説明

放射性ガス漏洩量測定装置および放射性ガス漏洩量測定方法

【課題】従来技術では測定が困難であった低濃度の放射性ガスを放出する廃棄体から漏洩する放射性ガスの濃度および漏洩量についても測定可能な技術を提供する。
【解決手段】第1の放射性ガス漏洩量測定装置10Aは、吸気ライン13と弁V3を介して接続され廃棄体2を収容する容器12と、容器12と弁V2を介して接続される容器16と、容器16と弁V4を介して接続される容器17と、容器17と弁V1を介して接続され容器17を真空引きする真空ポンプ18とを接続して形成される流路と、この流路内圧力を測定する圧力伝送器21と、容器16に貯まったガスから放射線を検出する放射性ガス検出器23の出力信号を信号処理して測定値を得る装置43と、装置43が得た測定値を演算処理して廃棄体容器2bから漏洩する放射性ガスの漏洩量を測定する計算機45を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性ガス漏洩量測定装置および放射性ガス漏洩量測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所や原子燃料サイクル施設等から発生する放射性廃棄物は、例えばステンレス等の金属製の廃棄体容器に収納され、冷却等のために一定期間貯蔵を行い、最終的には地層中に埋設処分する計画である。この廃棄体容器に、微小な穴・溶接不良等の欠陥があった場合、貯蔵中に廃棄体から放射性ダスト (例えば、137Cs等)や放射性ガス (例えば、106Ru, 85Kr, 133Xe等)が漏れ出し大気中へ放出する恐れがある。そのため、廃棄体を貯蔵施設に受け入れる際の検査(受入検査)では、廃棄体の放射性ダスト漏洩量と放射性ガス漏洩量の評価を行うことにより廃棄体の健全性を確認し、長期保存の可否について確認している。
【0003】
放射性ガスの漏洩量を評価する従来技術としては、例えば、特開2004−170330号公報(特許文献1)に記載されるように、漏洩検査容器の内部に廃棄体を収納し、一定時間放置した後、漏洩検査容器内のガスをサンプリングし、サンプリングしたガスの濃度およびの測定する技術がある。漏洩検査容器内のガスのサンプリングおよびサンプリングしたガスの濃度等の測定は、外気(例えば空気等の気体)を取り込んで行われる。
【0004】
特許文献1に記載される技術は、特殊なフィルタを用いて、サンプリングガスを選別し、バックグラウンド値を低減させて、信号強度比を向上させる技術である。すなわち、特許文献1に記載される技術は、バックグラウンド値を低減させることで、測定値が測定可能範囲の下限値を下回らないように図ったものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−170330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したような特許文献1に記載される装置および方法を含む従来の放射性ガス漏洩量測定装置および放射性ガス漏洩量測定方法では、バックグラウンド値を低減したとしても、サンプリング時に空気等の外気を取り込んでいるため、取り込まれる外気によって放射性ガスが希釈される。従って、サンプリングする放射性ガスの濃度が低い場合、バックグラウンド値と同程度にまで放射性ガスが希釈され得る。
【0007】
サンプリングする放射性ガスの濃度がバックグラウンド値と同程度にまで放射性ガスが希釈された場合、放射性ガス検出器で検出される測定値は、当該放射性ガス検出器で検出可能な測定下限値未満となり、測定不能となることがあり、低濃度の測定が困難であった。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、従来技術ではサンプリング時にバックグラウンド値と同程度にまで希釈され、測定不能と判定され得る濃度の放射性ガスを放出する廃棄体に対しても、当該廃棄体から漏洩する放射性ガスの濃度および漏洩量を測定可能な放射性ガス漏洩量測定装置および放射性ガス漏洩量測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態に係る放射性ガス漏洩量測定装置は、上述した課題を解決するため、外気を吸気する吸気ラインと第1の開閉弁を介して接続され、放射性ガスを放出する被測定対象物を収容する漏洩検査容器と、前記漏洩検査容器と第2の開閉弁を介して接続され、前記漏洩検査容器からサンプリングしたガスを貯める放射性ガス採取容器と、前記放射性ガス採取容器と第3の開閉弁を介して接続され、前記漏洩検査容器内のガスを前記放射性ガス採取容器に導くように圧力調整される圧力調整容器と、前記圧力調整容器と第4の開閉弁を介して接続され、前記圧力調整容器を真空引きし、気体を排気する排気ダクトへガスを排出する真空ポンプとを接続して形成される流路と、前記放射性ガス採取容器と前記圧力調整容器とを含む流路内の圧力を測定する圧力伝送器と、前記放射性ガス採取容器に充満しているガスからの放射線を検出する放射性ガス検出器の出力信号を信号処理して測定値を得る測定信号処理部と、前記測定信号処理部が得た測定値に基づき前記被測定対象物の廃棄体容器から漏洩する放射性ガスの漏洩量を算出するデータ処理部と、を具備することを特徴とする。
【0010】
本発明の実施形態に係る放射性ガス漏洩量測定方法は、上述した課題を解決するため、外気を吸気する吸気ラインと第1の開閉弁を介して接続され、放射性ガスを放出する被測定対象物を収容する漏洩検査容器と、前記漏洩検査容器と第2の開閉弁を介して接続され、前記漏洩検査容器からサンプリングしたガスを貯める放射性ガス採取容器と、前記放射性ガス採取容器と第3の開閉弁を介して接続され、前記漏洩検査容器内のガスを前記放射性ガス採取容器に導くように圧力調整される圧力調整容器と、前記圧力調整容器と第4の開閉弁を介して接続され、前記圧力調整容器を真空引きし、気体を排気する排気ダクトへ排気する真空ポンプとを接続して形成される流路と、この流路内の圧力を測定する圧力伝送器と、前記放射性ガス採取容器に充満しているガスからの放射線を検出する放射性ガス検出器の出力信号を信号処理して測定値を得る測定信号処理部と、前記測定信号処理部が得た測定値に基づき前記被測定対象物の廃棄体容器から漏洩する放射性ガスの漏洩量を算出するデータ処理部と、前記真空ポンプの入切と前記第1の開閉弁、前記第2の開閉弁、前記第3の開閉弁、および前記第4の開閉弁の開閉とを制御するとともに、前記圧力伝送器から測定した圧力値を取得するコントローラとを具備する放射性ガス漏洩量測定装置を用いて行う放射性ガス漏洩量測定方法であり、前記コントローラが、前記圧力調整容器内の圧力を所望の負圧に維持するステップと、前記コントローラが、前記第2の開閉弁および前記第3の開閉弁を開いて前記漏洩検査容器内のガスを前記放射性ガス採取容器に導くステップと、前記測定信号処理部が前記放射性ガス採取容器に充満しているガスからの放射線を検出する放射性ガス検出器の出力信号を信号処理して測定値を得るステップと、前記測定信号処理部が得た測定値に基づき前記廃棄体容器から漏洩する放射性ガスの漏洩量を算出するステップとを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来技術ではサンプリング時にバックグラウンド値と同程度にまで希釈され、測定不能と判定され得る濃度の放射性ガスを放出する廃棄体に対しても、当該廃棄体から漏洩する放射性ガスの濃度および漏洩量を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る放射性ガス漏洩量測定装置の配管系統図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る放射性ガス漏洩量測定装置の測定系の構成を示す説明図。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る放射性ガス漏洩量測定装置における測定信号処理装置、各弁および真空ポンプの動作タイミングを説明する説明図。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る放射性ガス漏洩量測定装置の漏洩検査容器内で放射性ガスが拡散する様子をシミュレーションした結果を示す説明図。
