説明

改装ドア及びこれに用いる気密材

【課題】 既設ドアを撤去した既設ドア枠に新設ドアを吊支持した改装ドアにおいて,気密材が室内側に露出するのを防止して可及的に高度な防火性を確保する。
【解決手段】 新設ドア2の室内側見付面の外周端部に,見込面に食い込むように段部24を配置し,この段部24に溝形成部材3を固定して,溝開口を既設ドア枠1の室外側見付面に向けた気密材受溝25を区画形成し,この気密材受溝25に嵌合脚部41を嵌合して断面T字状又はL字状の気密材4を装着して,その突出気密部42先端の戸当面対接部43を既設ドア枠1のドア戸当面12に対接して,改装ドアAとしての気密性を確保する。溝形成部材3は,その室外側の起立片32を新設ドア2の見込面より低位として,見込面との間に段差33を配置し,この段差33を介して気密材4の突出気密部42を室内側に突出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,公共住宅,マンション等玄関のドア改装に関し,特に既設ドアを撤去して残存した既設ドア枠に新設ドアを設置した改装ドア及びこれに用いる気密材に関する。
【背景技術】
【0002】
この種改装ドアとして,既設ドアを撤去して残存した既設ドア枠に対して新設ドアを設置し該新設ドアに形成した気密材受溝に気密材を装着し該気密材を既設ドア枠における室内側見込面と室外側見込面の間のドア戸当面に対接することによって気密性を確保するようにした下記特許文献記載のものが知られており,これによれば,新設ドアの中骨の室内側見付面に気密材受溝を形成するとともに中骨を覆うボックス状の室外側ドア表面材と平板状の室内側ドア表面材間に上記気密材受溝を露出するように配置し,該気密材受溝に気密材の嵌合脚部を嵌合して該気密材を新設ドアの室内側見付面の外周に室内側に向けて囲繞状に設置し,該気密材の側方に延びるように配置した戸当面対接部を既設ドア枠のドア戸当面に対接することによって気密性を確保したものとされている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−83698号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この場合,既存ドアを撤去した既設ドア枠に可及的簡易に,例えば防音断熱ドアの如き新設ドアを納まりよく設置し得るとともに該新設ドアの設置によって自ずと気密性を確保し得るようにして現場作業を可及的に簡易化した既設ドア枠を利用したドア交換の改装ドアを提供することができる。
【0005】
しかし乍ら,この場合,気密材受溝を新設ドアの室内側見付面に設置するものとされるから,気密材が室内側に露出するものとなり易く,これによって気密材が火炎を直接に受けたときに新設ドアの防火性能が低下する可能性が残されている。
【0006】
即ち気密材は,例えば上記特許文献の図3に示すように新設ドアに見付面の縁部を残して凹陥した気密材受溝に嵌合脚部を嵌合し,該嵌合脚部から該見付面の縁部を覆うように縁部側に変位して突出した膨出部を備え,該膨出部先端片側の外周側を戸当面対接部位としてドア戸当面に断面L字状をなすように対接するものとされるため,膨出部先端片側の内周側が室内側に露出することになり,従って火災時に気密材が直接炎に曝されて気密材が溶解し,気密材位置が火炎通過の経路をなす結果となる可能性があり,従ってこの場合,必ずしも防火性に優れたものとなし得ないケースが生じる。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので,その解決課題とするところは,上記既存ドアを撤去した既設ドア枠に新設ドアを設置し,既設ドア枠のドア戸当面に気密材を対接してその気密性を確保するとともに該気密材の露出を防止して可及的高度な防火性を確保した既設ドア枠を利用した改装ドアを提供するにあり,また該改装ドアに好適に使用し得る改装ドアの気密材を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に添って本発明は,新設ドアの見込面に気密材受溝を設置するとともに該気密材受溝に,既設ドア枠の室外側見込面に向けて,これと対面するように気密材を設置して,その室内側端部の戸当面対接部位を既設ドア枠のドア戸当面に対接することによって気密性を確保するとともに該気密材を,室内側から見て,既設ドア枠におけるドア戸当面の見付方向外