説明

改良された光学反射エンコーダ

【課題】迷光/ノイズ問題に対処する反射型エンコーダを提供する。
【解決手段】光学エンコーダ及び光学エンコーダシステムであって、光源208に対して光検出器212を上方に配置し、光源208と光検出器212との相対的な高さの差により、反射迷光232の影響を阻止し、光学エンコーダ204が、光源208と光検出器212との間に別個の光バッフルを必要とすることなく、光検出器212におけるノイズを最小限にすることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にエンコーダに関し、特に光学エンコーダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンコーダは、モータ制御システムに閉ループフィードバックを提供する運動検出器である。典型的な光学エンコーダ設計は、発光器/検出器モジュールを含み、該モジュールは、透過式、反射式、又は撮像式の構成で設計することが可能である。コードホイール又はコードストリップに関連して動作する場合、エンコーダは、回転運動又は直線運動を必要に応じて2又は3チャネルディジタル出力へと変換する。
【0003】
図1Aは、透過型エンコーダを示している。この透過型の構成では、該エンコーダは、コードホイール又はコードストリップ104を介して光を送る光源108を含み、該コードホイール又はコードストリップ104を通過した光が光検出器112において検出される。
【0004】
図1Bは、反射型エンコーダを示している。この反射型の構成では、光源108が、コードホイール又はコードストリップ104に向かって光を送り、該コードホイール又はコードストリップ104により反射された光が光検出器112において検出される。
【0005】
図1Cは、撮像型エンコーダを示している。この撮像型の構成では、光源108が、コードホイール又はコードストリップ104に光を当て、光検出器112が、該光が当てられたコードホイール又はコードストリップ104の一連のイメージを取得して該コードホイール又はコードストリップ104の運動を検出する。
【0006】
反射型エンコーダでは、光源104の先にレンズを配設して、コードホイール又はコードストリップ104上に光を収束させることが可能である。光は、反射して、又は反射せずに、光検出器112上のレンズへと戻ることが可能である。コードホイール又はコードストリップ104が運動する際に、そのバー及び間隙のパターンに対応する交互の明暗パターンが光検出器112上に位置する。多くの場合、光検出器112は、フォトダイオードアレイを含み、その複数のフォトダイオードが、かかる断続(明暗)を検出し、該フォトダイオードの出力が、エンコーダの信号処理手段により処理されて、ディジタル波形が生成される。これらのエンコーダ出力を使用して、モータの位置、速度、及び加速度に関する情報を提供することが可能である。
【0007】
反射型エンコーダは、透過型エンコーダ及び撮像型エンコーダと比較して小型であり組み立てが容易であるという利点を提供するものである。特に、光源108及び光検出器112が同一の基板上に配設され、これにより、組み立て後の製品を薄型のものとし、部品点数を削減し、及び組み立て工程数を削減することが可能となる。しかし、反射型エンコーダは、イメージコントラストが低いという欠点を有するものであり、これは、該エンコーダの高速及び高解像度での動作を制限するものとなる。内側レンズ表面から反射される迷光がフォトダイオード(PDA)に到達し、この反射された迷光が、反射型エンコーダの電気的なノイズに寄与することになる。
【0008】
このノイズ問題に対処するための現在の解決策として、エンコーダ内に光バッフル要素を組み込むことが挙げられる。詳細には、該光バッフルは、光源108と光検出器112との間に配設されて、迷光が光検出器112に到達するのを阻止する。該光バッフルは、反射型エンコーダが受けるノイズの低減に資するものとなる。光検出器112が受けるノイズの低減を試みるエンコーダの更なる詳細については、米国特許第7,182,258号、第7,304,294号、及び第7,795,576号のうちの1つ又は2つ以上に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
光バッフル要素の追加を必要とすることなく従来技術による反射型エンコーダ迷光/ノイズ問題に対処するエンコーダ(特に反射型エンコーダ)を提供することが望ましい。詳細には、エンコーダ内への光バッフル要素の組み込みは、専用の機械装置を必要とし、該装置は非常に高価なものであり、また製造工程に更なるステップを追加するものとなり、このため、製造工程に時間と費用が追加されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1A】従来技術による透過型エンコーダ構成を示している。
【図1B】従来技術による反射型エンコーダ構成を示している。
