説明

支柱立設用の基礎杭およびこれを用いた支柱の立設方法

【課題】軽量で施工性がよい支柱立設用の基礎杭を提供する。
【解決手段】本発明の基礎杭15は、支柱11の下部を挿入可能な中空筒型の上筒部17と、上筒部17の下端から同軸心状に下方に延び、打撃によって地中に食い込み可能な尖端部18とを備える。尖端部18は、周方向に間隔をあけて配置された複数の食い込みブレード20を備え、この食い込みブレード20は、鋼管の周方向複数箇所に径方向内方へ凹んだ凹部21をプレス加工することによって形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェンス、看板、標識等の地上設置物の支柱を地面に立設するための基礎杭、およびこの基礎杭を使用して支柱を地面に立設する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図9は、区画用や防護用等のフェンス10を地面Gに施工した状態を示す正面断面図である。このフェンス10は、幅方向に間隔をあけて配置された複数本の支柱11と、格子状に張り巡らされたネット13を有するフェンス本体12とを備えており、各支柱11は地面Gに埋設された基礎50によって支持され、フェンス本体12は各支柱11の間に架設されている。
地面に埋設された基礎50は、プレキャストタイプのコンクリートブロックで構成されている。このコンクリートブロック50は直方体又は円筒形状に形成され、上面の中央には有底状の挿入穴51が形成されている。この挿入穴51に支柱11の下部を挿入し、さらに、支柱11との隙間にモルタル52を充填することによって、支柱11がコンクリートブロック50に強固に固定されている。このようなコンクリートブロック製の基礎50を用いた技術が下記特許文献1に記載されている。
また、コンクリートブロック製ではなく、円筒形の鋼管を地面に打ち込んで基礎とする技術が下記特許文献2に記載されている。
【特許文献1】特開2006−299530号公報
【特許文献2】特開2000−64306号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
コンクリートブロック製の基礎は、地面に埋設するために大きな穴を掘削する必要があり、また、この穴に基礎を収めた後、土を埋め戻し、転圧する必要がある。このため、基礎の施工に多大な時間と手間とを要する。そして、コンクリートブロック製の基礎は非常に重いため、運搬等の取り扱いにも手間がかかり、場合によっては重機が必要である。また、コンクリートブロック製の基礎は、施工後もその上面全体が地面に露出するため、外観が悪化するという問題もある。
【0004】
一方、鋼管からなる基礎は、コンクリートブロック製の基礎に比べて軽量であり、ハンマー等を用いた打ち込みによって地面に埋設することができるので、取り扱いや施工性の点でも有利である。
しかし、円筒形であることから地面に対する抵抗、特に回転方向の抵抗が小さく、地面に強固に埋設するのが困難である。そのため、十分な支柱の支持力を得るためには鋼管を軸方向に長くする必要があり、その分重量も増大する。また、地面への打ち込みによって鋼管内には土砂が入り込むので、打ち込みの抵抗が増し、また、鋼管内の土砂を除去する作業等が必要な場合もある。
【0005】
本発明は、上記のような実情に鑑みてなされたものであり、軽量で施工性が良好な支柱立設用の基礎杭、およびこの基礎杭を用いた支柱の立設方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上端を打撃することによって地面に打ち込まれる支柱立設用の基礎杭であって、支柱の下部を挿入させることが可能な中空筒型の上筒部と、前記上筒部の下部から下方へ同軸心状に延び、前記打撃によって地中に食い込み可能な尖端部とを備えていることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、基礎杭が上筒部と尖端部とからなり、打撃によって尖端部が地面に食い込んで埋設されるので、円筒形の鋼管からなる基礎杭に比べて地面への打ち込み抵抗が小さくなり、施工性が良好となる。また、本発明の基礎杭はコンクリートブロック製の基礎と比べて軽量に構成することが可能となり、運搬等の取り扱いが容易となる。
【0008】
前記尖端部は、周方向に間隔をあけて配置された複数の食い込みブレードから構成されていることが好ましい。この食い込みブレードによって基礎杭の回転方向の抵抗を増すことができ、地中に強固に埋設することができる。
【0009】
