説明

放射硬化性ゲルインク画像を記録媒体に定着する方法及び装置

【課題】段ボールの外層などのあまり平坦でない表面に紫外線硬化性インクで印刷する
【解決手段】印刷装置は、ニップに位置する記録媒体Sのインク担持面と当接するように配設されたコンフォーマブル層14であって、紫外線を実質的に透過させるとともに、ショアA硬さで約20〜10の形状適合性を有するシリコーン樹脂ベースのエラストマーを実質的に含むコンフォーマブル層14と、前記ニップに位置する前記記録媒体Sの前記インク担持面に対して、前記記録媒体S上のインクIを硬化させるのに適した紫外線を照射するように配設された第1の放射源30と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、放射硬化性インクを用いた印刷に関連する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷への利用に適した紫外線(UV)硬化性インクのための組成物は、1又は複数のコモノマーとゲル化剤とを含む。あらかじめ定められた周波数の放射に曝されると、これらのコモノマーは重合し、その結果多くの種類の表面と結合する。実用用途では、そのようなインクは室温で粘性を有するが、画像を形成するに際して記録媒体上へと噴射するために温められるとより液体的になる。
【0003】
放射硬化性インクと共に使用するのに適したある印刷装置は、「移入」(トランスフューズ:“transfuse”)システムを用いる。このシステムでは、所望の画像を形成するインクが、まず帯の形で画像受容体上に噴射され、その後その画像受容体から印刷シート等の記録媒体上に転写される。帯の経路に沿った様々な位置に紫外線源が配設され、それら紫外線源によりその帯上のインクが、印刷シートに転写される前に部分的に硬化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007−0120930号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2008−0122914号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】ACRYLITE(登録商標) OP-4 Acrylic Sheet, Technical Data, "Ultraviolet-Transmitting Acrylic Sheet," 1-4頁, CYRO Industries, Parsippany, New Jersey
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
UV硬化性インクのある応用では、包装用途での段ボールの外層などの、あまり平坦でない表面に印刷することが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの態様では、記録媒体上に画像を印刷及び/又は定着するのに適した装置が提供される。なお、この明細書では、「A及び/又はB」という記載は、Aのみの場合、Bのみの場合、AとBの両方の場合、のうちのいずれであってもよいことを表す。形状適合性部材が、ニップの位置にて、前記記録媒体の画像担持面に接するように配置されている。前記形状適合性部材は、紫外線を実質的に透過させると共に、ショアA硬さで約20〜10の形状適合性(conformability)を有するシリコーン樹脂ベースのエラストマーを実質的に含んでいる。第1の放射源が、前記ニップで前記記録媒体のインクを担持する面に対して紫外線などの放射(光)を照射するように配設されている。この紫外線は前記記録媒体上のインクを硬化させるのに適している。
【0008】
他の態様では、記録媒体上に画像を印刷及び/又は定着するのに適した方法が提供される。形状適合性部材が、前記記録媒体のインク担持面に接する。前記コンフォーマブル部材は、紫外線を実質的に透過させると共に、ショアA硬さで約20〜10の形状適合性を有するシリコーン樹脂ベースのエラストマーを実質的に含んでいる。前記記録媒体上のインクを硬化させるのに適した紫外線が、前記コンフォーマブル部材を通して、前記記録媒体のインク担持面に対して照射される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】例えば比較的大型の印刷装置に適用可能な、第1実施形態に係る印刷及び又は定着のための装置の正面図である。
【図2】第2実施形態に係る印刷及び又は定着のための装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、例えば比較的大型の印刷装置に適用可能な、第1実施形態に係る印刷及び又は定着のための装置の、簡略化した正面図である。未定着の画像Iを担持したシートすなわち記録媒体S(適切な材料であればどのような材料でできていてもよい)が、処理方向Pに沿って近づいてくる。定着装置は、この例ではインク面(ink-side)平坦化ローラー10の形を取っている回転部材と、(記録媒体Sの背面を支持する)裏当て(バッキング)部材20とを備える(他の例では、裏当て部材はローラーの形であってもよい)。実際の例では、インク画像Iはこの時点では未硬化状態であり、粘り気のある液体はまだ記録媒体Sには顕著には浸透していない。ローラー10と裏当て部材20との間に形成されるニップの位置で、未定着のインク画像Iが、そのニップの圧力により機械的に「平坦化」され、この平坦化作用により、複数の色のインクが形成する複数の層が記録媒体Sの表面に対して均一な合計高さを持つようになる。
