説明

改良型固定子巻線故障検出装置および誘導機のための方法

【課題】誘導モータの固定子巻線故障を判定するのに使用されるパラメータを補正するためのシステムおよび方法を提供する。
【解決手段】モータの残留インピーダンスおよび/または残留電圧を決定するステップと、残留インピーダンスおよび残留電圧に基づいて正規化相互結合インピーダンスを補正するステップとを含む。更なる実施形態は、モータの動作温度を決定するステップと、温度に基づいてモータの負シーケンスインピーダンスを決定するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、交流(AC)誘導モータの固定子の巻線故障を検出することに関する。
【背景技術】
【0002】
AC誘導モータは、様々な応用例およびプロセスで使用される。AC誘導モータは、一般に、固定部である「固定子」と回転部である「回転子」とを備える。三相ACモータでは、固定子に電源が投入されて磁界を誘導することにより、回転子を回転させて機械エネルギーを発生させる。固定子は、磁界の誘導に必要な電流を搬送する任意の数の「巻線」または巻極を有することができる。また、これらの巻線は、巻線の「巻き数」により特徴付けることができる。
【0003】
多くの環境で、固定子の巻線は、一般に「巻線故障」と呼ばれる巻線の巻き間の短絡を受けやすい。このようなモータ等の動作時に、種々のアルゴリズムを使用し、モータの状態を決定することができる。例えば、あるアルゴリズムを使用し、巻線故障の数を決定することができる。これらのアルゴリズムで使用される電圧や電流等のパラメータは、変流器および計器用変圧器等の測定装置を使用して測定することができる。利得や位相遅れ等の装置の変動により、誤った測定が行われてアルゴリズムから誤った結果が出じる。さらに、環境条件の変化も測定装置の精度に影響する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
AC誘導モータの固定子の巻線故障を検出する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
モータの固定子の巻線故障を判定する方法が提供される。方法は、負シーケンス電圧、負シーケンス電流、および負シーケンスインピーダンスからから残留電圧を決定するステップと、残留インピーダンスを決定するステップと、残留電圧、残留インピーダンス、またはこれらの組み合わせに基づいて固定子の巻線故障の数を示すパラメータを決定するステップとを備える。
【0006】
モータの固定子の巻線故障を判定するためのアルゴリズムを改良する別の方法が提供される。方法は、公称周波数からの変動を補償することを含む、複数の電圧および電流のフェーザを決定するステップと、フェーザに基づいて対称成分を決定するステップと、対称成分に基づいて固定子の巻線故障の数を示すパラメータを決定するステップとを含む。
【0007】
モータの固定子の巻線故障を判定するためのアルゴリズムを改良する別の方法が提供される。方法は、温度に応じて負シーケンスインピーダンスを調節するステップと、モータの温度を測定するステップと、温度に基づいて負シーケンスインピーダンスを修正するステップと、負シーケンスインピーダンスに基づいて固定子の巻線故障の数を示すパラメータを決定するステップとを含む。
【0008】
モータの固定子の巻線故障を判定するためのシステムが提供される。システムは、誘導モータに接続され、モータの特性を測定するように構成された装置を備える。装置はメモリを有する。メモリは、残留電圧の決定、残留インピーダンスの決定、および残留電圧、残留インピーダンス、またはこれらの組み合わせに基づいた固定子の巻線故障の数を示すパラメータの決定のための指示を含む。
【0009】
本発明の前記その他の特徴、態様および利点は、添付図面を参照しながら以下の詳細な説明を読めば、よりよく理解できるだろう。図面全体を通して、同一の符号は同一の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態による誘導モータの概略斜視図である。
【図2】本発明の実施形態による図1の誘導モータを備えるシステムのブロック図である。
【図3A】本発明の実施形態による、正規化相互結合インピーダンスに適用された残留電圧および/またはインピーダンス補償の結果を示す図である。
【図3B】本発明の実施形態による、正規化相互結合インピーダンスに適用された残留電圧および/またはインピーダンス補償の結果を示す図である。
【図4A】発明の実施形態による、変流器および計器用変圧器の利得および位相変化の様々な組み合わせに対する正規化相互結合インピーダンスのグラフである。
