説明

操舵装置

【課題】 車種を問わず、ケーブルケースのケース外筒構成体を車両本体に対して回り止めすることが可能な操舵装置を提供する。
【解決手段】 本発明の操舵装置10によれば、ゴムブーツ120の上側部分が、ケーブルケース39のケース外筒構成体41に嵌合固定され、ゴムブーツ120の下側部分が、その周方向の全体に亘って車両本体14のダッシュボード100に固定されるので、従来、V字形のワイヤでケース外筒構成体の2箇所を固定した場合に比べて、ケース外筒構成体41を強固に回り止めすることができる。そして、ケース外筒構成体41とダッシュボード100との間が比較的離れた車種でも、従来のV字形のワイヤのような問題が発生しなくなる。即ち、本発明によれば、車種を問わず、ケーブルケース39のケース外筒構成体41を車両本体14に対して回り止めすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドルから下方に延びたステアリングシャフトの中間部分にアクチュエータを備え、そのアクチュエータが、ステアリングシャフトの上側部分と下側部分との間の回転の伝達比を、運転状況に応じて変更する操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の操舵装置に備えたアクチュエータの上面には、二重筒構造のケーブルケースが備えられ、そのケーブルケースの内側を構成するケース内筒構成体がアクチュエータに固定され、ケーブルケースの外側を構成するケース外筒構成体が車両本体に固定されている。また、ケーブルケースの内部にはフラットケーブルを巻回してなるスパイラルケーブルが収容され、そのスパイラルケーブルの一端がケース内筒構成体に固定されかつ、他端がケース外筒構成体に固定されている。さらに、ケース外筒構成体と車両本体との間には、スパイラルケーブルに導通接続された外部ケーブルが差し渡され、これら外部ケーブル及びスパイラルケーブルを通してアクチュエータに給電が行われる。そして、ハンドルが操舵されたときには、ケース外筒構成体とケース内筒構成体との間でスパイラルケーブルの巻回状態が変化し、外部ケーブルにはハンドル操作による負荷がかからないようになっている。これにより、ハンドル操作に対するケーブルの反力を抑えかつケーブルの耐久性の向上を図っている。
【0003】
図13には操舵装置の具体的な従来例が示されている。この操舵装置では、外部ケーブル1の途中部分にクリップ2が設けられ、このクリップ2が車両本体(図示せず)に固定されていた。そして、そのクリップ2に一体形成されたワイヤ係止部3からワイヤ4をV字形にして延ばし、そのV字形のワイヤ4の各先端をケース外筒構成体5の外周面の2箇所に固定することで、ケース外筒構成体5を車両本体に対して回り止めしていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の操舵装置では、クリップ2とケース外筒構成体5との間を比較的近く設定することが可能な車種では、ワイヤ4におけるV字の角度が広くなってケース外筒構成体5を回り止めすることができるが、クリップ2とケース外筒構成体5との間を遠くせざるを得ない車種では、ワイヤ4が長くなってV字の角度が狭くなり、ケース外筒構成体5を回り止めすることができなかった。
【0005】
なお、上記した従来の構造を記載した先行技術文献は、見つからなかった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、車種を問わず、ケーブルケースのケース外筒構成体を車両本体に対して回り止めすることが可能な操舵装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係る操舵装置は、ハンドルから下方に延びかつ車両本体のダッシュボードを貫通したステアリングシャフトの中間部分に設けられ、そのステアリングシャフトの上側部分と下側部分との間の回転の伝達比を、運転状況に応じて変更するアクチュエータと、アクチュエータの上面に配置された二重筒構造のケーブルケースと、ケーブルケースの内側を構成しかつアクチュエータに固定されたケース内筒構成体と、ケーブルケースの外側を構成しかつケース内筒構成体に対して相対回転可能なケース外筒構成体と、アクチュエータに給電を行うために設けられ、ケーブルケースの内部に巻回した状態で収容されると共に、一端がケース内筒構成体に固定されかつ他端がケース外筒構成体に固定されたスパイラルケーブルと、アクチュエータの側面を覆った筒形のゴムブーツとを備えた操舵装置において、ゴムブーツの上側部分を、ケース外筒構成体に嵌合固定し、ゴムブーツの下側部分を、ダッシュボードに固定したところに特徴を有する。