説明

改善された洗浄性バー及び製造方法

石けんを含まない非収縮性溶融成形固体クレンジング組成物であって、(a)15乃至50重量%の、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ヒドロキシステアリン酸、及びこれらの混合物から選択される脂肪酸、(b)2乃至40重量%の非石けん洗浄活性剤、(c)30乃至60重量%の水、(d)任意の別の成分、例えば機能性活性剤、を含み、この組成物は、20乃至100℃の範囲の温度においては純粋リオトロピック液晶を含まず、40乃至100℃の範囲の温度において等方性液体相または連続する等方性液体相中のリオトロピック液晶相の分散物形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高割合で液体有益作用剤/水を含み、中性/皮膚/弱酸性のpHを有する溶融成形固体クレンジング組成物に関するが、これは硬く、貯蔵に際して収縮しない。好ましくは、この固体クレンジング組成物は洗浄性バーである。
【背景技術】
【0002】
例えば洗浄性バーの形態の固体クレンジング組成物は、一般的に溶融成形または押出によて調製される。この組成物は、石けんまたは非石けん活性剤、あるいは前記二種の組み合わせであって良い洗浄剤分子を他の従来成分と共に含む。この組成物は、一般的に約9乃至10以上のpHを有するアルカリ性である。
【0003】
皮膚は、5.5乃至6.5の範囲のpHを有し、高pHクレンジング組成物は皮膚に刺激性である。これは一般的に中性/皮膚/弱酸性のpHを有するクレンジング組成物は皮膚にもたらす刺激が少ないことが知られている(International Journal of Dermatology 2002, 41, 494-499にある報告参照)。皮膚のpHに見合う低いpHを有するかまたは中性であって、然るに皮膚への刺激が低下した固体クレンジング組成物を処方する試みがなされている。
【0004】
固体クレンジング組成物の製造において、注型方法は、押出方法に対して、高割合の水、空気、及び液体有益作用剤を含むバー組成物を製造し、低コストでありながら高性能のバーを得ることを可能にするという特定の利点を有する。バー中の液体含量を増大させることは、一般的に使用中の特性及び機能的利点の改善、例えば泡沫の優れた品質、優れた香料効果、機能性成分の優れた送達等に役立つ。高湿分含量を有するバーの主たる問題の1つは、これらが貯蔵の際に水を失って収縮しがちなことである。
【0005】
US5262079(P&G、1993)には、高割合で湿分及び合成界面活性剤を含み、硬く、超穏やかであり、低スメア性であり、中性pHであるカルボン酸系クレンジングバーが開示されている。このバーには、遊離の及び中和されたモノカルボン酸の混合物、バー硬度補助剤及び水を含む。中和カルボン酸の割合は、前記の遊離モノカルボン酸と中和モノカルボン酸との混合物の20乃至65%である。前記バー組成物中の水の割合は、前記バーの重量の約15乃至55重量%である。
【0006】
US5227086(P&G、1993)は、高割合で合成界面活性剤を含む中性pHのバーにおいてはバースメアが特に劣悪であることに言及しており、また超穏やかで、弱酸性の皮膚pHのカルボン酸系バーを開示している。このバーは、遊離のモノカルボン酸または遊離モノカルボン酸と中和モノカルボン酸との混合物、バー硬度補助剤、及び水を含む。組成物中の中和カルボン酸の割合は、前記遊離モノカルボン酸と中和モノカルボン酸との混合物の0乃至15%である。前記バー組成物中の水の割合は、前記バーの約15乃至55重量%である。
【0007】
上記従来技術においては、中和モノカルボン酸の割合が、組成物のpHを制御する。US5262079では、中性pHのバーを得るためにモノカルボン酸を中和することが必須である。US5227086に開示される組成物中に中和カルボン酸がない場合は、pHは約4乃至6.5である。また、中和モノカルボン酸は、こうしたバー組成物のpHの制御に用いられるが、一般的に皮膚に対してより刺激性であり、その使用はこのバーの穏やさの特性に影響する。
