説明

改質器

【課題】改質率を高くし得る改質器を提供する。
【解決手段】炭化水素系化合物を含む原料ガスから水素を含む改質ガスへ改質する改質器1であって、原料ガスを改質するための触媒が担持された平板2と、原料ガスを改質するための触媒が担持されかつ複数の孔3dが形成された波板3を有する。平板2と波板3が重ね合わせられて巻き回される。原料ガス及び/又は改質ガスが平板2と波板3の巻き回し中心側に供給可能な入口5eと、平板2と波板3の巻き回しの外周側において排出可能な出口6eとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素系化合物を含む原料ガスから水素を含む改質ガスへ改質する改質器に関する。
【背景技術】
【0002】
改質器は、原料ガスから水素を改質し、改質した水素を例えば燃料電池などに供給し、水素が燃料電池の燃料として利用される。改質器は、例えばハニカム構造の本体を有しており、本体内の通路の内壁面に触媒が担持されている。ハニカム構造を簡易に形成し得る構造として、従来、特許文献1〜3に記載の構造が知られている。この構造は、改質器ではないが、触媒が担持された平板と波板を重ね合わせて巻き回すことで形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−224716号公報
【特許文献2】特開2004−346800号公報
【特許文献3】特開平6−254403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これらハニカム構造の場合、平板と波板によって軸方向に延出する流路が複数形成され、この流路に沿ってガスが軸方向に流されている。特許文献3の構造によると、平板と波板に孔が形成されている。しかし、この孔はガスが触媒によって化学反応した際に生じた水を排出しやすくするためのものであって、ガスは軸方向に流される。そのためガスが触媒に接することができる経路が比較的短く、改質器において十分な改質率(水素取得率)を得ることが容易でない。そこで本発明は、改質率を高くし得る改質器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために本発明は、各請求項に記載の通りの構成を備える改質器であることを特徴とする。請求項1に記載の発明によると、改質器は、原料ガスを改質するための触媒が担持された平板と、原料ガスを改質するための触媒が担持されかつ複数の孔が形成された波板を有している。平板と波板が重ね合わせられて巻き回される。原料ガス及び/又は改質ガスが平板と波板の巻き回し中心側から供給可能な入口と、平板と波板の巻き回しの外周側において排出可能な出口とを有している。
【0006】
したがって、ガス(原料ガス及び/又は改質ガス)は、波板に形成された孔を通ることで平板に沿って渦巻き状に流れる。渦巻き状に流れるガスは、その流れに対面する波板に当りやすく、波板に当ることで改質されやすい。またガスは、孔を通過する際に拡散と混合がなされ、未反応である原料ガスが平板または波板に担持された触媒に接触しやすい。これにより原料ガスが改質ガスに改質されやすい。また改質器は、平板と波板が重ね合わせられて巻き回されることでハニカム構造が構成される。そのため、ハニカム構造は比較的容易に形成され得る。
【0007】
請求項2に記載の発明によると、平板に孔が形成されている。したがって、平板の孔によって改質器における圧力損失を小さくすることができる。また平板の孔によってガスがショートカットして径方向外方に排出され得るため、改質器の流路内のガス流速を遅くし得る。これにより、ガスの供給量が多い場合等においてガス流速を好適な速度にし得る。例えば、改質に必要な熱の需要と供給のバランスを考慮したガス流速に設定することができる。
【0008】
請求項3に記載の発明によると、熱供給体を有しており、熱供給体の周りに平板と波板が巻き回されている。したがって、熱供給体を軸中心として平板と波板が容易に巻き回され得る。また熱は、平板と波板の巻き回しの軸中心側から外周側に伝わる。そのため、熱供給体が平板の巻き回しの外周側に設けられる場合等に比べて、熱が改質器の外部に放出される量が少なくなり、熱効率が高くなる。
【0009】
また熱供給体が軸中心側に位置するために、平板と波板の温度は、熱供給体に近い軸中心側において高く、外周側で低い。これに対してガスを改質するために必要な熱量は、原料ガスの濃度が高い軸中心側で高く、原料ガスの濃度が低い外周側で低い。そのため、熱の需要と供給のバランスが近似し、熱が効率良く原料ガスの改質に利用され得る。
