説明

改良型食品グレード潤滑剤

本発明は、食品産業用機器の油圧オイル、循環油、ドリップオイル、汎用油、グリース基油、ケーブルオイル、チェーンオイル、スピンドル油、ギアオイル、およびコンプレッサオイルとして有用な改良型食品グレード潤滑剤を開示する。この潤滑剤は、少なくとも一つの植物性油脂、少なくとも一つのポリαオレフィン、および少なくとも一つの酸化防止剤を含む。この潤滑剤は、熱的および機械的応力にさらされたときの特性が改善されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国特許仮出願第60/474,572号、発明の名称「FDA(Food and Drug Administration:米国食品医薬品局)承認の添加剤を有する食品グレード潤滑剤(Food−grade−Lubricant having shaving FDA approved additives)」、出願日2003年5月30日の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、食品産業用機器の油圧オイル、循環油、ドリップオイル、汎用油、グリース基油、ケーブルオイル、チェーンオイル、スピンドル油、ギアオイル、およびコンプレッサオイルとして有用な改良型食品グレード潤滑剤に関する。特に、少なくとも一つの植物性油脂、少なくとも一つのポリαオレフィン(PAO)、および少なくとも一つの酸化防止剤を含む組成物に関する。より具体的には、熱的および機械的応力にさらされたときの特性がさらに向上した食品グレード潤滑剤組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
食品加工業で使用される機器は分野によって異なる。主要な分野には、食肉、家禽類、飲料類、スナックフード類、野菜類、乳製品が含まれる。該機器は分野によって異なり、ベアリング類、ギア類、およびスライド機構類などの可動部も同じく分野によって異なり、注油を必要とすることが多い。非常によく使用される潤滑油類には、油圧オイル、冷凍機油、およびギアオイル類のほか、汎用グリース類がある。このような食品工業用油類は、他の工業用潤滑油類よりも厳しい基準を満たさなければならない。
【0004】
食品類の質に対する安全性および基準を確保し維持することが重要であるため、食品工業は、米国農務省(USDA:United States Department of Agriculture)が提示した規則および規定に従わなければならない。USDAの食品安全検査局(FSIS:Food Safety Inspection Service)が、食肉、家禽類、卵類、乳製品類、果物類、および野菜類の安全検査、品質検査、規格化に関連する業務全般の責任を負っている。このような業務は必須のものである。連邦政府による検査の対象となる工場では、使用する非食品化合物の安全検査が必要である。
【0005】
FSISは、連邦政府による検査の対象となる工場で使用される認可済み化合物類の公式リストを管理している。偶発的に食品に触れる可能性があるところで使用することのできる潤滑油類および他の材料類を、USDAの規定下では間接的な食品添加物類としてみなす旨が、公式リスト(米国農務省食品安全検査局刊、材料および非食品化合物の認証リスト(List of Proprietary Substances and Nonfood Compounds)、11−1頁、雑報(Miscellaneous Publication)第1419号(1989年)を参照)に示されている。このため、これらの潤滑油類を食品加工工場で使用するには、あらかじめUSDAにH−1またはH−2の分類の認証をしてもらう必要がある。分類H−1は最も厳しく、偶発的に食品に触れる可能性がある箇所での使用が承認された潤滑油類である。分類H−2は、食品に触れる可能性がない箇所でのみ使用することができる潤滑剤であり、公知の毒物または発がん性物質が潤滑剤中に使用されていないことを保障するものである。本発明の一実施形態は、H−1認証の潤滑油に関連するものである。なお、本出願の明細書中の用語「H−1認証油」および「食品グレード」は、同じ意味で用いられる。
【0006】
(USDAでは、成分および組成物の新たな認証はもう行っていないが、世界の食品業界では依然としてH−1分類は有効とされている。現在はNSFが食品グレードの分類のリスト作成および認証を実施している。)
【0007】
当該生成物は、連邦政府の管理機関が設定した安全性の要件を満たすだけでなく、有効な潤滑剤でなければならない。食品加工工場用の潤滑油類は、機械部品を潤滑に動くようにするものであり、粘性変化がしにくく、酸化を防ぎ、錆および腐食から保護し、磨耗保護を提供し、耐発泡性を有し、運転中のスラッジの形成を防ぐ。さらに、該生成物は、厚い流体膜によるものから境界薄膜によるものまで、種々の形態の潤滑を効果的に実現しなければならない。
【0008】
油が潤滑性を長期間どのくらい効果的に維持するのか、スラッジの形成をどのくらい効果的に抑えるのかについて、潤滑油によって促される酸化安定性、熱安定性および加水分解安定性から予測がつく。炭化水素油類の場合、高温下で長期間、酸素に接触すると、部分的に酸化される。この酸化プロセスにより、潤滑油中に酸体が生じる。このような酸体は金属類に対し腐食性をもち、食品加工機器に存在することが多い。また、油および空気の両方に接触すると、効果的な酸化触媒になってしまい、酸化速度がさらに増す。酸化生成物類は、スラッジ形成の原因である。スラッジはバルブを塞ぎ、フィルタを詰まらせ、潤滑剤の粘性による機能全体を壊してしまう虞がある。環境によっては、スラッジの形成によって栓づまりが生じ、油系流体が完全に損なわれ、機械類の不具合または損傷につながる虞がある。
【0009】
潤滑油の熱安定性および加水分解安定性には、第一に、潤滑油に付属のパッケージの安定性が反映される。スラッジ形成、粘性変化、酸性変化、および腐食については、安定性の基準に従い、油の示す傾向が監視される。加水分解安定性については、水の存在下でこれらの特徴が判断される。安定性が低いと、時間と共に潤滑油から潤滑性が失われ、スラッジが溜まる。
【0010】
食品の混入物源として中毒性のない潤滑油類が開発されてきたが、潤滑剤としての特性は、直接食品に接触してもよいと認証された成分が潤滑油に含まれていないなど、従来の潤滑油と比較して、あまり有効でないことが多い。潤滑油業界では、潤滑剤組成物に特殊な添加剤類を組み込むことによって、この問題をある程度まで克服してきた。例えば、機能性添加剤類を包含させることによって、耐磨耗性、酸化防止、錆/腐食防止、金属の不動態化、極圧、摩擦調整、発泡防止、および潤滑性を向上させてきた。このような化学性質については以下の特許、すなわち米国特許第5,538,654号(ローワット(Lawate)ら)、米国特許第4,062,785号(ニバート(Nibert))、米国特許第4,828,727号(マッカニンヒ(McAninch))、米国特許第5,338,471号および米国特許第5,413,725号(ライ(Lai))に記載がある。
【0011】
上記特許に記載されている食品グレード潤滑油類の欠点は、耐酸化性、流動点特性、粘度幅による処方性の限界、および粘性による保護の限界に関連する。潤滑油類は、熱および機械的応力に長時間さらされたときレオロジー特性が低くなる場合が多い。
【0012】
このため、熱的および機械的応力にさらされたときの耐酸化性、流動点、粘度指数、粘度幅による処方性、および粘度安定性が実質的に改善され、優れた加水分解安定性、耐腐食性、および耐摩耗性を示す食品グレード潤滑剤が必要とされている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様は、食品グレード潤滑油類の特性の改善に有用な添加剤類の多様性および範囲を広くすることである。本出願人は、ポリαオレフィン類が食品グレード潤滑剤組成物類に処方すると、この組成物類が耐酸化性、流動点特性、および粘性の改善を示すことを発見するに至った。この食品グレード潤滑油類は、食品産業用機器の油圧オイル、循環油、ドリップオイル、汎用油、グリース基油、ケーブルオイル、チェーンオイル、スピンドル油、ギアオイル、およびコンプレッサオイルとして特に有用である。
【0014】
さらに、本発明の組成物類は、生物分解性が改善されており、環境にやさしいものであることがわかった。意外なことに、ポリαオレフィン含量が約70%を超えても、生物分解性テスト法であるASTM(米国試験・材料協会:American Society for Testing and Materials) D−5864 Pw1に合格することのできる組成物類もある。
【0015】
本発明の別の態様は、a)天然植物性油脂、合成植物性油脂、遺伝子組み換えの植物性油脂、およびその混合物を含む群から選択される少なくとも一つの植物性油脂、b)少なくとも一つのポリαオレフィン、およびc)少なくとも一つの酸化防止剤、d)任意であるが、合成エステル、白色ワセリン油、水素化分解された石油、およびその混合物を含む群から選択される少なくとも一つの食品グレード油を含む食品グレード潤滑剤に関する。この組成物の成分は、米国農務省の定めるところによりH−1認証を受けている。H−1指定は、ほとんどの場合、米国以外の国でも同程度の分類結果に相当するものと考えられる。
【0016】
本発明の別の態様では、食品グレード潤滑剤組成物を調製する方法が、1)天然植物性油脂、合成植物性油脂、遺伝子組み換えの植物性油脂、およびその混合物を含む群から選択される少なくとも一つの植物性油脂を準備するステップ、2)少なくとも一つのポリαオレフィンを準備するステップ、および3)少なくとも一つの酸化防止剤を準備するステップ、4)任意であるが、合成エステル、白色ワセリン油、水素化分解された石油、およびその混合物を含む群から選択される少なくとも一つの食品グレード油を準備するステップ、5)1)、2)、3)、および4)をブレンドし、該組成物を形成するステップを含む。
【0017】
本発明の別の態様は、食品産業に使用される機器の潤滑性を向上させる方法に関する。この方法は、以下のステップを含んでいる。
【0018】
1)以下のものを含む少なくとも一つの食品グレード潤滑剤組成物を準備するステップ。
【0019】
a)天然植物性油脂、合成植物性油脂、遺伝子組み換えの植物性油脂、およびその混合物を含む群から選択される少なくとも一つの植物性油脂。
【0020】
b)少なくとも一つのポリαオレフィン。
【0021】
c)少なくとも一つの酸化防止剤。
【0022】
d)任意であるが、合成エステル、白色ワセリン油、水素化分解された石油、およびその混合物を含む群から選択される少なくとも一つの食品グレード油。
【0023】
2)この組成物を有効量、機器に供給するステップ。
【0024】
本発明の一態様によれば、潤滑剤組成物には、少なくとも一つのトリグリセリド油、少なくとも一つのポリαオレフィン、および少なくとも一つの酸化防止剤が含まれている。
【0025】
本発明の一態様によれば、少なくとも一つのトリグリセリド油は、天然植物性油脂、合成植物性油脂、遺伝子組み換えの植物性油脂、およびその混合物を含む群から選択され、組成物は、さらに、合成エステル、白色ワセリン油、水素化分解された石油、およびその混合物を含む群から選択される少なくとも一つの食品グレード油を含む。
【0026】
本発明の一態様によれば、植物性油脂は、ヒマワリ油、キャノーラ油、ダイズ油、ヒマシ油、ハイオレイックヒマワリ、ハイオレイックキャノーラ、ハイオレイックダイズ油、およびその混合物を含む群から選択される。
【0027】
本発明の一態様によれば、植物性油脂は、約10重量%から約90重量%の範囲にある。本発明の他の実施形態では、植物性油脂は、約10重量%より多く、約90重量%より少ないか、または下記の重量パーセントのいずれかである:10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、86、88、89、および90。
【0028】
本発明の一態様によれば、植物性油脂は、約30重量%から約70重量%の範囲にある。本発明の他の実施形態では、植物性油脂は、約30重量%より多いか、約70重量%より少ない。
【0029】
本発明の一態様によれば、植物性油脂は、約40重量%から約60重量%の範囲にある。本発明の他の実施形態では、植物性油脂は、約40重量%より多いか、約60重量%より少ない。
【0030】
本発明の一態様によれば、ポリαオレフィンは、PAO2、PAO4、PAO6、PAO8、PAO9、PAO10、PAO40、PAO100、およびその混合物を含む群から選択される。
【0031】
本発明の一態様によれば、ポリαオレフィンは、約10重量%から約90重量%の範囲にある。本発明の他の実施形態では、ポリαオレフィンは、約10重量%より多く、約90重量%より少ないか、または下記の重量パーセントのいずれかである:10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、86、88、89、および90。
【0032】
本発明の一態様によれば、ポリαオレフィンは、約30重量%から約70重量%の範囲にある。本発明の他の実施形態では、ポリαオレフィンは、約30重量%より多く、または約70重量%より少ない。
【0033】
本発明の一態様によれば、ポリαオレフィンは、約40重量%から約60重量%の範囲にある。本発明の他の実施形態では、ポリαオレフィンは、約40重量%より多く、または約60重量%より少ない。
【0034】
本発明の一態様によれば、酸化防止剤は、ブチレイテッド・ヒドロキシトルエン、フェンル−a−ナフチルアミン、およびその混合物を含む群から選択される。
【0035】
本発明の一態様によれば、酸化防止剤は、約0.01重量%から約5.0重量%の範囲にある。本発明の他の実施形態では、酸化防止剤は、約0.01重量%より多く、約5.0重量%より少ないか、0.01から5.0の間の百分の一単位の重量パーセント(すなわち0.01、0.02、0.03、0.04など)のいずれかである。
【0036】
本発明の一態様によれば、酸化防止剤は、約0.25重量%から約1.5重量%の範囲にある。本発明の他の実施形態では、酸化防止剤は、約0.25重量%より多く、または約1.5重量%より少ない。
【0037】
本発明の一態様によれば、酸化防止剤は、約0.5重量%から約1.0重量%の範囲にある。本発明の他の実施形態では、酸化防止剤は、約0.5重量%より多く、または約1.0重量%より少ない。
【0038】
本発明の一態様によれば、組成物は、回転ボンベ式酸化安定度試験(rotating bomb oxidation test:RBOT)の値が約200分よりも大きい。
【0039】
本発明の一態様によれば、組成物は、さらに、耐摩耗防止剤類、錆/腐食防止剤類、流動点降下剤類、粘度改良剤類、粘着付与剤類、金属不活性化剤類、極圧(extreme pressure:EP)添加剤類、摩擦調整剤類、発泡防止剤類、乳化剤類、および乳化破壊剤類を含む群から選択される少なくとも一つの添加剤を含む。
【0040】
本発明の一態様によれば、トリグリセリド油は、下記式を有する。
【0041】
【化1】

