説明

改良代用皮膚およびその使用法

【課題】インビトロ培養代用皮膚、特にバリアー機能が改良されたインビトロ培養代用皮膚の提供。
【解決手段】バリアー機能を改良するための改良された培養条件、特にリノール酸および/またはリノール酸の存在下における湿度約75%での器官培養、バリアー機能を改良するために適した遺伝子改変、特にGKLFを発現しうるDNA構築物によるトランスフェクション、この種の代用皮膚を、刺激活性に関する化合物のスクリーニングに用い、新規な刺激物応答性遺伝子を同定する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2001年5月1日に提出された米国仮特許出願第60/287,898号および2001年3月2日に提出された第60/273,034号、ならびに速達ラベル(Express Mail Label)XXXで2002年3月1日に提出された番号未指定の米国特許出願、速達ラベルXXXで2002年3月1日に提出された番号未指定の米国特許出願、および速達ラベルXXXで2002年3月1日に提出された番号未指定の米国特許出願に対する優先権を請求する。本特許出願は一部には、NIHのSBIR助成金1 R43 AR47499-01および1 R43 ES10692-01A1による資金援助を受けた。米国政府は本発明において一定の権利を有する。
【0002】
発明の分野
本発明は、インビトロ培養代用皮膚(in vitro cultured skin substitute)、特にバリアー機能が改良されたインビトロ培養代用皮膚に関する。いくつかの態様において、バリアー機能の改良は培養条件の改良の結果であり、また別の態様において、バリアー機能の改良はケラチノサイトの遺伝子改変に起因する。本発明はさらに、この種の代用皮膚を刺激性試験に用いることにも関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
皮膚バリアー機能の影響を予測しうる検査用の製品およびサービスには大きな市場がある。開発初期段階にある化合物を有する企業が、費用のかかる動物およびヒトでのパッチテストに頼らずにバリアー機能の試験を行えるようにする有効なアッセイ法に対しては、特別な需要が存在する。化粧品会社は、この種の試験に毎年約5000万ドル〜1億ドルを費やしている。家庭用品会社および製薬企業も同程度の費用を投じている。
【0004】
さらに、熱傷治療のため、該当する上皮組織の修復または支持のため、および他の創傷および皮膚の閉鎖に用いるための製品にもかなり大きな市場がある。例えば、下肢静脈性潰瘍の患者は米国で約100万人、世界中に300万人おり、糖尿病性潰瘍および褥瘡(床ずれ)などの他の潰瘍性疾患の患者も世界中に1000万人いる。静脈性潰瘍の標準的な治療では創傷が治癒するのに6カ月以上かかり、1万ドルを上回る費用を要する恐れがある。さらに、足部潰瘍は糖尿病患者の入院の主な原因であり、米国の保健医療システムにかかる費用は毎年10億ドルを上回ると推定されている。米国における熱傷による入院の推計値は毎年60,000〜80,000件の範囲であり、急性損傷から回復するのに要する費用は患者1人当たり36,000ドル〜117,000ドルである。
【0005】
ヒトの皮膚の主な機能は、経皮的な水分損失に対する障壁、および毒性化合物または微生物の侵入を防ぐための障壁となることである。上皮透過障壁が生じるためには、ケラチノサイト特異的なタンパク質および脂質産物の協調的な合成および代謝が行われ、それらが集合して皮膚の最外層である角質層となることが必要である。これらの細胞外脂質の合成に必要とされる重要な酵素の多くの発現は、ケラチノサイトの分化時または上皮バリアー機能の破壊後にアップレギュレートされることから、バリアー機能の発生を促進する働きをする転写因子が存在する可能性が示唆されている(Sandoら、J. Biol. Chem., 271(36): 22044-51 (1996)(非特許文献1);Watanabeら、J. Biol. Chem., 273(16): 9651-5 (1998)(非特許文献2))。バリアー機能は、刺激物質に対する曝露により、感染により、ならびにアトピー性皮膚炎および乾癬を含む数多くの疾患により損なわれる。環境ストレスは、皮膚の必須なバリアー機能に対するこれらの状態の影響を悪化させる恐れがある。多くの業界は、自らの製品が皮膚のバリアー機能にどのような影響を及ぼすかに関心を抱いている。例えば、医薬品の経皮的な送達に携わっている企業は、有効成分の障壁に対する透過性を高める必要がある。化粧品会社は、バリアー機能を改善する配合物を見いだすことに関心を抱いている。
【0006】
開発プロセスの初期段階にある化合物または配合物の試験を迅速かつ高い精度で行うためには、ヒト皮膚のバリアー特性を模したインビトロ試験があれば有益と考えられる。しかし、発表されている研究によれば、EPIDERM、SKINETHICSまたはEPISKINといった既存の培養皮膚同等物(skin equivalent culture)のバリアー機能は極めて乏しい(Ponecら、J. Invest. Dermatol., 109(3): 348-55 (1997)(非特許文献3))。しかし、バリアー機能が正しく発生するためには、ビタミンC、核内ホルモン受容体、脂質合成および湿度が重要であるとの理解が最近かなり進んでいる(Ponecら、J. Invest. Dermatol, 109(3): 348-55 (1997)(非特許文献3);Dendaら、J. Invest. Dermatol., 111(5): 858-63 (1998)(非特許文献4);Hanleyら、J. Clin. Invest., 100(3): p.705-12 (1997)(非特許文献5);Hanleyら、S. Invest. Dermatol., 113(5): 788-95 (1999)(非特許文献6))。多くの場合、これらの研究は、子宮内の特定の時期にバリアー機能を確立させる自然な発生プログラムの引き金となる、化学的または環境的なシグナルに的を絞っている。明らかに、バリアー機能が改良された代用皮膚に対しては大きな需要が存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Sandoら、J. Biol. Chem., 271(36): 22044-51 (1996)
【非特許文献2】Watanabeら、J. Biol. Chem., 273(16): 9651-5 (1998)
【非特許文献3】Ponecら、J. Invest. Dermatol., 109(3): 348-55 (1997)
【非特許文献4】Dendaら、J. Invest. Dermatol., 111(5): 858-63 (1998)
【非特許文献5】Hanleyら、J. Clin. Invest., 100(3): p.705-12 (1997)
【非特許文献6】Hanleyら、S. Invest. Dermatol., 113(5): 788-95 (1999)
【発明の概要】
【0008】
発明の概要
本発明は、インビトロ培養代用皮膚、特にバリアー機能が改良されたインビトロ培養代用皮膚に関する。いくつかの態様において、バリアー機能の改良は培養条件の改良の結果であり、また別の態様において、バリアー機能の改良はケラチノサイトの遺伝子改変に起因する。本発明はさらに、この種の代用皮膚を刺激性試験に用いることにも関する。
【0009】
本発明は、ヒト皮膚同等物を含む組成物であって、皮膚同等物の表面静電容量が約40〜約240pFであるような組成物を提供する。いくつかの好ましい態様において、皮膚同等物の表面静電容量は約80〜約120pFである。また別の好ましい態様において、皮膚同等物におけるセラミド5、6および7の総合含有量(combined content)は、セラミド総含有量の約20〜約50%である。さらに他の好ましい態様において、皮膚同等物におけるセラミド2の含有量はセラミド総含有量の約10〜約40%である。本発明は、特定のケラチノサイト源から形成された皮膚同等物には限定されない。実際には、皮膚同等物を、NIKS細胞を含むさまざまな初代ケラチノサイトおよび不死化ケラチノサイトから形成させることもできる。さらに別の態様において、ケラチノサイトは外因性の野生型またはバリアント型のGKLFを発現する。さらに別の態様において、ケラチノサイトは2種またはそれ以上の異なる源に由来する。
【0010】
他の態様において、本発明は、GKLFをコードする配列が外因性プロモーターと機能的に結合したものを含む、単離されたケラチノサイトを提供する。さらに別の態様において、本発明は、外因性GKLFをコードする配列が外因性プロモーターと機能的に結合したものを含む、器官培養ケラチノサイトを提供する。
【0011】
いくつかの態様において、本発明は、バリアー機能が改良された皮膚同等物を作製するための方法を提供する。いくつかの態様において、本方法は、ケラチノサイト、ならびにアスコルビン酸およびリノール酸を含む培地を提供する段階;ならびに、ケラチノサイトを、バリアー機能が改良された皮膚同等物が形成される条件下で培養する段階、を含む。いくつかの態様において、培養条件は、湿度約50〜95%、好ましくは湿度約75%での培養を含む。いくつかの好ましい態様において、アスコルビン酸は約10〜100μg/mlの濃度で提供される。さらに別の好ましい態様において、リノール酸は約5〜80μMの濃度で提供される。本発明は、特定のケラチノサイト源から形成された皮膚同等物には限定されない。実際には、皮膚同等物を、NIKS細胞を含むさまざまな初代ケラチノサイトおよび不死化ケラチノサイトから形成することもできる。さらに別の態様において、ケラチノサイトは外因性の野生型またはバリアント型のGKLFを発現する。さらに別の態様において、ケラチノサイトは2種またはそれ以上の異なる源に由来する。他の態様において、皮膚同等物の表面静電容量は約40〜約240pFである。いくつかの好ましい態様において、皮膚同等物の表面静電容量は約80〜約120pFである。また別の好ましい態様において、皮膚同等物におけるセラミド5、6および7の含有量は、セラミド総含有量の約20〜約50%である。さらに他の好ましい態様において、皮膚同等物におけるセラミド2の含有量はセラミド総含有量の約10〜約40%である。さらに別の態様において、本発明は、直前に記載した方法によって作製される皮膚同等物を提供する。
【0012】
他の態様において、本発明は、バリアー機能が改良された皮膚同等物を作製するための方法であって、ケラチノサイト、およびGKLFをコードする配列が外因性プロモーターと機能的に結合したものを含むDNA構築物を提供する段階;ケラチノサイトに前記DNA構築物をトランスフェクトして、トランスフェクトされたケラチノサイトを得る段階;ならびに、トランスフェクトされたケラチノサイトを、バリアー機能が改良された皮膚同等物が形成される条件下で培養する段階、を含む方法を提供する。いくつかの態様において、培養の段階は、トランスフェクトされたケラチノサイトを、アスコルビン酸およびリノール酸を含む培地中で培養する段階を含む。いくつかの好ましい態様において、アスコルビン酸は約10〜100μg/mlの濃度で提供される。さらに別の好ましい態様において、リノール酸は約5〜80μMの濃度で提供される。本発明は特定のケラチノサイト源から形成された皮膚同等物には限定されない。実際には、皮膚同等物を、NIKS細胞を含むさまざまな初代ケラチノサイトおよび不死化ケラチノサイトから形成することもできる。さらに別の態様において、ケラチノサイトは外因性の野生型またはバリアント型のGKLFを発現する。さらに別の態様において、ケラチノサイトは2種またはそれ以上の異なる源に由来する。他の態様において、皮膚同等物の表面静電容量は約40〜約240pFである。いくつかの好ましい態様において、皮膚同等物の表面静電容量は約80〜約120pFである。また別の好ましい態様において、皮膚同等物におけるセラミド5、6および7の含有量は、セラミド総含有量の約20〜約50%である。さらに他の好ましい態様において、皮膚同等物におけるセラミド2の含有量はセラミド総含有量の約10〜約40%である。さらに別の態様において、本発明は、記載した方法によって作製される皮膚同等物を提供する。
【0013】
さらに他の態様において、本発明は、化合物のスクリーニングのための方法を提供する。いくつかの態様において、本方法は、表面静電容量が約40〜約240pFである皮膚同等物を提供する段階;および皮膚同等物を前記化合物で処理する段階を含む方法を提供する。さらなる態様において、本方法は、段階c)前記皮膚同等物に対する前記化合物の影響をアッセイする段階、を含む。いくつかの好ましい態様において、化合物はコンビナトリアルライブラリーから選択される。本発明は、特定のケラチノサイト源から形成された皮膚同等物には限定されない。実際には、皮膚同等物を、NIKS細胞を含むさまざまな初代ケラチノサイトおよび不死化ケラチノサイトから形成させることもできる。さらに別の態様において、ケラチノサイトは外因性の野生型またはバリアント型のGKLFを発現する。さらに別の態様において、ケラチノサイトは2種またはそれ以上の異なる源に由来する。他の態様において、皮膚同等物の表面静電容量は約40〜約240pFである。いくつかの好ましい態様において、皮膚同等物の表面静電容量は約80〜約120pFである。また別の好ましい態様において、皮膚同等物におけるセラミド5、6および7の含有量は、セラミド総含有量の約20〜約50%である。さらに他の好ましい態様において、皮膚同等物におけるセラミド2の含有量はセラミド総含有量の約10〜約40%である。
【0014】
他の態様において、本発明は、表面静電容量が約40〜約240pFである少なくとも1つの皮膚同等物を含むキットを提供する。さらに他の態様において、本キットは、少なくとも1つの皮膚同等物を培養するための培地を含む。いくつかの態様において、本キットはさらに、皮膚同等物を培養するための説明書を含む。他の態様において、本キットはさらに、前記の少なくとも1つの皮膚同等物を用いて化合物を試験するための説明書を含む。本発明は、特定のケラチノサイト源から形成された皮膚同等物には限定されない。実際には、皮膚同等物を、NIKS細胞を含むさまざまな初代ケラチノサイトおよび不死化ケラチノサイトから形成することもできる。さらに別の態様において、ケラチノサイトは外因性の野生型またはバリアント型のGKLFを発現する。さらに別の態様において、ケラチノサイトは2種またはそれ以上の異なる源に由来する。他の態様において、皮膚同等物の表面静電容量は約80〜約120pFである。いくつかの好ましい態様において、皮膚同等物の表面静電容量は約80〜約120pFである。また別の好ましい態様において、皮膚同等物におけるセラミド5、6および7の含有量は、セラミド総含有量の約20〜約50%である。さらに他の好ましい態様において、皮膚同等物におけるセラミド2の含有量はセラミド総含有量の約10〜約40%である。
【0015】
さらに別の態様において、本発明は、皮膚刺激物の疑いのある化合物のスクリーニングの方法であって、皮膚刺激物の疑いのある化合物;刺激物応答性レポーター遺伝子構築物を含む皮膚同等物を提供する段階;および前記皮膚同等物を前記化合物と接触させる段階;および前記レポーター遺伝子構築物からの遺伝子発現のレベルを測定する段階、を含む方法を提供する。いくつかの態様において、ヒト皮膚同等物の表面静電容量は約80〜約120pFである。いくつかの態様において、皮膚同等物におけるセラミド5、6および7の含有量はセラミド総含有量の約20〜約50%である。他の態様において、前記皮膚同等物におけるセラミド2の含有量はセラミド総含有量の約10〜約40%である。いくつかの態様において、皮膚同等物は、初代ケラチノサイトおよび不死化ケラチノサイトからなる群より選択されるケラチノサイトを含む。いくつかの態様において、不死化ケラチノサイトはNIKS細胞である。他の態様において、ケラチノサイトは異種GKLFを発現する。さらに他の態様において、刺激物応答性レポーター構築物は、インターロイキン-8およびインターロイキン-1αからなる群より選択される遺伝子の少なくとも一部分を含む。いくつかの好ましい態様において、この部分は調節領域を含む。
【0016】
本発明はまた、刺激物応答性レポーター遺伝子構築物を含むNIKS細胞を含む組成物も提供する。いくつかの態様において、NIKS細胞の表面静電容量は約40〜約240pFである。また別の態様において、NIKS細胞の表面静電容量は約80〜約120pFである。いくつかの態様において、NIKS細胞におけるセラミド5、6および7の総合含有量はセラミド総含有量の約20〜約50%である。また別の態様において、前記NIKS細胞におけるセラミド2の含有量はセラミド総含有量の約10〜約40%である。さらに別の態様において、NIKS細胞は異種GKLFを発現する。いくつかの態様において、NIKS細胞はさらに、GKLFをコードする配列が外因性プロモーターと機能的に結合したものを含むDNA構築物を含む。さらに他の態様において、NIKS細胞はさらに、2種の異なる源に由来するケラチノサイトを含む。他の態様において、NIKS細胞は器官培養物として存在する。
【0017】
さらに他の態様において、本発明は、刺激物応答性遺伝子を同定する方法であって、皮膚刺激性化合物;遺伝子発現アレイ;および皮膚同等物を提供する段階;ならびに前記皮膚刺激性化合物を前記皮膚同等物と接触させて刺激物で処理した皮膚同等物を作製する段階;第1のmRNA試料を前記刺激物で処理した皮膚同等物から単離し、第2のmRNA試料を前記皮膚同等物から単離する段階;前記第1および第2のmRNA試料を前記遺伝子発現アレイと接触させる段階;前記遺伝子発現アレイを、前記刺激物で処理した皮膚同等物において前記皮膚同等物よりも高いレベルで発現される遺伝子の実体が決定されるような条件下で分析する段階、を含む方法を提供する。いくつかの態様において、皮膚同等物は培養ヒトケラチノサイトを含む。また別の態様において、培養ヒトケラチノサイトは器官培養物として存在する。いくつかの態様において、刺激物応答性レポーター構築物は、インターロイキン8およびインターロイキン-1αからなる群より選択される遺伝子の少なくとも一部分を含む。いくつかの好ましい態様において、この部分は調節領域を含む。いくつかの態様において、遺伝子アレイはヒトcDNA配列を含む。
【0018】
本発明はまた、インビトロ培養代用皮膚にも関し、特に代用皮膚の器官培養のための改良された方法にも関する。いくつかの態様において、本発明は、播種された真皮同等物(seeded dermal equivalent)を調製するための工程であって、真皮同等物、ケラチノサイト、および気相界面を有する培地を提供する段階;真皮同等物を培地中で培養する段階;真皮同等物を気相界面まで挙上して、挙上された真皮同等物(lifted dermal equivalent)を得る段階;ならびに真皮同等物にケラチノサイトを播種して、播種された真皮同等物を提供する段階、を含む工程を提供する。本発明は何らかの特定の種類のケラチノサイトの使用には限定されない。実際には、初代ヒトケラチノサイトおよび不死化ヒトケラチノサイトからなる群より選択されるケラチノサイトを非制限的に含む、さまざまな源からのケラチノサイトを用いることを考えている。いくつかの特に好ましい態様において、不死化ケラチノサイトはNIKS細胞である。本発明は何らかの特定の真皮同等物の使用には限定されない。いくつかの好ましい態様において、真皮同等物はコラーゲンおよび線維芽細胞を含む。本発明は何らかの特定の種類のコラーゲンの使用には限定されない。実際には、ラット尾腱コラーゲンを非制限的に含む、さまざまな種類のコラーゲンを用いることを考えている。同様に、本発明は何らかの特定の種類の線維芽細胞の使用には限定されない。実際には、NHDF細胞を非制限的に含む、さまざまな線維芽細胞を用いることを考えている。いくつかの特に好ましい態様において、挙上の段階はさらに、挙上された真皮同等物を播種の前に少なくとも6時間、気相界面でインキュベートする段階を含む。また別の特に好ましい態様において、挙上の段階はさらに、挙上された真皮同等物を播種の前に少なくとも12時間、気相界面でインキュベートする段階を含む。さらに別の特に好ましい態様において、挙上の段階はさらに、挙上された真皮同等物を播種の前に少なくとも18時間、気相界面でインキュベートする段階を含む。さらにより好ましい態様において、挙上の段階はさらに、挙上された真皮同等物で播種の前に約24時間、気相界面でインキュベートする段階を含む。さらに他の好ましい態様において、挙上の段階はさらに、挙上された真皮同等物を播種の前に約6時間〜約24時間、気相界面でインキュベートする段階を含む。
【0019】
いくつかの態様において、本発明の方法はさらに、播種された真皮同等物を、皮膚同等物が形成される条件下でインキュベートする段階を含む。いくつかの好ましい態様において、皮膚同等物は重層化される。特に好ましい態様において、皮膚同等物は重層化されて扁平上皮となる。さらに別の態様において、本発明は、前記の方法によって作製された、播種された真皮同等物および皮膚同等物を提供する。
【0020】
さらに他の態様において、本発明は、多孔性底面および側壁を有するグロースチャンバー(growth chamber)を含む組成物であって、多孔性底面の上に真皮同等物があり、真皮同等物がグロースチャンバーの側壁に実質的に付着している組成物を提供する。本発明は何らかの特定のサイズのグロースチャンバーには限定されない。実際には、さまざまなサイズのグロースチャンバーが考えられる。いくつかの好ましい態様において、グロースチャンバーの多孔性底面は直径約0.1〜20.0cmである。また別の好ましい態様において、グロースチャンバーの多孔性底面は直径約1.0cmである。本発明は何らかの特定の真皮同等物の使用には限定されない。いくつかの好ましい態様において、真皮同等物はコラーゲンおよび線維芽細胞を含む。本発明は何らかの特定の種類のコラーゲンの使用には限定されない。実際には、ラット尾腱コラーゲンを非制限的に含む、さまざまな種類のコラーゲンを用いることを考えている。 同様に、本発明は何らかの特定の種類の線維芽細胞の使用には限定されない。実際には、NHDF細胞を非制限的に含む、さまざまな線維芽細胞を用いることを考えている。いくつかの態様において、組成物はさらにケラチノサイトを含み、このケラチノサイトは真皮同等物の上に播種されて皮膚同等物を形成する。本発明は何らかの特定の種類のケラチノサイトには限定されない。実際には、初代ヒトケラチノサイトおよび不死化ヒトケラチノサイトからなる群より選択されるケラチノサイトを非制限的に含む、さまざまな源からのケラチノサイトを用いることを考えている。いくつかの特に好ましい態様において、不死化ケラチノサイトはNIKS細胞である。いくつかの好ましい態様において、ケラチノサイトは重層化される。特に好ましい態様において、ケラチノサイトは重層化されて扁平上皮となる。
【0021】
さらに別の態様において、本発明は、真皮同等物を含む組成物であって、真皮同等物が真皮同等物1cm当たり約0.2mg〜2.0mgのコラーゲンを含む組成物を提供する。いくつかの特に好ましい態様において、真皮同等物は真皮同等物1cm当たり約0.22mg〜1.0mgのコラーゲンを含む。また別の特に好ましい態様において、真皮同等物は真皮同等物1cm当たり約0.5mgのコラーゲンを含む。いくつかの態様において、組成物はさらにケラチノサイトを含み、このケラチノサイトは真皮同等物の上に播種されて皮膚同等物を形成する。本発明は何らかの特定の種類のケラチノサイトの使用には限定されない。実際には、初代ヒトケラチノサイトおよび不死化ヒトケラチノサイトからなる群より選択されるケラチノサイトを非制限的に含む、さまざまな源からのケラチノサイトを用いることを考えている。いくつかの特に好ましい態様において、不死化ケラチノサイトはNIKS細胞である。いくつかの好ましい態様において、ケラチノサイトは重層化される。特に好ましい態様において、ケラチノサイトは重層化されて扁平上皮となる。本発明は何らかの特定の真皮同等物の使用には限定されない。いくつかの好ましい態様において、真皮同等物はコラーゲンおよび線維芽細胞を含む。本発明は何らかの特定の種類のコラーゲンの使用には限定されない。実際には、ラット尾腱コラーゲンを非制限的に含む、さまざまな種類のコラーゲンを用いることを考えている。同様に、本発明は何らかの特定の種類の線維芽細胞の使用には限定されない。実際には、NBDF細胞を非制限的に含む、さまざまな線維芽細胞を用いることを考えている。
【0022】
さらに別の態様において、本発明は、BSA、イソプロテレノール、カルニチン、セリン、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸、α-トコフェロール、アスコルビン酸およびEGFを含む組成物を提供する。本発明は何らかの特定の濃度の前記化合物には限定されない。実際には、組成物中のこれらの化合物の量はさまざまでありうる。好ましい態様において、BSA、イソプロテレノール、カルニチン、セリン、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸、α-トコフェロール、アスコルビン酸およびEGFは、インビトロ培養皮膚同等物におけるバリアー機能を改良するのに十分な濃度として存在する。いくつかの態様において、組成物はさらに血清を含む。さらに他の態様において、組成物はさらに、塩化カルシウム、ヒドロコルチゾン、コレラ毒素、インスリンおよびアデニンを含む。好ましい態様において、ウシ血清アルブミンは約0.1〜10.0mg/mlの濃度で提供される。また別の好ましい態様において、イソプロテレノールは約0.1〜10.0μMの濃度で提供される。さらに他の好ましい態様において、カルニチンは約1.0〜100.0μMの濃度で提供される。さらに好ましい態様において、セリンは約1.0〜100.0μMの濃度で提供される。さらに別の好ましい態様において、オレイン酸は約1.0〜100.0μMの濃度で提供される。さらに他の好ましい態様において、リノール酸は約1.0〜100.0μMの濃度で提供される。いくつかの好ましい態様において、アラキドン酸は約1.0〜100.0μMの濃度で提供される。また別の好ましい態様において、α-トコフェロールは約0.1〜10.0μMの濃度で提供される。さらに他の好ましい態様において、アスコルビン酸は約0.005〜5.0mg/mlの濃度で提供される。さらに別の好ましい態様において、上皮増殖因子は約0.1〜10.0ng/mlの濃度で提供される。
【0023】
定義
