説明

改良された運転者制御装置

【課題】車両を操作するための制御アセンブリにおいて、運転者からの不用意な入力を減少させる
【解決手段】第1及び第2制御信号の変化に応答して制御され、車両上で使用される本発明の制御アセンブリは、固定された取付部材11と、運転者の手で保持されるハンドル33とを備えている。ハンドル33は、第1信号を発生するために前進及び後退方向に移動可能であり、また、第2制御信号を発生するために左右方向に移動可能である。本制御アセンブリは、それ自体で、又は、取付部材11およびハンドル33の一方と協働して、第1ピボット軸A1を形成する細長いコネクタ部材25を備えている。ハンドル33が運転者の手に通常の方法で保持されたとき、第1ピボット軸A1が運転者の腕にほぼ垂直に向けられ、かつ、運転者の手及び腕の一方とほぼ交差する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的、油圧的又はその他であれ、様々な制御信号の類に応答して制御される車両、おそらくは操舵される車両に使用するための制御アセンブリに関し、より具体的には、車両運転者による手動操作に適したハンドルの類を含むタイプの制御アセンブリに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例示に過ぎないが、本発明に関係するタイプの制御アセンブリは、分離した静油圧変速機(HST)によって装置の両側が駆動されるスキッドステアローダ等の車両に使用することができる。これらの2つの変速機は、一般的に「ジョイスティック」と呼ばれるタイプの制御アセンブリを用いて運転者によって同時に制御される。このタイプの制御アセンブリでは、当業者には周知のように、ジョイスティックの前方への移動により、両方のHSTのポンプが前進方向へ吐出されて、両方のHSTがそれぞれの推進ホイールを前進方向に駆動する。反対に、ジョイスティックを後方へ移動させることにより、両方のHSTのポンプが後退方向に吐出されて、両方のHSTがそれぞれの推進ホイールを後退方向に駆動する。
【0003】
車両を操舵するため、例えば、前進移動中に車両を右に旋回させるため、運転者は、ジョイスティックを前方かつ幾分右へ移動させる。このようなジョイスティックの移動の結果、左推進ホイールに関係するHSTのポンプがその吐出量で前進駆動用に吐出され、これにより、HST出力速度がジョイスティックの前方移動の程度に対応する。同時に、右推進ホイールに関係するHSTのポンプは、右推進ホイールが左推進ホイールよりもゆっくり駆動されるように吐出され、左推進ホイール速度の右推進ホイール速度に対する比は、ジョイスティックが右前方へ変位される程度にほぼ比例する。
【0004】
特許文献1に記載されたタイプの一般的な従来技術である「2軸」ジョイスティックは、参考として本説明に含まれる。この従来のジョイスティックでは、車両運転者によって操作されるために設けられたジョイスティックハンドルを有する。一般的に、ハンドルの下部から外へ細長いロッド状のコネクタが取付ベースの中へ延びて、ハンドル−コネクタの組合せのピボット点が取付ベースの中のどこか、すなわち、車両運転者の腕及び手からある距離だけ垂直下方に配置される。
【特許文献1】米国特許第4321980号明細書
【0005】
上述の従来の2軸ジョイスティックは、通常の作動状態の下で、その性能に関してほぼ満足されているが、上述の従来技術のジョイスティック構造に対して、ある固有の欠点が存在する。車両が荒地を運転されるとき、あるいは、車両が急に加速又は減速されるときは常に、車両運転は相当な力を受けて車両運転台の中で「揺すられる」傾向があり、運転者がジョイスティックを掴むことにより、車両から運転者へ、そして、車両運転者の手からジョイスティックへ不用意な入力運動が生じることになる。このような車両の運転経験者には分るように、このようなジョイスティックへの不用意な入力運動は、車両又は制御される他の外部コンポーネント(ブーム及びバケット等)の運転を不規則で制御困難にし、更に、運転者に与えられる揺さぶり運動を悪化させることになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の1つの目的は、上述の従来技術に関係する問題を解消する、すなわち、様々なピボット軸に対して制御アセンブリへの不用意な入力運動を減少させるように構成された「ジョイスティック」と呼ばれる一般的なタイプの改良された制御アセンブリを提供することである。
【0007】
本発明の更なる具体的な目的は、上述の目的を達成し、かつ、制御ハンドル(「ジョイスティック」)の動きが車両運転者の手及び手首関節のより自然に近い動きに対応する改良された制御アセンブリを提供することである。
