説明

放射線供給のための並進ディストリビュータを備えている治療及び診断用のシステム及び方法

人間又は動物の双方向型組織内光力学腫瘍治療及び/又は光熱腫瘍治療のためのシステム及び方法であり、このシステムは、少なくとも1つの放射線源から反応部位へ又は反応部位から少なくとも1つの放射線センサへ光学放射線を供給するように配列される少なくとも1つの放射線ディストリビュータを備えている。放射線ディストリビュータは、別の素子に対して相対的に並進移動可能な少なくとも1つの並進移動素子を備えている。第一の放射線導体の第一の端は第一の並進移動素子に固定され、第二の放射線導体の第一の端は他方の素子に固定され、第一の放射線導体と第二の放射線導体は、システムの様々な動作モードを得るために並進移動素子と他方の素子の相互に対して相対的な並進移動によって様々な配置で相互に接続可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に言って、被験者の治療及び診断のためのシステム及び方法に関するものである。より特定して言うと、このシステム及び方法は、人間及び動物の腫瘍治療及び診断のためのシステム及び方法に関するものである。さらに特定して言うと、本発明は、人間又は動物の体表及び/又は体内のある部位の望ましくは双方向の光力学療法(PDT)及び/又は光熱療法(PTT)及び/又は光力学診断(PDD)のためのシステム及び方法に関するものであり、このシステム及び方法において、放射線による反応を得るために部位へ非電離電磁放射線が伝導され、システムは少なくとも1つの放射線源から反応部位へ及び反応部位から少なくとも1つの放射線センサへそれぞれ放射線を送るための放射線のディストリビュータを備え、かつ反応部位は望ましくは悪性腫瘍など腫瘍を持つ腫瘍患部である。
【背景技術】
【0002】
腫瘍の治療分野において、悪性腫瘍を治療するために多数の治療方式が開発されており、手術、細胞増殖抑制治療、電離放射線(ガンマ放射線又は粒子放射線)を用いる治療、アイソトープ療法及び放射能針を用いる近接照射療法などが一般的な治療法の例である。治療分野においての進歩は目覚しいが、腫瘍は依然として多くの人間の苦痛の原因となっており、西側諸国において死因の大きな割合を占めている。比較的新しい治療法である光力学療法(一般にPDTと略される)は、治療分野において興味深い補完療法又は代替療法である。一般に先駆物質又は感作物質と呼ばれる腫瘍探索物資は経静脈、経口で又は局所的に投与される。一般に腫瘍探索物質は周囲の健康な組織より高い割合で悪性腫瘍に蓄積する。その後、通常レーザーから非熱赤色光が腫瘍領域に照射されて、感作物質の励起をより活動的状態に導く。活性化された感作物質から組織の酸素分子へのエネルギー伝達を通じて、酸素はその通常の三重項状態から励起一重項状態に転移される。一重項酸素は特に組織に有毒なものとして知られており、細胞は根絶され、組織は壊死する。感作物質を腫瘍細胞に限定するので、固有の選択性が得られ、周囲の健康な組織は傷つけられない。特にヘマトポルフィリン派生物(HPD)及びδアミノレブリン酸(ALA)を用いた臨床実験は良好な結果を示している。
【0003】
感作物質は、さらに有益な特性、すなわち物質が可視光線又は紫外線によって励起されると、より長い波長に変えられた特徴的な蛍光信号を生じると言う特性を呈することもできる。この信号は、組織の内生蛍光(これは自発蛍光とも呼ばれる)と明らかに対照的に現れ、腫瘍の場所の特定及び組織における感作物質の摂取の規模の数量化に使用される。
【0004】
組織における活性化放射線の透過が限定されることがPDTの大きな欠点である。臨床結果では、表面照射によって厚み約5mm未満の腫瘍しか治療できなかった。もっと厚くかつ/又は根深い腫瘍を治療するために、組織内PDT(IPDT)を利用することができる。この場合、例えば注射針のルーメンに光ファイバを入れて、光伝導光ファイバが、腫瘍へ送り込まれる。
【0005】
効果的な治療結果を得るために、全ての腫瘍細胞が充分な線量を受けて有毒な一重項状態が得られるようにするために数本のファイバが使用されている。組織の吸収及び拡散特性の線量計算を行うことが可能であることが証明されている。例えば、スウェーデン国特許第503408号において、治療のため並びに他のファイバから組織を通じて透過してあるファイバに達する光束の測定のために6本のファイバが使用されるIPDTシステムについて説明されている。このようにして、正確な光線量の計算を腫瘍のあらゆる部分について改良することができる。
【0006】
スウェーデン国特許第503408号の開示によれば、単一のレーザーからの光は多数の機械的及び光学的コンポーネントを備えているビームスプリッタ・システムを用いて6つの異なる部分に分割される。次に、光は6本の個別の治療用ファイバの各々に焦点を結ぶ。1本のファイバはトランスミッタとして使用され、その他のファイバは、組織を透過する放射線のレシーバとして使用される。光の測定のために、光検出器が機械的にビーム経路に振り入れられて、ビーム経路が遮断され、組織に与えられる光を集めたファイバから発する弱い光が測定される。
【0007】
しかし、このような開放型のビーム経路は非常に損失の大きいビームスプリッティングを生じて、その結果生じる光の損失は、配光並びに光の測定に悪影響を及ぼす。さらに、この種のシステムは、度々光学的な調整を行わなければならず、これも臨床治療に関して大きな欠点となる。このシステムは、また、大型で重いので、使いやすい装置に組み入れることが難しい。さらに、各ファイバに送り込まれる光のパワーを制御することが難しく、これが測定結果を信頼できないものにする。
【0008】
これらの問題に対する解決策は、互いに関して回転している2つのディスクを有するディストリビュータが記載されている、国際出願第PCT/SE02/02050号において提案されている。放射線ディストリビュータは、異なる動作モード間で光ファイバを結合している。患者への一つのファイバへいくつかの光源の間で切り換えるために、全部で4つのディスクを有する組立体が記載されている。システムのサイズをさらに最小化するために、上記の解決策のサイズをさらに低減する必要がある。
【0009】
欧州特許第0523417号は、放射線療法例えば身体の放射能照射治療のために放射能発生体及び/又は試験用物体を供給するためのパイプライン・スイッチを開示している。発生体又は試験用物体は導管内を移動可能な可撓性ワイヤの周りのパイプライン内で運ばれる。可撓性ワイヤをスイッチまで運ぶための第一のパイプは可動スイッチ素子に接続され、可撓性ワイヤをさらに身体まで運ぶための第二のパイプは第二の固定スイッチ素子に接続される。2つのスイッチ素子は相互に対して可動なので、パイプラインの様々な配置が可能である。ただし、1つの配置から別の配置に変化する際、可撓性ワイヤを各切換えプロセスの間に引っ込めなければならず、そうしないとスイッチ素子の相対的動きが阻害される。従って、切換え時間及び治療時間が非常に長い。さらに、パイプラインは放射線自体を伝導するのに適しておらず、パイプライン内で運ばれる可撓性ワイヤの外部保護及び案内となるだけである。またこの構造はかさばって、小さい光ファイバには適さない。さらに、この開示の配列は、治療用だけであって診断には適さず、双方向型の共同動作は開示されていない。