【図5】本発明の実施形態に係る放射性ガス漏洩量測定装置および放射性ガス漏洩量測定方法によって測定されるサンプリングガスの濃度、従来方式によって測定されるサンプリングガスの濃度および放射性ガス検出器の検出限界濃度を示す説明図。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る放射性ガス漏洩量測定装置における測定信号処理装置、各弁および真空ポンプの動作タイミングを説明する説明図。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る放射性ガス漏洩量測定装置が実行する測定結果適否判定手順の処理フローを示した流れ図。
【図8】本発明の第4の実施形態に係る放射性ガス漏洩量測定装置の配管系統図。
【図9】本発明の第4の実施形態に係る放射性ガス漏洩量測定装置における測定信号処理装置、各弁、ガス供給装置および真空ポンプの動作タイミングを説明する説明図。
【図10】本発明の第4の実施形態に係る放射性ガス漏洩量測定装置の漏洩検査容器内で放射性ガスが拡散する様子をシミュレーションした結果を示す説明図。
【図11】本発明の第5の実施形態に放射性ガス漏洩量測定装置の配管系統図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る放射性ガス漏洩量測定装置および放射性ガス漏洩量測定方法について、添付の図面を参照して説明する。
【0014】
[第1の実施形態]
図1は本発明の第1の実施形態に係る放射性ガス漏洩量測定装置の一例である第1の放射性ガス漏洩量測定装置10Aの配管系統図である。なお、図1に示される開閉弁V1,V2,V3,V4の開閉状態は測定時(後述する図3に示される測定時間T)における開閉状態を示している。
【0015】
第1の放射性ガス漏洩量測定装置10Aは、廃棄体容器2bに放射性廃棄物2aを充填した被測定対象物である廃棄体2を収容する漏洩検査容器12内の気体をサンプリングする流路(サンプリングライン)を構成する配管系統11Aと、漏洩検査容器12内に存在する放射性ガスの量を測定する測定系41と、サンプリングラインの圧力および開閉状態を制御するコントローラ54と、を具備する。
【0016】
配管系統11Aは、吸気ライン13から導いた外気(例えば空気等の気体)を、排気ダクト14へ排出する流路(サンプリングライン)を構成する。配管系統11Aは、上流側から、例えば、吸気ライン13、吸気フィルタ15、漏洩検査容器12、放射性ガス採取容器16、圧力調整容器17、真空ポンプ18および排気ダクト14の順に配置され、各構成要素が、例えば配管等の管状の構造物で気体が流動可能な状態で接続される。
【0017】
また、配管系統11Aでは、吸気フィルタ15と漏洩検査容器12との間と、漏洩検査容器12と放射性ガス採取容器16との間と、放射性ガス採取容器16と圧力調整容器17との間と、圧力調整容器17と真空ポンプ18の間とに、それぞれ、吸気ライン13と排気ダクト14との間の流路を開閉自在に切り替える開閉弁V3,V2,V4,V1が取り付けられる。
【0018】
なお、以下の説明では、開閉弁V1,V2,V3,V4の開閉状態をコントローラ54で制御可能な電磁弁である場合の例を説明する。また、吸気フィルタ15と漏洩検査容器12との間に取り付けられる開閉弁V3を空気取入弁V3と称し、漏洩検査容器12と放射性ガス採取容器16との間に取り付けられる開閉弁V2を試料採取弁V2と称し、放射性ガス採取容器16と圧力調整容器17との間に取り付けられる開閉弁V4を圧力調整容器入口弁V4と称し、圧力調整容器17と真空ポンプ18の間に取り付けられる開閉弁V1をサンプリング元弁V1と称する。
【0019】
さらに、配管系統11Aでは、圧力調整容器17の下流側であって、サンプリング元弁V1よりも上流側の位置に、流路(サンプリングライン)の圧力を測定する圧力伝送器21が取り付けられる。
【0020】
吸気フィルタ15は、吸気ライン13から取り込んだ外気に含まれるゴミ等の浮遊物を取り除くフィルタである。
【0021】
漏洩検査容器12は、容器内部が中空に形成された開閉自在な気密容器である。漏洩検査容器12の容器内部に形成された中空領域内には、廃棄体2が収容される。漏洩検査容器12は、蓋(図を省略)を閉じると、容器内部の雰囲気(内部雰囲気)を容器外部の気体から遮蔽して容器内に密封することができる。
【0022】
放射性ガス採取容器16は、漏洩検査容器12からサンプリングした気体(ガス)を蓄える容器である。第1の放射性ガス漏洩量測定装置10Aでは、放射性ガス採取容器16の内部に貯えられ充満している気体(サンプリングガス)から放射される放射線を放射性ガス検出器23によって検出する。
【0023】
放射性ガス検出器23は、例えば、プラスチックシンチレーション検出器、NaI(Tl)検出器等の無機シンチレーション検出器、ゲルマニウム(Ge)検出器やシリコン(Si)検出器等の半導体検出器等の放射線を検出可能な検出器から用途等に応じて選択された検出器である。ここでは、放射性ガス検出器23の一例としてプラスチックシンチレーション検出器を採用した場合を説明する。
【0024】
圧力調整容器17は、漏洩検査容器12内部のガスを放射性ガス採取容器16に導くように、容器内の圧力が負圧に圧力調整される。真空ポンプ18は、圧力調整容器17を真空引きする。圧力調整容器17内の圧力は、例えば10−5Pa等のいわゆる高真空となる圧力レベルに到達する。
【0025】
なお、第1の放射性ガス漏洩量測定装置10Aでは、配管系統11Aの吸気ライン13において、吸気フィルタ15が取り付けられているが、放射性ガス漏洩量の測定に際して、測定の妨げになる程の浮遊物が外気に混在していない場合等では、配管系統11Aの吸気ライン13に吸気フィルタ15を必ずしも取り付けておく必要はない。
【0026】
図2は第1の放射性ガス漏洩量測定装置10Aの測定系の構成を示す説明図(ブロック図)である。
【0027】
測定系41は、放射性ガス検出器(図2において“DET”と表記する。)23が取得した検出信号を増幅やノイズ除去等の信号処理をして計数値データを得る測定信号処理部としての測定信号処理装置43と、測定信号処理装置43が信号処理した結果得られる計数値データを用いて漏洩検査容器12内で漏洩する気体の濃度分布および放射性ガスの漏洩量を演算する式と測定信号処理装置43が信号処理した結果得られる計数値データとに基づいて漏洩検査容器12内で漏洩する気体の濃度分布および放射性ガスの漏洩量を演算するデータ処理部としてのデータ処理計算機45とを備える。
【0028】
測定信号処理装置43は、前置増幅器(図2において“PRE”と表記する。)46と、線形増幅器(図2において“LIN”と表記する。)47と、パルス波高弁別器(図2において“DIS”と表記する。)48と、パルス分析装置(図2において“MCA”と表記する。)49と、を備える。符号50は、前置増幅器46に高電圧を供給する電源(図2において“HV”と表記する。)である。
【0029】
測定信号処理装置43が放射性ガス検出器23からパルス信号を受け取ると、まず、前置増幅器46が放射性ガス検出器23から受け取るパルス信号を増幅して線形増幅器47へ送る。続いて、線形増幅器47が前置増幅器46から受け取った信号を増幅してパルス波高弁別器48へ送る。
【0030】
パルス波高弁別器48が線形増幅器47から信号(増幅後のパルス信号)を受け取ると、パルス波高弁別器48は設定値とを比較し、線形増幅器47から受け取ったパルスのうち必要なパルスのみをパルス分析装置49へ送る。続いて、パルス分析装置49がパルス波高弁別器48から受け取ったパルスにおけるエネルギー毎の計数率をカウントし、そのカウント値を測定値としてデータ処理計算機45へ送る。