【0008】
本発明の更なる具体的な目的は、上述の目的を達成し、かつ、車両運転者の手及び手首関節の運動の軸にほぼ一致又は交差する軸回りに運動することができる制御アセンブリを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記及び他の目的は、第1及び第2信号の変化に応答して制御される車両に使用するための制御アセンブリを提供することによって達成される。本制御アセンブリは、固定された取付部材及び車両運転者の手で保持されるハンドルを備えている。このハンドルは、前進及び後退方向に移動させて第1制御信号を発生することができ、また、左右方向に移動させて第2制御信号を発生することができる。
【0010】
この改良された制御アセンブリは、当該アセンブリが更に、細長いコネクタ部材を含み、コネクタ部材は、それ自体又は固定された取付部材及びハンドルの一方と協働して第1ピボット軸を形成し、これにより、ハンドルが車両運転者の手で通常の方法で保持されたとき、第1ピボット軸が車両運転者の腕にほぼ垂直に向けられて車両運転者の手及び腕の一方とほぼ交差することを特徴とする。
【0011】
本発明の更に限定された特徴によれば、第1及び第2制御信号の変化に応答して制御されて操舵される車両に使用するための制御アセンブリが提供される。この制御アセンブリは、固定された取付部材と、車両運転者の手で保持されるハンドルとを備え、ハンドルは、前進及び後退方向に移動されて第1及び第2信号を発生することができる。
【0012】
更に限定された特徴による改良された制御アセンブリは、上端部及び下端部を形成するハンドルと、ハンドル内に配置されてハンドルの上端部と下端部とのほぼ中間であるピボット位置とを備えていることを特徴とする。細長いコネクタ部材は、ピボット軸回りのピボットに固定された第1部分と、ピボット位置でハンドルに連結された第2部分とを有している。コネクタ部材の第1部分及び第1ピボット軸に第1センサが連動し、コネクタ部材の第2部分とハンドルのピボット位置との連結部は、ハンドルの前進及び後退方向の移動によってハンドルとコネクタ部材とが一体となって移動し、コネクタ部材の第1部分が第1ピボット軸回りにピボット運動して、第1センサが第1制御信号を発生するようになっている。コネクタ部材の第2部分及びピボット位置に第2センサが連動し、コネクタ部材の第2部分とハンドルのピボット位置との連結部は、ハンドルの左右方向の移動によってハンドルが第2ピボット軸回りにピボット運動して、第2センサが第2制御信号を発生するようになっている。
【0013】
本発明の更なる具体的な特徴によれば、改良された制御アセンブリは、ハンドルが車両運転者の手で通常の方向で保持されたとき、第1ピボット軸が車両運転者の腕にほぼ垂直に向けられ、また、第1ピボット軸が車両運転者の腕とほぼ手首関節で交差するようにコネクタ部材が形成されていることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
限定を意図しない図面を参照すると、図1は、本発明の一実施形態にしたがって製造された制御アセンブリの斜視図であり、この制御アセンブリは、ほぼ車両運転席の位置から見られたものであり、かつ、ほぼ車両の左側へ向って見たものである。本発明の実施形態は、車両運転者によって、具体的には、車両運転者の左手によって手動操作されるのに適した制御アセンブリである。図1及び図2に示される制御アセンブリは、容易に「反転」して、運転者が右手を使って操作するために車両運転者の右側に配置することができ、この構造も本発明の範囲内であることは、当業者には理解されるであろう。また、図3及び4に示される他の実施形態、同様に、図5、図6及び図7に示される他の実施形態についても同じことが言えることは、当業者には理解されるであろう。
【0015】
引続き図1を参照して、第1の実施形態の制御アセンブリは、車両に対して、すなわち、車両シャシ又はボディに対して固定されるように、あらゆる適当な方法で取付けることができる取付ブラケット11(取付部材)を含んでいる。図2に関連して図1に最もよく見られるように、取付ブラケット11は、ほぼ長方形の部材として示され、その縦方向の寸法は、好ましくは車両の縦軸に平行に向いているが、本発明の制御アセンブリの車両の中での方向を示しているに過ぎない。支持部材13が車両の横方向(取付ブラケット11に対して垂直)に延びており、その機能は以下に説明する。
【0016】
