチニンに対して染色されている。画像を、Leica DM1 6000bから得た。スケール:10μm。
【図7】図7は、インビトロでネットワークを形成したニューロン播種濃度3×10(A)および1.5×10(B)を示す。β−チューブリンIIIに対して染色したニューロンの画像を、Leica DM1 6000bで得た。スケール:20μm。
【図8】図8は、サルコメアα−アクチニン、β−チューブリンIIIおよびDAPIに対する4つの共培養条件の各々を染色して、それぞれ、上記筋細胞、ニューロン、および上記細胞のすべてを標識した結果を示す(A)。スケール:10μm。免疫蛍光顕微鏡検査を使用して、各々の核を、ニューロン(塗りつぶし矢印)、筋細胞(矢尻)もしくは他の細胞タイプ(破線矢印)に属するとして分類した;その結果をBに示す。望ましい細胞比、DCR(ニューロンおよび筋細胞 対 他の細胞の比)は、共培養物の純度を示す(C)。最高のDCRは、HI 24h共培養物において存在する。
【図9】図9は、光学マッピングシステムを示す。上記システムは、124個のフォトダイオード結合型光ファイバーを使用する。これらファイバーは、電位感受性膜色素(voltage−sensitive membrane dye)(例えば、R11237)で染色した培養物をかぶせた場合、膜貫通電位における変化に直接対応する、蛍光のわずかな変化を翻訳し得、空間情報および時間情報の両方を維持する。
【図10】図10は、上記共培養物の各々および4日目の筋細胞のみのコントロールからの代表的活動電位(AP)形態を示す。すべての共培養物のAPは、コントロール筋細胞のAPにおける幅広い三角形のようなピークと比較して、ピークにおいて鋭い点によって可視化されるより迅速な再分極を示す。それらはまた、継続期間がより短いようである。上記共培養物の純度は、左から右へと増大し、コントロールとは、AP形態における差異がより大きいことに対応する。
【図11】図11は、図10において認められた異なる活動電位形態を定量するグラフである。
【図12】図12は、(Kilborn,M.,Fedida,D.(1990) Journal of Physiology 430:37−60)から改作した、発生中の5日目においておよび成体時の活動電位形態および持続時間の比較、ならびに本明細書で使用される4日目の心筋細胞のみのコントロールおよび上記HI 24時間共培養物の比較を示す。スケールバー:200ms。
【図13】図13は、馴化培地中の5日目の筋細胞の活動電位形態を示し、5日目のコントロール活動電位と比較して示される。
【図14】図14は、上記共培養物の測定された伝導速度において明らかな傾向は示されなかったことを示す棒グラフである。
【図15】図15は、インビトロでの心筋細胞およびニューロンの末梢自律神経系および画像を示す。
【図16】図16は、本明細書に記載される方法を使用する成体モデル(biomodal)共培養分布の同定を示す。
【図17】図17は、本明細書に記載される共培養物の活動電位(action porteinatial)に対するイオンチャネルブロッカーの予測される効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(発明の詳細な説明)
操作された神経支配組織を生成するための改善された方法、ならびに培養細胞の成熟を促進するための方法が本明細書に記載される。埋め込まれた神経ネットワークを有する操作された組織(例えば、成熟心筋組織)の調製のためのこのような方法は、以前は相互に両立しない特性の望ましい組み合わせを有するインビトロ組織モデルの生成を可能にする:(a)より高い細胞生存性およびより高い接着によって特徴付けられる細胞供給源に基づく組織、ならびに(b)インビボ関連性を有する組織(なぜなら、上記細胞(例えば、心筋細胞)が、細胞スケールおよび組織スケールの両方においてインビボ様の空間的組織化を達成し、細胞特性および組織特性(例えば、心臓の特性)の促進された成熟を可能にする埋め込まれた神経ネットワークを含むように、操作されるからである)。
【0031】
本発明の方法に従って生成される操作された神経支配組織は、例えば、操作された形状および接続を有する細胞の収縮性、細胞の機械的−電気的共役、細胞の機械的−化学的共役、ならびに/もしくは種々の程度の基材剛性への上記細胞の応答を研究し、そして/または測定するために使用され得る。上記操作された神経支配組織はまた、組織発生生物学および疾患病理学を調査するために、ならびに創薬および毒性試験において有用である。本発明の方法はまた、細胞(例えば、胚性幹(ES)細胞)の成熟を促進するために、または電気的に共役しかつインビトロで活動電位を変換し得る異方性筋肉薄膜(MTF)を調製するために使用され得る。このような異方性MTFは、天然の心臓組織を首尾よく歩調とりし、そして/または細胞集団の間での伝導を可能にし、従って、ペースメーカーとしてもしくはAVバイパスとして機能するために、インビボに移植され得る。
【0032】
(I.操作された神経支配組織を調製するための方法)
一局面において、本発明は、操作された神経支配組織を調製するための方法、ならびに培養細胞の成熟を促進するための方法を提供する。上記方法は、パターン化バイオポリマーを含む固体支持構造体を提供する工程、細胞(例えば、収縮性の細胞(例えば、未成熟の収縮性の細胞(例えば、新生仔細胞)))を上記パターン化バイオポリマーに播種する工程、上記細胞を、異方性組織が形成されるように適切な条件下で培養する工程、上記異方性組織にニューロンを播種する工程、ならびに上記ニューロンを播種した上記異方性組織を、神経ネットワークが埋め込まれた異方性組織が形成されるように、および/または培養細胞の成熟が促進されるように、適切な条件下で培養する工程を包含する。
【0033】
本明細書で使用される場合、用語「操作された神経支配組織」とは、本発明の方法に従って調製された、インビボで組織のタイプに代表的な少なくとも1つの物理的特徴;および/またはインビボで上記組織のタイプに代表的な(すなわち、機能的に活性である)少なくとも1つの機能的特徴を示し;そして「神経支配」している(神経ネットワークを含む)組織に言及する。例えば、操作された神経支配筋組織の物理的特徴は、z線(これは、例えば、検鏡に基づいて決定され得る)において並んだサルコメアありもしくはなしの平行な筋線維の存在を含み得る。操作された神経支配筋組織の機能的特徴は、電気生理学的活性(例えば、活動電位)、もしくは生体力学的活性(例えば、収縮(これは、例えば、米国仮特許出願第61/174,511号、PCT特許出願番号PCT/US09/45001、およびPCT/US2010/033220(これら各々の内容全体は、明らかに本明細書に参考として援用される)に記載されるように決定され得る))を含み得る。
【0034】
本明細書で使用される場合、用語「神経ネットワーク」とは、例えば、本発明の方法に従って調製される操作された神経支配組織において、化学的に接続しているかもしくは機能的に関連づけられているニューロン(例えば、上記ニューロンは、電気的シグナルもしくは化学的シグナルを別の細胞(例えば、収縮性の細胞(例えば、筋細胞、神経細胞、腺細胞、もしくは他の細胞タイプ))に伝達もしくは変換し得る)の群(例えば、2個以上)に言及する。
【0035】
本明細書で使用される場合、神経ネットワークに関して用語「埋め込まれた」とは、細胞(例えば、収縮性の細胞(例えば、筋細胞))と一部分(例えば、神経突起(例えば、軸索および/もしくは樹状突起)および/もしくは細胞体との直接接触、あるいは細胞(例えば、筋細胞)もしくは組織内の一部もしくは神経ネットワーク全体の不可分な部分としての挿入をいう。
【0036】
用語「異方性組織」とは、本明細書で使用される場合、組織の特性(例えば、電気伝導率および/もしくは弾性)が、これら特性が測定される方向に依存している組織に言及する。異方性である(例えば、インビボで)組織の例としては、筋肉、コラーゲン、皮膚、白質、象牙質、神経束、腱、靱帯、および骨が挙げられる。例えば、神経線維のすべてが互いに平行に走っている大きな神経は異方性である。さらに、異方性筋組織は、そのような測定が一方の特定の方向においては行われる場合に高い電気伝導率を示し得るが、別の方向では示さない可能性があるか、またはそのような測定が一方の特定の方向においては行われる場合に機械的活性(例えば、収縮性および/もしくは弾性)を示し得るが、別の方向では示さない可能性がある。
【0037】
(A.パターン化バイオポリマーを含む固体支持構造体の調製)
本発明の方法における使用のための固体支持構造体は、例えば、WO 2008/045506(その内容は、明らかに本明細書に参考として援用される)に記載されるように、パターン化バイオポリマーを含み、このパターン化バイオポリマーは、例えば、ソフトリソグラフィー、自己集合(self assembly)、蒸着もしくはパターン化光架橋によって調製されるスタンプを使用して、上記バイオポリマーの、例えば、マイクロコンタクトプリンティングによって、上記固体支持構造体に適用される。
【0038】
本発明の方法において使用される固体支持構造体は、剛性もしくは半剛性の材料(例えば、プラスチック、金属、セラミック、もしくはこれらの組み合わせ)から形成され得る。本発明の実施形態についての適切な固体支持構造体としては、例えば、ペトリ皿、カバーガラス、もしくはマルチウェルプレートが挙げられる。上記基底層はまた、観察を容易にするように、透明であり得る。上記支持構造体は、理想的には、生物学的に不活性であり、上記組織と低い摩擦を有し、上記組織と(例えば、化学的に)相互作用しない。上記固体支持構造体を形成するために使用され得る材料の例としては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレンテレフタレート、石英、ケイ素(例えば、シリコンウェハ)およびガラスが挙げられる。一実施形態において、上記固体支持構造体層は、シリコンウェハ、ガラス製カバーガラス、マルチウェルプレートもしくは組織培養プレートである。
【0039】
本発明の特定の実施形態において、上記固体支持構造体は、マルチウェル(例えば、12ウェル、24ウェル、48ウェル、96ウェルのプレート)であり、光学シグナル捕捉デバイスおよび光学シグナルの変化を計算するための画像処理ソフトウェア(例えば、米国仮特許出願第61/174,511号およびPCT特許出願番号PCT/US2010/033220(これらの各々の内容全体は、本明細書に参考として援用される)に記載される)をさらに含み得る。上記光学シグナル捕捉デバイスは、上記培養ウェルと接触した状態にある光ファイバーケーブルをさらに含み得る。
【0040】
パターン化バイオポリマーを含む固体支持構造体を調製するために、基底層が提供され、例えば、図3に示されるように、ソフトリソグラフィーは、任意の望ましい形状(例えば、幾何学的形状(例えば、四角形、円形、三角形、直線、およびこれらの組み合わせ)を含むスタンプを調製するために使用され得る。上記スタンプは、バイオポリマーを上記基底層にマイクロコンタクトプリント(microcontact printing)するために使用される。
【0041】
上記スタンプを調製するために、フォトレジストは、上記基底層に沈着させられる。上記フォトレジストにパターンを生成するために、固体マスク(例えば、フォトリソグラフィーマスク)が提供され、上記フォトレジスト層の上部に置かれる。その後、上記フォトレジスト層の一部(すなわち、上記固体マスクによって被覆されない上記フォトレジストの一部)は、電磁放射線に曝される。適切な形状は、任意の所望の形状(例えば、幾何学的形状(例えば、円形、四角形、矩形、三角形、直線、もしくはこれらの組み合わせ)であり得る。上記フォトレジスト層の上部に置かれた上記マスク(例えば、マイクロパターン化マスクおよび/もしくはナノパターン化マスク)は、代表的には、標準的なフォトリソグラフィー手順によって、例えば、電子ビームリソグラフィーによって製造される。上記パターン化スタンプは、弾性材料を、上記パターン化フォトレジストを含む上記基底層に沈着させることによって調製される。次いで、上記パターン化スタンプは、上記固体支持構造体に所望のパターンにおいて上記バイオポリマーをプリントするために使用される。本発明の特定の実施形態において、弾性基材は、上記固体支持構造体に沈着させられ得る。
【0042】
「バイオポリマー」とは、任意のタンパク質、炭水化物、脂質、核酸もしくはこれらの組み合わせ(例えば、糖タンパク質、糖脂質、もしくはプロテオリピド)に言及する。
【0043】
基材に使用され得る適切なバイオポリマーの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
(a)細胞接着および機能を指向する細胞外マトリクスタンパク質(例えば、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチン、もしくはポリペプチド(例えば、周知の−RGD−アミノ酸配列を含む));
(b)特異的細胞タイプ発生細胞を指向する増殖因子(例えば、神経増殖因子、骨形成タンパク質、もしくは血管内皮増殖因子);
(c)脂質、脂肪酸およびステロイド(例えば、グリセリド、非グリセリド、飽和および不飽和の脂肪酸、コレステロール、コルチコステロイド、もしくは性ステロイド);