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の操舵装置において、ゴムブーツが内側に嵌合固定される筒部と、筒部から側方に張り出されてダッシュボードに固定される平板部とを有するブーツ挿入ブラケットを設け、ゴムブーツの外面のうちブーツ挿入ブラケットに挿入される部分に、金属筒を固着したところに特徴を有する。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の操舵装置において、ゴムブーツのうちケース外筒構成体に対する固定部分とダッシュボードに対する固定部分との間に、ゴムブーツの周方向に延びた稜線を有する屈曲部を形成したところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0010】
[請求項1の発明]
請求項1の構成では、ゴムブーツの上側部分が、ケース外筒構成体に嵌合固定され、ゴムブーツの下側部分が、車両本体のダッシュボードに固定されるので、従来、V字形のワイヤでケース外筒構成体の2箇所を固定した場合に比べて、ケース外筒構成体を強固に回り止めすることができる。そして、ケース外筒構成体とダッシュボードとの間が比較的離れた車種でも、従来のV字形のワイヤで起きた問題が発生しなくなる。即ち、本発明によれば、車種を問わず、ケーブルケースのケース外筒構成体を車両本体に対して回り止めすることが可能になる。
【0011】
[請求項2の発明]
請求項2の構成によれば、ゴムブーツの外面に固着された金属筒がブーツ挿入ブラケットの筒部の内面に摺接し、スムーズにゴムブーツとブーツ挿入ブラケットとの組付作業を行うことができる。また、金属筒によってゴムブーツが補強されるので、ゴムブーツとブーツ挿入ブラケットとを強固に固定することができる。
【0012】
[請求項3の発明]
請求項3の構成によれば、アクチュエータをステアリングシャフトの中間部分に組み付ける際に、ゴムブーツがダッシュボード又はブーツ挿入ブラケットに当接しても、ゴムブーツが屈曲部において容易に軸方向に変形するので、アクチュエータとステアリングシャフトとの組付作業の効率が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る一実施形態を図1〜図12に基づいて説明する。
図1には、本発明に係る操舵装置10を備えた車両が示されている。この車両に備えた1対の前輪11,11(本発明に係る「転舵輪」に相当する)の間には、転舵装置69が設けられている。転舵装置69は、筒状のラックケース12C内に挿通したラック12にピニオン15が噛合した構造になっている。また、ラックケース12Cは、車両本体14に固定され、ラック12の両端部がタイロッド13,13を介して各前輪11,11に連結されている。そして、図2に示すように、ピニオン15とハンドル17との間が、ステアリングシャフト80によって連結され、そのステアリングシャフト80の中間部分にアクチュエータ18が設けられている。
【0014】
具体的には、ステアリングシャフト80は、ハンドル17側の第1ステアリングシャフト74(本発明に係る「ステアリングシャフトの上側部分」に相当する)と、転舵装置69側の第2ステアリングシャフト70(本発明に係る「ステアリングシャフトの下側部分」に相当する)とからなり、アクチュエータ18がそれら第1及び第2のステアリングシャフト74,70の間に連結されている。第2ステアリングシャフト70は、その中間部にユニバーサルジョイント部71を備え、ユニバーサルジョイント部71より下側のベース軸73Aがピニオン15の同軸上に連結され、上側の連結スリーブ73Bがベース軸73Aに対して傾動可能となっている。
【0015】
