説明

改良されたシールド発電機

【課題】
本発明は、固定子3と軸5に連結されている回転子4とを有する改良されたシールド発電機1に関する。前記軸5は、励磁機8から回転子の磁場巻線9に電力を運ぶリード10を収容するダクトを備え、このダクトは、ケーシング2の内側に含まれているガスが前記励磁機8に達するのを阻止する。
【解決手段】
前記密閉ユニットは、シール20,21に漏れるガスがチャンバ22に入るように互いの間に前記チャンバ22を形成する第1シール20及び第2シール21を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良されたシールド発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
図1及び2によれば、シールド発電機1は、固定子3と回転可能な回転子4とを収納するケーシング2から構成される。
【0003】
回転子4は、軸受6によって支持されている軸5を有する。密閉リング7は、(大抵はHを含む)ケーシング2の内部を外側の環境に対して密閉するために設けられている。
【0004】
発電機1は、回転子の巻線9に供給すべき直流電力を生成する励磁機8を有することも知られている。
【0005】
励磁機8は、通常はケーシング2の外側に固定されている。直流電力を回転子の巻線9に供給するため、軸5は、ダクトを備える。この場合、リード10が収容されている。
【0006】
リード10は、その一方の側が励磁機8に接続されていて、その他方の側が回転子の巻線9に接続されている。
【0007】
さらに、ケーシング2の内部11がHで満たされているので、Hが励磁機8に達するのを阻止するため、シールを設ける必要がある。何故なら、空気と混合された時のHが、爆発性の混合物を生成し、当該混合物が、(励磁機によって引き起こされる)火花の存在中に爆発するかもしれないからである。
【0008】
特に図1は、発電機の第1の型式を示す。この第1の型式では、励磁機8が、軸5に連結されているスリップリング軸5a上に設けられているスリップリング12に電力を供給する。
【0009】
この実施の形態で示されているように、ダクト及びリード10が、軸5及びスリップリング軸5a内に延在する。
【0010】
スリップリング12が、(ダクトに連結されているラジアル孔内に挿入された)ラジアルロッド13を介してリード10に連結されている。このとき、リード10が、(ダクトに連結されたラジアル孔内にも挿入されている)ラジアル脚14を介して回転子の巻線9に接続されている。
【0011】
これらの発電機では、当該シールは、一般にはラジアル孔と対応するラジアル脚14との間の位置Aに設置されている。さらに(冗長性の理由のために)、さらなるシールが、ラジアル孔と対応するラジアルロッド13との間の位置Bに提供されている。
【0012】
それにもかかわらず、この構成は、リード10がHによって冷却されるのを阻止する(密閉は、リード10の上流にある)。
【0013】
さらに、収容されているラジアル孔及び脚14の大きい直径に起因して、位置A内の密閉を実現することは困難である。
【0014】
さらに、位置Aと位置Bとの間のダクトの全体を加圧する必要があるので、試験ガスの消耗及び実際の困難性を引き起こす、シールの特性を確認するための試験操作を実施することは困難である。
【0015】
この代わりに、シールは、(発電機の軸5とスリップリング軸5aとの間の)ダクトとリード10との間の位置Cに取り付けられている。またこの場合では、さらなるシールが、(冗長性の理由のために)ラジアル孔と対応するラジアルロッド13との間の位置Bに提供されている。
【0016】
それにもかかわらず、この場合でも、位置Aは閉鎖される必要があり、位置Aと位置Bとの間のダクトは密閉される必要がある(位置Cと位置Bとの間の試験操作は適さない)ので、試験操作を実施することは非常に困難である。
【0017】
図2は、さらなる発電機の型式を示す。この発電機の型式では、発電機の軸5が、固定子16を取り囲む励磁機8の回転子15に連結されている。
【0018】
この場合、Hによってリード10の全体を冷却することが可能であるように、一般にシールは、位置Dに提供されている。さらに、製造中の特性試験も非常に簡単な方法で実施され得る。
【0019】
それにもかかわらず、位置Dは、回転子15の内側からアクセスできるだけなので、例えば発電機の供給停止中に実施すべきさらなる特性試験は不可能である。
