説明

放射状系統作成装置、放射状系統作成方法、放射状系統作成プログラムおよびそのプログラムを記録した記録媒体

【課題】PSO(Particle Swarm Optimization)を用いて、最適な配電系統の放射状系統を求める。
【解決手段】配電系統の設備をノードN1〜N9とし、ノード間の接続状態をブランチB1〜B11として、(ブランチ数−ノード数+1)個のループを決定する。そして、ループを円と見做して、当該ループを構成するブランチを円周上の円弧で表現し、その円弧の長さによって対応付けられた回転角の範囲とブランチとを対応付ける。その回転角はPSOを適用して算出され、算出された回転角に対応するブランチが開放ブランチとして決定される。そして、放射状系統を多数生成し、それらの放射状系統の中で、評価関数(配電ロス、潮流制約違反量、電圧違反量等)の値が最小になるものを終了条件に達するまで繰り返し探索し、最適な放射状系統を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力システムにおける送配電設備の接続状態を示す配電系統の中から、電圧、潮流等各種の配電系統の運用制約条件を満足するように配電ロス等の目的関数を最小化する放射状系統を作成する放射状系統作成装置、放射状系統作成方法、放射状系統作成プログラムおよびそのプログラムを記録した記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
需要家への配電経路が事故等により障害を起こしたとき、あるいは設備の点検等で一部設備が利用できないときに、別の配電経路に切り換えて配電できるようにするため、配電系統はメッシュ状に設備形成されている。しかし、運用する際には、障害発生時の対応を容易にするため、すなわち事故点の特定および事故点の切り離しを容易にするため、配電系統は放射状にして運用されている。
【0003】
放射状系統を作成する場合、開閉器の入り切りを決定する組合せ最適化問題を解く必要がある。電力会社の一つの営業所が監視制御する配電系統では、開閉器の数が数千にも及ぶことがある。例えば、開閉器の数が1000と仮定したとき、開閉器の入り切りの組合せ総数は2の1000乗通り、すなわち約10の300乗通りになる。この場合、開閉器の入り切りの1つの組合せを評価するときに、10の−10乗秒を必要とした場合、全組合せを評価するには10の290乗秒を必要とする。そのため、計算機の性能が飛躍的に向上したとしても、全組合せをチェックして最適解を求めることは時間的に不可能である。
【0004】
放射状系統の作成に掛かる計算時間を短縮するために、遺伝的アルゴリズムを用いる発明が開示されている(特許文献1)。特許文献1に係る発明では、配電系統の設備をノードとし、ノード間の接続状態をブランチとして、ループを構成するブランチを開放ブランチとするか否かを示す情報を遺伝子とし、遺伝的操作を行って、開放ブランチのパターンを算出する。そして、開放ブランチのパターンの算出と、その開放ブランチのパターンにおいて予め定められた評価関数(送電ロス電力、潮流制約違反、電圧制約違反を変数とする関数)の値の算出とが、所定の終了条件を満たすまで繰り返され、最適な放射状系統が決定されている。
【0005】
遺伝的操作として、例えば、交叉および突然変異がある。交叉とは、2つの遺伝子を、任意の位置で部分的に入れ替えることである。また、突然変異とは、任意の遺伝子の値を、別の値に変更することである。なお、交叉および突然変異は、乱数を発生させる関数の出力が所定の値より小さいときに行われる。
【特許文献1】特開平11−266533号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記した特許文献1に係る方法では、交叉や突然変異等に係る処理において演算が煩雑になるため、放射状系統の算出には計算時間がかかるという問題がある。 そこで、本発明は、以上のような問題に鑑みてなされたものであり、配電系統の放射状系統の作成に掛かる計算時間を低減する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明では、最近注目されている最適化手法の一つとして、PSO(Particle Swarm Optimization)を放射状系統の作成に適用する。PSOは、鳥の群れ(Swarm)が餌を探す行動を模擬したもので、ある鳥が餌を見つけると群れでこの情報を共有することにより更によい餌(解)を見つけようとする行動を模擬する手法である(相吉英太郎,安田恵一郎,「メタヒューリスティクスと応用」,電気学会,2007年10月,p.69〜86)。このPSOを開放ブランチの決定に適用することによって、発生させた乱数によって開放ブランチを決定する。そして、経路の異なる放射状系統を多数生成しつつ、それらの放射状系統の中で、配電系統全体の評価関数を最小にするようにして、最適な放射状系統を決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、配電系統の放射状系統の作成において、PSOを適用して開放ブランチを決定することが容易になるため、計算時間を低減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明を実施するための最良の形態(以降、「実施形態」という)について、適宜図面を用いながら詳細に説明する。
【0010】
《PSOを適用した放射状系統作成の概要》
まず、配電系統をノードとブランチで表現した配電系統モデルについて、図1を用いて、説明する。図1は、配電系統をノードとブランチで表現したモデルを示す図である。
なお、図1において、ループ状の太線に付した符号#1〜#3はループ番号を示し、ブランチを表す線分に付した符号B1〜B11はブランチ番号を示し、ノードを表す黒丸に付した符号N1〜N9はノード番号を示している。なお、各開放ブランチB5,B6,B11は、×印によって示されている。ここで、ノードは、具体的には、電源、負荷および母線等の配電設備を表し、ブランチはノード間の接続の開閉器等を表す。
また、図1に示すように、開放ブランチを含む配電系統を、本実施形態では「個体」の表現型という。
【0011】
図1に示す配電系統モデルは、9つのノードN1〜N9と、隣接する2つのノード間を接続する11個のブランチB1〜B11によって構成されている。この配電系統モデルを放射状系統とするために必要な開放ブランチの数は、(ブランチ数−ノード数+1)により求められるので、11−9+1=3となる。従って、この配電系統モデルでは、3つのループ(連続した3つ以上のブランチから構成される多角形)を想定し、ループごとに開放ブランチを1つ決定すれば、放射状系統にすることができる。ただし、それぞれ1つの開放ブランチを有する3つのループで系統を構成することは、放射状系統となるため必要条件であって、十分条件ではない。
【0012】
この図1に示した配電系統を放射状系統とするためには、例えば、各ノードN1(電源),N2,N4,N7,N8,N5と、各ノードN1(電源),N3,N6,N9とが、それぞれこの順で接続することが考えられる。すなわち、この配電系統モデルは、開放されたブランチB6(ノードN5とN6との間)を含むループ番号#1(ノードN1,N2,N4,N5,N6,N3をこの順で繋いだループ)と、開放されたブランチB11(ノードN8とN9との間)を含むループ番号#2(ノードN5,N8,N9,N6をこの順で繋いだループ)と、開放されたブランチB5(ノードN4とN5との間)を含むループ番号#3(ノードN4,N7,N8,N5をこの順で繋いだループ)とから構成されていると考えることができる。
なお、図1では、ループ番号#1には開放ブランチが2個あるように見えるが、ループごとに1つの開放ブランチを設定すると、このような場合が起こりうる。そして、このような場合があっても構わない。
【0013】
本実施形態では、ループを放射状にするために必要な条件数分のループを作成し、そのループを円として考えたときに、当該ループを構成するブランチを円周上の円弧で表現し、その円弧の長さによって対応づけられた回転角の範囲とブランチとを対応付ける。そして、その回転角をPSOを適用して算出し、算出された回転角に対応するブランチを開放ブランチとする。
【0014】
例えば、図1に示す配電系統モデルにおける回転角とブランチとの対応関係について、図2を用いて説明する。図2(a)は、図1に示す配電系統モデルのループ#1における回転角とブランチとの対応関係を示す図であり、(b)は、図1に示す配電系統モデルのループ#2における回転角とブランチとの対応関係を示す図であり、(c)は、図1に示す配電系統モデルのループ#3における回転角とブランチとの対応関係を示す図である。
【0015】
図2(a)は、図1に示したループ#1の各ブランチB1,B3,B5,B6,B4,B2と回転角θ1との関係を示している。円周上には、各ブランチが、物理的な接続関係を維持するように並べられている。6つのブランチに対して均等に対応する回転角を割り当てたとすると、ブランチB1は0度〜60度未満、ブランチB3は60度〜120度未満、ブランチB5は120度〜180度未満、ブランチB6は180度〜240度未満、ブランチB4は240度〜300度未満、ブランチB2は300度〜360度未満となる。そして、図2(a)では、PSOを適用して算出された回転角θ1がブランチB6に対応する回転角の範囲にあるので、ブランチB6が開放ブランチと決定される。ただし、回転角に360度の整数倍を加算した場合も、同じブランチに対応することになる。なお、回転角の算出の詳細については後記する。
【0016】
また、図2(b)は、図1に示したループ#2の各ブランチB6,B8,B11,B9と回転角θ2との関係を示している。4つのブランチに対して均等に対応する回転角を割り当てたとすると、ブランチB6は0度〜90度未満、ブランチB8は90度〜180度未満、ブランチB11は180度〜270度未満、ブランチB9は270度〜360度未満となる。そして、PSOを用いて算出された回転角θ2がブランチB11に対応する回転角の範囲にあるので、ブランチB11が開放ブランチと決定される。なお、回転角に360度の整数倍を加算した場合も、同じブランチに対応することになる。
【0017】
同様に、図2(c)は、図1に示したループ#3の各ブランチB5,B7,B10,B8と回転角θ3との関係を示している。4つのブランチに対して均等に対応する回転角を割り当てたとすると、ブランチB5は0度〜90度未満、ブランチB7は90度〜180度未満、ブランチB10は180度〜270度未満、ブランチB8は270度〜360度未満となる。そして、PSOを用いて算出された回転角θ3がブランチB5に対応する回転角の範囲にあるので、ブランチB5が開放ブランチと決定される。なお、回転角に360度の整数倍を加算した場合も、同じブランチに対応することになる。
そして、図1に示した個体の表現型(開放ブランチを含む配電系統)は、図2に示す回転角を用いたベクトル(θ1,θ2,θ3)(ただし、0≦θ1,θ2,θ3≦360)と表現できる。
【0018】
《PSOを適用した最適化処理の概要》
ここで、PSOを適用した最適化処理の概要について、図20を用いて説明する。図20は、PSOを適用した最適化処理の概要を示す図である。
図20において、○印は個体と呼ばれ、群れを構成する鳥に対応するものである。そして、各個体は位置x(状態量)と速度vの情報を持っている。ここで、位置xは、前記した回転角(θ1・・)を用いて、式(1)で表される。