(d)糖および他の生物学的に活性な炭水化物(例えば、モノサッカリド、オリゴサッカリド、スクロース、グルコース、もしくはグリコーゲン);
(e)炭水化物、脂質および/もしくはタンパク質の組み合わせ(例えば、プロテオグリカン(コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパリン、ヘパリン硫酸、および/もしくはケラタン硫酸の側鎖が結合したタンパク質コア);糖タンパク質(セレクチン、イムノグロブリン、ホルモン(例えば、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、αフェトプロテインもしくはエリスロポエチン(EPO));プロテオリピド(例えば、N−ミリストイル化、パルミトイル化およびプレニル化されたタンパク質);および糖脂質(例えば、グリセロ糖脂質、糖スフィンゴ脂質、もしくはグリコホスファチジルイノシトール);
(f)生物学的に得られるホモポリマー(例えば、ポリ乳酸およびポリグリコール酸ならびにポリ−L−リジン);
(g)核酸(例えば、DNAもしくはRNA);
(h)ホルモン(例えば、アナボリックステロイド、性ホルモン、インスリン、もしくはアンギオテンシン);
(i)酵素(例えば、オキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ、リガーゼ);例:トリプシン、コラゲナーゼ、もしくはマトリクスメタロプロテイナーゼ);
(j)薬剤(例えば、β−ブロッカー、血管拡張剤、血管収縮剤、疼痛緩和剤、遺伝子治療、ウイルスベクター、もしくは抗炎症剤);
(k)細胞表面リガンドおよびレセプター(例えば、インテグリン、セレクチン、もしくはカドヘリン);ならびに
(l)細胞骨格線維および/もしくはモータータンパク質(例えば、中間フィラメント、微小管、アクチンフィラメント、ダイニン、キネシン、もしくはミオシン)。
【0044】
一実施形態において、上記バイオポリマーは、フィブロネクチンである。
【0045】
別の実施形態において、上記バイオポリマーは、高密度の線と低密度の線を交互にするようにパターン化される(例えば、約20μm幅の線)。上記バイオポリマーは、寸法約1〜15マイクロメートル、約1〜10マイクロメートル、約5〜10マイクロメートル、約5〜20マイクロメートル、約5〜30マイクロメートル、約10〜20マイクロメートル、約10〜30マイクロメートル、約1〜100マイクロメートル、約10〜100マイクロメートル、もしくは約20〜100マイクロメートルを有する特徴を含み得る。上記で記載される寸法および範囲の中間の寸法および範囲はまた、本発明の一部であると解釈される。
【0046】
本発明の特定の実施形態において、上記方法は、複数のバイオポリマー構造体を連続した積み重ねプリントでプリントする工程を包含する。例えば、各バイオポリマーは異なり、上記異なるタンパク質は、異なる(例えば、連続)プリントでプリントされる。別の実施形態において、各バイオポリマーは同じであり、異なる(例えば、連続)プリントで異なるパターンでプリントされる。
【0047】
本発明の他の実施形態において、上記バイオポリマーは、多層組織足場を生成するために積み重ねられ得る複数の構造体を生成し得るメッシュもしくはネット構造体のようなパターンで構築される。上記バイオポリマー構造体の構築後に、生細胞は、上記足場の中にもしくはその上に組み込まれて、例えば、三次元異方性心筋層もしくは他の置換器官(例えば、肺、肝臓、腎臓、膀胱)を生成する。本発明の方法は、上記バイオポリマー組織構造体を三次元インプラントの周りに巻き付ける工程、次いで、上記インプラントを生物に挿入する工程を包含し得る。
【0048】
本発明のなお他の実施形態において、上記固体支持構造体は、犠牲ポリマー層および移行ポリマー層をさらに含み得、上記播種される細胞は、神経支配筋薄層(MTF)が、PCT公開番号WO 2008/051265(その内容全体は、本明細書に参考として援用される)において同様に記載されるとおりに形成されるように、培養され得る。簡潔には、固体支持構造体は、犠牲ポリマー層で被覆され;可撓性ポリマー層は、上記犠牲ポリマー層を介して上記固体支持構造体に一時的に結合され、そして操作された表面化学(例えば、パターン化バイオポリマー)は、細胞および/もしくはタンパク質接着を増強もしくは阻害するために、上記可撓性ポリマー層上に提供される。細胞は、上記可撓性ポリマー層に播種され、本明細書に記載されるように共培養されて、例えば、パターン化され、神経支配された異方性心筋層を含む組織を形成する。
【0049】
一実施形態において、上記可撓性ポリマー層の所望の形状は、次いで、切断され得、上記可撓性フィルム(上記ポリマー層および組織を含む)は、上記犠牲ポリマー層が溶解して、上記可撓性ポリマー層を外し、自立式フィルム(free−standing film)(例えば、PCT公開番号WO 2008/051265に記載される)、ならびに米国仮特許出願第61/174,511号およびPCT出願番号PCT/US2010/033220(これらの各々の内容全体は、本明細書に参考として援用される)に記載される水平および垂直MTFを生成するので、ピンセットで剥離され得る。
【0050】
(B.細胞、播種および培養)
細胞(例えば、未成熟細胞(例えば、幹細胞、前駆細胞、誘導多能性幹細胞、胚細胞、もしくは新生仔細胞)は、上記パターン化バイオポリマーに播種され、それら細胞としては、筋細胞、皮膚細胞、角膜細胞、網膜細胞、結合組織細胞、上皮細胞、腺細胞、内分泌細胞、脂肪細胞、およびリンパ球、もしくはこのような細胞の組み合わせへと分化するような細胞が挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、慣用的技術(例えば、組織学的、生体力学的、電気生理学的技術)(例えば、以下に記載されるもの)を使用して、未成熟細胞を成熟細胞から容易に区別し得る。本明細書で使用される場合、筋細胞としては、平滑筋細胞、横紋筋細胞(骨格)、もしくは心筋細胞が挙げられる。胚性(初代および細胞株)、胎児(初代および細胞株)、成体(初代および細胞株)およびiPS(誘導多能性幹細胞)を含む幹細胞が使用され得る。
【0051】
用語「前駆細胞」は、分化によって生じ得る細胞と比較して、より原始的な細胞表現型(例えば、完全に分化した細胞よりも、発生経路もしくは発達に沿って初期の段階にある)を有する細胞をいうために、本明細書で使用される。しばしば、前駆細胞はまた、顕著なもしくは非常に高い増殖能を有する。前駆細胞は、上記発生経路に、および上記細胞が発生し分化する環境に依存して、複数の異なる分化した細胞タイプもしくは単一の分化した細胞タイプを生じ得る。
【0052】
用語「前駆細胞」は、「幹細胞」と類義語として、本明細書で使用され得る。
【0053】
用語「幹細胞」とは、本明細書で使用される場合、増殖する能力があり、かつ多数の母細胞を生成し、次に、分化した、もしくは分化可能な娘細胞を生じる能力を有するより多くの前駆細胞を生じる能力のある、分化していない細胞に言及する。上記娘細胞自体は、後代を増殖させ、生成するように誘導され得る。上記後代は、その後、1種以上の成熟細胞タイプへと分化すると同時に、親の発生能を有する1つ以上の細胞も保持する。用語「幹細胞」とは、特定の環境下で、より特化したもしくは分化した表現型へと分化する能力もしくは可能性を有し、特定の環境下で実質的に分化することなく増殖する能力を保持する後代のサブセットに言及する。一実施形態において、用語幹細胞は、一般に、子孫(後代)が、しばしば、異なる方向において、分化によって、例えば、胚細胞および組織の進行性の多様性で存在するように、完全に個々の特徴を獲得することによって、特化する天然に存在する母細胞に言及する。細胞分化は、多くの細胞分裂を介して代表的には起こる複雑なプロセスである。分化した細胞は、多能性細胞に由来する多能性細胞自体に由来し得るなど。これら多能性細胞の各々は幹細胞とみなされ得る一方で、各々生じ得る細胞タイプの範囲は、かなり変動し得る。いくつかの分化した細胞はまた、発生の可能性がより大きい細胞を生じる能力を有する。このような能力は天然であってもよいし、種々の因子での処理の際に人工的に誘導されてもよい。多くの生物学的な例において、幹細胞はまた、「多能性」である。なぜなら、それらは、1つより多くの異なる細胞タイプの後代を生成し得るが、これは「幹細胞性」を必要としないからである。自己再生は、幹細胞定義の他の伝統的な部分である。理論上は、自己再生は、2つの主要な機構のいずれかによって起こり得る。幹細胞は、上記幹細胞状態(stem state)を保持する一方の娘細胞と、いくつかの別個の特定の機能および表現型を発現する他方の娘細胞とに、非対称に分裂し得る。あるいは、集団中の上記幹細胞のうちのいくつかは、2つの幹細胞へと対称的に分裂し得、従って、全体として、上記集団中のいくつかの幹細胞を維持する一方で、上記集団中の他の細胞は、分化した後代のみを生じる。形式的には、幹細胞として始まる細胞は、分化した表現型に向かって進行し得るが、その後、「逆転」し、上記幹細胞表現型を再発現することが可能である(用語は、しばしば、「脱分化」もしくは「再プログラミング」もしくは「逆分化」といわれる)。
【0054】
用語「胚性幹細胞」とは、胚性の胚盤胞の内部細胞塊の多分化能幹細胞に言及するために使用される(米国特許第5,843,780号、同第6,200,806号(これらの内容は、本明細書に参考として援用される)を参照のこと)。このような細胞は、同様に、体細胞核移入に由来する胚盤胞の内部細胞塊から得られ得る(例えば、米国特許第5,945,577号、同第5,994,619号、同第6,235,970号(これらは、本明細書に参考として援用される)を参照のこと)。胚性幹細胞の顕著な特徴は、胚性幹細胞表現型を定義する。従って、ある細胞が他の細胞から区別され得るように、胚性幹細胞の特有の特徴のうちの1つ以上をその細胞が有する場合、その細胞は、胚性幹細胞の表現型を有する。例示的な顕著な胚性幹細胞特徴としては、遺伝子発現プロフィール、増殖能、分化能、核型、特定の培養条件への応答性などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
用語「成体幹細胞」もしくは「ASC」は、非胚性組織(胎児組織、若年組織、および成体組織が挙げられる)に由来する任意の多能性幹細胞に言及するために使用される。幹細胞は、広く種々の成体組織(血液、骨髄、脳、嗅上皮、皮膚、膵臓、骨格筋および心筋が挙げられる)から単離されてきた。これら幹細胞の各々は、遺伝子発現、因子応答性、および培養物中の形態に基づいて特徴付けられ得る。例示的な成体幹細胞としては、神経幹細胞、神経堤幹細胞、間葉性幹細胞、造血性幹細胞、および膵臓幹細胞が挙げられる。
【0056】
一実施形態において、本願方法において使用するのに適した前駆細胞は、PCT出願番号PCT/US09/060224(発明の名称「Tissue Engineered Mycocardium and Methods of Productions and Uses Thereof」、2009年10月9日出願、これらの内容全体は、本明細書に参考として援用される)に記載されるように、方向付けられた心室前駆(Committed Ventricular Progenitor)(CVP)細胞である。
【0057】
細胞は、正常細胞もしくは異常細胞(例えば、罹患組織由来のもの、もしくは物理的にもしくは遺伝的に変化して、異常なもしくは病的な表現型もしくは機能に達したもの)、胚性幹細胞もしくは誘導多能性幹細胞に由来する正常細胞もしくは病的な細胞、または異常なもしくは異常型(aberrant)の構成において播種/プリントされた正常細胞であり得る。一実施形態において、本発明の方法において使用するための上記細胞は、組織に由来するが、単一の細胞タイプを含む。一実施形態において、本願発明において使用するための上記細胞は、筋細胞である。
【0058】
本発明の特定の実施形態において、上記細胞は、洞房結節もしくは房室結節に由来する細胞であり得る。本発明の他の実施形態において、上記細胞は、これらが生物学的ペースメーカーもしくはAV結節バイパス機能に必要な電気的興奮もしくはペースメーカー特性を有するように、遺伝的に変化させられ得る。いくつかの実施形態において、上記細胞は、歩調とりおよび/もしくは電気的興奮性を促進するイオンチャネルを発現するように遺伝的に操作される。適切なイオンチャネルとしては、過分極活性化環式ヌクレオチドゲート制御(HCN)チャネル(例えば、HCN1、HCN2、HCN3、もしくはHCN4)が挙げられるが、これらに限定されない。このようなイオンチャネルは、HCN遺伝子(例えば、ヒトHCN遺伝子)によってコードされる。HCNを発現する適切な成体間葉性幹細胞は、WO2008011134およびPlotnikovら,Circulation,2007,116(7):706−713(これらの内容全体は、本明細書に参考として援用される)に記載される。他の実施形態において、細胞は、それらが、生物学的ペースメーカーもしくはAV結節バイパス機能に必要な電気的興奮もしくはペースメーカー特性を有する細胞タイプへとその後分化させられ得るように、それらに幹細胞特徴を与えるために遺伝的に操作される。任意の種に由来する細胞は、それらがレシピエントにおける有害な免疫反応を引き起こさない限りにおいて、使用され得る。