【特許文献1】US5262079
【特許文献2】US5227086
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
中和モノカルボン酸の存在または不存在は、pHを制御する一方で、必ずしも単独では溶融成形バーの所望の硬度を得るための原因たりえず、当業界における硬いバーの需要に鑑みれば、皮膚に対して穏やかであることとは別に、優れた堅さ特性を有する注型バー組成物を提供することが継続して望まれている。
特に、当業界においては、高レベルの液体活性剤、液体機能性成分、及び水を含み、優れた皮膚感特性を有して、非収縮性である硬いバーを調製することが望まれている。
【0009】
従って、本発明の基本的な目的は、高割合で液体活性剤、液体機能性成分、及び水を含む非石けん硬質バーを選択的に提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、貯蔵しても収縮しない、高濃度の液体有益作用剤及び水を含む固体クレンジング組成物を提供することである。
【0011】
本発明の更に別の目的は、高濃度の液体活性剤及び水を含み、皮膚に対して穏やかな、硬く、非収縮性の、中性/皮膚/弱酸性のpHの固体クレンジング組成物を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、固体クレンジングバー組成物中における中和モノカルボン酸の使用を回避し、且つ制御されたpH、特に所望の中性/皮膚/弱酸性のpHを有する硬いバーを得ることである。
【0013】
本発明の別の目的は、高割合の液体活性剤及び水を含み、皮膚に対して穏やかである、硬く、非収縮性の、中性/皮膚/弱酸性pHの固体クレンジング組成物の製造のための溶解成形方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、下記:
(a)15乃至50重量%の、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ヒドロキシステアリン酸、及びこれらの混合物から選択される脂肪酸、
(b)2乃至40重量%の非石けん洗浄活性剤、
(c)30乃至60重量%の水、
(d)任意の別の成分、例えば機能性活性剤、
を含み、
20乃至100℃の範囲の温度においては純粋リオトロピック液晶を含まず、40乃至100℃の範囲の温度において等方性液体相または連続する等方性液体相中のリオトロピック液晶相の分散物形成する、石けんを含まない、溶解成形固体クレンジング組成物を提供する。
【0015】
好ましくは、固体クレンジング組成物は、洗浄性バーの形態である。
【0016】
固体クレンジング組成物のpHが5.5乃至8.5であると特に好ましい。
【0017】
上記の選択的組成によれば、高割合で液体活性剤、液体機能性成分、及び水を含み、硬く、非収縮性の、中性/皮膚/弱酸性pHの固体クレンジング組成物を提供することが可能になった。重要なことに、本発明の組成物は、(i)ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、もしくはヒドロキシステアリン酸、及びこれらの混合物から選択される脂肪酸類、好ましくは遊離のモノカルボン酸類、及び(ii)選択的pHを有する非石けん洗浄性活性剤の選択的組み合わせに基づく、選択的相挙動依存性製剤を含む。
【0018】
本発明の別の態様によれば、下記の工程:
(i)15乃至50重量%の、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ヒドロキシステアリン酸、及びこれらの混合物から選択される脂肪酸、2乃至40重量%の非石けん洗浄活性剤、30乃至60重量%の水、及び任意の別の成分を含み、20乃至100℃の範囲の温度においては純粋リオトロピック液晶を含まず、40乃至100℃の範囲の温度において等方性液体相または連続する等方性液体相中のリオトロピック液晶相の分散物形成する洗浄性組成物を評価し且つ提供する工程、
(ii)上記洗浄性組成物を、70乃至95℃に加熱する工程、