側奥に位置して,その室内側への露出を防止するとともに室内側から実質的に遮断し,該気密材に火炎が直接に及ぶ可能性を可及的に防止して,改装ドアとしてその可及的高度な気密性と防火性の双方を並立的に確保し得るようにしたものであって,即ち請求項1に記載の発明を,既設ドアを撤去して残存した既設ドア枠に対して新設ドアを設置し該新設ドアに形成した気密材受溝に気密材を装着し該気密材を既設ドア枠における室内側見込面と室外側見込面の間のドア戸当面に対接することによって気密性を確保した改装ドアであって,上記気密材受溝を,新設ドアの見込面にその溝開口を既設ドア枠の室外側見込面に向けて囲繞状に形成するとともに上記気密材を,嵌合脚部と該嵌合脚部から既設ドア枠の室外側見込面に向けて突出し且つその室内側端部を戸当面対接部とした突出気密部とを備えて形成し,該気密材の嵌合脚部を溝開口に嵌合して該気密材を既設ドア枠の室外側見込面に対面するように新設ドアの気密材受溝に装着することによって新設ドアの見込面囲繞状に配置し,その室内側の上記戸当面対接部位を既設ドア枠のドア戸当面に対して対接して気密性を確保してなることを特徴とする改装ドアとしたものである。
【0009】
請求項2に記載の発明は,上記に加えて,気密材が既設ドア枠に接触して新設ドアの開閉障害を招いたりすることなく,新設ドアに対して気密材を納まりよく設置し得るものとするように,これを,上記新設ドアの気密材受溝を,見込面の室外側と室内側とで室内側を低位とするように段差を付して配置し,該段差を介して上記気密材の戸当面対接部位を既設ドア枠のドア戸当面に対接してなることを特徴とする請求項1に記載の改装ドアとしたものである。
【0010】
請求項3に記載の発明は,同じく上記に加えて,新設ドア枠の見込面に対する気密材受溝の設置を可及的簡易且つ確実になし得るとともに既設ドア枠のドア戸当面に可及的に近接したものとするように,これを,上記新設ドアの気密材受溝を,見込面の室内側端部に,その見付面の外周を囲繞するように見込面切欠き状の段部を配置し,該段部の室内側端部を溝形成部材又は室内側ドア表面板によって該見込面より低位の段差を付して区画し,該段差を介して上記気密材の戸当面対接部位を既設ドア枠のドア戸当面に対接してなることを特徴とする請求項1に記載の改装ドアとしたものである。
【0011】
請求項4に記載の発明は,上記改装ドアに用いる気密材を提供するように,これを,既設ドアを撤去して残存した既設ドア枠に対して新設ドアを設置し該新設ドアの見込面にその溝開口を既設ドア枠の室外側見込面に向けて囲繞状に形成した気密材受溝に装着し,既設ドア枠における室内側見込面と室外側見込面の間のドア戸当面に対接することによって気密性を確保するように用いる気密材であって,上記溝開口に嵌合して既設ドア枠の室外側見込面に向けて新設ドアの気密材受溝に装着して新設ドア見込面囲繞状に配置する嵌合脚部と,該嵌合脚部から既設ドア枠の室外側見込面に向けて突出し且つその室内側端部を既設ドア枠のドア戸当面に対接する戸当面対接部位とした突出気密部とを備えてなることを特徴とする改装ドアの気密材としたものである。
【0012】
本発明はこれらをそれぞれ発明の要旨として上記課題解決の手段としたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は以上のとおりに構成したから,請求項1に記載の発明は,新設ドアの見込面に気密材受溝を設置するとともに該気密材受溝に,既設ドア枠の室外側見込面に向けて,これと対面するように気密材を設置して,その室内側端部の戸当面対接部位を既設ドア枠のドア戸当面に対接することによって気密性を確保するとともに該気密材が室内側に露出するのを可及的に防止して,可及的高度な防火性を確保した既設ドア枠を利用した改装ドアを提供することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明は,上記に加えて,気密材が既設ドア枠に接触して新設ドアの開閉障害を招いたりすることなく,新設ドアに対して気密材を納まりよく設置し得るものとすることができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は,同じく上記に加えて,新設ドア枠の見込面に対する気密材受溝の設置を可及的簡易且つ確実になし得るとともに既設ドア枠のドア戸当面に可及的に近接したものとすることができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は,上記改装ドアに好適に使用し得る改装ドアの気密材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下図面の例に従って本発明を更に具体的に説明すれば,Aは改装ドアであり,該改装ドアAは,既設ドアを撤去して残存した既設ドア枠1に対して新設ドア2を設置し該新設ドア2に形成した気密材受溝25に気密材4を装着し該気密材4を既設ドア枠1における室内側見込面11と室外側見込面13の間のドア戸当面12に対接することによって気密性を確保したもの,即ちドア交換の改装ドアとしてある。
【0018】
改装ドアAは,例えば昭和30年代から50年代頃に建築され,一般にKJドアと称せられるプレスドアの如き既設ドアとその吊支持用の既設ヒンジを既設ドア枠1から撤去し,該既設ドア枠1に新設ドア2用の新設ヒンジを設置して残存した既設ドア枠1を可及的にそのまま利用して,防音断熱性能を確保した鋼製の両面フラッシュドアの如き高機能の新設ドア2を交換的に設置したものとしてあり,これによって短時間に騒音や塵埃を発生することなく,居住者の居住状態でドアの改装作業を完了し得るようにしてある。
【0019】
該改装ドアAにおける上記新設ドア2の気密材受溝25は,これを,新設ドア2の見込面にその溝開口を既設ドア枠1の室外側見込面13に向けて囲繞状に形成するとともに上記気密材4を,嵌合脚部41と該嵌合脚部41から既設ドア枠1の室外側見込面13に向けて突出し且つその室内側端部を戸当面対接部43とした突出気密部42とを備えて形成し,該気密材4の嵌合脚部41を溝開口に嵌合して該気密材4を既設ドア枠1の室外側見込面13に対面するように新設ドア2の気密材受溝25に装着することによって新設ドア2の見込面囲繞状に配置し,その室内側の上記戸当面対接部43を既設ドア枠1のドア戸当面12に対して対接して気密性を確保したものとしてあり,このとき新設ドア2の気密材受溝25は,これを,見込面の室内側端部に,その見付面の外周を囲繞するように見込面切欠き状の段部24を配置し,該段部24の室内側端部を溝形成部材3又は室内側ドア表面板22,本例にあっては溝形成部材3によって該見込面より低位の段差33を付して区画し,該段差33を介して上記気密材4の戸当面対接部43を既設ドア枠1のドア戸当面12に対接したものとしてある。
【0020】
本例にあって上記鋼製の両面フラッシュドアとした新設ドア2は,中骨21と,該中骨21に張設した室内側及び室外側のドア表面板22,23と,中骨21の空間に充填した防音断熱材とを備えて形成してあり,中骨21は,外形を新設ドア2の外形に合せた矩形とし且つ内側を図示省略の格子状とするように,断面コ字状等適宜の断面形状とした枠材を長手方向端部を留め接合するとともに内側に格子材を配置したフレームとして形成してあり,このとき本例にあって上記矩形の外枠部分をなす上下左右の枠材21aの室内側端部に,上記見込面切欠き状の段部に応じた折曲段部を形成し,該折曲段部に沿って上記室内側のドア表面板22を被覆して,上記新設ドア2の見込面切欠き状の段部24を配置したものとしてある。
【0021】
本例における中骨2は,例えば1.6mm厚の鋼板に折曲加工を施して形成してあり,その上記上下左右の枠材21aは,例えば見込幅を4cm程度としてあり,該枠材21aに形成した上記折曲段部は,例えば見込面及び室内側の見付面から1乃至2cm程度,本例にあってはそれぞれ1.2cm,1.4cm程度の奥行幅を有するように端部凹陥の断面L字状をなすものとしてある。
【0022】
一方中骨21を被覆する室内側のドア表面板22は,室内側の見付面と,その外周端部に折曲形成した,上記中骨における上下左右の枠材に形成した断面L字状の折曲段部に合せた断面L字状の段部と,該段部の先端を室外側に向けて形成した見付面とを有する断面T字状としたボックス状のものとする一方,室外側のドア表面板23は,室外側の見付面と,その外周を室内側に折曲した見込面とを有する断面コ字状としたボックス状のものとしてあり,本例にあって,例えば肉厚を0.6又は0.8mm,本例にあっては0.8mm,室内側のドア表面板22において断面L字状の段部を含めた合計の見込幅を3cm程度,室外側のドア表面板23において見込幅を1cm強としてある。従って上記4cm程度の中骨21を被覆して,室内側及び室外側のドア表面板22,23を張設することによって形成した本例の新設ドア2は,そのドア厚さを,旧甲種防火戸として一般の4cm程度,例えば4.0cmとしてあり,このとき上記中骨21の折曲段部を被覆した見込面切欠き状の段部24は,該中骨21の該段部にドア表面板22の肉厚を加えた寸法,即ち見付幅を1.3cm,見込幅を1.5cm程度としたL字状のものとしてある。
