説明

改質多孔質支持体膜及びその製造方法

【課題】 多孔質支持体膜の孔径を小さくした改質多孔質支持体膜及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 少なくとも、孔径構造を有する多孔質支持体膜、及び、該支持体膜を形成する物質とは異質の高分子からなる改質多孔質支持体膜の製造方法であって、該支持体膜内部に、該高分子を溶媒に溶解した高分子溶液を透過させる透過工程、及び、該支持体膜の該孔径構造表面に付着した該溶液から溶媒を蒸発させることにより、該高分子が付着した高分子付着層を該孔径構造表面に形成する高分子付着工程を含むことを特徴とする改質多孔質支持体膜の製造方法、並びに、改質多孔質支持体膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改質多孔質支持体膜及びその製造方法に関する。より詳しくは分離膜、ろ過材料、フィルム、薄膜及び基板等として好適に用いることのできる改質多孔質支持体膜及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質膜は、現在、水処理、バイオ、食品、医療、診断、半導体、理化学分析等の多くの分野で用いられ、例えば、海水の淡水化、半導体工業用や医薬品用超純水の製造、各種排水処理、排水中の有価物質の回収、液体食品の濃縮等極めて広い工業分野で大規模に使用されている。多孔質膜の製造方法としては、種々の方法が知られており、例えば、特許文献1及び2等のような方法が挙げられる。
一般に、多孔質膜はその孔径を所望の大きさにすることで分離能等を調製することができるが、多孔質膜の孔径が小さくなるにつれてその製造は困難になり、また、製造コストが高くなるという問題点を有する。
【0003】
【特許文献1】特開平5−237350号公報
【特許文献2】特開2003−305347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、多孔質支持体膜の孔径を小さくした改質多孔質支持体膜及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明が解決しようとする上記課題は、以下に示す<1>及び<7>により解決された。好ましい実施態様である<2>〜<6>とともに以下に示す。
<1> 少なくとも、孔径構造を有する多孔質支持体膜、及び、該支持体膜を形成する物質とは異質の高分子からなる改質多孔質支持体膜の製造方法であって、該支持体膜内部に、該高分子を溶媒に溶解した高分子溶液を透過させる透過工程、及び、該支持体膜の該孔径構造表面に付着した該溶液から溶媒を蒸発させることにより、該高分子が付着した高分子付着層を該孔径構造表面に形成する高分子付着工程を含むことを特徴とする改質多孔質支持体膜の製造方法、
<2> 該多孔質支持体膜が、相対する2つの外表面の近傍にある2つの表面領域、及び、これら2つの表面領域に挟まれ、かつ、表面領域の孔径よりも小さい孔径である内部領域からなる三層構造を有する膜であり、該高分子付着工程において該内部領域における孔径構造表面に該高分子が付着し、該改質多孔質支持体膜の孔径が、改質前の多孔質支持体膜の孔径よりも小さい上記<1>に記載の改質多孔質支持体膜の製造方法、
<3> 改質該多孔質支持体膜の孔径が、2nm〜1μmである上記<2>に記載の改質多孔質支持体膜の製造方法、
<4> 該多孔質支持体膜が、親水性ポリビニリデンフルオライド(HP−PVDF)、疎水性ポリビニリデンフルオライド(HB−PVDF)、及び、ナイロンよりなる群から選ばれた1つからなる上記<1>〜<3>のいずれか1つに記載の改質多孔質支持体膜の製造方法、
<5> 該高分子が、ポリ(1−トリメチルシリル−1−プロピン)(PTMSP)又はポリイミドである上記<1>〜<4>のいずれか1つに記載の改質多孔質支持体膜の製造方法、
<6> 該高分子溶液の濃度が、0.01〜10重量%である上記<1>〜<5>のいずれか1つに記載の改質多孔質支持体膜の製造方法、
<7> 少なくとも、孔径構造を有する多孔質支持体膜、及び、該支持体膜を形成する物質とは異質の高分子からなる改質多孔質支持体膜であって、該改質多孔質膜が、相対する2つの外表面の近傍にある2つの表面領域、及び、これら2つの表面領域に挟まれた内部領域からなる三層多孔質構造を有し、該内部領域における孔径構造表面に該高分子が付着し、該改質多孔質支持体膜の孔径が、改質前の多孔質支持体膜の孔径よりも小さいことを特徴とする改質多孔質支持体膜。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、撥水性や表面張力などの多孔質支持体膜の表面特性を損なうことなく孔径のみを小さくでき、かつ、低コストである改質多孔質支持体膜及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の改質多孔質支持体膜は、少なくとも、孔径構造を有する多孔質支持体膜、及び、該支持体膜を形成する物質とは異質の高分子からなる改質多孔質支持体膜であって、該改質多孔質支持体膜が、相対する2つの外表面の近傍にある2つの表面領域、及び、これら2つの表面領域に挟まれた内部領域からなる三層多孔質構造を有し、該内部領域における孔径構造表面に該高分子が付着し、該改質多孔質支持体膜の孔径が、改質前の多孔質支持体膜の孔径よりも小さいことを特徴とする。
