説明

改良された液体ろ過媒体

微多孔膜に隣接し、かつ微多孔膜に任意に結合されたナノウェブを有する複合媒体を備えた液体フィルタ。この膜は、定格の粒度において3.7のLRV値を特徴とし、このナノウェブは、膜の定格の粒度において0.95を超える分別ろ過効率を有する。また、このナノウェブは、当該効率において0.01を超える厚さ効率比を有する。このナノウェブは、膜に深層ろ過機能を与え、粒子を予備ろ過し、膜の寿命を延ばす働きをする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つ以上のサブミクロンの定格の膜フィルタ層と組み合わせて1つ以上のナノ繊維層を含むろ過媒体に関する。このろ過媒体は、液体から汚染物質をろ過するのに特に適している。
【背景技術】
【0002】
サブミクロンろ過の分野で膜フィルタが広く用いられている。膜フィルタは、通常、非常に高いろ過効率を提供し、所定のレベルで完全になり得る。さらに、膜は、その構造にかなりの流体流を通し、単位当たりの高い処理量を可能にする。直接流水式(direct flow through)の用途に使用する場合の膜の1つの欠点は、そのろ液保持容量が非常に限られることである。この不足を補うために、別個の前置フィルタを用いて、膜の耐用寿命を延ばすことができる。通常、これらの追加の前置フィルタを用いて、膜の定格より大きなサイズの物をろ別することで、膜の限られたろ液保持容量を、ろ過作業を行っているときの最も目の細かいサイズ範囲に適合させる。
【0003】
膜積層フィルタ媒体の改良されたろ過性能に対する認識は高まっている。排出物を0に近いレベルまで低減するのに一次ケーキ(primary cake)が必要なく、集められるほぼ全ての粉塵がそれぞれの振動サイクルで除去されるため、バッグの全寿命の間、積層体にわたる一貫して低い圧量低下を維持するのを助ける。多孔質の発泡ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)膜の2層の積層体および様々な異なるバッキングが用いられている。いくつかの例として、高温パルスジェット用途において、ガラス繊維のバッキングが用いられ、低温パルスジェット用途において、ポリエステルフェルトバッキングが用いられている。また、加水分解が潜在的な問題となり得るパルスジェット用途においては、フェルト状のアクリルバッキングまたはフェルト状のPTFEバッキングが用いられている。低エネルギーの洗浄ろ過システム(攪拌器および逆洗(reverse air))においては、バッキングとしてポリエステル織布が用いられている。
【0004】
これらの前置フィルタを、膜と同じ一般レベルのろ過サイズに近付けるために、前置フィルタを、(例えば、典型的な不織材料またはメルトブローン材料の場合には圧延によって)その固有の孔径を狭めるように加工しなければならない。この追加の加工工程は、通常、前置フィルタの流量容量の減少をもたらし、多くの場合、それは膜の流量容量未満に減少し、その結果、所望の流量を提供するのに追加の前置フィルタが同時に必要となる。前置フィルタの流量を向上させるために前置フィルタの坪量および/または厚さを減少させると、そのろ液保持容量が減少する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
微多孔ろ過膜と直接組み合わせられ得る精密ろ過用前置フィルタであって、膜の流動能力を大幅に低下させることなく目的とする膜ろ過レベルにおいてかなりのろ過レベルを与え、かつ目的とするろ液サイズ以上の物の大部分を取り除くことによって膜の使用寿命を大幅に延ばすと共にかなりのろ液保持容量を有する精密ろ過用前置フィルタを有することが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の実施形態では、本発明は、精密ろ過膜(microfiltration membrane)に隣接し、かつそれと対向する関係にあるポリマーナノ繊維の少なくとも1つのナノウェブ層を含む複合液体ろ過媒体に関し、このナノウェブ層は、粒度について少なくとも95%のろ過効率定格(膜が3.7以上のLRVで評価される)、約0.01より高い厚さ効率比を有し、ここで、ナノウェブにわたる圧力低下は、所与の流体流量についての複合液体ろ過媒体にわたる圧力低下の60%以下であり、ナノウェブ層は、精密ろ過膜の上流に位置決めされる。
【0007】
