説明

改善されたセメント接着を伴うインプラントの方法及び装置

【課題】セメント結合強度(例えば引張り強度、剪断強度、及び/又は疲労強度)を強化し得る改変された表面を有する生物医学的インプラント(例えば整形外科用インプラント)を、そのようなインプラントの製造及び使用方法と共に開示する。
【解決手段】このインプラントは、セメント結合を強化し得る、さまざまな物理的特徴、化学的特徴、又はプロセス由来の特徴を呈し得る。例えば、インプラント表面は特定の粗さ値を呈することができ、及び/又は非在来物質が実質的にない状態であり得る。そのようなインプラントを製造するためのプロセスには、第一粗化インプラント表面を提供することが含まれ得、これは例えば粒子ブラストによって製造することができる。処理製剤をこの第一粗化表面に適用して、第一粗化表面に比べて強化されたセメント結合特性を呈する第二粗化表面を作製することができる。場合によっては、第一粗化表面及び第二粗化表面は、実質的に同様であるR値を呈し得る。第二粗化表面は負のRsk値を呈し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本発明は、下記の出願(すべて2009年4月15日に提出)に関する:(i)米国特許仮出願「Micro and Nano Scale Surface Textured Titanium−Containing Articles and Methods of Producing Same」、シリアル番号第61/169,443号、(ii)米国特許仮出願「Nanotextured Cobalt−Chromium Alloy Articles having High Wettability and Method of Producing Same」、シリアル番号第61/169,365号、(iii)米国特許仮出願「Methods and Devices for Bone Attachment」、シリアル番号第12/424,000号、及び(iv)米国特許仮出願「Methods and Devices for Implants with Calcium Phosphate」、シリアル番号第12/424,049号。これによってこれら4つの出願すべては、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本出願の産業上の利用分野は、概して加工された基材、特に医療用インプラントの一部としての使用のためにこのような基材の特徴を改良するのにこのような基材を改質することを目的とする。
【背景技術】
【0003】
患者における置換構造体として使用するための医療用インプラントは、その用途において広く応用されるようになった。特に、関節又は他の構造体を置換するための整形外科用インプラントは、非常に大きな商業的及び科学的関心を受けてきた。しばしば、整形外科用インプラントはセメント組成物(例えばポリメチルメタクリレートセメント)を利用して、インプラントを骨に接着させる。骨/セメント界面及びセメント/インプラント界面が2つの機械的に連結した界面を形成し、これがインプラント固定の働きをする。
【0004】
当該技術分野では一般に、粗化表面を骨に接着するのにセメントを使用した場合、インプラント表面の粗さ(すなわち表面プロファイルの相加平均偏差R)が増大すると、より高い強度の結合がもたらされ得ることが認識されている。したがって、セメント/インプラントの引張り強度接着の強化は、徐々に粗くなるインプラント表面にするためにグリットブラスト及び/又はガラスビーズショットブラストなどのプロセスを適用することによって達成されることが多い。一般に、Rの増加と結合強度の増大との間の関係は線形である。しかしながら、粗化インプラント表面は、磨耗プロセスで弊害をもたらす可能性がある。骨セメント(例えば硬化したポリメチルメタクリレート(PMMA)組成物)に対するインプラントの機械的連結が完全でない場合、又は経時的に劣化する場合、骨セメントとインプラントとの間の相対的な移動(例えば微小移動)により、PMMAの屑の生成が起こることがある。ある程度の微小移動は許容できると考える者もいるが、PMMA屑が近くの骨組織に運ばれて異常な組織反応を引き起こすことが見出されている。臨床的には、PMMA粒子は、セメント接着された股関節ステムインプラント周辺での骨溶解に直接的に関係していることが見出されている。これは、中期的/長期的なインプラント固定を脅かす。一般に、インプラント表面が粗いほど、屑生成(例えばセメント残留物など)が多くなり、かつ、PMMAセメントとインプラントとの間のトラップ空間が大きくなる傾向があり、これにより究極的な結合の破壊靭性が低下し得る。よって施術者は、インプラント固定を改善するためにインプラント表面のRを高めるべきか否かを決めるときに、妥協点に直面する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、好ましくは磨耗関連のプロセスによる劣化の増大をもたらすことなく、セメント結合強度が高レベルで維持され得るような、インプラント及びそのようなインプラントを処理する方法に関するニーズが依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のいくつかの実施形態は、生物医学的インプラントを作製する方法を目的とする。インプラントの第一粗化表面は、約0.1マイクロメートル〜約100マイクロメートルの範囲になり得る第一R値を呈するように、作製され得る。この第一粗化表面は、処理製剤(例えば、所望によりハロゲン化水素酸を含み得る酸製剤)に曝露させることができ、これにより、セメントに接触すると、強化されたセメント/インプラント機械的連結を呈する第二粗化表面を形成することができる。例えば、セメント結合が骨セメントと第二粗化表面との間に形成されたときに、セメント結合に関して、改善された引張り破壊強度、改善された剪断破壊強度、又はそれら両方を呈することができる。この改善は、セメントと、インプラントの第一粗化表面との間に形成されたセメント結合と比較することができる。別の例において、セメント結合が骨とインプラントの第二粗化表面との間に形成されたときに、例えばセメントと、インプラントの第一粗化表面との間に形成されたセメント結合と比較して、引張り荷重における改善された引張り疲労強度、剪断荷重における改善された疲労強度、又はそれら両方を呈することができる。第三の例では、骨と、インプラントの第一粗化表面との間に形成されたセメント結合と比較して、骨と、インプラントの第二粗化表面との間に形成されたセメント結合の磨耗低下を呈することができる。
【0007】
第一粗化表面の作製は、ブラスト、研磨、スプレー、鋳造、及び機械的変形のうち少なくとも1つを使用して基材表面を粗くすることによって行うことができる。例えば、粒子ブラストを利用することができ、この粒子は所望により無機材料及びガラスのうち少なくとも1つを含み得る。いくつかの実施形態において、ブラストプロセスの1つ以上の粒子は、第一粗化表面に埋め込まれ得る。そのような場合、処理製剤への第一粗化表面の曝露により、第一粗化表面から1つ以上の粒子を除去することができる。
【0008】
第二粗化表面は、本明細書に開示される1つ以上の特徴を呈し得る。例えば、第一粗化表面及び第二粗化表面のそれぞれのR値は、実質的に同様であり得る(例えば、R値は約20%未満の差であり得る)。別の例において、第二粗化表面には、粒子ブラストによる粒子が実質的にない状態であり得る。更に別の例において、第二粗化表面は、エネルギー分散型X線分光法による測定で約30%未満の、粒子ブラストによる非在来物質の表面被覆を呈する。場合によっては、第二粗化表面は第一粗化表面が呈するRsk値と比べて低いRsk値を呈し得る。
【0009】
場合によっては、製造方法の一部として、インプラントを患者に固定するための、セメント製剤をインプラント表面(例えば第二粗化表面)に適用又は接触させる説明などの、インプラント使用に関する説明を提供することができる。
【0010】
本発明の他の実施形態は、整形外科用インプラントを目的とし、これは所望により、本明細書に開示されるプロセスのうち1つ以上を用いて製造することができる。このインプラントには、セメントとの固着を強化するように改変された表面が含まれ得る。インプラント表面は、コバルトクロム合金を含む表面などの金属性表面であり得るが、これは非在来物質が実質的にない状態であり得る。この表面はまた、セメント製剤(例えばポリメチルメタクリレート系セメント)に接触し得る。このインプラント表面は、任意の数の特徴を呈し得る。例えば、インプラント表面のR値は約0.1マイクロメートル〜約100マイクロメートルであり得る。別の例では、このインプラント表面は負のRsk値を呈し得る。更に別の例では、このインプラント表面は、エネルギー分散型X線分光法による測定で約30%未満の、基材物質とは異なる物質による表面被覆を呈し得る。別の例では、このインプラント表面は、約0.1マイクロメートル〜約20マイクロメートルの平均くぼみ直径を呈し得る。いくつかの実施形態ではこのくぼみ直径は相互に連結しているか、又はある程度重なり合っている状態であり得る。
【0011】
本発明の更なる実施形態は、整形外科用インプラントを使用する方法を目的とする。そのようなインプラントには、本明細書に開示されている任意のインプラントが含まれ得、検討される任意の製造方法を用いて製造することができる。場合によっては、インプラントは、患者に挿入できるセメントとの固着を強化するように改変された表面を有するよう提供される。例えば、このインプラントは、セメント(例えばポリメチルメタクリレート系セメント)を使用して、患者の骨に取り付けることができる。別の例では、このインプラントはシース内に挿入することができ、このシースとインプラントの組み合わせは、患者内で取り外し可能な人工装具として機能することができる。インプラント表面は、非在来物質(例えば微粒子)が実質的にない状態であり得、約0.1マイクロメートル〜約100マイクロメートルのR値、及び/又は負のRsk値を呈し得、並びに/あるいは約0.1マイクロメートル〜約20マイクロメートルの平均くぼみ直径を呈し得、このくぼみは所望によりある程度重なり合っていてよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明の態様は、以下の「発明を実施するための形態」を添付の図面(必ずしも等尺で描図されていない)と併せて解釈することにより、より完全に理解されるであろう。