【0031】
データ処理計算機45は、放射性ガス漏洩量の測定を開始する要求(測定開始要求)および終了する要求(測定終了要求)を測定信号処理装置43(より詳細にはパルス分析装置49)に与える。データ処理計算機45は、測定信号処理装置43に測定開始要求を与えてから測定終了要求を与えるまでの間、測定信号処理装置43から測定結果である測定値を受け取る。
【0032】
また、データ処理計算機45は、開閉弁V1,V2,V3,V4の開閉状態および真空ポンプ18の動作状態(ON/OFF)を制御するとともに圧力伝送器21が計測した圧力(測定値)をデータ処理計算機45へ伝送するコントローラ54に、データ取得要求を与え、コントローラ54が取得した圧力伝送器21の測定値を受け取る。
【0033】
さらに、データ処理計算機45は、漏洩検査容器12内のガスの濃度および漏洩量を算出する数式および係数の情報を有する。より詳細には、データ処理計算機45は、濃度換算係数の情報と、濃度換算係数×測定信号処理装置43から測定結果として取得した測定値で与えられる漏洩検査容器12内のガスの濃度を算出する数式の情報と、配管系統11Aの体積情報と、配管系統11Aの体積×漏洩検査容器12内のガスの濃度で与えられる漏洩検査容器12内のガス漏洩量を算出する数式の情報を有する。
【0034】
データ処理計算機45は、漏洩検査容器12内のガスの濃度および漏洩量を算出する数式および係数の情報と、測定信号処理装置43から測定結果として取得した測定値とを用いて漏洩検査容器12内のガスの濃度および漏洩量を算出する。漏洩検査容器12内のガスの濃度および漏洩量を算出した結果は、ディスプレイ55に送られ、ディスプレイ55に表示される。
【0035】
続いて、本発明の第1の実施形態に係る放射性ガス漏洩量測定方法(以下、「第1の放射性ガス漏洩量測定方法」と称する。)について説明する。
【0036】
第1の放射性ガス漏洩量測定方法は、例えば、第1の放射性ガス漏洩量測定装置10Aを用いて、廃棄体2を収納する漏洩検査容器12内のガスをサンプリングし、サンプリングしたガスの濃度に基づいて漏洩検査容器12内に漏洩するガスの漏洩量を測定する方法である。
【0037】
図3は、第1の放射性ガス漏洩量測定装置10Aにおける、測定信号処理装置43、各弁V1,V2,V3,V4、および真空ポンプ18の動作タイミングを説明する説明図(タイミングチャート)である。
【0038】
図3に示されるタイミングチャートは、横軸が経過時間であり、縦軸が例えばON(入)とOFF(切)、OPEN(開)とCLOSE(閉)等の状態を示している。また、T,T,T,T,T,Tは、それぞれ、放置時間、測定準備時間、測定時間、後処理時間、真空引き時間および掃引時間(パージ時間)である。
【0039】
第1の放射性ガス漏洩量測定方法では、まず、漏洩検査容器12に廃棄体2を収納してから、サンプリング元弁V1、試料採取弁V2、空気取入弁V3および圧力調整容器入口弁V4を閉じた状態とする。そして、例えば、放置時間T等の一定時間放置し、漏洩検査容器12内にガスを均一に拡散させる。
【0040】
その後、測定準備として、まず、サンプリング元弁V1を開くと同時に真空ポンプ18を起動し、圧力調整容器17内を真空引きする。この時、漏洩検査容器12は圧力調整容器入口弁V4で隔離されているので、圧力降下はなく大気圧状態のままである。圧力調整容器17の真空引きによる圧力値は圧力伝送器21にて確認し、必要なに真空度に達したところで、サンプリング元弁V1を閉じると共に真空ポンプ18を停止して圧力調整容器17を真空封じ切りの状態にする(真空引き時間T)。続いて、試料採取弁V2、圧力調整容器入口弁V4の順で開閉弁V2,V4を開放する(測定準備時間T)。
【0041】
閉止していた開閉弁V2,V4が開いた結果、圧力調整容器17と漏洩検査容器12とが接続される。真空状態にある圧力調整容器17と大気圧状態の漏洩検査容器12とでは大きな圧力差があるため、試料採取弁V2および圧力調整容器入口弁V4を開けることによって、従来技術よりも短時間で漏洩検査容器12内のガスが、配管系統11Aのうち、閉止している空気取入弁V3よりも下流であって、閉止しているサンプリング元弁V1よりも上流に位置する流路の全体に拡散する。
【0042】
その後、漏洩検査容器12から拡散し、放射性ガス採取容器16内に充満したサンプリングガスから放出される放射線を放射性ガス検出器23でパルス信号として検出し、検出したパルス信号を測定系41の測定信号処理装置43が受信する(測定時間T)。測定信号処理装置43が受信した信号は、測定信号処理装置43で信号処理され、データ処理計算機45で漏洩検査容器12内のガスの濃度および漏洩量が算出される。データ処理計算機45の算出結果はディスプレイ55に表示される。
【0043】
ここで、測定準備時間Tにおいて試料採取弁V2および圧力調整容器入口弁V4を開けた時以降の時間および測定時間Tでは、配管系統11Aのうち、閉止している空気取入弁V3よりも下流であって、閉止しているサンプリング元弁V1よりも上流に位置する流路の圧力は、大気圧から圧力低下して負圧となる。
【0044】
測定が終了した(測定時間Tが経過した)後、配管系統11Aから放射性ガスを除去する後処理を行う(後処理時間T)。より詳細には、全ての開閉弁V1,V2,V3,V4を開放した状態で真空ポンプ18を起動し、吸気ライン13から空気を取り込んで取り込んだ空気を配管系統11A全体に流して放射性ガスを掃気する(掃引時間T)。配管系統11A全体に空気を流して放射性ガスを掃気すると、後処理を終了する。
【0045】
続いて、第1の放射性ガス漏洩量測定装置10Aの漏洩検査容器12内で放射性ガスが拡散するのに要する時間、すなわち、放置時間Tをどのように設定するかについて説明する。
【0046】
漏洩検査容器12内で生じる放射性ガスの水平方向における拡散は、放射性ガスとは異なる空気の中を放射性ガスが拡散していくこととなる。放射性ガスが漏洩検査容器12内を拡散する放置時間T中は、漏洩検査容器12内の水平方向において、ガスの濃度に勾配があると想定される。また、このガス濃度の勾配は、時間の経過とともに変化していくものと想定される。
【0047】
漏洩検査容器12内のガス度勾配の評価については、以下の式(1)で与えられる拡散方程式により、その濃度を算出することができる。
【0048】
【数1】

【0049】
また、配管系統11Aの全体におけるガスの濃度分布は、自己拡散によりマクスウェル−ボルツマン(Maxwell−Boltzmann)分布に従うため、以下の式(2)で示されるように、漏洩検査容器12内の水平方向距離xと拡散時間(放置時間)tに依存した分布関数となる。そこで、漏洩検査容器12のサイズ、圧力、温度等、拡散原子、拡散媒質の条件を基にして拡散時間、すなわち、放置時間Tを求める。
【0050】
【数2】

【0051】
図4は、第1の放射性ガス漏洩量測定装置10Aの漏洩検査容器12内で放射性ガスが拡散する様子をシミュレーションした結果を示す説明図(グラフ)である。
【0052】
図4に示されるグラフは、横軸が漏洩検査容器12内に収納される放射性ガス源となる廃棄体2からの水平方向(略円筒容器の径方向)距離を、縦軸が漏洩検査容器12内に存在する放射性ガスの全量を100%として規格化した放射性ガス分布関数[%]を示している。
【0053】
図4に示されるシミュレーション結果は、漏洩検査容器12の条件として、直径3m、内部圧力は大気圧、内部温度が27℃、拡散原子が85Kr、拡散媒質がN、という条件を設定した場合において、拡散時間(放置時間T)0.1秒および1000秒の場合の漏洩検査容器12内に収納される廃棄体2からの水平方向距離(漏洩検査容器内の水平方向距離)に対する放射性ガス分布関数を示している。
【0054】