本発明の他の実施形態は、上記の複合液体ろ過媒体を含有するフィルタに関する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書で用いられる際の「ナノ繊維」という用語は、約1000nm未満、さらには約800nm未満、さらには約50nm〜500nm、さらには約100〜400nmの数平均直径または断面を有する繊維を指す。本明細書で用いられる際の直径という用語は、非円形の最大断面を含む。
【0009】
「不織布」という用語は、複数のランダムに分布した繊維を含むウェブを意味する。繊維は、一般に、互いに結合されていてもまたは結合されていなくてもよい。繊維は、短繊維または長繊維であり得る。繊維は、単一の材料、あるいは異なる繊維の組合せとしてかまたは異なる材料からそれぞれ構成される類似の繊維の組合せとして複数の材料を含み得る。「ナノウェブ」はナノ繊維を含む不織ウェブである。
【0010】
「圧延」は、ウェブを2つのロール間のニップに通すプロセスである。これらのロールは互いに接触していてもよく、またはロール表面間に固定された間隙または可変の間隙があってもよい。「型押されていない」ロールは、それらを製造するのに用いられるプロセスの能力の範囲内で平滑な表面を有するロールである。点結合ロールとは異なり、ウェブをニップに通すにつれてウェブ上に意図的にパターンを形成するための点またはパターンは存在しない。
【0011】
一実施形態では、ろ過媒体は、微多孔膜と共に1つ以上のナノ繊維層を有するナノ繊維ウェブから作製される複合ウェブであり得る。この組合せは、ナノ繊維ウェブを膜に接着積層することによって、または上記のプロセスにおいて収集ベルト上に膜を置くことによって膜に直接ナノ繊維層を形成して、膜/ナノ繊維層構造を形成することによって作製することができ、この場合、ナノ繊維層は、機械的交絡によって膜に接着させることができる。膜の例としては、延伸された、充填ポリマーおよび発泡ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)などの様々な微多孔フィルムが挙げられ、これらは、ナノ繊維層を基材に加えることができる限り、限定されずに使用することができる。
【0012】
紡糸されたままのナノウェブは、電界紡糸、例えば従来の電界紡糸または電気ブロー加工、および場合によってはメルトブロー加工プロセスまたは他のそのような好適なプロセスによって有利に製造されるナノ繊維を主に含むかまたはそれだけを含む。従来の電界紡糸は、全体が参照により本明細書に援用される米国特許第4,127,706号明細書に示されている技術であり、溶液中のポリマーに高い電圧をかけて、ナノ繊維および不織マットを生成する。しかしながら、電界紡糸プロセスの総処理量が低すぎて、より重い坪量のウェブを形成する際に商業的に存立できない。
【0013】
「電気ブロー加工」プロセスは、全体が参照により本明細書に援用される国際特許公報、国際公開第03/080905号パンフレットに開示されている。ポリマーおよび溶媒を含むポリマー溶液流れを、貯蔵タンクから紡糸口金内の一連の紡糸ノズルへと供給する。紡糸口金には高い電圧がかけられ、また、そこからポリマー溶液が放出される。一方、任意に加熱される圧縮空気が、紡糸ノズルの側面または周囲に配置された空気ノズルから出される。この空気は、吹込みガス流としてほぼ下方向に向けられ、新たに出されたポリマー溶液を覆って送出し、繊維ウェブの形成に役立つ。繊維ウェブは、真空チャンバーの上方の接地された多孔質の収集ベルト上に集められる。電気ブロー加工プロセスにより、比較的短い期間で、約1gsmを超える、さらには約40gsm以上もの坪量での、商業的な規模および量のナノウェブの形成が可能になる。
【0014】
基材またはスクリムをコレクタに配置し、基材上に紡糸されたナノ繊維ウェブを集めて組み合わせて、組み合わせられた繊維ウェブを、高性能フィルタ、ワイパーなどとして用いることができる。基材の例としては、メルトブローン不織布、ニードルパンチ不織布またはスパンレース不織布などの様々な不織布、織布、編布、紙などが挙げられ、ナノ繊維層を基材上に追加することができる限り、限定されずに用いることができる。不織布は、スパンボンド繊維、ドライレイド繊維もしくはウェットレイド繊維、セルロース繊維、メルトブローン繊維、ガラス繊維、またはそれらのブレンドを含み得る。
【0015】
本発明のナノウェブを形成するのに用いることができるポリマー材料は、特に限定されないが、これらとしては、ポリアセタール、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、セルロースエーテルおよびエステル、ポリアルキレンスルフィド、ポリアリーレンオキシド、ポリスルホン、変性されたポリスルホンポリマーおよびそれらの混合物などの付加ポリマーおよび縮合ポリマー材料の両方が挙げられる。これらの一般的種類に含まれる好ましい材料としては、ポリ(塩化ビニル)、ポリメチルメタクリレート(および他のアクリル樹脂)、ポリスチレン、およびそれらのコポリマー(ABA型ブロックコポリマーを含む)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(塩化ビニリデン)、架橋および非架橋形態にある様々な加水分解度(87%〜99.5%)のポリビニルアルコールが挙げられる。好ましい付加ポリマーはガラス質である傾向がある(室温より高いTg)。これは、ポリ塩化ビニルおよびポリメチルメタクリレート、ポリスチレンポリマー組成物あるいは合金の場合であり、あるいはポリフッ化ビニリデンおよびポリビニルアルコール材料では結晶性が低い場合である。ポリアミド縮合ポリマーの1つの好ましい種類は、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン6,6−6,10などのナイロン材料である。本発明のポリマーナノウェブは、メルトブロー加工によって形成され、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリブチレンなどのポリオレフィン、ポリ(エチレンテレフタレート)などのポリエステル、および上記のナイロンポリマーなどのポリアミドを含む、メルトブロー加工してナノ繊維にすることが可能な任意の熱可塑性ポリマーを用いることができる。
【0016】
繊維ポリマーのTgを低下させるために、当該技術分野において公知の可塑剤を上記の様々なポリマーに添加することが好都合であり得る。好適な可塑剤は、電界紡糸または電気ブロー加工されるポリマー、ならびにナノウェブを組み込むことになる特定の最終用途に応じて決まることになる。例えば、ナイロンポリマーは、水で、または電界紡糸または電気ブロー加工プロセスから残っている残留溶媒でも可塑化され得る。ポリマーTgを低下させるのに有用であり得る他の当該技術分野において公知の可塑剤としては、限定はされないが、脂肪族グリコール、芳香族スルファミド(sulphanomides)、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル(dihexl phthalate)、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ジドデカニル、およびフタル酸ジフェニルからなる群から選択されるものを含むがこれらに限定されないフタル酸エステルなどが挙げられる。参照により本明細書に援用される「Handbook of Plasticizers」、George Wypych編、2004 Chemtec Publishingには、本発明に用いることができる他のポリマー/可塑剤の組合せが開示されている。
【0017】
本発明は、フィルタカートリッジの形態、フラットパネルまたは円筒形ユニットの形態で使用することができ、気体流および液体流の両方のろ過、電気掃除機、除塵、自動車、および他の輸送用途(車両および航空機の装置におけるろ過用途の両方を含む)、ガスタービン吸気発電機ストリームのろ過、軍用、住宅用、工業用、およびヘルスケア用の室内空気ろ過、半導体製造、ならびに健康、効率的な生産、清浄度、安全性、もしくは他の重要な目的のために微小粒子の減少が重要であるその他の用途、局所環境から生物危害物質または化学危害物質を除去するための、軍事用途における空気流のろ過、例えば、スペースシャトル、航空機の空気再循環、潜水艦、クリーンルーム、ならびに警察官や消防士、兵士などの公務/保安職員、民間人、入院患者、産業労業者、および吸入される雰囲気からの微小粒子の高度な除去効率が必要とされるその他の者によって使用される呼吸器の高効率フィルタのような他の密閉用途において使用される密閉換気装置用のろ過などの様々なろ過方法の用途において使用することができる。
【0018】
様々な好適なフィルタ設計が、米国特許第4,720,292号明細書、同第5,082,476号明細書、同第5,104,537号明細書、同第5,613,992号明細書、同第5,820,646号明細書、同第5,853,442号明細書、同第5,954,849号明細書、および意匠特許第425,189号明細書に示されている。
【0019】
