説明

放射線感受性の、ラジカル重合性有機化合物の溶液を製造する方法

放射線感受性のラジカル重合性有機化合物の溶液を製造する方法を記載する。この方法では、酸ハロゲン化物基を有する第一の出発化合物と、アルコール性ヒドロキシ基を有する第二の出発化合物とを、相互に溶剤または溶剤混合物中でエステル化する。この溶剤は、標準圧力(1バール)で150℃未満の沸点を有する1もしくは複数のケトンであるか、または溶剤混合物は少なくとも50質量%までがこれらのケトンからなるものである。両方の出発化合物の一方は、少なくとも1の放射線感受性の基を有しており、かつ両方の出発化合物の他方は、少なくとも1のエチレン性不飽和のラジカル重合性の基を有している。また、放射線感受性のラジカル重合性有機化合物の相応する溶液および放射線架橋可能な、ラジカル共重合性コポリマーを製造するため、特にホットメルト系粘着剤または水性ポリマー分散液のためのその使用も記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線感受性のラジカル重合性有機化合物の溶液を製造する方法であって、酸ハロゲン化物基を有する第一の出発化合物と、アルコール性ヒドロキシ基を有する第二の出発化合物とを、相互に沸点の低いケトンからなる溶剤または溶剤混合物中でエステル化する方法に関する。本発明はまた、放射線感受性のラジカル重合性有機化合物の相応する溶液および放射線硬化可能な材料を製造するため、特に放射線架橋可能なラジカル共重合性コポリマー、たとえばホットメルト系粘着剤または水性ポリマー分散液のためのその使用も記載する。
【0002】
UV架橋可能なポリアクリレートおよびホットメルト系粘着剤のためのその使用はEP377199A、EP655465AおよびEP1213306Aに記載されている。UV架橋可能なポリアクリレートは、ラジカル共重合によりポリマー鎖中に組み込まれた光開始剤を含有している。適切な共重合性光開始剤モノマーは、EP377191Aに記載されている。光活性分子部分と重合性分子部分との間の結合として、この光開始剤モノマーは、エステル基、特にカーボネートエステル基を有している。その製造のためには、適切な酸ハロゲン化物を適切なヒドロキシ化合物によりエステル化する。エステル化は、有利には形成される酸を捕捉するために過剰量で使用されるアミンの存在下に行われ、ハロゲン化水素アンモニウム塩が形成される。アミンおよびアンモニウム塩は、確実に分離されなくてはならない。というのも、これらはその後の共重合の際に、およびコポリマーを使用する際に望ましくないからである。たとえば、すでに極めて少量のアミンの残留量は、黄変につながり、これは特に透明なシートのための粘着剤としての適用性を損なう。アンモニウム塩は、最も簡単には水で洗い流すことができる。その前提は、水と、エステル化反応の際に使用される有機溶剤との間で、良好な相分離が生じることである。溶剤として特に好適であるのは、芳香族炭化水素、たとえばトルエンまたはキシレンである。というのは、これらは水との良好な相分離を形成するからである。過剰の芳香族炭化水素は、さらに、簡単な方法で再循環させ、その後の合成のための再使用することができる。というのも、再循環された溶剤は無水であり、かつ酸ハロゲン化物の加水分解を危惧する必要がないからである。高沸点炭化水素、たとえばキシレンのもう1つの利点は、過剰の低沸点アミン、たとえばトリエチルアミンが簡単な方法で蒸留により分離することができることである。
【0003】
しかし、光開始剤モノマーを製造する際の溶剤として極めて好適な芳香族炭化水素は、残留量がその後に製造されるコポリマー中に、および該コポリマーから製造される最終生成物、たとえばホットメルト系粘着剤中に残留し、残留揮発性割合(VOC含分)の全含分に少なからぬ影響を与えるという欠点を有している。しかし多くの最終使用者に近い適用では、できる限り少ないVOC含分が望まれている。従ってたとえば自動車の車内範囲での粘着テープとしての適用の場合、たとえばケーブルハーネスに巻き付けるための粘着テープ(ケーブルラッピングテープ)として、または装飾部材を固定するための両面粘着テープとしての適用の場合には、粘着剤のVOC含分が高いと、いわゆる曇り(fogging)につながり、ガラス板上に望ましくない沈殿物が形成される。さらに、多くの適用にとって、たとえば肌に直接接触する硬膏では、芳香族炭化水素は全く含有されていないことが望ましい。
【0004】
放射線硬化可能な被覆材料の多くの適用の場合にも、たとえば紙、金属もしくはプラスチック上でのラッカーおよび樹脂被覆の硬化の際、または印刷インクおよびインクの乾燥の際にも、できる限りわずかな易揮発性割合の含分が重要な意味を有している。このような割合は、層の達成可能な最終硬度に影響を与えるか、または望ましくない変色、たとえば黄変につながる可能性がある。被覆から周囲の材料への拡散または移行もまた問題を生じうる。特に被覆またはこのような被覆を包囲する材料が食料品と接触する場合、健康上の懸念がある成分、たとえば芳香族炭化水素の含有率ができる限り低いか、または含有されていないことが望ましい。
【0005】
従って、エステル基を有するラジカル重合性光開始剤モノマーを製造するための代替的な方法であって、一方ではできる限り溶剤としての芳香族炭化水素の使用を断念することができ、かつ他方では、アミンおよびアンモニウム塩の分離が、芳香族炭化水素を使用する場合と同様に確実に可能であり、かつ光開始剤モノマーを用いて間接的にもしくは直接的に製造される最終生成物が、できる限りわずかなVOC含分を有している方法を提供するという課題が存在していた。
【0006】
意外にも、前記課題は、溶剤として、標準圧力(1バール)で、150℃未満の沸点を有するケトンを使用することによって解決することができることが判明した。このことは、これらのケトンは、この発明を知らなかったとしたら、意図した目的のためにはむしろ不適切であると思われていたその物性に基づいて一層意外である。部分的に水と混和可能なケトンは、しばしば炭化水素としては比較的劣った、水との相分離を形成し、従って有機相と水相との良好な分離は問題があると思われていた。有機アンモニウム塩は部分的にケトン中で可溶性であり、従って有機相からの分離は問題があると思われていた。ケトンは少なくとも部分的に水と混和可能である。従ってたとえば水は12.5質量%までメチルエチルケトン中に溶解する。これにより、使用済みの溶剤を再使用することは困難であると考えられていた。というのも、含水率は酸塩化物の加水分解を生じうるからである。さらに、過剰のアミンの残分は、溶剤の沸点(たとえばメチルエチルケトンに関しては80℃)が、分離すべきアミンの沸点(たとえばトリエチルアミンに関しては89℃)よりも低い場合には、蒸留によって溶剤から除去することができない。しかし、ケトンが不適切であると考えさせるような、これらの問題を克服することができた。
【0007】
本発明の対象は、放射線感受性のラジカル重合性有機化合物の製造方法であり、この場合、
a)酸ハロゲン化物基を有する第一の出発化合物、および
b)アルコール性ヒドロキシ基を有する第二の出発化合物
を、相互に溶剤または溶剤混合物中でエステル化し、かつ溶剤は、標準圧力(1バール)で150℃未満の沸点を有する1もしくは複数のケトンであるか、または溶剤混合物は溶剤の量に対して少なくとも50質量%までがこれらのケトンからなるものであり、かつ両方の出発化合物の一方は、少なくとも1の放射線感受性の基を有しており、かつ両方の出発化合物の他方は、少なくとも1のエチレン性不飽和のラジカル重合性の基を有している。
【0008】
以下では、折に触れ(メタ)アクリレートという名称および類似の名称を、「アクリレートまたはメタクリレート」のための略称として使用する。
【0009】
放射線感受性のラジカル重合性有機化合物を以下では略して重合性光開始剤と呼ぶ。重合性光開始剤は、ラジカル共重合によりコポリマーのポリマー鎖中に組み込むことができる。重合性の光開始剤は有利には以下の原則的な構造を有している:
A−X−B
[上記で、Aは、放射線感受性の基として有利にフェノン基を有する一価の有機基であり、
Xは、−O−C(=O)−、−(C=O)−Oおよび−O−(C=O)−O−から選択されるエステル基であり、かつ
Bは、エチレン性不飽和の、ラジカル重合可能な基を有する一価の有機基である]。有利な基Aは、フェノン、特にアセトフェノンまたはベンゾフェノンから誘導される少なくとも1の構造要素を有している基である。有利な基Bは、少なくとも1の、有利には正確に1のアクリレート基もしくはメタクリレート基を有している。