図4に示されるように、拡散時間(放置時間T)が0.1秒では、漏洩検査容器12内の水平方向距離によって、放射性ガス分布関数が異なる。すなわち、漏洩検査容器12内の水平方向においてガスが偏在して分布しており、十分拡散しているとはいえない。一方、拡散時間(放置時間T)が1000秒では、漏洩検査容器12内の水平方向距離が変化しても放射性ガス分布関数はほぼ同一である。すなわち、漏洩検査容器12内の水平方向においてガスが均等に分布しており、十分拡散しているといえる。
【0055】
一方、漏洩検査容器12内の鉛直方向における放射性ガスの分布については、放射性ガス核種が拡散媒質となる空気よりも密度が大きいため、重力の作用により漏洩検査容器12内の下方の濃度が高くなる。そのため、漏洩検査容器12の下方に、例えば配管等の試料採取ラインとなる流路を設置することにより、より高い濃度で蓄積している放射性ガスを優先的にサンプリングして評価することができる。この結果、漏洩検査容器12内の濃度をより安全な側で計算することができるので、漏洩検知性能が向上する。
【0056】
続いて、本発明の実施形態に係る放射性ガス漏洩量測定装置および放射性ガス漏洩量測定方法(以下、単に「本方式」と称する。)によって測定されるサンプリングガスの濃度と、従来の放射性ガス漏洩量測定装置および放射性ガス漏洩量測定方法(以下、単に「従来方式」と称する。)によって測定されるサンプリングガスの濃度を比較して説明する。
【0057】
図5は、本方式によって測定されるサンプリングガスの濃度、従来方式によって測定されるサンプリングガスの濃度および放射性ガス検出器23の検出限界濃度を示す説明図(グラフ)である。
【0058】
ここで、本方式によって測定されるサンプリングガスの濃度、従来方式によって測定されるサンプリングガスの濃度および放射性ガス検出器23の検出限界濃度を評価するにあたり、廃棄体想定漏洩量を4.0×10Bq/本/h、従来方式のサンプリング流量を50リットル毎分(L/min)、放射性ガス検出器23の濃度換算係数を3.0×10−3 Bq/cm/s−1、放置時間を本方式および従来方式とも1時間、測定時間を本方式および従来方式とも1時間として評価している。
【0059】
図5に示されるグラフは、横軸がバックグラウンド計数率(BG計数率)を、縦軸が放射性ガスの濃度を示している。また、線L,L,Lは、それぞれ、放射性ガス検出器23の検出限界濃度を示す線、本方式によって測定されるサンプリングガスの濃度を示す線、および、従来方式によって測定されるサンプリングガスの濃度を示す線である。
【0060】
なお、検出限界濃度の算出式、従来方式の濃度算出式および本方式の濃度算出式は、それぞれ、式(3)、式(4)および式(5)によって与えられる。
【0061】
【数3】

【0062】
【数4】

【0063】
【数5】

【0064】
図5に示されるように、本方式によって測定されるサンプリングガスの濃度を示す線L1は、図示されるBG計数率の全範囲内で、バックグラウンド値から算出される検出限界濃度曲線Lよりも大きい。この結果は、本方式では、サンプリングガスの濃度が希釈されず保持されることによる。故に、本方式では、サンプリングガスの濃度が希釈されないので、バックグラウンド値から算出される検出限界と同程度となって測定不能に陥る事態を回避できる。
【0065】
一方、従来方式によって測定されるサンプリングガスの濃度を示す線Lは、BG計数率が0以上8s−1以下の範囲内で、バックグラウンド値から算出される検出限界濃度曲線Lよりも大きくなるものの、BG計数率が8s−1を超える範囲内では、バックグラウンド値から算出される検出限界濃度曲線Lよりも小さくなっている。すなわち、従来方式ではサンプリングガスの濃度が希釈される結果、あるBG計数率となると、放射性ガス検出器で検出可能な測定下限値未満、すなわち、測定不能となってしまう場合がある。
【0066】
このように、本発明の実施形態に係る放射性ガス漏洩量測定装置および放射性ガス漏洩量測定方法は、従来の放射性ガス漏洩量測定装置および放射性ガス漏洩量測定方法では測定不能となってしまうような環境下においても、測定不能に陥ることはない。
【0067】
第1の放射性ガス漏洩量測定装置10Aおよび第1の放射性ガス漏洩量測定方法によれば、サンプリングガスの濃度および漏洩量を計測する際、サンプリングガスが拡散する流路、すなわち、空気取入弁V3よりも下流であって、閉止しているサンプリング元弁V1よりも上流に位置する流路は、他の流路と完全に分離されているため、外気の流入を防止することができる。
【0068】
従って、第1の放射性ガス漏洩量測定装置10Aおよび第1の放射性ガス漏洩量測定方法では、廃棄体2から漏洩する放射性ガスの量が微小な場合であっても、放射性ガス濃度が希釈されず保持されるので、放射性ガス濃度を保持したまま放射性ガス検出器23で放射性ガスをサンプリングし、放射性ガスの漏洩量を測定することができる。
【0069】
また、第1の放射性ガス漏洩量測定装置10Aおよび第1の放射性ガス漏洩量測定方法によれば、サンプリングガスの濃度および漏洩量を計測する際、サンプリングガスが拡散する流路、すなわち、空気取入弁V3よりも下流であって、閉止しているサンプリング元弁V1よりも上流に位置する流路における圧力が負圧となっているため、電源喪失時における放射性ガスのアウトリークを防止できる。従って、従来よりも安全性を向上させることができる。
【0070】
さらに、第1の放射性ガス漏洩量測定装置10Aおよび第1の放射性ガス漏洩量測定方法によれば、従来技術に比べて、流量を制御・測定する機器が不要となる。そのため、部品点数が減少するとともに、設置スペースを小さくすることができる。
【0071】
なお、上述した第1の放射性ガス漏洩量測定装置10Aは、開閉弁V1,V2,V3,V4が電磁弁の例を説明したが、これらの開閉制御をコントローラ54で行わない場合には開閉弁V1,V2,V3,V4を手動弁で構成することもできる。
【0072】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係る放射性ガス漏洩量測定装置は、本発明の第1の実施形態に係る放射性ガス漏洩量測定装置に対して、実質的な装置構成(ハードウェア構成)は異ならない。すなわち、図1に示される第1の放射性ガス漏洩量測定装置10Aの配管系統図および図2に示される第1の放射性ガス漏洩量測定装置10Aの測定系41の構成図において、10Aを10Bと読み替えれば、読み替え後の図1および図2が、それぞれ、本発明の第2の実施形態に係る放射性ガス漏洩量測定装置の一例である第2の放射性ガス漏洩量測定装置10Bの配管系統図および測定系41の構成図となる。
【0073】
その一方で、本発明の第2の実施形態に係る放射性ガス漏洩量測定装置および放射性ガス漏洩量測定方法(以下、「第2の放射性ガス漏洩量測定方法」と称する。)は、本発明の第1の実施形態に係る放射性ガス漏洩量測定装置および放射性ガス漏洩量測定方法に対して、試料採取弁V2および圧力調整容器入口弁V4と真空ポンプ18の動作タイミング、すなわち、コントローラ54の制御シーケンスが異なる。そこで、本実施形態の説明では、上述した第1の実施形態と異なるコントローラ54の制御シーケンスを中心に説明する。
【0074】
図6は、第2の放射性ガス漏洩量測定装置10Bにおける測定信号処理装置43、各弁V1,V2,V3,V4および真空ポンプ18の動作タイミングを説明する説明図(タイミングチャート)である。
【0075】
図6に示されるように、第2の放射性ガス漏洩量測定装置10Bでは、放置時間Tの前に放置前準備時間Tが設定される点で、第1の放射性ガス漏洩量測定装置10Aにおける制御シーケンス(図3)と相違する。ここで、放置前準備時間Tとは、漏洩検査容器12内で廃棄体2を放置する放置時間Tに先立って、漏洩検査容器12内を負圧状態にするための準備時間である。
【0076】
