説明

改善されたフィブロネクチンベースの結合分子およびそれらの使用

本発明は、フィブロネクチンベースの結合分子、ならびにドナーCDRをフィブロネクチンベースの結合足場、特にFN3に導入する方法を提供する。本発明のフィブロネクチンベースの結合分子は、特に哺乳類細胞における半減期および安定性の改善のために、別の部分、例えばFc、抗FcRn、HSA、抗HSAおよびPEGとさらに結合していてもよい。本発明はまた、かかる分子を標的抗原との結合についてスクリーニングして候補結合物質を製造および精製する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連情報
本願は、2007年12月27日に出願した米国仮出願第61/009,361号の優先権の利益を主張する。本明細書を通じて言及されているあらゆる特許、特許出願および文献は、それらの全体について、参照により本明細書の一部とする。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
所望の標的エピトープと特異的に結合することができる分子は、治療および医学的診断ツールとして極めて重要である。このクラスの分子の例は、モノクローナル抗体である。ほぼあらゆる構造エピトープと特異的に、そして高い親和性で結合する抗体が、選択され得る。その結果、抗体は研究ツールおよびFDA承認治療薬として日常的に使用されており、治療用および診断用モノクローナル抗体の世界市場は現在約30,000,000,000ドルにも上る。
【0003】
しかし、モノクローナル抗体は、多数の欠点を有する。例えば、標準的な抗体は大きく、複雑な分子である。それらは2本の軽鎖と2本の重鎖を含み、鎖内および鎖間ジスルフィド結合によって結合した、異種四量体構造を有する。この構造的複雑さによって、抗体の容易な発現および2種の異なる分子治療標的に特異的に結合する分子のような多重特異的抗体が妨げられている。抗体のサイズが大きいことによって、しばしば効果的に特定の組織空間に侵入することができないため、それらの治療上有効性も限定される。さらに、治療用抗体は、Fc領域を有するため、望ましくないエフェクター細胞機能および/または凝固カスケードを惹起することがある。
【0004】
したがって、当該技術分野において、高い親和性および特異性で所望の標的に特異的に結合することができる代替結合分子が求められている。
【発明の概要】
【0005】
発明の概要
本発明は、フィブロネクチンベースの結合分子、ならびにフィブロネクチンベースの結合足場、特にFn3にドナーCDRを導入する方法を提供することによって、上記課題を解決する。本発明のフィブロネクチンベースの結合分子は、半減期および安定性の改善のために、操作されるか、あるいはさらに別の部分、例えばPEG、Fc、HSA、抗HSAと結合していてもよい。本発明はまた、かかる分子を標的抗原との結合についてスクリーニングして候補バインダーを製造および精製する方法を提供する。さらに、本発明は、Fn3ベースの結合分子をインビボで、特に哺乳類細胞、例えばラット、マウス、ハムスター、ヒト細胞またはそれらに由来する細胞系において成功裏に発現することを初めて示している。さらにまた、本発明は、操作されたかあるいは別の部分、例えばPEG、Fc、HSA、抗HSAと結合したFn3ベースの結合分子が哺乳類細胞においても成功裏に発現されること、そして該分子の延長された半減期という望ましい生理的効果を示すことを示している。
【0006】
したがって、本発明は、次のものを含むがそれらに限定されない様々な利点を有する:
− フィブロネクチンベースの結合分子、例えばサイズが小さく、免疫原性がないために治療薬として好適な修飾フィブロネクチンベースの結合分子を提供すること;
− 延長された半減期を有するフィブロネクチンベースの結合分子を提供すること;
− ブロッキング部分、検出可能部分、診断部分または治療部分のような望まれる機能的部分と結合するための部位をも提供しつつ、フィブロネクチンベースの結合分子を提供すること;そして
− 診断用または治療用フィブロネクチンベースの結合分子を必要とする対象を処置する方法。
【0007】
一つの局面において、本発明は、少なくとも2個のFn3ベータ鎖ドメイン配列と、各Fn3ベータ鎖ドメイン配列を結合するループ領域配列を含むフィブロネクチンタイプIII(Fn3)ベースの結合分子であって、該ループ領域配列が特定の標的と結合する非Fn3結合配列(すなわち異種結合配列)を含む、結合分子を提供する。典型的には、本結合分子はさらに、野生型フィブロネクチンタイプIII(Fn3)分子(配列番号1)と比較して、機能的部分を添えるための、修飾アミノ酸残基を含む。
【0008】
特定の態様において、Fn3ベースの結合分子内の非Fn3結合配列は、相補性決定領域(CDR)、例えば抗体、特に一本鎖抗体、シングルドメイン抗体またはラクダナノ抗体のCDRの全てまたは一部を含む。該CDRは、CDR1、CDR2、CDR3領域およびそれらの組合せから選択され得る。かかる非Fn3結合配列は、細胞受容体、細胞受容体リガンド、成長因子、インターロイキン、細菌またはウイルスを含むがそれらに限定されない多様な標的と結合するように選択することができる。
【0009】
Fn3ベースの結合分子内の修飾アミノ酸残基は、例えば少なくとも1個のシステイン残基または非天然アミノ酸残基による、少なくとも1個のFn3アミノ酸残基の付加および/または置換を含んでいてもよい。一つの態様において、システインまたは非天然アミノ酸残基は、ループ領域、ベータ鎖領域、ベータ様鎖、C末端領域、C末端と最もC末端のベータ鎖もしくはベータ様鎖間、N末端領域および/またはN末端と最もN末端のベータ鎖もしくはベータ様鎖間に位置する。特定の態様において、修飾アミノ酸残基は次の残基の1個以上の置換を含む:Ser 17、Ser 21、Ser 43、Ser 60、Ser 89、Val 11、Leu 19、Thr 58およびThr 71。別の局面において、本発明は、非Fn3ポリペプチドと結合したフィブロネクチンタイプIII(Fn3)ベースの結合分子を含む複合体であって、該Fn3ベースの結合分子は少なくとも2個のFn3ベータ鎖ドメイン配列と、各Fn3ベータ鎖ドメイン配列を結合するループ領域配列を含み、該ループ領域は特定の標的と結合する、複合体を提供する。別の態様において、該ループ領域は、特定の標的と結合する異種結合配列を含む。
【0010】
一般に、非Fn3ポリペプチドは、第2の標的と結合することができ、そして/またはインビボで投与したときFn3ベースの結合分子の安定性(すなわち半減期)を上昇させることができる。好適な非Fn3ポリペプチドは、抗体Fc領域、ヒト血清アルブミン(HSA)(またはその一部)および/またはHSAもしくは他の血清タンパク質と結合するポリペプチドであって、延長された半減期を有するもの、例えばトランスフェリンを含むが、これらに限定されない。
【0011】
非Fn3部分は、複合体ではないFn3ベースの結合分子の半減期よりも長くなるように、複合体の半減期を延長する。本複合体の半減期は、複合体ではないFn3ベースの結合分子のものよりも、少なくとも2〜5時間、5〜10時間、10〜15時間、15〜20時間、20〜25時間、25〜30時間、35〜40時間、45〜50時間、50〜55時間、55〜60時間、60〜65時間、65〜70時間、75〜80時間、80〜85時間、85〜90時間、90〜95時間、95〜100時間、100〜150時間、150〜200時間、200〜250時間、250〜300時間、350〜400時間、400〜450時間、450〜500時間、500〜550時間、550〜600時間、600〜650時間、650〜700時間、700〜750時間、750〜800時間、800〜850時間、850〜900時間、900〜950時間、950〜1000時間、1000〜1050時間、1050〜1100時間、1100〜1150時間、1150〜1200時間、1200〜1250時間、1250〜1300時間、1300〜1350時間、1350〜1400時間、1400〜1450時間、1450〜1500時間長い。本複合体の半減期は、複合体ではないFn3ベースの結合分子のものよりも、少なくとも5倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、50倍、55倍、60倍、65倍、70倍、75倍、80倍、85倍、90倍、95倍、100倍、150倍、200倍、250倍、300倍、350倍、400倍、450倍、500倍、550倍、600倍、650倍、700倍、750倍、800倍、850倍、900倍、950倍または1000倍長い。
【0012】
一つの態様において、非Fn3部分はFn3ベースの結合分子と融合した抗体Fc領域である。この複合体の半減期は、複合体ではないFn3ベースの結合分子のものよりも少なくとも5〜30倍長く、該複合体のインビボでの半減期は少なくとも9.4時間である。別の態様において、非Fn3部分は、Fn3ベースの結合分子と結合した血清アルブミンもしくはトランスフェリンまたはその部分である。この複合体の半減期は、複合体ではないFn3ベースの結合分子のものよりも少なくとも25〜50倍長く、該複合体のインビボでの半減期は少なくとも19.6時間である。別の態様において、非Fn3部分は、Fn3ベースの結合分子と結合した抗血清アルブミンもしくは抗トランスフェリンまたはその部分である。この複合体の半減期は、複合体ではないFn3ベースの結合分子のものよりも少なくとも10〜35倍長く、該複合体のインビボでの半減期は少なくとも7.7時間である。別の態様において、非Fn3部分は、Fn3ベースの結合分子と結合したポリエチレングリコール(PEG)である。この複合体の半減期は、複合体ではないFn3ベースの結合分子のものよりも少なくとも5〜25倍長く、該複合体のインビボでの半減期は少なくとも3.6時間である。
【0013】
一つの態様において、非Fn3部分は、N末端領域またはC末端領域でFn3ベースの結合分子と融合されている抗体Fc領域を含む。抗体Fc領域は、ループ領域、ベータ鎖領域、ベータ様鎖、C末端領域、C末端と最もC末端のベータ鎖もしくはベータ様鎖間、N末端領域およびN末端と最もN末端のベータ鎖もしくはベータ様鎖間から成る群から選択される領域でFn3ベースの結合分子と融合されていてもよい。Fc複合体の半減期は、インビボで少なくとも約9.4時間延長される。
【0014】
別の態様において、非Fn3部分は、血清アルブミン(SA)、例えばヒト血清アルブミン(HSA)またはその部分、あるいはSAと結合するポリペプチド、例えば抗HSAを含む。SA複合体のインビボでの半減期は少なくとも約19.6時間であり、抗SA複合体のインビボでの半減期は少なくとも約7.7時間である。
【0015】
さらに別の態様において、非Fn3部分はポリエチレングリコール(PEG)を含む。PEG部分はチオール基またはアミン基と結合している。PEG部分はペグ化指示部位によってFn3ベースの結合分子と、例えばCys残基もしくは非天然アミノ酸残基と結合している。PEG部分は、ループ領域、ベータ鎖領域、ベータ様鎖、C末端領域、C末端と最もC末端のベータ鎖もしくはベータ様鎖間、N末端領域およびN末端と最もN末端のベータ鎖もしくはベータ様鎖間から成る群から選択される、Fn3ベースの結合分子内の領域上に結合している。PEG部分は分子量約2kDa〜約100kDaを有する。PEG複合体の半減期はインビボで、少なくとも約3.6時間延長される。
【0016】
別の態様において、本発明は、改善された薬物動態特性を有する複合体であって、該複合体は、抗体Fc領域と結合するポリペプチドと結合した、フィブロネクチンタイプIII(Fn3)ベースの結合分子を含み、該Fn3ベースの結合分子は、少なくとも2個のFn3ベータ鎖ドメイン配列と、各Fn3ベータ鎖ドメイン配列間を結合するループ領域配列を含み、該複合体は特定の標的と結合し、少なくとも9.4時間の血清半減期を有する、複合体に関する。
【0017】
別の態様において、本発明は、改善された薬物動態特性を有する複合体であって、該複合体は、血清アルブミン(SA)部分と結合した、フィブロネクチンタイプIII(Fn3)ベースの結合分子を含み、該Fn3ベースの結合分子は、少なくとも2個のFn3ベータ鎖ドメイン配列と、各Fn3ベータ鎖ドメイン配列間を結合するループ領域配列を含み、該複合体は特定の標的と結合し、少なくとも19.6時間の血清半減期を有する、複合体に関する。
【0018】
別の態様において、本発明は、改善された薬物動態特性を有する複合体であって、該複合体は、血清アルブミン(SA)部分と結合するポリペプチドと結合した、フィブロネクチンタイプIII(Fn3)ベースの結合分子を含み、該Fn3ベースの結合分子は、少なくとも2個のFn3ベータ鎖ドメイン配列と、各Fn3ベータ鎖ドメイン配列間を結合するループ領域配列を含み、該複合体は特定の標的と結合し、少なくとも7.7時間の血清半減期を有する、複合体に関する。
【0019】
別の態様において、本発明は、改善された薬物動態特性を有する複合体であって、該複合体は、PEG部分と結合した、フィブロネクチンタイプIII(Fn3)ベースの結合分子を含み、該Fn3ベースの結合分子は、少なくとも2個のFn3ベータ鎖ドメイン配列と、各Fn3ベータ鎖ドメイン配列間を結合するループ領域配列を含み、該複合体は特定の標的と結合し、少なくとも3.6時間の血清半減期を有する、複合体に関する。
【0020】
別の態様において、本発明は、改善された薬物動態特性を有する複合体であって、該複合体は、抗FcRn部分と結合した、フィブロネクチンタイプIII(Fn3)ベースの結合分子を含み、該Fn3ベースの結合分子は、少なくとも2個のFn3ベータ鎖ドメイン配列と、各Fn3ベータ鎖ドメイン配列間を結合するループ領域配列を含み、該複合体は、新生児FcR受容体(FcRn)と酸性pHで高い親和性で結合し、中性pHで低い親和性で結合する、複合体に関する。酸性pHは約1〜約7の範囲であってよく、中性pHは約7.0〜約8.0である。一つの態様において、酸性pHは約pH6.0であり、中性pHは約pH7.4である。
【0021】
Fn3ベースの結合分子または複合体は、1Fn〜17Fnモジュールのいずれかからの少なくとも2個の同一または異なるフィブロネクチンモジュールに由来するFn3ドメインを有していてよく、そのいずれかの組合せ、例えば10Fn3−10Fn3;10Fn3−Fn3、10Fn3−Fn3、Fn3−Fn3として組み合わせてもよい。10Fn3−10Fn3−HSAまたは抗HSAもしくはFc、またはPEG;10Fn3−Fn3−HSAまたは抗HSAもしくはFc、またはPEG、10Fn3−Fn3−HSAまたは抗HSAもしくはFc、またはPEG、Fn3−Fn3−HSAまたは抗HSAもしくはFc、またはPEGのような複合体も本発明の範囲に含まれると考えられる。
【0022】
Fn3ベースの結合分子または複合体は、少なくとも3個またはそれ以上の同一または異なるフィブロネクチンモジュールに由来するFn3ドメイン、例えば10Fn3−10Fn3(−10Fn3)n(ここで、nは2〜10のいずれかの10Fn3ドメイン数である);10Fn3−Fn3−Fn3(−Fn3)n(ここで、nは2〜10のいずれかのFn3ドメイン数である);Fn3−Fn3−Fn3(−Fn3)n(ここで、nは2〜10のいずれかのFn3ドメイン数である)を有していてもよい。これらの分子の複合体も本発明の範囲に含まれる。
【0023】
本発明はさらに、Fn3ベースの結合分子または複合体をコードする配列を含む核酸、プロモーターと作動可能に連結した該核酸を含む発現ベクター、該核酸を含む細胞、そして標的と結合するFn3ベースの結合分子または複合体を製造する方法であって、細胞内、特にインビボで細胞内で、Fn3ベースの結合分子または複合体をコードする配列を含む核酸を発現させることによる方法に関する。特定の態様において、細胞は哺乳類細胞、例えばラット、マウス、ハムスター、ヒト細胞またはそれらに由来する細胞系である。
【0024】
本発明のFn3ベースの結合分子は、例えばヒトの野生型Fn3配列に基づくものであってよく、本明細書に記載のとおり、この配列の修飾物であってもよい。例えば、Fn3ベースの結合分子は、少なくとも2個の異なるフィブロネクチンモジュールに由来するFn3ベータ鎖を有するキメラであってもよい。可能なキメラの例は、図6に示されている。
【0025】
本発明はまた、本発明のFn3ベースの結合分子および複合体を含み、好適な担体で製剤された組成物を提供する。
【0026】
本発明のFn3ベースの結合分子および複合体は、抗体を使用することができるいずれかの適用を含むが、これに限定されない多様な治療および診断適用に用いることができる。かかる使用は、例えば自己免疫疾患、炎症、がん、感染症、心血管疾患、胃腸疾患、呼吸器疾患、代謝性疾患、筋骨格疾患、神経変性疾患、精神疾患、眼疾患および移植拒絶を含むが、これらに限定されない疾患または障害の処置および診断を含む。
【0027】
本発明の他の特徴および利点は、下記詳細な説明および特許請求の範囲から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1A】セリン残基のスティック表現(stick representative)を有する野生型フィブロネクチン分子の第10タイプIIIモジュールを示す。
【図1B】2次構造構成におけるFn3のアミノ酸配列を示す。ベータ鎖の残基は白丸として示す。側鎖が疎水性コアを形成する残基は太線に含まれる。ループ残基は斜線で示す。矢印はFn3が分離して相補的フラグメントを生じるループの位置を示す。
【図2】修飾に利用可能であると提案したセリン残基(Ser 17−Ser 21−Ser 43−Ser 60−Ser 89)を有する野生型フィブロネクチン分子の第10タイプIIIモジュールを示す。
【図3】野生型フィブロネクチン分子の第10タイプIIIモジュールの3個のストランドシート(鎖A−B−E)を示す。シートの下部に候補残基Ser 17およびSer 60が位置する。候補残基Ser 21は上部に位置する。Ser 55は結合表面に近いため、除外している。他の潜在的候補残基、すなわちVaI 11、Leu 19およびThr 58が示されている。
【図4】野生型フィブロネクチン分子の第10タイプIIIモジュールの4個のストランドシートを示す(足場の他の面)Thr 71はSer 89の近くに位置し、修飾の潜在的候補でもある。
【図5】野生型フィブロネクチン分子の第10タイプIIIモジュールのFGおよびCDループを示す。
【図6A】フィブロネクチンベースの結合分子キメラを作成するための野生型フィブロネクチン分子の第7、8、9および10タイプIIIモジュールのベータ鎖の多様な組合せを示す(ベータ鎖スワッピング)。
【図6B】フィブロネクチンベースの結合分子キメラを作成するための野生型フィブロネクチン分子の第7、8、9および10タイプIIIモジュールのベータ鎖の多様な組合せを示す(ベータ鎖スワッピング)。
【図7A】例示的標的に関する情報を提供する。
【図7B】例示的標的に関する情報を提供する。
【図7C】例示的標的に関する情報を提供する。
【図8】還元剤なしでの野生型10Fn3(RGDからRGA)および野生型10Fn3(RGDからRGA)_cys(図8a)、ならびに還元剤ありでの野生型10Fn3(RGDからRGA)_30kDa PEG(図8b)のSDS PAGE分析の結果を示す。
【図9】大腸菌発現系を用いたLewisラットにおける野生型10Fn3(RGDからRGA)のPK(薬物動態)を示す。
【図10】大腸菌発現系を用いたLewisラットにおける野生型10Fn3(RGDからRGA)−PEGのPK(薬物動態)を示す。
【図11】WinNonLin ソフトウェアで分析した、野生型10Fn3(RGDからRGA)および野生型10Fn3(RGDからRGA)−PEGの計算上の半減期を示す。
【図12】還元剤ありでの野生型10Fn3(RGDからRGA)−RSA(図12a)および還元剤ありでの野生型10Fn3(RGDからRGA)−HSA(図12b)のSDS PAGE分析の結果を示す。
【図13】哺乳類発現系を用いたLewisラットにおける野生型10Fn3(RGDからRGA)−RSAのPKを示す。
【図14】哺乳類発現系を用いたLewisラットにおける野生型10Fn3(RGDからRGA)−HSAのPKを示す。
【図15】WinNonLin ソフトウェアで分析した、野生型10Fn3(RGDからRGA)ならびに野生型10Fn3(RGDからRGA)−RSAおよびHSAの計算上の半減期を示す。
【図16】還元剤ありでのVEGFR 10Fn3バインダー−RSA(図16a)および還元剤ありでのVEGFR 10Fn3バインダー−HSA(図16b)のSDS PAGE分析の結果を示す。
【図17】VEGFR 10Fn3バインダー−HSAおよびRSAによるELISAの結果を示すグラフである。
【図18】哺乳類発現系を用いたLewisラットにおけるVEGFR結合Fn3のPKを示す。
【図19】哺乳類発現系を用いたLewisラットにおけるVEGFR結合Fn3−RSAのPKを示す。
【図20】WinNonLin ソフトウェアで分析した、VEGFR結合Fn3−HSAおよびVEGFR結合Fn3−HSAの計算上の半減期を示す。
【図21】還元剤ありでの野生型10Fn3(RGDからRGA)−抗RSAのSDS PAGE分析の結果を示す。
【図22】大腸菌発現系を用いたLewisラットにおける野生型10Fn3(RGDからRGA)−抗RSAのPKを示す。
【図23】WinNonLin ソフトウェアで分析した、野生型10Fn3(RGDからRGA)および野生型10Fn3(RGDからRGA)−抗HSAの計算上の半減期を示す。
【図24】還元剤ありでの野生型10Fn3(RGDからRGA)FcのSDS PAGE分析を示す。
【図25】哺乳類発現系を用いたLewisラットにおける野生型10Fn3(RGDからRGA)−FcのPKを示す。
【図26】WinNonLinソフトウェアで分析した、野生型10Fn3(RGDからRGA)および野生型10Fn3(RGDからRGA)−Fcの計算上の半減期を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
発明の詳細な説明
本明細書および特許請求の範囲の理解を明確にするため、次の定義が簡便には提供される。
【0030】
定義
本明細書において使用するとき、用語「フィブロネクチンタイプIIIドメイン」または「Fn3ドメイン」は、いずれかの生物由来の野生型Fn3ドメインならびに2個以上の異なるFn3ドメイン由来のベータ鎖から構築したキメラFn3ドメインを意味する。当該技術分野において知られているとおり、天然に生じるFn3ドメインはAB、BC、CD、DE、EFおよびFGループと称される6個のループで結合した、A、B、C、D、E、FおよびGと称される7個のベータ鎖から成るベータサンドイッチ構造を有する(例えば、Bork and Doolittle, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A 89:8990, 1992; Bork et al, Nature Biotech. 15:553, 1997; Meinke et al., J. Bacteriol. 175:1910, 1993; Watanabe et al., J. Biol. Chem. 265:15659, 1990; Main et al, 1992; Leahy et al., 1992; Dickinson et al., 1994; 米国特許第6,673,901号; PCT公報WO/03104418;および米国特許出願第2007/0082365号参照、これらの全教示を参照により本明細書の一部とする)。3個のループはドメインの上部に存在し(BC、DEおよびFGループ)、3個のループはドメインの下部に存在する(AB、CDおよびEFループ)(図1参照)。本発明の特定の態様において、該Fn3ドメインはヒトフィブロネクチンの第10Fn3ドメイン(10Fn3)に由来する(配列番号1)。
【0031】
本明細書において使用するとき、用語「Fn3ベースの結合分子」または「フィブロネクチンタイプIII(Fn3)ベースの結合分子」は、1個以上の非Fn3結合配列を含むように改変されているFn3ドメインを意味する。
【0032】
用語「非Fn3結合配列」は、天然に生じる(例えば野生型)Fn3ドメイン中には存在せず、特定の標的と結合するアミノ酸配列を意味する。かかる非Fn3結合配列は典型的には、野生型Fn3ドメインを修飾して(例えば置換および/または付加によって)導入される。これは例えば、野生型Fn3ドメイン内のアミノ酸残基のランダムまたは所定の変異によって得ることができる。さらにまたはあるいは、非Fn3結合配列は、部分的または完全に異種であってよく、すなわち異なる遺伝子源またはアミノ酸源に由来してよい。例えば、異種配列は、抗体の超可変領域、例えば既知の標的抗原に対して既知の結合特異性を有する1個以上のCDR領域に由来していてよい。かかるCDRは一本の抗体鎖(例えば軽鎖または重鎖の可変領域)または異なる抗体鎖の組合せに由来していてよい。CDRはまた、2種の異なる抗体(例えば異なる特異性を有する)に由来していてもよい。特定の態様において、CDRはナノ抗体、例えばラクダ様重鎖に由来している。
【0033】
用語「相補性決定領域(CDR)」は、抗体可変ドメインまたはT細胞受容体由来の超可変ループを意味する。抗体可変領域内のCDRの位置は、正確に定義されている(Kabat, E.A., et al. Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242, 1991およびChothia, C. et al., J. Mol. Biol. 196:901-917, 1987参照、これらを参照により本明細書の一部とする)。
【0034】
用語「シングルドメイン抗体」は、例えばDomantis(Domantis / GSK (Cambridge, UK))(例えばWard et al., 1989, Nature 341(6242):484-5; WO04058820参照)に記載のヒトドメイン抗体または下記定義のラクダナノ抗体を含む、いずれかの天然に生じる一可変ドメイン抗体または対応する操作された結合フラグメントを意味する。
【0035】
用語「一本鎖抗体」は、軽鎖可変領域の抗原結合部分と重鎖可変部分の抗原結合部分とが、例えば組換え方法を用いて、VLおよびVH領域が対となって1価の分子を形成する一本のタンパク質鎖に該鎖をさせることができる合成リンカーによって結合している抗体を意味する(一本鎖Fv(scFv)として知られている;例えばBird et al. (1988) Science 242:423-426;およびHuston et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A 85:5879-5883参照)。
【0036】
用語「ラクダナノ抗体」は、軽鎖を含まない小さな1個の可変ドメインであり、標的に対して高い親和性を有する低分子タンパク質を得て、低分子量抗体由来タンパク質を得るために遺伝子操作して得ることができるラクダ抗体の領域を意味する。例えば、WO07042289および1998年6月2日取得の米国特許第5,759,808号参照;また、例えばStijlemans, B. et al., 2004, J Biol Chem. 279(2): 1256-61も参照されたい。ラクダ抗体および抗体フラグメントの操作ライブラリーは、例えばAblynx、Ghent、Belgiumから商業的に入手可能である。非ヒト起源の他の抗体に関して、ラクダ抗体のアミノ酸配列を組換えによって変化させて、ヒト配列により近い配列を得ることができ、すなわちナノ抗体は「ヒト化」してもよい。これは、ヒトに投与したときそもそも低いラクダ抗体の抗原性をさらに低下させる。
【0037】
用語「標的」は、本発明のFn3ベースの結合分子が認識する(すなわちこれによって結合される)抗原またはエピトープを意味する。標的は、タンパク質に存在するエピトープ、ペプチド、糖および/または脂質を含むが、これらに限定されない。