【0059】
細胞を播種するために、パターン化バイオポリマーを含む(必要に応じて、犠牲ポリマー層および/もしくは移行ポリマー層を含む)固体支持構造体は、上記細胞を沈殿させ、上記パターン化バイオポリマーに接着させる細胞懸濁物とともに培養物中に置かれる。上記固体支持構造体上の上記細胞は、上記細胞が二次元(2D)組織(例えば、200ミクロン厚未満の細胞層、もしくは特定の実施形態においては、100ミクロン厚未満の細胞層、またはさらには細胞の単層)を形成するまで、生理学的条件下で(例えば、37℃において)インキュベーター中で培養され得る。その異方性は、操作された表面化学によって決定される。
【0060】
当業者は、適切な播種濃度および所望の異方性組織の形成に適した培養時間を容易に決定し得る。例えば、細胞(例えば、筋細胞)は、任意の適切な密度(例えば、約1×10、約2×10、約3×10、約4×10、約5×10、約6×10、約7×10、約8×10、約9×10、約1×10、約1.5×10、約2×10、約2.5×10、約3×10、約3.5×10、約4×10、約4.5×10、約5×10、約5.5×10、約6×10、約6.5×10、約7×10、約7.5×10、約8×10、約8.5×10、約9×10、約9.5×10、約1×10、約1.5×10、約2×10、約2.5×10、約3×10、約3.5×10、約4×10、約4.5×10、約5×10、約5.5×10、約6×10、約6.5×10、約7×10、約7.5×10、約8×10、約8.5×10、約9×10、もしくは約9.5×10)において播種され得る。本発明の一実施形態において、細胞は、密度約1.5×10で播種される。上記記載される量の中間の量はまた、本発明の一部であると解釈される。
【0061】
異方性組織を形成するために、上記細胞は、ニューロンを播種する前に、約0.25時間、約0.5時間、約0.75時間、約1時間、約1.25時間、約1.5時間、約1.75時間、約2時間、約2.25時間、約2.5時間、約2.75時間、約3時間、約3.25時間、約3.5時間、約3.75時間、約4、約4.25時間、約4.5時間、約4.75時間、約5時間、約5.25時間、約5.5時間、約5.75時間、約6時間、約6.25時間、約6.5時間、約6.75時間、約7時間、約7.25時間、約7.5時間、約7.75時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間、約25時間、約26時間、約27時間、約28時間、約29時間、約30時間、約31時間、約32時間、約33時間、約34時間、約35時間、約36時間、もしくは約48時間にわたって培養され得る。上記記載される時間の中間の時間はまた、本発明の一部であると解釈される。
【0062】
上記細胞が異方性組織を形成したか否かの決定は、十分に当業者のレベルの範囲内であり、上記培養物の検鏡、所望の組織と関連した分子の染色、所望の組織と関連する分子の遺伝子発現もしくはタンパク質生成の決定、ならびに/または所望の組織と関連した生体力学的および/もしくは電気生理学的活性の評価に基づき得る。例えば、以下の実施例の節に記載されるように、培養筋細胞が異方性組織を形成したか否かを決定することは、検鏡、ならびに例えば、ミオシン、ミオグロビン、および心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)についての免疫組織化学的分析を含み得る。
【0063】
適切な培養培地は、当業者によって決定され得、上記細胞およびニューロンの増殖を促進し、それらの生存を持続するために適した任意の栄養素(例えば、血清、アミノ酸、ビタミン、ミネラル)を含み、抗生物質および/もしくは適切な増殖因子(例えば、神経増殖因子)を含む。
【0064】
ニューロンは、上記ニューロンの細胞懸濁物を、適切な時間枠(上記を参照のこと)において上記異方性組織とともに培養物中に置き、生理的条件下で(例えば、37℃において)インキュベーター中で培養することによって、上記異方性組織に播種され得る。上記ニューロンは、任意の適切な密度(例えば、1×10、約2×10、約3×10、約4×10、約5×10、約6×10、約7×10、約8×10、約9×10、約1×10、約1.5×10、約2×10、約2.5×10、約3×10、約3.5×10、約4×10、約4.5×10、約5×10、約5.5×10、約6×10、約6.5×10、約7×10、約7.5×10、約8×10、約8.5×10、約9×10、約9.5×10、約1×10、約1.5×10、約2×10、約2.5×10、約3×10、約3.5×10、約4×10、約4.5×10、約5×10、約5.5×10、約6×10、約6.5×10、約7×10、約7.5×10、約8×10、約8.5×10、約9×10、もしくは約9.5×10で播種され得る。本発明の一実施形態において、上記ニューロンは、密度約1.5×10で播種される。上記記載される量の中間の量はまた、本発明の一部であると解釈される。
【0065】
当業者は、当該分野で慣用的であり、本明細書に記載される方法に基づいて、適切な密度の細胞および/もしくはニューロンを播種することを決定し得る。例えば、以下の実施例の節において実証されるように、組織から単離されたニューロン(および他の細胞タイプ)は、所望の細胞タイプ(例えば、ニューロン)、ならびに他の所望されない細胞タイプ(例えば、グリア細胞および線維芽細胞)を含み得る。従って、播種された細胞および/もしくはニューロンの密度は、共培養物中の所望でない細胞タイプに対する所望の細胞タイプのパーセンテージを最適化するために、変化し得る。上記共培養物は、所望でない細胞タイプに対して、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約61%、約62%、約63%、約64%、約65%、約66%、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%の所望の細胞タイプおよび/もしくはニューロンの集団を含み得る。
【0066】
上記共培養物はまた、上記共培養物が、所望の細胞タイプおよび/もしくはニューロンに対して約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、もしくは約49%の所望でない細胞の集団を含むように、最適化され得る。
【0067】
いったん播種されると、上記共培養物は、神経ネットワークが埋め込まれた異方性組織を形成するに十分な時間および適切な条件下で培養され得る。例えば、上記共培養物は、神経ネットワークが埋め込まれた異方性組織を形成するために、約24時間、約30時間、約31時間、約32時間、約33時間、約34時間、約35,時間、約36時間、約37時間、約38時間、約39時間、約40時間、約41時間、約42時間、約43時間、約44時間、約45時間、約46時間、約47時間、約48時間、約49時間、約50時間、約51時間、約52時間、約53時間、約54時間、約55時間、約56時間、約47時間、約58時間、約59時間、約60時間、約61時間、約62時間、約63時間、約64時間、約65時間、約66時間、約67時間、約68時間、約69時間、約70時間、約71時間、約72時間、約73時間、約74時間、約75時間、約76時間、約77時間、約78時間、約79時間、約80時間、約81時間、約82時間、約83時間、約84時間、約85時間、約86時間、約87時間、約88時間、約89時間、約90時間、約91時間、約92時間、約93時間、約94時間、約95時間、約96時間、約97時間、約98時間、約99時間、約100時間、約101時間、約102時間、約103時間、約104時間、約105時間、約106時間、約107時間、約108時間、約109時間、約110時間、約111時間、約112時間、約113時間、約114時間、約115時間、約116時間、約117時間、約118時間、約119時間、約120時間、約121時間、約122時間、約123時間、約124時間、約125時間、約126時間、約127時間、約128時間、約129時間、約130時間、約131時間、約132時間、約133時間、約134時間、約135時間、約136時間、約137時間、約138、約139時間、約140時間、約141時間、約142時間、約143時間、約144時間、約145時間、約146時間、約147時間、約148時間、約149時間、約150時間、約151時間、約152時間、約153時間、約154時間、約155時間、約156時間、約157時間、約158時間、約159時間、約160時間、約161時間、約162時間、約163時間、約164時間、約165時間、約166時間、約167時間、もしくは約168時間にわたって培養され得る。上記記載される時間の中間の時間はまた、本発明の一部であると解釈される。
【0068】
本願方法において使用するためのニューロンは、好ましくは、初代ニューロンであり、任意の適切な供給源(例えば、E16−E18胎仔ラット、E15−E16胎仔マウス、新生仔ラット、もしくは新生仔マウス)に由来し得る。他の動物種に由来するニューロンは、発生的に等価な時点から得られ得る。ヒトニューロンは、ヒト胚性幹細胞から分化させられ得る。さらに、ヒト体細胞(例えば、線維芽細胞)に由来する誘導多能性幹細胞は、ニューロンへと分化させられ得る。あるいは、例えば、胎仔脊髄に由来するES細胞(例えば、神経幹細胞)は、ニューロンを形成するために培養され得る。適切なニューロンは、交感神経ニューロン、副交感神経ニューロン、もしくは皮質ニューロンであり得る。本発明の特定の実施形態において、上記ニューロンは、アセチルコリン、エピネフリン、および/もしくはノルエピネフリンを分泌しないニューロンである。本発明の他の実施形態において、上記ニューロンは、皮質ニューロンである。皮質ニューロン、副交感神経ニューロンおよび交感神経ニューロンを単離および培養するための方法は、当該分野で公知であり、例えば、「New Methods for Culturing Cells From Neuron」,Vol.1.2005. P.Poindron,P.Piguet,and E.Forster, eds. BioValley Monographs,Basel,Karger,pp.12−22;Meberg,P.J. and M.W.Miller.(2003)Methods Cell Biol 71:111;Whitfield,ら(2002) in Methods in Molecular Biol Humana Press,p.157に記載される。
【0069】
本発明の特定の実施形態において、細胞外植片が調製され、上記異方性組織に播種するためのニューロンは、このような外植片から単離される。本発明の他の実施形態において、初代ニューロンは、予備プレート(pre−plate)され、そして/または所望でない細胞タイプに対して選択するために濾過される。
【0070】
一実施形態において、筋細胞は、異方性組織を形成するために培養され、ニューロンと共培養される。
【0071】
操作された神経支配組織が調製されたか否か、および/もしくは上記組織が成熟したか否かの決定は、上記組織の検鏡および/もしくは上記組織の発現分析および/もしくは上記組織の電気生理学的活性および/もしくは上記組織の生体力学的活性に基づき得る。以下の実施例の節に詳細に記載されるように、上記共培養法は、インビボの成体細胞に代表的なイオンチャネル発現、活動電位形態、および収縮性を有する組織を生成し、このようなパラメーターは、上記組織の成熟状態(maturity)および/もしくは神経支配を決定するために測定され得る。例えば、例えば、β−チューブリンIII、心房性ナトリウム利尿ペプチド、Sca−1、ミオシン、アドレナリン作動性レセプターおよび/もしくはムスカリン性レセプターで染色している生細胞を含む共培養物は、迅速な再分極および短い活動電位持続時間を示し、これらは、神経支配されていないおよび/もしくは未成熟である共培養物と比較して、例えば、活動電位持続時間が、成熟しそして/または神経支配されたものであることを決定することによって評価され得る。
【0072】
(II.操作された神経支配組織の使用)
本発明の方法に従って生成された操作された神経支配組織は、例えば、種々の生物学的活性もしくは機能(例えば、操作された形状および接続を有する組織の収縮性、組織の機械的−電気的共役、組織の機械的−化学的共役、および/もしくは種々の程度の基材剛性への上記組織の応答)を測定するために、種々の適用において使用され得る。
【0073】
測定され得る生物学的活性もしくは機能としては、非侵襲的様式において(例えば、細胞/組織損傷を回避する様式において)、およびインビボ環境を複製する様式において、例えば、刺激から得られる生体力学的な力(細胞/組織の収縮、浸透圧性の膨潤、構造リモデリングおよび組織レベルのプレストレス(pre−stress)、および電気生理学的応答が挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられる。例示的なアッセイは、本明細書において、およびPCT出願番号PCT/US2010/033220(その内容は、それら全体が本明細書に参考として援用される)に開示される。
