説明

放射線像変換パネルの製造方法

【課題】 高感度であって、高画質であり、特に、鮮鋭性に優れた放射線画像が得られる放射線像変換パネルの製造方法の提供。
【解決手段】 蒸着装置内にて、下記一般式(I)で表される輝尽性蛍光体もしくは輝尽性蛍光体原料を含有する蒸発源を加熱して発生する物質を基板上に蒸着させることにより蛍光体層を形成する工程を有する放射線像変換パネルの製造方法において、蒸着装置として蒸発源ボートと該基板との間に開閉可能なシャッタが備えられた蒸着装置を用い、該シャッタの面積と蒸発源ボートの開口部面積の比が1以上であることを特徴とする放射線像変換パネルの製造方法。
一般式(I)
1X・aM2X′2・bM3X″3:eA

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輝尽性蛍光体を利用する放射線像(放射線画像)記録再生方法に用いられる放射線像変換パネルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
X線などの放射線が照射されると、放射線エネルギーの一部を吸収蓄積し、そののち可視光線や赤外線などの電磁波(励起光)の照射を受けると、蓄積した放射線エネルギーに応じて発光を示す性質を有する蓄積性蛍光体(輝尽発光を示す輝尽性蛍光体等)を利用して、この蓄積性蛍光体を含有するシート状の放射線像変換パネルに、被検体を透過したあるいは被検体から発せられた放射線を照射して被検体の放射線画像情報を一旦蓄積記録した後、パネルにレーザ光などの励起光を走査して順次発光光として放出させ、そしてこの発光光を光電的に読み取って画像信号を得ることからなる、放射線画像記録再生方法が広く実用に共されている。読み取りを終えたパネルは、残存する放射線エネルギーの消去が行われた後、次の撮影のために備えられて繰り返し使用される。
【0003】
放射線画像記録再生方法に用いられる放射線像変換パネル(蓄積性蛍光体シートともいう)は、基本構造として、支持体とその上に設けられた蛍光体層とからなるものである。ただし、蛍光体層が自己支持性である場合には必ずしも支持体を必要としない。また、蛍光体層の上面(支持体に面していない側の面)には通常、保護層が設けられていて、蛍光体層を化学的な変質あるいは物理的な衝撃から保護している。
【0004】
蛍光体層としては、蓄積性蛍光体とこれを分散状態で含有支持する結合剤とからなるもの、蒸着法や焼結法によって形成される結合剤を含まないで蓄積性蛍光体の凝集体のみから構成されるもの、および蓄積性蛍光体の凝集体の間隙に高分子物質が含浸されているものなどが知られている。
【0005】
また、上記放射線画像記録再生方法の別法として本出願人による特願平11−372978号明細書には、従来の蓄積性蛍光体における放射線吸収機能とエネルギー蓄積機能とを分離して、少なくとも蓄積性蛍光体(エネルギー蓄積用蛍光体)を含有する放射線像変換パネルと、放射線を吸収して紫外乃至可視領域に発光を示す蛍光体(放射線吸収用蛍光体)を含有する蛍光スクリーンとの組合せを用いる放射線画像形成方法が提案されている。この方法は、被検体を透過などした放射線をまず、該スクリーンまたはパネルの放射線吸収用蛍光体により紫外乃至可視領域の光に変換した後、その光をパネルのエネルギー蓄積用蛍光体にて放射線画像情報として蓄積記録する。次いで、このパネルに励起光を走査して発光光を放出させ、この発光光を光電的に読み取って画像信号を得るものである。このような放射線像変換パネルおよび蛍光スクリーンも、本発明に包含される。
【0006】
放射線画像記録再生方法(および放射線画像形成方法)は上述したように数々の優れた利点を有する方法であるが、この方法に用いられる放射線像変換パネルにあっても、できる限り高感度であってかつ画質(鮮鋭度、粒状性など)の良好な画像を与えるものであることが望まれている。
【0007】
感度および画質を高めることを目的として、例えば特公平6−77079号公報に記載されているように、蛍光体層を気相堆積法により形成することからなる放射線像変換パネルの製造方法が提案されている。気相堆積法には蒸着法やスパッタ法などがあり、例えば蒸着法は、蛍光体またはその原料からなる蒸発源を抵抗加熱器や電子線の照射により加熱して蒸発源を蒸発、飛散させ、金属シートなどの基板表面にその蒸発物を堆積させることにより、蛍光体の柱状結晶からなる蛍光体層を形成するものである。