【0011】
ニップで加えられる機械的な圧力と同時に、インク画像Iに対して放射エネルギーが加えられる。この放射エネルギーは、例えばUV(紫外線)のように、記録媒体Sがニップを通過するにつれて記録媒体S上のインク画像Iを化学的に硬化させるのに適した波長のエネルギーを含んでいる。この目的のために、平坦化ローラー10の中に放射源30が配設されている。放射源30は、この実施形態のために例えば1つ又は複数のUVランプ、又はUV放射LEDアレイを含んでいてもよく、記録媒体Sがニップを通過するにつれて、ニップ内にあるインク画像Iに放射(例えば紫外線)を照射する。単一又は複数の放射源30の出力は、インク画像Iがあらかじめ定められた速さでニップから離れていくまでの時間にインク画像Iを完全に硬化させるのに十分なパワーである。このような例では、平坦化ローラー10の側壁は、その硬化用の放射を十分に透過させるものであり、これによりその放射がニップの位置にあるインクIに十分に到達する。
【0012】
平坦化ローラー10の構造に関しては、この実施形態では、平坦化ローラー10は、実質的に剛体である内側ドラム12と、外側のコンフォーマブル層14と、を備える。コンフォーマブル層14は、記録媒体Sに対して形状適合性を持つ表面を供する(すなわちコンフォーマブル層14の表面は、記録媒体Sの表面に形状を適合させることが可能)「コンフォーマブル(形状適合性)部材」を形成するものであり、平坦でない記録媒体S上のインクIを定着するのに適している。いくつかの例では、内側層12は約3mm〜約13mmの厚みを持つ石英を含んでいる。コンフォーマブル層14はショアA硬さで約20〜10の形状適合性を有するシリコーン樹脂ベースのエラストマーを実質的に含んでいる。この材料は、約1mm〜約5mmの厚みなら、UV放射を効率的に透過させるのに適している。この材料によれば、記録媒体Sに当接するのに適した低摩擦の表面が得られる。
【0013】
説明したような印刷すなわち定着ステーションは、包装材料としてなじみのある段ボールの外表面上に画像を印刷するのに便利である。このような外表面は基本的には滑らかであるが、その下の段ボールの構造の核にある波形の層が、外表面に「波状のうねり(waviness)」をもたらす傾向がある。商業上入手可能な種類の段ボールの種類において、最もよく用いられるフルート(中芯の山の密度)は、Bフルート、Cフルート、及びEフルートと呼ばれる。これに関する寸法は以下の通りである。すなわち、Bフルートの場合、波長は公称1/4インチ(約6.4mm)、外表面のうねりの振幅の測定値は約0.060mmであり、結果として生じる外表面の山から谷までの高低差は約0.120mmである。また、Cフルートの場合、波長は公称5/16インチ(約7.9mm)、外表面のうねりの振幅の測定値は約0.049mmであり、結果として生じる外表面の山から谷までの高低差は約0.098mmである。また、Eフルートの場合、波長は公称1/8インチ(約3.2mm)、外表面のうねりの振幅の測定値は約0.037mmであり、結果として生じる外表面の山から谷までの高低差は約0.074mmである。平坦化ローラー10は、波形又はその他の平坦でない表面の形状に適合するので、印刷されたインク層が段ボールの波打つ外表面を多い、その平坦でない外表面の窪みの中にインク層のボイド(空隙)ができることはない。
【0014】
図1に示すように、印刷のためのインクは、1つの例では、例えば図示するようにプリントヘッド50によりローラー10の上流の記録媒体S上にインクIを噴射するなどの方法で、記録媒体S上に直接的に付けられる。また、この代わりに、インクIを、例えばプリントヘッド52により、ローラー10上に直接的に付けてもよい。プリントヘッド52を用いるシステムは、ローラー10が数回転する間に画像が完成し、記録媒体Sに転写されるプリンタ構成に有益である。このようなシステムは、プリントヘッド52によりドラム上にインクが噴射された後、そのインクが直ちに記録媒体Sに転写されるような、シングルパス方式(1色ずつシートに画像を形成する方式ではなく、複数の色の画像を一度にシートに形成する方式)のプリンタ構成にも適している。この構成では、コンフォーマブル(形状適合性のある)材料の滑らかな表面をプリントヘッドから一定の距離に保つ制御を行うことで、高画質の画像を印刷することができる。そして、この画像が、そのコンフォーマブル材料により、平坦でない波打つ表面上に、画像を波打つ表面上に直接噴射することにより得られるであろう画質よりもはるかに高い画質で、転写される。公知の種類の温度センサ54を用いて、ニップのすぐ上流の位置の平坦化ローラー10の表面温度を測定してもよく、測定した温度は制御システムで利用することができる。
【0015】