【0010】
請求項4に記載の発明によると、平板と波板は、それぞれ複数枚から構成され、平板と波板が交互に重ね合わせられて巻き回され、平板と波板が熱供給体から延出している。したがって熱は、熱供給体から各平板と各波板に沿って外周側へ伝わる。そのため、平板と波板を各一つ有する場合に比べて、熱が軸中心側から外周側へ伝わりやすい。これにより外周側の温度が高くなり、改質率が向上され得る。また、ガスの流れる流路長を短く出来るため、圧損を低減したり、ガス流速を調整したりすることができる。
【0011】
請求項5に記載の発明によると、平板と波板の巻き回しの軸方向の第一の端部に第一の端部を覆う第一の蓋が設けられており、第一の端部と反対側に位置する平板と波板の巻き回しの軸方向の第二の端部に第二の端部を覆う第二の蓋が設けられている。第一の蓋には、平板と波板の巻き回しの中心側で開口する入口が設けられ、第二の蓋には、平板と波板の巻き回しの外周側で開口する出口が設けられている。したがって、ガスは、第一と第二の蓋によって平板と波板に対して軸方向に貫通することが規制されて、平板に沿って渦巻き状に流れ得る。そして渦巻き状に流れるガスは、その流れに対面する波板に当りやすく、波板に当ることで改質されやすい。またガスは、平板に形成された孔を通過する際に拡散と混合がなされ、未反応である原料ガスが平板または波板に担持された触媒に接触しやすい。これにより原料ガスが改質ガスに改質されやすい。そして改質ガスを含むガスが第二の蓋に形成された出口から排出される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の改質器によれば、未反応である原料ガスが平板または波板に担持された触媒に接触しやすくなり、原料ガスは改質ガスへ改質されやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】燃料電池システムの概略構成図である。
【図2】改質器の概略斜視図である。
【図3】改質器の一部斜視図である。
【図4】改質器の一部分解斜視図である。
【図5】ガス流れを示す図である。
【図6】他の実施の形態にかかる改質器の一部分解斜視図である。
【図7】他の実施の形態にかかるガス流れを示す図である。
【図8】他の実施の形態にかかる改質器の一部上面図である。
【図9】他の実施の形態にかかる改質器の一部上面図である。
【図10】図9のX部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一つの実施の形態を図1〜6にしたがって説明する。図1に示すように燃料電池システム10は、原燃料タンク12、水タンク13、気化器14、改質器1、燃料電池11および制御装置16を有している。原燃料タンク12には、炭化水素系燃料であるメタノールなどの原燃料が貯蔵される。水タンク13には、改質反応に供する水が貯留される。原燃料と水は、ポンプ17,18によって原燃料タンク12と水タンク13から吸い上げられ、混合された状態で気化器14に供給される。
【0015】
気化器14は、原燃料と水の混合物を気化しかつ所定の温度に昇温する。気化器14は、バーナ14aを有しており、バーナ14aは、原燃料タンク12からポンプ19によって供給されたメタノールを燃焼すること、もしくは、(図1の点線で示すように)燃料電池で未反応の水素ガス(オフガス)を燃焼することで熱を生成する。制御装置16は、ポンプ17,18を制御することで気化器14へ供給される原燃料と水の割合を調整する。また制御装置16は、ポンプ19を制御することで気化器14において昇温される原料ガス(原燃料と水の混合気)の温度を所定温度(例えば260±40℃)に調整する。
【0016】
改質器1は、原料ガスを改質して水素リッチの改質ガスを生成する装置であって、例えば、メタノールを水蒸気改質反応によって水素と二酸化炭素に改質する。
CH3OH+H2O→3H2+CO2−49.7kJ/mol…(式1)
改質器1から排出されたガスには、微量な一酸化炭素が含まれており、CO低減装置15を介して燃料電池11に供給される。CO低減装置15は、選択酸化反応等を利用して一酸化炭素を低減する。燃料電池11は、改質器1によって得られた水素と図示省略のコンプレッサによって供給された空気に含まれる酸素を反応させて発電する。発電された電力は、例えば電気自動車の動力用電力または自家発電装置の供給電力に利用され得る。なお燃料電池11で未反応の水素ガスは、(図1の点線で示すように)気化器14に戻しても良い。