【0042】
式中、R、R、およびRは、約7から約23までの炭素原子を含む脂肪族ヒドロカルビル基である。本発明の他の実施形態では、脂肪族ヒドロカルビル基は、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、または23の炭素原子を含む。
【0043】
本発明の一態様によれば、トリグリセリドは、少なくとも60パーセントの単不飽和性を有する。
【0044】
本発明の一態様によれば、トリグリセリドは、少なくとも70パーセントの単不飽和性を有する。本発明の別の実施形態では、トリグリセリドは、約60パーセントおよび約70パーセントの間の単不飽和性を有する。
【0045】
本発明の一態様によれば、トリグリセリドは、少なくとも80パーセントの単不飽和性を有する。本発明の別の実施形態では、トリグリセリドは、約60パーセントから約80パーセントの間の単不飽和性を有する。本発明の別の実施形態では、トリグリセリドは、約70パーセントから約80パーセントの間の単不飽和性を有する。
【0046】
本発明の一態様によれば、食品グレード潤滑剤組成物を調製する方法は、少なくとも一つのトリグリセリド油を準備するステップ、少なくとも一つのポリαオレフィンを準備するステップ、少なくとも一つの酸化防止剤を準備するステップ、および油、オレフィン、および酸化防止剤をブレンドし、組成物を形成するステップを含む。
【0047】
本発明の一態様によれば、トリグリセリド油は、天然植物性油脂、合成植物性油脂、遺伝子組み換えの植物性油脂、およびその混合物を含む群から選択され、該方法は、さらに、合成エステル、白色ワセリン油、水素化分解された石油、およびその混合物を含む群から選択される少なくとも一つの食品グレード油を準備するステップを含む。
【0048】
本発明の一態様によれば、植物性油脂は、ヒマワリ油、キャノーラ油、ダイズ油、ヒマシ油、ハイオレイックヒマワリ、ハイオレイックキャノーラ、ハイオレイックダイズ油、およびその混合物を含む群から選択される。
【0049】
本発明の一態様によれば、ポリαオレフィンは、PAO2、PAO4、PAO6、PAO8、PAO9、PAO10、PAO40、PAO100、およびその混合物を含む群から選択される。
【0050】
本発明の一態様によれば、酸化防止剤は、ブチレイテッド・ヒドロキシトルエン、フェンル−a−ナフチルアミン、およびその混合物を含む群から選択される。
【0051】
本発明の一態様によれば、植物性油脂は、約10重量%から約90重量%の範囲にある。
【0052】
本発明の一態様によれば、ポリαオレフィンは、約10重量%から約90重量%の範囲にある。
【0053】
本発明の一態様によれば、酸化防止剤は、約0.01重量%から約5.0重量%の範囲にある。
【0054】
本発明の一態様によれば、組成物は、油圧オイル、循環油、ドリップオイル、汎用油、グリース基油、ケーブルオイル、チェーンオイル、スピンドル油、ギアオイル、およびコンプレッサオイルとしての使用が可能である。
【0055】
本発明の一態様によれば、食品工業用機械装置に油を差す方法があり、この方法は、天然植物性油脂、合成植物性油脂、遺伝子組み換えの植物性油脂、およびその混合物を含む群から選択される少なくとも一つの植物性油脂、少なくとも一つのポリαオレフィン、および少なくとも一つの酸化防止剤を含む組成物で装置に油を差すことを含む。
【0056】
本発明の一態様によれば、組成物は、さらに、合成エステル、白色ワセリン油、水素化分解された石油、およびその混合物を含む群から選択される少なくとも一つの食品グレード油を含む。
【0057】
本発明の一態様によれば、遺伝子組み換えの油類は、オレイン酸部分:リノール酸部分の比が約2から約90である。本発明の他の実施形態では、この比が約2より大きく、約90より少ないか、下記のいずれかである:2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、86、88、89、および90。
【0058】
本発明の他の態様、目的、特徴、効果については、当業者であれば、本発明の好ましい実施形態が説明されている下記の詳細な記載をみれば、明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
次に、本明細書中の特定の用語について理解を助けるために用語解説を示す。用語解説に示されている定義は例示目的にすぎず、本発明の範囲を限定しようとするものではない。
【0060】
(A)トリグリセリド油
本発明の実施する際の基油は、下記式の合成トリグリセリドまたは天然油である。
【0061】
【化2】