【0010】
欧州特許第0280397号は、視覚手段に画像を搬送するための中央干渉性ファイバ束を有する滅菌可能な内視鏡を開示している。ファイバ束は多数の光ファイバによってさらに取り囲まれる。内視鏡の近位端は、光ファイバ束を視覚手段の光学システムと整合させるため及び光源から光ファイバに沿って検査対象の体腔まで光を送るための光伝送手段との間のインターフェイスとなるための結合手段を備える。この装置は、癌細胞の検出及び光線療法によるその治療に使用することができる。検査対象である組織に色素を施した後、励起レーザー光周波数に曝す。癌細胞は蛍光を発する。この蛍光は検出されて、ビデオモニタに表示され、この蛍光と同じ周波数を持つ光が光線療法のために光ファイバを通じて細胞へ送られる。しかし、単一波長の光源を使用することしか開示されていないので、光源を手動で交換しなければ複数の診断を行うことは不可能である。さらに、光ファイバの異なる配置間の切換えが不可能である。すなわち、全てのファイバが常に同じ機能を持つ(光入力又は出力)。欧州特許第0280397号において言及される結合手段は、使用前に組み立てられるとき二部内視鏡を通る光の経路を調節するためにのみ使用される。さらに、癌の部位へ治療用光線を導くため及び内視鏡を通じて診断用光線を戻すために異なるファイバが使用される。異なる動作モード間で供給が行われない。この解決法は、たとえば腫瘍の双方向型治療もマッピングも提供しない。したがって、治療及び診断がPDT、PTT及びPDDを含む、人間又は動物に治療及び診断のためのシステムにおける放射線の供給が可能となる新しい小型の装置が必要となる。さらに、本発明によって解決すべきさらなる問題は、従来技術に関する別の解決策を提供することである。
【発明の開示】
【0011】
本発明は、付属の特許請求の範囲に記載されるシステム及び方法を提供することによって、技術的に上記の欠陥を克服し、少なくとも上記の問題を解決する。このシステム及び方法において、診断及び線量測定のために様々な放射線測定を統合的かつ単純な方法で行うことができる非常に実用的かつ効率的な双方向型IPDTが得られる。本発明の重要な用途は、双方向型組織内光力学療法及び/又は双方向型光熱腫瘍治療である。本発明によれば、国際出願第PCT/SE02/02050号において説明されるような既存の光学的放射線ディストリビュータを用いるシステムのサイズがさらに小さくなる。さらに、本発明により、現存の光学的放射線ディストリビュータを、上記のディストリビュータの全体のサイズを減らし、切り換え機能を改良することができる。本発明の一実施態様によれば、診断用光の損失は、少なくとも一つの減衰部位まで減らされ、すなわち、一つの余分のスイッチをなくすことができる。本発明により、柔軟性を増し、機械的誤差の影響を減らす。さらに、本発明は、従来技術によるシステムに関する問題点及び欠点についての別の解決策である。
【0012】
本明細書において使用される「放射線」という用語は、本発明の分野すなわち光力学療法(PDT)及び/又は光熱療法(PTT)及び/又は光力学診断(PTT)に適する放射線を意味する。より特定して言うと、この放射線は、「光学的」放射線すなわち赤外線(IR)、可視光線又は紫外線の波長範囲内の非電離電磁放射線である。これは、また、本発明の実施態様及び本発明を定義する特許請求の範囲内の放射線源、放射線導体、放射線センサ、放射線スイッチなどに関係する。すなわち、これらの「放射線」の源、導体又はセンサは、上記の非電離放射線を発生、伝導、測定などするのに適する。
【0013】
本発明の一態様によれば、人間又は動物の治療及び/又は診断用のシステムは、少なくとも1つの放射線ディストリビュータを備え、このディストリビュータは、摺動スレッジなどの、少なくとも1つの縦並進移動素子を備え、このスレッジは、システムの異なる動作モードについて異なる配置で複数の放射線導体を結合するために、互いに関して並進移動可能な少なくとも2つの部分を望ましくは有している。少なくとも1つの縦並進素子を移動させることによって、すなわち、他方の部分に関するその縦軸に沿って縦並進素子の動作によって、システムの異なる動作モードについて異なる配置間で切り換えられる。こうして、一つの放射線源と一つの出力放射線導体を結合すること及び/又は人間又は動物の部位から少なくとも1つの放射線検出器へ複数の放射線導体を結合することなどの動作は、小型の並進切り換え装置を備えているシステムによって有効に行われる。
【0014】
一つの縦並進移動装置素子が固定され、他方が移動可能でもよい。又は、縦並進移動装置素子の両方が互いに関して、例えば固定ハウジングに関して移動可能である。
【0015】
本発明をより詳細に説明するために、添付図面を参照しつつ以下に本発明の複数の実施態様について説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、本発明によるシステムにおける本発明の実施態様を示す略図である。実施態様の説明を単純化するために、図に示される同様の素子の参照番号は全ての図面において必ずしも繰り返されない。次に、本発明によるシステムのディストリビュータの実施態様100について、図1〜4及び図9を参照しながら説明する。放射線用のディストリビュータ1は、放射線導体を並進素子に取り付ける方法など様々なパラメータに応じて例えば1cmの厚みのスチール又は数ミリの厚みの複合材料などで作られる、実質的に相互に近接する2枚の縦並進素子を備えている。放射線導体を縦並進素子に固定するために従来の光ファイバ・カップリングなど接触素子が使用される場合、このカップリングは機械的安定性を保証し、素子のサイズを規定する。放射線導体が縦並進素子に直接取り付けられる光ファイバである場合、素子はさらにコンパクトである。縦並進素子がマイクロメカニックによって実現される場合、さらに小さいサイズが得られる。本発明によって、縦並進素子は、2つの素子を相互に適切に位置決めすることによって、光ファイバなどそれぞれ第一の縦並進素子110、150の孔2に固定される複数の放射線導体144〜146又は102a〜102f、131a〜131j、160がそれぞれ第二の縦並進素子111、151の孔2に固定される第二の複数のファイバ160又は120a〜120fに結合されるように、相互に縦に並進できるように配列される。図1に示されるシステム100は、縦並進素子110、111、150、151を備えているこの種の2つのディストリビュータA及びBを備えている。これらの素子は図1から4までにおいて縦素子として示されている。しかし、これらの素子は、図5〜8から分かる通り、他の形状を持つことができる。さらに、素子のうち少なくとも1つをハウジングなどに組み入れることができる。素子は、放射線導体を通じて伝導される治療用放射線か診断用放射線を患者へ結合するためのスレッジとすることができる。
【0017】