【図1A】正のRsk値を呈する、粗化表面の概略的側面図。
【図1B】負のRsk値を呈する、粗化表面の概略的側面図。
【図2】本発明のいくつかの実施形態に一致するインプラントを製造するための方法のフローチャート。
【図3A】本発明の実施形態の一部を実施し、引張接着試験のために使用される、数マイクロメートル程度の散在するくぼみを有する滑らかな表面を有する、鋳造コバルトクロムモリブデン合金基材のZrブラスト(二酸化ジルコニウム粒子)表面を示す二次電子顕微鏡写真。
【図3B】図3Aのキャプションの記述に従い作製され、次に塩酸溶液で処理された表面の二次電子顕微鏡写真。この表面は、全体を覆う数百ナノメートル程度の相互に連結したエッチング穴及び数マイクロメートル程度の散在するくぼみを有する。
【図4A】リング剪断接着試験に使用される鋳造CoCrMoシヤーピン(直径0.64cm(0.25”)、長さ10.2cm(4”))の対照サンプルの後方散乱電子像。このシヤーピン表面は、マイクロメートル単位の大きさの表面欠陥/くぼみをところどころに有する滑らかな表面を有する。
【図4B】まず図4Aのキャプションの記述に従い作製され、次に塩酸溶液で処理された表面の後方散乱電子像。処理されたシヤーピンの表面には、1〜数マイクロメートルの相互に連結した酸エッチング穴が見られる。
【図5】図4A及び4Bに示した対照及び処理済みサンプルのリング剪断接着強度を示す棒グラフ。幅広の棒の高さは、対応するサンプルタイプの平均剪断強度を表し、細い線の位置は個々のサンプルの値分布を表す。
【図6A】リング剪断実験後の対照サンプル表面の後方散乱電子像。
【図6B】リング剪断実験後の処理済みサンプルの後方散乱電子像。濃い色の粒子は、図6Aに示す対照サンプルに比べ、処理済み表面に接着したPMMAセメントの存在が増大していることを示しているが、これは、対照よりも処理済みサンプル/PMMAセメントの界面での機械的連結が改善されたことによるものである。
【図7A】本発明の実施形態の一部を実施した、P−ブラスト(60グリットの酸化アルミニウム粒子とガラスビーズとの50/50混合物)でブラストを行ったコバルトクロムモリブデン合金基材表面の後方散乱電子顕微鏡写真。不規則に変形した表面パターンが示されている。
【図7B】図7Aのキャプションの記述に従い作製され、次に塩酸溶液で処理された表面の後方散乱電子顕微鏡写真。この表面には、マイクロメートル及びサブミクロンの大きさの連続した丸いエッチング穴/くぼみが見られる。
【図8】図7A及び7Bのキャプションに記述されている、アルミナ/ガラスでブラストされた基材の引張り強度疲労試験の結果を示したグラフ。矢印は、選択された試験サイクル回数の後、破壊せずにランアウト状態が達成されたことを示す。
【図9A】PMMAセメントを接触させるためのコバルトクロムモリブデン合金の大腿骨膝関節インプラント表面の後方散乱電子顕微鏡写真。本発明の実施形態の一部を実施し、グリットブラスト残留物(濃い色のスポット)を有する不規則に変形した表面パターンが、アルミナブラストされた表面に見られる。
【図9B】まず図9Aのキャプションの記述に従い作製され、次に塩酸溶液で処理されたインプラント表面の後方散乱電子顕微鏡写真。この表面には、マイクロメートル及びサブミクロンの大きさの連続した丸いエッチング穴/くぼみが見られる。
【図10】X線光電子分光法によって測定された、図9A及び9Bに示した対照及び処理済みサンプルの面積当たりの表面のグリット残留物を示す棒グラフ。幅広の棒の高さは、対応するサンプルタイプの平均表面グリット残留物パーセントを表し、細い線の位置は個々のサンプルの値分布を表す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書で開示される装置及び方法の構造、機能、製造、及び使用の原理が総括的に理解されるように、特定の例示的実施形態について、これから説明することにする。これらの実施形態の1つ以上の実施例を添付の図面に示す。本明細書で詳細に説明し、添付の図面に示す装置及び方法は、非限定的な例示的実施形態であること、並びに、本発明の範囲は、特許請求の範囲のみによって定義されることが、当業者には理解されよう。ある例示的実施形態に関連して例示又は説明される特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わされてもよい。そのような修正及び変形は、本発明の範囲に含まれることを意図する。
【0014】
本発明の実施形態は、構造的置換体(例えば関節置換体)として機能するように患者に挿入できる、インプラント、インプラントを含むキット、及びインプラントの形成方法を目的とすることができる。このようなインプラントはセメント結合(例えばポリメチルメタクリレート(「PMMA」)を含むセメント)の強度を強化する表面を有することができ、これが患者の一部(例えば患者の骨)にインプラントを固定する働きをすることができる。インプラントと対象物との間のセメント結合の強度は、引張り強度、剪断強度、ねじれ強度、引張り疲労特性(例えば破壊強度及び/又は破壊するまでのサイクル数)、剪断疲労特性、並びにねじれ疲労特性のうち、1つ以上によって特徴付けられる。インプラントのセメント結合強度の強化は、従来技術プロセス(例えば、アルミナ、シリカ、ジルコニア、及び/又はその他の粒子による表面グリットブラスト)によって作製されたインプラント表面に関連するセメント結合強度に関連し得る。そのようなインプラントの表面は、任意の数の物理的特性、化学的特性、又はプロセス由来の特性によって特徴付けることができる。これには例えば、特定の範囲のR値(約0.1マイクロメートル〜約100マイクロメートルなど)によって特徴付けられる粗さを有すること及び/若しくは約0.1マイクロメートル〜約20マイクロメートルの平均直径を有する複数のくぼみ(重なりなど)を呈すること、並びに/又はRsk(負の値を有するなど)、などがある。
【0015】
いくつかの特定の実施形態は、第一粗化表面が初期R値(例えば約0.1マイクロメートル〜約100マイクロメートル)を呈するように設けられているプロセスを用いてそのようなインプラントを作製するよう導かれている。この第一表面は、例えばグリットブラスト、又は他のタイプの機械的粗化機構など、従来の表面粗化方法を用いて提供され得る。第一粗化表面を処理製剤(例えば酸製剤)に曝して、第一粗化表面よりも強化されたセメント固定特性を呈する第二粗化表面を提供することができる。第二粗化表面は、任意の数の化学的及び/又は物理的特性を呈し得る。例えば、第二粗化表面は第一粗化表面とほぼ同じR値を有してもよく、第二粗化表面のRsk値は第一粗化表面のRsk値よりも小さくてもよく、及び/又は第二粗化表面のRsk値は負であってもよい。
【0016】
本明細書で検討される実施形態の一部に一致するインプラントは、これまでに製造されてきたインプラントに比べ、有利な特性を呈し得る。例えば、従来のグリットブラストやその他の粗化技法を使用してインプラントの初期粗化表面をもたらした場合、処理された粗化表面はより強いセメント結合を提供し得るが、表面のR値は実質的に変化しない。これは、より良いセメント結合を供給するために表面の粗さを増大させることに通常関連する、強化された磨耗及び/又は疲労損失の影響を減少させるのに役立つ。同様に、結合強度の強化は顕著であり得る。第一粗化表面と第二粗化表面との間の、引張り強度、剪断強度、ねじれ強度、及び疲労特性の一部のいずれかにおける強化は、約10%超、約20%超、約30%超、約40%超、約50%超、約60%超、約80%超、約100%超、約120%超、約140%超、約160%超、約180%超、約200%超、約220%超、約240%超、約260%超、約280%超、若しくは約300%超、又はこれらの割合より大きい、これらの割合より小さい、若しくはこれらの割合の中間であり得る。よって、従来考えられていた効果とは対照的に、これらの実施形態は、表面インプラントのRに対して極めて非線形的のセメント結合強度において予想外の変化を呈し得る。
【0017】
インプラント特性及び表面の特徴
本出願の実施形態に一致するインプラントは、強化されたセメント結合強度を呈するよう、何らかの方法で改変された表面を有する基材から形成され得る。基材及び/又は基材表面の組成は、本明細書で説明する実施形態と好適に調和する任意のものとすることができる。金属、セラミックス、ポリマーなどの材料及び他の材料を、材料の複合体を含めて、利用することができる。いくつかの実施形態において、基材表面は金属性とすることができる。広くは、用語「金属性」は、少なくともいくらかのバルク金属の性質を有する物体を記述するために使用される。したがって、金属性表面及び基材は、バルク金属の特性と類似した少なくとも1つの特性を呈する。例えば、微量な金属不純物の汚染物を有する非金属性材料は、金属性表面及び基材の記述から除外することができる。インプラントに使用する金属性材料の例には、ステンレススチール(例えば316L)、チタン系材料、チタン系合金(例えばTi6Al4V)、及びクロム系合金(例えばコバルトクロム合金又はコバルトクロムモリブデン合金)など、患者への医療移植に好適な任意のものを挙げることができる。コバルトクロム合金の例には、ASTM規格F 1537−00及びF 75−01に一致する合金、及び実質的に約25%超のクロム(例えば約26%〜約30%の範囲のクロム)と、約3%超のモリブデン(例えば約5%〜約7%の範囲のモリブデン)と、を有するコバルトクロムモリブデン合金が挙げられる。