ユニバーサルジョイント部71は、ベース軸73Aの上端部と連結スリーブ73Bの下端部とを二股構造とし、ベース軸73Aに両端を軸支された第1軸73Cと、連結スリーブ73Bに両端を軸支された第2軸73Dとを直交させた構造になっている。これにより、ベース軸73Aと連結スリーブ73Bとの回転軸同士を交差させた状態にして、それらベース軸73Aと連結スリーブ73Bとの間で回転を伝達することができる。また、連結スリーブ73Bは、円筒状をなし、その内面にはスプラインが形成されている。さらに、連結スリーブ73Bの先端部には、連結スリーブ73Bを縮径させるためのボルト72が備えられている。
【0016】
図2において符号75は、コラムアッシであって、車両本体14に備えた図示しないインパネリーンフォースに取り付けられている。コラムアッシ75は、一般的な車両に適用されているように、車両本体14に対して上下方向に角度を変更することができる。第1ステアリングシャフト74は、このコラムアッシ75に回転可能に軸支されている。そして、第1ステアリングシャフト74のうちコラムアッシ75の上端面から突出した部分(図3参照)には、ハンドル17が着脱可能に取り付けられている。また、ハンドル17には、エアバッグ17Aが備えられている。
【0017】
図5に示すように、アクチュエータ18は、差動式の減速機20とその減速機20を駆動するためのモータ25とを備えている。減速機20には、1対のアウターリング21,22が軸方向に並べて備えられている。これら両アウターリング21,22の内周面には、細かい複数の歯が形成されると共に、一方のアウターリング22の歯数が、他方のアウターリング21の歯数より例えば1つだけ少なくなっている。また、両アウターリング21,22の内側に共通してインナーリング23が嵌合され、そのインナーリング23の外周面には、両アウターリング21,22の歯に共通して噛合可能な細かい複数の歯が備えられている。さらに、インナーリング23は、アウターリング21,22の中心から僅かに偏心して配置され、インナーリング23の一部の歯と、アウターリング21,22の一部の歯とが噛合している。
【0018】
モータ25は、減速機20の上側同軸上に配置されている。そして、モータ25のロータ26に減速機20のインナーリング23が一体回転可能に連結されている。そして、モータ25のステータ28と、上側のアウターリング21は、アッシスリーブ19内に嵌合固定されている。
【0019】
一方、下側のアウターリング22は、アッシスリーブ19に対して回転可能となっている。そして、モータ25によりインナーリング23が回転駆動されると、下側のアウターリング22が、上側のアウターリング21に対して歯数が1つ少ない分だけ先に回転する。即ち、インナーリング23の一回転に対して、アウターリング22が1歯分だけ僅かに回転し、これにより、モータ25とアウターリング22との間で減速効果を得ることができる。
【0020】
アウターリング22には、出力側連結軸16が連結されている。具体的には、図4に示すように、出力側連結軸16は、パイプ状の第1シャフト構成体16Aと、その第1シャフト構成体16Aの下端部に嵌合された第2シャフト構成体16Bとからなり、その第1シャフト構成体16Aの上端部には連結円盤24が備えられている。そして、この連結円盤24がアウターリング22に一体回転可能に固定されている。
【0021】
また、第2シャフト構成体16Bの上端部には、摩擦係止部16Cが設けられ、その摩擦係止部16Cが第1シャフト構成体16Aの下端部内面に押し付けられている。通常は、この摩擦係止部16Cと第1シャフト構成体16Aの下端部内面との間の摩擦係止により、第1シャフト構成体16Aの下端部分に第2シャフト構成体16Bの上端部が保持され、出力側連結軸16の軸方向に所定値以上の軸力がかかると、第2シャフト構成体16Bが第1シャフト構成体16Aの奥部に押し込まれて、出力側連結軸16全体が短くなる。なお、摩擦係止部16Cによる摩擦係止力は、摩擦係止部16Cに備えたセット螺子16Dの螺合操作によって変更することができる。
【0022】
図5に示すように、アッシスリーブ19の下端開口には、閉塞盤85が装着されている。閉塞盤85の中心部を出力側連結軸16が貫通している。なお、閉塞盤85のうち出力側連結軸16の貫通部分の内面には、出力側連結軸16に密着したオイルシール82が備えられている。
【0023】