【0010】
エチレン性不飽和基は、基Xに直接結合していてもよい。同様に放射線感受性の基は、基Xに直接結合していてもよい。あるいはまたエチレン性不飽和基と、基Xとの間に、もしくは放射線感受性の基と基Xとの間にそれぞれ1のスペーサー基(スペーサー)が存在していてもよい。スペーサー基は、たとえば500g/モルまで、特に300g/モルまで、または200g/モルまでの分子量を有していてよい。
【0011】
適切な光開始剤はたとえばアセトフェノンもしくはベンゾフェノンの構造単位を有している化合物であり、たとえばEP377191AまたはEP1213306Aに記載されている。有利な基Xは、カーボネート基−O−(C=O)−O−である。有利な重合性光開始剤は、式:
【化1】

[式中、R1は、30個までの炭素原子を有する有機基であり、R2は、H原子又はメチル基であり、かつR3は、置換された、もしくは置換されていないフェニル基またはC1〜C4−アルキル基を表す]の化合物である。R1は、特に有利にはアルキレン基を表し、特にC2〜C8−アルキレン基を表す。R3は、特に有利にはメチル基またはフェニル基を表し、とりわけ有利にはフェニル基を表す。
【0012】
その他の、共重合性光開始剤として適切なアセトフェノン誘導体およびベンゾフェノン誘導体は、たとえば式
【化2】

[式中、R2およびR3は、上記の意味を有していてよく、かつR4は、単結合を表すか、または(−CH2−CH2−O)nを表してよく、nは、1〜12の整数である]のものである。
【0013】
重合性光開始剤を製造するための第一の出発化合物は、酸ハロゲン化物基を有している。有利であるのは、酸塩化物基、特に有利にはクロロホルメート基Cl−C(=O)−O−である。第二の出発化合物は、アルコール性のヒドロキシ基を有している。これは脂肪族もしくは芳香族の、特にフェノール性のヒドロキシ基である。有利には共重合性光開始剤はカーボネートである。これらは炭酸エステルの塩化物とアルコールとの反応により製造することができる。1つの有利な実施態様では、第一の出発化合物はクロロホルメート基と、アクリレート基もしくはメタクリレート基とを有しており、かつ第二の出発化合物は、アルコール性のヒドロキシ基と、フェノン基とを有している。出発化合物の製造は、公知の方法により可能である。組成はたとえばEP377191Aに記載されている。
【0014】
本発明によれば、重合性光開始剤の製造は、溶剤または溶剤混合物中でのエステル化により行う。溶剤または溶剤混合物は、標準圧力(1バール)で150℃未満、有利には130℃未満の沸点を有する1もしくは複数のケトンであるか、溶剤混合物は、溶剤の量に対して少なくとも50質量%までがこれらのケトンからなる。溶剤の沸点範囲は有利には50℃から150℃未満、特に60〜120℃である。有利であるのは50〜130℃の範囲の沸点を有するジアルキルケトンである。本発明により製造される溶液中での重合性光開始剤の含有率は、有利には5〜85質量%、好ましくは20〜60質量%である。適切なケトンは一般に150g/モル未満のモル質量を有している。たとえばアセトン、メチルエチルケトン(MEK、2−ブタノン)またはメチルイソブチルケトン(MIBK)が挙げられる。特に有利であるのは、MEKおよびMIBKである。これらのケトンまたはこれらのケトンの混合物は、特に有利には単独の溶剤としてである。しかしこれらはその他の溶剤との混合物として存在していてもよい。このような溶剤混合物の場合には、ケトンの割合は、全溶剤量に対して少なくとも50質量%であり、有利にはその割合は少なくとも80質量%、特に有利には少なくとも95質量%である。とりわけ有利には溶剤は単独で、かつメチルエチルケトンのみであるか、またはメチルイソブチルケトンのみである。
【0015】
意外にも、酸ハロゲン化物は加水分解に敏感であるにもかかわらず、必ずしも完全な湿分の排除下で作業する必要はないことが判明した。これにより特に完全に無水ではない溶剤または溶剤混合物を使用することが可能になる。このことによって、溶剤として使用されるケトンの少なくとも一部が、先行する製造プロセスから、たとえば共沸蒸留により回収された、再循環される水含有ケトンであることが可能になる。従ってたとえばメチルエチルケトンは、飽和限界(約12.5質量%)まで、水を、たとえば少なくとも1質量%または少なくとも5質量%まで水を含有することができる。
【0016】
出発化合物は有利には、等モルの比率で使用されるが、しかしまた任意で出発化合物の10〜30モル%までの過剰で使用することもできる。出発化合物のエステル化は有利には塩基性の、非求核性アミンの存在下に行う。通常、溶剤中のヒドロキシ化合物の溶液または懸濁液を、塩基性の、非求核性アミンの存在下に装入し、かつ酸ハロゲン化物を添加する。アミンはたとえばトリエチルアミン、4−ジメチルアミノピリジン、イミダゾール、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン、ポリビニルピリジン、N,N′−ジメチルプロピレン尿素またはN,N′−ジメチルエチレン尿素である。特に有利であるのは第三級有機アミン、特に式NR3[式中、Rは、1〜10個、有利には2〜4個の炭素原子を有するアルキル基である]である。
【0017】
使用されるアミンの量は有利にはほぼ化学量論である、つまりアミンの量は、酸ハロゲン化物の量に対して等モルであるが、しかしまた任意でアミンを5モル%まで、または10モル%までの過剰で使用することもできる。酸ハロゲン化物化合物は(場合により反応媒体の溶剤中に溶解して)撹拌下に滴加する。エステル化反応は有利には0〜100℃、好ましくは10〜50℃の温度で行う。1〜48時間、有利には1〜20時間の攪拌時間の後で、たとえば10〜50℃で、形成されたアンモニウム塩および場合により過剰のアミンを水または希塩酸の添加後に相分離によって分離する。過剰のアミンはさらに蒸留によって除去することができる。
【0018】
ラジカル重合性の原料および生成物の早すぎる重合を防止するために、反応混合物に有利には慣用の安定剤を添加する。このようなものとして、たとえばヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、パラ−ニトロソフェノール、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシル(TEMPO)および/またはフェノチアジンが考えられる。さらに、アシル化の間に酸素または1〜20%の酸素含有率を有する空気を反応混合物に導通することが極めて有利であることが判明した。
【0019】
意外にも、純粋なケトン溶剤と水との相分離が劣っているにもかかわらず、ケトンと水との相互の部分的な混和性ならびにケトン中での有機アンモニウム化合物の部分的な溶解性にもかかわらず、エステル化反応の際に形成される有機アンモニウム化合物は、ケトン中の光開始剤の溶液から十分良好に分離することができることが判明した。反応の際に形成される有機アンモニウムハロゲン化物の分離を、反応に引き続き、水中でほぼ飽和の有機アンモニウムハロゲン化物の溶液が形成され、かつこの飽和水溶液が有機相から分離されるような量で水を添加して実施することが特に有利であることが判明した。水の量は、一方では飽和溶液を形成するために必要とされる量を越えないか、または顕著に越えない、つまり理論的に必要とされる量を10質量%以上、有利には5質量%以上越えないように計量する。他方では、水の量は、アンモニウムハロゲン化物が完全に、またはほぼ完全に、つまり少なくとも90質量%まで、有利には少なくとも95質量%まで溶解するためにできる限り十分であるべきである。この場合、飽和のアンモニウム塩水溶液は、有機相と良好な相分離を形成し、従って良好に分離可能である。
【0020】
有機相中に溶解して残留する、わずかな割合のアンモニウムハロゲン化物は、低温での沈殿によって分離することができる。このために、有機相の温度は、有機相からアンモニウムハロゲン化物が晶出するまで室温よりも低い温度に低下させる。有利には0℃以下に冷却し、特に有利には−5℃以下、または−10℃以下に冷却する。沈殿した塩は濾別することができる。
【0021】