【図4B】発明の実施形態による、変流器および計器用変圧器の利得および位相変化の様々な組み合わせに対する正規化相互結合インピーダンスのグラフである。
【図4C】発明の実施形態による、変流器および計器用変圧器の利得および位相変化の様々な組み合わせに対する正規化相互結合インピーダンスのグラフである。
【図5】本発明の実施形態による誘導モータの学習フェーズ動作のプロセスを示す図である。
【図6】本発明の実施形態による誘導モータの監視フェーズ動作のプロセスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、誘導モータ10の概略斜視図である。図1は、例示の目的でのみ示したものであり、本発明の実施形態は、その特定の誘導モータまたはその構成に限定されない。図示した例では、モータ10は回転子アセンブリ12を備え、この回転子アセンブリ12は回転子鉄心を通って延びる回転子軸14を備える。回転子アセンブリ12は軸14とともに、固定子アセンブリ16内で時計方向または反時計方向に回転することができる。回転子軸14を囲む軸受アセンブリ18は、固定子アセンブリ16内のこのような回転を容易にすることができる。固定子アセンブリ16は複数の固定子巻線19を備え、これらの固定子巻線19は、回転子軸14の周りを周方向に、かつ回転子軸14に沿って軸方向に、固定子アセンブリ16を通って延びる。動作中、固定子巻線19に誘導された回転磁界が回転子アセンブリ12の誘導電流と反応して、回転子アセンブリ12を回転させ、電気エネルギーを、軸14を通って出力される機械エネルギーに変換する。一部の実施形態では、モータ10が同期モータであり、他の実施形態ではモータ10が非同期モータである。同期モータは、ちょうど極対数により高くなる電源周波数で回転し、非同期モータはスリップの存在により特徴付けられるより低い周波数を示す。
【0012】
固定子巻線19は、銅線などの適宜の導電材料であればよく、巻線と固定子アセンブリ16の他の部分との間の絶縁体を備えていてもよい。巻線19は、化学的、機械的、電気的に劣化しやすく、これによって固定子アセンブリ16の性能に影響を及ぼし、回転子アセンブリ12やモータ10により出力されたエネルギーにも影響を及ぼす。また、製造欠陥により、巻線19の性能を損なうことがある。巻線19の巻線故障は電流の流れや固定子アセンブリ16に誘導された磁界を妨げることがある。モータ10の動作について単純な図で説明したが、モータ10の例はこの特定の単純な設計に限定されない。他のさらに複雑な設計も適用可能であり、以下に詳細に説明する技術の恩恵を受ける。
【0013】
図2は、図1の誘導モータ10を備えるシステム20のブロック図である。誘導モータ10は、AC電源または他のAC電力源等の三相電源21に接続することができる。三相AC電源は、線22で示されるように誘導モータ10に送出される。モータ10を制御および監視するために、リレー、メータ、その他の適宜の装置の装置24をモータ10に接続することができる。装置24は、コンピュータの部品を備えていてもよく、またはコンピュータであってもよいことを理解されたい。例えば、図2に示すように、装置24はプロセッサ26およびメモリ28を備える。メモリ28は、適宜の揮発性メモリ、不揮発性メモリ、またはその組み合わせであってもよい。メモリ28は、パラメータ、アルゴリズム、またはモータ10を制御および監視するためのその他のデータを記憶することができ、プロセッサ26がこのデータにアクセスすることを可能とする。
【0014】
装置24は誘導モータ10の種々のパラメータを監視することができる。一実施形態では、3つの計器用変圧器30および3つの変流器32を介してモータ10の電圧を監視することができる。計器用変圧器30および変流器32は、別個の装置であっても、モータ10または装置24の一部として含まれていてもよい。他の実施形態では、これよりも多い数または少ない数の計器用変圧器および/または変流器の数を使用してもよい。
【0015】
線34で示すように、装置24は変流器30からのモータ位相電流を受けることができる。さらに、線36で示すように、装置24は計器用変圧器32からのモータ位相電圧を受けることができる。信号調整器、増幅器、フィルタ等の種々の信号処理要素が、装置24内、またはモータ10と装置24との間に含まれてもよいことを理解されたい。さらに、一部の実施形態では、モータ10はサーミスタ38および/またはその他の適宜の温度センサを備え、モータ10の温度を装置24に送ることができる。
【0016】