本発明の布帛に所望の物理的特性を与えるために、本発明の紡糸したままのナノウェブは、同時係属中の米国特許出願第11/523,827号明細書(2006年9月20日に出願され、全体が参照により本明細書に援用される)に開示されているように圧延され得る。紡糸したままのナノウェブは、2つの型押されていないロール間のニップ内に供給することができ、この2つのロールのうち、一方のロールは型押されていない軟質のロールであり、一方のロールは型押されていない硬質ロールであり、ナノウェブのナノ繊維がカレンダーニップに通した際に可塑化された状態にあるように、硬質ロールの温度は、Tg(ポリマーがガラス質からゴム状の状態に変化する温度として本明細書で定義される)〜Tom(ポリマーの溶融開始の温度として本明細書で定義される)の間の温度に維持される。ロールの組成および硬度は、布帛の所望の最終用途特性を得るために、様々であり得る。一方のロールはステンレス鋼などの超硬合金であり、他方は軟質金属またはポリマーでコーティングしたロールであり、またはロックウェルB70未満の硬度を有する複合ロールであり得る。2つのロール間のニップにおけるウェブの滞留時間は、ウェブの線速度(好ましくは約1m/分〜約50m/分)によって制御され、2つのロール間のフットプリントは、ウェブが両方のロールと同時に接触して移動するMD距離である。フットプリントは、2つのロール間のニップにかけられる圧力によって制御され、ロールのCDの線寸法当たりの力で一般に測定され、好ましくは約1mm〜約30mmである。
【0020】
さらに、不織ウェブを、任意にナノ繊維ポリマーのTg〜最低Tomの間の温度に加熱しながら、延伸することができる。延伸は、ウェブがカレンダーロールに機械方向または交差方向のいずれかあるいはその両方で供給される前および/または後のいずれかで行うことができる。
【0021】
電気ブロー加工プロセスによって付着されるナノ繊維の平均繊維直径は、約1000nm未満、またはさらには約800nm未満、またはさらには約50nm〜約500nm、さらには約100nm〜約400nmである。各ナノ繊維層は、少なくとも約1g/m2、さらには約1g/m2〜約40g/m2、さらには約5g/m2〜約20g/m2の坪量、および約20μm〜約500μm、さらには約20μm〜約300μmの厚さを有する。
【0022】
微多孔ろ過膜は、ePTFE、または当業者に公知の任意の他の種類の微多孔膜であり得る。本発明に用いられる膜において、ePTFEは、焼結されてもまたは焼結されなくてもよい。膜は、下式によって求められる、所与のサイズのろ過粒子についての対数減少値(LRV)によって特徴付けられる。
LRV=−log10(1−FFE)
式中、FFEは分別ろ過効率であり、これは、膜を通って流れ、また膜によって止められる流体中の所与のサイズの粒子の割合である。膜の「定格」は、LRVが3.7より高い粒度(ミクロン単位)である。
【0023】
ePTFE膜は、いくつかの異なる公知のプロセスによって作製され得るが、米国特許第4,187,390号明細書;同第4,110,239号明細書;および同第3,953,566号明細書(これらは全て参照により本明細書に援用される)に記載されているように、ポリテトラフルオロエチレンを発泡させてePTFEを得ることによって作製されるのが好ましい。「多孔質」とは、膜が、20mmの水量ゲージにおいて少なくとも0.05m3/分/m2(m/分)の透気率を有することを意味する。20mmの水量において200m/分またはそれ以上の透気率を有する膜を使用することができる。孔は、ePTFEの節点(nodes)とフィブリルとの間に形成される細孔である。
【0024】
同様に、米国特許第5,234,751号明細書、同第5,217,666号明細書、同第5,098,625号明細書、同第5,225,131号明細書、同第5,167,890号明細書、同第4,104,394号明細書、同第5,234,739号明細書、同第4,596,837号明細書、特開平10−78823号公報および特開平3−221541号公報のいずれかに記載の膜を使用することができ、その際、発泡されていない、押し出されたかまたは成形されたPTFEを加熱してその物品を焼結または半焼結させる。次に、この焼結または半焼結された物品を延伸して、所望の多孔質および所望の特性を生み出す。
【0025】
特殊な用途では、特殊な用途用のPTFEの特性を改変するためにPTFEに充填材を設けることができる。例えば、セラミックフィルタ(SiO2)および限られた量の微細ガラス繊維をPTFE材料に導入できることが米国特許第4,949,284号明細書から知られており;欧州特許第0−463106B号明細書においては、二酸化チタン、ガラス繊維、カーボンブラック、活性炭などが充填剤として言及されている。
【0026】