診断ポジションにおいて、放射線は少なくとも1つの放射線検出器130へ結合される。システム100の診断部分は、2−1、3−1、...n−1放射線ディストリビュータを備えている。ここで、nは診断用光源141、142、143の数である。放射線ディストリビュータは、2つの並進移動素子150、151によって構成される。2つの素子の各々は、一度に1つの診断用放射線源が放射線導体160にまたさらに第二の放射線ディストリビュータBを通じて患者体内の治療対象部位に結合されるように、他方の並進素子に対して相対的に移動可能である。この診断動作モードについては、図2及び3を参照しながら下にさらに詳細に説明する。さらに、複数の診断用放射線源を同時に使用することができる。この場合には、ロックイン法によって又は信号を多重化することによって診断用放射線を同時に検出できるように、いくつかの診断用放射線源を変調することができる。診断動作モードにおいて治療用放射線は遮断されることが望ましい。
【0018】
主放射線ディストリビュータBは、2つの並進素子110、111を備えている。この2つの並進素子110、111は、矢印105、106によって示される通り他方の並進素子に対して相対的に移動可能である。移動は、複数の放射線導体120a〜120fが患者の腫瘍部位200へ及び腫瘍部位から放射線を導くように制御される。主放射線ディストリビュータBは、診断動作モードと治療動作モードとの間の切換えを行う。患者へ及び患者から通じる放射線導体120a〜120fは、並進素子111に固定される。主放射線ディストリビュータBの並進素子110は(3N−1)対Nの放射線ディストリビュータを備えている。ここで、Nは並進素子111に固定される患者へ又は患者から通じる放射線導体120a〜120fの数であり、(3N−1)は並進素子110に固定される放射線導体の数であり、その中のN本は放射線源101a〜101fに結合される放射線導体102a〜120fであり、2(N−1)本は放射線検出器130に結合される放射線導体131a〜131fであり、1本160は診断用放射線源240に結合される。
【0019】
治療動作モードにおいて、Bは図1に示されるように調整される。放射線源101a〜101fから発する治療用放射線は放射線導体102a〜102fへ結合される。光導体又は光ファイバなどこれらの放射線導体は、並進移動素子110に結合される。素子110は、光源101a〜101fからの光が放射線導体120a〜120fへまたさらに患者の治療部位へ結合されるように並進移動素子111と整合される。
【0020】
診断動作モードにおいて、放射線ディストリビュータAは、診断用放射線源141、142、143のうちの1つが放射線導体160に結合されるように調整される。その代わりに、図2及び3に示されるように、システムにおいて診断用放射線源が1つだけ使用される。主放射線ディストリビュータBは、診断動作モードにおいてN本の患者用ファイバ120a〜120fのうち1本が放射線導体160によって診断用放射線源に結合されるように調整される。これは、矢印205、206によって示される通り並進素子110、111を相互に横にスライドさせることによって行われる。複数の放射線導体120a〜120fのうち残りの(N−1)本の放射線導体を通じて患者体内の部位から送り返される放射線も、診断用放射線と呼ばれる。この診断用放射線は、放射線検出器130へ通じる複数の放射線導体131a〜130jのうちの(N−1)本の放射線導体へ結合される。その後、放射線ディストリビュータBは、N本の患者用放射線導体120a〜120fのうち別の1本が診断用放射線放出ファイバ160に結合されるように調整される。これは、矢印305、306によって示される通り、もう一度並進素子110、111を相互に横にスライドさせることによって行われる。このようにして、別の(N−1)本の放射線導体のセットが放射線検出器130へ通じる複数の放射線導体131a〜130jのうちの(N−1)本の放射線導体に結合される。放射線導体160からN本の患者用放射線導体へのN個の全ての結合組合せが行われるまでこれがN回反復される。n個の診断用放射線源がシステム内にある場合、n個の放射線源の各々についてN回の測定が実行され、その結果(N*n)回の診断測定が行われて、各測定が(N−1)個の測定値を生じる。上述の手順の代わりに、患者へ通じる次の入力放射線導体に切り換える前にn個の放射線源が順次応用される。検出器は単一の検出器でも複数の検出器でも配列検出器でもよい。
【0021】
図4は、本発明による別の実施態様の略図であり、この実施態様においては、検出器430へ通じる放射線導体の数を最小限に抑えるためにさらなる放射線ディストリビュータCが使用される。ディストリビュータCは、2つの並進素子470、471を備えている。2つの並進素子470、471は、それぞれ他方の並進素子に対して相対的に移動可能である。患者からの診断用放射線を伝導する(N−1)本の放射線導体に対応する(N−1)本の放射線導体431a〜431eは、並進素子470に固定され、検出器430へ通じる。2*(N−1)本の放射線導体131a〜130j(図1においてはそれぞれ素子110及び検出器130に接続される)は、この場合には並進素子110から並進素子471へ通じる。放射線ディストリビュータCは、複数の導体131a〜131jのうち活動中の(N−1)本の放射線導体だけが放射線導体431a〜431eを通じて検出器430に結合されるように調整される。その代わりに、並進素子471を並進素子110と統合し、並進素子470を並進素子111と統合することができる(図には示されていない)。このようにして、治療及び診断測定のために同一の並進素子を使用することができる。
【0022】
上の実施態様例においてはN=6及びn=3である。ただし、N及びnには他の数も同様に可能である。
【0023】
本発明によるシステムの少なくとも機械部分の較正のために、並進素子111に第七の孔を含むことができる。この孔は、図1〜4に示される線形並進素子に関しては、正確に放射線導体120dと120cとの間に位置することが望ましい。図5〜8に示されるディスク510に関しては、第七の孔は、ディスク510の孔513間のどこかに位置することが望ましい。第七の孔は、放射線ディストリビュータの相対する素子の孔における入力放射線導体のポジションを正確に定めるために使用される。第七の孔は放射線センサを直接備えるか、あるいは第七の孔に面する放射線導体から送られる放射線を反対側から検出するために放射線センサに接続される。このようにして、放射線ディストリビュータの素子のポジションを較正することができる。例えば、第七の孔のポジションは、これらの素子を駆動するステッピング・モーターのポジションをゼロにするために使用することができる。本発明によるシステムの並進素子550又はその他の並進装置のポジションを較正するためにも同じ方法で第七の孔を使用することができる。
【0024】
放射部分を含めて本発明によるシステム全体の較正のために、治療前に、例えば滅菌脂質内水溶液で作られる較正組織ファントム及び/又は例えばDelrin(登録商標)で作られる滅菌固形ファントムを直接測定することによって、システムの性能全体が記録される。治療用放射線源の性能は、内部及び/又は外部電力計によって監視することができる。
【0025】