【0023】
本例にあって新設ドア2における気密材4を装着する気密材受溝25は,新設ドア2の見込面切欠き状の段部24に上記溝形成部材3を配置してこれを区画形成してあり,本例の溝形成部材3は,例えば段部固定片31と,該段部固定片31の一端又は両端から既設ドア枠1側に向けて起立した単一又は一対の起立片32を備えた断面L字状乃至断面コ字状,本例にあっては一対の起立片32を備えた断面コ字状のバー材を用いたものとしてあり,該溝形成部材3による上記気密材受溝25の区画形成は,その上記段部固定片31を見付面切欠状の段部24の見込面に対接し,例えばネジ,接着等の固定手段,本例にあってはネジ34を中骨21の上記上下左右の枠材21aに螺入して固定し,該気密材受溝25の溝開口を既設ドア枠1の室外側見込面13に向けるように,これを行ってある。
【0024】
このとき本例の上記断面コ字状とした溝形成部材3は,その一対の起立片32を,例えば室内側及び室外側において見込面より低い起立高さとして,見込面切欠き状の段部24に気密材受溝25を形成したとき,その室内側に上記見込面より底位の段差33を形成したものとしてある。本例にあって該段差33は,これを数mm程度以下,例えば5mm程度としてあり,また本例にあって該溝形成部材3は,その一対の起立片32の外法寸法を,上記1.5cm程度とした見込面切欠き状の段部24の見込幅より僅かに,例えば1〜3mm小さくするとともにその室内側の起立片32を見込面切欠き状の段部24の見付面に対接配置してその固定を行うことによって,気密材受溝25の区画形成状態で該溝形成部材3における室内側の起立片32が,新設ドア2の見付面との間に僅少段差をなすようにやや室外側に変位して位置するようにし,これによって新設ドア2の吊元側の回転を許容するとともに閉鎖時に溝形成部材3が既設ドア枠1のドア戸当面12に接触して騒音を発生するのを防止してある。
【0025】
気密材4は,硬質樹脂の上記嵌合脚部41に,該嵌合脚部41と断面T字状乃至断面L字状をなして既設ドア枠1側に向けて突出するように一体成形した軟質樹脂にして中空又は忠実の突出気密部42を備えて形成してあり,本例にあって該突出気密部42は,これを上記溝形成部材3に配置した上記低位の段差33の寸法に合せた突出高さを有するとともに嵌合脚部41から室内側を幾分幅広とするように室内外に突出した中空の断面矩形とし,その室内側の側面を戸当面対接部43としたものとしてあり,該戸当面対接部43は上記断面矩形の室内側側面を長手方向に平坦面として既設ドア枠1のドア戸当面12に対接自在としてある。このとき本例の気密材4は,その嵌合脚部41からの突出気密部42の突出高さを段差33の寸法に合せることにより,気密材4,特にその突出気密部42が見込面切欠き状の段部24を埋めて,新設ドア2の見付面を平坦化するとともに新設ドア2の見付面から既設ドア枠1側に突出することなく,従って既設ドア枠1に新設ドア2を,常法に従って数mm程度,本例にあっては下枠側にあって6mm,その余にあって3〜4mmの囲繞空隙を置いて配置したとき,該気密材4が既設ドア枠1に接触して,新設ドア2の開閉不良を招来するといったトラブルの可能性を解消したものとしてある。
【0026】
このように形成した新設ドア2は,更に図示省略のドアスコープ,レバーハンドル乃至ドアノブ等その余の部品設置を含めて全てを工場生産して完成品出荷することによって改装現場に搬入し,改装現場の既設ドア枠1に,その既設ドアに交換的に代替してドア改装を行うものとしてある。
【0027】
即ちドア改装は,例えば,既設ドア枠1から既設ドアと,該既設ドアを吊支持している既設ヒンジを取り外して既設ドアを撤去した後,該既設ドア枠1に,必要に応じて塗装を施す等のドア枠補修を行うも,該既設ドア枠1を可及的にそのまま用いて,該既設ドア枠1に新設ヒンジを取り付けて,該新設ヒンジによって新設ドア2を吊支持し,その見込面囲繞状の気密材4の上記戸当面対接部43を,新設ドア2の閉鎖時に既設ドア枠1のドア戸当面12に対接するようにして,改装ドアAとしての気密性を確保して,その交換的な新設ドア2の設置を行うものとしてある。
