説明

改善された湿潤滑り性を持つエラストマー性物品

例えば、エラストマー性手袋のようなエラストマー性物品及び示されたエラストマー性物品の形成方法が示されている。エラストマー性物品は、物品の着用表面上にフルオロカーボングラフトを含む。更に、有極官能性を表す変成シロキサンを含む親水性潤滑剤が、物品の表面に付与されることができる。1つの実施形態において、変成シロキサンは、アミノ変成シロキサンとすることができる。シリコン潤滑剤及びフルオロカーボングラフトは相互作用を表し、改善した乾燥時滑り特性及び改善した湿潤時滑り特性を物品に提供する。更に、脂肪酸アルコールを物品の表面に付与して、物品の湿潤滑り性を更に改善することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
エラストマー性材料は、多くの用途、例えば、手術用手袋、実験用手袋、コンドーム、カテーテル、風船、チューブ、及び同様のもののような多くの用途に適する数え切れないほどの異なる物品に形成されてきた。エラストマー性材料は、その物理的特性のために、このような用途に特に適当なものとして考えられてきた。例えば、エラストマー性材料は、良好な弾性特性を持つことに加えて、良好な強度特性を表し、水性溶液だけでなく、多くの溶媒及び油にも不透過性であるように形成することができる。
【背景技術】
【0002】
エラストマー性材料は、典型的には、触ったとき粘着性があり、表面に幾分かの付着性が存在する。物品の表面の粘着性は、多くの場合、製造及び物品の使用を困難にさせるものである。例えば、手袋、カテーテル、又は風船のような物品は、製造中にフォーマーに付着し更に、梱包及び船積みの間に、手袋それ自体で、及び手袋相互間で付着することがある(一般的に「ブロッキング」と言われる)。加えて、エラストマー性物品は、人間の皮膚に付着しやすく感じることが多い。例えば、手袋表面の粘着性のために、手袋のようなエラストマー性物品を着用する時、手の上に滑らせることは困難である。
【0003】
エラストマー性物品の表面粘着性を減少させるための幾つかの方法が開発されてきた。例えば、1つの一般的方法は、粉末剤、例えばタルク、炭酸カルシウム粉末剤を物品の表面に付加することであった。粉末剤は、エラストマー性物品をより滑りやすく感じさせるように、物品と皮膚との間で緩衝材又はバリアとして機能する。物品表面の粉末剤は、幾つかの用途に利用可能であるが、ある種の用途、例えば手術用又は他の洗浄室といった形式の用途には粉末剤は望ましくない。
【0004】
結果としてエラストマー性物品の表面摩擦を減少しようとして、無粉末被膜が開発されてきた。例えば、表面に増加した滑り性を持つ物品を付与しようとして、エラストマー性物品が開発されてきた。例えば、湿潤時着用特性を増加しようとして、親水性ヒドロゲルポリマーシステムのような親水性被膜が、使用されてきた。
【0005】
表面滑り性を増加させるために、過去に使用された他の方法として、エラストマー性物品そのものの表面を変化させる方法がある。例えば、物品の滑り特性を改善するための試みとして、エラストマー性物品の表面に成分がグラフトされた。Mayhan他の米国特許第4,595,632号は、表面上にグラフトされたフルオロカーボンを含むエラストマー性物品の形成方法を記載しており、この特許は、適切な事項のすべてを引用によりここに組み入れる。
【0006】
これらの方法の幾つかは、乾燥表面に関してのエラストマー性物品の表面滑り特性を改善するものではあるが、湿潤表面に関しての物品の滑り特性も同様に改善するものではなかった。もっと詳細に述べると、処理済み表面が湿潤すると、摩擦係数が増加し、例えば手袋のような物品は、皮膚の上を滑りにくくなる。
【0007】
エラストマー性物品の湿潤滑り性特性は、特に医療用において重要となるものである。例えば、カテーテルは、湿潤した内部上皮組織に沿って滑ることが可能でなければならない。同様に、医療用手袋は、通常、洗浄された手が完全に乾燥しないまま着用されるので、手がかなり湿潤した状態で、着用者は手袋を皮膚上に滑らせようとする。
【0008】
これらの物品において湿潤滑り性特性の問題を軽減しようとするために、種々異なる潤滑剤が開発されてきた。使用される例示的潤滑剤には、例えば、シリコン潤滑剤、界面活性潤滑剤、及び脂肪アミン潤滑剤を含む。
【0009】
このような潤滑剤の付与により湿潤滑り性特性が幾分か改善されたが、まだ多くの改善の余地があり、エラストマー性物品が、湿潤した状態で良好な滑り特性を示すだけでなく、エラストマー性物品において他の望ましい特性も示すようにすることの必要性が残っている。
【0010】
【特許文献1】米国特許第4,595,632号公報
【特許文献2】米国特許第3,905,823号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
1つの実施形態において、本発明は、表面にエラストマー性ポリマーを持つ主体マトリックスを含む、手袋のようなエラストマー性物品に向けられている。主体マトリックスのこの表面は、エラストマー性ポリマーにグラフトされたフルオロカーボン官能基を含む。フルオロカーボンは、エステル結合によりポリマー主鎖にグラフトすることができる。更に、物品は、シリコン潤滑剤を含み、フルオロカーボングラフトを持つ物品の表面に付与される。1つの実施形態において、潤滑剤は、親水性変成シリコンを含むことができる。1つの実施形態において、潤滑剤は、親水性アミノ変成シリコンを含むことができる。
【0012】
本発明は又、エラストマー性物品を形成する方法に向けられている。一般的にこの方法は、フォーマー上にエラストマー性ポリマーで主体マトリックスを形成することを含む。次いで、フルオロカーボンがエステル結合でエラストマー性ポリマーのポリマー主鎖にグラフトされる。変成シリコン潤滑剤が、フルオロカーボンがグラフトされた物品の同一表面に付与される。シリコン潤滑剤が物品表面に付与される時、変成シリコン潤滑剤及びフルオロカーボンの間に結合が形成されることができる。