次に、本発明によるシステムのディストリビュータの別の実施態様について、図5〜8を参照しながら説明する。この場合、縦並進素子は、別のディスク主体の回転可能ディストリビュータと統合され、その結果、先行技術に比べてよりコンパクトな装置となる。さらに詳細に述べると、ディスク状のディストリビュータ500は、例えば1cmの厚みのスチール、アルミニウム/チタン/マグネシウム、複合材料などの材料で作られる2枚の近接する平らなディスクを備えている。材料が軽量であれば、それだけ固定ポジション間のディスクの回転を速くすることができるが、同時にディスクは丈夫であることが重要であり、耐久性があることが望ましい。例えば複合材料のディスクは、一般的に言ってたとえばスチールより数ミリ薄い。本発明によって、2枚のディスクは軸614に配置され、ディスクの一方は固定ディスク511であり、他方は回転可能ディスク510である。ここで、「固定」及び「回転可能」と言う用語は単に説明を単純化するために使用されている。ただし、ディストリビュータ500の機能を単純に理解できるようにするために、これ以降の説明において、例証のためにディスク511は「固定」として定義され、ディスク510は「回転可能」として定義される。一般的に言って、2枚のディスク510、511は相互に対して相対的に回転可能である。使用中、ディスク510及び511は、図6及び8に示される通り相互に近接して配置されるが、図5及び7においては、図解のために相互に分離されている。
【0026】
放射線導体520(図5のディスク510の右側に位置する複数のファイバのうち1本の放射線導体に例として参照番号が付けられている)、530、540を固定するために両方のディスクに円形ライン上に均等に孔513が配置される(図7)。孔の直径は、放射線導体がディスクに直接取り付けられる光ファイバである場合には0.1〜0.7mmであることが望ましい。放射線導体を正確に対面させて配列できるようにして高い精度を得るために、2枚のディスクの孔は、例えばセンタリング・チューブを用いて一緒に穿つことができる。その代わりに、ディスク又は本明細書において言及されるその他の機械素子を生産するために高精度のカッタ又はドリルを使用することができる。その後ディスク510、511の中央に位置する孔512に通される共通の軸614が使用される。このようにして、一連の孔を作る際に非常に高い精度を得ることができる。
【0027】
一緒に穿孔されたディスクを使用することによって、放射線導体をこれらのディスクに固定することができる。この場合、これらより薄い追加のディスクを、望ましくはばね式で、多少回転させて、糊又はその他の固定手段の必要なく全ての放射線導体を同時に所定のポジションではさむことができる。その代わりに、孔の直径を放射線導体の直径より大きく作り、孔を適切なチューブ片で仕上げるか、又は放射線導体の端にはめ込みホースを装着することができる。その代わりに、放射線導体の端をフレア状又はフランジ状にして孔に入れるか、又は孔に適切なSMAコネクタ又は放射線導体を受けるためのその他のタイプのコネクタを装着することができる。これまでの実施態様又はこの実施態様に関連して説明される同じ原理が、並進放射線ディストリビュータにおいて孔及び放射線導体の固定に応用される。
【0028】
放射線導体は光ファイバであることが望ましく、放射線伝導材料を納める様々なタイプのホース又は可撓性チューブが含まれる。放射線導体は、ディスクを問題なく全回転(±180度)できるだけの長さを有し、ディスクが全回転できるように配列されなければならない。放射線導体がらせん状にならないようにするために、運動方向を逆転することができる。同じ原理がこの説明において開示される並進素子にも応用され、並進素子に接続される放射線導体は、並進素子又は放射線導体の機能が阻害されない長さを持たなければならない。さらに、放射線導体の長さは、患者用放射線導体の遠位端の位置決めが阻害されないよう充分な長さを持たなければならない。
【0029】
本発明のこの実施態様によれば、PDD、PDT及びPTT用のシステムにおける複数の第一の放射線導体520は、反応部位801への及び反応部位からの放射線の伝導のために回転可能なディスク510に配列される。本明細書において、反応部位とは、光力学的に活性の化合物が、例えば腫瘍内に配置される注射針のルーメンを通じて送られることによって治療を受けるとき腫瘍内で反応する部位を意味する。その後放射線導体520が反応部位801において固定される。その後、注射針の遠位端の外側に達するように放射線導体を前進させる。統合的な診断及び線量測定(治療)のためにも、また患者が何度も針で刺されることがないようにするためにも、治療中連続的に同じ放射線導体520が使用される。
【0030】
回転可能ディスク510並びに固定ディスク511の孔513は、円形ライン上に配列され、一方のディスクの半径は他方のディスクの半径に等しい。回転可能ディスク510の孔は円形ラインに沿って角度間隔v=(360/n)で等間隔に配置される。ここで、nは孔の数に等しい。他方の固定ディスク511の孔は(360/n)度に等しい角度間隔vで円形ラインに沿って等間隔に配置される。第一の放射線導体520の第一の端は回転可能ディスク510の孔に固定され、第二の放射線導体530、540の第一の端は固定ディスク511の孔に固定される。孔を作るために、またそれによって回転可能ディスク510を回わすことによって両方のディスクの放射線導体を様々な配置で相互に接続できるようにするために、nが1より大きい又は1に等しい整数として得られるよう、nはnの倍数となるように選択される。固定ディスクの孔の数は2から6以上までの数から、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9又は10から選択されるとよい。
【0031】
ここで説明される実施態様によれば、回転可能ディスク510には6つの孔が配列され、固定ディスク511には12個の孔が配列される。上述の通り、「固定」及び「回転可能」と言う言葉は、相互に対して回転可能な2枚のディスクの説明を単純化するために単に説明のために使用されている。第一の放射線導体520を6本とすると、孔の角度間隔は回転可能ディスク510において60度となり、固定ディスク511に12個の孔が配列されるとすると、第二の放射線導体540、530の角度間隔は30度となる。
【0032】
本発明によれば、並進スライド素子550が上述のシステムの固定ディスク511に配置される。スライド素子550は、矢印551によって示される通り実質的に半径方向の並進運動によってディスク511上で半径方向外側に移動できるように、ディスク511に配置される。スライド素子550はディスクにおけるファイバの取り付けに関して上に説明したのと同様に、放射線導体を受ける。素子550は、放射線導体563、564、565のうち1本から対応する放射線導体520への放射線の伝送ができる限り妨害されないように、現在活動中の放射線源560、561又は562に応じて所定の位置にロックする。このようにして、複数の放射線導体563、564、565のうち一度に1本の放射線導体(図5においては564)を回転可能ディスク510の対応する放射線導体(図5において参照番号520)に結合することができる。
