説明

攪拌タンク反応器及び方法

サンプル調製またはバイオマス培養または処理等の処理及び随意的にはサンプル精製用の容器が提供される。ある実施例において、リアクターはバイオリアクターであって、発生する固形物を原因とし得る詰まりを低減または排除する正接流れフィルタを模した攪拌セル装置を含む。ある実施例において、前記固形物は関心生体分子に結合するポリマー及び不純物を含む如き、析出物または凝縮物またはビードを含む。方法発明様相に於いて、開示する各実施例は、細胞培養液から得た関心生体分子の精製及び分離ステップを含む。当該方法には、容器内でのサンプル調製または処理の実施、バイオマス培養、培養液からの関心生体分子の析出または凝縮による固形物発生攪拌による当該固形物の沈降防止、関心生体分子の溶出及び濾過による等の精製、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件出願は2008年12月16日付で提出された米国特許出願第61/201,865号の優先権を主張するものであり、その開示内容はここに参照することにより本明細書に含まれるものとする。
本発明は攪拌タンク及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質、特には遺伝子組み換えタンパク質等の生体分子製造用プロセスには一般に2つの主要ステップ、即ち、(1)宿主細胞中におけるタンパク質発現と、これに続く、(2)タンパク質精製、が含まれる。第1ステップには、所望の宿主細胞を培養基内で成長させてタンパク質を発現させることが含まれる。当該目的で使用する細胞株の幾つかの例には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、大腸菌、昆虫細胞等の骨髄腫(NSO)バクテリア細胞が含まれる。所望レベルのタンパク質が発現すると宿主細胞からそれらタンパク質を除去して採取する。細胞、細胞断片、脂質及びその他不溶物は、代表的には濾過または遠心分離によりタンパク質含有流体から除去され、結局、溶液内の関心タンパク質及びその他可溶性不純物を含む清澄流体を得る。
【0003】
第2ステップには、採取タンパク質精製による、プロセス上固有の不純物除去が含まれる。不純物例には、宿主細胞タンパク質(所望のまたは標的タンパク質以外のHCPタンパク質)、核酸、内毒素、ウィルス、変異タンパク質及び凝集タンパク質が含まれる。精製には、代表的には、多孔性アガロース、ポリマーまたはガラス等の個体マトリクス上での、または膜ベースでの吸着による、アフィニティクロマトグラフィー、イオン交換、疎水性相互作用、等を含み得る数回のクロマトグラフィーステップが含まれる。
【0004】
タンパク質精製用のクロマトグラフィープロセストレインの一例には、タンパク質Aのアフィニティ、陽イオン交換、陰イオン交換、の順次ステップが含まれる。タンパク質Aカラムは、廃棄する不純物塊をカラムに通しつつ、関心または標的タンパク質であるタンパク質をアフィニティメカニズムにより捕捉する。次いでタンパク質をカラムから溶出させて回収する。関心タンパク質の大半はその等電点(PI)が基本範囲(8〜9)にあって通常のプロセス状況下では正電荷(pH値がタンパク質のPI以下)を持つため、第2カラム中で陽イオン交換レジンに結合する。正電荷を持つその他不純物もこのレジンに結合する。次いで関心タンパク質を、タンパク質が溶出し、その間、不純物がレジンに結合し続ける状況下(pH、塩濃度)に第1カラムから溶出させて回収する。陰イオン交換カラムは代表的には、負電荷を持つ不純物がレジンに結合し、その間、正電荷を持つ関心タンパク質がストリーム流れ状態下に回収されるような流通モード下に動作する。このプロセスにより、高度に精製され且つ濃縮されたタンパク溶液が得られる。
【0005】
近年、タンパク質精製用のその他方法が研究されてきている。それら方法の1つには凝集法が含まれる。この方法では未浄化細胞培養液に可溶性ポリマー電解質を加え、懸濁粒子や可溶性不純物の一部を捕捉して凝集物を形成させ、この凝集物を濾過または遠心分離してタンパク質溶液から除去する。
あるいは、未浄化細胞培養液に可溶性ポリマー電解質を加え、関心生体分子を捕捉及び凝集物形成させ、この凝集物を沈殿させて残余の溶液から分離させる。凝集物に緩く接着している不純物を代表的には洗浄により除去する。次いで、溶液のイオン強度が増大してポリマー電解質から標的タンパク質が解離され、ポリマー電解質はタンパク質含有溶液中に再溶解する。
【0006】