【0020】
上記の欠点に加えて、(図1の発電機に対しては)場合によっては位置A又はC及び位置B内のシールが、漏れを引き起こすか、又は、(図2の発電機に対しては)場合によってはシールDが漏れを引き起こすので、両発電機の型式は安全性の問題を有しうる。Hが検出される前に、Hが、励磁機8(又は励磁機8のスリップリング12)に達することになる。このことは、非常に危険な状況を引き起こすことになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の技術的な課題は、公知の技術の上記問題が除去される改良されたシールド発電機を提供することにある。
【0022】
この技術的な課題の範囲内では、本発明の特徴は、密閉が信頼できるシールによって簡単に実現され得る発電機を提供することにある。
【0023】
本発明のさらなる特徴は、試験操作が製造中だけではなくて発電機の短い供給停止中にも簡単に且つ速く実施され得る発電機を提供することにある。
【0024】
が、励磁機に予測不能に達し得るので、本発明のさらなる特徴は、非常に安全な操作を有する発電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
これらの特徴及びさらなる特徴を一緒に有する本発明の技術的な課題は、本発明により、添付されている特許請求の範囲による改良されたシールド発電機を提供することによって達成される。
【0026】
有益的には、直流電力を励磁機から回転子の巻線に供給するリードは、Hによって冷却され得る。
【0027】
本発明のさらなる特徴及び利点は、添付されている図面中の限定されていない例によって示された本発明の発電機の好適であるものの非排他的な実施の形態の説明からより明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】発電機の異なる2つの型式を示す。
【図2】発電機の異なる2つの型式を示す。
【図3】図1のそれぞれの発電機で使用される本発明の実施の形態におけるシールを示す。
【図4】図2のそれぞれの発電機で使用される本発明の実施の形態におけるシールを示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下では、同等の参照番号は、既に説明した同等の要素を示す。
【0030】
改良されたシールド発電機1は、軸5を構成する固定子3及び回転子4を収容するケーシング2を有する。
【0031】
軸5は、直流励磁機8から回転子の磁場巻線9に電力を運ぶリード10を収容するダクトを備える。
【0032】
リード10は、互いに絶縁されて且つ各々が直流励磁機8の極に接続されている2つの(一般に銅製の)導電棒から作られる。
【0033】
ダクトは、ケーシング2の内側11に含まれているガスが励磁機8に達するのを阻止するための1つ以上の密閉ユニットを有する。
【0034】
各密閉ユニットは、互いに隣接する2つ以上のシールを有する。特に各密閉ユニットは、シール20に漏れるガスがチャンバ22に入るように互いの間にチャンバ22を形成する第1シール20及び第2シール21を有する。つまり、起こりうる漏れが、シール20,21を通り抜けない。
【0035】
さらに、軸5は、チャンバ22を外部に連結する孔部23を有する。これらの孔部23は、好ましくは半径方向を向いている。
【0036】
有益的には、ケーシング2の内側に含まれている一般にHであるガスを検出するためのセンサ24が、孔部23の排出口の近くの領域内に提供されている。このセンサ24は、漏れが発生した時にHが励磁機8(又はスリップリング12)に達する前にHを検出することを可能にする。
【0037】
チャンバ22が、シール20とシール21とダクト壁25との間を形成するように、2つのシール20,21が、ダクトの大きくした一部分内に間隔をあけて配置されている。2つのシール20,21が互いに隣接している場合は当然に、リード10もチャンバ22の形成に寄与する。
【0038】
有益的には、シール20,21は、軸5の末端部分に収容されている。当該末端部分には、ダクトの大きくした一部分が形成されている。
【0039】
特に、ダクトの大きくした一部分は、少なくとも2つの異なる直径を有する。シール20及び21を収容するための各直径は、当該直径内へのシール20,21の簡単で且つ速い挿入を可能にする。
【0040】
好ましくは、図中に示されたように、当該ダクトの大きくした一部分は、3つの異なる直径を有する。