【0074】
よって、本発明は、生物学的活性をアッセイするための方法を提供する。上記方法は、本発明の方法に従って調製された、操作された神経支配組織を提供する工程、および上記組織の活性(例えば、生体力学的もしくは電気生理学的活性)を評価する工程を包含する。上記方法は、1つの時点でもしくは1つより多くの時点で、生体力学的もしくは電気生理学的活性を評価する工程を包含し得る。
【0075】
一実施形態において、このようなアッセイは、操作された神経支配組織の収縮性を評価するために使用され得る。このアッセイは、種々の刺激に曝された場合の上記組織の収縮応答を評価する。別の実施形態において、このようなアッセイは、細胞間(細胞−細胞)の、もしくは細胞と細胞外マトリクス(細胞−マトリクス)との間の機械的連絡を評価するために使用され得る。このようなアッセイは、細胞の形状、配向、または細胞−細胞もしくは細胞−マトリクス連絡までの距離の間の関係を評価し得る。別の実施形態において、このようなアッセイは、細胞核の力学を評価するために使用され得る。組織構造体および機能に対する種々の基材剛性の効果はまた、本発明のアッセイを使用して評価され得る。他のアッセイは、細胞/組織の機械的−電気的共役もしくは機械的−化学的共役、種々の細胞形状および接続を含む。
【0076】
本発明のアッセイは、例えば、上記組織を画像化する工程および/あるいは特定の細胞タイプまたは遺伝子もしくはタンパク質発現について上記組織を染色する工程をさらに包含し得る。
【0077】
本発明の操作された神経支配組織はまた、組織発生生物学および疾患病理学を調査するために、ならびに創薬および毒性試験において有用である。
【0078】
よって、本発明はまた、組織機能を調節する化合物を同定するための方法を提供する。上記方法は、本明細書に記載されるように調製された、操作された神経支配組織と、試験化合物とを接触させる工程;および上記試験化合物の存在下および非存在下での組織機能に対する上記試験化合物の効果を決定し、それによって、組織機能を調節する化合物を同定する工程であって、ここで上記試験化合物の非存在下での上記組織機能と比較して、上記試験化合物の存在下での上記組織機能の調節は、上記試験化合物が、組織機能を調節することを示す、工程を包含する。
【0079】
別の局面において、本発明は、疾患を処置もしくは予防するために有用な化合物を同定するための方法を提供する。上記方法は、本明細書に記載されるように調製された、操作された神経支配組織と、試験化合物とを接触させる工程;および上記試験化合物の存在下および非存在下で組織機能に対する上記試験化合物の効果を決定し、それによって、疾患を処置もしくは予防するために有用な化合物を同定する工程であって、ここで上記試験化合物の非存在下での上記組織機能と比較して、上記試験化合物の存在下での上記組織機能の調節は、上記試験化合物が組織機能を調節することを示す、工程を包含する。
【0080】
本発明の方法は、一般に、複数の細胞もしくは細胞タイプ(例えば、組織)に対する試験化合物の効果を決定する工程を包含するが、本発明の方法は、個々の細胞タイプに対する試験化合物の効果を評価する工程をさらに包含し得る。
【0081】
本発明はまた、アレイの生成を包含する。本明細書に記載される方法に従って調製される、操作された神経支配組織のアレイは、例えば、マルチウェルプレートもしくは組織培養ディッシュ(例えば、PCT出願番号PCT/US2010/033220(その内容は、全体が本明細書に参考として援用される)に記載されるように)を使用して、調製され得る。その結果、特定のウェル中の各操作された神経支配組織は、上記組織に対する上記化合物の効果(例えば、所定のタンパク質/細胞表面マーカーの変化した発現、もしくは変化した分化)を調査するために、異なる化合物に曝され得る。従って、本発明のスクリーニング法は、単一の組織と試験化合物とを、もしくは複数の組織と試験化合物とを接触させる工程を包含し得る。
【0082】
本明細書で使用される場合、用語「調節する」の種々の形態は、刺激(例えば、特定の応答もしくは活性を増大するもしくはアップレギュレートする)および阻害(例えば、特定の応答もしくは活性を減少するもしくはダウンレギュレートする)を含むと解釈される。
【0083】
本明細書で使用される場合、用語「接触させる」(例えば、本明細書に記載される方法に従って調製される細胞もしくは組織と、試験化合物とを接触させる)は、試験化合物および細胞もしくは組織の相互作用の任意の形態(例えば、直接相互作用もしくは間接相互作用)を含むと解釈される。用語接触させるは、化合物および細胞もしくは組織をインキュベートする(例えば、上記試験化合物を細胞もしくは組織に添加する)ことを含む。
【0084】
試験化合物は、化学薬剤(例えば、毒素)、小分子、薬剤、ペプチド、タンパク質(例えば、抗体、サイトカイン、酵素など)、および治療剤(例えば、タンパク質、アンチセンス薬剤(すなわち、標的細胞タイプにおいて発現される標的RNAに相補的な配列を含む核酸(例えば、RNAiもしくはsiRNA)、リボザイムなど)をコードし得る核酸(遺伝子薬および導入される遺伝子を含む)を含む任意の因子であり得る。
【0085】
上記試験化合物は、任意の適切な手段によって細胞もしくは組織に添加され得る。例えば、上記試験化合物は、細胞もしくは組織の表面に滴下され得、そして上記細胞もしくは組織の中に拡散させるかもしくは別の方法で入らせ得るか、または栄養培地に添加され得、上記培地を通して拡散することを可能にされ得る。上記細胞もしくは組織がマルチウェルプレートにおいて培養される実施形態において、上記培養ウェルの各々は、異なる試験化合物もしくは同じ試験化合物と接触させられ得る。一実施形態において、上記スクリーニングプラットフォームは、試験化合物を送達し、薬物送達への微小脈管系の曝露を摸倣する微小流体取り扱いシステムを含む。
【0086】
多くの生理学的に関連するパラメーター(例えば、インスリン分泌、伝導性、神経伝達物質放出、脂質生成、胆汁分泌、生化学的活性および電気生理学的活性、活動電位形態、活動電位持続時間、伝導速度)は、本発明の方法において評価され得る。例えば、一実施形態において、本明細書に記載される方法に従って調製される、操作された神経支配組織は、筋細胞もしくは組織のための収縮性アッセイ(例えば、脈管、気道もしくは消化管の平滑筋、心筋もしくは骨格筋の化学的および/もしくは電気的に刺激した収縮)において使用され得る。さらに、同じ刺激(例えば、薬理学的および/もしくは電気的)に対する異なる筋細胞タイプの差次的収縮性が、研究され得る。
【0087】
別の実施形態において、本明細書に記載される方法に従って調製される、操作された神経支配組織は、細胞の浸透圧性の膨潤に起因する固体応力(solid stress)の測定のために使用され得る。例えば、上記細胞が膨潤するとき、軟質の基材は変形し、結果として、細胞膨潤に起因する容積変化、力および破壊点(point of rupture)が測定され得る。
【0088】
別の実施形態において、本明細書に記載される方法に従って調製される、操作された神経支配組織は、細胞におけるプレストレスもしくは残りのストレスの測定のために使用され得る。例えば、エンドセリン−1の存在下での長期の収縮に起因する血管平滑筋細胞リモデリングが研究され得る。
【0089】
さらになお、本明細書に記載される方法に従って調製される、操作された神経支配組織は、外傷性傷害(例えば、外傷性脳傷害)の後に、組織構造体において剛性の喪失を研究するために使用され得る。外傷性ストレスは、血管痙攣のモデルとして、血管平滑筋の操作された神経支配組織に適用され得る。これら操作された神経支配組織は、どの力が、血管平滑筋を過剰収縮した状態になるのに必要であるかを決定するために使用され得る。これら操作された神経支配組織はまた、血管痙攣応答を最小限にするか、または傷害後応答を改善し、血管平滑筋収縮性をより迅速に正常レベルに戻すために適した薬物を試験するために使用され得る。
【0090】
他の実施形態において、本明細書に記載される方法に従って調製される、操作された神経支配組織は、パラクリン放出された因子に対する生体力学的応答(例えば、血管内皮細胞からの一酸化窒素の放出に起因する血管平滑筋拡張、もしくは一酸化窒素の放出に起因する心筋細胞拡張)を研究するために使用され得る。
【0091】
他の実施形態において、本明細書に記載される方法に従って調製される、操作された神経支配組織は、電気生理学的パラメーター(例えば、活動電位、活動電位持続時間(APD)、伝導速度(CV)、不応期、波長、回復、徐脈、頻脈、回帰性不整脈、および/もしくはカルシウムフラックスパラメーター(例えば、細胞内カルシウム一過性シグナル(intracellular calcium transient)、一過性振幅、上昇時間(収縮)、減衰時間(弛緩)、一過性シグナル下の総面積(力)、回復、限局性および自発性のカルシウム放出)からなる群より選択される電圧パラメーターを含む電気生理学的プロフィール)に対する試験化合物の効果を評価するために使用され得る。例えば、上記操作された神経支配組織と試験化合物とを接触させる際に、心筋細胞を含む操作された神経支配組織の電圧パラメーターもしくはカルシウムフラックスパラメーターの低下は、上記試験化合物が心臓毒性であるという指標である。
【0092】
なお別の実施形態において、本明細書に記載される方法に従って調製される、操作された神経支配組織は、組織のストレス状態に対する試験化合物の効果を測定するための薬理学的アッセイにおいて使用され得る。例えば、上記アッセイは、操作された神経支配組織の組織ストレスおよび構造リモデリングに対する薬物の効果を決定する工程を包含し得る。さらに、上記アッセイは、細胞骨格構造、従って、上記操作された神経支配組織の収縮性に対する薬物の効果を決定する工程を包含し得る。
【0093】
さらに他の実施形態において、本明細書に記載される方法に従って調製される、操作された神経支配組織は、生体力学的応答に対する生体材料の影響を測定するために使用され得る。例えば、操作された神経支配組織の物性(例えば、剛性(stiffness)、表面トポグラフィー、表面化学もしくは幾何学的パターン化)におけるバリエーションに起因する血管平滑筋リモデリングの差次的収縮が、研究され得る。
【0094】
さらなる実施形態において、本明細書に記載される方法に従って調製される、操作された神経支配組織は、未熟な、例えば、幹細胞(例えば、胚、胎仔、新生仔、若年および成体起源の多分化能幹細胞、多能性幹細胞、誘導多能性幹細胞、および前駆細胞)の、収縮性表現型への機能的分化を研究するために使用され得る。例えば、未分化細胞は、パターン化バイオポリマーに播種され(例えば、未成熟細胞)、収縮性表現型への分化は、バイオポリマーの変位を評価することによって観察される。分化は、以下の関数として観察され得る:活動電位形態、活動電位持続時間、伝導速度、共培養(例えば、分化した細胞との共培養)、パラクリンシグナル伝達、薬理学、電気刺激、磁性刺激、熱変動、特定の遺伝子でのトランスフェクションおよび生体力学的摂動(例えば、周期性のひずみ(cyclic strain)および/もしくは静的ひずみ)。
【0095】
別の実施形態において、本明細書に記載される方法に従って調製される、操作された神経支配組織は、例えば、操作された神経支配組織の電気生理学的応答に対する上記化合物の効果を評価することによって、試験化合物の毒性を決定するために使用され得る。例えば、カルシウムチャネルの開口は、上記細胞へのカルシウムイオンの流入を生じ、これは、心筋線維および骨格筋線維における興奮−収縮共役において重要な役割を果たす。カルシウムの逆転電位は、正であるので、カルシウム流は、ほぼ常に内向きであり、多くの興奮性細胞において活動電位プラトーを生じる。これらチャネルは、治療的介入(例えば、抗高血圧薬のカルシウムチャネルブロッカーサブタイプ)の標的である。候補薬物は、有害な臨床効果(例えば、不整脈をもたらし得る心臓興奮の許容できない変化)を潜在的に引き起こし得る化合物を同定するために、本明細書で記載される電気生理学的特徴付けアッセイにおいて試験され得る。
【0096】
例えば、不整脈をもたらし得る心臓興奮における許容できない変化としては、例えば、通常の活動電位伝導に必須のイオンチャネルのブロックが挙げられ、例えば、Naチャネルをブロックする薬物(例えば、テトロドトキシン)は、上記活動電位をブロックし、上昇過程(upstroke)が認識されない;Ca2+チャネルをブロックする薬物(例えば、ニフェジピン)は、再分極を延長し、不応期を増大させる;Kチャネルのブロックは、迅速な再分極をブロックし、従って、よりゆっくりとしたCa2+チャネル媒介性再分極が大半を占める(例えば、図17を参照のこと)。
【0097】