(iii)上記洗浄性組成物の溶融物を、適当な型に注入し、冷却する工程、
を含む、溶融成形固体クレンジング組成物の製造方法が提供される。
【0019】
本発明は、高割合で液体有益作用剤/水を含み、中性/皮膚/弱酸性のpHを有し、貯蔵しても収縮しない、溶融成形固体クレンジング組成物に関する。この組成物は、特に脂肪酸類、非石けん洗浄性活性剤、水、及び任意の成分、例えば機能性活性剤等を含む。固体クレンジング組成物は、前記組成物が、20乃至100℃の範囲の温度においては純粋リオトロピック液晶を含まず、且つ40乃至100℃の範囲の温度において等方性液体相または連続する等方性液体相中のリオトロピック液晶相の分散物形成することを特徴とする。
【0020】
界面活性剤系中の等方性液体相及び液晶相の存在は、好ましくは任意の偏光顕微鏡検査技術を用いて検出される。液晶相は本質的に非等方性であるため、屈折率は配向に依存する。一般的に、こうした複屈折系は偏光線の偏光面を変更する。等方性液体は直交偏光子間では黒く見えるが、液体結晶系はより透明であり、例えばラメラ液晶相がマルタ十字または油の筋状(大きな環状)組織を示す一方で、六方晶相は非幾何的な扇状組織を示す。いくつかの組織が同一の相構造中に観察されうる。様々なリオトロピック液晶相(及びその分散物)の特徴的組織が以下の文献に報告されている:(i)"The Aqueous Phase Behaviour of Surfactants" by Robert G. Laughlin, Academic Press, New York, 1994, Pages 538-542. (ii)"The Colloidal Domain Where Physics, Chemistry, Biology, and Technology Meet"by D. Fennell Evans, Hakan Wennerstrom, VCH Publishers, New York, 1994, Pages 251-252.
【0021】
脂肪酸:
飽和脂肪酸は、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ヒドロキシステアリン酸、及びこれらの混合物から選択される。組成物中の飽和脂肪酸は、15乃至50重量%である。
【0022】
洗浄性活性剤:
本発明による固体クレンジング組成物は、本質的に非石けん系の洗浄性活性剤を含む。アニオン性、非イオン性、カチオン性、両性、もしくは双性イオン性の界面活性剤、またはこれらの混合物から選択される、非石けん洗浄性活性剤を使用することが好ましい。
【0023】
アニオン性界面活性剤:
好適なアニオン性洗浄活性化合物は、その分子構造中に8乃至22の炭素原子を含むアルキル基、並びにスルホン酸もしくは硫酸エステル基及びこれらの混合物から選択される基を有する有機硫黄反応生成物の水溶性塩である。合成のアニオン性洗浄性活性化合物の例には、直鎖状アルキルベンゼンスルホネート、ナトリウムラウリルスルホネート、ナトリウムラウリルエーテルスルフェート、アルファオレフィンスルホネート、アルキルエーテルスルホネート、脂肪メチルエステルスルホネート、アルキルイソチオネート等がある。
【0024】
上記洗浄性活性種においてもっとも好適なカチオンは、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、及び様々なアミン類、例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、及びトリエタノールアミンである。
【0025】
非イオン性界面活性剤:
好適な非イオン性洗浄性活性化合物は、親水性であるアルキレンオキシド基の、脂肪族もしくはアルカリ芳香族性であってよい有機疎水性化合物との縮合により産生する化合物として広範に記載可能である。一般的な非イオン性界面活性剤は、エチレンオキシドと直鎖もしくは分枝鎖形態のいずれかである8乃至22の炭素原子を有する脂肪族アルコール類との縮合生成物、例えばココナッツアルコールの1分子当たり2乃至15モルのエチレンオキシドを有するココナッツオイルエチレンオキシド縮合物である。非イオン性界面活性剤の例には、アルキルフェノールエチレンオキシド(EO)縮合物、タロウアルコール10EO縮合物、アルキルデメチルアミンオキシド、ラウリルモノエタノールアミド、糖エステル類等がある。
