説明

改質アラビアガム

本発明は、Acacia senegal種に属するアラビアガムを加熱することによって得られる重量平均分子量90万以上、またはアラビノガラクタン蛋白質を17重量%以上の割合で含む水溶性の改質アラビアガム、およびAcacia seyal種に属するアラビアガムを加熱することによって得られる、重量平均分子量が250万以上、または蛋白含有高分子成分を25重量%以上の割合で含む水溶性の改質アラビアガムを提供する。さらに本発明は、一定化した予測し得る分子パラメーターを有する改質アラビアガム、高い乳化効率と安定性を与え、原料アラビアガムの自然のばらつきをなくす方法を提供する。本発明により、アラビアガムに自然に備わる蛋白質分布を変えることができ、乳化AGP含量を増加することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改質されたアラビアガムに関する。より詳細には、天然から取得されるアラビアガムに比して、乳化力、乳化安定化力、カプセル化力、粘着性、保護コロイド性又はフィルム形成性などの特性が改善もしくは向上されてなる改質アラビアガムに関する。特に本発明は、Acacia senegal種に属するアラビアガムより得られた、一様に高い乳化性を発揮するのに適した蛋白質分布と特定分子量成分を含有することを特徴とする改質アラビアガムに関する。
【背景技術】
【0002】
アラビアガムは、マメ科アカシア属に属する植物(アカシア:特にAcacia senegal及びAcacia seyal)の幹や枝から得られる天然滲出物である。アラビアガムは水に高濃度で溶解し、その水溶液は比較的低濃度で、強い乳化力、乳化安定化力、カプセル化力、粘着性、保護コロイド性、及びフィルム形成性を有することから、従来から広く乳化剤、増粘剤、安定剤、結合剤または皮膜剤として利用されている。
【0003】
アラビアガムは、アフリカのサハラ地帯に点在する様々な国から採集されるがゆえに各生育国における土壌や気候の相違、並びに樹齢の相違から、分子量や構成成分の組成においてかなりのバラツキがある。このため第一生産国から届けられる本来の状態のアラビアガムの機能は一様でなく、またこれを用いて調製されたものの性質も一貫性がない(非特許文献1)。本明細書においては、かかるアラビアガムを単に「アラビアガム」というか、「天然アラビアガム」または「未改質アラビアガム」といい、本発明の「改質アラビアガム」と区別して用いる。
【0004】
上記するように乳化性はアラビアガムが様々な製品で発揮する有用な機能の一つである。従来より、天然アラビアガムの性質のばらつきに起因して生じるサンプル間での乳化力の不均衡をできるだけ少なくし、乳化力を高めるための方法が研究され提案されている。例えば、アラビアガムから金属イオンを除いてアラビン酸を取得し、これを加温変性して乳化力を高める方法(特許文献1)、並びに乾燥減量が50重量%以下のアラビアガムを60〜140℃で30分以上加温して変性することにより乳化力を高める方法(特許文献2)が提案されている。
【0005】
しかしながら、これらの方法は、アラビアガムを、期待されるような高い乳化性を備えるように改質する方法としては十分ではない。従って、品質が一定で、高い乳化性を備える改質アラビアガムを製造するのに効果的な方法が求められている。さらにまた、上記乳化力のほか、乳化安定化力、カプセル化力、粘着性、保護コロイド性またはフィルム形成性などの特性が改善され、かつ天然アラビアガムサンプル間のばらつきを低減して一定の品質を有する改質アラビアガムを製造する方法を開発する必要がある。
【0006】
なお、アラビアガムに関する文献としては上記の文献以外に、後記する非特許文献2〜3および特許文献2〜3を挙げることができる。
【非特許文献1】Williams, P. A. and Phillips, G.O.,(2000) in Handbook of Hydrocolloids, Editors Williams, P.A. and Phillips, G.O. pp.155-168, Woodhead, London and New York
【非特許文献2】中村幹雄他,薬剤学,Vol42,No.1,(1982) P25-29
【非特許文献3】Carbohydrate Research,246(1993)P303-318
【特許文献1】特開平02−49001号公報
【特許文献2】特開2000−166489号公報
【特許文献3】WO02/072862
【特許文献4】特開昭58−183701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の第1の目的は、高い乳化性を有する改質アラビアガム、特に乳化性に関して一定の品質有する改質アラビアガムを提供することである。さらに本発明はかかる改質アラビアガムを用いた乳化剤を提供することを目的とする。
【0008】
本発明の第2の目的は、天然(未改質)アラビアガムに比して乳化力、乳化安定化力、カプセル化力、粘着性、保護コロイド性およびフィルム形成性などの特性の1つまたはそれ以上が、改善もしくは向上されてなる改質アラビアガムを提供することである。
【0009】
本発明の第3の目的は、天然(未改質)アラビアガムと同等または類似の免疫学的反応性を示す安全な改質アラビアガムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねていたところ、天然アラビアガム(Acacia senegal種またはAcacia seyal種)を特定条件で加熱処理することによって乳化力を向上させることができること、斯くして得られる乳化力が向上した改質アラビアガムは、質量平均分子量および蛋白質分布のいずれか少なくとも1方において天然アラビアガムと有意に相違していることを見いだした。
【0011】
本発明は、こうした知見に基づくものであり、下記の態様を含むものである。
項1. Acacia senegal種に属するアラビアガムを加熱することによって得られる重量平均分子量が90万以上の水溶性の改質アラビアガム。
項2. Acacia senegal種に属するアラビアガムを加熱することによって得られる、重量平均分子量が150万以上の水溶性の改質アラビアガム。
項3. Acacia senegal種に属するアラビアガムを加熱することによって得られる、重量平均分子量が200万以上の水溶性の改質アラビアガム。
項4. Acacia senegal種に属するアラビアガムを加熱することによって得られるアラビノガラクタン蛋白質含量が17重量%以上の水溶性の改質アラビアガム。
項5. Acacia senegal種に属するアラビアガムを加熱することによって得られる、重量平均分子量が90万以上、アラビノガラクタン蛋白質含量が10重量%以上の水溶性の改質アラビアガム。
項6. アラビアガムを定量可能な抗体を用いた間接的競合ELISA法で免疫学的阻害率を求めた場合に、Acacia senegal種に属する未改質アラビアガムとの免疫学的阻害率の差が±10%以内である、項1乃至5のいずれかに記載の水溶性の改質アラビアガム。
【0012】
項7. Acacia seyal種に属するアラビアガムを加熱することによって得られる、重量平均分子量が250万以上の水溶性の改質アラビアガム。
項8. Acacia seyal種に属するアラビアガムを加熱することによって得られる、蛋白含有高分子成分の含量が25重量%以上の水溶性の改質アラビアガム。
項9. Acacia seyal種に属するアラビアガムを加熱することによって得られる、重量平均分子量が150万以上、蛋白含有高分子成分の含量が22重量%以上の水溶性の改質アラビアガム。
項10.アラビアガムを定量可能な抗体を用いた間接的競合ELISA法で免疫学的阻害率を求めた場合に、Acacia seyal種に属する未改質アラビアガムとの免疫学的阻害率の差が±10%以内である、項7乃至9のいずれかに記載の水溶性の改質アラビアガム。
【0013】
項11. Acacia senegal種に属するアラビアガムを110℃で10時間以上加熱するか、またはそれと同様の効果が得られる条件で加熱することによって得られる項1乃至6のいずれかに記載する水溶性の改質アラビアガム。
項12. Acacia seyal種に属するアラビアガムを110℃で10時間以上加熱するか、またはそれと同様の効果が得られる条件で加熱することによって得られる項7乃至10のいずれかに記載する水溶性の改質アラビアガム。
【0014】
項13. Acacia senegal種に属するアラビアガムを110℃で10時間以上加熱するか、またはそれと同様の効果が得られる条件で加熱する工程を有する、項1乃至6のいずれかに記載する改質アラビアガムの調製方法。
項14. Acacia seyal種に属するアラビアガムを110℃で10時間以上加熱するか、またはそれと同様の効果が得られる条件で加熱する工程を有する、項7乃至10のいずれかに記載する改質アラビアガムの調製方法。
【0015】
項15. 項1乃至10のいずれか1に記載の改質アラビアガムを有効成分として含む乳化剤。
項16. 項1及び4のいずれかに1に記載の改質アラビアガムを有効成分として含む、項15に記載する乳化剤。
項17. Acacia senegal種またはAcacia seyal種に属する天然アラビアガムとは異なる蛋白質分布と、Acacia senegal種またはAcacia seyal種に属する天然アラビアガムよりも高いアラビノガラクタン蛋白質含量を有する改質アラビアガムを有効成分として含む、新しい乳化剤。
【0016】
項18. 項15または16の乳化剤を用いて、疎水性物質を親水性溶媒中に分散安定化して得られるエマルション。
項19. O/W型エマルションまたはW/O/W型エマルションである、項18に記載のエマルション。
項20. 疎水性物質が可食性疎水性物質である項18に記載のエマルション。
項21. 疎水性物質が、精油、オレオレジン、アブソリュート、油性香料、油性色素、脂溶性ビタミン、C18〜C22の多価不飽和脂肪酸、動植物油脂、SAIB、及びC12の脂肪酸トリグリセライドよりなる群から選択される少なくとも1つである、項18乃至20のいずれかに記載のエマルション。
項22. 項15の乳化剤を用いて、疎水性物質を親水性溶媒中に分散化する工程を有する、エマルションの調製方法。