以下、本発明の改質多孔質支持体膜、及び、その製造方法を詳細に説明する。
【0008】
(改質多孔質支持体膜)
本発明の改質多孔質支持体膜は、少なくとも、孔径構造を有する多孔質支持体膜、及び、該支持体膜を形成するとは異質の高分子からなる。
本発明に用いることのできる多孔質支持体膜において、相対する2つの外表面の近傍にある2つの「表面領域」とし、これら2つの表面領域に挟まれた領域を「内部領域」とする。また、「外表面」とは、外部に面する膜厚方向に垂直な面である。
「孔径構造」とは、後述する図1及び図2に示すように、多くの細孔が不定形の網目状に形成されている構造をいう。細孔は、全てが一定の形状である必要はなく、1つ1つの細孔がそれぞれどのような形状であってもよい。
【0009】
本発明に用いることのできる多孔質支持体膜は、その内部領域の孔径構造表面に異質の高分子を付着させることができるものであれば特に制限はなく、無機及び有機多孔質膜を用いることができるが、その中でも、有機多孔質膜が好ましい。
有機多孔質膜の材質としては、公知のものを用いることができ、例えば、ポリオレフィン、フッ素系ポリマー、ポリスルホン、ポリビニルアセタール、ポリアクリル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリケトン、シリコーン、ポリ乳酸、セルロース系ポリマー、又は、キトサン系ポリマー等が挙げられる。その中でも、フッ素系ポリマー、ポリアミド又はポリイミドであることが好ましく、親水性ポリビニリデンフルオライド(HP−PVDF)、疎水性ポリビニリデンフルオライド(HB−PVDF)又はナイロンであることが特に好ましい。
無機多孔質膜の材質としては、公知のものを用いることができ、例えば、シリカ、アルミナ、ゼオライト、セラミック、又は、ガラス等が挙げられる。
本発明に用いることのできる多孔質支持体膜として、具体的には、例えば、ミリポア社製多孔質膜を好ましく挙げることができる。
また、本発明に用いることのできる多孔質支持体膜としては、該内部領域の孔径(ポアサイズ)が該表面領域の孔径より小さい三層構造を有する多孔質支持体膜であることが好ましい。多孔質支持体膜において、内部領域の孔径(ポアサイズ)が該表面領域の孔径より小さいと、該内部領域にて高分子溶液が付着しやすく、高分子の付着した内部領域を形成しやすいため好ましい。
【0010】
多孔質支持体膜の孔径(ポアサイズ)としては、特に制限はないが、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜2μmがより好ましく、10〜250nmが更に好ましい。なお、多孔質支持体膜の孔径(ポアサイズ)とは、該支持体膜中の最も孔径が小さい部分の孔径を意味するものとする。
多孔質支持体膜の厚さとしては、特に制限はないが、10μm〜10mmであることが好ましく、10μm〜1mmがより好ましく、100〜500μmが更に好ましい。
【0011】
本発明に用いることのできる該支持体膜と異質の高分子(以下、「異質の高分子」、又は、単に「高分子」ともいう。)としては、該支持体膜の材質と異なる高分子であり、該支持体膜の材質が難溶又は不溶である有機溶媒の少なくとも1つに可溶な高分子であれば特に制限はなく、例えば、ポリオレフィン、ポリアセチレン、フッ素系ポリマー、ポリスルホン、ポリビニルアセタール、ポリアクリル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリケトン、シリコーン、ポリ乳酸、セルロース系ポリマー、又は、キトサン系ポリマー等が挙げられる。
その中でも、ポリ(1−トリメチルシリル−1−プロピン)(PTMSP:poly(1-trimethylsilyl-1-propyne))又はポリイミドであることがより好ましく、ポリ(1−トリメチルシリル−1−プロピン)(PTMSP)、poly(6FDA−DABA)又はpoly(6FDA−TeMPD)であることが特に好ましい。
なお、「6FDA」とは「4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物(4,4'-(hexafluoroisopropylidene)diphthalic anhydride)」の略称であり、「DABA」とは「3,5−ジアミノ安息香酸(3,5-diaminobenzoic acid)」の略称であり、「TeMPD」とは「2,3,5,6−テトラメチル−1,4−フェニレンジアミン(2,3,5,6-tetramethyl-1,4-phenylenediamine)」の略称であり、また、PTMSP、poly(6FDA−DABA)及びpoly(6FDA−TeMPD)は下記の構造のポリマーである。
【0012】
【化1】

【0013】
本発明に用いることのできる高分子の製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