2007年12月20日付で提出された部分継続出願であって、ここに参照することにより本願明細書の一部とする米国特許出願第12/004,314号では、温度、pH、塩、光またはそれらの組み合わせ等のある種条件下に溶解するポリマーを用い、当該ポリマーの溶解状態下に不純物を結合させ、条件(pHまたは温度等の)を変化させてポリマーを析出させ、かくして前記結合させた不純物を除去する。次いで、伝統的なクロマトグラフィーまたは膜吸着その他を利用して関心生体分子を取り扱う。
【0007】
上述した全てのタンパク質精製法には、第1の個別ステップで先ず懸濁粒子を除去し、次いで第2ステップで関心生体分子をプロセス固有の可溶性不純物から分離するという共通テーマがある。
誘導磁性粒子を使用する現場製品回収法はタンパク質精製法の1例であるが、この方法では関心生体分子を未浄化細胞培養液から直接的に精製させ得る。
【0008】
前記方法では、磁気ビードを包入するポリマーシェルを、標的タンパク質を探し出して結合する親和性リガンドで官能化する。次いで、磁界を印加してビード−タンパク質複合物を収集し、溶融性不純物及び不溶性粒子を残留させる。
この方法の欠点は、設計、構造、並びに高勾配磁気分離の検証に相当の設備投資を要することである。しかもこの方法は、今後、バイオプロセス業界でのタンパク質精製の規準になると見込まれる使い捨て性用途には向かない。
【0009】
ここでの参照により本願明細書の一部とする、2008年12月16日付けで提出され、“Purification of Proteins”と題する、Moya, Wilson他の、Attorney Docket No.MCA−1046である部分継続出願には、不溶性粒子や可溶性不純物の一部に実質上不可逆的に結合し得、また未浄化の生物学的材料を含有する流れ内の1つ以上の所望の生体分子と可逆的に結合し得る可溶性ポリマーとしてのポリマーと、それら材料を利用して、事前浄化の必要無しにその流れから1つ以上の所望の生体分子を浄化する方法と、が開示される。詳しくは、前記部分継続出願には、未浄化生体分子材料を含有する流れ中の1つ以上の所望の生体分子に選択的且つ可逆的に結合し得る選択的可溶性ポリマー等の刺激応答性ポリマーと、それらポリマーを利用して、流れを事前浄化する必要無しに、単数または複数の関心生体分子及び、その他タンパク質(宿主タンパク質)、DNA、ウィルス、細胞全体、細胞破片その他の種々の不純物を含む材料の複雑な混合物から1つ以上の所望の生体分子を精製する方法とが開示される。
【0010】
ポリマーは、pH、塩濃度、温度、光、または電界の1つ以上等の所定の設定プロセス条件下に可溶性であり、また、不溶性不純物(細胞、細胞破片、等)や可溶性不純物断片と相互作用し且つ複合体を形成し得、条件(温度、塩濃度、光、電界またはpH)が変化すると不溶化して溶液から析出する、例えば、刺激応答性ポリマーである。当該ポリマーは、溶液から析出した場合においてのみ、未浄化の細胞培養液中の流れ内で1つ以上の所望の生体分子(タンパク質、ポリペプチド等)と可逆的に結合し得る。次いで、析出物を、流れの残余部分から濾過等により除去し、所望の生体分子を、析出物から選択的に溶出させる等により回収する。
然し乍ら、析出物は典型的には大きなスラッジ塊形態であるため、その除去が問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許出願第61/201,865号明細書
【特許文献2】米国特許出願第12/004,314号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0016620号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
サンプル、特には生体分子を含有するサンプルを効率的に精製する装置及び方法であって、好ましくは、単一の、一体化された装置にして、汚染または材料損失を生じ得る1つ以上のプロセスステップが低減または排除された装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、従来技術の問題を解決する各実施例が提案され、それら実施例には、バイオマスを培養または処理し、また随意的にはサンプルを精製する等のサンプル調整または処理用の容器またはハウジングが含まれる。ある実施例において、コンテナまたはハウジングはミキサーである。ある実施例ではコンテナまたはハウジングは反応器である。ある実施例では反応器は、廃棄性または再使用性のバイオリアクターであって、発生する固形物が原因で生じ得る詰まりを正接流れフィルタを刺激することで低減または排除し得る攪拌セル型装置を含むバイオリアクターであり得る。ある実施例では固形物には、単数または複数の関心生体分子と結合するポリマー及び、細胞や細胞構成要素等の不純物とを含む如き析出物または凝集物が含まれる。