【0026】
他の界面活性剤類:
両性洗浄性活性剤の例には、ココアミドプロピルベタイン、ココベタイン等がある。
【0027】
本発明による組成物中には、カチオン性または双性イオン性の洗浄性活性剤を任意に含めることも可能である。
【0028】
好適な洗浄性活性種のさらなる例は、以下の参考文献"Handbook of Surfactants", M. R. Porter, Chapman and Hall, New York, 1991。
【0029】
本発明の固体クレンジング組成物中に使用される洗浄性活性剤は、好ましくはアニオン性であり、一般的には上限40%の割合で存在する。
【0030】
液体有益作用剤:
本発明の好ましい態様によれば、液体有益物質、例えばモイスチャライザー、エモリエント、柔軟剤等がこの組成物に導入される。モイスチャライザー及び湿潤剤には、シリコーンオイル、ポリオール類、グリセロール、セチルアルコール、カーボポール934、エトキシル化ヒマシ油、パラフィン油類、ラノリン及びその誘導体が含まれる。
【0031】
任意の成分:
他の任意の成分、例えば塩溶電解質、ポリオール、フィラー、色素、香料、乳白剤、保存料、1つ以上の水不溶性粒子状物質、例えばタルク、カオリン、多糖類、及び他の従来の成分を組成物中に導入して良い。
【0032】
方法:
15乃至50重量%の飽和脂肪酸、2乃至40重量%の非石けん洗浄活性剤、30乃至60重量%の水、及び任意の機能性液体成分を含む洗浄性組成物の溶融物を、約70乃至95℃で調製する。この溶融物を、あらゆる好適な型または予め形成したポリマー型に注型する。ヒドロキシステアリン酸が脂肪酸構成物として使用された組成物では、まずこの系を約55℃に維持したホットオーブン内の穏やかな状況下で約45分間に亘り冷却し、その後更に環境条件下で冷却して硬い錠剤を得る。ミリスチン酸もしくはパルミチン酸もしくはステアリン酸もしくはこれら脂肪酸の混合物が脂肪酸構成物として使用された組成物では、この系を直接、周囲条件(約25℃)下で冷却して硬い錠剤を得る。これらの組成物については、この組成物を55℃に維持する工程は存在しなかった。
【0033】
上記組成物は、20乃至100℃の範囲の温度においては純粋リオトロピック液晶を示さず、40乃至100℃の範囲の温度において等方性液体相または連続する等方性液体相中のリオトロピック液晶相の分散物形成することを特徴とする。型は、ニアネットシェイプ錠剤の製造またはバー/ブロックの製造のために好適に選択される。バー/ブロックは、更に洗浄性物品に成形されて良い。
【0034】
本発明による固体クレンジング組成物は、簡便に手に持てるだけの硬さ及び経済性を有し、また優れた使用特性を示す。好ましい組成物は、自動硬度計を使用して測定して、75kPaより大なる降伏応力値を示す。
【0035】
固体洗浄性物品がニアネットシェイプ熱成形ポリマーを使用して製造されるならば、型を密閉してキャストイン実装洗浄性組成物を得る。キャストイン実装洗浄性組成物を得るためには、好ましくは型に充填した直後にこの型を密閉する。
【0036】
組成物は、下記:
(i)オンライン成形した可撓性物質を連続チューブに充填し、注型適性組成物を溶融して下端にて封をする工程(この管は、組成物にとってのスリーブとして作用すると同時に、この組成物を、周囲とは別個の充填したスリーブの断面の所望面積を達成するための断面強制ガイドを通って輸送する)、
(ii)充填した管状スリーブの充填末端を、空気の捕捉なしに密閉して、キャストインスリーブ溶融物を得る工程、
(iii)前記の充填したスリーブを適当な型に乗せて冷却することにより、前記溶融物を固化させると同時に成形してキャストインスリーブログを得る工程、
(iv)前記の成形し且つ固化した成形組成物を、ビレット/錠剤にカットする工程