【0041】
図3は、スリップリング軸5aに連結されるべき軸5を有する本発明の実施の形態を示す。スリップリング12が、スリップリング軸5a上に提供されている(図1)。
【0042】
したがって、この実施の形態では、ダクトの大きくした一部分が、位置Cに提供されていて、スリップリング軸5aによって閉鎖されている(図1)。
【0043】
当該ダクトは、軸方向に沿った部分を有する。リード10及びラジアル孔が、当該部分内に収容されている。回転子の磁場巻線9に接続されているラジアル脚14が、当該ラジアル孔内に収容されている。これらの要素は、軸5内に形成されている。
【0044】
さらに、ダクトの一部も、スリップリング軸5a内に延在する。このスリップリング軸5a内には、さらなるラジアル孔が、スリップリング12に連結されているロッド13を収容するために提供されている。
【0045】
図4は、固定子16を取り囲んでいるシリンダ状の回転子15を有する励磁機8に接続されている軸5を有する第1の実施の形態を示す。
【0046】
この実施の形態では、大きくしたダクトの一部が、好ましくは位置D内に形成されている。リード10が、励磁機8に電気接続させる二三のフレキシブル板26に連結されている(図4)。
【0047】
当然に、本発明のこの実施の形態でも、ダクトが、軸方向に沿った部分を有する。リード10及びラジアル孔が、当該部分内に収容されている。ラジアル脚14が、当該ラジアル孔内に収容されている。一方で、さらなるラジアル孔及びロッドは提供されていなく、リード10が、励磁機の回転子15に直接連結されている。
【0048】
示された両実施の形態では、2つのシール20,21が、同じ特徴を有する。特に各シールは、リード10に連結されている一部分28とダクト壁25に連結されている一部分28とを有する。Oリング29が、これらの2つの一部分27,28間に提供されている。さらに、さらなるOリング30が、一部分28と軸5との間に提供されている。
【0049】
好ましくは、簡単な組み立てのために、シール20の一部分27の外径に対応する一部分28の内径が、シール21の一部分27の外径に対応する一部分28の内径より大きい。
【0050】
有益的には、リード10及び軸5の自由な熱膨張を許容するため、これらのシール20,21は、リード10と回転子5との互いの自由な運動を可能にする。
【0051】
本発明の発電機の操作は、説明され図示されたものから明らかであり、以下で詳しく説明する。
【0052】
シール20及び21が配置されている大きくしたダクト壁25の2つ又は好ましくは3つの異なる直径に起因して、製造の組み立てが速くて簡単である。
【0053】
当該シールは、位置C(図1及び3の実施の形態)又は位置D(図2及び4の実施の形態)に設置されている。このことは、リード10が水素で冷却されることを可能にする。
【0054】
が、第1シール20を通過するように、漏れが発生する場合に、Hが、励磁機8(又はスリップリング12のような励磁機8の要素)に達することなしにチャンバ22に入るので、操作は非常に安全である。さらに、Hは、チャンバ22から孔部23を通過してセンサ24に達する。
【0055】
このことは、安全措置があらゆるリスクを回避し且つ発電機を安全で信頼性のある方法で操作することを可能にするように、Hの漏れが非常に早い段階で検出されるのを可能にする。
【0056】
さらに、Hは、孔部23を通過しないので、Hは、第2シール21も通り抜ける危険を伴うチャンバ22内に(高圧で)滞留しない。
【0057】
さらに、シールの特性試験も、製造中だけではなくて、発電機の短い供給停止中にも非常に簡単な方法で実施され得る。実際には、シール特性試験を実施するためには、孔部23が閉鎖されるだけで済む。これらの孔部の小さい直径に起因して、当該閉鎖は、簡単な操作である。このとき、チャンバ22が、(例えば、孔部23のうちの1つを通じて)加圧される必要がある。次いで、シール20,21の特性が、従来の方法で検査される。
【0058】
加圧されるべき容積が制限されるため、既に説明した利点に加えて、この方法で試験を実施することは非常に安価で且つ速い。
【0059】
当然に、説明したこれらの特徴は、互いに独立して提供されてもよい。
【0060】
実際には、使用される材料及び寸法は、要求及び従来の技術に応じて任意に選択され得る。
【符号の説明】
【0061】
1 発電機
2 ケーシング
3 固定子