当該基礎杭は、断面形状が一定の鋼管を中間素材としており、前記食い込みブレードは、前記鋼管の周方向複数箇所に径方向内方へ凹む凹部をプレス加工することによって形成されていることが好ましい。このような構成を採用することによって、中間素材としての1つの鋼管から上筒部と尖端部とを有する基礎杭を簡単に製造することができる。
【0010】
前記凹部は、下方に向かうに従って漸次深くなるように形成されていることが好ましい。これによって、尖端部の幅が下方に向かうに従って小さくなり、地面への打ち込みを容易にすることができる。
【0011】
前記尖端部の下端には、液体を流通可能なスリットが形成されていることが好ましい。これによって、例えば基礎杭の表面に防錆用のメッキ(表面処理)を施す場合に、溶融メッキ中に基礎杭を浸漬しても溶融メッキが尖端部の内側に溜まることが無く、基礎杭内に均一なメッキ層を形成することができる。
【0012】
前記上筒部の筒内寸法は、その内部に挿入された前記支柱との間にモルタルや樹脂等の接着剤を充填可能な寸法に設定されていることが好ましい。これにより、支柱を立設しようとする位置と、基礎杭が打ち込まれた位置との間に若干のズレが生じたとしても、上筒部と支柱との間に生じる隙間によって当該ズレを吸収することができ、さらに当該隙間に接着剤を充填することによって正確な位置に支柱を固定することができる。
【0013】
本発明の支柱の立設方法は、前記基礎杭の上端をハンマーで打撃し、当該基礎杭を下端から地面に打ち込む工程と、前記基礎杭の上筒部内に支柱の下部を挿入し、この支柱を当該上筒部内で仮止めする工程と、前記上筒部の内部に接着剤を充填し、この接着剤によって前記支柱を上筒部に固定する工程と、を含むことを特徴とする。
この構成によれば、基礎杭を迅速かつ強固に地面に打ち込むことができ、さらに支柱を正確な位置に立設することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、支柱立設用の基礎杭の軽量化および施工性向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る基礎杭15を用いて支柱11を立設した状態を示す正面断面図である。10は、区画用や防護用等として用いられるフェンスであり、幅方向に間隔をあけて設けられた複数本(図では2本のみを図示)の支柱11と、各支柱11の間に架設されたフェンス本体12とを備えている。フェンス本体12は、金属線材を格子状に張り巡らせたネット13を枠材14の内側に設けてなる。支柱11は、鋼管等によって形成された棒状体であり、下端部が基礎杭15を介して地面Gに固定されている。
【0016】
図2(a)は、基礎杭15の正面図、(b)は基礎杭15の平面拡大図、(c)は基礎杭15の底面拡大図である。基礎杭15は、上筒部17と、この上筒部17の下端から同軸心状に下方に延びる尖端部18とから構成されている。上筒部17は、好ましくは支柱11の外形と略同じ形状の筒形状に形成されている。本実施形態の上筒部17は、外面円形状の支柱11に対応して円筒形状に形成されている。また、上筒部17は、支柱11の外径よりも大きい内径を有している。
【0017】
尖端部18は、上筒部17の外径寸法よりも小さい厚さ寸法tの複数の食い込みブレード20から構成されている。各食い込みブレード20は、上下方向に長い略帯板状であり、基礎杭15の軸心を中心として径方向に放射状に配置されている。また、複数の食い込みブレード20は周方向に等間隔に配置されている。本実施形態では、4枚の食い込みブレード20が90°間隔で十字状に配置されている。
【0018】
尖端部18は、中間素材としての円筒状の鋼管をプレス加工することによって形成されている。具体的には、鋼管の下部側の周方向4カ所を、所定の金型によって径方向内方へ3角形状に凹ませることによって凹部21を形成し、この4つの凹部21の各間に、相対的に径方向外方へ突出する食い込みブレード20を形成している。
【0019】
また、凹部21は、下方に向かうに従って漸次深くなるように形成されている。具体的には、図2(c)に示すように、尖端部18の上端の凹部21の深さD1は、下端の凹部21の深さD2よりも小さくなっている。これによって、尖端部18は、図2(a)に示すように上端の幅寸法W1よりも下端の幅寸法W2の方が小さくなり、先細り形状に形成されている。なお、基礎杭15の内部には、凹部21に対応する凸部22が形成されている。
【0020】