【図1C】従来技術による撮像型エンコーダ構成を示している。
【図2】本開示の実施形態によるエンコーダの断面を示す斜視図である。
【図3】本開示の実施形態によるエンコーダの第1の構成を示すブロック図である。
【図4】本開示の実施形態によるエンコーダの第2の構成を示すブロック図である。
【図5】本開示の実施形態によるエンコーダの第3の構成を示すブロック図である。
【図6】本開示の実施形態によるエンコーダの第4の構成を示すブロック図である。
【図7】本開示の実施形態によるエンコーダの第5の構成を示すブロック図である。
【図8】本開示の実施形態によるエンコーダの寸法を示すブロック図である。
【図9】本開示の実施形態によるエンコーダ製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面に関連して本開示を行うこととする。
【0012】
以下の説明は、実施形態を提供するだけのものであり、特許請求する範囲、適用可能性、又は構成を制限することを意図したものではない。そうではなく、以下の説明は、本開示の実施形態を実施することを可能にする説明を当業者に提供するものとなる。本発明の思想及び範囲から逸脱することなくその構成要素の機能及び構成に様々な変更を加えることが可能であることが理解されよう。
【0013】
ここで図2及び図3を参照し、改良された反射型光学エンコーダシステムの構成要素を本開示の実施形態に従って説明することとする。図示の反射型光学エンコーダシステムは、エンコーダ204及びコードホイール又はコードストリップ104を含む。実施形態によっては、該エンコーダ204は、光源208及び光検出器212を含み、その各々は共通の基板216に取り付けられ、及び共通のカプセル材料218内にカプセル化される。実施形態によっては、カプセル材料218は、光源208及び光検出器212を環境危険(例えば、水分、堆積物、直接的な物理的衝撃など)から保護するが、該カプセル材料218はまた、光源208からの光を光検出器212へ案内するためのレンズとして働く。したがって、カプセル材料218の外側表面は、光が光源208から光検出器212へと伝搬する際に該光を成形する1つ又は2つ以上の曲線的な特徴を有することが可能である。
【0014】
実施形態によっては、カプセル材料218は、光源208及び光検出器212の周囲に成形されたプラスチックハウジング又はモールドから構成することが可能である。非制限的な実施形態として、カプセル材料218は、エポキシ、シリコーン、シリコーン及びエポキシの混成物、蛍光物質、蛍光物質及びシリコーンの混成物、非晶質ポリアミド樹脂又はフッ化炭素、ガラス、プラスチック、又はそれらの組み合わせから構成することが可能である。
【0015】
図示の実施形態では、カプセル材料218の上部表面(例えば、光源208とコードホイール又はコードストリップ104との間の表面)の輪郭は、光源208の上方の領域と光検出器212の上方の領域との間で実質的に平坦である。これは、従来の反射型エンコーダとは幾分か異なるものであり、従来の反射型エンコーダは、カプセル材料218の曲線的な上部表面を提供するものである。しかし、カプセル材料218の上部表面は、光源208と光検出器212との間の1つ又は2つ以上の部分に沿って湾曲させることが可能である、ということが理解されよう。
【0016】
基板216は、一実施形態では、プラスチック(例えば、PET、PTFE、PVCなど)、セラミック、ガラス、金属、合金、又はそれらの組み合わせから構成されたプリント回路基板(PCB)層とすることが可能である。別の実施形態として、基板216は、リードフレーム、挿入成形されたリードフレーム、可撓性プリント回路、セラミック基板、及び/又はMID(MicroInterconnecting Device)から構成することが可能である。かかるPCB、リードフレーム、可撓性プリント回路、又はMIDを構成するための既知の適当な材料を基板216のために使用することが可能である。実施形態によっては、基板216は、FR-4及び/又はG-10製造仕様に準拠する複合材料から主に製造することも可能である。基板216は、可撓性、剛性、半可撓性、又は半剛性を有するものとすることが可能である、ということが理解されよう。基板216の構成は、エンコーダ204の意図する用途に応じて決定することが可能である。
【0017】
実施形態によっては、また図3に示す実施例から分かるように、光源208及び光検出器212は、共通の基板216の共通の表面(例えば上部表面)上に取り付けることが可能である。実施形態によっては、光検出器212は、検出器集積回路(IC)220を介して共通の基板216に取り付けることが可能である。該検出器IC220は、光検出器212から電気信号を受信し、該光検出器212から受信した電気信号を処理し、並びに該光検出器212において検出される迷光の量を最小限にするのを助けるために、配設することが可能なものである。より詳細には、光検出器212の光検出表面(例えば上部表面)は、光源208の発光表面(例えば上部表面)よりも高い位置にすることが可能である。更に詳細には、光検出器212の光検出表面は、光源208の発光表面よりも、コードホイール又はコードストリップ104に近くすることが可能である。換言すれば、光検出器212の光検出表面は、光源208の発光表面よりも、共通の基板216の上部表面から一層遠くにすることが可能である。