【0038】
用語「複合体」は、1個以上の非Fn3部分と化学的または遺伝的に結合したFn3ベースの結合分子を意味する。
【0039】
用語「非Fn3部分」は、それが結合している分子にさらなる機能性を与える生物学的または化学的要素を意味する。特定の態様において、非Fn3部分はポリペプチド、例えばヒト血清アルブミン(HSA)のような血清アルブミンまたはそのフラグメントもしくは変異体、抗HSAまたはそのフラグメントもしくは変異体、抗体Fcまたはそのフラグメントもしくは変異体またはFn3ベースの結合分子のインビボでの半減期を延長する化学的要素、例えばポリエチレングリコール(PEG)である。
【0040】
用語「非天然アミノ酸残基」は、天然に生じる(野生型)Fn3ドメインには存在しないアミノ酸残基を意味し、例えば化学的に修飾されたアミノ酸を含む。かかる非天然アミノ酸残基は、天然に生じるアミノ酸の置換および/または天然に生じるアミノ酸Fn3配列への非天然アミノ酸の挿入によって導入することができる(例えば、Sakamoto et al., 2002, Nucleic Acids Research, 30(21) 4692-4699参照)。非天然アミノ酸残基は、Fn3ベースの結合分子に所望の機能性、例えば機能的部分(例えばPEG)と結合する能力を付与するように、導入してもよい。
【0041】
用語「ポリエチレングリコール」または「PEG」は、カップリング剤を含むかまたは含まない、あるいはカップリングまたは活性化部分で誘導体化されたかあるいはされていない、ポリアルキレングリコール化合物またはその誘導体を意味する。
【0042】
用語「特異的結合」または「特異的に結合する」は、表面プラズモン共鳴によって測定したとき、室温で標準的な生理的塩およびpH条件下で、標的と少なくとも1×10−6Mの親和性で結合し、そして/または非特異的抗原についての親和性よりも少なくとも2倍(好ましくは少なくとも10倍)の親和性で標的と結合する、Fn3ベースの結合分子の能力を意味する。
【0043】
概略
本発明は、フィブロネクチンベースの結合分子、ならびにフィブロネクチンベースの結合足場、特にFn3にドナーCDRを導入する方法を提供する。さらに以下に記載のとおり、本発明はまた、フィブロネクチンベースの結合分子または足場に、ある部分に結合するために適しているアミノ酸残基を導入する方法も提供する。この利点によって、本発明のフィブロネクチンベースの結合分子は、他のかかる分子とさらなる複合体を形成して、二重および多重特異的結合分子を構築することができ、そして/または半減期および安定性を改善するために、PEGのようなある部分と結合することができる。
【0044】
本発明はまた、かかる結合分子を標的、特にタンパク質抗原への特異的な結合についてスクリーニングして、例えば原核細胞または真核細胞系において、該分子を製造する方法を提供する。
【0045】
さらに、本発明は、候補結合分子の精製およびその形成のための方法を提供する。
【0046】
さらに、本発明は、かかる形成された結合分子を多様な診断および治療適用、特にヒト疾患の診断または処置のために使用する方法を提供する。
【0047】
フィブロネクチンベースの結合足場およびその修飾
一つの局面において、本発明は、結合分子を作成するための改善された足場を提供する。本発明の使用に好適な足場は、アンキリン反復足場またはイムノグロブリンスーパーファミリーの1つ以上のメンバー、例えば抗体またはフィブロネクチンドメインを含むが、これらに限定されない。
【0048】
一つの態様において、フィブロネクチンタイプIIIドメイン(Fn3)を足場分子として使用する(米国特許第6,673,901号、PCT公報WO/03104418および米国特許出願第20070082365号)。このドメインはタンパク質配列データベースに400回以上出現し、フィブロネクチン、テネイシン、細胞内細胞質骨格タンパク質および原核生物の酵素を含む今日まで配列決定されたタンパク質の2%において出現すると見積もられている(Bork and Doolittle, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A 89:8990, 1992; Bork et al., Nature Biotech. 15:553, 1997; Meinke et al., J. Bacteriol. 175:1910, 1993; Watanabe et al., J. Biol. Chem. 265:15659, 1990)。Fn3の3次元構造は、NMR(Main et al., 1992)およびX線結晶解析(Leahy et al., 1992; Dickinson et al., 1994)によって決定されている。この構造は、抗体VHドメインのものと類似しているベータサンドイッチと記載されており、ただしFn3は9個ではなく7個のベータ鎖を有する。各Fn3ドメインのそれぞれの末端に3個のループが存在しており;BC、DEおよびFGループの位置は抗体のVHドメインのCDR1、2および3のものとそれぞれほぼ対応している(米国特許第6,673,901号、PCT公報WO/03104418)。あらゆる種由来のあらゆるのFn3ドメインが本発明における使用に好適である。
【0049】
他の態様において、Fn3足場は94アミノ酸残基を含むヒトFn3の第10モジュール(10Fn3)である。IgG重鎖の抗原結合性ループに対応する10Fn3の3個のループは、アミノ酸残基21−31(BC)、51−56(DE)および76−88(FG)間にわたる(米国特許出願第20070082365号)。これらのBC、DEおよびFGループは、抗体可変領域、特にシングルドメイン抗体のCDRのCDR1、2および3ループでそれぞれ直接置換されていてもよい。
【0050】
10Fn3はFn3ベースの結合分子の作成のためのFn3足場の一つの態様を示すが、本明細書に記載の分子において10Fn3に代えて、他の分子であってもよい。これらは、ヒトフィブロネクチンモジュールFn3〜Fn3および11Fn3〜17Fn3ならびに非ヒト動物および原核生物由来の関連Fn3モジュールを含むが、これらに限定されない。さらに、10Fn3と配列相同性を有する他のタンパク質由来のFn3モジュール、例えばテネイシンおよびウンドゥリン(undulin)を使用してもよい。異なる生物および親タンパク質由来のモジュールは別の適用のために最も適切でありえて;例えば抗体模倣物の設計において、治療用または診断用分子が意図される生物起源のフィブロネクチンまたはフィブロネクチン様分子由来のタンパク質を作成するために最も望まれ得る。
【0051】
他の態様において、Fn3はヒト以外の種由来である。非ヒトFn3はヒト患者に投与したとき有害な免疫応答を引き起こし得る。これを防止するため、非ヒトFn3は抗原性アミノ酸またはエピトープを除去するように遺伝子操作されていてもよい。非ヒトFn3の抗原性領域を同定する方法は、米国特許第6,673,580に記載の方法を含むが、これに限定されない。
【0052】
他の態様において、Fn3足場は1個以上のFn3、例えば少なくとも2個の異なるFn3、例えば10Fn3およびFn3の一部から構築したキメラである。Fn3ドメインの3既知のアミノ酸配列および三次元構造を用いて、当業者は容易に、機能的キメラFn3分子を作成するために組み合わせることができる異なるFn3分子の領域を同定することができる。かかるキメラFn3ドメインは、PCR利用もしくは酵素仲介遺伝子操作、最初からのDNAもしくはRNA合成またはカセット突然変異誘発を含むがこれらに限定されない多様な方法で構築することができる。
【0053】
上記フィブロネクチンベースの結合足場は、最初から構築するか、あるいはコンピューターによる分子モデリングを用いて情報を得ることができる。コンピューター内またはコンピューター利用モデリングは、例えばRas-Molを用いた単純な核酸またはアミノ酸配列アラインメントまたは3Dモデリングを含み得る。足場のモデリングによって、超可変領域が提示されるように足場の領域またはループを選択することができる、合理的なアプローチが可能である。モデリングによって、1個以上の超可変領域の最適な提示のために足場を修飾する最良の方法を知ることができる。
【0054】
超可変領域/CDRをフィブロネクチンベースの結合足場に移植する方法
一つの局面において、本発明は、他のIgスーパーファミリー分子由来の超可変領域を本発明のフィブロネクチンベースの結合足場に移植する改善された方法を特徴とする。
【0055】
一つの態様において、抗体可変領域、例えば重鎖可変領域、軽鎖可変領域またはその両方由来の1個以上のCDRを、上記結合足場の一つの1個以上のループに移植する。いずれかの抗体可変領域のCDR領域またはその抗原結合フラグメントが移植に好適である。CDRは、げっ歯類、霊長類、ラクダまたはサメを含むがこれらに限定されないいずれかの動物の抗体レパートリーから得ることができる。特定の態様において、CDRはシングルドメイン抗体、例えばナノ抗体のCDR1、CDR2およびCDR3から得られる。より具体的な態様において、ナノ抗体のようなシングルドメイン抗体のCDR1、2および3がFn3ドメインのBC、DEおよびFGループに移植されて、それによって元のナノ抗体の標的結合特異性をフィブロネクチンベースの結合分子に付与する。ラクダ抗体および抗体フラグメントの操作ライブラリーは、例えばAblynx、Ghent、Belgiumから商業的に入手可能である。抗体レパートリーは、1種以上の抗原でチャレンジした動物または抗原でチャレンジされていないそのままの動物に由来するものであってよい。さらにまたはあるいは、CDRはインビトロポリソームまたはリボソームディスプレイ、ファージディスプレイまたは酵母ディスプレイ技術を含むがこれらに限定されないインビトロまたはインビボライブラリースクリーニング法によって作成した抗体またはその抗原結合フラグメントから得ることができる。これは、インビトロまたはインビボライブラリースクリーニング法によって当初は作成されないが、次いで突然変異誘発またはインビトロまたはインビボスクリーニング法を用いた1回以上の親和性変異段階を実行した抗体を含む。かかるインビトロまたはインビボライブラリースクリーニング法または親和性変異法の例は、例えば米国特許7,195,880; 6,951,725; 7,078,197; 7,022,479; 5,922,545; 5,830,721; 5,605,793, 5,830,650; 6,194,550; 6,699,658; 7,063,943; 5866344およびPCT公報WO06023144に記載されている。
【0056】
抗体CDRを同定する方法は、当該技術分野において周知である(Kabat et al., U.S. Dept. of Health and Human Services, “Sequences of Proteins of Immunological Interest” (1983); Chothia et al., J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987); MacCallum et al., J. Mol. Biol. 262:732-745 (1996)参照)。特定の抗体をコードする核酸を単離し、配列決定することができ、該CDR配列は確立された抗体配列命名法に関してコードされたタンパク質の調査によって演繹される。超可変領域またはCDRを本発明のフィブロネクチンベースの結合足場に移植する方法は、例えば遺伝子操作、デノボ核酸合成またはPCR利用遺伝子アセンブリを含む(例えば、米国特許第5,225.539号参照)。
【0057】
改善されたCDR提示/結合のための修飾に適したフィブロネクチンベースの結合足場残基を同定する方法
上記技術によって、超可変領域またはCDRの選択および提示のために好適な足場ループを同定することができる。しかし、Fn3ドメインおよびドナー抗体の構造モデリングに基づいた超可変領域のフィットおよび提示をさらに改善するため、さらなる基準が敷かれ得る。
【0058】
一つの局面において、Fn3足場のいずれかのベータ鎖における特定のアミノ酸残基を変異させて、抗原との結合性を保持ないし改善する立体配置をCDRループに採用させることができる。この方法は、構造モデリングと配列比較の組合せを用いて、異種抗体フレームワークにCDRを移植する方法と同様に実施することができる。一つの態様において、CDRと隣接するFn3残基をQueen et al.が実施した方法と同様に変異させる(米国特許6,180,370; 5,693,762; 5,693,761; 5,585,089; 7,022,500参照)。他の態様において、CDR残基の1ファンデルワールス半径内のFn3残基をWinter et al.が実施した方法と同様に変異させる(米国特許6,548,640; 6,982,321参照)。他の態様において、CDR残基と隣接していないが、Fn3ドメインおよびドナー抗体の構造モデリングに基づいてCDR残基の立体配置を変更すると予測されるFn3残基を、Carter et al.またはAdair et alが実施した方法と同様に変異させる(米国特許6,407,213; 6,639,055; 5,859,205; 6,632,927参照)。
【0059】
別の局面において、1個以上の移植抗体CDRを含むFn3足場は、1回以上のインビトロまたはインビボ親和性成熟段階に付される。所望の抗原とFn3/CDRの結合を改善するFn3またはCDRにおけるアミノ酸変化をもたらすあらゆる親和性成熟アプローチを使用することができる。これらのアミノ酸変化は、例えばランダム突然変異誘発、「ウォークスルー突然変異誘発」および「ルックスルー突然変異誘発」によって達成され得る。かかるモノ抗体の突然変異誘発は、例えば謝りがちな(error-prone)PCR、酵母または細菌の「ミューテーター」株、モノ抗体の全部または一部の最初からの合成中でのランダムまたは所定の核酸変化の導入を用いて、達成され得る。親和性成熟および/または突然変異誘発を実施する方法は、例えば米国特許7,195,880; 6,951,725; 7,078,197; 7,022,479; 5,922,545; 5,830,721; 5,605,793, 5,830,650; 6,194,550; 6,699,658; 7,063,943; 5866344およびPCT公報WO06023144に記載されている。最小必須結合決定因子を含む新たなCDR配列は、US20050255552に記載のとおり、Kalobios技術を用いてスクリーニングしてもよい。
【0060】
操作または修飾されたフィブロネクチンベースの結合分子
別の局面において、本発明は、元のフィブロネクチンベースの分子と比較して異なる特性を有するように修飾されたフィブロネクチンベースの結合分子を特徴とする。修飾は、別の分子との該分子の結合または融合、ならびに該分子の化学的修飾または該分子構造のアミノ酸残基もしくはヌクレオチドの変化を含む。
【0061】
フィブロネクチン融合
本発明のフィブロネクチンベースの結合分子は、別の分子と融合または結合されていてもよい。かかる複合体は、「Fn融合体」と本明細書において称する。例えば、Fn融合体は、結合分子の安定性または半減期を上昇させる分子(例えばFc領域、HSAまたは抗HSA結合分子)と融合したフィブロネクチンベースの結合分子を含む。
【0062】
例えば、Fn融合体は、IgG(Fc)の定常領域と10Fn3モジュールを、好ましくは10Fn3のC末端を介して融合させることによって、ヒト免疫応答で統合することができる。かかる10Fn3−Fc融合分子のFcは、免疫応答の補体成分を活性化して、抗体模倣物の治療価値を向上させる。同様に、10Fn3とC1qのような補体タンパク質の融合体は標的細胞に使用することができ、そして10Fn3と毒素の融合体は特定の抗原を保有する細胞を特異的に破壊するために使用することができる。さらに、いずれかの形態の10Fn3はアルブミンと融合して、血流中での半減期および組織浸透性を向上させることができる。これらの融合体のいずれかは、標準的な技術によって、例えば一般に利用可能な遺伝子配列を用いて構築した組換え融合遺伝子から融合タンパク質を発現させることによって、作成することができる。
【0063】
Fn融合体はまた、「Brambell受容体」とも称され、血流中のアルブミンのライフスパンの延長に関与する、新生児Fc受容体(FcRn)を用いて作成してもよい(Chaudhury et al., (2003) J. Exp.Med., 3: 315-322; Vaccarao et al., (2005) Nature Biotech. 23: 1283-1288参照)。FcRn受容体は、3個の細胞外ドメインを有する43kDaのα鎖と非共有結合したβ−2マイクログロブリン、膜貫通領域および約50アミノ酸の細胞質テイルから成る複合膜糖タンパク質である。細胞質テイルは該受容体の内在化に関与するジヌクレオチドモチーフ利用エンドサイトーシスシグナルを含む。α鎖はタンパク質の非古典的MHCIのメンバーである。α鎖とのβ2m会合は、FcRnの正しい折り畳みならびに小胞体を出てエンドソームおよび細胞表面に向かうために、必須である。
【0064】
FcRnの全体的な構造は、クラスI分子のものと類似している。α−1およびα−2領域は、MHCI分子のペプチド間隙と極めてよく似ている2個の逆平行αヘリックスによって蓋をされた1個のβシートを形成する、8個の逆平行β鎖から成るプラットフォームと似ている。天然では、FcRnはIgGと結合し、母胎循環系由来の胎盤合胞体栄養細胞を介してIgGを胎児循環系に輸送し、成体における分解からIgGを保護する。ホメオスタシスに加えて、FcRnは組織におけるIgGのトランスサイトーシスを制御する。FcRnは上皮細胞、内皮細胞および肝細胞に局在化している。
【0065】
研究により、アルブミンがFcRnと結合してIgGとの3分子複合体を形成することが示されている。アルブミンおよびIgGの両方が、FcRnの別々の部位と非共有結合する。ヒトFcRnとセファロース−HSAおよびセファロース−hIgGの結合はpH依存的であり、pH5.0で最大であり、pH7.0〜pH8で0である。FcRnがIgGと結合するのと同様にpH依存的にアルブミンと結合するという観察は、アルブミンがFcRnと相互作用し、分解から保護されるメカニズムがIgGのものと同一であり、同様のFcRnとのpH感受性相互作用によって仲介されることを示唆している。FcRnとアルブミンはアルブミンのD−IIIドメインを介して、pH依存的に、IgG結合部位とは別の部位で相互作用する。
【0066】
本発明のFn融合体はまた、Fn−FcRn融合タンパク質またはFn−抗FcRn融合分子をも含む。一つの態様において、Fn融合体は、FcRnと結合するIgGと同様に、抗FcRn融合分子が新生児FcR受容体(FcRn)と酸性pH(例えばpH6.0)で高い親和性で結合し、中性pH(例えばpH7.4)で低い親和性で結合するFn−抗FcRn融合分子である。Fc−抗FcRn融合体の半減期はインビボで延長されており、それによって改善された治療的有用性を提供する。
【0067】
分子とFcドメイン、例えばIgG1のFcドメインを融合する方法は、当該技術分野において既知である(例えば、U.S. 5,428,130参照)。かかる融合体は、IgGホメオスタシスにおいて重要な機能を提供して、異化からそれと結合する分子を保護するFcRnと結合するFcの能力のため、延長された循環系半減期を有する(例えば、US20070269422参照)。
【0068】
他の融合体は、ヒト血清アルブミン(HSAまたはHA)と融合したフィブロネクチンベースの結合分子を含む。成熟形態では585アミノ酸のタンパク質であるヒト血清アルブミンは、血清の浸透圧の大部分に関与しており、内因性および外因性リガンドのキャリヤーとして機能する。キャリヤー分子としてのアルブミンの役割およびその不活性性は、インビボでペプチドのキャリヤーおよびトランスポーターとして使用するために望ましい特性である。多様なタンパク質のキャリヤーとしてのアルブミン融合タンパク質としてのアルブミンの使用は、WO 93/15199、WO 93/15200およびEP 413 622において示唆されている。ポリペプチドと融合するためのHSAのN末端フラグメントの使用も提案されている(EP 399 666)。したがって、本発明の分子とアルブミンまたはアルブミンのフラグメント(一部)または変異体あるいはタンパク質および/またはその活性を安定化するために十分なHSAと結合することができる分子(抗HSAバインダー)とを遺伝子的または化学的に融合または結合させることによって、該分子は安定化されて、保存期間が延長され、そして/または溶液中、インビトロおよび/またはインビボで長期間、分子の活性が保持される。
【0069】
アルブミンと他のタンパク質との融合は、HSAをコードするDNAまたはそのフラグメントを、該タンパク質をコードするDNAと結合させるように、遺伝子操作することによって達成することができる。次いで、融合ポリペプチドを発現するように好適なプラスミドを設計した該融合ヌクレオチド配列で、好適な宿主を形質転換またはトランスフェクトする。発現は、例えば原核細胞または真核細胞から、インビトロで、あるいは例えばトランスジェニック生物から、インビボで実施することができる。HSA融合に関するさらなる方法は、例えばWO 2001077137およびWO 200306007に見出すことができ、これらを参照により本明細書の一部とする。具体的な態様において、融合タンパク質の発現は、哺乳類細胞系において実施する。哺乳類細胞の例は、ヒト胚腎細胞(例えばHEK Freestyle、HEK293、HEK293T);チャイニーズハムスター卵巣細胞(例えばCHO);ハムスター腎細胞(例えばBHK);ヒト胚網膜細胞(例えばPERC6);マウス骨髄腫(Sp/20);HEK293とヒトV細胞系のハイブリッド(例えばHKB11);頸部癌細胞(例えばHeLa);およびマウス腎細胞(例えばCOS)を含むが、これらに限定されない。一つの態様において、哺乳類細胞はCHO細胞である。
【0070】
他の本発明の融合は、フィブロネクチンベースの結合分子と別の機能的分子、例えば別のペプチドまたはタンパク質(例えば抗体または受容体のリガンド)とを結合させて、「二重特異的分子」を作成することを含む。二重特異的分子は、少なくとも2個の異なる結合部位または少なくとも2個の異なる標的分子、例えばフィブロネクチン分子および抗HSAバインダーによって標的とされる結合部位と結合する。該抗HSAバインダーは、フィブロネクチンベースの分子(上記のとおり)または他の非フィブロネクチン足場、および例えばシングルドメイン抗体に由来する(例えば、WO2004041865 (Ablynx)および EP1517921 (Domantis)参照)。本発明のフィブロネクチンベースの結合分子はまた、誘導体化あるいは1個以上の他の機能的分子と結合して、同一の標的分子上の2個以上の異なる結合部位および/または2個の異なる標的分子上の2個の異なる結合部位と結合する多重特異的分子およびそれらの多様な置換物を作成してもよい。一つの態様において、Fn3ベースの結合多重特異的分子は、例えばHSAのような半減期延長部分と連結および結合した少なくとも2個のFn3ドメインを含んでいてよく、Fn3ドメインはそれぞれ、同一の治療標的の異なる部位、例えばTNFの異なる部位と結合する。別の態様において、Fn3ベースの結合多重特異的分子は、例えばHSAのような半減期延長部分と連結および結合した少なくとも2個のFn3ドメインを含んでいてよく、Fn3ドメインはそれぞれ、異なる治療標的と結合する(例えば、第1のFn3ドメインはHer3と結合し、第2のFn3ドメインはHer2と結合する)。さらに別の態様において、Fn3ベースの結合多重特異的分子は、例えばHSAのような半減期延長部分と連結および結合した少なくとも2個のFn3ドメインまたはその多様な置換物を含んでいてよく、Fn3ドメインはそれぞれ、異なる治療標的の異なる部位と結合する(例えば、第1のFn3ドメインはHer3の部位1と結合し、第2のFn3ドメインはHer3の部位2と結合し、第3のFn3ドメインはHer2の部位1と結合し、第4のFn3ドメインはHer2の部位2と結合する)。かかる多重特異的分子はまた、本明細書において使用されるとき、用語「二重特異的分子」に含まれることを意図する。
【0071】
本発明の二重特異的分子は、当該技術分野で既知の方法を用いて、構成要素結合特異性を組合せて作製することができる。例えば、二重特異的分子の各結合特異性を別個に生じさせて、次いでそれぞれを組み合わせる。結合特異性がタンパク質またはペプチドであるとき、多様なカップリング剤または架橋剤を共有結合のために使用することができる。架橋剤の例は、タンパク質A、カルボジイミド、N−スクシンイミジル−S−アセチル−チオアセテート(SATA)、5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)、o−フェニレンジマレイミド(oPDM)、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)およびスルホスクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(sulfo−SMCC)を含む(例えば、Karpovsky et al. (1984) J. Exp. Med. 160:1686; Liu, MA et al. (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A 82:8648参照)。他の方法は、Paulus (1985) Behring Ins. Mitt. No. 78, 118-132; Brennan et al. (1985) Science 229:81-83), およびGlennie et al. (1987) J. Immunol. 139: 2367-2375に記載のものを含む。好ましい結合剤は、SATAおよびsulfo−SMCCであり、いずれもPierce Chemical Co.(Rockford, IL)から入手可能である。
【0072】
結合特異性が1個以上の抗体を含むとき(例えば多重特異的構築物において)、複合体は2個の重鎖のC末端ヒンジ領域のスルホヒドリル結合によって得ることができる。特に好ましい態様において、ヒンジ領域は奇数、好ましくは1個のスルホヒドリル残基を含むように、結合の前に修飾される。
【0073】
あるいは、両方の結合特異性が同じベクター内でコードされ、同じ宿主細胞において発現および統合されてもよい。二重特異的分子を作成する方法は、例えば米国特許第5,260,203号; 米国特許第5,455,030号; 米国特許第4,881,175号; 米国特許第5,132,405号; 米国特許第5,091,513号; 米国特許第5,476,786号; 米国特許第5,013,653号; 米国特許第5,258,498号; および米国特許第5,482,858号に記載されている。
【0074】
二重特異的分子とその特異的標的との結合は、多様なアッセイによって確認することができ、例えば融合体をラジオイムノアッセイ(RIA)において、放射活性によって標識し、使用することができる(例えば、Weintraub, B., Principles of Radioimmunoassays, Seventh Training Course on Radiolidang Assay Techniques, The Endocrine Society, March, 1986参照、これらを参照により本明細書の一部とする)。放射性同位体は、γカウンターまたはシンチレーションカウンターの使用のような方法によって、またはオートラジオグラフィーによって検出することができる。
【0075】