理解できるように、装置24は受けた三相パラメータを対称成分、例えば、正シーケンス(p)成分、負シーケンス(n)成分、およびゼロシーケンス(0)成分に変換することもできる。例えば、三相電流Ia、Ib、Icの各フェーザを対称成分Ip、In、I0に変換することができる。同様に、三相電圧Va、Vb、Vcの各フェーザを対称成分Vp、Vn、V0に変換することができる。
【0017】
一実施形態では、装置24がモータ10の種々の動作特性を決定し、モータ10の状態を示すことができる。例えば、一実施形態では、本出願と同時に出願し、本明細書に参照により組み込まれた米国特許出願第 号、Arvind K.Tiwariらによる「Robust On Line Stator Turn Fault Identification System」にさらに記載されたように、装置24が正規化相互結合インピーダンスを、モータ10の固定子16内の巻線故障の数を示すものとして決定することができる。正シーケンスインピーダンスに対する正規化相互結合インピーダンスは以下のように決定することができる。
【0018】
【数1】

ここで、
np/Zppは相互結合インピーダンス、
pは正シーケンス電圧、
nは負シーケンス電圧、
nは負シーケンス電圧、
ppは正シーケンスインピーダンス、
nnは負シーケンスインピーダンスである。
【0019】
また他の実施形態では、負シーケンスインピーダンスに対する正規化相互結合インピーダンスを以下のように決定することもできる。
【0020】
【数2】

ここで、
np/Zppは相互結合インピーダンス、
pは正シーケンス電流、
nは負シーケンス電圧、
nは負シーケンス電圧、
nnは負シーケンスインピーダンスである。
【0021】
測定装置、例えば計器用変圧器30および変流器32の利得および位相の差により、式1で使われる対称成分電流および電圧を引き出すのに使用される電流および電圧測定値に誤りが生じることがある。さらに、モータは、製造欠陥による固有の非対称性を有することがあり、これは残留電圧および残留電流として現れることがある。一部の実施形態は、このような巻線の非対称性または欠陥についてモータを監視することを含むことができる。例えば、一実施形態では、誤差補償が、残留電圧および残留インピーダンスのための正規化相互結合インピーダンスを補償することを含むことができる。残留電圧の基準値Vbaseおよび残留インピーダンス比の基準値Zbaseは、装置24により測定されるパラメータの対称成分から算出することができる。値VbaseおよびZbaseは、測定開始時の残留値を示す。基準値は、測定誤差を含む定常状態システム誤差を取り込み、それらを特定の平均時間にわたって平均化することができる。残留電圧の基準値は以下のように決定することができる。
【0022】
【数3】

ここで、
baseは残留電圧、
Tは平均時間、
nは負シーケンス電圧、
nnは負シーケンスインピーダンス、
Inは負シーケンス電流である。
【0023】
同様に、残留インピーダンス比の基準値Zbaseは以下のように決定することができる。
【0024】
【数4】

ここで、
baseは残留インピーダンス比、
Tは平均時間、
nは負シーケンス電圧、
nnは負シーケンスインピーダンス、
nは負シーケンス電流、
pは正シーケンス電圧である。
【0025】
平均時間Tを特定のアルゴリズムについて調整することができる。例えば、平均時間Tを5秒、10秒、15秒、20秒、25秒等とすることができる。
【0026】
正シーケンスに対する正規化相互結合インピーダンスZnp/Zppを決定するための式1は、式2および式3でそれぞれ決定される残留電圧Vbaseまたは残留インピーダンスZbaseに基づく補償を含むことができる。正規化相互結合インピーダンスは、以下のように残留電圧Vbaseを説明することができる。
【0027】
【数5】

同様に、正規化相互結合インピーダンスは、以下のように残留電圧Zbaseを説明することができる。
【0028】
【数6】

負シーケンスインピーダンスに対する正規化相互結合インピーダンスZnp/Znnも同様にVbaseおよびZbaseについて補償されることを理解されたい。したがって、以下の説明および実施形態は正規化相互結合インピーダンスZnp/Zppを含むが、正規化相互結合インピーダンスZnp/Znnを交換可能に使用することができる。
【0029】
図3Aおよび3Bは、前述した残留電圧および/またはインピーダンス補償の結果を示す。図3Aは4つのZnp/Zpp値のグラフ50であり、各値はモータ10の固定子アセンブリ16の巻線故障の数を示す。グラフ50のy軸はZnp/Zppの値であり、x軸はモータ10の測定装置の利得の差を示す。例えば、第1の線52は巻線故障のない、正常なモータを示す。第2の線54は、1つの巻線故障があるモータ10を示し、第3の線56は、2つの巻線故障があるモータ10を示し、第4の線58は、3つの巻線故障があるモータを示す。