モータ25の上端部には、ロータ26の回転位置を検出するための位置センサ31が設けられている。また、ロータ26の中心に備えた回転シャフト26Sは、モータ25の上端面から上方に突出しており、その突出部分にはロック円盤32が一体回転可能に固定されている。さらに、図6に示すように、モータ25の上端面における外縁寄り位置からは支柱34が起立しており、その支柱34にはロックアーム33が回動可能に軸支されている。このロックアーム33は、トーションバネ33Cによって、ロック円盤32に係合するように付勢されると共に、モータ25の上面に備えたソレノイド35を励磁することで、ロック円盤32との係合を解除することができる。そして、非常時にはソレノイド35の励磁が停止されて、ロータ26がロックされる。
【0024】
なお、モータ25の上面には、モータ25の巻線及びソレノイド35用の端子金具25Xと、位置センサ31用の端子金具25Yとが露出して設けられている。
【0025】
図5に示すように、モータ25の上端部は連結ハウジング36によって覆われている。連結ハウジング36は、モータ25の上面に対向した天板部36Aと、天板部36Aから下方に延びた大径円筒部36Bと、天板部36Aから上方に延びた小径円筒部36Cとを備えてなる。そして、大径円筒部36Bの下端部はアッシスリーブ19の上端部に嵌合固定されている。
【0026】
また、図6に示すように、大径円筒部36Bには、その一部を切除して作業窓36Wが形成されている。そして、作業窓36Wを介してモータ25の上面の端子金具25X,25Yを外側に臨ませることができる。なお、この作業窓36Wは、後述する内側筒部材43によって塞がれる。
【0027】
図5に示すように、小径円筒部36Cの内側底面には、入力側連結軸78が固定されている。具体的には、入力側連結軸78は、中間部にユニバーサルジョイント部79を備え、ユニバーサルジョイント部79より下側のベース部76と上側の連結スリーブ77とからなる。ベース部76はU字形になっており、そのベース部76の下部に備えた台座の下面からはエンボス76Eが突出している。そして、このエンボス76Eが、小径円筒部36Cの内側底面に形成された中心孔に嵌合されて、ベース部76がアクチュエータ18全体の軸上に芯だしされている。
【0028】
ユニバーサルジョイント部79は、ベース部76に両端部を軸支された第1軸76Aと、その第1軸76Aに直交しかつ回転可能に軸支された第2軸76Bとを備え、その第2軸76Bに連結スリーブ77の下端部が固定されている。これにより、ベース部76と連結スリーブ77との間で屈曲した状態を保持しつつ、それらベース部76と連結スリーブ77とが一体回転することができる。また、連結スリーブ77には、円筒空間が備えられ、その内面にはスプラインが形成されている。そして、この連結スリーブ77の内側に第1ステアリングシャフト74が嵌合されてスプライン結合される。
【0029】
連結ハウジング36の上部には、ケーブルケース39が組み付けられている。ケーブルケース39は、ケース内筒構成体40とケース外筒構成体41とを相対回転可能に嵌合してなる。ケース内筒構成体40は、連結ハウジング36の小径円筒部36Cに嵌合固定された円筒状をなし、その下端部から円形底壁40Aを張り出している。また、ケース内筒構成体40における円形底壁40Aの下面には、内側筒部材43の上端部が固着され、その内側筒部材43が、前述の如く連結ハウジング36の作業窓36Wを塞いでいる。
【0030】
一方、ケース外筒構成体41は、円形底壁40Aより大きな内径を有してケース内筒構成体40全体を囲む略円筒状をなし、そのケース外筒構成体41の周面の一部には、図7に示すように電線導出部41Dが外側に膨出している。また、ケース外筒構成体41の上端開口は、図5に示すように、円環蓋42によって閉塞されている。さらに、円環蓋42の内縁部からは、下方に向けて円筒壁42Aが垂下されており、その円筒壁42Aの下端部がケース内筒構成体40の上端内側に遊嵌されている。
【0031】
ケース外筒構成体41の下端部からは、円形底壁40Aの下面に重なるように円環形底壁41Aが内側に張り出され、その円環形底壁41Aの内縁部から下方に向けて略円筒状のブーツ保持筒41Cが垂下されている。
【0032】