【0033】
本発明の理解を容易にするために、本発明によるシステムのディストリビュータの望ましい実施態様についての以下の説明は、反応部位801への及び反応部位からの放射線の伝導のために回転可能ディスク510に6本の第一の放射線導体520が配列されるものについて行われる。
【0034】
このように、固定ディスク511は回転可能ディスク510と同様、第二の放射線導体用の6つの孔を有し、固定ディスク511の場合さらに第二の放射線導体用のさらなる6つの孔を有する。これらの全ての放射線導体は、反応部位200へ放射線を放出し、反応部位からの放射線を受けることができる。このようにして、いくつもの測定値を同時に記録し、読み取ることができる。
【0035】
回転可能ディスク510を回すことによって、第一の放射線導体と第二の放射線導体は様々な配置で相互に接続可能になる。ディストリビュータ500における相対する放射線導体の正確な位置決めは、予め決められた角度ポジションに回転可能ディスク510を止めるための手段を配置することによって容易になる。例えば、回転可能ディスク510に配置されるばね付きボール(図には示されていない)を捕捉するための溝を軸2に配置するか、又は回転可能ディスクに角度検出器を使用することができる。その代わりに、このために、上述の「第七の孔」方式と組み合わせてステッピング・モーター又はサーボモーターを用いる電子調節を使用することができる。
【0036】
診断動作モードと治療動作モードとの間の切換えを速やかにかつ効率よくするために、本発明によるディストリビュータ500の第二の放射線導体は1つおきに第一の系列及び第二の系列に分割される。両方の系列の孔は同じ円形上に配列されるが、相互に30度ずつずれる。1つおきの第二の放射線導体の第一の系列に属する特定の1本の放射線導体は少なくとも1つの放射線源からの放射線を放出するために配置される。第二の放射線導体の第一の系列に属するその他の放射線導体は、少なくとも1つの放射線センサ610へ放射線を伝導するために配置される。1つおきの第二の放射線導体の第二の系列は、治療用に少なくとも1つの放射線源から反応部位801へ放射線を放出するよう配列される。
【0037】
放射線導体は光ファイバであることが望ましく、図5〜8に示されるディストリビュータ500において光ファイバは固定ディスク511並びに回転可能ディスク510に接続される。固定ディスク511に接続される放射線導体のうち、6本の放射線導体を診断用として使用することができ、6本を治療用として使用することができる。ただし、診断動作モードにおいて、1つから3つを超えるモダリティ560、561、562からの放射線を採用することができる。
【0038】
図5〜6を参照すると、図を明確にするために固定ディスクに結合される上述の放射線導体のみが示されている。他の放射線導体は、図7及び8に示される通り固定ディスクに結合されるが、図5〜6には示されていない。
【0039】
回転可能ディスク510を30度回すことによって、患者の組織に光学的に結合される放射線導体520を治療用並びに診断及び測定用として使用することができる。ディスク511に固定される1つおきの第二の放射線導体のうちの1本は、診断動作モードにおいて診断用の様々な放射線源に接続されるのに対して、他の5本の放射線導体は、これらの放射線源と組織との相互作用に関係する信号を受け取る。放射線導体540(図5には6本全ては示されていない)は、治療用放射線源例えばレーザーに接続されるのに対して、放射線導体530は放射線検出器に接続される。放射線導体563〜565は診断用放射線源560〜562に結合される。
【0040】
強さ及びスペクトル解像度が重要なので、これらの5本の放射線導体640の遠位端は、放射線センサ610の入口スリットに重なりかつ/又は放射線センサの入口スリットを構成するようにスリット状に配列される。放射線センサは小型分光計又はその他のタイプの検出器とすることができ、二次元検出器配列又は1つ又は複数の一次元検出器配列を備える。分光計の記録範囲は約400nmから900nmまでの範囲であることが望ましい。当然、放射線導体530の各々を、分光計又は小型積分分光計など別のタイプの検出器の形を取る個々の放射線検出器610に接続することができる。
【0041】
図6を参照すると、アセンブリ600は、共通の軸614上の2枚のディスク510、511を備え、様々な診断用放射線源間で切り換えるための並進素子550がディスク511に組み込まれている。このようにして、診断用放射線源間で切り換えるための外部放射線ディストリビュータを有する他の解決法に比べてよりコンパクトで丈夫な構造が得られる。
【0042】
放射線源560、561、562のうち1つは光力学腫瘍治療のためのレーザー照射に使用されるのと同じ波長のレーザーであることが望ましいが、もっと低い出力でもよい。全ての測定作業に正確なダイナミック・レンジが利用されるようにするために放射線センサ610の光路に入り込むように、適切なフィルタを放射線ディストリビュータ550に配置することができる。
【0043】
放射線源560、561、562の一部は、対応する波長の放射線(光)が腫瘍組織へどのように透過するかを調べるために使用される。放射線源からの放射線が特定の放射線導体を通って放射線ディストリビュータ550及びディスク511、510を経て組織へ送られるとき、ディストリビュータ550の放射線導体に相対する1本の放射線導体である第一の放射線導体520のうちの1本は、腫瘍内のトランスミッタとして機能し、腫瘍内のその他の5本の放射線導体520はレシーバとして機能して、放射線導体へ達する放射線の拡散光束を集める。集められた放射線は再びディスク510、511を経てかつ放射線導体640(その中の2本の導体が図5において530として示されている)を経て放射線センサ610へ伝導され、5つの異なる光の強さを検出器/検出器配列で記録することができる。
【0044】
回転可能ディスク510が60度回されると、患者へ通じる次の放射線導体520がトランスミッタとしての役割を得て、その他の5本は新しい放射線供給のためのレシーバとなる。患者体内の次の放射線導体520まで60度ずつ回転可能ディスク510をさらに4回回すと、トランスミッタ/レシーバの残りの全ての組合せについて放射束データが記録される。このようにして、合計6×5=30の測定値が得られ、治療中腫瘍の様々な部分に蓄積される放射線量の断層モデリングのための入力データとして使用することができる。さらに、固定ディスク511において実質的に半径方向に放射線ディストリビュータ550を縦に並進させることによって3つの放射線源560〜562間で切り換えることによって、これらの30の測定値が放射線源560、561、562の数だけ倍増して、合計で90の断層測定値が得られる。
【0045】
特定の波長の他に、白色光源及び/又は広帯域発光ダイオード及び/又は線光源からの放射線を、放射線ディストリビュータ550の特定の活動中の放射線導体へ結合することができる。組織を通って患者体内の受信放射線導体520まで通過するとき、放射線源の明確に定義されたスペクトル分布は組織吸収によって修正される。このとき、酸素を豊富に含んだ血液は酸素を豊富に含まない血液と異なるサインを生じるので、読み取られる30(診断調査中回転可能ディスク510の回転により6つの異なる配置において一度に5つのスペクトル)の様々なスペクトル分布を利用して酸素分布を断層的に決定することができる。PDTプロセスは一般的に言って組織内の酸素にアクセスする必要があるので、このような腫瘍における酸素和の決定は重要である。