【0014】
ある実施例では攪拌セル型装置は、単数または複数の関心生体分子の回収(例えば溶出による)中等の精製用の1つ以上の膜を含む。ある実施例では生体分子はタンパク質、ポリペプチドまたは抗体である。ある実施例では容器は2つの画室を有する。ある実施例では容器は、各々が膜を備える2つの画室を有する。ある実施例では容器は第1及び第2の2つの画室にして、第1画室が膜を有し、第2画室が、第2画室出口の下流側のフィルタ装置と流体連通する。
【0015】
本発明の方法実施例には、細胞培養液から得た単数または複数の関心生体分子の精製及び分離が含まれる。ある方法実施例では、容器またはハウジング内での、バイオマス培養等のサンプル調製または処理、培養液からの関心生体分子の析出または凝集等による固形物生成、攪拌による当該生成固形物沈殿の防止、関心生体分子の結合及び溶出及び濾過等による関心生体分子の精製、が含まれる。ある実施例では、サンプル処理には関心タンパク質の圧搾が含まれる。ある実施例では、固形物には、関心タンパク質に結合したポリマーが含まれ、精製には、結合、溶出、1回以上の濾過、の各ステップが含まれる。ある実施例では、固形物は、関心タンパク質に結合したポリマー電解質を含む析出物を含み、精製には、結合、溶出、1回以上の濾過、の各ステップが含まれる。ある実施例では、ポリマーは不純物(細胞、細胞破片、等の)に結合し、生体分子は上澄み液内に残留する。
【0016】
析出ステップは従来からのクロマトグラフィー分離に代替され得、細胞培養液からの関心タンパク質分離のための直接捕捉ステップとして使用し得、または中間精製ステップであり得る。ある実施例では、ポリマーに代えて、生体分子を浄化し得る任意リガンドまたは機能を有するアフィニティまたはイオン交換性の単数または複数のビードを用いて関心生体分子を結合させ得る。ある実施例では、1回以上の濾過ステップが、サンプル処理に際して同一装置においてその場で実施される。ある実施例では、溶出したタンパク質がアフィニティ及びまたはイオン交換クロマトグラフィー等による爾後精製を受ける。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は本発明の1実施例におけるバイオリアクターの斜視図である。
【図2】図2は、図1のバイオリアクターの一部の断面側面図である。
【図3】図3は、本発明の1実施例におけるバイオリアクターベース部の斜視図である。
【図4】図4は、図3のバイオリアクターベース部の、該ベース部にシールされた膜を含む状況の斜視図である。
【図5】図5は、ハウジング、バイオリアクターベース部、濾過ベース部、を含むバイオリアクターアセンブリの斜視図である。
【図6】図6は、特定実施例に従う、濾過ベース部の斜視図である。
【図7】図7は、特定実施例に従う攪拌セル型装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書中で有益とされる好適な容器またはハウジングはこれに限定しようとするものではない。例示目的上、反応器、詳しくはバイオリアクターは廃棄性のみならず再使用性を有するものとしてその詳細が説明される。例えば、ミリポア社から市販入手可能な如き、珪硼酸ガラス性シリンダ及びPTFE構成部品を有する溶剤耐性のバイオリアクターを使用し得る。同様に、袋を利用する、または半剛性または合成の成型プラスチックで形成した廃棄性のバイオリアクターを使用できる。それら廃棄性のバイオリアクターは一般に事前殺菌済みである。バイオリアクター内の攪拌手段もまた特定のものには限定されず、インペラベースの攪拌装置、磁気攪拌装置、のみならず、波誘起攪拌及び、泡沫誘起攪拌、が含まれる。攪拌は、固形物の沈殿と、精製用の1つ以上の膜の沈殿固形物による詰まりを防止する上で重要である。
【0019】
以下にバイオリアクターについて説明する。当該説明は例示目的のみのためのものであって、ここに開示する各実施例は固形物含有量が比較的高いサンプルを有する、または結局形成する液体サンプルを収納する任意の容器に対して適用し得るものとする。
【0020】
図1及び図2を参照するに、バイオリアクター2がスタンド4に保持される状態下に示され、スタンド4が、数本の脚(本実施例では3本であるが、連続する1本の脚、2本または3本以上の脚をも使用できる)6及び支持リム8を含んでいる。図示の如く、脚6はバイオリアクター2を充填し且つスタンド4内に位置付けた場合に脚6が開かないようにする支持部材10をベース部位置又はその付近に随意的に有し得る。
【0021】