x=(θ1,θ2,θ3,・・) ・・式(1)
ただし、θ1,θ2,θ3は、本実施形態では回転角に相当する。

【0019】
各個体は、自身の評価関数f(x)が最小となるように探索されるものとする。なお、評価関数f(x)は、本実施形態では、後記するように、配電ロスや設備負荷率最大設備の負荷率を算出する関数や、潮流制約違反量および電圧違反量を算出する関数等である。
【0020】
そして、各個体は、式(2)に示すように、pbestとgbestと現在の個体の位置xと速度vとを用いてその個体の次世代の速度を算出していく。なお、pbest(個体の暫定最適解)は、個体自身の評価関数値が最も小さかったときの位置であり、gbest(群れの暫定最適解)は、これまでに得られた鳥の群れ全体に対応する個体全体の中で評価関数値が最も小さかったときの位置である。そして、個体の位置xは、式(3)により更新される。そして、各個体は、自身の評価関数値を最小化するように探索され、また、群れ全体の評価関数値を最小化するように探索される。

ik+1=w×vik+c1×rand×(pbestik−xik)+c2×rand×(gbestk−xik
・・式(2)

ik+1=xik+vik+1 ・・式(3)

ただし、iは個体番号、xiは各個体の位置、viは各個体の速度、randは0〜1の範囲の一様乱数、kは位置の更新回数(世代番号)、c1は個体の暫定最適解と現在位置との偏差係数、c2は群れの暫定最適解と現在解位置との偏差係数およびwは速度の慣性項を示す。なお、c1、c2、wは定数である。
【0021】
そして、PSOを適用した最適化処理は以下のようになる。
Step1:個体の位置xiと速度viを乱数で初期化する。初期値は乱数を使って設定する。
Step2:評価関数f(xi)を計算し、「現在のf(xi)」とする。
Step3:個体のそれまでの最小値f(pbesti)と「現在のf(xi)」とを比較する。もし「現在のf(xi)」<f(pbesti)であれば、f(pbesti)=「現在のf(xi)」とし、さらにpbesti=現在の位置xiとする。
Step4:群れ全体の最小値f(gbest)と「現在のf(xi)」とを比較する。もし「現在のf(xi)」<f(gbest)であれば、f(gbesti)=「現在のf(xi)」とし、gbest=xiとする。
Step5:式(2)で速度を更新し、式(3)で位置を更新する。
Step6:Step2に戻り収束条件(最大世代数)を満たすまで繰り返す。
【0022】
本実施形態では、式(1)に示したθを、式(2)および式(3)を用いて更新させ、配電経路の異なる放射状系統を多数生成して、それらの放射状系統の中で、評価関数f(x)が最小となるものを探索していく。
【0023】
次に、2つの個体の回転角の偏差である速度(更新情報)を−180度から+180度の範囲に制限したことによる効果について、図3および図4を用いて説明する。図3は、現在解xにおける回転角とブランチとの対応関係を示す図である。図4は、暫定最適解pbestにおける回転角とブランチとの対応関係を示す図である。
例えば、式(2)の第2項において、暫定最適解pbestikが図3に示す回転角30度であり、現在解xikが図4に示す330度であるとする。このとき、現在解xikと暫定最適解pbestiとの偏差である速度は、pbestik−xik=−300度となる。したがって、この例では、現在解xikから時計回りに300度回転して、暫定最適解pbestikに近づこうとしていることになる。すなわち、時計回りにB4,B6,B5およびB3を通過して(遠回りして)、pbestikのあるB1に近づけようとしていることになってしまっている。そこで、近づくという概念を実現するためには、反時計回りに60度近づけようとするのが、物理的に適正であることが分かる。よって、個体間の位置の偏差で表される速度を、−180度から+180度の範囲に変更することにする。これにより、固体の暫定最適解あるいは群れの暫定最適解に遠回りせずに近づくことができ、世代数の更新回数を抑制して、暫定最適解への収束を早める効果を実現できる。すなわち、計算時間を低減することが可能となる。
【0024】
《装置構成》
(1)ハードウエア構成
本実施形態の配電系統の放射状系統作成装置1の構成について、図5を用いて説明する。図5は、本実施形態の配電系統の放射状系統作成装置の構成について示す図である。
図5に示すように、中央演算処理装置(CPU)2601と、主記憶装置2602と、入出力装置2603と、外部記憶装置2604とを備える。
入出力装置2603は、キーボード、マウス、ポインティングデバイス、タッチセンサ等の入力装置6(図6に参照)、および、液晶表示装置等の表示装置7(図6参照)や、プリンタ等の出力装置である。
【0025】
外部記憶装置2604としては、ハードディスク装置、磁気テープ装置、光ディスク装置、光磁気ディスク装置、CD−ROM(compact disc - read only memory)装置、DAT(digital audio tape)装置、DVD(digital video disc)装置、不揮発性メモリ等を用いることができる。なお、本実施形態では、外部記憶装置2604として、データベース9(図6参照)等を保持するための大容量記憶装置と、処理プログラム等を保持する記憶媒体と、該記憶媒体に記録された情報を読み取るための読取装置10(図6参照)とを用いるが、本発明はこれには限られず、一つの外部記憶装置にデータベースと処理プログラムとが両方保持されているようにしてもよい。記憶媒体としては、CD−ROM、磁気テープ、光ディスク、光磁気ディスク、DAT、DVD、不揮発性メモリ等を用いることができる。
【0026】
(2)機能構成
本実施形態の放射状系統作成装置1の機能構成について、図6を用いて説明する。図6は、本実施形態の放射状系統作成装置の機能構成を示す図である。
放射状系統作成装置1は、入力装置6、表示装置7、印字装置8、データベース9および読取装置10と、データ処理部20とによって構成される。なお、データ処理部20は、予め外部記憶装置2604の記憶媒体や主記憶装置2602に記憶されていたプログラムを、CPU2601が実行することにより実現される。なお、本実施形態はこのようなプログラムされた汎用プロセッサによるものに限られなくてもよい。例えば、本実施形態の各ステップを実行するハードワイヤードロジックを含む特定のハードウエア装置や、プログラムされた汎用コンピュータとカスタムハードウエア装置との組合せ等によって、データ処理部20を実現してもよい。
【0027】
入力装置6は、表示装置7に表示された選択肢の選択入力、キーボードによる項目番号入力等を受け付け、受け付けたデータをデータ処理部20に送る。
表示装置7は、データ処理部20から送られてくるデータを表示する。
印字装置8は、データ処理部20から送られてくるデータをプリンタ等に印字する。
データベース9は、配電監視制御システム11から取り込んだデータおよびデータ処理部20の処理結果等を記憶する。なお、データベース9の詳細については、後記する。
【0028】
データ処理部20は、コントロール部21、データ取込部22、データ読込部23、計算条件設定部24、初期解作成部25、評価関数計算部26、終了条件判定部27、次世代個体生成部28および結果出力部29を備える。また、データ処理部20は、通信回線31を介して外部の配電監視制御システム11に接続されている。
データ処理部20は、入力装置6から入力されたデータと、データベース9から読み込んだデータと、配電監視制御システム11から取り込んだデータとを基に、最適な放射状系統を作成する。
また、データ処理部20による処理結果は、表示装置7に送られて表示されるとともに、データベース9に格納される。また、データ処理部20が作成した系統構成および評価結果は、配電監視制御システム11へも通知される。
【0029】
配電監視制御システム11は、実際の配電系統12と通信回線32を介して接続されている。なお、配電監視制御システム11は、配電系統12の計画・運用のための支援システム、配電系統12の監視制御システム、および配電系統の状態等を示す情報を保持するためのデータベースを備える。
【0030】
また、配電監視制御システム11は、データ処理部20から送信された系統構成および評価結果をもとに、遠隔で配電系統12に開放するブランチ、閉じるブランチの制御信号を出して、開閉器の入り切りを操作するとともに、配電系統12から、該系統の情報(電力潮流、電圧、負荷、分散型電源出力、開閉器のオンオフ等)を取り込み、その取り込んだデータと、計画システム(図示せず)において作成したデータとを、内部のデータベース(図示せず)に格納する。
【0031】
コントロール部21(制御部)は、入力装置6、表示装置7、印字装置8、データベース9、読取装置10、配電監視制御システム11、および、各処理部22〜29の間のデータや処理プログラム等の授受を円滑に行うためのデータの加工・処理を行い、その授受をコントロールして、全体の処理を正常に動作させる。
【0032】
データ取込部22は、コントロール部21を介して、配電監視制御システム11から配電系統の設備データおよびその特性や電圧、潮流、負荷等の実績値および負荷予測データを取り込んで、データベース9に格納する。
【0033】
データ読込部23は、コントロール部21を介して、データベース9に保持されているデータを読み込み、コントロール部21を介して計算条件設定部24、初期解作成部25、評価関数計算部26、次世代個体生成部28または結果出力部29に送信する。なお、本実施形態では、特に説明しない限り、データベース9からのデータの読み込みは、このデータ読込部23を介して行われる。
【0034】
計算条件設定部24は、コントロール部21を介して、既にデータベース9および/または読取装置10の記憶媒体に保持されている系統構成作成に使用する配電系統のデータ、設備特性を参照するとともに、処理プログラム等を取得する。それとともに、計算条件設定部24は、計算条件を表示装置7に表示し、入力装置6を介して設定された計算条件データを受け付け、さらに受け付けた計算条件データをデータベース9に格納する手段である。また、計算条件設定部24は、受け付けた条件の変更を設定し、新規の条件を作成するとともに、コントロール部21を介して、新規に作成した条件をデータベース9に格納する。なお、計算条件設定部24の詳細については、後記する。
【0035】
初期解作成部25は、コントロール部21を介して、データベース9から読み込んだデータ、データ読込部23および計算条件設定部24から引き渡されたデータをもとに初期個体(初期解)を生成する。生成された初期個体はコントロール部21を介して、データベース9に格納されるとともに、評価関数計算部26および次世代個体生成部28に引き渡される。
【0036】