本明細書で用いる「GKLF」という用語は、タンパク質または核酸に言及して用いる場合、配列番号:1および/または配列番号:2との同一性が約50%を上回る上に、シトクロムp450IAIプロモーターの基本転写因子と結合するタンパク質、またはタンパク質をコードする核酸のことを指す。結合活性は、Zhangら、J. Biol. Chem., 273(28): 17917-25 (1998)に記載されたように、オリゴヌクレオチド

を用いる電気泳動ゲルシフトアッセイ法によって首尾良くアッセイしうる。したがって、GKLFという用語は、野生型GKLFと同一なタンパク質、および野生型GKLFに由来するもの(例えば、GKLFのバリアント、またはGKLFコード領域の部分を用いて構築されたキメラ遺伝子)の両方を含む。
【0024】
本明細書で用いる「GKLFの活性」という用語は、野生型GKLFの任意の活性のことを指す。この用語はGKLFのすべての活性を含むものとする。
【0025】
本明細書で用いる「皮膚同等物(skin equivalent)」および「代用皮膚(skin substitute)」という用語は、いわゆる器官培養において重層化して扁平上皮となったケラチノサイトのインビトロ由来培養物を指して互換的に用いられる。
【0026】
本明細書で用いる「真皮同等物」という用語は、コラーゲンおよび線維芽細胞を含むインビトロ由来培養物のことを指す。「真皮同等物」は、器官培養においてケラチノサイトの分化のための基質としての役割を果たすと考えている。
【0027】
本明細書で用いる「気相界面」という用語は、培養皿における空気と液体培地との間の界面のことを指す。
【0028】
本明細書で用いる「側壁に実質的に付着している」という用語は、真皮同等物に言及して用いる場合、真皮同等物が収縮している、または引っ張りによって実質的に垂直な壁から離れようとしているのとは異なり、真皮同等物が実質的に垂直な壁に対して物理的に付着していることを指す。
【0029】
本明細書で用いる「器官」培養という用語は、組織または器官をインビトロで再構築するために培養細胞を用いる、三次元組織培養のことを指す。
【0030】
本明細書で用いる「NIKS細胞」という用語は、細胞株ATCC CRL-12191として寄託された細胞の特徴を有する細胞のことを指す。 本明細書で用いる「NHDF」という用語は、正常ヒト真皮線維芽細胞の特徴を有する細胞のことを指す。
【0031】
本明細書で用いる「セラミドの含有量」という用語は、高性能薄層クロマトグラフィーによってアッセイされる、皮膚同等物試料中のセラミドの量のことを指す。
【0032】
本明細書で用いる「皮膚刺激物」という用語は、皮膚または皮膚同等物に対して適用した場合に、「刺激物応答性遺伝子」の発現を特徴とする細胞応答を誘発する化合物のことを指す。既知の皮膚刺激物の例には、SDS、カルシポトリオールおよびtrans-レチノイン酸が非制限的に含まれる。「皮膚刺激物」という用語は、ある種の医薬品、化粧品および消費者製品に含まれるものを非制限的に含む、未知または疑いのある刺激物も含むものとする。
【0033】
本明細書で用いる「刺激物応答性遺伝子」という用語は、皮膚刺激物の存在下で、より大きなレベルで(例えば、mRNA発現のレベルによる評価で)発現される遺伝子のことを指す。刺激物応答性遺伝子の例には、インターロイキン-8およびインターロイキン-1αが非制限的に含まれる。「刺激物応答性遺伝子」という用語は、未知の刺激物応答性遺伝子(例えば、本発明の方法によって同定されるもの)も含むものとする。
【0034】
「遺伝子」という用語は、ポリペプチドまたは前駆体(例えば、GKLF)の産生のために必要なコード配列を含む核酸(例えば、DNA)配列のことを指す。ポリペプチドは完全長コード配列によってコードされてもよく、または完全長もしくは断片の所望の活性または機能的特性(例えば、酵素活性、リガンド結合、シグナル伝達など)が保たれる限り、コード配列の任意の部分によってコードされてもよい。この用語には、遺伝子が完全長mRNAの長さに対応するようにコード領域の5'および3'端の両方にそれぞれ約1kbの距離にわたって隣接して位置する配列を含め、構造遺伝子のコード領域も含まれる。コード領域の5'側に位置し、mRNAに存在する配列は5'非翻訳配列と呼ばれる。コード領域の3'側または下流に位置し、mRNAに存在する配列は3'非翻訳配列と呼ばれる。「遺伝子」という用語は、遺伝子のcDNAおよびゲノム型の両方を含む。遺伝子のゲノム型またはクローンは、コード領域が「イントロン」または「介在領域」または「介在配列」と呼ばれる非コード配列によって分断されたものを含む。イントロンは、核RNA(hnRNA)へと転写される遺伝子の区域である;イントロンはエンハンサーなどの調節因子を含むことがある。イントロンは核内転写産物または一次転写産物から除去または「スプライスアウト(splice out)」される;このため、イントロンはメッセンジャーRNA(mRNA)転写産物中には存在しない。mRNAは翻訳時に新生ポリペプチドにおけるアミノ酸の配列または順序を特定する働きをする。
【0035】
特に「GKLF遺伝子」という用語は、完全長GKLFヌクレオチド配列のことを指す(例えば、配列番号:2に含まれるもの)。しかし、この用語はGKLF配列の断片、さらには完全長GKLFヌクレオチド配列内部の他のドメインも含むものとする。さらに、「GKLFヌクレオチド配列」または「GKLFポリヌクレオチド配列」という用語には、DNA、cDNAおよびRNA(例えば、mRNA)配列も含まれる。
【0036】
本明細書で用いる「遺伝子アレイ」という用語は、複数の核酸配列を固定する固体支持体(例えば、フィルター、スライドグラスまたはマイクロチップ)のことを指す。本明細書で用いる「遺伝子発現アレイ」という用語は、アレイ上に含まれる遺伝子の発現を測定するのに用いるための遺伝子アレイのことを指す。好ましい態様において、遺伝子発現アレイに固定される核酸配列はcDNA配列である。
【0037】
天然のタンパク質分子のアミノ酸配列に言及して本明細書にアミノ酸配列を詳述する場合、アミノ酸配列および類似の用語、例えばポリペプチドまたはタンパク質は、アミノ酸配列を、詳述するタンパク質分子にみられる完全な天然型アミノ酸配列には限定しないものとする。
【0038】
ゲノム型の遺伝子は、イントロンを含むことに加えて、配列の5'および3'末端に位置していてRNA転写物に存在する配列も含む。これらの配列は「隣接」配列または領域と呼ばれる(これらの隣接配列は、mRNA転写物に存在する非翻訳配列の5'または3'側に位置する)。5'隣接領域は、遺伝子の転写を制御する、またはそれに影響を及ぼすプロモーターおよびエンハンサーなどの調節配列を含みうる。3'隣接領域は、転写終結、転写後切断およびポリアデニル化を指令する配列を含みうる。
【0039】
「野生型」という用語は、天然の源から単離した場合にその遺伝子または遺伝子産物の特徴を有する遺伝子または遺伝子産物のことを指す。野生型遺伝子は集団内で最も高い頻度で観察されることから、自由裁量により「正常型」または「野生型」の遺伝子と命名される。これに対して、「改変型」「変異型」および「バリアント」という用語は、野生型の遺伝子または遺伝子産物と比較した場合に配列および/または機能的特性の変化(すなわち、変化した特徴)を示す遺伝子または遺伝子産物のことを指す。天然にみられる変異型を単離しうる点に注意されたい;これらは、野生型の遺伝子または遺伝子産物と比較して、変化した特徴を有するという事実によって同定される。
【0040】
本明細書で用いる「をコードする核酸分子」「をコードするDNA配列」および「をコードするDNA」という用語は、デオキシリボ核酸のストランドに沿って並んだデオキシリボヌクレオチドの順序または配列のことを指す。これらのデオキシリボヌクレオチドの順序が、ポリペプチド(タンパク質)鎖に沿って並ぶアミノ酸の順序を決定する。このようにして、DNA配列はアミノ酸配列をコードする。
【0041】
本明細書で用いる「遺伝子をコードするヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチド」および「遺伝子をコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド」という用語は、遺伝子のコード領域、言い換えれば遺伝子産物をコードする核酸配列、を含む核酸配列のことを意味する。コード領域は、cDNA、ゲノムDNAまたはRNAのいずれの形態で存在してもよい。DNAの形態で存在する場合、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは一本鎖(すなわち、センス鎖)でも二本鎖でもよい。転写の適切な開始および/または一次RNA転写物の正しいプロセシングを可能にするために必要であれば、エンハンサー/プロモーター、スプライス部位、ポリアデニル化シグナルなどの適した制御因子を、遺伝子のコード領域の近傍に配置してよい。または、本発明の発現ベクターに用いられるコード領域が、内因性エンハンサー/プロモーター、スプライス部位、介在配列、ポリアデニル化シグナル、または内因性および外因性制御因子の両者の組み合わせを含んでもよい。
【0042】
本明細書で用いる「調節因子」という用語は、核酸配列の発現の何らかの面を制御する遺伝因子のことを指す。例えば、プロモーターは、機能的に結合したコード領域の転写開始を促す調節因子である。他の調節因子には、スプライシングシグナル、ポリアデニル化シグナル、転写終結シグナルなどがある。
【0043】
本明細書で用いる「相補的」または「相補性」という用語は、塩基対合則により関連づけられたポリヌクレオチド(すなわち、ヌクレオチドの配列)に言及して用いられる。例えば、配列「5'-A-G-T-3'」は配列「3'-T-C-A-5'」と相補的である。相補性は、核酸の塩基の一部のみが塩基対合則に従って合致するというように「部分的」でもよい。または、核酸の間に「完全」または「全体的」な相補性があってもよい。核酸鎖の間の相補性の程度は、核酸鎖の間のハイブリダイゼーションの効率および強度に多大な影響を及ぼす。これは、核酸同士の結合に依存する増幅反応ならびに検出方法において特に重要である。
【0044】
「相同性」という用語は、相補性の程度のことを指す。これは部分的な相同性でもよく、完全な相同性(すなわち、同一性)でもよい。部分的に相補的な配列とは、完全に相補的な配列が標的核酸配列とハイブリダイズするのを少なくとも部分的に阻害するもののことであり、これは「実質的に相同な」という機能的用語を用いて呼ばれる。「結合の阻害」という用語は、核酸結合に言及して用いる場合、相同配列の標的配列との結合の競合によって生じる結合の阻害のことを指す。完全に相補的な配列と標的配列とのハイブリダイゼーションの阻害は、ハイブリダイゼーションアッセイ法(サザンまたはノーザンブロット法、溶液ハイブリダイゼーションなど)を低ストリンジェンシー条件下で用いて検討しうる。実質的に相同な配列またはプローブ(すなわち、関心対象の別のオリゴヌクレオチドとハイブリダイズしうるオリゴヌクレオチド)は、低ストリンジェンシー条件下で、完全に相同な配列と標的配列との結合(すなわち、ハイブリダイゼーション)と競合する、またはそれを阻害すると考えられる。低ストリンジェンシー条件は非特異的な結合が許容されるような条件というわけではない;低ストリンジェンシー条件は、2つの配列の相互の結合が特異的な(すなわち、任意選択的な)相互作用であることを必要とする。非特異的結合がないことは、部分的な程度の相補性すらない(例えば、同一性が約30%未満)第2の標的を用いることによって検証しうる;非特異的結合がないと、プローブは第2の非相補的な標的とハイブリダイズしないと考えられる。
【0045】
当技術分野では、さまざまな同等な条件を用いて低ストリンジェンシー条件を構成しうることが周知である;プローブの長さおよび性質(DNA、RNA、塩基組成物)ならびに標的の性質(DNA、RNA、塩基組成物、溶液中に存在する、または固定化されているなど)ならびに塩および他の成分の濃度(例えば、ホルムアミド、デキストラン硫酸、ポリエチレングリコールの有無)などの要因を考慮し、ハイブリダイゼーション溶液を変更して、上に挙げた条件とは異なるものの同等な低ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件を得ることができる。さらに、高ストリンジェンシー条件下でのハイブリダイゼーションを促す条件(例えば、ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄段階の温度を高める、ハイブリダイゼーション溶液中にホルムアミドを用いるなど)も当技術分野で周知である。
【0046】
cDNAまたはゲノムクローンなどの二本鎖核酸配列に言及して用いる場合、「実質的に相同な」という用語は、上記の低ストリンジェンシー条件下で二本鎖核酸配列の一方または両方のストランドとハイブリダイズしうる任意のプローブのことを指す。
【0047】
一本鎖核酸配列に言及して用いる場合、「実質的に相同な」という用語は、上記の低ストリンジェンシー条件下で一本鎖核酸配列とハイブリダイズしうる(すなわち、その相補物である)任意のプローブのことを指す。
【0048】
本明細書で用いる「結合に関して競合する」という用語は、第1のポリペプチドのバリアントであるか関連性のあるまたは類似性のないポリペプチドである、活性を備えた第2のポリペプチドが結合するものと同じ基質と結合する、活性を備えた第1のポリペプチドに言及して用いられる。第1のポリペプチドによる結合の効率(例えば、動力学または熱力学)は、第2のポリペプチドによる基質結合効率と同じでもよく、それより高くてもよく、それより低くてもよい。例えば、基質との結合に関する平衡結合定数(K)が2つのポリペプチドで異なってもよい。本明細書で用いる「K」という用語は、酵素に関するミカエリス-メンテン定数のことを指し、これは任意の酵素が酵素触媒反応において最大速度の2分の1を示す特異的基質の濃度として定義される。
【0049】
本明細書で用いる「ハイブリダイゼーション」という用語は、相補的核酸の対合に言及して用いられる。ハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーションの強度(すなわち、核酸間の会合の強度)は、核酸間の相補性の程度、用いる条件のストリンジェンシー、形成されるハイブリッドのT、および核酸内部のG:C比などの要因による影響を受ける。
【0050】
本明細書で用いる「T」という用語は、「融解温度」を指して用いられる。融解温度とは、二本鎖核酸分子の集団の半分が一本鎖に解離する温度のことである。核酸のTを算出するための式は当技術分野で周知である。標準的な参考文献に示されているように、核酸が1M NaCl水溶液中にある場合、T値の単純な推定値は以下の式によって算出しうる:Tm=81.5+0.41(%G+C)(例えば、AndersonおよびYoung、「Nucleic Acid Hybridization」中の「Quantitative Filter Hybridization」[1985]を参照)。その他の参考文献には、Tmの算出に配列特性のほかに構造特性も考慮に入れた、より精巧な計算が含まれる。
【0051】
本明細書で用いる「ストリンジェンシー」という用語は、核酸ハイブリダイゼーションを行う温度、イオン強度、および有機溶媒などの他の化合物の存在といった条件を指して用いられる。当業者は、直前に記載したパラメーターを個別的または共同的に変化させることによって「ストリンジェンシー」条件を変更しうることを認識すると考えている。「高ストリンジェンシー」条件では、相補的塩基配列の頻度が高い核酸断片の間のみで核酸塩基対合が起こると考えられる(例えば、「高ストリンジェンシー」条件下でのハイブリダイゼーションは、同一性が約85〜100%、好ましくは同一性が約70〜100%である相同体の間で起こりうる)。「中程度のストリンジェンシー」条件では、相補的塩基配列の頻度が中程度である核酸断片の間で核酸塩基対合が起こると考えられる(例えば、「中程度のストリンジェンシー」条件下でのハイブリダイゼーションは、同一性が約50〜70%である相同体の間で起こると思われる)。このため、遺伝的に異なる生物に由来する核酸同士に対しては、相補的配列の頻度が通常低いことから、「弱」または「低」ストリンジェンシーの条件がしばしば必要となる。
【0052】
「高ストリンジェンシー条件」は、核酸ハイブリダイゼーションに言及して用いる場合、約500ヌクレオチド長のプローブを用いた際に、5×SSPE(43.8g/l NaCl、6.9g/l NaHPO・HOおよび1.85g/l EDTA、pHはNaOHで7.4に調整)、0.5%SDS、5×デンハルト試薬および100μg/ml変性サケ精子DNAからなる42℃の溶液中での結合またはハイブリダイゼーションの後に、0.1×SSPE、1.0%SDSを含む42℃の溶液中で洗浄を行うことと同等な条件を含む。
【0053】
「中程度のストリンジェンシー条件」は、核酸ハイブリダイゼーションに言及して用いる場合、約500ヌクレオチド長のプローブを用いた際に、5×SSPE(43.8g/l NaCl、6.9g/l NaHPO・HOおよび1.85g/l EDTA、pHはNaOHで7.4に調整)、0.5%SDS、5×デンハルト試薬および100μg/ml変性サケ精子DNAからなる42℃の溶液中での結合またはハイブリダイゼーションの後に、1.0×SSPE、1.0%SDSを含む42℃の溶液中で洗浄を行うことと同等な条件を含む。
【0054】
「低ストリンジェンシー条件」は、約500ヌクレオチド長のプローブを用いた際に、5×SSPE(43.8g/l NaCl、6.9g/l NaHPO・HOおよび1.85g/l EDTA、pHはNaOHで7.4に調整)、0.1%SDS、5×デンハルト試薬[50×デンハルト試薬は500ml当たり以下のものを含む:5g Ficoll(400型、Pharamcia)、5g BSA(第V画分;Sigma)]および100μg/ml変性サケ精子DNAからなる42℃の溶液中での結合またはハイブリダイゼーションの後に、5×SSPE、0.1%SDSを含む42℃の溶液中で洗浄を行うことと同等な条件を含む。
【0055】
以下の用語は、2つまたはそれ以上のポリヌクレオチド間の配列の関係を記載するために用いられる:「参照配列」「配列同一性」「配列一致率」および「実質的同一性」。「参照配列」は、配列比較のための基準として用いられる;参照配列はさらに長い配列のサブセット、例えば、配列一覧表に示された完全長cDNA配列の区域であってもよく、または完全な遺伝子配列を含んでもよい。一般に、参照配列は少なくとも20ヌクレオチド長であり、多くの場合は少なくとも25ヌクレオチド長、しばしば少なくとも50ヌクレオチド長である。2つのポリヌクレオチドはそれぞれ(1)2つのポリヌクレオチド間で類似した配列(すなわち、完全なポリヌクレオチド配列の一部)を含み、(2)さらに2つのポリヌクレオチド間で異なる配列も含みうるため、2つの(またはそれ以上の)ポリヌクレオチド間での配列比較は通常、2つのポリヌクレオチドの配列を、配列類似性のある局所領域の同定および比較のための「比較域(comparison window)」にわたって比較することによって行われる。本明細書で用いる「比較域」とは、少なくとも20個の連続したヌクレオチドである参照配列と比較されるポリヌクレオチド配列である、少なくとも20個の連続したヌクレオチド位置からなる概念的な区域のことを指し、比較域におけるポリヌクレオチド配列の部分は、2つの配列の最適なアライメントのために、参照配列(付加および欠失を含まない)と比較して20%またはそれ未満の付加、欠失、置換など(すなわち、ギャップ)を含みうる。比較域のアライメントのための配列の最適な整列化は、SmithおよびWatermanの局所相同性アルゴリズム[SmithおよびWaterman、Adv. Appi. Math. 2: 482 (1981)]により、NeedlemanおよびWunschの相同性整列化アルゴリズム[NeedlemanおよびWunsch、J. Mol. Biol. 48: 443 (1970)]により、PearsonおよびLipmanの類似性検索法[PearsonおよびLipman、Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.) 85: 2444 (1988)]により、これらのアルゴリズムのコンピュータ・インプリメンテーション(Wisconsin Genetics Software Packageリリース7.0(Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, Wis.)のGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)により、または視覚的検査によって行うことができ、種々の方法によって生じた最良のアライメント(すなわち、比較域にわたる相同性の比率が最も高くなるもの)を選択する。「配列同一性」という用語は、2つのポリヌクレオチド配列が比較域にわたって同一である(すなわち、個々のヌクレオチドのレベルで)ことを意味する。「配列一致率」という用語は、最適なアライメントがなされた2つの配列を比較域にわたって比較し、一致する位置の数を得るために両方の配列で同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、UまたはI)または残基がみられる位置の数を決定し、一致した位置の数を比較域における位置の総数(すなわち、区域サイズ)で割り、配列一致率を得るためにその結果に100を掛けることによって算出される。本明細書で用いる「実質的同一性」という用語は、ポリヌクレオチドが、少なくとも20ヌクレオチドの位置からなる比較域、しばしば少なくとも25〜50ヌクレオチドの位置からなる比較域にわたっての参照配列との比較により、少なくとも85%の配列一致率を有し、好ましくは少なくとも90〜95%の配列一致率、より一般的には少なくとも99%の配列一致率を有する配列を含むという、ポリヌクレオチド配列の特性を表し、ここで配列一致率は比較域の各位置にわたる参照配列との比較によって算出され、配列一致率は、参照配列と、比較域にわたって全体で参照配列の20%またはそれ未満の欠失または付加を含みうる配列とを比較することによって算出される。参照配列はさらに長い配列のサブセットであってもよく、例えば、本発明において請求する組成物(例えば、GKLF)の完全長配列のある区域であってもよい。
【0056】
ポリペプチドに対して適用する場合、「実質的同一性」という用語は、初期設定ギャップウェイト値を用いるGAPまたはBESTFITプログラムなどによって最適なアライメントを行った場合に、2つの配列が少なくとも80%の配列一致率を有し、好ましくは少なくとも90%の配列一致率、より好ましくは少なくとも95%またはそれ以上(例えば、少なくとも99%の配列一致率)の配列一致率を有することを意味する。同一でない残基位置は、保存的アミノ酸置換による違いであることが好ましい。保存的アミノ酸置換とは、類似した側鎖を有する残基の互換性を意味する。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸の一群はグリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンであり、脂肪族-ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸の一群はセリンおよびトレオニンであり、アミド含有側鎖を有するアミノ酸の一群はアスパラギンおよびグルタミンであり、芳香族アミノ酸を有するアミノ酸の一群はフェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンであり、塩基性側鎖を有するアミノ酸の一群はリジン、アルギニンおよびヒスチジンであり、イオウ含有側鎖を有するアミノ酸の一群はシステインおよびメチオニンである。好ましいアミノ酸置換の群は以下の通りである:バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、およびアスパラギン-グルタミン。
【0057】
本明細書で用いる「組換えDNA分子」という用語は、分子生物学の技法によって連結されたDNAの区域から構成されるDNA分子のことを指す。
【0058】
「単離された」という用語は、「単離されたオリゴヌクレオチド」または「単離されたポリヌクレオチド」というように核酸に関連して用いられる場合、その天然の源において通常付随している少なくとも1つの混在性の核酸から同定されて単離された核酸配列のことを指す。単離された核酸は、天然に認められるものとは異なる形態または状況で存在する。これに対して、単離されていない核酸とは、天然に存在する状態で認められるDNAおよびRNAなどの核酸のことである。例えば、任意のDNA配列(例えば、遺伝子)は宿主細胞の染色体上に近傍の遺伝子に近接して認められる;RNA配列、例えば特定のタンパク質をコードするmRNAなどは、多数のタンパク質をコードする他の多数のmRNAとの混合物として細胞内に認められる。しかし、GKLFをコードする単離された核酸には、例えば、GKLFを通常発現する細胞内にあるものの天然の細胞とは異なる染色体位置にあるこの種の核酸、または、天然に認められるものとは異なる核酸配列に隣接しているものが含まれる。単離された核酸、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖のいずれの形態で存在してもよい。単離された核酸、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを、タンパク質を発現させるために利用する場合には、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは少なくともセンス鎖またはコード鎖を含むと考えられるが(すなわち、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは一本鎖でもよい)、センス鎖およびアンチセンス鎖の両方を含んでもよい(すなわち、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは二本鎖でもよい)。
【0059】
本明細書で用いる「部分(portion)」という用語は、ヌクレオチド配列に言及する場合(「所定のヌクレオチド配列の一部分」というように)、その配列の断片のことを指す。断片のサイズは、4ヌクレオチドから、1ヌクレオチドを全ヌクレオチド配列から差し引いたもの(10ヌクレオチド、20、30、40、50、100、200ヌクレオチドなど)までの範囲であってよい。