(v)任意に前記ログ/ビレット/錠剤をフローラッピングする工程、
を含む、連続する方法を用いてバー形態で調製可能である。
【0037】
気泡低密度バーを得るためには、バーを型から取りだした後に脱水してよい。
【0038】
本発明を、ここに、以下の非限定的実施例に関して詳説する。
【実施例】
【0039】
(実施例1:相挙動に関する組成物の評価)
本発明による組成物は、20乃至100℃の範囲の温度においては純粋リオトロピック液晶相を示さず、40乃至100℃の範囲の温度において等方性液晶相または連続する等方性液体中のリオトロピック液晶相の分散物形成することによって特徴づけられる。本発明によるものと本発明以外の比較用実施例を、表1にまとめる。
【0040】
1.相の特徴:
組成物の相の特徴付けを、光学偏光顕微鏡観察技術を用いて実行した。約90℃の高温で組成物の溶融物の液滴を、顕微鏡スライドガラス上に移し、カバーガラスで覆った。カバーガラスの端部を、UV接着剤で密閉して湿分損失を最小化した。スライドガラスを、制御付き加熱/冷却設備を備えた顕微鏡の台上に乗せた。システムを、1分間に1℃の速度で95℃に加熱した。等方性液晶相またはその分散物または純粋液晶相が形成される温度を書き留めた。その後システムを冷却し、1分間に1℃の速度で冷却して固化をもたらし、冷却の間に純粋液晶相が形成されるかどうかをチェックした。リオトロピック液晶相は、本質的に非等方性であるため、屈折率は配向に依存する。一般的に、こうした複屈折システムは系は偏光線の偏光面を変更する。等方性液体は直交偏光子間では黒く見えるが、液体結晶系はより透明であり、例えばラメラ液晶相がマルタ十字または油の筋状(大きな環状)組織を示す一方で、六方晶相は非幾何的な扇状組織を示す。いくつかの組織が同一の相構造中に観察される。様々なリオトロピック液晶相(及びその分散物)の特徴的組織が以下の文献に報告されている:(i)"The Aqueous Phase Behaviour of Surfactants" by Robert G. Laughlin, Academic Press, New York, 1994, Pages 538-542. (ii)"The Colloidal Domain Where Physics, Chemistry, Biology, and Technology Meet"by D. Fennell Evans, Hakan Wennerstrom, VCH Publishers, New York, 1994, Pages 251-252.
【0041】
2.洗浄性錠剤の調製:
表1に示した組成物の相挙動を、光学偏光顕微鏡を用い、上述の操作を利用して測定した。約90℃の高温にて、表1に示した洗浄性組成物の溶融物を、寸法が75mm(L)×55mm(W)×40mm(H)の長方形のステンレススチール型に注型する。この組成物を、55℃に維持したホットオーブン内で約45分間に亘って冷却した。その後、型を周囲温度(約25℃)で冷却し、硬い洗浄性錠剤を得た。以下に記載され、また表1に示される操作を用いて、降伏応力を測定した。
【0042】
使用した脂肪酸がミリスチン酸またはパルミチン酸またはステアリン酸またはこれら脂肪酸の混合物である、別の錠剤(錠剤2乃至6)に示される組成物を、70乃至90℃の型に充填し、周囲温度(約25℃)にて冷却し、固化させる。これら組成物については、周囲条件にまで更に冷却する前にさらに冷却する前に、ホットオーブン内で55℃にシステムを維持する工程(ヒドロキシステアリン酸を組成物中の脂肪酸として使用した組成物については次いで行った工程)は行わなかった。
【0043】
3.降伏応力測定:
その後、洗浄性錠剤を25℃に維持したオーブン中に4時間おき、安定させる。25℃での錠剤の降伏応力を、自動硬度計を使用し、下記の操作を使用して測定した。