本発明の他の融合は、フィブロネクチンベースの結合分子とタグ(例えばビオチン)または化学物質(例えば免疫毒素または化学療法剤)との結合を含む。かかる化学物質は、細胞に有害な(例えば殺す)任意の薬物である細胞傷害剤を含む。例えば、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロマイド、エメチン、ミトマイシン、エトポシド、テニポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロールおよびプロマイシンならびにそれらのアナログまたはホモログを含む。治療薬物はまた、例えば代謝拮抗剤(例えばメトトレキセート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシル、デカルバジン)、アルキル化剤(例えばメクロレタミン、チオエパ、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、ミトマイシンCおよびcis-ジクロロジアミンプラチナ(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えばダウノルビシン(正式にはダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗菌剤(例えばダクチノマイシン(正式にはアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシンおよびアントラマイシン(AMC))および抗有糸分裂剤(例えばビンクリスチンおよびビンブラスチン)を含む。本発明のフィブロネクチンベースの結合分子と結合することができる他の治療用細胞傷害剤の例は、デュオカルマイシン、カリケアマイシン、マイタンシンおよびアウリスタチンならびにそれらの誘導体を含む。
【0076】
細胞傷害剤は、当該技術分野において利用可能なリンカー技術を用いて、本発明のフィブロネクチン利用結合分子と結合することができる。細胞傷害剤と結合するために使用されるリンカータイプの例は、ヒドラゾン、チオエーテル、エステル、ジスルフィドおよびペプチド含有リンカーを含むが、これらに限定されない。リンカーは、例えばリソソーム区画内での低pHによる切断に受容性であるか、あるいは腫瘍組織において優先的に発現されているプロテアソーム、例えばカテプシン(例えばカテプシンB、C、D)のようなプロテアソームによる切断に受容性であるように選択してもよい。
【0077】
細胞傷害剤のタイプ、リンカーおよび治療薬物を複合化する方法のさらなる説明は、Saito, G. et al. (2003) Adv. Drug Deliv. Rev. 55:199-215; Trail, P.A. et al. (2003) Cancer Immunol. Immunother. 52:328-337; Payne, G. (2003) Cancer Cell 3:207-212; Allen, T.M. (2002) Nat. Rev. Cancer 2:750-763; Pastan, I. and Kreitman, R. J. (2002) Curr. Opin. Investig. Drugs 3:1089-1091; Senter, P.D. and Springer, C.J. (2001) Adv. Drug Deliv. Rev. 53:247-264も参照されたい。
【0078】
本発明のフィブロネクチンベースの結合分子は、細胞傷害放射性薬物(放射性免疫複合体とも称する)を作成するために、放射性同位体と複合化してもよい。診断または治療に使用するためにフィブロネクチンベースの結合分子と複合化することができる放射性同位体の例は、ヨウ素131、インジウム111、イットリウム90およびルテチウム177を含むが、これらに限定されない。放射性免疫複合体を作成する方法は、当該技術分野において確立されている。抗体ベースの放射性免疫複合体の例は、イブリツモマブ、チウキセタンおよびトシツモマブを含む商業的に入手可能なものであり、同様の方法を用いて、本発明の分子を使用して放射性免疫複合体を作成することができる。
【0079】
本発明のFn融合体を使用して、所定の生物学的応答を修飾することができ、そして薬物部分は伝統的な化学治療薬物に限るものとして構成されない。例えば、薬物部分は所望の生物学的活性を有するタンパク質またはポリペプチドであってもよい。かかるタンパク質は、例えば酵素的に活性な毒物またはそのフラグメント、例えばアブリン、リシンA、シュードモナス属外毒素、またはジフテリア毒素;腫瘍壊死因子またはインターフェロンγのようなタンパク質;または生物学的応答調節剤、例えばリンホカイン、インターロイキン−1(IL−1)、インターロイキン−2(IL−2)、インターロイキン−6(IL−6)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)または他の増殖因子を含み得る。
【0080】
かかる治療部分を複合化する技術は周知であり、本発明の分子に適用可能である。例えばArnon et al., “Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy”in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Reisfeld et al. (eds.), pp. 243-56 (Alan R. Liss, Inc. 1985); Hellstrom et al., “Antibodies For Drug Delivery”, in Controlled Drug Delivery (2nd Ed.), Robinson et al. (eds.), pp. 623-53 (Marcel Dekker, Inc. 1987); Thorpe, “Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review”, in Monoclonal Antibodies ’84: Biological And Clinical Applications, Pinchera et al. (eds.), pp. 475-506 (1985); “Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy” in Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy, Baldwin et al. (eds.), pp. 303-16 (Academic Press 1985)および Thorpe et al., “The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody-Toxin Conjugates”, Immunol. Rev., 62:119-58 (1982)を参照されたい。
【0081】
化学修飾
別の局面において、本発明は、例えば分子の生物学的(例えば血清)半減期を延長するため、ペグ化によって修飾されたフィブロネクチンベースの結合分子を提供する。分子をペグ化するため、該分子またはそのフラグメントは典型的には、1個以上のPEG基が該分子に結合する条件下で、PEGの反応性エステルまたはアルデヒド誘導体のようなポリエチレングリコール(PEG)部分と反応させる。用語「ペグ化部分」、「ポリエチレングリコール部分」または「PEG部分」は、ポリアルキレングリコール化合物、あるいはカップリング剤またはカップリングもしくは活性化部分での誘導体化(例えば、チオール、トリフレート、トレシレート、アジルジンまたは好ましくはマレイミド部分と、例えばPEG−マレイミド)ありまたはなしでのその誘導体を含む。他の適切なポリアルキレングリコール化合物は、マレイミドモノメトキシPEG、活性化PEGポリプロピレングリコール、あるいは次のタイプの荷電もしくは中性ポリマーを含むが、これらに限定されない:デキストラン、コロミン酸または他の糖ベースのポリマー、アミノ酸のポリマーおよびビオチン誘導体。
【0082】
PEG誘導体のための好適な官能基の選択は、分子上の利用可能な反応基のタイプまたはPEGと結合させる分子のタイプに基づく。タンパク質について、典型的な反応性アミノ酸は、リジン、システイン、ヒスチジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、スレオニン、チロシンを含む。N末端アミノ基およびC末端カルボン酸も使用することができる。
【0083】
好ましくは、ペグ化は反応性PEG分子(または類似の反応性水溶性ポリマー)とのアシル化反応またはアルキル化反応によって実施される。本明細書において使用するとき、用語「ポリエチレングリコール」は他のタンパク質の誘導体化に使用されているあらゆる形態のPEG、例えばモノ(C1−C10)アルコキシ−もしくはアリールオキシ−ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコール−マレイミドを含む。タンパク質をペグ化する方法は当該技術分野において既知であり、本発明に適用することができる。例えば、WO 2005056764, U.S.7,045,337, U.S.7,083,970, U.S.6,927,042, Nishimura et al.によるEP 0 154 316およびIshikawa et alによるEP 0 401 384を参照されたい。フィブロネクチンベースの結合分子は、ペグ化を促進するため、少なくとも1個のシステインアミノ酸または少なくとも1個の非天然アミノ酸を含むように操作されていてもよい。
【0084】
本発明のフィブロネクチンベースの結合分子は、薬物特性を修飾するために、薬物と結合したヒドロキシエチルデンプン(HES)誘導体を用いたHES化によって修飾してもよい。HESは、体の酵素によって分解される、ロウ様トウモロコシデンプン由来の修飾された天然ポリマーである。この修飾のため、分子の安定性が上昇し、腎クリアランスが低下することによって循環系半減期が延長されて、生物学的活性の上昇がもたらされる。さらにまた、HES化は免疫原性およびアレルゲン性を強力に変化させる。HESの分子量のような異なるパラメーターを変化させて、広範なHES薬物複合体をカスタマイズすることができる。
【0085】
DE 196 28 705 および DE 101 29 369は、ヒドロキシエチルデンプンの対応するアルドノラクトンを介して、無水ジメチルスルホキシド(DMSO)中でヒドロキシエチルデンプンをヘモグロビンおよびアンホテリシンBの遊離アミノ基と結合させることができる方法をそれぞれ開示している。特にタンパク質の場合に、溶解性またはタンパク質の変性の理由で、無水非極性溶媒を使用することができないことが多いため、水性媒体中でHESによるカップリング法も利用可能である。例えば、鎖の還元末端でアルドン酸に選択的に酸化されているヒドロキシエチルデンプンのカップリングは、水溶性カルボジイミドEDC(1−エチル−3−(3−ジメチル−アミノプロピル)カルボジイミド)の仲介によって可能である(PCT/EP 02/02928)。本発明に適用することができるさらなるHES化法は、例えばU.S. 20070134197, U.S. 20060258607, U.S. 20060217293, U.S. 20060100176および U.S.20060052342に記載されている。
【0086】
本発明のフィブロネクチンベースの結合分子はまた、糖残基によって修飾されていてもよい。タンパク質を糖残基で修飾するかあるいはタンパク質をグリコシル化する方法は、当該技術分野において既知であり(例えば、Borman (2006) Chem.&Eng. News 84(36):13-22およびBorman (2007) Chem.&Eng. News 85:19-20参照)、本発明の分子に適用可能である。かかる糖修飾は、例えばフィブロネクチンベースの結合分子配列内の1個以上のグリコシル化部位を変更することによっても達成可能である。例えば、1個以上のアミノ酸置換によって、1箇所以上の可変領域フレームワークグリコシル化部位を欠失させて、それによって当該部位でのグリコシル化を欠失させることができる。かかる非グリコシル化(aglycosylation)は、抗原に対する抗体の親和性を上昇させ得る。かかるアプローチは、Co et alによる米国特許第5,714,350号および第6,350,861号にさらに詳細に記載されている。
【0087】
さらにまたはあるいは、フコシル残基の量が少ない低フコシル化パターンのような別のタイプのグリコシル化を有する本発明のフィブロネクチンベースの結合分子、あるいは増加した二分(bisecting)GlcNac構造を有するフィブロネクチンベースの結合分子を作成することができる。かかる糖修飾は、例えば異なるグリコシル化機構を有する宿主細胞中でフィブロネクチンベースの結合分子を発現させることによって実施することができる。異なるグリコシル化機構を有する細胞は当該技術分野において説明されており、これは本発明の組換えフィブロネクチンベースの結合分子を発現させて、それによって異なるグリコシル化を有する本発明のフィブロネクチンベースの結合分子を作成する宿主細胞として使用することができる。例えば、Hang et al.によるEP 1,176,195には、機能的に破壊された、フコシルトランスフェラーゼをコードするFUT8遺伝子を有する細胞系であって、かかる細胞系において発現された抗体が低フコシル化を示す細胞系が記載されている。PrestaによるPCT公報WO 03/035835は、フコースとAsn(297)結合糖の結合能が低下しており、また宿主細胞において発現された抗体の低フコシル化をもたらす変異CHO細胞系、Lecl3細胞について記載している(Shields, R.L. et al., 2002 J. Biol. Chem. 277:26733-26740も参照)。Umana et al.によるPCT公報WO 99/54342は、糖タンパク質修飾グリコシルトランスフェラーゼ(例えば、ベータ(1,4)−NアセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII))を発現するように操作した細胞系であって、当該操作された細胞系で発現された抗体が当該抗体のADCC活性の上昇をもたらす増加した二分GlcNac構造を示す細胞系を記載している(Umana et al., 1999 Nat. Biotech. 17:176-180も参照)。ヒト様グリコシル化パターンを有するポリペプチドを作成する方法は、GlycofiのEP1297172B1および他のパテントファミリーにも記載されている。
【0088】
アミノ酸/ヌクレオチド修飾
1個以上のアミノ酸またはヌクレオチド修飾(例えば変化)を有する本発明の組換えフィブロネクチンベースの結合分子は、多様な既知の方法によって作成することができる。かかる修飾された分子は、例えば、組換え法によって作成することができる。さらに、遺伝子コードの縮重のため、多様な核酸配列を用いて各々所望の分子をコードすることができる。
【0089】
出発分子のアミノ酸配列変異体をコードする核酸分子を作成するための、当該技術分野において認識されている方法の例は、部位特異的(またはオリゴヌクレオチド介在)突然変異誘発、PCR突然変異誘発および該分子をコードする前に作成されたDNAのカセット突然変異誘発による作成を含むが、これらに限定されない。
【0090】
部位特異的突然変異誘発は、置換変異体を作成するための好ましい方法である。この技術は当該技術分野において周知である(例えば、Carter et al. Nucleic Acids Res. 13:4431-4443 (1985)およびKunkel et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A 82:488 (1987)参照)。簡潔には、DNAの部位特異的突然変異誘発の実施において、親DNAは最初に、かかる親DNAの一本鎖と所望の変異をコードするオリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせて変化させる。ハイブリダイゼーションの後、DNAポリメラーゼを用いて、プライマーとして上記ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドを使用し、そしてテンプレートとして上記親DNAの一本鎖を使用して、全第二鎖を合成する。かくして、所望の変異をコードするオリゴヌクレオチドは、得られた二本鎖DNAに組み込まれる。
【0091】
PCR突然変異誘発も、出発分子のアミノ酸配列変異体を作成するために好適な方法である。Higuchi, in PCR Protocols, pp.177-183 (Academic Press, 1990);および Vallette et al., Nuc. Acids Res. 17:723-733 (1989)を参照されたい。簡潔には、PCRにおいて少量のテンプレートDNAを出発物質として使用するとき、テンプレートDNAの対応する領域とはわずかに配列が異なるプライマーを使用して、プライマーがテンプレートと異なる位置でのみテンプレート配列と異なる特定のDNAフラグメントを比較的大量に作成することができる。
【0092】
変異体を作成するための別の方法であるカセット突然変異誘発は、Wells et al., Gene 34:315-323 (1985)に記載の技術に基づく。出発物質は、変異される出発ポリペプチドDNAを含むプラスミド(または他のベクター)である。変異される親DNAのコドンを同定する。同定した変異部位(複数でも可)の両側に、固有の制限エンドヌクレアーゼ部位が存在していなければならない。かかる制限部位が存在しないとき、出発ポリペプチドDNAの適切な位置でそれらを導入するため、上記オリゴヌクレオチド介在突然変異誘発方法を用いてそれらを作成することができる。プラスミドDNAを切断して、直線にする。制限部位間のDNA配列をコードするが所望の変異を含む二本鎖オリゴヌクレオチドは、標準的な方法を用いて合成され、ここで該オリゴヌクレオチドの2本の鎖は別個に合成され、次いで標準的な技術を用いて一体にハイブリダイズする。この二本鎖オリゴヌクレオチドは、カセットと称される。このカセットは、直線化されたプラスミドの末端と適合可能である5’および3’末端を有するように設計され、それはプラスミドと直接ライゲートすることができる。そうしてこのプラスミドは、変異DNA配列を含む。
【0093】
あるいはまたはさらに、本分子のポリペプチド変異体をコードする所望のアミノ酸配列を決定することができ、かかるアミノ酸配列変異体をコードする核酸配列を合成的に作製することができる。
【0094】
本発明の組換えフィブロネクチンベースの結合分子は、アミノ酸配列が(例えば野生型とは)異なるが、所望の活性には変化がないように、さらに修飾されていてもよいことが、当業者には理解される。例えば、「非本質的な」アミノ酸残基でのアミノ酸置換を導くさらなるヌクレオチド置換が該タンパク質に行われていてもよい。例えば、分子中の非本質的なアミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリー由来の別のアミノ酸残基で置換されていてもよい。他の態様において、一連のアミノ酸が、順序および/または側鎖ファミリーメンバーの組成において異なる構造的に類似した一連のもので置換されていてもよく、すなわちあるアミノ酸残基が同様の側鎖を有するアミノ酸残基で置換された保存的置換を行うことができる。
【0095】
同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当該技術分野において定義されており、塩基性側鎖(例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、非電荷極性側鎖(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分枝側鎖(例えばスレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族性側鎖(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む。
【0096】
アミノ酸置換に加えて、本発明は、機能的に均等な分枝を作成するための、出発分子アミノ酸配列の他の修飾を意図する。例えば、1個以上のアミノ酸残基を欠失させてもよい。一般に、本発明のこの態様に従って、1〜約10個以下の残基が欠失される。1個以上のアミノ酸欠失を含むフィブロネクチン分子は、好ましくは出発ポリペプチド分子の少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも約95%を保持している。
【0097】
元のフィブロネクチン分子機能を保持したアミノ酸挿入変異体を作成してもよい。例えば、本分子に少なくとも1個のアミノ酸残基(例えば1〜2個のアミノ酸残基、一般に10残基以下)を導入することができる。他の態様において、アミノ酸修飾は、1個のフィブロネクチン分子内で組み合わせてもよい。
【0098】
一つの態様において、アミノ酸置換は、システインまたは本フィブロネクチンベースの結合分子と部分の結合に好適な他の非天然アミノ酸を含むように、周知の結合方法を使用して、フィブロネクチンタイプ3ドメインで実施される。特に本発明は、Fn3足場を有するフィブロネクチンベースの結合分子の特定のアミノ酸変異体であって、1個以上のセリンアミノ酸残基がシステインまたは他の非天然アミノ酸で置換されている変異体に関する。置換され得るセリンアミノ酸残基は、Ser 1432、Ser 1436、Ser 1458、Ser 1475およびSer 1504を含むが、これらに限定されない。置換され得るFn3足場の他のアミノ酸位置は、V 1426、L 1434、T 1473およびT 1486を含むが、これらに限定されない。天然には生じないアミノ酸は、例えばAmbrex技術を用いてFn3足場に置換され得る(例えばUS 7,045,337; 7,083,970参照)。
【0099】
改善されたフィブロネクチンベースの結合分子を同定するためのスクリーニングアッセイ
多様なスクリーニングアッセイを使用して、改善された本発明の組換えフィブロネクチンベースの結合分子を同定することができる。一つの態様において、フィブロネクチンベースの結合分子は所望の抗原に対する改善された結合親和性についてスクリーニングされる。所望の抗原に対する改善された結合について選択するあらゆるインビトロまたはインビボスクリーニング法が意図される。
【0100】
他の態様において、フィブロネクチンベースの結合分子は細胞、ウイルスまたはバクテリオファージの表面に提示され、固定化抗原を用いた選択に供される。スクリーニングのための好適な方法は、米国特許7,063,943; 6,699,658; 7,063,943および5866344に記載されている。かかる表面ディスプレイ法は、フィブロネクチンベースの結合分子と通常細胞、ウイルスまたはバクテリオファージの外側表面に存在する好適なタンパク質の融合タンパク質の作成を必要とし得る。かかる融合体を作成するための好適なタンパク質は、当該技術分野において周知である。
【0101】
他の態様において、フィブロネクチンベースの結合分子は、リボソームまたはポリソームディスプレイのようなインビトロ表現型−遺伝子型連鎖ディスプレイを用いてスクリーニングされる。かかる「分子進化」の方法は、当該技術分野において周知である(例えば米国特許6,194,550および7,195,880参照)。
【0102】
本発明に使用するスクリーニング法は、1個以上のアミノ酸変異がフィブロネクチンベースの結合分子に導入されていることを必要とし得る。あらゆる当該技術分野において既知の変異誘発方法が意図される。一つの態様において、Fn3足場または移植CDRの1個以上のアミノ酸がランダムに変異されているフィブロネクチンベースの結合分子のライブラリーを作成する。他の態様において、Fn3足場または移植CDRの1個以上のアミノ酸が1個以上の所定のアミノ酸に変異されているフィブロネクチンベースの結合分子のライブラリーを作成する。
【0103】
本発明に使用するスクリーニング法はまた、抗原結合スクリーニングアッセイのストリンジェンシーが、改善された抗原に対する親和性を有するフィブロネクチンベースの結合分子を選択するために上昇していることが必要とされていてもよい。タンパク質間相互作用アッセイのストリンジェンシーを上昇させるための当業者に既知の方法が、ここで使用され得る。一つの態様において、所望の抗原に対するフィブロネクチンベースの結合分子の親和性を低下させるために、1種以上のアッセイ条件を変化させる(例えばアッセイバッファーの塩濃度)。他の態様において、フィブロネクチンベースの結合分子が所望の抗原と結合することができる時間の長さを少なくする。他の態様において、タンパク質間相互作用アッセイに競合的結合工程を加える。例えば、フィブロネクチンベースの結合分子は最初に、所望の固定化抗原と結合させる。次いで、固定化抗原と競合して結合する特定の濃度の非固定化抗原を加えて、抗原に対して最も低い親和性を有するフィブロネクチンベースの結合分子を固定化抗原から溶出させて、改善された抗原結合親和性を有するフィブロネクチンベースの結合分子を選択する。該アッセイ条件のストリンジェンシーは、アッセイに加える非固定化抗原の濃度を上昇させて、さらに上昇させることができる。
【0104】
本発明のスクリーニング法はまた、改善された抗原結合性を有する1種以上のフィブロネクチンベースの結合分子を富化するため、複数回の選択を必要としてもよい。一つの態様において、選択のそれぞれの回でさらにアミノ酸変異をフィブロネクチンベースの結合分子に導入する。他の態様において、選択のそれぞれの回で所望の抗原との結合のストリンジェンシーを上昇して、増加した結合親和性を有するフィブロネクチンベースの結合分子を選択する。
【0105】
製造方法
本発明の組換えフィブロネクチンベースの結合分子は典型的には、組み換え発現によって作成する。該分子をコードする核酸を発現ベクターに挿入する。該分子をコードするDNAセグメントは、それらの発現を確実に行うため発現ベクターの調節配列と作動可能に連結している。発現調節配列は、プロモーター(例えば天然関連または異種プロモーター)、シグナル配列、エンハンサー要素および転写終止配列を含むが、これらに限定されない。好ましくは、発現調節配列は、真核宿主細胞を形質転換またはトランスフェクトすることができるベクター内の真核プロモーター系である。ベクターが適切な宿主に取り込まれると、該宿主はヌクレオチド配列の高レベル発現に適した条件下で維持され、交叉反応するフィブロネクチンベースの結合分子を回収および精製する。
【0106】
これらの発現ベクターは典型的には、エピソームとして、あるいは宿主染色体DNAの不可欠な部分として、宿主生物内で複製可能である。一般に、発現ベクターは所望のDNA配列で形質転換された細胞の検出を可能とするため、選択マーカー(例えばアンピシリン耐性、ハイグロマイシン耐性、テトラサイクリン耐性またはネオマイシン耐性)を含む(例えば、Itakura et al., 米国特許4,704,362参照)。
【0107】
大腸菌は本発明のポリヌクレオチド(例えばDNA配列)をクローンかするために特に有用な原核宿主である。使用に好適な他の微生物宿主は、枯草菌のような細菌およびサルモネラ、セラチアおよび多様なシュードモナス属の種のような他の腸内細菌を含む。
【0108】
酵母のような他の微生物も発現に有用である。サッカロマイセスおよびピキアは、望ましい発現調節配列(例えばプロモーター)、複製起点、終止配列等を有する好適なベクターを有する、例示的な酵母宿主である。典型的なプロモーターは、3−ホスホグリセリン酸キナーゼおよび他の解糖酵素を含む。とりわけ誘導可能な酵母プロモーターは、アルコールデヒドロゲナーゼ、イソシトクロームC、ならびにメタノール、マルトースおよびガラクトース利用に関与する酵素由来のプロモーターを含む。
【0109】