引続き図1及び図2を主に参照して、取付ブラケット11は、円筒状の開口15を形成し、その中にベアリングアセンブリ17が配置され、参照符号「17」に関連する引き出し線は、ベアリングアセンブリのアウタレースすなわちカバーを指している。前進−後退(「F−R」)軸19がベアリングアセンブリ17によって回転可能に支持されて、取付ブラケット11の外へ延びており、その軸は、以下に「第1ピボット軸」すなわち「F−R軸」として説明する回転軸A1を形成する。全体として符号21で示される前進−後退センサアセンブリ(第1センサ)が取付ブラケット1の中に配置され、かつ、F−R軸19に取付けられており、その機能は、F−R軸19の図1及び2に示される「中央位置」すなわちニュートラル位置からの回転を検出して、F−R軸19の回転を表す電気的な第1制御信号を発生することである。センサアセンブリ21から発生された電気的な制御信号は、一般的に一対の電気導線すなわち電気接続(ここでは図示しない)によって伝達される。本発明の重要な特徴によれば、以下に詳細に説明するように、車両運転者が車両の前進又は後退運動のいずれかの切換えを実行しようとするときはいつも、制御アセンブリがA1軸回りに回動される。制御アセンブリの移動は、通常、電気的な制御信号を発生させるが、本発明は、これに限定されず、制御アセンブリの移動の結果による信号は、油圧的な信号、又は、「機械的な」信号であってもよいことは、当業者には理解されるであろう。
【0017】
センサ21の外へ延びるF−R軸19の端部は、ブロック状のジョイント部材23の中へ延び、また、ジョイント部材23には、中空のコネクタ部材25の後端部が受入れられている。コネクタ部材25の他端部(すなわち、前端部27)は、全体として符号29で示されるセンサアセンブリ(第2センサ)の前端部の中へ延びている。この前端部27は、好ましくは、センサアセンブリ29の少なくとも大部分を軸方向に貫通して延びて回転縦軸A2を形成し、この回転縦軸A2は、以下に「第2ピボット軸」すなわち「L−R軸」としても参照する。必須ではないが、好ましくは、F−R軸は、車両の軸に対して垂直であるのに対して、L−R軸は車両の軸に対してほぼ平行であり、これにより、車両の通常の進行方向に平行である。
【0018】
センサアセンブリ29に連動するコネクタ部材31が回転軸A2からオフセットして、センサアセンブリ29から幾分下方へループ状をなし、上方へ延びてハンドル部材33の中で固定されている。図1及び図2に示されるように、ハンドル部材33は、図1の左から前方へ車両運転者の腕が延びて、その掌がハンドル部材33の外側に当るように、すなわち、取付ブラケット11へ向う側に配置されて、運転者の指がハンドル部材33の前部(図1の右部)に巻きつくように形成されている。以上に述べたコネクタ部材25、31及びハンドル部材33等の様々な部材の具体的な形状は、それ自体が本発明の本質的な特徴ではなく、重要なことは、他の実施形態との関係において、以下に詳細に説明するように、運転者の手首関節及び手に対する軸A1及びA2の関係であることは、当業者には理解されるべきである。
【0019】
コネクタ部材25の最後部の部分がジョイント部材23の後部の外へ延び(図1にのみ示される)、この部分は、センタリングスプリングアセンブリ35の中へ延びており、このセンタリングスプリングアセンブリ35の機能は、コネクタ部材25(同様に、センサアセンブリ29、コネクタ部材31及びハンドル部材33)を図1及び図2に示される通常のニュートラル位置へ常時付勢することである。センタリングスプリングアセンブリ35は、コネクタ部材25の最後部の上下に設けられた一対の圧縮スプリング等の多くの形態をとることができ、その形態の詳細は本発明の一部ではないことは当業者には分かるであろう。センタリングスプリング35等の部品の詳細を提供することは、当業者の能力の範囲内であると考える。
【0020】
同様に、センサアセンブリ29の中には、捩りバネ又は他の形態のセンタリングスプリング構造(ここには図示せず)が配置されて、センサアセンブリ29を回転軸A2に対してニュートラル位置へ向って付勢している。例示に過ぎないが、本実施形態では、センサアセンブリ29の中のセンタリングスプリングがセンサアセンブリ29をそのニュートラル位置へ戻したとき、ハンドル部材33は、ほぼ垂直位置に向けられる。しかしながら、この実施形態の制御アセンブリは、回転軸A1が水平面上にある代わりに、車両の左側から中央へ向って下降する平面上にあるように向けることができることは、当業者には理解されるであろう。特定の状況に対しては、そのような構造は、運転者に対して人間工学的により適している。
【0021】