項23. 項1乃至10のいずれか1に記載の改質アラビアガムを有効成分として含む増粘剤、皮膜剤、結合剤、またはカプセル基材。
項24. 項1乃至10のいずれか1に記載の改質アラビアガムの、乳化剤の調製のための使用。
項25. 項1乃至10のいずれか1に記載の改質アラビアガムの、増粘剤、皮膜剤、結合剤、またはカプセル基材の調製のための使用。
【0017】
前述するように、本発明はAcacia senegal種またはAcacia seyal種に属する天然アラビアガムを処理することによって得られるAcacia senegal種またはAcacia seyal種に由来する改質アラビアガムを提供する。これらの種に属する天然アラビアガムは、構造上の相違に基づいて、異なる分子量、異なる蛋白質分布、および異なる分子特性を有している。例えばA.senegal種に属する天然アラビアガムは左旋性を示し、-30前後の比旋光度を有する。これに対して、A.seyal種に属する天然アラビアガムは右旋性を示し、+50前後の比旋光度を有する。また、A.senegal種に属するアラビアガムと比較して、A.seyal種に属するアラビアガムはタンパク質含量(窒素含量)が低く、粘度が低く、かつ糖組成が異なることが知られている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(1)A. senegal種に由来する改質アラビアガム
(1-1) 本発明は、Acacia senegal種に属するアラビアガムを加熱することによって得られる、重量平均分子量が90万以上、好ましくは150万以上、更に好ましくは200万以上の水溶性の改質アラビアガムを提供する。
【0019】
ここで重量平均分子量は、光散乱(MALLS)検出器、屈折率(RI)検出器及び紫外線(UV)検出器の3つの検出器をオンラインで接続したゲル濾過クロマトグラフィーを使用することによって求めることができる。なお、本明細書において、当該ゲル濾過クロマトグラフィーの手法を“GPC−MALLS”と称する。GPC−MALLSによれば、分子量はMALLS検出器により、各成分の重量(組成比)はRI検出器により、さらに蛋白質含量はUV検出器により測定することができ、分子量既知の標準のアラビアガムと対比することなく、分析成分の分子量並びに組成を求めることができる。GPC−MALLSの詳細な原理や特徴は、Idris, O.H.M., Williams, P.A., Phillips, G.O.,;Food Hydrocolloids, 12 (1998) p.375-388に記載されている。
【0020】
本発明で採用されるGPC−MALLSの測定条件は下記の通りである:
カラム :Superose(6HR) 10/30 (ファルマシア・バイオテック、スウェーデン)
流速 :0.5ml/分
溶出溶媒 :0.2M NaCl
試料の調製:分析試料を溶出溶媒(0.2M NaCl)にて希釈
試料濃度 :0.4%(W/V)
試料液注入量:100μl
dn/dc :0.141
温度 :室温
検出器 :1. MALLS(multi angle laser light scattering)検出器、DAWN DSP(フィアットテクノロジー(株)製, 米国)、2.RI検出器、3.UV検出器(214nmでの吸収)。
【0021】
上記条件下で行ったGPC−MALLSで得られたデータをASTRA Version 4.5 (フィアットテクノロジー(株))等のソフトウェアを用いて処理することにより、重量平均分子量、回収率(%Mass)、多分散性値(P)、慣性自乗半径(Rg)のアラビアガムの成分の各種パラメーターを求めることができる。RI検出器によって求められたクロマトグラム上の全てのピークを1ピークとしてデータ処理した場合に、得られる分子量が本発明でいう「重量平均分子量(Mwt)」である(より詳細には、「1ピークとして処理したMwt」)である。なお、クロマトグラムのベースラインからのRIチャートの立ち上がり部を起点、及び降下してベースラインと交わった部分を終点とした場合に、上記でいうクロマトグラム上の1ピークとは、起点から終点までの領域を意味する。
【0022】
本発明の改質アラビアガムの重量平均分子量は90万以上であればよく、特に制限されないが、好ましくは120万以上、より好ましくは150万以上、さらに好ましくは200万以上である。重量平均分子量の上限は、改質アラビアガムが水溶性である限りにおいて特に制限されないが、250万以下であることが好ましい。
【0023】
さらに本発明の改質アラビアガムは、上記重量平均分子量を有し、しかも水溶性であることを特徴とする。ここで、「水溶性」とは、過分量の水にほぼ完全に溶解する性質をいう。ここで水は、イオン交換水やイオンを含む水などといった水の種類や、アラビアガムが溶解する温度である限りその水温の別に特に制限されない。
【0024】
なお、一旦ヒドロゲル状になったアラビアガムは、水量を多くしても加温しても水に溶解しない。ゆえに、本発明でいう「水溶性」とは、本発明の改質アラビアガムを水に溶解しないヒドロゲル状のアラビアガムと区別する意味で用いられる。言い換えれば、本発明の改質アラビアガムは、ヒドロゲル等のように水中で溶解しない高分子状態の改質アラビアガムを実質上含有しないものである。
【0025】
さらにまた本発明の改質アラビアガムは、上記重量平均分子量を有し、水溶性であって、さらに未改質のアラビアガムと免疫学的反応性において同等もしくは類似していることが好ましい。なお、ここで「未改質アラビアガムと免疫学的反応性において同等もしくは類似する」とは、改質アラビアガムの免疫学的阻害率を、例えばSYCC7などの定量可能な抗体を用いた間接的競合ELISA法によって測定した場合に〔Thurston, M.I, et al., Detection of gum from Acacia seyal and species of combretum in mixtures with A.senegal using monoclonalantibodies, Food & Agric. Immunol., 10 : 237-241(1998)、Thurston, M. I, et al., Effect of heat and pH on carbohydrate epitopes from Acacia senegal by specific monoclonal antibodies,Food & Agric.Immunol., 11 : 145-153(1999)〕、Acacia Senegal種に属するアラビアガムとの免疫学的阻害率の差が±10%以内であることを意味する。
【0026】
なお本発明の改質アラビアガムは、その形状を特に制限するものではなく、塊状物、玉状物、粗粉砕物、顆粒状、粒状、及び粉末状のいずれの形状をも有することができる。
【0027】
本発明の改質アラビアガムは、原料として用いるAcacia senegal種に属するアラビアガムをオーブンなどの恒温器または加熱器を用いて110℃で10時間以上加熱することによって調製することができる。
【0028】
ここで原料として用いる未改質アラビアガム(A.senegal種)は、マメ科植物であるアカシア属に属するアカシア・セネガル(Acacia senegal)、またはこれらの同属植物の幹や枝から得られる天然滲出物である。または、これをさらに精製処理、脱塩処理または粉砕もしくはドライスプレー等の加工処理を施したものであってもよい。
【0029】
未改質アラビアガム(A.senegal種)は、通常、エチオピアからセネガルにかけての北アフリカや西アフリカの各国(エチオピア、スーダン、セネガル、ナイジェリア、ニジェール、ガーナ)、ケニアやウガンダなど東アフリカの国々、アフリカのサハラ地帯、並びにナイル川支流の盆地地帯でも産出されるが、本発明においてはその由来を問うことなく、いずれの産地由来のものであってもよい。
【0030】
また、未改質アラビアガム(A.senegal種)は、その水分含量を特に制限するものではない。通常商業的に入手可能な未改質のアラビアガム(A.senegal種)は、105℃で6時間加温乾燥することによって減少する水分量(乾燥減量)が40重量%以下、好ましくは30重量%以下、特に好ましくは20重量%以下である。本発明においてもかかる水分含量(乾燥減量)を有する未改質アラビアガム(A.senegal種)を特に制限されることなく用いることができる。
【0031】
また、通常、未改質アラビアガム(A.senegal種)は、塊状物、玉状物、粗粉砕物、顆粒状、粒状、または粉末状(スプレードライ粉末を含む)の形態で入手することができるが、本発明ではこれらの形状を問わず、いずれの形態のものをも処理対象のアラビアガム原料として使用することができる。例えば、平均粒子径が数十〜数百μm程度のスプレードライ粉末状物であってもよい。平均粒子径の上限は特に制限されないが、改質効率の点から100mm以下であることが望ましい。好ましくは平均粒子径が1〜100mm、より好ましくは2〜50mmの範囲である。
【0032】
かかる未改質アラビアガム(A.senegal種)の加熱方法としては、上記するように具体的にはオーブン(恒温器)を用いて110℃で10時間以上加熱する方法を例示することができる。好ましくは110℃で15時間以上の加熱処理、24時間以上の加熱処理、48時間以上の加熱処理である。処理する未改質アラビアガム(A.senegal種)にもよるが、110℃で加熱する場合、時間の上限としては72時間程度を挙げることができる。なお、本発明で規定する特定の分子量を有する水溶性の改質アラビアガムが取得できる方法であれば、加熱温度、加熱時間、加熱手段並びに加熱環境条件(相対湿度や閉鎖系の有無)は任意に選択使用することができ、上記加熱条件に特に制限されるものではない。例えば、上記条件での加熱処理によって得られる本発明の効果は、110℃よりも低温で10時間よりも長時間加熱処理する方法や、110℃よりも高温で短時間加熱処理する方法によっても同様に得ることができる。具体的には、前者の例として80℃で3日〜1週間以上かけて加熱する方法を挙げることができる。なお、上記オーブンによる加熱手段に代えてマイクロ波照射によれば、より短時間に同様な効果を得ることができる。その他、窒素置換条件下など、酸素のない条件下での加熱処理は、生成されるアラビアガムの着色を抑制することができるので、好ましい処理方法である。