スタンド4は、使用する循環または攪拌の形式により、代表的には攪拌機またはパドル式の攪拌用アセンブリ14であるところの循環メカニズムの駆動機構12(図示の如き)をも支持し得る。この特定実施例では駆動機構12はモーターであり、該モーターは、数本のアーム18(図では3本を示すが、他の本数をも使用可能である)によりバイオリアクター2の頂部16の上方の中心位置に取り付けられる。駆動機構12を支持する取り付け用ブロック(図示せず)及びその他等のその他の特徴部分を頂部16または支持リム8に形成し得る。図示の如く、駆動機構12は以下に説明する如く攪拌機に装着し得る軸20を有する。上述した設計形状のものに代えて別のスタンドを使用して同様に作用させ得る。
【0022】
バイオリアクターのハウジングまたは胴部22(図1では一部のみを示す)が、流体、細胞、プローブその他のバイオリアクターの各装置を少なくとも部分的に格納する内側空間を有している。胴部22は頂部16にシール自在に装着される。前記シールは、ラバーガスケット及びクリップ24(図示の如き)等のメカニカルシールまたは、バンドクランプまたはLadishまたはTriCloverクランプ等のクランプ、頂部16及び胴部22の合致するねじ溝、であり得る。あるいは頂部及び胴部は接着剤により、または頂部16を胴部22に熱シールして、または、回転成型装置内等で相互にワンピース形成してシールし得る。
【0023】
胴部22は頂部16から下方に伸びる1つ以上の側壁26を有する。図示の如く、円形または円筒形状の1つの側壁26が設けられる。あるいは、所望であれば3、4あるいはそれ以上の数の側壁(図示せず)を設け得る。
胴部22は成型プラスチックまたはガラスの単一部品として作製することが好ましい。あるいは胴部22は、熱、接着剤、またはガスケット(図示せず)で相互にシールした2つ以上のプラスチックまたはガラス部品として作製し得る。頂部及び胴部形成用に使用し得る好適なポリマーには、これに限定しないが、ポリカーボネート、ポリエステル、ナイロン、PTFEレジン、及びその他のフルオロポリマー、アクリリック及びメタアクリリックレジン及びそのコポリマー、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリルスルホン、ポリスチレン、ポリエーテルイミド、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリビニルクロリド、クロリネーテッドポリビニルクロリド、ABS及びその合金及び混合物、ポリオレフィン、好ましくは、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、及び超ポリマー重量ポリエチレン及びそのコポリマー、ポリプロピレン及びそのコポリマー、及び、メタロセン発生ポリオレフィン、が含まれる。好ましいポリマーは、ポリオレフィン、特にはポリエチレン及びそのコポリマー、ポリスチレン、及びポリカーボネート、である。頂部及び胴部は同一ポリマーまたは、所望であれば異なるポリマーから作製し得る。再使用性の実施例では、胴部をガラス、アクリリックあるいはその他の、プロセス上悪影響を及ぼさない材料から作製し得る。斯界に既知の如く、胴部22もまた廃棄性のプラスチック製袋であり得る。
【0024】
本実施例のバイオリアクター2には1つ以上のポート30(本実施例では合計5つのポート用の3つの形式30a〜30c)が頂部16に形成され、胴部22には1つ以上のポート32(本実施例では、全体合計で7つのポート用の、少なくとも2つの異なる形式のポート32a〜32b)が形成される。頂部16及び胴部22は、バイオリアクター2全体の所望の位置に所望形式の多数のポートの1つを提供する、類似の及びまたは異なる様式の多数のポートを有し得る。これらのポート30、32または少なくともそれらの一部は、頂部16及び胴部22の部分として形成される。各ポートには、閉キャップ、ガスケット内部に貫通穿孔を有するガスケットキャップ等のシール自在のカバー、または、種々のルアーフィッティングと合致するねじ溝を形成し得る。あるいは前記各ポートの1つ以上を、プラスチック製の頂部16及びまたは胴部22を穿孔または焼除して穴を形成し、次いでこの穴を貫いてまたはその周囲にポートを然るべく取り付ける(熱接着または接着剤で)ことで、プラスチック製の頂部16及びまたは胴部22内に作製し得る。異なる数多くのポートスタイル及びサイズが収受され得る。
【0025】