【0017】
改質器1は、図3,4に示すように熱供給体4と、熱供給体4の外周に巻き回された平板2と波板3を有している。平板2と波板3は、板幅はほぼ同じで、ステンレス鋼などの金属製であって、平板2と波板3の両面には改質触媒が担持されている。平板2は、一端部2aが熱供給体4に係止され、熱供給体4の外周に渦巻き状(螺旋状)に巻き回される。
【0018】
波板3は、図3,4に示すように所定間隔において厚み方向に屈曲しており、屈曲部3b,3cを有している。屈曲部3b,3cは、軸方向に延出している。波板3は、一端部3aが熱供給体4に係止されて、平板2と重ね合わせられ、平板2とともに熱供給体4の外周に渦巻き状(螺旋状)に巻き回される。屈曲部3b,3cは、平板2の内周面2bまたは外周面2cに当接し、ろう材によって内周面2bまたは外周面2cに接合される。
【0019】
ろう材を波板3に設ける方法は、先ず屈曲部3bの外周面と屈曲部3cの内周面に「バインダ」を塗布する。次に波板3にろう材を振り掛け(印刷し)、これによりろう材は「バインダ」が塗布された位置にのみに残る。ろう材が熱によって溶かされることで波板3が平板2に接合(ろう付け)される。平板2の外周端部2eは、図3に示すようにその内周側に位置する平板2の外周面に貼り付けられる。これにより平板2と波板3は、円柱状に巻き回されて一体とされ、ハニカム構造を構成する。
【0020】
図4,5に示すように波板3には複数の孔3dが形成されている。孔3dは、四角形であって波板3を厚み方向に貫通している。孔3dの径は、例えば0.1〜1mmであって波板3の波幅よりも小さい。孔3dは、巻き回し方向と軸方向に所定間隔で複数形成されている。波板3は、孔3dを形成した後に波状に曲げられる。波板3は、屈曲部3b,3cの間に略平面の連結部3e,3fを有し、各連結部3e,3fに複数の孔3dが配設される。連結部3e,3fは、平板2に対して傾斜し、かつ連結部3e,3f同士が傾斜している。
【0021】
図2,3に示すように熱供給体4は、電気ヒータであって本体部4aと電源線4bを有している。本体部4aは、電源線4bから供給された電流によってジュール熱を発する。本体部4aの温度は、改質反応に適切な温度(例えば250〜300℃)に設定される。熱は、本体部4aから平板2と波板3に沿って渦巻き方向に伝わり、かつ平板2と波板3が接合する部分によって放射線状(径方向)にも伝わる。これにより熱は、改質器1の軸中心側から外周側へ伝わる。
【0022】
図2に示すように改質器1は、ガスの入口となる入口ケース5と、ガスの出口となる出口ケース6を有している。入口ケース5は、円盤状の蓋(第一の蓋)5aと、円筒状の入口管5cを有している。蓋5aの中心部には、入口5eが形成されており、入口5eの下側に入口管5cが接続される。入口5eは、熱供給体4の直径よりも大きく、平板2と波板3の巻き回し中心側の下部を開口する。
【0023】
出口ケース6は、図2に示すように中空円柱状であって円盤状の上下の蓋6a,6bと、円筒状の側壁部6cを有している。上の蓋6aには、ガスが排出される出口管6dが接続される。側壁部6cは、上端部が蓋6aの外周縁に接続され、下端部が平板2の最も外周側に位置する外周面に接続される。下の蓋(第二の蓋)6bは、側壁部6cの直径よりも小さく、これによって蓋6bと側壁部6cの間に出口6eが形成される。出口6eは、環状であって、平板2と波板3の巻き回し外周側の上部を開口する。
【0024】
図3に示すように平板2と波板3によって軸方向に延出する複数の流路7(7a,7b)が形成される。流路7は、波板3に形成された孔3dによって連通されている。したがって、図2,3に示すようにガス(原料ガス)が入口管5cから入口ケース5に供給され、入口5eを通って軸中心近傍に位置する流路7aに供給される。流路7aに供給されたガスは、流路7aに沿って矢印8a方向(軸方向)に流れる。そして波板3の孔3dを通って平板2に沿って、矢印8b方向の渦巻き方向に流れる。ガスが外周側に位置する流路7bに到達すると出口6eを通って矢印8c方向(軸方向)に流れ、出口ケース6に供給される。そしてガスが出口管6dから改質器1の外に排出される。
【0025】