【0062】
式中、R、R、およびRは、約7から約23までの炭素原子を含む脂肪族ヒドロカルビル基である。本明細書で使用する用語「ヒドロカルビル基」は、上記分子の残部に直接結合する炭素原子を有する基を意味する。この脂肪族ヒドロカルビル基としては、下記のものが挙げられる。
【0063】
(1)脂肪族炭化水素基;すなわち、ヘプチル、ノニル、ウンデシル、トリデシル、ヘプタデシルなどのアルキル基;ヘプテニル、ノネニル、ウンデセニル、トリデセニル、ヘプタデセニル、ヘンイコセニルなどの単一二重結合を含むアルケニル基;8,11−ヘプタデカジエニル、8,11,14−ヘプタデカトリエニルなどの2または3つの二重結合を含んでいるアルケニル基。これらの異性体はすべて含まれるが、直鎖状の基が好ましい。
【0064】
(2)置換脂肪族炭化水素基;すなわち、非炭化水素置換基を含んでいる基。なお、この置換基は、本発明中では、炭化水素基の炭化水素の性質を大幅に変えないものとする。当業者であれば、適切な置換基がわかるであろう。例として、ヒドロキシ、カルバルコキシ、(特に低級カルバルコキシ)およびアルコキシ(特に低級アルコキシ)がある。用語「低級」は、7以下の炭素原子を含む基を意味する。
【0065】
(3)ヘテロ基、すなわち、本発明中では、脂肪族炭化水素の性質を主に有し、脂肪族炭素原子からなる鎖または環に炭素以外の原子を含む基。適切なヘテロは当業者には明らかであるが、例を挙げると、酸素、窒素、および硫黄がある。
【0066】
本発明での使用に適切なトリグリセリド油類は、植物性油脂類および変性植物性油脂類である。植物性油脂トリグリセリド類は、天然の油類である。「天然の」は、油類が得られる種子が遺伝子変化をなんら受けていないことを意味する。さらに、「天然の」は、得られた油類が、ジ−およびトリ−不飽和性を変化させる水素化または何らかの化学的処置を受けていないことを意味する。本発明に有用な天然の植物性油脂類には、ダイズ油、菜種油、ヒマワリ油、やし油、レスケレラ(lesquerella)油、キャノーラ油、ピーナツ油、コーン油、綿実油、パーム油、やし油、ベニバナ油、メドゥフォーム油、またはヒマシ油が少なくとも一つ含まれる。
【0067】
トリグリセリド油類は、変性植物性油脂類であってもよい。トリグリセリド油類は、化学的または遺伝子的に変性される。天然トリグリセリド類の水素化が、化学変性の主要な手段である。天然トリグリセリド油類は、種々の脂肪酸成分を有する。天然のヒマワリ油の脂肪酸成分は、以下の通りである。
【0068】
パルミチン酸 70パーセント
ステアリン酸 4.5パーセント
オレイン酸 18.7パーセント
リノール酸 67.5パーセント
リノレン酸 0.8パーセント
その他の酸類 1.5パーセント
【0069】
水素化によるヒマワリ油の化学変性とは、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの含まれている不飽和脂肪酸成分と水素とを反応させることを意味する。その目的は不飽和を全て取り除くことではないし、水素化して、オレイン酸成分を減らしてステアリン酸成分にすることでもない。水素化による化学変性の目的は、リノール酸成分を対象とし、その成分のかなりの部分を減らし、オレイン酸成分に変えることである。天然のヒマワリ油のリノール酸成分は、67.5パーセントである。化学変性の目標は、水素化して、リノール酸を約25パーセントに減らすことである。つまり、オレイン酸成分が18.7パーセントから約61パーセントに増える(元のオレイン酸成分18.7パーセント+リノール酸から生じたオレイン酸42.5パーセント)。
【0070】
水素化は、触媒存在下の水素ガスと植物性油脂との反応である。最も普通に用いられる触媒はニッケル触媒である。このような処置をすると、水素が油に付加され、これによって、リノール酸成分およびリノレン酸成分が減る。不飽和脂肪酸成分のみが水素化反応に関わる。水素化をすると、二重結合が新しい位置に移ったり、シス型が変形して高融点のトランス型になったりなど、他の反応も生じる。
【0071】
表Iは、特定の天然植物性油脂のオレイン酸(18:1)、リノール酸(18:2)およびリノレン酸(18:3)の各成分を示す。水素化によって、トリグリセリドのリノール酸成分のかなりの部分を化学的に変性し、オレイン酸成分を60パーセント超に増やすことができる。
【0072】
表I
18:1 18:2 18:3
コーン油 25.4 59.6 1.2
綿実油 18.6 54.4 0.7
ピーナツ油 46.7 32.0 −−
ベニバナ油 12.0 77.7 0.4
ダイズ油 23.2 53.7 7.6
ヒマワリ油 18.7 67.5 0.8
【0073】
遺伝子組み換えは、蒔くための種子に導入されている。このような種子から収穫される作物には、抽出量が非常に多いオレイン酸成分と、抽出量が非常に少ないリノール酸成分とを有するトリグリセリド油が含まれる。上記の表Iをみると、天然のヒマワリ油には、オレイン酸成分が18.7パーセント含まれている。遺伝子組み換えのヒマワリ油には、オレイン酸成分が81.3パーセント、リノール酸成分が9.0パーセント含まれている。表Iの種々の植物性油脂の遺伝子組み換えをして、90パーセント超のオレイン酸成分を得ることもできる。化学変性された植物性油脂類には、化学変性されたコーン油、化学変性された綿実油、化学変性されたピーナツ油、化学変性されたパーム油、化学変性されたやし油、化学変性されたヒマシ油、化学変性されたキャノーラ油、化学変性された菜種油、化学変性されたベニバナ油、化学変性されたダイズ油、および化学変性されたヒマワリ油が少なくとも一つ含まれる。
【0074】
好ましい実施形態では、R、R、およびRの脂肪族ヒドロカルビル基は、トリグリセリドが少なくとも60パーセント、好ましくは少なくとも70パーセント、最も好ましくは少なくとも80パーセントの単不飽和性を有するようにする。本発明に有用なトリグリセリドには、通常よりも多くオレイン酸を含むように遺伝子組み換えされた植物性油脂類などがある。通常のヒマワリ油は、オレイン酸の含量が25〜30パーセントである。ヒマワリの種子を遺伝子組み換えすることによって、オレイン酸の含量が約60パーセントから約90パーセントまでのヒマワリ油を得ることができる。つまり、R、R、およびR基は、ヘプタデセニル基であり、1,2,3−プロパントリイル基CHCHCHに結合しているRCOO−、RCOO−、およびRCOO−は、オレイン酸分子の残基となる。ハイオレイックヒマワリ油の調製については、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,627,192号および米国特許第4,743,402号に記載されている。
【0075】
例えば、オレイン酸部分のみを含んでなるトリグリセリドは、オレイン酸の含量が100%であり、したがって単不飽和物の含量も100%である。トリグリセリドは、オレイン酸70%、ステアリン酸10%、パルミチン酸13%、およびリノール酸7%の酸部分から構成されている場合、単不飽和物の含量は70%である。好ましいトリグリセリド油類は、オレイン酸が多いもの、つまり遺伝子組み換えの植物性油脂類(少なくとも60パーセント)のトリグリセリド油類である。本発明に用いられる典型的なハイオレイック植物性油脂類には、ハイオレイックベニバナ油、ハイオレイックキャノーラ油、ハイオレイックピーナツ油、ハイオレイックコーン油、ハイオレイック菜種油、ハイオレイックヒマワリ油、ハイオレイック綿実、ハイオレイックレスケレラ(lesquerella)油、ハイオレイックパーム油、ハイオレイックヒマシ油、ハイオレイックメドゥフォーム油、およびハイオレイックダイズ油がある。キャノーラ油は、1パーセント未満のエルカ酸を含んでいる菜種油の一種である。好ましいハイオレイック植物性油脂は、ヘリアンサス属(Helianthus sp)から得られるハイオレイックヒマワリ油である。この生成物は、ACヒュンコ(Humko)、テネシー州コルドバ、38018からTriSun(商標)ハイオレイックヒマワリ油として販売されている。TriSun80はハイオレイックトリグリセリドであり、酸部分にはオレイン酸が80パーセント含まれている。TriSun90はハイオレイックトリグリセリドであり、酸部分にはオレイン酸が90パーセント含まれている。別の好ましいハイオレイック植物性油脂は、ブラシカ・キャンペストリス(Brassica Campestris)またはブラシカ・ナプス(Brassica napus)から得られるハイオレイックキャノーラ油であり、こちらもACヒュンコからRSハイオレイック油として販売されている。RS80油はキャノーラ油のことであり、酸部分には、オレイン酸が80パーセント含まれている。
【0076】
さらに注目すべきなのは、遺伝子組み換えの植物性油脂類では、ジ−およびトリ−不飽和酸の量が落ちてオレイン酸含量が高くなっていることである。通常のヒマワリ油では、オレイン酸部分が20〜40パーセント、リノール酸部分が50〜70パーセントである。このため、モノ−およびジ−不飽和の酸部分が(20+70)または(40+50)となり、含量が90パーセントになる。遺伝子組み換えの植物性油脂類では、ジ−またはトリ−不飽和部分の低い植物性油脂が生成されている。本発明の遺伝子組み換えの油類では、オレイン酸部分:リノール酸部分の比が約2から約90までである。オレイン酸部分の含量が60パーセントでリノール酸部分の含量が30パーセントであるトリグリセリド油の場合、比は2となる。オレイン酸部分が80パーセント、リノール酸部分が10パーセントである組成のトリグリセリド油の場合、比は8である。オレイン酸部分が90パーセント、リノール酸部分が1パーセントである組成のトリグリセリド油の場合、比は90である。通常のヒマワリ油の比は、0.5(オレイン酸部分が30パーセント、リノール酸部分が60パーセント)である。
【0077】
植物性油脂は、組成物中に約10%から約90%の範囲で存在する。好ましくは約30%から約70%存在する。最も好ましくは、約40%から約60%である。植物性の含量が90%を超えると、酸化安定性および流動点の安定性が下がり、あまり望ましくない。
【0078】
本明細書に記載の用語「グリース」は、液体(基油)中に増ちょう剤が分散された半液体から固体の分散体である。これは、約70%から90%の基油類および添加剤類(本発明に記載されている)の混合物からなり、残部は増ちょう剤である。最も一般的な増ちょう剤類としては、カルシウム、ナトリウム、リチウム、アルミニウム(高温用に錯体化させることもできる)を含む一連の金属せっけん類、ベントナイトおよびシリカゲルなどの複数の無機物質類、ならびにポリウレアのような合成増ちょう剤類がある。
【0079】
本発明の食品グレード潤滑剤組成物は、少なくとも一つのポリαオレフィンを含む。ポリαオレフィン類は、二つ以上のデセン分子を結合してオリゴマーまたは短鎖ポリマーを形成することによって作られる。PAO類は全て炭化水素構造であり、硫黄、リン、または金属類を含まない。PAO類はワックスフリーなので、流動点が低く、通常−40℃未満である。粘度は、2から100cStの範囲であり、粘度指数については、最低グレードのもの以外はすべて140を超える。PAO類は、良好な熱安定性を有するが、酸化を防ぐため適切な酸化防止添加剤類を必要とする。当業界では公知であるが、PAO類は、いくつかの添加剤類に対する溶解性に制限があり、シールが縮みやすい。本発明では、植物性油脂類とともに処方することによって両方の課題が克服されることがわかった。上記記載の種々の粘度グレードのPAO類は全て本発明に含まれ、FDAによって21 CFR(Code of Federal Regulations:連邦規制基準)178.3570 USDA H−1、食品との偶発的接触が許容される(食品への混入は10ppmを超えない)潤滑剤の認可を受けている。食用植物性基油を処方に加えると、上記のような認可を受けてはいるもののPAO類の使用が抑えられ、PAO類が希釈されることによって、さらに安全な生成物が提供される。他の有用なポリαオレフィン類については、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,534,454号に記載されている。ポリαオレフィンは、約10%から約90%の範囲で組成物に存在する。好ましくは約30%から約70%である。最も好ましくは約40%から約60%である。ポリαオレフィンの含量が90%を超えると、生物分解性および適合性が下がるので、あまり望ましくない。
【0080】
酸化防止剤
本発明の食品グレード潤滑剤組成物は、少なくとも一つの酸化防止剤を含む。FDAで食品グレードの承認を受けている適切な例としては、ブチレイテッド・ヒドロキシトルエン(BHT)、フェンル−a−ナフチルアミン(PANA)、オクチル化/ブチル化ジフェニルアミン、高分子量のフェノール系酸化防止剤類、ヒンダードビス−フェノール系酸化防止剤、ジ−α−トコフェロール、ジ−第三級ブチルフェニルがある。最も好ましい酸化防止剤はPANAおよびBHTである。他の有用な酸化防止剤については、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,534,454号に記載されている。酸化防止剤は、約0.01%から約5.0%の範囲で組成物中に存在する。好ましくは約0.25%から約1.5%である。最も好ましくは約0.5%から約1.0%である。
【0081】
さらに、組成物には、食品グレード潤滑油類に通常使用される任意の成分/添加剤が含まれていてもよく、耐摩耗防止剤類、錆/腐食防止剤類、流動点降下剤類、粘度改良剤類、粘着付与剤類、金属不活性化剤類、極圧(EP)添加剤類、摩擦調整剤類、発泡防止剤類、乳化剤類、および乳化破壊剤類などがある。
【0082】
本発明の好ましい添加剤類には以下のものがある。
【0083】
耐摩耗防止剤、極圧添加剤および摩擦調整剤
金属表面上での磨耗を防止するために、本発明では、耐摩耗防止剤/EP添加剤および摩擦調整剤が用いられる。耐摩耗防止剤類、EP添加剤類、およびフィクション調整剤は、種々の業者および製造者から既製品として販売されている。このような添加剤類の中には、二つ以上の機能をもつものがあり、食品グレードであれば、いずれも本発明に使用することができる。耐摩耗、EP、減摩擦および腐食阻害を提供することのできる食品グレード生成物の一つに、下記式のリンアミン塩がある
【0084】
【化3】

【0085】
式中、RおよびR10は、独立に、約1から約24までの炭素原子を含む脂肪族基であり、R22およびR23は、独立に、水素、または約1から約18までの脂肪族炭素原子を含む脂肪族基であり、mおよびnの和は3であり、Xは酸素または硫黄である。一実施形態では、Rは、約8から18までの炭素原子を含み、R10は、下記式である。
【0086】
【化4】

【0087】
式中、R11は、約6から約12までの炭素原子を含む脂肪族基であり、R22およびR23は水素であり、mは2であり、nは1であり、Xは酸素である。このようなリンアミン塩の一例として、Irgalube(登録商標)349があり、チバガイギーから市販されている。
【0088】
別の食品グレードの耐摩耗/EP防止/摩擦調整剤には、下記式のリン化合物がある。
【0089】
【化5】

【0090】
式中、R19、R20、およびR21は、独立に、水素、約1から約12までの炭素原子を含む脂肪族またはアルコキシ基、あるいはアリールまたはアリールオキシ基であり、アリール基は、フェニルまたはナフチルであり、アリールオキシ基は、フェノキシまたはナフトキシであり、Xは酸素または硫黄である。このようなリン化合物の一例としては、トリフェニルホスホチオネート(phosphothionate)(TPPT)があり、商品名Irgalube(登録商標)TPPTとしてチバガイギーから市販されている。
【0091】
耐摩耗防止剤類、EP、および摩擦調整剤類は、典型的には、潤滑剤組成物の約0.1から約4重量パーセントであり、別々に使っても良いし、組み合わせて使ってもよい。
【0092】
腐食防止剤
金属表面の腐食を防止するために、本発明では、腐食防止剤が用いられる。腐食防止剤類は種々の業者および製造者から既製品として販売されている。妥当な化学的な判断に基づいて選択された食品グレードの腐食防止剤であればいずれも本発明に使用することができる。
【0093】
腐食防止剤は、典型的には、潤滑剤組成物の約0.01から約4重量パーセントである。
【0094】
一実施形態では、腐食防止剤は、腐食添加剤および金属不活性化剤から構成される。腐食防止剤および金属不活性化剤は、食品グレードであり、FDAの規定を満たしている。添加剤の一つに、下記式を有するサルコシンのN−アシル誘導体がある。
【0095】
【化6】

【0096】
式中、Rは1から約24までの炭素原子を含む脂肪族基である。Rは、好ましくは、6から24までの炭素原子を含み、最も好ましくは12から18までの炭素原子を含む。サルコシンのN−アシル誘導体の添加剤の例としては、N−メチル−N−(1−オキソ−9−オクタデセニル)グリシンがあり、Rは、ヘプタデセニル基である。この誘導体は、商品名Sarkosyl(登録商標)Oとしてチバガイギーから販売されている。
【0097】
別の添加剤としては、下記式のイミダゾリンがある。
【0098】
【化7】

【0099】
式中、R17は、1から約24までの炭素原子を含む脂肪族基であり、R18は、1から約24までの炭素原子を含むアルキレン基である。好ましくは、R17は、12から18までの炭素原子を含むアルケニル基である。好ましくは、R18は、1から4までの炭素原子を含み、最も好ましくは、R18は、エチレン基である。このようなイマダゾリンの一例は下記式を有し、
【0100】
【化8】