更に、図1にはIR(赤外線)ランプ40、又はこれに似た放射エネルギーを発するデバイスが示されている。このIRランプ40等は、例えば、所与の特定の材料の組(すなわちインクと記録媒体の材料の組)に必要な温度まで記録媒体Sを予備加熱するのに用いられる。このようなランプは、設計上の事情に応じて、プリントヘッド50の上流又は下流のどちらに配設してもよく、「タッキング」(tacking:仮硬化)、すなわち印刷プロセスにおける部分的な硬化のためのステップの一部としてUV光を発するようにしてもよい。
【0016】
この実施形態では、インクIの硬化が、ローラー10と裏当て部材20とにより形成されたニップ(それら両者が互いに当接した部分)における機械的な圧力の印加と同時に行われることで、まだ平坦化が進みつつある条件下でも、インク内のモノマーが十分に架橋結合を開始し、これによりインク画像Iがそのニップを離れる時までに重合化がほぼ完了する。重合化のプロセスにより、幾分収縮した硬い耐久性のある物質ができる。この収縮と硬さとがローラー10上の低表面エネルギー層と組み合わさることで、画像がローラー10から自然に剥がれるような状態となる。
【0017】
図2は、別の実施形態のいくつかの要素を示す正面図である。図1と図2では、同様な要素には同様の符号を付した。図2の実施形態では、コンフォーマブル層14が剛性のある(硬い)内側ドラム12から分離され、その一部が第2ローラー16に巻きかけられている。内側ドラム12の中にはUVランプ30が設けられている。設計の仕方に応じて、内側ドラム12は回転可能としても固定としてもよく、固定の場合はコンフォーマブル層14は第2ローラー16により駆動され、ドラム12に対しては滑る。この実施形態では、コンフォーマブル層14の内側表面には、例えばACRYLITE(商標)OP-4のような耐久性のある裏打ち層18が付加されている。ACRYLITE(商標)OP-4はCYROインダストリーズ社により製造される、紫外線を透過するアクリルシート材料である。この実施形態では、インク又は記録媒体に必要な熱を加えるための別のシステムとして、(図示しない熱を発生させる部分を含んだ)加熱ロール32を利用するなどの方式を用いることができ、この加熱ロール32は必要に応じて内側ドラム12又はコンフォーマブル層14のどちらに接するように配設されてもよい。
【0018】
特許請求の範囲は、出願当初に記載したものでも補正したものでも、この明細書に開示した実施形態及び説明内容についての、出願人/特許権利者又は他者によりもたらされる変形例、代替例、修正例、改良例、等価物、及び実質的な等価物(しかも現時点では予想できないものや価値が認められていないものも含む)を含む。
【符号の説明】
【0019】
10 平坦化ローラー、12 内側ドラム、14 コンフォーマブル層、20 裏当て部材、30 放射源、I インク画像、S 記録媒体。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体上に印刷するための装置であって、
ニップに位置する記録媒体のインク担持面と当接するように配設された形状適合性部材であって、紫外線を実質的に透過させるとともに、ショアA硬さで約20〜10の形状適合性を有するシリコーン樹脂ベースのエラストマーを実質的に含む形状適合性部材と、
前記ニップに位置する前記記録媒体の前記インク担持面に対して、前記記録媒体上のインクを硬化させるのに適した紫外線を照射するように配設された第1の放射源と、
を備える装置。
【請求項2】
前記形状適合性部材が1mm〜5mmの厚みを持つことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記形状適合性部材が回転可能であり、前記第1の放射源が当該形状適合性部材の中に配設されていることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記形状適合性部材に対してアクリル層が付加されていることを特徴とする請求項3記載の装置。
【請求項5】
前記回転可能な形状適合性部材の中に内側ドラムを更に備え、前記第1の放射源は実質的に前記内側ドラムの中に配設されていることを特徴とする請求項3記載の装置。
【請求項6】
記録媒体上に印刷する方法であって、
紫外線を実質的に透過させるとともに、ショアA硬さで約20〜10の形状適合性を有するシリコーン樹脂ベースのエラストマーを実質的に含む形状適合性部材を、ニップに位置する記録媒体のインク担持面に当接させるステップと、
前記ニップに位置する前記記録媒体の前記インク担持面に対して、前記記録媒体上のインクを硬化させるのに適した紫外線を、前記形状適合部材を通して照射するステップと、
を含む方法。
【請求項7】
前記形状適合性部材が1mm〜5mmの厚みを持つことを特徴とする請求項6記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−162894(P2010−162894A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−3791(P2010−3791)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【出願人】(502096543)パロ・アルト・リサーチ・センター・インコーポレーテッド (393)
【氏名又は名称原語表記】Palo Alto Research Center Incorporated
【Fターム(参考)】