【0018】
本明細書で開示されるインプラントの固定は、インプラントの表面及び患者の一部(例えば患者の骨)に接触するセメント製剤を利用することができる。したがって、本発明の多くの実施形態は、インプラントと患者の骨との間の結合を形成するセメントの利用を目的とする。インプラントを固定するには、任意の好適なセメントを使用することができるが、本発明のいくつかの実施形態では、ポリメチルメタクリレート系樹脂(「PMMA」)を含むセメント製剤などの、アクリル系セメントが利用される。セメントは、液体のモノマー構成要素を固体のポリマー構成要素と混合することによって形成することができる(例えば、PMMAセメントは通常、PMMA粒子を液体モノマーと混合することにより形成される)。重合開始剤、放射線乳白剤(radio-opacifier)(例えばジルコニア及び/若しくは硫酸バリウム)、並びに/又は生理活性構成要素(例えば抗生物質)などの他の構成要素も、所望により含めることができる。
【0019】
本明細書で検討するように、インプラント、及びそのインプラントを作製するためのプロセスは、強化されたセメント結合強度を呈し得るようなインプラント表面を伴い得る。したがって、インプラント表面は、セメント結合強度の強化に寄与できる、1つ以上の化学的特性、物理的特性、及び/又はプロセス由来の特性を有し得る。本明細書で検討されるいくつかの実施形態は、強化されたセメント結合強度に関連付けることができる特定の表面特性を参照するが、すべての実施形態がそのような特性を備えたインプラントに限定されるわけではないことを理解されたい。例えば、いくつかの実施形態において、製造されたインプラントの特性は、製造プロセスによるものであり得るが、これは必ずしも、本明細書で明示的に検討される1つ以上のインプラント特性と関連付けられるものではない。
【0020】
いくつかの実施形態において、インプラントの表面に関連付けられた、強化されたセメント結合強度は、少なくとも部分的に、インプラントの表面の粗さに起因し得る。いくつかの実施形態において、インプラントの表面の粗さは、本明細書に定義される1つ以上の粗さ値によって特徴付けられる。本明細書で利用されるように、粗さ値(例えばR)、及びその他の、長さ尺度を有する粗さ測定値は、他に明示的に記述されていない限り、マイクロメートル単位で特徴付けられる。
【0021】
1つの例において、表面の粗さはR値で特徴付けられ、式中、Rは数学的に次のように定義される:
【数1】

式中、Lは該値によって特徴付けられるサンプルの長さであり、yは所与の位置における高さであり、Yはサンプルの長さLに沿った平均高さである。別個の数学的計算において、Rは次の式で得られる:
【数2】

式中、Nは計算における別個の測定値の合計数であり、yはi番目の測定の高さの値である。したがって、Rは、所与のサンプル長さにわたる、粗さプロファイルの中央線からの算術平均偏差の測定値を提供する。
【0022】
表面の粗さはR値によっても特徴付けることができ、ここでRは数学的に次のように定義される:
【数3】

又は別個の計算を行う:
【数4】

【0023】
したがって、Rは、所与のサンプル長さにわたる、粗さプロファイルの中央線からの2乗平均平方根偏差の値を提供する。
【0024】
粗さの別の特性付けは、R値により提供することができ、ここでRは数学的に次のように定義される:
【数5】

式中、平均高さYを有するサンプル長さLについて、ypは長さLにわたって記録されたYを超えるi番目に高いピークであり、yvは長さLにわたって記録されたYを下回るj番目に低い谷である。したがって、Rは、選択された長さLにわたる、最も高い5つの測定ピーク値と、最も低い5つの測定谷値とを使用して、粗さプロファイルの中央線からの算術平均偏差の値を提供する。
【0025】
表面粗さはまた、Rsk値によっても特徴付けることができ、ここでRskは数学的に次のように定義される:
【数6】

これは、長さLの振幅密度関数の3次モーメントを、Rの3乗で割ったものであり、又は別個の計算を行う:
【数7】

【0026】
したがって、Rskは表面の非対称性を特徴付ける。例えば、図1Aに示すように、粗化表面について、表面特性が平面的表面からの突出部として特徴付けられる場合、Rsk値はゼロより大きい。ゼロ未満である負のRsk値は、表面の谷の方がピークよりも目立って存在することを示す。そのような表面の例を図1Bに示す。図中、表面の特徴は全般に、平面的表面に入る谷である。一般に、負のRsk値を有する表面は負の抜き勾配(negative draft)を呈すると言うことができ、通常、良好な潤滑表面として作用し得る。
【0027】
当業者には理解されるように、R値、並びに他の粗さ値は、同様に作製されたサンプルであってもかなりの値分散を呈し得ることに注目すべきである。同様に、また本出願全体を通して使用されているように、値が互いの約30%以内である場合、すなわち、粗さ値の差を小さい方の粗さ値で割った絶対値が、約0.3以下の値である場合は、2つの粗さ値(例えばR値)は「実質的に類似」であると見なされる。別の実施形態において、2つの粗さ値は互いの約25%以内、約20%以内、約15%以内、約14%以内、約13%以内、約12%以内、約11%以内、約10%以内、約9%以内、約8%以内、約7%以内、約6%以内、約5%以内、約4%以内、約3%以内、約2%以内、約1%以内、又はこれらの割合より大きい、これらの割合より小さい、若しくはこれらの割合の中間であり得る。
【0028】
表面粗さ値の実際の実験的測定は、当業者に既知である技法を利用することを含め、さまざまな異なる方法で実施することができる。本出願全体を通して使用されているように、R値は、先端サイズが半径1.5マイクロメートル以上の標準ダイヤモンドスタイラスを使用した接触表面計など、典型的な測定装置で測定することができる。いくつかの実施形態において、R値は半径約2マイクロメートル以上の先端サイズを有する標準ダイヤモンドスタイラスを使用して測定することができる。例えば、本明細書の実施例の項のR値は、TiMSソフトウェア及び先端半径1.5〜2マイクロメートルのダイヤモンド先端を使用したZeiss Surfcom 5000接触表面計を用いて測定された。サンプル長さは通常0.8mmであり、評価長さは0.8mm×5であった(すなわち、0.8mmのサンプル長さを5つ用いて、所定のR値を評価した)。
【0029】
同様に、R、R、及びRskはさまざまな方法で評価することができる。本明細書に開示されている多くの実施形態において、R、R、及びRskは、Rと同様の方法で評価される(例えば、先端半径が約1.5マイクロメートル以上、又は約2マイクロメートル以上、又はある中間値のダイヤモンドスタイラスを有する接触表面計を使用)。一般に、本明細書の実施形態に関連する粗さ値は、ASME95標準に準拠して評価される。
【0030】
したがって、いくつかの実施形態において、強化されたセメント結合特性を呈するインプラント表面は、約0.1マイクロメートル〜約100マイクロメートルの範囲のR、R、及びR値のうち少なくとも1つによって特徴付けられ得る。他の実施形態において、この範囲の下の値は約0.5マイクロメートル又は約1マイクロメートルであり得、この範囲の上の値は約50マイクロメートル又は約10マイクロメートルであり得る。同様に、又は加えて、インプラント表面は負のRsk値により特徴付けられ得る。特定の理論に束縛されるものではないが、いくつかの実施形態について、本明細書で開示されるR、R、若しくはR値を負のRsk値と共に有し、及び/又は約100nm〜約20マイクロメートルの範囲の重なり合ったくぼみ直径を有する、インプラント表面は、セメント接着に有用であり得ることが推測される。例えば、R値は長さにわたって平均表面プロファイル高さを特性付けることができる。負のRskが大きいほど、直観的に、PMMAセメントがより緊密に表面に接触することが可能になり、セメントと基材表面との間の隙間が小さくなる。例えば、図1に示されている表面に比べ、図2に示されている表面の負のRsk値がより大きい。他の潜在的利点は、挿入されたインプラントとセメントとの間に、磨耗したPMMA粒子が発生し望ましくない骨溶解を引き起こし得る相対的移動が存在する場合、R値が適切なセメント結合引張り強度をもたらすのに十分であり得、負のRsk値がセメント残留物の生成を阻害するのに貢献することができる、ということであり得る。
【0031】
表面の粗さは、例えば平均くぼみ直径など、他の幾何学的検討事項によっても特徴付けることができる。したがって、いくつかの実施形態において、インプラント表面は約0.1マイクロメートル〜約500マイクロメートルの範囲の平均くぼみ直径によって特徴付けることができる。この下限は約0.2マイクロメートル、0.5マイクロメートル、1マイクロメートル、又はこれらの値より大きい、これらの値より小さい、若しくはこれらの値の中間の値であってもよい。この上限は約200マイクロメートル、約100マイクロメートル、約50マイクロメートル、約40マイクロメートル、約30マイクロメートル、約20マイクロメートル、約15マイクロメートル、約10マイクロメートル、約5マイクロメートル、約4マイクロメートル、約3マイクロメートル、約2マイクロメートル、約1マイクロメートル、又はこれらの値より大きい、これらの値より小さい、若しくはこれらの値の中間の値であってもよい。したがって、平均くぼみ直径は、本明細書に開示される下限と上限との任意の好適な組み合わせを用いた範囲であり得る。開口部の平均サイズは、選択された組の表面の凹み開口部の平均特徴長さスケールを指す。すべての表面開口部が完全に円形である場合、開口部の平均サイズは、開口部の平均直径となる。表面開口部が幾何学的に一様でない場合、開口部の平均サイズは、当業者に理解される値を有することができる。例えば、開口部の平均サイズは、その開口部の大きさの平均有効直径εであり得る(例えば、εはε=2(Δ/π)1/2の関係により定義され、式中、Δは開口部の面積である)。
【0032】