【0033】
(1-2) また本発明は、Acacia senegal種に属するアラビアガムを加熱することによって得られる、アラビノガラクタン蛋白質を17重量%以上の割合で含む水溶性の改質アラビアガムを提供する。
【0034】
アラビノガラクタン蛋白質(以下、単に「AGP」ともいう)は、その他アラビノガラクタン(AG)及びグリコプロテイン(GP)と併せてアラビアガムに含まれる3つの主要な構成成分の一つである。未改質アラビアガム(A.senegal種)には、AGPが通常5〜15重量%の割合で含まれている。
【0035】
アラビアガム(未改質アラビアガム、改質アラビアガム)中に含まれるAGPの割合もまた、上記GPC−MALLS法を利用して求めることができる。具体的には、RI検出器によって求められたクロマトグラム上のRIチャートを、初めに溶出する部分を示すピーク1(高分子溶出画分)とそれ以降に溶出する部分を示すピーク2(低分子溶出画分)の2つに分けて、ASTRA Version 4.5 (フィアット・テクノロジー)ソフトウェアにてデータ処理した場合、ピーク1の回収率(% Mass)は、GPC−MALLSに供したアラビアガム中に含まれるAGP含有割合(重量%)に相当する。より具体的に、未改質アラビアガム(A.senegal種)をGPC−MALLS法で分析した結果を示すクロマトグラム(図1A)に基づいて説明すると、RIチャートのベースラインを基線として、RIチャートの立ち上がり部を「起点」、RIチャートが降下して基線と交わった部分を「終点」とした場合に、当該起点から終点までの間でRI強度が極小となった点を境とすると、当該境と「起点」の間の領域がピーク1であり、境と「終点」の間の領域がピーク2である。
【0036】
本発明の改質アラビアガムに含まれるAGPの割合は17重量%以上であればよく、特に制限されないが、より好ましくは20重量%以上を挙げることができる。その上限は改質アラビアガムが水溶性であることを限度として特に制限されないが、通常30重量%程度を挙げることができる。
【0037】
さらに本発明の改質アラビアガムは、上記の割合でAGPを含有し、しかも水溶性であることを特徴とする。さらにまた本発明の改質アラビアガムは、上記割合でAGPを含有し、水溶性であって、さらに未改質アラビアガムと免疫学的反応性において同等若しくは類似であることが好ましい。ここで、「水溶性」並びに「未改質アラビアガムと免疫学的反応性において同等若しくは類似である」とは、前記の(1-1)において述べた意味に解釈される。
【0038】
なお本発明の改質アラビアガムは、その形状を特に制限するものではなく、塊状物、玉状物、粗粉砕物、顆粒状、粒状、及び粉末状(スプレードライ粉末状のものを含む)のいずれの形状をも有することができる。
【0039】
本発明の改質アラビアガムは、前述するように未改質アラビアガム(A.senegal種)をオーブン等の恒温器または加熱器を用いて110℃で10時間以上加熱することによって調製することができる。処理する対象の未改質アラビアガム(A.senegal種)としては前述のものを同様に挙げることができ、またその具体的な加熱方法も前述の方法を同様に採用することができる。
【0040】
(1-3)本発明は、Acacia senegal種に属する未改質アラビアガムを加熱することによって得られる、重量平均分子量が9.0×10(90万)以上、アラビノガラクタン蛋白質(AGP)を10重量%以上の割合で含む水溶性の改質アラビアガムを提供する。
【0041】
重量平均分子量は、好ましくは10.0×10(100万)以上、より好ましくは12.0×10(120万)以上、さらに好ましくは15.0×10(150万)以上、特に好ましくは2.0×10(200万)以上である。その上限は、改質アラビアガムが水溶性である限りにおいて特に制限されないが、2.0×10(250万)程度以下であることが望ましい。
【0042】
また改質アラビアガムに含まれるAGPの割合として好ましくは15重量%以上、より好ましくは17重量%以上、さらに好ましくは20重量%以上である。その上限は改質アラビアガムが水溶性である限りにおいて特に制限されないが、30重量%程度以下であることが望ましい。
【0043】
当該本発明の改質アラビアガムは、上記の特徴を有するとともに水溶性であることを特徴とする。さらにまた本発明の改質アラビアガムは、上記重量平均分子量並びにAGP含有量を有し、水溶性であって、さらに改質前のアラビアガム原料と免疫学的反応性において同等若しくは類似することが好ましい。ここで「水溶性」並びに「未改質アラビアガムと免疫学的反応性において同等若しくは類似する」とは、前記の(1-1)において述べた意味に同様に解釈される。
【0044】
また、本発明の改質アラビアガムは、その形状を特に制限するものではなく、塊状物、玉状物、粗粉砕物、顆粒状、粒状、及び粉末状(スプレー乾燥粉末を含む)のいずれの形状をも有することができる。
【0045】
本発明の改質アラビアガムは、前述するように未改質アラビアガム(A.senegal種)をオーブン等の恒温器または加熱器を用いて110℃で10時間以上加熱することによって調製することができる。処理する対象の未改質アラビアガム(A.senegal種)としては前述のものを同様に挙げることができ、またその具体的な加熱方法も前述の方法を同様に採用することができる。
【0046】
(2)Acacia seyal種に由来する改質アラビアガム
(2-1) 本発明は、Acacia seyal種に属するアラビアガムを加熱することによって得られる、重量平均分子量が25.0×10(250万)以上の水溶性の改質アラビアガムを提供する。
【0047】
本発明の改質アラビアガムの重量平均分子量は上記限りにおいて特に制限されないが、より好ましくは26.0×10(260万)以上、さらに好ましくは30.0×10(300万)以上を有することが望ましい。重量平均分子量の上限は、改質アラビアガムが水溶性である限りにおいて特に制限されないが、好ましくは40.0×10(400万)程度を挙げることができる。
【0048】
さらに本発明の改質アラビアガムは、上記重量平均分子量を有し、しかも水溶性であることを特徴とする。さらにまた本発明の改質アラビアガムは、上記重量平均分子量を有し、水溶性であって、さらに未改質のアラビアガムと免疫学的反応性において同等若しくは類似することが好ましい。ここで「水溶性」並びに「未改質のアラビアガムと免疫学的反応性において同等若しくは類似する」とは、前記の(1-1)において前述する意味で同様に用いられる。
【0049】
なお本発明の改質アラビアガムは、その形状を特に制限するものではなく、塊状物、玉状物、粗粉砕物、顆粒状、粒状、及び粉末状のいずれの形状をも有することができる。
【0050】
本発明の改質アラビアガムは、原料として用いるAcacia seyal種に属するアラビアガムをオーブンなどの恒温器を用いて110℃で10時間以上加熱することによって調製することができる。
【0051】
ここで原料となる未改質アラビアガム(A.seyal)は、マメ科植物であるアカシア属に属するアカシア・セイアル(Acacia seyal)、またはこれらの同属植物の幹や枝から得られる天然滲出物である。または、これをさらに精製処理、脱塩処理または粉砕もしくはドライスプレー等の加工処理を施したものであってもよい。
【0052】
未改質アラビアガム(A.seyal)は、通常、エチオピアからセネガルにかけての北アフリカや西アフリカの各国(エチオピア、スーダン、セネガル、ナイジェリア、ニジェール、ガーナ)、ケニアやウガンダなど東アフリカの国々、アフリカのサハラ地帯、並びにナイル川支流の盆地地帯でも産出されるが、本発明においてはその由来を問うことなく、いずれの産地由来のものであってもよい。
【0053】
また、未改質アラビアガム(A.seyal)は、その水分含量を特に制限するものではない。通常商業的に入手可能な未改質アラビアガム(A.seyal)はいずれも任意に用いることができる。
【0054】
また、通常未改質アラビアガム(A.seyal)は、塊状物、玉状物、粗粉砕物、顆粒状、粒状、または粉末状(スプレードライ粉末状のものを含む)の形態で入手することができるが、本発明ではこれらの形状を問わず、いずれの形態のものをも加熱処理対象のアラビアガム原料として使用することができる。例えば、平均粒子径が数十〜数百μm程度のスプレードライ粉末状物であってもよい。平均粒子径の上限は特に制限されないが、改質効率の点から100mm以下であることが望ましい。好ましくは平均粒子径が1〜100mm、より好ましくは2〜50mmの範囲である。
【0055】
かかる未改質アラビアガム(A.seyal)の加熱方法は、上記するように具体的にはオーブン(恒温器)を用いて110℃で10時間以上加熱する方法を例示することができる。好ましくは110℃で15時間以上の加熱処理、24時間以上の加熱処理、48時間以上の加熱処理である。処理する未改質アラビアガム(A.seyal)にもよるが、110℃で加熱する場合、時間の上限としては72時間程度を挙げることができる。なお、本発明で規定する特定の分子量を有する水溶性の改質アラビアガムが取得できる方法であれば、加熱温度、加熱時間、加熱手段並びに加熱環境条件(相対湿度や閉鎖系の有無)は任意に選択使用することができ、上記加熱条件に特に制限されるものではない。例えば、上記条件での加熱処理によって得られる本発明の効果は、110℃よりも低温で10時間よりも長時間加熱処理する方法や、110℃よりも高温で短時間加熱処理する方法によっても同様に得ることができる。具体的には、前者の例として80℃で3日〜1週間以上かけて加熱する方法を挙げることができる。なお、上記オーブンによる加熱手段に代えてマイクロ波照射によれば、より短時間に同様な効果を得ることができる。その他、窒素置換条件下など、酸素のない条件下での加熱処理は、生成されるアラビアガムの着色を抑制することができるので、好ましい処理方法である。
【0056】
(2-2) また本発明は、Acacia seyal種に属するアラビアガムを加熱することによって得られる、蛋白含有高分子成分を25重量%以上の割合で含む水溶性の改質アラビアガムを提供する。
【0057】