【0101】
商品名アミンOとしてチバガイギーから市販されている。
【0102】
典型的には、腐食添加剤は、潤滑剤組成物の約0.01から約4重量パーセントである。添加剤がサルコシンのN−アシル誘導体である場合、好ましくは、潤滑剤組成物の約0.1から約1重量パーセントである。添加剤がイミダゾリンの場合、好ましくは、潤滑剤組成物の約0.05から約2重量パーセントである。潤滑剤は、二つ以上の腐食添加剤を含むことができる。例えば、潤滑剤は、サルコシンのN−アシル誘導体およびイミダゾリンの両方を含むことができる。
【0103】
金属不活性化剤
金属不活性化剤の一つに、トリアゾールまたは置換トリアゾールがある。例えば、トリ−トリアゾールまたはトル−トリアゾールを本発明に用いることができる。しかしながら、好ましいトリアゾールはトル−トリアゾールで、商品名Irgamet39としてチバガイギーから市販され、食品グレードのトリアゾールである。
【0104】
典型的には、金属不活性化剤は、潤滑剤組成物の約0.05から約0.3重量パーセントである。金属活性化因子がIrgamet39である場合、好ましくは潤滑剤組成物の約0.05から約0.2重量パーセントである。
【0105】
粘度調整剤、増ちょう剤および粘着付与剤
任意であるが、潤滑剤には、さらに以下のものを含む群から選択される添加剤が含まれていてもよい:粘度調整剤類、たとえば以下に限定されるものではないが、エチレン酢酸ビニル、ポリブテン類、ポリイソブチレン類、ポリメタクリラート類、オレフィンコポリマー類、スチレン無水マレイン酸コポリマー類のエステル類、水素化スチレン−ジエンコポリマー類、水素化放射状ポリイソプレン、アルキル化ポリスチレン、ヒュームド・シリカ類、複合エステル類;および食品グレード油類に可溶化された天然ゴムなどの食品グレード粘着付与剤類。
【0106】
食品グレードの粘度調整剤、増ちょう剤、および/または粘着付与剤を添加すると、付着性が得られ、潤滑剤の粘度および粘度指数が改善される。用途および環境条件によっては、機器を腐食および磨耗から保護する追加の粘着性表面膜を必要とすることもある。この実施形態では、粘度調整剤、増ちょう剤/粘着付与剤は、潤滑剤の約1から約20重量パーセントである。しかしながら、粘度調整剤、増ちょう剤/粘着付与剤を約0.5から約30重量パーセントとすることもできる。本発明に用いることのできる食品グレード材料の一例には、オハイオ州マセドニアのファンクショナル・プロダクツ・インク(Functional Products,Inc.)から市販されている天然ゴムの粘度調整剤/粘着付与剤、ファンクショナルV−584(Functional V−584)がある。別の例としては、ペンシルバニア州フィラデルフィアのイノレックス・ケミカル・カンパニー(Inolex Chemical Co.)から市販されている粘度調整剤、流動点降下剤、および摩擦調整剤を兼ねた多機能製品でもある複合エステルCG5000がある。
【0107】
その他の油類
その他の食品グレード油類を約0.1から約30重量%の範囲で組成物に加えることができる。これらの食品グレード油類としては、白色ワセリン油類、合成エステル類(米国特許第6,534,454号に記載されている)、水素化分解された石油(当業界では「グループIIまたはIIIの石油類」として公知である)が挙げられる。
【0108】
本発明に記載されている潤滑油は、生物分解性に改善が見られる。意外なことに、ポリαオレフィン含量が約70%を超えても、生物分解性テスト法であるASTM(米国試験・材料協会:American Society for Testing and Materials) D−5864 Pw1に合格することのできる組成物類もある。
【0109】
本発明の組成物は、食品産業の潤滑剤として特に有用であるが、直接食品と接触しなければならない用途に限定されるものではない。例えば、特性を独自に組み合わせれば、連続的かつ効果的に摩擦を減少させる必要のある任意の用途に本発明の潤滑剤を使用することができる。その例として、エンジン油、油圧流体、グリースなどが挙げられる。
【0110】
下記のステップを含む以下の方法を用いて食品グレード潤滑剤組成物類を形成することができる。
【0111】
A) 天然植物性油脂、合成植物性油脂、遺伝子組み換えの植物性油脂、およびその混合物を含む群から選択される少なくとも一つの植物性油脂を準備するステップ。
【0112】
B) 少なくとも一つのポリαオレフィンを準備するステップ。
【0113】
C) 少なくとも一つの酸化防止剤を準備するステップ。
【0114】
D) 任意であるが、合成エステル、白色ワセリン油、水素化分解された石油、およびその混合物を含む群から選択される少なくとも一つの食品グレード油を準備するステップ。
【0115】
E) A)、B)、C)、およびD)をブレンドし、組成物を形成するステップ。
【0116】
食品加工機器のどのタイプについても上記記載の食品グレード潤滑剤組成物類を使用することができる。
【0117】
本発明の食品グレード潤滑剤組成物類は、食品産業で使用されている同様の潤滑油よりもはるかに改善された特徴を示す。
【0118】
上記特許および刊行物の全ては参照により本明細書に組み込まれる。以下、本発明を具体化する種々の態様について、本明細書を読む者の理解の手助けとなるよう、特定の実施例を示す。これらの特定の実施例は例示に過ぎないので、下記の記載には、本発明を何らかの形に制限して解釈させるものは何もない。
【0119】
テスト方法
下記のテスト方法を用いて、本発明の食品グレード潤滑剤組成物類の特徴を測定した。
【0120】
40℃における粘度 ASTM D−445 31.92cSt
100℃における粘度 ASTM D−445 7.0cSt
粘度指数 ASTM D−2270 193
4−ボールウェアテスト ASTM D−4172 .34mm
.08摩擦係数
錆 ASTM D−665
A−蒸留水 パス−汚れなし
B−合成した海水 パス−汚れなし
酸化 ASTM D−2272 244分
銅腐食 ASTM D−130 1B
抗乳化性 ASTM D−1401 40−40−0(10分)
流動点 ASTM D−97 −21℃
生物分解性 ASTM D−5864 最高クラスのPW1、平均68%
【実施例】
【0121】
【表1】