【0018】
光検出器212と光源208との相対的な高さを異ならせることにより、詳細には、光検出器212を光源208よりも高い位置にすることにより、本開示の実施形態は、小型であり、且つ光源208と光検出器212との間に別個の光バッフル要素を必要とすることなくノイズの低減を改善するという利点を有する、エンコーダ204の作成を可能とする。光源208及び光検出器212の異なる高さを確立することによりエンコーダ204の輪郭を高くすることを提案するのは幾分か直観と相容れないものである。しかし、エンコーダ204の輪郭の僅かな増大は、エンコーダ204の他の2つの寸法(例えば、x及びy寸法、すなわち、長さ及び幅寸法)における大幅なサイズ縮小を可能とし、別個の光バッフル要素がもはや存在する必要がないことは言うまでもない。したがって、エンコーダの高さを数分の1ミリ未満だけ犠牲にすることにより、エンコーダ204にとって著しい利益が実現される。エンコーダ204の各構成要素の相対的な寸法を知的に選択することにより、ロープロファイルのエンコーダ204を実現することも可能である。
【0019】
実施形態によっては、光源208は、発光ダイオード(LED)等の単一の光源を含む。便宜上、光源208は、本書ではLEDと記載するが、他の光源(例えば、レーザダイオードその他)又は複数の光源(例えば、LEDアレイ)を実施することが可能である。一実施形態では、光源208は、限流抵抗器を介した駆動信号により駆動される。かかる駆動回路の詳細は周知のものである。光源208の実施形態はまた、出射光を特定の経路又はパターンで送出するための、光源208と位置合わせされたレンズを含むことが可能である。例えば、該レンズは、カプセル材料218とは別個の異なるものとすることが可能なものであり、コードホイール又はコードストリップ104上に光を収束させることが可能なものである。
【0020】
実施形態によっては、光検出器212は、複数のフォトダイオード等の1つ又は2つ以上の光検出器を含むことが可能であり、該光検出器は、アレイ状(例えばPDA)に構成することが可能である。該光検出器は、例えば検出器IC220へと、集積化させることが可能である。便宜上、光検出器212は、本書ではPDAとして記載されているが、他のタイプの光検出器を実施することも可能である。一実施形態では、光検出器212のフォトダイオードは、特定のパターン又は波長の反射光を検出するための固有の構成とすることが可能である。また、フォトダイオードは、コードホイール又はコードストリップ104の半径及び設計に対応するパターンに構成することが可能である。
【0021】
光検出器212により生成された信号は、検出器IC220内の信号処理回路により処理され、該処理回路は、チャネル信号CHA,CHB及び/又はCHIを生成する。一実施形態では、検出器IC220は、該チャネル信号及びインデックス信号を生成するための1つ又は2つ以上のコンパレータ(図示せず)も含む。例えば、光検出器212からのアナログ信号が、該コンパレータにより、TTL(Transistor-transistor-logic)互換のディジタル出力信号へと変換される。一実施形態では、これら出力チャネル信号は、変調された反射光信号に関する計数及び方向情報を示すことが可能なものである。
【0022】
発光器、検出器、及び光学エンコーダの更なる詳細については、一般に、米国特許第4,451,731号、第4,691,101号、及び第7,400,269号を参照されたい。
【0023】
更に、本開示の実施形態は、特に、反射型光学エンコーダに関するものであるが、本開示の範囲から逸脱することなく、同様のフォトダイオードアレイ及び/又はエンコーダ204の構成を撮像型光学エンコーダシステムにおいて利用することが可能である、ということが理解されよう。
【0024】
図3を参照すると、エンコーダ204のカプセル材料218は、光源208により発せられた光をコードホイール又はコードストリップ104に向かって方向付けるよう構成することが可能である。カプセル材料218の上部境界に達すると、光源208から発せられた光は、コードホイール又はコードストリップ104に衝突する光(例えば、コードホイール又はコードストリップ104に向かってカプセル材料218外へと送出される光)と、反射迷光232(例えば、カプセル材料218の内面により反射される光)とに分割されることが可能である。
【0025】