Acacia seyal種に属する未改質アラビアガム並びにその改質アラビアガム中に含まれる蛋白含有高分子成分の割合もまた、上記GPC−MALLS法を利用して同様にして求めることができる。具体的には、RI検出器によって求められたクロマトグラム上のRIチャートを、初めに溶出するピーク1(高分子溶出画分)とそれ以降に溶出するピーク2(低分子溶出画分)の2つに分けて、ASTRA Version 4.5 (Wyatt Technology)ソフトウェアにてデータ処理した場合、ピーク1の回収率(% Mass)が、アラビアガム中に含まれる蛋白含有高分子成分の割合(重量%)である。より具体的に、未改質アラビアガム(A.seyal)をGPC−MALLS法で分析した結果を示すクロマトグラム(図2)に基づいて説明すると、RIクロマトグラムにおいて、当該クロマトグラムのベースラインからのRIチャートの立ち上がり部を「起点」、RIチャートが降下してベースラインと交わった部分を「終点」とした場合に、当該起点から終点までの間でRI強度が極小となった点を境として、当該境と起点との間の領域が上記でいうピーク1であり、境と終点との間の領域が上記でいうピーク2である。
【0058】
Acacia senegal種と同様、蛋白含有高分子成分(ピーク1)は、未改質アラビアガム(A.seyal)の主要構成成分の一つであり、未改質アラビアガム(A.seyal)中に通常10〜24重量%の割合で含まれている。
【0059】
本発明の改質アラビアガム(A.seyal)における蛋白含有高分子成分(ピーク1)の含有割合は上記限りにおいて特に制限されないが、より好ましくは26重量%以上、さらに好ましくは30重量%以上である。その上限は改質アラビアガムが水溶性であることを限度として特に制限されないが、45重量%程度以下であることが望ましい。
【0060】
さらに本発明の改質アラビアガム(A.seyal)は、上記の割合で蛋白含有高分子成分(ピーク1)を含有し、しかも水溶性であることを特徴とする。さらにまた本発明の改質アラビアガムは、上記の割合で蛋白含有高分子成分を有し、水溶性であって、さらに未改質のアラビアガム(A.seyal)と免疫学的反応性において同等若しくは類似することが好ましい。ここで「水溶性」並びに「未改質のアラビアガム(A.seyal)と免疫学的反応性において同等若しくは類似する」とは、前記の(1-1)において述べた通りである。なお本発明の改質アラビアガム(A.seyal)は、その形状を特に制限するものではなく、塊状物、玉状物、粗粉砕物、顆粒状、粒状、及び粉末状(スプレードライ粉末状のものを含む)のいずれの形状をも有することができる。
【0061】
本発明の改質アラビアガムは、前述するように未改質アラビアガム(A.seyal)をオーブン等の恒温器を用いて110℃で10時間以上加熱することによって調製することができる。未改質アラビアガム(A.seyal)としては前述のものを同様に挙げることができ、またその具体的な加熱方法も前述の方法を同様に採用することができる((2-1)参照)。
【0062】
(2-3)さらに本発明は、Acacia seyal種に属する未改質アラビアガムを加熱することによって得られる、重量平均分子量が150万以上、蛋白含有高分子成分を22重量%以上の割合で含む水溶性の改質アラビアガムを提供する。
【0063】
ここで重量平均分子量は、好ましくは20.0×10(200万)以上、より好ましくは25.0×10(250万)以上である。その上限は改質アラビアガムが水溶性であることを限度として特に制限されないが、通常40.0×10(400万)程度以下を例示することができる。また改質アラビアガムに含まれる蛋白含有高分子成分(ピーク1)の割合として好ましくは25重量%以上、より好ましくは30重量%以上を例示することができる。その上限は改質アラビアガムが水溶性であることを限度として特に制限されないが、通常45重量%程度以下を例示することができる。
【0064】
当該本発明の改質アラビアガム(A.seyal)は、上記の特徴を有するとともに水溶性であることを特徴とする。さらにまた本発明の改質アラビアガムは、上記の割合で重量平均分子量並びに蛋白含有高分子成分を有し、水溶性であって、さらに未改質アラビアガム(A.seyal)と免疫学的反応性において同等若しくは類似することが好ましい。ここで「水溶性」並びに「未改質アラビアガム(A.seyal)と免疫学的反応性において同等若しくは類似する」とは、前記の(1-1)において前述する意味で同様に用いられる。
【0065】
また、本発明の改質アラビアガム(A.seyal)は、その形状を特に制限するものではなく、塊状物、玉状物、粗粉砕物、顆粒状、粒状、及び粉末状(スプレードライ粉末状のものを含む)のいずれの形状をも有することができる。
【0066】
本発明の改質アラビアガムは、前述するように未改質アラビアガム(A.seyal)をオーブン等の恒温器を用いて110℃で10時間以上加熱することによって調製することができる。ここで未改質アラビアガム(A.seyal)としては前述のものを同様に挙げることができ、またその具体的な加熱方法も前述の方法を同様に採用することができる((2-1)参照)。
【0067】
上記Acacia senegal種に由来する本発明の改質アラビアガム (1-1)〜(1-3)はいずれもその優れた乳化力において原料として用いたそれぞれ未改質のアラビアガムと区別することができる。また、上記Acacia seyal種に由来する本発明の改質アラビアガム (2-1)〜(2-3)も、改善された乳化力、安定化力、カプセル化力、粘着性、保護コロイド性またはフィルム形成性において、それぞれ未改質のアラビアガムと区別することができる。
【0068】
改質アラビアガム、特にA. senegal種に由来する改質アラビアガムの乳化力は、通常それを用いてエマルションを調製した場合に、そのエマルションを形成する小滴(分散相)の平均粒子径が1μm以下、好ましくは0.8μm以下、より好ましくは0.7μm以下、さらに好ましくは0.6μm以下になることが望ましい。なお、ここで評価の基準となるエマルションは、例えば後述する実験例1(2)に記載する方法で調製することができる。
【0069】
さらに、調製されたエマルションは経時的に安定であることが望ましい。経時的安定性は、例えば調製したエマルションの平均粒子径を、調製直後〔平均粒子径(a)〕と60℃で数日間(2〜7日間)保存した後〔平均粒子径(b)〕に測定し、その差(b−a)で評価することができる。制限されないが、60℃で7日間保存した場合に、かかる差(b−a)が1μm以下、好ましくは0.3μm以下、より好ましくは0.1μm以下であるようなエマルションが得られることが望ましい。
【0070】
(3)本発明の改質アラビアガム、特にAcacia senegal種に由来する改質アラビアガムは、特に食品、医薬品、医薬部外品、または香粧品の分野において、水中油滴(O/W)型またはW/O/W型のエマルションを調製するための乳化剤として好適に使用することができる。当該改質アラビアガムは、とりわけ経口的に摂取され得る製品、例えば食品、医薬品または医薬部外品の乳化剤として好適に使用することができる。ゆえに、本発明は上記改質アラビアガムを有効成分とする乳化剤を提供する。
【0071】
具体的には、本発明の改質アラビアガムは、菓子(例えば、キャンディ、チューインガム、ドロップ、のど飴、グミ、ゼリー、トローチ、錠菓、スナック菓子など)、冷凍乳製品(例えば、アイスクリーム、アイスシャーベット、アイスミルクなど)、ベーカリー製品、飲料(例えば、ドリンク、粉末飲料)、デザート、水産加工品、畜産加工品、レトルト食品などの飲食品等の乳化、錠剤等のコーティング材の乳化、油性香料の乳化、油性色素の乳化などに、乳化剤として好適に使用することができる。
【0072】
上記改質アラビアガムはそのまま溶液の状態または粒子状若しくは粉末状にして乳化剤として用いることもできるが、必要に応じてその他の担体や添加剤を配合して乳化剤として調製することもできる。この場合、使用される担体や添加剤は、乳化剤を用いる製品の種類やその用途に応じて、常法に従って適宜選択採用することができる。例えば、改質アラビアガムは、デキストリン、マルトース、乳糖等の糖類や、グリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコールと混合して使用することができる。
【0073】
なお、この実施態様には、文献1(Roy L. Whistlerand James N. BeMiller, “INDUSTRIAL GUMS - Polysaccharides and Their Derivatives”, SECOND EDITION, ACADEMIC PRESS, New York and London, 1973, pp,197-263) および文献2(Martin Glicksman, “Gum Technology in the Food Industry” ACADEMIC PRESS, New York and London, 1969, pp,94-124)を参考にすることができる。
【0074】
(4)また、本発明は上記改質アラビアガム、特にAcacia senegal種に由来する改質アラビアガムを乳化剤として使用するエマルションの調製方法を提供する。当該エマルションは、上記改質アラビアガムを乳化剤として使用して、分散質として疎水性物質を親水性溶媒中に分散安定化することによって調製することができる。ここでエマルションとしては、水中油滴(O/W)型やW/O/W型のエマルションを挙げることができる。
【0075】
ここで乳化される疎水性物質は通常エマルション形態に供されるもの若しくはその必要性のあるものであれば特に制限されないが、好ましくは食品、医薬品、医薬部外品または香粧品分野で用いられるもの、より好ましくは経口的に用いられることが可能な(可食性)疎水性物質を挙げることができる。
【0076】