図3に示すように熱供給体4からの熱は、平板2と波板3によって改質器1の軸中心側から外周側に伝わる。そのため、改質器1の温度は、軸中心側において高く、外周部において低い。外周部における温度は、改質器1に供給されるガスの温度よりも低く、例えば、200〜250℃になることが好ましい。これにより改質器1から排出されるガスに含まれるCO量を抑制し得る。すなわちCO平衡反応(式2)の特性から出口側のガス温度を低くすることでCO量を減らすことができる。その結果、後段の燃料電池の触媒にCOが付着(被毒)することを抑制し得る。
CO+H2O ⇔ CO2+H2+41.2kJ/mol(発熱)…(式2)
【0026】
図2に示すようにガスは、改質器1の軸中心側に供給され(矢印8a参照)、軸中心側から外周側に渦巻き方向に流れる(矢印8b参照)。そして、ガスは、平板2と波板3の表面を流れることで、平板2と波板3から熱を受けつつ触媒に接して、原料ガスが改質ガスに改質される。そして、ガスは、改質器1の外周側にて排出される(矢印8c参照)。改質器1の外周部には、図への記載は省略しているが、断熱構造が設けられている。断熱構造は、ガラス繊維などの断熱材、あるいは真空部分を形成する二層構造を有し、改質器1内の熱が外部へ放出されることを防止する。
【0027】
以上のように改質器1は、図4に示すように平板2と、孔3dが形成された波板3を有し、平板2と波板3が重ね合わせられて巻き回される。また、改質器1は、原料ガスを含むガスが平板2と波板3の巻き回し中心側から供給可能な入口5eと、改質ガスを含むガスが平板2と波板3の巻き回しの外周側において排出可能な出口6eとを有している。
【0028】
したがって、ガス(原料ガス及び/又は改質ガス)は、波板3に形成された孔3dを通ることで平板2に沿って渦巻き状に流れる。渦巻き状に流れるガスは、その流れに対面する波板3に当りやすく、波板3に当ることで改質されやすい。また図5に示すようにガスは、孔3dを通過する際に圧縮されかつ膨張する。そのため、ガスが拡散されかつ混合されて、未反応である原料ガスが平板2または波板3に担持された触媒に接触しやすい。これにより原料ガスが改質ガスへ改質されやすい。また改質器1は、平板2と波板3が重ね合わせられて巻き回されることでハニカム構造が構成される。そのため、ハニカム構造が比較的容易に形成され得る。
【0029】
また改質器1は、図3に示すように熱供給体4を有しており、熱供給体4の周りに平板2と波板3が巻き回されている。したがって、熱供給体4を軸中心として平板2と波板3が容易に巻き回され得る。また熱は、平板2と波板3の巻き回しの軸中心側から外周側に伝わる。そのため、熱供給体4が平板2の巻き回しの外周側に設けられる場合等に比べて、熱が改質器1の外部に放出される量が少なくなり、熱効率が高くなる。
【0030】
また図3に示すように熱供給体4が軸中心側に位置するために、平板2と波板3の温度は、熱供給体4に近い軸中心側において高く、外周側で低い。これに対してガスを改質するために必要な熱量は、原料ガスの濃度が高い軸中心側で高く、原料ガスの濃度が低い外周側で低い。そのため熱の需要と供給のバランスが近似し、熱が効率良く原料ガスの改質に利用され得る。
【0031】
また改質器1は、図2に示すように平板2と波板3の巻き回しの軸方向両端部に各端部を覆う蓋5a,6bが設けられている。蓋5aには、平板2と波板3の巻き回しの中心側を開口する入口5eが設けられ、蓋6bには、平板2と波板3の巻き回しの外周側を開口する出口6eが設けられ、ガスが入口5eから供給され、平板2に沿って渦巻き状に流れ、出口6eから排出される。したがって、ガスは、蓋5a,6bによって平板2と波板3に対して軸方向に貫通することが規制され、平板2に沿って渦巻き状に流れ得る。
【0032】
また図5に示すように孔3dは、波板3の連結部3e,3fに形成されている。そのため、孔3dを貫通したガスは、ガス流れに斜めに対面する平板2または連結部3e,3fに対して当りやすい。その結果ガスは、平板2または連結部3e,3fに担持された触媒によって改質されやすい。
【0033】
図3,4に示すように平板2によって区画されるガス流路は、軸方向に分割されておらず、ガスは、平板2に沿って軸方向に流れ得る。そのため、ガス流路が軸方向に分割される形態に比べて、原料ガスの濃度差が軸方向に生じ難い。その結果ガスは、均一に改質されやすく、これにより改質率が向上する。
【0034】
(他の実施の形態)