引続き図1及び図2を参照して、運転者が左手でハンドル部材33を把持している状態で、車両を前方へ移動させたい場合、ハンドル部材33を前方へ回動させる。この手動入力の類によって、ハンドル部材33、コネクタ部材31、センサアセンブリ29及びコネクタ部材25の全てのアセンブリは、互いの固定された位置を維持して(一体となって)、F−R軸10によって形成される回転軸A1に対してピボット運動する。換言すると、ハンドル部材33のピボット点(すなわち、ハンドル部材33がその回りをピボット運動する点)は、図1に最もよく示されるように、回転軸A1であり、この回転軸A1は、好ましくは、ほぼ手首関節において運転者の腕を通過し、すなわち、ハンドル部材33に対するピボット点は、運転者の手の通常のピボット点と一致する。
【0022】
車両運転者がHSTの右側に対して左側の速度を変化させることによって車両を旋回させたいとき、運転者は、ハンドル部材33を望まれる旋回に対応する方向へ回動させるだけである。例えば、前進方向において車両を旋回させるため、車両運転者は、ハンドル部材の上部が取付ブラケット11へ向って移動してコネクタ部材31が運転者へ向って移動するようにハンドル部材33を回動させる。本発明の重要な特徴に従って、車両の旋回は、ハンドル部材33を回転軸A2すなわちL−R軸回りに回動させることによって実行され、L−R軸は、運転者の腕ARM(図3参照)の軸(図3のA参照)にほぼ一致しているので、運転者の腕の横方向の運動を必要とせず、その代わりに、ハンドル部材33をL−R軸A2回りに回動させるための運動だけでよい。
【0023】
引続き主に図1及び図2を参照して、本発明の主な利点の一つは、上述のように、車両運転者の左手がハンドルアセンブリ33を保持している状態で、第1のピボット軸A1は、運転者の腕をほぼ手首関節で横切るのに対して、第2のピボット軸A2は、運転者の腕の軸Aとほぼ整合(一致)する。ピボット軸A1が運転者のほぼ手首関節を通るので、車室の中で運転者を前後に移動させるような車両の運動の影響は、運転者からハンドルアセンブリ29への望まれない入力があったとしても、小さいものである。また、同様に、第2のピボット軸A2は、運転者の腕とほぼ一致するので、運転者を車室の中で左右に移動させるような車両の運動の影響は、運転者からハンドルアセンブリ29へ望まれない入力があったとしても、小さいものである。
【0024】
図3及び図4を参照すると、様々な要素に「符号40」を超える参照符号が付された本発明の他の実施形態が図示されている。図1及び図2に示す実施形態と同様、図3及び図4の実施形態は、取付ブラケット41(取付部材)を含み、取付ブラケット41には、前進−後退センサ43(第1センサ)が取付けられている。前進−後退センサ43の外へ前進−後退軸45(図4に最もよく示される)が延びており、前進−後退軸45は、円筒状のジョイント部材47の中へ延びている。第1実施形態と同様、F−R軸45は、回転軸A1を形成している。F−R軸45の周りには、捩りタイプの前進−後退センタリングスプリング49が配置され、前進−後退センタリングスプリング49の両端部は、ピン51に係合している。
【0025】
ジョイント部材47の前部から中空のコネクタ部材53が延びており、コネクタ部材53は、図3及び図4において上方にハンドル部材57の中へ延びる前方で垂直に向けられた端部55を含んでいる。図3に最もよく示されるように、ハンドル部材57は、第1実施形態のハンドル部材33とほぼ同一の外形を有するものでよいが、図4に表されるように、ハンドル部材57の内部は、ハンドル部材33とは異なっている。
【0026】
図4に最もよく示されるように、ハンドル部材57への垂直に向けられた部分55の連結点は、ハンドル部材57がこの点55に対して回転軸A2回りにピボット運動するようになっており、回転軸A2は、また、左−右(L−R)軸として参照されて、図4において矢印によって示される対応する角度の中心である。
【0027】
第1実施形態と同様、車両運転者がハンドル部材57を握ったとき、回転軸A1は、手首関節で運転者の腕を通り、運転者がハンドル部材57を前方(ピボット軸A1回りに)又は後方にそれぞれ回動させるだけで、車両を前方又は後方へ動かせるようになっている。本発明の重要な一つの特徴によれば、図4に最もよく示されるように、運転者の手が通常の方法でハンドル部材57を把持している状態で、回転軸A1は、以下に更に説明するように、運転者の腕の軸Aと交差し、又は、軸Aの僅かに上方又は下方に配置される。車両の前進又は後退に対しては、図3及び図4の実施形態における(図1及び図2の実施形態と比較した)主な相違は、コネクタ部材53が第1実施形態のコネクタ部材25よりも実質的に短いことであるが、そうでなければ、車両の前進又は後退を実行するめのハンドル部材57の操作は、第1実施形態と実質的に同じである。
【0028】