有利にはアミンは化学量論的な量でのみ使用する。それにもかかわらず反応後に過剰のアミンの残留量が存在する場合には、これは酸を用いた中和によりアンモニウム塩に変換し、かつ上記のとおりに分離するか、かつ/または残留するアミンを蒸留により、たとえば共沸混合物として除去することができる。特に異なった措置の組み合わせにより、たとえば(i)化学量論的な量の使用による過剰なアミンの十分な回避、(ii)アンモニウム塩への変換およびその分離、ならびに(iii)蒸留による精製、によって、アミンを十分に除去し、アミンの痕跡により、共重合性光開始剤がその製造のために使用される最終生成物中で生じる黄変を回避することができる。
【0022】
本発明の対象はまた、放射線硬化可能な材料、特に放射線架橋可能な、ラジカル共重合性コポリマーをベースとする放射線硬化可能な材料を製造するための、上記の共重合性光開始剤の溶液の使用でもある。本発明による使用はたとえば放射線硬化可能なホットメルト系粘着剤、放射線硬化可能な水性ポリマー分散液、放射線硬化可能な被覆材料、放射線硬化可能なラッカー、放射線硬化可能な印刷インク、放射線硬化可能なインク、放射線硬化可能なスクリーン印刷材料、および食料品包装の放射線硬化可能な表面被覆の製造である。
【0023】
特に有利であるのは、ホットメルト系粘着剤または水性ポリマー分散液を製造するため、たとえばUV硬化可能な粘着剤を製造するため、またはUV硬化可能な被覆材料を製造するための使用である。有利にはコポリマーは、ポリアクリレートコポリマーである。これはアクリルモノマー(これにはメタクリルモノマーも含まれると理解する)と、他の共重合性モノマーとのラジカル重合により得られるポリマーである。有利にはこのポリアクリレートコポリマーは、少なくとも40質量%まで、特に有利には少なくとも60質量%まで、とりわけ有利には少なくとも80質量%までが、C1〜C10−アルキル(メタ)アクリレートから構成されている。特にC1〜C8−アルキル(メタ)アクリレート、たとえばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは紫外線により架橋可能なポリアクリレートコポリマーである。光開始剤は、ポリアクリレートに結合している。高エネルギー光、特にUV光による照射によって、光開始剤は、有利には光開始剤と、空間的に隣接するポリマー鎖との化学的なグラフト反応によってポリマーの架橋をもたらす。特に架橋は、光開始剤のカルボニル基を隣接するC−H結合に挿入することによって行い、−C−C−O−H基が形成される。ポリアクリレートコポリマーは、ポリアクリレートコポリマー100gあたり、有利には0.0001〜1モル、特に有利には0.0002〜0.1モル、とりわけ有利には0.0003〜0.01モルの光開始剤、もしくは光開始剤として作用する、ポリマーに結合している分子基を含有する。
【0024】
ポリアクリレートコポリマーをさらに構成することができる、アクリレートとは異なる別のモノマーは、たとえば20個までの炭素原子を含有しているカルボン酸のビニルエステル、20個までの炭素原子を有するビニル芳香族、エチレン性不飽和ニトリル、ビニルハロゲン化物、1〜10個の炭素原子を含有するアルコールのビニルエーテル、2〜8個の炭素原子と1もしくは2の二重結合とを有する脂肪族炭化水素、またはこれらのモノマーの混合物である。ビニル芳香族化合物として、たとえばビニルトルエン、α−およびp−メチルスチレン、アルファ−ブチルスチレン、4−n−ブチルスチレン、4−n−デシルスチレン、および有利にはスチレンが考えられる。ニトリルの例は、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルである。ビニルハロゲン化物は、塩素、フッ素、または臭素によって置換されたエチレン性不飽和化合物、有利には塩化ビニルおよび塩化ビニリデンである。ビニルエーテルとして、たとえばビニルメチルエーテルまたはビニルイソブチルエーテルが挙げられる。有利であるのは1〜4個の炭素原子を有するアルコールのビニルエーテルである。2〜8個の炭素原子と、2のオレフィン性二重結合とを有する炭化水素として、ブタジエン、イソプレン、およびクロロプレンが挙げられる。別のモノマーとして、特にカルボン酸基、スルホン酸基またはホスホン酸基を有するモノマーも挙げられる。有利であるのはカルボン酸基である。たとえばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸またはフマル酸が挙げられる。別のモノマーは、たとえば(メタ)アクリルアミドおよびヒドロキシル基を有するモノマー、特にC1〜C10−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートである。さらに、フェニルオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アミノ(メタ)アクリレート、たとえば2−アミノエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。二重結合以外にさらに別の官能基、たとえばイソシアネート基、アミノ基、ヒドロキシ基、アミド基またはグリシジル基を有するモノマーは、たとえば支持体への付着性を改善することができる。
【0025】
ポリアクリレートコポリマーはテトラヒドロフラン中(1%溶液、21℃)で測定して、有利には30〜80、特に有利には40〜60のK値を有する。フィケンチャーによるK値は、ポリマーの分子量および粘度に関する尺度である。ポリアクリレートコポリマーのガラス転移温度(Tg)は、有利には−60〜+10℃、特に有利には−55〜0℃、とりわけ有利には−55〜−10℃である。ガラス転移温度は、慣用の方法により、たとえば示差熱分析または示差走査熱量測定(たとえばASTM 3418/82を参照のこと。いわゆる「中点温度」)により測定される。
【0026】
ポリアクリレートコポリマーは、慣用の重合開始剤ならびに場合により調節剤の使用下にモノマー成分を共重合することにより製造することができ、その際、慣用の温度で塊状で、エマルションとして、たとえば水中もしくは揮発性炭化水素中で、または溶液として重合する。有利にはポリアクリレートコポリマーは、水中での乳化重合により、または有機溶剤中でのモノマーの重合により、特に50〜150℃、有利には60〜120℃の沸点範囲の有機溶剤中で、モノマーの全質量に対して一般に0.01〜10質量%、特に0.1〜4質量%の慣用の量の重合開始剤の使用下に製造される。
【0027】
コポリマーは、20〜150℃の温度で、有利には70〜120℃の範囲の温度および0.1〜100バール(絶対)、有利には0.3〜10バールの圧力において、重合開始剤として、モノマーに対して0.01〜10質量%の過酸化物もしくはアゾ開始剤の存在下に、およびモノマーに対して0〜200質量%、有利には5〜25質量%の中性の溶剤の存在下に、つまり溶液重合もしくは塊状重合により製造することができる。反応は有利には真空を高めながら、たとえば圧力を標準圧力(1バール)から、500ミリバール(絶対)へと低下させることにより行う。溶剤はたとえば炭化水素、アルコール、たとえばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブタノール、ケトン、たとえばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチルエステル、ニトリル、たとえばアセトニトリルおよびベンゾニトリルまたは前記の溶剤の混合物である。
【0028】
有利な1実施態様では、重合のための溶剤として、本発明による共重合性光開始剤の製造のためのものと同じ溶剤、つまり標準圧力(1バール)で150℃未満の沸点を有する1もしくは複数のケトンを使用する。
【0029】
重合開始剤として、たとえばアゾ化合物、ケトンペルオキシドおよびアルキルペルオキシド、たとえばアシルペルオキシド、たとえばベンゾイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、イソノナノイルペルオキシド、アルキルエステル、たとえばt−ブチル−t−ピバレート、t−ブチル−ペル−2−エチルヘキサノエート、t−ブチル−ペル−マレエート、t−ブチル−ペル−イソノナノエート、t−ブチル−ペル−ベンゾエート、t−アミルペル−2−エチルヘキサノエート、ジアルキルペルオキシド、たとえばジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、ジ−t−ブチル−ペルオキシド、およびペルオキシジカーボネートが考えられる。さらに開始剤としてアゾ開始剤、たとえば2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(メチルイソブチレート)または2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を使用することができる。