凹み開口部の大きさ又は他の物理的な表面の特徴(例えば、粗さ、凹みの大きさ、表面積など)を導出するための、1つ以上の表面特性の測定は、当業者に既知の技術のいずれかを用いて達成することができる。場合によっては、表面の凹みは、透過型電子顕微鏡法又は走査型電子顕微鏡法などの技術で得られた画像を用いて特徴付けることができる。画像は、凹み開口部寸法などの大きさを得るための従来の画像分析を用いて分析することができる。また、走査力顕微鏡法としても知られる原子力顕微鏡法などの他の技術を用いることもできる。
【0033】
いくつかの実施形態において、インプラント表面のくぼみの特性(例えば開口部の大きさ)は、特定のアスペクト比を呈するくぼみ、又は特定の平均アスペクト比を呈するくぼみ群に限定することができる。くぼみのアスペクト比は、くぼみの長軸寸法(すなわち最大の空間寸法)をくぼみの短軸寸法(すなわち、短軸に沿ったくぼみの最大の空間寸法に対応する、長軸上の点で引いた垂直線の空間寸法)で割った比として定義される。したがって、平均アスペクト比は、選択された組の、個々のアスペクト比すべての数平均である。いくつかの実施形態において、アスペクト比、又は平均アスペクト比は、約200未満、約100未満、約50未満、約40未満、約30未満、約20未満、約10未満、約5未満、約4未満、約3未満、約2未満、又は約1.5未満であり得る。よって、いくつかの実施形態では、くぼみは、長い、又は極端に細長いひびや割れ目として見えるもの以外の特徴に限定され得る。
【0034】
いくつかの実施形態において、インプラント表面のくぼみは重なり合う性質(すなわち、複数のくぼみが相互に連結している)を呈し得る。そのような実施形態において、くぼみの開口部の大きさは、その重なり合ったくぼみがない場合の個々の開口部の面積を補間して測定することができる。特定の理論に束縛されるものではないが、相互に連結したくぼみは、本明細書に開示されるように、インプラント表面が処理製剤に曝露することにより開始されるエッチングプロセスの結果形成され得ると考えられる。重なり合ったくぼみの数は、グリットブラストプロセスのみによって形成されるくぼみが呈する数よりも多いことがある。いくつかの実施形態において、ある領域での重なり合っているくぼみの合計数の割合は、約50%超、約60%超、約70%超、約75%超、約80%超、約85%超、約90%超、約95%超、約96%超、約97%超、約98%超、約99%超、又はこれらより大きい、これらより小さい、若しくはこれらの中間の値であり得る。
【0035】
上記で検討したように、他の物理的特性、化学的特性、及び/又はプロセス由来の特性は、粗さ以外のインプラント表面によるものであり得、これは少なくとも、強化されたセメント結合強度に部分的に寄与し得る。例えば、インプラントの表面は、非在来(non-native)物質の存在が実質的にない状態であり得る。本出願に使用されるとき、インプラント表面の文脈における語句(phase)「非在来物質」とは、インプラント表面を形成するのに使用される基材表面とは性質が異なる物質を指す。例えば、金属基材表面がセラミック粒子による衝撃を受けて粗化表面を形成した場合、その粗化表面はその中にセラミック粒子が埋め込まれることがある。すなわち、金属表面の金属は在来物質であり、セラミックは非在来物質である。
【0036】
更に、本出願に使用されるとき、非在来物質が「実質的にない」インプラント表面とは、非在来物質で覆われている被覆面積が40%未満であるインプラント表面を意味する。いくつかの実施形態において、非在来物質によるインプラント表面の被覆は、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、又はこれらより小さい、これらより大きい、若しくはこれらの中間の割合であり得る。非在来物質の表面被覆は、当業者に既知のものを含め、任意の数の方法を用いて測定することができるが、いくつかの実施形態では、表面被覆は、エネルギー分散型X線分光法を使用して測定することができる。別の潜在的な方法は、X線光電子分光法である。
【0037】
特定の理論に束縛されるものではないが、いくつかの実施形態において、インプラント表面の非在来物質の除去によるものであっても、及び/又は処理製剤によってもたらされ得る表面エッチングであっても、表面の凹み/くぼみの存在は、セメント結合強度を促進することができる。例えば、インプラント表面の酸化アルミニウム粒子の存在(例えば粗化表面を形成するためのグリットブラストによる)は、セメント/インプラントの直接的な機械的連結を阻害し得る。したがって、そのような粒子を除去することが、実質的にセメント結合強度を高めると考えられる。
【0038】
本出願に開示されている実施形態に一致したインプラントの使用には、本出願に記述されている任意の数の特徴及び特性を備えた表面を有するインプラントを提供することが含まれ得る(例えば、約0.1マイクロメートル〜約100マイクロメートルの範囲のR値、及び負のRsk値を呈するインプラント表面など)。このインプラントは次に患者に挿入することができ、このとき、セメント製剤(例えばPMMA反応性製剤)をインプラント及び/又は骨の表面に接触させることができる。製剤の硬化(これには放射線の適用を伴う場合がある)により、セメントを硬くすることができ、これによりインプラントが患者の骨に固定される。
【0039】
いくつかの実施形態において、本出願に開示されている内容に一致するインプラントは、キットの一部として含めることができ、このキットを流通業者及び/又はユーザーに提供することができる。キットには1つ以上のそのようなインプラントを含めることができ、かつ、そのようなインプラントの使用に関する説明を含めることができる。例えば、この説明は、インプラントを骨又は患者の身体の他の部分に固定するために、インプラントの表面(例えば第二粗化表面)にセメント製剤を塗布するようユーザーに指示することができる。キットには所望により、インプラントを患者に挿入する準備のための、セメント製剤構成成分及び/又は他の表面準備材料などの他の材料を含めることができる。そのような可能な組み合わせはすべて、本発明の範囲内である。
【0040】
いくつかの実施形態において、本出願に記述されているインプラントは、セメント又は他の技法を用いて、患者に埋め込むことができる。例えば、いくつかの実施形態に一致するインプラント(例えば、約0.1マイクロメートル〜約100マイクロメートルの範囲のR値、及び負のRsk値によって特徴付けられる表面を有するインプラント)は、説明書を含むキットの一部とすることができ、この説明書は、インプラントが、セメントを使用することによって、及び/又は被覆(例えばスリーブ)内に挿入してその組み合わせを患者に挿入することによって、体内に固定することができるということを示すことができる。後者の選択肢では、インプラントを後日除去するのがより簡単になり、インプラントの埋入プロセスでセメントの使用を排除することができる。
【0041】
現在、上述の挿入技法それぞれについて、2つの異なるインプラントが必要である。セメント固定のためのインプラントは通常、被覆と共に使用するためのインプラントに比べ、異なる(例えば、より高い)Rを有する表面を利用する。セメント用のインプラントのRは、セメント結合強度用に調整され、被覆用のインプラントのRはこれより低く、被覆表面とインプラント表面との間の選択された摩擦に調整される。本明細書の実施形態に一致したインプラントは、被覆使用の場合の低いRの表面を有することができ、同時に、同じ低いRを呈する従来のセメント固定インプラントよりも高い強度を備えるセメント結合を形成する能力が維持される。したがって、本明細書の実施形態に一致したインプラントは、両方のインプラント用途に好適であり得、これにより2つの異なるタイプのインプラントを在庫にもつことに関する製造及びロジスティクスの負担を軽減することができる。
【0042】
本明細書において開示される実施形態に一致する構造体が、本発明のいくつかの実施形態を表すにすぎないものであることが理解されよう。実際に、本出願における説明に開示される特徴の任意の置き換え及び組み合わせをまとめて、本発明のいくつかの態様に一致する実施形態を実施することができる。他の実施形態は、他の特徴、又は本明細書に開示される実施形態の特徴に対する修正及び/若しくは改変を含むことができる。実施形態の態様のいくつかは、そのようなインプラントを製造するのに採用され得るプロセスに関して、本明細書において更に詳しく説明される。要素に関して論じられる任意の数の態様は、本発明の範囲に従って、他の要素と組み合わせること、又は個々に実践することができる。
【0043】
強化されたセメント固定を呈するインプラント表面を製造するための方法
本発明のいくつかの実施形態は、強化されたセメント結合強度を呈する表面を備えたインプラントを作製するための方法を目的とする。そのような方法は場合によっては、本明細書に開示されているインプラントのいくつかを製造するのに使用することができるが、その方法はそれらのインプラントに必ずしも限定されないことが理解される。そのような作製方法のいくつかの具体的な実施形態を、図2に示すフローチャートを参照して説明することができる。一般に、インプラントの第一粗化表面が作製され(210)、ここで表面が、初期R値などの粗さ値によって特徴付けられる。第一粗化表面は処理製剤に曝されて、第二粗化表面を形成する(220)。第二粗化表面は、第一粗化表面を有するインプラントと患者との間に形成されるセメント結合に比べ、第二粗化表面と患者の一部(例えば患者の骨)との間に形成されるセメント結合の強度を強化することができる。所望により、このプロセスでは、更に残留物を除去するために、水でのすすぎ及び/又は超音波処理などの後処理工程を利用することができる。
【0044】