【0008】
気相堆積法により形成された蛍光体層は、結合剤を含有せず、蛍光体のみからなり、蛍光体の柱状結晶と柱状結晶の間には空隙(クラック)が存在する。このため、励起光の進入効率や発光光の取出し効率を上げることができるので高感度であり、また励起光の平面方向への散乱を防ぐことができるので高鮮鋭度の画像を与えることができる。
【0009】
PCT特許出願第WO−01/03156A1号公報には、ユーロピウム賦活ハロゲン化セシウム(CsX:Eu)輝尽性蛍光体を基板上に蒸着(一元蒸着)させることからなる放射線像変換パネルの製造方法が開示されている。しかしながら、この公報には、得られた蒸着膜中に賦活剤Euの濃度分布が生じることについても、更にはEu濃度分布を解消するための手段についても、全く記載されていない。
【0010】
また、本発明者らは、輝尽性蛍光体を有する蛍光体層を蒸着法により形成する方法について種々研究した結果、母体成分と賦活剤成分とで蒸気圧に大きな差があるために、通常の一元蒸着では蒸気圧の高い母体成分が先に蒸発しやすく、結果として蛍光体層中に賦活剤Euの濃度分布が生じて、蒸発源として仕込んだ蛍光体の組成と形成された蛍光体層中の蛍光体の組成とが一致しなかったり、蛍光体層の厚み方向に蛍光体の組成が均一とならないなどの問題が生じることが分かった。このことは、蛍光体層からの輝尽発光量を減少させ、蛍光体層の柱状結晶性を低下させ、更には蛍光体層に亀裂や剥離突沸を発生させて放射線画像上に画像欠陥をもたらすものである。
【0011】
これらを解決するために、蒸発源ボートと基板の間に単にシャッタを設ける技術が開示されているが、シャッタが蒸発源ボートの開口部より小さいと漏れを生じ、結晶成長に悪影響及ぼし、また、シャッタの形状平面の場合、蒸発源の蒸気の回り込みがおきて、同じく結晶成長に悪影響を及ぼし、特に鮮鋭性が、未だ満足を得られるものでは無かった。(例えば、特許文献1を参照)
【特許文献1】特開2003−302497号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の目的は、高感度であって、高画質であり、特に、鮮鋭性に優れた放射線画像が得られる放射線像変換パネルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の上記目的は以下の構成により達成される。
【0014】
(請求項1)
蒸着装置内にて、下記一般式(I)で表される輝尽性蛍光体もしくは輝尽性蛍光体原料を含有する蒸発源を加熱して発生する物質を基板上に蒸着させることにより蛍光体層を形成する工程を有する放射線像変換パネルの製造方法において、蒸着装置として蒸発源ボートと該基板との間に開閉可能なシャッタが備えられた蒸着装置を用い、該シャッタの面積と蒸発源ボートの開口部面積の比が1以上であることを特徴とする放射線像変換パネルの製造方法。
【0015】
一般式(I)
1X・aM2X′2・bM3X″3:eA
〔式中、M1はLi、Na、K、RbおよびCsからなる群から選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり、M2はBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、CuおよびNiからなる群から選ばれる少なくとも一種の二価金属であり、M3はSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、GaおよびInからなる群から選ばれる少なくとも一種の三価金属であり、X、X′およびX″は各々F、Cl、BrおよびIからなる群から選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり、Aは、Eu、Tb、In、Cs、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、Tl、Na、Ag、Cu及びMgからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属であり、また、a、b、eはそれぞれ0≦a<0.5、0≦b<0.5、0<e<1.0の範囲の数値を表す。〕