【0013】
その最良の形態を含む、本発明の十分で実施可能な開示が、当業者向けのものとして明細書の残り部分に、添付図面を参照して特定的に記載されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、例示的実施形態のみの説明であり、本発明の広い態様を制限するものではなく、この広い態様が、例示された構成という形で実現されているものであることを当業者は理解すべきである。更に、本明細書の残りの部分において述べられているエラストマー性物品は、一般的に手袋として述べられているが、本発明は他のエラストマー性物品にも同様に適用することができ、手袋に限定されるものではないことを理解すべきである。
【0015】
1つの態様において、本発明は、物品の表面上のフルオロカーボングラフト及びその物品に付与された潤滑性被膜を含むエラストマー性物品に向けられており、これはフルオロカーボングラフトと結合された時、湿潤時又は乾燥時のいずれの場合でも、エラストマー性物品に優れた滑り特性を提供するものである。本発明に使用される潤滑性被膜は、グラフトとの相互作用を示す変成シリコンポリマーを含み、物品への優れた湿潤滑り性特性を提供する。変成シリコンの動きを物理的に制限することになる他の潤滑剤も又、ができる物品に被覆することができる。これは、シリコンポリマーだけでなく、物品の表面上の第二潤滑剤を保持するのに貢献することができ、更にこれにより湿潤滑り性特性を改善することができる。
【0016】
本発明の方法は、エラストマー性物品の表面上にフルオロカーボンをグラフトすることを含む。この方法は、表面上に脂肪族炭素−炭素不飽和であるどんな物品にも適用することができるが、一般的にエラストマー性物品に向けられる。エラストマー性物品のフルオロカーボングラフトは、物品の滑り特性を改善するだけでなく、物品の酸化工程に対する抵抗を改善し、これにより物品の貯蔵寿命を改善することができる。
【0017】
表面に不飽和ポリマー性マトリックスを含むどんなエラストマー性物品も、本発明により形成することができる。例えば、本発明の手袋は、天然又は合成ラテックス、或いは溶解性エラストマー性ポリマーで達成することが望ましい。例えば、本発明の手袋は、天然ゴム、ニトリルゴム、ポリウレタン、複合ジエンのホモポリマー、少なくとも2つの複合ジエンのコポリマー、少なくとも1つの複合ジエンと少なくとも1つのビニルモノマーのコポリマー、又はこれらの他の適当な組み合わせで形成することができる。更に、ポリマー又はコポリマーの組み合わせは、物品の単一層内に、又は多層物品におけるもののような別個の層内に存在させることができる。このような実施形態において、不飽和ポリマー性マトリックスを必要とするであろう物品の層だけが、フルオロカーボンがグラフトされる物品の表面での層となる。
【0018】
一般的に、本発明のエラストマー性物品は、どんな適当な方法によっても形成することができる。例えば、エラストマー性手袋は、最終物品の形状のフォーマーを使用する一連の浸漬法によって形成することができる。図1は、本発明の手袋を形成するために使用できる、一連の手袋の型すなわちフォーマー52を示している。図1に示されるフォーマー52は、バッチ法作業において通常使用されるようなパレット上に示されているが、本発明の方法は、連続作業においても同様に利用できることを理解すべきである。フォーマー52は、一般的に、一連の被膜を施され、更に形成された物品を除去することができる、テクスチャー加工された又は滑らかな表面を持つ型の形状とすることができる。フォーマー52に適した使用され得る材料は、あらゆる適当な表面材料も含むことができる。例えば、フォーマー52の表面は、セラミック、陶器、ガラス、金属、又はフルオロカーボンで形成することができる。
【0019】
多くの用途において、フォーマーは、手袋を形成する前に洗浄する。洗浄工程は、一般的に、水による予洗洗浄に続く酸洗浄を含むことができる。酸洗浄の後、フォーマーは水で洗浄され、最後の水洗浄の前に加熱された苛性溶液に浸漬させることができる。洗浄工程の後、一連の浸漬及び乾燥段階を経て手袋がフォーマー上に形成される。
【0020】
図2は、フォーマー52上に形成された手袋50の1つの可能な実施形態を表している。1つの実施形態において、手袋50は、フォーマー52の一連の漬け込み又は浸漬を通して形成することができる。例えば1つの実施形態において、洗浄の後、フォーマー52は、フォーマー上の手袋の主体すなわち主体マトリックスの形成の前に、凝固組成物内に浸漬させることができる。この開示の目的のために、手袋の主体マトリックスは、手袋の主体と定義され、1つ又はそれより多いエラストマー性材料の層を含む。凝固剤は、手袋の主体マトリックスを形成するベースポリマーを凝固させるものである。本発明に使用することができる凝固剤組成物は、フォーマーから手袋を取り外し易くするために粉末剤を含むことができるか、或いは望まれるならば、無粉末剤を含むこともできる。1つの実施形態において、水溶性カルシウム塩、亜鉛、アルミニウム、及び同様のものを含む無粉末凝固組成物を使用することができる。例えば、1つの実施形態において、水またはアルコールにおけるカルシウム硝酸塩を、凝固組成物内に使用することができる。このような実施形態において、カルシウム硝酸塩は、約40重量%までの量で溶液に存在することができる。凝固組成物は、界面活性剤のような手袋の特性を改善する他の添加物も又、含むことができる。
【0021】
凝固組成物に浸漬された後、フォーマーは回収され、フォーマーの表面上に存在する凝固剤が乾燥される。多くの用途に対して、凝固剤は、約1分から約2分の間空気乾燥されることになる。乾燥されると、凝固剤の残留被膜がフォーマー上に残される。
【0022】
1つの実施形態において、凝固剤浸漬の後、フォーマーは、望ましいエラストマー性ポリマーのラテックス乳濁液に漬け込み又は浸漬させることができる。ラテックスは、本発明の目的のために、エラストマー性ポリマーが水で懸濁されたコロイドとして定義される。