放置前準備時間Tでは、まず、サンプリング元弁V1が開くと同時に真空ポンプ18が動作(ON)し、圧力調整容器17内を真空(いわゆる高真空)の状態にする。真空引き時間Tが経過して圧力調整容器17内が所望の圧力(真空状態)に到達したら、サンプリング元弁V1が閉じると同時に真空ポンプ18が停止(OFF)する。
【0077】
続いて、試料採取弁V2が開き、その後、圧力調整容器入口弁V4が開く(OPEN)。試料採取弁V2および圧力調整容器入口弁V4の開放によって、閉止している空気取入弁V3よりも下流であって、閉止しているサンプリング元弁V1よりも上流に位置する流路が大気圧から低下し負圧状態となる。すなわち、漏洩検査容器12内の圧力が負圧となる。
【0078】
ここで、試料採取弁V2を圧力調整容器入口弁V4よりも先に開くのは、放射性ガス採取容器16内の圧力が大きな負圧となるのを回避して放射性ガス検出器23が破損するのを防ぎつつ、漏洩検査容器12内を負圧状態にするためである。
【0079】
試料採取弁V2および圧力調整タンク入口弁V4を開放し、漏洩検査容器12内を負圧状態にする程度の時間が経過したら、試料採取弁V2および圧力調整容器入口弁V4を閉じる(CLOSE)。
【0080】
第2の放射性ガス漏洩量測定装置10Bにおいて実行される制御シーケンスのうち、放置前準備時間T以降の制御シーケンスについては、第1の放射性ガス漏洩量測定装置10Aにおいて実行される制御シーケンスと同様である。
【0081】
第2の放射性ガス漏洩量測定装置10Bおよび第2の放射性ガス漏洩量測定方法によれば、第1の放射性ガス漏洩量測定装置10Aおよび第1の放射性ガス漏洩量測定方法で奏する効果に加えて、漏洩検査容器12内を負圧にして廃棄体2を放置することができるため、漏洩検査容器12内を大気圧にして廃棄体2を放置する第1の放射性ガス漏洩量測定装置10Aおよび第1の放射性ガス漏洩量測定方法よりも廃棄体2からの放射性ガスの漏洩量を増加させることができる。
【0082】
故に、第2の放射性ガス漏洩量測定装置10Bおよび第2の放射性ガス漏洩量測定方法では、バックグラウンド値から算出される検出限界に対して十分に大きな濃度値を得ることができる第1の放射性ガス漏洩量測定装置10Aおよび第1の放射性ガス漏洩量測定方法よりもさらに大きな濃度値を得ることができるので、放射性ガス漏洩量の測定の確実性をさらに向上させることができる。
【0083】
なお、本実施形態の説明において、本発明の第1の実施形態に係る放射性ガス漏洩量測定装置に対して、コントローラ54の制御シーケンスを変更した放射性ガス漏洩量測定装置の例を説明したが、後述する他の実施形態に係る放射性ガス漏洩量測定装置において、制御シーケンスを変更した放射性ガス漏洩量測定装置を構成しても良い。
【0084】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態に係る放射性ガス漏洩量測定装置は、本発明の第1の実施形態に係る放射性ガス漏洩量測定装置に対して、実質的な装置構成(ハードウェア構成)は異ならない。すなわち、図1に示される第1の放射性ガス漏洩量測定装置10Aの配管系統図および図2に示される第1の放射性ガス漏洩量測定装置10Aの測定系41の構成図において、10Aを10Cと読み替えれば、読み替え後の図1および図2が、それぞれ、本発明の第3の実施形態に係る放射性ガス漏洩量測定装置の一例である第3の放射性ガス漏洩量測定装置10Cの配管系統図および測定系41の構成図となる。
【0085】
その一方で、本発明の第3の実施形態に係る放射性ガス漏洩量測定装置は、本発明の第1の実施形態に係る放射性ガス漏洩量測定装置に対して、測定結果が正常か否(異常)かを判定する機能(以下、「測定結果適否判定機能」と称する。)を付加した点で異なる。換言すれば、本発明の第3の実施形態に係る放射性ガス漏洩量測定装置および放射性ガス漏洩量測定装置(以下、「第3の放射性ガス漏洩量測定方法」と称する。)は、本発明の第1の実施形態に係る放射性ガス漏洩量測定装置および第1の放射性ガス漏洩量測定方法に対して、データ処理計算機45が測定結果の正常/異常を判定する処理手順(以下、「測定結果適否判定手順」と称する。)を実行する点で相違する。そこで、本実施形態の説明では、上述した第1の実施形態と異なる測定結果適否判定手順を中心に説明する。
【0086】
図7は第3の放射性ガス漏洩量測定装置10Cが実行する測定結果適否判定手順の処理フローを示した流れ図(フローチャート)である。
【0087】
測定結果適否判定手順は、ステップS1〜ステップS13の処理ステップを有する。第3の放射性ガス漏洩量測定装置10Cでは、データ処理計算機45が、ステップS1〜ステップS13の処理ステップの処理内容および処理フローの情報を保有しており、保有するステップS1〜ステップS13の処理内容および処理フローの情報に基づいて、測定結果適否判定手順の処理ステップ(ステップS1〜ステップS13)を実行する。
【0088】
測定結果適否判定手順では、まず、データ処理計算機45が、測定信号処理装置43に測定開始要求を与えて、第1回目の測定を開始させて(ステップS1)、測定した第1回目の測定データを測定信号処理装置43から受信する(ステップS2)。
【0089】
続いて、データ処理計算機45が、ステップS2で受信した第1回目の測定データの異常の有無を判断する(ステップS3)。測定データが正常であるか否かの判断は、予め設定した正常を判定する基準に合致すれば正常であり、合致しない場合には異常と判断する。例えば、設定した時間内でデータに欠落があった場合や、受信した測定値が受信し得ない範囲の値であった場合等を異常と判定する。
【0090】
ステップS3において、データ処理計算機45が、第1回目の測定データに異常がないと判定した場合(ステップS3でYESの場合)、ステップS4に進み、データ処理計算機45が、測定信号処理装置43から受信した測定値に基づいて算出する濃度と、予め設定された検出限界濃度とを比較する(ステップS4)。
【0091】
ステップS4において、データ処理計算機45が、算出する濃度の方が検出限界濃度よりも高いと判定した場合(ステップS4でYESの場合)、第1回目の測定時と同様に、第2回目の測定が開始され(ステップS5)、測定信号処理装置43から測定データを受信して(ステップS6)、受信した第2回目の測定データの異常の有無を判定する(ステップS7)。
【0092】
ステップS7において、データ処理計算機45が、第2回目の測定データに異常がないと判定した場合(ステップS7でYESの場合)、ステップS8に進み、データ処理計算機45は、ステップS2で受信した第1回目の測定値がステップS6で受信した第2回目の測定値よりも大きいかを比較する(ステップS8)。
【0093】
データ処理計算機45が、第1回目の測定値の方が第2回目の測定値よりも大きいと判断した場合(ステップS8でYESの場合)、データ処理計算機45は、漏洩検査容器12内で廃棄体2から放射性ガスが漏洩している(漏洩有り)と判断し(ステップS9)、測定結果適否判定手順を終了する(END)。
【0094】
一方、ステップS3において、データ処理計算機45が、第1回目の測定データに異常があると判定した場合(ステップS3でNOの場合)、ステップS10に進み、データ処理計算機45が、再測定実施の有無を確認する(ステップS10)。そして、データ処理計算機45が、再測定を実施したと判断した場合(ステップS10でYESの場合)、データ処理計算機45は、測定データが異常である旨の警告を発して(ステップS11)、測定結果適否判定手順を終了する(END)。
【0095】
ここでいう警告は、ユーザにデータ受信に異常があった旨を伝達できるものであれば、その種類を問わない。例えば、ディスプレイ55に警告を表示する等の視覚的なものであっても良いし、スピーカ(図を省略)から警告音を発する等の聴覚的なものであっても良い。また、これらの組み合わせであっても良い。
【0096】