高度に充填したポリマー(通常はポリオレフィン)から微多孔フィルムを作製するための技術が公知である。このようなウェブは、本発明の膜として使用するのにも適している。典型的に、ポリオレフィン(通常はポリエチレン)の組合せが、充填剤(通常はCaCO3)と配合され、押し出され、延伸されてフィルムにされて、微多孔フィルムが形成される。
【0027】
本発明のろ過膜として使用するための微多孔フィルムの好適な例としては、米国特許第4,472,328号明細書、同第4,350,655号明細書および同第4,777,073号明細書(これらは全て参照により本明細書に援用される)に記載されるものなどが挙げられる。
【0028】
微多孔膜およびナノウェブは、任意に、接着結合、熱結合、および超音波結合などによって互いに結合可能であるが、当業者に公知の任意の結合手段を用いてもよい。好ましい実施形態では、例えば、膜またはナノウェブに被着された接着剤を溶融させるのに十分な温度で高温ロールニップに材料を通すことなどの好適な積層技術を用いて膜をナノウェブに結合させる。ロールの1つは、積層体に結合パターンを形成するために、その表面に隆起したパターンを有し得る。
【0029】
1種以上の接着剤を任意に用いて、ナノウェブおよび微多孔膜または積層体を内側の布帛または外側の布帛に結合してもよい。1種の好適な接着剤は熱可塑性樹脂接着剤であり、多数回の加熱および冷却サイクルにわたって、加熱すると軟化し、次に冷却すると硬化し得る。このような熱可塑性樹脂接着剤の例は、「ホットメルト」接着剤であり得る。
【0030】
多孔質のePTFE膜を布帛に積層するのに用いられる接着剤はまた、ブタジエンアクリロニトリルコポリマーのアニオン性水性分散体、アクリル酸エステルをベースとするコポリマー、乳化重合によって生成される塩化ビニルおよび塩化ビニリデンポリマーおよびコポリマー、スチレン−ブタジエンコポリマー、ならびにブタジエン、スチレン、およびビニルピリジンのターポリマーを含めた、様々なフルオロケミカル分散体または合成ラテックスのうちの1種であり得る。
【0031】
ナノウェブまたは膜を、積層する前に接着剤でコーティングする様々な方法を用いることができる。例えば、まず、ナノウェブの所要の領域を接着剤でコーティングすることができ、次に、ePTFE膜を、コーティングされた布帛の接着剤の側に設置する。伝導熱および十分な圧力を膜の側に加えて、接着剤が膜の細孔に流れ込むようにする。接着剤が架橋可能である場合、接着剤が熱により架橋し、その結果、膜が基材に機械的に結合される。
【0032】
フルオロポリマーおよびフッ素化されていないポリマーの積層体から形成される物品ならびに積層のプロセスの他の例として、米国特許第5,855,977号明細書には、実質的にフッ素化されていない層と、共重合されたモノマー単位を含むフルオロポリマーのフッ素化層とを含む多層物品が開示されている。多層物品は、脂肪族ジアミン、またはポリアミンをさらに含み、脂肪族ジアミン、またはポリアミンは、脂肪族ジアミン、またはポリアミンを含有しない多層物品と比較して向上した層間接着性を提供する。
【0033】
様々な他の方法を用いて、フッ素化ポリマー層とポリアミドとの間の接着性を向上させることができる。例えば、接着剤層を、2つのポリマー層の間に加えることができる。米国特許第5,047,287号明細書には、アミノ基を有するアクリロニトリル−ブタジエンまたはアクリロニトリル−イソプレンゴムを含む接着剤によって少なくとも1つの表面に結合されたフッ素ゴム層を有する基布を含む、自動車用途に使用するのに適したダイアフラムが開示されている。
【0034】
また、場合により、層の一方または両方の表面処理を用いて結合を補助する。中には、例えば、充填された気体雰囲気でフルオロポリマー層を処理(例えば、コロナ処理)した後、第2の材料、例えば、熱可塑性ポリアミドの層を適用することを教示した者がいる。例えば、欧州特許出願公開第0185590号明細書(上野ら)および同第0551094号明細書(Krauseら)ならびに米国特許第4,933,060号明細書(Prohaskaら)および同第5,170,011号明細書(Martucci)。
【0035】
フルオロポリマーと異種層とのブレンドはそれ自体、場合によっては中間層として用いられて、2つの層を互いに結合させるのに役立つ。欧州特許出願公開第0523644号明細書(川島ら)には、ポリアミド樹脂表面層とフッ素樹脂表面層とを有するプラスチック積層体が開示されている。
【0036】
非フルオロポリマー層をフルオロポリマー層に結合する方法の他の例では、米国特許第6,869,682号明細書に、a)フルオロポリマーを含む第1の層と;b)第1の層に結合された第2の層とを含む物品が記載されており、第2の層は、溶融加工可能な実質的にフッ素化されていないポリマーと、支持体(base)と、クラウンエーテルとの混合物を含む。