【0046】
最後に、青色/紫色光又は紫外線の光源例えばレーザーを、放射線ディストリビュータ550の特定の活動中の放射線導体に結合することができる。組織内において蛍光が誘発され、組織に投与された感作物質は、赤色/近赤外スペクトル領域において特徴的な赤色蛍光を示す。対応する信号の強さによって、組織内における感作物質のレベルを定量化することができる。
【0047】
短い波長の光は組織への透過度が非常に低いので、誘発される蛍光は放射線導体の先端で局部的にしか測定されない。この仕事のために、この場合対応する放射線源670のために特定の放射線導体661の遠位端に、放射線導体662を通じて接続されるビームスプリッタ660が配置される。ビームスプリッタは、励起光は伝送するが赤方偏移蛍光を反射する二色ビームスプリッタであることが望ましい。この反射した放射線は搬送放射線導体662の遠位端に焦点を合わされ、この放射線導体の他方の端は放射線センサ610に接続され、センサは蛍光放射線分布を記録する。適切な内蔵蛍光センサについては、Rev.Sci.Instr.71,510004(2000)において説明されている。この種の二色ビームスプリッタを有するシステムは、図1〜4に示されるような並進放射線ディストリビュータ・システムによっても同様に実現することができる。例えば、放射線導体662は、放射線検出器130と例えば放射線導体144に挿入される二色ビームスプリッタ660との間に挿入することができる。
【0048】
回転可能ディスク510を回転させることによって、感作物質の濃度に比例する蛍光を、6本の放射線導体の先端で順次測定することができる。感作物質は強い治療用赤色放射線(放射線を患者へ伝導する放射線導体520の先端の周りで特に強い)によって漂白されるので、治療開始前にこの測定を行うことが肝要である。
【0049】
放射線導体520、120a〜120fの先端がさらに温度依存の蛍光特性を有する物質によって処理される場合、励起時にはっきりした蛍光ラインが得られ、ラインの強さ及びその相対的な強さは、処置に使用される放射線導体520、120a〜120fの先端の温度によって決まる。この種の物質の例は、遷移金属又は希土類金属の塩である。このようにして、6本の放射線導体の6つのポジションで1つずつ温度を測定することができる。測定された温度は、関連する放射線減衰を伴う血液凝固が放射線導体520、120a〜120fの先端で生じたか否かを調べるため及びPDTと熱の相互作用との間の相乗効果の利用について調べるために利用することができる。得られるラインははっきりしているので、これを組織からのより広域の蛍光分布から取り出すことができる。
【0050】
特定の物質について感作物質の濃度を代替方法で測定することができる。放射線伝搬調査に使用される赤色放射線が近赤外線蛍光を誘発するために使用される。この蛍光は組織を通って受信放射線導体520、120a〜120fの先端まで透過し、放射線センサ610、130において得られるスペクトルとして同時に表示される。濃度分布の断層計算は、合計30の測定値に基づいて行うことができる。
【0051】
診断測定及び計算が行われた後、光学的に患者の組織へ結合されるファイバ520は、回転可能ディスク3を30度回転させることによって治療用として利用することができる。治療用放射線源は、このようにして、患者用ファイバ520に結合される。治療用放射線源は、感作物質の吸収帯域に適する波長を有するレーザー源であることが望ましい。光力学腫瘍治療においては、採用される感作物質に合わせて選択される波長を有する色素レーザー又はダイオード・レーザーが使用されることが望ましい。Photofrin(登録商標)の場合波長は630nmであり、δアミノレブリン酸(ALA)の場合波長は635nmであり、フタロシアニンの場合約670nmである。その他多くの感作物質が存在する。個々のレーザーは治療中個々の望ましい出力に調節される。希望に応じて、組込み又は外部監視検出器を備えることができる。
【0052】
最適の治療に達するまで、治療を中断して、双方向式に新たな診断データを処理することができる。レーザー放射線の光束が増大すると温度が上昇するこの方法は、PDTと温熱療法との間の相乗効果を含むことができる。全体のプロセスは、コンピュータを用いて制御され、コンピュータは全ての計算を行うだけでなく調節にも利用される。
【0053】
図10は、本発明の実用的な応用例においてシステムの実施態様を実用的に実現して行われた腫瘍の治療中における様々な時点の診断測定を示すグラフである。
【0054】
6つの図表の各々において、1本のファイバの端がエミッタとして使用され、その他のファイバの端がコレクタとして作用する。発光端から633nmの波長の放射線が発せられ、集光端は定量化のために検出器へ放射線を送る。全ての図表は第一のサンプルに標準化されている。「出力ファイバ1」の図表において、放射線導体1がエミッタとして使用され、2〜6はコレクタとして使用される。「出力ファイバ2」の図表においては、放射線導体2がエミッタとして使用され、1及び3〜6はコレクタとして使用され、以下同様である。個々のファイバにおける測定は、曲線の形状の違いによって区別される。全ての発光導体からの出力は常に等しい。従って、これらの図表は、633nmの波長の光の透過度が治療中に時間に対してどのように変化するかを示している。図から分かる通り、透過度は診断測定中一定ではない。この情報は、診断強化にも使用することができる。
【0055】
上述の放射線ディストリビュータは、異なる配置間で移動するためにステッピング・モーター/サーボモーターによって駆動されることが望ましい。
【0056】
当然、望む場合には、診断と治療を同時に行うこともできる。例えば上記の治療照射用の6本の放射線導体プラス治療用光線の効果を同時に診断するための4本の放射線導体など、腫瘍に通じる適切な数の放射線導体があれば、リアルタイムに治療を直接調節することができる。これは、治療用の光学的放射によって損傷を受けない感覚器官の治療を行う際に特に重要である。もちろん、腫瘍組織のみを破壊することが目標である。この例において、6本の放射線導体は、6本の放射線導体の遠位端が挿入される腫瘍組織を照射する。4本の診断用放射線導体も腫瘍組織の適切な位置に挿入され、腫瘍組織内に散在する治療用放射線導体からの励起放射線と腫瘍組織に生じる蛍光放射線の両方を捕捉する。この捕捉された放射線を分光計で分析して、治療用放射線源を調節するために使用することができる。例えば、この4本の付加的放射線導体を治療照射用の6本の放射線導体の中間に配置することができる。6本の放射線導体が放射線源に接続される場合、並進スライド又は回転ディスクの配列によって、4本の付加的放射線導体は自動的に放射線検出器に接続される。
【0057】