他方、ステップS4において、データ処理計算機45が、測定信号処理装置43から受信した測定値に基づいて算出する濃度の方が予め設定された検出限界濃度よりも低いと判断した場合(ステップS4でNOの場合)、ステップS12に進み、データ処理計算機45が、測定データに有意な指示変動の有無を判断する(ステップS12)。
【0097】
ステップS12において、データ処理計算機45が、測定データに有意な指示変動の有無がないと判断した場合(ステップS12でYESの場合)、漏洩検査容器12内で廃棄体2から放射性ガスが漏洩しているとしても検出限界以下であることから放射性ガスが漏洩していない(漏洩なし)と判断し(ステップS13)、測定結果適否判定手順を終了する(END)。
【0098】
また、ステップS7において、データ処理計算機45が、第2回目の測定データに異常があると判定した場合(ステップS7でNOの場合)および第1回目の測定値の方が第2回目の測定値よりも小さいと判断した場合(ステップS8でNOの場合)には、ステップS10に進み、ステップS10以降の処理ステップを実行する。
【0099】
第3の放射性ガス漏洩量測定装置10Cおよび第3の放射性ガス漏洩量測定方法によれば、第1の放射性ガス漏洩量測定装置10Aおよび第1の放射性ガス漏洩量測定方法と同様の効果を奏するのに加え、第1の放射性ガス漏洩量測定装置10Aおよび第1の放射性ガス漏洩量測定方法に対して、さらに、測定結果適否判定手順を実行するので、漏洩検査容器12内において廃棄体2から漏洩する放射性ガスの漏洩の有無および測定データの異常をより確実に検出することができる。すなわち、測定時に測定データの信頼性を確認することができるので、測定結果の信頼性を向上させることができる。
【0100】
なお、本実施形態の説明において、本発明の第1の実施形態に係る放射性ガス漏洩量測定装置に測定結果適否判定機能を付加した放射性ガス漏洩量測定装置の例を説明したが、測定結果適否判定機能を付加する装置は、必ずしも本発明の第1の実施形態に係る放射性ガス漏洩量測定装置に限定されない。すなわち、本発明の他の実施形態に係る放射性ガス漏洩量測定装置に測定結果適否判定を付加した放射性ガス漏洩量測定装置を構成することもできる。
【0101】
[第4の実施形態]
図8は本発明の第4の実施形態に係る放射性ガス漏洩量測定装置の一例である第4の放射性ガス漏洩量測定装置10Dの配管系統図である。なお、図8に示される弁V1,V2,V3,V4の開閉状態は測定時(上述した図3に示される測定時間T)における開閉状態を示している。
【0102】
第4の放射性ガス漏洩量測定装置10Dは、第1の放射性ガス漏洩量測定装置10Aに対して、配管系統11Aの代わりに、配管系統11Bを具備する点で相違する。そこで、本実施形態の説明では、上述した第1の実施形態と異なる点を中心に説明し、同じ構成要素については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0103】
第4の放射性ガス漏洩量測定装置10Dは、廃棄体容器2bに放射性廃棄物2aを充填した廃棄体2を収容する漏洩検査容器12内の気体をサンプリングする流路(サンプリングライン)を構成する配管系統11Bと、測定系41と、コントローラ54と、を具備する。
【0104】
配管系統11Bは、配管系統11Aに対して、サンプリング元弁V1および空気取入弁V3の代わりに、それぞれ、バイパス切替三方弁V11および拡散媒質供給元切替三方弁V31が取り付けられる。
【0105】
拡散媒質供給元切替三方弁V31は、上流側(吸気ライン13側)の端部が吸気フィルタ15と接続され、かつ、下流側(排気ダクト14側)の端部が漏洩検査容器12と接続される空気取入弁V3に対して、第3の端部をさらに設けた構成である。拡散媒質供給元切替三方弁V31の第3の端部には、圧力調整弁V5を介してガス供給装置25に蓄えられる拡散媒質としてのガスを拡散媒質供給元切替三方弁V31を経由して漏洩検査容器12内へ供給するガス供給ライン26が接続される。
【0106】
ガス供給装置25に蓄えられる拡散媒質としてのガスは、例えば、水素H等の空気と密度が大きく異なる高純度な非放射性ガスが好ましい。
【0107】
また、バイパス切替三方弁V11は、上流側(吸気ライン13側)の端部が圧力調整容器17と接続され、かつ、下流側(排気ダクト14側)の端部が真空ポンプ18と接続されるサンプリング元弁V1に対して、第3の端部をさらに設けた構成である。バイパス切替三方弁V11の第3の端部には、真空ポンプ18をバイパスする流路となるバイパスライン27が接続される。
【0108】
このように構成される配管系統11Bを具備する第4の放射性ガス漏洩量測定装置10Dでは、拡散媒質供給元切替三方弁V31の開閉状態を必要に応じて切り替えることで、漏洩検査容器12内に供給する拡散媒質としてのガスの種類を切り替えることができる。
【0109】
続いて、本発明の第4の実施形態に係る放射性ガス漏洩量測定方法(以下、「第4の放射性ガス漏洩量測定方法」と称する。)について説明する。
【0110】
第4の放射性ガス漏洩量測定方法は、例えば、第4の放射性ガス漏洩量測定装置10Dを用いて、廃棄体2を収納する漏洩検査容器12内のガスをサンプリングし、サンプリングしたガスの濃度に基づいて漏洩検査容器12内に漏洩するガスの漏洩量を測定する方法である。
【0111】
第4の放射性ガス漏洩量測定方法は、第1の放射性ガス漏洩量測定方法に対して、配管系統11Bの流路に拡散媒質を充満させる拡散媒質充満ステップを、さらに備える点で相違する。そこで、第4の放射性ガス漏洩量測定方法の説明では、拡散媒質充満ステップを中心に説明する。
【0112】
図9は、第4の放射性ガス漏洩量測定装置10Dにおける、測定信号処理装置43、各弁V11,V2,V4,V31,V5、ガス供給装置および真空ポンプ18の動作タイミングを説明する説明図(タイミングチャート)である。
【0113】
図9に示されるタイミングチャートは、横軸が経過時間であり、縦軸が例えばON(入)とOFF(切)、OPEN(開)とCLOSE(閉)、PUMP(真空ポンプ18側)とBYPASS(バイパスライン27側)等の状態を示している。また、T,T,T,T,T,T,Tは、それぞれ、放置時間、測定準備時間、測定時間、後処理時間、拡散媒質充満時間、真空引き時間および掃引時間(パージ時間)である。
【0114】
図9に示されるように、第4の放射性ガス漏洩量測定装置10Dでは、放置時間Tの前に拡散媒質充満時間Tが設定される点で、第1の放射性ガス漏洩量測定装置10Aにおける制御シーケンス(図3)と相違する。ここで、拡散媒質充満時間Tとは、漏洩検査容器12内で廃棄体2を放置する放置時間Tに先立って、配管系統11Bの流路に拡散媒質を充満させる時間、すなわち、拡散媒質充満ステップが実行される時間である。
【0115】
拡散媒質充満ステップでは、拡散媒質供給元切替三方弁V31が、ガス供給装置25と接続されるガス供給ライン26側を開いて流路を接続する一方、吸気フィルタ15と接続される流路を閉じる(BOMBE)。また、バイパス切替三方弁V11が、バイパスライン27側を開いてバイパスライン27を接続する一方、真空ポンプ18と接続される流路を閉じる(BYPASS)。さらに、圧力調整弁V5を開いて(OPEN)、ガス供給装置25から内部に蓄積される拡散媒質としてのガスがガス供給ライン26へ送り出される(ON)。
【0116】
拡散媒質充満ステップは、例えば、拡散媒質充満時間T等の所定時間行われ、ガス供給ライン26、拡散媒質供給元切替三方弁V31、漏洩検査容器12、試料採取弁V2、放射性ガス採取容器16、圧力調整容器入口弁V4、圧力調整容器17、バイパス切替三方弁V11およびバイパスライン27の内部を水素Hガス等の拡散媒質で充満させる。
【0117】