(請求項2)
前記シャッタの面積と前記蒸発源ボートの開口部面積の比が10以上であることを特徴とする請求項1に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
【0016】
(請求項3)
前記蒸発源ボートと前記シャッタの距離Sが0mm<S<1000mmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
【0017】
(請求項4)
蒸着装置内にて、前記一般式(I)で表される輝尽性蛍光体もしくは輝尽性蛍光体原料を含有する蒸発源を加熱して発生する物質を基板上に蒸着させることにより蛍光体層を形成する工程を有する放射線像変換パネルの製造方法において、蒸発源ボートと該基板との間に開閉可能なシャッタが備えられた蒸着装置を用い、該シャッタの形状が平面でなく、蒸発源側に折り返しがあることを特徴とする放射線像変換パネルの製造方法。
【0018】
(請求項5)
支持体を支持体回転機能を有する部材に設置して、支持体を回転しながら蒸着することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明による放射線像変換パネルの製造方法は、高感度であって、高画質であり、特に、鮮鋭性に優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の請求項1の発明の製造方法は、蒸着装置内にて、前記一般式(I)で表される輝尽性蛍光体もしくは輝尽性蛍光体原料を含む蒸発源を加熱して発生する物質を基板上に蒸着させることにより蛍光体層を形成する工程を有する放射線像変換パネルの製造方法において、蒸着装置として蒸発源ボートと該基板との間に開閉可能なシャッタが備えられた蒸着装置を用い、該シャッタの面積と蒸発源ボートの開口部面積の比を1以上にすることにより、結晶成長に悪影響を及ぼすことなく、本発明の目的が達成されたのである。
【0021】
また、本発明においては前記シャッタの面積と開口部蒸発源ボートの面積の比が10以上であることが本発明の効果をより奏する点で好ましい。
【0022】
上限としては1000であることが好ましい。
【0023】
また、本発明においては、前記前記シャッタと蒸発源の距離Sが0mm<S<1000mmであることが本発明の効果をより奏する点で好ましい。
【0024】
本発明の請求項4の発明は、蒸着装置内にて、前記一般式(I)で表される輝尽性蛍光体もしくは輝尽性蛍光体原料を含有する蒸発源を加熱して発生する物質を基板上に蒸着させることにより蛍光体層を形成する工程を有する放射線像変換パネルの製造方法において、蒸発源と該基板との間に開閉可能なシャッタが備えられた蒸着装置を用い、該シャッタの形状が平面でなく、蒸発源側に折り返しを設けることにより、蒸発源の蒸気の回り込みを防ぎ、結晶成長に悪影響を及ぼす事なく、本発明の目的が達成されたのである。
【0025】
蛍光体層形成のための基板(支持体ともいう)は、通常は放射線像変換パネルの支持体を兼ねるものであり、従来の放射線像変換パネルの支持体として公知の材料から任意に選ぶことができるが、特に好ましい基板は、石英ガラスシート、サファイアガラスシート;アルミニウム、鉄、スズ、クロムなどからなる金属シート;アラミドなどからなる樹脂シートである。
【0026】
公知の放射線像変換パネルにおいて、パネルとしての感度もしくは画質(鮮鋭度、粒状性)を向上させるために、二酸化チタンなどの光反射性物質を有する光反射層、もしくはカーボンブラックなどの光吸収性物質を有する光吸収層などを設けることが知られている。本発明で用いられる基板についても、これらの各種の層を設けることができ、それらの構成は所望の放射線像変換パネルの目的、用途などに応じて任意に選択することができる。
【0027】
さらに、放射線画像の鮮鋭度を向上させる目的で、基板の蛍光体層側の表面(支持体の蛍光体層側の表面に下塗層(接着性付与層)、光反射層あるいは光吸収層などの補助層が設けられている場合には、それらの補助層の表面であってもよい)には微小な凹凸が形成されていることが好ましい。
【0028】