【0023】
一般的に、本発明のラテックス乳濁液は、約50%より少ない乾燥ゴム成分(DRC)、又は代替的に、約50%より少ない総固形物成分(TSC)を持つことができる。1つの実施形態において、ラテックス乳濁液は、約25%より少ないDRC又はTSC含有量を持つことができる。ラテックス乳濁液は又、pH調整剤、安定剤、及び同様のものなどの、様々な添加物を含むことができる。
【0024】
ラテックスが凝固組成物と接触すると、凝固剤は、幾つかのラテックスを局所的に不安定にさせ、フォーマー表面上に凝固させることになる。凝固組成物内のどんな添加物も、それがどんなものであっても、フォーマーとラテックスフィルムの間に、フォーマー除去層のような層を形成することができるか、又は代替的にラテックスフィルムに組み込まれ、実質的に浸漬工程の間に除去されるようにすることができる。所望の時間が経過した後に、フォーマーはラテックス乳濁液から回収され、凝固層はフォーマー上に十分に癒着した状態となる。
【0025】
フォーマーが乳濁液に浸漬される時間(一般的に「滞留時間」と言われている)が、フィルムの厚さを決定する。フォーマーがラテックス内に滞留する時間が増加すると、フィルムの厚さが増加する。手袋本体を形成するフィルムの全体の厚さは、例えばラテックス乳濁液の固形物成分、及びラテックス乳濁液の添加物含有量、及び/又は凝固剤組成物などを含む他のパラメーターに依存するものである。
【0026】
フォーマーは、ラテックス乳濁液に浸漬された後、次いで加熱され、ポリマーが硬化される。
【0027】
本発明の1つの実施形態において、手袋の主体マトリックスが多層を含むように、第一層上に付加層を形成することができる。このような方法は、一般的に、重ね浸漬法と呼ばれる。1つの実施形態において、重ね浸漬法は、フォーマーを乳濁液又は望ましいポリマーの溶液に浸漬することにより達成することができる。主体マトリックスの付加層は、手袋のある特徴を高めることができる。例えば、手袋のベース層上の付加層は、本発明のフルオロカーボングラフトを形成するために必要な手袋表面上に、脂肪族炭素−炭素不飽和を付与するものである。
【0028】
概して、手袋上の1つ又はそれ以上の層を形成するあらゆる適当な技術を本発明の工程に含むことができる。1つ又はそれ以上の上層浸漬法が実施される実施形態においては、手袋の主体マトリックスの表面上に位置されることになる望ましいポリマーは、本発明のフルオロカーボングラフトを受け入れるために、不飽和ポリマー性マトリックスを含むべきである。
【0029】
本発明のエラストマー性物品は、凝固されたラテックス乳濁液から形成する必要はない。例えば、1つの実施形態において、本発明のエラストマー性物品は、ポリマーを適当な溶媒に溶解し、次いで乾燥させ、溶媒が溶液から蒸発するにしたがって、望ましい形状がフォーマー上に形成されるようにすることができる。例えば、当業者に一般的に知られているように、1つ又はそれより多い不飽和ブロックコポリマーは、トルエンのような溶媒に溶解し、次いで望ましいエラストマー性物品の形状でフォーマー上で乾燥させることができる。適したブロックコポリマーは、例えば、不飽和スチレン−イソプレン−スチレン(S−I−S)ブロックコポリマー、スチレン−ポリブタジエン−スチレン(S−B−S)ブロックコポリマー、スチレン−ブタジエン(S−B)ブロックコポリマー、及びこれらの混合物であり、これらは、手袋の主体マトリックスを形成することができる。
【0030】
1つの実施形態において、手袋の主体マトリックスは、1つ又はそれ以上のエラストマー性ポリマーの層から形成することができる。例えば、1つの実施形態において、手袋の主体マトリックスは、1つ又はそれ以上のスチレン−エチレンブチレン−スチレン(S−EB−S)ブロックコポリマーにより形成された内部層を含むことができる。この実施形態において、手袋の第一層は、一度形成されると、本発明のフルオロカーボングラフトに必要な不飽和ポリマー性マトリックスを含む手袋本体上に、エラストマー性材料の第二層を形成するために、上層浸漬法に曝されることとなる。例えば、1つ又はそれより多い不飽和ブロックコポリマーを含む上塗り被膜は、S−EB−S主体マトリックスの表面上に形成されることができる。上塗り被膜の不飽和ポリマー表面は、次に、本発明のグラフトを受け入れることができる。例えば、1つの実施形態において、1つ又はそれより多いS−I−Sブロックコポリマー、S−B−Sブロックコポリマー、S−Bブロックコポリマー、又はこれらの混合物は、S−EB−Sブロックコポリマー主体マトリックスを含む手袋上に上塗り被膜を形成することができる。
【0031】
物品の主体マトリックスが望ましい上層被膜にいずれかを含む形で形成された後、フルオロカーボングラフト工程が実行される。1つの実施形態において、フルオロカーボングラフトは、主体マトリックスが硬化される前に成されることができる。しかしながら、ポリマーがグラフトの前に硬化されても又は後に硬化されても、ポリマー基材にフルオロカーボンをグラフトする工程は同じことになるので、説明を簡単にする目的のために、以下の説明は、主体マトリックスの硬化に続いてフルオロカーボンがエラストマー性物品の表面にグラフトされる実施形態について一般的に行う。硬化又は加硫段階は、本発明のすべての実施形態に必ずしも必要ではないことが、当業者に認識されるであろう。
【0032】
1つの実施形態において、ポリマーは、本発明のグラフティングの前に、約100℃から約150℃の間の温度で硬化されることができる。一般的に、天然又は合成ゴムラテックスは、ポリマー鎖を架橋結合させるために、一般的に硫黄のような加硫剤で、高温反応により加硫されることができる。ラテックスを加硫することに加えて、高温処理は、例えば残留水のような、フォーマー上に残留しているあらゆる揮発性成分を蒸発させることができる。
【0033】