実施形態によっては、光検出器212は、反射迷光232の受光を実質的に遮断するように、検出器IC220の上部表面上に配置することが可能である。更に詳細には、検出器IC220の上部表面に反射迷光232が直接接触することを実質的に不可能にする境界線224が検出器IC220上に存在することが可能である。この境界線224は、検出器IC220上の単なる仮想的な線とすることが可能であり、又は検出器IC220上に実際に示された任意のタイプの目視可能な1つのマーク又は一群のマークとすることが可能である。
【0026】
実施形態によっては、検出器IC220の上部表面は、2つの異なる領域に分割することが可能である。その第1の領域は、反射迷光232が受光される領域(又は逆にコードホイール又はコードストリップ104に衝突した光236が受光されない領域)に対応し、その第2の領域は、反射迷光232が受光されない領域(又は逆にコードホイール又はコードストリップ104に衝突した光236が受光される領域)に対応することが可能である。前記境界線224は、前記検出器IC220の前記第1の領域と前記第2の領域との間の連続的であり必ずしも直線でない境界とすることが可能である。実施形態によっては、光検出器212を前記第1の領域内に配置することなく該光検出器212を前記第2の領域内に配置することが望ましい。
【0027】
何らかの反射迷光232が検出器IC220の上部表面で反射され、次いでカプセル材料218の上部表面で再び反射されて光検出器212に向かうことが可能であるが、この3回反射された迷光は、コードホイール又はコードストリップ104に衝突した光236と比較して、光検出器212において最小限の量のノイズを生じさせるに過ぎないものとなる。
【0028】
実施形態によっては、光源208と光検出器212との間の高さの違いは、検出器IC220が、反射迷光232の殆どを光検出器212に到達しないよう遮断することを可能にする。検出器IC220及び光検出器212が適切に構成された場合、反射迷光232は、検出器IC220の比較的小さな領域にしか到達しない。このため、光検出器212は、コードホイール又はコードストリップ104に衝突した光236を主に受光するように検出器IC220の上部領域上に設計することが可能である。実施形態によっては、光検出器212は、検出器において実現される光のコントラストが約93%となるように検出器IC220上に配置することが可能である。このコントラストの実現は、光検出器から光源を分離させるための別個の光バッフル要素を採用したエンコーダにより実現されるコントラストと実質的に同様のものである。かかる光バッフルを含むエンコーダは、光検出器における約94%のコントラストの実現を示すものである。
【0029】
図4は、本開示の実施形態によるエンコーダ204の第2の考え得る構成を示したものである。この特定の構成は、検出器IC220と基板216との間に取り付けられたスペーサ404を含む。詳細には、該スペーサ404の底部表面を基板216に取り付け、及び検出器IC220を該スペーサ404の上部表面に取り付けることが可能である。実施形態によっては、該スペーサ404は、カプセル材料218と類似し又は同一の材料から形成することが可能である。実施形態によっては、該スペーサ404は、電気的に中性であり且つ検出器IC220を光源208に対して上昇させることができる単なる材料片から構成することが可能である。
【0030】
スペーサ404の寸法は、検出器IC220の上部の境界線224の位置を移動させるよう変更することが可能である、ということが理解されよう。また、スペーサ404は、検出器IC220の底部表面の表面積と同一の表面積を有する上部表面を有することが可能である(がそれには限定されない)、ということが理解されよう。検出器IC220の底部表面の表面積と比較して一層大きな又は一層小さな表面積を有する上部表面を有するスペーサを提供することも可能である。
【0031】
図5は、本開示の実施形態によるエンコーダ204の別の構成を示している。この特定の構成は、検出器IC220が取り付けられる隆起部分を有する専用設計の基板構造504を有するものである。該検出器IC220の下方に位置する該基板構造504の該隆起部分は、必要に応じて光源208に対して検出器IC220及び光検出器212を上昇させるための必要とされる厚さを有することが可能である。
【0032】
図6は、本開示の実施形態によるエンコーダ204の別の構成を示している。この特定の構成は、上記とは異なる専用設計の基板構造604を有している。この基板構造604は、その厚さが比較的均一であるという点で前記基板構造504と異なるが、該均一な厚さの基板構造604の一部は、該基板構造604の他の部分よりも上昇されている。実施形態によっては、該基板構造604の上昇した部分に検出器IC220を直接取り付けることが可能である。
【0033】