具体的には、オレンジ、ライム、レモン及びグレープフルーツなどの柑橘系植物等の基原植物から得られる各種精油、ペパー、シンナモン及びジンジャーなどの基原植物からオレオレジン方式で得られるオレオレジン、ジャスミンやローズなどの基原植物からアブソリュート方式で得られるアブソリュート、その他、合成香料化合物、及び油性調合香料組成物などの油性香料;β-カロチン、パプリカ色素、リコピン、パーム油カロチン、ドナリエラカロチン及びニンジンカロチンなどの油性色素;ビタミンA,D,E及びKなどの脂溶性ビタミン;ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、及びγ−リノレン酸などの多価不飽和脂肪酸;大豆油、菜種油、コーン油及び魚油などの動植物油脂;SAIB(Sucrose Acetate isobutyrate:ショ糖酢酸イソ酪酸エステル)、またはC6〜C12の中鎖トリグリセライドなどの加工食品用油脂及びこれら可食性油性材料の任意の混合物を例示することができる。
【0077】
上記改質アラビアガムを用いたエマルションの調製方法は、特に制限されず、水中油滴(O/W)型エマルションまたはW/O/W型エマルションの調製に関する常法に従って、疎水性物質と親水性溶媒とを上記改質アラビアガムの存在下で、ホモジナイザーや高圧噴射などを利用して機械的に攪拌混合することによって行うことができる。より具体的には、下記の方法を例示することができる。
【0078】
まず、改質アラビアガムを水等の親水性溶媒に溶解し、必要に応じて、遠心分離又はフィルタープレス等を利用した濾過など、適当な固液分離手段により不純物を除去して、アラビアガム水溶液を調製する。これに、目的の疎水性物質(例えば油脂、また予め油脂に香料や色素を溶解した混合液)を撹拌機等で混合し、予備乳化する。なお、この際、必要に応じてSAIB等の比重調整剤にて比重を調整してもよい。次いで得られた予備乳化混合液を、乳化機を利用して乳化する。
【0079】
なお、ここで疎水性物質としては前述のものを例示することができるが、油性香料や油性色素を用いて乳化香料や乳化色素を調製する場合は、上記疎水性物質として予め油脂に油性香料や油性色素を溶解した混合液を用いることが好ましい。これによって、より乳化を安定化し、また成分の揮発を予防することができる。また油性香料や油性色素を溶解する油脂としては、特に制限されないが、通常、中鎖トリグリセライド(炭素数6〜12の脂肪酸トリグリセライド)、及びコーン油、サフラワー油、または大豆油などの植物油を用いることができる。
【0080】
乳化に使用する乳化機としても、特に制限はなく、目的とするエマルションの粒子の大きさや、試料の粘度などに応じて適宜選択することができる。例えば、機械的に高圧のホモジナイザーの他、ディスパーミルやコロイドミルなどの乳化機を使用することができる。
【0081】
乳化工程は、前述するように、親水性溶媒中に、攪拌下、疎水性物質を添加し、攪拌ペラを回転して予備乳化し、粒子径約2〜5μmの乳化粒子を調製した後、ホモジナイザーなどの乳化機を用いて微細で均一な粒子(例えば、平均粒子径1μm以下)を調製することによって実施される。
【0082】
なお、β-カロチンなどの色素の多くは、それ自身、結晶の状態でサスペンションとして存在する。したがって、これらの色素をエマルション(乳化色素)として調製するには、まず色素の結晶を適当な油脂と高温下で混合し溶解してから、親水性溶媒に添加することが好ましい。
【0083】
斯くして改質アラビアガムを用いて調製されるエマルションは、天然(未改質)のアラビアガムを用いて調製したエマルションと比較して、粒子の粒度分布が均一であり、かつ、加熱や長期保存、経時変化などの虐待(過酷条件)により、エマルション粒子同士が、凝集したり、合一して粒子が劣化することが有意に抑制されており、非常に安定である。
【0084】
(5)本発明の改質アラビアガム、特にAcacia seyal種に由来する改質アラビアガムは、未改質アラビアガムに比して改善され向上した乳化力、安定化力、カプセル化力、粘着性、保護コロイド性、またはフィルム形成性に基づいて、特に増粘剤、結合剤、皮膜剤、またはカプセル基材として、食品、医薬品、医薬部外品または香粧品の分野において好適に使用することができる。ゆえに、本発明は上記改質アラビアガム、特に改質アラビアガム(A. seyal)を有効成分とする増粘剤、結合剤、皮膜剤、またはカプセル基材を提供するものでもある。
【0085】
当該増粘剤、結合剤、皮膜剤、またはカプセル基材は、有効成分として本発明の改質アラビアガムを使用すること以外は、当業界の定法に従って調製することができる。
【0086】
なお、この実施態様には、文献1(Roy L. Whistlerand James N. BeMiller, “INDUSTRIAL GUMS - Polysaccharides and Their Derivatives”, SECOND EDITION, ACADEMIC PRESS, New York and London, 1973, pp,197-263) および文献2(Martin Glicksman, “Gum Technology in the Food Industry” ACADEMIC PRESS, New York and London, 1969, pp,94-124)を参考にすることができる。
【実施例】
【0087】
以下、本発明の内容を以下の実験例および実施例を用いて具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例等に何ら制限されるものではない。尚、下記の実施例において、特に記載しない限り、「部」とは「重量部」を、また「%」とは「重量%」を意味するものとする。また各処方中、*は三栄源エフ・エフ・アイ(株)の製品であることを意味する。
【0088】
実験例1 アラビアガムの改質及び得られた改質アラビアガムの評価
粗挽きされたアラビアガム(A.senegal種:Sample 1)(球塊サイズ5mm)70kgを100l容ステンレススチール製ドラム缶に入れ、110℃のオーブンで36時間加熱した(Sample 1/36)。これらのアラビアガムサンプル(Sample 1,Sample 1/36)を下記条件のGPC-MALLSに付してクロマトグラムを得た。
【0089】
<GPC-MALLSの条件>
カラム :Superose(6HR) 10/30 (Pharmacia Biotech)
流速 :0.5ml/分
溶出溶媒 :0.2M NaCl
試料の調製:分析試料を溶出溶媒(0.2M NaCl)に溶解
試料濃度 :0.4%(W/V)
試料液注入量:100μl
dn/dc :0.141
温度 :室温
検出器 :(1) MALLS(multi angle laser light scattering)検出器:DAWN DSP(Wyatt Technology 社製)、
(2) RI(屈折率)検出器、
(3) UV検出器(214nmでの吸収)。
【0090】
Sample 1及びSample 1/36について得られたクロマトグラムをそれぞれ図1のA及びBに示す。横軸の「Volume(ml)」はカラムを通過した溶出液の累積量を示し、また縦軸の「AUX,90°Detector」は、各検出器(MALLS検出器、RI検出器、およびUV検出器)の相対強度(relative intensity)を示す。MALLS検出器で得られるクロマトグラム(MALLSチャート)は90°での光散乱強度を示したものであり、分子量の分布に相関する。RI検出器で得られるクロマトグラム(RIチャート)は屈折率の強さを示したものであり、各溶出液に含まれる成分の重量に相当する。また、UVクロマトグラム(UVチャート)カーブは214nmでのUV吸収を示したものであり、蛋白質の分布を示す。
【0091】
RI検出器で得られるチャートに基づいて、溶出成分を最初に溶出する高分子溶出画分(図1中、ピーク1領域)とそれ以降に溶出する低分子溶出画分(図1中、ピーク2領域)との2画分に分けることができる。具体的には、当該クロマトグラムのベースラインからのRIチャート(RIカーブ)の立ち上がり部を「起点」、RIチャート(RIカーブ)が降下してベースラインと交わった部分を「終点」とした場合に、当該起点から終点までの間でRI強度が極小となった点を境として、当該境と起点との間のピーク画分が上記でいう高分子溶出画分(ピーク1領域)であり、当該境と終点との間のピーク画分が上記でいう低分子溶出画分(ピーク2領域)である。
【0092】
高分子溶出画分(ピーク1領域)は、最も多くタンパク質を含む画分であり、その回収率(% mass)はアラビアガムのアラビノガラクタン蛋白質(AGP)含有率に相当する。未改質アラビアガム(A. senegal種)(Sample 1)の溶出プロファイルを示す図1Aと加熱処理したSample 1/36(A. senegal種)(Sample 1/36)の溶出プロファイルを示す図1Bとの対比から次のことがわかる。
【0093】
Sample 1(未改質アラビアガム)においてAGPを示す高分子成分(ピーク1領域)は、90°でモニターした光散乱検出器(MALLS検出器)での検出値が低く(ピーク高:約1.3)、またRI検出値が低く(量が少ない)、さらにUV吸収のピークがブロードである。それに対して、Sample 1/36(加熱処理アラビアガム)においてAGPを示す高分子成分(ピーク1領域)は、MALLS検出器による検出値が高く(ピーク高:約8)、またRI検出の値が高く(量が多い)、さらにUV吸収ピークがシャープであることが特徴として挙げられる。
【0094】
また、上記条件で測定して得られたデータをASTRA Version 4.5 (Wyatt Technology)ソフトウェアにて処理することにより、重量平均分子量、回収率(%Mass)、多分散性値(P)、慣性自乗半径(Rg)を求めた。RI検出器によって求められたクロマトグラム上の全ピークを1ピークとしてデータ処理した場合(processed as one peak)に、得られた分子量が本発明でいう「重量平均分子量」(より詳細には「重量平均分子量(Mwt processed as one peak)」)である。ここで全ピークとは、RIクロマトグラムのベースラインから、RIチャート(RIカーブ)が立ち上がった部分を「起点」、及びRIチャート(RIカーブ)が降下してベースラインと交わった部分を「終点」とした場合に、当該起点から終点までの領域に位置するピークを意味する。
【0095】