評価関数計算部26は、コントロール部21を介して、データベース9から読み込んだデータ、データ読込部23、計算条件設定部24、初期解作成部25および次世代個体生成部28から引き渡されたデータをもとに作成された個体の評価関数値を計算する。計算した各個体の評価関数値はコントロール部21を介して、データベース9に格納されるとともに、終了条件判定部27および次世代個体生成部28に引き渡される。
【0037】
終了条件判定部27は、コントロール部21を介して、データベース9から読み込んだデータ、計算条件設定部24および評価関数計算部26から引き渡されたデータをもとに終了条件を満たすかどうかを判定する。終了条件判定部27は、終了条件を満たすときには、結果出力部29に終了したことをコントロール部21を介して通知する。
【0038】
次世代個体生成部28は、コントロール部21を介して、データベース9から読み込んだデータとともに、データ読込部23、計算条件設定部24、初期解作成部25および評価関数計算部26から引き渡されたデータをもとに次世代の個体を生成する手段である。生成した次世代個体はデータベース9に格納されるとともに、評価関数計算部26に引き渡される。なお、次世代個体生成部28の詳細については、後記する。
【0039】
結果出力部29は、作成した放射状系統や、評価関数の推移、入力装置6からのデータ入力の支援のための情報等を、表示装置7に表示させる。なお、本実施形態では、特に説明しない限り、表示装置7への出力は、この結果出力部29を介して行われる。
【0040】
ここで、計算条件設定部24の機能の詳細について図7を用いて説明する。図7は、計算条件設定部の機能の詳細を示す図である。
計算条件設定部24は、計算条件設定制御部240、個体数設定部241、終了条件設定部242、非放射状系統修正設定部243、評価関数設定部244、ペナルティ係数設定部245、PSO変数設定部246、ランダム修正条件設定部247、相対ブランチ番号変換条件設定部248、回転方向条件設定部249、回転角条件設定部250、およびループ設定部239を含む。
【0041】
計算条件設定制御部240は、既にデータベース9および/または読取装置10の記憶媒体に保持されている系統構成作成に使用する配電系統のデータ、設備特性、目的関数等の条件や、処理プログラム等を読み込むとともに、計算条件を表示装置7に表示し、入力装置6を介して設定されたデータを受け付ける。さらに、計算条件設定制御部240は、受け付けたデータをデータベース9に格納するために設定部241から250までを制御する。
【0042】
個体数設定部241は、PSOで使用するための個体数を設定する。
終了条件設定部242は、PSOの処理を終了する条件を設定する。
非放射状系統修正条件設定部243は、放射状系統とならなかった個体に対して、放射状系統とするための修正条件を設定する。
評価関数設定部244は、各個体の評価関数を設定する。
【0043】
ペナルティ係数設定部245は、放射状系統になっているための条件以外に、配電系統の運用制約が満足されていない場合、運用制約条件ごとに違反度あるいは違反数に応じて、評価関数にペナルティとして加算する場合のペナルティ係数を設定する。
PSO変数設定部246は、PSOで使用する変数を設定する。
【0044】
ランダム修正条件設定部247は、ランダム修正条件を設定しそのデータを格納する。
相対ブランチ番号変換条件設定部248は、回転角から相対ブランチ番号に変換し、また絶対ブランチ番号からループを構成する相対ブランチ番号に変換する。ここで絶対ブランチ番号とは、放射状系統を作成しようとするブランチに対して、固有の番号をつけたものである。相対ブランチ番号はあるループを構成するブランチ内での番号で、例えばそのループを構成するブランチ数がk個ある場合は、相対ブランチ番号が1からkまで設定されることになる。ループ番号と相対ブランチ番号とから1つの絶対ブランチ番号が決定される。この相対ブランチ番号変換条件設定部248における変換処理の詳細については後記する。
【0045】
相対ブランチ番号変換条件設定部248は、ループ番号とそのループを構成するブランチ番号とを決定する。
回転方向条件設定部249は、個体の回転速度方向および回転速度の範囲を決定する条件を設定する。
回転角条件設定部250は、個体の回転角および回転角の範囲を決定する条件を設定する。
ループ設定部239は、各ループを構成するブランチに対して回転角の範囲を設定する。このループ設定部239における処理の詳細については後記する。
【0046】
次に、次世代個体生成部28の機能の詳細について、図8を用いて説明する。図8は、次世代個体生成部の機能の詳細を示す図である。
次世代個体生成部28は、次世代個体生成制御部280、PSO変数計算部281、Δgbest・Δpbest計算部282、Δgbest・Δpbest修正部283、角速度計算部284、ランダム修正部286、回転角計算部287、放射状系統チェック部288および非放射状系統修正部289からなる。
【0047】
図8に示すように、次世代個体生成制御部280は、既にデータベース9および/または読取装置10の記憶媒体に保持されている系統構成作成に使用する配電系統のデータ、設備特性、目的関数等の条件や、処理プログラム等を読み込むとともに計算条件を表示装置7に表示し、入力装置6から設定したデータを受け付け、さらに設定したデータをデータベース9に格納するために各部(281〜289)を制御する。
【0048】
PSO変数計算部281は、世代に応じて変化するPSOで使用する変数を計算する手段である。
Δgbest・Δpbest計算部282は、群れ全体の暫定最適解gbestベクトルと個体の現在解θベクトルとの差を表す偏差ベクトルΔgbest、および個体の暫定最適解pbestベクトルと該個体の現在解θベクトルとの差を表す偏差ベクトルΔpbestを計算する。
Δgbest・Δpbest修正部283は、Δgbest・Δpbest計算部282で計算した偏差ベクトルΔgbest、偏差ベクトルΔpbestのそれぞれを制限範囲内に収めるための演算を行う。
【0049】
角速度計算部284は、次世代の個体の解の計算に使用する角速度を式(2)に従って計算する。
ランダム修正部286は、ランダム修正条件を満たす個体に対して解をランダムに修正する。
【0050】
回転角計算部287は、次世代の個体の回転角を決定し、その決定した回転角から開放する相対ブランチ番号および開放する絶対ブランチ番号を計算する。
放射状系統チェック部288は、次世代の個体の開放ブランチ番号をもとに、該個体が放射状系統になるかどうかをチェックする。
非放射状系統修正部289は、次世代の個体が放射状系統とならなかった場合に、該個体の開放ブランチ番号をもとに、放射状系統となるように開放ブランチ番号を修正する。
【0051】
(3)データベース9のデータ構造
データベース9の詳細について、図9を用いて説明する。図9は、データベースの詳細を示す図である。
図9に示すように、設備データ記憶部141と、負荷・電源データ記憶部142と、ネットワーク構造記憶部143と、計算条件記憶部144と、計算結果記憶部146とを備える。これらの領域のデータは、データ処理部20の各部22〜29からの要求でコントロール部21を介して読み出されたり格納されたりする。
【0052】
設備データ記憶部141は、登録番号に対応付けて設備データを保持する。設備データ記憶部141に保持される設備データは、系統構成作成の対象となる設備に関する系統設備データおよび配電系統データであり、登録番号ごとに登録されている。この設備データに含まれる系統設備の情報は、発送変配電設備の名称、特性データ、設備間の接続情報および開閉器のオンオフ情報である。なお、特性データは、電力潮流の制約値(または運用目標値)、目標電圧等や、各配電系統に接続される電源および負荷の特性情報である。電源設備には、火力発電所等の大型発電所以外に、太陽光発電設備、風力発電設備、充放電可能な電池等の小規模発電設備も含まれている。
【0053】
負荷・電源データ記憶部142は、設備データと関連して、登録番号に対応付けられ、また時間毎の負荷需要実績、電源の発電実績および負荷需要予測値、電源発電予測値を保持する。
ネットワーク構造記憶部143は、図10を用いて、その詳細について説明する。図10は、ネットワーク構造記憶部の詳細を示す図である。
図10に示すように、処理対象配電系統のノードブランチモデルの接続関係を記憶するノード・ブランチの接続関係記憶部1431、処理対象配電系統の全ノード数記憶部1432、処理対象配電系統の全ブランチ数記憶部1433、放射状系統とするために必要な開放ブランチ数記憶部1434、および開放ブランチ数記憶部1434に記憶されている数値と同じ数のループ数に対してそのループ番号とそのループを構成するブランチ番号とを関連付けるループ番号・ブランチ対応関係記憶部1435を備える。
【0054】
計算条件記憶部144(図9参照)は、図11を用いて、その詳細について説明する。図11は、計算条件記憶部の詳細を示す図である。
図11に示すように系統作成部20によるPSOを用いた配電系統の放射状系統作成処理の処理条件を保持するための記憶部であり、個体数記憶部1440、終了条件記憶部1441、非放射状系統修正条件記憶部1442、評価関数記憶部1443、ペナルティ係数記憶部1444、 PSO変数記憶部1445、ランダム修正条件記憶部1446、回転角・ブランチ番号対応関係記憶部1447、回転方向条件記憶部1448および回転角条件記憶部1449を含む。
【0055】
個体数記憶部1440は、PSOで使用する個体の数を記憶する。
終了条件記憶部1441は、PSOによる最適化処理を終了させるための条件であり、終了世代数あるいは暫定最適解が連続して更新されない世代数等を記憶する。
非放射状系統修正条件記憶部1442は、PSOで作成した系統が放射状系統とならなかった場合に乱数を用いて再度回転角を決定する方法を採用するのか、あるいは回転角速度方向に回転角を増加させたときに現時点で開放ブランチとなっているブランチの隣のブランチを開放させる方法を採用するかを設定した条件を記憶する。
【0056】
評価関数記憶部1443は、PSOを用いて放射状系統を作成するときに設定する目的関数とペナルティ関数とを組み合わせた評価関数を記憶する。目的関数は、例えば、配電ロスを最小化、設備負荷率を平準化、または設備負荷率最大設備の負荷率を最小化する関数等である。ペナルティ関数は、例えば、運用制約の違反量(潮流制約違反量、電圧違反量等)の度合に応じて増加する関数である。
ペナルティ係数記憶部1444は、運用制約違反量に対するペナルティ係数を記憶する。
【0057】
PSO変数記憶部1445は、PSOで使用する群れの暫定最適解と現在解との偏差角度に対する係数c1と、個体自身の暫定最適解と現在解との偏差角度に対する係数c2と、角速度の慣性係数であるwの初期値および最大世代数における値とを記憶する。
ランダム修正条件記憶部1446は、開放ブランチを変更する確率Rmと設定したランダムに修正する対象(個体の回転角、回転速度あるいは開放ブランチ)を記憶する。