【0030】
重合を実施するためには、反応混合物に重合度を低下させる化合物、いわゆる重合調節剤を、重合すべきモノマー100質量部に対して、たとえば0.1〜0.8質量部の量で添加することができる。適切であるのはたとえばチオール基を有する化合物、たとえばメルカプタン、たとえばメルカプトエタノール、t−ブチルメルカプタン、メルカプトコハク酸、チオグリコール酸エチルアクリルエステル、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランまたはドデシルメルカプタンである。1の実施態様では、分子量調節剤を使用しない。
【0031】
本発明の対象は、
(i)上記の共重合性光開始剤の溶液を準備し、かつ
(ii)溶液中に含有されている放射線感受性の、ラジカル重合性有機化合物を、水相の存在下に乳化重合または懸濁重合により、該化合物とは異なるラジカル重合性モノマーとラジカル共重合させて、放射線架橋可能なコポリマーを形成させる
水性ポリマー分散液の製造方法でもある。
【0032】
ポリマーの製造は、有利には乳化重合によりエマルションポリマーとして行う。乳化重合は乳化剤および/または保護コロイドもしくは安定剤を界面活性物質として使用して行う。有利には界面活性物質として、その分子量が保護コロイドとは異なって通常2000g/モル未満である乳化剤のみを使用する。有利にはアニオン性および非イオン性乳化剤を界面活性物質として使用する。慣用の乳化剤はたとえばエトキシ化脂肪アルコール(EO度:3〜50、アルキル基:C8〜C36)、エトキシ化モノアルキルフェノール、ジアルキルフェノールおよびトリアルキルフェノール(EO度:3〜50、アルキル基:C4〜C9)、ならびにアルキルスルフェート(アルキル基:C8〜C12)、エトキシ化アルカノール(EO度:4〜30、アルキル基:C12〜C18)、エトキシ化アルキルフェノール(EO度:3〜50、アルキル基:C4〜C9)、アルキルスルホン酸(アルキル基:C12〜C18)、およびアルキルアリールスルホン酸(アルキル基:C9〜C18)のアルカリ塩およびアンモニウム塩である。適切な乳化剤の市販品はたとえばDowfax(登録商標)2A1、Emulan(登録商標)NP50、Dextrol(登録商標)OC50、Emulgator825、Emulgator825S、Emulan(登録商標)OG、Texapon(登録商標)NSO、Nekanil(登録商標)904S、Disponil(登録商標)FES77、Lutensol(登録商標)AT18、Steinapol VSL、Emulphor NPS25である。
【0033】
乳化重合は、水溶性の開始剤を用いて開始することができる。本発明の有利な実施態様では、1もしくは複数の開始剤を使用し、その際、開始剤の全量は、0.4pphm(モノマー100質量部あたりの質量部、parts per hundred monomer)未満、特に最大で0.3pphm、たとえば0.1または0.2〜0.3pphmである。水溶性の開始剤はたとえばペルオキソ二硫酸のアンモニウム塩およびアルカリ金属塩、たとえばペルオキソ二硫酸ナトリウム、過酸化水素、または有機ペルオキシド、たとえばt−ブチルヒドロペルオキシドである。開始剤として適切であるのは、いわゆる還元・酸化型(レドックス)開始剤系である。レドックス開始剤系は、少なくとも1の、たいていは無機の還元剤と、1の無機もしくは有機酸化剤とからなる。酸化成分は、たとえばすでに記載した前記の乳化重合のための開始剤である。還元成分はたとえば亜硫酸のアルカリ金属塩、たとえば亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、二亜硫酸のアルカリ金属塩、たとえば二亜硫酸ナトリウム、脂肪族アルデヒドおよびケトンの亜硫酸水素塩付加化合物、たとえば亜硫酸水素アセトン、または還元剤、たとえばヒドロキシメタンスルフィン酸およびこれらの塩、またはアスコルビン酸である。レドックス開始剤系は、金属成分が複数の価数で現れることができる可溶性の金属化合物の併用下に使用することができる。慣用のレドックス開始剤系はたとえばアスコルビン酸/硫酸鉄(II)/ペルオキシ二硫酸ナトリウム、t−ブチルヒドロペルオキシド/二亜硫酸ナトリウム、t−ブチルヒドロペルオキシド/ヒドロキシメタンスルフィン酸Naである。個々の成分、たとえば還元成分は、混合物、たとえばヒドロキシメタンスルフィン酸のナトリウム塩と二亜硫酸ナトリウムとからなる混合物であってもよい。複数の異なった開始剤を乳化重合の際に使用することもできる。
【0034】
重合媒体は、水のみからなっていても、水および水と混和可能な液体、たとえばメタノールとからなる混合物であってもよい。有利には水のみを使用する。乳化重合はバッチ法としても、段階的な運転法または勾配法を含む供給法の形でも実施することができる。有利であるのは重合バッチの一部を装入し、重合温度に加熱し、重合を開始させ、かつ引き続き重合バッチの残分を連続的に、段階的に、または濃度勾配を重ねながら重合帯域の重合を維持しながら供給する供給法である。重合の際に、たとえば粒径のより良好な調整のために、ポリマーシードを装入することもできる。
【0035】
乳化重合の際に、通常、15〜75質量%、有利には20〜70質量%、または40〜70質量%の固体含有率を有するポリマーの水性分散液が得られる。1の実施態様では、分散液もしくは感圧粘着剤は、少なくとも60質量%の分散ポリマーを含有している。60質量%を越える固体含有率を達成することができるためには、二頂性もしくは多頂性の粒径を調整すべきである。というのも、さもないと粘度が高くなりすぎ、分散液はそれ以上取り扱うことができなくなるからである。新たな粒子世代を発生させるためには、たとえば乳化重合の前に、または乳化重合の間にシードを添加することにより、過剰量の乳化剤を添加することにより、またはミニエマルションを添加することにより行うことができる。高い固体含有率で低い粘度を得ることのもう1つの利点は、高い固体含有率における被覆特性の改善である。1もしくは複数の新たな粒子世代の発生は、任意の時点で行うことができる。これは低い粘度のために望ましい粒径分布に応じて調整される。
【0036】
本発明により乳化重合により製造されるコポリマーは、有利には水性分散液の形で使用される。水性分散液中に分散しているポリマー粒子の平均粒径は、有利には100〜500nmである。分散粒子の大きさの分布は、単頂性、二頂性、もしくは多頂性であってよい。単頂性の粒径分布の場合、水性分散液中に分散しているポリマー粒子の平均粒径は、有利には500nm未満である。二頂性または多頂性の粒径分布の場合には、粒径は1000nmまでであってもよい。平均粒径とは、ここでは粒径分布のd50値であると理解される。つまり全ての粒子の全質量の50質量%が、d50値よりも小さい粒径を有している。粒径分布は公知の方法で、分析用超遠心分離機(W.Maechtle、Makromolekulare Chemie 185(1984)、第1025〜1039頁)により測定することができる。
【0037】
本発明により乳化重合により製造されるポリマー分散液の1つの利点は、残留揮発性芳香族炭化水素が含有されておらず、かつ総じて揮発性有機化合物(VOC)の割合が極めて低い、UV架橋可能な分散液を提供することが簡単な方法で可能であることである。光開始剤を製造する際に使用されるケトン溶剤の残分は、簡単な方法で共沸蒸留により水性分散液から除去することができる。
【0038】
本発明の対象は、
(i)上記の共重合性光開始剤の溶液を準備し、かつ
(ii)溶液中に含有されている放射線感受性の、ラジカル重合性有機化合物を、該化合物とは異なるラジカル重合性モノマーとラジカル共重合させて、有機溶剤中の放射線架橋可能なコポリマー、有利には放射線架橋可能なポリアクリレートを形成させ、かつ
(iii)有機溶剤を除去する
ホットメルト系粘着剤の製造方法でもある。
【0039】