また、ピーク1領域の回収率(% mass)が未改質アラビアガム(A.senegal種)、改質アラビアガム(A. senegal種))中に含まれるAGPの割合である。慣性自乗半径(Rg)は、分子の大きさを表す尺度として使用され、その値は分子量に相対し、分子量が増大するとRg値も増大する。多分散性値(P)は、個数換算平均分子量(Mn)に対する重量換算平均分子量(Mw)の割合である(Mw/Mn)。このP値が高い程、一般にRIクロマトグラムのピークはブロードとなり、分子量が多様(多分散性)である(種々の分子量のピークが混在している)ことを示し、P値が低い程、RIクロマトグラムのピークはシャープとなり分子量の多分散性は低いことを示す。
【0096】
なお、これらの各パラメーターは、図1AとBに示すように、RI検出器で求められたクロマトグラム上の全ピークを1ピークとしてデータ処理した場合と(parameters processed as one peak)、該チャートを、初めに溶出する高分子溶出画分(ピーク1領域)とそれ以降に溶出する低分子溶出画分(ピーク2領域)の2つに分けて2ピークとしてデータ処理した場合(parameters processed as two peak)の2種類についてそれぞれ求めた。結果を表1に示す。
【0097】
【表1】

【0098】
これらの結果から、アラビアガムを加熱処理することによって、 質量平均分子量が約5.36×105(Sample 1)から、約1.97×106(Sample 1/36)へと増大し、またAGPが約8.1%(Sample 1)から、16.1%(Sample 1/36)へと増大することが確認された。
【0099】
(2)乳化力の評価
上記アラビアガムサンプル(Sample 1,Sample 1/36)を用いて下記の方法によってエマルションを調製し、得られたエマルションの平均粒子径及びその保存安定性を調べ、各サンプルの乳化力を評価した。
【0100】
具体的には、上記で得られた各サンプル(Sample 1,Sample 1/36)を水に溶解して遠心分離により不溶物を取り除き、それぞれ7.5%、10%、15%、及び20%のアラビアガム水溶液を調製した。この各水溶液800gに、攪拌条件下で、中鎖トリグリセライド(オクタン酸・デカン酸トリグリセライド、O.D.O(商品名、日清製油株式会社製))200gを添加混合し、ホモジナイザー〔APV GAULIN社製〕にて乳化しエマルションを調製した〔圧力44Mpa(450kg/cm2)でのホモジナイズを4回〕。得られたエマルションについて、乳化直後並びにそれを60℃で2日間保存した後の平均粒子径を、粒度分布測定装置(SALD-1100 Laser Diffraction Particle Size Analyzer、島津製作所(株)製)を用いて測定した。
【0101】
なお、一般に乳化剤の乳化力は、調製されるエマルションの平均粒子径が小さいほど、またその粒子径が経時的に安定して保持されるほど、優れていると評価される(「アラビアゴムで乳化したO/Wエマルションの濁度比法による研究」、薬学雑誌、112(12), 906-913, (1992))。
【0102】
各アラビアガムサンプル(Sample 1,Sample 1/36)を用いて調製したエマルションの平均粒子径及びその経時的安定性を調べた結果を表2に示す。なお、経時的安定性は、上記乳化直後のエマルションの平均粒子径(a)と加速試験(60℃で2日間保存)後のエマルションの平均粒子径(b)との差(b−a)から判断することができる。
【0103】
【表2】

【0104】
エマルションの平均粒子径の変化が少ないほど、経時的安定性に優れていることを意味する。平均粒子径の変化が0.1μm未満の場合を「乳化性が良好である」、0.1〜1μmの範囲の場合を「乳化性が程々に良好である」、1μm以上の範囲の場合を「乳化性が悪い」と判断することができる。
【0105】
その結果、表2に示すように、未改質のアラビアガム(Sample 1)は乳化性が悪かったのに対し、加熱処理したSample 1/36はいずれも平均粒子径の変化が0.1μm未満であって乳化性が非常に優れていた。
【0106】
実験例2
(1)アラビアガムの改質、及び得られた改質アラビアガムの評価
粗挽きされたAcacia senegal種に属する未改質アラビアガム(A.senegal種:「Sample 2」)(球塊サイズ5mm)1kgを、ステンレス容器に入れて大気に放置し、110℃でそれぞれ24時間、及び48時間のオーブン加熱した(24時間加熱処理したアラビアガムを「Sample 2/24」、48時間加熱処理したアラビアガムを「Sample 2/48」という)。これらのアラビアガムサンプル(Sample 2,Sample 2/24及びSample 2/48)をそれぞれ実験例1に記載する同様の方法で、GPC−MALLSにかけクロマトグラムを得た。得られたデータをASTRA Version 4.5 (Wyatt Technology)ソフトウェアにて処理することにより、重量平均分子量、回収率(% Mass)、多分散性値(P)、慣性自乗半径(Rg)を求めた。なお、これらのパラメーターは、RI検出器によって求められたクロマトグラム上の全ピークを1ピークとしてデータ処理した場合(parameters processed as one peak)と、該チャートを、初めに溶出する高分子溶出画分(ピーク1領域)とそれ以降に溶出する低分子溶出画分(ピーク2領域)に分けて2ピークとしてデータ処理した場合(parameters processed as two peaks)の2種類についてそれぞれ求めた。結果を表3に示す。
【0107】
【表3】

【0108】
またかかるクロマトグラムから求めた各サンプルの蛋白質分布を示すUV吸収プロファイル(波長214nm)を図3に、分子量分布を示すプロファイルを図4に示す。なお、図3のX軸は、カラムから溶出した溶離液の累積量(mL)(容量(mL))であり、Y軸はUV(波長214nm)(LS, AUX(volts))の相対強度を意味する。
【0109】
また、これらのアラビアガムサンプル(Sample 2,Sample 2/24及びSample 2/48)について、RIピーク頂点の分子量(Mp/RImax)及びUVピーク頂点の分子量(Mp/UVmax)を求めた結果を表4に示す。
【0110】
【表4】

【0111】
これらの結果から、加熱処理することによって、質量平均分子量が約4.13×105(Sample 2)から、約8.62×105(Sample 2/24)及び約1.43×106(Sample 2/48)へと増大し、またAGPが約7.38重量%(Sample 2)から、17.3重量%(Sample 2/24)及び20.2重量%(Sample 2/48)へと増大することが確認された。
【0112】
(2)乳化力の評価
上記アラビアガムサンプル(Sample 2,Sample 2/24及びSample 2/48)を用いて下記の方法によってエマルションを調製し、得られたエマルションの平均粒子径及びその保存安定性を調べ、各サンプルの乳化力を評価した。
【0113】
具体的には、上記で得られた各サンプル(Sample 2,Sample 2/24、及びSample 2/48)1kgをそれぞれ水4kgに溶解し、遠心分離により不溶物を取り除き、20%のアラビアガムサンプル水溶液を調製した。この20%サンプル水溶液850g中に、攪拌条件下で、中鎖トリグリセライド(オクタン酸・デカン酸トリグリセライド、O.D.O(商品名)、日清製油株式会社製)150gを添加混合し、ホモジナイザー〔APV GAULIN社製〕にて乳化しエマルションを調製した〔圧力44Mpa(450kg/cm2)でのホモジナイズを4回)。得られたエマルションについて、乳化直後並びにそれを60℃で7日間保存した後の平均粒子径を、粒度分布測定装置(SALD-1100 laser Diffraction Particle Size Analyzer,島津製作所(株)製)を用いて測定した。
【0114】
各アラビアガムサンプル(Sample 2,Sample 2/24、及びSample 2/48)を用いて調製したエマルションの平均粒子径及びその経時的安定性を調べた結果を表5に示す。なお、経時的安定性は、上記乳化直後のエマルションの平均粒子径(a)と加速試験(60℃で7日間保存)後のエマルションの平均粒子径(b)との差(b−a)から判断した。
【0115】
【表5】

【0116】
表において、エマルション小滴の大きさ(平均粒子径)の変化が少ないほど、経時的安定性に優れていることを意味する。小滴の大きさの変化が0.1μm未満の場合を「乳化性が良好である:グループA」、0.1〜1μmの範囲の場合を「乳化性が程々に良好である:グループB」、1μm以上の場合を「乳化性が悪い:グループC」に分類した。
【0117】
その結果、表5に示すように、未改質のアラビアガム(Sample 2)はグループCに属し乳化性が悪かったのに対し、加熱処理したSample 2/24及び2/48はいずれもグループAに属し乳化性が非常に優れていた。グループA(乳化性良好)に属する加熱処理Sample 2/24及び2/48とグループC(乳化性悪い)に属するSample 2を対比して示すUV吸収プロファイル(図3)及び分子量プロファイル(図4)、並びに各パラメーターを示す表3および4から、アラビアガムの特性と乳化性とは下記(1)〜(4)の関係があることがわかる。
【0118】
(1) 重量平均分子量が高くなるほど乳化性が向上する。乳化性の点から、具体的には90万以上であり、好ましくは120万以上、より好ましくは150万以上、更に好ましくは200万以上である。
【0119】
(2)AGPの割合が多くなるほど乳化性が向上する。乳化性の点から、具体的には12%以上であり、好ましくは17%以上、より好ましくは20%以上である。
【0120】
(3)RIピーク頂点での分子量(Mp/RImax)及びUVピーク頂点での分子量(Mp/UVmax)が高くなるほど乳化性が向上する。特に、乳化性の点から、UVピーク頂点での分子量(Mp/UVmax)は400万以上であることが好ましい。
【0121】
(4)UVチャートにおいて最初のピークがシャープになるほど乳化性が向上する。
【0122】
この方法(加熱処理)によると、未改質アラビアガムの蛋白質を再分布すること(言い換えると、この方法(加熱処理)により未改質アラビアガムの蛋白質分布を変更すること)によって、AGP含量が増加して乳化力を高めることができる。
【0123】
実験例3