【0030】
x軸上の点1は、モータ10の電圧および電流の三相すべてが等しい利得および位相を有するときの点に対応する。x軸上の点2は、一相の利得が5%減少した点に対応し、点3は二相の利得が5%減少した点に対応する。グラフ50に示すように、線52、54、56、58で示された各Znp/Zppの計算値は、利得が変化すると一定ではなくなる。例えば、正常な(巻線故障のない)モータを示す第1の線52のZnp/Zpp値は、点60、62、64の間を移動する。同様に、2つの巻線故障があるモータを示す第3の線54のZnp/Zpp値は、位相の利得が減少するときに点66、68、70の間を移動する。Znp/Zpp線54、56は、利得がx軸に沿って変化すると変動する。
【0031】
図3Bは、前述した式4および5を使用して残留電圧または残留インピーダンスを補償した後の、前述したZnp/Zpp値を示すグラフ72である。グラフ72に示すように、正常なモータ10に対応する線52のZnp/Zpp値は、利得が減少するときに、点74、76、78間で比較的一定のままである。同様に、線54、56、58に対するZnp/Zpp値はすべて、利得が減少するときに、点80、82、84間で比較的一定のままである。したがって、補償式4および5を使用すると、決定されるモータ10のZnp/Zppは、利得の変化が変流器または計器用変圧器等の測定装置を通して導入されるもかかわらず、比較的一定のままであることができる。
【0032】
前述した補償技術をさらに示すものとして、図4A〜Cは、測定変流器および計器用変圧器の利得および位相をそれぞれ5%および2.5度変化させた、512の異なる組み合わせについての正規化相互結合インピーダンスZnp/Zppのグラフを示す。図4Aに示すように、Znp/Zpp値は正常なモータ、1つの巻線故障があるモータ、2つの巻線故障があるモータ、および3つの巻線故障があるモータについて大きく変化する。図4Bに示すように、残留電圧補償の導入により、正常なモータ、1つの巻線故障があるモータ、2つの巻線故障があるモータ、および3つの巻線故障があるモータについて、比較的安定した正規化相互結合インピーダンスの値が得られる。同様に、図4Cに示すように、残留インピーダンス補償の導入により、正常なモータ、1つの巻線故障があるモータ、2つの巻線故障があるモータ、および3つの巻線故障があるモータについて、比較的安定した正規化相互結合インピーダンスの値が得られる。
【0033】
他の実施形態では、正規化相互結合インピーダンスを決定するのに使用される種々のフェーザを決定することが、周波数補償を含むこともできる。種々の実施形態は異なる技術を使用して、正規化相互結合インピーダンスの決定に対する入力として使用される測定された電圧および電流のフェーザを推定することができる。これらの技術は、限定されないが、離散フーリエ変換(DFT)、余弦アルゴリズム、最小二乗アルゴリズム、カルマンフィルタ、ウェーブレット変換、および/または適宜の技術を含むことができる。
【0034】
一実施形態では、これらの技術を使用することが、基準外周波数効果を補償する周波数補償を含むことができる。この基準外周波数効果は、シーケンス成分の判定に誤りを生じ、正規化相互結合インピーダンスの決定に影響を及ぼす可能性がある。例えば、DFTを使用してフェーザ成分を決定する実施形態では、DFT計算が周波数補償を含むことができる。このような実施形態では、公称周波数から±5%までの偏差については、周波数補償により正規化相互結合インピーダンスに何の効果も生じない。
【0035】
前述したように、正規化相互結合インピーダンスの決定に使用されるパラメータの1つは負シーケンスインピーダンスZnnである。負シーケンスインピーダンスは、モータ10の温度変化により影響される可能性がある。負シーケンスは抵抗およびインダクタンスの関数であり、抵抗は温度の関数であるため、温度変動により負シーケンスインピーダンスが変化する可能性がある。例えば、モータ10が動作を開始すると、モータ10の温度が周囲温度になるか、またはほぼ周囲温度になる。モータ10が動作を続けると、モータ10の温度が増加することがある。
【0036】