図3及び図4の実施形態において、車両の旋回は、第1実施形態において行われたように、ハンドル部材57をL−R軸A2回りにピボット運動させることによって行われる。しかしながら、図3及び図4の実施形態においては、ハンドル部材の外部に分離した軸方向に延びるセンサ及びセンタリングスプリングアセンブリを有しているのではなくて、必要なセンサ及びセンタリングスプリングは、垂直に向けられた部分55に連動してハンドル部材57の中に配置されている。必要なセンサ及びセンタリングスプリングを設け、これにより、ハンドル部材57の軸A2回りのピボット運動が信号を生じ、この信号の極性がハンドル部材57の移動方向(左又は右回転)を表し、信号の大きさがハンドル部材57の移動量を表すようにすることは、当業者の能力の範囲内であると考える。
【0029】
主に図5、図6及び図7を参照して、本発明の更なる実施形態について説明する。図5乃至図7の実施形態においては、構成要素には「符号60」を超える参照符号を付す。これにより、本実施形態は、ここでは直角ブラケット(図5参照)として示される取付ブラケット61(取付部材)を含み、取付ブラケット61には、支持部材63が取付けられている。支持部材63には、図5において支持部材63から上方に延びる略円筒状のコネクタ部材65が固着されており、コネクタ部材65は、ハンドル部材69によって形成される内部室へ上方に延びる小径部67を支持している(図6参照)。
【0030】
上述の2つ実施形態とこの第3実施形態とを比較することによって分るように、ハンドル部材69は、ほぼ垂直に向けられたハンドル部材33及び57とは相当に異なって形成されている。ハンドル部材69は、図5に最もよく示されるように、ほぼ水平の方向を有し、第1ピボット軸A1(前進−後退軸)を形成する小径部67の上端部と協働する。本制御アセンブリは、運転者がハンドル部材69を前進方向又は後退方向にそれぞれF−R軸(A1)回りに回転させることによって、簡単に車両の前進又は後退を指令するのに使用することができる。図5乃至図7の実施形態においては、第1ピボット軸A1は、運転者の手首関節を通らないが、その代わりに、運転者の手首関節のやや前方に配置されて、運転者の手によって取囲まれることに注意すべきである。
【0031】
同様に、ハンドル部材69は、小径部67の上端部と協働して、第2ピボット軸A2(左−右軸)を形成する。これにより、本制御アセンブリは、運転者がハンドル部材69をL−R軸A2回りに左回転又は右回転させることによって簡単に車両の左又は右旋回を指令するのに使用することができる。しかしながら、図5乃至図7の実施形態の一つの利点は、第2ピボット軸A2を上述の実施形態のように運転者の腕の軸Aとほぼ一致させることができ、あるいは、垂直に向けることができることであり、これらは、いずれも図5及び図6に示されている。これにより、車両製造業者の選択に基づいて、軸A2を水平にすることができ、この場合、旋回は上述のように行われ、又は、軸A2を垂直にすることができ、この場合、旋回は、ハンドル部材69を垂直の軸A2回りに回転させることによって行われる。
【0032】
以上に記述された3つの実施形態の様々な特徴は、ここに図示及び記述されたものとは異なる方法で組合わせることができることは、当業者は理解すべきである。例えば、図5乃至図7の実施形態は、ほぼ水平方向に向けられたハンドル部材を使用するが、その実施形態の構造は、ハンドル部材を垂直軸A2回りに回転させることによって旋回を行う(前述の実施形態のような)垂直方向に向けられたハンドル部材を利用することもできる。以上に示された特徴の様々な他の組合せを当業者は思いつくことができ、全てのそのような変形及び組合わせは、添付の特許請求の範囲内である限り、本発明の範囲内に含まれるものとする。
【0033】
本発明の様々な実施形態を設計する過程で、本発明の一つの重要な特徴は、ハンドルへの全ての不用意な入力の大きさは、運転者の腕の軸Aと特定のピボット軸との間の距離(一般的には垂直距離)に直接的に比例するという事実が認識されるようになった。これにより、例えば、運転者の腕の軸Aがピボット軸A1と交差する(すなわち、垂直距離がゼロである)場合、(車両を前進又は後退させる)不用意な入力は、ほぼゼロになるはずである。同様に、運転者の腕の軸Aがピボット軸A2と一致する(すなわち、垂直又は横方向のいずれかの距離がゼロである)場合、(車両を左又は右へ移動させる)不用意な入力は、ほぼゼロになるはずである。このことから、本発明の範囲内において、運転者の腕の軸Aと特定のピボット軸との間にいくらかの距離があってもよいが、この場合、「望ましくない」距離が増大するからには、これにより、本発明の利点が完全には得られないことがわかる。
【0034】