粗挽きされた未改質アラビアガム(A.senegal種:Sample 3)(球塊サイズ5mm)1kgを、実験例2と同様にして110℃で24時間及び48時間、オーブン加熱した(24時間加熱処理したアラビアガムを「Sample 3/24」、48時間加熱処理したアラビアガムを「Sample 3/48」という)。これらのアラビアガムサンプル(Sample 3,Sample 3/24及びSample 3/48)をそれぞれ実験例1と同様の方法でGPC−MALLSにかけクロマトグラムを得た。また実験例1と同様にデータ処理して各種のパラメーター(重量平均分子量、回収率(% mass)、多分散性値(P)、慣性自乗半径(Rg))を得た。アラビアガムサンプル(Sample 3,Sample 3/24及びSample 3/48)の重量平均分子量(Mwt processed as one peak)を表6に示す。
【0124】
【表6】

【0125】
実験例4
スプレードライした未改質アラビアガム(A.senegal種:Sample 4)(粉末状)1kgを、実験例2と同様にして110℃で24時間オーブン加熱した(24時間加熱処理したアラビアガムを「Sample 4/24」という)。これらのアラビアガムサンプル(Sample 4,及びSample 4/24)をそれぞれ実験例1と同様にGPC-MALLSにかけクロマトグラムを取得し、同様にデータ処理して各種のパラメーター(重量平均分子量、回収率(% mass)、多分散性値(P)、慣性自乗半径(Rg))を得た。結果を表7に示す。
【0126】
【表7】

【0127】
実験例5
球塊状の未改質アラビアガム(A.senegal種:Sample 5)(球塊サイズ:20mm×30mm以下)1kgを、実験例2と同様にして110℃で24時間オーブン加熱した(24時間加熱処理したアラビアガムを「Sample 5/24」という)。これらのアラビアガムサンプル(Sample 5,及びSample 5/24)をそれぞれ実験例1と同様にGPC−MALLS法にかけクロマトグラムを得た。また実験例1と同様にデータ処理して各種のパラメーター(重量平均分子量、回収率(% mass)、多分散性値(P)、慣性自乗半径(Rg))を得た。結果を表8示す。
【0128】
【表8】

【0129】
実験例6
粗挽きされた未改質アラビアガム(A.seyal種:Sample 6)(球塊サイズ;5mm)を、実験例2と同様にして110℃で15時間オーブン加熱した(15時間加熱処理したアラビアガムを「Sample 6/15」という)。これらのアラビアガムサンプル(Sample 6,及びSample 6/15)をそれぞれ実験例1と同様にGPC-MALLSにかけクロマトグラムを得た。また実験例1と同様にデータ処理して各種のパラメーター(重量平均分子量、回収率(% mass)、多分散性値(P)、慣性自乗半径(Rg))を得た。結果を表9示す。
【0130】
【表9】

【0131】
実験例7
スプレードライされた未改質アラビアガム(A.seyal種:Sample 7)(粉末状;2mm以下)を、実験例2と同様にして110℃で24時間オーブン加熱した(24時間加熱処理したアラビアガムを「Sample 7/24」という)。これらのアラビアガムサンプル(Sample 7,及びSample 7/24)をそれぞれ実験例1と同様にGPC-MALLSにかけクロマトグラムを得た。また実験例1と同様にデータ処理して各種のパラメーター(重量平均分子量、回収率(% mass)、多分散性値(P)、慣性自乗半径(Rg))を得た。結果を表10に示す。
【0132】
【表10】

【0133】
実験例8 改質アラビアガムの免疫反応
実験例3で得られたA.senegal種に属するアラビアガムサンプル(Sample 3,Sample 3/24及びSample 3/48)の各々について免疫反応性を評価した。アラビアガムサンプルの免疫反応性は、具体的には各アラビアガム(濃度;0.005, 0.01, 0.05, 0.1, 0.5, 1, 5 mg/ml)で固定化したプレートを用いて、Thurston, M.I.らの文献〔Thurston,M.I,etal., Detection of gum from Acacia seyal and species of combretum in mixtures with A.senegal using monoclonalantibodies, Food & Agric.Immunol.,10 : 237-241(1998)、Thurston,M.I, et al., Effect of heat and pH on carbohydrate epitopes from Acacia senegal by specific monoclonal antibodies,Food & Agric.Immunol., 11 : 145-153(1999)〕に記載された方法に従って間接的競合ELISA法を行うことで評価した。下記にELISA法を示す。
【0134】
アラビアガムの種に特異性を示すことなく、定量的に交差性を示すモノクローナル抗体を作製した。具体的にいうと、A. seyal種に由来するアラビアガムの1mg/ml含有した生理食塩水にアジュバンドを混合し、Balb/cマウスの腹腔内に2週間間隔で3度免疫した。抗体力価の上がったマウスの脾臓細胞を採取し、ミエローマ細胞とポリエチレングリコ−ルで融合した。培養プレートで10日間培養し、増殖した融合細胞の上清に産生された抗体の特異性を指標に、融合細胞を選択した。次いで、この融合細胞を再度、培養プレートで10日間培養し、同様に融合細胞を選択し、最終的に上記の特異性を示す抗体SYCC7のみを産生する融合細胞を選択した。
【0135】
3種の試料(Sample3、3/24、3/48)の1mg/mlおよび5mg/mlの溶液を3段階に10倍希釈した。プラスチックプレートのウェルに、これらの溶液を200μl添加し、1時間、4℃で保存固定化する。生理食塩水で洗浄後、0.3%カゼイン含有した生理食塩水でブロッキングを行った後、0.05%Tween20含有生理食塩水で洗浄する。上記で調製した融合細胞の培養上清を添加し、1時間、固定化する。前と同様に洗浄後、生理食塩水で1000倍希釈したペルオキシダーゼ標識ヤギ抗マウス抗体(SIGMA)を添加し、1時間固定化する。洗浄後、基質としてテトラメチルベンジジンを添加し、発色を450nmで吸光度にて測定する。各濃度の試料の阻害率はA. seyal種に由来するアラビアガムの発色度を阻害率100%として表示した。
【0136】
結果を図5に示す。横軸は、プレートの皮膜に使用した各アラビアガムサンプルの濃度(mg/ml)を、縦軸は阻害率を示す。この結果から、本発明の改質アラビアガムは、試験したいずれの濃度においても未改質アラビアガムと免疫学的阻害率の差が±10%以内であり、ほとんど差がなく、未改質アラビアガムと免疫学的反応において同様もしくは類似であることが示された。
【0137】
実施例1 β−カロチン乳化製剤(乳化色素製剤)
実験例1〜6で得られた加熱処理アラビアガムサンプル(Acacia senegal種)を改質アラビアガムとして用いて、下記処方によりβ−カロチン乳化製剤を調製した。
【0138】
<処方>
β−カロチン30%懸濁液 5(重量%)
中鎖トリグリセライド 10
改質アラビアガム(Acacia senegal種) 17
水 68
合 計 100 重量%。
【0139】
具体的には、改質アラビアガム(Acacia senegal)170gを水680gに溶解し、遠心分離により異物を除去して、20%の改質アラビアガム水溶液を調製した。これを乳化剤として用いて、これに、予めβ−カロチン30%懸濁液50gに中鎖トリグリセライド(オクタン酸・デカン酸トリグリセライド、O.D.O(商品名)、日清製油株式会社製)100gを配合して150℃にて加熱して溶解しておいた混合液を添加し、攪拌混合した。これをホモジナイザー(APV GAULIN社製)にて乳化し(圧力44Mpa(450kg/cm2)でのホモジナイズを4回)、乳化色素製剤であるβ−カロチン乳化製剤を調製した。
【0140】
実施例2 オレンジ乳化香料(乳化香料)
実験例1〜6で得られた加熱処理アラビアガムサンプル(Acacia senegal種)を改質アラビアガムとして用いて、下記処方によりオレンジ乳化香料を調製した。
【0141】
<処方>
オレンジ香料 2(重量%)
中鎖トリグリセライド 13
改質アラビアガム(Acacia senegal種) 17
水 68
合 計 100 重量%。
【0142】
具体的には、改質アラビアガム(Acacia senegal種)170gを水680gに溶解し、遠心分離して異物を除去し、20%の改質アラビアガム水溶液を調製した。これを乳化剤として、これに、予めオレンジ香料20gと中鎖トリグリセライド(オクタン酸・デカン酸トリグリセライド、O.D.O(商品名)、日清製油株式会社製)130gを室温下でよく混合して調製しておいた混合液を添加し、攪拌混合した。これをホモジナイザー(APV GAULIN社製)にて乳化し(圧力44Mpa(450kg/cm2)でのホモジナイズを4回)、乳化香料であるオレンジ乳化香料を調製した。
【0143】
実施例3 DHA(ドコサヘキサエン酸)エマルション(乳化DHA製剤)
実験例1〜6で得られた加熱処理アラビアガムサンプル(Acacia senegal種)を改質アラビアガムとして用いて、下記処方によりDHA乳化製剤を調製した。
<処方>
DHA20%含有魚油 5(重量%)
中鎖トリグリセライド 10
改質アラビアガム(Acacia senegal種) 17
水 68
合 計 100 重量%。
【0144】
改質アラビアガム(Acaciasenegal種)170gを水680gに溶解し、遠心分離して異物を除去して、20%の改質アラビアガム水溶液を調製する。これを乳化剤として、これに、予めDHA20%含有魚油50gと中鎖トリグリセライド(オクタン酸・デカン酸トリグリセライド、O.D.O(商品名)、日清製油株式会社製)100gとの混合物を80℃に加熱し、混合して調製しておいた混合液を添加し、攪拌混合した。これをホモジナイザー(APV GAULIN社製)にて乳化し(圧力44Mpa(450kg/cm2)でのホモジナイズを4回)、DHA乳化製剤を調製した。
【0145】
実施例4 レモン粉末香料
実験例7で得られた加熱処理アラビアガムサンプル(Acacia seyal種)を改質アラビアガムとして用いて、下記処方によりレモン粉末香料を調製した。