回転角・ブランチ番号対応関係記憶部1447は、ループごとの回転角とループを構成する相対ブランチ番号との対応関係およびループ番号の相対ブランチ番号と絶対ブランチ番号との対応関係を記憶する。
【0058】
回転方向条件記憶部1448は、PSOで使用する群れの暫定最適解と現在解との偏差角度を−180度〜+180度という下限値と上限値の範囲、個体自身の暫定最適解と現在解との偏差角度を−180度〜+180度という下限値と上限値の範囲を記憶する。これらの上限値、下限値は、各偏差角度が360度の整数倍を加算あるいは減算することにより無数に存在することを防止するためのものである。さらに、回転方向条件記憶部1448は、偏差角度に対して時計回りまたは反時計回りの回転方向を決める条件も記憶する。
【0059】
回転角条件記憶部1449は、次世代の個体の回転角を決定するときに、角度を360度の範囲に収めるために、0度〜360度あるいは−180度〜+180度という下限値と上限値を記憶する。さらに、回転角条件記憶部1449は、回転角に対して時計回りまたは反時計回りの回転方向を決める条件も記憶する。
【0060】
計算結果記憶部146(図9参照)については、図12を用いて、その詳細を説明する。図12は、計算結果記憶部の詳細を示す図である。
図12に示すように、計算結果記憶部146は、個体情報記憶部1461、個体の暫定最適解記憶部1462および群れの暫定最適解記憶部1463を含む。
個体情報記憶部1461は、各世代の各個体に対して、世代番号、個体番号、回転角、相対開放ブランチ番号、絶対開放ブランチ番号、評価関数、目的関数値、ペナルティ値、制約違反項目および制約違反量、潮流値、電圧値等を記憶する。
【0061】
個体の暫定最適解記憶部1462は、現在の世代までに得られた各個体の暫定最適解となるその個体番号、世代番号および評価関数を記憶する。
群れの暫定最適解記憶部1463は、群れ全体の現在の世代までに得られた群れの暫定最適解となる個体番号と世代番号を記憶する。
【0062】
《処理の流れ》
本実施形態の放射状系統作成装置1(図6参照)は、配電系統の構成を作成するための、各種データを設定・編集する機能と、設定・編集されたデータを用いて配電系統の放射状系統を自動作成する機能と、配電系統の放射状系統を作成した結果を出力する機能とを備える。
ここで、本実施形態の放射状系統作成装置における処理の流れについて、図13を用いて説明する。図13は、本実施形態の放射状系統作成装置における処理の流れを示す図である。
【0063】
ステップS101では、データ取込部22は、コントロール部21を介して、配電監視制御システム11から配電系統の設備データおよびその特性や電圧、潮流、負荷等の実績値および負荷予測データ等を取り込む。また、データ取込部22は、取り込んだデータをデータベース9の設備データ記憶部141および負荷・電源データ記憶部142に格納する。
【0064】
ステップS102では、データ読込部23は、データベース9の設備データ記憶部141に格納されている発送変配電設備の名称、特性データ、設備間の接続情報、設備間の開閉器のオンオフ情報、および負荷・電源データ記憶部142に格納されている時間ごとの負荷需要実績、電源の発電実績、負荷需要予測値、電源発電予測値を読み込む。
【0065】
ステップS103では、計算条件設定部24は、設備データ記憶部141に格納されている設備の特性データ、設備間の接続情報等や負荷・電源データ記憶部142に格納されている負荷予測データ、電源発電予測値等を読み込む。次に、計算条件設定部24は、これらのデータからノード数、ブランチ数および放射状系統とするために必要な開放ブランチ数を計算し、この計算結果をそれぞれ記憶部1431〜1434(図10参照)に格納する。そして、計算条件設定部24は、対象の配電系統をノードとブランチとによって表現したモデルを表示装置7に表示し、入力装置6を用いてループ番号及びそれを構成するブランチを設定し、このループを構成する絶対ブランチ番号をループ番号・ブランチ対応関係記憶部1435に格納する。また、計算条件設定部24は、PSOによる放射状系統を作成するための計算条件を表示装置7に表示する。
【0066】
ここで、開放するブランチ番号の決定方法の詳細について、説明する。
相対ブランチ番号変換条件設定部248は、ループ番号とそのループを構成するブランチ番号とを決定し、ネットワーク構造記憶部143(図9参照)に格納する。
図1に示したノードブランチモデルにおいて、ループ番号とそのループを構成する絶対ブランチ番号との関係を図14に示す。図14は、ループ番号と絶対ブランチ番号との関係を示す図である。
【0067】
図14に示すように、ループ番号#1は絶対ブランチ番号B1,B3,B5,B6,B4,およびB2からなることを示している。ループ番号#2は絶対ブランチ番号B6,B8,B11およびB9からなることを示している。ループ番号#3は絶対ブランチ番号B5,B7,B10およびB8からなることを示している。各ループで1つの開放ブランチを決めるときには、ループを構成するブランチから選ぶ。このとき、相対ブランチ番号を使って、絶対ブランチ番号を求めることができる。
【0068】
例えば、ループ番号#1の相対ブランチ番号RB3の絶対ブランチ番号はB5である。ループを構成する相対ブランチ番号を決定するときには、物理的な接続状態を維持して並べる。例えば、ループ番号#1で相対ブランチ番号RB1が決まれば、そのブランチに直接接続するブランチの時計回りあるいは反時計回りの順に絶対ブランチ番号を並べる。物理的な遠近を相対ブランチ番号の近さで表現するためである。ただし、周回しているので、相対ブランチ番号RB1と最終番号は隣接していると考える。ループを作成する上で、全ての放射状系統を表現できるように、各ブランチは少なくとも1回はいずれかのループの構成要素となるものとする。
【0069】
ループ設定部239は、各ループを構成するブランチに対して回転角の範囲を設定する。回転角に対して1つのブランチが対応するように設定するものとする。例えば、ブランチに対して均等に割り当てる場合は、360度をブランチ数で割った値を相対ブランチ番号順に割り当てていくことになる。
【0070】
図1のループ番号#1の例では、ブランチ数が6であるので、各ブランチには60度分を割り当てることになり、各ブランチに対応する回転角は、ブランチB1は0度〜60度未満、ブランチB3は60度〜120度未満、ブランチB5は120度〜180度未満、ブランチB6は180度〜240度未満、ブランチB4は240度〜300度未満、ブランチB2は300度〜360度未満となる。それぞれの回転角に360度の整数倍を加減算しても同じブランチに対応するものとする。
回転角は、発生させた乱数(0〜1の範囲)に360度を掛けて算出される。そして、この回転角に対応するブランチ番号がループ番号#1の開放ブランチとなる。回転角が210度となったときは、図2(a)に示すように、開放ブランチ番号はB6となる。この処理を各ループ番号に対して実施することにより、放射状系統となるために必要な数の開放ブランチを決定するができる。
【0071】
次に、放射状系統チェック部288は、データベース9のノード・ブランチの接続関係記憶部1431に格納されているノードとブランチとの接続関係を読み込んで、乱数を用いて決定した開放ブランチ番号のブランチを開放したときに放射状系統となるかどうかをチェックする。チェックの結果、放射状系統とならないことが判明した場合、放射状系統チェック部288は、再度乱数を用いて各ループ番号の開放ブランチを求めることを繰り返すことによって、最終的に放射状系統を求める。そして、放射状系統チェック部288は、この処理を繰り返すことにより、放射状系統を個体数Nmaxとなるまで作成する。
【0072】
ステップS104において、初期解作成部25は、初期解を作成する。すなわち、初期解作成部25は、個体数記憶部1440からPSOで使用する個体数Nmaxを、開放ブランチ数記憶部1434から開放ブランチ数を、ループ番号・ブランチ対応関係記憶部1435からループ番号およびそのループを構成するブランチ番号を、回転角・ブランチ番号対応関係記憶部1447から回転角と相対ブランチ番号および絶対ブランチ番号に対応する回転角の範囲とを、読み込む。そして、初期解作成部25は、乱数を用いて各ループで開放するブランチ番号を決定する。
【0073】
次に、ステップS105において、評価関数計算部26は、評価関数を計算する。評価関数計算部26ではデータベース9の設備データ記憶部141から設備の特性データおよび運用制約等を,負荷・電源データ記憶部142から負荷量および電源発電電力の予測値を読み込む。これらの読み込んだデータと各個体とで表される放射状系統ごとに潮流計算を実施することにより、各ブランチの潮流およびノードの電圧を計算する。評価関数記憶部1443から目的関数およびペナルティ関数およびペナルティ係数を読み込み、前記計算結果を代入して、個体ごとの評価関数を計算する。計算した評価関数は、個体ごとに、世代番号ゼロ、個体番号、回転角、角速度(初期解ではゼロ)、相対開放ブランチ番号、絶対開放ブランチ番号、評価関数、目的関数値、ペナルティ値、制約違反項目および制約違反量、潮流値、電圧値等として、個体情報記憶領1461に格納される。また、初期解の個体番号、世代番号ゼロ、および評価関数は、各個体の最初の暫定最適解として、個体の暫定最適解記憶部1462に無条件で格納される。初期解の中で最も評価関数が小さい個体の個体番号および世代番号ゼロを、群れの暫定最適解記憶部1463に格納する。
【0074】
次に、ステップS106において、終了条件判定部27は終了判定を実行する。終了条件判定部27は、終了条件記憶部1441の終了条件を読み込む。
そして、終了条件に最大世代数Kmaxが設定されている場合において、世代数Kが最大世代数Kmaxを超えたとき(ステップS106でYes)、処理はステップS108に進む。また、世代数Kが最大世代数Kmax以下のとき(ステップS106でNo)、処理はステップS107に進む。
【0075】
次に、ステップS107において、次世代個体生成部28は次世代個体を生成する。
まず、次世代個体生成部28では、PSO変数計算部281においてPSO変数を計算する。PSO変数計算部281は、個体数記憶部1440から個体数Nmaxを、開放ブランチ数記憶部1434から開放ブランチ数を、ループ番号・ブランチ対応関係記憶部1435からループ番号とそのループを構成するブランチ番号とを、回転角・ブランチ番号対応関係記憶部1447から回転角と相対ブランチ番号および絶対ブランチ番号に対応する回転角の範囲とを、PSO変数記憶部1445からパラメータc10,c11,c20,c21,w0,およびw1を読み込む。また、PSO変数計算部281は、終了条件記憶部1441から最大世代数Kmaxを読み込む。
【0076】
パラメータc1,c2およびwはそれぞれ式(14)、式(15)、および式(16)によって算出した値を使用する。c10とc11が同じ値の時には、世代数Kによらずc1は一定である。