【0060】
本明細書で用いる「コード領域」という用語は、構造遺伝子に言及して用いる場合、mRNA分子の翻訳の結果として新生ポリペプチド中に認められるアミノ酸をコードするヌクレオチド配列のことを指す。真核生物の場合、コード領域の5'側には開始メチオニンをコードするヌクレオチドトリプレット「ATG」が結合しており、3'側には停止コドンを表す3種類のトリプレット(すなわち、TAA、TAG、TGA)の1つが結合している。
【0061】
本明細書で用いる「精製された」または「精製すること」という用語は、試料から混入物を除去することを指す。
【0062】
本明細書で用いる「ベクター」という用語は、DNA区域を一方の細胞から別の細胞に移行させる核酸分子に言及して用いられる。「媒体(vehicle)」という用語は時折、「ベクター」と互換的に用いられる。
【0063】
本明細書で用いる「発現ベクター」という用語は、所望のコード配列、および特定の宿主生物における機能的に結合したコード配列の発現のために必要な適した核酸配列を含む、組換えDNA分子のことを指す。原核生物における発現のために必要な核酸配列には通常、プロモーター、オペレーター(任意選択的)およびリボソーム結合部位が、しばしば他の配列とともに含まれる。真核細胞はプロモーター、エンハンサーならびに転写終結シグナルおよびポリアデニル化シグナルを利用することが知られている。
【0064】
本明細書で用いる「宿主細胞」という用語は、インビトロまたはインビボのいずれにあるかを問わず、任意の真核細胞または原核細胞(例えば、大腸菌などの細菌細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞、鳥類細胞、両生類細胞、植物細胞、魚類細胞および昆虫細胞)のことを指す。例えば、宿主細胞がトランスジェニック動物の体内に位置してもよい。
【0065】
「過剰発現」および「過剰発現する」という用語ならびに文法的同等物は、対照動物または非トランスジェニック動物における所定の組織中で一般に観察されるレベルの約3倍よりも高い発現レベルを示すmRNAのレベルを指して用いられる。mRNAレベルの測定は、ノーザンブロット分析を非制限的に含む、当業者に知られたさまざまな技法のうち任意のものを用いて行われる。ノーザンブロットには、分析する各組織からローディングしたRNAの量の違いに関する対照とするために適切な対照を含める(例えば、すべての組織中に本質的には同じ量で大量に存在するRNA転写物である28S rRNAの各試料中の量を、ノーザンブロット上に認められるGKLF mRNA特異的シグナルを規準化または標準化する手段として用いることができる)。正しいスプライシングを受けたGKLF導入遺伝子のRNAのサイズに対応するバンド中に存在するmRNAの量を定量化する;導入遺伝子プローブとハイブリダイズする他の副次的なmRNA種は導入遺伝子mRNAの定量化には考慮しない。
【0066】
本明細書で用いる「トランスフェクション」という用語は、外来性DNAの真核細胞への導入のことを指す。トランスフェクションは、リン酸カルシウム-DNA共沈法、DEAE-デキストランを介したトランスフェクション法、ポリブレンを介したトランスフェクション法、電気穿孔法、微量注入法、リポソーム融合法、リポフェクション法、プロトプラスト融合法、レトロウイルス感染法およびバイオリステック法を含む、当技術分野で知られた任意の手段によって行いうる。
【0067】
「安定的なトランスフェクション」または「安定的にトランスフェクトされた」という用語は、トランスフェクトされた細胞のゲノム中への外来性DNAの導入または組込みのことを指す。「安定なトランスフェクタント」という用語は、ゲノムDNA中に外来性DNAが安定的に組み込まれた細胞のことを指す。
【0068】
「一時的なトランスフェクション」または「一時的にトランスフェクトされた」という用語は、トランスフェクトされた細胞のゲノム中に外来性DNAが組み込まれない、外来性DNAの細胞への導入のことを指す。外来性DNAはトランスフェクト細胞の核内に数日間存続する。この期間中、外来性DNAは、染色体中の内因性遺伝子の発現を司る調節制御を受ける。「一時的トランスフェクタント」という用語は、外来性DNAを取り込んだものの、このDNAが組み込まれていない細胞のことを指す。
【0069】
「リン酸カルシウム共沈法」という用語は、核酸を細胞内に導入するためのある技法のことを指す。細胞による核酸の取り込みは、核酸がリン酸カルシウム-核酸共沈物として存在すると高まる。Grahamおよびvan der Ebの原型の技法(Grahamおよびvan der Eb、Virol., 52: 456 [1973])が、いくつかのグループにより、特定の種類の細胞に対して最適化されるように変更されている。これらのさまざまな変更は当技術分野で周知である。
【0070】
本明細書で用いる「所定のポリヌクレオチド配列を含む組成物」という用語は、所定のポリヌクレオチド配列を含む任意の組成物を広く指す。組成物には水溶液も含まれうる。GKLFをコードするポリヌクレオチド配列(例えば、配列番号:2)またはその断片を含む組成物は、ハイブリダイゼーションプローブとして用いることもできる。この場合には、GKLFをコードするポリヌクレオチド配列を、塩(例えば、NaCl)、界面活性剤(例えば、SDS)および他の成分(例えば、デンハルト溶液、粉ミルク、サケ精子DNAなど)を含む水溶液中で用いることが一般的である。
【0071】
「試験化合物」という用語は、疾患、疾病、病もしくは身体機能の障害の治療および/もしくは予防に有用と考えられる、または試料の生理的状態もしくは細胞状態を別の様式で変化させると考えられる、任意の化学的実体、医薬品、薬剤などのことを指す。試験化合物には、既知の治療的化合物およびその可能性のあるものの両方が含まれる。本発明のスクリーニング法を用いるスクリーニングにより、試験化合物が治療的であることを判定することができる。「既知の治療的化合物」とは、このような治療または予防に有効なことが示されている(例えば、動物試験、またはヒトに対する過去の投与の経験により)、治療的化合物のことを指す。
【0072】
本明細書で用いる「試料」という用語は、最も広い意味で用いられる。ヒト染色体またはヒト染色体に付随する配列を含む疑いのある試料には、細胞、細胞から単離された染色体(例えば、分裂中期の染色体の展開物)、ゲノムDNA(溶液中に、またはサザンブロット分析用の固体支持体に結合した状態で)、RNA(溶液中に、またはノーザンブロット分析用の固体支持体に結合した状態で)、cDNA(溶液中に、または固体支持体に結合した状態で)などが含まれうる。タンパク質を含む疑いのある試料には、細胞、組織の一部、1つまたは複数のタンパク質を含む抽出物などが含まれうる。
【0073】
本明細書で用いる「応答」という用語は、アッセイ法に言及して用いる場合、検出可能なシグナルの生成(例えば、レポータータンパク質の蓄積、イオン濃度の上昇、検出可能な化学生成物の蓄積)のことを指す。
【0074】
本明細書で用いる「レポーター遺伝子」という用語は、アッセイしうるタンパク質をコードする遺伝子のことを指す。レポーター遺伝子の例には、ルシフェラーゼ(例えば、deWetら、Mol. Cell. Biol. 7: 725 [1987]ならびに米国特許第6,074,859号;第5,976,796号;第5,674,713号;および第5,618,682号;これらはすべて参照として本明細書に組み入れられる)、緑色蛍光タンパク質(例えば、GenBankアクセッション番号U43284;さまざまなGFPバリアントがCLONTECH Laboratories社、Palo Alto, CA)から販売されている)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼおよび西洋ワサビペルオキシダーゼが非制限的に含まれる。
【0075】
本明細書で用いる「刺激物応答性レポーター遺伝子構築物」という用語は、刺激物応答性遺伝子の調節領域と機能的に結合したレポーター遺伝子を含む構築物のことを指す。
【0076】
発明の説明
本発明は、インビトロ培養代用皮膚、特にバリアー機能が改良されたインビトロ培養代用皮膚に関する。いくつかの態様において、バリアー機能の改良は培養条件の改良の結果であり、また別の態様において、バリアー機能の改良はケラチノサイトの遺伝的改変に起因する。さらに他の態様において、本発明は、レポーター遺伝子構築物(例えば、刺激物応答性レポーター遺伝子構築物)を含む代用皮膚を提供する。
【0077】
ヒトの皮膚は、化学物質および微生物などの環境的侵襲から身体を防御している。我々の身体から水分が損失するのを防ぐことも極めて重要である。皮膚バリアー機能の欠陥は、有毒物質の侵入、感染または重大な水分損失をもたらす有害な影響を及ぼす。医学的、乳児ケアまたは美容的な理由から皮膚のバリアー機能を改善することが望ましいこともあり、例えば薬剤を経皮的に投与するというように、場合によっては透過障壁を弱めることが有益と考えられる。医薬品、化粧品および消費者製品の会社はすべて、皮膚と接触する可能性のある製品を扱っている。これらの企業は開発過程の初期に、化合物または製剤が皮膚の本質的なバリアー機能に影響を及ぼすか否かを知る必要がある。摘出した皮膚組織が経皮的吸収の測定に用いられているが、この調製物にはさまざまな問題があることが文献中に指摘されている。ヒトの皮膚と動物の皮膚との間には吸収性に差があり、それが誤りを招く結果につながる恐れがあるほか、ヒト組織の入手可能性は一定でない。また、安全性試験に用いられる動物をなくす、またはその数を減らすという行政的および社会的な圧力も高まりつつある。
【0078】
これらの問題点がある上に、新たな配合物および経皮的治療薬候補の透過特性を知る必要性が高まっていることから、インビトロ皮膚同等物培養物の透過特性を改良するための研究が数多く行われている。ヒト皮膚のバリアー特性を再現する培養代用皮膚の開発は、熱傷治療用の合成組織のより良い源にもなると考えられる。ヒト皮膚により類似した培養代用皮膚が入手可能になれば、これらの製品の動物試験への依存度が低くなることから、化粧品、医薬品および他の局所用化合物の試験が容易になると考えられる。
【0079】
皮膚および口腔上皮などの重層扁平上皮は、主としてケラチノサイトから構成される多層再生組織である。分化したケラチノサイトが表面から連続的に失われ、基底ケラチノサイトの増殖によって置換される。基底細胞が分化プログラムを開始して完了する速度は厳密に調節されるように思われるが、このような調節のための分子的制御に関してはほとんど明確にされていない(Fuchs, J. Cell. Sci. Suppl., 17: 197-208 (1993))。インビボでは、終末分化プロセスの最終段階は、フィラグリンを介したケラチン中間径フィラメントの束化およびインボルクリン顆粒の細胞間隙への放出を含むさまざまな変化を特徴とする(Schurerら、Dermatologica, 183: 77-94 (1991))。カルシウム依存性トランスグルタミナーゼの作用によって共有的に架橋した複数のタンパク質からなるもう1つの終末分化構造である角化膜も、分化過程にあるケラチノサイト内で形成される(Aeschlimannら、Thrombosis & Haemostasis, 71(4): 402-15 (1994);Reichertら、「Molecular Biology of the Skin」中の「The cornified envelope: a key structure of terminally differentiating keratinocytes」M. Darmon編、1993, Academic Press, Inc.: San Diego. 107-150 (1993))。表皮では、ケラチノサイトは細胞内オルガネラを失い、組織の上層で脱核して、高い引張り強度を備えた「死殻(dead shell)」を形成する。ケラチノサイトの脱核および終末分化を司る分子機構はほとんど解明されていない。複数の研究((Sachsenmeierら、J. Biol. Chem., 271: 5-8 (1996);Hinesら、Promega Notes, 59: p. 30-36 (1996);Hinesら、J. Biol. Chem., 271(11): 6245-6251 (1996);Polakowskaら、Developmental Dynamics, 199(3): 176-88 (1994);Haakeら、J. Invest. Derm. Symp. Proc., 3: 28-35 (1998))により、ケラチノサイトの終末分化はアポトーシス性細胞死の特殊な形態であることが示唆されている。
【0080】
ヒト皮膚は、線維芽細胞が細胞外タンパク質マトリックス中に入り込んだものを含む真皮層、および最外部の非透過性皮膚層へと分化するケラチノサイトから主になる上皮層から構成される。ヒト皮膚の主な機能は、蒸発による体液の過度な喪失を防ぐための物理的障壁となることである。バリアー機能は皮膚の角質層に限局している。角質層は、煉瓦壁のように、非透過性のケラチンで満たされた細胞の配列が脂質マトリックス中に包埋されたものと記述されてきた。角質層バリアーに不可欠な成分は、角質層の形成時にケラチノサイトによって沈着する脂質である。顆粒層内のケラチノサイトはケラトヒアリン顆粒および層板小体を含む。顆粒層/角質層界面では、層板小体が原形質膜と融合し、脂質内容物を細胞間隙に押し出す。リン脂質およびグルコシルセラミドのそれぞれ脂肪酸およびセラミドへのプロセシングに働く、さまざまな酵素も放出される。角質層の細胞外脂質は集合し、ケラチノサイトから生じたケラチン充満性角化膜を取り囲む多層構造となる。角質層脂質は組織の乾燥重量の10〜15%を占め、主として、概ね等モル量の(重量比で)セラミド(50%)、コレステロール(25%)および遊離脂肪酸(10%)からなる(Wertzら、Chem. Phys. Lipids., 91(2): 85-96 (1998))。これらの脂質は主にケラチノサイトにおける生合成に由来する。セラミドの一部には、インボルクリンとの結合を含め、角化膜の表面にある原子団と共有結合を形成するという特異な役割がある。この共有結合したω-ヒドロキシセラミドは角化細胞の外面を取り巻く脂質単層を形成する。この構造の明確な役割はわかっていない。最近、ω-ヒドロキシセラミドのバリアー機能に対する重要性が、CYP4P-450 ω ヒドロキシラーゼの阻害剤を用いて無毛マウス皮膚における形成を阻害することによって示されている(Behneら、J. Invest. Dermatol., 114(1): 185-92 (2000))。
【0081】
四酸化ルテニウムを用いて電子顕微鏡で薄層を観察できることが発見されて以後、角質層の超微細構造の分析により、角質層の特質に関して重要な洞察が得られた。例えば、複数の研究により、顆粒層に層板小体が存在すること、層板小体の内容物が顆粒層/角質層界面で適宜排出されること、および脂質薄膜の高電子密度バンドと低電子密度バンドが交互に存在することが確認されている。電子顕微鏡により、電子密度の高いデスモソームが角質層内に存在して細胞間隙の約15%を占めており、細胞間接着に重要である可能性も明らかになっている。
【0082】
本発明は、バリアー機能が改良された代用皮膚、ならびにバリアー機能が改良された代用皮膚を作製するための組成物および方法を提供する。便宜上、本発明の説明は以下のセクションに分けて行う:A)バリアー機能が改良された代用皮膚を作製するためのケラチノサイトおよび他の細胞の源;B)代用皮膚におけるバリアー機能の改良のための培養条件;C)バリアー機能の改良のための細胞の遺伝的改変;およびD)バリアー機能が改良された代用皮膚の用途。
【0083】
A.代用皮膚を作製するためのケラチノサイトおよび他の細胞の源
本発明の方法は、バリアー機能が改良された代用皮膚を作製するために用いうると考えている。一般に、重層化して扁平上皮となりうる細胞または細胞株の任意の源を本発明に用いることができる。したがって、本発明は、扁平上皮へと分化しうる細胞の何らかの特定の源の使用には限定されない。実際には、本発明は、初代ケラチノサイトおよび不死化ケラチノサイトの両方を含む、扁平上皮へと分化しうるさまざまな細胞株および源を用いることを考えている。細胞の源には、ヒトおよび死体ドナーから生検により採取したケラチノサイトおよび真皮線維芽細胞(Augerら、In Vitro Cell. Dev. Biol.−Animal 36: 96-103;米国特許第5,968,546号および第5,693,332号、これらはそれぞれ参照として本明細書に組み入れられる)、新生児包皮(Asbillら、Pharm. 17(9): 1092-97 (2000);Meanaら、Burns 24: 621-30 (1998);米国特許第4,485,096号;第6,039,760号;および第5,536,656号、これらはそれぞれ参照として本明細書に組み入れられる)、およびNM1細胞などの不死化ケラチノサイト細胞株(Baden、In Vitro Cell. Dev. Biol. 23(3): 205-213 (1987))、HaCaT細胞(Boucampら、J. cell. Boil. 106: 761-771 (1988));およびNIKS細胞(細胞株BC-1-Ep/SL;米国特許第5,989,837号、これは参照として本明細書に組み入れられる;ATCC CRL-12191)が含まれる。これらの細胞株はそれぞれ、結果として得られる皮膚同等物のバリアー機能を改良する目的で、以下に説明するように培養または遺伝的改変を行うことができる。
【0084】
特に好ましい態様においては、NIKS細胞を用いる。新規ヒトケラチノサイト細胞株(二倍体に近い不死化ケラチノサイト、またはNIKS)の発見により、新たなインビトロ試験方法のためにヒトケラチノサイトを遺伝的に操作する機会が生まれた。NIKS細胞に特有な利点は、遺伝的に均一で病原体を含まないヒトケラチノサイトの安定した供給源であることである。この理由から、それらは、ヒト皮膚により類似した特性を備えた培養皮膚同等物を得るために遺伝子工学およびゲノム遺伝子発現のアプローチを適用するのに有用である。このようなシステムは、試験化合物および配合物の試験のために動物を用いることに代わる重要な選択肢になると考えられる。NIKSケラチノサイト細胞株は、ウィスコンシン大学で同定されて特徴が明らかにされたもので、非腫瘍形成性であり、安定した核型を示し、単層培養および器官培養のいずれにおいても正常な分化を示す。NIKS細胞は培養下で完全に重層化した皮膚同等物を形成する。これらの培養物は、これまでに検討したいずれの基準によっても、初代ヒトケラチノサイトから形成された器官培養物と区別不能である。しかし、初代細胞とは異なり、不死化NIKS細胞は単層培養下で無限に増殖を続けると考えられる。これにより、細胞を遺伝的に操作して、新たな有用な特性を備えた細胞の新たなクローンを単離する機会が得られる(Allen-Hoffmannら、J. Invest. Dermatol., 114(3): 444-455 (2000))。
【0085】
NIKS細胞は、外見上正常な男児から単離されたヒト新生児包皮ケラチノサイトのBC-1-Ep株から生じたものである。初期の継代において、BC-1-Ep細胞は、培養正常ヒトケラチノサイトにとって非定型的な形態的および増殖的な特徴を全く示さなかった。培養BC-1-Ep細胞は重層化を示した上に、プログラム細胞死の特徴も示した。複製寿命を決定するために、BC-1-Ep細胞を老化するまで、標準的なケラチノサイト増殖培地中にて3×10個/100mm培養皿の密度で連続培養し、毎週継代した(約1: 25の分割比)。第15継代までに、集団内のほとんどのケラチノサイトは、大きく平坦な細胞が認められる発育不全コロニーが数多く存在することから判断して老化したものと考えられた。しかし、第16継代では、細胞サイズの小さいケラチノサイトが明らかに認められた。第17継代までには、培養物には小型ケラチノサイトしか存在しなくなり、大型の老化ケラチノサイトは認められなくなった。この危機的と思われる時期を生き延びた、この結果得られた小型ケラチノサイトの集団は、形態的に均一な外観を示し、細胞間接着および扁平な外観の細胞の生成を含む、典型的なケラチノサイトの特徴を呈するケラチノサイトのコロニーを生じた。この老化時期を生き延びたケラチノサイトを、3×10個/100-mm培養皿の密度で連続培養した。通常の場合、培養物は7日間以内に約8×10個の細胞密度に達した。この安定した細胞増殖速度は少なくとも59回の継代にわたって維持され、このことから細胞が不死性を獲得したことが示された。最初の老化性集団から出現したケラチノサイトは当初、BC-1-Ep/自発的系統と命名され、現在ではNIKSと呼ばれている。NIKS細胞株に対しては、HIV-1、HIV-2、EBV、CMV、HTLV-1、HTLV-2、HBV、HCV、B-19パルボウイルス、HPV-16およびHPV-31のプロウイルスDNA配列の存在に関するスクリーニングが、PCRまたはサザン分析のいずれかを用いて行われている。これらのウイルスはいずれも検出されなかった。
【0086】
第3継代の親BC-1-Ep細胞ならびに第31および54継代のNEKS細胞に対して染色体分析を行った。親BC-1-Ep細胞は、XYを含め、46本の正常染色体すべてを有していた。第31継代では、すべてのNIKS細胞が47本の染色体を有し、第8染色体長腕の同腕染色体1本を余分に有していた。他に大きな染色体異常および標識染色体は検出されなかった。第54継代では、すべての細胞が第8染色体の同腕染色体を含んでいた。
【0087】
NIKS細胞株およびBC-1-EpケラチノサイトのDNAフィンガープリントは、分析した12個の遺伝子座すべてで同一であり、このことからNIKS細胞が親BC-1-Ep集団から派生したことが示された。NIKS細胞株が親BC-1-EpのDNAフィンガープリントを偶然に有している確率は4×10−16である。ヒトケラチノサイトの3種の異なる源であるED-1-Ep、SCC4およびSCC13yからのDNAフィンガープリントはBC-1-Epのパターンとは異なっていた。このデータは、他のヒトED-1-Ep、SCC4およびSCC13yから単離されたケラチノサイトが、BC-1-Ep細胞とも相互にも類縁関係にないことも示している。NIKSのDNAフィンガープリントのデータは、NIJKS細胞株を同定する明確な手法を提供するものである。
【0088】
p53機能の喪失は、培養細胞における増殖能力の向上および不死化頻度の増加と相関している。NIKS細胞におけるp53の配列は、発表されているp53配列(GenBankアクセッション番号:M14695)と同一である。ヒトの場合、p53はコドン72のアミノ酸によって区別される2種類の主要な多型として存在している。NIKS細胞におけるp53の対立遺伝子は両方とも野生型であり、コドン72にアルギニンをコードする配列CGCがある。もう一方の一般的な型のp53は、この位置でプロリンをコードする。NIKS細胞におけるp53の全配列はBC-1-Ep前駆細胞と同一である。NIKS細胞ではRbも野生型であることが明らかになっている。
【0089】
足場非依存的な増殖性はインビボでの腫瘍発生能と高度に相関している。この理由から、寒天またはメチルセルロースを含む培地中でのNIKS細胞の足場非依存的な増殖特性を調べた。寒天またはメチルセルロースを含む培地中に4週間おいた後も、NIKS細胞は単細胞であり続けた。NIKS細胞の緩徐増殖性バリアントを検出するために、このアッセイを合計8週間にわたって継続したが、全く観察されなかった。
【0090】
親BC-1-Epケラチノサイトおよび不死化NIKSケラチノサイト細胞株の腫瘍発生能を明らかにするために、無胸腺ヌードマウスの側腹部に細胞を注入した。ヒト扁平上皮癌細胞株SCC4を、これらの動物における腫瘍形成に関する陽性対照として用いた。試料の注入は、SCC4細胞が片側の側腹部に注入され、親BC-1-EpケラチノサイトまたはNIKS細胞が反対側の側腹部に注入されるようにデザインした。この注射方式により、腫瘍形成に関するマウスの個体差をなくすことができ、マウスが腫瘍形成性細胞の盛んな増殖に耐えうることが確認された。親BC-1-Epケラチノサイト(第6継代)およびNIKSケラチノサイト(第35継代)はいずれも無胸腺ヌードマウスにおいて腫瘍を形成しなかった。
【0091】
NIKS細胞を表面培養および器官培養における分化能力に関して分析した。表面培養下の細胞に関しては、扁平分化のマーカーである角化膜の形成をモニタリングした。培養ヒトケラチノサイトでは、角化膜の構築早期にインボルクリン、シスタチン-αおよび他のタンパク質から構成される未熟構造の形成が起こり、これが成熟角化膜の内側3分の1を占める。接着性BC-1 Ep細胞またはNIKS細胞株に由来するケラチノサイトのうち角化膜を形成するのは2%未満である。この所見は、集密に達する以前の、活動的に増殖しているケラチノサイトのうち、角化膜を形成するのは5%未満であることを示した以前の研究とも一致する。NIKS細胞株が分化誘導を受けた場合に角化膜を形成しうるか否かを明らかにするために、細胞を表面培養物から採取し、メチルセルロースによって半固体にした培地中で24時間浮遊培養した。ケラチノサイトの細胞間接着および細胞-基層接着の喪失により、ケラチンの差異を伴う発現および角化膜の形成を含む、終末分化のさまざまな様相をインビトロで誘発することが可能である。NIKSケラチノサイトは親ケラチノサイトと同程度、通常はより多くの角化膜を形成した。これらの所見は、この細胞型に特異的な分化構造の形成を誘発する能力をNIKSケラチノサイトが失っていないことを示す。
【0092】