前記PTMSPの合成方法としては、具体的には、例えば、モノマーである1−トリメチルシリル−1−プロピンをトルエン:メタノール=4:1混合溶液に溶解し、触媒として五塩化タンタルを用いて合成することができ、また、T. Masuda, E. Isobe, and T. Higashimura, J. Am. Chem. Soc., 105, 7473 (1983), T. Masuda, E. Isobe, and T. Higashimura, Macromolecules, 18, 841-845 (1985), K. Nagai, T. Masuda, T. Nakagawa, B. D. Freeman, and I. Pinnau, Prog. Polym. Sci. 26, 721-798 (2001)等に記載の方法等を用いて合成することができる。
前記poly(6FDA−DABA)又はpoly(6FDA−TeMPD)の合成方法としては、具体的には、例えば、N−メチル−2−ピロリドンやジメチルアセトアミド等の適当な極性有機溶媒に、モノマーであるDABA又はTeMPDと6FDAとを溶解し、無水酢酸及び無水酢酸に対し小過剰のピリジンを添加して反応させる方法等を用いて合成することができる。
異質の高分子としては、高分子を1種類のみ用いても、2種類以上の高分子を併用してもよい。
異質の高分子には、用いた溶媒や水等の不純物が少量含まれていてもよく、また、必要に応じ、粘度調整剤、無機材料、オリゴマー、可塑剤、顔料、及び、充填剤等の公知の添加剤を含んでいてもよい。
【0014】
本発明の改質多孔質支持体膜は、該改質多孔質支持体膜の外表面の近傍にある少なくとも1つの表面領域、及び、その表面領域と接する内部領域を有する改質多孔質支持体膜であり、相対する2つの外表面の近傍にある2つの表面領域、及び、これら2つの表面領域に挟まれた内部領域とを有する改質多孔質支持体膜であることが好ましい。また、該内部領域は、膜内部における表面領域と接する領域を意味し、表面領域が膜の表裏に2つ存在する場合には、2つの該表面領域に挟まれた領域を意味する。
【0015】
本発明の改質多孔質支持体膜を、図面を参照しながら以下に説明する。
図1は、本発明の改質多孔質支持体膜の一実施態様において、走査型電子顕微鏡(SEM)による改質多孔質支持体膜断面の拡大図であり、また、図2は、図1の改質多孔質支持体膜に用いた高分子が付着していない使用前の多孔質支持体膜において、走査型電子顕微鏡(SEM)による多孔質支持体膜断面の拡大図である。
図1の改質多孔質支持体膜では、図2との比較からもわかるように、高分子が支持体内部表面に付着した内部領域1が形成されており、その上下の表面領域2には高分子がほとんど付着しておらず、表面領域2−内部領域1−表面領域2の三層多孔質構造が形成されている。
本発明の改質多孔質支持体膜は、該改質多孔質支持体膜の孔径が、高分子の付着していない該支持体膜の孔径よりも小さく、かつ、表面領域−内部領域−表面領域の三層多孔質構造となっていることがより好ましく、該内部領域の孔径が該表面領域の孔径よりも小さいことがさらに好ましい。
【0016】
また、本発明の改質多孔質支持体膜における内部領域は、異質の高分子が該支持体膜の孔径構造表面に付着している領域であることが好ましい。
本発明の改質多孔質支持体膜は、内部領域のみに異質の高分子が付着していることが好ましいが、得られた改質多孔質支持体膜と多孔質支持体膜とを比較して表面特性が大きく変化しない限り表面領域に少量の高分子が付着していてもよく、表面領域における異質の高分子の付着量が少ないほどより好ましい。
本発明の改質多孔質支持体膜では多孔質支持体膜に高分子を付着させるため、高分子の付着した内部領域を形成する前後における単位面積あたりの重量変化(高分子の付着量)は、本発明の改質多孔質支持体膜を評価する一つの指標となりうる。
高分子の付着量は、多孔質支持体膜の孔径、膜厚、用いる溶媒、高分子溶液の濃度及び透過溶液量等に大きく依存し、これらの値を適宜調整することで所望量の高分子が付着した改質多孔質支持体膜を得ることができる。
【0017】
本発明の改質多孔質支持体膜は、その孔径が改質前の該支持体膜の孔径よりも小さい改質多孔質支持体膜である。なお、本発明の改質多孔質支持体膜の孔径とは、高分子が付着した内部領域の孔径をいう。
本発明の改質多孔質支持体膜の孔径としては、用いた多孔質支持体膜の孔径よりも小さければ特に制限はないが、1nm〜5μmであることが好ましく、2nm〜1μmがより好ましく、2〜300nmが更に好ましい。
本発明の改質多孔質支持体膜は、使用する多孔質支持体膜の膜断面の中央部分(内部領域)にだけ異質の高分子を付着させるため、高分子の使用量が少量でありコストを低く抑えられるだけでなく、表面付近には異質の高分子が付着していない、又は、極微量しか付着していないため、撥水性や表面張力などの多孔質支持体の表面特性をほとんど損なうことなく、その孔径を小さくすることができる。
本発明の改質多孔質支持体膜における内部領域は、その孔径構造表面に異質の高分子が付着しているが、内部領域全体として均一に付着している必要はなく、その一部に付着していない部分があってもよく、付着量の多い部分と少ない部分が混在していてもよい。また、内部領域の孔径構造における一部の孔部分が、異質の高分子により閉塞されていてもよい。