残留揮発性割合、特に未反応のモノマーおよび溶剤の残分を最小に低下させるという要求が存在する。溶剤の分離(ポリアクリレート溶融物の保持下での溶剤の蒸発)のためには、多種多様な技術的方法、たとえば蒸留釜を用いた蒸留、流下薄膜式蒸留装置の使用、ストランド脱気または押出機中での残留物の脱気が提供されている。基本的にポリマー溶融物から残留揮発性割合を分離するためには多数の方法が存在する。比較的粘度の高いプラスチックの溶融物からの経済的な脱気は、たとえばストランド脱気または脱気用押出機中での生成物の処理である。有利な方法は、EP655465Aに記載されている、ポリアクリレート溶融物から残留揮発性割合を排除するための方法である。この場合、揮発性割合の蒸発は真空中で行い、共留剤、たとえば水蒸気、窒素、アルゴン、CO2を真空条件下での蒸留の終盤に向けて高温のポリアクリレート溶融物中に(たとえば100℃を超える温度で)圧入し、その際、溶融物は同時にポンプで循環させる。引き続き共留剤を残留揮発性割合と一緒に留去する。水蒸気は共留剤として特に有利である。
【0040】
本発明によるホットメルト系粘着剤は、ホットメルト系粘着剤被覆、たとえばラベル、粘着テープおよびシートを製造するために適切である。ラベルはたとえば紙またはプラスチック、たとえばポリエステル、ポリオレフィン、またはPVCであってもよい。粘着テープまたはシートは、同様に種々のプラスチックからなっていてもよい。被覆を製造するためには、ホットメルト系粘着剤を有利には溶融物として被覆すべき支持体上に塗布することができる。つまり溶剤は予め適切な方法により、有利には残留含有率が、ポリアクリレートコポリマーに対して0.5質量%未満になるまで除去する。その後、該組成物を溶融物として、つまり一般に80〜160℃の温度で支持体上に、たとえば上記のとおりに塗布することができる。有利な層厚は、たとえば1〜200マイクロメートル、特に有利には2〜80、とりわけ有利には5〜80マイクロメートルである。次いでUV光により架橋可能なポリアクリレートコポリマーを、高エネルギー線、有利にはUV光により照射して、架橋を行う。一般に被覆された支持体は、このためにコンベアベルト上に置かれ、コンベアベルトが放射線源、たとえばUVランプを通過する。ポリマーの架橋度は、照射の時間と強度次第である。有利には放射エネルギーは合計して100〜1500mJ/cm2照射面積である。得られる、被覆された支持体は、有利には粘着性製品、たとえばラベル、粘着テープまたは保護シートとして使用することができる。UV光で架橋して得られたホットメルト系粘着剤被覆は、良好な適用技術的特性、たとえば良好な付着性および高い内部強度(凝集力)を有しており、かつ特に低い割合の揮発性有機物質(VOC)、特に芳香族炭化水素が含有されていないことによって優れている。
【0041】
本発明により製造されるコポリマーは、さらにUV架橋可能な材料として、コーティング、被覆および含浸物を製造するために、特に感圧粘着剤、感圧粘着シート、感圧粘着テープ、感圧粘着ラベルならびにエンボスシートを製造するために使用することができる。この場合、材料を慣用の方法で、刷毛塗り、射出、ロール塗り、ドクターナイフ塗布または流し塗りにより、場合により高めた温度で、多くの場合、20〜180℃の温度で、慣用の支持体上、たとえば紙、厚紙、木材、ガラス、金属、金属シート、プラスチックシート、たとえば軟化させたPVC、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリエステルまたはアルミニウムおよび銅の上に施与することができる。さらに、フリース材料、繊維、皮革、およびテキスタイル織物も被覆することができる。コポリマーはたとえばまず粘着剤で被覆した担体材料、たとえばシリコーン処理した紙の上に施与し、かつUV架橋性材料の場合には照射し、かつ引き続きたとえば紙の上に粘着させることにより、担体、たとえば紙上に移して塗布する感圧粘着剤ラベルを製造するために施与することもできる。シリコーン処理した紙を剥離した後に、感圧粘着剤層は場合により再度照射することができる。UV照射装置として、慣用の照射装置、たとえば80〜240ワット/cmの放射出力を有する水銀中圧ランプを使用することができる。感圧粘着剤は自体慣用の形で変性および/または調製することができる。
【0042】
1つの実施態様では、本発明により製造されたコポリマーを、粘着剤組成物の製造のために使用する。粘着剤組成物の溶剤もしくは分散剤は、水のみからなっていても、水および水と混和可能な液体、たとえばメタノールもしくはエタノールとからなる混合物からなっていてもよい。有利には水のみを使用する。ポリマー分散液もしくは粘着剤組成物のpH値は、有利には4.5より高く、特に5〜9.5のpH値に調整する。粘着剤組成物は溶剤とポリマーとのみからなっていてもよい。
【0043】
しかし粘着剤組成物はさらに他の添加剤、たとえば充填剤、着色剤、均展剤、増粘剤(有利には会合性増粘剤)、消泡剤、顔料、湿潤剤または粘着性付与剤(粘着性を付与する樹脂)を含有していてもよい。表面のより良好な湿潤のためには、粘着剤は、湿潤助剤、たとえば脂肪アルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、ノニルフェノールエトキシレート、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンまたはドデシルスルホン酸ナトリウムを含有していてもよい。添加剤の量はポリマー(固体)100質量部に対して、一般に0.05〜5質量部、特に0.1〜3質量部である。
【0044】
本発明による粘着剤組成物は有利には感圧粘着剤である、つまり特にUV架橋後に粘着性の特性を有するものである。感圧粘着剤は粘弾性粘着剤であり、その固化フィルムは、室温(20℃)で、乾燥した状態において恒久的に粘着性であり、かつ粘着可能である。支持体への粘着は軽く押しつける圧力によってただちに行われる。本発明による粘着剤組成物は、粘着性の製品を製造するために使用することができる。製品は少なくとも部分的に感圧粘着剤によって被覆されている。1の実施態様では、粘着性の製品は粘着後に再び剥離可能である。粘着性の製品は、たとえばシート、テープまたはラベルであってよい。本発明による粘着テープは、多数の使用分野が可能であるので、たとえば片面粘着テープおよび両面粘着テープ、担体を有していないシステムまたは硬膏として使用可能である。適切な担体材料は、たとえば紙、プラスチックシート、金属シート、またはテキスタイル担体である。本発明による粘着性テープは、片面もしくは両面が被覆された、上記の物質からなるテープである。本発明による粘着性ラベルは、紙または熱可塑性シートからなるラベルであってよい。熱可塑性シートとして、たとえばポリオレフィン(たとえばポリエチレン、ポリプロピレン)、ポリオレフィンコポリマーからなるシート、ポリエステル(たとえばポリエチレンテレフタレート)またはポリアセテートからなるシートが考えられる。熱可塑性ポリマーシートの表面は、有利にはコロナ処理されている。ラベルは片面が粘着剤によって被覆されている。粘着性製品のために有利な支持体は紙およびポリマーシートである。有利な粘着性製品は粘着テープである。これらの製品は少なくとも1の表面上に少なくとも部分的に本発明による粘着剤組成物によって被覆されている。粘着剤は慣用の方法、たとえばドクターナイフまたは刷毛塗りにより製品上に塗布することができる。塗布量は、1m2あたり、固体が有利には1〜120g、特に有利には30〜80gである。塗布後には一般に水もしくは溶剤を除去するための乾燥工程ならびにUV光での照射による架橋が続く。粘着性の製品をその上に有利に塗布することができる支持体は、たとえば金属、木材、ガラス、紙またはプラスチックであってよい。粘着性の製品は、特に包装表面、厚紙、プラスチック包装物、本、窓、自動車の車体、車体の部材またはケーブル上への粘着のために適切である。
【0045】
本発明による粘着剤組成物は、有利には粘着性テープを製造するためのケーブルハーネス産業において使用することができる。要求および使用分野に応じて、製品は異なった材料からなる、織布、フリースまたはシートと共に使用される。これらの種類の粘着テープは、自動車の全ての範囲で組み込むことができ、たとえばエンジン室または車内空間において組み込むことができる。ケーブル被覆の場合には、これらの粘着テープはPVCとの望ましくない相互作用からケーブル心線の剥離を保護する。ケーブルラッピングテープのための担体として、有利には織布、フリース、シート、紙、フェルト、発泡体または同時押出物が使用される。
【0046】
本発明による粘着剤組成物は、有利には医療用品、たとえば硬膏および包帯のための粘着性テープを製造するためにも有利に使用することができる。医療用品のための担体材料として、たとえばシート、たとえばポリプロピレン、ポリエチレンまたはポリエステルからなるもの、織布、たとえば木綿、ビスコース、ビスコースアセテートまたはスパンレーヨン、あるいはまたフリースからなるもの、たとえばビスコースまたはポリエステルならびにその他の混合物からなるものが適切である。