【0122】
【表2】

【0123】
【表3】

【0124】
上記処方は、本発明の実施形態の実施例を意図しているもので、本発明を何らかに限定しようとするものではない。例えば、処方3では、HOサンを減らすこともでき、PAO4の量を約60%まで増やすこともでき、Indopl H1500(ポリイソブテン)の量を増やすこともできる。処方5では、PAO2を約70%まで増やすこともでき、これに応じてHOキャノーラを減らすこともできる。
【0125】
以下、本発明の一実施形態の処方プロセスの実施例を示す。227.25g(50.5重量%)のTrisun90(粘度39.70cSt)を202.50g(45重量%)のPAO4(粘度16.90cSt)と130°Fで混合する。次に、Trisun90およびPAO4の混合物を12.60g(2.80重量%)のIndopl H1500(粘度100000.00cSt)と135°Fで混合する。次に、Trisun90、PAO4、およびIndopl H1500の混合物を、2.25g(0.50重量%)のIrgalube349(粘度1.10cSt)、0.45g(0.10重量%)のSarkosylO、および0.45g(0.10重量%)のIrgamet39と130°Fで混合する。次に、2.25g(0.50重量%)のBHT(粘度1.10cSt)を2.25g(0.50重量%)のPANA(粘度1.10cSt)と160°Fで混合し、次に、BHTおよびPANAの混合物を、Trisun90、PAO4、Indopl H1500、Irgalube349、SarkosylO、およびIrgamet39の混合物と140°Fで混合する。この処方物は、40℃における粘度が31.92cSt、100℃における粘度が7.0cSt、粘度指数が193である。
【0126】
別の実施例は以下の通りである。1691.7g(50.5重量%)のTrisun90(粘度39.70cSt)を1507.51g(45重量%)のPAO4(粘度16.90cSt)と130°Fで混合する。次に、Trisun90およびPAO4の混合物を93.80g(2.80重量%)のIndopl H1500(粘度100000.00cSt)と135°Fで混合する。Trisun90、PAO4、およびIndopl H1500の混合物を、16.75g(0.50重量%)のIrgalube349(粘度1.10cSt)、3.35g(0.10重量%)のSarkosylO、および3.35g(0.10重量%)のIrgamet39と130°Fで混合する。次に、16.75g(0.50重量%)のBHT(粘度1.10cSt)を16.75g(0.50重量%)のPANA(粘度1.10cSt)と160°Fで混合し、次に、BHTおよびPANAの混合物を、Trisun90、PAO4、Indopl H1500、Irgalube349、SarkosylO、およびIrgamet39の混合物と140°Fで混合する。この処方物は、40℃における粘度が31.60cStである。上記のテスト結果から、従来の組成物類よりも改善されていることがわかる。
【0127】
操作の実施例以外の明細書および特許請求の範囲に用いられている成分、反応条件などの量を表す数字はすべて、特に断り書きがない限り、どの場合においても、用語「約」があれば変更されるものとする。このため、別のことが書かれていない限り、以下の明細書および添付の請求項に示される数値パラメータは、本発明によって得ようとする所望の特性に応じて変えることのできる概算値である。各数値パラメータについては、最低限でも、均等論を請求項の範囲に限定して適用しようとすることなく、少なくとも報告した複数の有意な数値に鑑み、通常の丸め方法を適用することによって解釈するものとする。
【0128】
本発明の広い範囲に示されている数値範囲およびパラメータは概算値であるが、特定の実施例に示されている数値は、できるだけ正確に示している。なお、数値はすべて、各テストの測定にみられる標準偏差から必然的に生じる何らかの誤差を本質的に含むものである。
【0129】
上記実施例は、例示目的で示されているに過ぎず、本発明の範囲または実施形態を制限しようとするものではない。本発明は、さらに、添付の請求項を参照しつつ説明されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国特許仮出願第60/474,572号、発明の名称「FDA(米国食品医薬品局)承認の添加剤を有する食品グレード潤滑剤」、出願日2003年5月30日の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、食品産業用機器の油圧オイル、循環油、ドリップオイル、汎用油、グリース基油、ケーブルオイル、チェーンオイル、スピンドル油、ギアオイル、およびコンプレッサオイルとして有用な改良型食品グレード潤滑剤に関する。特に、少なくとも一つの植物性油脂、少なくとも一つのポリαオレフィン(PAO)、および少なくとも一つの酸化防止剤を含む組成物に関する。より具体的には、熱的および機械的応力にさらされたときの特性がさらに向上した食品グレード潤滑剤組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
食品加工業で使用される機器は分野によって異なる。主要な分野には、食肉、家禽類、飲料類、スナックフード類、野菜類、乳製品が含まれる。該機器は分野によって異なり、ベアリング類、ギア類、およびスライド機構類などの可動部も同じく分野によって異なり、注油を必要とすることが多い。非常によく使用される潤滑油類には、油圧オイル、冷凍機油、およびギアオイル類のほか、汎用グリース類がある。このような食品工業用油類は、他の工業用潤滑油類よりも厳しい基準を満たさなければならない。
【0004】
食品類の質に対する安全性および基準を確保し維持することが重要であるため、食品工業は、米国農務省(USDA:United States Department of Agriculture)が提示した規則および規定に従わなければならない。USDAの食品安全検査局(FSIS:Food Safety Inspection Service)が、食肉、家禽類、卵類、乳製品類、果物類、および野菜類の安全検査、品質検査、規格化に関連する業務全般の責任を負っている。このような業務は必須のものである。連邦政府による検査の対象となる工場では、使用する非食品化合物の安全検査が必要である。
【0005】
FSISは、連邦政府による検査の対象となる工場で使用される認可済み化合物類の公式リストを管理している。偶発的に食品に触れる可能性があるところで使用することのできる潤滑油類および他の材料類を、USDAの規定下では間接的な食品添加物類としてみなす旨が、公式リスト(米国農務省食品安全検査局刊、材料および非食品化合物の認証リスト(List of Proprietary Substances and Nonfood Compounds)、11−1頁、雑報(Miscellaneous Publication)第1419号(1989年)を参照)に示されている。このため、これらの潤滑油類を食品加工工場で使用するには、あらかじめUSDAにH−1またはH−2の分類の認証をしてもらう必要がある。分類H−1は最も厳しく、偶発的に食品に触れる可能性がある箇所での使用が承認された潤滑油類である。分類H−2は、食品に触れる可能性がない箇所でのみ使用することができる潤滑剤であり、公知の毒物または発がん性物質が潤滑剤中に使用されていないことを保障するものである。本発明の一実施形態は、H−1認証の潤滑油に関連するものである。なお、本出願の明細書中の用語「H−1認証油」および「食品グレード」は、同じ意味で用いられる。
【0006】
(USDAでは、成分および組成物の新たな認証はもう行っていないが、世界の食品業界では依然としてH−1分類は有効とされている。現在はNSFが食品グレードの分類のリスト作成および認証を実施している。)
【0007】
当該生成物は、連邦政府の管理機関が設定した安全性の要件を満たすだけでなく、有効な潤滑剤でなければならない。食品加工工場用の潤滑油類は、機械部品を潤滑に動くようにするものであり、粘性変化がしにくく、酸化を防ぎ、錆および腐食から保護し、磨耗保護を提供し、耐発泡性を有し、運転中のスラッジの形成を防ぐ。さらに、該生成物は、厚い流体膜によるものから境界薄膜によるものまで、種々の形態の潤滑を効果的に実現しなければならない。
【0008】
油が長期間にわたってその潤滑性と耐水性をどのくらい効果的に維持するのかについて潤滑油の酸化安定性、熱安定性、抗乳化性及び加水分解安定性によって予測がつく。炭化水素油類の場合、高温下で長期間、酸素に接触すると、部分的に酸化される。この酸化プロセスにより、潤滑油中に酸体が生じる。このような酸体は金属類に対し腐食性をもち、食品加工機器に存在することが多い。また、油および空気の両方に接触すると、効果的な酸化触媒になってしまい、酸化速度がさらに増す。酸化生成物類は、スラッジ形成の原因である。スラッジはバルブを塞ぎ、フィルタを詰まらせ、潤滑剤の粘性による機能全体を壊してしまう虞がある。環境によっては、スラッジの形成によって栓づまりが生じ、油系流体が完全に損なわれ、機械類の不具合または損傷につながる虞がある。
【0009】
潤滑油の抗乳化性、熱安定性および加水分解安定性には、第一に潤滑油の添加剤パッケージの安定性が反映される。スラッジ形成、粘性変化、酸性変化及び腐蝕傾向については安定性の基準に従い、油の示す傾向がモニターされる。抗乳化性は水から分離されるための潤滑剤の能力を評価する。安定性が低いと時間と共に潤滑油から潤滑性が失われ、スラッジが沈殿する。
【0010】
食品の混入物源として中毒性のない潤滑油類が開発されてきたが、潤滑剤としての特性は、直接食品に接触してもよいと認証された成分が潤滑油に含まれていないなど、従来の潤滑油と比較して、あまり有効でないことが多い。潤滑油業界では、潤滑剤組成物に特殊な添加剤類を組み込むことによって、この問題をある程度まで克服してきた。例えば、機能性添加剤類を包含させることによって、耐磨耗性、酸化防止、錆/腐食防止、金属の不動態化、極圧、摩擦調整、発泡防止、および潤滑性を向上させてきた。このような化学性質については以下の特許、すなわち米国特許第5,538,654号(ローワット(Lawate)ら)、米国特許第4,062,785号(ニバート(Nibert))、米国特許第4,828,727号(マッカニンヒ(McAninch))、米国特許第5,338,471号および米国特許第5,413,725号(ライ(Lai))に記載がある。
【0011】
上記特許に記載されている食品グレード潤滑油類の欠点は、耐酸化性、流動点特性、粘度幅による処方性の限界、および粘性による保護の限界に関連する。潤滑油類は、熱および機械的応力に長時間さらされたときレオロジー特性が低くなる場合が多い。
【0012】
このため、熱的および機械的応力にさらされたときの耐酸化性、流動点、粘度指数、粘度幅による処方性、および粘度安定性が実質的に改善され、優れた抗乳化性、耐腐食性、および耐摩耗性を示す食品グレード潤滑剤が必要とされている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様は、食品グレード潤滑油類の特性の改善に有用な添加剤類の多様性および範囲を広くすることである。本出願人は、ポリαオレフィン類が食品グレード潤滑剤組成物類に処方すると、この組成物類が耐酸化性、流動点特性、および粘性の改善を示すことを発見するに至った。この食品グレード潤滑油類は、食品産業用機器の油圧オイル、循環油、ドリップオイル、汎用油、グリース基油、ケーブルオイル、チェーンオイル、スピンドル油、ギアオイル、およびコンプレッサオイルとして特に有用である。
【0014】
さらに、本発明の組成物類は、生物分解性が改善されており、環境にやさしいものであることがわかった。意外なことに、ポリαオレフィン含量が約70%を超えても、生物分解性テスト法であるASTM(米国試験・材料協会:American Society for Testing and Materials) D−5864 Pw1に合格することのできる組成物類もある。
【0015】
本発明の別の態様は、a)天然植物性油脂、合成植物性油脂、遺伝子組み換えの植物性油脂、およびその混合物を含む群から選択される少なくとも一つの植物性油脂、b)少なくとも一つのポリαオレフィン、およびc)少なくとも一つの酸化防止剤、d)任意であるが、合成エステル、白色ワセリン油、水素化分解された石油、およびその混合物を含む群から選択される少なくとも一つの食品グレード油を含む食品グレード潤滑剤に関する。この組成物の成分は、米国農務省の定めるところによりH−1認証を受けている。H−1指定は、ほとんどの場合、米国以外の国でも同程度の分類結果に相当するものと考えられる。
【0016】
本発明の別の態様では、食品グレード潤滑剤組成物を調製する方法が、1)天然植物性油脂、合成植物性油脂、遺伝子組み換えの植物性油脂、およびその混合物を含む群から選択される少なくとも一つの植物性油脂を準備するステップ、2)少なくとも一つのポリαオレフィンを準備するステップ、および3)少なくとも一つの酸化防止剤を準備するステップ、4)任意であるが、合成エステル、白色ワセリン油、水素化分解された石油、およびその混合物を含む群から選択される少なくとも一つの食品グレード油を準備するステップ、5)1)、2)、3)、および4)をブレンドし、該組成物を形成するステップを含む。
【0017】
本発明の別の態様は、食品産業に使用される機器の潤滑性を向上させる方法に関する。この方法は、以下のステップを含んでいる。
【0018】
1)以下のものを含む少なくとも一つの食品グレード潤滑剤組成物を準備するステップ。
【0019】
a)天然植物性油脂、合成植物性油脂、遺伝子組み換えの植物性油脂、およびその混合物を含む群から選択される少なくとも一つの植物性油脂。
【0020】
b)少なくとも一つのポリαオレフィン。
【0021】
c)少なくとも一つの酸化防止剤。
【0022】
d)任意であるが、合成エステル、白色ワセリン油、水素化分解された石油、およびその混合物を含む群から選択される少なくとも一つの食品グレード油。
【0023】
2)この組成物を有効量、機器に供給するステップ。
【0024】
本発明の一態様によれば、潤滑剤組成物には、少なくとも一つのトリグリセリド油、少なくとも一つのポリαオレフィン、および少なくとも一つの酸化防止剤が含まれている。
【0025】
本発明の一態様によれば、少なくとも一つのトリグリセリド油は、天然植物性油脂、合成植物性油脂、遺伝子組み換えの植物性油脂、およびその混合物を含む群から選択され、組成物は、さらに、合成エステル、白色ワセリン油、水素化分解された石油、およびその混合物を含む群から選択される少なくとも一つの食品グレード油を含む。
【0026】
本発明の一態様によれば、植物性油脂は、ヒマワリ油、キャノーラ油、ダイズ油、ヒマシ油、ハイオレイックヒマワリ、ハイオレイックキャノーラ、ハイオレイックダイズ油、およびその混合物を含む群から選択される。
【0027】
本発明の一態様によれば、植物性油脂は、約10重量%から約90重量%の範囲にある。本発明の他の実施形態では、植物性油脂は、約10重量%より多く、約90重量%より少ないか、または下記の重量パーセントのいずれかである:10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、および90。
【0028】
本発明の一態様によれば、植物性油脂は、約30重量%から約70重量%の範囲にある。本発明の他の実施形態では、植物性油脂は、約30重量%より多いか、約70重量%より少ない。
【0029】
本発明の一態様によれば、植物性油脂は、約40重量%から約60重量%の範囲にある。本発明の他の実施形態では、植物性油脂は、約40重量%より多いか、約60重量%より少ない。
【0030】
本発明の一態様によれば、ポリαオレフィンは、PAO2、PAO4、PAO6、PAO8、PAO9、PAO10、PAO40、PAO100、およびその混合物を含む群から選択される。
【0031】
本発明の一態様によれば、ポリαオレフィンは、約10重量%から約90重量%の範囲にある。本発明の他の実施形態では、ポリαオレフィンは、約10重量%より多く、約90重量%より少ないか、または下記の重量パーセントのいずれかである:10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、および90。
【0032】
本発明の一態様によれば、ポリαオレフィンは、約30重量%から約70重量%の範囲にある。本発明の他の実施形態では、ポリαオレフィンは、約30重量%より多く、または約70重量%より少ない。
【0033】
本発明の一態様によれば、ポリαオレフィンは、約40重量%から約60重量%の範囲にある。本発明の他の実施形態では、ポリαオレフィンは、約40重量%より多く、または約60重量%より少ない。
【0034】
本発明の一態様によれば、酸化防止剤は、ブチル化・ヒドロキシトルエン、フェニル−α−ナフチルアミン、およびその混合物を含む群から選択される。
【0035】
本発明の一態様によれば、酸化防止剤は、約0.01重量%から約5.0重量%の範囲にある。本発明の他の実施形態では、酸化防止剤は、約0.01重量%より多く、約5.0重量%より少ないか、0.01から5.0の間の百分の一単位の重量パーセント(すなわち0.01、0.02、0.03、0.04など)のいずれかである。
【0036】
本発明の一態様によれば、酸化防止剤は、約0.25重量%から約1.5重量%の範囲にある。本発明の他の実施形態では、酸化防止剤は、約0.25重量%より多く、または約1.5重量%より少ない。
【0037】
本発明の一態様によれば、酸化防止剤は、約0.5重量%から約1.0重量%の範囲にある。本発明の他の実施形態では、酸化防止剤は、約0.5重量%より多く、または約1.0重量%より少ない。
【0038】
本発明の一態様によれば、組成物は、回転ボンベ式酸化安定度試験(rotating bomb oxidation test:RBOT)の値が約200分よりも大きい。
【0039】
本発明の一態様によれば、組成物は、さらに、耐摩耗防止剤類、錆/腐食防止剤類、流動点降下剤類、粘度改良剤類、粘着付与剤類、金属不活性化剤類、極圧(extreme pressure:EP)添加剤類、摩擦調整剤類、発泡防止剤類、乳化剤類、および乳化破壊剤類を含む群から選択される少なくとも一つの添加剤を含む。
【0040】
本発明の一態様によれば、トリグリセリド油は、下記式を有する。
【0041】
【化1】

【0042】
式中、R、R、およびRは、約7から約23までの炭素原子を含む脂肪族ヒドロカルビル基である。本発明の他の実施形態では、脂肪族ヒドロカルビル基は、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、または23の炭素原子を含む。
【0043】
本発明の一態様によれば、トリグリセリドは、少なくとも60パーセントの単不飽和性を有する。
【0044】
本発明の一態様によれば、トリグリセリドは、少なくとも70パーセントの単不飽和性を有する。本発明の別の実施形態では、トリグリセリドは、約60パーセントおよび約70パーセントの間の単不飽和性を有する。
【0045】
本発明の一態様によれば、トリグリセリドは、少なくとも80パーセントの単不飽和性を有する。本発明の別の実施形態では、トリグリセリドは、約60パーセントから約80パーセントの間の単不飽和性を有する。本発明の別の実施形態では、トリグリセリドは、約70パーセントから約80パーセントの間の単不飽和性を有する。
【0046】
本発明の一態様によれば、食品グレード潤滑剤組成物を調製する方法は、少なくとも一つのトリグリセリド油を準備するステップ、少なくとも一つのポリαオレフィンを準備するステップ、少なくとも一つの酸化防止剤を準備するステップ、および油、オレフィン、および酸化防止剤をブレンドし、組成物を形成するステップを含む。
【0047】
本発明の一態様によれば、トリグリセリド油は、天然植物性油脂、合成植物性油脂、遺伝子組み換えの植物性油脂、およびその混合物を含む群から選択され、該方法は、さらに、合成エステル、白色ワセリン油、水素化分解された石油、およびその混合物を含む群から選択される少なくとも一つの食品グレード油を準備するステップを含む。
【0048】
本発明の一態様によれば、植物性油脂は、ヒマワリ油、キャノーラ油、ダイズ油、ヒマシ油、ハイオレイックヒマワリ、ハイオレイックキャノーラ、ハイオレイックダイズ油、およびその混合物を含む群から選択される。
【0049】
本発明の一態様によれば、ポリαオレフィンは、PAO2、PAO4、PAO6、PAO8、PAO9、PAO10、PAO40、PAO100、およびその混合物を含む群から選択される。
【0050】
本発明の一態様によれば、酸化防止剤は、ブチル化・ヒドロキシトルエン、フェニル−α−ナフチルアミン、およびその混合物を含む群から選択される。
【0051】
本発明の一態様によれば、植物性油脂は、約10重量%から約90重量%の範囲にある。
【0052】
本発明の一態様によれば、ポリαオレフィンは、約10重量%から約90重量%の範囲にある。
【0053】
本発明の一態様によれば、酸化防止剤は、約0.01重量%から約5.0重量%の範囲にある。
【0054】
本発明の一態様によれば、組成物は、油圧オイル、循環油、ドリップオイル、汎用油、グリース基油、ケーブルオイル、チェーンオイル、スピンドル油、ギアオイル、およびコンプレッサオイルとしての使用が可能である。
【0055】
本発明の一態様によれば、食品工業用機械装置に油を差す方法があり、この方法は、天然植物性油脂、合成植物性油脂、遺伝子組み換えの植物性油脂、およびその混合物を含む群から選択される少なくとも一つの植物性油脂、少なくとも一つのポリαオレフィン、および少なくとも一つの酸化防止剤を含む組成物で装置に油を差すことを含む。
【0056】
本発明の一態様によれば、組成物は、さらに、合成エステル、白色ワセリン油、水素化分解された石油、およびその混合物を含む群から選択される少なくとも一つの食品グレード油を含む。
【0057】
本発明の一態様によれば、遺伝子組み換えの油類は、オレイン酸部分:リノール酸部分の比が約2から約90である。本発明の他の実施形態では、この比が約2より大きく、約90より少ないか、下記のいずれかである:2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、および90。
【0058】
本発明の他の態様、目的、特徴、効果については、当業者であれば、本発明の好ましい実施形態が説明されている下記の詳細な記載をみれば、明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
次に、本明細書中の特定の用語について理解を助けるために用語解説を示す。用語解説に示されている定義は例示目的にすぎず、本発明の範囲を限定しようとするものではない。
【0060】
(A)トリグリセリド油
本発明の実施する際の基油は、下記式の合成トリグリセリドまたは天然油である。
【0061】
【化2】