微生物に加えて、哺乳類組織培養物も本発明のポリペプチド(例えば免疫グロブリンまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド)を発現し、生産するために使用することができる。Winnacker, From Genes to Clones, VCH Publishers, N.Y., N.Y. (1987)を参照されたい。異種タンパク質(例えばインタクトな免疫グロブリン)を分泌することができる多くの好適な宿主細胞系真核細胞が当該技術分野において開発されており、CHO細胞系、多様なCOS細胞系、HeLa細胞、293細胞、骨髄腫細胞系、形質転換B細胞およびハイブリドーマを含み得るため、実際には真核細胞が好まれる。これらの細胞の発現ベクターは、複製起点、プロモーターおよびエンハンサーのような発現調節配列(Queen et al., Immunol. Rev. 89:49 (1986))、リボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位および転写終止配列のような必要なプロセッシング情報部位を含んでいてもよい。好ましい発現調節配列は、免疫グロブリン遺伝子、SV40、アデノウイルス、ウシパピローマウイルス、サイトメガロウイルス等に由来するプロモーターである。Co et al., J. Immunol. 148:1149 (1992)を参照されたい。
【0110】
あるいは、コーディング配列は、トランスジェニック動物のゲノムへの導入および続くトランスジェニック動物の乳における発現のために、トランス遺伝子に組み込まれていてもよい(例えば、Deboer et al.のU.S. 5,741,957、Rosenの U.S. 5,304,489およびMeade et al.のU.S. 5,849,992参照)。好適なトランス遺伝子は、カゼインまたはベータラクトグロブリンのような乳腺特異的遺伝子由来のプロモーターおよびエンハンサーと作動可能に結合した、軽鎖および/または重鎖のコード配列を含む。
【0111】
目的のポリヌクレオチド配列および発現調節配列を含むベクターは、細胞宿主のタイプに強く依存して、周知の方法で宿主細胞に移すことができる。例えば、化学的に形質転換受容性のある原核細胞は、短時間に熱ショックを与えることができ、一方でリン酸カルシウム処置、エレクトロポレーション、リポフェクション、遺伝子銃またはウイルスを利用したトランスフェクションが、他の細胞宿主には使用され得る(一般に、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Press, 2nd ed., 1989)参照)。哺乳類細胞を形質転換するために使用される他の方法は、ポリブレン、プロトブラスト融合、リポソーム、エレクトロポレーションおよびマイクロインジェクションの使用を含む(一般に、Sambrook et al., supra参照)。トランスジェニック動物の作成のために、トランス遺伝子を受精卵母細胞にマイクロインジェクションすることができ、あるいは胚幹細胞のゲノムに組み込んで、かかる細胞の核を除核した卵母細胞に移すことができる。
【0112】
発現されると、本発明のフィブロネクチンベースの結合分子は、硫酸アンモニウム沈殿、アフィニティーカラム、カラムクロマトグラフィー、HPLC精製、ゲル電気泳動等を含む当該技術分野において標準的な方法に従って精製することができる(一般に、Scopes, Protein Purification (Springer-Verlag, N.Y., (1982))参照)。少なくとも約90〜95%の均一性の実質的に純粋な分子が好ましく、医薬的使用のためには98〜99%またはそれ以上の均一性が最も好ましい。
【0113】
組成物
本発明のフィブロネクチンベースの結合分子(およびその変異体、融合体および複合体)は、インビトロおよびインビボで診断および治療上有用性を有する。したがって、本発明はまた、薬学的に許容される担体と共に製剤された、フィブロネクチンベースの結合分子(またはその変異体、融合体および複合体)の1種以上の組合せを含む組成物、例えば医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物はまた、組合せ療法で、すなわち他の薬物と組み合わせて投与してもよい。例えば、組合せ療法は、本発明の組成物と少なくとも1種以上のさらなる治療薬物、例えば抗炎症剤、抗癌剤および化学療法剤を含んでいてもよい。
【0114】
本発明の医薬組成物はまた、放射線療法と組み合わせて投与してもよい。他のフィブロネクチンベースの結合分子との共投与も本発明に含まれる。
【0115】
本明細書において使用するとき、「薬学的に許容される担体」は、生理的に適合性である、いずれかおよび全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張化剤および吸収遅延剤等を含む。好ましくは、担体は静脈内、筋肉内、皮下、非経腸、脊髄または上皮投与(例えば注射または輸液による)に好適である。投与経路に依存して、活性化合物、すなわち抗体、二重特異的および多重特異的分子は、酸および化合物を不活性化し得る他の天然条件から該化合物を保護するための物質でコーティングしてもよい。
【0116】
「薬学的に許容される塩」は、親化合物の所望の生物学的活性を保持しており、いずれかの望ましくない毒性効果に関与しない塩を意味する(例えば、Berge, S.M., et al. (1977) J. Pharm. Sci. 66:1-19参照)。かかる塩の例は、酸付加塩および塩基付加塩を含む。酸付加塩は、非毒性無機酸、例えば塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜リン酸等、ならびに非毒性有機酸、例えば脂肪族モノおよびジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族および芳香族性スルホン酸等に由来するものを含む。塩基付加塩は、アルカリ土類金属、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等、ならびに非毒性有機アミン、例えばN,N’−ジベンジルエチレンジアミン、N−メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカイン等に由来するものを含む。
【0117】
本発明の組成物は、当該技術分野において既知の多様な方法によって投与することができる。当業者に理解されるとおり、投与経路および/または形態は、望まれる結果に従って変化する。活性化合物は、該化合物を速やかな放出から保護するための担体と共に製剤されていてもよい(例えばインプラント、経皮パッチおよびマイクロカプセル化送達系を含む制御放出製剤)。生分解性、生体適合性ポリマー、例えばエチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸を使用してもよい。かかる製剤の製造のための多様な方法が特許化されているか、あるいは一般に当業者に知られている。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J.R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978を参照されたい。
【0118】
ある投与経路で本発明の化合物を投与するために、その不活性化から保護するための物質で該化合物をコーティングするか、あるいはそれと共に該化合物を投与する必要がある場合がある。例えば、化合物は対象に適切な担体、例えばリポソームまたは希釈剤中で投与してもよい。薬学的に許容される希釈剤は、生理食塩水および水性バッファー溶液を含む。リポソームは、水中油中水CGFエマルジョンおよび常套のリポソームを含む(Strejan et al. (1984) J. Neuroimmunol. 7:27)。
【0119】
薬学的に許容される担体は、滅菌水溶液または分散剤および滅菌注射液または分散剤を即時製造するための滅菌粉末を含む。かかる媒体および薬学的に活性な物質の使用は、当該技術分野において既知である。いずれかの常套の媒体または薬物が本活性化合物と非適合性である場合を除き、本発明の医薬組成物におけるその使用が意図される。補助的な活性化合物も本組成物に含まれていてよい。
【0120】
治療用組成物は典型的には、滅菌されており、製造および貯蔵条件下で安定でなければならない。該組成物は、溶液、ミクロエマルジョン、リポソームまたは高薬物含有量に好適な他の秩序構造として製剤することができる。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコールおよび脂質ポリエチレングリコール等)およびそれらの好適な混合物を含む、溶媒または分散媒であってよい。適切な流動性は、例えばレシチンのようなコーティング物質の使用によって、分散剤の場合は必要な粒子サイズを維持することによって、そして界面活性剤の使用によって、維持することができる。多くの場合、組成物中に等張化剤、例えば糖、マンニトール、ソルビトールのようなポリアルコールまたは塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物の延長された吸収は、吸収遅延剤、例えばモノステアリン酸塩およびゼラチンを組成物中に含めることによってもたらされ得る。
【0121】
滅菌注射液は、上記成分の1種または組合せと共に、適切な溶媒中に必要量の活性化合物を含めて、所望により、次いで滅菌マイクロフィルトレーションして製造することができる。一般に、分散剤は、基礎分散媒および必要な上記の他の成分を含む滅菌ビークルに、活性化合物を含めることによって製造する。滅菌注射液の製造のための滅菌粉末の場合、好ましい製造方法は真空乾燥および凍結−乾燥(凍結乾燥)であり、これによって有効成分とその滅菌濾過した溶液のいずれかのさらなる所望の成分の粉末を得る。
【0122】
投与レジメンは、最適な所望の応答(例えば治療応答)を得るために調節される。例えば、1回ボーラスを投与し、複数回分割用量をゆっくり時間を掛けて投与するか、あるいは用量を治療状況の緊急性によって示されるとおりに比例的に減少または増加することができる。例えば、本発明のフィブロネクチンベースの結合分子は、皮下注射で週に1または2回、あるいは皮下注射で月に1または2回投与することができる。投与の簡便さおよび投与量の均一性のため、非経腸組成物を単位投与形態に製剤することが特に有利である。単位投与形態は、本明細書において使用するとき、処置する対象への単位投与量として好適な物理的に分離した単位を意味し;各単位は、必要な医薬担体と共に、所望の治療効果を奏するように計算された活性化合物の所定の量を含む。本発明の単位投与形態についての説明は、(a)活性化合物の特異的な特徴および得られるべき具体的な治療効果、ならびに(b)個体の感受性の処置のための活性化合物のような配合の分野に内在する制限に基づいて説明され、そしてそれらに直接的に依存する。
【0123】
薬学的に許容される抗酸化剤の例は、(1)水溶性抗酸化剤、例えばアスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等;(2)油溶性抗酸化剤、例えばアスコルビルパルミテート、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、プロピルガラート、アルファ−トコフェロール等;および(3)金属キレート剤、例えばクエン酸、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸等を含む。
【0124】
治療用組成物について、本発明の製剤は、経口、経鼻、局所(頬側および舌下を含む)、直腸、膣および/または非経腸投与に適したものを含む。製剤は、簡便には単位投与形態で存在していてよく、薬学の分野において既知のいずれかの方法によって製造することができる。単剤形態を製造するために担体物質と組み合わせることができる有効成分の量は、処置する対象および具体的な投与形態に従って変化する。単剤形態を製造するために担体物質と組み合わせることができる有効成分の量は、一般に、治療効果を奏する組成物の量である。一般に、この量は100%中、約0.001%〜約90%の有効成分、好ましくは約0.005%〜約70%、最も好ましくは約0.01%〜約30%である。
【0125】
膣投与に適している本発明の製剤はまた、適切であると当該技術分野において知られている担体を含んだペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、泡またはスプレー製剤を含む。本発明の組成物の局所または経皮投与用投与形態は、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチおよび吸入剤を含む。活性化合物は、滅菌条件下で薬学的に許容される担体と、そして必要であり得るいずれかの保存剤、バッファーまたはプロペラントと共に混合することができる。
【0126】
用語「非経腸投与」および「非経腸的に投与」は、本明細書において使用するとき経腸投与および局所投与以外の、通常は注射による投与形態を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、関節内、眼窩内、心臓内、皮膚内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内注射および輸液を含むが、これらに限定されない。
【0127】
本発明の医薬組成物に使用することができる好適な水性および非水性担体の例は、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)およびそれらの好適な混合物、植物油、例えばオリーブ油、および注射用有機エステル、例えばエチルオレエートを含む。適切な流動性は、例えばレシチンのようなコーティング物質の使用によって、分散剤の場合は必要な粒子サイズを維持することによって、そして界面活性剤の使用によって、維持することができる。
【0128】
これらの組成物はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤のようなアジュバントを含んでいてもよい。微生物の存在の防止は、上記滅菌方法ならびに多様な抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸等を含めることの両方によって、保証され得る。糖、塩化ナトリウム等のような等張化剤を組成物に含めることが望まれることもある。さらに、注射用医薬形態の延長された吸収は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンのような吸収を遅延させる物質を含めることによってもたらされ得る。
【0129】
本発明の化合物が医薬としてヒトおよび動物に投与されるとき、それらは単独で、または例えば0.001〜90%(より好ましくは、0.005〜70%、例えば0.01〜30%)の有効成分と薬学的に許容される担体を組み合わせて含む医薬組成物として、投与することができる。
【0130】
選択した投与経路に拘わらず、好適な水和物形態で使用されてもよい本発明の化合物および/または本発明の医薬組成物は、当業者に既知の常套の方法によって薬学的に許容される投与形態に製剤される。
【0131】
本発明の医薬組成物中の有効成分の実際の投与レベルは、具体的な患者、組成物および投与形態について、患者に毒性なく、所望の治療応答を得るために有効である有効成分の量を得るように、変化してよい。選択される投与レベルは、使用する具体的な本発明の組成物またはそのエステル、塩もしくはアミドの活性、投与経路、投与時間、使用する具体的な化合物の排出速度、処置の期間、使用する具体的な組成物と組み合わせて用いる他の薬物、化合物および/または物質、処置する患者の年齢、性別、体重、状態、一般的健康および薬歴等の医学分野で周知の要因を含む、多様な薬物動態因子に依存する。当該技術分野における通常の技術を有する医師または獣医は、必要な医薬組成物の有効量を容易に決定し、予測することができる。例えば、医師または獣医は、医薬組成物において使用する本発明の化合物の用量を、所望の治療効果を得るために必要とされる量よりも少ないレベルで開始し、所望の効果が得られるまで用量を漸増することができる。一般に、本発明の組成物の好適な1日用量は、治療効果を奏するために有効な最低用量である化合物の量である。かかる有効用量は、一般に、上記要因に依存する。投与は静脈内、筋肉内、腹腔内または皮下であることが好ましく、好ましくは標的部位の近くに投与する。所望により、治療用組成物の有効1日用量は、1日の適切な間隔で、所望により単位投与形態で、2、3、4、5、6またはそれ以上の分割用量として別々に投与することが好ましいこともある。本発明の化合物を単独で投与することは可能であるが、医薬製剤(組成物)として化合物を投与することが好ましい。
【0132】
治療用組成物は、当該技術分野において既知の医薬デバイスによって投与することができる。例えば好ましい態様において、本発明の治療用組成物は、無針皮下注射器、例えば米国特許5,399,163、5,383,851、5,312,335、5,064,413、4,941,880、4,790,824または4,596,556に記載のデバイスによって投与することができる。本発明に有用な周知のインプラントおよびモジュールの例は、制御された速度で医薬を供給するためのインプラント可能なマイクロ輸液ポンプを記載する米国特許4,487,603、皮膚を介して医薬を投与するための治療用デバイスを記載する米国特許4,486,194、正確な輸液速度で医薬を送達するための医薬輸液ポンプを記載する米国特許4,447,233、連続的薬物送達のための、インプラント可能な流速可変型輸液装置を記載する米国特許4,447,224、複数のチャンバー区画を有する浸透薬物送達システムを記載する米国特許4,439,196、ならびに浸透薬物送達システムを記載する米国特許4,475,196を含む。多様な他のかかるインプラント、送達システムおよびモジュールが当業者に既知である。
【0133】
ある態様において、本発明の分子は、インビボでの適切な分散を確実にするために製剤され得る。例えば、血液脳関門(BBB)は多くの高親水性化合物を除外する。本発明の治療化合物がBBBを通過することを確保するため(所望により)、それらは例えばリポソーム中に製剤されていてよい。リポソームを製造する方法に関しては、例えば米国特許4,522,811;5,374,548;および5,399,331を参照されたい。リポソームは特定の細胞または臓器に選択的に移動され、したがって標的薬物送達を向上する1種以上の部分を含んでいてもよい(例えば、V.V. Ranade (1989) J. Clin. Pharmacol. 29:685参照)。例示的な標的部分は、葉酸またはビオチン(例えば、Low et al.の米国特許5,416,016参照);マンノシド(Umezawa et al., (1988) Biochem. Biophys. Res. Commun. 153:1038);抗体(P.G. Bloeman et al. (1995) FEBS Lett. 357:140; M. Owais et al. (1995) Antimicrob. Agents Chemother. 39:180);界面活性タンパク質A受容体(Briscoe et al. (1995) Am. J. Physiol. 1233:134)、本発明の製剤ならびに本発明の分子の成分を含み得る異なる種;p120(Schreier et al. (1994) J. Biol. Chem. 269:9090)を含む;K. Keinanen; M.L. Laukkanen (1994) FEBS Lett. 346:123; J.J. Killion; I.J. Fidler (1994) Immunomethods 4:273も参照されたい。本発明の一つの態様において、本発明の治療化合物は、リポソームに製剤され;より好ましい態様において、リポソームは標的部分を含む。最も好ましい態様において、リポソーム中の治療化合物は、腫瘍または感染に近い部位にボーラス注射によって送達される。組成物は、容易に注射針を通過できる程度に流動的でなければならない。それは製造および貯蔵条件下で安定でなければならず、細菌および真菌のような微生物の汚染作用に対して保存されていなければならない。
【0134】
さらなる態様において、本発明の分子は、胎盤を通過する輸送を防止または低減するように製剤されていてもよい。これは当該技術分野において既知の方法、例えばフィブロネクチンベースの結合分子のPEG化によって行うことができる。さらなる参考文献は、Cunningham-Rundles C, Zhuo Z, Griffith B, Keenan J. (1992) Biological activities of polyethylene-glycol immunoglobulin conjugates. Resistance to enzymatic degradation. J Immunol Methods. 152:177-190; および Landor M. (1995) Maternal-fetal transfer of immunoglobulins, Ann Allergy Asthma Immunol 74:279-283を挙げることができる。これは、フィブロネクチンベースの結合分子が自然発生的流産の再発を処置または予防するために使用されるとき、特に関係する。
【0135】
がんを阻害する化合物の能力は、ヒト腫瘍における効果の予測が可能な動物モデル系において評価することができる。あるいは、組成物のこの特性は、当業者に既知のインビトロでの阻害アッセイによって、のように、本化合物の阻害能を試験することによって評価することができる。治療上有効量の治療化合物は、腫瘍のサイズを減少させることができ、あるいは対象の症状を緩和することができる。当業者は、対象のサイズ、対象の症状の重症度および選択した具体的な化合物または投与経路のような要因に基づいて、かかる量を決定することができる。
【0136】
組成物は滅菌されており、そして該組成物がシリンジによって送達可能である程度に流動的でなければならない。水に加えて、担体は等張緩衝化食塩水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコールおよび液性ポリエチレングリコール等)およびそれらの好適な混合物であり得る。適切な流動性は、例えばレシチンのようなコーティング物質の使用によって、分散剤の場合は必要な粒子サイズを維持することによって、そして界面活性剤の使用によって、維持することができる。多くの場合、組成物中に等張化剤、例えば糖、マンニトール、ソルビトールのようなポリアルコールおよび塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物の長期間の吸収は、吸収遅延剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチンを組成物中に含めることによってもたらされ得る。
【0137】
活性化合物が上記のとおり好適に保護されているとき、該化合物は例えば不活性希釈剤または同化食用担体と共に経口的に投与してもよい。
【0138】
治療および診断適用
本明細書に記載のフィブロネクチンベースの結合分子は、いずれかの目的の抗原に結合するように構築することができ、そして増加した安定性および半減期、ならびにさらなる機能的部分を有するように修飾することができる。したがって、これらの分子は、研究、治療および診断分野を含む、抗体が使用されているあらゆる領域において抗体の代わりに使用することができる。さらに、これらの分子は抗体よりも優れた溶解性および安定性を有するため、本明細書に記載の抗体模倣物はまた、抗体分子を破壊もしくは不活性化する条件下で使用することもできる。
【0139】
例えばこれらの分子は、例えばインビトロまたはエクスビボで、培地中の細胞に、あるいは例えばインビボで対象に、多様な傷害の処置、予防または診断のために、投与することができる。用語「対象」は、本明細書において使用するとき、ヒトおよび非ヒト動物を含むことを意図する。非ヒト動物は、全ての脊椎動物、例えば哺乳類および非ヒト哺乳類、例えば非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ニワトリ、両生類およびは虫類を含む。フィブロネクチン分子が別の薬物と共に投与されるとき、これら2つは順次または同時に投与することができる。
【0140】
一つの態様において、本発明のフィブロネクチンベースの結合分子(およびその変異体、融合体および複合体)は、該分子によって結合される標的および/または二重特異的/多重特異的フィブロネクチンベースの結合分子によって結合される標的のレベルを検出するために使用することができる。これは、例えばサンプル(例えばインビトロサンプル)と対照サンプルを該分子と、該分子と標的の複合体の形成が可能な条件下で接触させることによって、達成することができる。いずれかの形成された該分子と標的の複合体を検出して、サンプルと対照で比較する。例えば、ELISA、FACSおよびフローサイトメトリー分析のような当該技術分野において周知の標準的な検出方法が、本発明の組成物を用いて実施され得る。
【0141】
また、本発明の組成物(例えば、フィブロネクチンベースの結合分子、その変異体、融合体および複合体)と使用のための指示書を含むキットも本発明の範囲に含まれる。該キットはさらに、少なくとも1種のさらなる試薬または1種以上のさらなる本発明のフィブロネクチン分子(例えば第一の分子床となる標的抗原のエピトープと結合する相補的活性を有する抗体)を含んでいてもよい。キットは典型的には、キットの内容物の意図した使用を記載したラベルを含む。用語ラベルは、キット上またはキットと共に供給されるいずれかの記載されたかあるいは記録された物体か、あるいはそれ以外のキットに伴うものを含む。
【0142】
上記のとおり、本発明の分子は、研究、治療および診断分野のあらゆる領域で使用することができる。本発明のフィブロネクチンベースの結合分子(およびその変異体、融合体および複合体)を使用して処置することができる疾患/障害の例は、自己免疫障害、がん、感染症、心臓血管疾患、胃腸疾患、呼吸器疾患、代謝疾患、筋骨格疾患、神経変性疾患、精神病、眼の疾患、過形成、糖尿病性網膜症、黄斑変性、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、関節リウマチ、糖尿病、サルコイドーシス、喘息、浮腫、肺性高血圧、乾癬、角膜移植片拒絶、血管新生緑内障、オスラー・ウェーバー症候群、心筋血管新生、プラーク血管新生、再狭窄、血管外傷後の新生内膜形成、毛細血管拡張症、血友病性関節、血管線維腫、慢性炎症に関連した線維症、肺線維症、アミロイド症、アルツハイマー病、臓器移植拒絶、深部静脈血栓症または創部の肉芽形成を含むが、これらに限定されない。
【0143】
一つの態様において、本発明の分子は、急性特発性血小板減少性紫斑病、慢性特発性血小板減少性紫斑病、皮膚筋炎、シデナム舞踏病、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、リウマチ熱、多腺性症候群、水疱性類天疱瘡、若年性糖尿病、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、レンサ球菌後腎炎、結節性紅斑、高安動脈炎、アジソン病、関節リウマチ、多発性硬化症、サルコイドーシス、潰瘍性大腸炎、多形性紅斑、IgA腎症、結節性多発動脈炎、強直性脊椎炎, グッドパスチャー症候群、閉塞性血栓性血管炎、ショーグレン症候群、原発性胆汁性肝硬変、橋本甲状腺炎、甲状腺機能亢進症(すなわちグレーブス病)、強皮症、慢性活動性肝炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、多発性軟骨炎、尋常性天疱瘡、ウェグナー肉芽腫、膜性腎症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄癆、巨細胞性動脈炎/多発筋痛、悪性貧血、急速進行性糸球体腎炎、乾癬または線維化性肺胞炎のような自己免疫疾患を処置するために使用することができる。