本発明の改質多孔質支持体膜の製造方法としては、膜中に高分子の付着した内部領域を形成することができれば特に制限はないが、後述する製造方法により製造することが好ましい。
【0018】
本発明の改質多孔質支持体膜は、孔径の小さな多孔質膜を低コストで製造できるため、前述したように、水処理、バイオ、食品、医療、診断、半導体、理化学分析等の多くの分野での応用が期待される。本発明の改質多孔質支持体膜は、例えば、分子ゲート型二酸化炭素分離膜としての応用が可能である。分子ゲート型分離膜とは、混合物から特定の成分だけを認識して、その特定の成分を選択的にゲートを通過させることにより、成分を分離する機能を有する膜である。分子ゲート型二酸化炭素分離膜としては、例えば、A. S. Kovvali, H. Chen, and K. K. Sirkar, J. Am. Chem. Soc., Vol.122, p.7594-7585 (2000)等に記載されているような、一級アミノ基を末端に有するデンドリマーを多孔質担持膜に添加した膜が利用されている。しかし、上記膜では担持させたデンドリマーがガスの透過とともに担持膜中の孔の中を移動する傾向があり、膜を挟んでガスの供給側と透過側の圧力差が大きい場合には、ガスの圧力によりデンドリマーが担持膜から膜の透過側に排出されるという問題点がある。これを解決するため、デンドリマーの分子サイズより孔径を小さくした本発明の改質多孔質支持体膜を用いることで、デンドリマーの排出を抑えることができ、高圧で使用可能な分子ゲート型二酸化炭素分離膜を低コストで製造することができ好ましい。
【0019】
(改質多孔質支持体膜の製造方法)
本発明の改質多孔質支持体膜の製造方法は、少なくとも、孔径構造を有する多孔質支持体膜、及び、該支持体膜を形成する物質とは異質の高分子からなる改質多孔質支持体膜の製造方法であって、該支持体膜内部に、該高分子を溶媒に溶解した高分子溶液を透過させる透過工程、及び、該支持体膜の該孔径構造表面に付着した該溶液から溶媒を蒸発させることにより、該高分子が付着した高分子付着層を該孔径構造表面に形成する高分子付着工程を含むことを特徴とする。
【0020】
前記高分子付着層の形成機構としては、前記透過工程において、多孔質支持膜の表面から裏面へと高分子溶液を透過させることで、該支持体膜の該孔径構造表面で高分子溶液が表面張力により球状化して該表面に付着し、続いて、高分子付着工程において、付着した高分子溶液から溶媒を蒸発させることにより、高分子が該表面に付着して高分子付着層が形成される。
【0021】
前記透過工程において透過させる手段としては、多孔質支持体膜内部へ高分子溶液を透過することができれば、公知の方法を用いることができる。例えば、公知の加圧又は減圧装置を用いて高分子溶液を透過させてもよいし、重力により徐々に浸透・透過させてもよい。より具体的には、例えば、(有)桐山製作所製桐山濾過装置を用い、多孔質支持体膜の下にガラス繊維ろ紙を敷くことにより、多孔質支持体膜全体を均一に透過させる方法等が好適に用いることができる。
【0022】
異質の高分子を溶解させる溶媒としては、多孔質支持体膜の溶解性が低く、該高分子を溶解できるものであれば公知のものを用いることができる。多孔質支持体膜の溶解性が低いとは、溶媒に対し溶解しない、又は、多孔質支持体膜が膨潤する程度の溶解性であることを示す。
また、前記溶媒としては、その溶解度パラメーターの値が、使用する多孔質支持体膜の溶解度パラメーターの値と離れていることが好ましく、溶解度パラメーターの値の差として3以上であることがより好ましく、その差が4〜40であることがさらに好ましい。使用する溶媒と多孔質支持体膜との溶解度パラメーターの値が離れていると、支持体膜と高分子溶液との間の撥油性(支持体膜−高分子溶液における接触角)が大きくなり、高分子溶液が支持体内部表面により大きな液滴として付着することができ、高分子の付着量が多く、内部領域の孔径がより小さい改質多孔質支持体膜を得られ好ましい。
なお、溶解度パラメーターは、高分子の溶媒に対する溶解性の尺度となるパラメーターであり、高分子と溶媒の値が近いほど溶解性が高い可能性があると言える。
溶解度パラメーターに関しては、例えば、長倉三郎等編「理化学辞典 第5版」(株)岩波書店発行,1998年刊、酒井清孝 著「膜分離プロセスの理論と設計」(株)アイピーシー発行,1993年刊、I. Cabasso, Ind. Eng. Chem. Prod. Res. Dev., vol.22, 313 (1983)等に詳述されている。
【0023】
本発明に用いることができる溶媒として具体的には、例えば、ヘキサン、ペンタン、シクロヘキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、水などが挙げられ、使用する溶媒と支持体膜及び高分子との溶解性等を考慮し選択することが好ましい。
前記溶媒は、単独で用いても、2以上の溶媒を任意の比率で混合して用いてもよい。また、前記溶媒は、必ずしも100%純粋なものでなくともよく、分解物や水分等の不純分が含まれてもよい。
また、前記高分子溶液には、必要に応じ、粘度調整剤、無機材料、オリゴマー、可塑剤、顔料、及び、充填剤等の公知の添加剤を添加してもよい。