拡散媒質充満ステップは、ガス供給ライン26、拡散媒質供給元切替三方弁V31、漏洩検査容器12、試料採取弁V2、放射性ガス採取容器16、圧力調整容器入口弁V4、圧力調整容器17、バイパス切替三方弁V11およびバイパスライン27の内部を拡散媒質で充満させた後、拡散媒質供給元切替三方弁V21、バイパス切替三方弁V31および圧力調整弁V5が閉じ(CLOSE)、ガス供給装置25からのガス供給を停止する(OFF)ことによって終了する。なお、第4の放射性ガス漏洩量測定方法において、拡散媒質充満ステップ以降の処理ステップは、第4の放射性ガス漏洩量測定方法と同様である。
【0118】
第4の放射性ガス漏洩量測定方法では、放置時間Tの前に、拡散媒質充満ステップを行うため、85Kr等の放射性ガスは自身よりも格段に軽い拡散媒質の中を広がることになる。すなわち、漏洩検査容器12内の水平方向の拡散係数は、第1の放射性ガス漏洩量測定方法で適用される拡散媒質である空気の時よりも増大し、拡散が促進される。
【0119】
図10は、第4の放射性ガス漏洩量測定装置10Dの漏洩検査容器12内で放射性ガスが拡散する様子をシミュレーションした結果を示す説明図(グラフ)である。なお、図10に示されるシミュレーション条件は、拡散媒質を水素Hとし、それ以外の条件は図4に示されるシミュレーション条件と同様である。
【0120】
図10に示されるシミュレーション結果によれば、拡散媒質を窒素Nとする第1の放射性ガス漏洩量測定方法の場合、漏洩検査容器12内の放射性ガスの濃度が略均一となるまでに1000秒を要する(図4)。一方、非放射性ガスの一例である水素Hを拡散媒質をとする第4の放射性ガス漏洩量測定方法の場合、漏洩検査容器12内の放射性ガスの濃度が略均一となるまでに500秒を要する(図10)。すなわち、水素Hを拡散媒質とした場合、窒素Nを拡散媒質とする場合の半分の時間で漏洩検査容器12内の放射性ガスの濃度が均一となっていることがわかる
【0121】
第4の放射性ガス漏洩量測定装置10Dおよび第4の放射性ガス漏洩量測定方法によれば、第1の放射性ガス漏洩量測定装置10Aおよび第1の放射性ガス漏洩量測定方法と同様の効果を、より短時間で得ることができる。
【0122】
[第5の実施形態]
図11は本発明の第5の実施形態に係る放射性ガス漏洩量測定装置の一例である第5の放射性ガス漏洩量測定装置10Eの配管系統図である。なお、図11に示される弁V1,V2,V3,V4の開閉状態は測定時(上述した図3に示される測定時間T)における開閉状態を示している。
【0123】
第5の放射性ガス漏洩量測定装置10Eは、第1の放射性ガス漏洩量測定装置10Aに対して、配管系統11Aの代わりに、配管系統11Cを具備する点で相違する。そこで、本実施形態の説明では、上述した第1の実施形態と異なる点を中心に説明し、同じ構成要素については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0124】
第5の放射性ガス漏洩量測定装置10Eは、廃棄体容器2bに放射性廃棄物2aを充填した廃棄体2を収容する漏洩検査容器12内の気体をサンプリングする流路(サンプリングライン)を構成する配管系統11Cと、測定系41と、コントローラ54と、を具備する。
【0125】
配管系統11Cは、配管系統11Aに対して、漏洩検査容器12内のガスを循環させる流路であるガス循環ライン31がさらに設けられる。ガス循環ライン31には、循環ポンプ33と、漏洩検査容器12内のガスの熱を放熱(除熱)する冷却装置34とが設置される。ここで、循環ポンプ33は、漏洩検査容器12内のガスをガス循環ライン31を通して循環させるポンプである。冷却装置34は、高速回転する循環ポンプ33を通過する際に漏洩検査容器12内のガスが過熱されて温度上昇するため、当該ガスの熱を放熱(除熱)して冷却する装置である。
【0126】
漏洩検査容器12内のガスは、稼動する循環ポンプ33によって、漏洩検査容器12から循環ポンプ32および冷却装置34へ順次導かれ、冷却装置34から再び漏洩検査容器12に戻される。
【0127】
すなわち、第5の放射性ガス漏洩量測定装置10Eにおいて、循環ポンプ33を動作させると、循環ポンプ33が動作している間、漏洩検査容器12内のガスは、ガス循環ライン31内を循環する。
【0128】
続いて、本発明の第5の実施形態に係る放射性ガス漏洩量測定方法(以下、「第5の放射性ガス漏洩量測定方法」と称する。)について説明する。
【0129】
第5の放射性ガス漏洩量測定方法は、例えば、第5の放射性ガス漏洩量測定装置10Eを用いて、廃棄体2を収納する漏洩検査容器12内のガスをサンプリングし、サンプリングしたガスの濃度に基づいて漏洩検査容器12内に漏洩するガスの漏洩量を測定する方法である。
【0130】
第5の放射性ガス漏洩量測定方法は、第1の放射性ガス漏洩量測定方法に対して、測定前に漏洩検査容器12内のガスをガス循環ライン31を通して循環させることによって、漏洩検査容器12内のガス濃度を均一化するガス濃度均一化ステップをさらに備える点で相違するが、その他の点については実質的に相違しない。
【0131】
第5の放射性ガス漏洩量測定装置10Eおよび第5の放射性ガス漏洩量測定方法によれば、第1の放射性ガス漏洩量測定装置10Aおよび第1の放射性ガス漏洩量測定方法と同様の効果を奏するのに加えて、漏洩検査容器12内のガスを、第5の放射性ガス漏洩量測定装置10Eに設けられたガス循環ライン31で循環させることができるので、漏洩検査容器12内のガス濃度を均一にすることができる。
【0132】
従って、第5の放射性ガス漏洩量測定装置10Eおよび第5の放射性ガス漏洩量測定方法によれば、他の放射性ガス漏洩量測定装置および放射性ガス漏洩量測定方法よりも、より正確に放射性ガスの濃度および漏洩量を測定することができる。
【0133】
以上、本発明の実施形態に係る放射性ガス漏洩量測定装置および放射性ガス漏洩量測定方法によれば、サンプリングガスの濃度および漏洩量を計測する際、サンプリングガスが拡散する流路、すなわち、空気取入弁V3よりも下流であって、閉止しているサンプリング元弁V1よりも上流に位置する流路は、他の流路と完全に分離されているため、外気の流入を防止することができる。
【0134】
従って、本発明の実施形態に係る放射性ガス漏洩量測定装置および放射性ガス漏洩量測定方法では、廃棄体2から漏洩する放射性ガスの量が微小な場合であっても、放射性ガス濃度が希釈されず保持されるので、放射性ガス濃度を保持したまま放射性ガス検出器23で放射性ガスをサンプリングし、放射性ガスの漏洩量を測定することができる。
【0135】
また、本発明の実施形態に係る放射性ガス漏洩量測定装置および放射性ガス漏洩量測定方法によれば、サンプリングガスの濃度および漏洩量を計測する際、サンプリングガスが拡散する流路、すなわち、空気取入弁V3よりも下流であって、閉止しているサンプリング元弁V1よりも上流に位置する流路における圧力が負圧となっているため、電源喪失時における放射性ガスのアウトリークを防止できる。従って、従来よりも安全性を向上させることができる。
【0136】
さらに、本発明の実施形態に係る放射性ガス漏洩量測定装置および放射性ガス漏洩量測定方法によれば、従来技術に比べて、流量を制御・測定する機器が不要となるため、部品点数が減少するとともに、設置スペースを小さくすることができる。
【0137】
本発明の実施形態に係る放射性ガス漏洩量測定装置および放射性ガス漏洩量測定方法において、漏洩検査容器12内で廃棄体2を放置する放置時間Tに先立って、放置前準備時間Tを設定した場合、廃棄体2からの放射性ガスの漏洩量を増加させることができる。また、測定結果適否判定手順を実行する場合、測定結果の信頼性を向上させることができる。
【0138】
さらに、本発明の実施形態に係る放射性ガス漏洩量測定装置および放射性ガス漏洩量測定方法において、拡散媒質として、例えば、水素H等の空気と密度が大きく異なる高純度な非放射性ガスを、測定を行う流路である配管系統11Bに充満させる場合、拡散媒質が空気の場合よりも、放射性ガスが漏洩検査容器12内の水平方向において拡散する速度を増すことができる。