【0062】
式中、R、R、およびRは、約7から約23までの炭素原子を含む脂肪族ヒドロカルビル基である。本明細書で使用する用語「ヒドロカルビル基」は、上記分子の残部に直接結合する炭素原子を有する基を意味する。この脂肪族ヒドロカルビル基としては、下記のものが挙げられる。
【0063】
(1)脂肪族炭化水素基;すなわち、ヘプチル、ノニル、ウンデシル、トリデシル、ヘプタデシルなどのアルキル基;ヘプテニル、ノネニル、ウンデセニル、トリデセニル、ヘプタデセニル、ヘンイコセニルなどの単一二重結合を含むアルケニル基;8,11−ヘプタデカジエニル、8,11,14−ヘプタデカトリエニルなどの2または3つの二重結合を含んでいるアルケニル基。これらの異性体はすべて含まれるが、直鎖状の基が好ましい。
【0064】
(2)置換脂肪族炭化水素基;すなわち、非炭化水素置換基を含んでいる基。なお、この置換基は、本発明中では、炭化水素基の炭化水素の性質を大幅に変えないものとする。当業者であれば、適切な置換基がわかるであろう。例として、ヒドロキシ、カルバルコキシ、(特に低級カルバルコキシ)およびアルコキシ(特に低級アルコキシ)がある。用語「低級」は、7以下の炭素原子を含む基を意味する。
【0065】
(3)ヘテロ基、すなわち、本発明中では、脂肪族炭化水素の性質を主に有し、脂肪族炭素原子からなる鎖または環に炭素以外の原子を含む基。適切なヘテロは当業者には明らかであるが、例を挙げると、酸素、窒素、および硫黄がある。
【0066】
本発明での使用に適切なトリグリセリド油類は、植物性油脂類および変性植物性油脂類である。植物性油脂トリグリセリド類は、天然の油類である。「天然の」は、油類が得られる種子が遺伝子変化をなんら受けていないことを意味する。さらに、「天然の」は、得られた油類が、ジ−およびトリ−不飽和性を変化させる水素化または何らかの化学的処置を受けていないことを意味する。本発明に有用な天然の植物性油脂類には、ダイズ油、菜種油、ヒマワリ油、やし油、レスケレラ(lesquerella)油、キャノーラ油、ピーナツ油、コーン油、綿実油、パーム油、ベニバナ油、メドゥフォーム油、またはヒマシ油が少なくとも一つ含まれる。
【0067】
トリグリセリド油類は、変性植物性油脂類であってもよい。トリグリセリド油類は、化学的または遺伝子的に変性される。天然トリグリセリド類の水素化が、化学変性の主要な手段である。天然トリグリセリド油類は、種々の脂肪酸成分を有する。天然のヒマワリ油の脂肪酸成分は、以下の通りである。
【0068】
パルミチン酸 70パーセント
ステアリン酸 4.5パーセント
オレイン酸 18.7パーセント
リノール酸 67.5パーセント
リノレン酸 0.8パーセント
その他の酸類 1.5パーセント
【0069】
水素化によるヒマワリ油の化学変性とは、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの含まれている不飽和脂肪酸成分と水素とを反応させることを意味する。その目的は不飽和を全て取り除くことではないし、水素化して、オレイン酸成分を減らしてステアリン酸成分にすることでもない。水素化による化学変性の目的は、リノール酸成分を対象とし、その成分のかなりの部分を減らし、オレイン酸成分に変えることである。天然のヒマワリ油のリノール酸成分は、67.5パーセントである。化学変性の目標は、水素化して、リノール酸を約25パーセントに減らすことである。つまり、オレイン酸成分が18.7パーセントから約61パーセントに増える(元のオレイン酸成分18.7パーセント+リノール酸から生じたオレイン酸42.5パーセント)。
【0070】
水素化は、触媒存在下の水素ガスと植物性油脂との反応である。最も普通に用いられる触媒はニッケル触媒である。このような処置をすると、水素が油に付加され、これによって、リノール酸成分およびリノレン酸成分が減る。不飽和脂肪酸成分のみが水素化反応に関わる。水素化をすると、二重結合が新しい位置に移ったり、シス型が変形して高融点のトランス型になったりなど、他の反応も生じる。
【0071】
表Iは、特定の天然植物性油脂のオレイン酸(18:1)、リノール酸(18:2)およびリノレン酸(18:3)の各成分を示す。水素化によって、トリグリセリドのリノール酸成分のかなりの部分を化学的に変性し、オレイン酸成分を60パーセント超に増やすことができる。
【0072】
表I
18:1 18:2 18:3
コーン油 25.4 59.6 1.2
綿実油 18.6 54.4 0.7
ピーナツ油 46.7 32.0 −−
ベニバナ油 12.0 77.7 0.4
ダイズ油 23.2 53.7 7.6
ヒマワリ油 18.7 67.5 0.8
【0073】
遺伝子組み換えは、蒔くための種子に導入されている。このような種子から収穫される作物には、抽出量が非常に多いオレイン酸成分と、抽出量が非常に少ないリノール酸成分とを有するトリグリセリド油が含まれる。上記の表Iをみると、天然のヒマワリ油には、オレイン酸成分が18.7パーセント含まれている。遺伝子組み換えのヒマワリ油には、オレイン酸成分が81.3パーセント、リノール酸成分が9.0パーセント含まれている。表Iの種々の植物性油脂の遺伝子組み換えをして、90パーセント超のオレイン酸成分を得ることもできる。化学変性された植物性油脂類には、化学変性されたコーン油、化学変性された綿実油、化学変性されたピーナツ油、化学変性されたパーム油、化学変性されたやし油、化学変性されたヒマシ油、化学変性されたキャノーラ油、化学変性された菜種油、化学変性されたベニバナ油、化学変性されたダイズ油、および化学変性されたヒマワリ油が少なくとも一つ含まれる。
【0074】
好ましい実施形態では、R、R、およびRの脂肪族ヒドロカルビル基は、トリグリセリドが少なくとも60パーセント、好ましくは少なくとも70パーセント、最も好ましくは少なくとも80パーセントの単不飽和性を有するようにする。本発明に有用なトリグリセリドには、通常よりも多くオレイン酸を含むように遺伝子組み換えされた植物性油脂類などがある。通常のヒマワリ油は、オレイン酸の含量が25〜30パーセントである。ヒマワリの種子を遺伝子組み換えすることによって、オレイン酸の含量が約60パーセントから約90パーセントまでのヒマワリ油を得ることができる。つまり、R、R、およびR基は、ヘプタデセニル基であり、1,2,3−プロパントリイル基CHCHCHに結合しているRCOO−、RCOO−、およびRCOO−は、オレイン酸分子の残基となる。ハイオレイックヒマワリ油の調製については、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,627,192号および米国特許第4,743,402号に記載されている。
【0075】
例えば、オレイン酸部分のみを含んでなるトリグリセリドは、オレイン酸の含量が100%であり、したがって単不飽和物の含量も100%である。トリグリセリドは、オレイン酸70%、ステアリン酸10%、パルミチン酸13%、およびリノール酸7%の酸部分から構成されている場合、単不飽和物の含量は70%である。好ましいトリグリセリド油類は、オレイン酸が多いもの、つまり遺伝子組み換えの植物性油脂類(少なくとも60パーセント)のトリグリセリド油類である。本発明に用いられる典型的なハイオレイック植物性油脂類には、ハイオレイックベニバナ油、ハイオレイックキャノーラ油、ハイオレイックピーナツ油、ハイオレイックコーン油、ハイオレイック菜種油、ハイオレイックヒマワリ油、ハイオレイック綿実油、ハイオレイックレスケレラ(lesquerella)油、ハイオレイックパーム油、ハイオレイックヒマシ油、ハイオレイックメドゥフォーム油、およびハイオレイックダイズ油がある。キャノーラ油は、1パーセント未満のエルカ酸を含んでいる菜種油の一種である。好ましいハイオレイック植物性油脂は、ヘリアンサス属(Helianthus sp)から得られるハイオレイックヒマワリ油である。この生成物は、ACヒュンコ(Humko)、テネシー州コルドバ、38018からTriSun(商標)ハイオレイックヒマワリ油として販売されている。TriSun80はハイオレイックトリグリセリドであり、酸部分にはオレイン酸が80パーセント含まれている。TriSun90はハイオレイックトリグリセリドであり、酸部分にはオレイン酸が90パーセント含まれている。別の好ましいハイオレイック植物性油脂は、ブラシカ・キャンペストリス(Brassica Campestris)またはブラシカ・ナプス(Brassica napus)から得られるハイオレイックキャノーラ油であり、こちらもACヒュンコからRSハイオレイック油として販売されている。RS80油はキャノーラ油のことであり、酸部分には、オレイン酸が80パーセント含まれている。
【0076】
さらに注目すべきなのは、遺伝子組み換えの植物性油脂類では、ジ−およびトリ−不飽和酸の量が落ちてオレイン酸含量が高くなっていることである。通常のヒマワリ油では、オレイン酸部分が20〜40パーセント、リノール酸部分が50〜70パーセントである。このため、モノ−およびジ−不飽和の酸部分が(20+70)または(40+50)となり、含量が90パーセントになる。遺伝子組み換えの植物性油脂類では、ジ−またはトリ−不飽和部分の低い植物性油脂が生成されている。本発明の遺伝子組み換えの油類では、オレイン酸部分:リノール酸部分の比が約2から約90までである。オレイン酸部分の含量が60パーセントでリノール酸部分の含量が30パーセントであるトリグリセリド油の場合、比は2となる。オレイン酸部分が80パーセント、リノール酸部分が10パーセントである組成のトリグリセリド油の場合、比は8である。オレイン酸部分が90パーセント、リノール酸部分が1パーセントである組成のトリグリセリド油の場合、比は90である。通常のヒマワリ油の比は、0.5(オレイン酸部分が30パーセント、リノール酸部分が60パーセント)である。
【0077】
植物性油脂は、組成物中に約10%から約90%の範囲で存在する。好ましくは約30%から約70%存在する。最も好ましくは、約40%から約60%である。植物性油脂の含量が90%を超えると、酸化安定性および流動点の安定性が下がり、あまり望ましくない。
【0078】
本明細書に記載の用語「グリース」は、液体(基油)中に増ちょう剤が分散された半液体から固体の分散体である。これは、約70%から90%の基油類および添加剤類(本発明に記載されている)の混合物からなり、残部は増ちょう剤である。最も一般的な増ちょう剤類としては、カルシウム、ナトリウム、リチウム、アルミニウム(高温用に錯体化させることもできる)を含む一連の金属せっけん類、ベントナイトおよびシリカゲルなどの複数の無機物質類、ならびにポリウレアのような合成増ちょう剤類がある。
【0079】
本発明の食品グレード潤滑剤組成物は、少なくとも一つのポリαオレフィンを含む。ポリαオレフィン類は、二つ以上のデセン分子を結合してオリゴマーまたは短鎖ポリマーを形成することによって作られる。PAO類は全て炭化水素構造であり、硫黄、リン、または金属類を含まない。PAO類はワックスフリーなので、流動点が低く、通常−40℃未満である。粘度は、2から100cStの範囲であり、粘度指数については、最低グレードのもの以外はすべて140を超える。PAO類は、良好な熱安定性を有するが、酸化を防ぐため適切な酸化防止添加剤類を必要とする。当業界では公知であるが、PAO類は、いくつかの添加剤類に対する溶解性に制限があり、シールが縮みやすい。本発明では、植物性油脂類とともに処方することによって両方の課題が克服されることがわかった。上記記載の種々の粘度グレードのPAO類は全て本発明に含まれ、FDAによって21 CFR(Code of Federal Regulations:連邦規制基準)178.3570 USDA H−1、食品との偶発的接触が許容される(食品への混入は10ppmを超えない)潤滑剤の認可を受けている。食用植物性基油を処方に加えると、上記のような認可を受けてはいるもののPAO類の使用が抑えられ、PAO類が希釈されることによって、さらに安全な生成物が提供される。他の有用なポリαオレフィン類については、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,534,454号に記載されている。ポリαオレフィンは、約10%から約90%の範囲で組成物に存在する。好ましくは約30%から約70%である。最も好ましくは約40%から約60%である。ポリαオレフィンの含量が90%を超えると、生物分解性および適合性が下がるので、あまり望ましくない。
【0080】
酸化防止剤
本発明の食品グレード潤滑剤組成物は、少なくとも一つの酸化防止剤を含む。FDAで食品グレードの承認を受けている適切な例としては、ブチル化・ヒドロキシトルエン(BHT)、フェニル−α−ナフチルアミン(PANA)、オクチル化/ブチル化ジフェニルアミン、高分子量のフェノール系酸化防止剤類、ヒンダードビス−フェノール系酸化防止剤、ジ−α−トコフェロール、ジ−第三級ブチルフェニルがある。最も好ましい酸化防止剤はPANAおよびBHTである。他の有用な酸化防止剤については、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,534,454号に記載されている。酸化防止剤は、約0.01%から約5.0%の範囲で組成物中に存在する。好ましくは約0.25%から約1.5%である。最も好ましくは約0.5%から約1.0%である。
【0081】
さらに、組成物には、食品グレード潤滑油類に通常使用される任意の成分/添加剤が含まれていてもよく、耐摩耗防止剤類、錆/腐食防止剤類、流動点降下剤類、粘度改良剤類、粘着付与剤類、金属不活性化剤類、極圧(EP)添加剤類、摩擦調整剤類、発泡防止剤類、乳化剤類、および乳化破壊剤類などがある。
【0082】
本発明の好ましい添加剤類には以下のものがある。
【0083】
耐摩耗防止剤、極圧添加剤および摩擦調整剤
金属表面上での磨耗を防止するために、本発明では、耐摩耗防止剤/EP添加剤および摩擦調整剤が用いられる。耐摩耗防止剤類、EP添加剤類、および摩擦調整剤は、種々の業者および製造者から既製品として販売されている。このような添加剤類の中には、二つ以上の機能をもつものがあり、食品グレードであれば、いずれも本発明に使用することができる。耐摩耗、EP、減摩擦および腐食阻害を提供することのできる食品グレード生成物の一つに、下記式のリンアミン塩がある
【0084】
【化3】