一実施形態では、モータ22は、サーミスタ、および/またはモータ22に接続されたその他の適宜の温度測定装置を備え、温度を決定することができる。さらに、装置24は、測定された温度が特定の閾値温度に達するか、特定の時間、特定の閾値温度を超えたままである場合に、アラーム、モータ停止、またはその他の動作を含むことができる。測定された温度を使用して、装置24は、正規化相互結合インピーダンスを決定する前に負シーケンスインピーダンスを補償することができる。例えば、装置24は、測定された温度に基づいて、負シーケンスインピーダンスを連続して更新する(例えば、負シーケンスインピーダンスを調整する)ことができる。負シーケンスインピーダンスの更新は、特定の間隔で、または特定の温度変化に応じて行われてもよい。
【0037】
一実施形態では、モータ10の動作および監視が、学習フェーズおよび監視フェーズを含むことができる。学習フェーズは、モータ10の始動中に一度、変流器、計器用変圧器、および定格モータパラメータ(例えば、馬力、極数、線間電圧等)の所与のセットアップについて行うことができる。学習フェーズが完了した後、モータ10の動作中に、監視フェーズが続けて行われ、種々のパラメータを確認して適切な措置がとられる。
【0038】
図5は、本発明の実施形態による、モータ10のための学習フェーズのプロセス100を示す。学習フェーズプロセス100は、装置24およびモータ10の始動時に開始する(ブロック102)。停止状態の負シーケンスインピーダンスZnnを決定することができる(ブロック104)。三相電圧Va、Vb、Vcおよび三相電流Ia、Ib、Icが変圧器および変流器またはモータ10の他の部品から得られ(ブロック106)、装置24またはモータ10に接続された他の装置により受けられる。差動電圧Vab、Vbc、Vcaは、測定された三相電圧から決定することができる(ブロック108)。電圧および電流を単一相の位相ロックループ(PLL)に通して、各電圧および電流の大きさおよび角度を求め、各電圧および電流の大きさおよび位相情報を組み合わせて電流および電圧フェーザを生成することができる(ブロック110)。装置24は、対称シーケンス変換を適用して電圧および電流をa−b−c相から正、負およびゼロシーケンスフレームに変換することができる(ブロック112)。
【0039】
正規化相互結合インピーダンスを決定することができる(ブロック114)。正規化相互結合インピーダンスを負シーケンスインピーダンスZnnまたは正シーケンスインピーダンスZppに対して正規化するか、または両方の正規化値を決定することができる。正規化相互結合インピーダンスを平均時間Tavgにわたって平均化する(ブロック116)。平均時間Tavgは2.5秒、5秒、10秒、15秒、20秒、25秒、または適宜の時間とすることができる。決定ブロック118により示されるように、学習フェーズプロセス100は、時間Tavgが経過したかどうか確認し判定する。時間が経過していない場合には、矢印118に示すようにプロセス100を継続する。時間が経過している場合には、式4で前述したように、プロセス100は残留インピーダンスZbaseを決定する(ブロック122)。残留ベースインピーダンスの決定後、モータ10の動作は監視フェーズに移ることができる(ブロック122)。
【0040】
図6は、本発明の実施形態によるモータ10の監視フェーズプロセス124を示す。監視フェーズプロセス124は、学習フェーズ100と同様に行われるが、モータ10の監視および警告をさらに含む。図5で前述したように、プロセス124の開始(ブロック126)は、学習フェーズプロセス100から移行した後に行われる。前述した学習フェーズプロセス100と同様に、監視フェーズプロセス124は三相電圧および電流を得ることができる(ブロック128)。さらに、監視フェーズは、サーミスタ38またはその他のセンサ等からモータ10の動作温度を得て、温度変化に対して学習フェーズ中に決定された負シーケンスインピーダンスZnnを補償することができる(ブロック130)。プロセス124は位相間の差動電圧を決定し(ブロック132)、前述した周波数補償を使用して、大きさおよび位相情報からフェーザを生成することができる(ブロック134)。
【0041】
対称成分を三相電圧および電流から決定することができ(ブロック136)、正シーケンスインピーダンス(および/または負シーケンスインピーダンス)に対する正規化相互結合インピーダンスが前述したように決定される(ブロック138)。正規化相互結合インピーダンスは平均時間Tavgにわたって計算し、平均化することができる(ブロック140)。したがって、プロセス124は、平均時間Tavgが経過したかどうかを確認して判定し(決定ブロック142)、(矢印144で示すように)監視期間が経過していなければブロック128に戻る。平均時間が経過している場合、前述したように、プロセス124は学習フェーズで決定されたZbase値を使用して、補正された正規化相互結合インピーダンスを決定し、残留インピーダンスを補償することができる(ブロック146)。