【0024】
本発明に用いることのできる高分子溶液の濃度は、0.01〜10重量%であることが好ましく、0.05〜5重量%がより好ましく、0.1〜2重量%がさらに好ましい。上記範囲であると、多孔質支持体膜内部表面に高分子付着層を十分形成することができ、また、多孔質支持体膜の表面領域での高分子の付着が少ないため、表面領域の孔径に対し内部領域の孔径をより小さくでき好ましい。
高分子溶液の透過量としては、多孔質支持体膜内部表面に高分子を所望量付着できる溶液量であれば特に制限はなく、多孔質支持体膜の大きさや厚さ、孔径、高分子溶液の濃度、使用した溶媒、支持体膜の材質等を考慮し適宜調製すればよい。
また、高分子溶液は一度に支持体膜を透過させてもよく、複数回に分けて透過させてもよい。2種類以上の高分子を用いる場合には、1つの溶液に2種類以上の高分子を溶解させて用いてもよく、2種類以上の高分子をそれぞれ別の高分子溶液として調製し用いてもよい。この場合、1つの高分子溶液を用いて透過工程及び高分子付着工程を行った後、他の高分子溶液を用いてさらに透過工程及び高分子付着工程を繰り返し行ってもよい。
【0025】
前記高分子付着工程における溶媒を蒸発させる乾燥手段としては、溶媒を蒸発させることができれば特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。例えば、減圧又は真空下で乾燥しても、加熱により乾燥してもよく、また、これらの手段を併用して乾燥してもよい。
該高分子付着層とは、膜の内部表面に付着した高分子溶液から溶媒を蒸発させることにより、膜内部の孔径構造表面に高分子が付着している層(内部領域)のことである。
また、該高分子付着層において、異質の高分子は内部領域の孔径構造表面に環状構造を形成していてもよく、環状構造の一部が切れ、高分子の付着していない部分があってもよい。また、孔径構造中の一部の孔部分が異質の高分子により閉塞されていてもよい。
また、該高分子付着層は、内部領域全体に異質の高分子が均一に付着した層である必要はなく、その一部に付着していない部分があっても、付着量の多い部分と少ない部分が混在していてもよい。また、高分子付着層の厚さが一定の厚さでなくともよく、厚い部分と薄い部分が混在していてもよい。
本発明の改質多孔質支持体膜の製造方法により得られた改質多孔質支持体膜は、前述したように内部領域に高分子の付着した三層多孔質構造を有することが好ましく、また、その改質多孔質支持体膜の孔径(ポアサイズ)は、用いた多孔質支持体膜の孔径よりも小さいことが好ましい。
【実施例】
【0026】
以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
また、以下の実施例で用いる器具及び装置等は、特に断りのない限り、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば、市販又は公知の器具及び装置を適宜用いることができる。
【0027】
本発明で使用した高分子のモノマー、溶媒、触媒及び多孔質支持体膜を以下に記す。
4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物(6FDA)は、アルドリッチ社製の市販品を用いた。なお、6FDAの試薬瓶は、乾燥剤として五酸化二リンを用いたデシケーター内に保存した。
3,5−ジアミノ安息香酸(DABA)は、アルドリッチ社製特級試薬を用いた。
2,3,5,6−テトラメチル−1,4−フェニレンジアミン(TeMPD)は、東京化成工業(株)製特級試薬を用いた。
1−トリメチルシリル−1−プロピン(TMSP)は、信越化学工業(株)製の試薬を、蒸留精製して用いた。
【0028】
ポリイミドの重合溶媒として使用したN−メチル−2−ピロリドン(NMP)及びN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)は、純正化学(株)製特級試薬をモレキュラーシーブ4A(純正化学(株)製)を用いて脱水したものを用いた。また、必要に応じ、カールフィッシャー法(三菱化学(株)製、微量水分測定装置 Model CA-05)により水分の除去の確認を行った。
イミド化触媒として使用したピリジン及び無水酢酸(共に純正化学(株)製特級試薬)をモレキュラーシーブ4A(純正化学(株)製)を用いて脱水したものを用いた。
PTMSPの重合溶媒として使用したトルエン(純正化学(株)製特級試薬)は、重合停止剤として含まれるチオフェンを硫酸により抽出し、炭酸ナトリウムにより溶液を中和し、蒸留により精製したものを用いた。
PTMSPの重合触媒として用いた五塩化タンタル(純正化学(株)製)は、市販品をそのまま用いた。
ポリイミド及びPTMSPの生成物の精製に用いたメタノールは、純正化学(株)製1級メタノールをそのまま用い、ジメチルホルムアミド(DMF)は、純正化学(株)製特級試薬をモレキュラーシーブ4A(純正化学(株)製)を用いて脱水したものを用いた。
また、溶媒として用いたテトラヒドロフラン(THF)は、純正化学(株)製特級試薬をモレキュラーシーブ4A(純正化学(株)製)を用いて脱水したものを用い、ヘキサンは、純正化学(株)製特級試薬をそのまま用いた。