【0085】
式中、RおよびR10は、独立に、約1から約24までの炭素原子を含む脂肪族基であり、R22およびR23は、独立に、水素、または約1から約18までの脂肪族炭素原子を含む脂肪族基であり、mおよびnの和は3であり、Xは酸素または硫黄である。一実施形態では、Rは、約8から18までの炭素原子を含み、R10は、下記式である。
【0086】
【化4】

【0087】
式中、R11は、約6から約12までの炭素原子を含む脂肪族基であり、R22およびR23は水素であり、mは2であり、nは1であり、Xは酸素である。このようなリンアミン塩の一例として、Irgalube(登録商標)349があり、チバガイギーから市販されている。
【0088】
別の食品グレードの耐摩耗/EP防止/摩擦調整剤には、下記式のリン化合物がある。
【0089】
【化5】

【0090】
式中、R19、R20、およびR21は、独立に、水素、約1から約12までの炭素原子を含む脂肪族またはアルコキシ基、あるいはアリールまたはアリールオキシ基であり、アリール基は、フェニルまたはナフチルであり、アリールオキシ基は、フェノキシまたはナフトキシであり、Xは酸素または硫黄である。このようなリン化合物の一例としては、トリフェニルホスホチオネート(phosphothionate)(TPPT)があり、商品名Irgalube(登録商標)TPPTとしてチバガイギーから市販されている。
【0091】
耐摩耗防止剤類、EP、および摩擦調整剤類は、典型的には、潤滑剤組成物の約0.1から約4重量パーセントであり、別々に使っても良いし、組み合わせて使ってもよい。
【0092】
腐食防止剤
金属表面の腐食を防止するために、本発明では、腐食防止剤が用いられる。腐食防止剤類は種々の業者および製造者から既製品として販売されている。妥当な化学的な判断に基づいて選択された食品グレードの腐食防止剤であればいずれも本発明に使用することができる。
【0093】
腐食防止剤は、典型的には、潤滑剤組成物の約0.01から約4重量パーセントである。
【0094】
一実施形態では、腐食防止剤は、腐食添加剤および金属不活性化剤から構成される。腐食防止剤および金属不活性化剤は、食品グレードであり、FDAの規定を満たしている。添加剤の一つに、下記式を有するサルコシンのN−アシル誘導体がある。
【0095】
【化6】

【0096】
式中、Rは1から約24までの炭素原子を含む脂肪族基である。Rは、好ましくは、6から24までの炭素原子を含み、最も好ましくは12から18までの炭素原子を含む。サルコシンのN−アシル誘導体の添加剤の例としては、N−メチル−N−(1−オキソ−9−オクタデセニル)グリシンがあり、Rは、ヘプタデセニル基である。この誘導体は、商品名Sarkosyl(登録商標)Oとしてチバガイギーから販売されている。
【0097】
別の添加剤としては、下記式のイミダゾリンがある。
【0098】
【化7】

【0099】
式中、R17は、1から約24までの炭素原子を含む脂肪族基であり、R18は、1から約24までの炭素原子を含むアルキレン基である。好ましくは、R17は、12から18までの炭素原子を含むアルケニル基である。好ましくは、R18は、1から4までの炭素原子を含み、最も好ましくは、R18は、エチレン基である。このようなイミダゾリンの一例は下記式を有し、
【0100】
【化8】

【0101】
商品名アミンOとしてチバガイギーから市販されている。
【0102】
典型的には、腐食添加剤は、潤滑剤組成物の約0.01から約4重量パーセントである。添加剤がサルコシンのN−アシル誘導体である場合、好ましくは、潤滑剤組成物の約0.1から約1重量パーセントである。添加剤がイミダゾリンの場合、好ましくは、潤滑剤組成物の約0.05から約2重量パーセントである。潤滑剤は、二つ以上の腐食添加剤を含むことができる。例えば、潤滑剤は、サルコシンのN−アシル誘導体およびイミダゾリンの両方を含むことができる。
【0103】
金属不活性化剤
金属不活性化剤の一つに、トリアゾールまたは置換トリアゾールがある。例えば、トリ−トリアゾールまたはトル−トリアゾールを本発明に用いることができる。しかしながら、好ましいトリアゾールはトル−トリアゾールで、商品名Irgamet39としてチバガイギーから市販され、食品グレードのトリアゾールである。
【0104】
典型的には、金属不活性化剤は、潤滑剤組成物の約0.05から約0.3重量パーセントである。金属活性化因子がIrgamet39である場合、好ましくは潤滑剤組成物の約0.05から約0.2重量パーセントである。
【0105】
粘度調整剤、増ちょう剤および粘着付与剤
任意であるが、潤滑剤には、さらに以下のものを含む群から選択される添加剤が含まれていてもよい:粘度調整剤類、たとえば以下に限定されるものではないが、エチレン酢酸ビニル、ポリブテン類、ポリイソブチレン類、ポリメタクリラート類、オレフィンコポリマー類、スチレン無水マレイン酸コポリマー類のエステル類、水素化スチレン−ジエンコポリマー類、水素化放射状ポリイソプレン、アルキル化ポリスチレン、ヒュームド・シリカ類、複合エステル類;および食品グレード油類に可溶化された天然ゴムなどの食品グレード粘着付与剤類。
【0106】
食品グレードの粘度調整剤、増ちょう剤、および/または粘着付与剤を添加すると、付着性が得られ、潤滑剤の粘度および粘度指数が改善される。用途および環境条件によっては、機器を腐食および磨耗から保護する追加の粘着性表面膜を必要とすることもある。この実施形態では、粘度調整剤、増ちょう剤/粘着付与剤は、潤滑剤の約1から約20重量パーセントである。しかしながら、粘度調整剤、増ちょう剤/粘着付与剤を約0.5から約30重量パーセントとすることもできる。本発明に用いることのできる食品グレード材料の一例には、オハイオ州マセドニアのファンクショナル・プロダクツ・インク(Functional Products,Inc.)から市販されている天然ゴムの粘度調整剤/粘着付与剤、ファンクショナルV−584(Functional V−584)がある。別の例としては、ペンシルバニア州フィラデルフィアのイノレックス・ケミカル・カンパニー(Inolex Chemical Co.)から市販されている粘度調整剤、流動点降下剤、および摩擦調整剤を兼ねた多機能製品でもある複合エステルCG5000がある。
【0107】
その他の油類
その他の食品グレード油類を約0.1から約30重量%の範囲で組成物に加えることができる。これらの食品グレード油類としては、白色ワセリン油類、合成エステル類(米国特許第6,534,454号に記載されている)、水素化分解された石油(当業界では「グループIIまたはIIIの石油類」として公知である)が挙げられる。
【0108】
本発明に記載されている潤滑油は、生物分解性に改善が見られる。意外なことに、ポリαオレフィン含量が約70%を超えても、生物分解性テスト法であるASTM(米国試験・材料協会:American Society for Testing and Materials) D−5864 Pw1に合格することのできる組成物類もある。
【0109】
本発明の組成物は、食品産業の潤滑剤として特に有用であるが、直接食品と接触しなければならない用途に限定されるものではない。例えば、特性を独自に組み合わせれば、連続的かつ効果的に摩擦を減少させる必要のある任意の用途に本発明の潤滑剤を使用することができる。その例として、エンジン油、油圧流体、グリースなどが挙げられる。
【0110】
下記のステップを含む以下の方法を用いて食品グレード潤滑剤組成物類を形成することができる。
【0111】
A) 天然植物性油脂、合成植物性油脂、遺伝子組み換えの植物性油脂、およびその混合物を含む群から選択される少なくとも一つの植物性油脂を準備するステップ。
【0112】
B) 少なくとも一つのポリαオレフィンを準備するステップ。
【0113】
C) 少なくとも一つの酸化防止剤を準備するステップ。
【0114】
D) 任意であるが、合成エステル、白色ワセリン油、水素化分解された石油、およびその混合物を含む群から選択される少なくとも一つの食品グレード油を準備するステップ。
【0115】
E) A)、B)、C)、およびD)をブレンドし、組成物を形成するステップ。
【0116】
食品加工機器のどのタイプについても上記記載の食品グレード潤滑剤組成物類を使用することができる。
【0117】
本発明の食品グレード潤滑剤組成物類は、食品産業で使用されている同様の潤滑油よりもはるかに改善された特徴を示す。
【0118】
上記特許および刊行物の全ては参照により本明細書に組み込まれる。以下、本発明を具体化する種々の態様について、本明細書を読む者の理解の手助けとなるよう、特定の実施例を示す。これらの特定の実施例は例示に過ぎないので、下記の記載には、本発明を何らかの形に制限して解釈させるものは何もない。
【0119】
テスト方法
下記のテスト方法を用いて、下記の処方3のために本発明の食品グレード潤滑剤組成物の特性を測定した。
【0120】
40℃における粘度 ASTM D−445 31.92cSt
100℃における粘度 ASTM D−445 7.0cSt
粘度指数 ASTM D−2270 193
4−ボールウェアテスト ASTM D−4172 .34mm
.08摩擦係数
錆 ASTM D−665
A−蒸留水 パス−汚れなし
B−合成した海水 パス−汚れなし
酸化 ASTM D−2272 244分
銅腐食 ASTM D−130 1B
抗乳化性 ASTM D−1401 40−40−0(10分)
流動点 ASTM D−97 −21℃
生物分解性 ASTM D−5864 最高クラスのPW1、平均68%
【実施例】
【0121】
【表1】