NIKSケラチノサイトが扁平分化を生じうることを確かめるために、この細胞を器官培養下で培養した。プラスチック基層上で増殖させて培地中に浸漬したケラチノサイト培養物は複製するが、分化は限定的であった。詳細には、ヒトケラチノサイトは集密化して、3層またはそれ以上の層のケラチノサイトからなるシートを形成する限定的な重層化を起こす。光学顕微鏡および電子顕微鏡によれば、組織培養下で形成される多層シートと完全なヒト皮膚の構造の間には大きな差がある。これに対して、器官培養法では、ケラチノサイトがインビボに類似した条件下で増殖および分化を行うことが可能である。詳細には、細胞を、真皮線維芽細胞が繊維性コラーゲン基層に包埋したものからなる生理的基層に付着させる。器官培養物は気相培地界面に保つ。これにより、上方のシート内の細胞は空気に曝露され、増殖中の基底細胞はコラーゲンゲルを通して拡散によって供給される栄養分の勾配に接した状態に保たれる。これらの条件下では正しい組織構造が形成され、正常に分化している表皮のいくつかの特徴が明らかに認められる。親細胞およびNIKS細胞株のいずれにおいても、立方基底細胞の単層が表皮と真皮同等物との接合部に存在する。形態が円形で核細胞質比が高いことは、ケラチノサイト集団が活動的に分裂していることを表す。正常ヒト表皮では、基底細胞が分裂するたびに娘細胞が生じ、上方の分化中の組織層に移動する。娘細胞のサイズは拡大し、平坦化して扁平になる。最終的にはこれらの細胞は脱核し、角化した角質構造を形成する。この正常な分化過程は、親細胞およびNIKS細胞のいずれの上層にも認められる。平坦化した扁平細胞の外観がケラチノサイトの上層に認められ、このことから器官培養物で重層化が起こったことが示される。器官培養物の最も上の部分では、脱核した扁平細胞が培養物の表面から剥落する。現在のところ、器官培養下で増殖させた親ケラチノサイトとNIKSケラチノサイト細胞株との間に、光顕レベルでは分化における組織学的な差は認められていない。
【0093】
親(第5継代)およびNIKS(第38継代)器官培養物のより詳細な特徴を観察するため、ならびに組織学的な観察所見を確認するために、電子顕微鏡を用いて試料を分析した。親細胞および不死化ヒトケラチノサイト細胞株NIKSを15日間の器官培養を行った後に回収し、重層化の程度を示すために基底層に対して垂直に切片化した。親細胞およびNIKS細胞株はいずれも器官培養下で広範な重層化を生じ、正常ヒト表皮の特徴を備えた構造を形成する。親細胞およびNIKS細胞株の器官培養物には大量のデスモソームが形成される。基底層の形成および基底ケラチノサイト層における随伴性のヘミデスモソームも、親細胞および細胞株の両方に認められた。 ヘミデスモソームはケラチノサイトの基底層への付着性を高める特殊な構造であり、組織の完全性および強度の維持に役立つ。これらの構造の存在は、親細胞またはNIKS細胞が多孔性支持体に直接付着した領域で特に顕著であった。これらの所見は、線維芽細胞を含む多孔性支持体上で培養したヒト包皮ケラチノサイトを用いて以前に得られた超微細構造の所見と一致する。光顕および電顕レベルでの分析により、器官培養下のNIKS細胞株が重層化し、分化して、正常ヒト表皮に認められるデスモソーム、基底層およびヘミデスモソームなどの構造を形成しうることが示されている。
【0094】
B.代用皮膚におけるバリアー機能の改良のための培養条件
本発明のいくつかの態様においては、皮膚同等物を培養する方法であって、従来の方法によって培養した皮膚同等物と比べてバリアー機能の向上をもたらす方法を提供する。三次元器官培養法を用いることにより、正常ケラチノサイトの完全な重層化および組織学的分化を実現することができる(Bellら、Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 76: 1274-1278 (1979);Fusenig, 「The Keratinocyte Handbook」中の「Epithelial mesenchymal interactions regulate keratinocyte growth and differentiation in vitro」I.M. Leigh, Lane, E.B.およびF.M. Watt編、1994, University Press: Cambridge (1994);Parenteauら、Cytotechnology, 9: 163-171 (1992))。真皮線維芽細胞を含むコラーゲンゲルの表面で増殖した正常ケラチノサイトは、重層扁平上皮の正常組織構造の特徴である基底膜およびヘミデスモソームなどの特殊化した構造を生じることができる。正常ケラチノサイトのための器官培養法のおかげで、皮膚の薬剤毒性学的試験のためのインビトロモデルが最近開発された。これは動物試験に代わる重要な選択肢となっている。
【0095】
ヒトケラチノサイトのインビトロ培養物を気相液相界面で増殖させると、高度な秩序を持った角質層が形成される。水の透過性は気相液相界面での培養時間が長くなるほど低下するが(Cumpstoneら、J. Invest. Dermatol., 92(4): 598-600 (1989))、インビトロ培養皮膚同等物の透過性は完全なヒト皮膚のものよりもはるかに高く、すなわち、培養系にはバリアー機能に欠陥がある(Ponec, Int. J. Cosmetic Sci., 14: 245-264 (1992))。透過性バリアーを改良するための取り組みとしてさまざまな培養変数が検討されており、その中には培養物の特性の改良につながったものもある(表1)。例えば、培養物をより低い相対湿度で増殖させると培養皮膚同等物のバリアー機能が改良される(Makら、J. Invest. Dermatol., 96(3): 323-7 (1991))。経上皮的な水分の流れは、上皮バリアーの損傷後の上皮脂質合成および修復のための調節シグナルとして働くと考えられている(Grubauerら、J. Lipid Res., 30(3): 323-33 (1989))。湿度低下に応答したバリアー機能、上皮形態(SCの厚さ、ラメラ膜構造の数、層板小体の数)および脂質含有量の改善は無毛マウスを用いても示されている。
【0096】
培養代用皮膚と完全な皮膚との間の重要な生化学的違いは、正常皮膚の最外層に認められる細胞外脂質プロフィールにある。分化したケラチノサイトの培養物には、正常皮膚の主な構成要素であるいくつかのセラミドが欠乏している(Ponecら、J. Invest. Dermatol., 109(3): 348-55 (1997))。これらの特殊な細胞外脂質は分化したケラチノサイトによって大量に分泌され、集合して、正常な上皮バリアー機能に不可欠な脂質二重層となる。インビトロ培養皮膚同等物とヒト皮膚との間で脂質組成を比較したところ、驚くべき違いが明らかになった。ヒト皮膚は7つの型のセラミドを含むが、培養物は主としてセラミド1〜3を産生し、セラミド6および7は極めてわずかであった。より完全な脂質プロフィールを再建することが多くの研究の最終目標となった。例えば、培地へのビタミンCの添加が、培養皮膚同等物においてセラミド脂質の完全なスペクトルを得るのに不可欠なことが明らかになった。セラミド6および7は、水酸化されたスフィンゴイド塩基および/または脂肪酸を含み、これらの産生はビタミンCの存在によって促進される可能性が高い。この研究によれば、市販の培養皮膚同等物であるEPIDERM、SKINETHICおよびLiving Skin Equivalentの脂質プロフィールはすべてセラミド5、6および7が欠乏していた。ビタミンCの添加によって脂質プロフィールは改善され、電子顕微鏡による評価では全体的SC構造も改善した。
【0097】
(表1)インビトロ培養物に添加した物質のバリアー機能または脂質組成に対する効果

【0098】
核内ホルモン受容体の活性化物質がバリアー機能の発生に及ぼす影響が検討されている。ビタミンDの添加によって改善が得られた研究もいくつかあるが(Makら、前記)、そうでない研究もある(Hanleyら、前記)。ペルオキシソーム増殖活性化受容体(PPAR)およびファルネソイドX活性化受容体(FXAR)の活性化物質は、インビトロおよび子宮内で胎仔ラット皮膚における障壁の成熟を促す。明確なSCの外観、顆粒層の肥厚化およびラメラ構造の密度増大を含む構造変化は、経上皮的な水分損失の減少と一致していた。
【0099】
培養皮膚同等物の脂質組成の異常も免疫不全マウスに対する移植によって改善される(Vicanovaら、J. Jnvestig. Dermatol. Symp. Proc., 3(2): 114-20 (1998))。培養ヒトケラチノサイトは無胸腺マウスに移植しても、分化した表皮を生じる能力を保つ。培養代用皮膚を移植6カ月後〜2年後に調べたところ、SC脂質組成および超微細構造の著しい改善が認められた。インビトロ培養物に認められた高レベルのトリグリセリドならびに低レベルのコレステロールエステルおよび遊離脂肪酸は、移植6カ月後には正常化した。セラミド6および7はインビトロ培養物には検出されなかったが、移植6カ月後にはヒト細胞により発現されていた。これらの研究は、現在のインビトロ培養条件は正常なバリアー機能を備えた皮膚同等物を生じさせる能力に欠陥があることを強く示している。正常な発生シグナルにさらに近い改良された培養条件を用いることにより、バリアー機能の発生が強化されると考えられる。
【0100】
インビボでのバリアー機能の発生は時間的に調節されている。例えば、ラットの場合には、妊娠第19日のラット胎児には障壁がないが、第21日までには能力のある障壁が形成される(Aszterbaumら、Pediatr. Res., 31(4 Pt 1): 308-17 (1992))。能力のある上皮障壁の発生はマウス妊娠の胎生第15日と第16日との間に起こる(Hardmanら、Development, 125: 1541-1552 (1998))。機能を備えた障壁は、多層SCおよびSCにおける成熟ラメラ膜の形成と一致して生じる。角質細胞構造タンパク質であるロリクリン、フィラグリンおよびインボルクリンの発現はこの時期に増加する。脂質プロセシングに関与する酵素であるβ-グルコセレブロシダーゼおよびステロイドスルファターゼの発現も増加する。この過程は、環境因子およびホルモン因子による操作によっても影響される。PPARおよびFXAR活性化物質を子宮内に2日間投与すると、経上皮的水分損失の減少による評価で、19日齢胎仔のバリアー機能の発生は早くなった。この投与により、SCの形態ならびに重要な構造タンパク質の遺伝子発現および酵素機能も改善された。
【0101】
したがって、本発明のいくつかの態様においては、器官培養した皮膚同等物におけるバリアー機能を向上させるために、以下の投与を単独または併用の形で用いる。いくつかの態様においては、器官培養物に約1μg/ml〜約200μg/mlのアスコルビン酸、好ましくは約50μg/mlのアスコルビン酸を加える。また別の態様においては、器官培養物に約1〜200μMのリノール酸、好ましくは約30μMのリノール酸を加える。さらに別の態様においては、器官培養物に約1〜200μMのファルネソール、好ましくは約50μMのファルネソールを加える。さらに他の態様においては、器官培養を湿度約50〜95%、好ましくは湿度約75%で行う。皮膚同等物におけるバリアー機能は表面静電容量(SEC)を測定することによって評価することが好都合である。好ましい態様において、対照皮膚同等物と比べてバリアー機能が改良された皮膚同等物のSEC値は、正常ヒト皮膚で観察されるSECの約5倍未満(例えば、約150〜250pF)である。特に好ましい態様において、対照皮膚同等物と比べてバリアー機能が改良された皮膚同等物のSECは、正常ヒト皮膚で観察されるSECの約2〜3倍未満である(例えば、約80〜120pF)。他の態様において、バリアー機能が改良された皮膚同等物はセラミド含有量によって特徴付けられる。すなわち、いくつかの態様において、セラミド5〜7の含有量は総セラミド量の約20〜50%であり、好ましくは総セラミド量の約30〜45%である。また別の態様において、セラミド2の含有量は総セラミド量の約10〜40%であり、好ましくはセラミド総含有量の約20〜30%である。
【0102】
本発明はさらに、改良されたバリアー機能を含む、改良された特性を備えた皮膚同等物を作製するための追加的な方法および組成物を提供する。これらの改良された方法および組成物について、以下のセクションで説明する:1)培養法、および2)培地。
【0103】
1.培養法
本発明は、より優れた特性を備えた皮膚同等物を作製するための、改良された器官培養法を提供する。いくつかの態様においては、真皮同等物を調製する。好ましい態様において、真皮同等物はコラーゲンおよびヒト線維芽細胞を含む。本発明は何らかの特定の種類のコラーゲンの使用には限定されない。実際には、ラット尾腱コラーゲン(I型)を非制限的に含む、さまざまな種類のコラーゲンを用いることを考えている。同様に、本発明は何らかの特定の種類の線維芽細胞には限定されない。実際には、NHDF(正常ヒト真皮線維芽細胞)細胞、およびドナーまたは患者から採取した細胞を非制限的に含む、さまざまな異なる種類の線維芽細胞を用いることを考えている。
【0104】
本発明はまた、何らかの特定の濃度または量のコラーゲンの使用にも限定されない。好ましい態様においては、前記真皮同等物1cm当たり約0.2mg〜2.0mgのコラーゲンを有する真皮同等物を調製する。より好ましい態様において、真皮同等物は前記真皮同等物1cm当たり約0.22mg〜1.0mgのコラーゲンを含む。最も好ましい態様において、真皮同等物は、前記真皮同等物1cm当たり約0.5mgのコラーゲンを含む。
【0105】
以前に記載したほとんどの皮膚器官培養法とは異なり、コラーゲンおよび線維芽細胞の混合物を、用いる培養装置の種類にかかわらず、それに直接適用する。本出願者らは、良好な収縮性および培養装置に対する付着性を得るのに、無細胞性の第1層が存在する必要はないことを見いだした。いくつかの態様においては、線維芽細胞を約10,000個/ml〜約100,000個/ml、好ましくは約50,000個/mlの最終濃度として含める。
【0106】
さまざまな培養装置を本発明に用いることができる。好ましい培養装置(図4参照)は、側壁および底面から構成されるグロースチャンバーである。いくつかの好ましい態様において、グロースチャンバーは一般にカップ状である。好ましい態様において、底面は培地に対して透過性である。適した透過性表面材料の非制限的な例には、多孔性ポリカーボネートがある。本発明は、MILLICELL(MILLIPORE)およびTRANS WELL(CORNING)培養インサートを含む、市販の培養装置と適合性がある。MILLICELLインサートは、試験目的に用いる皮膚同等物の調製に特に有用である(例えば、直径約1cmの皮膚同等物)。本発明者らは、MILLICELLサイズの複数のインサートをより大型のペトリ皿(すなわち、100mm培養皿)内でインキュベートしうることを見いだした。TRANS WELLインサートは、より大型の皮膚同等物(例えば、直径約10cmのもの)の作製に有用である。これらの比較的大型の皮膚同等物は、移植片として、大規模試験のために、または分割してより小規模な形式の試験に用いることができる。
【0107】
好ましい態様においては、新たに注ぎ入れた真皮同等物を培地中に浸漬させ、真皮同等物の収縮が起こるまで培養する。これにより、全体的に凹んだ外観を有する真皮同等物が作られる。以前に記載された方法では、真皮層の収縮後に、真皮層にケラチノサイトを播種し、その後に再び浸漬する。続いて、約4〜7日後に器官培養物を培地の気相界面まで挙上する。以前に記載されたこれらの方法とは異なり、本発明者らは、ケラチノサイトの播種前に真皮同等物を気相界面に挙上することが好ましいことを見いだした。その後は、重層化が起こるまで培養物を気相界面に保つことが好ましい。したがって、いくつかの態様においては、真皮同等物を気相界面まで挙上して、播種の前に約6時間よりも長く保つことが好ましい。より好ましい態様においては、真皮同等物を気相界面まで挙上して、播種の前に約12時間よりも長く保つことが好ましい。最も好ましい態様においては、真皮同等物を気相界面まで挙上して、播種の前に約24時間よりも長く保つことが好ましい。いくつかの態様においては、以後に用いるためのあらかじめ作製された真皮同等物を提供するために、真皮同等物を気相界面に24時間よりも長く保つ。
【0108】
本発明の培養法は、より優れた特性を備えた皮膚同等物を提供する。好ましい態様において、皮膚同等物は、以前に記載された皮膚同等物に比べてバリアー機能が改良されている。さらに別の好ましい態様において、本発明は、より優れた特性を備えた皮膚同等物の作製に用いるための真皮同等物を提供する。いくつかの態様において、真皮同等物は上記の通りの高濃度のコラーゲンを含むことを特徴とする。
【0109】
さらに別の好ましい態様において、本発明は、皮膚同等物の作製に用いるための組成物を提供する。いくつかの態様において、組成物は底面および側壁を有するグロースチャンバーを含む。さらなる態様において、グロースチャンバーは底面に隣接した真皮同等物を含む。さらに別の態様において、真皮同等物は側壁に実質的に付着している。
【0110】
本発明者らは、真皮同等物上のケラチノサイトの播種密度が、結果として生じる皮膚同等物の質に影響を及ぼしうることも見いだした。すなわち、本発明のいくつかの態様においては、播種密度を以前に記載された方法よりもほぼ1桁上回る程度に高める。いくつかの態様において、ケラチノサイトの播種密度は約1×10〜1×10個/真皮同等物1cmである。さらに別の好ましい態様において、ケラチノサイトの播種密度は約4.65×10個/真皮同等物1cmである。
【0111】
皮膚同等物におけるバリアー機能は、表面静電容量(SEC)を測定することによって評価することが好都合である。好ましい態様において、対照皮膚同等物と比べてバリアー機能が改良された皮膚同等物のSEC値は、正常ヒト皮膚で観察されるSECの約5倍未満である(例えば、約150〜250pF)。特に好ましい態様において、対照皮膚同等物と比べてバリアー機能が改良された皮膚同等物のSECは、正常ヒト皮膚で観察されるSECの約2〜3倍未満である(例えば、約80〜120pF)。他の態様において、バリアー機能が改良された皮膚同等物はセラミド含有量によって特徴付けられる。すなわち、いくつかの態様において、セラミド5〜7の含有量は総セラミド量の約20〜50%であり、好ましくは総セラミド量の約30〜45%である。また別の態様において、セラミド2の含有量は総セラミド量の約10〜40%であり、好ましくはセラミド総含有量の約20〜30%である。
【0112】
2.培地
本発明は、より優れた特性を備えた皮膚同等物を作製するための、改良された器官培養液を提供する。いくつかの態様において、本発明の培地は、ハムF12培地およびダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)である。いくつかの態様においては、ハムF12およびDMEMに、以下の補充成分のうち少なくとも1つを加える:ウシ血清アルブミン、イソプロテレノール、カルニチン、セリン、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸、α-トコフェロール、アスコルビン酸および上皮増殖因子(EGF)。また別の態様においては、ウシ血清アルブミン、イソプロテレノール、カルニチン、セリン、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸、トコフェロール、アスコルビン酸およびEGFのうち少なくとも1つが、インビトロ培養皮膚同等物におけるバリアー機能を改良するのに十分な濃度で提供される。さらに他の態様において、培地は補充用血清、好ましくはFetal Clone IIを含む。いくつかの態様において、培地はさらに、以下の補充成分のうち少なくとも1つを含む:ヒドロコルチゾン、コレラ毒素、インスリン、アデニンおよびCaCl2。好ましい態様において、ウシ血清アルブミンは約0. 1mg/ml〜20mg/ml、好ましくは約1mg/mlの濃度で提供され、イソプロテレノールは約0.1〜10.0μMの濃度で提供され、カルニチンは約1.0〜100.0μMの濃度で提供され、セリンは約1.0〜100.0μMの濃度で提供され、オレイン酸は約1.0〜100.0μMの濃度で提供され、リノール酸は約1.0〜100.0μMの濃度で提供され、アラキドン酸は約1.0〜100.0μMの濃度で提供され、α-トコフェロールは約0.1〜10.0μMの濃度で提供され、アスコルビン酸は約0.005〜5.0mg/mlの濃度で提供され、上皮増殖因子は約0.1〜10.0ng/mlの濃度で提供される。
【0113】
C.バリアー機能の改良のための細胞の遺伝的改変
本発明はまた、セクションAに記した細胞において異種GKLFを発現させることによって、バリアー機能を改良しうることも考えている。異種GKLFの発現を、セクションBに記した改良された培養条件と組み合わせて用いてもよい。上皮分化の最終段階に先だって、角質層を生じさせる生化学的修飾のために必要な酵素をコードする数多くの遺伝子の発現が増大する。さらに、ケラチノサイトの分化を誘発する培養条件または皮膚バリアー機能の実験的破壊によっても、細胞外脂質合成および代謝にかかわる酵素の発現が増大する。これらの遺伝子発現の変化は、1つまたは複数の調節性転写因子が、分化中のケラチノサイトの遺伝子発現プロファイルを上皮バリアーの発生を促進するように変化させる原因であることを示している。発生過程における皮膚バリアー機能の時期が厳密であることは、発生スイッチによる明確な時間的制御が行われている可能性を示唆する。複雑な発生プログラムを1つまたは少数の重要な調節性転写因子の作用によって誘発させることが可能であり、これは時にマスター調節因子または選択遺伝子と呼ばれる。転写因子であるクルッペル様因子4(Klf4)におけるノックアウト変異に関する最近の研究により、皮膚におけるバリアー機能の重要な調節因子と考えられるものが同定されている(Segreら、Nat. Genet., 22(4): 356-60 (1999))。
【0114】
Klf4変異マウスは正常な数として出生するが、生後短期間のうちに(<15時間)、蒸発による過度の体液損失の結果としての血液量減少性ショックと思われる原因によって死亡する。より詳細な分析により、正常マウスでは完全な上皮バリアー機能が妊娠第17.5日までに発生するが、Klf4変異マウスはこのバリアー機能を生じさせることができず、表皮が過度の経上皮的水分損失を示すことが示された。Klf4は分化中の表皮層、有棘層上部および顆粒層で発現される。他の変異マウス系統に生じる欠陥とは異なり、Klf4の欠失は上皮超微細構造および脂質プロフィールの大きな変化を引き起こさない。これにより、その主要な役割はバリアー機能の獲得にあるという仮説が提唱されている。これに合致するように、顆粒層におけるケラトヒアリン顆粒およびSC細胞の扁平化の欠陥が観察されている。EMによれば、変異体の皮膚では細胞間ラメラが不連続性であった。KJf-4変異型皮膚における欠陥は、それをフォスターマウスに移植しても回復しなかった。Klf4は転写因子ファミリーのメンバーである;他のメンバーは赤血球系細胞およびT細胞における組織特異的分化イベントと関連付けられている。野生型マウスとKlf4変異マウスとの間の遺伝子発現の違いを分析したところ、変異型皮膚でアップレギュレートされる3つの遺伝子が同定され、Klf4は通常はこれらの遺伝子の発現を抑制していることが示唆された。Klf4の欠失は他に認められる影響をマウス発生に及ぼさなかったことから、Klf4の働きは主として上皮透過性バリアーの発生の調節にあることが示唆された。上皮バリアー機能の獲得にKlf4が役割を果たしていることから、培養代用皮膚におけるKlf4の発現により、これらの合成皮膚培養物のバリアー機能が改良される可能性が出てきた。
【0115】
したがって、いくつかの態様においては、初代ケラチノサイトまたは不死化ケラチノサイトに、機能的GKLF相同体をコードするベクターをトランスフェクトする。これらのケラチノサイトを器官培養すると、その結果得られる皮膚同等物は、トランスフェクトされていない対照ケラチノサイトから形成される器官培養物と比べて改良されたバリアー機能を示すと考えられる。好ましい態様において、対照皮膚同等物と比べてバリアー機能が改良された皮膚同等物のSEC値は、正常ヒト皮膚で認められるSECの約5倍未満である(例えば、約150〜250pF)。特に好ましい態様において、対照皮膚同等物と比べてバリアー機能が改良された皮膚同等物のSECは、正常ヒト皮膚で認められるSECの約2〜3倍未満である(例えば、約80〜120pF)。他の態様において、バリアー機能が改良された皮膚同等物はセラミド含有量によって特徴付けられる。すなわち、いくつかの態様において、セラミド5〜7の含有量は総セラミド量の約20〜50%であり、好ましくは総セラミド量の約30〜45%である。また別の態様において、セラミド2の含有量は総セラミド量の約10〜40%であり、好ましくはセラミド総含有量の約20〜30%である。
【0116】
本発明は、GKLFの何らかの特定の相同体またはバリアントの使用には限定されない。実際には、野生型GKLFの活性の少なくとも一部が保たれている限り、さまざまなGKLFバリアントを用いてもよい。特に、マウスGKLF(配列番号:1)およびヒトGKLF(配列番号:2)はいずれも本発明に用いうると考えている。さらに、低〜高ストリンジェンシー条件下で配列番号:1および2とハイブリダイズする配列によってコードされるGKLFバリアントも本発明に用いうると考えられる。機能的バリアントは、バリアントを適切なベクターに入れてケラチノサイト内で発現させ(以下により詳細に説明する)、ケラチノサイトを用いて皮膚同等物を作製した上で、皮膚同等物をバリアー機能の向上に関して分析することによってスクリーニングすることができる。または、機能的バリアントを、(Zhangら、J. Biol. Chem., 273(28): 17917-25 (1998)に記載された電気泳動移動度シフトアッセイ法によって同定することもできる。
【0117】
いくつかの態様において、バリアントは変異(すなわち、核酸配列の変化)に起因し、変化したmRNAまたはポリペプチドを一般に生じるが、その構造または機能は変化してもよく、変化しなくてもよい。遺伝子にはバリアント型がないものもあり、1つまたは複数のバリアント型があるものもある。バリアントが生じる一般的な変異性変化は一般に、核酸の欠失、付加または置換に属する。これらのタイプの変化はそれぞれ単独で起こることも他のものと併せて起こることもあり、任意の配列における頻度は1つのことも複数のこともある。
【0118】
ある機能(例えば、GKLF機能)を有するペプチドの構造を、核酸リガンドに対するGKLFの結合親和性を高めるといった目的で改変することも可能と考えられる。この種の改変ペプチドは、本明細書に定義するGKLFの活性を有するペプチドの機能的同等物と判断される。ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列が置換、欠失または付加などによって変化した改変ペプチドを作製することができる。特に好ましい態様において、これらの改変は改変GKLFの活性を著しく低下させることはない。言い換えれば、構築物「X」を、それが、構造的ではなく機能的に定義される本明細書の改変型またはバリアント型GKLFの属のメンバーであるか否かを明らかにする目的で評価することが可能である。好ましい態様において、バリアント型または変異型GKLFの活性は上記の方法によって評価される。