本発明は、上記実施の形態に限定されず、以下の形態等であっても良い。例えば、図4に示す平板2には孔が形成されていない。しかし、図6に示すように平板2に複数の孔2dが形成されていても良い。孔2dは、四角形であって平板2を厚み方向に貫通している。これによりガスは、図7に示すように平板2に形成された孔2dを通って径方向(矢印8e方向)に流れ得る。同時にガスは、波板3に形成された孔3dを通って平板2に沿って渦巻き方向(矢印8d方向)にも流れ得る。
【0035】
したがって、平板2の孔2dによって改質器1における圧力損失を小さくすることができる。また平板2の孔2dによってガスがショートカットして径方向外方に排出され得るため、改質器1の流路内のガス流速を遅くし得る。これによりガスの供給量が多い場合等においてガス流速を好適な速度にし得る。例えば、改質に必要な熱の需要と供給のバランスを考慮したガス流速に設定することができる。
【0036】
また図3に示す改質器1は、平板2と波板3を各一つ有している。しかし、図8に示すように改質器1が複数(例えば第一9aと第二9bの二つ)の平板2と波板3を有していても良い。平板2と波板3は、一端部が熱供給体4に係合され、平板2と波板3が交互に重ね合わせられ、熱供給体4に巻き回される。ガスは、第一9aの波板3に形成された孔3dを通ることで平板2間を矢印9c方向に流れ、第二9bの波板3に形成された孔3dを通ることで平板2間を矢印9d方向に流れる。
【0037】
図8に示すように平板2と波板3のそれぞれが熱供給体4から延出している。したがって、熱は、熱供給体4から各平板2と各波板3に沿って外周側へ伝わる。そのため、平板2と波板3を各一つ有する場合に比べて、熱が軸中心側から外周側へ伝わりやすい。これにより外周側の温度が高くなり、改質率が向上され得る。また複数の平板2と複数の波板3が巻き回されるために、一つの平板2と一つの波板3が巻き回される場合に比べて、各平板2と波板3の曲率が小さくなる。これにより平板2と波板3を大きく曲げる必要がなくなる。
【0038】
また図3に示す改質器1は、電気ヒータである熱供給体4を有している。しかし、図3に示す熱供給体4に代えて、図9,10に示すように改質器1が平板2及び/又は波板3自体を発熱させる熱供給体20を有していても良い。改質器1は、軸中心に軸部材21を有しており、軸部材21の周りに平板2と波板3が重ねて巻き回される。平板2または波板3の巻き回しの中心側端部20aには+電極が接続され、巻き回しの外周側端部20bには―電極が接続される。
【0039】
図10に示すように平板2の外周面と内周面(または両方合わせて「表面」)に絶縁膜20cが設けられている。絶縁膜20cは、アルミナ等であって、例えば平板2の外周面と内周面(または両方合わせて「表面」)を酸化させることで形成される。絶縁膜20cの外周面には改質触媒が担持されている。平板2と波板3は、導電性を有しており、中心側端部20aと外周側端部20bの間に電圧を加えることで、平板2と波板3を流れる電流によってジュール熱が発生する。そのため改質器1の軸中心に熱供給体を設ける必要がなく、これによって改質器1の直径を小さくし得る。
【0040】
図3に示す平板2は、外周端部2eがその内周側に位置する平板2の外周面に貼り付けられている。そのため外周端部2eからガスが排出されることが防止されている。しかし、平板2の外周端部2eがその内周側に位置する平板2の外周面に接続されず、外周端部2eとその内周側に位置する平板2の外周面との間に開口部が形成され、該開口部から排出されガスが平板2の外周側に配設されたケースによって回収される形態であっても良い。
【0041】
図2に示す熱供給体4は、電気ヒータであるが、高温ガスが供給される配管であっても良い。高温ガスは、例えば、気化器14(図1参照)あるいは燃料電池11からの排気ガスをバーナで燃焼させることで所定の温度に設定される。あるいは未反応水素ガスを配管の内壁面に担持された触媒によって燃焼させることで所定の温度に設定される。熱供給体が電気ヒータの場合には、温度制御が容易であり、高温ガスの場合にはエネルギー効率が高くなる。
【0042】
図4,6に示す孔2d,3dは、四角形であるが、円形あるいは他の矩形(三角形、五角形等)などであっても良い。図9,10に示す絶縁膜20cは、平板2の外周面に設けられている。しかし、絶縁膜が平板2の内周面に設けられても良いし、または波板3の外周面または内周面に設けられても良い。
【0043】