フルオロカーボングラフティング工程は、物品の表面の第一エポキシ化を含み、これはエポキシ基を適当なフルオロカーボンで反応させることにより遂行されるものである。本発明には必要ではないが、1つの実施形態においては、両方の段階を一つの工程で実行することができる。物品の表面をエポキシ化する前に、物品は最初に洗浄及び/又は浸漬される。1つの実施形態において、表面は、イソプロピルアルコールと結合されたベンゼン又はトルエンのいずれかを含む溶液で洗浄することができる。
【0034】
洗浄された後、エラストマー性物品の表面は、物品の表面をエポキシ化するために、適した反応温度で、適当なペルオキシ酸(すなわちペルオキシカルボキシル酸)に曝されることとなる。例えば、物品は、次のような一般的組成を持つペルオキシ酸に、約100℃より低い温度において曝すことができる。
【化1】

1つの実施形態において、物品は、約10℃から約40℃の間の温度でペルオキシ酸に曝されることができる。1つの実施形態において、物品は、周囲環境温度(すなわち約20℃)でペルオキシ酸に曝されることができる。
【0035】
手袋表面でペルオキシ酸が不飽和ポリマーマトリックスと反応した時、手袋の表面は、炭素−炭素二重結合部位においてエポキシ化されて、エポキシド基又はオキシラン基が生成されることとなる。
【化2】

【0036】
そこで、エラストマー性物品のエポキシ化された表面は、フルオロカーボングラフトを受け入れることができる状態になる。エラストマー性物品のエポキシ化された表面は、1つ又はそれより多いフッ素原子を持つ脂肪族、芳香族、又は脂環式化学基を含む溶液に表面を曝すことによってグラフトされることになる。
【0037】
1つの実施形態において、ペルオキシトリフルオロアセチック酸は、グラフティング媒体として使用することができる。これは、基材の表面をエポキシ化し、更にフッ素原子を提供するために同じ酸性溶液を使用することができるので、本発明の幾つかの実施形態においては望ましいと考えられる。したがって、エポキシ化及びグラフティングは、同一の酸性浴において、グラフトの形成を妨げられることなく効果的に形成されることになる。別の可能な実施形態において、エラストマー性物品は、トリフルオロアセチック酸及び過酸化水素を共に含む溶液に浸漬することができ、エポキシ化及びグラフティングは、妨げられることなく同一の浴で形成されることになる。例えば、約25重量%から約50重量%の間のトリフルオロアセチック酸及び約10重量%から約25重量%の間の過酸化水素を含む溶液を、エラストマー性物品の表面のフルオロカーボンをグラフトするために使用することができる。1つの実施形態において、溶液は、約30重量%から約40重量%の間のトリフルオロアセチック酸及び約15重量%から約20重量%の間の過酸化水素を含むことができる。
【0038】
グラフティング溶液は、水性とする必要はない。基材を減少させたり或いはフルオロカーボングラフティング剤と反応しないで、フルオロカーボングラフティング剤を溶解させることができるどんな適当な溶媒も使用することができる。例えば、1つの実施形態は、溶媒としてイソプロピルアルコールの使用を含む。
【0039】
グラフティング反応が行われるにしたがって、ヒドロキシエステルはジエステルへとエステル化され、更に以下に示すように、ジヒドロキシに加水分解されるようになる。
【化3】

【0040】
ジエステルは、加水分解されると不安定であるが、ヒドロキシエステルは加水分解されると高い安定性を示すことが見出された。これは、隣接ヒドロキシ基とエステル結合の間の分子間で起こる水素結合によるものと考えられる。1つの実施形態においては、フルオロカーボングラフトされた物品を、約pH8から約pH11に維持された水性溶液に置くという、更なる段階により、ジエステルが加水分解されて、安定したヒドロキシエステルに変化させることができる。1つの実施形態において、約pH9と約pH11の間に維持された水性溶液内に、フルオロカーボングラフトされた物品を置くことができる。例えば、物品は約pH9と約pH10の間のポタシウム水酸化物溶液内に置くことができる。この反応は室温で遂行され、アルカリ性溶液内での物質の滞留時間は、基材組成物及びグラフトの深さによるが、全体的に約1時間から約3時間の範囲内に入る。
【0041】
ペルオキシトリフルオロアセチック酸はグラフティング剤として(更にエポキシ化剤としても)効果的であることがわかっているが、フルオロカルボキシル酸以外の種々異なる試剤も、形成された基材のエポキシ化された表面上にフルオロカーボン基をグラフトするために使用されることができる。このような試剤は、例えば、フッ素含有アセタール、アセトアセテート、アセトニトリル、アセチレン、酸無水物、アミン(第一、第二、又は第三)、アジ化合物、シアン酸塩、ケトン、マロン酸塩、有機マグネシウム、ハロゲン化物、フェノール、気状燐火水素、及びフタルイミドを含む。
【0042】
これらの反応すべてが熱力学的に実現可能であることは明らかではあるが、反応条件及び溶媒は、選択される特定の基材及びグラフティング材料によって、種々異なるものとなるであろう。
【0043】
1つの実施形態において、グラフティング工程は、基材表面上の実質的にすべての反応部位(すなわち、すべての不飽和部位)が、フルオロカーボングラフトによって占められるまで続くことができる。形成された物品は、物品の本体に形成されたエラストマー性ポリマーの特性及びフルオロカーボングラフトの表面特性を共に持つことができる。天然ゴムラテックスのようなエラストマーから形成された物品の場合、該物品は本来の弾力性及び弾性を保持することができるが、その処理された表面は、乾燥時滑り特性及びフルオロカーボンの酸化に対する抵抗を持つものとなる。著しく増加した潤滑性及びオゾン抵抗に加えて、フルオロカーボングラフトは、エラストマー性フィルム又はシートの気体透過性を減少させ、極微小のピンホール及び割れ目が密なフルオロカーボングラフトによってシールされることを示す。また、フルオロカーボングラフトがない場合には基材の表面上に存在することになる反応部位が、フルオロカーボングラフトにより占められることになる範囲では、生体適合性が高められると考えられる。