【0029】
多孔質支持体膜は、ミリポア(株)製の親水性ポリビニリデンフルオライド(HP−PVDF)、疎水性ポリビニリデンフルオライド(HB−PVDF)及びナイロンを用いた。これらの支持体膜の孔径(ポアサイズ)と膜厚を下記表1に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
また、各高分子の物性値は、以下の測定方法により求めた。
<1.高分子膜の作製>
溶媒キャスト法により高分子膜を調製した。高分子の3.5重量%溶液をガラス製シャーレに流し込み、蓋をかぶせ、ポリイミドは3日間かけて、PTMSPは1週間かけて溶媒を揮発させた。乾燥した膜をさらに24時間以上真空乾燥させる残存溶媒を除去し、物性値測定用の高分子膜を調製した。
<2.分子量測定>
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製HLC−8220)を使用し、分子量を測定した。分子量の標準試料としては、ポリスチレンを用い、流量:0.3ml/min、注入量:10μl、温度:40℃の測定条件で行った。
各高分子の試料溶液は、溶解性の高い溶媒に溶解し、0.1重量%に調製して用いた。
<3.接触角測定>
ビデオマイクロスコープシステム(スカラ(株)製VMS−1000−S)を用い、測定を行った。水平に調節されたシステム内のサンプルホルダー上に、測定試料を固定し、マイクロシリンジを用いて1μlの純水を滴下した。水滴は、測定試料内に浸透又は揮発する可能性があるため、滴下後10秒以内に表面上の水滴の形状を撮影した。測定試料の部位を変え、少なくとも4箇所以上の部分において水滴の形状を測定した。接触角は、水滴の形状の画像解析し、得られた値の平均をとることにより決定した。
<4.ガラス転移温度Tgの測定>
ガラス転移温度Tgは、示差走査熱量測定により測定した。示差走査熱量測定には、Perkin Elmer社製DSC 7(Differential Scanning Calorimeter、以下、DSCと略す。)を用いて、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/min、アルミニウム製サンプル容器、標準サンプルとしてインジウム(In)と亜鉛(Zn)を用いて測定した。
【0032】
(合成例1:poly(6FDA−DABA)の合成)
3,5−ジアミノ安息香酸(DABA)を、窒素雰囲気下室温にてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解し、30分後、DABAと等モル量の4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物(6FDA)を添加して、そのまま室温で7時間反応させた。この際のNMP溶液油中の全モノマー濃度は約20重量%であった。
その後、無水酢酸をモノマー1モルに対して5モル、及び、ピリジンをモノマー1モルに対して7モル添加して、室温にて反応させた。2時間後、反応液を大量のメタノール中に注いだ。高分子量の生成物は、メタノール中で固体成分として沈殿した。固体生成物をろ過により回収して乾燥させた後に、ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させた。この溶液を、再度メタノール中に注ぎこむことにより固体生成物を回収した。DMFとメタノールによる精製を、FT−IR、1H−NMR及び13C−NMRにより不純物が検出されなくなるまで繰り返した。また、同時にpoly(6FDA−DABA)の構造も確認した。得られた固体生成物を乾燥し、poly(6FDA−DABA)(接触角:88.2°、Tg:358.41℃)を得た。なお、分子量に関しては、測定溶媒をTHF又はDMFとして測定したが、ピークが観測されず求めることができなかった。
【0033】
(合成例2:poly(6FDA−TeMPD)の合成)
DABAを2,3,5,6−テトラメチル−1,4−フェニレンジアミン(TeMPD)に、NMPをN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)に代えた以外は、合成例1と同様にしてpoly(6FDA−TeMPD)(分子量:9.59×104、接触角:100.2°、Tg:420.36℃)を得た。
【0034】
(合成例3:ポリ(1−トリメチルシリル−1−プロピン)(PTMSP)の合成)
触媒である五塩化タンタル(0.02mol/L)のトルエン溶液を、窒素雰囲気下80℃で15分間加熱した。この溶液にモノマーである1−トリメチルシリル−1−プロピン(TMSP)(1mol/L)のトルエン溶液を添加して、80℃で反応を行った。24時間後、重合を停止させるため、トルエン−メタノール混合溶液(トルエン:メタノール=4:1(体積比))を添加した。反応液を室温まで自然冷却した後、大量のメタノール中に注いだ。高分子量の生成物は、メタノール中で固体成分として沈殿した。固体生成物をろ過により回収して乾燥させた後に、トルエンに溶解させた。この溶液を、再度メタノール中に注ぎこむことにより固体生成物を回収した。トルエンとメタノールによる精製を、FT−IR、1H−NMR及び13C−NMRにより不純物が検出されなくなるまで繰り返した。また、同時に得られたPTMSPの構造も確認した。得られた固体生成物を乾燥し、PTMSP(分子量:3.73×105、接触角:96.2°、Tg:250℃以上)を得た。Tgについては250〜300℃で高分子の分解が観測されたため、250℃で測定を打ち切った。