ポート30aは液体またはガスの入口または出口として、あるいはpHプローブ等のプローブ、温度計または熱電対その他用に使用し得る。ポート30bは同様目的で使用され得る。ポート30cは、以下に詳しく説明する攪拌軸用に使用する。あるいは、バイオリアクターがエアリフト型であって攪拌軸を用いない場合は、ポート30cはエアラインを胴部のベース部一又はその付近でスパージャーに格納するため、または任意のその他所望の目的に使用できる。ポート32aは液体のサンプリング用に、または、この種のバイオリアクターで一般的な、pH、温度、溶解酸素、ラクトースレベル等で使用するプローブ用に使用し得る。ポート32aは、側壁26上に形成したものとして示されるが、所望であれば図2に示す如くベース部にも形成し得る。ポート32bは弁付きポートであって、胴部22へのガス供給及びまたは、胴部からの排出口または出口として使用できる。ポート32bは、相互にY字型をなす各アームに流れ制御用のピンチ弁等の弁(図示せず)を設けた3方弁、またはY字管を装着することにより、前記2つの機能を奏功させ得る。ポート32b用の弁として好適な1システムは、マサチューセッツ州ビレリカのMillipore社から入手可能であり且つ米国特許出願公開第2005/0016620号に示されるLYNX(商標名)コネクタである。
【0026】
胴部の1つ以上のポート32を、バイオリアクターの通常の液体/ガス界面高さ以下の位置に形成することが好ましい。
所望であれば、図1の1つ以上のポート32aまたは32bを用いて胴部内にガスを提供させ得る。POREX(商標名)多孔質材料等のプラスチック製のフリット、微孔質膜またはセラミックストーンまたは燒結金属フィルタを胴部内でポートの内側に装着し、かくして所望サイズ化したガス泡沫を提供させ得る。あるいは、頂部16のポート30aを用いて、胴部内を下方に伸延するガス供給管を保持させ得る。この場合でも、胴部内でポートの内側にフリット、微孔質膜またはセラミックストーンまたは燒結金属フィルタを装着し、所望サイズ化したガス泡沫を提供させ得る。あるいは、攪拌用アセンブリ内の多孔質フィルタ/膜110を通して胴部内にガスを提供させ、このガスをポート32bを通して提供させ得る。
【0027】
図2にはバイオリアクター2が示され、頂部16及び胴部22が相互にシールされると共に、好適な攪拌用アセンブリ14が然るべく配置されている。図示される攪拌用アセンブリのメカニズムは、軸40、1つ以上のパドル、円形ディスク、インペラ、ベーンその他42から構成される。軸40はポート30cを貫いて伸延し、駆動機構12(図示せず)の軸20に連結する。軸40の動作が、ポート30c内の1つ以上のO−リングにより、胴部22内部のシールの一体性を損なうことなく許容されることが好ましい。あるいは、膜またはフィルタ表面位置に超音波または振動を差し向けることで詰まり防止用の“攪拌”を生じさせ、かくしてフィルタ表面上への固形物集積を防止させ得る。フィルタ/膜の詰まり防止用のその他方法は、固形物に付着するガス泡沫を誘起させて固形物を液相上部に浮遊せしめるものがある。
【0028】
ある実施例では、胴部22は円筒管であって、攪拌用アセンブリを提供するべくベース部に着脱自在且つシール自在に固着される。例えば、図示実施例では軸40が、軸の短い部分40’を介してパドル42の下方に伸延され、別のパドルその他42’が追加される(図7)。パドル42’は、膜110(以下に説明する)に接触して膜を破損するのを回避するべく、膜の真上に位置決めするのが好ましい。このように位置決めすることで、パドル42’は膜の真上で流体を攪拌し、かくして、膜孔を詰まらせまたは閉塞させる固形物(例えば、アフィニティビード、析出物または凝集物)の膜上への沈降を防止する。パドルは、膜の実効濾過面積に渡り流体を一様に攪拌させるよう、膜の有効直径に実質的に相当する十分な幅を有し、または、前記幅よりも若干小さいことが好ましい。ある実施例ではパドル42’は、攪拌中に膜表面と接触しても膜を破損しないよう、また膜表面上への固形物の不沈降を一層確実化するために許容され得るラバーまたはスポンジ様材料等の好適な材料から構成され得る。パドル以外に、例えば円形ディスクまたは波状攪拌等の好適なその他手段を使用して胴部22の内側空間内の流体を十分に攪拌し得、それら手段も本発明の範囲内のものとする。
【0029】
図3にはバイオリアクターのフィルタベース部100が示され、流体流れ様の溝102またはその他を形成した支持表面101を含んでいる。図示される溝102の同心円的形態は好ましいものであるがこれに限定されるものではない。溝102は孔103と流体連通され、孔103は結局、ポート32bと流体連通してフィルタベース部100から流体を排出させる。
【0030】