【0044】
手袋表面がフルオロカーボンでグラフトされると、手袋は水洗浄などで洗浄され、本発明のシリコン潤滑剤の付与の前に乾燥させることができる。エラストマー性層の硬化の前にエラストマー性物品の表面上にフルオロカーボンがグラフトされると、ポリマーはグラフティング工程の後で、かつ、潤滑剤の付与の前に硬化させることができる。
【0045】
1つの実施形態において、手袋がまだフォーマー上にある間に手袋表面にシリコン潤滑剤を付与することができる。代替的に、手袋はシリコン潤滑剤が付与される前に外すことができる。
【0046】
一般的に、本発明の潤滑剤は、良好な湿潤滑り性特性を提供するシリコンベースの潤滑剤とすることができる。更に、本発明のシリコン潤滑剤は、有極官能性を示すものとすることができる。より特定的には、本発明の潤滑剤は、ポリマーの主鎖上の主要成分に有極官能性を示す変成シロキサン潤滑剤とすることができる。1つの実施形態において、シロキサン主鎖上の有極官能基は、アミノ成分とすることができる。いずれの特定の理論にも拘束されることを意図するものではないが、シロキサンポリマー上の有極官能基、例えばアミノ基は、手袋表面上のフルオロカーボンエステル結合に引き付けられると思われる。更に、強力な荷電引力が、フルオロエステル結合においてフルオロカーボンエステル結合とシロキサンポリマー上の有極基の間に生じ、シロキサン潤滑剤と主体マトリックスの表面の間に有極結合を生じさせ、シリコン潤滑剤が手袋内部に貫通することを妨げ、手袋の湿潤滑り性特性を改善するものと考えられる。
【0047】
このように、有極変成シロキサン潤滑剤及び手袋の主体マトリックスのフルオロカーボングラフトされたポリマーは、相互作用を示し、成分だけの使用、或いは他の被膜及び当業者に知られた潤滑剤を使用した成分のいずれかを使用して得られたものと比べて、エラストマー性物品の滑り特性、特定的には湿潤滑り性特性を改善する。
【0048】
1つの実施形態においては、変成シリコンはアミノ変成シリコンとすることができる。アミノ変成シリコンは、有機変成シリコンから形成することができる。有機変成ポリシロキサンコポリマー(すなわち有機変成シリコン)及びその形成方法は、当業者に一般的に知られている。このようなコポリマーは、ヒドロキシル基を含むことが多い。
【0049】
シリコンのアミノ変成は、有機変成ポリシロキサンのヒドロキシ基を、ハロゲン化物で最初に置換することによって形成されることができる。ハロゲン化物は、次に、ハロゲン化物をアミノ基で置換するために、アンモニア又はアミンと反応させることができる。この後者の方法は、ハロゲン化物の加安分解と呼ばれている。代替的に、アミノ変成ポリシロキサン(すなわちアミノ変成シリコン)は、Piskoti他の米国特許第3,905,823号により形成することができ、この特許は、適切な部分のすべてについて、ここに引用により組み入れる。Piskotiによると、アミノ変成ポリシロキサンは、有機変成シロキサンとアミノ官能性シラン又はシロキサンとの混合により形成され、その後、例えばアルカリ金属水酸化物、アルコサイド、水素化物、アルキル、アルケニル、及びアリル、更にシラノエートなどのベース触媒が存在する中で混合物が平衡状態に置かれる。
【0050】
1つの実施形態において、Dow Corning Corporationにより販売されている、DC8600と表示された軟化剤にみられるような、アミノ変成ポリシロキサンを使用することができる。1つの実施形態においては、変成シリコンポリマーは、約0.05重量%から約5重量%の間の変成シロキサンを含む水性化合物のような、溶液又は乳濁液の形状で本発明において使用することができる。
【0051】
1つの実施形態において、エラストマー性物品の湿潤滑り性特性は、手袋表面に適当な潤滑剤を更に付与することで、一層改善することができる。例えば、1つ又はそれより多いアルコール分子量(すなわち脂肪酸アルコール)を含む潤滑剤を使用することができる。1つの実施形態において、ヘキサデカノル及びオクタデカノルを含み、更にGoleschmidt Chemical Corporationより入手可能なVarisoft(登録商標)BTMSの商標名で販売されている潤滑剤を使用することができる。
【0052】
本特許の目的のために、少なくとも10個の炭素直鎖を含むアルコールとして定義される脂肪酸アルコールは、本発明の手袋の滑り特性にとって有益であると考えられており、これは、脂肪酸アルコールが、エラストマー性ポリマーのフルオロカーボングラフトのエステル結合と弱い結合を形成することができる、僅かに極性をもつヒドロキシル部分を含むからである。しかしながら、これらはヒドロキシルに加えて、長い炭水化物の末端基を含む。前述したように、シリコンポリマーは、フルオロエステル結合で手袋の表面に結合されることになる。フルオロエステル結合と脂肪酸アルコールの間の付加的な弱い結合は、シリコンポリマーと脂肪酸アルコールとを近い位置に置き、脂肪酸アルコールの長い炭水化物末端基とシリコンポリマーの間に物理的交絡を形成することになる。これは更に、シリコンポリマーと潤滑剤の両方の動きを制限することになり、これら両者を一層表面領域に制限し、更に手袋の湿潤時着用特性を高める。
【0053】
脂肪酸アルコールのような長鎖潤滑剤は、あらゆる適当な方法によって手袋表面に付与することができる。例えば、シロキサン潤滑剤の付与の後、手袋は望ましい脂肪酸アルコールを含む溶液に浸漬することができる。代替的に、物品がフォーマーから剥離される前、或いは後のいずれかの時に、溶液を表面上にスプレー又は印刷することができる。1つの可能な実施形態において、脂肪酸アルコールは、変成シロキサンを含む溶液に含ませることができる。例えば、1つの実施形態において、手袋は、約0.05重量%から約5重量%の間のアミノ変成シリコンポリマー及び約0.02重量%から約5重量%の間の脂肪酸アルコールを含む溶液に浸漬することができる。1つの実施形態において、手袋は、約0.1重量%から約1重量%の間のアミノ変成シリコンポリマー及び約0.1重量%から約1重量%の間の1つ又はそれより多い脂肪酸アルコールを含む溶液又は乳濁液に浸漬することができる。