【0119】
さらに、上記の通り、バリアント型のGKLFも、本明細書中にさらに詳細に述べるペプチドおよびDNA分子と同等であるものと考えている。例えば、ロイシンのイソロイシンまたはバリンによる単独置換、アスパラギン酸のグルタミン酸による単独置換、トレオニンのセリンによる単独置換、またはあるアミノ酸の構造的に類似したアミノ酸による類似の置換(すなわち、保存的変異)は、結果として生じる分子の生物活性に大きな影響を及ぼさないと考えられる。したがって、本発明のいくつかの態様は、保存的置換を含む、本明細書に開示するGKLFのバリアントを提供する。保存的置換とは、側鎖に類似性があるアミノ酸のファミリー内部で起こるもののことである。遺伝子によりコードされるアミノ酸は以下の4つのファミリーに分けることができる:(1)酸性(アスパラギン酸、グルタミン酸);(2)塩基性(リジン、アルギニン、ヒスチジン);(3)非極性(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン);および(4)非荷電極性(グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシン)。フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンはまとめて芳香族アミノ酸に分類されることもある。同様の様式で、アミノ酸のレパートリーを、(1)酸性(アスパラギン酸、グルタミン酸);(2)塩基性(リジン、アルギニン、ヒスチジン)、(3)脂肪族(グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン)、任意選択的にはセリンおよびトレオニンを別に脂肪族-ヒドロキシに分類することもできる;(4)芳香族(フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン);(5)アミド(アスパラギン、グルタミン);および(6)含硫性(システインおよびメチオニン)(例えば、Stryer編、「生化学(Biochemistry)」、pg. 17-21, 第2版、WH Freeman and Co., 1981を参照されたい)。ペプチドのアミノ酸配列の変化によって機能的相同体が生じるか否かは、バリアント型ペプチドが野生型タンパク質と類似した様式で機能する能力を評価することによって容易に判定することができる。複数の置換を有するペプチドも同じ様式で容易に調べることができる。
【0120】
さらに稀には、バリアントは「非保存的」な変化(例えば、グリシンのトリプトファンによる置換)を含む。類似した少数の差異には、アミノ酸の欠失もしくは挿入、またはその両方も含まれうる。生物活性を損なわずにどのアミノ酸残基を置換、挿入または欠失させうるかを判断するための手引きは、コンピュータプログラム(例えば、LASERGENEソフトウエア、DNASTAR Inc., Madison, Wis.)を用いて得ることができる。
【0121】
異種GKLFは、適したベクターおよび調節配列を用いることにより、ケラチノサイト内で発現される。いくつかの好ましい態様においては、インボルクリンまたはトランスグルタミナーゼ3のプロモーターを利用する。また別の好ましい態様において、GKLFの発現はpTetOnプラスミド(Clontech, Palo Alto, CA)の誘導性プロモーター系によって駆動される。pWLNEO、pSV2CAT、pOG44、PXT1、pSG(Stratagene)pSVK3、pBPV、pMSG、pSVL(Pharmacia)を非制限的に含む、さまざまな他の哺乳動物発現ベクターも本発明における使用に適すると考えられる。宿主内で複製可能であって能力を発揮する限り、任意の他のプラスミドまたはベクターを用いてもよい。本発明のいくつかの好ましい態様において、哺乳動物発現ベクターは、複製起点、適したプロモーターおよびエンハンサーを含み、さらに任意の必要なリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライスドナー部位およびスプライスアクセプター部位、転写終結配列および5'隣接非翻訳配列も含む。また別の態様において、SV40スプライス部位およびポリアデニル化部位に由来するDNA配列を、必要な非翻訳性遺伝因子を得るために用いてもよい。さらに、Klf4遺伝子をレトロウイルスベクターによって挿入してもよい。特に好ましい態様において、レトロウイルスベクターはシュードタイプのレトロウイルスベクター(Clontech, Palo Alto, CA)である。トランスフェクションは、リン酸カルシウム共沈、電気穿孔、微粒子射入、リポソームを介したトランスフェクションまたはレトロウイルス感染を非制限的に含む、当技術分野で知られた任意の方法によって行うことができる。
【0122】
D.バリアー機能が改良された代用皮膚の使用
本発明の代用皮膚にはさまざまな用途があると考えられる。これらの用途には、化合物(例えば、刺激物)のスクリーニングのための使用、腫瘍および病原体(例えば、ヒトパピローマウイルス)を培養するための基質、ならびに創傷閉鎖および熱傷治療のための使用が非制限的に含まれる。これらの用途について、以下にさらに詳細に説明する。
【0123】
1.化合物のスクリーニングのための使用
本発明の皮膚同等物は、さまざまなインビトロ試験に用いうる。特に、本皮膚同等物は以下の評価のために有用である:スキンケア用製品、薬物代謝、試験化合物に対する細胞応答、創傷治癒、光毒性、皮膚刺激、皮膚炎症、皮膚腐食性および細胞障害。本皮膚同等物は、6ウェル、24ウェルおよび96ウェルのプレートを非制限的に含む、試験用のさまざまな形式として提供される。さらに、本皮膚同等物を標準的な切離法によって分割した後に検査することもできる。本発明の皮膚同等物は、分化した角質層を有する上皮層、および真皮線維芽細胞を含む真皮層の両方を含んでいる。上記の通り、特に好ましい態様において、上皮層は不死化NIKS細胞に由来する。NIKS細胞を含む他の好ましい細胞株は、i)不死化していること;ii)腫瘍形成性がないこと;iii)分化を誘導すると角化膜を形成すること;iv)器官培養下で正常な扁平分化を生じること;およびv)細胞種特異的な増殖基準を液内培養下で保つことを特徴とし、この際、前記の細胞種特異的な増殖基準には、1)標準的なケラチノサイト増殖培地中でマイトマイシンCで処理した3T3フィーダー細胞の存在下で培養した際に、正常ヒトケラチノサイトの形態的特徴を示すこと;2)連続培養のためには上皮増殖因子に依存すること;および3)トランスフォーミング増殖因子1による増殖阻害、が含まれる。
【0124】
本発明はさまざまなスクリーニングアッセイ法を含む。いくつかの態様において、スクリーニング方法は、本発明の皮膚同等物および少なくとも1つの試験化合物または製品(例えば、保湿剤、化粧品、染料または香水などのスキンケア用製品;製品はクリーム、ローション、液体およびスプレーを非制限的に含む任意の形態のものでありうる)を提供すること、製品または試験化合物を皮膚同等物に適用すること、および皮膚同等物に対する製品または試験化合物の影響をアッセイすることを含む。皮膚同等物に対する製品または試験化合物の影響の判定には、非常にさまざまなアッセイ法が用いられている。これらのアッセイ法には、MTT細胞傷害性アッセイ法(Gay、「Living Skin Equivalent as an In Vitro Model for Ranking the Toxic Potential of Dermal Irritants」、Toxic. In Vitro (1992))、ならびに炎症モジュレーター(例えば、プロスタグランジンE2、プロスタサイクリンおよびインターロイキン1-α)および化学誘引物質の放出をアッセイするためのELISAが非制限的に含まれる。アッセイ法をさらに、化合物または製品の毒性、効力または有効性を対象として行うこともできる。さらに、増殖、バリアー機能または組織強度に対する化合物または製品の影響を試験することもできる。
【0125】
特に、本発明は、コンビナトリアルライブラリー(例えば、複数の化合物を含むライブラリー)からの化合物の高スループットスクリーニングのために皮膚同等物を用いることを考えている。いくつかの態様においては、細胞表面受容体の活性化の後のシグナル伝達を観測する二次メッセンジャーアッセイ法に細胞を用いる。また別の態様において、細胞を、細胞応答を転写/翻訳レベルで観測するレポーター遺伝子アッセイ法に用いることもできる。さらに別の態様において、細胞を、外部刺激に対する細胞の全体的な増殖/増殖非応答性を観測するための細胞増殖アッセイ法に用いることもできる。
【0126】
二次メッセンジャーアッセイ法では、皮膚同等物を1つまたは複数の化合物(例えば、コンビナトリアルライブラリーからのもの)で処理し、二次メッセンジャー応答の有無に関してアッセイする。いくつかの好ましい態様においては、皮膚同等物を作製するために用いる細胞(例えば、NIKS細胞)に、組換え細胞表面受容体、イオンチャンネル、電位依存性チャンネルまたはシグナル伝達カスケードにかかわる他の何らかの関心対象のタンパク質をコードする発現ベクターをトランスフェクトする。コンビナトリアルライブラリー内の化合物の少なくとも一部は、ベクターによってコードされる1つまたは複数のタンパク質のアゴニスト、アンタゴニスト、活性化物質または阻害物質として作用すると考えられる。また、コンビナトリアルライブラリー内の化合物の少なくとも一部は、あるシグナル伝達経路において、ベクターによってコードされるタンパク質の上流または下流で作用するタンパク質のアゴニスト、アンタゴニスト、活性化物質または阻害物質として作用すると考えられる。
【0127】
いくつかの態様において、二次メッセンジャーアッセイ法では、膜受容体およびイオンチャンネル(例えば、リガンド依存性イオンチャンネル)の刺激に起因する細胞内変化(例えば、Ca2+濃度、膜電位、pH、IP3、cAMP、アラキドン酸の放出)に応答するレポーター分子からの蛍光シグナルを測定する(Denyerら、Drug Discov. Today 3: 323-32 (1998);Gonzalesら、Drug. Discov. Today 4: 431-39 (1999))。レポーター分子の例には、蛍光共鳴エネルギー転移系(例えば、Cuo-脂質およびオキソノール、EDAN/DABCYL)、カルシウム感受性指示薬(例えば、Fluo-3、FURA 2、INDO 1およびFLUO3/AM、BAPTA AM)、塩素感受性指示薬(例えば、SPQ、SPA)、リン感受性指示薬(例えば、PBFI)、ナトリウム感受性指示薬(例えば、SBF1)およびpH感受性指示薬(例えば、BCECF)が非制限的に含まれる。
【0128】
一般的には、皮膚同等物を構成する細胞に対して、化合物への曝露の前に指示薬を添加する。化合物による処理に対する宿主細胞の応答は、蛍光顕微鏡、共焦点顕微鏡、フローサイトメトリー、微量流体装置、FLIPRシステム(SchroederおよびNeagle、J. Biomol. Screening 1: 75-80 (1996))およびプレート読み取りシステムを非制限的に含む、当技術分野で知られた方法によって検出することができる。いくつかの好ましい態様においては、活性が未知の化合物によって引き起こされた応答(例えば、蛍光強度の増加)を既知のアゴニストによって生じた応答と比較し、既知のアゴニストによる最大応答に対する百分率として表す。既知のアゴニストによって引き起こされる応答を100%の応答と定義する。同様に、既知のアンタゴニストまたは被験アンタゴニストを含む試料にアゴニストを添加した後に記録される最大応答は、100%の応答よりも検出可能な程度に低い。
【0129】
本発明の皮膚同等物はレポーター遺伝子アッセイ法においても有用である。レポーター遺伝子アッセイ法では、標的遺伝子の転写制御因子を含む核酸(すなわち、疾患標的の生物的発現および機能、または炎症性反応を制御する遺伝子)がレポーター遺伝子のコード配列と接合されたものをコードするベクターによる宿主細胞のトランスフェクションを用いる。このため、標的遺伝子の活性化により、レポーター遺伝子産物の活性化がもたらされる。これは炎症性反応などの応答の指標として役立つ。すなわち、いくつかの態様において、レポーター遺伝子構築物は、皮膚の炎症もしくは刺激によって誘導される遺伝子、または炎症もしくは刺激(例えば、プロスタグランジンまたはプロスタサイクリン)に応答して産生される化合物の合成に関与するタンパク質の5'調節領域(例えば、プロモーターおよび/またはエンハンサー)が、レポーター遺伝子と機能的に結合したものを含む。本発明において有用なレポーター遺伝子の例には、クロラムフェニコールトランスフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、ホタルおよび細菌のルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-ラクタマーゼならびに緑色蛍光タンパク質が非制限的に含まれる。これらのタンパク質の産生は、緑色、赤色、黄色または青色蛍光タンパク質を例外として、特異的基質(例えば、X-galおよびルシフェリン)の化学発光性、比色定量用または生物発光性生成物を利用することによって検出される。活性が既知の化合物と未知の化合物との比較は上記の通りに行える。
【0130】
他の好ましい態様において、本皮膚同等物は、皮膚を介した薬物導入の有効性、または皮膚を標的とする薬物の効果のスクリーニングのために有用である。これらの態様においては、皮膚同等物を薬物送達システムまたは薬物によって処理し、皮膚同等物への薬物の透過、浸透または残留をアッセイした。薬物の透過をアッセイするための方法は、Asbillら、Pharm Res. 17(9): 1092-97 (2000)に提示されている。いくつかの態様においては、皮膚同等物を改良型フランツ拡散セルの最上部に装着する。皮膚同等物を1時間水和させ、その後にプロピレングリコールによる前処置を1時間行う。続いて、モデル薬物のプロピレングリコール中の飽和懸濁液を皮膚同等物に加える。その後に皮膚同等物の試料を所定の間隔をおいて採取する。続いて、試料中の薬物の濃度を測定するために皮膚同等物をHPLCによって分析する。ACDプログラムを用いることにより、薬物のログP値を求めることができる(Advanced Chemistry Inc., Ontario, Canada)。これらの方法を改変して、経皮パッチまたは他の送達様式を介した薬物の送達の試験を行うこともできる。
【0131】
さらに別の好ましい態様において、まだ分化が起こっていない播種された真皮同等物は、播種されたケラチノサイトの分化を阻害する、促進する、または他の様式で影響を及ぼす化合物のアッセイ法に有用である。
【0132】
2.皮膚刺激性試験
いくつかの態様においては、本発明の皮膚同等物を、化合物を皮膚刺激活性に関して検査するためのレポーター遺伝子アッセイに用いる。また別の態様において、本発明は、既知の皮膚刺激物に対する応答性がある新規遺伝子を同定するために皮膚同等物を用いる方法を提供する。本発明の方法を用いて同定された新規遺伝子は、さらに、皮膚刺激物の候補のスクリーニング用のほかのレポーター遺伝子構築物を作製するのに有用である。
【0133】
初期のスクリーニング実験は、導入遺伝子(GFP)を発現するNIKSケラチノサイトの安定的トランスフェクタントが器官培養下で正常な重層化を呈することを確認する目的で行った。NIKS細胞に対して、発光オワンクラゲ(Aequorea victoria)緑色蛍光タンパク質(GFP)を安定的にトランスフェクトさせ、クローン集団を単離した。安定的にトランスフェクトされたこれらのGFP陽性NIKS細胞(NIKSGFP)が器官培養物において正常な組織構造を再生させる能力を検討した。試料を凍結して凍結切片を作製し、蛍光顕微鏡によって分析した。培養物をまずGFPの発現および局在に関して調べた。さらに、培養物の細胞層の位置決定および可視化のために、切片をHoechst社の核染色剤ならびにヘマトキシリンおよびエオジン(H&E)によって染色した。器官培養物の切片を、GFP用フィルターおよびHoechstフィルター(倍率400倍)を装着したIX-70倒立蛍光顕微鏡(Olympus)を用いて観察した。NIKSGFP培養物の切片により、GFPが器官培養物の全層に存在しており、最も強い蛍光が角化層で観察されることが示された。
【0134】
次に、NIKSGFP器官培養物の組織像を、非トランスフェクトNIKS細胞および親BC-1-Epケラチノサイトのものと比較した。NIKSGFP移植片のH&E染色切片では、非トランスフェクト対照および親BC-1-Epケラチノサイトと比較して、高度に秩序立った境界明瞭な基底層および高度の重層化が認められ、異常はみられなかった。3種の培養物はいずれも同等な細胞重層化を示し、光顕レベルでは組織学的な違いは何ら認められなかった。
【0135】
NIKSGFP細胞が正常に分化する能力をさらに検討するために、いくつかのケラチノサイト特異的分化マーカーの発現を免疫蛍光顕微鏡によって分析した。ケラチノサイトは組織内部の基底上層の位置に移動するに伴い、分化特異的タンパク質を合成する。ケラチノサイトは基底ケラチンK5およびK14の産生を停止し、分化特異的K1およびK10ケラチンの発現を開始するが、これらは表皮内の残りのすべての層で発現される。間接的免疫蛍光を用いて、器官培養物の切片をK10の発現および局在に関して調べた。BC-1Ep、NIKSおよびNIKSGFP器官培養物において、ケラチン10は正常に基底上層で発現された。NIKSGFP細胞の分化パターンの特徴をさらに分析するために、後期分化マーカーであるフィラグリンの発現および局在を調べた。ケラチノサイトの顆粒層への分化は、明瞭なケラトヒアリン顆粒の存在によって識別される。これらの顆粒は、フィラグリン、および角化膜の生成のための前駆物質となる他のタンパク質によって構成される。フィラグリン染色により、すべての器官培養物の切片で、顆粒層にある細胞に特徴的な点状パターンが認められた。
【0136】
さらに、接着結合の構成要素であるE-カドヘリンおよびP-カドヘリンの発現および局在も分析した。正常表皮では、古典的カドヘリンファミリーの2つのメンバーであるE-カドヘリンおよびP-カドヘリンが発現され、これらはいずれも表皮における分化および細胞接着に重要な役割を果たす。P-カドヘリンの発現は基底層に限局しており、Eカドヘリンは表皮全域に位置する。3種の培養物はいずれも、切片におけるE-カドヘリンの染色パターンは正常であり、細胞間境界に限局されている。これらのデータは、遺伝的に改変されたNIKS細胞が正常な分化を示すことを意味する。このため、レポーター遺伝子構築物を含むNIKS細胞は、初代ケラチノサイトによって形成されるものと同様の培養皮膚同等物を形成すると考えられる。
【0137】
NIKS細胞が既知の刺激物に応答して、皮膚刺激物に応答して分泌されることが知られているサイトカインを分泌することを確認するための実験も行った。実施例3は、NIKS細胞が既知の皮膚刺激物に応答してIL-1αを分泌することを示している。
【0138】
i)レポーター遺伝子アッセイ法
いくつかの態様において、本発明は、皮膚刺激物に応答するレポーター遺伝子構築物を含む、皮膚同等物(例えば、NIKS)細胞を提供する。適したレポーター遺伝子構築物には、上記のものが非制限的に含まれる。いくつかの態様において、本細胞はさらに、バリアー機能が改良されたものである。
【0139】
以前の研究により、IL-8の発現が皮膚刺激とよく相関することが示されている(de Brugerolle de Fraissinetteら、Cell Biology and Toxicology, 15: 121 [1999])。IL-8遺伝子由来の発表済みの配列には、転写開始部位の上流にある1,482bpのDNA、およびIL-8コード領域の上流にある102bpの転写性非翻訳DNAが含まれる(Mukaidaら、J. Immunology, 143: 1366 [1989])。Changらは、気道内上皮細胞において、-1472から+19までのIL-8プロモーター配列を含むレポーター遺伝子がtrans-レチノイン酸によって誘導されることを見いだした(Changら、Am J. Respir Cell Mol Biol. 22: 502 [2000])。Abeらは、転写開始部位の上流にある130bp程度を含むIL-8プロモーター断片であっても、ルシフェラーゼレポーター遺伝子の誘導性発現を導くことを示した(Abeら、Am J. Respir Cell Mol Biol., 22: 51 [2000])。この断片はNF-κB、AP-1およびNF-IL-6に対する結合部位を含んでおり、IL-8の誘導性発現にはこれらの因子の結合部位が必要である(Roebuck, J. Interferon Cytokine Res., 19: 429 [1999]に総説がある)。
【0140】
したがって、いくつかの態様において、本発明は、レポーター遺伝子(例えば、酵素)の発現が刺激物応答性遺伝子の調節によって制御されるレポーター遺伝子を含む、皮膚同等物(例えば、NIKS)細胞を提供する。本発明は何らかの刺激物応答性プロモーターには限定されない。実際には、IL-8およびIL-1αを非制限的に含む、さまざまなプロモーターを考えている。本発明は、刺激物応答性遺伝子の調節領域全体には限定されない。実際には、いくつかの態様において、調節領域の一部分を含む断片を考えている。刺激物に対する応答性のある任意の1つまたは複数の領域を本発明に用いることができる。遺伝子の所定の領域に応答性があるか否かを判定するための手引きを、以下の実施例4に提示している。
【0141】
本発明は何らかの特定のレポーター遺伝子には限定されない。実際には、分泌型アルカリホスファターゼ(SEAP)、クロラムフェニコールトランスフェラーゼ、ホタルおよび細菌のルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-ラクタマーゼならびに緑色蛍光タンパク質を非制限的に含む、さまざまなレポーター遺伝子を考えている。これらのタンパク質の産生は、緑色蛍光タンパク質を例外として、特異的基質(例えば、X-galおよびルシフェリン)の化学発光性、比色定量用または生物発光性生成物を利用することによって検出される。
【0142】
プラスミドに含まれるレポーター遺伝子構築物は、分子生物学の標準的な技法を用いて作製される。例えば、いくつかの態様においては、pSEAP(Tropix、Bedford、MA)をレポーター遺伝子構築物の作製に用いる。pSEAPはプロモーターを欠き、SEAP遺伝子を含む哺乳動物発現ベクターである(Bergerら、1988)。このベクターはプロモーター/エンハンサー挿入のためのポリリンカーのほかに、イントロンおよびSV40由来のポリアデニル化シグナルを含む。このベクターはpUC19由来の複製起点およびアンピシリン耐性遺伝子を含むために大腸菌内で増殖させることができる。レポーター遺伝子構築物の作製に適した他のベクターも入手可能である(例えば、pβ-Gal(β-ガラクトシダーゼレポーター);Tropixを非制限的に含む)。
【0143】
レポーター遺伝子を含む適した皮膚同等物(例えば、NIKS)細胞株を樹立し、これらのトランスフェクト細胞を用いてインビトロ皮膚同等物を作製する。続いて、これらの細胞を用いて、一群の刺激性化合物に応答したレポーター遺伝子構築物の発現を観測する(実施例4参照)。
【0144】
レポーター遺伝子による発現は、任意の適したアッセイによって測定しうる。いくつかの好ましい態様において、本発明は、レポーター遺伝子構築物を有するNIKS由来細胞株による皮膚刺激物に対する遺伝子発現の読み取り(read-out)を利用する。この種のアッセイを用いることにより、新たな化合物の試験のためのアッセイ法の速度が高まり、それを用いるコストが安価になる。例えば、いくつかの態様においては、30分間またはそれ未満で行える化学発光レポーター遺伝子アッセイ法を用いる。実施例4は、本発明に用いうる1つの例示的なアッセイ法を説明している。
【0145】
ii)新規な刺激物応答性遺伝子に関するスクリーニング
他の態様において、本発明は、新規な刺激物応答性遺伝子を同定するための方法および組成物を提供する。いくつかの態様においては、一般集団における刺激物曝露とよく相関するデータを得るために、複数のプールドナーからの初代ヒトケラチノサイトの器官培養物を既知の皮膚刺激物に曝露させたものにおける全体的な遺伝子変化をアッセイする。本方法によって同定された新規遺伝子は、皮膚同等物(例えば、NIKS)由来の遺伝子レポーター細胞株を用いる刺激性試験アッセイ法、および刺激物予測用遺伝子発現アレイに用いることができる。
【0146】
遺伝子発現アレイは、血清(Iyerら、Science 283: 83 [1999])および特定のic増殖因子シグナル伝達経路(Fambroughら、Cell 97: 727[1999])に対する哺乳動物細胞の全体的な遺伝子発現応答について新たな洞察を得る目的で用いられ、成果を上げている。さらに、遺伝子発現パターンのクラスター分析(Eisenら、PNAS 95: 14863 [1998])によって、さまざまな形態の癌の識別および予測が可能であることが最近になって確かめられた(急性骨髄性白血病と急性リンパ球性白血病との比較)(Golubら、Science 286: 531 [1999])。これらの2つの形態の癌における6817種のヒト遺伝子の発現分析を通じて、独立した患者試料のセットを首尾良く識別しうる、最も情報的価値のある50種の遺伝子からなる「予測指標(predictor)」アレイが作製された(Golubら、前記)。これは、疾患による2つの異なる細胞状態のわずかな違いを全体的パターンによって識別しうる既知遺伝子および新規遺伝子のサブセットを得ることを目的とするDNAアレイ分析に関する、説得力のある一例である。したがって、いくつかの態様において、本発明は、既知の刺激物に応答して分泌される新規遺伝子を同定するために遺伝子アレイを用いる。
【0147】
本発明は何らかの1つの遺伝子発現アレイには限定されない。遺伝子発現アレイは数多くの販売元からさまざまな形式で販売されており、これにはフィルターに基づくアレイ(Research Genetics社およびClontech社)、スライドガラスcDNAアレイ(Incyte社−Genome Systems社)およびオリゴヌクレオチドDNAマイクロアレイ(Affymetrix社)が含まれる。1つの実証的な例では(実施例5)、cDNAマイクロアレイ(Genorne Systems社)を用いて、既知の刺激物で処理した培養ヒトケラチノサイトのスクリーニングを行っている。