第一粗化表面の作製(210)は、任意の数の方法で実施することができる。いくつかの実施形態において、基材表面は、任意の数の機械的変形技法を使用して、第一粗化表面で形成、又は第一粗化表面へと改変することができる。非限定的な例には、粒子ブラスト、固体及び/又は液体混合物での表面研磨又は磨耗、スプレー、鋳造、並びに当業者に既知のものを含むその他の機械的変形技法が挙げられる。当業者には理解されるように、それに加えて、又はそれに代わって、さまざまな技法の中でも適切な化学的技法を用いることができる。
【0045】
特定の実施形態では、第一粗化表面を形成するのに、粒子ブラストが利用される。このプロセスは、金属インプラント表面を粗化するための従来技術プロセスに合致したものであり得る。任意の数のタイプの微粒子/グリットを使用して、粗化表面を形成することができるが、多くの実施形態では非在来物質(すなわち、ブラストされる基材表面の材料とは異なる化学的特性を有する物質)を利用している。ブラスト粒子は、二酸化ジルコニウム及び/又は酸化アルミニウム、あるいはガラス(すなわちシリカ)などの無機材料など、さまざまな材料で形成することができる。他のタイプの粒子には、塩化ナトリウム若しくは重炭酸ナトリウム、カルシウムとリン酸が任意の割合のリン酸カルシウム、又はこれらの材料の組み合わせなどの、水溶性粒子が挙げられる。粒径は、約10マイクロメートル〜約10mmの範囲であることができ、ブラストは6.9kPa(1PSI)〜1379.0kPa(200PSI)の圧力で可能である。そのような実施形態を利用する際、第一粗化表面はしばしば、表面上に埋め込まれるかあるいは配置された残留ブラスト粒子を有し得る。場合によっては、その粒子の被覆面積は、少なくとも約30%、約40%、約50%、又はそれ以上であり得る(例えば、エネルギー分散型X線分光法によって測定されたとき)。
【0046】
第一粗化表面の粗さは、本出願に記述されているものを含め、1つ以上の粗さ値によって特徴付けられ得る。例えば、いくつかの実施形態において、第一粗化表面は、約0.1マイクロメートル〜約100マイクロメートルの範囲のR、R、及びR値のうち少なくとも1つによって特徴付けられ得る。他の実施形態において、この範囲の下の値は約0.5マイクロメートル若しくは約1マイクロメートル、又は約10マイクロメートルであることができ、この範囲の上の値は約50マイクロメートルであることができる。表面の粗さは、他の特徴(例えば平均くぼみ直径)によっても特徴付けられ、これは本明細書に記述される最終インプラント表面の特徴と合致することもあればしないこともある。
【0047】
第一粗化表面を処理製剤に曝すことにより第二粗化表面を形成する際(220)、第一粗化方面よりも第二粗化表面のセメント結合特性を強化するために、多くのさまざまなタイプの製剤を利用することができる。処理製剤への曝露により、第一粗化表面を物理的、化学的、又は両方の形態で改変することができ、これによりセメント結合強度の強化をもたらすことができる。いくつかの実施形態において、これらの製剤は、曝露される基材表面の性質に基づいて、そのような特徴を付与するように選択することができる。例えば、製剤は、化学的/機械的特性を金属性の基材に付与するように特別に調整することができ、その金属性の基材は、チタン合金及び/又はクロム系合金とすることができる。
【0048】
いくつかの実施形態において、処理製剤にはエッチング製剤が含まれ、これが第一粗化表面を改変することができる。例えば、この製剤は酸製剤であってよい。酸製剤には、例えば米国特許第7,368,065号(この全体が本明細書に参照により組み込まれる)に開示されている、金属基材表面上にマイクロエッチング形状を生成する製剤が含まれ得る。別の方法としては、チタン合金又はコバルトクロム合金の表面など、いくつかの金属基材上にナノエッチング形状を生成し得る製剤が使用できる。そのような製剤の記述は、2009年4月15日に同時出願されている次の2つの米国特許出願に記述されている:(i)米国特許仮出願「Micro and Nano Scale Surface Textured Titanium−Containing Articles and Methods of Producing Same」、シリアル番号第61/169,443号、及び(ii)米国特許仮出願「Nanotextured Cobalt−Chromium Alloy Articles having High Wettability and Method of Producing Same」、シリアル番号第61/169,365号。これらの出願は共に、参照によってすべての内容が本願に組み込まれる。
【0049】
特定の実施形態において、酸製剤には、ハロゲン化水素酸、例えば実質的にフッ化水素酸を除外したハロゲン化水素酸が含まれ得る。同様に、そのような製剤はまた、王水及び/又はメタノールなど、潜在的に危険な他の成分を実質的に含まなくてもよい。ハロゲン化水素酸(例えばHCl、HBr、HI、又はこれらのいくつかの組み合わせ)は、1M〜12Mの濃度にすることができ、例えばハロゲン化水素酸とは異なる性質を有するハロゲン含有塩(例えば塩素含有の塩)、オキシ酸(例えばリン酸オキシ酸)、及びリン酸塩含有塩などの他の構成成分を含むことができる。いくつかの実施形態において、酸製剤は、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、又は他の適当な酸化剤などのオキシダントを含むこともできる。
【0050】
他の実施形態では、酸製剤は、オキシダントを実質的に含まないハロゲン化水素酸(例えばHCl、HBr、HI、及びその他のうちの1つ又はこれらの組み合わせ)を含むことができる(例えば、何らかのオキシダントが存在しても、曝露表面を改変する製剤の性能に影響しない)。酸の濃度は、約1N〜約12Nの範囲であってよい。製剤には、例えばハロゲン含有塩、又は酸製剤に可溶性のその他の薬剤など、他の構成成分も含まれ得る。
【0051】
例えば、コバルトクロム合金基材表面に適用される処理製剤のいくつかにおいて、酸製剤は、少なくとも約4Nの濃度のH、及び少なくとも約4Nの濃度のハロゲン化物(例えばCl)を有する。この製剤は更に、酸以外の塩化物含有化合物、又はその他のハロゲン化物含有化合物を、約0.01N〜8Nの範囲の濃度で含むことができる。いくつかの実施形態において、製剤は、約0.8〜約12Nの濃度のH、及び前記Hの濃度よりも高い濃度のClを有する。塩化物含有化合物の例としては、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、塩化カルシウム(CaCl)、塩化アンモニウム(NHCl)、塩化第二鉄(FeCl)、塩化第一鉄(FeCl)、塩化コバルト(CoCl)、塩化マグネシウム(MgCl)及びこれらの混合物が挙げられる。
【0052】
チタン含有基材表面に適用される処理製剤において、酸製剤は、少なくとも約0.07Nの濃度のH、及び少なくとも6Nの濃度のハロゲン化物(例えばCl)を有することができる。いくつかのプロセスでは、溶液は、少なくとも約0.07Nの濃度のH、及びそのHの濃度よりも高い濃度のハロゲン化物(例えばCl)を有する。この製剤は更に、約0.01N〜10Nの範囲の濃度で、塩化物含有塩又はその他のハロゲン化物含有塩を含むことができる。いくつかの実施形態において、製剤は、約0.07〜約12Nの濃度のH、及びそのHの濃度よりも高い濃度のClを有する。
【0053】
場合によっては、基材表面は、所望の改質(例えば、平均開口部寸法及び/又は平均深さ)を生じさせるのに十分な期間にわたって、製剤に曝露されることができる。いくつかの実施形態において、任意の単一の製剤の曝露は、約24時間未満、又は約12時間未満、又は約6時間未満、又は約2時間未満、又は約1時間未満である。曝露時間は、約2分超、約5分超、約10分超、約15分超、約20分超、又は約30分超であり得る。いくつかの実施形態において、曝露時間は約30分より長く、約24時間より短くすることができる。
【0054】
いくつかの実施形態において、製剤は、その製剤が安定であることができる(すなわち燃焼しにくい)適切な熱的条件下で利用することができる。例えば、製剤は、約10℃超であるが約30℃未満、40℃未満、50℃未満、60℃未満、70℃未満、80℃未満、90℃未満、又は100℃未満の温度で使用することができる。例えば、製剤は、曝露の間、約15℃〜約30℃、又は約20℃〜約40℃の温度に保たれる。
【0055】
前述のように、処理製剤に対する第一粗化表面の曝露により、物理的改変、化学的改変、又はその両方を生じさせることができ、これにより改変された表面のセメント結合強度の強化をもたらすことができる。いくつかの実施形態において、第一及び第二粗化表面のR値は実質的に同様であるか、あるいは互いの約25%以内、約20%以内、約15%以内、約14%以内、約13%以内、約12%以内、約11%以内、約10%以内、約9%以内、約8%以内、約7%以内、約6%以内、約5%以内、約4%以内、約3%以内、約2%以内、約1%以内、又はこれらより大きい、これらより小さい、若しくはこれらの中間の割合であり得る。ただし、他の物理的変化も可能であり得る。例えば、処理製剤によって、第二粗化表面のRsk値が負になることがあり、及び/又は第一粗化表面のRsk値より低い値になることがある。第一及び第二粗化表面の間で、処理製剤によってRsk値が低くなる度合は、場合によって異なる。いくつかの実施形態において、この低下は、第一粗化表面のRsk値の絶対値に比べて、約25%超、50%超、75%超、100%超、又はそれ以上となり得る。
【0056】
特定の理論に束縛されるものではないが、場合によっては、Rsk値の低下は、第一粗化表面に埋め込まれている粒子(例えば粒子ブラスト工程による非在来粒子)が処理製剤の作用によって除去されたことによるものであると考えられる。したがって、そのような粒子の除去は、Rに実質的な変化を生じさせることなく、Rsk値の低下をもたらし得る。ゆえに、実質的により高いR値(磨耗耐性を低下させ得る)を生じさせることなく、より大きなセメント固定のための表面積を生成することができると考えられる。
【0057】