【0144】
別の態様において、本発明の分子は、がんの処置に使用することができる。標的とされ得る腫瘍のタイプの例は、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、胆嚢癌、乳癌、子宮頸癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、結直腸癌、子宮内膜癌、食道癌、胃癌、頭頸部癌、ホジキンリンパ腫、肺癌、甲状腺髄様癌、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、腎臓癌、卵巣がん、膵臓癌、黒色腫、肝臓癌、前立腺癌、神経膠腫および他の脳および脊髄腫瘍および膀胱癌を含む。
【0145】
別の態様において、本発明の分子は、病原体、例えば細菌、ウイルス、真菌または単細胞寄生虫による感染の処置に使用することができる。処置し得る真菌の例は、ミクロスポルム属(Microsporum)、トリコフィトン属(Trichophyton)、エピデルモフィトン属(Epidermophyton)、スポロトリックス・シェンキイ(Sporothrix schenckii)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)、ヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、ブラストミセス・デルマティティディス(Blastomyces dermatitidis)またはカンジダ・アルビカンス(Candida albican)を含む。ウイルスの例は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、狂犬病ウイルス、インフルエンザウイルス、ヒトパピローマウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、センダイウイルス、ネコ白血病ウイルス、レオウイルス、ポリオウイルス、ヒト血清パルボ様ウイルス、サルウイルス40、呼吸器多核体ウイルス、マウス乳癌ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、デングウイルス、風疹ウイルス、麻疹ウイルス、アデノウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、エプスタイン・バーウイルス、マウス白血病ウイルス、ムンプスウイルス、水疱性口内炎ウイルス、シンドビスウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、またはブルータングウイルスを含む。細菌の例は、炭疽菌、ストレプトコッカス・アガラクチア、レジオネラ・ニューモフィラ、化膿レンサ球菌、大腸菌、淋菌、髄膜炎菌、肺炎レンサ球菌、インフルエンザ菌B型、梅毒トレポネーマ、ライム病スピロヘータ、緑膿菌、ライ菌、ウシ流産菌、結核菌またはマイコプラズマ属を含む。寄生虫の例は、ランブル鞭毛虫、ジアルジア種、カリニ肺炎菌、トキソプラズマ原虫、クリプト・スポルジウム種(Crypto spordium spp.)、アカントアメーバ種、ネグレリア種、リーシュマニア種、大腸バランチジウム、エバンス・トリパノソーマ、トリパノソーマ種、二核アメーバ、膣トリコモナス、トリコモナス種、エントアメーバ種、二核アメーバ種、バベシア種、熱帯熱マラリア原虫、イソスポーラ種、トキソプラズマ種、エンテロシトゾーン種、ニューモシスチス種およびバランチジウム種を含む。
【0146】
治療および診断適用
本明細書に記載のフィブロネクチンベースの結合分子は、いずれかの目的の抗原または標的と結合するように構成することができる。かかる標的は、クラスタードメイン、細胞受容体、細胞受容体リガンド、成長因子、インターロイキン、タンパク質アレルゲン、細菌またはウイルスを含むが、これらに限定されない(例えば図7A〜C参照)。本明細書に記載のフィブロネクチンベースの結合分子はまた、増加した安定性および半減期、ならびにさらなる機能的部分を有するように修飾することができる。したがって、これらの分子は、研究、治療および診断分野を含む抗体が使用されるあらゆる分野において、抗体の代わりに使用することができる。さらに、これらの分子は抗体よりも優れた溶解性および安定性を有するため、本明細書に記載の抗体模倣物はまた、抗体分子を破壊しまたは不活性化する条件下で使用することができる。
【0147】
本発明は以下の実施例によってさらに説明されるが、これはさらなる限定を構成するべきではない。全ての図面および本明細書を通じて言及した全ての文献、特許および公開された特許出願の内容は、明示的に参照により本明細書に引用する。
【実施例】
【0148】
実施例
実施例を通じて、特に定めのない限り、次の物質および方法を用いた。
【0149】
材料および方法
一般に、特に定めのない限り、本発明の実施は、化学、分子生物学、組換えDNA技術、免疫学(例えば特に抗体技術)およびポリペプチド調製における標準的な技術を使用する。例えば、Sambrook, Fritsch and Maniatis, Molecular Cloning: Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989); Antibody Engineering Protocols (Methods in Molecular Biology), 510, Paul, S., Humana Pr (1996); Antibody Engineering: A Practical Approach (Practical Approach Series, 169), McCafferty, Ed., Irl Pr (1996); Antibodies: A Laboratory Manual, Harlow et al., C.S.H.L. Press, Pub. (1999);および Current Protocols in Molecular Biology, eds. Ausubel et al., John Wiley&Sons (1992)を参照されたい。本発明の実施に使用するのに好適な他の方法、技術および配列は、米国特許7,153,661; 7,119,171; 7,078,490; 6,703,199; 6,673,901; および 6,462,189に見出すことができる。
【0150】
配列
次の配列を使用した。
野生型Fn3配列
VSDVPRDLEVVAATPTSLLISWDAPAVTVRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPGSKSTATISGLKPGVDYTITVYAVTGRGDSPASSKPISINYRT(配列番号1)
野生型Fn3配列(RGD→RGA)
VSDVPRDLEVVAATPTSLLISWDAPAVTVRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPGSKSTATISGLKPGVDYTITVYAVTGRGASPASSKPISINYRT(配列番号2)
TNF結合Fn3配列
VSDVPRDLEVVAATPTSRLISWNRSGLQSRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPPWASIATISGLKPGVDYTITVYAVTDKSDTYKYDDPISINYRT(配列番号3)
TNF結合Fn3(R18L&I56T)
VSDVPRDLEVVAATPTSLLISWNRSGLQSRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPPWASTATISGLKPGVDYTITVYAVTDKSDTYKYDDPISINYRT(配列番号4)
VEGFR結合Fn3
GEVVAATPTSLLISWRHPHFPTRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPLQPPTATISGLKPGVDYTITVYAVTDGRNGRLLSIPISINYRT(配列番号76)
【0151】
dsbAシグナル配列
MKKIWLALAGLVLAFSASA(配列番号5)
CD33シグナル配列+TNF結合Fn3配列
MPLLLLLPLLWAGALAVSDVPRDLEVVAATPTSRLISWNRSGLQSRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPPWASIATISGLKPGVDYTITVYAVTDKSDTYKYDDPISINYRT(配列番号6)
CD33シグナル配列+TNF結合Fn3(R18LおよびI56T)
MPLLLLLPLLWAGALAVSDVPRDLEVVAATPTSLLISWNRSGLQSRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPPWASTATISGLKPGVDYTITVYAVTDKSDTYKYDDPISINYRT(配列番号7)
CD33シグナル配列+野生型Fn3
MPLLLLLPLLWAGALAVSDVPRDLEVVAATPTSLLISWDAPAVTVRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPGSKSTATISGLKPGVDYTITVYAVTGRGDSPASSKPISINYRT(配列番号8)
CD33シグナル配列+野生型Fn3(RGD→RGA)
MPLLLLLPLLWAGALAVSDVPRDLEVVAATPTSLLISWDAPAVTVRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPGSKSTATISGLKPGVDYTITVYAVTGRGASPASSKPISINYRT(配列番号9)
CD33シグナル配列+VEGFR結合Fn3
MPLLLLLPLLWAGALAGEVVAATPTSLLISWRHPHFPTRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPLQPPTATISGLKPGVDYTITVYAVTDGRNGRLLSIPISINYRT(配列番号77)
【0152】
TNF結合ナノ抗体
QVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDYWMYWVRQAPGKGLEWVSEINTNGLITKYPDSVKGRFTISRDNAKNTLYLQMNSLKPEDTALYYCARSPSGFNRGQGTQVTVSS(配列番号10)
TNF結合シングルドメイン抗体
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQAIDSYLHWYQQKPGKAPKLLIYSASNLETGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLLPEDFATYYCQQVVWRPFTFGQGTKVEIKR(配列番号11)
抗HSAバインダー
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFDEYNMSWVRQAPGKGLEWVSTILPHGDRTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKQDPLYRFDYWGQGTLVTVSS(配列番号12)
抗MSAバインダー
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSIIKHLKWYQQKPGKAPKLLIYGASRLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQGARWPQTFGQGTKVEIKR(配列番号13)
抗RSAバインダー
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYRNSPLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQTYRVPPTFGQGTKVEIKR(配列番号78)
【0153】
ヒト血清アルブミン(HSA)
DAHKSEVAHRFKDLGEENFKALVLIAFAQYLQQCPFEDHVKLVNEVTEFAKTCVADESAENCDKSLHTLFGDKLCTVATLRETYGEMADCCAKQEPERNECFLQHKDDNPNLPRLVRPEVDVMCTAFHDNEETFLKKYLYEIARRHPYFYAPELLFFAKRYKAAFTECCQAADKAACLLPKLDELRDEGKASSAKQRLKCASLQKFGERAFKAWAVARLSQRFPKAEFAEVSKLVTDLTKVHTECCHGDLLECADDRADLAKYICENQDSISSKLKECCEKPLLEKSHCIAEVENDEMPADLPSLAADFVESKDVCKNYAEAKDVFLGMFLYEYARRHPDYSVVLLLRLAKTYETTLEKCCAAADPHECYAKVFDEFKPLVEEPQNLIKQNCELFEQLGEYKFQNALLVRYTKKVPQVSTPTLVEVSRNLGKVGSKCCKHPEAKRMPCAEDYLSVVLNQLCVLHEKTPVSDRVTKCCTESLVNRRPCFSALEVDETYVPKEFNAETFTFHADICTLSEKERQIKKQTALVELVKHKPKATKEQLKAVMDDFAAFVEKCCKADDKETCFAEEGKKLVAASQAALGL(配列番号14)
【0154】
ラット血清アルブミン(RSA)
EAHKSEIAHRFKDLGEQHFKGLVLIAFSQYLQKCPYEEHIKLVQEVTDFAKTCVADENAENCDKSIHTLFGDKLCAIPKLRDNYGELADCCAKQEPERNECFLQHKDDNPNLPPFQRPEAEAMCTSFQENPTSFLGHYLHEVARRHPYFYAPELLYYAEKYNEVLTQCCTESDKAACLTPKLDAVKEKALVAAVRQRMKCSSMQRFGERAFKAWAVARMSQRFPNAEFAEITKLATDVTKINKECCHGDLLECADDRAELAKYMCENQATISSKLQACCDKPVLQKSQCLAEIEHDNIPADLPSIAADFVEDKEVCKNYAEAKDVFLGTFLYEYSRRHPDYSVSLLLRLAKKYEATLEKCCAEGDPPACYGTVLAEFQPLVEEPKNLVKTNCELYEKLGEYGFQNAVLVRYTQKAPQVSTPTLVEAARNLGRVGTKCCTLPEAQRLPCVEDYLSAILNRLCVLHEKTPVSEKVTKCCSGSLVERRPCFSALTVDETYVPKEFKAETFTFHSDICTLPDKEKQIKKQTALAELVKHKPKATEDQLKTVMGDFAQFVDKCCKAADKDNCFATEGPNLVARSKEALA(配列番号79)
hIgG1 Fc
KSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号15)
【0155】
プライマー
(1)5’gggcggaccgatgctcataaatctgaagtcgc3’(F)(配列番号16)
(2)5’gggtttaaactctagatcatcaatgatgatgatgatggtgcaaaccaagtgcggcctgactggccgc3’(R)(配列番号17)
(3)5’cagactagatctgtgagcgatgtgccgcgtgatc3’(F)(配列番号18)
(4)5’cagactggatccgccaccgccgctgccaccaccgccagaaccgccaccaccggtgcgatagttaatgctgatcgg3’(R)(配列番号19)
(5)5’cagactggatccgccaccgccgctgccaccaccgccagaaccgccaccaccggtgcgatagttaatgctaatcggtttg3’(R)(配列番号20)
(6)5’cagactcatatggtgagcgatgtgccgcgtgatc3’(F)(配列番号21)
【0156】
(7)5’ctgactggatccttaatggtgatgatgatgatgtgccgcagcacaagctgcagcggtgcgatagttaatgctgatc3’(R)(配列番号22)
(8)5’ctgactggatccttaatggtgatgatgatgatgtgccgcagcacaagctgcagcggtgcgatagttaatgctaatc3’(R)(配列番号23)
(9)5’cagactggatccgtgagcgatgtgccgcgtgatc3’(F)(配列番号24)
(10)5’ctgactaagctttcattaatggtgatgatgatgatgtgccgcagcacaagctgcagcggtgcgatagttaatgctgatc3’(R)(配列番号25)
(11)5’ctgactaagctttcattaatggtgatgatgatgatgtgccgcagcacaagctgcagcggtgcgatagttaatgctaatc3’(R)(配列番号26)
(12)5’cagactcatatggtgagcgatgtgccgcgtgatc3’(F)(配列番号27)
(13)5’ctgactggatccttaatggtgatgatgatgatgtgccgcagcctaagctgcagcggtgcgatagttaatgctgatc3’(R)(配列番号28)
(14)5’ctgactggatccttaatggtgatgatgatgatgtgccgcagcctaagctgcagcggtgcgatagttaatgctaatc3’(R)(配列番号29)
(15)5’cagactggatccgtgagcgatgtgccgcgtgatc3’(F)(配列番号30)
【0157】
(16)5’ctgactaagctttcattaatggtgatgatgatgatgtgccgcagcctaagctgcagcggtgcgatagttaatgctgatc3’(R)(配列番号31)
(17)5’ctgactaagctttcattaatggtgatgatgatgatgtgccgcagcctaagctgcagcggtgcgatagttaatgctaatc3’(R)(配列番号32)
(18)5’gggcggaccggcaaatcttgtgacaaaactcacacatgc3’(F)(配列番号33)
(19)5’gggtttaaactctagatcatcaatgatgatgatgatggtgtttacccggagacagggagaggc3’(R)(配列番号34)
(20)5’cgtgcgagccagagcattagctcttacctgaactggtatcagcagaaaccg3’(F)(配列番号80)
(21)5’cggtttctgctgataccagttcaggtaagagctaatgctctggctcgcacg3’(R)(配列番号81)
(22)5’cgaaactgctgatttatcgcaacagcccgctgcagagcggtgtgcc3’(F)(配列番号82)
(23)5’ggcacaccgctctgcagcgggctgttgcgataaatcagcagtttcg3’(R)(配列番号83)
(24)5’cctattattgccagcagacttaccgtgttccgccgacctttggccagggcacc3’(F)(配列番号84)
(25)5’ggtgccctggccaaaggtcggcggaacacggtaagtctgctggcaataatagg3’(R)(配列番号85)
(26)5’gggcggaccgaagcacacaagagtgagatcgc3’(F)(配列番号86)
(27)5’gggtttaaacgggccctctagatcatcaatgatgatgatgatggtgggctaaggcttctttgcttctagc3’(R)(配列番号87)
(28)5’atggattccaaaacgccgttctggttcgatacacc3’(F)(配列番号88)
(29)5’ggtgtatcgaaccagaacggcgttttggaatccat3’(R)(配列番号89)
(30)5’accaaattggcaacagacgtcaccaaaatcaacaagg3’(F)(配列番号90)
(31)5’ccttgttgattttggtgacgtctgttgccaatttggt3’(R)(配列番号91)
【0158】
実施例1
CDRグラフティング
コンピューターモデリングを用いて、TNF結合ナノ抗体(配列番号10)由来のCDRループ1(SGFTFSDYWM−配列番号35)およびループ3(RSPSGFNR−配列番号36)を、ヒトフィブロネクチンタイプIIIモジュールの野生型第10ドメインのフレームワーク(10Fn3または野生型Fn3)に移植した。TNF結合ナノ抗体および野生型Fn3分子のアミノ酸配列は次のとおりである:
TNF結合ナノ抗体(配列番号10)
QVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDYWMYWVRQAPGKGLEWVSEINTNGLITKYPDSVKGRFTISRDNAKNTLYLQMNSLKPEDTALYYCARSPSGFNRGQGTQVTVSS
野生型Fn3(配列番号1)
VSDVPRDLEVVAATPTSLLISWDAPAVTVRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPGSKSTATISGLKPGVDYTITVYAVTGRGDSPASSKPISINYRT
【0159】
同じ方法を用いて、TNF結合シングルドメイン抗体(配列番号40)由来のCDRループ1(SQAIDSY−配列番号38)およびループ3(QVVWRPFT−配列番号39)を、野生型Fn3に移植した。TNF結合シングルドメイン抗体のアミノ酸配列は次のとおりであった:
TNF結合シングルドメイン抗体(配列番号40)
Asp Ile Gln Met Thr Gln Ser Pro Ser Ser Leu Ser Ala Ser Val Gly Asp Arg Val Thr Ile Thr Cys Arg Ala Ser Gln Ala Ile Asp Ser Tyr Leu His Trp Tyr Gln Gln Lys Pro Gly Lys Ala Pro Lys Leu Leu Ile Tyr Ser Ala Ser Asn Leu Glu Thr Gly Val Pro Ser Arg Phe Ser Gly Ser Gly Ser Gly Thr Asp Phe Thr Leu Thr Ile Ser Ser Leu Leu Pro Glu Asp Phe Ala Thr Tyr Tyr Cys Gln Gln Val Val Trp Arg Pro PheThr Phe Gly Gln Gly Thr Lys Val Glu Ile Lys Arg
【0160】
次いで、次に示すフォーマットのDNA配列を大腸菌での発現に最適化して、Geneart AG, Germanyで作成した。得られたDNAフラグメントをNdeI/BamHIで消化して、pET9aの対応する部位にライゲートした(適切な隣接DNA配列を次のフォーマットに加えた)。
フォーマット:
1)TNF結合ナノ抗体由来のCDR1およびCDR3ループを有する野生型Fn3−Hisタグ(pET9a)
VSDVPRDLEVVAATPTSLLISWDASGFTFSDYWMRITYGETGGNSPVQEFTVPGSKSTATISGLKPGVDYTITVYRSPSGFNRISINYRTHHHHHH(配列番号41)
2)最初の8アミノ酸を除いた、TNF結合ナノ抗体由来のCDR1およびCDR3ループを有する野生型Fn3−Hisタグ(pET9a)
EVVAATPTSLLISWDASGFTFSDYWMRITYGETGGNSPVQEFTVPGSKSTATISGLKPGVDYTITVYRSPSGFNRISINYRTHHHHHH(配列番号42)
3)TNF結合シングルドメイン抗体由来のCDR1およびCDR3ループを有する野生型Fn3−Hisタグ(pET9a)
VSDVPRDLEVVAATPTSLLISWDASQAIDSYYRITYGETGGNSPVQEFTVPGSKSTATISGLKPGVDYTITVYQVVWRPFTPISINYRTHHHHHH(配列番号43)
4)最初の8アミノ酸を除いた、TNF結合シングルドメイン抗体由来のCDR1およびCDR3ループを有する野生型Fn3−Hisタグ(pET9a)
EVVAATPTSLLISWDASQAIDSYYRITYGETGGNSPVQEFTVPGSKSTATISGLKPGVDYTITVYQVVWRPFTPISINYRTHHHHHH(配列番号44)
【0161】
ライゲーション混合物を用いて、XL1−BlueまたはDH5αコンピテント細胞を形質転換した。ポジティブクローンをDNA配列決定によって確認した。BL21(DE3)を含む多様な大腸菌株で構築物を発現させた。誘導および発現の後、細胞ペレットを−20℃で凍結させ、次いで溶解バッファー(20mMのNaHPO、10mMのイミダゾール、500mMのNaCl、バッファー50ml当たりEDTAなしのComplete1錠(Roche)、2mMのMgCl、10U/mlのBenzonase(Merck)[pH7.4])に再懸濁した。細胞を氷上で超音波処理して、遠心分離した。上清を濾過し、Ni−NTAカラムにロードした。カラムを洗浄バッファー(20mMのイミダゾールを含む以外は、溶解バッファーと同じ)で洗浄し、次いで溶出バッファー(500mMまでのイミダゾールである以外は、溶解バッファーと同じ)で溶出した。サンプルをBis-Trisゲル(Invitrogen)で分析し、次いでAmicon Ultra-15チューブ内で濃縮し、Superdex prep gradeカラム(Amersham)にロードし、10mMのTrisまたはPBSで溶出した。サンプルをBis-Trisゲルで再度分析した。対応する抗原との結合を、ELISAまたはBiacoreで確認した。
【0162】
実施例2
フィブロネクチン分子内のアミノ酸修飾位置の同定
野生型Fn3配列のレビューに基づいて、アミノ酸修飾、例えばPEG化を促進するためのシステインまたは天然には生じないアミノ酸残基による置換の可能性のある位置として、部位を同定した。例えば、セリン残基(合計11個、次の配列において下線を付した;セリン残基のスティック提示を有する野生型Fn3分子を示す図1も参照されたい)を次のとおり分析した。
野生型Fn3
DVPRDLEVVAATPTLLIWDAPAVTVRYYRITYGETGGNPVQEFTVPGTATIGLKPGVDYTITVYAVTGRGDPASSKPIINYRT(配列番号1)
【0163】
結合表面近くに位置するセリン残基、例えばN末端領域に属し、FGおよびBCループとも接触するSer2は分析から除外した(次の配列で下線を付したS)。
DVPRDLEVVAATPTSLLISWDAPAVTVRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPGSKSTATISGLKPGVDYTITVYAVTGRGDSPASSKPISINYRT(配列番号1)
Ser53−Ser55 − これらの残基はDEループに属する(次に下線を付した)。
VSDVPRDLEVVAATPTSLLISWDAPAVTVRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPGTATISGLKPGVDYTITVYAVTGRGDSPASSKPISINYRT(配列番号1)
Ser81−Ser84−Ser85 − これらの残基はFGループに属する(次に下線を付した)。