【0047】
テキスタイル粘着テープを製造するためには、本発明による粘着剤組成物をテキスタイル担体材料、たとえばスパンレーヨン織布、アクリレート被覆を有するスパンレーヨン織布、ポリエステル織布、ポリエステルスティッチボンドフリース、水ジェットにより固化させたポリエステルフリース、片側でカレンダリングを行ったスパンボンドフリース、剥離剤被覆を有するフリース、溶融物で固化した裏面を有する縫製フリース、または熱により固化したフリース上に施与することができる。巻き上げ可能な粘着テープを製造するために適切であるのはたとえば熱により固化したフリースからなるテープ状の担体であり、これは片側に本発明による粘着剤組成物を備えており、その際、このフリースは、10〜50g/m2の面積当たりの質量、0.15〜0.40mmのテープ厚、10〜35N/cmの引裂強さ、および40〜75%の破断点伸びを有していてよく、かつ粘着剤被覆は、本発明による、紫外線により架橋可能なアクリレート粘着剤からなっている。しかしまた、これより高い面積当たりの質量を有するフリースの使用も可能であり、たとえばケーブルハーネスに巻き付けるための、たとえばポリプロピレンからなり、熱により固化された、フリース質量60〜100g/m2、フリース厚さたとえば400〜600マイクロメートル、糸の繊度たとえば2dtex〜7dtex、引裂力たとえば200N/(5cm)〜270N/(5cm)および破断点伸びたとえば55%〜85%を有する粘着剤テープが使用可能である。担体として使用されるフリースはたとえばポリプロピレンまたはポリエステル繊維からなっていてよい。有利には平滑な表面が被覆されており、テープは自動車産業においてケーブルラッピングテープとして使用される際に、所望の騒音緩和特性を有している。
【0048】
VOC含有率が低いこと、もしくは曇りがないことに基づいて、コポリマーは有利にはVOCに対して敏感な分野における被覆または粘着剤として、たとえば医療における硬膏として、自動車の内部空間において、たとえばケーブルラッピングテープとして、または両面粘着テープとして適用することができる。
【0049】
本発明による放射線感受性の化合物の溶液は、有利に被覆材料、たとえば放射線硬化可能なラッカー被覆の薄い層のUV硬化の際にも使用することができる。被覆はこのために慣用の全ての担体上で、たとえば紙、木材、テキスタイル担体、プラスチックまたは金属上で行うことができる。もう1つの適用分野は、特に缶、チューブ、および金属製のスクリューキャップの表面被覆または表面装飾の際の印刷インクおよびスクリーン印刷材料の乾燥もしくは硬化である。易揮発性割合の著しく低い含有率および硬化後に芳香族炭化水素が含有されていないことに基づいて、物質が被覆に隣接する担体材料へ拡散または移行することが最小化または排除されるべき適用、たとえば食料品と接触する被覆された包装材料の場合の適用が特に有利である。
【0050】
本発明による適用分野は、放射線硬化可能な被覆組成物の製造である。放射線硬化可能な組成物は、技術において、幅広い適用を見出しており、特に表面のための高価な被覆材料として適用される。放射線硬化可能な組成物とは、エチレン性不飽和ポリマーまたはプレポリマーを含有し、かつ場合により物理的な乾燥工程の後で、高エネルギー線の作用により、たとえばUV光による照射により硬化する組成物であると理解する。
【0051】
放射線硬化可能な被覆組成物の適切な硬化可能な成分は、たとえばエチレン性不飽和ウレタン(A)、モノエチレン性不飽和反応性希釈剤(B)または1より多くの、有利には少なくとも2のラジカル重合性の基を有する一般に多官能価の重合性化合物(C)である。これらの物質は、単独で、または組み合わせて使用することができる。適切な成分(A)、(B)および(C)およびこれらの組み合わせは、たとえばWO2008/155352に記載されている。エチレン性不飽和ウレタン(A)は、たとえば1分子あたり2以上のエチレン性不飽和二重結合を有する脂肪族もしくは脂環式ウレタン(メタ)アクリレート、これらのポリマー、オリゴマーまたはプレポリマーである。適切なモノエチレン性不飽和反応性希釈剤(B)は、たとえば少なくとも1の脂環式もしくは少なくとも1のヘテロ環式基を有する化合物、たとえばシクロアルカノールもしくはビシクロアルカノールとアクリル酸もしくはメタクリル酸とのエステルであり、その際、シクロアルカノールもしくはビシクロアルカノールは、3〜20個の炭素原子、有利には5〜10個の炭素原子を有しており、かつ場合によりC1〜C4−アルキルにより置換されていてもよい。シクロアルカノールおよびビシクロアルカノールの例は、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロオクタノール、シクロドデカノール、4−メチルシクロヘキサノール、4−イソプロピルシクロヘキサノール、4−t−ブチルシクロヘキサノール(有利にはシス配位)、ジヒドロジシクロペンタジエニルアルコール、イソボルネオールおよびノルボルニルアルコールである。有利であるのはイソボルネオール、シクロヘキサノールおよび4−t−ブチルシクロヘキサノールである。ヘテロ環式基を有する反応性希釈剤は、たとえばα,β−エチレン性不飽和カルボン酸(有利にはアクリル酸またはメタクリル酸)と、構造要素として環中に1もしくは2の酸素原子を有する少なくとも1の飽和5員もしくは6員のヘテロ環を有している1官能性のアルカノールとの1官能性のエステルである。有利には5員もしくは6員の、飽和ヘテロ環は、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン、1,3−もしくは1,4−ジオキサンから誘導される。特に有利であるのは、トリメチロールプロパンモノホルマールアクリレート、グリセリンモノホルマールアクリレート、4−テトラヒドロピラニルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−テトラヒドロピラニルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、およびこれらの混合物である。適切な多官能価化合物(C)は、たとえば多官能価の(メタ)アクリレート(これは1より多くの、有利には2〜10、特に有利には2〜6または2〜4または2〜3の(メタ)アクリレート基、有利にはアクリレート基を有する)、たとえば(メタ)アクリル酸と相応する少なくとも2価のポリアルコールとのエステルである。ポリアルコールはたとえば少なくとも2、有利には3〜10の平均OH官能価を有する少なくとも二価のポリオール、ポリエーテルまたはポリエステロールまたはポリアクリレートポリオールである。多官能価の重合可能な化合物(C)の例は、エチレングリコールジアクリレート、1,2−プロパンジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,8−オクタンジオールジアクリレート、ネオペンチルジグリコールジアクリレート、1,1−、1,2−、1,3−および1,4−シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、1,2−、1,3−または1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタアクリレートまたはジトリメチロールプロパンヘキサアクリレート、ペンタエリトリットトリアクリレートまたはペンタエリトリットテトラアクリレート、グリセリンジアクリレートまたはグリセリントリアクリレート、ならびに糖アルコール、たとえばソルビット、マンニット、ジグリセロール、トレイト、エリトリット、アドニット(リビット)、アラビット(リキシット)、キシリット、ズルシット(ガラクチット)、マルチットまたはイソマルトのジアクリレートおよびポリアクリレート、あるいはポリエステルポリオール、ポリエーテロール、134〜1178のモル質量を有するポリ−1,3−プロパンジオール、106〜898のモル質量を有するポリエチレングリコール、ならびにエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートまたはポリカルバメート(メタ)アクリレートである。有利な多官能価の重合可能な化合物(C)は、1回〜20回、および特に有利には3回〜10回エトキシル化されたか、プロポキシル化されたか、またはエトキシル化およびプロポキシル化の両方がなされた、および特にエトキシル化されたのみのネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンまたはペンタエリトリットのエチレングリコールジアクリレート、1,2−プロパンジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリトリットテトラアクリレート、ポリエステルポリオールアクリレート、ポリエーテロールアクリレートおよび(メタ)アクリレート、たとえば1回〜20回アルコキシル化された、特に有利にはエトキシル化されたトリメチロールプロパンのトリアクリレートである。