【0139】
さらにまた、本発明の実施形態に係る放射性ガス漏洩量測定装置および放射性ガス漏洩量測定方法において、漏洩検査容器12内のガスをガス循環ライン31で循環させる場合には、漏洩検査容器12内のガス濃度を均一にすることができるので、より正確に放射性ガスの濃度および漏洩量を測定することができる。
【0140】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階では、上述した実施例以外にも様々な形態で実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0141】
2 廃棄体
2a 放射性廃棄物
2b 廃棄体容器
10A,10B,10C,10D,10E 放射性ガス漏洩量測定装置
11A,11B,11C 配管系統
12 漏洩検査容器
13 吸気ライン
14 排気ダクト
15 吸気フィルタ
16 放射性ガス採取容器
17 圧力調整容器
18 真空ポンプ
21 圧力伝送器
23 放射性ガス検出器(DET)
25 ガス供給装置
26 ガス供給ライン
27 バイパスライン
31 ガス循環ライン
33 循環ポンプ
34 冷却装置
41 測定系
43 測定信号処理装置(測定信号処理部)
45 データ処理計算機(データ処理部)
46 前置増幅器(PRE)
47 線形増幅器(LIN)
48 パルス波高弁別器(DIS)
49 パルス分析装置(MCA)
50 高圧電源(HV)
54 コントローラ
55 ディスプレイ
V1 サンプリング元弁
V11 バイパス切替三方弁
V2 試料採取弁
V3 空気取入弁
V31 拡散媒質供給元切替三方弁
V4 圧力調整容器入口弁
V5 圧力調整弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気を吸気する吸気ラインと第1の開閉弁を介して接続され、放射性ガスを放出する被測定対象物を収容する漏洩検査容器と、前記漏洩検査容器と第2の開閉弁を介して接続され、前記漏洩検査容器からサンプリングしたガスを貯める放射性ガス採取容器と、前記放射性ガス採取容器と第3の開閉弁を介して接続され、前記漏洩検査容器内のガスを前記放射性ガス採取容器に導くように圧力調整される圧力調整容器と、前記圧力調整容器と第4の開閉弁を介して接続され、前記圧力調整容器を真空引きし、気体を排気する排気ダクトへガスを排出する真空ポンプとを接続して形成される流路と、
前記放射性ガス採取容器と前記圧力調整容器とを含む流路内の圧力を測定する圧力伝送器と、
前記放射性ガス採取容器に充満しているガスからの放射線を検出する放射性ガス検出器の出力信号を信号処理して測定値を得る測定信号処理部と、
前記測定信号処理部が得た測定値に基づき前記被測定対象物の廃棄体容器から漏洩する放射性ガスの漏洩量を算出するデータ処理部と、を具備することを特徴とする放射性ガス漏洩量測定装置。
【請求項2】
前記真空ポンプの入切と前記第1の開閉弁、前記第2の開閉弁、前記第3の開閉弁、および前記第4の開閉弁の開閉とを制御するとともに、前記圧力伝送器から測定した圧力値を取得するコントローラを、さらに具備することを特徴とする請求項1記載の放射性ガス漏洩量測定装置。
【請求項3】
前記コントローラは、前記廃棄体容器から漏洩する放射性ガスの漏洩量を測定する前に、前記圧力調整容器内の圧力を所望の負圧に維持する制御を行うように構成されることを特徴とする請求項1または2記載の放射性ガス漏洩量測定装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記廃棄体容器から漏洩する放射性ガスの漏洩量を測定する前に、前記漏洩検査容器から前記圧力調整容器までの流路内の圧力を大気圧から低下させて負圧とする制御を行うように構成されることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の放射性ガス漏洩量測定装置。
【請求項5】
非放射性ガスを蓄積したガス供給装置から前記流路内へ前記非放射性ガスを供給するガス供給ラインをさらに設けたことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の放射性ガス漏洩量測定装置。
【請求項6】
前記漏洩検査容器内のガスを循環させる循環ポンプと、前記漏洩検査容器内のガスの熱を放熱する冷却装置とが設置される循環ラインをさらに設けたことを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の放射性ガス漏洩量測定装置。
【請求項7】
外気を吸気する吸気ラインと第1の開閉弁を介して接続され、放射性ガスを放出する被測定対象物を収容する漏洩検査容器と、前記漏洩検査容器と第2の開閉弁を介して接続され、前記漏洩検査容器からサンプリングしたガスを貯める放射性ガス採取容器と、前記放射性ガス採取容器と第3の開閉弁を介して接続され、前記漏洩検査容器内のガスを前記放射性ガス採取容器に導くように圧力調整される圧力調整容器と、前記圧力調整容器と第4の開閉弁を介して接続され、前記圧力調整容器を真空引きし、気体を排気する排気ダクトへ排気する真空ポンプとを接続して形成される流路と、この流路内の圧力を測定する圧力伝送器と、前記放射性ガス採取容器に充満しているガスからの放射線を検出する放射性ガス検出器の出力信号を信号処理して測定値を得る測定信号処理部と、前記測定信号処理部が得た測定値に基づき前記被測定対象物の廃棄体容器から漏洩する放射性ガスの漏洩量を算出するデータ処理部と、前記真空ポンプの入切と前記第1の開閉弁、前記第2の開閉弁、前記第3の開閉弁、および前記第4の開閉弁の開閉とを制御するとともに、前記圧力伝送器から測定した圧力値を取得するコントローラとを具備する放射性ガス漏洩量測定装置を用いて行う放射性ガス漏洩量測定方法であり、
前記コントローラが、前記圧力調整容器内の圧力を所望の負圧に維持するステップと、
前記コントローラが、前記第2の開閉弁および前記第3の開閉弁を開いて前記漏洩検査容器内のガスを前記放射性ガス採取容器に導くステップと、
前記測定信号処理部が前記放射性ガス採取容器に充満しているガスからの放射線を検出する放射性ガス検出器の出力信号を信号処理して測定値を得るステップと、
前記測定信号処理部が得た測定値に基づき前記廃棄体容器から漏洩する放射性ガスの漏洩量を算出するステップとを具備することを特徴とする放射性ガス漏洩量測定方法。
【請求項8】
前記コントローラが、前記廃棄体容器から漏洩する放射性ガスの漏洩量を測定する前に、前記漏洩検査容器から前記圧力調整容器までの流路内の圧力を大気圧から低下させて負圧とするステップをさらに具備することを特徴とする請求項7記載の放射性ガス漏洩量測定方法。
【請求項9】
前記データ処理部は、保有する測定結果適否判定手順の処理内容および処理フローの情報に基づいて、前記放射性ガス漏洩量の測定結果が正常か否かを判定する測定結果適否判定手順を実行し、この測定結果適否判定手順は、前記データ処理部が、
第1回目の測定データおよび第2回目の測定データを受信するステップと、
測定データ受信が正常に行われたか否かを判定するステップと、
受信した前記第1回目の測定データである測定値と前記第2回目の測定データである測定値が前記放射性ガス検出器の検出限界濃度よりも高いか否かを比較するステップと、
受信した前記第1回目の測定データである測定値と前記第2回目の測定データである測定値の大小関係をするステップと、
を備えることを特徴とする請求項7または8記載の放射性ガス漏洩量測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−15349(P2013−15349A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146820(P2011−146820)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】