次に、本発明の前記の一般式(I)で示される輝尽性蛍光体について説明する。
【0029】
1はLi、Na、K、Rb及びCsから選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属原子を表し、M2はBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Ni、Cu、Zn及びCdから選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属原子又は二価の金属原子を表し、M3はSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga及びInから選ばれる少なくとも一種の希土類元素又は三価の金属原子を表し;X、X’及びX”はそれぞれ、F、Cl、Br及びIから選ばれる少なくとも一種のハロゲンを表す。a、b及びzはそれぞれ、0≦a<0.5、0≦b<0.5、0<z<1.0の範囲内の数値を表す
本発明においては、前記一般式(I)において、蛍光体母体を表すM1XはCsBrであることが好ましく、賦活剤Euの量を表すzは0.001≦z≦0.1の範囲内の数値であることが好ましい。さらに、一般紙式(I)には必要に応じて、酸化アルミニウム、二酸化珪素、酸化ジルコニウムなどの金属酸化物を添加物として、M1X1モルに対して0.5モル以下の量で加えてもよい。
【0030】
次ぎに本発明の製造方法について説明する。
【0031】
まず、上記の輝尽性蛍光体を含む蒸発源を用意する。蒸発源は、一般には輝尽性蛍光体のみから構成されるが、例えば輝尽性蛍光体と賦活剤成分や添加物成分との混合物であってもよい。蒸発源は、突沸防止などの点からその含水量が0.5質量%以下であることが好ましい。蛍光体がCsBr:Euのように吸湿性である場合には特に、含水量をこのような低い値に抑えることは突沸防止などの点から重要である。蒸発源の脱水は、蛍光体を減圧下で100〜300℃の温度範囲で加熱処理したり、あるいは窒素雰囲気などの水分を含まない雰囲気中で、蛍光体の融点以上の温度で数十分〜数時間加熱溶融することにより行うことができる。
【0032】
さらに、蒸発源は、アルカリ金属不純物(蛍光体の構成元素以外のアルカリ金属)の含有量が10ppm以下であり、そしてアルカリ土類金属不純物(蛍光体の構成元素以外のアルカリ土類金属)の含有量が1ppm以下であることが望ましい。このような蒸発源は、アルカリ金属やアルカリ土類金属など不純物の含有量の少ない原料を使用することにより調製することができる。これによって、不純物の混入が少ない輝尽性蛍光体蒸着層を形成することができるとともに、そのような輝尽性蛍光体蒸着層は発光量が増加する。
【0033】
次に、図1に示すような蒸着装置を用いて基板(支持体)上に本発明の輝尽性蛍光体を含有する放射線像変換パネルの製造方法について説明する。
【0034】
図1は、本発明の輝尽性蛍光体層の形成に用いられる蒸着装置の一例を示す概略図である。
【0035】
図1に示すように、蒸着装置1は、真空容器2と、該真空容器2内に設けられた基板(支持体)上に蒸発源の蒸気を蒸着させる蒸発源ボートに挿入された蒸発源3と支持体を保持する支持体ホルダー4と、該支持体ホルダー4を蒸発源3に対して回転させることによって該蒸発源からの蒸気を蒸着させる支持体回転機構5と、真空容器2内の排気及び大気の導入を行う真空ポンプ6等を備えている。
【0036】
蒸着源3は、輝尽性蛍光体を収容して抵抗加熱法で加熱するため、ヒータを巻いたアルミナ製のルツボに挿入されても良いし、高融点金属からなるヒーターを有するボートに挿入されていても良い。
【0037】
また、輝尽性蛍光体を加熱する方法は、抵抗加熱法以外にも電子ビームによる加熱、高周波誘導による加熱等の方法でも良いが、本発明においては抵抗加熱法が本発明の効果をより奏する点で好ましい。
【0038】
また、蒸発源3は分子源エピタキシャル法による分子線源でもよい。
【0039】
支持体回転機構5は例えば、支持体ホルダーを支持するとともに支持体ホルダー4を回転させる回転軸5aと真空容器2外に配置された回転軸5aの軌道源となるモータ(図示せず)等から構成されている。
【0040】