c1=c10+(c11−c10)×(Kmax−K)/Kmax ・・式(14)

c2=c20+(c21−c20)×(Kmax−K)/Kmax ・・式(15)

w=w0+(w1−w0)×(Kmax−K)/Kmax ・・式(16)

【0077】
次に、Δgbest・Δpbest計算部282でΔgbestおよびΔpbestを計算する。
Δgbest・Δpbest計算部282は、個体情報記憶部1461から世代数Kの個体番号、回転角等を、個体の暫定最適解記憶部1462から各個体の個体番号と世代数Kとを、個体情報記憶部1461から世代数Kの個体番号の回転角および回転速度を、読み込む。また、Δgbest・Δpbest計算部282は、群れの暫定最適解記憶部1463から個体番号、世代番号を読み込み、この世代番号の個体番号の回転角および回転速度を個体情報記憶部1461から読み込む。
【0078】
次に、Δgbest・Δpbest修正部283は、回転方向条件記憶部1448から回転方向の下限値D1および上限値D2を読み込み、ΔgbestおよびΔpbestを修正する。ここでは、回転方向を考慮するために、下限値D1が−180度、上限値D2が+180度に設定してあるものとする。具体的には、式(2)の第2項目の個体の暫定最適解と現在解との偏差Δpbestがこの上下限以内に入るように、360度の整数倍を加算あるいは減算する。同様に、式(2)の第3項目の群れの暫定最適解と現在解との偏差Δgbestがこの上下限以内に入るように、360度の整数倍を加算あるいは減算する。そして、角速度計算部284は、読み込んだデータを式(2)に適用して、速度v(角速度ω)を計算する。なお、式(2)の速度vは、本実施形態における角速度ωに対応するものとする。また、世代数Kのカウンタがゼロのときの角速度ωはゼロとする。
【0079】
次に、ランダム修正部286は、ランダム修正条件記憶部1446からパラメータRmと修正対象の条件を読み込み、乱数の値とこのパラメータRmとを比較して、乱数の値のほうが小さいときには、その個体のループ番号の角速度ωを修正する。修正される角速度ωの範囲は、回転方向条件記憶部1448から読み込んだ下限値D1および上限値D2に制限される。下限値D1が−180度、上限値D2が+180度の場合には、式(17)により修正される。