さらに、代謝的変化は、例えば、操作された神経支配組織と、試験化合物とを接触させる工程が、代謝活性および/もしくは細胞死における低下を生じるか否かを決定することによって、試験化合物が毒性であるか否かを決定するために評価され得る。例えば、代謝的変化の検出は、種々の検出可能な標識システム(例えば、REDOX活性のAlamarBlue蛍光/色素生成決定(Invitrogen)、代謝的に活性な細胞における酸化状態(非蛍光性,青色)から還元状態(蛍光性,赤色)へのREDOX指示薬の変化;代謝活性のVybrant MTT色素生成決定(Invitrogen)、代謝的に活性な細胞における不溶性ホルマザンに還元される水溶性MTT;および細胞DNA含有量のCyquant NF蛍光測定(Invitrogen)(蛍光DNA色素は、浸透剤の援助によって細胞に入り、核クロマチンを結合する)を使用する、例えば、蛍光定量的検出/色素生成検出、または生体発光の検出)を使用して測定され得る。生体発光アッセイに関して、以下の例示的な試薬:Cell−Titer GloルシフェラーゼベースのATP測定(Promega)が使用され、熱的に安定なホタルルシフェラーゼは、代謝的に活性な細胞から放出される可溶性ATPの存在下で発光する。
【0098】
本明細書に記載される方法に従って調製される、操作された神経支配組織はまた、例えば、異なる送達系を介して投与される同じ薬剤の効果を比較するためにか、または送達ビヒクル自体(例えば、ウイルスベクターもしくはリポソーム)が上記操作された神経支配組織の上記生物学的活性に影響を及ぼし得るか否かを単に評価するために、治療剤のための特定の送達ビヒクルの効果を評価するために有用である。これら送達ビヒクルは、従来の薬学的処方物から、遺伝子送達ビヒクルへ、任意の形態のものであり得る。例えば、本明細書に記載される方法に従って調製される、操作された神経支配組織は、2つ以上の異なる送達系(例えば、デポー処方物および徐放性処方物)によって投与される同じ薬剤の治療効果を比較するために使用され得る。本明細書に記載される方法に従って調製される、操作された神経支配組織はまた、特定のビヒクルが、上記組織に対するそれ自体の効果を有し得るか否かを調査するために使用され得る。遺伝子ベースの治療剤の使用が増大するにつれて、種々の考えられる送達系と関連する安全性の課題が、ますます重要になっている。従って、本明細書に記載される方法に従って調製される、操作された神経支配組織は、核酸治療剤のための送達系(例えば、裸のDNAもしくはRNA、ウイルスベクター(例えば、レトロウイルスもしくはアデノウイルスベクター)、リポソームなど)の特性を調査するために使用され得る。従って、上記試験化合物は、あらゆる関連する治療剤ありもしくはなしで任意の適切なタイプの送達ビヒクルであり得る。
【0099】
さらに、本明細書に記載される方法に従って調製される、操作された神経支配組織は、例えば、筋肉および/もしくは神経筋の疾患または障害に関して、治療活性について試験化合物を評価するための適切なインビトロモデルである。例えば、本明細書に記載される方法に従って調製される、操作された神経支配組織は、例えば、上記試験化合物を含む培地のバス中に浸漬することによって、候補化合物と接触させられ得、組織活性に対する上記試験化合物の効果(例えば、生体力学的活性および/もしくは電気生理学的活性)は、適切なコントロール(例えば、未処理の操作された神経支配組織)と比較して、本明細書に記載されるように測定され得る。あるいは、本明細書に記載される方法に従って調製される、操作された神経支配組織は、候補化合物を含む培地中に浸され得、次いで、上記組織は洗浄され得、その後、本明細書に記載されるように、組織活性(例えば、生体力学的活性および/もしくは電気生理学的活性)を測定し得る。上記試験薬剤の存在下で上記操作された神経支配組織を使用して(上記試験化合物の非存在下で上記デバイスを使用して同じ活性と比較して)決定される活性への任意の変化は、上記試験化合物が、組織疾患(例えば、神経筋疾患もしくは心疾患)を処置もしくは予防するために有用であり得るという指標である。
【0100】
上記のように、本発明の特定の実施形態は、神経支配された筋薄膜の形成を可能にする。このような異方性筋薄膜(MTF)は、電気的に共役され、活動電位をインビトロで変換し得、天然の心臓組織を首尾よく歩調とりし、そして/または細胞集団の間の伝導を可能にし、従って、ペースメーカーとしてもしくはAVバイパスとして機能するように、インビボで移植され得る。
【0101】
よって、一実施形態において、本発明は、米国仮特許出願第61/249,870号(2009年10月8日出願)および同第61/391,203号(2010年10月8日出願)に詳細に記載されるように、ペースメーカーを製造するための方法を提供する。このようなペースメーカーは、徐脈性不整脈を有する被験体もしくは房室結節伝導障害を有する被験体を処置するために使用され得る。上記心臓組織に接近し、上記ペースメーカーを上記心臓に移植するための任意の適切な手段が使用され、これら手段としては、例えば、胸部外科手術(thoracic surgery)もしくは経心筋カテーテル送達(transmyocardial catheter delivery)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、ペースメーカーは、移植前に経心筋カテーテルの中で丸められ、その後、移植部位に達したときにほどかれる。一時的な力が、上記ペースメーカー移植片をインビボで移植して、細胞接合点が確立され、それによって、上記ペースメーカーを、上記宿主組織の細胞と接続するまで、上記移植片を上記宿主に保持する際に、上記ペースメーカーにかけられ得る。
【0102】
上記ペースメーカーの正確なサイズおよび形状は、当業者によって容易に決定され得る。例えば、成人は、代表的には、四角形もしくは矩形の形状に関しては2〜4cm長もしくは円形の形状に関しては3cm直径であるペースメーカーを必要とし得る。上記ペースメーカー移植片のサイズは、上記患者の必要性に従って設計され得る。上記ペースメーカー移植片の適切な表面積としては、例えば、1〜10mm、10〜10mm、10〜10mm、もしくは10〜10mmが挙げられるが、これらに限定されない。ペースメーカー移植片に適切な長さとしては、例えば、0.1cm、0.5cm、1cm、2cm、3cm、4cm、5cm、6cm、7cm、8cm、9cm、10cm、11cm、12cm、13cm、14cm、15cm、16cm、17cm、18cm、19cm、20cm、25cm、30cm、40cm、50cmもしくは100cmが挙げられるが、これらに限定されない。心肥大を有する患者は、正常サイズの心臓を有する患者より大きなペースメーカー移植片を必要とし得る。同様に、小児患者は、成人患者より小さなペースメーカー移植片を必要とし得る。
【0103】
上記ペースメーカーの形状は、上記患者の必要性に従って設計され得る。上記ペースメーカーの全体的な形状は、望ましい生物学的特性を有するように、および可能な限り少ない歩調とり細胞で上記宿主心筋層に脱分極電流を効率的に送達するように、最適化される。例えば、ペースメーカーの上記形状は、楕円形であり、方向性をもつ分極電流を、周りの心臓組織に送達し、波面伝播の方向を調整することを可能にするように、設計され得る。非興奮細胞(例えば、心臓線維芽細胞)の組み込みはまた、一方向へのより大きな脱分極電流を送達するために、反対方向への伝播をブロックするために使用され得る。
【0104】
本発明は、以下の実施例によってさらに例示されるが、限定として解釈されるべきではない。本願全体を通して引用されるすべての参考文献、特許および公開特許出願の内容、ならびに図面は、本明細書に参考として援用される。
【実施例】
【0105】
(実施例1.操作された心筋)
(導入)
本発明は、神経支配組織(例えば、心筋層)の改善されたインビトロモデルを提供する。本明細書で記載されるインビトロモデルは、1)新生仔ラット心室心筋細胞を空間的に組織化して、整列したロッド形状の細胞のインビボ様単層を作り出す、2)最適化された共培養条件を提供して、上記ニューロンを、上記筋細胞単層に機能的に影響を及ぼし得るネットワークへと最良に埋め込む、および3)上記神経ネットワークの付加によって、上記心筋細胞の電気生理学の成熟を促進する。
【0106】
ラット心臓電気生理学は、発生の間に劇的に変化する。新生仔発生の全体を通して、ラット心臓活動電位は、形態および持続時間の両方において変化する。図1は、新生仔発生の間の異なる時点で記録された、ラット心室筋細胞の代表的活動電位記録を示す。図1に認められるように、ピーク直後の活動電位の傾きは、発生の間に勾配がより大きくなり、上記ピークの三角形の形状は、より狭くなる。このことは、ピーク脱分極直後の、より迅速な再分極に対応する。上記活動電位はまた、発生の間の持続時間において遙かに短くなる。
【0107】
経時的な活動電位形態および持続時間における変化の根底にあるのは、イオンチャネル発現における変化である。図2Aは、開口しているイオンチャネルの模式図を示す。小さなイオン分子がこの孔を介して膜を貫通できる。図2Bおよび図2Cは、発生の1日目(未成熟)および成体段階での上記ラット心臓活動電位の種々の部分を占める種々のイオン流を示す。未成熟および成体の活動電位の両方において、大きなナトリウム流入が、脱分極を引き起こす。これの後に、内向きのカルシウムフラックスが起こり、これは、1日目の活動電位より大きい。上記カルシウム流入は、上記未成熟活動電位においてより長く継続し、再分極の間のプラトー相に寄与する。そして2相の外向きカリウム流があり、2段階の再分極を引き起こす。比較すると、上記成体活動電位(図2C)において、より迅速なカルシウム流非活性化に起因して、より短いカルシウム流入があり、プラトーはなく、より短い活動電位持続時間に対応する(Guo,W.ら,(1996) The American Physiological Society −Cell Physiology 271(1):C93)。一過性の外向き電流の増大もまた存在し、これらイオンチャネルにおいて増大しているカリウム選択性、同様に、カリウム流を内向きに矯正する、より迅速な非活性化につながる。結果として、より迅速な再分極、ならびにより短い活動電位持続時間が観察される(Kilborn,M.,Fedida,D.(1990)Journal of Physiology 430:37−60)。
【0108】
心筋細胞の成熟状態の別の電気生理学的尺度は、伝導速度である。心筋細胞が発生し、成熟するにつれて、それらの伝導速度は増大する(De Boer,T.ら,(2008) Netherlands Heart Journal 16(3):106−109;Thomas,S.ら,(2003) Circulation Research,92:1209−1216)。
【0109】
上記に基づいて、神経支配された心筋層の新規なインビトロモデルに関して3つの設計基準を規定した:
1)共培養物は、空間的に組織化された組織を有さなければならない。上記心筋細胞は、異方性単層に整列されなければならず、それらは、インビボでの成体心筋細胞に類似する、細長いロッド様の形態を示すはずである;
2)上記共培養微小環境は、最適化されねばならない。2日齢のラット心室筋細胞および皮質ニューロンを使用して、上記培地成分および播種条件を最適化して、上記異方性筋単層に上記神経ネットワークを最良に埋め込み、上記心筋細胞に対する機能的効果を発生させなければならない;そして
3)共培養物における心筋細胞は、成熟した活動電位特性を示さなければならない。これは、インビボ活動電位特徴のスケールで、迅速な再分極および短い活動電位持続時間を含む。
【0110】
(心筋細胞単離)
心室組織を、ハーバード大学のInstitutional Animal Care and Use委員会のガイドラインに従って、2日齢のSprague−Dawleyラット(Charles River Laboratories)から単離した。心室を、4〜6つの小片に切断し、0.1% トリプシン(US B)溶液中で14〜16時間にわたって、4℃において酵素消化した。次いで、心筋細胞を、37℃において0.1% コラゲナーゼ溶液中の2分間のインキュベーションによって、上記組織から解離させた。次いで、筋細胞を、1200rpmにおいて10分間にわたって遠心分離し、筋細胞培地中に再懸濁し(表1)、40tmナイロン細胞ストレイナー(BD Bioscience)を使用して濾過した。2つの45分間の予備プレート工程(それぞれ、T75フラスコもしくはT175フラスコでの細胞懸濁物をプレートする工程)に続いて、線維芽細胞を濾別した。次いで、細胞を、以下に記載されるようにカバーガラスに播種し、37℃、5% 二酸化炭素インキュベーター(Thermo Electron Corporation)中で維持した。筋細胞培地を、1日目、2日目、その後、48時間ごとに交換した。
【0111】
【表1】

(ソフトリソグラフィーおよびマイクロパターン化)
ソフトリソグラフィーおよびマイクロパターン化技術を使用して、上記心筋細胞を、空間的に組織化した異方性単層へと操作した(図3)。ソフトリソグラフィー(図3A)において、AutoCADにおける二次元設計を、三次元ラバースタンプへと変換する。第1の工程は、AutoCADにおいてマスクを設計することによって、上記組織が有するように望まれる空間的組織化の鋳型を作る(template)ことであった。その目的は、上記組織を整列させることであった。そして単一軸のラインとその間にギャップを有するように設計したマスクを使用した。使用したそのラインおよびギャップ寸法は、6μm〜30μmの範囲であった;10ミクロンのラインと10ミクロンのギャップを有するマスクを、心筋細胞を整列させるにあたりそれらが成功したために選択した。