図6に示すように、ブーツ保持筒41Cのうち連結ハウジング36の作業窓36Wに対応した部分には、そのブーツ保持筒41Cの一部を切除して作業窓41Wが形成されている。また、ブーツ保持筒41Cの外面には板金リング44が嵌合されている。この板金リング44により作業窓41Wを塞ぐことができる。さらに、図5に示すように、ブーツ保持筒41Cの下縁部からは側方に鍔部41Tが張り出され、ここに板金リング44の下端部が係止している。
【0033】
図7に示すように、ケース内筒構成体40とケース外筒構成体41とに挟まれたドーナッツ状の空間には、スパイラルケーブル45が収容されている。具体的には、スパイラルケーブル45は、フラットケーブルをケース内筒構成体40の円筒部分の周りに巻回してなり、そのスパイラルケーブル45の内側の端末部がケース内筒構成体40に固定され、スパイラルケーブル45の外側の端末部がケース外筒構成体41の電線導出部41Dに固定されている。また、電線導出部41Dの内部では、スパイラルケーブル45に備えた複数の電路に外部ケーブル52が接続され、その外部ケーブル52がケーブルケース39の外部に導出されている。
【0034】
図8には、ケーブルケース39の下面図が示されている。同図に示すように、ケーブルケース39のうちケース内筒構成体40の円形底壁40Aには、モータ25の端子金具25X、位置センサ31用の端子金具25Yに対応した複数の端子金具40X,40Yが備えられている。これら端子金具40X,40Yは、ケース内筒構成体40の円形底壁40Aを貫通し、スパイラルケーブル45に備えた複数の電路に接続されている。なお、連結ハウジング36の天板部36Aには、図9に示すように、端子金具40X,40Y(図8参照)を上下方向で挿通させるための切り欠き36Fが形成されている。
【0035】
連結ハウジング36にケーブルケース39を装着すると、図5に示すようにケース内筒構成体40の端子金具40X,40Yがモータ25の端子金具25X、位置センサ31用の端子金具25Yに突き合わされる。このとき、作業窓36W,41Wを開放した状態にしておき、作業窓36W,41Wを通して、端子金具40X,40Yと端子金具25X,25Yとを接続する。このように、作業窓36W,41Wを設けたことにより、端子金具25X,25Y,40X,40Y同士を容易に接続することができる。また、接続作業を終えたら、前記した内側筒部材43及び板金リング44を所定箇所に装着して作業窓36W,41Wを塞げばよい。
【0036】
ケース外筒構成体41のブーツ保持筒41Cには、第1ゴムブーツ46が取り付けられている。第1ゴムブーツ46は、両端開放の筒形になっており、その上端部に備えた上端嵌合部46Aが、ブーツ保持筒41Cに嵌合された板金リング44の外側に嵌合され、さらに、その上端嵌合部46Aの外側から締め付けリング47を締め付けて、第1ゴムブーツ46がケース外筒構成体41に固定されている。なお、上端嵌合部46Aの上端部には抜け止めを強固に行うための鍔部46Bが側方に向けて張り出されている。
【0037】
第1ゴムブーツ46の下端部には、上端嵌合部46Aと略同径の下端嵌合部46Cが形成され、上下の嵌合部46A,46Cの間が、それら嵌合部46A,46Cより径が大きくなった本体筒部46Dになっている。本体筒部46Dは、軸方向の中央部分の径が最大になるように、1対のテーパ筒を上下に並べて接合した構造をなし、その本体筒部46Dの軸方向の中央部分には、稜線46Rを有する屈曲部46Kが形成されている。また、本体筒部46Dのうち下端嵌合部46Cとの境界部分の内側には周方向に複数の係止突部46Lが形成されている。具体的には、係止突部46Lは、図10に示すように、第1ゴムブーツ46の周方向を6等配する位置に形成されている。
【0038】
図5に示すように、下端嵌合部46Cの下縁部からは、側方に向けて鍔部46Eが張り出されている。下端嵌合部46Cの内周面には、内側金属筒48が嵌合されている。内側金属筒48は、その上端部から側方に張り出した鍔部48Aを下端嵌合部46Cの上縁部に係止して抜け止めされている。また、図10に示すように、鍔部48Aには、周方向を6等配する位置に凹部48Dが形成され、これら凹部48Dが前記した第1ゴムブーツ46の係止突部46Lと凹凸係合して、内側金属筒48が第1ゴムブーツ46に回り止めされている。
【0039】