主に図8及び図9を参照すると、上述の主な利点を得る本発明の最後の実施形態の一つが示されている。図8及び図9の実施形態では、構成要素には、「符号80」を超える参照符号が付してあり、車両運転者の左手及び右手でそれぞれ把持される一対のハンドル部材81及び83が設けられている。図示の簡略化のため、ハドル部材81及び83は、一対のコネクタ部材85及び87によって、それぞれ中央支持部材89に取付けられるように示され、中央支持部材89は、その縦軸回りに回転可能である。本実施形態の一つの重要な特徴によれば、支持部材89の縦軸は、ピボット軸A2(L−R軸)と一致する。これにより、旋回は、ハンドル部材81及び83を幾分ステアリングホイールの場合のように動かすことによって行われ、車両の旋回角度は、支持部材89のピボット軸A2回りの回転角度に対応する。図8及び図9におけるピボット軸A2は、前述の実施形態とは異なり車両の中央、すなわち、車両の左側及び右側から等距離に配置されるため、特許請求の範囲において「車両の軸」として以下に参照される方向に表されていることに注意すべきである。
【0035】
車両を前進又は後退させるため、運転者は、両方のハンドル部材81及び83を同時にニュートラル位置(図9において符号「83」で表される)から移動させて、ハンドル部材81、83及びコネクタ部材85、87のアセンブリをピボット軸A1に対してピボット運動させるだけである。前進させるためには、このアセンブリが前進位置(図9において符号「83F」及び「87F」で表される)へピボット運動され、また、後退させるためには、このアセンブリが後退位置(図9において符号「83R」で表される)へピボット運動される。いずれの場合でも、ピボット軸A1は、依然として車両運転者の腕と交差しており、これにより、腕の軸Aとピボット軸A1との間の垂直距離を最小にして、ハンドル部材81及び83への不用意な入力運動を最小限にする。
【0036】
本発明は、以上の明細書に詳細に説明されており、本明細書を読んで理解することによって当業者には本発明の様々な変形及び修正が明らかになると考える。そのような全ての変形及び修正は、添付の特許請求の範囲の範囲内にある限り、本発明に含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に従って製造され、かつ、車両運転者の左手によって操作されるのに適した制御アセンブリのほぼ運転席から車両の左側へ向ってみた斜視図である
【図2】図1に示される実施形態の斜視図であるが、図1ではよく見られない制御アセンブリの部分がよく見えるように、運転席の前方から幾分車両の後方へ向って見た図である。
【図3】図1と同様の方向であるが、幾分前方よりを見た本発明の他の実施形態を示す斜視図である。
【図4】図3の他の実施形態を図3よりも僅かに拡大して示す後面図である。
【図5】図3と同様の方向から見た本発明の更に別の実施形態を示す斜視図である。
【図6】図5の右側から車両の左側へ向って見た拡大側面図である。
【図7】図5及び図6に示される実施形態を図6よりも僅かに縮小して示す平面図である。
【図8】本発明の更に他の実施形態を図5と同様の方向から見た幾分概略的な斜視図である。
【図9】ハンドル部分の動きを破線で示した図8の右側から車両の左側へ向ってみた側面図である。
【符号の説明】
【0038】
11 取付ブラケット(取付部材)、23 ジョイント部材(第1部分)、25 コネクタ部材、31 コネクタ部材33(第2部分)、ハンドル、21 センサアセンブリ(第1センサ)、29 センサアセンブリ(第2センサ)、


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2制御信号の変化に応答して制御される車両に使用するための制御アセンブリであって、
当該制御アセンブリは、固定された取付部材(11;41;61)と、車両運転者の手で保持されるハンドル(33;57;69)とを備え、前記ハンドルは、前記第1制御信号を発生させるために前進及び後退方向に移動可能であり、かつ、前記第2制御信号を発生させるために左右方向に移動可能であり、
(a)前記ハンドル(33;57;69)は、上端部と、下端部と、該ハンドルの中で前記上端部と前記下端部とのほぼ中間に配置されたピボット位置(A2)とを形成し、
(b)当該制御アセンブリは、更に、第1ピボット軸(A1)回りにピボット取付された第1部分(23;47)と、前記ピボット位置(A2)で前記ハンドル(33;57;69)に連結された第2部分(31;55;67)とを有する細長いコネクタ部材(23,25;47,53;65)を備え、