【0112】
次の工程において、ネガティブフォトリソグラフィー技術を使用して、シリコンウェハ上にパターンをエッチングした。この工程の後、上記ウェハは、谷としてのラインとギャップとしての隆起での組織化のためのテンプレートの三次元ネガであった。次いで、有機エラストマー、ポリジメチルシロキサン、PDMS(Sylgard 184,Dow Corning)を、上記エッチングしたウェハに注いだ。真空乾燥して、表面不純物を除去した後、上記PDMS被覆ウェハを、65℃において一晩焼き付けた。上記テンプレートの陽画像を有した上記硬化したPDMSスタンプを、上記ギャップとしてのその谷および上記パターン化ラインとしての隆起とともに、剥離した。
【0113】
次の工程において、マイクロパターン化技術を使用して、上記PDMSスタンプに「インク」を入れ、上記心筋細胞組織化のための生物学的テンプレートにスタンプした(図3B)。最初に、濃度50μg/mLでの細胞外マトリクスタンパク質(例えば、フィブロネクチン)を、PDMSスタンプ上に拡げ、1時間にわたってインキュベートした。細胞外マトリクス(ECM)タンパク質(例えば、コラーゲン、ラミニンおよびフィブロネクチン)は、身体全体を通して存在し、細胞をそれらの外部環境に機械的に結びつける分子である。インキュベーション後、過剰なフィブロネクチンを除去し、上記スタンプをPDMS被覆した25mmガラス製カバーガラス上に押した。上記スタンプの三次元トポグラフィーに起因して、上記ECM被覆した隆起のみが、表面に触れ、上記ECM−タンパク質をその領域において(しかし谷はない)上記カバーガラスに移した。従って、上記ガラス製カバーガラスを、10ミクロンラインパターン(その間に10ミクロンのギャップがある)でマイクロパターン化した。
【0114】
次いで、カバーガラス全体を、より薄い濃度のフィブロネクチン、2.5g/mLで被覆し、10分間にわたってインキュベートした。従って、フィブロネクチン表面を調製した。これは、上記高濃度のラインに沿って上記筋細胞を誘導し得るのと同時に、他の筋細胞が上記低濃度のギャップに沿って側方にゆっくりと増殖することを可能にし、コンフルエントな異方性単層を作ることができた。
【0115】
上記マイクロパターン化カバーガラスに、100万個もしくは150万個のいずれかの、上記のように単離した筋細胞を播種した。
【0116】
(免疫蛍光顕微鏡検査)
免疫蛍光顕微鏡検査を使用して、上記マイクロパターンならびに個々の細胞構造体に対する細胞接着を評価した。免疫染色するために、培養物を、Triton X−100(Sigma Xl 001 L)を含む4% パラホルムアルデヒド(Electron Microscopy Sciences #15710)中で15分間にわたって固定し、DAPI(Invitrogen)、サルコメアα−アクチニン(Sigma,クローンEA−53)および/もしくはコネキシン43(Sigma C−6319)に対して染色した。顕微鏡スライド上の免疫染色した培養物をマウントし、Leica DM1 6000b顕微鏡を使用して免疫蛍光画像を得た。
【0117】
免疫蛍光顕微鏡検査により、異方性心筋細胞単層が、上記のソフトリソグラフィーおよびマイクロパターン化技術を使用して生成されたことが確認される。上記心筋細胞は、上記フィブロネクチン表面に容易に接着し、上記組織テンプレートに従って空間的に組織化された。図4は、上記操作された心臓単層の免疫染色画像を示す。図4における拡がったサルコメアα−アクチニン蛍光は、コンフルエントな単層を示す。さらに、上記サルコメアは、均一の垂直な整列をしていた。サルコメアは、縦方向の力に対して垂直に配向し;従って、均一の垂直なサルコメアの整列は、異方性の水平軸とともに、首尾よい組織整列を示す。図4において、上記組織配向は、一連の垂直の蛍光性サルコメアに対して垂直な白い線によって示される。免疫染色からはまた、細長い個々の細胞構造体が確認された。これら結果は、心筋細胞培養物が、インビトロで操作されて、インビボ様の細胞形態を有する空間的に組織化された異方性単層を形成し得ることを示す。
【0118】
(実施例2:共培養最適化)
至適共培養条件を、上記のように生成した、操作された心臓単層に神経ネットワークを埋め込むために決定した。
【0119】
共培養物中に一緒になっている2つの異なる細胞タイプ(心室心筋細胞および皮質ニューロン)の健康状態および機能性を維持することは、インビトロモデルに対していくつかの設計上の制約を本質的に提起する。細胞の微小環境は、各細胞タイプについて最適化されることが必要である。パラメーター空間は、上記至適共培養培地を見いだし、上記ニューロンを最良に埋め込む細胞播種順序を決定することを含んだ。上記細胞外マトリクスマイクロパターン化タンパク質を上記共培養状況に適応させ、細胞播種密度を最適化することも、考慮した。
【0120】
2つの異なるニューロン単離法を調査した。簡潔には、皮質を、心室筋細胞と並行して単離し、上記組織を、上記の筋細胞単離と同様に一晩トリプシン処理した。次いで、脳組織をホモジナイズし、濾過し、上記筋細胞単離に記載されるようのと同様に再懸濁した。この時点での神経懸濁物は、ニューロンおよびいくつかの他の所望でない細胞タイプ(グリア細胞(例えば、星状細胞および希突起膠細胞)、ならびに線維芽細胞および内皮細胞が挙げられる)を含んでいた。これら細胞は、インビボで心臓に存在し、おそらく心筋機能に関わっているが、心臓のシグナル伝播および収縮には寄与しない。従って、制御された微小環境において、これら細胞は、不要な変数を代表する。これら所望でない細胞を濾過しようとするために、2つの方法のうちの一方を使用した。
【0121】
上記第1の予備プレート法は、上記神経懸濁物をT175フラスコに2時間予備プレートすることによって、それを濾過した。グリア細胞および線維芽細胞は、より迅速に表面に接着するので、結合していない細胞は、より純粋なニューロン亜集団との望みが持たれた。上記第2の予備プレート法は、上記神経懸濁物のネガティブフィルタ(negative filter)を使用した。フラスコに、0.01% ポリ−Lリジン、PLL(Sigma P−4707)、ニューロンおよびいくつかの他の細胞が接着する荷電した粒子を被覆した。上記神経懸濁物を、これらPLL被覆フラスコに24時間にわたって予備プレートし;結合していない細胞を吸引し、結合した細胞(富化されたニューロン亜集団)を、0.1% トリプシン中、37℃において15分間にわたってトリプシン処理し、再懸濁した。これらニューロンを富化した懸濁物を使用して、上記心筋細胞上に播種した。
【0122】
上記共培養法の最適化のための手段は、細胞死(アポローシスもしくはネクローシス)を最小限にし、細胞接着およびマイクロパターン化ライン適用範囲を最大限にした。
【0123】
第1の難題は、外見上異なる細胞タイプを、適切な微小環境中で一緒に増殖させる単一の細胞培地を決定することであった。筋細胞培地単独の培地成分と、ニューロン培地単独の培地成分とを比較した。ウシ胎仔血清、L−グルタミン、およびペニシリンのようないくつかの同一成分、ならびにそれらの2つの基本化合物、最小イーグル培地199(MEM 199)とダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)の間の類似性が存在した。このことは、ほんの少数の成分によって問題を単純化した。
【0124】
次に、いずれかの細胞培地の任意の成分が他の細胞タイプに特に有用もしくは有害であるかを決定した。2つの異なるアイディアが出てきた。一方については、ニューロンおよび心筋細胞の他のインビトロ共培養研究は、多様な培地配合を有するが、多くは、1つの成分を共有する:神経増殖因子(NGF、ニューロン生存を促進することが示されたシグナル伝達因子)。これは、NGFが重要な因子であることを示した。第2に、上記ニューロン培地は、ペニシリンおよびストレプトマイシン抗生物質の両方を有する一方で、上記筋細胞培地は、ペニシリンのみを有する。ストレプトマイシンは、伸長活性化(stretch−activated)イオンチャネルをブロックすることが公知であり、従って、ストレプトマイシンなしの上記筋細胞培地は、より用途の広い培地であることが決定された。
【0125】
結果に基づくと、ニューロンが筋細胞培地中で増殖し得ることが発見された。なぜなら、上記筋細胞培地は、同じ成分のうちの多くを共有するからである。このことは、容易さを提供した。なぜなら、上記成分はすべて容易に入手可能であり、潜在的に所望されないニューロン培地成分であるストレプトマイシンを欠いていたからである。NGFを、上記筋細胞培地に添加して、共培養におけるニューロン生存性を促進した。
【0126】
この溶液は、心筋細胞およびニューロンの両方が、接着し、1〜3週間にわたって共培養中で生存することを可能にする。
【0127】
次に、上記播種順序およびタイミングを考慮した。ニューロンを、上記筋細胞の7日前もしくは2時間前に、または上記筋細胞の2時間後、24時間後もしくは3日後に播種することを、調査した。神経ネットワークを最良に埋め込み、マイクロパターン化適用範囲を維持するためには、筋細胞を、最初に播種しなければならないことが解った。これら結果を、図5に示す。ニューロンを上記筋細胞の7日前に播種すると、不十分なパターン適用範囲を生じた(図5A)。神経懸濁物は、多くの線維芽細胞を含むニューロン以外の細胞タイプを有する。線維芽細胞は心臓における細胞外マトリクスの主な供給源であるので、7日間の経過にわたり、これら細胞は、提供されたテンプレート以外のパターンで、それら自体の細胞外マトリクスタンパク質に拡がったようである。上記ニューロンを上記筋細胞の2時間前に播種すると、両方の細胞タイプの接着が制限され、培養物中に多数の円い、浮遊した細胞が認められるように、細胞死を増大させるようであった(図5B)。
【0128】
対照的に、筋細胞を、上記ニューロンの2時間前(図5C)、24時間前、もしくは3日間前に播種した共培養物は、良好な細胞接着および良好なパターン化ライン適用範囲を示した。ニューロンは、他の選択肢の非存在下でも基材に接着するが、それらの間のつながりは、しばしば、より高いz平面を採ることに注目した(図6)。その理由は、各細胞タイプの基材剛性選択性にある。心筋細胞は、硬い基材に接着することを好み、そこから、心筋細胞は、より強い力で収縮することができる。一方で、ニューロンは、脳の内部で見いだされるもののようなより柔らかい基材を好む。上記PDMS被覆ガラス製カバーガラスのヤング率は、約1.5MPaである一方で、上記心筋細胞自体は、ヤング率約30kPaを有する。従って、上記心筋細胞は、上記PDMS被覆ガラス製カバーガラス上に最初に播種される場合に硬い基材を見いだす一方で、上記ニューロンは、これらが望む、上記心筋細胞自体を含む柔らかい基材を見いだす。
【0129】
このことは、組織化の鋳型に使用するための、最良の細胞外マトリクスタンパク質を検索することを単純化する。上記最適化された播種順序は、筋細胞を上記ガラス製カバーガラス上に最初に播種することを要したので、筋細胞培養単独のために開発されたテンプレートを、変更することなく共培養状況に移した。フィブロネクチンを、空間的に組織化された共培養のための好ましいマイクロパターン化タンパク質として選択した。
【0130】
上記細胞播種濃度を、次に最適化した。2.5×10細胞、1×10細胞、および1.5×10細胞を使用した心筋細胞の播種を試験した;150万個の心筋細胞が、均一な細胞接着を確実にすることが見いだされた。
【0131】
ニューロン播種濃度については、2つの異なる濃度のうちの一方を使用して、筋細胞機能に対するニューロン濃度の効果を評価した。低濃度3×10もしくは高濃度1.5×10のニューロンを使用した(図7)。より低い濃度5×10および1×10のニューロンもまた試したが、これらの濃度は、非常に低かったので、上記ニューロンが互いに手を伸ばして神経ネットワークを形成できなかったことが見いだされた。ニューロンの低播種濃度および高播種濃度を、上記モデルにおける変数として留めておいた。
【0132】
最後に、以前に記載した2つのニューロン単離法のうちの一方からのニューロン富化懸濁物を、上記心筋細胞に埋め込むために使用した。上記2時間および24時間の予備プレート法を、上記モデルにおいて第2の変数として留めた。
【0133】
減少した共培養パラメーター空間によって、上記インビトロモデルは、2つの変数を維持した:ニューロン播種濃度およびニューロン予備プレート法。すべての以下の共培養設計結果は、これら4つの共培養物のうちの1つに集まった:
1)低播種濃度、2時間予備プレート、すなわち「LO 2h」;
2)高播種濃度、2時間予備プレート、すなわち「HI 2h」;
3)低播種濃度、24時間予備プレート、すなわち「LO 24h」;および
4)高播種濃度、24時間予備プレート、すなわち「HI 24h」。
【0134】
マイクロパターン化カバーガラスに、心筋細胞を播種し、続いて、これら共培養仕様に従って、ニューロンを播種した。すべての共培養のための培地を、1日目、2日目、およびその後48時間ごとに交換して、富化した細胞微小環境を維持した。次の工程は、上記共培養集団の各々を特徴付けることであった。