関連する実施形態において、処理製剤は第二粗化表面を非在来物質が実質的にない状態にすることができ、例えば、非在来物質の被覆面積は約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、又はこれらより小さい、又はこれらより大きい。前述のように、酸化アルミニウム粒子などの粒子を除去し、これにより表面の90%以上が非在来粒子のない状態になると、セメント結合強度の強化がもたらされる。
【0058】
いくつかの実施形態において、第一粗化表面を処理製剤に曝露させることにより、本明細書の他の実施形態に記述されるいくらかの物理的変化なしに、実質的により良いセメント結合強度を備えた第二粗化表面がもたらされ得る。例えば、クロムコバルト合金基材は、ジルコニアでの粒子ブラストによる表面の粗化によって作製され、少量のジルコニア残留物がこのブラストされた表面に埋め込まれた。次に行われるこの表面に対する酸製剤曝露では、どの程度非在来粒子物質が除去されたかについては、あまり明らかな証拠が提供されなかった。第一粗化表面及び第二粗化表面に関連するRsk値は、第一粗化表面がRsk>−0.5のとき、第二粗化処理後に、より大きな負の値になった。第一粗化表面がRsk<−0.5のとき、第二粗化表面のRskには小さな又は統計的に有意でない変化が生じ得る。それにもかかわらず、セメント結合の引張り強度は、第二粗化表面において約250%〜約300%増大した。
【0059】
特定の理論に束縛されるものではないが、ピーク分布(すなわちRsk)のトポグラフィー変化、及び/又は残留物の除去、及び/又は第一粗化表面への表面の凹み/くぼみの追加が、例えば、PMMA系セメントとクロムコバルト金属表面との間の高い結びつきを生じることになる、結合強度の増大の原因となっている可能性がある。そのような変化は、第一粗化表面に対する処理製剤の曝露によって凹み及びくぼみの生成(例えば、約100nm〜約20マイクロメートルの平均直径を有する重なり合ったくぼみ)をもたらしたことによるものであり得る。この変化は、ブラスト粒子又はその他の非在来粒子の除去を伴って、又は伴わずに、起こり得る。
【0060】
いくつかの実施形態において、第一粗化表面を処理製剤に曝露させることにより、第一粗化表面に比べてエッチング特徴を呈する第二粗化表面をもたらし得る。例えば、酸製剤などの処理製剤は、第一粗化表面をエッチングするよう作用して、追加のくぼみの生成及び既存のくぼみの変形などの、形態的な変化をもたらすことができる。いくつかの実施形態において、エッチング溶液によって生じた追加の特徴により、実質的に同様のR値を有する表面をもたらすことができ、Rsk値は所望により更に大きな負の値となり得る。
【0061】
本明細書のいくつかの実施形態によるインプラントの作製において、製造者は、製品にそのようなインプラントの使用に関する説明を含めることができる。したがって、場合によっては、インプラントを作製する方法には、セメントをインプラント表面(例えばインプラントの第二粗化表面)に接触させてインプラントを患者に固定する説明などの、インプラントの使用に関する説明を提供することが含まれ得る。
【実施例】
【0062】
以下の実施例は、本発明のいくつかの実施形態を説明するために提供される。実施例は、利用される任意の特定の実施形態の範囲を制限することを目的とするものではない。
【0063】
実施例1:ジルコニアブラスト基材−対照及び処理済み
鋳造コバルトクロムモリブデン(ASTM F75)ロッド金属材料(直径1.9cm(0.75”)、長さ数フィート)を機械で切断して、1.9cm(0.75”)(直径)×3.8cm(1.5”)(長さ)の円筒とした。試験表面は、ジルコニアブラスト(「Zrブラスト」)の前に研磨して(R<0.2マイクロメートル)、機械加工のアーチファクトを除去した。試験円筒を、通常の室内条件下、作業距離は約10.2〜20.3cm(4〜8インチ)、275.8kPa(40PSI)、ブラスト時間は約5〜約30秒間で、B60グリットの二酸化ジルコニウムビーズで粒子ブラストを行った。ブラストした表面を、圧縮空気で吹き飛ばしてきれいにした後、洗剤中(1〜2% Alconox)及び逆浸透(「RO」)水中で超音波洗浄した。次いでこの表面を60℃で乾燥させた。
【0064】
多くの数のこれらサンプルを試験のために取っておいた。これらは、対照サンプルとして指定された。残るサンプルは、18〜23℃の室内条件で24時間、8Nの塩酸溶液で更に処理された。試験円筒を次にRO水ですすぎ、RO水中で20分間超音波洗浄してから、RO水で合間にすすぎながら10分間及び5分間、RO水中で超音波洗浄した。次にこの円筒を乾燥炉中、60℃で少なくとも2時間乾燥させた。この酸処理サンプルは、処理済みサンプルとして指定された。
【0065】
対照サンプル表面及び処理済みサンプル表面の、代表的な二次電子顕微鏡写真(Quanta 600F、高真空中20KV、スポットサイズ3、作業距離6〜15mmで使用)を、それぞれ図3A及び3Bに示す。
【0066】
多くの対照サンプル及び処理済みサンプルのRを、接触表面計(Zeiss Surfcom 5000)を用いて、先端サイズが1.5〜2.0マイクロメートルの標準ダイヤモンドスタイラスを使用し、測定した。各サンプルの平らな表面の半径方向に沿って0°、90°、180°、270°で、4つの測定値が収集された。サンプル長さは0.8mmであり、評価長さは0.8mm×5であった(すなわち、0.8mmのサンプル長さを5つ用いて、所定のR値を評価した)。各サンプルタイプにつき6つのサンプルが測定されて、そのサンプルの平均R値が決定された。
【0067】
対照サンプル(n=10)及び処理済みサンプル(n=10)で形成されたセメント結合の引張り強度が、下記のプロトコルを使用して決定された。DePuy SmartSet(登録商標)MVセメントを流体形態で各試料に対して成形し、硬化体積28.5mmとし、最低24時間、周囲空気中で硬化させた。この試料を次に、MTS Alliance RF/100スタティック試験フレームに取り付けられたピン止めされたU字形金具内に挿入し、ここで、破壊されるまで2.54mm/分で、静的引張り荷重が試料に対し印加された。各サンプルには5つの試料が含まれた。
【0068】
【表1】

【0069】
及び引張り強度測定の結果を表1にまとめる。全般に、酸による処理は、サンプルの平均R値に統計的には影響を与えていない。しかしながら、処理済みサンプルで形成されたセメント結合の引張り強度は、275%を超える驚くべき増加を示した。
【0070】
実施例2:対照及び処理済み表面の剪断強度の比較
サンプルは、0.64cm(0.25”)(直径)×10.2cm(4”)(長さ)の寸法を有する鋳造CoCrMo(ASTM F75)シヤーピンから形成された。これらピンの表面粗さは、鋳造成形及びその後の表面スケール洗浄に由来する粗さであった。
【0071】
多くの数のこれらサンプルを試験のために取っておいた。これらは、対照サンプルとして指定された。残るサンプルは、18〜23℃の室内条件で24時間、8Nの濃度を呈する塩酸溶液で更に処理された。次にこの部分をRO水ですすぎ、RO水中で20分間超音波洗浄してから、RO水で合間にすすぎながら10分間及び5分間、RO水中で超音波洗浄した。次にこの円筒を乾燥炉中、60℃で少なくとも2時間乾燥させたこの酸処理サンプルは、処理済みサンプルとして指定された。
【0072】
対照サンプル表面及び処理済みサンプル表面の、後方散乱電子検出器を用いた代表的な二次電子顕微鏡写真(Quanta 600F、高真空中20KV、スポットサイズ3、作業距離8〜15mmで使用)を、それぞれ図4A及び4Bに示す。
【0073】
多くの対照サンプル及び処理済みサンプルのRを、接触表面計(Zeiss Surfcom 5000)を用いて、先端サイズが1.5〜2.0マイクロメートルの標準ダイヤモンドスタイラスを使用し、測定した。各サンプルについて0°、90°、180°、270°の回転で長軸に従った表面で、4つの測定値が収集された。サンプル長さは0.8mmであり、評価長さは0.8mm×5であった(すなわち、0.8mmのサンプル長さを5つ用いて、所定のR値を評価した)。各サンプルタイプ(対照及び処理済み)につき10個のサンプルが測定され、そのサンプルの平均R値が決定された。
【0074】
測定の結果、対照サンプルは0.40μm±0.06μmの平均R値を呈し、処理済みサンプルは0.38μm±0.05μmの平均R値を呈した。したがって、処理済みサンプルは、対照サンプルと統計学的に同じRを有する。
【0075】
リング剪断引張り試験において、10個の対照サンプル及び10個の処理済みサンプルが試験された。リング剪断接着測定の結果を図5に示す。棒の高さは平均リング剪断応力を示し、エラーバーはサンプルタイプそれぞれの測定値の範囲を示す。試験後の対照表面及び処理済み表面の、代表的な後方散乱電子顕微鏡写真(Quanta 600F、高真空中20KV、スポットサイズ3、作業距離8〜15mmで使用)を、それぞれ図6A及び6Bに示す。図6A及び6Bの図に、ポリメチルメタクリレートセメントの残留物が、濃い色のスポットとして見られる。処理済み表面の残留物の数が大きいと、一般に基材表面とのセメントの接着が強くなる。
【0076】
実施例3:アルミナ/ガラスブラスト基材−対照及び処理済みサンプル
鋳造コバルトクロムモリブデン(ASTM F75)ロッド金属材料(直径1.9cm(0.75”)、長さ数フィート)を機械で切断して、1.9cm(0.75”)(直径)×3.8cm(1.5”)(長さ)の円筒とする。試験表面は、ジルコニアブラストの前に研磨して(R<0.2マイクロメートル)、機械加工のアーチファクトを除去した。試験円筒は、60グリットのアルミナ粒子/60グリットのガラスビーズの50/50混合物で、通常の室内条件で、作業距離約10.2〜20.3cm(4〜8インチ)を、137.9kPa(20PSI)で用い、ブラスト時間を約5秒〜約30秒間にして、粒子ブラスト(「Pブラスト」)を行った。ブラストした表面を、圧縮空気で吹き飛ばしてきれいにした後、洗剤中(1〜2% Alconox)及び逆浸透(「RO」)水中で超音波洗浄した。次いでこの表面を60℃で乾燥させた。