図2(b)(c)に示すように、尖端部18の下端には十字状のスリット24が形成されており、このスリット24により基礎杭15内が上下方向に渡って貫通している。このように基礎杭15内が上下方向に渡って貫通していると、例えば、基礎杭15の内面に防錆用のメッキを施すために基礎杭15を溶融メッキ内に浸漬したとき、溶融メッキを基礎杭15内で流通させることができる。そのため、基礎杭15の下端部で溶融メッキが溜まってしまうことが無く、基礎杭15内に均一なメッキ層を形成することができる。なお、スリット24は、食い込みブレード20の内側に長さ方向全体にわたって形成されている。
【0021】
以下、基礎杭15を用いた支柱11の立設方法(フェンス10の施工方法)について説明する。
まず、支柱11を立設しようとする場所に基礎杭15を打ち込む作業を行う。この作業は、基礎杭15を地面Gに垂直に突き立てた状態とし、基礎杭15の上筒部17の上端を電動ハンマー等の打ち込み工具を用いて打撃し、上筒部17の上端が地面Gと略同一レベルになる程度まで基礎杭15を埋設する。
【0022】
基礎杭15を打ち込んだ後、上筒部17に支柱11の下部を挿入し、仮止めする。次いで、図3に示すように、支柱11と上筒部17との間に形成された隙間に、時間の経過によって硬化するモルタルや樹脂等の接着剤26を充填する。そして、充填した接着剤26が硬化すると支柱11が基礎杭15に固定される。
【0023】
したがって、本実施形態では、コンクリートブロック製の基礎のように地面Gを大きく掘削したり埋め戻したりする必要が無く、基礎杭15を打ち込むだけよいので、施工性を向上することができる。また、本実施形態の基礎杭15は、コンクリートブロック製の基礎に比べて軽量に形成することができ、運搬等の取り扱いも容易に行うことができる。
【0024】
基礎杭15の下部(尖端部)は薄肉の食い込みブレード20からなるため、地面Gに打ち込む際の抵抗を小さくすることができ、また、尖端部18が先細り形状に形成されていることによっても当該抵抗を小さくすることができる。これにより、基礎杭15を短時間に少ない労力で打ち込むことが可能となる。
また、食い込みブレード20によって地面Gに対する基礎杭15の回転方向の抵抗が大きくなり、従来技術(特許文献2参照)のように円筒状の鋼管のみからなる基礎杭15と比べて地面Gに強固に埋設することができる。
【0025】
尖端部18の下端は細いスリット24のみによって開口しているため、打ち込みよって基礎杭15内部にはほとんど土砂が入り込まない。そのため、土砂が入り込むことに起因する打ち込み抵抗の増大を防止することができ、打ち込み後に基礎杭15内の土砂を除去する作業等も不要となる。
【0026】
また、基礎杭15の上筒部17の内径は支柱11の外径よりも大きく形成されているので、図4に示すように、支柱11を立設しようとする位置O1,O2に対して芯ズレした位置に基礎杭15が打ち込まれていたとしても、上筒部17と支柱11との隙間によってこの芯ズレを吸収して支柱11を正確な位置に配置することができる。また、図3に示すように、基礎杭15の内部には凹部21に対応する凸部22が形成されているので、この凸部22の上端を上筒部17の底部23として構成することができ、当該底部23によって支柱11の下端を支持することが可能となり得る。
【0027】
以下、図5〜図8を参照して本発明の他の実施形態を説明する。
図5に示す基礎杭15は、3枚の食い込みブレード20が周方向に等間隔で配置されたものである。その他の構成は、上記第1実施形態と同様である。本実施形態の場合、食い込みブレード20が3枚であることから、第1実施形態に比べて回転方向の抵抗は小さくなるが、その反面、凹部21の加工が容易になっている。
【0028】
図6に示す基礎杭15は、中間素材としての鋼管が断面四角形であり、その各辺の中央部を径方向内方へ凹ませることによって、4枚の食い込みブレード20が形成されている。その他の構成は、第1実施形態と略同様であり、第1実施形態と略同様の作用効果を奏する。
【0029】
図7に示す基礎杭15は、上筒部17と、尖端部18とが別部材によって構成され、溶接等によって接合されたものである。具体的には、上筒部17は鋼管から構成され、尖端部18は複数枚の帯板材からなる食い込みブレード20から構成されている。上筒部17の下端は底板28によって閉鎖されている。尖端部18は、複数の食い込みブレード20を十字状に配置した状態で、上筒部17の底板28の下面に溶接によって接合されている。
【0030】
本実施形態は第1実施形態と略同様の作用効果を奏するが、基礎杭15を製造するにあたって食い込みブレード20を上筒部17とは別に用意する必要があり、食い込みブレード20を上筒部17に溶接する工程が必要となる点で、第1実施形態の方が有利である。しかしながら、本実施形態は、基礎杭15に要求される支柱11の支持力等に応じて食い込みブレード20の大きさを適宜変更できる点で、第1実施形態よりも有利となる。