【0054】
当業者に一般的に知られている他の望ましい成分も、溶液に含ませることができる。例えば、手袋の特性を更に高めるために、シロキサンポリエーテルを溶液に含ませることができる。本発明は、多数の組み合わせの付与方法を考慮している。
【0055】
エラストマー性基材のフルオロカーボングラフトされた表面にシリコン潤滑剤を付与する特定の方法は、その方法の特徴に依存する。例えば、成形用型を、基材の性質に応じて、エラストマー性ポリマーラテックスに浸漬するか、又は溶媒中のエラストマー性ポリマー溶液に浸漬するか、或いは同様の方法により物品を形成するように工程を変更することも考慮されている。本発明の物品のエラストマー性基材を形成する方法は、当業者によく知られている。
【0056】
例えば、主体マトリックスが調合された天然ゴムラテックスから形成される場合には、フォーマー上のラテックスは、ビードされ更に通常の方法で晒し、次に乾燥及び加硫を行い、その後で、物品の表面上にフルオロカーボングラフトを行うことができる。しかしながら前述したように、グラフトは、主体マトリックスが硬化される前又は後のいずれでも実行することができる。1つの実施形態においては、シリコン潤滑剤は、グラフトされた物品を、シロキサン潤滑剤と1又はそれ以上の脂肪酸アルコールの両方を含む水性溶液内に浸漬することにより付与することができる。代替的実施形態において、手袋がフォーマーから剥離された後、手袋はシリコン潤滑剤と接触させることができる。シリコン潤滑剤の付与の後、及び、更に望まれるならば1つ又はそれより多い脂肪酸アルコールの付与のような他の処理の後、手袋は、当業者に知られた回転式乾燥などの方法で、最終的に乾燥させることができる。
【0057】
図4は、本発明の可能な実施形態のフロー図である。一般的に、この方法は、洗浄段階で始まり、ここでは、図1で示すように、フォーマー52は、該フォーマー上に手袋を形成する前に洗浄される。任意であるが、少なくとも部分的には手袋の主体マトリックスを形成することになるエラストマーに応じて、フォーマーは凝固組成物により被膜することができる。フォーマーが準備されると、手袋の主体マトリックスは、望ましいエラストマー性ポリマー組成物の中に1つ又はそれより多い浸漬被膜によって形成することができる。手袋の主体マトリックスが形成された後、続いて主体マトリックスを硬化させ、主体マトリックスの表面をベンゼン(又はトルエン)及びイソプロピルアルコール溶液で洗浄し、更に望ましいフルオロカーボン成分を主体マトリックスにグラフティングする。代替的に、フルオロカーボングラフティング工法は、主体マトリックスの表面を洗浄した後で、硬化工程の前に実行されるものとする。望ましいフルオロカーボン成分が物品にグラフトされた後、物品はしばらくの間アルカリ性浴内に置かれ、フルオロカーボンジエステルを、加水分解により安定したヒドロキシエステルに変化させる。適当なアルカリ性浴の後、本発明の変成シリコンを含む潤滑剤は、フォーマーから手袋を剥離する前又は後のいずれかに、手袋の表面に付与することができる。
【0058】
1つの実施形態において、本発明のエラストマー性物品は、同様の方法によって形成されることができる。例えば、当業者は容易に認識できるように、ポリウレタン及びニトリルラテックス乳濁液などのような、例えばラテックスのようにポリマーが分散した形状で形成されたエラストマー性物品、又同様に溶解したポリマーで形成された物品は、上記した方法と同様に処理することができ、加硫段階はあらゆる場合に必要とされるものではない。
【0059】
図3は、本発明によって形成された物品の1つの実施形態の一部分の横断面図である。この特定の実施形態において、手袋の主体マトリックス30は、単一層の主体マトリックスである。フルオロカーボングラフト34は、主体マトリックスの表面にあり、シリコン潤滑剤32は、フルオロカーボングラフトを含む主体マトリックスの表面に付与される。
【0060】
主体マトリックス30の表面のフルオロカーボングラフト34と、シリコン潤滑剤32の間に形成される相互作用によって、本発明の例えば手袋のような物品は、ハロゲン化処理、すなわち塩素化を必要とせずに、湿潤時及び乾燥時の両方の滑り特性を含む良好な滑り特性を持つことができる。更に、手袋の主体マトリックス層の形成の前に、フォーマーにどんな粉末剤も付与されないような実施形態において、製造された手袋は、どんな粉末剤除去処理も必要としない無粉末手袋とすることができ、これは幾つかの用途において好まれるものである。
【0061】
本発明は、本発明の説明として提供され、本発明を限定するものではない次の実施例を参照することにより一層よく理解することができる。事実、様々な修正及び変更を、本発明の範囲又は精神から外れることなく本発明に対して行い得ることは、業者には明らかである。
【実施例1】
【0062】
天然ラテックス手袋が、フォーマー形状の手袋上に炭酸カルシウムを含む凝固剤を浸漬被膜することによって形成された。凝固剤がフォーマー上に形成された後、浸漬被膜によって、天然ラテックス層が凝固剤を覆うように形成された。次に、天然ラテックス物品が浸漬され、ラテックスが硬化/加硫され、フォーマー上に天然ラテックス手袋が形成された。
【0063】
手袋がまだフォーマー上にある間に、1,200グラムのトリフルオロアセチック酸及び2,000グラムの30%過酸化水素を含む水性溶液に液浸された。
【0064】
手袋は溶液から除去され、水で洗浄され、pH9.5のポタシウム水酸化物/水溶液に2時間置かれた。この後、手袋は水で洗浄され、乾燥された。
【0065】
手袋の1つは、次いで次のような潤滑剤組成物に液浸された。
Varisoft(登録商標)BTMSが0.5%(Goldschmidt Chemical Corporationよりえられる2つのアルコールを混合したBTMS)