図5に示すように、内側金属筒48は、その上側半分が下端嵌合部46C内に嵌合され、下側半分が下端嵌合部46Cから下方に突出している。そして、その内側金属筒48の下側半分に、第2ゴムブーツ49の上端部が嵌合されかつ加硫接着されている。これにより、第1及び第2のゴムブーツ46,49が一体固定され、これら第1及び第2のゴムブーツ46,49により、本発明に係るゴムブーツ120が構成されている。
【0040】
第2ゴムブーツ49は、両端開放の筒形になっており、上から下に向かって順番に、円筒状の本体部49Aと、蛇腹部49Bと、シール部49Cとを備えている。本体部49Aの外面には、外側金属筒50(本発明の「金属筒」に相当する)が嵌合かつ加硫接着されている。外側金属筒50の上端部からは、側方に鍔部50Aが張り出されており、その鍔部50Aの上方に重なるようにして本体部49Aの上端部から側方に鍔部49Dが張り出している。
【0041】
蛇腹部49Bは、全体として下方に向かうに従って内径が小さくなっており、軸方向の途中に複数の屈曲溝49Eを備えた所謂蛇腹構造になっている。シール部49Cは、出力側連結軸16の外周面に密着している。そして、ハンドル17の操舵に連動して出力側連結軸16が回転したときには、シール部49Cが出力側連結軸16に摺接する。このように、アクチュエータ18全体を第1ゴムブーツ46及び第2ゴムブーツ49で覆いかつ第2ゴムブーツ49の下端部のシール部49Cを出力側連結軸16に摺接可能に密着させたことにより、防水効果及び防塵効果のみならず、アクチュエータ18の動作音に対する防音効果も奏する。
【0042】
図11に示すように、外側金属筒50の外側には、アクチュエータ18を車両本体14のダッシュボード100に固定するためのブーツ挿入ブラケット101が嵌合装着されている。ブーツ挿入ブラケット101は、ゴム製であって、ダッシュボード100に形成された貫通孔100Aの開口縁にあてがわれる平板部103から筒部102を斜め上方に起立した構造になっている。図3に示すように、平板部103は、その周方向の全体が複数のボルトによりダッシュボード100に固定されている。そして、筒部102の内部にアクチュエータ18における外側金属筒50が嵌合され、外側金属筒50の鍔部50Aが筒部102の上端面に当接して位置決めされている。また、筒部102の外周面の上端側には、固定リング105が装着されており、筒部102の内側に外側金属筒50を配置した状態で固定リング105を締め付けることで、抜け止めかつ回り止めされている。
【0043】
上記のように構成された操舵装置10は、以下のようにして車両本体14に組み付けられる。アクチュエータ18を組み付ける前に、予め車両本体14の底部に転舵装置69を固定しかつインパネリーンフォースにコラムアッシ75を固定しておく。また、ブーツ挿入ブラケット101を、ダッシュボード100に固定しておく。これにより、第1と第2のステアリングシャフト74,70が、ダッシュボード100を介して互いに向き合った状態になる。なお、ハンドル17は、コラムアッシ75の第1ステアリングシャフト74から離脱しておく。
【0044】
次いで、ブーツ挿入ブラケット101の筒部102にアクチュエータ18を挿入する。このとき、ゴムブーツ120の外面に固着された外側金属筒50が筒部102の内面に摺接し、スムーズにゴムブーツ120とブーツ挿入ブラケット101との組付作業を行うことができる。そして、ブーツ挿入ブラケット101の下端から突出した出力側連結軸16をダッシュボード100の貫通孔100A内に挿入して、第2ステアリングシャフト70の上端部にスプライン結合する。この状態で、ブーツ挿入ブラケット101の外面に固定リング105を締め付けて、アクチュエータ18のゴムブーツ120をブーツ挿入ブラケット101に固定(即ち、回り止めかつ抜け止め)する。ここで、ゴムブーツ120は外側金属筒50によって補強されているので、ゴムブーツ120とブーツ挿入ブラケット101とを強固に固定することができる。
【0045】
次いで、図12に示すように、アクチュエータ18を下方に押し下げる。具体的には、ケーブルケース39を把持して下方に押し下げればよい。すると、第1ゴムブーツ46の屈曲部46Kが押し潰されて第1ゴムブーツ46が圧縮変形し、第1及び第2のゴムブーツ46,49に対してアクチュエータ18が下方に移動する。このように、ゴムブーツ120に屈曲部46Kを設けたことで、ゴムブーツ120が容易に軸方向に変形し、アクチュエータ18のステアリングシャフト80への組付作業を効率よく行うことができる。