【0031】
具体的には、さらに他の実施形態を示す図8において、食い込みブレード20は、上部側が上筒部17よりも径方向外側へ大きく張り出しており、尖端部18は急角度の先細り形状に形成されている。この実施形態の場合、基礎杭15の回転方向だけでなく、各食い込みブレード20に直交する方向への地面Gに対する抵抗を大きくすることができ、支柱11の支持力を高めることができる。
【0032】
本発明は、上記各実施形態に限定されることなく適宜設計変更可能である。
上記実施形態では、食い込みブレード20を3枚又は4枚とした例を示しているが、2枚または5枚以上とすることも可能である。また、複数の食い込みブレード20を周方向に不等間隔に配置してもよい。尖端部18の幅は、その上端から下端にかけて一定であってもよい。
本発明の基礎杭15は、支柱11の用途(地上設置物の種類)や地面Gの地質等に応じて、上筒部17や尖端部18の長さや径(太さ)を適宜変更することが可能である。上記実施形態はフェンス10の支柱11を例に説明しているが、看板や標識等、地面Gに立設される支柱11を備えた種々の地上設置物に本発明の基礎杭を適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1実施形態に係る基礎杭を用いて支柱を立設した状態を示す正面断面図である。
【図2】(a)は基礎杭の正面図、(b)は基礎杭の平面拡大図、(c)は基礎杭の底面拡大図である。
【図3】地面に基礎杭を打ち込んだ様子を示す断面図である。
【図4】基礎杭と支柱とを示す平面図である。
【図5】(a)は本発明の他の実施形態に係る基礎杭の正面図、(b)は基礎杭の平面拡大図、(c)は基礎杭の底面拡大図である。
【図6】(a)は本発明のさらに他の実施形態に係る基礎杭の正面図、(b)は基礎杭の平面拡大図、(c)は基礎杭の底面拡大図である。
【図7】(a)は本発明のさらに他の実施形態に係る基礎杭の正面図、(b)は基礎杭の底面拡大図である。
【図8】(a)は本発明のさらに他の実施形態に係る基礎杭の正面図、(b)は基礎杭の底面拡大図である。
【図9】従来技術に係る基礎を用いて支柱を立設した状態を示す正面断面図である。
【符号の説明】
【0034】
11 支柱
15 基礎杭
17 上筒部
18 尖端部
20 食い込みブレード
21 凹部
24 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端を打撃することによって地面に打ち込まれる支柱立設用の基礎杭であって、
支柱の下部を挿入させることが可能な中空筒型の上筒部と、
前記上筒部の下部から下方へ同軸心状に延び、前記打撃によって地中に食い込み可能な尖端部とを備えていることを特徴とする支柱立設用の基礎杭。
【請求項2】
前記尖端部が、周方向に間隔をあけて配置された複数の食い込みブレードによって構成されている請求項1に記載の支柱立設用の基礎杭。
【請求項3】
当該基礎杭は、断面形状が一定の鋼管を中間素材としており、
前記食い込みブレードが、前記鋼管の周方向複数箇所に径方向内方へ凹む凹部をプレス加工することによって形成されている請求項2に記載の支柱立設用の基礎杭。
【請求項4】
前記凹部が、下方に向かう従って次第に径方向内方へ深く形成されている請求項3に記載の支柱立設用の基礎杭。
【請求項5】
前記尖端部の下端に液体を流通可能なスリットが形成されている請求項3又は4に記載の支柱立設用の基礎杭。
【請求項6】
前記上筒部の筒内寸法が、その内部に挿入された前記支柱との間にモルタルや樹脂等の接着剤を充填可能な寸法に設定されている請求項1〜5のいずれか1つに記載の支柱立設用の基礎杭。
【請求項7】
請求項6に記載の基礎杭を使用して地面に支柱を立設する方法であって、
前記基礎杭の上端をハンマーで打撃し、当該基礎杭を下端から地面に打ち込む工程と、
前記基礎杭の上筒部内に支柱の下部を挿入し、この支柱を当該上筒部内で仮止めする工程と、
前記上筒部の内部に接着剤を充填し、この接着剤によって前記支柱を前記上筒部に固定する工程と、を含むことを特徴とする支柱の立設方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−106494(P2010−106494A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−278285(P2008−278285)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(508324008)株式会社ラスコジャパン (3)
【Fターム(参考)】