【0037】
非フルオロポリマー層をフルオロポリマー層に結合する方法のさらに他の例では、米国特許第6,962,754号明細書に、フルオロポリマー層と、その1つの側に直接結合された、少なくとも1種の二酸および特定の組成の少なくとも1種のジアミンを本質的に含むモノマーの縮合から得られるポリアミドを含む結合樹脂を含む結合層とを含む構造が記載されている。
【0038】
層を結合させる(例えば、共押出しまたは積層)ための方法の熱および圧力は、層間の十分な接着をもたらすのに十分なものであり得る。しかし、得られる多層物品を、例えばさらなる熱、圧力、またはその両方でさらに処理して、層間にさらなる接着結合強度を与えるのが望ましいことがある。多層物品を押出しによって作製するときにさらに熱を供給する1つの方法は、共押出しの後に積層体が冷えるのを遅らせることによるものである。あるいは、単にいくつかの成分を処理するのに必要な温度より高い温度で層を積層または共押出しすることによって、さらなる熱エネルギーを多層物品に加えてもよい。あるいは、別の代替例として、完成された積層体を、長期間にわたって高温に保ってもよい。例えば完成された多層物品を、炉または加熱された液体浴などの、物品の温度を上昇させるための別の手段の中に入れてもよい。また、これらの方法の組合せを用いてもよい。
【0039】
本発明のフィルタは、スクリムがナノウェブのみ、または膜のみに隣接して、あるいはその両方の間に位置するスクリム層を含んでもよい。本明細書で用いられる際の「スクリム」は、支持層であり、ナノウェブを結合、接着または積層できる何らかの平面構造であり得る。好都合には、本発明に有用なスクリム層は、スパンボンド不織布層であるが、不織繊維などの梳毛ウェブから作製可能である。いくつかのフィルタ用途に有用なスクリム層では、プリーツおよび永久折れ目(dead fold)を保持するのに十分な剛性が必要である。
【実施例】
【0040】
以下の実施例では、50kPaの荷重をかけておよび200mm2のアンビル表面積で、参照により本明細書に援用されるASTM D−645(またはISO 534)によってウェブ厚さを求めた。厚さをミルで表し、マイクロメートルに換算した。
【0041】
比水流量(Specific Water Flow Rate)(流束とも呼ばれる)は、流体が所与の領域の試料を通過する体積流量であり、これを、2.217cmの直径を有するフィルタ媒体試料を通過する脱イオン水によって測定した。水圧(水頭圧力)または空気圧(水に対する空気の圧力)を用いて水を付勢して試料に通した。試験には、磁気フロート(magnetic float)を含む流体で満たされたカラムを用い、カラムに取り付けられたセンサが、磁気フロートの位置を読み取り、コンピュータにデジタル情報を提供する。PMIによって供給されるデータ分析ソフトウェアを用いて、流量を計算する。
【0042】
ASTM Designation F795−88(2002年に失効)(「Standard Practice for Determining the Performance of a Filter Medium Employing a Single−Pass,Constant−Rate,Liquid Test」)に準拠して、分別ろ過効率(Fractional Filtration Efficiency)(FFE)を測定した。所与の領域の試料に脱イオン水に溶かした粒子懸濁液を通し、液体から分離される粒子の割合を測定することによって、分別ろ過効率を求めた。含まれる粒子は、ラテックスビーズ(ポリスチレン)、ISOダストまたはシリカ球であり得る。粒子懸濁液は、単分散の単一粒子、単分散粒子または多分散粒子の混合物であり得る。媒体に通す前および媒体の上流に通した後の懸濁液中の粒子の数を測定することによって、液体から分離される粒子の割合を求める。懸濁液中の粒子の数を、光散乱式粒子計数器(装置:MC−100 SN M1029)を用いて測定する。
【0043】
所与のサイズのろ過粒子についての対数減少値(LRV)を下式によって求める。
LRV=−log10(1−FFE)
【0044】
次に、ウェブの厚さ効率比(TER)を下式によって求める。
LRV/(ウェブの厚さ(単位μm))
【0045】
実施例1
国際公開第03/080905号パンフレットに記載のように、ギ酸中のポリアミド−6,6の24%溶液を、電気ブロー加工によって紡糸した。実施例1の数平均繊維直径は約270nmであった。
【0046】
実施例2