また、支持体ホルダ4には、支持体11を加熱するヒータ(図示せず)をそなえていることが好ましい。
【0041】
支持体11を加熱することによって、支持体11表面の吸着物を離脱、除去し、支持体11の表面と輝尽性蛍光体との間に不純物層が形成されるのを防止したり、支持体と輝尽性蛍光体層の密着性の強化、や輝尽性蛍光体層のの膜質調整をすることができる。
【0042】
更に、本発明は支持体11と蒸発源3との間に、蒸発源3から支持体11に至る空間を遮断するシャッタ7を設けることを特徴としており、該シャッタの面積と蒸発源の開口部面積の比が1以上であり、10以上であると本発明をよりそうする点で好ましく、該シャッタと蒸発源の距離をSとした時、0mm<S<1000mmであることが好ましい。
【0043】
前記シャッタを設けることにより、輝尽性蛍光体層の表面に付着した目的物以外の物質が蒸着お初期段階で蒸発し、支持体に付着することを防ぐことができ、本発明の目的を達成できたのである。
【0044】
このように構成された、蒸着装置1を用いて、支持体11に輝尽性蛍光体層を形成するには、まず、支持体ホルダ4に支持体を取り付ける。
【0045】
注いで、真空容器2内を真空排気する。その後、支持体回転機構5により、支持体ホルダ4を蒸発源3に大して回転させ、蒸着可能な真空度10-1Pa〜10-4Paに真空容器2が達したら、加熱された蒸発源3から輝尽性蛍光体を蒸発させて、支持体11の表面に輝尽性蛍光体層を所望の膜厚に成長させる。この場合において、支持対11の表面と、蒸発源との距離を100〜1500mmにするのが好ましい。
【0046】
また、前記蒸着工程では複数回に分けて輝尽性蛍光体層を形成させることも可能である。更に、前記蒸着工程では複数の抵抗加熱器或いは電子線銃を用いて共蒸着し、支持体上で目的とする器蛍光体を合成すると同時に輝尽性蛍光体層を形成させることも可能である。
【0047】
また、蒸着法においては、蒸着時必要に応じて、被蒸着体(支持体、保護層又は中間層)を加熱しても良い。
【0048】
また、蒸着法においては必要に応じO2、H2等のガスを導入して蒸着する反応性蒸着を行っても良い。
【0049】
本発明において、前記一般式(I)で表される輝尽性蛍光体は、その母体成分M1Xよりも賦活剤成分Euの方が蒸気圧が顕著に高いために、蒸着開始直後の蒸発流は殆ど母体成分であり、逆に蒸着終了直前には賦活剤成分Euの濃度が当初の蛍光体組成比よりも高くなる傾向にある。よって、シャッタ7を一定時間閉じて蒸着開始直後の蒸発流を使用しないことにより、得られる蒸着膜中の賦活剤Eu濃度の分布(ムラ)を低減することができる。
【0050】
このようにして、輝尽性蛍光体からなる柱状結晶がほぼ厚み方向に成長した層が得られる。蛍光体層の層厚は、通常は50〜1000μmの範囲にあり、好ましくは200μm〜700mmの範囲にある。
【0051】
なお、上記本発明の方法において蒸着装置は、図1に示した装置に限定されるものではなく、基板上への蒸着を遮断しうるシャッタを備えた装置であればよい。
【0052】
あるいは、上記輝尽性蛍光体からなる蒸着膜を形成するに先立って、蛍光体母体成分のみからなる蒸着膜を形成してもよい。これによって、柱状結晶性の良好な蒸着膜を得ることができる。なお、蛍光体からなる蒸着膜中の賦活剤など微量成分は、特に蒸着時の加熱および/または蒸着後の加熱処理によって、蛍光体母体からなる蒸着膜中に拡散するために、両者の境界は必ずしも明確ではない。
【0053】
この輝尽性蛍光体層の表面には、放射線像変換パネルの搬送および取扱い上の便宜や特性変化の回避のために、保護層を設けることが望ましい。保護層は、励起光の入射や発光光の出射に殆ど影響を与えないように、透明であることが望ましく、また外部から与えられる物理的衝撃や化学的影響から放射線像変換パネルを充分に保護することができるように、化学的に安定で防湿性が高く、かつ高い物理的強度を持つことが望ましい。
【0054】