【0052】
放射線硬化可能な被覆組成物は、本発明により製造された光開始剤を、化合物(A)、(B)および(C)の合計量に対してたとえば0.1〜10質量%の量で含有していてよい。さらに化合物(A)、(B)および(C)の合計に対してそのつど0〜10質量%、有利には0.1〜10質量%の少なくとも1のUV安定剤(E)、0〜5質量%、有利には0.1〜5質量%の適切なラジカル捕捉剤(F)および0〜10質量%、有利には0.1〜10質量%の別のラッカーに典型的な添加剤(G)を含有していてもよい。適切な安定剤(E)は、たとえば典型的なUV吸収剤、たとえばオキサニリド、トリアジンおよびベンゾトリアゾール(後者はTinuvin(登録商標)としてCiba−Spezialitaeten−Chemieから市販されている)およびベンゾフェノンである。適切なラジカル捕捉剤(F)は、たとえば立体障害アミン、たとえば2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2,6−ジ−t−ブチルピペリジン、またはこれらの誘導体、たとえばビス−(2,2,6,6−テトラ−メチル−4−ピペリジル)セバシネートである。ラッカーに典型的な添加剤(G)は、たとえば酸化防止剤、活性化剤(促進剤)、充填剤、顔料、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、増粘剤、チキソトロープ剤、表面活性化剤、粘度調節剤、可塑剤またはキレート形成剤であってよい。増粘剤はたとえばラジカル(共)重合可能な(コ)ポリマーであり、慣用の有機および無機増粘剤、たとえばヒドロキシメチルセルロースまたはベントナイトである。キレート形成剤は、たとえばエチレンジアミン酢酸およびこれらの塩、ならびにβ−ジケトンであってよい。充填剤はたとえばシリケート、たとえば四塩化ケイ素の加水分解により得られるシリケート、たとえばDegussa社のAerosil(登録商標)、ケイソウ土、タルク、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウムを含む。
【0053】
本発明による被覆材料は、支持体、たとえば木材、紙、テキスタイル、皮革、フリース、プラスチック表面、ガラス、セラミック、鉱物質建築材料、たとえばセメント成形体、および繊維セメントスラブ、または金属もしくは被覆した金属、有利にはプラスチックにより被覆したもの、または金属、特にシートの形の金属、特に有利には金属である。被覆剤は特にプライマー、サーフェイサー、顔料着色したトップコートおよびクリアコート中で、自動車補修または大型車の塗装および航空機の分野において使用することができる。特に本発明による被覆材料は、自動車のクリアコートおよびトップコートとして、またはこれらの中で使用することができる。さらに有利な使用分野は、缶の被覆およびコイルコーティングである。
【0054】
実施例
例1(本発明による):重合性光開始剤
希薄空気(酸素割合:6%)中で部分的に不活性化した反応器に、4−ヒドロキシベンゾフェノン700kgを充填する。希薄空気を恒久的に貫流させながら、メチルエチルケトン(MEK;新鮮なもの、または先行するバッチから回収したもの)2250kgおよびトリエチルアミン375kgをポンプで供給する。該バッチを2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシル(TEMPO)175gで安定化する。その後、内部温度40℃で、アクリルオキシブチルクロロホルメート737kgを計量供給し、かつ20時間、後攪拌する。その後、5%の塩酸1030kgを計量供給する。下側の水相を分離し、有価生成物の有機相をTEMPO150gで安定化する。残りのトリエチルアミンおよび水の割合を分離するために、存在する溶剤の部分量を留去する。その後、MEK中のヒドロキノンモノメチルエーテル溶液2.5kgで安定化し、かつメチルエチルケトンにより所望の濃度に希釈する。反応器内容物を−10℃に冷却し、かつフィルターを介して排出する。メチルエチルケトン中、35質量%の含有率を有する重合性光開始剤の溶液が収率約93%(4−ヒドロキシベンゾフェノンに対する)で得られる。
【0055】
コポリマーおよびホットメルト系粘着剤の製造
メチルエチルケトン中で、以下の成分をラジカル重合することによりコポリマー溶液を製造する:
受け器:メチルエチルケトン15.5.kg
供給流1:n−ブチルアクリレート79.5kg
アクリル酸4.2kg
例1による光開始剤(メチルエチルケトン中に溶解、
約35%濃度)0.6kg
供給流2:ラジカル開始剤0.1kg。
【0056】
温度81℃、4時間以内での成分の供給で重合する。
【0057】
コポリマーのK値:48〜52。
【0058】
溶剤の蒸発によりコポリマー溶液からホットメルト系粘着剤が製造される。
【0059】
例2(本発明によらない、従来技術)
例1においてと同様に、重合性光開始剤、コポリマー溶液およびホットメルト系粘着剤を製造するが、ただし光開始剤の製造は、メチルエチルケトンの代わりにo−キシレン中で行い、コポリマー溶液の製造のために、o−キシレン中の光開始剤の溶液(約35%)を使用する。
【0060】
特性:
例1および例2により製造されたホットメルト系粘着剤の特性は以下の第1表にまとめられている。
【0061】
【表1】

【0062】
例3:ケーブルラッピングテープ
本発明によるケーブルラッピングテープの製造は、たとえば以下のとおりに行うことができる。フリース担体(Maliwatt、面積あたりの質量80g/m2、繊度22、たとえばCottano社のもの)上に、ロールロッド式ノズルにより、50m/分の速度で本発明による例1のUV架橋可能なアクリレートホットメルト系粘着剤を塗布する。この場合、被覆は異なった方法で行うことができる。たとえば1つの変法では、直接塗布により、粘着剤80g/m2を90〜110℃の温度でフリース上に施与することができ、その際、下側の被覆シャフトを加熱する。別の変法では、粘着剤50g/m2を、ベルト上に被覆し、かつ温度調整可能な貼合せステーションにおいて80℃および圧力8バールでフリース担体上に移すことができる。これらの変法は、担体材料上での粘着剤の固定の特に適切な制御を、不確実な粘着剤のしみ出しを回避しながら可能にする。被覆されたフリース担体は、別の装置のベルトでUV線により架橋される(たとえば6個の中圧水銀ランプを用いてそれぞれ120W/cmで)。架橋度は、UV線量によって可変的に調節可能であるので、粘着技術的な特性(特に粘着力、巻き戻し力)は個別に調節することが可能である。被覆し、かつ照射したフリース担体は、巻き取り機で所望の長さでコアに巻き、かつ自動式スリッターを用いて所望の幅にすることができる。
【0063】
粘着テープは、特にわずかな易揮発性有機物質の含有率によって、とりわけ揮発性芳香族炭化水素が含まれていないことによって優れている。
【0064】
例4:硬膏
本発明による硬膏の製造は、たとえば以下のとおりに行うことができる。面積比質量56g/m2を有するポリオレフィンからなる硬膏シート担体上に、ロールロッド式ノズルによって80m/分の速度で本発明による例1のUV架橋可能なアクリレートホットメルト粘着剤を、38g/m2の量でおよび温度145℃で塗布する。担体上への十分な固定は、下側の被覆シャフトの温度調整により達成することができる。被覆した材料は、紫外光による照射によって、たとえば4個の中圧水銀ランプを用いてそれぞれ120W/cmで架橋させる。UV線量によって架橋度は可変的に調整することができるので、相応する粘着技術的な特性(たとえば粘着力、巻き戻し力)は個別に調整することができる。被覆したシートをシリコーン処理した紙に粘着し、ボール状に巻いて粘着テープロールへとさらに加工する。硬膏は特にわずかな易揮発性有機物質の含有率により、とりわけ揮発性芳香族炭化水素が含まれていないことにより優れている。