フィルタベース部100の表面101には1つ以上の膜110(図4)が支持される。培養液の固形物含有量が約20〜35体積パーセント等の高い値である場合、これら1つ以上の膜の1つが比較的粗いフィルタまたは膜であることが好ましい。粗いフィルタまたは膜を初期濾過ステップに用いることで、引き続く下流側での、0.2ミクロン殺菌等級膜(以下に詳しく説明される)等の一般にずっと高価な微細膜が保護され且つその使用寿命が延長される。好適な膜には、これに限定しないが、超ポリマー重量ポリエチレンを含むポリエチレン、ポリプロピレン、EVAコポリマー及びアルファオレフィン、メタロセンオレフィニックポリマー、PFA、MFA、PTFE、ポリカーボネート、PVC等のビニルコポリマー、ナイロン等のポリアミド、ポリエステル、セルロース、セルロースアセテート、再生セルロース、セルロース複合物、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリビニリデンフロリド(PVDF)、及びそれらの混合物が含まれる。
【0031】
膜は、その用途、所望の濾過特性、被濾過粒子のタイプ及びサイズ及び所望の流れ、に依存して選択される。好ましい膜ベースフィルタには、マサチューセッツ州ビレリカのMillipore社から入手可能なDURAPORE(商標名)PVDF膜や、同社から入手可能なMILLIPORE EXPRESS(商標名)及びMILLIPORE EXPRESS(商標名)PLUSまたはSH PES膜が含まれる。同社より入手可能なPolygard(商標名)プレフィルタ(Polygard CE プレフィルタ)及びデプスフィルタ(Polygard CR デプスフィルタ)等のプレフィルタやデプスフィルタその他もこれら各実施例で使用可能である。
【0032】
混合物、ポリマー及び生体分子の性質に依存して、フィルタは親水性または疎水性のものであり得る。親水性で且つタンパク質結合性が小さいフィルタが好ましい。
膜あるいはその他としてのフィルタは、マサチューセッツ州ビレリカのMillipore社から入手可能DURAPORE(商標名)PVDF膜における如く、その深さ方向全体において孔寸法が対称性を有し得、または、同社より入手可能なMILLIPORE EXPRESS(商標名)及びMILLIPORE EXPRESS(商標名)PLUSまたはSH PES膜における如くその厚さ方向を通して孔寸法が非対称性を有し得る。フィルタは所望であれば、別個の上流側の層としてか、または膜自体の上流側の一体部分としてのプレフィルタ層を含み得る。
【0033】
発生する粒子サイズに依存して、限外濾過膜を膜として使用する場合があり得る。例えば、粒子サイズが微孔質膜の孔サイズと比較して小さい場合、孔サイズのより小さい(限外濾過範囲での)膜の方が詰まりを回避する上で適当である。好適な限外濾過膜には、孔サイズが0.2ミクロン以上、例えば、一般に、0.45、0.65、1.0、2.0の各ミクロン寸法またはそれ以上の再生セルロースやポリエーテルスルホン膜が含まれる。随意的には、ベース部の表面101と単数または複数の膜110との間に多孔質支持体(図示せず)を配置し得る。単数または複数の膜(及びもしあれば支持体)は、O−リング106等を利用してベースに対してシールされ、前記O−リング106は結局、アクリル環等の支持リング107により然るべく保持され得る。1つ以上の膜110を使用する場合はこれらの膜を積層関係下に組み立て得る。1つ以上の膜を使用する場合、各膜はその性能特性(例えば、孔サイズ、フラックス、キャパシティ、表面ケミストリー、等)が同じである必要はない。例えば、パドル42’に対して上方の膜は下方の単数または複数の膜におけるよりもその孔サイズが大きく及びまたは、下方の単数または複数の膜とは材料が相違し得る。
バイオリアクターの、円筒管の如き胴部22が、図5に示す如く、フィルタベース部100とシール関係下に配置される。フィルタベース部100から下方に伸延してフィルタベース部100を支持する複数の脚部6’を設け得る。
【0034】
追加的精製が所望されるある実施例では、アセンブリに図5及び図6に示すようなフィルタベース部が更に追加され得る。かくして、フィルタベース部100に類似のフィルタベース部100’が設けられ、当該フィルタベース部100’が好適な溝を有する支持表面を有し、好適なO−リング及び支持リング等により、1つ以上の膜がシール自在にその上部に支持される。例えば、0.2ミクロンの膜等の殺菌用膜を使用(随意的には好適な多孔質支持体と共に)できる。フィルタベース部100’には胴部22’がシールされ、このハウジングが、バイオリアクターのフィルタベース部100とフィルタベース部100’との間のキャビティまたは内側空間を提供する。胴部22’は円筒管であり得、バイオリアクターのハウジング22のそれと直径が同一であり且つ同一材料であることが好ましい。ハウジングは、バイオリアクターから直接受ける被精製流体容量の少なくとも一部分を収受するに十分な高さを有するべきである。