【0035】
以下、各多孔質支持体膜及び高分子と種々の溶媒との溶解性の評価を表2及び表3に示し、各多孔質支持体膜及び溶媒の溶解度パラメーターの値を表4に示し、また、各多孔質支持体膜及び高分子の接触角測定の結果を表5に示す。
溶解性の評価基準は、溶媒に支持体膜又は高分子を浸漬し、溶解した場合を「○」、膨潤した場合を「▲」、わずかに膨潤した場合を「△」、不溶であった場合を「×」とした。
【0036】
【表2】

【0037】
【表3】

【0038】
なお、表3に記載の全ての溶媒に対し、PTMSP、poly(6FDA−DABA)及びpoly(6FDA−TeMPD)は可溶であった。
【0039】
【表4】

【0040】
【表5】

【0041】
表5から、純水に対する接触角が90°以下であるHP−PVDF及びpoly(6FDA−DABA)は親水性であることを示し、純水に対する接触角が90°以上であるHB−PVDF、PTMSP及びpoly(6FDA−TeMPD)は疎水性であることを示す。なお、ナイロンは水滴を滴下した後、すぐに膜内部に水滴が吸収され接触角の測定が不可能であったが、この結果はナイロンが親水性であることを示すものである。
【0042】
改質多孔質支持体膜及び多孔質支持体膜の表面又は内部構造は以下の方法にて、観察、測定した。
<走査型電子顕微鏡による表面測定>
走査型電子顕微鏡(以下、「SEM」と略す。)による測定は、日立ハイテクノロジース(株)製日立高分解能電解放出型走査電子顕微鏡S−5200を用いて測定した。試料膜の表面測定は、試料片をそのまま用いた。試料膜の断面測定は、あらかじめ膜に鋏で切れ込みを入れておき、膜を液体窒素に浸漬し凍結させ、膜の切れ込み部分から手で引き裂くことによりできた破断面を観察した。SEMサンプルの蒸着体には金(Au)を用いた。蒸着装置は日本電子データム(株)製イオンスパッタリング装置JFC−1500を用いた。金の蒸着量は500Å、加速電圧は5kVで行った。
【0043】
(実施例1)
透過工程に用いた装置は、(有)桐山製作所製桐山濾過装置に、高分子溶液が試料膜全体を均一に透過するように多孔質支持体膜の下にガラス繊維ろ紙を敷いた装置を用いた。
多孔質支持体膜としてミリポア(株)製ナイロン膜(孔径:0.22μm、膜厚:170μm)を直径47mmの円形の膜としたものを上記装置に設置し、高分子溶液としてPTMSPのTHF0.1重量%溶液を10ml透過させた。
高分子溶液を透過させた支持体膜は、室温で3時間静置した後、24時間以上真空乾燥し、内部領域の孔径が表面領域の孔径よりも小さい改質多孔質支持体膜を得た。得られた改質多孔質支持体膜をSEMで観察したところ、高分子が付着した内部領域の膜厚が20μm、その孔径が100nmであった。
図1には、得られた改質多孔質支持体膜の膜断面のSEMによる拡大写真を示し、図2には、使用前の多孔質支持体膜であるミリポア(株)製ナイロン膜の膜断面のSEMによる拡大写真を示す。
膜断面の拡大写真である図1の中央部分には高分子が付着した内部領域1が観察され、表面領域2−内部領域1−表面領域2の三層多孔質構造となっていることが確認できた。
【0044】
(実施例2)
ナイロンの代わりにHP−PVDFを多孔質支持体膜として用いた以外は、実施例1と同様に改質多孔質支持体膜を作製した。得られた改質多孔質支持体膜をSEMで観察したところ、高分子が付着した内部領域が観察された。
【0045】
(実施例3)
ナイロンの代わりにHB−PVDFを多孔質支持体膜として用いた以外は、実施例1と同様に、改質多孔質支持体膜を作製した。得られた改質多孔質支持体膜をSEMで観察したところ、高分子が付着した内部領域が観察された。
【0046】
(実施例4)
PTMSPのTHF0.1重量%溶液10mlの代わりにpoly(6FDA−DABA)のTHF1重量%溶液25mlを高分子溶液として用いた以外は、実施例1と同様に、改質多孔質支持体膜を作製した。得られた改質多孔質支持体膜をSEMで観察したところ、高分子が付着した内部領域が観察された。
【0047】
(実施例5)
PTMSPのTHF0.1重量%溶液10mlの代わりにpoly(6FDA−TeMPD)のTHF1重量%溶液25mlを高分子溶液として用いた以外は、実施例1と同様に、改質多孔質支持体膜を作製した。得られた改質多孔質支持体膜をSEMで観察したところ、高分子が付着した内部領域が観察された。
【0048】
(実施例6)
ナイロンの代わりにHP−PVDFを多孔質支持体膜として用い、PTMSPのTHF0.2重量%溶液1mlを高分子溶液として用いた以外は、実施例1と同様に、改質多孔質支持体膜を作製した。得られた改質多孔質支持体膜をSEMで観察したところ、高分子が付着した内部領域が観察され、また、表面領域にはほとんど高分子の付着は観察されず、理想的な改質多孔質支持体膜であることが認められた。
【0049】