角速度ω=360−rand×180 ・・式(17)
ただし、randは0から1の乱数である。

ここでは,ランダム修正部286は速度を式(17)によって修正することにより,式(3)で得られる角度xをランダムに修正している。開放するブランチをランダムに修正するために,対応するループ内の開放するブランチ番号をランダムに決定するあるいは式(3)に式(17)の右辺を加算して,ランダムに開放するブランチを修正することにより同様の効果を実現することができる。
【0080】
次に、回転角計算部287は式(3)により回転角θを計算する。
回転角計算部287は、回転角条件記憶部1449から回転角θの下限値R1および上限値R2を読み込む。ここでは、下限値R1がゼロ、上限値R2が360度と設定してあるものとする。回転角θがこの上下限範囲に入るように、360度の整数倍を加算あるいは減算することにより、次世代個体の回転角θを算出する。そして、回転角計算部287は、回転角・ブランチ番号対応関係記憶部1447から回転角と開放ブランチ番号との対応関係を読み込む。回転角計算部287は、この読み込んだデータを参照して、回転角θに対応する開放ブランチを決定する。
【0081】
次に、放射状系統チェック部288は、データベース9のノード・ブランチの接続関係記憶部1431に格納されているノードとブランチとの接続関係を読み込んで、この決定した開放ブランチ番号のブランチを開放したときに放射状系統となるかどうかをチェックする。
【0082】
次に、非放射状系統修正部289は、非放射状系統修正条件記憶部1442から非放射状系統を修正する方法を読み込む。そして、非放射状系統修正部289は、乱数を用いて開放ブランチを修正する方法が設定してある場合は、初期解作成部25と同様の方法を用いて放射状系統に修正する。また、非放射状系統修正部289は、回転方向近傍選択が設定してある場合は、ループ内で現在の開放ブランチに対して、角速度ωがゼロ以上のときに時計回りで隣のブランチを開放ブランチに修正し、そうでないときには反時計回りで隣のブランチを開放ブランチに修正する。非放射状系統修正部289は、このようにして修正した開放ブランチを使用して、放射状系統かどうかをチェックする。そして、非放射状系統修正部289は、放射状系統となるまで、更に回転方向の隣のブランチを開放ブランチとすることを繰り返す。
【0083】
以上により次世代の1つの個体を生成することがきる。これを個体数分だけ繰り返すことにより、全ての個体の次世代個体を生成することができる。最後に世代数Kのカウンタが1つ増加される。以上で、ステップS107における1世代についての処理が終了する。
【0084】
ステップS107が終了すると、再度ステップS105に処理が戻る。
そして,ステップS105において、再度、評価関数計算部26において評価関数計算を実行する。この処理は、初期解の評価関数計算処理と基本的には同じであるが、相違点のみについて説明する。
【0085】
評価関数計算部26は、各個体の評価関数を計算した後,この評価関数値と個体の暫定最適解記憶部1462に格納されている個体の暫定最適値と比較して,前者のほうが小さければこの個体の暫定最適解を更新する。すなわち,この個体番号の評価関数値,世代番号等を更新する。更に,群れの暫定最適解記憶部1463の暫定最適値と比較して,その個体の評価関数値が小さければ,群れの暫定最適解記憶部1463にその個体番号,世代番号および評価関数を更新して,記憶する。
【0086】
以上、前記したステップS105およびステップS107が、ステップS106の終了条件を満たすまで繰り返される。
そして、ステップS106において、終了条件が満足されると(ステップS106でYes)、ステップS108へ処理は進む。
なお、ステップS108の時点では、個体の暫定最適解記憶部1462に格納されているデータは各個体の最適解となり、群れの暫定最適解記憶部1463に格納されているデータは群れの最適解となっている。
【0087】
ステップS108において、結果出力部29は計算結果を出力する。
結果出力部29は、設備データ記憶部141、負荷・電源データ記憶部142、ネットワーク構造記憶部143、計算条件記憶部144および計算結果記憶部146のデータセットに名称をつけて、データベース9の新たな記憶部にデータをコピーする。データセット名称は入力装置6を用いて入力する。計算結果出力部29は表示装置7の画面にデータベース9に格納されているデータセット名称を表示し、指定したデータセットのデータを読み込んでそのデータセットで得られた最適な放射状系統を表示装置7に表示する。最適な放射状系統のほかに、各ブランチの潮流値や各ブランチの制約値、ノードの電圧値やノードの負荷、発電電力、開放ブランチ番号、目的関数値、制約違反項目およびその違反量を表示する。
【0088】
その結果出力の表示画面の例を図15に示す。図15は、結果出力の表示例を示す図である。
図15では各ノードの負荷(正の値)と発電電力(負の値)、各ブランチの潮流(ブランチ上の数値)およびループ番号と開放ブランチおよび目的関数の配電ロス量、電圧違反量、潮流違反量を表示している。
【0089】
また、複数のデータセットの計算結果を比較する場合は、データセット名称を選択し、変数を選択する。変数としては、パラメータRm,c10,c11,c20,c21,w1,w2,Kmax,Nmaxに対する評価関数値である(式(14)〜式(16)参照)。
複数のデータセットの計算結果を比較する表示する画面の例を図16に示す。図16は、複数のデータセットの計算結果を比較する表示例を示す図である。
図16では、横軸は、データセットを表し、縦軸は、評価関数の値を表している。図16より、どのデータセットが、最も小さい評価関数の値となるか等の傾向を知ることが可能である。また、データセットを、世代順に並べて表示すると、評価関数の値の変遷が分かり、収束の進み具合を知ることが可能である。
【0090】
《メニュー画面》
ここで、図13に示す処理の流れを実行させるために、表示装置7に表示するメニュー画面の一例を、図17、図18および図19を用いて説明する。図17は、初期メニュー画面の一例を示す図である。図18および図19は、計算条件の設定画面の一例を示す図である。
【0091】
まず、本実施形態の配電系統の放射状系統作成装置1は、表示装置7に、図17に示す初期メニュー画面G101を表示する。
初期メニュー画面G101には、データ取り込みC101、データ読み込みC102、計算条件設定C103、放射状系統作成C104、および計算結果出力C105を実行させる各メニュー項目が表示される。これらのメニュー項目を、入力装置6を介して、選択することにより、処理が実行される。以下に、各メニュー項目について説明する(適宜図6参照)。
【0092】
(1)データ取り込み(C101)
入力装置6を介してメニュー項目1の「データ取り込み」が選択されると、図13のデータ取り込み(ステップS101)が実行される。データ取り込み処理が終了すると、コントロール部21は、表示装置7の表示を初期メニュー画面G101へ戻す。
【0093】
(2)データ読み込み (C102)
入力装置6を介してメニュー項目2の「データ読み込み」が選択されると、図13のデータ読み込み(ステップS102)が実行される。データ読み込み処理が終了すると、コントロール部21は、表示装置7の表示を初期メニュー画面G101へ戻す。
【0094】
(3)計算条件設定 (C103)
入力装置6を介してメニュー項目3の「計算条件設定」が選択されると、図13の計算条件設定(ステップS103)が実行される。計算条件設定処理が終了すると、コントロール部21は、表示装置7の表示を初期メニュー画面G101へ戻す。なお、ステップS103における画面表示については、後記する。
【0095】
(4)放射状系統作成(C104)
入力装置6を介して、メニュー項目4の「放射状系統作成」が選択されると、図6の初期解作成部25、評価関数計算部26、終了条件判定部27および次世代個体生成部28が、前記したようにしてデータベース9に設定された各種データ・条件に基づいて、ステップS104〜ステップS107を実行し、最適な配電系統の放射状系統を作成する。
【0096】
(5)計算結果出力(C105)
入力装置6を介してメニュー項目5「計算結果出力」が選択されると、図13の計算結果出力(ステップS108)が実行される。
【0097】
《画面表示》
なお、ステップS103(図13参照)では、放射状系統を作成する計算条件を設定する画面G201(図18参照)および画面G301(図19参照)が表示される。以下に、画面G201および画面G301について説明する。
これらの画面では、選択項目のラジオボタン選択および数値入力は入力装置6によって行われる。また、画面G301のC305ボタンを押すことにより、設定した項目はデータベース9に格納される。
【0098】
画面G201の入力項目C201は、PSOの個体数Nmaxを設定するものである。入力項目C201の個体数Nmaxを設定する表示およびデータを格納する処理は個体数設定部241により実行される。ここで設定された値の格納先は個体数記憶部1440である。
【0099】
入力項目C202は最大世代数Kmaxを設定するものである。また、入力項目C207は最適化計算の終了条件を選択するものである。入力項目C202の最大世代数Kmax、入力項目C207の終了条件を設定する表示およびデータを格納する処理は終了条件設定部242により実行される。ここで設定された値の格納先は終了条件記憶部1441である。なお、入力項目C207において最大世代数Kmaxが選択されたときは、設定世代数Lmaxの数値は格納されず、群れの暫定最適解の連続して未更新世代数を選択したときにのみ格納される。これらの終了条件あるいは設定値の格納先は終了条件記憶部1441である。
【0100】
入力項目C203はパラメータc1の初期値c10と最大世代到達時のc11を設定するものである。入力項目C204はパラメータc2の初期値c20と最大世代到達時のc21を設定するものである。入力項目C205はパラメータwの初期値w0と最大世代到達時のw1を設定するものである。
入力項目C203のパラメータc1、入力項目C204のパラメータc2、および入力項目C205のパラメータwを設定する表示およびデータを格納する処理はPSO変数設定部246により実行される。ここで設定された値の格納先はPSO変数記憶部1445である。
【0101】
入力項目C206は、PSOで作成した個体により表現される配電系統が放射状系統とならなかったときの対策方法をトルグスイッチで選択するものである。入力項目C206の非放射状系統修正方法を設定する表示およびデータを格納する処理は非放射状系統修正条件設定部243により実行される。ここで設定された条件の格納先は非放射状系統修正条件記憶部1442である。
【0102】
入力項目C208はランダム修正条件を設定するものである。入力項目C208のランダム修正条件を設定する表示およびデータを格納する処理はランダム修正条件設定部247により実行される。パラメータRmはランダム条件が選択される確率を設定するもので、0から1の乱数と比較して、大きい場合に修正対象に対してランダム修正が実行される。修正対象は、全ての個体、現世代で群れの暫定最適解に到達している個体、あるいは群れの暫定最適解に到達したことのある個体のいずれかである。これらのパラメータRmおよびランダム修正条件の格納先はランダム修正条件記憶部1446である。
【0103】
入力項目C209は回転方向条件の下限値D1と上限値D2とを設定するものである。入力項目C209の回転方向条件を設定する表示およびデータを格納する処理は回転方向条件設定部249により実行される。ここで設定された値の格納先は回転方向条件記憶部1448である。
入力項目C210は回転角条件の下限値R1と上限値R2とを設定するものである。入力項目C210の回転角条件を設定する表示およびデータを格納する処理は回転角条件設定部250により実行される。ここで設定された値の格納先は回転角条件記憶部1449である。
【0104】
これらの値あるいは条件を選択または入力が終了したとき、ボタンC211の「次の設定へ」をクリックする。ボタンC211がクリックされると図19の画面G301が表示される。
【0105】
次に、画面G301の入力項目C301は目的関数を選択するものである。入力項目C301の目的関数を設定する表示およびデータを格納する処理は評価関数設定部244により実行される。
目的関数は、配電ロス最小化、負荷率平準化および負荷率最大設備の最小化の中から選択される。選択された目的関数の格納先は評価関数記憶部1443である。画面G301には表示されていないが,目的関数として,潮流制約違反の設備数あるいは電圧制約違反の設備数を設定することもできる。
【0106】
入力項目C302はペナルティ関数を選択するものである。入力項目C302のペナルティ関数を設定する表示およびデータを格納する処理はペナルティ係数設定部245により実行される。
ペナルティ関数の項目は潮流制約と電圧制約であり、その制約違反をペナルティとして考慮するときの関数が選択される。関数の選択肢は、「考慮しない」、違反量の絶対値あるいは違反量の二乗である。選択されたペナルティ関数の格納先は評価関数記憶部1443である。
【0107】
入力項目C303はペナルティ係数を設定するものである。入力項目C303のペナルティ係数を設定する表示およびデータを格納する処理はペナルティ係数設定部245により実行される。潮流制約違反に対するペナルティv1および電圧制約の違反に対するペナルティv2を設定する。設定したペナルティ係数の格納先は評価関数記憶部1443である。これらの目的関数とペナルティ項を加算したものが評価関数となる。
以上により、計算条件設定処部24によるステップS103における処理が終了する。
【0108】
《評価関数》
ここで、評価関数について説明する。評価関数は目的関数と、ペナルティ関数にペナルティ係数を掛けたペナルティ項の総和となる。
目的関数として配電ロスZlossを選択したときは、配電ロスは潮流計算によって算出される。すなわち、電圧を一定として、配電ロスを送電線のインピーダンスと対象送電線の電流により、式(4)を用いて計算する。