【0046】
次いで、アクチュエータ18を下方に移動した状態で、入力側連結軸78の連結スリーブ77と、第1ステアリングシャフト74とを突き合わせる。そして、アクチュエータ18を上方に移動して、第1ステアリングシャフト74の下端部を連結スリーブ77の内部に挿入する。これにより、アクチュエータ18の入力側連結軸78に第1ステアリングシャフト74がスプライン結合される。そして、第2ステアリングシャフト70に備えたボルト72を締め付けて、第2ステアリングシャフト70に出力側連結軸16を抜け止めする。
【0047】
最後に、アクチュエータ18から導出された外部ケーブル52を、図1に示したECU60(ECUは、Electronic Control Unitの略である。)に接続する。以上によりアクチュエータ18が車両本体14に組み付けられ、操舵装置10が完成する。
【0048】
このように構成された操舵装置10を搭載した車両では、ECU60が運転状況に応じてアクチュエータ18を駆動制御し、第1と第2のステアリングシャフト74,70の間で伝達される回転の伝達比を変更する。具体的には、ECU60に備えたROM63(図1参照)には、車速と伝達比とを対応させたマップ(図示せず)が記憶されている。そして、ECU60は、車速センサ62(図1参照)の検出結果とこのマップに基づいて伝達比を決定する。そして、操舵角センサ61にて検出したハンドル17の操舵角と伝達比とから出力側連結軸16の目標の回転角を演算し、出力側連結軸16の実際の回転角を目標の回転角に一致させるために、外部ケーブル52及びスパイラルケーブル45を通してモータ25に駆動電流を流し、ロータ26を回転させる。
【0049】
なお、マップには、車速が大きくなるに従って伝達比が小さくなるように設定されている。これにより、低速域では、僅かなハンドル操作で前輪11,11を切ることができるようになり、旋回性が向上する。それとは逆に高速域では、所謂、急ハンドルが規制され、安定した走行が可能になる。
【0050】
ところで、ハンドル17を回転させると、ゴムブーツ120を介して車両本体14のダッシュボード100に固定されたケース外筒構成体41と、アクチュエータ18に固定されたケース内筒構成体40とが相対回転する。すると、これらケース外筒構成体41とケース内筒構成体40とに両端を固定されたスパイラルケーブル45の巻回状態が変化する。また、外部ケーブル52は、車両本体14とケース外筒構成体41との間で、ハンドル操作による負荷を受けない状態に保持される。ここで、本実施形態では、ゴムブーツ120の上側部分が、ケーブルケース39のケース外筒構成体41に嵌合固定され、ゴムブーツ120の下側部分が、その周方向の全体に亘って車両本体14のダッシュボード100に固定されているので、従来、V字形のワイヤでケース外筒構成体の2箇所を固定した場合に比べて、ケース外筒構成体41を強固に回り止めすることができる。そして、ケース外筒構成体41とダッシュボード100との間が比較的離れた車種でも、従来のV字形のワイヤで起きた問題が発生しなくなる。即ち、本実施形態の構成によれば、車種を問わず、ケーブルケース39のケース外筒構成体41を車両本体14に対して回り止めすることが可能になる。
【0051】
なお、本実施形態の車両は、衝突してハンドル17が強く押されると、コラムアッシ75がインパネリーンフォースから離脱し、アクチュエータ18が下方に押され、出力側連結軸16が圧縮変形する。これにより、アクチュエータ18と共にハンドル17が運転者から離れる方向に移動し、運転者の前方の空間を広くすることができる。
【0052】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0053】
(1)前記実施形態では、ゴムブーツ120がブーツ挿入ブラケット101を介してダッシュボード100に固定されていたが、例えばゴムブーツ120の外周面からフランジを張り出し、そのフランジをダッシュボード100における貫通孔100Aの開口縁に固定してもよい。