保護層としては、セルロース誘導体、ポリメチルメタクリレート、有機溶媒可溶性フッ素系樹脂などのような透明な有機高分子物質を適当な溶媒に溶解して調製した溶液を蛍光体層の上に塗布することで形成されたもの、あるいはポリエチレンテレフタレートなどの有機高分子フィルムや透明なガラス板などの保護層形成用シートを別に形成して蛍光体層の表面に適当な接着剤を用いて設けたもの、あるいは無機化合物を蒸着などによって蛍光体層上に成膜したものなどが用いられる。また、保護層中には酸化マグネシウム、酸化亜鉛、二酸化チタン、アルミナ等の光散乱性微粒子、パーフルオロオレフィン樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末等の滑り剤、およびポリイソシアネート等の架橋剤など各種の添加剤が分散含有されていてもよい。保護層の層厚は一般に、高分子物質からなる場合には約0.1〜20μmの範囲にあり、ガラス等の無機化合物からなる場合には100〜1000μmの範囲にある。
【0055】
保護層の表面にはさらに、保護層の耐汚染性を高めるためにフッ素樹脂塗布層を設けてもよい。フッ素樹脂塗布層は、フッ素樹脂を有機溶媒に溶解(または分散)させて調製したフッ素樹脂溶液を保護層の表面に塗布し、乾燥することにより形成することができる。フッ素樹脂は単独で使用してもよいが、通常はフッ素樹脂と膜形成性の高い樹脂との混合物として使用する。また、ポリシロキサン骨格を持つオリゴマーあるいはパーフルオロアルキル基を持つオリゴマーを併用することもできる。フッ素樹脂塗布層には、干渉むらを低減させて更に放射線画像の画質を向上させるために、微粒子フィラーを充填することもできる。フッ素樹脂塗布層の層厚は通常は0.5μm乃至20μmの範囲にある。フッ素樹脂塗布層の形成に際しては、架橋剤、硬膜剤、黄変防止剤などのような添加成分を用いることができる。特に架橋剤の添加は、フッ素樹脂塗布層の耐久性の向上に有利である。
【0056】
上述のようにして本発明の放射線像変換パネルが得られるが、本発明のパネルの構成は、公知の各種のバリエーションを含むものであってもよい。たとえば、得られる画像の鮮鋭度を向上させることを目的として、上記の少なくともいずれかの層を、励起光を吸収し輝尽発光光は吸収しないような着色剤によって着色してもよい。
【実施例】
【0057】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、ほんっは爪医の実施態様はこれらに限定されるものではない。
【0058】
(放射線画像パネルの作製)
アルミニウムからなる支持体の片面上に輝尽性蛍光体(CsBr:0.0002Eu)を図1に示す蒸着装置1を使用して蒸着させ輝尽性蛍光体層を形成した。
【0059】
先ず、上記輝尽性蛍光体の原料を蒸着源として蒸発源ボートに充填し。また、回転する支持体ホルダ4に支持体11を設置し、支持体11と蒸発源3との間を40mmに調節した。蒸発源ボートと支持体の間には開閉可能なシャッタ7が備えてあり、シャヤタと蒸発源ボート開口部のそれぞれの面積の比を1とした。
【0060】
また、蒸発源シャッタの距離は50mmに著説した。
【0061】
続いて蒸着装置1内を一旦排気し、Arガスを導入して0.1Paに真空度をを調整した後、10rpmの速度で支持体11を回転させながら支持体温度を100℃に保持した。
【0062】
次に、蒸発源ボートを加熱して所定時間が経過した所でシャッタを空けて輝尽性蛍光体を蒸着し、輝尽性蛍光体層の膜厚が500μmとなった所でシャッタを閉じて蒸着を終了させた。
【0063】
ついで、乾燥空気内で輝尽性蛍光体層を保護層袋に入れ、輝尽性蛍光体層が密封された放射線画像変換パネル(試料)1を得た。
【0064】
放射線画像変換パネル(試料)1の作製いおいて、表1、2に示す条件を変更した以外は同様にして、放射線画像変換パネル(試料)2(比較例2)〜放射線画像変換パネル(試料)15を作製した。
【0065】
得られた、各試料について以下のような評価を行った。
【0066】
(鮮鋭性)
各放射線画像変換パネル(試料)1〜15にCTF
チャートを貼り付けた後、菅電圧80kVP・PのX線を10mR(管球からパネルまでの距離:1.5m)で照射した後、半導体レーザ光(発振波長:780nm、ビーム径:100μm)で走査して輝尽励起し、CTFチャート像を輝尽性蛍光体層から放射される輝尽発光として、読み取り、光検出器(被価値電子増倍菅)で光電変換して画像信号を得た。この信号により、画像の変調伝達関数(MTF)を調べ、比較例1の値を100として相対値で示した。尚、MTFは、空間周波数が1サイクリ/mmの時の値である。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【0069】