国際公開第03/080905号パンフレットに記載のように、ギ酸中のポリアミド−6,6の24%溶液を、電気ブロー加工によって紡糸した。実施例2の数平均繊維直径は約420nmであった。
【0047】
ナノ繊維シートを巻出機(unwind)から2つのロールカレンダーニップへと送出することによって、実施例1および2の紡糸したままのナノ繊維シートを圧延した。ニップの前にシートを延ばすための装置を用いて、ニップに入れた際にも平坦でしわのないシートを保った。硬質ロールは直径9.76インチ(24.79cm)の鋼製ロールであり、軟質ロールは、約85のショアD硬度、および直径約10.5インチ(26.67cm)を有する表面がナイロンのロールであった。両方の実施例を、125℃まで加熱された鋼製ロールを用いて20フィート/分の線速度で圧延した。ニップの圧力は、実施例1および2についてそれぞれ1000psiおよび300psiである。
【0048】
比較例1
比較例1は、Pall Corporationから入手した130gsmのメルトブローンポリプロピレンフィルタ材料であった。
【0049】
表1は、3つの試料についての厚さ、LRV(0.5)値およびTER値を示す。
【0050】
表1

【0051】
表2は、3つの試料についての異なる圧力における透水性を示す。
【0052】
表2

【0053】
表3は、基準値0.5μmより大きな粒度におけるろ過効率を示し、実施例1または比較例1のいずれよりもかなり高い透水性を有する実施例2が0.5μmより高い粒度で比較例1に匹敵するろ過効率をもたらすことを実証している。
【0054】
表3

【0055】
通常、ろ過用途においては、ろ液がある粒度分布を含むであろう。したがって、ナノウェブの実施例2は、高い透過性で、ナノウェブに取り付けられた膜に当たる粒子をより効率的に予備スクリーニングすることができるため、前置フィルタ媒体として比較例の試料より優れている。膜が0.5μmについて3.7という典型的なLRVを有すると評価された場合、ろ過用途における膜の寿命が延び、かつ合わせた系の流体流抵抗が減少することが予測されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
精密ろ過膜に隣接し、かつそれと対向する関係にあるポリマーナノ繊維の少なくとも1つのナノウェブ層を含む複合液体ろ過媒体を含むフィルタであって、前記ナノウェブ層が、粒度について少なくとも95%のろ過効率定格(膜が3.7以上のLRVで評価される)、および約0.01より高い厚さ効率比を有し、ここで、前記ナノウェブにわたる圧力低下が、所与の流体流量についての前記複合液体ろ過媒体にわたる圧力低下の60%以下であり、前記ナノウェブ層が、前記精密ろ過膜の上流に位置決めされるフィルタ。
【請求項2】
前記膜がePTFE膜を含む請求項1に記載のフィルタ。
【請求項3】
前記ナノウェブが約150μm未満の厚さを有する請求項1に記載のフィルタ。
【請求項4】
前記ナノウェブおよび前記膜が、その表面の少なくとも一部にわたって結合される請求項1に記載のフィルタ。
【請求項5】
前記膜および前記ナノウェブが、熱積層、点結合、超音波結合、および接着結合からなる群から選択される手段によって結合される請求項4に記載のフィルタ。
【請求項6】
スクリムをさらに含む請求項1に記載のフィルタ。
【請求項7】
前記スクリムが、前記ナノウェブのみ、または前記膜のみに隣接して、あるいはその両方の間に位置する請求項6に記載のフィルタ。
【請求項8】
精密ろ過膜に隣接し、かつそれと対向する関係にあるポリマーナノ繊維の少なくとも1つのナノウェブ層を含む複合液体ろ過媒体であって、前記ナノウェブ層が、粒度について少なくとも95%のろ過効率定格(膜が3.7以上のLRVで評価される)、約0.01より高い厚さ効率比を有し、ここで、前記ナノウェブにわたる圧力低下が、所与の流体流量についての前記複合液体ろ過媒体にわたる圧力低下の60%以下であり、前記ナノウェブ層が、前記精密ろ過膜の上流に位置決めされる複合液体ろ過媒体。

【公表番号】特表2010−520053(P2010−520053A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−552726(P2009−552726)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際出願番号】PCT/US2008/002954
【国際公開番号】WO2008/109117
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】