(c)当該制御アセンブリは、更に、前記コネクタ部材(23,25;47,53)の前記第1部分及び前記第1ピボット軸(A1)に連動する第1センサ(21;43)を備え、前記コネクタ部材の前記第2部分(31;55;67)と前記ハンドル(33;57;69)の前記ピボット位置(A2)との結合部は、前記ハンドルの前進及び後退方向の移動によって、前記ハンドルと前記コネクタ部材(23,25;47,53;65,67)とが一体となって移動し、前記コネクタ部材の前記第1部分が前記第1軸(A1)回りにピボット運動して、前記第1センサ(21;43)が前記第1制御信号を発生するようになっており、
(d)当該制御アセンブリは、更に、前記コネクタ部材(23,25;47,53;65)の前記第2部分(31;55;67)及び前記ピボット位置(A2)に連動する第2センサ(29)を備え、前記コネクタ部材の前記第2部分と前記ハンドルの前記ピボット位置(A2)との連結部は、前記ハンドルの左右方向の移動によって、前記ハンドルが前記コネクタ部材の前記第2部分回りにピボット運動して、前記第2センサ(29)が前記第2制御信号を発生するようになっていることを特徴とする制御アセンブリ。
【請求項2】
前記コネクタ部材(23,25;47,53;65)は、前記ハンドル(33;57;69)が車両運転者の手に通常の方法で保持されたとき、前記第1ピボット軸(A1)が車両運転者の腕にほぼ垂直に向けられるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の制御アセンブリ。
【請求項3】
前記コネクタ部材(23,25;47,53;65)は、前記ピボット軸(A1)が車両運転者の腕と手首関節で交差するように形成されていることを特徴とする請求項2に記載の制御アセンブリ。
【請求項4】
前記ハンドル(57;69)は、少なくとも前記ピボット位置から該ハンドルの前記下端部へ延びる内側凹部を形成し、前記コネクタ部材の前記第2部分(55;67)は、前記内側凹部を通って上方へ前記ピボット位置(A2)へ延びていることを特徴とする請求項1に記載の制御アセンブリ。
【請求項5】
第1及び第2制御信号の変化に応答して制御される車両に使用するための制御アセンブリであって、
当該制御アセンブリは、固定された取付部材(11;41;61)と、車両運転者の手で保持されるハンドル(33;57;69)とを備え、前記ハンドルは、前記第1制御信号を発生させるために前進及び後退方向に移動可能であり、かつ、前記第2制御信号を発生させるために左右方向に移動可能であり、
(a)当該制御アセンブリは、更に、それ自体、又は、固定された前記取付部材(11,41;61)及び前記ハンドル(33;57;69)の一方と協働して、第1ピボット軸(A1)を形成する細長いコネクタ部材(23,25;47,53;65)を備え、前記ハンドルが車両運転者の手に通常の方法で保持されたとき、前記第1ピボット軸(A1)が車両運転者の腕にほぼ垂直に向けられ、かつ、車両運転者の手及び腕の一方とほぼ交差することを特徴とする制御アセンブリ。
【請求項6】
細長い前記コネクタ部材(23,25;47,53;65)は、前記ハンドル(33;57;69)と協働して、前記第1ピボット軸(A1)にほぼ垂直に向けられた第2ピボット軸(A2)を形成し、前記ハンドルが車両運転者の手に通常の方法で保持されたとき、前記第2ピボット軸(A2)が車両運転者の腕にほぼ同軸となることを特徴とする請求項5に記載の制御アセンブリ。
【請求項7】
細長い前記コネクタ部材(23,25;47,53;65)は、固定された前記取付部材(11;41)と協働して、前記第1ピボット軸(A1)を形成し、車両運転者が前記ハンドル(33;57)を前進及び後退方向へ移動したとき、前記ハンドルと前記コネクタ部材とが一体となって移動して、前記第1ピボット軸(A1)回りにピボット運動することを特徴とする請求項5に記載の制御アセンブリ。
【請求項8】
前記コネクタ部材(23,25;47,53)と前記ハンドル(33;57)とが協働して前記ハンドルの中に配置されたピボット位置(A2)を形成し、前記ハンドルは、上端部及び下端部を含み、前記ピボット位置(A2)が前記上端部と前記下端部とのほぼ中間に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の制御アセンブリ。
【請求項9】
細長い前記コネクタ部材(23,25;47,53)と前記第1ピボット軸(A1)とに連動する第1センサ(21;43)を備え、前記ハンドルの前進及び後退方向の移動によって、前記第1センサ(21;43)が前記第1制御信号を発生することを特徴とする請求項5に記載の制御アセンブリ。
【請求項10】
前記コネクタ部材(23,25;47,53)と前記ピボット位置(A2)とに連動する第2センサ(29)を備え、前記ハンドルの左右方向の移動によって、前記第2センサ(29)が前記第2制御信号を発生することを特徴とする請求項8に記載の制御アセンブリ。