図7は、本開示の実施形態によるエンコーダ204の別の構成を示している。この特定の構成は、検出器IC220が第2のICチップ704の上部に積層される積層ダイ構成を有するものである。実施形態によっては、該第2のICチップ704は、(i)検出器IC220により実行される処理ルーチンとは異なる処理ルーチンを実行し、及び/又は(ii)検出器IC220及び光検出器212を光源208に対して更に上昇させるように、配設することが可能である。非制限的な実施形態として、第2のICチップ704は、エンコーダ204の補完計算の実行を責務とする補完ICチップに相当するものとすることが可能であり、一方、検出器IC220は、光検出器212から受信した電気信号をディジタル出力信号へと変換することを責務とすることが可能である。
【0034】
実施形態によっては、第2のICチップ704は、基板216の上部表面における電気トレース、ボンディングパッド、半田バンプ、入力ピン等に対し、第1のリード線708を介して電気的に直接接続することが可能である。検出器ICチップ220は、第2のICチップ704の上部表面における電気トレース、ボンディングパッド、半田バンプ、入力ピン、シリコン貫通ビア(TSV)等に対し、第2のリード線712を介して電気的に直接接続することが可能である。該第1及び/又は第2のリード線は、ボンディングワイヤ、導電性材料のループ、電気トレース等に相当するものとすることが可能である。
【0035】
図8は、エンコーダ204の相対的な寸法、並びに本開示の実施形態によるエンコーダ204を含む光学エンコーダシステムの寸法の非制限的な例を示している。図8に示す寸法は、以下の通りである。
【0036】
d1=光源208の発光表面と光検出器212の光検出表面との間の高さの差
d2=検出器ICチップ220の上部表面(光検出器212の上部表面にも対応)からカプセル材料218の上部表面までのカプセル材料218の厚さ
d3=コードホイール又はコードストリップ104とカプセル材料218の上部表面との間隔
この間隔は、液体、気体、又は複数の気体(例えば空気)の任意の組み合わせで満たすことが可能である。
【0037】
L1=光源208の発光領域の中心から検出器ICチップ220の近縁部までの距離
L2=反射迷光232の範囲を有する検出器ICチップ220の長さ(例えば、検出器ICチップ220の近縁部から境界線224までの距離)
L3=光学信号の範囲を有する検出器ICチップ220の長さ
n1=カプセル材料218の屈折率
n2=エンコーダ204とコードホイール又はコードストリップ104との間隔内の材料の屈折率(例えば、空気の屈折率)
詳細には、数1は、反射迷光232を捕捉するように検出器212が検出器ICチップ220上に配置されている場合におけるL1,L2,d1,d2の寸法を表している。
【0038】
【数1】

【0039】
数1:反射迷光を捕捉する検出器の配置
一方、数2は、光学信号(例えば、コードホイール又はコードストリップ104に衝突した光236)を捕捉するために必要となるエンコーダ204の構成要素の寸法を表している。
【0040】
【数2】

【0041】
数2:発光手段からの光学信号を捕捉する検出器の配置
数2によるL3から数1によるL2を減算して、光学信号の検出を最大限にすると共に反射迷光232の検出を最小限にするための、検出器ICチップ220の上部における光検出器212の最適位置を求めることが可能である。数2から数1を減算した結果は、以下の数3で表される。
【0042】
【数3】

【0043】
数3:最小限のノイズで光学信号を捕捉するための検出器の最適な配置
実施形態によっては、d1の寸法は、約0.1mm〜約0.5mmの間の任意の値とすることが可能である。d2の寸法は、約0.02mm〜約0.2mmの間の任意の値とすることが可能である。d3の寸法は、約0.05mm〜約0.3mmの間の任意の値とすることが可能である。L1の寸法は、約0.1mm〜約0.3mmの間の任意の値とすることが可能である。L2の寸法は、約0.05mm〜約0.2mmの間の任意の値とすることが可能である。L3の寸法は、約0.1mm〜約0.5mmの間の任意の値とすることが可能である。しかし、上記の各構成要素の相対的な寸法は、光学信号の検出を最大限にし及び/又は反射迷光の検出を最小限にするように変更することが可能である、ということが理解されよう。
【0044】
実施形態によっては、光検出表面からカプセル材料218の上部表面までの距離(すなわちd2)は、発光表面からカプセル材料218の上部表面までの距離(すなわちd1+d2)の少なくとも1/2程度の小さいものとなる。実施形態によっては、d1は、d1+d2の1/3未満にすることが可能である。実施形態によっては、d1は、d1+d2の1/4未満にすることが可能である。実施形態によっては、d1は、d1+d2の1/10未満にすることが可能である。
【0045】
数1−3から得られる寸法は、平坦な成形による表面を含む非制限的なエンコーダ204の設計から導出されたものである、ということを理解されたい。本書で説明する実施形態を含む他のエンコーダを利用することも可能である。例えば、本開示の実施形態は、1つ又は2つ以上の湾曲を有する成形表面を有するエンコーダで実施することも可能である。かかる例では、該エンコーダの各構成要素の相対的な寸法は、上述した寸法とは異なり得るものであるが、かかる変更は、本開示の範囲内のものであると考える。