【0148】
本発明のスクリーニング方法は、さまざまな既知の皮膚刺激物に応答したヒトケラチノサイトにおける遺伝子発現変化のデータベースを作成するために用いられる。このデータベースに含まれる情報は、刺激物予測用遺伝子発現アレイの開発に用いることができる。このようなアレイは、現在用いられている単一エンドポイントのアッセイ法よりもインビボ皮膚刺激性の良い予測指標である可能性が高い刺激性プロファイルを作成するために用いられる。レポーター遺伝子構築物を有する皮膚同等物(例えば、NIKS)由来の細胞株による皮膚刺激物に対する遺伝子発現の簡便な読み取りにより、新たな化合物の試験のためのアッセイ法の速度が高まり、それを用いるコストが安価になると考えられる。
【0149】
3.腫瘍および病原体の培養のための基質
本発明の皮膚同等物は、皮膚に天然に生じる腫瘍の培養および試験のため、ならびに皮膚に影響を及ぼす病原体の培養および試験のためにも有用である。したがって、いくつかの態様においては、本発明の皮膚同等物に悪性細胞を播種することを考えている。非制限的な例としては、ヒト扁平上皮癌のモデルを得るために、皮膚同等物に対して、米国特許第5,989,837号(これは参照として本明細書に組み入れられる)に記載された悪性SCC13y細胞を播種する。続いて、これらの播種された皮膚同等物を用いて、化合物または他の治療戦略(例えば、放射線療法またはトモセラピー(tomotherapy))を、自然環境にある腫瘍に対する有効性に関してスクリーニングすることができる。すなわち、本発明のいくつかの態様は、悪性細胞または腫瘍、および少なくとも1つの試験化合物を含む皮膚同等物を提供すること、皮膚同等物を化合物で処置すること、ならびに悪性細胞または腫瘍に対する処置の効果をアッセイすることを含む方法を提供する。本発明のまた別の態様においては、悪性細胞または腫瘍、および少なくとも1つの被験治療法(例えば、放射線療法または光線療法)を含む皮膚同等物を提供すること、皮膚同等物を治療法によって処置すること、ならびに悪性細胞または腫瘍に対する治療法の効果をアッセイすることを含む方法を提供する。
【0150】
他の態様において、皮膚同等物は皮膚病原体の培養および試験のために用いられる。非制限的な例としては、皮膚同等物にHPV18などのヒトパピローマウイルス(HPV)を感染させる。HPVに感染した皮膚同等物を調製するための方法は米国特許第5,994,115号に記載されており、これは参照として本明細書に組み入れられる。すなわち、本発明のいくつかの態様においては、関心対象の病原体に感染した皮膚同等物および少なくとも1つの試験化合物または処置法を提供すること、ならびに皮膚同等物を試験化合物または処置法によって処置することを含む方法を提供する。いくつかの好ましい態様において、本方法はさらに、病原体に対する試験化合物または処置法の効果をアッセイすることを含む。この種のアッセイ法は、処置後の代用皮膚における病原体の有無または量をアッセイすることによって行える。例えば、病原体の検出または定量のためにELISAを行ってもよい。いくつかの特に好ましい態様において、病原体はHPVなどのウイルス病原体である。
【0151】
4.創傷閉鎖および熱傷治療
本発明の皮膚同等物は、創傷閉鎖および熱傷治療の用途に有用である。熱傷治療および創傷閉鎖のための自己移植片および同種移植片の使用は、Myersら、A. J. Surg. 170(1): 75-83 (1995)および米国特許第5,693,332号;第5,658,331号;および第6,039,760号に記載されており、これらはそれぞれ参照として本明細書に組み入れられる。いくつかの態様において、皮膚同等物をDERMAGRAFTなどの代用真皮とともに用いてもよい。また別の態様においては、皮膚同等物を、標準的なケラチノサイト源(例えば、NIKS細胞)および移植片を移植される予定の患者からのケラチノサイトの両方から作製する。このため、皮膚同等物は2つの異なる異なる源に由来するケラチノサイトを含む。さらに別の態様において、皮膚同等物はヒト単離組織に由来するケラチノサイトを含む。したがって、本発明は、熱傷によって生じた創傷を含む、創傷閉鎖のための方法であって、本発明によるバリアー機能が改良された皮膚同等物および創傷に罹患した患者を提供すること、ならびに創傷が閉鎖される条件下で患者を皮膚同等物によって治療することを含む。
【0152】
5.遺伝子治療
さらに別の態様においては、対象(subject)に対する治療薬を得るために皮膚同等物を操作する。本発明は何らかの特定の治療薬の送達には限定されない。実際には、酵素、ペプチド、ペプチドホルモン、他のタンパク質、リボソームRNA、リボザイムおよびアンチセンスRNAを非制限的に含む、さまざまな治療薬を対象に送達しうると考えている。これらの治療薬は、遺伝的障害の是正を非制限的に含む、さまざまな目的で送達することができる。いくつかの特に好ましい態様においては、治療薬を、移植片が野生型組織として役立つような遺伝性先天性代謝異常(例えば、アミノ酸尿)の患者を解毒する目的で送達する。治療薬の送達によって障害が是正されると考えられる。いくつかの態様においては、皮膚同等物の形成に用いるケラチノサイトに、治療薬(例えば、インスリン、凝固因子IX、エリスロポエチンなど)をコードするDNA構築物をトランスフェクトし、皮膚同等物を対象に移植する。続いて、治療薬または移植片由来の他の組織を患者の血流内に送達させる。好ましい態様においては、治療薬をコードする核酸を適したプロモーターと機能的に結合させる。本発明は何らかの特定のプロモーターの使用には限定されない。実際には、誘導性、構成性、組織特異的およびケラチノサイト特異的なプロモーターを非制限的に含む、さまざまなプロモーターを用いることを考えている。いくつかの態様においては、治療薬をコードする核酸をケラチノサイト内に直接導入する(すなわち、リン酸カルシウム共沈、またはリポソームを介したトランスフェクションによる)。また別の好ましい態様においては、治療薬をコードする核酸をベクターとして用意し、このベクターを当技術分野で知られた方法によってケラチノサイト内に導入する。いくつかの態様において、ベクターはプラスミドなどのエピソーム性ベクターである。また別の態様において、ベクターはケラチノサイトのゲノム中に組み込まれる。組込みベクターの例には、レトロウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターおよびトランスポゾンベクターが非制限的に含まれる。
【0153】
実施例
以下の実施例は、本発明のいくつかの好ましい態様および面を示すとともに、さらに例示するために提供するものであり、その範囲を制限するものとみなされるべきではない。
【0154】
以下の実験の開示においては、以下の略号を用いる:eq(当量);M(モル濃度);μM(マイクロモル濃度);N(規定濃度);mol(モル);mmol(ミリモル);μmol(マイクロモル);nmol(ナノモル);g(グラム);mg(ミリグラム);μg(マイクログラム);ng(ナノグラム);lまたはL(リットル);ml(ミリリットル);μl(マイクロリットル);cm(センチメートル);mm(ミリメートル);μm(マイクロメートル);nm(ナノメートル);℃(摂氏温度);U(単位)、mU(ミリ単位);min.(分);sec.(秒);%(パーセント);kb(キロベース);bp(塩基対);PCR(ポリメラーゼ連鎖反応);BSA(ウシ血清アルブミン)。
【0155】
実施例1
NIKS細胞の上皮バリアー機能に対する培養条件の効果
さまざまな培養条件によってバリアー機能の種々の面が向上することが示されているが(表1参照、前記)、これらの条件の相乗効果を検討した体系的な取り組みはこれまでなかった。本実施例では、アスコルビン酸、PPAR活性化物質(リノール酸)、FXAR活性化物質(ファルネソール)および相対湿度の低下が、NIKS器官培養物の上皮バリアー機能に及ぼす複合的効果の評価について提示する。処理した培養物のバリアー特性の評価は、表面静電容量(SEC)の測定(Boyceら、J. Invest. Dermatol., 107(1):P. 82-7 (1996))、細胞外脂質組成の分析、および電子顕微鏡による組織切片の超微細構造の観察によって行う。
【0156】
評価を行う培養条件を表2に提示している。培養補充成分は指示された濃度として培地に個別に添加するか、または併せて添加する。分析の前に、器官培養物を気相/液相界面で14〜17日間インキュベートする。NIKSを主体とする培養物は、コラーゲン基層ならびに真皮区画および上皮区画からなる。真皮区画はコラーゲン基層からなり、10%ウシ胎仔血清(FCS)およびペニシリン/ストレプトマイシン(P/S)を含むハムF-12培地中で正常ヒト新生児線維芽細胞CI-I-FをI型コラーゲンと混合し、収縮を行わせることによって形成される。上皮区画は、0.2%FCS、0.4μg/mlヒドロコルチゾン(HC)、8.4ng/mlコレラ毒素(CT)、5μg/mlインスリン(Ins)、24μg/mlアデニン(Ade)および100単位/mlのP/Sを加えたハムF-12:DMEの混合液(3:1、最終カルシウム濃度1.88mM)25μl中にて、収縮したコラーゲンゲルにNIKS細胞を播種することによって形成される。細胞を2時間かけて付着させ、その後に培養チャンバーに培地を満たす(第0日目)。第1日目および第2日目に細胞に再び栄養分を与える。第4日目に、細胞を綿パッドによって気相界面まで挙上し、2%FCS、0.4μg/ml HC、8.4ng/ml CT、5μg/ml Ins、24μg/ml AdeおよびP/Sを加えたハムF-12:DME(3:1、最終カルシウム濃度1.88mM)を含む角化培地に切り替える。細胞には3日毎に新たな角化培地を与える。
【0157】
SECの測定に関しては、培養表面のインピーダンスを、Dermaphase 9003インピーダンス計(NOVA Technologies Corp, Portsmouth, NH)を用いて決定する。この装置により、試料の水和状態およびバリアー特性と直接関係のある皮膚表面の導電率の指標が得られる。プローブを培養表面と接触させて配置し、プローブを接触させた直後および10秒間おいた後の読み取り値を記録する。続いて、最初の読み取り値を、プローブを10秒間おいた後の読み取り値と比較する。10秒後の読み取り値の増加は、プローブによる皮膚表面の閉鎖に起因する培養表面の水和を反映している。表面の水和は主に角質層の透過性によって決まるため、最初のSEC読み取り値と最後のSEC読み取り値との間の差の大きさにより、培養物のバリアー特性の指標が得られる。各培養条件の分析を3回ずつ行い、平均インピーダンス測定値を補充成分を加えない標準的な培養条件と比較して、バリアー機能の改善を評価する。インビトロ培養物からのSEC読み取り値と、正常ヒト皮膚から得られたSEC測定値との比較も行う。以前の研究により、インビトロ代用皮膚のSEC値(400pF)は正常ヒト皮膚で観察される値の約10倍の高さであることが示されている。これらの実験の目標は、これらの培養物のSEC読み取り値が正常皮膚の最大2〜3倍の高さとなるように器官ケラチノサイト器官培養物のバリアー機能が改善される条件を開発することである。
【0158】
(表2)培養補充成分および湿度

【0159】
現在までに検討されているインビトロ代用皮膚の脂質組成には、正常ヒト皮膚でみられるものと比較して有意差が認められる。特に、セラミド6および7のレベルはインビトロ培養物の方が大幅に少ない。 表2に示した培養条件を用いた皮膚器官培養物の調製が上皮脂質組成に対して相乗効果を及ぼすか否かを明らかにするために、補充成分を加えた培養物の脂質プロフィールを、補充成分を加えていない対照培養物から単離した脂質、および正常ヒト皮膚から抽出した脂質と比較する。培養物の脂質プロフィールは、上皮培養層から抽出した脂質の高性能薄層クロマトグラフィー(HPTLC)によって評価する。器官培養物を60℃に1分間加熱し、上皮層と真皮層を分離する。2mlのクロロホルム/メタノール(1:2)、2mlのクロロホルム/メタノール/水(1:2:0.5)、2mlのクロロホルム/メタノール(1:2)、2mlのクロロホルム/メタノール(2:1)、最後に2mlクロロホルムによる逐次抽出により、全脂質を上皮層から抽出する。0.2mlの2.5%KClおよび水2mlを添加した後に試料を遠心し、下方の層を除去してチューブを清浄にする。残った上方の層を4mlのクロロホルムで抽出する。クロロホルム抽出物を初回抽出による下方の層と合わせる。窒素中での蒸発によって溶媒を除去し、抽出された脂質をクロロホルム/メタノール(2:1)中に溶解する。溶媒を蒸発させた抽出物の試料を秤量することにより、抽出物中の脂質総含有量を決定する。
【0160】
抽出した脂質(50μg)をシリカゲル60HPTLCプレート(Merck, Darmstad, FRG)にかけ、セラミド展開システムを用いる一次元HPTLCによって分離する。脂質の分離は、クロロホルム、クロロホルム/アセトン/メタノール(76:8:16)、クロロホルム/ヘキシルアセテート/アセトン/メタノール(86:1:10:4)、クロロホルム/アセトン/メタノール(76:4:20)、クロロホルム/ジエチルエーテル/ヘキシルアセテート/酢酸エチル/アセトン/メタノール(72:4:1:4:16:4)、最終にヘキサン/ジエチルエーテル/酢酸エチル(80:16:4)によるHPTLCプレートの逐次展開によって行う。各展開段階の後には、次の溶媒系に進める前にTLCプレートを短時間乾燥させる。分離の後に、脂質を酢酸銅および硫酸銅/硫酸で染色し、その後に黒化させることによって検出する。各培養条件の分析を3回ずつ行い、個々の脂質成分のレベルを濃度測定によって定量して、全脂質に占める比率として表す。以前の研究により、セラミド5〜7はインビトロ代用皮膚の総セラミド量のわずか10%を占めるのみであり、これに対して正常表皮では39%であることが示されている。これに応じてインビトロ培養物ではセラミド2が多く、総セラミド量の約50%を占めており、これに対して正常皮膚では22%である。好ましい態様においては、本発明の皮膚同等物を、セラミド5〜7の含有量が総セラミド量の30〜45%に増加してセラミド2のレベルが総セラミド量の20〜30%に減少するような条件下で培養する。
【0161】
表2に示した条件下で調製した器官培養物における脂質ラメラの超微細構造を電子顕微鏡によって観察する。培養物を2%グルタルアルデヒドおよび2%ホルムアルデヒド(1Mカコジル酸緩衝液 pH 7.4中)で固定した後に、1%四酸化オスミウム、その後さらに0.25%四酸化ルテニウムによる後固定を行う。試料をエタノール系列によって脱水し、Eponate中に包埋した後にReichert Ultracutマイクロトームにより切片化する。切片を酢酸ウラニルおよびクエン酸鉛で染色し、日立H-7000電子顕微鏡(Hitachi, San Jose, CA)で観察する。表2に挙げた条件によって作製された器官培養物が、正常皮膚に認められる電子透過性および電子高密度脂質ラメラの交互出現パターンを再現しているかを調べる。
【0162】
器官培養物を、細胞増殖、ならびにインボルクリン、トランスグルタミナーゼおよびケラチンを含む細胞種特異的分化マーカーに関しても評価する。
【0163】
実施例2
NIKS細胞における外因性Klf4の発現
本実施例では、NIKS細胞における外因性Klf4の発現について述べる。転写因子クルッペル様因子4(Klf4)は、終末分化の過程にある上皮、特に皮膚および腸管上皮において高レベルで発現されるジンクフィンガータンパク質である。皮膚では、これは分裂活性のない表皮の基底上層に豊富に存在する。Klf4は、NIH 3T3細胞cDNAライブラリーにあるジンクフィンガードメインに対するプローブを用いた低ストリンジェンシーハイブリダイゼーションによって同定された(Shieldsら、J. Biol. Chem, 271(33): 20009-17 (1996))。その3つのC2H2ジンクフィンガーのためにこれはジンクフィンガー転写因子のファミリーと結びつけられており、このファミリーには組織特異的分化のために重要な因子であるEKLFおよびLKLFも含まれる。これは増殖停止細胞で最も高いレベルで発現され、増殖中の細胞におけるレベルは検出不能である。Klf4の構成性発現によってCOS-1細胞のDNA合成は阻害される。これは、シトクロムP450遺伝子CYP1A1の調節に重要な特定のDNA配列と結合する(Zhangら、J. Biol. Chem., 273(28): 17917-25 (1998))。Klf4がCYP1A1内の結合部位と結合するとCYP1A1の発現が阻害されるが、これはDNA結合に関するSP1との競合およびSP1との直接的なタンパク質間相互作用によると考えられている。最近の研究では、Klf4が自らの発現も調節すること、および重要な結合相互作用がp300/CBPとのものであることが報告されている(Geimanら、Nucleic Acids Res., 28(5): 1106-1113 (2000);Mahatanら、Nucleic Acids Res., 27(23): 4562-9 (1999))。他の重要な転写因子もそうであるように、Klf4は遺伝子によっては強力な活性化因子であるが、遺伝子によってはリプレッサーとして作用しうる。
【0164】
Klf4は現在のところ、皮膚におけるバリアー機能の重要な調節因子として最も優れた候補遺伝子である。マウスにおけるKlf4発現の欠失は新生児の致死性をもたらすが、これは上皮透過障壁の欠陥による過度の水分損失の結果であるように思われる。これらの観察所見は、Klf4が正常な上皮透過障壁の形成に不可欠な遺伝子を調節していることを示唆し、培養代用皮膚におけるKlf4の発現によってこれらの培養物におけるバリアー機能が改善する可能性を示すものである。本実施例では、分化中のケラチノサイトにおいてKlf4を発現させる2つの方法を述べる。第1の方法は、ヒトKlf4の発現が培地中のテトラサイクリン誘導体ドキシサイクリンの有無によって調節される誘導性発現構築物を作製することである。器官培養物におけるKlf4の発現を導く第2の方法では、分化中のケラチノサイトにおける発現を指令する3.7kbのインボルクリンプロモーター領域(Carrollら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90(21): p.10270-4 (1993))、または分化中のケラチノサイトにおける発現を同じく指令する135bpのトランスグルタミナーゼ3プロモーター領域(Leeら、J. Biol. Chem., 271(8):4561-8 (1996))のいずれかを含むDNA断片を用いる。
【0165】
ヒトKlf4をコードするcDNAを、既知のKlf4配列に対するプライマーを用いるPCRによって単離する(Yetら、J. Biol. Chem., 273(2): 1026-31 (1998))。Klf4 cDNAを、最小CMVプロモーターにtetオペレーター(tetO)の7回反復配列が隣接したものを含む発現ベクターpTRE2(Clontech、Palo Alto、CA)中にクローニングする。クローニングされたKlf4 cDNAの完全性を、既知のKlf4配列に由来するプライマーを用いる配列解析によって確認する。
【0166】
Klf4発現プラスミドから精製したDNAを、tetレプレッサータンパク質の誘導体をコードするpTet-Onプラスミド(Clontech, Palo Alto, CA)とともにNIKS細胞に導入する。このタンパク質rtTAはドキシサイクリンの存在下でtetオペレーターと結合し、ドキシサイクリンが培地中に存在するとKlf4の発現を誘導する。ブラスチシジンに対する耐性を付与するタンパク質をコードする遺伝子をPCRによって増幅し、pTet-Onプラスミド中にクローニングすることにより、安定的にトランスフェクトされた細胞を選択することが可能になる。トランスフェクト細胞を、プラスミドがゲノムに組み込まれなかったすべてのNIKS細胞を死滅させると考えられるブラスチシジン(5μg/ml)を含む培地中での増殖によって選択する。pTRE2-Klf4およびpTet-Onプラスミドの両方を含む安定的な細胞株を、pTet-OnおよびpTRE2プラスミドの両者に由来するジゴキシゲニン標識プローブを用いるサザンブロット法により、多数のクローン細胞株を検討することによって同定する。pTet-OnおよびpTRE2プラスミドの完全なコピーを含む複数のクローンを単離し、ドキシサイクリンの存在下でのKlf4導入遺伝子の発現に関して検討する。
【0167】
Klf4導入遺伝子からの発現を検討するためには、安定的にトランスフェクトされた細胞株の単層培養物および対照非トランスフェクト細胞を、キシサイクリン(1μg/ml)を含む培地中でインキュベートする。続いて、ドキシサイクリン添加後のさまざまな時点で、トリゾール試薬(Life Technologies, Rockville, MD)を用いて全RNAを培養物から単離する。20μgの全RNAを、クローニングしたKlf4 cDNAに由来するジゴキシゲニン標識プローブを用いるノーザンブロットハイブリダイゼーションによって分析し、Genius非放射性検出システム(Roche Molecular Biochemicals, Indianapolis, IN)を用いて検出する。導入遺伝子からのKlf4発現の基礎レベルを決定するために、ドキシサイクリンの非存在下で増殖させたトランスフェクト培養物からもRNAを単離する。非トランスフェクト細胞から各時点で単離したRNAを分析することにより、内因性Klf4遺伝子からのKlf4発現のバックグラウンドレベルが確立されると考えられる。
【0168】
Klf4 cDNAを、インボルクリン遺伝子由来のプロモーター配列を含む発現プラスミド中にもクローニングする。3.7kbのインボルクリンプロモーターを含むDNA断片は、表皮の基底上層に対して導入遺伝子の発現を指令する。このプロモーター断片は、既知のINVプロモーター配列に対するプライマーを用いるPCRによって全ゲノムDNAから増幅される(Lopez-Bayghenら、J. Biol. Chem., 271(1):512-520 (1996))。Klf4 cDNAをこのインボルクリンプロモーター断片を含むプラスミド中にクローニングし、この導入遺伝子を含むNIKSの安定的な細胞株の作製に用いる。安定的な細胞株は、NIKS細胞にINV/Klf4プラスミドおよびブラスチシジン耐性遺伝子を発現するプラスミドをコトランスフェクトし、トランスフェクトされた細胞をブラスチシジンの存在下で増殖させることによって選択される。複数のブラスチシジン耐性細胞株が単離されると考えられ、これをノーザンブロットにより、ブラスチシジン耐性プラスミドのみをトランスフェクトした細胞との比較によるKlf4発現の増加に関して検討する。インボルクリンプロモーターは、いくつかの導入遺伝子を分化中の表皮で発現させるために用いられて奏功しているが、INV/KLF4構築物がバリアー機能に効果を及ぼすのに十分な高レベルで発現されない、または適切な時間的もしくは空間的パターンでは発現されない可能性はある。インボルクリンプロモーター構築物からのKlf4発現が容易に検出されない場合には、別のケラチノサイト特異的遺伝子であるトランスグルタミナーゼ3のプロモーター領域を含む発現構築物を作製する。Klf4 cDNAを、トランスグルタミナーゼ3(TG3)遺伝子からのプロモーター配列を含む発現プラスミド中にクローニングする。転写開始部位の上流126bpおよび下流10bpを含むTG3プロモーター断片は上皮細胞に対して導入遺伝子の発現を指令する(Leeら、J Biol Chem, 271(8):4561-8 [1996])。
【0169】
Klf4 cDNAをこのTG3プロモーター断片を含むプラスミド中にクローニングし、この導入遺伝子を含むNIKSの安定的な細胞株を作製する。安定的な細胞株は、NIKS細胞にTG3/Klf4プラスミドおよびブラスチシジン耐性遺伝子を発現するプラスミドをコトランスフェクトし、ブラスチシジンの存在下でトランスフェクト細胞を増殖させることによって選択する。複数のブラスチシジン耐性細胞株を単離し、ノーザンブロットにより、ブラスチシジン耐性プラスミドのみをトランスフェクトした細胞との比較によるKlf4発現の増加に関して検討する。
【0170】
インボルクリンプロモーターまたはドキシサイクリン誘導系によりKlf4を発現する安定的なNIKS細胞株を、Klf4がこれらの培養条件下で発現されることを確かめるために器官培養下で検討する。器官培養のための標準的な培地および手順は実施例1に記載されている。Klf4を発現するNIKS細胞を、線維芽細胞を含む収縮したコラーゲンマトリックス上に播種し、液内培養下で4日間おいた後に気相界面に挙上する。器官培養物に角化培地を3日毎に与え、気相/液相界面に14日間保って重層上皮を形成させる。誘導性プロモーターによりKlf4を発現するNIKSを有する培養物を、1μg/mlドキシサイクリンを含む培地中で増殖させる。上皮層をトリゾール試薬中でホモジネート化し、ホモジネートをクロロホルムで抽出した上で全RNAをイソプロパノールで沈殿させることにより、全RNAを器官培養物から単離する。RNAを、単層培養物に関して上に述べた通りにKlf4発現に関して検討する。
【0171】
バリアー機能に対するKlf4発現の影響を、実施例1に記載した方法により、表面静電容量の測定、脂質組成および器官培養物の超微細構造によって検討する。さらに、実施例1で培養物に添加することとした作用物質のいくつか、特にPPAR活性化物質およびFXAR活性化物質は、Klf4と協同して作用する他の調節性遺伝子の活性化に役立つ可能性がある。この仮説は、これらの作用物質にバリアー機能の子宮内発生を促進する能力があることによっても裏づけられる。
【0172】
本明細書に記載した2つの発現系を用いたKlf4発現の時期および程度に関するデータにより、NIKS器官培養物におけるKlf4発現を調節することによってバリアー機能を向上させるための戦略を設計することが可能になる。NIKS器官培養物の超微細構造および重要な分化マーカーの発現に関する特徴は詳細に分析されている。Klf4発現が増強された培養物のこれらの表現型的特性の検討により、Klf4発現の結果に関するさらなる手がかりが得られると考えられる。
【0173】
実施例3
皮膚刺激物に応答したIL-1αの分泌