(実施例7)
ナイロンの代わりにHB−PVDFを多孔質支持体膜として用い、PTMSPのTHF0.2重量%溶液1mlを高分子溶液として用いた以外は、実施例1と同様に、改質多孔質支持体膜を作製した。得られた改質多孔質支持体膜をSEMで観察したところ、高分子が付着した内部領域が観察され、また、表面領域にはほとんど高分子の付着は観察されず、理想的な改質多孔質支持体膜であることが認められた。
【0050】
(実施例8)
ナイロンの代わりにHB−PVDFを多孔質支持体膜として用い、poly(6FDA−DABA)のTHF2重量%溶液50mlを高分子溶液として用いた以外は、実施例1と同様に、改質多孔質支持体膜を作製した。得られた改質多孔質支持体膜をSEMで観察したところ、高分子が付着した内部領域が観察され、また、表面領域にはほとんど高分子の付着は観察されず、理想的な改質多孔質支持体膜であることが認められた。
【0051】
(実施例9〜17:高分子の付着による重量変化)
下記表5に示す多孔質支持体膜、溶媒及び濃度の各条件を用い、実施例1で示した透過装置で多孔質支持体膜にPTMSP溶液を3ml透過させ、室温で3時間静置した後、24時間以上真空乾燥して、改質多孔質支持体膜を作製した。得られた改質多孔質支持体膜と使用前の多孔質支持体膜との重量差を測定し、測定結果を下記表6に示した。
【0052】
【表6】

【0053】
実施例9〜17の結果より、多孔質支持体膜として親水性ポリビニリデンフルオライド(HP−PVDF)、疎水性ポリビニリデンフルオライド(HB−PVDF)又はナイロンを用いた場合、溶媒として溶解度パラメーター値の差が大きいヘキサンを用いるほうがより少量の高分子で、内部領域に多くの高分子を付着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の改質多孔質支持体膜の一実施態様において、走査型電子顕微鏡(SEM)による改質多孔質支持体膜断面の拡大図である。
【図2】図1の改質多孔質支持体膜に用いた高分子が付着していない使用前の多孔質支持体膜において、走査型電子顕微鏡(SEM)による多孔質支持体膜断面の拡大図である。
【符号の説明】
【0055】
1 改質多孔質支持体膜の内部領域
2 改質多孔質支持体膜の表面領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、孔径構造を有する多孔質支持体膜、及び、該支持体膜を形成する物質とは異質の高分子からなる改質多孔質支持体膜の製造方法であって、
該支持体膜内部に、該高分子を溶媒に溶解した高分子溶液を透過させる透過工程、及び、
該支持体膜の該孔径構造表面に付着した該溶液から溶媒を蒸発させることにより、該高分子が付着した高分子付着層を該孔径構造表面に形成する高分子付着工程
を含むことを特徴とする
改質多孔質支持体膜の製造方法。
【請求項2】
該多孔質支持体膜が、相対する2つの外表面の近傍にある2つの表面領域、及び、これら2つの表面領域に挟まれ、かつ、表面領域の孔径よりも小さい孔径である内部領域からなる三層構造を有する膜であり、
該高分子付着工程において該内部領域における孔径構造表面に該高分子が付着し、
該改質多孔質支持体膜の孔径が、改質前の多孔質支持体膜の孔径よりも小さい請求項1に記載の改質多孔質支持体膜の製造方法。
【請求項3】
該改質多孔質支持体膜の孔径が、2nm〜1μmである請求項2に記載の改質多孔質支持体膜の製造方法。
【請求項4】
該多孔質支持体膜が、親水性ポリビニリデンフルオライド(HP−PVDF)、疎水性ポリビニリデンフルオライド(HB−PVDF)、及び、ナイロンよりなる群から選ばれた1つからなる請求項1〜3のいずれか1つに記載の改質多孔質支持体膜の製造方法。
【請求項5】
該高分子が、ポリ(1−トリメチルシリル−1−プロピン)(PTMSP)又はポリイミドである請求項1〜4のいずれか1つに記載の改質多孔質支持体膜の製造方法。
【請求項6】
該高分子溶液の濃度が、0.01〜10重量%である請求項1〜5のいずれか1つに記載の改質多孔質支持体膜の製造方法。
【請求項7】
少なくとも、孔径構造を有する多孔質支持体膜、及び、該支持体膜を形成する物質とは異質の高分子からなる改質多孔質支持体膜であって、
該改質多孔質支持体膜が、相対する2つの外表面の近傍にある2つの表面領域、及び、これら2つの表面領域に挟まれた内部領域からなる三層多孔質構造を有し、
該内部領域における孔径構造表面に該高分子が付着し、
該改質多孔質支持体膜の孔径が、改質前の多孔質支持体膜の孔径よりも小さいことを特徴とする
改質多孔質支持体膜。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−45969(P2007−45969A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−233358(P2005−233358)
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(801000027)学校法人明治大学 (161)
【出願人】(591178012)財団法人地球環境産業技術研究機構 (153)
【Fターム(参考)】