VSDVPRDLEVVAATPTSLLISWDAPAVTVRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPGSKSTATISGLKPGVDYTITVYAVTGRGDPASSKPISINYRT(配列番号1)
【0164】
修飾されるセリンの候補は次のものを含む:Ser17−Ser21−Ser43−Ser60−Ser89。これらのセリン残基は、全て溶媒に曝されており、Ser43を除くそれらはβ鎖の一部である(図2参照)。
Ser17およびSer21は、それぞれB鎖の最初および末端に位置する。Ser60はE鎖の末端に位置する。
Ser21およびSer60は、フィブロネクチンの3鎖シートを形成する2本の隣接鎖に位置する。
Ser89はG鎖の中央に位置し、これはまた、4鎖シートを形成する最後の鎖でもある。したがって、Ser89は溶媒にも曝されており、外部の分子と接触可能である。
Ser43は分子の底部に位置し、溶媒に向かって折り曲げられているループの末端でCDループに属する(図2参照)。
【0165】
修飾される可能性がある部位としての他の残基は、β鎖に位置し、溶媒に曝されている次の残基を含む:V11−L19−T58−T71(次の配列で下線を付した)。
VSDVPRDLEVAATPTSLISWDAPAVTVRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPGSKSTAISGLKPGVDYTIVYAVTGRGDSPASSKPISINYRT(配列番号1)
【0166】
図3に関して、3鎖シートが示される(鎖A−B−E)。候補残基Ser17およびSer60はシートの底部に位置する。候補残基Ser21は上部に位置する。Ser55は、結合表面に近いため、除外した。
鎖Aの開始点近くに位置するVal11は、フィブロネクチン分子配列において保存されていないと思われる。
鎖Bの中央に位置するLeu19も保存された位置ではない。
Thr58は鎖Eの末端に位置する。
【0167】
図4(足場の他の側面;4鎖シート)に関して、Thr71はSer89の近くに位置する。この位置も保存されていない。フィブロネクチン分子のこの部分は、ある種の“C”構造を形成することに注意されたい。FGループおよびCDループは互いに向かい合っている(図5参照)。
該分子に結合するPEG分子のサイズに依存して、該分子のこの側面はPEG化を受けることができない
【0168】
実施例3
Fn3配列のPEG化
Fnの半減期を延長するため、TNF結合Fn3(配列番号3)、TNF結合Fn3(R18LおよびI56T)(配列番号4)、野生型Fn3(配列番号1)および野生型Fn3(RGD→RGA)(配列番号2)のPEG化を、(1)システインおよび(2)非天然アミノ酸を用いて、次のとおりに実施した。
TNF結合Fn3
VSDVPRDLEVVAATPTSRLISWNRSGLQSRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPPWASIATISGLKPGVDYTITVYAVTDKSDTYKYDDPISINYRT(配列番号3)
TNF結合Fn3(R18LおよびI56T)
VSDVPRDLEVVAATPTSLLISWNRSGLQSRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPPWASTATISGLKPGVDYTITVYAVTDKSDTYKYDDPISINYRT(配列番号4)
野生型Fn3
VSDVPRDLEVVAATPTSLLISWDAPAVTVRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPGSKSTATISGLKPGVDYTITVYAVTGRGDSPASSKPISINYRT(配列番号1)
野生型Fn3配列(RGD→RGA)
VSDVPRDLEVVAATPTSLLISWDAPAVTVRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPGSKSTATISGLKPGVDYTITVYAVTGRGASPASSKPISINYRT(配列番号2)
【0169】
システインを用いたPEG化
上記TNF結合Fn3および野生型Fn3配列に対応するDNA配列を大腸菌での発現に最適化して、Geneart AG, Germanyで調製した。C末端システイン残基の挿入のために、プライマー6(配列番号21)および7(配列番号22)を用いてTNF結合配列を増幅し、プライマー6(配列番号21)および8(配列番号23)を用いて野生型配列を増幅した(物質および方法の項の上記プライマー参照)。PCR生成物をNdeI/BamHIで消化して、pET9aの対応する部位にクローン化した。さらに、プライマー9(配列番号24)および10(配列番号25)を用いてTNF結合配列を増幅し、プライマー9(配列番号24)および11(配列番号26)を用いて野生型配列を増幅した。PCR生成物をBamHI/HindIIIで消化し、dsbAシグナル配列を有するpQE−80Lの対応する部位にクローン化した。
【0170】
フォーマット:
1)TNF結合Fn3配列−3xAリンカー−C−3xAリンカー−Hisタグ(pET9a)
VSDVPRDLEVVAATPTSRLISWNRSGLQSRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPPWASIATISGLKPGVDYTITVYAVTDKSDTYKYDDPISINYRTAAACAAAHHHHHH(配列番号48)
2)TNF結合Fn3(R18LおよびI56T)配列−3xAリンカー−C−3xAリンカー−Hisタグ(pET9a)
VSDVPRDLEVVAATPTSLLISWNRSGLQSRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPPWASTATISGLKPGVDYTITVYAVTDKSDTYKYDDPISINYRTAAACAAAHHHHHH(配列番号49)
3)野生型Fn3配列−3xAリンカー−C−3xAリンカー−Hisタグ(pET9a)
VSDVPRDLEVVAATPTSLLISWDAPAVTVRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPGSKSTATISGLKPGVDYTITVYAVTGRGDSPASSKPISINYRTAAACAAAHHHHHH(配列番号50)
4)野生型Fn3(RGD→RGA)配列−3xAリンカー−C−3xAリンカー−Hisタグ(pET9a)
VSDVPRDLEVVAATPTSLLISWDAPAVTVRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPGSKSTATISGLKPGVDYTITVYAVTGRGASPASSKPISINYRTAAACAAAHHHHHH(配列番号51)
4)dsbAシグナル配列−TNF結合Fn3配列−3xAリンカー−C−3xAリンカー−Hisタグ(pQE−80L)
MKKIWLALAGLVLAFSASAGSVSDVPRDLEVVAATPTSRLISWNRSGLQSRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPPWASIATISGLKPGVDYTITVYAVTDKSDTYKYDDPISINYRTAAACAAAHHHHHH(配列番号52)
【0171】
5)dsbAシグナル配列−TNF結合Fn3(R18LおよびI56T)配列−3xAリンカー−C−3xAリンカー−Hisタグ(pQE−80L)
MKKIWLALAGLVLAFSASAGSVSDVPRDLEVVAATPTSLLISWNRSGLQSRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPPWASTATISGLKPGVDYTITVYAVTDKSDTYKYDDPISINYRTAAACAAAHHHHHH(配列番号53)
6)dsbAシグナル配列−野生型Fn3配列−3xAリンカー−C−3xAリンカー−Hisタグ(pQE−80L)
MKKIWLALAGLVLAFSASAGSVSDVPRDLEVVAATPTSLLISWDAPAVTVRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPGSKSTATISGLKPGVDYTITVYAVTGRGDSPASSKPISINYRTAAACAAAHHHHHH(配列番号54)
7)dsbAシグナル配列−野生型Fn3(RGD→RGA)配列−3xAリンカー−C−3xAリンカー−Hisタグ(pQE−80L)
MKKIWLALAGLVLAFSASAGSVSDVPRDLEVVAATPTSLLISWDAPAVTVRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPGSKSTATISGLKPGVDYTITVYAVTGRGASPASSKPISINYRTAAACAAAHHHHHH(配列番号55)
8)野生型Fn3配列−(RGD→RGA)Hisタグ(pET9a)
MVSDVPRDLEVVAATPTSLLISWDAPAVTVRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPGSKSTATISGLKPGVDYTITVYAVTGRGASPASSKPISINYRTHHHHHH(配列番号37)
【0172】
ライゲーション混合物を用いて、XL1−BlueまたはDH5αコンピテント細胞を形質転換した。ポジティブクローンはDNA配列決定によって確認した。KS474、TG1(−)およびBL21(DE3)を含む多様な大腸菌株で構築物を発現させた。誘導および発現の後、細胞ペレットを−20℃で凍結し、次いで溶解バッファー(20mMのNaHPO、10mMのイミダゾール、500mMのNaCl、バッファー50ml当たりEDTAなしのComplete1錠(Roche)、2mMのMgCl、10U/mlのBenzonase(Merck)[pH7.4])中に再懸濁した。細胞を氷上で超音波処理し、遠心分離した。上清を濾過し、Ni−NTAカラムにロードした。カラムを洗浄バッファー(20mMのイミダゾールを含む以外は、溶解バッファーと同じ)で洗浄し、次いで溶出バッファー(500mMまでのイミダゾールである以外は、溶解バッファーと同じ)で溶出した。サンプルをBis-Trisゲル(Invitrogen)で分析し、次いでAmicon Ultra-15チューブ内で濃縮し、Superdex prep gradeカラム(Amersham)にロードし、PBS[pH6.5〜7.2]で溶出した(ゲル濾過の前にマイルドな還元を用いることもあった)。サンプルをBis-Trisゲルで再度分析した。精製したタンパク質にDTT(最終濃度10μM)を補い、次いでAmicon Ultra-4チューブ, 100kで濾過して内毒素を除去した。DTT除去のためにHiTrap Desaltingカラムを用いた。pH5.5でMESバッファー50mM中のサンプルを、5〜10モル過剰のPEG−マレイミドと室温で約4時間共役させて、PEG化の効率をSDS−PAGEおよびMSで分析した。過剰のPEGをHiTrap-SP-FFカラムで除去し、次いでPBSまたはTrisに溶解した。対応する抗原との結合はELISAで確認した。還元、アルキル化およびトリプシン消化によってPEG化部位を決定した。サンプル100μgを乾燥させ、最終体積100μlで、6.4Mの尿素、0.32MのNHCOおよび0.01MのDTTと30分間、50℃、アルゴン下でインキュベートした。次いでIAAを加え(0.03M)、室温、暗所で15分間インキュベートした。サンプルを開封し、乾燥させ、次いで最終体積50μlで、0.8Mの尿素、0.04MのNHCO、0.02MのTris、pH10および1μgのトリプシンと共にインキュベートし、LC−MSで分析した。
【0173】
これらの構築物の半減期をインビボで決定した。10mg/kgの各化合物をLewisラットに静脈内投与し(n=3)、サンプルをプレドーズ、1、2、4、8、24、48、96、192および384時間で投与した。標準的なアミンカップリングでCM5チップを用いてBiacore分析を実施した。フローセル1は参照差分のためのブランクであった(EDC/NHSによる表面活性化、次いでエタノールアミンによる不活性化)。フローセル2はPK読み出しのためにTHE抗HISmAb(GenScript Corp)でコーティングした。フローセル3および4は免疫原性読み出しのために動物に投与した化合物でコーティングした(表面飽和)。ラット血清サンプルをHBS−EPおよびNBSreducer(Biacore;最終濃度1mg/ml)で1:8に希釈した。化合物定量のために標準曲線を作成し、動物に投与した対応する化合物20mg/l〜0.078mg/lの1:2連続希釈をラット血清(GeneTex)で調製した。ラット血清をHBS−EPおよび1mg/mlのNSBreducerで1:8に希釈した。XLfit 4.2を用いて標準曲線データをフィットさせて使用し、血清サンプル中の化合物濃度を計算した(PK)。化合物の半減期は、WinNonlinソフトウェアを用いて計算した。非コンパートメントモデルを用いてPKデータをフィットさせた。
【0174】
野生型10Fn3(RGD→RGA)および野生型10Fn3(RGD→RGA)_cysを大腸菌で発現させ、SDS PAGEで精製し、分析した(図8a)。モノマーに加えて、ダイマーもシステイン変異体について観察された。LC−MSは非修飾について分子量10.85kDa、システイン変異体について11.38kDaを示し、これらの分子量は予期したタンパク質に対応していた(データは示さず)。
【0175】
野生型10Fn3(RGD→RGA)_cysは30kDaのPEG−マレイミドで修飾されていた。図8bはSDS−PAGEによるPEG化タンパク質の存在を示しており、これはMALDI-TOF_MSでさらに確認された。PEG化サンプルは分子量42.8kDaを示し、広いピークはPEGのためであった。PEG化の部位は、還元し、アルキル化し、そしてトリプシン消化したPEG化および非PEG化サンプルのLC−MS分析によって決定した(データは示さず)。ペプチドマップの比較によって、RT10.89分でのピークがペグ化サンプルには存在しないことが示された。このペプチドは、モノアイソトロピックMW1527.7Daを有し、予期したタンパク質のT[95−108]H(99位にシステインを含むペプチド)に対応する(データは示さず)。
【0176】
インビボデータによると、非修飾10Fn3(図9)と比較したとき、PEG化野生型10Fn3(図10)は顕著な半減期の改善が示された。非修飾10Fn3の平均半減期は0.52時間であり、これがペグ化10Fn3について3.6時間に増加された(図11)。動物EV3でシグナルは検出することができなかった。
【0177】
このラット試験の結果は、フィブロネクチン(10Fn3)のインビボ血清半減期がPEG化複合体として調製されたとき顕著に延長され得ることを示している。
【0178】
ラット試験からヒトにインビボ半減期を外挿するために、次の式Iを用いる:
【数1】

(ここで、指数部0.25は経験上のものであり、同様のクリアランスメカニズムを有する種での外挿について十分な基礎を提供する(例えば、West et al. (1997) Science 276: 122-126; Bazin-Redureau et al. (1998) Toxicology and applied pharmacology 150: 295- 300;および Dedrick (1973) J. Pharmacokinetics and Biopharmaceuticals 5: 435-461参照)。式Iを用いて、ヒトに外挿した平均半減期は、約14.9時間と予測される。
【0179】
複合化Fn3分子の半減期の平均増加倍数は、複合化Fn3分子の平均半減期を非複合化Fn3の平均半減期で割って計算することができる。例えば、平均Fn3−PEG複合体(3.6)を平均非複合化Fn3(0.52)で割ると、インビボでのPEG−Fn3複合体の半減期が約7倍延長されている。
【0180】
非天然アミノ酸を用いたPEG化
TNF結合Fn3(配列番号3および配列番号4)および野生型Fn3配列(配列番号1および配列番号2)に対応する上記DNA配列を大腸菌での発現に最適化して、Geneart AG, Germanyで調製した。C末端アンバーコドンの挿入のために、プライマー12(配列番号27)および13(配列番号28)を用いて、TNF結合配列(配列番号3および配列番号4)を増幅し、プライマー12(配列番号27)および14(配列番号29)を用いて野生型配列(配列番号1および配列番号2)を増幅した。PCR生成物をNdeI/BamHIで消化し、pET9aの対応する部位にクローン化した。さらに、プライマー15(配列番号30)および16(配列番号31)を用いてTNF結合配列(配列番号3および配列番号4)も増幅し、プライマー15(配列番号30)および17(配列番号32)を用いて野生型配列(配列番号1および配列番号2)を増幅した。PCR生成物をBamHI/HindIIIで消化し、dsbAシグナル配列を有するpQE−80Lの対応する部位にクローン化した。
【0181】
フォーマット:
1)TNF結合Fn3配列−3xAリンカー−アンバーコドン−3xAリンカー−Hisタグ(pET9a)
VSDVPRDLEVVAATPTSRLISWNRSGLQSRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPPWASIATISGLKPGVDYTITVYAVTDKSDTYKYDDPISINYRTAAA*AAAHHHHHH(配列番号56)
2)TNF結合Fn3(R18LおよびI56T)配列−3xAリンカー−アンバーコドン−3xAリンカー−Hisタグ(pET9a)
VSDVPRDLEVVAATPTSLLISWNRSGLQSRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPPWASTATISGLKPGVDYTITVYAVTDKSDTYKYDDPISINYRTAAA*AAAHHHHHH(配列番号57)
3)野生型Fn3配列−3xAリンカー−アンバーコドン−3xAリンカー−Hisタグ(pET9a)
VSDVPRDLEVVAATPTSLLISWDAPAVTVRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPGSKSTATISGLKPGVDYTITVYAVTGRGDSPASSKPISINYRTAAA*AAAHHHHHH(配列番号58)
4)野生型Fn3(RGD→RGA)配列−3xAリンカー−アンバーコドン−3xAリンカー−Hisタグ(pET9a)
VSDVPRDLEVVAATPTSLLISWDAPAVTVRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPGSKSTATISGLKPGVDYTITVYAVTGRGASPASSKPISINYRTAAA*AAAHHHHHH(配列番号59)
【0182】
5)dsbAシグナル配列−TNF結合Fn3配列−3xAリンカー−アンバーコドン−3xAリンカー−Hisタグ(pQE−80L)
MKKIWLALAGLVLAFSASAGSVSDVPRDLEVVAATPTSRLISWNRSGLQSRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPPWASIATISGLKPGVDYTITVYAVTDKSDTYKYDDPISINYRTAAA*AAAHHHHHH(配列番号60)
6)dsbAシグナル配列−TNF結合Fn3(R18LおよびI56T)配列−3xAリンカー−アンバーコドン−3xAリンカー−Hisタグ(pQE−80L)
MKKIWLALAGLVLAFSASAGSVSDVPRDLEVVAATPTSLLISWNRSGLQSRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPPWASTATISGLKPGVDYTITVYAVTDKSDTYKYDDPISINYRTAAA*AAAHHHHHH(配列番号61)
7)dsbAシグナル配列−野生型Fn3配列−3xAリンカー−アンバーコドン−3xAリンカー−Hisタグ(pQE−80L)
MKKIWLALAGLVLAFSASAGSVSDVPRDLEVVAATPTSLLISWDAPAVTVRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPGSKSTATISGLKPGVDYTITVYAVTGRGDSPASSKPISINYRTAAA*AAAHHHHHH(配列番号62)
8)dsbAシグナル配列−野生型Fn3(RGD→RGA)配列−3xAリンカー−アンバーコドン−3xAリンカー−Hisタグ(pQE−80L)
MKKIWLALAGLVLAFSASAGSVSDVPRDLEVVAATPTSLLISWDAPAVTVRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPGSKSTATISGLKPGVDYTITVYAVTGRGASPASSKPISINYRTAAA*AAAHHHHHH(配列番号63)
*は非天然アミノ酸の位置を示す
【0183】
ライゲーション混合物を用いて、XL1−BlueまたはDH5αコンピテント細胞を形質転換した。ポジティブクローンをDNA配列決定によって確認した。上記構築物とpAmber−AcPheRSをコトランスフェクトし、KS474、TG1(−)、BL21(DE3)およびDH10Bを含む多様な大腸菌株で、1mMのp−アセチル−L−フェニルアラニンを含む培地で発現させた。誘導および発現の後、細胞ペレットを−20℃で凍結させ、次いで溶解バッファー(20mMのNaHPO、10mMのイミダゾール、500mMのNaCl、バッファー50ml当たりEDTAなしのComplete1錠(Roche)、2mMのMgCl、10U/mlのBenzonase(Merck)[pH7.4])に再懸濁した。細胞を氷上で超音波処理して、遠心分離した。上清を濾過し、Ni−NTAカラムにロードした。カラムを洗浄バッファー(20mMのイミダゾールを含む以外は、溶解バッファーと同じ)で洗浄し、次いで溶出バッファー(500mMまでのイミダゾールである以外は、溶解バッファーと同じ)で溶出した。サンプルをBis-Trisゲル(Invitrogen)で分析し、次いでAmicon Ultra-15チューブ内で濃縮し、Superdex prep gradeカラム(Amersham)にロードし、10mMのTrisで溶出した。サンプルをBis-Trisゲルで再度分析した。精製したタンパク質を100mM酢酸ナトリウム、pH5.5に溶解し、5〜10モル過剰のPEG−ヒドラジドと約2時間室温で共役させた。PEG化の効率をSDS−PAGEおよびSECで分析した。次いで濃TrisでpHを上昇させ、過剰のPEGをNi−NTAクロマトグラフィーで除去し、次いでPBSまたはTrisに溶解した。
【0184】
実施例4
Fn3配列のヒト血清アルブミン(HSA)融合体
上記の、TNF結合Fn3配列(配列番号3)、TNF−結合Fn3(R18LおよびI56T)(配列番号4)、野生型Fn3配列(配列番号1)、野生型Fn3(RGD→RGA)(配列番号2)またはVEGFR結合FN3(配列番号76)を抗HSA(配列番号12)、抗MSA(配列番号13)、抗RSA結合分子(配列番号78)、RSA(配列番号79)またはHSA(配列番号14)と組合せて、フィブロネクチン−血清アルブミン融合分子を作成した。
【0185】
(i)抗HSA、抗MSAまたは抗RSA融合分子
抗HSAバインダー(配列番号12)または抗MSAバインダー(配列番号13)のDNA配列を、大腸菌での発現に最適化して、Geneart AG, Germanyで調製した。BamHI/HindIIIを用いて、dsbAシグナル配列を有するpQE−80Lに得られたDNAフラグメントをライゲートした(適切な隣接DNA配列を加えた)。TNF結合Fn3配列(配列番号3および配列番号4)および野生型Fn3配列(配列番号1および配列番号2)に対応するDNA配列を、大腸菌での発現に最適化して、Geneart AG, Germanyで調製した。TNF結合Fn3配列(配列番号3および配列番号4)について、プライマー3(配列番号18)および4(配列番号19)を用いて、野生型Fn3配列(配列番号1および配列番号2)について、プライマー3(配列番号18)および5(配列番号20)を用いて得られたDNAフラグメントフラグメントを増幅して、BamHI/HindIIIで消化して、pQE−80L−dsbA−抗HSAまたはpQE−80L−dsbA−抗MSAのBamHI部位にをライゲートした。野生型Fn3(RGD→RGA)−GSリンカー−抗RSA His(配列番号92)は、pQE−80L中の野生型Fn3(RGD→RGA)−GSリンカー−抗MSA His(配列番号71)から部位特異的突然変異誘発によって作成した。IKHLKからSSYLNへの第一の突然変異誘発は、プライマー20(配列番号80)および21(配列番号81)で実施し;GASRからRNSPへの第二の突然変異誘発は、プライマー22(配列番号82)および23(配列番号83)で実施し;そしてGARWPQからTYRVPPへの第三の突然変異誘発は、プライマー24(配列番号84)および25(配列番号85)を用いて実施した。
【0186】
フォーマット:
1)dsbAシグナル配列−TNF結合Fn3配列−GSリンカー−抗−HSA−Hisタグ(pQE−80L)
MKKIWLALAGLVLAFSASAGSVSDVPRDLEVVAATPTSRLISWNRSGLQSRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPPWASIATISGLKPGVDYTITVYAVTDKSDTYKYDDPISINYRTGGGGSGGGGSGGGGSEVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFDEYNMSWVRQAPGKGLEWVSTILPHGDRTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKQDPLYRFDYWGQGTLVTVSSHHHHHH(配列番号64)
2)dsbAシグナル配列−TNF結合Fn3(R18LおよびI56T)配列−GSリンカー−抗HSA−Hisタグ(pQE−80L)
MKKIWLALAGLVLAFSASAGSVSDVPRDLEVVAATPTSLLISWNRSGLQSRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPPWASTATISGLKPGVDYTITVYAVTDKSDTYKYDDPISINYRTGGGGSGGGGSGGGGSEVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFDEYNMSWVRQAPGKGLEWVSTILPHGDRTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKQDPLYRFDYWGQGTLVTVSSHHHHHH(配列番号65)
3)dsbAシグナル配列−野生型Fn3配列−GSリンカー−抗HSA−Hisタグ(pQE−80L)
MKKIWLALAGLVLAFSASAGSVSDVPRDLEVVAATPTSLLISWDAPAVTVRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPGSKSTATISGLKPGVDYTITVYAVTGRGDSPASSKPISINYRTGGGGSGGGGSGGGGSEVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFDEYNMSWVRQAPGKGLEWVSTILPHGDRTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKQDPLYRFDYWGQGTLVTVSSHHHHHH(配列番号66)