Zloss=Σ{Ii×Ii+ai×Ii×Ji×Ii+bi×Ji×Ji} ・・式(4)

ただし、Iiは配電線iの通過電流、Jiは配電線iに接続されている負荷、aは負荷の分布状態に応じて定められる係数(負荷が平均的に分布しているときは例えば1と設定)、bは負荷の分布状態に応じて定められる係数(負荷が平均的に分布しているときは例えば1/3と設定)である。なお、式(4)以外にも、開閉器の通過電流により配電ロスを計算する方法もある。
【0109】
次に、目的関数として負荷率平準化を選択したときには、式(5)となる。

Zave=Σ(Fj/Rj) ・・式(5)

ただし、jは設備(配電線またはトランス)の番号、Fjは設備jの潮流値、Rjは設備jの潮流制約値である。
【0110】
目的関数として負荷率最大設備の最小化を選択したときには、式(6)となる。

Zmax=min(Fj/Rj) ・・式(6)

ただし、jは設備(配電線またはトランス)の番号、Fjは設備jの潮流値、Rjは設備jの潮流制約値である。
【0111】
次に、ペナルティ関数として潮流制約を選択したときについて以下に説明する。例えば、配電線に流れる電力潮流を制約値以内に抑制することを目的とする場合、このペナルティが小さいほど良い系統であることになる。この場合、ペナルティ項Zpfはペナルティ関数として選択した潮流制約違反に潮流制約違反のペナルティ係数v1を掛けた式(7)となる。

Zpf=v1×Σfj(Fj,Rj) ・・式(7)

ただし、jは設備(配電線またはトランス)の番号、Fjは設備jの潮流値、Rjは設備jの潮流制約値であり、fj(Fj,Rj)は潮流制約違反が発生していない設備ではゼロである。
【0112】
次に、潮流制約違反が発生しているときで絶対違反量を選択しているときは式(8)、違反量の二乗を選択しているときは式(9)となる。

fj(Fj,Rj)=|Fj−Rj| ・・式(8)

fj(Fj,Rj)=(Fj−Rj)×(Fj−Rj) ・・式(9)

【0113】
次に、ペナルティ関数として電圧制約を選択したときについて以下に説明する。例えば、ノードの電圧を制約値以内に抑制することを目的とする場合、このペナルティが小さいほど良い系統であることになる。この場合、ペナルティ項Zvolは電圧ペナルティ関数に電圧制約違反のペナルティ係数v2を掛けた式(10)となる。

Zvol=v2×Σgj(Vj,Qj) ・・式(10)

ただし、jはノード設備の番号、Vjはノード設備jの電圧、Qjはノード設備jの電圧制約値、gj(Vj,Qj)は電圧制約違反が発生していない設備ではゼロである。

【0114】
電圧制約違反が発生しているときで絶対違反量を選択しているときは式(11)、違反量の二乗を選択しているときは式(12)となる。

gj(Vj,Qj)=|Vj−Qj| ・・式(11)

gj(Vj,Qj)=(Vj−Qj)×(Vj−Qj) ・・式(12)

【0115】
また、電圧は、送電線kに供給する変圧器から送電線kまでにある設備jの電流Ijとその設備のインピーダンスrjの積の合算として、式(13)となる。

Vk=ΣIjk×rjk ・・式(13)