4 回転子
5 軸
5a スリップリング軸
6 軸受
7 密閉リング
8 励磁機
9 巻線
10 リード
11 ケーシングの内部
12 スリップリング
13 ロッド
14 ラジアル脚
15 励磁機の回転子
16 励磁機の固定子
20,21 シール
22 チャンバ
23 孔部
24 センサ
25 ダクト壁
26 フレキシブル板
27、28 シールの一部分
29、30 Oリング
A,B,C,D 従来のシールが固定されている位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子(3)と軸(5)に連結されている回転子(4)とを有する改良されたシールド発電機(1)であって、前記軸(5)は、励磁機(8)から回転子の磁場巻線(9)に電力を運ぶリード(10)を収容するダクトを備え、このダクトは、ケーシング(2)の内側に含まれているガスが前記励磁機(8)に達するのを阻止する発電機において、
前記密閉ユニットは、シール(20,21)に漏れるガスがチャンバ(22)に入るように互いの間に前記チャンバ(22)を形成する第1シール(20)及び第2シール(21)を有することを特徴とする発電機(1)。
【請求項2】
前記回転子(4)は、前記チャンバ(22)を外部につなげる少なくとも1つの孔部(23)を有することを特徴とする請求項1に記載の発電機(1)。
【請求項3】
前記孔部(23)は、半径方向を向いている請求項2に記載の発電機(1)。
【請求項4】
ガスが、ケーシング(2)から排出する時に、前記孔部(23)の排出口の領域内で当該ガスを検出するためのセンサ(24)を特徴とする請求項3に記載の発電機(1)。
【請求項5】
前記チャンバ(22)が、前記シール(20)と前記シール(21)とダクト壁(25)との間を形成するように、前記シール(20,21)が、ダクトの大きくした一部分内に間隔をあけて配置されていることを特徴とする請求項1に記載の発電機(1)。
【請求項6】
前記ダクトの大きくした一部分は、前記軸(5)の末端部分に形成されていることを特徴とする請求項5に記載の発電機(1)。
【請求項7】
前記ダクトの大きくした一部分は、少なくとも2つの異なる直径を有し、各直径は、1つのシール(20,21)を収容することを特徴とする請求項6に記載の発電機(1)。
【請求項8】
前記ダクトの大きくした一部分は、隣接したスリップリング軸(5a)によって閉鎖されることを特徴とする請求項6に記載の発電機(1)。
【請求項9】
フレキシブル板(26)が、前記リード(10)に連結されていることを特徴とする請求項6に記載の発電機(1)。
【請求項10】
前記ダクトは、軸線に沿った部分とラジアル孔とを有し、前記軸線に沿った部分は、前記リード(10)を収容し、前記ラジアル孔は、前記回転子の磁場巻線(9)に接続されているラジアル脚(14)を収容することを特徴とする請求項1に記載の発電機(1)。
【請求項11】
前記ダクトの一部が、前記スリップリング軸(5a)内に延在し、前記スリップリング(12)に連結されているロッド(13)を収容するさらなるラジアル孔が、前記スリップリング軸(5a)内に提供されていることを特徴とする請求項10に記載の発電機(1)。
【請求項12】
各シール(20,21)は、前記リード(10)に連結されている一部分(27)とダクト壁(25)に連結されている一部分(28)とを有し、Oリング(29)が、これらの2つの一部分(27,28)間に提供されていることを特徴とする請求項1に記載の発電機(1)。
【請求項13】
さらなるOリング(30)が、前記ダクト壁(25)に連結されている前記シール(20,21)の一部分28と前記軸(25)との間に提供されていることを特徴とする請求項12に記載の発電機(1)。
【請求項14】
各密閉ユニットは、互いに隣接する2つ以上のシール(20,21)を有することを特徴とする請求項1に記載の発電機(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−142808(P2011−142808A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−289411(P2010−289411)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5401 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】