本発明は、特定の実施態様に関して上に説明されている。しかし、上述の望ましい実施態様以外の実施態様も添付の特許請求の範囲内で同様に可能であり、ハードウェア又はソフトウェアによって上述の方法を実行する、例えば上述のものと異なる並進素子の形状などが可能である。さらに、素子を構成するためにマイクロメカニック技術を用いることによって、並進素子をさらに最小限に抑えることができる。このようにして、マイクロファブリケーションによって生産されるマイクロ電気機械システム(MEMS)によって素子の1つの実現形態が得られる。上述の素子は様々な原理で作用する。1つは出力ファイバに対して相対的なファイバの圧電運動によって作動される直接ファイバ運動による切換えである。もう1つは、光学ビームを様々な出力/入力ファイバに偏向させるマイクロプリズム又はミラーなどマイクロメカニック・コンポーネントに基づくマイクロ光学ビーム偏向による切換えである。Piezosystem Jena社又はPyramid Optics社は後者のマイクロメカニック原理に基づく適切なコンポーネントを提供する。
【0058】
さらに、「備える」と言う用語は、本明細書において使用される場合他の素子又はステップを除外するものではなく、単数で示される単語は複数を除外するものではなく、かつ単一のプロセッサ又はその他のユニットは、特許請求の範囲に記載されるユニット又は回路のうちいくつかの機能を果たす場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】腫瘍治療モードにおける本発明の一実施態様を示す略図であり、本発明のシステムにおいて、光ガイドが腫瘍内に挿入されて組織内に配置されている。
【図2】腫瘍診断モードにおける本発明の別の実施態様を示す略図である。
【図3】別の診断モードにおける図2の実施例の略図である。
【図4】本発明による別の実施態様の略図であり、放射線ディストリビュータが診断モードにおいて放射線検出器を結合している。
【図5】本発明のシステムの使用時における本発明の別の実施態様を示す略図であり、縦並進放射線ディストリビュータが回転可能な放射線ディスリビュータと一体である。
【図6】診断モードにおける図5の実施例を示す略図である。
【図7】回転可能な放射線ディストリビュータのディスクが離れている、図5の実施例を示す略図である。
【図8】使用時の図5の放射線ディストリビュータを示している略図である。
【図9】前記素子内に配置されている光ガイドを受け取るための穴を有する、縦並進放射線ディストリビュータ素子の平面上面図である。
【図10】本発明の実用的な応用例においてシステムの実施態様を実用的に実現して行われた腫瘍の治療中における様々な時点の診断測定を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を発するための少なくとも1つの第一放射線源と、人間又は動物における又は内における腫瘍部位へ放射線を導くのに適した少なくとも1つの第一放射線導体とを備え、前記放射線導体は、腫瘍部位における腫瘍の治療及び診断のために腫瘍部位へ及び/又はから放射線を導くための、トランスミッタ及び/又はレシーバとして使用されている、人間又は動物の治療及び診断用のシステムにおいて、
少なくとも1つのディストリビュータは、少なくとも前記第一放射線源から前記腫瘍部位へ前記放射線を供給するのに適しており、前記ディストリビュータは、縦並進素子が予め定めたポジション間で縦並進移動することによって放射線が前記システムの異なる動作モードのために異なる配置で結合されるように配置されている少なくとも1つの縦並進素子を備え、前記放射線は、非電離電磁放射線であることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記第一放射線は、診断用放射線であり、前記システムは、前記放射線導体の少なくとも1つを通して前記部位へ治療用放射線を発するための少なくとも1つの第二放射線源を備えている請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記腫瘍の治療及び診断は、双方向型組織内光力学腫瘍治療及び/又は光熱腫瘍治療及び/又は腫瘍診断である請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記腫瘍部位へ及びから放射線を導くために配置されている複数の第一放射線導体と、
少なくとも一つの放射線源から放射線を送るために及び/又は少なくとも1つの放射線センサへ放射線を導くために配置されている複数の第二放射線導体とを備えているシステムにおいて、
前記ディストリビュータは、少なくとも1つの放射線源から腫瘍部位へ及び/又は腫瘍部位から少なくとも1つの放射線センサへ放射線を供給するためのディストリビュータであり、前記ディストリビュータは、前記部材の第二の部材に関する予め定めたポジション間で前記素子の第一の素子の並進移動によって放射線が異なる配置で結合されるように配置されている少なくとも2つの並進素子を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
各素子が、前記放射線導体を受け入れるために配置されている複数の穴を有し、2つの素子の対応の穴は、直線上に等距離に配置されていることを特徴とする請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記第一の放射線導体の第一の端が並進移動素子の前記孔に固定され、第二の放射線導体の第一の端が他方の並進素子の前記孔に固定され、前記第一及び前記第二の放射線導体が前記縦並進移動素子及び前記他方の並進素子の予め決められたポジション間における相互に対して相対的な縦並進移動によって様々な配置で相互に接続可能であることを特徴とする、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記他方の素子は第二の縦並進移動素子であることを特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
さらに、相互に近接する2枚の平らなディスクを備え、前記ディスクが相互に対して相対的に回転可能であり、
各ディスクが円形ライン上に配列される孔を有し、一方のディスクの円半径が他方のディスクの円半径に等しく、一方のディスクの前記孔がv=(360/n)度の角度間隔で円形ライン上に均等に供給され、nは孔の数であり、かつ他方のディスクの前記孔がv=(360/n)度の角度間隔で円形ライン上に均等に供給され、n=m×nであり、mは倍数であり、nは1以上の整数となることを特徴とし、
第三の放射線導体の第一の端が前記第一のディスクの前記孔に固定され、第四の放射線導体の第一の端が1つを除いて前記第二のディスクの全ての孔に固定され、それによって、前記第三及び第四の放射線導体が他方のディスクに対して相対的な前記回転可能ディスクの回転によって様々な配置で相互に接続可能であり、
かつ前記縦並進素子が実質的に半径方向外向きに移動可能に配列され、前記複数の第一の放射線導体を前記第三のファイバのうちの1本に結合するために前記他方のディスクと統合される、請求項1〜5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