【請求項11】
第1及び第2制御信号の変化に応答して制御される車両に使用するための制御アセンブリであって、
当該制御アセンブリは、車両運転者の手で保持されるハンドル部材(33;57;69;81,83)を備え、車両運転者の腕が軸(A)を形成し、前記ハンドル部材は、前記第1制御信号を発生させるために前進及び後退方向に移動可能であり、かつ、前記第2制御信号を発生させるために左右方向に移動可能であり、
(a)前記ハンドル部材(33;57;69;81,83)は、コネクタ部材(23;53;65;85,87)に取付けられて、第1ピボット軸(A1)回りに前進及び後退方向に移動可能であり、かつ、第2ピボット軸(A2)回りに左右方向に移動可能であり、
(b)前記ハンドル部材(33;57;69;81,83)及び前記コネクタ部材(23;53;65;85,87)は、前記第1ピボット軸(A1)が車両運転者の腕の前記軸(A)とほぼ交差することによって、前記ハンドル部材への前進及び後退方向の不用意な入力を最小限にするようになっており、
前記ハンドル部材(33;57;69;81,83)及び前記コネクタ部材(23;53;65;85,87)は、前記第2ピボット軸(A2)が車両運転者の腕の前記軸(A)にほぼ平行に向けられることによって、前記ハンドルへの不用意な入力を最小限にするようになっていることを特徴とする制御アセンブリ。
【請求項12】
前記ハンドル部材(33;57;69)及び前記コネクタ部材(23;53;65)は、前記第2ピボット軸(A2)が車両運転者の腕の前記軸(A)にほぼ同軸に向けられるように形成されていることを特徴とする請求11に記載の制御アセンブリ。
【請求項13】
ほぼ同一で前記第2ピボット軸(A2)回りに反対側に配置された一対のハンドル部材(81,83)を含み、更に、前記コネクタ部材は、ほぼ同一で前記第2ピボット軸(A2)回りに反対側に配置された一対のコネクタ部材(85、87)からなることを特徴とする請求項11に記載の制御アセンブリ。
【請求項14】
更に、前記第2ピボット軸(A2)とほぼ一致する軸回りに回転可能な中央支持部材(89)を含み、前記一対のコネクタ部材(85,87)は、それぞれ、そのハンドル部材(81,83)に固定された外側端部及び前記中央支持部材(89)に連動する内側端部を有していることを特徴とする請求項13に記載雄制御アセンブリ。
【請求項15】
第1及び第2制御信号の変化に応答して制御される車両に使用するための制御アセンブリであって、
当該制御アセンブリは、車両運転者の手で保持されるハンドル部材(33;57;69;81,83)を備え、車両運転者の腕が軸(A)を形成し、前記ハンドル部材は、前記第1制御信号を発生させるために前進及び後退方向に移動可能であり、かつ、前記第2制御信号を発生させるために左右方向に移動可能であり、
(a)前記ハンドル部材(33;57;69;81,83)は、ニュートラル位置から前進−後退軸(A1)回りに前進及び後退方向に移動可能であり、前記前進−後退軸(A1)は、車両の軸にほぼ垂直に向けられおり、
(b)前記前進−後退軸(A1)は、車両運転者の手が前記ハンドル部材(33;57;69;81,83)に対して通常の把持関係にあるとき、車両運転者の手をほぼ手首関節で通過するように配置されており、
(c)当該制御アセンブリは、更に、前記ハンドル部材(33;57;69;81,83)及び前記前進−後退軸(A1)の一方に連動して、前記ハンドル部材のニュートラル位置からの前記前進−後退軸回りのピボット運動を表す第1出力を供給する第1センサ(21;43)を備え、
(d)前記ハンドル部材(33;57;69;81,83)は、ニュートラル位置から左−右軸(A2)回りに左右方向に移動可能であり、前記左−右軸は、車両の軸にほぼ平行に向けられており、
(e)当該制御アセンブリは、更に、前記ハンドル部材及び前記左−右軸(A2)の一方に連動して、前記ハンドル部材のニュートラル位置からの前記左−右軸(A2)回りの移動を表す第2出力を供給する第2センサ(29)を備えていることを特徴とする制御アセンブリ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−131221(P2006−131221A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−320922(P2005−320922)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【出願人】(390033020)イートン コーポレーション (290)
【氏名又は名称原語表記】EATON CORPORATION
【Fターム(参考)】