【0054】
(2)前記実施形態では、ゴムブーツ120の上端部が締め付けリング47によってケース外筒構成体41に固定されていたが、接着剤によってゴムブーツ120の上端部をケース外筒構成体41に嵌合固定してもよい。
【0055】
(3)前記実施形態では、ゴムブーツ120における下端部の開口縁が、アクチュエータ18の出力側連結軸16に密着していたが、ゴムブーツ120における下端部の開口縁と出力側連結軸16との間を開放した構造にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態に係る操舵装置を備えた車両の概念図
【図2】操舵装置の側面図
【図3】操舵装置の斜視図
【図4】操舵装置の側断面図
【図5】操舵装置の部分拡大断面図
【図6】図5のA−A切断面における断面図
【図7】図5のB−B切断面における断面図
【図8】ケーブルケースの平面図
【図9】ケーブルケースの底面図
【図10】図5のC−C切断面における断面図
【図11】ゴムブーツがダッシュボードに取り付けられた状態の側断面図
【図12】ゴムブーツが圧縮変形した状態の側断面図
【図13】従来の操舵装置の平面図
【符号の説明】
【0057】
10 操舵装置
11 前輪(転舵輪)
14 車両本体
16A 第1シャフト構成体
16B 第2シャフト構成体
17 ハンドル
18 アクチュエータ
39 ケーブルケース
40 ケース内筒構成体
41 ケース外筒構成体
45 スパイラルケーブル
46 第1ゴムブーツ
49 第2ゴムブーツ
50 外側金属筒
70 第2ステアリングシャフト
74 第1ステアリングシャフト
80 ステアリングシャフト
100 ダッシュボード
101 ブーツ挿入ブラケット
120 ゴムブーツ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドルから下方に延びかつ車両本体のダッシュボードを貫通したステアリングシャフトの中間部分に設けられ、そのステアリングシャフトの上側部分と下側部分との間の回転の伝達比を、運転状況に応じて変更するアクチュエータと、
前記アクチュエータの上面に配置された二重筒構造のケーブルケースと、
前記ケーブルケースの内側を構成しかつ前記アクチュエータに固定されたケース内筒構成体と、
前記ケーブルケースの外側を構成しかつ前記ケース内筒構成体に対して相対回転可能なケース外筒構成体と、
前記アクチュエータに給電を行うために設けられ、前記ケーブルケースの内部に巻回した状態で収容されると共に、一端が前記ケース内筒構成体に固定されかつ他端が前記ケース外筒構成体に固定されたスパイラルケーブルと、
前記アクチュエータの側面を覆った筒形のゴムブーツとを備えた操舵装置において、
前記ゴムブーツの上側部分を、前記ケース外筒構成体に嵌合固定し、
前記ゴムブーツの下側部分を、前記ダッシュボードに固定したことを特徴とする操舵装置。
【請求項2】
前記ゴムブーツが内側に嵌合固定される筒部と、前記筒部から側方に張り出されて前記ダッシュボードに固定される平板部とを有するブーツ挿入ブラケットを設け、
前記ゴムブーツの外面のうち前記ブーツ挿入ブラケットに挿入される部分に、金属筒を固着したことを特徴とする請求項1に記載の操舵装置。
【請求項3】
前記ゴムブーツのうち前記ケース外筒構成体に対する固定部分と前記ダッシュボードに対する固定部分との間に、前記ゴムブーツの周方向に延びた稜線を有する屈曲部を形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の操舵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−69433(P2006−69433A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−257252(P2004−257252)
【出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(302066630)株式会社ファーベス (138)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【出願人】(000003470)豊田工機株式会社 (198)
【Fターム(参考)】