【0135】
(共培養集団の特徴付け)
筋細胞機能に対する上記埋め込まれた神経ネットワークの効果を試験し得る前に、上記共培養集団を特徴付ける必要があった。より低いニューロン播種濃度は、上記高ニューロン播種濃度と比較して、より低いニューロン集団と相関すると仮定した。上記24時間予備プレート法は、その他の望ましくない細胞(ニューロン単離アプローチにおいて記載されるように、主には、グリア細胞および線維芽細胞)をより効率的に濾過して、より純粋なニューロンおよび筋細胞の集団を残すとさらに仮定した。
【0136】
これらの仮定を確認するために、免疫蛍光顕微鏡検査を使用して、各々の共培養集団を特徴付けた。上記のように、免疫蛍光染色を、サルコメアα−アクチニンおよびDAPIに対して行った。β−チューブリンIII(ニューロン特異的マーカー)に対する染色もまた行った。各共培養集団について、10個の視野を画像化して、各々の核を、ニューロン、筋細胞、もしくは他の細胞タイプに属するとして特徴付けた。これらの結果を、図8にまとめる。
【0137】
低ニューロン播種濃度での共培養は、約5〜7% ニューロンを有した(図8B)一方で、高ニューロン播種濃度での共培養は、10% ニューロン集団を有することが見いだされた。上記24h 共培養物は、24%(LO 24h)および20%(HI 24h)集団を有する他の細胞の最小パーセンテージを有し、代わりに、その対応する2h 共培養物は、30%および35%を有した。このことから、、上記24時間予備プレート共培養物が、なぜより大きな筋細胞集団を有したかが説明される(上記2時間予備プレート共培養物の60% 筋細胞集団に対して約70%であった)。すべての共培養物は150万個の筋細胞を播種したが、2h共培養物におけるグリア細胞および線維芽細胞のより大きなパーセンテージが、筋細胞と空間について競合し;24h共培養物においてこれら細胞のより少ないパーセンテージが、より多くの筋細胞が接着し生存することを可能にした。
【0138】
上記共培養物の純度は、上記ニューロン播種濃度とともに、および上記24時間予備プレート法とともに並行して増大した(図8C)。上記LO 2h共培養は、最小の所望の細胞比DCR(ニューロンおよび筋細胞 対 所望でない他の細胞の比)、2未満を有した。上記HI 24h共培養は、最大のDCR、4超を有し、これは、ニューロンおよび心筋細胞の最も純粋な集団を代表した。
【0139】
(電気生理学の特徴付け)
ニューロンとの共培養物における上記心筋細胞電気生理学を特徴付けるために、図9に示されるような光学マッピングシステムを使用した。上記ツールは、124フォトダイオード結合型光ファイバーアレイ(124 photodiode−coupled optical fiber array)を使用し、電圧マッピング記録に有用である。これを、活動電位を記録するために使用した。
【0140】
4日目の共培養物を、Zeiss Axiovert 200倒立顕微鏡のプラットホームに移し、タイロード溶液中、加熱したバス(BioScience Tools)で37℃において維持した。それらを、5分間にわたって、8μMの電位感受性色素、RH237(Invitrogen S−1109)で染色した。次いで、それらを10μM ブレビスタチン(Calbiochem 203390)、興奮−収縮デカップラー(decoupler)で処理して、運動アーチファクト(motion artifact)を除去した。次いで、共培養物を、2Hzにおいて6〜10Vで点刺激し、蛍光記録を距離の離れた視野からとった。上記光学マッピングシステムの光ファイバーは、膜電位、活動電位における変化に正比例する、心筋細胞膜蛍光におけるわずかな変化を翻訳し得る。4日目の各共培養物の1個以上のカバーガラスからの活動電位を、カバーガラス1個あたり4個以上の視野にわたって記録した。共培養カバーガラスと同じように調製し、処理したが、筋細胞のみを播種したコントロールカバーガラスの活動電位もまた、記録した。得られたデータは、空間的かつ時間的な分解を有した。
【0141】
共培養物において記録された心筋細胞活動電位は、筋細胞のみのコントロールと比較して、形態的かつ量的な差異を示した。2つの別個の共培養物活動電位形態が観察された;各々、一方は、迅速な再分極を有し、一方は、短い活動電位持続時間を有した。例えば、図16を参照のこと。
【0142】
さらに、上記4日目の共培養物の各々における心筋細胞活動電位形態は、その4日目のコントロール培養対応物と比較して、より成熟した表現型を有した(図10および図16)。上記コントロールは、予測され得るように、4日目の心筋細胞活動電位のようであったが、ゆっくりとした再分極および長い活動電位持続時間を有した。比較すると、各共培養物の活動電位は、迅速な再分極を示した。このことは、ピーク脱分極後の傾きが急勾配であること、または未成熟心筋細胞活動電位に特徴的な広い三角形のピークと比較して、より狭くより尖ったピークに対応する。上記活動電位の全体的な持続時間は、共培養物純度が増大するにつれて減少するようであった;他の細胞が最も少ない上記24h共培養物は、特に短い活動電位持続時間を有した。共培養物における心筋細胞活動電位形態は、迅速な再分極および短い活動電位持続時間を伴い、従って、上記心筋細胞の増大した電気生理学的な成熟状態に関する項目(rubrics)を満たした。
【0143】
活動電位形態における顕著な定性的差異を定量するために、活性化後に上記活動電位がピークに達し、最大振幅の30%に低下したのにかかった時間を測定した。これは、活動電位持続時間30もしくはAPD30として言及される。同様に、最大振幅の50%および80%に達するまでの時間を、測定した(それぞれ、APD50およびAPD80といわれる)。これらの値を、図11において共培養物条件の各々についてプロットする。
【0144】
これら定量的結果から、上記共培養物のすべてにおいて、より成熟した活動電位表現型が確認される。上記共培養物のすべては、上記コントロール筋細胞より小さなAPD30を有した。このことは、4個のすべての共培養物において、より迅速な再分極を示す。上記HI 2h共培養物は、上記コントロール筋細胞と比較して、より小さなAPD30、APD50およびAPD80を有したが、上記24h共培養物のいずれかほど、差異が明確ではなかった。上記LO 24h共培養物およびHI 24h共培養物において、上記APD30、APD50およびAPD80は、その対応するコントロール筋細胞の値の大きさのせいぜい25%であった。特に、これら2つの共培養物における活動電位持続時間全体は、上記コントロール筋細胞よりも一桁小さく、208.8ms(コントロール)と比較して、69.7ms(LO 24h)および38.9ms(HI 24h)のAPD80であった。上記HI 24h共培養物は、最も迅速な再分極(最小のAPD30およびAPD50によって示される)および最も短い持続時間(APD80によって示される)を示した。上記HI 24hのAPD30、APD50およびAPD80値、11.8ms、16.7msおよび38.9msは、上記コントロール筋細胞の値、52.6ms、72.6msおよび208.8msより遙かに小さい。
【0145】
上記HI 24h共培養心筋細胞の電気生理学は、より未熟な筋細胞よりも、成体筋細胞の類似の値にはるかによく似ている。これらAPD30、APD50およびAPD80の値の定量的比較は、それらの対応する形態が付随した図12において理解される。上記4日目のコントロールのAPDは、発生の間の5日目において決定された値に主に似ている(特に、それぞれ、APD80値 211msおよび250ms);それに対して、上記HI 24h共培養物における4日目の心筋細胞についてのAPD値は、発生において成体心筋細胞APDの値(39msおよび77msをそれぞれ有する小さなAPD80値)により類似している。形態的観点から、上記成熟筋細胞活動電位と本発明者らのHI 24h共培養物活動電位との間の類似性は、顕著である。
【0146】
まとめると、上記の実験は、4つの共培養物のうちのいずれかが、より成熟した心筋細胞活動電位を達成し得、上記HI 24h共培養物が、成熟した成体様の活動電位を示すことを実証する。
【0147】
次に、上記変化した活動電位が、神経パラクリンシグナル伝達因子(遠隔細胞に連絡することを可能にする化学的メッセンジャー)に起因したか否かを決定した。以前の研究から、心筋細胞の収縮特性が、馴化培地(細胞間の化学的メッセンジャーが富化された培地)の存在によって成熟されることが示唆された(Lloyd,T.,Marvin Jr.,W. (1989) Journal of Molecular and Cellular Cardiology 22:333−342)。対照的に、ニューロンと筋細胞との接触は、心筋細胞電気生理学的な成熟を促進するために重要であることが、本明細書で仮定されている。以前の研究は、皮質ニューロン(これは、心筋細胞機能に影響を及ぼすことが公知のパラクリンシグナル伝達因子であるアセチルコリン、エピネフリン、およびノルエピネフリンを分泌しない)を使用しなかったことにも注意すべきである。
【0148】
簡潔には、ニューロン培地は、24〜30時間にわたって神経培養物中で馴化されて、上記培地を神経パラクリンシグナル伝達因子で富化した。次いで、上記培地を40μlナイロンセルストレイナー(BD Bioscience)で濾過し、−20℃において貯蔵した。馴化培地を融解し、3日目の筋細胞のみの培養物に適用し、Lloyd(前出)に記載されるように、48時間にわたって調製した。上記馴化した心筋細胞培養物を、5日目に、上記のように、光学的にマッピングした。
【0149】
上記活動電位持続時間の間の差異は、顕著ではなかった(図13)。上記馴化培地筋細胞は、5日目の筋細胞コントロールのAPD30値、APD50値およびAPD80値79.2ms、122.4ms、および270.9msと比較して、わずかに小さいAPD30値、APD50値およびAPD80値、63.0ms、101.4msおよび257.0msを有した。しかし、全体として、上記活動電位形態および持続時間は、未熟な筋細胞電気生理学(ゆっくりとした再分極および長い活動電位持続時間を有する)を反映した。これら結果は、神経パラクリンシグナル伝達が、上記共培養物の促進された成熟において主な役割を果たしていないことを示す。むしろ、上記結果は、ニューロンと心筋細胞との間の直接的な接触が、細胞成熟を促進するのに重要であることを実証する。
【0150】
心筋細胞の電気生理学的な成熟の別の尺度(伝導速度)を、アッセイした。上記光学マッピングシステムによって提供された空間的および時間的データを使用して、各共培養物カバーガラスのいくつかの視野にわたる伝導速度全体を計算した。異方性配向の軸に対して長手方向および横断方向の伝導速度もまた、計算した。これら結果を、図14にまとめる。
【0151】
伝導速度が、活動電位の成熟状態における増大に比例して増大し得ることを示す明らかな傾向は認められなかった。伝導速度は、心筋細胞の成熟状態とともに増大し、従って、コントロールと比較して、上記共培養物において(特に、上記HI 24h共培養物において)より大きな伝導速度が存在すると予測され得る。しかし、本明細書で示される結果は、増大した心筋細胞の成熟状態と並行して起こる伝導速度の増大が、発生の間に起こる細胞サイズの増大に主に帰することを示す。神経細胞が、共培養物において心筋細胞の細胞容積の増大を刺激する可能性は低いようである。これら結果は、共培養物における心筋細胞の活動電位特性の電気生理学的な成熟状態を示したが、伝導速度に対しては最小限の共培養効果しかないことが示された。
【0152】
(候補薬物試験)
共培養物を、本明細書に記載されるように調製し、イオンチャネルブロッカー(例えば、Naチャネルブロッカー(例えば、テトロドトキシン)、Ca2+チャネルブロッカー(例えば、ニフェジピン))の効果を、図9に示される装置を使用して、上記細胞の活動電位に対して試験した。これら実験の予測される結果および実際の結果は、表2に示される。このことから、光学的にマッピングされている上記神経支配筋細胞の活動電位であることが確認される。
【0153】
【表2】

(等価物)
本発明の実施形態を記載するに当たって、特定の用語法が、明確さの目的で使用される。説明のために、各特定の用語は、類似の目的を達成するために類似の様式で機能するすべての技術的および機能的等価物を少なくとも含むと解釈される。さらに、本発明の特定の実施形態が、複数のシステム要素もしくは方法の工程を含むいくつかの例において、それら要素もしくは工程は、単一の要素もしくは工程で置換され得;同様に、単一の要素もしくは工程は、同じ目的をはたす複数の要素もしくは工程で置換され得る。さらに、種々の特性のパラメーターが、本発明の実施形態について本明細書で特定される場合、それらパラメーターは、1/20、1/10、1/5、1/3、1/2などまで、または別段特定されなければ、その丸め近似値まで上下に調節され得る。さらに、本発明は、その特定の実施形態に関連して示されかつ記載されてきたが、当業者は、形態および詳細における種々の置換および変化が、本発明の範囲から逸脱することなく行われ得ることを理解する;さらに、なお他の局面、機能および利点もまた、本発明の範囲内にある。本願全体を通じて引用されるすべての参考文献(特許および特許出願を含む)の内容は、それら全体が本明細書に参考として援用される。それら参考文献の適切な成分および方法は、本発明およびその実施形態のために選択され得る。なおさらに、背景技術の節において同定された成分および方法は、本開示に不可欠であり、本発明の範囲内で、本開示の他で記載される成分および方法に関連して使用され得るか、またはこれら成分および方法の代わりに使用され得る。