【0187】
4)dsbAシグナル配列−野生型Fn3(RGD→RGA)配列−GSリンカー−抗HSA−Hisタグ(pQE−80L)
MKKIWLALAGLVLAFSASAGSVSDVPRDLEVVAATPTSLLISWDAPAVTVRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPGSKSTATISGLKPGVDYTITVYAVTGRGASPASSKPISINYRTGGGGSGGGGSGGGGSEVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFDEYNMSWVRQAPGKGLEWVSTILPHGDRTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKQDPLYRFDYWGQGTLVTVSSHHHHHH(配列番号67)
5)dsbAシグナル配列−TNF結合Fn3配列−GSリンカー−抗MSA−Hisタグ(pQE−80L)
MKKIWLALAGLVLAFSASAGSVSDVPRDLEVVAATPTSRLISWNRSGLQSRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPPWASIATISGLKPGVDYTITVYAVTDKSDTYKYDDPISINYRTGGGGSGGGGSGGGGSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSIIKHLKWYQQKPGKAPKLLIYGASRLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQGARWPQTFGQGTKVEIKRHHHHHH(配列番号68)
6)dsbAシグナル配列−TNF結合Fn3(R18LおよびI56T)配列−GSリンカー−抗MSA−Hisタグ(pQE−80L)
MKKIWLALAGLVLAFSASAGSVSDVPRDLEVVAATPTSLLISWNRSGLQSRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPPWASTATISGLKPGVDYTITVYAVTDKSDTYKYDDPISINYRTGGGGSGGGGSGGGGSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSIIKHLKWYQQKPGKAPKLLIYGASRLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQGARWPQTFGQGTKVEIKRHHHHHH(配列番号69)
【0188】
7)dsbAシグナル配列−野生型Fn3配列−GSリンカー−抗MSA−Hisタグ(pQE−80L)
MKKIWLALAGLVLAFSASAGSVSDVPRDLEVVAATPTSLLISWDAPAVTVRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPGSKSTATISGLKPGVDYTITVYAVTGRGDSPASSKPISINYRTGGGGSGGGGSGGGGSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSIIKHLKWYQQKPGKAPKLLIYGASRLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQGARWPQTFGQGTKVEIKRHHHHHH(配列番号70)
8)dsbAシグナル配列−野生型Fn3(RGD→RGA)配列−GSリンカー−抗MSA−Hisタグ(pQE−80L)
MKKIWLALAGLVLAFSASAGSVSDVPRDLEVVAATPTSLLISWDAPAVTVRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPGSKSTATISGLKPGVDYTITVYAVTGRGASPASSKPISINYRTGGGGSGGGGSGGGGSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSIIKHLKWYQQKPGKAPKLLIYGASRLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQGARWPQTFGQGTKVEIKRHHHHHH(配列番号71)
9)dsbAシグナル配列−野生型Fn3(RGD→RGA)配列−GSリンカー−抗RSA−Hisタグ(pQE−80L)
MKKIWLALAGLVLAFSASAGSVSDVPRDLEVVAATPTSLLISWDAPAVTVRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPGSKSTATISGLKPGVDYTITVYAVTGRGASPASSKPISINYRTGGGGSGGGGSGGGGSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYRNSPLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQTYRVPPTFGQGTKVEIKRHHHHHH(配列番号92)
【0189】
ライゲーション混合物を用いて、XL1−BlueまたはDH5αコンピテント細胞を形質転換した。ポジティブクローンはDNA配列決定によって確認した。KS474およびTG1(−)を含む多様な大腸菌株で構築物を発現させた。誘導および発現の後、細胞ペレットを−20℃で凍結し、次いで溶解バッファー(20mMのNaHPO、10mMのイミダゾール、500mMのNaCl、バッファー50ml当たりEDTAなしのComplete1錠(Roche)、2mMのMgCl、10U/mlのBenzonase(Merck)[pH7.4])中に再懸濁した。細胞を氷上で超音波処理し、遠心分離した。上清を濾過し、Ni−NTAカラムにロードした。カラムを洗浄バッファー(20mMのイミダゾールを含む以外は、溶解バッファーと同じ)で洗浄し、次いで溶出バッファー(500mMまでのイミダゾールである以外は、溶解バッファーと同じ)で溶出した。サンプルをBis-Trisゲル(Invitrogen)で分析し、次いでAmicon Ultra-15チューブ内で濃縮し、Superdex prep gradeカラム(Amersham)にロードし、10mMのTrisバッファーまたはPBSで溶出した。100K Amicon遠心フィルターを内毒素の除去のために使用した。サンプルはBis-TrisゲルおよびLC−MSで再度分析した。対応する抗原との結合はELISAで確認した。
【0190】
これらの構築物の半減期をインビボで決定した。10mg/kgの各化合物をLewisラットに静脈内投与し(n=3)、サンプルをプレドーズ、1、2、4、8、24、48、96、192および384時間で投与した。標準的なアミンカップリングでCM5チップを用いてBiacore分析を実施した。フローセル1は参照差分のためのブランクであった(EDC/NHSによる表面活性化、次いでエタノールアミンによる不活性化)。フローセル2はPK読み出しのためにHSA(Fluka)でコーティングした。フローセル3および4は免疫原性読み出しのために動物に投与した化合物でコーティングした(表面飽和)。ラット血清サンプルをHBS−EPおよびNBSreducer(Biacore;最終濃度1mg/ml)で1:8に希釈した。化合物定量のために標準曲線を作成し、動物に投与した対応する化合物20mg/l〜0.078mg/lの1:2連続希釈をラット血清(GeneTex)で調製した。ラット血清をHBS−EPおよび1mg/mlのNSBreducerで1:8に希釈した。XLfit 4.2を用いて標準曲線データをフィットさせて使用し、血清サンプル中の化合物濃度を計算した(PK)。化合物の半減期は、WinNonlinソフトウェアを用いて計算した。非コンパートメントモデルを用いてPKデータをフィットさせた。該試験の結果を以下に記載する。
【0191】
(ii)血清アルブミン融合分子
CD33 SS−TNF結合Fn3配列(配列番号6)、CD33 SS−TNF結合Fn3(R18LおよびI56T)(配列番号7)、CD33 SS−野生型Fn3配列(配列番号8)およびCD33 SS−野生型Fn3(RGD→RGA)(配列番号9)に対応するDNA配列を、大腸菌での発現に最適化して、Geneart AG, Germanyで調製した。BlpI/XbaIを用いて、得られたDNAフラグメントをpRS5aにライゲートした(適切な隣接DNA配列、例えばKozakをベクターに導入した)。プライマー1(配列番号16)および2(配列番号17)(プライマー2はHisタグをコードする)を用いてHSAをPCRで増幅して、RsrII/XbaIを用いてpRS5a(CD33−TNF結合Fn3配列(配列番号6および配列番号7)またはCD33−野生型Fn3配列(配列番号8および配列番号9))に挿入した。プライマー26(配列番号86)および27(配列番号87)を用いてベクターIRBPp993CO328D(RZPD)からRSAをPCRで増幅し、次いでRsrII/XbalでpRS5a−CD33シグナル配列−野生型Fn3(RGD→RGA)−HSA−His(配列番号99)にクローン化した。プライマー28(配列番号88)および29(配列番号89)を用いて部位特異的突然変異誘発によってI431Vを組み込み、プライマー30(配列番号90)および31(配列番号91)を用いて部位特異的突然変異誘発によってL262Vを組み込んだ。VEGFR結合Fn3(配列番号77)のDNA配列を哺乳類細胞での発現に最適化して、Geneart AG, Germanyで調製した。RsRII/CelIIでDNAを消化して、pRS5a−CD33シグナル配列−野生型Fn3(RGD→RGA)−HSA−His(配列番号99)の対応する部位にクローン化した。ベクターpRS5a−CD33シグナル配列−野生型Fn3(RGD→RGA)−RSA−His(配列番号100)からRSAを単離して、RsrII/XbaIでpRS5a−CD33シグナル配列−VEGFR結合Fn3−HSA−His(配列番号101)にクローン化した。
【0192】
フォーマット:
1)CD33シグナル配列−TNF結合Fn3配列−HSA−Hisタグ(pRS5a)
MPLLLLLPLLWAGALAVSDVPRDLEVVAATPTSRLISWNRSGLQSRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPPWASIATISGLKPGVDYTITVYAVTDKSDTYKYDDPISINYRTDAHKSEVAHRFKDLGEENFKALVLIAFAQYLQQCPFEDHVKLVNEVTEFAKTCVADESAENCDKSLHTLFGDKLCTVATLRETYGEMADCCAKQEPERNECFLQHKDDNPNLPRLVRPEVDVMCTAFHDNEETFLKKYLYEIARRHPYFYAPELLFFAKRYKAAFTECCQAADKAACLLPKLDELRDEGKASSAKQRLKCASLQKFGERAFKAWAVARLSQRFPKAEFAEVSKLVTDLTKVHTECCHGDLLECADDRADLAKYICENQDSISSKLKECCEKPLLEKSHCIAEVENDEMPADLPSLAADFVESKDVCKNYAEAKDVFLGMFLYEYARRHPDYSVVLLLRLAKTYETTLEKCCAAADPHECYAKVFDEFKPLVEEPQNLIKQNCELFEQLGEYKFQNALLVRYTKKVPQVSTPTLVEVSRNLGKVGSKCCKHPEAKRMPCAEDYLSVVLNQLCVLHEKTPVSDRVTKCCTESLVNRRPCFSALEVDETYVPKEFNAETFTFHADICTLSEKERQIKKQTALVELVKHKPKATKEQLKAVMDDFAAFVEKCCKADDKETCFAEEGKKLVAASQAALGLHHHHHH(配列番号96)
2)CD33シグナル配列−TNF結合Fn3(R18LおよびI56T)配列−HSA−Hisタグ(pRS5a)
MPLLLLLPLLWAGALAVSDVPRDLEVVAATPTSLLISWNRSGLQSRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPPWASTATISGLKPGVDYTITVYAVTDKSDTYKYDDPISINYRTDAHKSEVAHRFKDLGEENFKALVLIAFAQYLQQCPFEDHVKLVNEVTEFAKTCVADESAENCDKSLHTLFGDKLCTVATLRETYGEMADCCAKQEPERNECFLQHKDDNPNLPRLVRPEVDVMCTAFHDNEETFLKKYLYEIARRHPYFYAPELLFFAKRYKAAFTECCQAADKAACLLPKLDELRDEGKASSAKQRLKCASLQKFGERAFKAWAVARLSQRFPKAEFAEVSKLVTDLTKVHTECCHGDLLECADDRADLAKYICENQDSISSKLKECCEKPLLEKSHCIAEVENDEMPADLPSLAADFVESKDVCKNYAEAKDVFLGMFLYEYARRHPDYSVVLLLRLAKTYETTLEKCCAAADPHECYAKVFDEFKPLVEEPQNLIKQNCELFEQLGEYKFQNALLVRYTKKVPQVSTPTLVEVSRNLGKVGSKCCKHPEAKRMPCAEDYLSVVLNQLCVLHEKTPVSDRVTKCCTESLVNRRPCFSALEVDETYVPKEFNAETFTFHADICTLSEKERQIKKQTALVELVKHKPKATKEQLKAVMDDFAAFVEKCCKADDKETCFAEEGKKLVAASQAALGLHHHHHH(配列番号97)
【0193】
3)CD33シグナル配列−野生型Fn3配列−HSA−Hisタグ(pRS5a)
MPLLLLLPLLWAGALAVSDVPRDLEVVAATPTSRLISWDAPAVTVRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPGSKSIATISGLKPGVDYTITVYAVTGRGDSPASSKPISINYRTDAHKSEVAHRFKDLGEENFKALVLIAFAQYLQQCPFEDHVKLVNEVTEFAKTCVADESAENCDKSLHTLFGDKLCTVATLRETYGEMADCCAKQEPERNECFLQHKDDNPNLPRLVRPEVDVMCTAFHDNEETFLKKYLYEIARRHPYFYAPELLFFAKRYKAAFTECCQAADKAACLLPKLDELRDEGKASSAKQRLKCASLQKFGERAFKAWAVARLSQRFPKAEFAEVSKLVTDLTKVHTECCHGDLLECADDRADLAKYICENQDSISSKLKECCEKPLLEKSHCIAEVENDEMPADLPSLAADFVESKDVCKNYAEAKDVFLGMFLYEYARRHPDYSVVLLLRLAKTYETTLEKCCAAADPHECYAKVFDEFKPLVEEPQNLIKQNCELFEQLGEYKFQNALLVRYTKKVPQVSTPTLVEVSRNLGKVGSKCCKHPEAKRMPCAEDYLSVVLNQLCVLHEKTPVSDRVTKCCTESLVNRRPCFSALEVDETYVPKEFNAETFTFHADICTLSEKERQIKKQTALVELVKHKPKATKEQLKAVMDDFAAFVEKCCKADDKETCFAEEGKKLVAASQAALGLHHHHHH(配列番号98)
4)CD33シグナル配列−野生型Fn3(RGD→RGA)配列−HSA−Hisタグ(pRS5a)
MPLLLLLPLLWAGALAVSDVPRDLEVVAATPTSRLISWDAPAVTVRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPGSKSIATISGLKPGVDYTITVYAVTGRGASPASSKPISINYRTDAHKSEVAHRFKDLGEENFKALVLIAFAQYLQQCPFEDHVKLVNEVTEFAKTCVADESAENCDKSLHTLFGDKLCTVATLRETYGEMADCCAKQEPERNECFLQHKDDNPNLPRLVRPEVDVMCTAFHDNEETFLKKYLYEIARRHPYFYAPELLFFAKRYKAAFTECCQAADKAACLLPKLDELRDEGKASSAKQRLKCASLQKFGERAFKAWAVARLSQRFPKAEFAEVSKLVTDLTKVHTECCHGDLLECADDRADLAKYICENQDSISSKLKECCEKPLLEKSHCIAEVENDEMPADLPSLAADFVESKDVCKNYAEAKDVFLGMFLYEYARRHPDYSVVLLLRLAKTYETTLEKCCAAADPHECYAKVFDEFKPLVEEPQNLIKQNCELFEQLGEYKFQNALLVRYTKKVPQVSTPTLVEVSRNLGKVGSKCCKHPEAKRMPCAEDYLSVVLNQLCVLHEKTPVSDRVTKCCTESLVNRRPCFSALEVDETYVPKEFNAETFTFHADICTLSEKERQIKKQTALVELVKHKPKATKEQLKAVMDDFAAFVEKCCKADDKETCFAEEGKKLVAASQAALGLHHHHHH(配列番号99)
【0194】
5)CD33シグナル配列−野生型Fn3(RGD→RGA)配列−RSA−Hisタグ(pRS5a)
MPLLLLLPLLWAGALAVSDVPRDLEVVAATPTSLLISWDAPAVTVRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPGSKSTATISGLKPGVDYTITVYAVTGRGASPASSKPISINYRTEAHKSEIAHRFKDLGEQHFKGLVLIAFSQYLQKCPYEEHIKLVQEVTDFAKTCVADENAENCDKSIHTLFGDKLCAIPKLRDNYGELADCCAKQEPERNECFLQHKDDNPNLPPFQRPEAEAMCTSFQENPTSFLGHYLHEVARRHPYFYAPELLYYAEKYNEVLTQCCTESDKAACLTPKLDAVKEKALVAAVRQRMKCSSMQRFGERAFKAWAVARMSQRFPNAEFAEITKLATDVTKINKECCHGDLLECADDRAELAKYMCENQATISSKLQACCDKPVLQKSQCLAEIEHDNIPADLPSIAADFVEDKEVCKNYAEAKDVFLGTFLYEYSRRHPDYSVSLLLRLAKKYEATLEKCCAEGDPPACYGTVLAEFQPLVEEPKNLVKTNCELYEKLGEYGFQNAVLVRYTQKAPQVSTPTLVEAARNLGRVGTKCCTLPEAQRLPCVEDYLSAILNRLCVLHEKTPVSEKVTKCCSGSLVERRPCFSALTVDETYVPKEFKAETFTFHSDICTLPDKEKQIKKQTALAELVKHKPKATEDQLKTVMGDFAQFVDKCCKAADKDNCFATEGPNLVARSKEALAHHHHHH(配列番号100)
6)CD33シグナル配列−VEGFR結合Fn3−HSA−Hisタグ(pRS5a)
MPLLLLLPLLWAGALAGEVVAATPTSLLISWRHPHFPTRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPLQPPTATISGLKPGVDYTITVYAVTDGRNGRLLSIPISINYRTDAHKSEVAHRFKDLGEENFKALVLIAFAQYLQQCPFEDHVKLVNEVTEFAKTCVADESAENCDKSLHTLFGDKLCTVATLRETYGEMADCCAKQEPERNECFLQHKDDNPNLPRLVRPEVDVMCTAFHDNEETFLKKYLYEIARRHPYFYAPELLFFAKRYKAAFTECCQAADKAACLLPKLDELRDEGKASSAKQRLKCASLQKFGERAFKAWAVARLSQRFPKAEFAEVSKLVTDLTKVHTECCHGDLLECADDRADLAKYICENQDSISSKLKECCEKPLLEKSHCIAEVENDEMPADLPSLAADFVESKDVCKNYAEAKDVFLGMFLYEYARRHPDYSVVLLLRLAKTYETTLEKCCAAADPHECYAKVFDEFKPLVEEPQNLIKQNCELFEQLGEYKFQNALLVRYTKKVPQVSTPTLVEVSRNLGKVGSKCCKHPEAKRMPCAEDYLSVVLNQLCVLHEKTPVSDRVTKCCTESLVNRRPCFSALEVDETYVPKEFNAETFTFHADICTLSEKERQIKKQTALVELVKHKPKATKEQLKAVMDDFAAFVEKCCKADDKETCFAEEGKKLVAASQAALGLHHHHHH(配列番号101)
7)CD33シグナル配列−VEGFR結合Fn3−RSA−Hisタグ(pRS5a)
MPLLLLLPLLWAGALAGEVVAATPTSLLISWRHPHFPTRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPLQPPTATISGLKPGVDYTITVYAVTDGRNGRLLSIPISINYRTEAHKSEIAHRFKDLGEQHFKGLVLIAFSQYLQKCPYEEHIKLVQEVTDFAKTCVADENAENCDKSIHTLFGDKLCAIPKLRDNYGELADCCAKQEPERNECFLQHKDDNPNLPPFQRPEAEAMCTSFQENPTSFLGHYLHEVARRHPYFYAPELLYYAEKYNEVLTQCCTESDKAACLTPKLDAVKEKALVAAVRQRMKCSSMQRFGERAFKAWAVARMSQRFPNAEFAEITKLATDVTKINKECCHGDLLECADDRAELAKYMCENQATISSKLQACCDKPVLQKSQCLAEIEHDNIPADLPSIAADFVEDKEVCKNYAEAKDVFLGTFLYEYSRRHPDYSVSLLLRLAKKYEATLEKCCAEGDPPACYGTVLAEFQPLVEEPKNLVKTNCELYEKLGEYGFQNAVLVRYTQKAPQVSTPTLVEAARNLGRVGTKCCTLPEAQRLPCVEDYLSAILNRLCVLHEKTPVSEKVTKCCSGSLVERRPCFSALTVDETYVPKEFKAETFTFHSDICTLPDKEKQIKKQTALAELVKHKPKATEDQLKTVMGDFAQFVDKCCKAADKDNCFATEGPNLVARSKEALAHHHHHH(配列番号102)
【0195】
ライゲーション混合物を用いて、XL1−BlueまたはDH5αコンピテント細胞を形質転換した。ポジティブクローンはDNA配列決定によって確認した。HEK293T、FreeStyle(商標)293−F、HKB11およびHEKEBNAを含む多様な細胞系で構築物を発現させた。内毒素を含まないバッファーを全ての工程で使用した。培養物の上清を濾過し、Ni−NTAカラムにロードした。カラムを洗浄バッファー(20mMのNaHPO、20mMのイミダゾール、500mMのNaCl、バッファー50ml当たりEDTAなしのComplete1錠(Roche)、2mMのMgCl、10U/mlのBenzonase(Merck)[pH7.4])で洗浄し、次いで溶出バッファー(500mMまでのイミダゾールである以外は、洗浄バッファーと同じ)で溶出した。サンプルをBis-Trisゲル(Invitrogen)で分析し、次いでAmicon Ultra-15チューブ内で濃縮し、Superdex prep gradeカラム(Amersham)にロードし、10mMのTrisバッファーまたはPBSで溶出した。サンプルをBis-TrisゲルおよびLC−MSで再度分析した。対応する抗原との結合はELISAで確認した。
【0196】
これらの構築物の半減期をインビボで決定した。10mg/kgの各化合物をLewisラットに静脈内投与し(n=3)、サンプルをプレドーズ、1、2、4、8、24、48、96、192および384時間で投与した。標準的なアミンカップリングでCM5チップを用いてBiacore分析を実施した。フローセル1は参照差分のためのブランクであった(EDC/NHSによる表面活性化、次いでエタノールアミンによる不活性化)。フローセル2はPK読み出しのためにTHE抗HISmAb(GenScript Corp)でコーティングした。フローセル3および4は免疫原性読み出しのために動物に投与した化合物でコーティングした(表面飽和)。ラット血清サンプルをHBS−EPおよびNBSreducer(Biacore;最終濃度1mg/ml)で1:8に希釈した。化合物定量のために標準曲線を作成し、動物に投与した対応する化合物20mg/l〜0.078mg/lの1:2連続希釈をラット血清(GeneTex)で調製した。ラット血清をHBS−EPおよび1mg/mlのNSBreducerで1:8に希釈した。XLfit 4.2を用いて標準曲線データをフィットさせて使用し、血清サンプル中の化合物濃度を計算した(PK)。化合物の半減期は、WinNonlinソフトウェアを用いて計算した。非コンパートメントモデルを用いてPKデータをフィットさせた。
【0197】
野生型10Fn3(RGD→RGA)−RSAおよびHSA融合体を哺乳類細胞で発現させ、SDS−PAGEで精製し、分析した(図12)。還元後、LC−MSは野生型10Fn3(RGD→RGA)−RSAおよび野生型10Fn3(RGD→RGA)−HSAについて分子量76.62kDaおよび77.17kDaをそれぞれ示し、正しいタンパク質に対応していた(データは示さず)。N末端分析はまた、予期したタンパク質に対応する配列を示した。インビボデータは、非修飾10Fn3(図9)と比較したとき、野生型10Fn3(RGD→RGA)−RSAおよびHSA融合体の両方について顕著な半減期の改善を示した(図13および14)。非修飾10Fn3の平均半減期は0.52時間であり、これが10Fn3−RSAでは19.6時間に増加し、10Fn3−HSAでは5.9時間に増加した(図15)。10Fn3−HSAの半減期は、ラットにおいて、10Fn3−RSAと比較して低かった。これはおそらく、HSAがLewisラットFcRnと効果的に結合しないためであろう。
【0198】
式Iを用いてヒトに外挿した平均半減期は約80.9時間と予測される。
RSA複合化Fn3分子の半減期の平均増加倍数は、Fn3−RSA複合体の平均(19.6)を非複合化Fn3の平均(0.52)で割って、インビボでのFn3−RSA複合体の半減期は約38倍の増加となる。これはHSAを用いてヒトに外挿して予期される。
【0199】
VEGFR結合Fn3−RSAおよびHSA融合体も哺乳類細胞で発現させ、SDS−PAGEで精製して分析した(図16)。LC−MSはVEGFR結合Fn3−RSAおよびVEGFR結合Fn3−HSAについて分子量76.27kDaおよび76.82kDaをそれぞれ示し、これらの分子量は予期したタンパク質に対応している(データは示さず)。hVEGFRとの特異的結合は、HSAおよびRSA融合体のそれぞれについて、ELISAで確認した(図17)。RSA融合体の平均半期(図18)およびHSA融合体の平均半減期(図19)は、それぞれ41.6時間および15.3時間であった(図20)。
【0200】
治療用Fn3、例えばVEGFR結合Fn3−RSAについて、ヒトに外挿した平均半減期は約172時間と予測される。
この複合化Fn3分子の半減期の平均増加倍数は、VEGFR結合Fn3−RSA複合体の平均(41.6)を非複合化Fn3の平均(0.52)で割って、インビボでのFn3−RSA複合体の半減期は約80倍の増加となる。これはHSAを用いてヒトに外挿して予期される(データは示さず)。
【0201】