【0065】
例5:巻き取り可能なケーブルラッピングテープ
巻き取り可能な、本発明によるケーブルラッピングテープの製造は、たとえば以下のとおりに行うことができる。40g/m2の面積あたりの質量を有し、かつ0.3mmの材料厚さを有するポリプロピレンスパンボンドフリース上に、本発明による例1のUV架橋可能なアクリレートホットメルト系粘着剤80g/m2を施与する。あるいはポリエステルスパンボンドフリースを使用することもできる。完成した被覆担体をわずかに張力をかけながら巻き付けることができる。エンボスパターンを施与することによりケーブルハーネスの巻き付けのための粘着テープの使用のための騒音防止作用をさらに改善することができる。被覆および製造の際の粘着剤の架橋度および巻き付けのパラメータは、テープのブロッキングが生じないように選択することができる。
【0066】
粘着テープは、特に易揮発性有機物質の含有率がわずかであることにより、とりわけ揮発性芳香族炭化水素が含まれていないことにより優れている。
【0067】
例6:巻き取り可能な多目的粘着テープ
巻き取り可能な、本発明による多目的粘着テープの製造は、たとえば以下の通りに行うことができる。面積あたりの質量50g/m2を有し、かつ材料厚さ0.5mmを有するポリプロピレンスパンボンドフリース上に、本発明による例1のUV架橋可能なアクリレートホットメルト系粘着剤90g/m2を施与する。あるいはポリエステルスパンボンドフリースを使用することもできる。完成した被覆担体をわずかに張力をかけながら巻き付ける。
【0068】
粘着テープは、特に易揮発性有機物質の含有率がわずかであることにより、とりわけ揮発性芳香族炭化水素が含まれていないことにより優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線感受性の、ラジカル重合性有機化合物の溶液を製造する方法であって、
a)酸ハロゲン化物基を有する第一の出発化合物、および
b)アルコール性ヒドロキシ基を有する第二の出発化合物
を、相互に溶剤または溶剤混合物中でエステル化し、かつ溶剤は、標準圧力(1バール)で150℃未満の沸点を有する1もしくは複数のケトンであるか、または溶剤混合物は溶剤の量に対して少なくとも50質量%までがこれらのケトンからなるものであり、かつ両方の出発化合物の一方は、少なくとも1の放射線感受性の基を有しており、かつ両方の出発化合物の他方は、少なくとも1のエチレン性不飽和のラジカル重合性の基を有している、放射線感受性のラジカル重合性有機化合物の溶液を製造する方法。
【請求項2】
第一の出発化合物が、クロロホルメート基およびアクリレート基もしくはメタクリレート基を有しており、かつ第二の出発化合物が、アルコール性のヒドロキシ基およびフェノン基を有していることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
エステル化を、少なくとも1の第三有機アミンの存在下に行い、かつ使用されるアミンの量が有利にはほぼ化学量論的な量であることを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
反応の際に形成される有機アンモニウムハロゲン化物の分離を、反応に引き続き、有機アンモニウムハロゲン化物のほぼ飽和の水溶液が形成され、かつこの飽和水溶液を有機相から分離するように実施することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
飽和水溶液を分離した後に、温度を低下させることにより有機相中に溶解して残留するアンモニウム塩の残留割合を沈殿させ、かつ分離することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
溶剤として使用されるケトンの少なくとも一部が、先行する製造プロセスから回収された、再循環された水含有ケトンであることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
過剰のアミンを、酸で中化することにより、および/または蒸留により除去することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
放射線感受性の、ラジカル重合性有機化合物の溶液であって、該化合物は、少なくとも1の放射線感受性の基と、少なくとも1のエチレン性不飽和の、ラジカル重合性の基とを有しており、かつ溶剤または溶剤混合物中に溶解しており、かつ溶剤は、標準圧力で150℃未満の沸点を有する1もしくは複数のケトンであるか、または溶剤混合物は、溶剤の量に対して少なくとも50質量%までがこれらのケトンからなるものである、放射線感受性の、ラジカル重合性有機化合物の溶液。
【請求項9】
放射線感受性の、ラジカル重合性有機化合物が、一般構造
A−X−Bを有しており、
Aは、フェノン基を有する一価の有機基であり、
Xは、−O−C(=O)−、−(C=O)−Oおよび−O−(C=O)−O−から選択されるエステル基であり、かつ
Bは、エチレン性不飽和の、ラジカル重合可能な基を有する一価の有機基である
ことを特徴とする、請求項8記載の溶液。
【請求項10】
放射線感受性の、ラジカル重合性有機化合物の溶液が、一般式
【化1】

[式中、R1は、30個までの炭素原子を有する二価の有機基であり、R2は、H原子又はメチル基であり、かつR3は、置換された、もしくは置換されていないフェニル基またはC1〜C4−アルキル基を表す]を有していることを特徴とする、請求項8または9記載の溶液。
【請求項11】
溶剤のケトンが、1バールで50〜130℃の範囲の沸点を有するジアルキルケトンであり、かつラジカル重合性の有機化合物の含有率が、5〜85質量%、有利には20〜60質量%であることを特徴とする、請求項8から10までのいずれか1項記載の溶液。
【請求項12】
放射線架橋可能な、ラジカル共重合性コポリマーを製造するための請求項1から7までのいずれか1項記載の方法により製造された溶液または請求項8から11までのいずれか1項記載の溶液の使用。
【請求項13】
コポリマーが、ポリアクリレートコポリマーであり、有利には少なくとも60質量%までが、C1〜C10−アルキル(メタ)アクリレートからなるポリアクリレートコポリマーであることを特徴とする、請求項12記載の使用。
【請求項14】
放射線硬化可能なホットメルト系粘着剤、放射線硬化可能な水性ポリマー分散液、放射線硬化可能な被覆材料、放射線硬化可能なラッカー、放射線硬化可能な印刷インク、放射線硬化可能なインク、放射線硬化可能なスクリーン印刷材料、食料品包装の放射線硬化可能な表面被覆を製造するための、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法により製造された溶液または請求項8から11までのいずれか1項記載の溶液の使用。
【請求項15】
ホットメルト系粘着剤の製造方法であって、
(i)請求項1から7までのいずれか1項記載の方法により製造された溶液または請求項8から11までのいずれか1項記載の溶液を準備し、かつ
(ii)溶液中に含有されている放射線感受性の、ラジカル重合性有機化合物を、該化合物とは異なるラジカル重合性モノマーとラジカル共重合させて、有機溶剤中で放射線架橋可能なコポリマーを形成させ、かつ
(iii)有機溶剤を除去する
ホットメルト系粘着剤の製造方法。
【請求項16】
ポリマー分散液の製造方法であって、
(i)請求項1から7までのいずれか1項記載の方法により製造された溶液または請求項8から11までのいずれか1項記載の溶液を準備し、かつ
(ii)溶液中に含有されている放射線感受性の、ラジカル重合性有機化合物を、水相の存在下に乳化重合または懸濁重合により、該化合物とは異なるラジカル重合性モノマーとラジカル共重合させて、放射線架橋可能なコポリマーを形成させる
ポリマー分散液の製造方法。

【公表番号】特表2012−522747(P2012−522747A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502637(P2012−502637)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【国際出願番号】PCT/EP2010/054202
【国際公開番号】WO2010/112505
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】