表から明らかなように本発明の試料が比較に比して優れていることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の輝尽性蛍光体層を形成するのに用いられる蒸着装置の一例を示すの概略図である。
【符号の説明】
【0071】
1 蒸着装置
2 真空容器
3 授発源
4 支持体ホルダー
5 支持体回転機構
6 真空ポンプ
7 シャッタ
11 支持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸着装置内にて、下記一般式(I)で表される輝尽性蛍光体もしくは輝尽性蛍光体原料を含有する蒸発源を加熱して発生する物質を基板上に蒸着させることにより蛍光体層を形成する工程を有する放射線像変換パネルの製造方法において、蒸着装置として蒸発源ボートと該基板との間に開閉可能なシャッタが備えられた蒸着装置を用い、該シャッタの面積と蒸発源ボートの開口部面積の比が1以上であることを特徴とする放射線像変換パネルの製造方法。
一般式(I)
1X・aM2X′2・bM3X″3:eA
〔式中、M1はLi、Na、K、RbおよびCsからなる群から選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり、M2はBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、CuおよびNiからなる群から選ばれる少なくとも一種の二価金属であり、M3はSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、GaおよびInからなる群から選ばれる少なくとも一種の三価金属であり、X、X′およびX″は各々F、Cl、BrおよびIからなる群から選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり、Aは、Eu、Tb、In、Cs、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、Tl、Na、Ag、Cu及びMgからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属であり、また、a、b、eはそれぞれ0≦a<0.5、0≦b<0.5、0<e<1.0の範囲の数値を表す。〕
【請求項2】
前記シャッタの面積と前記蒸発源ボートの開口部面積の比が10以上であることを特徴とする請求項1に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
【請求項3】
前記蒸発源ボートと前記シャッタの距離Sが0mm<S<1000mmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
【請求項4】
蒸着装置内にて、前記一般式(I)で表される輝尽性蛍光体もしくは輝尽性蛍光体原料を含有する蒸発源を加熱して発生する物質を基板上に蒸着させることにより蛍光体層を形成する工程を有する放射線像変換パネルの製造方法において、蒸発源ボートと該基板との間に開閉可能なシャッタが備えられた蒸着装置を用い、該シャッタの形状が平面でなく、蒸発源側に折り返しがあることを特徴とする放射線像変換パネルの製造方法。
【請求項5】
支持体を支持体回転機能を有する部材に設置して、支持体を回転しながら蒸着することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の放射線像変換パネルの製造方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2006−10479(P2006−10479A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−187574(P2004−187574)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】