野生型10Fn3(RGD→RGA)抗RSAを大腸菌で発現させ、SDS−PAGEで精製して分析した(図21)。LC−MSは正しいタンパク質に対応する分子量23.68kDaを示した(データは示さず)。インビボデータは、非修飾10Fn3(図9)と比較して、抗RSA融合体(図22)の顕著な半減期の改善を示した。非修飾10Fn3の平均半減期は0.52時間であり、10Fn3−抗RSAではこれが7.7時間に増加した(図23)。
【0202】
このラット試験の結果は、血清アルブミンまたは血清アルブミンバインダーとの融合体として作成したとき、10Fn3のインビボ血清半減期が顕著に延長され得ることを示している。式Iを用いて、ヒトに外挿した平均半減期は、約31.8時間であると予測される。
抗HSA複合化Fn3分子の半減期の平均増加倍数は、Fn3−抗HSA複合体の平均(7.7)を非複合化Fn3の平均(0.52)で割って、インビボでのFn3−抗HSA複合体の半減期は約15倍の増加となる。
【0203】
実施例5
Fc/フィブロネクチン融合体
CD33 SS−TNF結合Fn3配列(配列番号6)、CD33 SS−TNF結合Fn3(R18LおよびI56T)(配列番号7)、CD33 SS−野生型Fn3配列(配列番号9)およびCD33 SS−野生型Fn3(RGD→RGA)に対応するDNA配列を哺乳類細胞での発現に最適化して、Geneart AG, Germanyで調製した。BlpI/XbaIを用いて得られたDNAフラグメントをpRS5aにライゲートした(Kozakのような適切な隣接DNA配列をベクターに加えた)。プライマー18(配列番号33)および19(配列番号34)(プライマー19はHisタグをコードする)を用いて増幅し、RsrII/XbaIを用いてpRS5a(CD33−TNF結合Fn3配列(配列番号6および配列番号7)またはCD33−野生型Fn3配列(配列番号8および配列番号9))に挿入した。
【0204】
フォーマット:
1)CD33シグナル配列−TNF結合Fn3配列−Fc−Hisタグ(pRS5a)
MPLLLLLPLLWAGALAVSDVPRDLEVVAATPTSRLISWNRSGLQSRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPPWASIATISGLKPGVDYTITVYAVTDKSDTYKYDDPISINYRTGKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGKHHHHHH(配列番号72)
2)CD33シグナル配列−TNF結合Fn3(R18LおよびI56T)配列−Fc−Hisタグ(pRS5a)
MPLLLLLPLLWAGALAVSDVPRDLEVVAATPTSLLISWNRSGLQSRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPPWASTATISGLKPGVDYTITVYAVTDKSDTYKYDDPISINYRTGKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGKHHHHHH(配列番号73)
【0205】
3)CD33シグナル配列−野生型Fn3配列−Fc−Hisタグ(pRS5a)
MPLLLLLPLLWAGALAVSDVPRDLEVVAATPTSLLISWDAPAVTVRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPGSKSTATISGLKPGVDYTITVYAVTGRGDSPASSKPISINYRTGKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGKHHHHHH(配列番号74)

4)CD33シグナル配列−野生型Fn3(RGD→RGA)配列−Fc−Hisタグ(pRS5a)
MPLLLLLPLLWAGALAVSDVPRDLEVVAATPTSLLISWDAPAVTVRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPGSKSTATISGLKPGVDYTITVYAVTGRGASPASSKPISINYRTGKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGKHHHHHH(配列番号75)
【0206】
ライゲーション混合物を用いて、XL1−BlueまたはDH5αコンピテント細胞を形質転換した。ポジティブクローンはDNA配列決定によって確認した。HEK293T、FreeStyle(商標)293−F、HKB11およびHEKEBNAを含む多様な細胞系で構築物を発現させた。内毒素を含まないバッファーを全ての工程で使用した。培養物の上清を濾過し、Protein A Sepharoseカラムにロードした。カラムをPBSで洗浄し、次いで50mMのクエン酸pH2.7、140mMのNaClで溶出した。サンプルを中和してBis-Trisゲル(Invitrogen)で分析し、次いでAmicon Ultra-15チューブ内で濃縮し、Superdex prep gradeカラム(Amersham)にロードし、10mMのTrisバッファーまたはPBSで溶出した。サンプルをBis-TrisゲルおよびLC−MSで再度分析した。還元およびN−脱グリコシル化のために、サンプル(34μg)を最終体積50μlで、0.8Mの尿素、0.04MのNHCOおよび0.01MのDTTと共に30分間、50℃でインキュベートした。次いで1x反応バッファーG7および1μgのPNGaseFを加え、37℃で1時間インキュベートした。Protein A 精製に加えて、上記実施例に記載のとおり、Ni−NTA精製も実施した。対応する抗原との結合はELISAで確認した。
【0207】
これらの構築物の半減期をインビボで決定した。10mg/kgの各化合物をLewisラットに静脈内投与し(n=3)、サンプルをプレドーズ、1、2、4、8、24、48、96、192および384時間で投与した。標準的なアミンカップリングでCM5チップを用いてBiacore分析を実施した。フローセル1は参照差分のためのブランクであった(EDC/NHSによる表面活性化、次いでエタノールアミンによる不活性化)。フローセル2はPK読み出しのためにTHE抗HISmAb(GenScript Corp)でコーティングした。フローセル3および4は免疫原性読み出しのために動物に投与した化合物でコーティングした(表面飽和)。ラット血清サンプルをHBS−EPおよびNBSreducer(Biacore;最終濃度1mg/ml)で1:8に希釈した。化合物定量のために標準曲線を作成し、動物に投与した対応する化合物20mg/l〜0.078mg/lの1:2連続希釈をラット血清(GeneTex)で調製した。ラット血清をHBS−EPおよび1mg/mlのNSBreducerで1:8に希釈した。XLfit 4.2を用いて標準曲線データをフィットさせて使用し、血清サンプル中の化合物濃度を計算した(PK)。化合物の半減期は、WinNonlinソフトウェアを用いて計算した。非コンパートメントモデルを用いてPKデータをフィットさせた。
【0208】
野生型10Fn3(RGD→RGA)−Fcを哺乳類細胞で発現させ、SDS−PAGEで精製し、分析した(図24)。LC−MSは天然野生型10Fn3(RGD→RGA)−Fcについて異なる形態を示し、分子量76.12kDaはダイマーに対応し、76.28kDaおよび76.44kDa形態はダイマーとヘキソースに対応していた。還元およびN−脱グリコシル化の後、分子量36.63kDaが得られ、これは予期したモノマータンパク質に対応していた(データは示さず)。タンパク質の分子量は、N−脱グリコシル化の間のAsnからAspへの修飾に由来する質量変化のため、脱グリコシル化の後に、増加した。N末端分析はまた、予期したタンパク質に対応する配列を示した。
【0209】
インビボデータは、非修飾10Fn3(図9)と比較したとき、野生型10Fn3(RGD→RGA)−Fc(図25)について顕著な半減期の改善を示した。非修飾10Fn3の平均半減期は0.52時間であり、これが10Fn3−Fcでは9.4時間に増加した(図26)。
【0210】
このラット試験の結果は、hIgG1 Fcとの融合体として作成したとき、10Fn3のインビボ血清半減期が顕著に延長され得ることを示している。式Iを用いて、ヒトに外挿した平均半減期は、約38.8時間であると予測される。
Fcが融合したFn3分子の半減期の平均増加倍数は、Fn3−Fc融合体の平均(9.4)を非複合化Fn3の平均(0.52)で割って、インビボでのFn3−Fc融合体の半減期は約18倍の増加となる。
【0211】
総括すると、実施例3〜5の結果は、多くの方法、例えばHSA、Fc融合体によってFn3分子を修飾して、該分子の半減期を延長できることを示している。全ての修飾Fn3分子は半減期の顕著な延長を示した。さらに、これらの実施例は、Fn3およびFn3の修飾形態がインビボで哺乳類細胞で成功裏に発現できること、そしてクリアランスに対する顕著なインビボ効果を有することを初めて示した。
【0212】
実施例6
キメラフィブロネクチン分子
フィブロネクチンのタイプIIIモジュールおよびU.S. 6,673,901 B2に記載のβ鎖の配列分析を用いて、キメラFn3分子を作成するためのフィブロネクチン鎖を交換する方法を、ここに説明する。
【0213】
第一に、ドメイン7、8、9および10のβ鎖を同定した。次に疎水性コア相互作用に関与している残基を同定した。次いで、次の基準に従って、類似性を決定した:
(a)鎖の類似性;
(b)疎水性コア相互作用に関与すると定義された位置のみの類似性;および
(c)疎水性相互作用には関与しないが、溶媒に曝される部分の類似性。
【0214】
次の表に関して、Fn3の第10ドメインと比較した、対応する全ストランド、溶媒に曝される残基のみ、疎水性コア残基のみの%同一性および類似性を示す。
表1
【表1】

【表2】

上記配列同一性/類似性に基づいて、可能性のあるキメラを図6に示す。
【0215】
均等
当業者は、常套未満の実験を用いて、本明細書に記載の本発明の具体的な態様の多様な均等を認識し、あるいは確認することができる。かかる均等は、特許請求の範囲に含まれることを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非Fn3部分と結合したフィブロネクチンタイプIII(Fn3)ベースの結合分子を含む複合体であって、該Fn3ベースの結合分子が少なくとも2個のFn3ベータ鎖ドメイン配列と、各Fn3ベータ鎖ドメイン配列間を結合するループ領域配列を含み、ここで、該ループ領域配列が特定の標的と結合する、複合体。
【請求項2】
非Fn3部分が第二の標的と結合することができる、請求項1の複合体。
【請求項3】
非Fn3部分が、インビボで投与したときFnベースの結合分子の半減期を延長する、請求項1の複合体。
【請求項4】
非Fn3部分が抗体Fc領域を含む、請求項1の複合体。
【請求項5】
抗体Fc領域が、N末端領域およびC末端領域から成る群から選択される領域で、Fn3ベースの結合分子と融合している、請求項4の複合体。
【請求項6】
抗体Fc領域が、ループ領域、ベータ鎖領域、ベータ様鎖、C末端領域、C末端と最もC末端のベータ鎖もしくはベータ様鎖間、N末端領域およびN末端と最もN末端のベータ鎖もしくはベータ様鎖間から成る群から選択される領域で、Fn3ベースの結合分子と融合している、請求項4の複合体。
【請求項7】
複合体の半減期が、複合体ではないFn3ベースの結合分子のものよりも、少なくとも5倍、10倍、15倍、20倍、少なくとも25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、50倍、55倍、60倍、65倍、70倍、75倍、80倍、85倍、90倍、95倍、100倍、150倍、200倍、250倍、300倍、350倍、400倍、450倍、500倍、550倍、600倍、650倍、700倍、750倍、800倍、850倍、900倍、950倍または1000倍長い、請求項4の複合体。
【請求項8】
複合体の半減期が、複合体ではないFn3ベースの結合分子のものよりも、少なくとも5〜30倍長い、請求項4の複合体。
【請求項9】
複合体の半減期が、複合体ではないFn3ベースの結合分子のものよりも、少なくとも2〜5時間、5〜10時間、10〜15時間、15〜20時間、20〜25時間、25〜30時間、35〜40時間、45〜50時間、50〜55時間、55〜60時間、60〜65時間、65〜70時間、75〜80時間、80〜85時間、85〜90時間、90〜95時間、95〜100時間、100〜150時間、150〜200時間、200〜250時間、250〜300時間、350〜400時間、400〜450時間、450〜500時間、500〜550時間、550〜600時間、600〜650時間、650〜700時間、700〜750時間、750〜800時間、800〜850時間、850〜900時間、900〜950時間、950〜1000時間、1000〜1050時間、1050〜1100時間、1100〜1150時間、1150〜1200時間、1200〜1250時間、1250〜1300時間、1300〜1350時間、1350〜1400時間、1400〜1450時間、1450〜1500時間長い、請求項4の複合体。
【請求項10】
複合体のインビボでの半減期が、少なくとも9.4時間である、請求項4の複合体。
【請求項11】
非Fn3部分が血清アルブミン(SA)もしくはトランスフェリンまたはその部分を含む、請求項1の複合体。
【請求項12】
血清アルブミン(SA)またはその部分が、ヒト血清アルブミン(HSA)である、請求項1の複合体。
【請求項13】
HSAが、ループ領域、ベータ鎖領域、ベータ様鎖、C末端領域、C末端と最もC末端のベータ鎖もしくはベータ様鎖間、N末端領域およびN末端と最もN末端のベータ鎖もしくはベータ様鎖間から成る群から選択される領域で、Fn3ベースの結合分子と融合している、請求項12の複合体。
【請求項14】
複合体の半減期が、複合体ではないFn3ベースの結合分子のものよりも、少なくとも5倍、10倍、15倍、20倍、少なくとも25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、50倍、55倍、60倍、65倍、70倍、75倍、80倍、85倍、90倍、95倍、100倍、150倍、200倍、250倍、300倍、350倍、400倍、450倍、500倍、550倍、600倍、650倍、700倍、750倍、800倍、850倍、900倍、950倍または1000倍長い、請求項12の複合体。
【請求項15】
複合体の半減期が、複合体ではないFn3ベースの結合分子のものよりも、少なくとも25〜50倍長い、請求項12の複合体。
【請求項16】
複合体の半減期が、複合体ではないFn3ベースの結合分子のものよりも、少なくとも2〜5時間、5〜10時間、10〜15時間、15〜20時間、20〜25時間、25〜30時間、35〜40時間、45〜50時間、50〜55時間、55〜60時間、60〜65時間、65〜70時間、75〜80時間、80〜85時間、85〜90時間、90〜95時間、95〜100時間、100〜150時間、150〜200時間、200〜250時間、250〜300時間、350〜400時間、400〜450時間、450〜500時間、500〜550時間、550〜600時間、600〜650時間、650〜700時間、700〜750時間、750〜800時間、800〜850時間、850〜900時間、900〜950時間、950〜1000時間、1000〜1050時間、1050〜1100時間、1100〜1150時間、1150〜1200時間、1200〜1250時間、1250〜1300時間、1300〜1350時間、1350〜1400時間、1400〜1450時間、1450〜1500時間長い、請求項12の複合体。
【請求項17】
複合体のインビボでの半減期が、少なくとも19.6時間である、請求項12の複合体。
【請求項18】
血清アルブミン(SA)もしくはトランスフェリンまたはその部分と結合するポリペプチドが、抗ヒト血清アルブミン(HSA)ポリペプチドまたは抗トランスフェリンポリペプチドである、請求項12の複合体。
【請求項19】
抗ヒト血清アルブミン(HSA)ポリペプチドまたは抗トランスフェリンポリペプチドが、ループ領域、ベータ鎖領域、ベータ様鎖、C末端領域、C末端と最もC末端のベータ鎖もしくはベータ様鎖間、N末端領域およびN末端と最もN末端のベータ鎖もしくはベータ様鎖間から成る群から選択される領域で、Fn3ベースの結合分子と結合している、請求項18の複合体。
【請求項20】
複合体の半減期が、複合体ではないFn3ベースの結合分子のものよりも、少なくとも5倍、10倍、15倍、20倍、少なくとも25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、50倍、55倍、60倍、65倍、70倍、75倍、80倍、85倍、90倍、95倍、100倍、150倍、200倍、250倍、300倍、350倍、400倍、450倍、500倍、550倍、600倍、650倍、700倍、750倍、800倍、850倍、900倍、950倍または1000倍長い、請求項18の複合体。
【請求項21】
複合体の半減期が、複合体ではないFn3ベースの結合分子のものよりも、少なくとも10〜35倍長い、請求項18の複合体。
【請求項22】
複合体の半減期が、複合体ではないFn3ベースの結合分子のものよりも、少なくとも2〜5時間、5〜10時間、10〜15時間、15〜20時間、20〜25時間、25〜30時間、35〜40時間、45〜50時間、50〜55時間、55〜60時間、60〜65時間、65〜70時間、75〜80時間、80〜85時間、85〜90時間、90〜95時間、95〜100時間、100〜150時間、150〜200時間、200〜250時間、250〜300時間、350〜400時間、400〜450時間、450〜500時間、500〜550時間、550〜600時間、600〜650時間、650〜700時間、700〜750時間、750〜800時間、800〜850時間、850〜900時間、900〜950時間、950〜1000時間、1000〜1050時間、1050〜1100時間、1100〜1150時間、1150〜1200時間、1200〜1250時間、1250〜1300時間、1300〜1350時間、1350〜1400時間、1400〜1450時間、1450〜1500時間長い、請求項18の複合体。
【請求項23】
複合体のインビボでの半減期が、少なくとも7.7時間である、請求項18の複合体。
【請求項24】
非Fn3部分がポリエチレングリコール(PEG)を含む、請求項1の複合体。
【請求項25】
PEG部分がチオール基またはアミン基と結合している、請求項24の複合体。
【請求項26】
PEG部分がペグ化指示部位によってFn3ベースの結合分子と結合している、請求項24の複合体。
【請求項27】
PEG部分がCys残基と結合している、請求項24の複合体。
【請求項28】
PEG部分が非天然アミノ酸残基と結合している、請求項24の複合体。
【請求項29】
PEG部分が、ループ領域、ベータ鎖領域、ベータ様鎖、C末端領域、C末端と最もC末端のベータ鎖もしくはベータ様鎖間、N末端領域およびN末端と最もN末端のベータ鎖もしくはベータ様鎖間から成る群から選択される領域で、Fn3ベースの結合分子と融合している、請求項24の複合体。
【請求項30】
PEG部分が約2kDa〜約100kDaの分子量を有する、請求項24の複合体。
【請求項31】
複合体の半減期が、複合体ではないFn3ベースの結合分子のものよりも、少なくとも5倍、10倍、15倍、20倍、少なくとも25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、50倍、55倍、60倍、65倍、70倍、75倍、80倍、85倍、90倍、95倍、100倍、150倍、200倍、250倍、300倍、350倍、400倍、450倍、500倍、550倍、600倍、650倍、700倍、750倍、800倍、850倍、900倍、950倍または1000倍長い、請求項24の複合体。
【請求項32】
複合体の半減期が、複合体ではないFn3ベースの結合分子のものよりも、少なくとも5〜25倍長い、請求項24の複合体。
【請求項33】
複合体の半減期が、複合体ではないFn3ベースの結合分子のものよりも、少なくとも2〜5時間、5〜10時間、10〜15時間、15〜20時間、20〜25時間、25〜30時間、35〜40時間、45〜50時間、50〜55時間、55〜60時間、60〜65時間、65〜70時間、75〜80時間、80〜85時間、85〜90時間、90〜95時間、95〜100時間、100〜150時間、150〜200時間、200〜250時間、250〜300時間、350〜400時間、400〜450時間、450〜500時間、500〜550時間、550〜600時間、600〜650時間、650〜700時間、700〜750時間、750〜800時間、800〜850時間、850〜900時間、900〜950時間、950〜1000時間、1000〜1050時間、1050〜1100時間、1100〜1150時間、1150〜1200時間、1200〜1250時間、1250〜1300時間、1300〜1350時間、1350〜1400時間、1400〜1450時間、1450〜1500時間長い、請求項24の複合体。
【請求項34】
複合体のインビボでの半減期が、少なくとも3.6時間である、請求項24の複合体。
【請求項35】
改善された薬物動態特性を有する複合体であって、該複合体は、抗体Fc領域と結合するポリペプチドと結合した、フィブロネクチンタイプIII(Fn3)ベースの結合分子を含み、該Fn3ベースの結合分子は、少なくとも2個のFn3ベータ鎖ドメイン配列と、各Fn3ベータ鎖ドメイン配列間を結合するループ領域配列を含み、該複合体は特定の標的と結合し、少なくとも9.4時間の血清半減期を有する、複合体。
【請求項36】
改善された薬物動態特性を有する複合体であって、該複合体は、ヒト血清アルブミン(HSA)部分と結合した、フィブロネクチンタイプIII(Fn3)ベースの結合分子を含み、該Fn3ベースの結合分子は、少なくとも2個のFn3ベータ鎖ドメイン配列と、各Fn3ベータ鎖ドメイン配列間を結合するループ領域配列を含み、該複合体は特定の標的と結合し、少なくとも19.6時間の血清半減期を有する、複合体。
【請求項37】
改善された薬物動態特性を有する複合体であって、該複合体は、ヒト血清アルブミン(HSA)部分と結合するポリペプチドと結合した、フィブロネクチンタイプIII(Fn3)ベースの結合分子を含み、該Fn3ベースの結合分子は、少なくとも2個のFn3ベータ鎖ドメイン配列と、各Fn3ベータ鎖ドメイン配列間を結合するループ領域配列を含み、該複合体は特定の標的と結合し、少なくとも7.7時間の血清半減期を有する、複合体。
【請求項38】
改善された薬物動態特性を有する複合体であって、該複合体は、PEG部分と結合した、フィブロネクチンタイプIII(Fn3)ベースの結合分子を含み、該Fn3ベースの結合分子は、少なくとも2個のFn3ベータ鎖ドメイン配列と、各Fn3ベータ鎖ドメイン配列間を結合するループ領域配列を含み、該複合体は特定の標的と結合し、少なくとも3.6時間の血清半減期を有する、複合体。
【請求項39】
改善された薬物動態特性を有する複合体であって、該複合体は、抗FcRn部分と結合した、フィブロネクチンタイプIII(Fn3)ベースの結合分子を含み、該Fn3ベースの結合分子は、少なくとも2個のFn3ベータ鎖ドメイン配列と、各Fn3ベータ鎖ドメイン配列間を結合するループ領域配列を含み、該複合体は、新生児FcR受容体と酸性pHで高い親和性で結合し、中性pHで低い親和性で結合する、複合体。
【請求項40】
酸性pHが約1〜約7の範囲である、請求項39の複合体。
【請求項41】
酸性pHが約6である、請求項39の複合体。
【請求項42】
中性pHが約7〜約8の範囲である、請求項39の複合体。
【請求項43】
中性pHが約7.4である、請求項39の複合体。
【請求項44】
Fn3ドメインが少なくとも2個のフィブロネクチンモジュールに由来する、請求項1〜43のいずれかのFn3ベースの結合分子または複合体。
【請求項45】
Fn3ドメインが少なくとも3個またはそれ以上のフィブロネクチンモジュールに由来する、請求項1〜44のいずれかのFn3ベースの結合分子または複合体。
【請求項46】
請求項1〜45のいずれかのFn3ベースの結合分子または複合体をコードする配列を含む、核酸。
【請求項47】
プロモーターと作動可能に連結した請求項46の核酸を含む、発現ベクター。
【請求項48】
請求項47の核酸を含む細胞。
【請求項49】
細胞が哺乳類細胞である、請求項48の細胞。
【請求項50】
哺乳類細胞がヒト哺乳類細胞である、請求項49の細胞。
【請求項51】
哺乳類細胞がCHO細胞である、請求項49の細胞。
【請求項52】
標的と結合する請求項1〜45のいずれかのFn3ベースの結合分子または複合体を製造する方法であって、標的と結合する請求項1〜45のいずれかのFn3ベースの結合分子または複合体をコードする配列を含む核酸を発現させることを含む、方法。
【請求項53】
さらに哺乳類細胞中で核酸を発現させることを含む、請求項52の方法。
【請求項54】
哺乳類細胞がヒト哺乳類細胞である、請求項53の方法。
【請求項55】
哺乳類細胞がCHO細胞である、請求項53の方法。
【請求項56】
請求項1〜45のいずれかのFn3ベースの結合分子または複合体と担体を含む組成物。
【請求項57】
対象の自己免疫疾患、炎症、がん、感染症、心血管疾患、胃腸疾患、呼吸器疾患、代謝性疾患、筋骨格疾患、神経変性疾患、精神疾患、眼疾患および移植拒絶から成る群から選択される疾患を処置する方法であって、当該対象に請求項1〜56のいずれかの結合分子、複合体または組成物を投与することを含む方法。
【請求項58】
サンプル中のタンパク質を検出する方法であって、請求項1〜45のいずれかのFn3ベースの結合分子または複合体を標識化し、該標識化結合分子または複合体とサンプルとを接触させ、そして結合分子または複合体とタンパク質間の複合体形成を検出することを含む、方法。
【請求項59】
自己免疫疾患、炎症、がん、感染症、心血管疾患、胃腸疾患、呼吸器疾患、代謝性疾患、筋骨格疾患、神経変性疾患、精神疾患、眼疾患および移植拒絶から成る群から選択される疾患を処置するための、複合体を含む組成物の使用であって、該複合体は非Fn3部分と結合したフィブロネクチンタイプIII(Fn3)ベースの結合分子を含み、該複合体は特定の標的と結合し、複合体ではないFnベースの結合分子のものと比較して少なくとも3.6倍長い半減期を有する、使用。
【請求項60】
非Fn3部分がPEG、HSA、抗HSAおよび抗体Fc領域から成る群から選択される、請求項59の使用。
【請求項61】
自己免疫疾患、炎症、がん、感染症、心血管疾患、胃腸疾患、呼吸器疾患、代謝性疾患、筋骨格疾患、神経変性疾患、精神疾患、眼疾患および移植拒絶から成る群から選択される疾患の処置用医薬の製造における組成物の使用であって、該組成物が非Fn3部分と結合したフィブロネクチンタイプIII(Fn3)ベースの結合分子を含んでなる複合体を含み、該複合体は特定の標的と結合し、複合体ではないFnベースの結合分子のものと比較して少なくとも3.6倍長い半減期を有する、使用。
【請求項62】
非Fn3部分がPEG、HSA、抗HSAおよび抗体Fc領域から成る群から選択される、請求項61の使用。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公表番号】特表2011−507543(P2011−507543A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−540189(P2010−540189)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【国際出願番号】PCT/IB2008/003962
【国際公開番号】WO2009/083804
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】