【0028】
このとき上記凹凸嵌合自在の関係にある既設ドア枠1と新設ドア2は,本例にあって部分的な嵌合関係を維持した状態で既設ドア枠1に吊支持したものとしてあり,本例にあって該部分的な嵌合は,例えば新設ドア2の室外側見付面を,既設ドア枠1の室外側見付面より数mm程度,例えば2〜3mm室内側とし且つ上記囲繞空隙を配置して新設ドア2を,既設ドア枠1に外観よく納めるように吊支持したとき,該新設ドア2の室内側見付面が,既設ドア枠1の室内側開口において,僅かに,例えば1mm程度室内側に入り込んだ状態となるようにしてある。即ち既設ドア枠1の上記KJドアにおける室外側見込面13の見込幅は41mmとされるところ,本例にあって40mmとした新設ドア2の吊支持に,上記見付面を2〜3mm程度確保したことから,新設ドア2の室内側見付面の位置は,既設ドア枠1の室外側見付面から42〜43mmとなるため,上記見込幅41mmとの寸法差を,既設ドア枠1における室内側見込面11において吸収するようにし,これによって,旧甲種防火戸として充分な耐火性を確保するようにドア厚さを設定した新設ドア2を,納まりを良好として既設ドアに交換的に既設ドア枠1に吊支持したものとしてある。
【0029】
本例の改装ドアAは,既設ドア枠1を建物躯体から斫り工事によって取外すことがなく,従ってドア改装に際して工事期間を必要とせず,塵埃,騒音等の発生もないし,また該既設ドア枠1を残すも,カバー工法によって新設ドア枠によって該既設ドア枠1を被覆することもないから,既設ドア枠1の開口をそのまま使用し,従ってドア改装に際して新設ドア枠設置による開口の狭まりもなく,簡易且つ確実にして居住者の居住状態での短時間の工事でそのドア改装を完了することができ,防音断熱性の付与,耐震機能の付与等,ドアの高機能化を図ることができる。
【0030】
更に溝形成部材3における室外側の起立片32は,新設ドア2の見込面切欠き状の段部24に,新設ドア2の室内側見付面と段差をなすようにやや室外側に変位して位置して気密材受溝25に嵌合した嵌合脚部41を室外側で被覆する一方,気密材4の突出気密部42は,該起立片32の見付方向外側の段差33位置にあって,その戸当面対接部43が既設ドア枠1のドア戸当面12に対接する結果,該気密材4は,室内側から見て,既設ドア枠1におけるドア戸当面12の,起立片32と既設ドア枠1のドア戸当面12間の細溝によって遮られたドア戸当面の見付方向外側奥に位置して,その室内側への露出を防止するとともに室内側から実質的に遮断して,該気密材4に火炎が直接に及ぶ可能性を可及的に防止するようにしてあり,これによって改装ドアAとしてその可及的高度な気密性と防火性の双方を並立的に確保することができる。また受溝形成部材3の起立片32は,新設ドア2の室内側見付面の外周に,既設ドア枠1における室内側の開口端,即ちドア戸当面12と新設ドア2の見付面の外周端部との間の狭小の空隙を介して室外側に露出することになるが,該狭小空隙は数mm程度と細幅であることによって,該溝形成部材3を,例えば無塗装の鋼製のものとしても,室内側にこれが大きく露出する如くに外観を損なうこともない。
【0031】
図示した例は以上のとおりとしたが,新設ドアの気密材受溝を,上記断面L字状のバー材による溝形成部材を見込面切欠き状の段部に固定することによって,上記例と同様に区画するようにし,このとき該溝形成部材の起立片の高さを新設ドアの見付面より低位として同様に気密材の突出気密部を通過させて既設ドア枠のドア戸当面にその戸当面対接部を対接するように配置すること,同じく気密材受溝を,見込面切欠き状の段部の室内側端部を室内側のドア表面板によって区画すること,この場合,例えば該室内側ドア表面板の外周端部に,上記溝形成部材の起立片に相当する如くに見込面切欠き状の段部の室内側端部に起立する折返し重合片を形成した断面コ字状の気密材受溝を備えて見込面に至る外周端部の構造を有するものとすること,気密材受溝を,新設ドアの見込方向中間位置,即ち,例えば中骨の上下左右の枠材における見込方向中間位置に凹陥した凹陥溝に合せて室内側又はこれと室外側のドア表面材を被覆することによって配置するようにすること,これらの場合を含めて,該気密材受溝を,見込面の室外側と室内側とで室内側を低位とするように段差を付して配置し,該段差を介して上記気密材の戸当面対接部位を既設ドア枠