本実施例では、NIKS細胞が皮膚刺激物に応答してIL-1αを分泌することを示す。NIKS細胞の器官培養物が初代ケラチノサイトに典型的な刺激物応答性を示すか否かを明らかにするために、NIKS培養皮膚同等物を、インビボおよびインビトロで皮膚刺激物応答を誘発することが知られた濃度のSDSに曝露させた。空気曝露させたNIKS器官培養物にSDS溶液(0.1%、0.2%および0.5%)を局所適用し、37℃で24時間インキュベートした。24時間後に、培養物の下方の培地を、Quantikine IL-1α ELISAキット(R&D Systems, Minneapolis, MN)を用いてIL-1αタンパク質に関してアッセイし、細胞生存度を決定するために培養物をMTS試薬とともにインキュベートした(Promega Corp., Madison, WI)。対照およびSDS処理した培養物からの培地におけるIL-1αの濃度を図3に示した。非処理培養物からの培地は25pg/mlのIL-1αを含んでおり、一方、0.1%、0.2%または0.5%SDSで処理した培養物におけるIL-1αの濃度はそれぞれ290、375および275pg/mlであった。
【0174】
これらの値は、SDSに曝露された皮膚同等物において発表されているIL-1α応答ともよく一致する(Perkinsら、Toxicological Sciences, 48:218 [1999])。0.5%SDSで処理した培養物におけるIL-1α分泌の低下は、MTSアッセイ法によって検出された、これらの培養物における細胞生存度の低下に起因する可能性が高いと考えられる。
【0175】
実施例4
レポーター遺伝子構築物の作製
本実施例には、IL-8プロモーター断片を含むレポーター遺伝子構築物を含むNIKS細胞を作製するための方法を述べる。既知の配列に対するプライマーを用いるPCRにより、IL-8プロモーターおよび隣接配列を含む1.5kbのDNA断片を増幅する。増幅されたDNAを配列解析により確認した後に、このDNA断片を、SEAPのコード領域は含むもののその発現を導くための調節因子を欠いている発現ベクターpSEAP(Tropix, Bedford, MA)中にクローニングする。レポーター構築物の完全性は制限分析およびDNA配列の決定によって確認する。
【0176】
まず、IL-8/SEAPレポーター構築物が刺激物によって誘導されるか否かを明らかにするための実験を、一時的にトランスフェクトされたNIKS細胞を用いて行う。トランスフェクト細胞のプールを既知の刺激物(例えば、SDS、trans-レチノイン酸)および対照物質(例えば、ミネラルオイル、水)に対して曝露させ、刺激物曝露から4、8および24時間後の化学発光により、SEAP活性の量を決定する。トランスフェクト細胞からの培地を化学発光性基質(Phosphalight, Tropix, Bedford, MA)とインキュベートしてマイクロプレート照度計を用いることにより、SEAP活性を検出する。IL-8/SEAPレポーター遺伝子発現の分析は、独立したトランスフェクト細胞集団を用いて3回ずつ行う。
【0177】
IL-8/SEAPレポーターからのRNAの発現を、内因性IL-8遺伝子からのmRNAの増加と比較する。上記のSEAPアッセイ法と並行して、同一の処理を行った培養物から、トリゾール試薬(Life Technologies, Rockville, MD)を用いてRNAを単離する。刺激物で処理したケラチノサイトにおけるIL-8発現の独立した測定として、複数のプールドナーからの初代ケラチノサイトの培養物を刺激物で処理し、RNA精製のための処理を行う。全RNAをノーザンブロットにより、既知の配列に基づいて増幅したPCR断片を用いて内因性IL-8遺伝子の発現増加に関して検討する。IL-8/SEAP導入遺伝子から発現されたSEAP mRNAのレベルもノーザン分析によって定量する。SEAPレポーターの発現が刺激物に応答したIL-8の誘導を厳密に反映するか否かを明らかにするために、化学発光によって測定したSEAP活性の上昇、およびノーザンブロットによって決定したSEAP mRNAの増加をIL-8 mRNAの増加と比較する。
【0178】
IL-8 mRNAの発現は、種々の皮膚刺激物に対する曝露から24時間後に7〜40倍に増加する(de Brugerolle de Fraissinetteら、前記)。SEAP活性レベルおよびmRNAの増加が、刺激物で処理した培養物の方が少なくとも5倍であれば、レポーター構築物は刺激物誘導性であると判断される。
【0179】
刺激物曝露後のトランスフェクトNIKS細胞でSEAP活性が上昇した場合には、IL-8/SEAPレポーター構築物を用いて安定的な細胞株を以下の通りに作製する。NIKS細胞に対して、IL-8/SEAPレポーター構築物およびブラスチシジンに対する耐性を付与するプラスミド(pCMV/bsd Invitrogen, Carlsbad, CA)をコトランスフェクトする。トランスフェクトされた細胞をブラスチシジンの存在下で増殖させて安定的なトランスフェクト細胞を選択する。トランスフェクト細胞の個々のクローンを、刺激物に応答したIL-8/SEAPレポーター遺伝子の発現に関して検討する。刺激物誘導性の導入遺伝子発現を示すクローンを皮膚器官培養物の作製に用いる。これらの培養物を、上記のように、SDS、trans-レチノイン酸および陰性対照(水、ミネラルオイル)の局所適用により、刺激物応答性に関して検討する。器官培養物を機械的に破壊し、非イオン性界面活性剤を含む緩衝液中で可溶化して、SEAP活性をアッセイしてもよい。
【0180】
IL-8調節領域の1.5kb断片は完全な応答性に必要な調節因子のすべてを含んでいない場合があるため、レポーター遺伝子の応答の程度は内因性IL-8遺伝子で観察されるものよりも弱い可能性がある。この断片がSEAPの刺激物特異的発現を導くのに不十分な場合には、PCR産物をゲノムDNAライブラリーのスクリーニングのためのプローブとして用いる。このアプローチにより、IL-8調節領域をより多く含む可能性が高い、より大きなDNA断片を回収することが可能になる。これらのDNA断片の特徴を制限地図の作成および配列解析によって分析する。IL-8プロモーターに隣接する5〜10kbのゲノムDNAを含むDNA断片をpSEAPベクター中にクローニングし、上記のように、刺激物誘導性SEAP発現を導く能力に関して検討する。
【0181】
別の刺激物誘導性サイトカインであるIL-1αの調節領域を含むDNA断片を用いて、代替的なレポーター遺伝子構築物も作製する。この遺伝子に関して発表されている配列は、転写開始部位の上流に1437bpのDNAを含む。(Furutaniら、Nuc. Acid Res. 14: 3167 [1986])。これらの配列を含むDNA断片を用いて、ウイルスのトランス活性化因子に応答したCATレポーター遺伝子の発現が導かれている(MoriおよびPrager、Blood 87: 3410 [1996])。この断片は、皮膚刺激物に応答した遺伝子発現の変化にかかわる転写因子NF-κBの結合部位を2つ含む(Corsiniら、J. Invest Dermatol. 108: 892 [1997])。
【0182】
さらに、レポーター遺伝子構築物をNIKS細胞内の内因性IL-8遺伝子座に導入することにより、NIKS細胞株レポーター遺伝子構築物も作製する。この「ノックイン」戦略は、レポーター遺伝子の適切な時間的および空間的な発現を正確に再現するために用いられている(Elefantyら、Proc Natl Acad Sci U S A, 95: 11897 [1998];Morrisonら、Mech Dev, 1999. 84169 [1999];Jinら、Biochem Biophys Res Commun, 270: 978 [2000])。
【0183】
実施例5
刺激物応答性遺伝子の同定
本実施例では、刺激物曝露によって発現が誘導される新規遺伝子の同定のために有用な実験について述べる。Genome Systems cDNAマイクロアレイ(GEMマイクロアレイ;Incyte Genomics, Palo Alto, California)を遺伝子発現の分析に用いる。操作はすべてIncyte Genomics社が行う。Incyte社が配列を確認したcDNAクローンから作製された、8514種の一意的なヒトcDNAを含むUniGEM V 2.0マイクロアレイを用いる。より大規模なアレイも、それらが入手可能になれば用いる。成人プールドナー由来の培養ヒトケラチノサイト(Clonetics, Walkersville, MDから入手可能)からインビトロ培養皮膚同等物を調製する。収縮したコラーゲンマトリックス中に真皮線維芽細胞が包埋されたものからなる真皮同等物上に培養ケラチノサイトを播種し、その結果生じた器官培養物を気相界面に挙上して、ケラチノサイト層の分化および重層化を誘導する。14日後に器官培養物に対して、既知の刺激物(例えば、0.2%SDS、0.005%カルシポトリオール、0.025%trans-レチノイン酸)または非刺激物対照(例えば、ミネラルオイル、ワセリン)による局所処理を24時間行う。これらの化合物はいずれも、刺激物で処理した皮膚同等物において炎症誘発性サイトカインIL-1αおよびIL-8の発現および分泌を誘導する(de Brugerolle de Fraissinetteら、前記)。
【0184】
器官培養物からのmRNAの精製を、既知の手順を用いて行う。対照および刺激物に曝露させた器官培養物の上皮層をコラーゲン真皮同等物から機械的に採取して、トリゾール試薬(Life Technologies, Rockville, MD)中に1時間おく。組織を解離させるための周期的なボルテックス処理およびピペッティングの後に、フェノールクロロホルム抽出によってRNAを細胞タンパク質およびDNAから分離する。続いてこの抽出による水相をエタノールで処理し、全RNAを沈殿させる。Oligotex mRNA精製システム(Qiagen, Valencia, CA)を用いて、ポリA+ mRNAを細胞全RNAから単離する。
【0185】
処理した培養物が刺激物応答を示すことを確かめるために、対照および刺激物で処理した培養物からの等量のmRNAを、既知の刺激物応答性遺伝子IL-1αおよびIL-8の誘導に関してノーザンブロットによって検討する。新規な刺激物応答性遺伝子を同定するために、遺伝子発現プロファイリングにより、IL-1αおよびIL-8の発現誘導を示した培養物からのRNAを対照培養物からのRNAと比較する。精製したmRNAをTB緩衝液に50ng/μlの濃度で溶解し、cDNAマイクロアレイ分析のためにIncyte Genomics社に搬送する。データ解析は、Genome Systems社のGEMToolsソフトウエア、ならびにMITゲノム研究センター、およびスタンフォード大学(Stanford University)のPatrick O. Brown氏の研究所から入手しうるクラスター解析プログラムを用いて行う。
【0186】
刺激物応答性があるとして同定された遺伝子を、上の実施例4に記載した方法を用いるレポーター遺伝子アッセイ法に用いる。
【0187】
実施例6
皮膚同等物の脂質含有量
本実施例では、最適な無血清培地を用いる皮膚同等物の調製、および準最適培地を用いて調製した第2のセットの皮膚同等物について述べる。続いて、その結果得られた培養物の脂質含有量を決定した。
【0188】
10mm MILLICELLインサート内であらかじめ調製しておいた真皮同等物上に350,000個のNIKS細胞をプレーティングすることによって器官培養を開始した。この工程を完了するために用いた培地は、基本培地[ハムF12培地/ダルベッコ変法イーグル培地(DME)の3:1混合物に24μg/mlアデニン、8.3ng/mlコレラ毒素、5μg/mlインスリン、0.4μg/mlヒドロコルチゾンを加え、最終カルシウム濃度を1.88mMに調整したもの]に、0.2%Fetal Clone II(仔ウシ血清代用品)を加えたものから構成される。
【0189】
プレーティングから2日後に、増殖を維持させるために器官培養物に新たな培地を与えた。培養物には、基本培地に0.2%Fetal Clone IIを加えたもの、または基本培地に0.2%Fetal Clone IIおよび追加成分(1mg/mlエンドトキシン非含有BSA、1ng/ml上皮増殖因子、50μg/mlアスコルビン酸、1μMイソプロテレノール、10μMカルニチン、10μMセリン、25μMオレイン酸、15μMリノール酸、7μMアラキドン酸および1μMα-トコフェロール)を加えたもののいずれか一方を与えた。
【0190】
挙上してからの4日間は毎日、培養期間の残りの時期には隔日、培養物に最適培地(基本培地に、1mg/mlエンドトキシン非含有BSA、1ng/ml上皮増殖因子、50μg/mlアスコルビン酸、1μMイソプロテレノール、 10μMカルニチン、10μMセリン、25μMオレイン酸、15μMリノール酸、7μMアラキドン酸および1μM α-トコフェロールを加えたもの)または準最適培地(基本培地に、1mg/mlエンドトキシン非含有BSA、1ng/ml上皮増殖因子、10μMカルニチンおよび10μMセリンを加えたもの)を与えた。
【0191】
培養期間が終了した時点で、全脂質を培養物から抽出し、高性能薄層クロマトグラフィー(HPTLC)によって分離した。分離後にプレートを黒化させ、その結果得られたクロマトグラムを濃度測定によって走査し、個々の脂質種を定量した。最適化された培地中で増殖した培養物は、準最適培地中で増殖した培養物よりも総セラミド比率が高かった(表3)。さらに、最適培地中で増殖した培養物は、最適以下の条件下で増殖した培養物よりも、極性セラミド3、4、5および6の含有レベルがはるかに高かった。
【0192】
(表3)

【0193】
実施例7
NIKS細胞におけるGKLFの発現
本実施例では、マウスにおけるバリアー機能の発生を媒介すると考えられているタンパク質であるGKLFのNIKS細胞における発現について述べる。
【0194】
GKLFタンパク質をコードするDNAをPCRによって単離し、ヒトインボルクリンプロモーターを含む発現ベクター中にクローニングした。GKLFおよびインボルクリン断片をDNAシークエンシングによって確認した後に、構築物をトランスフェクションによりNIKS細胞に導入した。トランスフェクションから24時間後に全RNAをトランスフェクト細胞から単離し、これらの細胞におけるGKLFの発現を逆転写/PCR(RT-PCR)によって検討した。
【0195】
インボルクリン/GKLF構築物をトランスフェクトした細胞のRNA中には、スプライシングを受けたGKLF mRNAに対応するPCR産物が検出されたが、空ベクターをトランスフェクトした対照RNAからは検出されなかった。さらに、逆転写酵素を省いた反応物からもGKLFのPCR産物は検出されなかった。これらの結果は、GKLF mRNAがトランスフェクトNIKS細胞で発現されたことを示している。
【0196】
第2のセットの実験では、GKLFをコードするDNAを、ドキシサイクリンの添加後にGKLFの誘導性発現を可能にするpTRE2ベクター中にクローニングした。GKLFおよびインボルクリン断片をDNAシークエンシングによって確認した後に、構築物をトランスフェクションによってNIKS細胞に導入した。トランスフェクションから8時間後に、ドキシサイクリンをトランスフェクト培養物の半数に添加し、すべての培養物をさらに16時間インキュベートした。トランスフェクションから24時間後に全RNAをトランスフェクト細胞から単離し、これらの細胞におけるGKLFの発現を逆転写/PCR(RT-PCR)によって検討した。試料中にはドキシサイクリンの有無にかかわらずスプライシングを受けたGKLF mRNAに対応するPCR産物が認められたが、ドキシサイクリン添加後の試料の方が量は多かった。逆転写酵素を省いた反応物からはPCR産物は検出されなかった。これらの結果は、トランスフェクトNIKS細胞におけるGKLF mRNAの誘導性発現を示している。
【0197】
実施例8
培養方法
本実施例には、以下の実施例に共通する培養方法を述べる。
【0198】
培地
器官培養の工程には、以下の6種の異なる培地を用いる:3T3フィーダー細胞培地(TM);線維芽細胞増殖培地(FM);NIKS培地(NM);プレーティング培地(PM);重層化培地A(SMA);および重層化培地B(SMB)。TMは、単層培養においてNIKS細胞のフィーダー細胞として作用する3T3細胞を増殖させるために用いられる。TMは、10%仔ウシ血清(Hyclone)を加えたダルベッコ変法イーグル培地(DMB、GibcoBRL)の混合物である。FMはハムF-12培地(GibcoBRL)および10%Fetal Clone II(Hyclone)血清の混合物である。NMはNIKSケラチノサイトを増殖させるために用いられる。NMはハムF-12培地(GibcoBRL)およびDMBの3:1混合物に、2.5%Fetal Clone II(Hyclone)、0.4μg/mlヒドロコルチゾン(Calbiochem)、8.4ng/mlコレラ毒素(ICN)、5μg/mlインスリン(GibcoBRL)、24μg/mlアデニン(Sigma)および10ng/ml上皮増殖因子(EGF、R&D systems)を加えたものである。PMは、NIKS細胞を真皮同等物上に播種する際に用いる培地である。PMは、EGFが存在せず、CaCl2(Sigma)を最終カルシウム濃度1.88mMとなるように添加し、Fetal Clone II血清を0.2%のみ添加する点を除き、NMと同じである。SMAは、PMに1mg/mlウシ血清アルブミン(BSA)、1μMイソプロテレノール、10μMカルニチン、10μMセリン、25μMオレイン酸、15μMリノール酸、7μMアラキドン酸、1μM α-トコフェロール、0.05mg/mlアスコルビン酸(すべてSigma社)および1ng/ml EGFを添加下ものである。SMBは、STRATATEST皮膚同等物の上皮重層化段階およびSTRATAGRAFT皮膚同等物の増殖時に用いられる。SMBは、Fetal Clone II血清補充成分が存在することを除き、SMAと同じである。
【0199】
フィーダーの調製
STRATATEST皮膚同等物またはSTRATAGRAFT皮膚同等物の器官培養物を開始する前に、3T3フィーダー細胞を調製し、続いてそのまま用いるか、後に用いるために凍結する。3T3細胞を集密に達するまで増殖させ、マイトマイシン-C(TM中に4ug/mlのマイトマイシン-C、Roche)で2時間処理する。続いて細胞を洗浄し、再懸濁した上で、NIKSの増殖を補助する目的で、1.25×10個/100mm組織培養皿の密度でプレーティングする。凍結したフィーダーを用いる場合には、2.5×10個の入った1mlを含む1本の凍結アンプルを解凍し、新鮮なTMで希釈した上で、1つまたは複数の100mm組織培養皿にプレーティングする。これは、NIKS細胞をプレーティングする1日前にNIKS細胞の増殖に必要と考えられるだけの数の培養皿に対して行う。
【0200】
真皮同等物の調製
凍結NHDF細胞を解凍してプレーティングを行う。細胞には翌日に、残留性の凍結保護剤を除去し、その後の細胞増殖を維持させるためにFMを与える。集密に達する前のNHDF細胞を、真皮同等物に用いるために採集する。真皮同等物を調製するには、ラット尾腱コラーゲン(I型、Becton Dickinson)をまず0.03N酢酸中に3mg/mlに希釈して、氷上で冷却する。濃縮ハムF12培地の混合物(通常の8.7倍の強度、HEPESでpH 7.5に緩衝)をFetal Clone IIと混合する。この2つの溶液は溶液の最終容積のそれぞれ11.5および10%である。1N NaOHを培地混合物に添加する(最終溶液の2.5%)。続いて、希釈コラーゲン(74%)を混合物に添加する。2%容積の懸濁線維芽細胞(STRATATEST真皮同等物の場合は2.5×10個/ml、STRATAGRAFT真皮同等物の場合は1×10個)を混合物に添加する。この溶液をゆっくりと十分に混合する。100μlずつに分割して組織培養インサート(Millipore Corp.のMILLICELL)に入れるが、STRATATESTの場合は100mm組織培養皿に25個が入る。STRATAGRAFT皮膚同等物にはCorning社のTRANSWELLインサートを用いる。13mlの真皮同等物を各インサートに注ぎ入れ、厚さがSTRATATEST真皮同等物の概ね3倍になるようにする。ゲル形成のために30分間おいた後、STRATATEST真皮同等物を含む培養皿に20mlのFMを満たす。各STRATATEST真皮同等物の表面に1滴または2滴のFMを滴下する。STRATAGRAFT真皮同等物については、80mlのFMを150mm組織培養皿内のTRANSWELLインサートの周囲に注ぎ、10mlを真皮同等物の上に載せる。インサートは使用時まで37℃、5%CO、相対湿度90%のインキュベーター内に保つ。真皮同等物にNIKS細胞を播種する1日前に、それらを、組織培養インサートの底面から培地を供給するための2つの吸い上げ用パッドを備えた滅菌ステンレス製メッシュ(S&S Biopath)の上に載せることによって気相界面に挙上する。
【0201】
NIKSの増殖および播種
NIKSのプレーティングの1日前に、フィーダーを凍結しないまま調製するか解凍した上でTM中にプレーティングする。NIKS細胞をフィーダーの上に約3×10個/100mm培養皿の密度でプレーティングする。NIKS細胞を新たに解凍する場合には、残留性の凍結保護剤を除去するためにプレーティングの1日後に新鮮なNMを与える。NIKS細胞には必要に応じて増殖を維持するためのNMを与える。細胞が集密に達した時点で、NIKS細胞を採集し、算定した上でPM中に再懸濁する。4.65×10個のNIKS細胞/cmを、気相界面に1日間挙上しておいたMIILLICELLまたはTRANSWELL真皮同等物の表面に播く。培養皿に金属製リフトの下方までPMを満たし、再びインキュベーターに戻す。2日後に培養物にSMAを与える。さらに2日後に培養物にSMBを与えて、湿度75%のインキュベーターに移し、成熟するまでSMBを追加しながらそこに保つ。
【0202】
実施例9
本実施例では、1mg/mlコラーゲンを用いる真皮同等物の調製について述べる。簡潔に述べると、10倍濃度に調製したハムF12培地24mlを、50mlコニカルチューブ内で、4.8mlの滅菌水、2.4mlペニシリン/ストレプトマイシン混合物および24mlのFetal Clone IIと混合した。4.11mg/mlのラット尾腱I型コラーゲン(1.46ml)を1.882mlの滅菌水および2.658mlの0.05%酢酸で希釈した。正常ヒト真皮線維芽細胞を培養物から採集し、10個および10個/mlの細胞密度で再懸濁した。0.815mlの培地を含む混合物を、2.619mlの希釈コラーゲンおよび10個/mlの線維芽細胞34μlと合わせた。この混合物を116.5μlずつ組織培養インサート(ペトリ皿1枚につき25個)に入れ、37℃で15分おいてゲル化させた。0.815mlの培地を含む別の混合物を、2.619mlの希釈コラーゲンおよび10個/mlの線維芽細胞137μlと合わせた。 この混合物の116.5μlずつを組織培養インサート内の前記のゲルの上に載せ、30分おいてゲル化させた。
【0203】
続いて、ペトリ皿に20mlのFM培地を満たして、5日間インキュベートした。続いてFMを除去し、真皮同等物の表面から液体を吸引した。標準的な手順を用いてNIKS細胞を採集し、プレーティング培地(PM)中に2.345×10個/mlの密度に再懸濁した。この懸濁液150μlを各真皮同等物の表面に加えて2時間インキュベートした。続いて、播種された真皮同等物に20mlのPMを満たした。2日後に液内培養物にPMを再び与えた。
【0204】
さらに2日後に、培地をペトリ皿ならびに培養物の表面から除去した。培養物を気相界面に挙上し、2%血清を添加した約30mlのPMを2日毎に与えた。播種14日後に培養物を分析した。培養物のうち、真皮同等物を覆う完全な上皮を備えているものはなかった。このため、これらは商業的用途には適していなかった。
【0205】
実施例10
本実施例では、3mg/mlコラーゲンを用いる真皮同等物の調製について述べる。10倍濃度に調製したハムF12培地4.785mlを、50mlコニカルチューブ内で、0.946mlの滅菌水、0.473mlのペニシリン/ストレプトマイシン混合液および4.785mlのFetal Clone IIと混合した。この培地混合物の4.6mlを0.242mlの滅菌水および0.289mlの1N NaOHと混合した。0.92mlの混合物を、3.11mg/mlのラット尾腱I型コラーゲン3mlと混合した。これに対して、10個/mlのヒト真皮線維芽細胞懸濁液186μlを添加した。この混合物の100μlをMILLICELLインサート(直径1cm)に入れ、30分おいてゲル化させた。続いてペトリ皿に20mlのFM培地を満たしてインキュベートした。5日後にFMを除去し、真皮同等物の表面から液体を吸引した。標準的な手順を用いてNIKS(商標)細胞を採集し、プレーティング培地(PM)中に2.345×10個/mlの密度で再懸濁した。この懸濁液150μlを各真皮の表面に加えて2時間インキュベートした。続いて、播種された真皮同等物に20mlのPMを与えた。さらに2日後に培地をペトリ皿(培養物の表面を含む)から除去し、培養物を気相界面に挙上して、約30mlの重層化培地を2日毎に与えた。播種14日後に培養物を分析した。培養増殖の終了時点で、すべての培養物において真皮同等物が上皮で完全に覆われており、その外観は平滑で乾燥していた。このため、これらは商業的用途に非常によく適合していた。
【0206】
実施例11
本実施例では、ケラチノサイトを播種する前に真皮同等物をあらかじめ挙上することの有益な効果を示す。10倍濃度に調製した1.31mlのハムF12培地を、50mlコニカルチューブ内で、0.328mlの滅菌水、0.148mlのペニシリン/ストレプトマイシン混合液および1.472mlのFetal Clone IIと混合し、1.63ml(ほぼ半分)を2のチューブに分け入れた。2.92mlのラット尾腱コラーゲン(4.11mg/ml)3.764mlの滅菌水および5.316mlの0.05%酢酸と混合し、0.05%酢酸中にある1mg/mlコラーゲンを得た。5.24mlの希釈コラーゲンを1.63mlの培地混合物に加えた。標準的なプロトコールにより採集した細胞密度10個/mlヒト真皮線維芽細胞74μlを添加し、ゆっくりと混合した。この混合物の116.5μlずつを組織培養インサートに入れ(ペトリ皿1枚につき25個)、37℃で15分おいてゲル化させた。別のコラーゲン5.24mlを、10個/mlの線維芽細胞274μlとともに第2の培地混合物1.63mlに添加した。116.5μlを第1のゲル化したコラーゲン層の上の各インサートに添加した。これを37℃で30分おいてゲル化させた。続いて、真皮同等物が培地中に浸漬された状態で成熟しうるように、ペトリ皿に20mlのFMを満たした。4日後に培地をペトリ皿から除去し(培養物の表面からも含む)、培養物を気相界面まで挙上した上で約30mlのFMを与えた。培養物をこの状態でインキュベーター内に一晩おいた。続いてそれらに、標準的なプロトコールを用いて単層培養物から採集した細胞密度2.345×10個/mlのNIKSケラチノサイト150μlを播種した。播種の後に培養物にPMを与えて、インキュベーターに戻した。2日後に培養物にSMAを与え、その後は2日毎に培養物にSMBを合計8回与えた。培養増殖の終了時点で、すべての培養物において真皮同等物が上皮で完全に覆われており、その外観は平滑で乾燥していた。組織検査により、あらかじめ挙上した試料の真皮および表皮の厚さはほぼ均等であり、表皮にはすべて重層化した層が存在することが判明した。