【0046】
ここで、図9を参照して、本開示の実施形態によるエンコーダ204の製造方法について説明する。該方法は、基板216を配設することから開始する(ステップ904)。その後、該基板216の上部表面上に1つ又は2つ以上の光源208が取り付けられる(ステップ908)。該基板216の上部表面上には光検出器212も取り付けられる(ステップ912)。該ステップ912は、前記ステップ908の前に又は該ステップ908と同時に実行することが可能である、ということが理解されよう。更に、基板216に光検出器212を取り付ける態様は、エンコーダ204の構成に応じて決定することが可能である。更に詳細には、光検出器212は、検出器ICチップ220を介して基板216に直接取り付けることが可能であり、又は検出器ICチップ220と基板216との間に追加のダイを取り付けることが可能である。
【0047】
光源208及び光検出器212を基板216に取り付けた後、該光源208及び光検出器212の周囲にカプセル材料218が配設されて、最終的なエンコーダ204パッケージが達成される(ステップ916)。この最終的なエンコーダ204パッケージが、次いでコードホイール又はコードストリップ104に対して位置決めされ、該エンコーダ204に電気的なリード線を接続することが可能となる。
【0048】
本開示の実施形態は、あらゆるタイプのエンコーダ構成に適用することが可能である、ということが理解されよう。実例として、本書で説明した思想を、(a)2及び/又は3チャネルを有するインクリメンタルエンコーダ、(b)6チャネルを有するコミュテーション(commutation)エンコーダ、(c)疑似アブソリュートエンコーダ、(d)アブソリュートエンコーダ、及び(e)それらの組み合わせに適用することが可能である。
【0049】
本書で説明したエンコーダ設計を利用する利点は多数存在する。一例として、検出器に対する反射迷光232に起因するエンコーダのノイズレベルを最小限にし又はゼロにする、高性能エンコーダ204を実現することが可能である。このため、該エンコーダ204を、高速ロータリーシステム又は高速リニアシステムで使用することが可能となる。別の例として、光源208及び光検出器212を非常に近接して配置することが可能となる(それらの間に物理的な障壁が存在しない場合)。この設計により、極めて小さなフォームファクタを有する極めて小さなパッケージが実現可能となる。別の例として、反射迷光232を遮断するための追加の光障壁をエンコーダ204が必要としないため、典型的な半導体組立プロセス以外の追加の作製/組立プロセスを導入する必要がない。積層型ダイ構成によりエンコーダ204に他の機能を組み込むことも可能である。更に別の例として、パッケージサイズが小さく、また追加の材料又は組立プロセスを導入する必要がないため、低コストでエンコーダを実施することが可能となる。
【0050】
本実施形態の完全な理解を提供すべく特定の実施形態の細部について説明したが、該実施形態は、かかる特定の細部なしでも実施することが可能である、ということが当業者には理解されよう。例えば、不必要な細部によって本実施形態が不明確にならぬよう回路をブロック図で示すことが可能である。他の例では、本実施形態の不明確化を回避すべく、不必要な詳細を伴うことなく、周知の回路、プロセス、アルゴリズム、構造、及び技術を示すことが可能である。
【0051】
本書では、本開示の例示的な実施形態について詳細に説明したが、本発明の思想は、該実施形態以外の様々な態様で実施し利用することが可能なものであり、特許請求の範囲は、従来技術により制限される場合を除き、かかる変形例を含むものとして解釈されることを意図したものである、ということが理解されよう。
【符号の説明】
【0052】
204 エンコーダ
104 コードホイール又はコードストリップ
208 光源
212 光検出器
216 基板
218 カプセル材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学エンコードシステムで使用するためのエンコーダであって、
発光表面から光を発するよう構成された光源と、
該光源により発せられ及び物体により反射された光の少なくとも一部を光検出表面で受光するよう構成された光検出器と
を備えており、前記光検出表面が、前記発光表面に対して異なる高さに配置されている、エンコーダ。
【請求項2】
前記光源及び前記光検出器が上部に取り付けられた基板を更に含み、該基板の上部表面と前記光検出表面との間の第1の距離が、該基板の該上部表面と前記発光表面との間の第2の距離よりも大きい、請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項3】
前記光検出器が検出器集積回路を介して前記基板に取り付けられている、請求項2に記載のエンコーダ。