<処方>
レモンオイル 20(重量%)
改質アラビアガム(Acacia seyal種) 20
デキストリン 60
水 150
合 計 250 重量%。
【0146】
具体的には、改質アラビアガム(Acacia seyal種)200gとデキストリン600gを水1500gに溶解し、改質アラビアガム水溶液を調製した。これを乳化剤として、これにレモンオイル200gを添加し、攪拌混合した。これをホモジナイザー(APV GAULIN社製)にて乳化した(圧力19.6Mpa(200kg/cm2)でのホモジナイズを1回)。次いで、この溶液をスプレードライヤー(ANHYDRO社製)(インレット140℃、アウトレット 80℃)にて噴霧乾燥し、レモン粉末香料950gを調製した。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明は、改質アラビアガム、特に乳化力に優れたA.senegal種に由来する改質アラビアガムを提供することができる。また本発明は、改質アラビアガム、特に産地の違いや気候、取得時期に応じてバラツキのあるアラビアガムの品質や分子特性を、特に乳化性の点において一様に調整し一定化し、安定して優れた乳化特性を発揮するA.senegal種に由来する改質アラビアガムを提供することができる。かかる本発明の改質アラビアガム、特にA.senegal種に由来する改質アラビアガムは、精油、油性色素、油性香料、油溶性ビタミン等の各種の疎水性物質の乳化に好適に使用することができる。またかかる本発明の改質アラビアガムを用いて調製されるエマルションは、天然(未改質)のアラビアガムを用いて調製したエマルションと比較して、粒子の粒度分布が均一であり、かつ、加熱や長期保存、経時変化などの虐待(過酷条件)により、エマルション粒子同士が、凝集したり、合一して粒子が劣化することが有意に抑制されており、非常に安定である。
【0148】
また、本発明は、改質アラビアガム、特に天然(未改質)のアラビアガムに比して乳化力、安定化力、カプセル化力、粘着性、保護コロイド性、またはフィルム形成性が改善され、また向上したA.seyal種に由来する改質アラビアガムを提供することができる。また本発明は、産地の違いや気候、取得時期に応じてバラツキのあるアラビアガムの品質や分子特性を、乳化力、カプセル化力、結着性、保護コロイド性、またはフィルム形成性などの点において一様に調整し一定化し、安定した特性を発揮するA.seyal種由来の改質アラビアガムを提供することができる。かかる本発明の改質アラビアガムは、増粘材、カプセル基材、皮膜剤、または乳化剤として好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】図1AとBは、実験例1で調製したSample 1及びSample1/36を実験例1で述べたGPC−MALLSにかけて得られたクロマトグラムを示す。図1AはSample 1(未改質:天然アラビアガム)のクロマトグラムを、図1BはSample 1/36(加熱処理:改質アラビアガム)のクロマトグラムをBに示す。
【図2】図2は、A.seyal種に属するアラビアガム(未改質:天然アラビアガム)を実験例1で述べたGPC−MALLSにかけて得られたクロマトグラムを示す。
【図3】図3は、実験例2で調製したSample 2、Sample 2/24及びSample 2/48について、GPC−MALLSから求めた各サンプルの蛋白質分布を示すUV吸収プロファイル(波長214nm)を示す。
【図4】図4は、実験例2で調製したSample 2、Sample 2/24及びSample 2/48について、GPC−MALLSで得られた各サンプルの分子量分布を示す。
【図5】図5は、実験例8において、Sample 3、Sample 3/24及びSample 3/48について、定量可能な抗体(SYCC7)を用いて間接的競合ELISA法を行って得られた免疫学的阻害率%を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Acacia senegal種に属するアラビアガムを加熱することによって得られる重量平均分子量が90万以上の水溶性改質アラビアガム。
【請求項2】
重量平均分子量が150万以上である、請求項1記載の水溶性改質アラビアガム。
【請求項3】
重量平均分子量が200万以上である、請求項1記載の水溶性改質アラビアガム。
【請求項4】
Acacia senegal種に属するアラビアガムを加熱することによって得られるアラビノガラクタン蛋白質含量が17重量%以上である水溶性改質アラビアガム。
【請求項5】
アラビノガラクタン蛋白質含量が10重量%以上である、請求項1記載の水溶性改質アラビアガム。
【請求項6】
アラビアガムを定量可能な抗体を用いた間接的競合ELISA法において、Acacia senegal種に属する未改質アラビアガムと水溶性改質アラビアガムとの免疫学的阻害率の差が±10%以内である、請求項1または4に記載の水溶性の改質アラビアガム。
【請求項7】
Acacia seyal種に属するアラビアガムを加熱することによって得られる、重量平均分子量が250万以上の水溶性改質アラビアガム。
【請求項8】
Acacia seyal種に属するアラビアガムを加熱することによって得られる、蛋白含有高分子成分の含量が25重量%以上である水溶性改質アラビアガム。
【請求項9】
Acacia seyal種に属するアラビアガムを加熱することによって得られる、重量平均分子量が150万以上、蛋白含有高分子成分の含量が22重量%以上である水溶性改質アラビアガム。
【請求項10】
アラビアガムを定量可能な抗体を用いた間接的競合ELISA法において、Acacia seyal種に属する未改質アラビアガムと水溶性改質アラビアガムとの免疫学的阻害率の差が±10%以内である、請求項7乃至9のいずれかに記載の水溶性改質アラビアガム。
【請求項11】
Acacia senegal種に属するアラビアガムを110℃で10時間以上、またはこれと実質的に同じ効果を得ることができる条件下で加熱することによって得られる、請求項1および4のいずれかに記載する水溶性改質アラビアガム。
【請求項12】
Acacia seyal種に属するアラビアガムを110℃で10時間以上、またはこれと実質的に同じ効果を得ることができる条件下で加熱することによって得られる、請求項7乃至9のいずれかに記載する水溶性改質アラビアガム。
【請求項13】
Acacia senegal種に属するアラビアガムを110℃で10時間以上、またはこれと実質的に同じ効果を得ることができる条件下で加熱する工程を有する、請求項1および4のいずれかに記載の改質アラビアガムの調製方法。
【請求項14】
Acacia seyal種に属するアラビアガムを110℃で10時間以上、またはこれと実質的に同じ効果を得ることができる条件下で加熱する工程を有する、請求項7乃至9のいずれかに記載の改質アラビアガムの調製方法。
【請求項15】
有効成分として、請求項1、4、7、8及び9のいずれか1項に記載する改質アラビアガムを含有する乳化剤。
【請求項16】
有効成分として、請求項1および4のいずれか1項に記載する改質アラビアガムを含有する請求項15に記載の乳化剤。
【請求項17】
Acacia senegal種またはAcacia seyal種に属する天然のアラビアガムと異なる蛋白質分布、およびAcacia senegal種またはAcacia seyal種に属する天然のアラビアガムより高いアラビノガラクタン蛋白質含量を有する改質アラビアガムを有効成分として含む新しい乳化剤。
【請求項18】
請求項15に記載する乳化剤を用いて、疎水性物質を親水性溶媒に分散安定化することによって得られる、エマルション。
【請求項19】
O/WエマルションまたはW/O/Wエマルションである、請求項18に記載するエマルション。
【請求項20】
疎水性物質が可食性の疎水性物質である、請求項18に記載するエマルション。
【請求項21】
疎水性物質が、精油、オレオレジン、アブソリュート、油性香料、油性色素、油溶性ビタミン、C18−C22多価不飽和脂肪酸、動植物油脂、SAIB、及びC6-C12脂肪酸トリグリセライドよりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項18に記載のエマルション。
【請求項22】
請求項15に記載する乳化剤を用いて、疎水性物質を親水性溶媒に分散する工程を有する、エマルションの調製方法。
【請求項23】
請求項1、4、7、8及び9のいずれか1項に記載する改質アラビアガムを有効成分として含有する、増粘剤、皮膜剤、結合剤またはカプセル基剤。
【請求項24】
請求項1、4、7、8及び9のいずれか1項に記載する改質アラビアガムの、乳化剤の調製のための使用。
【請求項25】
請求項1、4、7、8及び9のいずれか1項に記載する改質アラビアガムの、エマルションの調製のための使用。
【請求項26】
請求項1、4、7、8及び9のいずれか1項に記載する改質アラビアガムの、増粘剤、皮膜剤、結合剤またはカプセル基剤の調製のための使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−522202(P2006−522202A)
【公表日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−507712(P2006−507712)
【出願日】平成16年4月7日(2004.4.7)
【国際出願番号】PCT/JP2004/005050
【国際公開番号】WO2004/089991
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(503129109)フィリップス ハイドロコロイド リサーチ リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】Phillips Hydrocolloids Research Limited
【住所又は居所原語表記】45 Old Bond Street, London W1S 4AQ, U.K.
【出願人】(000175283)三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 (429)
【Fターム(参考)】