【0207】
実施例12
本実施例では、あらかじめ挙上することが真皮同等物の寿命に及ぼす影響について述べる。培養物を、浸漬させなかった点を除き、上に挙げた奏功した実験とまったく同じように調製した。ゲルに気相界面まで挙上させたMILLICELLインサートを加え、その後のすべての播種および培地供給を培養物を挙上した状態で行った。培養増殖の終了時点で、培養物10個中1個では真皮同等物が表皮で完全に覆われていた。この影響は一部には、ほとんどの試料では真皮同等物が壁面から離されていたことから、真皮同等物のMILLICELLインサートの底面に対する付着が乏しかったためであると考えられる。組織検査により、真皮および上皮層の厚さに大きなばらつきがあることが示された。同様に、上皮の重層化も、十分に分化したものから単層を覆うに過ぎないものまでさまざまであり、商業的用途には不適合であった。
【0208】
実施例13
本実施例では、器官培養下でのケラチノサイトの完全な重層化を支援するとともに、バリアー機能が改良された皮膚同等物をも生じさせる、無血清培地の最適化について述べる。
【0209】
10mm MILLICELLインサート内であらかじめ調製しておいた真皮同等物上に350,000個のNIKS細胞をプレーティングすることによって器官培養を開始した。この工程を完了するために用いた培地は、基本培地[ハムF12培地/ダルベッコ変法イーグル培地(DME)の3:1混合物に24μg/mlアデニン、8.3ng/mlコレラ毒素、5μg/mlインスリン、0.4μg/mlヒドロコルチゾン、100単位/mlのペニシリン、100μg/mlストレプトマイシンを加え、最終カルシウム濃度を1.88mMに調整したもの]に、0.2%Fetal Clone II(仔ウシ血清代用品)を加えたものから構成される。
【0210】
プレーティングから2日後に、増殖を維持させるために器官培養物に新たな培地を与えた。培養物には、基本培地に0.2%Fetal Clone IIを加えたもの、または基本培地に追加成分(1mg/mlエンドトキシン非含有BSA、1ng/ml上皮増殖因子、1μMイソプロテレノール、10μMカルニチン、10μMセリン、25μMオレイン酸、15μMリノール酸、7μMアラキドン酸、1μMα-トコフェロールおよび0.05mg/mlアスコルビン酸)および0.2%Fetal Clone IIを加えたもののいずれか一方を与えた。
【0211】
プレーティング後の4日間は毎日、培養期間の残りの時期には隔日、器官培養物に6種類の培地処方のうち1つを与えた。0.2%Fetal Clone IIを加えた基本培地を以前に与えた培養物に対しては、Fetal Clone IIを加えない基本培地、または0.2%Fetal Clone IIを加えた基本培地もしくは2%Fetal Clone IIを加えた基本培地のいずれかを与えた。追加成分および0.2%Fetal Clone IIを加えた基本培地を以前に与えた培養物に対しては、Fetal Clone IIを加えずに追加成分を添加した基本培地、または追加成分および0.2%Fetal Clone IIを加えた基本培地もしくは追加成分および2%Fetal Clone IIを加えた基本培地のいずれかを与えた。
【0212】
培地処方の影響の評価には3つの基準を用いた。連続的な細胞表面の被覆の程度の決定には視覚的検査を用いた。結果として生じた培養物のバリアー機能の測定にはインピーダンス計の読み取り値を用いた。バリアー機能の実質的な評価としては、0.1%SDSへの曝露後の組織の生存度を用いた。すべての基準に関して、追加成分を加えた基本培地中に保った器官培養物の方が、追加成分を加えなかった基本培地の場合よりも優れていた。追加成分を供給している限り、血清を除去しても器官培養物の性能は損なわれなかった。
【0213】
以上の明細書で言及したすべての刊行物および特許出願は、参照として本明細書に組み込まれる。当業者には、発明の範囲および精神を逸脱することなく、本発明に記載の方法およびシステムに対するさまざまな改変および変更が明らかであると考えられる。本発明をその特定の態様とともに説明してきたが、請求する本発明がこのような特定の態様に過度に制限されるべきではないことが理解される必要がある。実際には、本発明の実施に関して説明した態様のさまざまな改変が分子生物学、遺伝学または関連分野の当業者には明らかであり、それらも発明の範囲に含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0214】
【図1】マウスKlf4の核酸配列である(配列番号:1)。
【図2】ヒトGKLFの核酸配列である(配列番号:2)。
【図3】NIKS器官培養物によるIL-1α分泌を示している。
【図4】本発明のいくつかの態様による培養ウェルを描写したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面静電容量が約40〜約240pFであるヒト皮膚同等物を含む組成物。
【請求項2】
ヒト皮膚同等物の表面静電容量が約80〜約120pFである、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
皮膚同等物におけるセラミド5、6および7の総合含有量がセラミド総含有量の約20〜約50%である、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
皮膚同等物におけるセラミド2の含有量がセラミド総含有量の約10〜約40%である、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
皮膚同等物が、初代ケラチノサイトおよび不死化ケラチノサイトからなる群より選択されるケラチノサイトを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
不死化ケラチノサイトがNIKS細胞である、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
ケラチノサイトが異種GKLFを発現する、請求項5記載の組成物。
【請求項8】
2種の異なる源に由来するケラチノサイトをさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
GKLFをコードする配列が誘導性プロモーターと機能的に結合したものを含むDNA構築物を含む、単離されたケラチノサイト。
【請求項10】
請求項9記載のケラチノサイトを含む器官培養物。
【請求項11】
バリアー機能が改良された皮膚同等物を作製する方法であって、
a)ケラチノサイト、ならびにアスコルビン酸およびリノール酸を含む培地を提供する段階;
b)該ケラチノサイトを、バリアー機能が改良された皮膚同等物が形成される条件下で培養する段階、
を含む方法。
【請求項12】
アスコルビン酸が約10〜100μg/mlの濃度で提供される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
アスコルビン酸が約50μg/mlの濃度で提供される、請求項11記載の方法。
【請求項14】
リノール酸が約5〜80μMの濃度で提供される、請求項11記載の方法。
【請求項15】
ケラチノサイトが初代ケラチノサイトおよび不死化ケラチノサイトからなる群より選択される、請求項11記載の方法。
【請求項16】
不死化ケラチノサイトがNIKS細胞である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
ケラチノサイトが、GKLFをコードする配列が外因性プロモーターと機能的に結合したものを含むDNA構築物を含む、請求項11記載の方法。
【請求項18】
皮膚同等物の表面静電容量が約40〜約240pFである、請求項11記載の方法。
【請求項19】
皮膚同等物の表面静電容量が約80〜約120pFである、請求項18記載の方法。
【請求項20】
皮膚同等物におけるセラミド5、6および7の含有量がセラミド総含有量の約20〜約50%である、請求項11記載の方法。
【請求項21】
皮膚同等物におけるセラミド2の含有量がセラミド総含有量の約10〜約40%である、請求項11記載の方法。
【請求項22】
請求項11記載の方法によって作製された皮膚同等物。
【請求項23】
バリアー機能が改良された皮膚同等物を作製する方法であって、
a)ケラチノサイト、およびGKLFをコードする配列が外因性プロモーターと機能的に結合したものを含むDNA構築物を提供する段階;
b)該ケラチノサイトに該DNA構築物をトランスフェクトして、トランスフェクトされたケラチノサイトを得る段階;ならびに
c)該トランスフェクトされたケラチノサイトを、バリアー機能が改良された皮膚同等物が形成される条件下で培養する段階、
を含む方法。
【請求項24】
培養段階がさらに、トランスフェクトされたケラチノサイトを、アスコルビン酸およびリノール酸を含む培地中で培養する段階を含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
アスコルビン酸が約10〜100μg/mlの濃度で提供される、請求項24記載の方法。
【請求項26】
アスコルビン酸が約50μg/mlの濃度で提供される、請求項24記載の方法。
【請求項27】
リノール酸が約5〜80μMの濃度で提供される、請求項24記載の方法。
【請求項28】
ケラチノサイトが、初代ケラチノサイトおよび不死化ケラチノサイトからなる群より選択される、請求項23記載の方法。
【請求項29】
不死化ケラチノサイトがNIKS細胞である、請求項28記載の方法。
【請求項30】
ケラチノサイトが、GKLFをコードする配列が誘導性プロモーターと機能的に結合したものを含むDNA構築物を含む、請求項23記載の方法。
【請求項31】
皮膚同等物の表面静電容量が約40〜約240pFである、請求項23記載の方法。
【請求項32】
ヒト皮膚同等物の表面静電容量が約80〜約120pFである、請求項23記載の方法。
【請求項33】
皮膚同等物におけるセラミド5、6および7の含有量がセラミド総含有量の約20〜約50%である、請求項23記載の方法。
【請求項34】
皮膚同等物におけるセラミド2の含有量がセラミド総含有量の約10〜約40%である、請求項23記載の方法。
【請求項35】
請求項23記載の方法によって作製された皮膚同等物。
【請求項36】
化合物のスクリーニングの方法であって、
a)表面静電容量が約40〜約240pFである皮膚同等物を提供する段階、
b)該皮膚同等物を該化合物で処理する段階、
を含む方法。
【請求項37】
段階c)皮膚同等物に対する化合物の影響をアッセイする段階を含む、請求項36記載の方法。
【請求項38】
化合物がコンビナトリアルライブラリーから選択される、請求項36記載の方法。
【請求項39】
ヒト皮膚同等物の表面静電容量が約80〜約120pFである、請求項36記載の方法。
【請求項40】
皮膚同等物におけるセラミド5、6および7の含有量がセラミド総含有量の約20〜約50%である、請求項36記載の方法。
【請求項41】
皮膚同等物におけるセラミド2の含有量がセラミド総含有量の約10〜約40%である、請求項36記載の方法。
【請求項42】
皮膚同等物が、初代ケラチノサイトおよび不死化ケラチノサイトからなる群より選択されるケラチノサイトを含む、請求項36記載の方法。
【請求項43】
不死化ケラチノサイトがNIKS細胞である、請求項42記載の方法。
【請求項44】
ケラチノサイトが異種GKLFを発現する、請求項36記載の方法。
【請求項45】
表面静電容量が約40〜約240pFである少なくとも1つの皮膚同等物、を含むキット。
【請求項46】
少なくとも1つの皮膚同等物を培養するための培地をさらに含む、請求項45記載のキット。
【請求項47】
皮膚同等物を培養するための説明書をさらに含む、請求項45記載のキット。
【請求項48】
少なくとも1つの皮膚同等物を用いて化合物を試験するための説明書をさらに含む、請求項45記載のキット。
【請求項49】
皮膚同等物の表面静電容量が約80〜約120pFである、請求項45記載のキット。
【請求項50】
皮膚同等物におけるセラミド5、6および7の含有量がセラミド総含有量の約20〜約50%である、請求項45記載のキット。
【請求項51】
皮膚同等物におけるセラミド2の含有量がセラミド総含有量の約10〜約40%である、請求項45記載のキット。
【請求項52】
ヒト皮膚同等物が、初代ケラチノサイトおよび不死化ケラチノサイトからなる群より選択されるケラチノサイトを含む、請求項45記載のキット。
【請求項53】
不死化ケラチノサイトがNIKS細胞である、請求項51記載のキット。
【請求項54】
ケラチノサイトが異種GKLFを発現する、請求項45記載のキット。
【請求項55】
皮膚刺激物の疑いのある化合物のスクリーニングの方法であって、
a)i)皮膚刺激物の疑いのある化合物;および
ii)刺激物応答性レポーター遺伝子構築物を含む皮膚同等物
を提供する段階;
b)該皮膚同等物を該化合物と接触させる段階;ならびに
c)該レポーター遺伝子構築物からの遺伝子発現のレベルを測定する段階、
を含む方法。
【請求項56】
ヒト皮膚同等物の表面静電容量が約80〜約120pFである、請求項55記載の方法。
【請求項57】
皮膚同等物におけるセラミド5、6および7の含有量がセラミド総含有量の約20〜約50%である、請求項55記載の方法。
【請求項58】
皮膚同等物におけるセラミド2の含有量がセラミド総含有量の約10〜約40%である、請求項55記載の方法。
【請求項59】
皮膚同等物が、初代ケラチノサイトおよび不死化ケラチノサイトからなる群より選択されるケラチノサイトを含む、請求項55記載の方法。
【請求項60】
不死化ケラチノサイトがNIKS細胞である、請求項59記載の方法。
【請求項61】
ケラチノサイトが異種GKLFを発現する、請求項55記載の方法。
【請求項62】
刺激物応答性レポーター構築物が、インターロイキン-8およびインターロイキン-1αからなる群より選択される遺伝子の少なくとも一部分を含む、請求項55記載の方法。
【請求項63】
部分が調節領域を含む、請求項62記載の方法。
【請求項64】
刺激物応答性レポーター遺伝子構築物を含むNIKS細胞、を含む組成物。
【請求項65】
NIKS細胞の表面静電容量が約40〜約240pFである、請求項64記載の組成物。
【請求項66】
NIKS細胞の表面静電容量が約80〜約120pFである、請求項64記載の組成物。
【請求項67】
NIKS細胞におけるセラミド5、6および7の総合含有量がセラミド総含有量の約20〜約50%である、請求項64記載の組成物。
【請求項68】
NIKS細胞におけるセラミド2の含有量がセラミド総含有量の約10〜約40%である、請求項64記載の組成物。
【請求項69】
NIKS細胞が異種GKLFを発現する、請求項64記載の組成物。
【請求項70】
2種の異なる源に由来するケラチノサイトをさらに含む、請求項64記載のNIKS細胞。
【請求項71】
GKLFをコードする配列が外因性プロモーターと機能的に結合したものを含むDNA構築物をさらに含む、請求項64記載のNIKS細胞。
【請求項72】
請求項64記載のNIKS細胞を含む器官培養物。
【請求項73】
刺激物応答性遺伝子を同定する方法であって、
a)i)皮膚刺激性化合物;
ii)遺伝子発現アレイ;および
iii)皮膚同等物
を提供する段階;
b)該皮膚刺激性化合物を該皮膚同等物と接触させて、刺激物で処理した皮膚同等物を作製する段階;
c)第1のmRNA試料を該刺激物で処理した皮膚同等物から単離して、第2のmRNA試料を該皮膚同等物から単離する段階;
d)該第1および第2のmRNA試料を該遺伝子発現アレイと接触させる段階;ならびに
e)該遺伝子発現アレイを、該刺激物で処理した皮膚同等物において該皮膚同等物よりも高いレベルで発現される遺伝子の実体が決定される条件下で分析する段階、
を含む方法。
【請求項74】
皮膚同等物が培養ヒトケラチノサイトを含む、請求項73記載の方法。
【請求項75】
培養ヒトケラチノサイトが器官培養物として存在する、請求項74記載の方法。
【請求項76】
刺激物応答性レポーター構築物が、インターロイキン-8およびインターロイキン-1αからなる群より選択される遺伝子の少なくとも一部分を含む、請求項73記載の方法。
【請求項77】
部分が調節領域を含む、請求項75記載の方法。
【請求項78】
遺伝子アレイがヒトcDNA配列を含む、請求項76記載の方法。
【請求項79】
播種された真皮同等物を調製するための工程であって、
a.真皮同等物、ケラチノサイト、および気相界面を有する培地を提供する段階;
b.真皮同等物を該培地中で培養する段階;
c.該真皮同等物を該気相界面まで挙上して、挙上された真皮同等物を得る段階;ならびに
d.該真皮同等物に該ケラチノサイトを播種して、播種された真皮同等物を得る段階、
を含む工程。
【請求項80】
ケラチノサイトが、初代ヒトケラチノサイトおよび不死化ヒトケラチノサイトからなる群より選択される、請求項79記載の工程。
【請求項81】
不死化ケラチノサイトがNIKS細胞である、請求項80記載の工程。
【請求項82】
真皮同等物がコラーゲンおよび線維芽細胞を含む、請求項79記載の工程。
【請求項83】
コラーゲンがラット尾腱コラーゲンである、請求項82記載の工程。
【請求項84】
線維芽細胞がNHDF細胞である、請求項82記載の工程。
【請求項85】
挙上が、挙上された真皮同等物を播種の前に少なくとも6時間、気相界面でインキュベートする段階をさらに含む、請求項79記載の工程。
【請求項86】
挙上が、挙上された真皮同等物を播種の前に少なくとも12時間、気相界面でインキュベートする段階をさらに含む、請求項79記載の工程。
【請求項87】
挙上が、挙上された真皮同等物を播種の前に少なくとも18時間、気相界面でインキュベートする段階をさらに含む、請求項79記載の工程。
【請求項88】
挙上が、挙上された真皮同等物を播種の前に約24時間、気相界面でインキュベートする段階をさらに含む、請求項79記載の工程。
【請求項89】
挙上が、挙上された真皮同等物を播種の前に約6時間〜約24時間、気相界面でインキュベートする段階をさらに含む、請求項79記載の工程。
【請求項90】
段階e)が、該播種された真皮皮膚同等物を、皮膚同等物が形成される条件下でインキュベートする段階をさらに含む、請求項79記載の工程。
【請求項91】
皮膚同等物が重層化される、請求項90記載の工程。
【請求項92】
皮膚同等物が重層化されて扁平上皮となる、請求項90記載の工程。
【請求項93】
請求項79記載の工程によって作製された、播種された真皮同等物。
【請求項94】
請求項90記載の工程によって作製された皮膚同等物。
【請求項95】
皮膚同等物を調製するための工程であって、
a.真皮同等物、ケラチノサイト、および気相界面を有する培地を提供する段階;
b.該真皮同等物を該培地中で培養する段階;
c.該真皮同等物を該気相界面まで挙上して、挙上された真皮同等物を得る段階;
d.該真皮同等物に該ケラチノサイトを播種して、播種された真皮同等物を得る段階;ならびに
e.該播種された真皮同等物を、皮膚同等物が形成される条件下で培養する段階、
を含む工程。
【請求項96】
ケラチノサイトが、初代ケラチノサイトおよび不死化ケラチノサイトからなる群より選択される、請求項95記載の工程。
【請求項97】
不死化ケラチノサイトがNIKS細胞である、請求項96記載の工程。
【請求項98】
真皮同等物がコラーゲンおよび線維芽細胞を含む、請求項95記載の工程。
【請求項99】
コラーゲンがラット尾腱コラーゲンである、請求項98記載の工程。
【請求項100】
線維芽細胞がNHDF細胞である、請求項98記載の工程。
【請求項101】
挙上が、挙上された真皮同等物を播種の前に少なくとも6時間、気相界面でインキュベートする段階をさらに含む、請求項95記載の工程。
【請求項102】
挙上が、挙上された真皮同等物を播種の前に少なくとも12時間、気相界面でインキュベートする段階をさらに含む、請求項95記載の工程。
【請求項103】
挙上が、挙上された真皮同等物を播種の前に少なくとも18時間、気相界面でインキュベートする段階をさらに含む、請求項95記載の工程。
【請求項104】
挙上が、挙上された真皮同等物を播種の前に約24時間、気相界面でインキュベートする段階をさらに含む、請求項95記載の工程。
【請求項105】
挙上が、挙上された真皮同等物を播種の前に約6時間〜約24時間、気相界面でインキュベートする段階をさらに含む、請求項95記載の工程。
【請求項106】
皮膚同等物が重層化される、請求項95記載の工程。
【請求項107】
皮膚同等物が重層化されて扁平上皮となる、請求項95記載の工程。
【請求項108】
多孔性底面および側壁を有するグロースチャンバーを含む組成物であって、該多孔性底面の上に真皮同等物があり、該真皮同等物が該グロースチャンバーの該側壁に実質的に付着している組成物。
【請求項109】
グロースチャンバーの多孔性底面が直径約0.1〜20.0cmである、請求項108記載の組成物。
【請求項110】
グロースチャンバーの多孔性底面が直径約1.0cmである、請求項108記載の組成物。
【請求項111】
皮膚同等物が重層化される、請求項108記載の組成物。
【請求項112】
皮膚同等物が重層化されて扁平上皮となる、請求項108記載の組成物。
【請求項113】
皮膚同等物が真皮同等物を含む、請求項108記載の組成物。
【請求項114】
真皮同等物がコラーゲンおよび線維芽細胞を含む、請求項113記載の組成物。
【請求項115】
コラーゲンがラット尾腱コラーゲンである、請求項114記載の組成物。
【請求項116】
線維芽細胞がNHDF細胞である、請求項114記載の組成物。
【請求項117】
皮膚同等物がケラチノサイトを含む、請求項108記載の組成物。
【請求項118】
ケラチノサイトが、初代ケラチノサイトおよび不死化ケラチノサイトからなる群より選択される、請求項117記載の組成物。
【請求項119】
ケラチノサイトがNIKS細胞である、請求項118記載の組成物。
【請求項120】
真皮同等物を含む組成物であって、該真皮同等物が該真皮同等物1cm当たり約0.2mg〜2.0mgのコラーゲンを含む組成物。
【請求項121】
真皮同等物が該真皮同等物1cm当たり約0.22mg〜1.0mgのコラーゲンを含む、請求項120記載の組成物。
【請求項122】
真皮同等物が該真皮同等物1cm当たり約0.5mgのコラーゲンを含む、請求項120記載の組成物。
【請求項123】
ケラチノサイトをさらに含む、請求項120記載の組成物。
【請求項124】
ケラチノサイトが、初代ケラチノサイトおよび不死化ケラチノサイトからなる群より選択される、請求項120記載の組成物。
【請求項125】
ケラチノサイトがNIKS細胞である、請求項124記載の組成物。
【請求項126】
真皮同等物がコラーゲンおよび線維芽細胞を含む、請求項120記載の組成物。
【請求項127】
コラーゲンがラット尾腱コラーゲンである、請求項126記載の組成物。
【請求項128】
BSA、イソプロテレノール、カルニチン、セリン、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸、α-トコフェロール、アスコルビン酸およびEGFを含む組成物。
【請求項129】
BSA、イソプロテレノール、カルニチン、セリン、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸、α-トコフェロール、アスコルビン酸およびEGFが、インビトロ培養皮膚同等物におけるバリアー機能を改良するのに十分な濃度で存在する、請求項128記載の組成物。
【請求項130】
血清をさらに含む、請求項128記載の組成物。
【請求項131】
塩化カルシウム、ヒドロコルチゾン、コレラ毒素、インスリンおよびアデニンをさらに含む、請求項128記載の組成物。
【請求項132】
ウシ血清アルブミンが約0.1〜10.0mg/mlの濃度で提供される、請求項128記載の組成物。
【請求項133】
イソプロテレノールが約0.1〜10.0μMの濃度で提供される、請求項128記載の組成物。
【請求項134】
カルニチンが約1.0〜100.0μMの濃度で提供される、請求項128記載の組成物。
【請求項135】
セリンが約1.0〜100.0μMの濃度で提供される、請求項128記載の組成物。
【請求項136】
オレイン酸が約1.0〜100.0μMの濃度で提供される、請求項128記載の組成物。
【請求項137】
リノール酸が約1.0〜100.0μMの濃度で提供される、請求項128記載の組成物。
【請求項138】
アラキドン酸が約1.0〜100.0μMの濃度で提供される、請求項128記載の組成物。
【請求項139】
α-トコフェロールが約0.1〜10.0μMの濃度で提供される、請求項128記載の組成物。
【請求項140】
アスコルビン酸が約0.005〜5.0mg/mlの濃度で提供される、請求項128記載の組成物。
【請求項141】
上皮増殖因子が約0.1〜10.0ng/mlの濃度で提供される、請求項128記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−195232(P2009−195232A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81181(P2009−81181)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【分割の表示】特願2002−570751(P2002−570751)の分割
【原出願日】平成14年3月1日(2002.3.1)
【出願人】(503318460)ストラタテック コーポレーション (4)
【Fターム(参考)】