【図5A】

【図5B】

【図5C】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作された神経支配組織を調製するための方法であって、該方法は:
パターン化バイオポリマーを含む固体支持構造体を提供する工程;
未成熟細胞を該パターン化バイオポリマーに播種する工程;
異方性組織が形成されるように、該細胞を培養する工程;
該異方性組織にニューロンを播種する工程;および
該ニューロンを播種した該異方性組織を培養して、神経ネットワークが埋め込まれた異方性組織を形成し、それによって、操作された神経支配組織を調製する工程
を包含する、方法。
【請求項2】
培養細胞の成熟を促進するための方法であって、該方法は:
パターン化バイオポリマーを含む固体支持構造体を提供する工程;
未成熟細胞を該パターン化バイオポリマーに播種する工程;
異方性組織が形成されるように、該細胞を培養する工程;
該異方性組織にニューロンを播種する工程;および
該ニューロンを播種した該異方性組織を培養して、神経ネットワークが埋め込まれた異方性組織を形成し、それによって、培養細胞の成熟を促進する工程
を包含する、方法。
【請求項3】
前記バイオポリマーは、細胞外マトリクスタンパク質、増殖因子、脂質、脂肪酸、ステロイド、糖および他の生物学的に活性な炭水化物、生物学的に得られるホモポリマー、核酸、ホルモン、酵素、薬剤、細胞表面リガンドおよびレセプター、細胞骨格フィラメント、モータータンパク質、絹、およびポリプロテインからなる群より選択されるバイオポリマーである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記バイオポリマーは、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、コラーゲン、フィブリノゲン、絹、および絹フィブロインからなる群より選択される細胞外マトリクスタンパク質である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記バイオポリマーは、ソフトリソグラフィーを介して前記固体支持構造体に沈着させられる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記パターン化バイオポリマーは、寸法約5〜40マイクロメートルを有する特徴を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記バイオポリマーは、前記固体支持構造体上にポリジメチルシロキサンスタンプでプリントされる、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
複数のバイオポリマー構造体を、連続した積み重ねプリントでプリントする工程をさらに包含する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
異なるバイオポリマーが、異なるプリントにおいてプリントされる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
同じバイオポリマーが、異なるプリントにおいてプリントされる、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記固体支持構造体が、カバーガラス、ペトリ皿もしくはマルチウェルプレートである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項12】
前記固体支持構造体が、犠牲ポリマー層および移行ポリマー層をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項13】
前記犠牲ポリマーが、分解性バイオポリマーである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記移行ポリマーが、ポリジメチルシロキサンを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記未成熟細胞が、筋細胞である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項16】
前記筋細胞が、心筋細胞である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記未成熟細胞が、腺細胞もしくは平滑筋細胞である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項18】
前記未成熟細胞が、幹細胞もしくは前駆細胞である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項19】
前記ニューロンが、アセチルコリン、エピネフリンおよび/もしくはノルエピネフリンを分泌しないニューロンである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項20】
前記ニューロンが、皮質ニューロンである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項21】
前記ニューロンが、密度少なくとも約1.5×10/ミリメートルで播種される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項22】
前記筋細胞が、前記ニューロンを播種する前に、約24時間にわたって培養される、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記筋細胞が、前記ニューロンを播種する前に、約2時間、約4時間、約6時間、約8時間、約10時間、約12時間、約14時間、約16時間、約18時間、約20時間、約22時間、約24時間、約26時間、約28時間、約30時間、約32時間、約34時間、約36時間、および約48時間からなる群より選択される期間にわたって培養される、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
前記固体支持構造体が、光学シグナル捕捉デバイス;および光学シグナルの変化を計算するための画像処理ソフトウェアを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項25】
請求項1に記載の方法を介して形成された複数の組織を積み重ねて、多層組織足場を生成する工程をさらに包含する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項26】
前記組織足場における生細胞を増殖させて、三次元異方性心筋層を形成する工程をさらに包含する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記組織足場における生細胞を増殖させて、置換器官を生成する工程をさらに包含する、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記バイオポリマーを、三次元インプラントの周りに巻き付ける工程、およびその後、該インプラントを生物に挿入する工程をさらに包含する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項29】
生物学的活性をアッセイするための方法であって、該方法は:
請求項1に記載の方法に従って調製された操作された神経支配組織を提供する工程;および
該組織の活性を評価し、それによって、生物学的活性をアッセイする工程
を包含する、方法。
【請求項30】
生物学的活性を評価する工程が、細胞の収縮性、細胞の機械的−電気的共役、細胞の機械的−化学的共役、および/もしくは種々の程度の基材剛性への細胞の応答を評価する工程を包含する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
組織機能を調節する化合物を同定するための方法であって、該方法は:
請求項1に記載の方法に従って調製された、操作された神経支配組織を提供する工程;
該組織と、試験化合物とを接触させる工程;ならびに
該試験化合物の存在下および非存在下で組織機能に対する該試験化合物の効果を決定し、それによって、組織機能を調節する化合物を同定する工程であって、ここで該試験化合物の非存在下での該組織機能と比較して、該試験化合物の存在下での該組織機能の調節は、該試験化合物が、組織機能を調節することを示す、工程
を包含する、方法。
【請求項32】
組織疾患を処置もしくは予防するために有用な化合物を同定するための方法であって、該方法は:
請求項1に記載の方法に従って調製された、操作された神経支配組織を提供する工程;
該組織と試験化合物とを接触させる工程;ならびに
該試験化合物の存在下および非存在下での組織機能に対する該試験化合物の効果を決定し、それによって、組織疾患を処置もしくは予防するための有用な化合物を同定する工程であって、ここで該試験化合物の非存在下での該組織機能と比較して、該試験化合物の存在下での該組織機能の調節は、該試験化合物が組織機能を調節することを示す、工程
を包含する、方法。
【請求項33】
前記組織機能が、生体力学的活性である、請求項31または32に記載の方法。.
【請求項34】
前記生体力学的活性が、収縮性、細胞ストレス、細胞膨潤、および剛性からなる群より選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記組織機能が、電気生理学的活性である、請求項31または32に記載の方法。
【請求項36】
前記電気生理学的活性が、活動電位形態、活動電位持続時間、伝導速度、カルシウム波伝播速度、カルシウム波形態、およびカルシウムレベルからなる群より選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
ペースメーカーを製造する方法であって、該方法は:
基底層を提供する工程;
犠牲ポリマー層を該基底層に被覆する工程;
該犠牲ポリマー層に、該基底層より可撓性の高い可撓性ポリマー層を被覆する工程;
該可撓性ポリマー層に細胞を播種する工程;
異方性組織が形成されるように、該細胞を培養する工程;
該異方性組織にニューロンを播種する工程;
該ニューロンを播種した該異方性組織を培養して、神経ネットワークが埋め込まれた異方性組織を形成する工程;および
該可撓性ポリマー層を該基底層から外して、組織構造体を含むペースメーカー移植片を生成する工程であって、ここで該組織構造体は、心外膜アタッチメントのために構成され、貼付組織を介して活動電位を伝播するようにさらに構成されている、工程、
を包含する、方法。
【請求項38】
前記細胞が、洞房結節に由来する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記細胞を洞房結節から採取する工程をさらに包含する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記細胞が、房室結節に由来する、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
前記細胞を房室結節から採取する工程をさらに包含する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
徐脈性不整脈を有する患者を処置する方法であって、該方法は、請求項37に記載の方法に従って調製されたペースメーカーを、該被験体の心外膜に貼付し、それによって、徐脈性不整脈を有する該被験体を処置する工程を包含する、方法。
【請求項43】
房室結節伝導障害を有する被験体を処置する方法であって、該方法は、請求項37に記載の方法に従って調製されたペースメーカーを、AV結節がバイパスされるように該被験体の心外膜に貼付する工程を包含する、方法。

【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2013−520168(P2013−520168A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553935(P2012−553935)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【国際出願番号】PCT/US2011/024029
【国際公開番号】WO2011/102991
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(502072134)プレジデント アンド フェロウズ オブ ハーバード カレッジ (92)
【氏名又は名称原語表記】President and Fellows of Harvard College
【Fターム(参考)】