DC8600が0.45%(Dow Corning Corporationより入手可能なアミノ変成シロキサン、脂肪酸アルコール及びポリエーテルシロキサン)
水が99.05%
【0066】
手袋は、次にフォーマーから剥離され、回転乾燥された。
【0067】
別に準備された手袋が、General Electric Corporationから入手可能な、ポリマー主鎖上にメチル基を含む、異なるシロキサン潤滑剤であるSM2140の潤滑剤組成物に浸漬された。浸漬の後、この手袋はフォーマーから剥離され回転乾燥された。
【0068】
2つの手袋の湿潤時着用性が、訓練された評価判定者によって比較された。
【0069】
SM2140で被膜された手袋は、湿潤した手でも着用可能であったが、かなり困難であった。手袋は湿潤時着用性について、以下の表1に示される主観的ランク付けスケール1−5によって、3.5のランク付けが与えられた。
表1

【0070】
上記した組成物以外の他の組成物で被膜された手袋は、湿潤した手で十分に着用することができ、4+の着用性ランク付けが与えられた。
【0071】
フルオロカーボングラフト、アミノ官能性シロキサン、及び脂肪酸アルコール界面活性剤は、手袋に、改善された湿潤滑り性特性だけでなく、良好な乾燥時滑り特性及び改善された酸化防止性を与えた。更に、本発明の方法によって準備された手袋は、当業者に一般的に知られている他の手袋と比較して、白い外観を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の一実施形態において使用することができる手袋形状のフォーマーの図である。
【図2】本発明による手袋の正面図である。
【図3】本発明の一実施形態によるエラストマー性物品の拡大横断面図である。
【図4】本発明の工程の一実施形態の循環図である。
【符号の説明】
【0073】
30 主体マトリックス
32 潤滑剤
34 グラフト
50 手袋
52 フォーマー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマー性物品であって、
第一表面にエラストマー性ポリマーを含む主体マトリックスと、
前記第一表面にグラフトされたフルオロカーボン成分と、
前記第一表面に付与されたシリコン潤滑剤と、
を含み、
前記フルオロカーボン成分は、エステル結合を介して前記エラストマー性ポリマーとグラフトされており、
前記シリコン潤滑剤は、有極官能性を示す変成シリコンを含む、
ことを特徴とする物品。
【請求項2】
更に、前記第一表面に付与された長鎖アルコールを有することを特徴とする請求項1に記載のエラストマー性物品。
【請求項3】
前記アルコールは、ヘキサデカノル、オクタデカノル、及びこれらの混合物から成るグループから選択されることを特徴とする請求項2に記載のエラストマー性物品。
【請求項4】
前記エラストマー性ポリマーは、天然又は合成ゴムであることを特徴とする請求項1に記載のエラストマー性物品。
【請求項5】
前記エラストマー性ポリマーは、ブロックコポリマーであることを特徴とする請求項1に記載のエラストマー性物品。
【請求項6】
前記ブロックコポリマーは、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−ポリブタジエン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−ブタジエンブロックコポリマー、及びこれらの混合物から成るグループから選択されることを特徴とする請求項5に記載のエラストマー性物品。
【請求項7】
前記主体マトリックスは、エラストマー性ポリマーを含む内部層及び第二エラストマー性ポリマーを含む外部層から成り、前記外部層は、前記主体マトリックスの第一表面を含むことを特徴とする請求項1に記載のエラストマー性物品。
【請求項8】
前記内部層は、スチレン−エチレンブチレン−スチレンブロックコポリマーを含むことを特徴とする請求項7に記載のエラストマー性物品。
【請求項9】
更に、前記エラストマー性ポリマーにヒドロキシ成分側鎖を含み、単一ヒドロキシ成分及び単一フルオロカルボン成分は、エラストマー性ポリマー上の後続炭素原子に側鎖であることを特徴とする請求項1に記載のエラストマー性物品。
【請求項10】
前記シリコンは、アミノ変成されたものであることを特徴とする請求項1に記載のエラストマー性物品。
【請求項11】
前記フルオロカルボン成分は、前記シリコンに結合されたことを特徴とする請求項1に記載のエラストマー性物品。
【請求項12】
前記エラストマー性物品は、手袋であることを特徴とする請求項1に記載のエラストマー性物品。
【請求項13】
前記手袋の着用側は、前記第一表面であることを特徴とする請求項12に記載のエラストマー性物品。
【請求項14】
前記手袋は、無粉末手袋であることを特徴とする請求項12に記載のエラストマー性物品。
【請求項15】
エラストマー性手袋であって、
着用側である前記第一表面にエラストマー性ポリマーを含む主体マトリックスと、
エステル結合で前記エラストマー性ポリマーにグラフトされたフルオロカーボン成分と、
前記着用側に付与されたシリコン潤滑剤とを含み、前記シリコン潤滑剤は、アミノ変成シリコンを含むことを特徴とする手袋。
【請求項16】
更に、前記着用側に付与された長鎖アルコールを有することを特徴とする請求項15に記載のエラストマー性手袋。
【請求項17】
前記アルコールは、ヘキサデカノル、オクタデカノル、及びこれらの混合物から成るグループから選択されることを特徴とする請求項16に記載のエラストマー性手袋。
【請求項18】
更に、前記エラストマー性ポリマーに対する側鎖となったヒドロキシ成分を含み、単一ヒドロキシ成分及び単一フルオロカーボン成分は、前記エラストマー性ポリマー上で後続の炭素原子に対し側鎖となったことを特徴とする請求項15に記載のエラストマー性手袋。
【請求項19】
前記エラストマー性ポリマーは、天然又は合成ゴムであることを特徴とする請求項15に記載のエラストマー性手袋。
【請求項20】