【請求項4】
前記光源及び前記光検出器をカプセル化するカプセル材料を更に含み、該カプセル材料が、前記光源により発せられた光を透過光及び反射迷光へと分離させるよう構成された上部表面を有しており、該反射迷光が実質的に前記光検出器に直接衝突することができないように前記光検出器が前記検出器集積回路上に配置されている、請求項3に記載のエンコーダ。
【請求項5】
前記検出器集積回路と前記基板との間に取り付けられた第2の集積回路を更に含み、該検出器集積回路が、前記光検出器から受信した信号に第1の処理を行って前記第2の集積回路へ第1の出力を提供するよう構成されており、該第2の集積回路が、該検出器集積回路から受信した該第1の出力に第2の処理を行うよう構成されている、請求項3に記載のエンコーダ。
【請求項6】
前記基板が、前記光検出器が取り付けられる隆起部分を有しており、前記光源が該隆起部分上に取り付けられていない、請求項2に記載のエンコーダ。
【請求項7】
前記検出器集積回路と前記基板との間に取り付けられたスペーサを更に含む、請求項2に記載のエンコーダ。
【請求項8】
前記光検出器がフォトダイオードアレイを含む、請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項9】
前記光源がLEDを含む、請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項10】
前記物体がコードホイール及びコードストリップの少なくとも一方を含む、請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項11】
光源及び光検出器を含むエンコーダを備えた反射型光学エンコーダシステムであって、該光検出器の光検出表面が該光源の発光表面と異なる高さになるように該光源及び該光検出器が該エンコーダ内に配置されている、反射型光学エンコーダシステム。
【請求項12】
前記エンコーダが、前記光源及び前記光検出器をカプセル化するカプセル材料を更に含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記光検出器の前記光検出表面が、前記光源の前記発光表面よりも前記カプセル材料の上部表面に近い、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記カプセル材料の前記上部表面が、前記光源により発せられた光を反射迷光及び透過光へと分離させるよう構成されており、該反射迷光が実質的に前記光検出器に直接衝突することができないように該光検出器が配置されている、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
検出器集積回路を更に含み、前記光検出器が該検出器集積回路の上部表面上に取り付けられている、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記検出器集積回路の前記上部表面が、前記反射迷光が受光される第1の領域と、前記反射迷光が受光されない第2の領域とに分割されており、前記光検出器が前記第1の領域ではなく前記第2の領域内に配置されている、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記光源の前記発光表面が、前記検出器集積回路の前記上部表面の下方に配置されている、請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
光源の発光表面において光を発光させ、
該光源により発せられた光を反射迷光及び透過光へと分離させ、
該透過光が物体により反射された後、該透過光を光検出器の光検出表面において検出する、という各ステップからなる方法であって、前記反射迷光が前記光検出表面に直接衝突しないように該光検出表面が前記発光表面に対して異なる高さに配置されている、方法。
【請求項19】
前記光源により発せられた光が、前記光源及び前記光検出器をカプセル化するカプセル材料の上部表面において分離される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記光検出表面から前記カプセル材料の前記上部表面までの距離が、前記発光表面から前記カプセル材料の前記上部表面までの距離の少なくとも1/2の小さいものである、請求項18に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−36999(P2013−36999A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−174789(P2012−174789)
【出願日】平成24年8月7日(2012.8.7)
【出願人】(506200186)アバゴ・テクノロジーズ・イーシービーユー・アイピー(シンガポール)プライベート・リミテッド (154)
【Fターム(参考)】