のドア戸当面に対接するようにすること,上記溝形成部材を用いるとき,ドア表面板と同色として,その露出による目立ちの可能性を解消したものとすること,気密材を,嵌合脚部と,この嵌合脚部から既設ドア枠のドア戸当面に向けた突出気密部を備えた断面L字状とし,突出気密部の先端を平坦な又は舌片状の戸当面対接部とすること等を含めて,本発明の実施に当って,新設ドア,気密材受溝,気密材,その嵌合脚部,突出気密部,その戸当面対接部位,必要に応じて用いる気密材受溝の室内側端部を区画する溝形成部材又は室内側ドア表面板等の各具体的材質,形状,構造,これらの関係,これらに対する付加等は上記発明の要旨に反しない限り様々な形態のものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】改装ドアの縦断面図である。
【図2】改装ドアの横断面図である。
【図3】気密材部分の拡大縦断面図である。
【図4】溝形成部材と気密材の関係を示す部分分解断面図である。
【符号の説明】
【0033】
A 改装ドア
1 既設ドア枠
11 室内側見込面
12 ドア戸当面
13 室外側見込面
2 新設ドア
21 中骨
21a 枠材
22 室内側のドア表面板
23 室外側のドア表面板
24 見込面切欠き状の段部
25 気密材受溝
3 溝形成部材
31 段部固定片
32 起立片
33 段差
34 ネジ
4 気密材
41 嵌合脚部
42 突出気密部
43 戸当面対接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設ドアを撤去して残存した既設ドア枠に対して新設ドアを設置し該新設ドアに形成した気密材受溝に気密材を装着し該気密材を既設ドア枠における室内側見込面と室外側見込面の間のドア戸当面に対接することによって気密性を確保した改装ドアであって,上記気密材受溝を,新設ドアの見込面にその溝開口を既設ドア枠の室外側見込面に向けて囲繞状に形成するとともに上記気密材を,嵌合脚部と該嵌合脚部から既設ドア枠の室外側見込面に向けて突出し且つその室内側端部を戸当面対接部とした突出気密部とを備えて形成し,該気密材の嵌合脚部を溝開口に嵌合して該気密材を既設ドア枠の室外側見込面に対面するように新設ドアの気密材受溝に装着することによって新設ドアの見込面囲繞状に配置し,その室内側の上記戸当面対接部位を既設ドア枠のドア戸当面に対して対接して気密性を確保してなることを特徴とする改装ドア。
【請求項2】
上記新設ドアの気密材受溝を,見込面の室外側と室内側とで室内側を低位とするように段差を付して配置し,該段差を介して上記気密材の戸当面対接部位を既設ドア枠のドア戸当面に対接してなることを特徴とする請求項1に記載の改装ドア。
【請求項3】
上記新設ドアの気密材受溝を,見込面の室内側端部に,その見付面の外周を囲繞するように見込面切欠き状の段部を配置し,該段部の室内側端部を溝形成部材又は室内側ドア表面板によって該見込面より低位の段差を付して区画し,該段差を介して上記気密材の戸当面対接部位を既設ドア枠のドア戸当面に対接してなることを特徴とする請求項1に記載の改装ドア。
【請求項4】
既設ドアを撤去して残存した既設ドア枠に対して新設ドアを設置し該新設ドアの見込面にその溝開口を既設ドア枠の室外側見込面に向けて囲繞状に形成した気密材受溝に装着し,既設ドア枠における室内側見込面と室外側見込面の間のドア戸当面に対接することによって気密性を確保するように用いる気密材であって,上記溝開口に嵌合して既設ドア枠の室外側見込面に向けて新設ドアの気密材受溝に装着して新設ドア見込面囲繞状に配置する嵌合脚部と,該嵌合脚部から既設ドア枠の室外側見込面に向けて突出し且つその室内側端部を既設ドア枠のドア戸当面に対接する戸当面対接部位とした突出気密部とを備えてなることを特徴とする改装ドアの気密材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−221757(P2009−221757A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−67946(P2008−67946)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(596108977)株式会社アイ・エス (12)
【出願人】(598081045)フジメタル株式会社 (23)
【Fターム(参考)】