【0042】
本実施形態では、修正された正規化相互結合インピーダンスZnp/Zppを様々な閾値と比較して、巻線故障の数および/または度合を決定することができる。例えば、閾値1および閾値2という2つの閾値を使用して、閾値2が閾値1よりも高く、より大きい巻線故障の数および/または度合を示すようにすることができる。
【0043】
正規化相互結合インピーダンスを、複数のおよび/またはさらに度合の大きい巻線故障を示す閾値2と比較することができる(決定ブロック148)。正規化相互結合インピーダンスが閾値2よりも大きい場合、プロセス124は第2のアラームをトリガし、モータ10をトリップさせ、モータ10の動作を不可にすることができる(ブロック150)。
【0044】
正規化相互結合インピーダンスが閾値2よりも小さい場合には、プロセス124は正規化相互結合インピーダンスを閾値1と比較する(決定ブロック152)。正規化相互結合インピーダンスが閾値1よりも小さい場合、矢印154で示すように監視フェーズプロセス124が正常に続く。正規化相互結合インピーダンスが閾値1よりも大きい場合、第1のアラームをトリガすることができる(ブロック156)。他の実施形態では、巻線故障の種々の数および/または度合を示すために、3つ、4つ、5つ等の任意の数の閾値を使用してもよい。
【0045】
学習フェーズおよび監視フェーズは、残留インピーダンスZbase、残留電圧Vbase、周波数補償、および/または温度補償等の、上記で決定した補償係数のいずれを含んでいてもよいことを理解されたい。例えば、残留電圧の補償を、残留インピーダンスの補償に加えて、または残留インピーダンスの補償の代わりに含んでいてもよい。さらに、種々の実施形態は、フェーザを決定するための周波数補償、および/または負シーケンスインピーダンスを決定するための温度補償を含んでも省いてもよい。
【0046】
本発明のある特徴についてのみ本明細書で図示し説明したが、多くの修正および変更が当業者により想到されるだろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の精神に含まれるこのような修正および変更をすべて含むものであることを理解されたい。
【符号の説明】
【0047】
10 誘導モータ
12 回転子アセンブリ
14 回転子軸
16 固定子アセンブリ
18 軸受アセンブリ
19 固定子巻線
20 システム
21 三相電源
22、34、36 線
24 装置
26 プロセッサ
28 メモリ
30 計器用変圧器
32 変流器
38 サーミスタ
50、72 グラフ
52 第1の線
54 第2の線
56 第3の線
58 第4の線
60、62、64、66、68、70、74、76、78、80、82、84 点
100 学習フェーズプロセス
124 監視フェーズプロセス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの固定子の巻線故障を判定する方法であって、
残留電圧を決定するステップと、
残留インピーダンスを決定するステップと、
前記残留電圧、残留インピーダンス、またはこれらの組み合わせに基づいて前記固定子の巻線故障の数を示すパラメータを決定するステップとを含む、方法。
【請求項2】
負シーケンス電圧を決定するステップと、負シーケンス電流および正シーケンス電流を決定するステップと、負シーケンスインピーダンスを決定するステップとを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
パラメータを決定するステップが、前記モータの負シーケンス電圧、前記モータの負シーケンス電流、前記モータの正シーケンス電流、前記モータの負シーケンスインピーダンス、前記モータの正シーケンスインピーダンス、またはこれらの組み合わせから、正規化相互結合インピーダンスを決定するステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記正規化相互結合インピーダンスを決定するステップが、時間にわたって前記正規化相互結合インピーダンスを平均化するステップを含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記残留電圧を決定するステップが、前記モータの負シーケンス電圧、負シーケンスインピーダンス、および負シーケンス電流からベース電圧を決定するステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記残留インピーダンスを決定するステップが、前記モータの負シーケンス電圧、負シーケンスインピーダンス、負シーケンス電流、および正シーケンス電圧からベースインピーダンスを決定するステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記モータの温度を測定するステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記温度に基づいて前記モータの負シーケンスインピーダンスを決定するステップを含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記モータの電圧および電流を決定するステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
周波数補償に基づいて、前記測定された電圧および電流のフェーザを決定するステップを含む、請求項8記載の方法。
【請求項11】
モータの固定子の巻線故障を判定する方法であって、
公称周波数からの変動を補償することを含む、複数の電圧および電流のフェーザを決定するステップと、
前記フェーザに基づいて対称成分を決定するステップと、
前記対称成分に基づいて前記固定子の巻線故障の数を示すパラメータを決定するステップとを含む、方法。
【請求項12】
パラメータを決定するステップが、前記モータの負シーケンス電圧、前記モータの負シーケンス電流、前記モータの正シーケンス電流、前記モータの負シーケンスインピーダンス、前記モータの正シーケンスインピーダンス、またはこれらの組み合わせから、正規化相互結合インピーダンスを決定するステップを含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
モータの固定子の巻線故障を判定する方法であって、
負シーケンスインピーダンスを決定するステップと、
前記モータの温度を測定するステップと、
前記温度に基づいて前記負シーケンスインピーダンスを修正するステップと、
前記負シーケンスインピーダンスに基づいて前記固定子の巻線故障の数を示すパラメータを決定するステップとを含む、方法。
【請求項14】
パラメータを決定するステップが、前記モータの負シーケンス電圧、前記モータの負シーケンス電流、前記モータの正シーケンス電流、前記モータの負シーケンスインピーダンス、前記モータの正シーケンスインピーダンス、またはこれらの組み合わせから、正規化相互結合インピーダンスを決定するステップを含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
モータの固定子の巻線故障を判定するためのシステムであって、誘導モータに接続され、前記モータの特性を測定するように構成され、メモリを有する装置を備え、
前記メモリが、
残留電圧の測定、
残留インピーダンスの測定、および
前記残留電圧、残留インピーダンス、またはこれらの組み合わせに基づいた前記固定子の巻線故障の数を示すパラメータの測定のための指示を含む、システム。
【請求項16】
パラメータの測定が、前記モータの負シーケンス電圧、前記モータの負シーケンス電流、前記モータの正シーケンス電流、前記モータの負シーケンスインピーダンス、前記モータの正シーケンスインピーダンス、またはこれらの組み合わせから、正規化相互結合インピーダンスを測定することを含む、請求項15記載のシステム。
【請求項17】
前記モータの動作温度を測定するように構成された温度センサを備える、請求項15記載のシステム。
【請求項18】
前記メモリが、前記温度に基づいて前記モータの負シーケンスインピーダンスを測定するための指示を含む、請求項17記載のシステム。
【請求項19】
前記モータの1または複数の電圧を測定するように構成された1または複数の計器用変圧器と、前記モータの1または複数の電流を測定するように構成された1または複数の変流器とを備える、請求項15記載のシステム。
【請求項20】
前記メモリが、前記電圧のフェーザおよび前記電流のフェーザを測定するための指示を含み、前記測定が公称周波数からの変動を補償することを含む、請求項19記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−517018(P2012−517018A)
【公表日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549174(P2011−549174)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/021607
【国際公開番号】WO2010/090861
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】