降伏応力測定に使用される自動硬度計は、M/s Petrotest Instruments GmbH製のPNR10モデルであった。測定には、標準ホローコーン(ASTM D 217-IP50による部品#18-0101)を、プランジャー(部品#18-0042)と共に用いた。コーンは真鍮製の円錐体及び取り外し可能な強化スチールチップからなるものであった。コーンの総質量は102.5gであった。可動プランジャーの総質量は47.5gであった。洗浄性錠剤の上に落下するコーンとプランジャーとの総質量は、然るに150gであった。50g及び100gの追加の重り(200g及び250gの各試料の上に落下する)を更に使用した。25℃での試料の降伏応力値を、以下の工程を含む標準操作を利用して測定した。
【0044】
洗浄性錠剤を、硬度計の台上に置いた。
硬度計のチップが錠剤に触れるが、これに貫入しないように硬度計の測定装置を下げた。
「スタート」キーを押すことにより、測定操作を開始した。
ディスプレーに表示される貫入深度を、mmで読み取った。
測定した貫入深度値を用い、以下の等式を用いて洗浄性錠剤の降伏応力を算出した。
降伏応力=適用した力/コーンの型打ち面積=(m×g)×103/[π(p tan1/2θ+1/2チップ直径)]
(上記式中、
降伏応力はkPaであり、
mはバーの平坦な表面上に落下する全質量(kg)
gは重力による加速(m/s2
pは達成された貫入(mm)
θは円錐角(30℃)
チップ直径=0.359mm
である)
【0045】
上記等式によって、試料上に落下する全質量200gについて測定される貫入深度が10mm未満であるならば、洗浄性錠剤の降伏応力は75kPaより大である。表1乃至6に報告される貫入値は、洗浄性錠剤上に落下する全質量200gについてのものである。
【0046】
4.収縮研究:
上述の操作を用いて調製される長方形錠剤の寸法を、ノギスを用いて測定した。錠剤は、実験室(約25℃及び相対湿度約50%)にて解放(未封入)状態を数日間維持して湿分を喪失させた。典型的には、錠剤は脱水の後には重量の10乃至40%を失った。脱水した錠剤の寸法を測定した。体積%収縮を、長方形形状の洗浄性錠剤の最初と最後の体積から測定した。体積%収縮が10%未満であるならば、洗浄性錠剤は非収縮性と見なした。非収縮性洗浄性バー組成物は、脱水して、気泡した、低密度バーをもたらす。
【0047】
5.pHの測定:
蒸留水中に組成物が1重量%の溶液を調製した。溶液のpHを、較正pHメーターを用いて測定した。
【0048】
【表1】

【0049】
表1中のデータは、本発明による相特性を満たす実施例1に記載される組成物のみが、121kPaの降伏応力を示す硬い洗浄性錠剤を形成したことを示す。実施例A及びBの組成物は、20乃至100℃の範囲の温度において純粋リオトロピック液晶を形成し、40乃至100℃の範囲の温度においては等方性液体相あるいはその分散物も形成しないため、柔らかい。これは、高割合で水及び液体洗浄性活性剤を含む組成物を使用して、硬いバーを得るためには、2つの相挙動基準をいずれも満たすことが必須であることを示している。
【0050】
実施例2−収縮に対する脂肪酸構造の影響
表2の実施例は、脂肪酸構成物がミリスチン酸またはステアリン酸またはパルミチン酸またはヒドロキシステアリン酸、またはこれら酸の混合物であって、高割合の水及び液体活性剤を含むバー組成物のみが、乾燥もしくは湿分喪失に際して10%未満の収縮を呈することを示す。ラウリン酸が脂肪酸構成物として使用される、実施例Cに示されるバー組成物は、湿分喪失に際して収縮が10%を超える。
【0051】
【表2】

【0052】
実施例3-組成物のpHに対する非石けん洗浄剤の効果
実施例3.1乃至3.4は、組成物のpHが、脂肪酸、水、及び他の機能性液体成分の所定の割合について使用される非石けん洗浄剤活性剤に依存することを示す。
【0053】
【表3】

【0054】
実施例4−組成物中に使用可能な脂肪酸の範囲
表4の実施例4.1乃至4.4は、高割合の水及び液体活性剤を含む硬いバーが、組成物中に25乃至40重量%のステアリン酸を使用すると得られることを示す。
【0055】
【表4】

【0056】
実施例5−非石けん洗浄剤活性剤の範囲