【0077】
多くの数のこれらサンプルを試験のために取っておいた。これらは、対照サンプルとして指定された。残るサンプルは、18〜23℃の室内条件で24時間、8Nの濃度を呈する塩酸溶液で更に処理された。次にこの部分をRO水ですすぎ、RO水中で20分間超音波洗浄してから、RO水で合間にすすぎながら10分間及び5分間、RO水中で超音波洗浄した。次にこの円筒を乾燥炉中、60℃で少なくとも2時間乾燥させた。この酸処理サンプルは、処理済みサンプルとして指定された。
【0078】
対照サンプル表面及び処理済みサンプル表面の、代表的な後方散乱電子顕微鏡写真(Quanta 600F、高真空中20KV、スポットサイズ3、作業距離8〜15mmで使用)を、それぞれ図7A及び7Bに示す。図7Aは、サンプル表面に埋め込まれた介在するグリットの指標(濃い色のスポット)を示す。図7Bは、かなりの数の埋め込まれていたグリット粒子が、表面から除去されたことを示す。同様に、処理済みサンプル表面は、表面の丸い凹みを呈し、これは処理製剤によって表面がエッチングされている最中に形成されたと推定される。
【0079】
多くの対照サンプル及び処理済みサンプルのRを、接触表面計(Zeiss Surfcom 5000)を用いて、先端サイズが1.5〜2.0マイクロメートルの標準ダイヤモンドスタイラスを使用し、測定した。各サンプルの平らな表面の半径方向に沿って0°、90°、180°、270°で、4つの測定値が収集された。サンプル長さは0.8mmであり、評価長さは0.8mm×5であった(すなわち、0.8mmのサンプル長さを5つ用いて、所定のR値を評価した)。各サンプルタイプにつき3つのサンプルが測定されて、そのサンプルの平均R値が決定された。
【0080】
対照サンプル(n=4)及び処理済みサンプル(n=4)で形成されたセメント結合の引張り強度が、下記のプロトコルを使用して決定された。DePuy SmartSet(登録商標)MVセメントを流体形態で各試料に対して成形し、硬化体積28.5mmとし、最低24時間、周囲空気中で硬化させた。この試料を次に、MTS Alliance RF/100スタティック試験フレームに取り付けられたピン止めされたU字形金具内に挿入し、ここで、破壊されるまで2.54mm/分で、静的引張り荷重が試料に対し印加された。
【0081】
【表2】

【0082】
及び引張り強度測定の結果を表2にまとめる。全般に、酸による処理はサンプルの平均R値に統計的には影響を与えていない。しかしながら、処理済みサンプルで形成されたセメント結合の引張り強度は、約36%の増大を示した。
【0083】
対照サンプル及び処理済みサンプルで形成されたセメント結合の引張り疲労強度が、下記のプロトコルを使用して決定された。DePuy SmartSet(登録商標)MVを流体形態で各試料に対して成形し、硬化体積28.5mmとし、最低24時間、周囲空気中で硬化させた。次いで、試料を、MTSサーボ液圧試験フレームに取り付けられたピン止めされたU字形金具内に挿入し、ここで、破壊されるまで又はランアウト(すなわち、サンプルに対し所定のサイクル回数を受けた後もサンプルが破損しない状態)まで、所定の応力レベルで、2Hzで、引張り荷重サイクルが印加された。変位限界+2.54mmが使用されて、破壊が示された。各サンプルの疲労強度を決定するには、最大の疲労応力で2つのランアウト状態を作り出すのにそれぞれ8つの試料が必要であった。
【0084】
疲労試験の結果を示すグラフを、図8に示す。データポイントから延びる矢印の存在は、ランアウト状態を示し、「2つ合格」は、2つの別個のサンプルが同じランアウト状態を達成したことを示す。一般に、この結果は、処理済みサンプルは、破壊を起こすのに、実質的により高い引張り荷重、及び/又はより多くのサイクルを必要とすることを示す。
【0085】
実施例4:アルミナ/ガラスグリットのブラストサンプルにおける、R、R、R、及びRsk値の比較
4つの処理済みサンプル及び4つの対照サンプルが、上記実施例3に記述された引張り疲労試験手順に従って作製された。R、R、R、及びRsk値が、サンプルのそれぞれについて決定された。粗さ値はすべて、接触表面計(Zeiss Surfcom 5000)を用いて、先端サイズが1.5〜2.0マイクロメートルの標準ダイヤモンドスタイラスを使用し、測定された。各サンプルの平らな表面の半径方向に沿って0°、90°、180°、270°で、4つの測定値が収集され、関連するR、R、R、及びRsk値が計算された。サンプル長さは0.8mmであり、評価長さは0.8mm×5であった(すなわち、0.8mmのサンプル長さを5つ用いて、所定のR値を評価した)。各サンプルタイプにつき4つのサンプルがそれぞれ測定されて、サンプルの平均R、R、R、及びRsk値が決定された。平均結果が表3にまとめられている。
【0086】
【表3】

【0087】
対照サンプル及び処理済みサンプルの測定したR、R、R、及びRsk値の結果を表3に示す。全般に、対照サンプルと処理済みサンプルとの間の、R、R、及びRの平均値の差は、統計学的な差ではなかった。処理済みサンプルのRsk値は、対照サンプルのRsq値よりも負の値が大きく、処理済みサンプル表面が負の抜き勾配(negative draft)及びより磨耗性の少ない表面を呈することを示している。
【0088】
実施例5:Zr及びPブラスト表面のR及びRsk値の比較
12個の鋳造CoCrMo(F75)ディスク(直径1.9cm(0.75”)、厚さ0.318cm(0.125”))を作製し、実施例1の記述に従ってZrブラスト(n=6)を行うか、又は実施例3の記述に従ってPブラスト(n=6)を行った。ブラストした表面は、圧縮空気で吹き飛ばしてきれいにした後、洗剤中(1〜2% Alconox)及び逆浸透(「RO」)水中で超音波洗浄した。次いでこの表面を60℃で乾燥させた。R及びRskの表面粗さ値は、接触表面計(Zeiss Surfcom 5000)を用いて、先端サイズが1.5〜2.0マイクロメートルの標準ダイヤモンドスタイラスを使用し、12枚のディスクすべてに関して測定された。各サンプルの平らな表面の半径方向に沿って0°、90°、180°、270°で、4つの測定値が収集された。サンプル長さは0.8mmであり、評価長さは0.8mm×5であった(すなわち、0.8mmのサンプル長さを5つ用いて、所定のR値を評価した)。Zrブラストサンプル及びPブラストサンプルについて、R及びRsk値の平均及び標準偏差が計算された。
【0089】
次に、すべてのディスクを室内条件(18〜23℃)で24時間、8N HClで酸処理し、次にRO水ですすぎ、RO水中で20分間超音波洗浄した後、更にRO水で合間にすすぎながら10分間及び5分間、RO水中で超音波洗浄した。次にこの円筒を乾燥炉中、60℃で少なくとも2時間乾燥させた。この酸処理サンプルは、処理済みサンプルとして指定された。ディスクのR及びRsk値は、酸処理の後、接触表面計を使用して測定された。処理済みサンプルのR及びRsk値の平均及び標準偏差が計算された。
【0090】
【表4】

【0091】
上の表4は、R及びRsk値の平均及び標準偏差を列記している。変数分析は、Minitabソフトウェア(Minitab(登録商標)15.1.1.0.)採用の2ウェイANOVAを使用して実施された。2ウェイANOVA分析により、酸処理は、表面粗さRを統計学的に変化させなかった(p=0.501)が、Rskを有意に変化させた(p=0.002)。
【0092】
実施例6:対照及び処理済み膝インプラントの試験
大腿骨膝関節インプラント(Sigma Knee Implant、DePuy Orthopaedics)を、下記の手順に従って試験した。インプラントが鋳造され、グリットブラストが行われた。ブラストした表面を、圧縮空気で吹き飛ばしてきれいにした後、洗剤中(1〜2% Alconox)及び逆浸透(「RO」)水中で超音波洗浄した。次いでこの表面を60℃で乾燥させた。インプラントのいくつかは対照として指定され、これに対して更なる処理は行われなかった。残るインプラントサンプルは、処理済みサンプルとして指定し、室内条件(18〜23℃)で24時間、8N HClに曝された。次に処理済みインプラントをRO水ですすぎ、RO水中で20分間超音波洗浄してから、更にRO水で合間にすすぎながら10分間及び5分間、RO水中で超音波洗浄した。次にこの円筒を乾燥炉中、60℃で少なくとも2時間乾燥させた。この酸処理サンプルは、処理済みサンプルとして指定された。
【0093】
図9は、対照インプラント表面の後方散乱電子顕微鏡写真(Quanta 600F、高真空中20KV、スポットサイズ3、作業距離8〜15mmで使用)を示す。顕微鏡写真の濃い色のスポットは、サンプル表面に埋め込まれた介在するグリットの指標を示す。図9Bは、処理済みインプラント表面の後方散乱電子顕微鏡写真を示す。写真から分かるように、処理後に、かなりの数の埋め込まれたグリット粒子が、表面から除去され、表面の丸い凹みが形成されている。
【0094】
対照及び処理済みサンプルの表面にあるグリットブラスト残留物の量は、エネルギー分散型X線分光法(「EDS」)(Oxford Industriesの装置を用いた)を使用して決定された。EDSは、20KV、スポットサイズ4、作業距離11〜12mm、高真空で実施された。サンプル当たり、無作為による対象部位3ヶ所(各面積=1.36mm×1.36mm)が選択されて、データを収集し、基材の合金原子濃度(Co、Cr及びMo)によって正規化したグリット金属元素(アルミニウム)の原子量を計算した。グリット残留物の表面被覆=Al%atm/合計(Co%atm、Cr%atm、Mo%atm)であり、式中、%atmは原子パーセントである。
【0095】
試験の結果を図10の棒グラフに示す。このグラフは、対照サンプルがグリットにより約40%被覆されている一方、処理済みサンプルはグリットにより約1%被覆されていることを示している。