【0035】
胴部22’の上縁部は半径方向内側に突出するのが好ましく、また、胴部22’とベース部100とがシール関係下に固着され得るよう、O−リング106’を含むことが好ましい。フィルタベース部100’から下方に伸延してアセンブリを支持する複数の脚部6”を設けることが好ましい。フィルタベース部100’がバイオリアクターアセンブリと一体化され、サンプル処理及び直接精製用のワンピース型反応器アセンブリを構成するのが好ましいが、ある実施例では、この引き続く精製ステップをバイオリアクターの胴部22から物理的に離間した(随意的には流体連通するが)フィルタを使用して実施し得る。
【0036】
胴部22’は、好適な配管51(図5)を用いる等してフィルタベース部100の出口としてのポート32bと流体連通状態下に配置し得る入口50を含む。フィルタベース部100’は、フィルタベース部内のドレン(図示せず)と流体連通する出口用のポート32b’を含み、このポート32b’を通して関心生体分子を、爾後精製ステップ(例えば、クロマトグラフィープロセストレイン)等の好適使用ポイントに差し向ける。
他の実施例では、胴部22’の出口がフィルタベース部100の出口としてのポート32と流体連通されるが、胴部22’にはフィルタまたは膜は格納されない。それらに代えて、出口としてのポート32’が、図示されない管またはその他導管を介して、関心生体分子を殺菌濾過するところのMillex(商標名)フィルタまたはOptiscale(商標名)またOpticap(商標名)フィルタ等の内蔵型フィルタ装置(図示せず)と流体連通する。このフィルタ装置の出口は、磁路精製ステップ(例えば、クロマトグラフィープロセストレイン)等の好適使用ポイントに接続される。
【0037】
適宜にまたは所望であれば、好適な弁及び検出機器を1つ以上の種々の入口及び出口に関連付けし、流れまたは任意のその他特性、例えば、生体分子または不純物の存在を検出または測定し且つ制御し得る。例えば、細胞培養相の間、フィルタベース部100の出口用のポート32bを閉鎖し、ポート32aまたは30aを通してガスを付加する際に胴部22内に流体を残留させる。
【0038】
細胞培養液にポリマーを添加して関心生体分子を選択的且つ釈放自在に結合させるある実施例では、好適なポリマーには、ポリ(N−ビニルカプロラクタム)、ポリ(N−アクリロイルピペリジン)、ポリ(N−ビニルイソブチルアミド)、[ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(N,N’−ジエチルアクリルアミド)、及びポリ(N−アクリロイル−N−アルキルピペラジン)]を含むポリ(N−置換アクリルアミド)、ヒドロキシアルキルセルロース、アクリル酸及びメタクリル酸のコポリマー、2または4−ビニルピリジンのポリマー及びコポリマー、及び、リガンドかまたは作用基が結合したキトサン、が含まれる。
【0039】
好適な関心生体分子には、タンパク質や抗体が含まれる。好適な抗体には、遺伝子組み換え抗体、遺伝子組み換えモノクロナール抗体、ポリクロナール抗体、ヒト化抗体及び抗体断片、からなる群から選択した抗体が含まれる。
作動に際し、スタンド内に殺菌装置を配置し、この装置の適宜の各ポート位置に空気、液体、プローブ、サンプリング、等に使用する種々の連結部を装着する。装置の、頂部16を胴部22に装着する位置よりも幾分下方で且つ、液体/空気界面を形成する所望の高さまで媒体を充填し、この種の装置に一般的なガスのヘッドスペースを残す。ポート32の少なくとも一つは前記界面高さ以下に位置付けられる。
【0040】
次いで媒体に被成長有機体としての、植物、動物細胞(例えば、CHOまたはNSO細胞)ウィルス、イースト、黴またはバクテリア(例えば、イーコリー)を植え付け、内部の培養物を効果的に成長させる様式下に液体を旋回または攪拌して空気/ガス及び液体を装置の内外方向に移動させる。
特定のプロセス条件設定下に可溶性となるポリマーを追加し、条件(例えば、温度、塩濃度、光、電界、またはpH)の変化に際して不溶化させて溶液から析出させる。あるいは、関心生体分子または可溶性不純物に結合させるための、生体分子を精製させ得る任意のリガンドまたは機能を持つアフィニティまたは単数または複数のイオン交換ビードを添加し得る。攪拌を継続して固形物の沈降を抑制するが、前記固形物は本実施例では、ポリマー、細胞や細胞破片、宿主細胞タンパク質、DNA等、及び所望の生体分子、等の不純物を含有する析出物が含まれ、液体中のまたはポリマーナイム他はポリマー上に取り込まれた不純物が確実に除去されるよう1回以上(好適なバッファを使用する等により)洗浄され得る。1回または複数回の洗浄ステップは、フィルタベース部100内の1つ以上の膜を通す濾過により実施され得、上澄み液がポート32bを介して送られて廃棄される。