【0122】
【表2】

【0123】
【表3】

【0124】
上記処方は、本発明の実施形態の実施例を意図しているもので、本発明を何らかに限定しようとするものではない。例えば、処方3では、HOサンを減らすこともでき、PAO4の量を約60%まで増やすこともでき、Indopl H1500(ポリイソブテン)の量を増やすこともできる。処方5では、PAO2を約70%まで増やすこともでき、これに応じてHOキャノーラを減らすこともできる。
【0125】
以下、本発明の一実施形態の処方プロセスの実施例を示す。227.25g(50.5重量%)のTrisun90(粘度39.70cSt)を202.50g(45重量%)のPAO4(粘度16.90cSt)と130°Fで混合する。次に、Trisun90およびPAO4の混合物を12.60g(2.80重量%)のIndopl H1500(粘度100000.00cSt)と135°Fで混合する。次に、Trisun90、PAO4、およびIndopl H1500の混合物を、2.25g(0.50重量%)のIrgalube349(粘度1.10cSt)、0.45g(0.10重量%)のSarkosylO、および0.45g(0.10重量%)のIrgamet39と130°Fで混合する。次に、2.25g(0.50重量%)のBHT(粘度1.10cSt)を2.25g(0.50重量%)のPANA(粘度1.10cSt)と160°Fで混合し、次に、BHTおよびPANAの混合物を、Trisun90、PAO4、Indopl H1500、Irgalube349、SarkosylO、およびIrgamet39の混合物と140°Fで混合する。この処方物は、40℃における粘度が31.92cSt、100℃における粘度が7.0cSt、粘度指数が193である。
【0126】
別の実施例は以下の通りである。1691.7g(50.5重量%)のTrisun90(粘度39.70cSt)を1507.51g(45重量%)のPAO4(粘度16.90cSt)と130°Fで混合する。次に、Trisun90およびPAO4の混合物を93.80g(2.80重量%)のIndopl H1500(粘度100000.00cSt)と135°Fで混合する。Trisun90、PAO4、およびIndopl H1500の混合物を、16.75g(0.50重量%)のIrgalube349(粘度1.10cSt)、3.35g(0.10重量%)のSarkosylO、および3.35g(0.10重量%)のIrgamet39と130°Fで混合する。次に、16.75g(0.50重量%)のBHT(粘度1.10cSt)を16.75g(0.50重量%)のPANA(粘度1.10cSt)と160°Fで混合し、次に、BHTおよびPANAの混合物を、Trisun90、PAO4、Indopl H1500、Irgalube349、SarkosylO、およびIrgamet39の混合物と140°Fで混合する。この処方物は、40℃における粘度が31.60cStである。上記のテスト結果から、従来の組成物類よりも改善されていることがわかる。
【0127】
操作の実施例以外の明細書および特許請求の範囲に用いられている成分、反応条件などの量を表す数字はすべて、特に断り書きがない限り、どの場合においても、用語「約」があれば変更されるものとする。このため、別のことが書かれていない限り、明細書および添付の請求項に示される数値パラメータは、本発明によって得ようとする所望の特性に応じて変えることのできる概算値である。各数値パラメータについては、最低限でも、均等論を請求項の範囲に限定して適用しようとすることなく、少なくとも報告した複数の有意な数値に鑑み、通常の丸め方法を適用することによって解釈するものとする。
【0128】
本発明の広い範囲に示されている数値範囲およびパラメータは概算値であるが、特定の実施例に示されている数値は、できるだけ正確に示している。なお、数値はすべて、各テストの測定にみられる標準偏差から必然的に生じる何らかの誤差を本質的に含むものである。
【0129】
上記実施例は、例示目的で示されているに過ぎず、本発明の範囲または実施形態を制限しようとするものではない。本発明は、さらに、添付の請求項を参照しつつ説明されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも一つのトリグリセリド油、
b)少なくとも一つのポリαオレフィン、および
c)少なくとも一つの酸化防止剤
を含む潤滑剤組成物。
【請求項2】
前記少なくとも一つのトリグリセリド油は、天然植物性油脂、合成植物性油脂、遺伝子組み換えの植物性油脂、およびその混合物を含む群から選択され、前記組成物は、さらに、
合成エステル、白色ワセリン油、水素化分解された石油、およびその混合物を含む群から選択される少なくとも一つの食品グレード油を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記植物性油脂は、ヒマワリ油、キャノーラ油、ダイズ油、ヒマシ油、ハイオレイックヒマワリ、ハイオレイックキャノーラ、ハイオレイックダイズ油、およびその混合物を含む群から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記植物性油脂は、約10重量%から約90重量%の範囲にある、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記植物性油脂は、約30重量%から約70重量%の範囲にある、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記植物性油脂は、約40重量%から約60重量%の範囲にある、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリαオレフィンは、PAO2、PAO4、PAO6、PAO8、PAO9、PAO10、PAO40、PAO100、およびその混合物を含む群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリαオレフィンは、約10重量%から約90重量%の範囲にある、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリαオレフィンは、約30重量%から約70重量%の範囲にある、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記ポリαオレフィンは、約40重量%から約60重量%の範囲にある、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記酸化防止剤は、ブチレイテッド・ヒドロキシトルエン、フェンル−a−ナフチルアミン、およびその混合物を含む群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記酸化防止剤は、約0.01重量%から約5.0重量%の範囲にある、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記酸化防止剤は、約0.25重量%から約1.5重量%の範囲にある、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記酸化防止剤は、約0.5重量%から約1.0重量%の範囲にある、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
200分よりも大きいRBOT値を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物は、さらに、耐摩耗防止剤類、錆/腐食防止剤類、流動点降下剤類、粘度改良剤類、粘着付与剤類、金属不活性化剤類、極圧(EP)添加剤類、摩擦調整剤類、発泡防止剤類、乳化剤類、および乳化破壊剤類を含む群から選択される少なくとも一つの添加剤を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項17】
前記遺伝子組み換えの油類は、オレイン酸部分:リノール酸部分の比が約2から約90である、請求項2に記載の組成物。
【請求項18】
前記トリグリセリド油は式
【化1】

を有し、R、R、およびRは、約7から約23までの炭素原子を含む脂肪族ヒドロカルビル基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
前記トリグリセリドは、少なくとも60パーセントの単不飽和性を有する、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記トリグリセリドは、少なくとも70パーセントの単不飽和性を有する、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記トリグリセリドは、少なくとも80パーセントの単不飽和性を有する、請求項20に記載の組成物。
【請求項21】
a)少なくとも一つのトリグリセリド油を準備するステップ、
b)少なくとも一つのポリαオレフィンを準備するステップ、
c)少なくとも一つの酸化防止剤を準備するステップ、および
d)前記油、オレフィン、および酸化防止剤をブレンドし、前記組成物を形成するステップ
を含む食品グレード潤滑剤組成物を調製する方法。
【請求項22】
前記トリグリセリド油は、天然植物性油脂、合成植物性油脂、遺伝子組み換えの植物性油脂、およびその混合物を含む群から選択され、前記方法は、さらに、
e)合成エステル、白色ワセリン油、水素化分解された石油、およびその混合物を含む群から選択される少なくとも一つの食品グレード油を準備するステップ
を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記植物性油脂は、ヒマワリ油、キャノーラ油、ダイズ油、ヒマシ油、ハイオレイックヒマワリ、ハイオレイックキャノーラ、ハイオレイックダイズ油、およびその混合物を含む群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ポリαオレフィンは、PAO2、PAO4、PAO6、PAO8、PAO9、PAO10、PAO40、PAO100、およびその混合物を含む群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記酸化防止剤は、ブチレイテッド・ヒドロキシトルエン、フェンル−a−ナフチルアミン、およびその混合物を含む群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記植物性油脂は、約10重量%から約90重量%の範囲にある、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記ポリαオレフィンは、約10重量%から約90重量%の範囲にある、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
前記酸化防止剤は、約0.01重量%から約5.0重量%の範囲にある、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
前記組成物は、油圧オイル、循環油、ドリップオイル、汎用油、グリース基油、ケーブルオイル、チェーンオイル、スピンドル油、ギアオイル、およびコンプレッサオイルとしての使用が可能である、請求項21に記載の組成物。
【請求項30】
食品工業用機械装置に油を差す方法であって、
天然植物性油脂、合成植物性油脂、遺伝子組み換えの植物性油脂、およびその混合物を含む群から選択される少なくとも一つの植物性油脂、
少なくとも一つのポリαオレフィン、および
少なくとも一つの酸化防止剤
を含む組成物で前記装置に油を差すこと
を含む方法。
【請求項31】
前記組成物は、さらに、合成エステル、白色ワセリン油、水素化分解された石油、およびその混合物を含む群から選択される少なくとも一つの食品グレード油を含む、請求項30に記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも一つのトリグリセリド油、
b)少なくとも一つのポリαオレフィン、および
c)少なくとも一つの酸化防止剤
を含む潤滑剤組成物。
【請求項2】
前記少なくとも一つのトリグリセリド油は、天然植物性油脂、合成植物性油脂、遺伝子組み換えの植物性油脂、およびその混合物を含む群から選択され、前記組成物は、さらに、
合成エステル、白色ワセリン油、水素化分解された石油、およびその混合物を含む群から選択される少なくとも一つの食品グレード油を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記植物性油脂は、ヒマワリ油、キャノーラ油、ダイズ油、ヒマシ油、ハイオレイックヒマワリ、ハイオレイックキャノーラ、ハイオレイックダイズ油、およびその混合物を含む群から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記植物性油脂は、約10重量%から約90重量%の範囲にある、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記植物性油脂は、約30重量%から約70重量%の範囲にある、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記植物性油脂は、約40重量%から約60重量%の範囲にある、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリαオレフィンは、PAO2、PAO4、PAO6、PAO8、PAO9、PAO10、PAO40、PAO100、およびその混合物を含む群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリαオレフィンは、約10重量%から約90重量%の範囲にある、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリαオレフィンは、約30重量%から約70重量%の範囲にある、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記ポリαオレフィンは、約40重量%から約60重量%の範囲にある、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記酸化防止剤は、ブチル化・ヒドロキシトルエン、フェニル―α―ナフチルアミン、およびその混合物を含む群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記酸化防止剤は、約0.01重量%から約5.0重量%の範囲にある、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記酸化防止剤は、約0.25重量%から約1.5重量%の範囲にある、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記酸化防止剤は、約0.5重量%から約1.0重量%の範囲にある、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
200分よりも大きいRBOT値を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物は、さらに、耐摩耗防止剤類、錆/腐食防止剤類、流動点降下剤類、粘度改良剤類、粘着付与剤類、金属不活性化剤類、極圧(EP)添加剤類、摩擦調整剤類、発泡防止剤類、乳化剤類、および乳化破壊剤類を含む群から選択される少なくとも一つの添加剤を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項17】
前記遺伝子組み換えの油類は、オレイン酸部分:リノール酸部分の比が約2から約90である、請求項2に記載の組成物。
【請求項18】
前記トリグリセリド油は式
【化1】

を有し、R、R、およびRは、約7から約23までの炭素原子を含む脂肪族ヒドロカルビル基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
前記トリグリセリドは、少なくとも60パーセントのモノ不飽和性を有する、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記トリグリセリドは、少なくとも70パーセントのモノ不飽和性を有する、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記トリグリセリドは、少なくとも80パーセントのモノ不飽和性を有する、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
a)少なくとも一つのトリグリセリド油を準備するステップ、
b)少なくとも一つのポリαオレフィンを準備するステップ、
c)少なくとも一つの酸化防止剤を準備するステップ、および
d)前記油、オレフィン、および酸化防止剤をブレンドし、前記組成物を形成するステップ
を含む食品グレード潤滑剤組成物を調製する方法。
【請求項23】
前記トリグリセリド油は、天然植物性油脂、合成植物性油脂、遺伝子組み換えの植物性油脂、およびその混合物を含む群から選択され、前記方法は、さらに、
e)合成エステル、白色石油、水素化分解された石油、およびその混合物を含む群から選択される少なくとも一つの食品グレード油を準備するステップ
を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記植物性油脂は、ヒマワリ油、キャノーラ油、ダイズ油、ヒマシ油、ハイオレイックヒマワリ、ハイオレイックキャノーラ、ハイオレイックダイズ油、およびその混合物を含む群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ポリαオレフィンは、PAO2、PAO4、PAO6、PAO8、PAO9、PAO10、PAO40、PAO100、およびその混合物を含む群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記酸化防止剤は、ブチル化・ヒドロキシトルエン、フェニル−α−ナフチルアミン、およびその混合物を含む群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記植物性油脂は、約10重量%から約90重量%の範囲にある、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記ポリαオレフィンは、約10重量%から約90重量%の範囲にある、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
前記酸化防止剤は、約0.01重量%から約5.0重量%の範囲にある、請求項22に記載の方法。
【請求項30】
前記組成物は、油圧オイル、循環油、ドリップオイル、汎用油、グリースベース油、ケーブルオイル、チェーンオイル、スピンドル油、ギアオイル、およびコンプレッサオイルとしての使用が可能である、請求項22に記載の組成物。
【請求項31】
食品工業用機械装置に油を差す方法であって、
天然植物性油脂、合成植物性油脂、遺伝子組み換えの植物性油脂、およびその混合物を含む群から選択される少なくとも一つの植物性油脂、
少なくとも一つのポリαオレフィン、および
少なくとも一つの酸化防止剤
を含む組成物で前記装置に油を差すこと
を含む方法。
【請求項32】
前記組成物は、さらに、合成エステル、白色石油、水素化分解された石油、およびその混合物を含む群から選択される少なくとも一つの食品グレード油を含む、請求項31に記載の方法。


【公表番号】特表2006−526698(P2006−526698A)
【公表日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515083(P2006−515083)
【出願日】平成16年6月1日(2004.6.1)
【国際出願番号】PCT/US2004/017323
【国際公開番号】WO2004/108866
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(505444075)リニューアブル リューブリカンツ インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】