【0096】
等価物
本発明は、特定の方法、構造体及び装置に関して記述されてきたが、当業者は本発明を考慮して変形及び修正を考え付くことができることが理解される。例えば、本明細書で議論された方法及び組成物は、いくつかの実施形態でのインプラントに対する金属表面の調製を超えて利用することができる。同様に、1つの実施形態に関して図示又は説明される特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせることも可能である。そのような修正及び変形は、本発明の範囲に含まれることを意図する。当業者であれば、ルーチンの実験だけを使用して、上述した実施形態に基づく本発明の更なる特性及び利点を認識するであろう又は確定することができるであろう。したがって、本発明は、添付の請求項に示された内容を除き、本明細書に特に示され記述されたものに限定されることはない。
【0097】
すべての出版物及び引用は、本明細書ではそれらの全体が参照により明示的に組み込まれる。用語「1つの(「a」及び「an」)」は、本出願内で利用されているように、語句「1つ以上の」と互換的に使用することができ、等価である。用語「含む」、「有する」、「挙げる」及び「含有する」は、特に注記しない限り、無制限の用語(すなわち、「含むが、これらに限定されない」)として解釈されるべきである。本明細書における数値範囲の詳細説明は、特に示さない限り、単に、範囲内に入るそれぞれ別個の数値を個別に指すことの省略表記法として機能することを意図するものであり、それぞれ別個の数値は、本明細書に個別に引用されているかのように、本明細書に組み込まれる。本明細書に記載されているすべての方法は、本明細書で特に示唆されないか又はそうでなければ文脈により明確に矛盾していない限り、任意の適切な順番で行うことができる。本明細書で提供される任意の及びすべての例又は例示的な言葉(例えば、「などの」)の使用は、単に本発明をより良く説明することを意図し、請求されない限り、本発明の範囲に制限を提示するものではない。本明細書におけるすべての言葉は、任意の請求されていない要素を本発明の実施に不可欠であるものとして示すとして解釈されるべきではない。
【0098】
〔実施の態様〕
(1) 生物医学的インプラントを作製する方法であって、
約0.1マイクロメートル〜約100マイクロメートルの間の第一R値を呈する第一粗化表面を有するインプラントを作製することと、
前記インプラントの前記第一粗化表面を処理製剤に曝露させて、前記第一R値に実質的に同様である第二R値を呈する第二粗化表面を形成することと、
を含み、ここで前記インプラントの前記第二粗化表面は、セメントに接触すると、強化されたセメント/インプラント機械的連結を呈する、方法。
(2) 前記第一粗化表面を有する前記インプラントの作製が、ブラスト、研磨、スプレー、鋳造、及び機械的変形のうち少なくとも1つを用いて基材表面を粗くすることを含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記第一粗化表面を有する前記インプラントの作製が、前記インプラントに粒子ブラストを行って前記第一粗化表面を形成することを含む、実施態様2に記載の方法。
(4) 粒子ブラストが、無機材料及びガラスのうち少なくとも1つを含む粒子を使用することを含む、実施態様3に記載の方法。
(5) 粒子ブラストが、前記第一粗化表面に少なくとも1つの粒子を埋め込むことを含み、前記第一処理製剤への前記第一粗化表面の曝露が、前記第一粗化表面から前記少なくとも1つの粒子を除去することを含む、実施態様3に記載の方法。
(6) 前記第二粗化表面に、粒子ブラストによる粒子が実質的にない、実施態様3に記載の方法。
(7) 前記第二粗化表面が、エネルギー分散型X線分光法による測定で約30%未満の、粒子ブラストによる非在来物質の表面被覆を呈する、実施態様3に記載の方法。
(8) 前記第一粗化表面の曝露が、前記第一粗化表面を酸製剤で処理することを含む、実施態様1に記載の方法。
(9) 前記酸製剤がハロゲン化水素酸を含む、実施態様8に記載の方法。
(10) 前記第二R値が、前記第一R値と比べて約20%未満の差である、実施態様1に記載の方法。
【0099】
(11) 処理製剤に対する前記第一粗化表面の曝露が、前記第一粗化表面が呈するRsk値よりも低いRsk値を有する前記第二粗化表面を形成することを含む、実施態様1に記載の方法。
(12) セメント結合が、セメントと前記インプラントの前記第一粗化表面との間で形成されたセメント結合に比べ、セメントと前記インプラントの前記第二粗化表面との間で形成された場合に、前記セメント結合の、改善された引張り強度、改善された剪断強度、及び改善された引張り疲労強度のうち少なくとも1つを、前記方法によって形成された前記インプラントが呈する、実施態様1に記載の方法。
(13) セメントとの機械的連結を強化するよう改変されたインプラント表面を含み、前記インプラント表面には非在来物質が実質的になく、前記インプラント表面はセメントと接触し、前記インプラント表面は、
(i)約100マイクロメートル〜約0.1マイクロメートルのR値と、
(ii)約100nm〜約20マイクロメートルの平均くぼみ直径を有する、相互に連結した複数の表面くぼみと、
を呈する、整形外科用インプラント。
(14) 前記インプラント表面が金属性表面を含む、実施態様13に記載のインプラント。
(15) 前記インプラントが基材物質から形成され、前記インプラント表面が、エネルギー分散型X線分光法による測定で約30%未満の、前記基材物質とは異なる物質による表面被覆を呈する、実施態様13に記載のインプラント。
(16) 前記セメントがポリメチルメタクリレートを含む、実施態様13に記載のインプラント。
(17) 前記インプラント表面が、負のRsk値を呈する、実施態様13に記載のインプラント。
(18) セメントとの固着を強化するよう改変された表面を有するインプラントを提供することを含み、前記インプラント表面には非在来粒子が実質的になく、前記インプラント表面は、
(i)約100マイクロメートル〜約0.1マイクロメートルのR値と、
(ii)約100nm〜約20マイクロメートルの平均くぼみ直径を有する、相互に連結した複数の表面くぼみと、
を呈し、
更に前記インプラントを患者に挿入することを含む、整形外科用インプラントを使用する方法。
(19) 前記インプラントの挿入が、前記インプラント表面をセメントに接触させることにより、前記インプラントを骨に取り付けることを含む、実施態様18に記載の方法。
(20)前記インプラントの挿入が、前記インプラントをスリーブに挿入することを含み、前記インプラントとスリーブとの組み合わせが、前記患者内で人工装具として働く、実施態様18に記載の方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物医学的インプラントを作製する方法であって、
約0.1マイクロメートル〜約100マイクロメートルの間の第一R値を呈する第一粗化表面を有するインプラントを作製することと、
前記インプラントの前記第一粗化表面を処理製剤に曝露させて、前記第一R値に実質的に同様である第二R値を呈する第二粗化表面を形成することと、
を含み、ここで前記インプラントの前記第二粗化表面は、セメントに接触すると、強化されたセメント/インプラント機械的連結を呈する、方法。
【請求項2】
前記第一粗化表面を有する前記インプラントの作製が、ブラスト、研磨、スプレー、鋳造、及び機械的変形のうち少なくとも1つを用いて基材表面を粗くすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第一粗化表面の曝露が、前記第一粗化表面を酸製剤で処理することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記酸製剤がハロゲン化水素酸を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第二R値が、前記第一R値と比べて約20%未満の差である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
処理製剤に対する前記第一粗化表面の曝露が、前記第一粗化表面が呈するRsk値よりも低いRsk値を有する前記第二粗化表面を形成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
セメントとの機械的連結を強化するよう改変されたインプラント表面を含み、前記インプラント表面には非在来物質が実質的になく、前記インプラント表面はセメントと接触し、前記インプラント表面は、
(i)約100マイクロメートル〜約0.1マイクロメートルのR値と、
(ii)約100nm〜約20マイクロメートルの平均くぼみ直径を有する、相互に連結した複数の表面くぼみと、
を呈する、整形外科用インプラント。
【請求項8】
前記インプラント表面が金属性表面を含む、請求項7に記載のインプラント。
【請求項9】
前記インプラントが基材物質から形成され、前記インプラント表面が、エネルギー分散型X線分光法による測定で約30%未満の、前記基材物質とは異なる物質による表面被覆を呈する、請求項7に記載のインプラント。
【請求項10】
前記インプラント表面が、負のRsk値を呈する、請求項7に記載のインプラント。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−156360(P2011−156360A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−16302(P2011−16302)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(501384115)デピュイ・プロダクツ・インコーポレイテッド (216)
【Fターム(参考)】