【0116】
画面G301には表示していないが、ペナルティ関数として、潮流制約違反の設備数、電圧制約違反の設備数を考慮してもよい。また、事故による停電電力に着目し、これについての評価をペナルティ関数に追加してもよい。さらに、時間とともに供給力、負荷が変化した場合、作成した系統構成に潮流制約違反および電圧制約違反がない系統として、何時間保持できるかを目的関数としてもよく、また、継続した時間の配電ロスの和を目的関数としてもよい。このようにすれば、作成した系統構成が単一時間のみの最適化だけでなく、連続した時間帯で評価関数を考慮することが可能となるため、連続した時間での最適化を実現することができる。
【0117】
以上、本実施形態の放射状系統作成装置1によれば、配電系統をノードとブランチで表現した配電系統モデルにおいて、PSOを適用して、ループごとに開放ブランチを1つ決定する。その際、ループを円と見做したときに円の中心からブランチを見込む角度の範囲によって開放ブランチの位置を関連付けている。そのため、乱数によって次世代の位置を更新する場合に、その位置を表す数値が、常に円1周分の見込み角360度の中に制限されることによって、収束性を早めることができる。
【0118】
以上、本実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではなく、その趣旨を変えない範囲で実施することができる。
【0119】
例えば、図2では、ループを円と見做していたが、見込み角の代わりに、ブランチの番号が循環する数列に対応させてもよい。
また、図2では、見込み角をブランチごとに均等にしたが、これに限られることは無く、重み付けして、見込み角を異ならせてもよい。
【0120】
また、本実施形態において、放射状系統作成装置1(図6参照)の各部の処理について説明したが、これらの処理は、放射状系統作成装置1をコンピュータで実現したときに搭載されるプログラムによって実現されてもよい。このプログラムは、通信回線を介して提供することもできるし、CD−ROM等の記録媒体に書き込んで配布することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】配電系統をノードとブランチで表現したモデルを示す図である。
【図2】(a)は、図1に示す配電系統モデルのループ#1における回転角とブランチとの対応関係を示す図であり、(b)は、図1に示す配電系統モデルのループ#2における回転角とブランチとの対応関係を示す図であり、(c)は、図1に示す配電系統モデルのループ#3における回転角とブランチとの対応関係を示す図である。
【図3】現在解xにおける回転角とブランチとの対応関係を示す図である。
【図4】暫定最適解pbestにおける回転角とブランチとの対応関係を示す図である。
【図5】本実施形態の配電系統の放射状系統作成装置の構成について示す図である。
【図6】本実施形態の放射状系統作成装置の機能構成を示す図である。
【図7】計算条件設定部の機能の詳細を示す図である。
【図8】次世代個体生成部の機能の詳細を示す図である。
【図9】データベースの詳細を示す図である。
【図10】ネットワーク構造記憶部の詳細を示す図である。
【図11】計算条件記憶部の詳細を示す図である。
【図12】計算結果記憶部の詳細を示す図である。
【図13】本実施形態の放射状系統作成装置における処理の流れを示す図である。
【図14】計算条件を設定する画面の例である。
【図15】結果出力の表示例を示す図である。
【図16】複数のデータセットの計算結果を比較する表示例を示す図である。
【図17】初期メニュー画面の一例を示す図である。
【図18】計算条件の設定画面の一例を示す図である。
【図19】計算条件の設定画面の一例を示す図である。
【図20】PSOを適用した最適化処理の概要を示す図である。
【符号の説明】
【0122】
1 配電系統の放射状系統作成装置
6 入力装置
7 表示装置
8 印字装置
9 データベース
10 読取装置
11 配電監視制御システム
12 配電系統
20 データ処理部
21 コントロール部
22 データ取込部
23 データ読込部
24 計算条件設定部
25 初期解作成部
26 評価関数計算部
28 次世代個体生成部
141 設備データ記憶部
142 負荷・電源データ記憶部
143 ネットワーク構造記憶部
144 計算条件記憶部
146 計算結果記憶部
2601 中央演算処理装置(CPU)
2602 主記憶装置
2603 入出力装置
2604 外部記憶装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷および電源設備をノードとして表現し、2つの該ノード間の、開または閉いずれかの接続状態をブランチとして表現して、3つ以上のノードの接続状態を示す配電系統の放射状系統を発見的最適化手法であるPSO(Particle Swarm Optimization)を用いて作成する放射状系統作成装置であって、
前記ノードを頂点とし、前記ブランチを辺とする、多角形からなるループを定め、前記ループごとに、そのループを構成するブランチの中のいずれか一つを前記接続状態が開である開放ブランチとして定め、前記ループごとの前記開放ブランチに対応する数値からなる開放ブランチ情報を生成し、前記開放ブランチ情報を記憶部に記憶する計算条件設定部、
ランダム修正を決定する乱数を用いて決められる数値を更新情報として、前記記憶部に記憶された開放ブランチ情報と前記更新情報とに基づいて、新たな開放ブランチ情報を生成し、前記新たに生成された開放ブランチ情報を前記記憶部に記憶する次世代個体生成部、
前記次世代個体生成部における新たな開放ブランチ情報を生成する処理を、所定の条件が満たされるまで繰り返して得られた開放ブランチ情報群から、予め定められた評価関数に基づく解を探索し、該解に基づいて放射状系統を作成する制御部、
を備えることを特徴とする放射状系統作成装置。
【請求項2】
前記記憶部は、前記開放ブランチ情報における前記開放ブランチに対応する数値を含む所定の数値範囲とブランチとを、ループごとに全てのブランチについて一対一に対応付けて記憶し、
前記計算条件設定部は、
前記数値を取得したときに、その数値がどの数値範囲にあるかを判定することによって、開放ブランチを決定すること
を特徴とする請求項1に記載の放射状系統作成装置。
【請求項3】
前記開放ブランチに対応する数値を含む所定の数値範囲とブランチとの一対一の対応関係は、前記ループを円とし、前記ループを構成するブランチを円弧と定め、
前記所定の数値範囲は、円の中心から前記円弧を見たときの見込み角によって表され、
前記数値は、角度の大きさによって表現されること
を特徴とする請求項2に記載の放射状系統作成装置。
【請求項4】
前記次世代個体生成部によって生成される前記更新情報であるランダム修正を決定する乱数を用いて決められる数値が角度の大きさで表現されるときに、前記次世代個体生成部は、その角度の大きさが−180度から180度に納まるように360度の倍数を加算または減算すること
を特徴とする請求項3に記載の放射状系統作成装置。
【請求項5】
前記評価関数は、配電ロス、負荷率平準化、負荷率最大設備の負荷率、潮流制約違反の設備数、電圧制約違反の設備数、潮流制約違反量ペナルティ、および電圧違反量ペナルティのうちの少なくとも1つを含む関数であること
を特徴とする請求項1に記載の放射状系統作成装置。
【請求項6】
表示部を備え、
前記次世代個体生成部は、前記開放ブランチ情報群および各開放ブランチ情報について算出された前記評価関数の値を、前記表示部に表示すること
を特徴とする請求項1または請求項5に記載の放射状系統作成装置。
【請求項7】
負荷および電源設備をノードとして表現し、2つの該ノード間の、開または閉いずれかの接続状態をブランチとして表現して、3つ以上のノードの接続状態を示す配電系統の放射状系統を発見的最適化手法であるPSO(Particle Swarm Optimization)を用いて作成する放射状系統作成装置に用いられる放射状系統作成方法であって、
前記放射状系統作成装置は、記憶部、計算条件設定部、次世代個体生成部、および制御部を備え、
前記計算条件設定部は、前記ノードを頂点とし、前記ブランチを辺とする、多角形からなるループを定め、前記ループごとに、そのループを構成するブランチの中のいずれか一つを前記接続状態が開である開放ブランチとして定め、前記ループごとの前記開放ブランチに対応する数値からなる開放ブランチ情報を生成し、前記開放ブランチ情報を記憶部に記憶する計算条件設定ステップ、
前記次世代個体生成部は、乱数を用いて決められる数値を更新情報として、前記記憶部に記憶された開放ブランチ情報と前記更新情報とに基づいて、新たな開放ブランチ情報を生成し、前記新たに生成された開放ブランチ情報を前記記憶部に記憶する次世代個体生成ステップ、
前記制御部は、前記次世代個体生成部における新たな開放ブランチ情報を生成する処理を、所定の条件が満たされるまで繰り返して得られた開放ブランチ情報群から、予め定められた評価関数に基づく解を探索し、該解に基づいて放射状系統を作成する制御ステップ、
を実行することを特徴とする放射状系統作成方法。
【請求項8】
前記記憶部は、前記開放ブランチ情報における前記開放ブランチに対応する数値を含む所定の数値範囲とブランチとを、ループごとに全てのブランチについて一対一に対応付けて記憶し、
前記計算条件設定部は、
前記数値を取得したときに、その数値がどの数値範囲にあるかを判定することによって、開放ブランチを決定すること
を特徴とする請求項7に記載の放射状系統作成方法。
【請求項9】
前記開放ブランチに対応する数値を含む所定の数値範囲とブランチとの一対一の対応関係は、前記ループを円とし、前記ループを構成するブランチを円弧と定め、
前記所定の数値範囲は、円の中心から前記円弧を見たときの見込み角によって表され、
前記数値は、角度の大きさによって表現されること
を特徴とする請求項8に記載の放射状系統作成方法。
【請求項10】
前記次世代個体生成部によって生成される前記更新情報であるランダム修正を決定する乱数を用いて決められる数値が角度の大きさで表現されるときに、前記次世代個体生成部は、その角度の大きさが−180度から180度に納まるように360度の倍数を加算または減算すること
を特徴とする請求項9に記載の放射状系統作成方法。
【請求項11】
前記評価関数は、配電ロス、負荷率平準化、負荷率最大設備の負荷率、潮流制約違反の設備数、電圧制約違反の設備数、潮流制約違反量ペナルティ、および電圧違反量ペナルティのうちの少なくとも1つを含む関数であること
を特徴とする請求項7に記載の放射状系統作成方法。
【請求項12】
前記放射状系統作成装置は、表示部を備え、
前記次世代個体生成部は、前記開放ブランチ情報群および各開放ブランチ情報について算出された前記評価関数の値を、前記表示部に表示すること
を特徴とする請求項7または請求項11に記載の放射状系統作成方法。
【請求項13】
請求項7ないし請求項12のいずれか一項に記載の放射状系統作成方法をコンピュータに実行させることを特徴とする放射状系統作成プログラム。
【請求項14】
請求項13に記載の放射状系統作成プログラムが記録されたことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体 。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−92390(P2010−92390A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−263522(P2008−263522)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】