図1に示す改質器1に供給される原料ガスには、炭化水素系燃料としてメタノールが含まれている。しかし、メタノールに代えて、例えばエタノール、メタン、天然ガス(プロパン等)やガソリンなどの他の炭化水素系燃料が含まれていても良い。
【0044】
図1に示す改質器1には、原料ガスのみが供給されている。しかし、改質器1に原料ガスと改質ガスの混合ガスが供給、あるいは、改質ガスのみが供給されても良い。例えば、ある程度反応させてから、原料ガスの供給を止めて、改質ガスのみを循環させる形態、あるいは、他の改質器から発生した改質ガスのみを供給する形態などであっても良い。
【0045】
図3に示す改質器1は、平板2間(あるいは波板3間)の間隔(径方向の間隔)がほぼ等しい螺旋構造になっている。しかし、平板2の径方向の間隔が中心側で小さく、徐々に外周側に向けて大きくなる螺旋構造であっても良い。例えば、平板2が径方向内側に隣接する平板2に対して所定の角度を有する等角螺旋構造であっても良い。これにより、改質反応がすすむにつれてガスの体積が膨張するものの、ガスの流速を一定に、あるいは徐々に遅くすることができる。その結果、改質率をさらに向上させるができる。
【0046】
図4,6に示す各孔3d(あるいは各孔2d)の大きさは、ほぼ同じ大きさに設定されている。しかし改質器1の軸中心側に位置する孔3d(あるいは孔2d)の大きさを小さくし、外周側に位置する孔3d(あるいは孔2d)の大きさを大きく設定する形態であっても良い。これにより、改質反応がすすむにつれてガスの体積が膨張するものの、ガスの圧力が略一定に設定され得る。その結果、圧力損失を小さくすること等ができる。
【符号の説明】
【0047】
1…改質器
2…平板
2d,3d…孔
3…波板
3b,3c…屈曲部
4,20…熱供給体
5e…入口
5…入口ケース
5a,5b,6a,6b…蓋
6…出口ケース
6e…出口
10…燃料電池システム
11…燃料電池
12…原燃料タンク
13…水タンク
14…気化器
16…制御装置
20c…絶縁膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素系化合物を含む原料ガスから水素を含む改質ガスへ改質する改質器であって、
前記原料ガスを改質するための触媒が担持された平板と、前記原料ガスを改質するための触媒が担持されかつ複数の孔が形成された波板を有し、
前記平板と前記波板が重ね合わせられて巻き回され、
前記原料ガス及び/又は前記改質ガスが前記平板と前記波板の巻き回し中心側から供給可能な入口と、前記平板と前記波板の巻き回しの外周側において排出可能な出口とを有することを特徴とする改質器。
【請求項2】
請求項1に記載の改質器であって、
前記平板に孔が形成されていることを特徴とする改質器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の改質器であって、
熱供給体を有しており、前記熱供給体の周りに前記平板と前記波板が巻き回されていることを特徴とする改質器。
【請求項4】
請求項3に記載の改質器であって、
前記平板と前記波板は、それぞれ複数枚から構成され、前記平板と前記波板が交互に重ね合わせられて巻き回され、前記平板と前記波板が前記熱供給体から延出していることを特徴とする改質器。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一つに記載の改質器であって、
前記平板と前記波板の巻き回しの軸方向の第一の端部に前記第一の端部を覆う第一の蓋が設けられており、前記第一の端部と反対側に位置する前記平板と前記波板の巻き回しの軸方向の第二の端部に前記第二の端部を覆う第二の蓋が設けられており、前記第一の蓋には、前記平板と前記波板の巻き回しの中心側で開口する入口が設けられ、前記第二の蓋には、前記平板と前記波板の巻き回しの外周側で開口する出口が設けられていることを特徴とする改質器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−79691(P2011−79691A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232221(P2009−232221)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【出願人】(306032316)新日鉄マテリアルズ株式会社 (196)
【Fターム(参考)】