前記エラストマー性ポリマーは、ブロックコポリマーであることを特徴とする請求項15に記載のエラストマー性手袋。
【請求項21】
前記ブロックコポリマーは、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−ポリブタジエン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−ブタジエンブロックコポリマー、及びこれらの混合物から成るグループから選択されることを特徴とする請求項20に記載のエラストマー性手袋。
【請求項22】
前記主体マトリックスは、エラストマー性ポリマーの内部層及びエラストマー性ポリマーの外部層から成り、前記外部層は前記主体マトリックスの第一表面であることを特徴とする請求項15に記載のエラストマー性手袋。
【請求項23】
前記内部層は、スチレン−エチレンブチレン−スチレンブロックコポリマーを含むことを特徴とする請求項22に記載のエラストマー性手袋。
【請求項24】
前記手袋は、無粉末手袋であることを特徴とする請求項15に記載のエラストマー性物品。
【請求項25】
エラストマー性物品を形成する方法であって、
第一表面に位置した不飽和エラストマー性ポリマーを含む主体マトリックスをフォーマー上に形成し、
エステル結合で、フルオロカーボン成分を前記エラストマー性ポリマーにグラフトし、
有極官能性を表す変成シリコンを、前記第一表面に付与し、これにより前記物品を形成し、
前記フォーマーから前記物品を剥離する、
ことを特徴とする方法。
【請求項26】
更に、前記フォーマー上で前記エラストマー性ポリマーを硬化することを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記エラストマー性ポリマーは、フルオロカーボンを前記エラストマー性ポリマーにグラフトする前に硬化されることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記エラストマー性ポリマーは、フルオロカーボンを前記エラストマー性ポリマーにグラフトした後に硬化されることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記物品は、前記変成シリコンを付与する前に前記フォーマーから剥離されることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記物品は、前記変成シリコンを付与した後に前記フォーマーから剥離されることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項31】
更に、前記第一表面に長鎖アルコールを付与することを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項32】
約5重量%より小さい前記長鎖アルコールの溶液を付与することを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項33】
更に、約0.05重量%から約5重量%の間の前記変成シリコンの溶液を付与することを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項34】
前記エラストマー性物品は、手袋であることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項35】
前記手袋の前記着用側は、前記第一表面であることを特徴とする請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記変成シリコンは、アミノ変成であることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項37】
更に、前記エラストマー性ポリマーにフルオロカーボン成分をグラフトした後、前記フォーマー上の前記主体マトリックスを、約pH8から約pH11の間の水性溶液に、約1時間から約3時間の間液浸することを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項38】
前記エラストマー性ポリマーは、天然又は合成ゴムであることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項39】
前記エラストマー性ポリマーは、ブロックコポリマーであることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項40】
前記主体マトリックスは、内部層及び外部層を含み、前記内部層はスチレン−エチレンブチレン−スチレンブロックコポリマーを含み、前記外部層は不飽和エラストマー性ポリマーを含むことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項41】
エラストマー性手袋であって、
着用側である第一表面にエラストマー性ポリマーを含む主体マトリックスと、
エステル結合で前記エラストマー性ポリマーにグラフトされたフルオロカーボン成分と、
シリコン及び長鎖アルコールを含み、前記着用側に付与された潤滑性組成物と、
を含むことを特徴とする手袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−511637(P2006−511637A)
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−560285(P2004−560285)
【出願日】平成15年8月22日(2003.8.22)
【国際出願番号】PCT/US2003/026341
【国際公開番号】WO2004/054634
【国際公開日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(504460441)キンバリー クラーク ワールドワイド インコーポレイテッド (396)
【Fターム(参考)】