が前記ディストリビュータの前記第一のディスクの孔の数であり、n=6、m=2であり、前記ディストリビュータの前記第二のディスクの孔がn=12となる、ことを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
1つおきの第四の放射線導体が第四の放射線導体の第一の系列に属し、かつ前記第四の放射線導体の前記第一の系列に属する1本の放射線導体が前記放射線源からの放射線を放出するように配列され、前記第四の放射線導体の前記第一の系列に属するその他の放射線導体が前記放射線検出器へ放射線を導くように配列されることを特徴とする、請求項8又は9に記載のシステム。
【請求項11】
前記他方のディスクの前記縦並進素子が診断用放射線源のうちの1つを前記第一のディスクの前記第三の放射線導体のうちの1本に結合するように前記第一の放射線導体が診断用放射線源に接続されることを特徴とする請求項8又は9に記載のシステム。
【請求項12】
前記診断用放射線源は、近赤外線(NIR)、白色、赤色、青色/紫色の光及び/又は紫外線のための光源である請求項1〜11のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
前記診断用放射線源がビームスプリッタを備えていることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項14】
移す放射線導体が二色ビームスプリッタと前記放射線検出器との間に配列されることを特徴とする請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記第三の放射線導体の第二の端が温度感受蛍光発光材料によって処理されることを特徴とする請求項12に記載のシステム。
【請求項16】
前記第四の放射線導体が1本おきに、前記放射線源からの放射線を放出するように配列される第四の放射線導体の第二の系列に属することを特徴とする請求項8又は9に記載のシステム。
【請求項17】
前記治療用放射線源が単一の固定波長のコヒーレント光用の光源であることを特徴とする、請求項2〜16のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項18】
前記ディストリビュータが放射線ディストリビュータを予め決められた横及び/又は方位角ポジションにロックするための手段を有することを特徴とする請求項1〜17のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項19】
前記放射線導体は光ファイバであることを特徴とする請求項1〜18のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項20】
前記腫瘍部位へ放射線を送る放射線導体と同じ放射線導体を通じて蛍光が記録されることを特徴とする請求項12〜14のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項21】
組織内光力学治療のために、温度感受蛍光発光材料で処理される前記放射線導体のうち1本又は数本が使用中前記腫瘍部位の温度を測定し、
前記腫瘍部位に送られる放射線が使用中前記腫瘍部位を加熱し、かつ
個々の放射線導体において前記腫瘍部位の温度を調節するために前記放射線の強さが測定温度によって制御可能であることを特徴とする、請求項15に記載のシステム。
【請求項22】
前記縦並進移動素子が光学スレッジであることを特徴とする、請求項1〜21のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項23】
前記放射線ディストリビュータの前記素子を相互に対して相対的に動かすための少なくとも1台のステッピング・モーター又は少なくとも1つのサーボ・システムを特徴とする、請求項1〜22のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項24】
前記動作モードが、双方向型組織内光力学腫瘍治療、温熱療法を用いる光熱腫瘍治療及び腫瘍診断から成るリストに含まれるシステムのモードであり、これらの動作モードが使用中前記腫瘍部位の同一処置中に切り換えられることを特徴とする、請求項1〜23のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項25】
該システムの前記動作モードが、
1つの診断用放射線源が第一の縦並進素子を経て前記部位へ診断用放射線を送る前記第一の放射線導体に結合され、残りの第一の放射線導体が放射線検出器に結合される、診断動作モードと、
前記治療用放射線源が前記部位へ診断用放射線を送る前記第一の放射線導体に結合される、治療動作モードとを備えていることを特徴とする、請求項2〜24のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項26】
少なくとも1つの第二の縦並進素子が前記動作モード間で切り換えることを特徴とする請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
第三の縦並進素子が前記第二の縦並進素子から前記放射線検出器への複数の放射線導体間で切り換えるように構成されることを特徴とする、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
少なくとも1つの放射線検出器及び複数の放射線導体が腫瘍部位に接続され、前記放射線導体が、前記腫瘍部位における腫瘍の診断及び治療のために前記腫瘍部位へかつ/又は腫瘍部位から放射線を伝導するためのトランスミッタ又はレシーバとして使用される、双方向型組織内光力学腫瘍治療及び/又は光熱腫瘍治療及び/又は腫瘍診断のための方法において、
該方法が、
腫瘍治療と腫瘍診断との間の切換えが、請求項1〜23のいずれか1項に記載のシステムに含まれる放射線ディストリビュータによって異なる配置間で放射線導体を切り換えることによって自動的に行われ、かつ
前記腫瘍部位の最適の治療が得られるまで診断の結果に応じて治療用放射線の強さを調節することによって前記診断の結果が前記治療プロセスを制御することを特徴とする方法。
【請求項29】
前記腫瘍部位の同一処置中に双方向型組織内光力学腫瘍治療、温熱療法を用いる光熱腫瘍治療及び腫瘍診断を交互に利用することを特徴とする、請求項28に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−503962(P2007−503962A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532191(P2006−532191)
【出願日】平成16年5月14日(2004.5.14)
【国際出願番号】PCT/SE2004/000755
【国際公開番号】WO2004/101069
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(504187548)スペクトラキュア アクティエボラーグ (3)
【Fターム(参考)】