表5の実施例5.1乃至5.3は、硬いバーが、構成剤として30%のパルミチン酸、非石けん洗浄性活性剤として15乃至30%のナトリウムココイソチオネート、及び10%のPEG 1500を使用すると得られることを示す。
【0057】
【表5】

【0058】
実施例6−他の組成物
表6の実施例6.1乃至6.4には、高割合で非石けん洗浄性活性剤及び水を含む、硬く、低いpHのバー組成物が、脂肪酸を構成剤として使用して得られることが示される。
【0059】
【表6】

【0060】
上記の結果は、本発明の選択的相挙動依存性組成物が、溶融成形クレンジング固体組成物の所望の硬さのために、脂肪酸と選択的pHの非石けん洗浄性活性剤との組み合わせを含み、所望の穏やかさを提供し、且つ貯蔵しても収縮することなく高割合で液体有益作用剤/水を保持することを示す。
【0061】
本発明の様々な特徴及び実施態様は、上記の個別の箇所を参照し、多少の変更を加えて適宜別の箇所に応用する。従って、一カ所に特定される特徴は、適宜、別の箇所で特定される特徴と組み合わせて良い。
【0062】
以上の明細書中に言及された全ての文献を、ここに参照のために取りこむこととする。記載した本発明の方法及び生成物の様々な変更及び変形は、本発明の範囲から乖離することなく当業者には明らかであろう。本発明は特定の好ましい実施態様に関連して説明されているが、請求項に記載された発明がこうした特定の実施態様にまで過度に限定されるべきでないことが理解されるべきである。実際、当業者には明らかである、本発明の実施のために記載された方法の様々な変形は、請求項の範囲内に含まれることを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石けんを含まない非収縮性溶融成形固体クレンジング組成物であって、
(a)15乃至50重量%の、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ヒドロキシステアリン酸、及びこれらの混合物から選択される脂肪酸、
(b)2乃至40重量%の非石けん洗浄活性剤、
(c)30乃至60重量%の水、
(d)任意の別の成分、例えば機能性活性剤、
を含み、
20乃至100℃の範囲の温度においては純粋リオトロピック液晶を含まず、40乃至100℃の範囲の温度において等方性液体相または連続する等方性液体相中のリオトロピック液晶相の分散物形成する、石けんを含まない非収縮性溶融成形固体クレンジング組成物。
【請求項2】
pHが5.5乃至8.5である、請求項1に記載の固体クレンジング組成物。
【請求項3】
洗浄性バーの形態である、請求項1または2に記載の固体洗浄性組成物。
【請求項4】
下記の工程:
(i)15乃至50重量%の、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ヒドロキシステアリン酸、及びこれらの混合物から選択される脂肪酸、2乃至40重量%の非石けん洗浄活性剤、30乃至60重量%の水、及び任意の別の成分を含み、20乃至100℃の範囲の温度においては純粋リオトロピック液晶を含まず、40乃至100℃の範囲の温度において等方性液体相または連続する等方性液体相中のリオトロピック液晶相の分散物を形成する洗浄性組成物を、評価し且つ提供する工程、
(ii)上記洗浄性組成物を、70乃至95℃に加熱する工程、
(iii)上記洗浄性組成物の溶融物を、適当な型に注入し、冷却する工程、
を含む、溶融成形固体クレンジング組成物の製造方法。

【公表番号】特表2007−503484(P2007−503484A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524256(P2006−524256)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【国際出願番号】PCT/EP2004/008658
【国際公開番号】WO2005/021701
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(590003065)ユニリーバー・ナームローゼ・ベンノートシヤープ (494)
【Fターム(参考)】