【0041】
次いで、関心生体分子が、可溶性及び不溶性の各材料が析出したポリマーとの複合状態にある間、溶液のイオン強度及びまたはpH条件を変更する等による、析出物(またはビード)からの標的生体分子の選択的溶出等により回収され得る。この回収は、フィルタベース部100の出口を胴部22’の入口50に連結する等によりフィルタベース部100’をフィルタベース部100と流体連通せしめることによる、殺菌濾過ステップと共に実施することが好ましい。かくして、フィルタベース部100の出口からの透過物が胴部22’に流入して膜110’を湿らせ、膜110’を通しての濾過が実施される。次いで、精製された関心生体分子がフィルタベース部100’の出口としてのポート32b’を介し、溶出プールに回収される。析出したポリマー及び不純物からなる複合物(または単数または複数のアフィニティビード)は廃棄し得る。濾過用の駆動力は圧力または真空であり得る。
【符号の説明】
【0042】
2 バイオリアクター
4 スタンド
8 支持リム
10 支持部材
12 駆動機構
14 攪拌用アセンブリ
16 頂部
18 アーム
20 軸
22、22’ 胴部
24 クリップ
26 側壁
30a ポート
30b ポート
30c ポート
32a ポート
32b ポート
40 軸
42 パドル
50 入口
51 配管
100、100’ フィルタベース部
101 支持表面
102 溝
103 孔
106 O−リング
107 支持リング
110 多孔質フィルタ/膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルの培養または処理用アセンブリであって、
内側空間を有する第1容器と、
該第1容器にシール自在に固着するようになっており且つ少なくとも1つの膜を支持する第1ベース部と、
該第1ベース部の出口と、
前記第1ベース部の前記出口と流体連通するようになっている第2容器と、
該第2容器にシール自在に固着するようになっている第2ベース部と、
含むアセンブリ。
【請求項2】
前記第2容器が少なくとも1つの膜を支持する請求項1のアセンブリ。
【請求項3】
前記第1容器がバイオリアクターである請求項1のアセンブリ。
【請求項4】
前記第1容器の同部内部に、サンプル攪拌手段を更に含む請求項1のアセンブリ。
【請求項5】
不純物を含有する混合物から得た生体分子の精製方法であって、
所定条件下の混合物を提供すること、
前記所定条件下に前記混合物に可溶であり且つ前記生体分子に可逆的及び選択的に結合可能な1つ以上のポリマーを添加すること、
可溶化した前記1つ以上のポリマーを前記混合物全体に混入させること、
前記混合物における前記所定条件を変化させることにより、前記1つ以上のポリマー及び結合した生体分子を溶液から析出物として析出させること、
前記析出物を洗浄液と接触させて洗浄すると共に上澄み液を第1膜を通して濾過すること、
結合した生体分子を前記ポリマーから回収すると共に、外生体分子を第2膜を通して濾過すること、
を含む方法。
【請求項6】
前記上澄み液の濾過及び前記生体分子の濾過が、同一装置で実施される請求項4の方法。
【請求項7】
前記生体分子が、遺伝子組み換え抗体、遺伝子組み換えモノクロナール抗体、ポリクロナール抗体、ヒト化抗体、抗体断片、からなる群から選択した抗体である請求項5の方法。
【請求項8】
前記生体分子がタンパク質である請求項5の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−511929(P2012−511929A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542238(P2011−542238)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【国際出願番号】PCT/US2009/067097
【国際公開番号】WO2010/074953
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(390019585)イー・エム・デイー・ミリポア・コーポレイシヨン (212)
【Fターム(参考)】