説明

放射線撮影システムおよび放射線撮影システムの長尺撮影方法

【課題】粒状性が均質な診断に適した長尺画像を容易に得る。
【解決手段】長尺な撮影範囲をFPDの撮像面が一部オーバーラップするように分けたn個(nは2以上の自然数)の撮影範囲でn回撮影する。線量指標値算出部は、各回の撮影で得たX線画像のオーバーラップ領域の線量指標値を算出する。カセッテ制御部は、線量指標値算出手段で算出されたk−1回目(k=2、3、4、・・・、n)の撮影の線量指標値から換算した照射停止閾値をk回目の撮影の照射停止閾値として電子カセッテに提供する。電子カセッテのAEC部は、k−1回目の撮影とk回目の撮影のオーバーラップ領域OLk−1、kに存在する検出画素で検出された線量の積算値が、カセッテ制御部から提供された照射停止閾値に達したら、k回目の撮影のX線の照射を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線撮影システムおよび放射線撮影システムの長尺撮影方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において、放射線、例えばX線を利用したX線撮影システムが知られている。X線撮影システムは、X線を発生するX線発生装置と、X線を受けてX線画像を撮影するX線撮影装置とからなる。X線発生装置は、X線を被検体に向けて照射するX線源、X線源の駆動を制御する線源制御装置、およびX線の照射開始指示を入力するための照射スイッチを有している。X線撮影装置は、被検体を透過したX線を受けてX線画像を検出するX線画像検出装置、およびX線画像検出装置の駆動を制御するとともにX線画像に各種画像処理を施すコンソールを有している。
【0003】
最近のX線撮影システムの分野では、X線フイルムやイメージングプレート(IP)に代わり、フラットパネルディテクタ(FPD;flat panel detector)を検出パネルとして用いたX線画像検出装置が普及している。FPDには、X線の入射量に応じた信号電荷を蓄積する画素がマトリックス状に配列されている。FPDは、画素毎に信号電荷を蓄積し、蓄積した信号電荷を信号処理回路で電圧信号に変換することで、被検体の画像情報を表すX線画像を検出し、これをデジタルな画像データとして出力する。
【0004】
FPDを直方体形状の筐体に内蔵した電子カセッテ(可搬型のX線画像検出装置)も実用化されている。電子カセッテは、撮影台に据え付けられて取り外し不可なタイプと違って、フイルムカセッテやIPカセッテ用の既存の撮影台や専用の撮影台に着脱可能に取り付けて使用される他、据え付け型では撮影困難な部位を撮影するためにベッド上に置いたり被検体自身に持たせたりして使用される。また、自宅療養中の高齢者や、事故、災害等による急病人を撮影するため、撮影台の設備がない病院外に持ち出して使用されることもある。
【0005】
X線撮影システムには、被検体を透過したX線量を検出するセンサを設けて、センサで検出したX線量の積算値が予め設定した閾値に達したら、X線源によるX線の照射を停止させる自動露出制御(AEC;Automatic Exposure Control)を行うものがある。
【0006】
また、X線撮影には、X線源とX線画像検出装置の位置を一箇所に固定して胸部、腹部等の単一の部位を一枚撮影する場合と、X線源とX線画像検出装置を移動させて、各移動位置で複数枚撮影する場合とがある。後者は長尺撮影と呼ばれ、骨年齢や湾曲度等、主に被検体の骨の具合の観察を目的として行われる。撮影部位としては被検体の首下から腰までの上半身をカバーする全脊椎、腰からつま先までの下半身をカバーする全下肢がある。
【0007】
長尺撮影では、まず、身長や座高、股下長といった被検体の身体的特徴に応じて、放射線技師等のオペレータが撮影範囲を設定する。この撮影範囲とX線画像検出装置(の検出パネルの画素が配列された撮像面)のサイズに基づいて撮影回数を割り出す。さらに各回の撮影のX線源とX線画像検出装置の位置を、隣接する撮影位置で撮像面が重複するように設定する。そして、各撮影位置にX線源とX線画像検出装置を移動させつつ複数回撮影を行う。撮影後、隣接する撮影位置での撮像面の重複により生じたオーバーラップ領域を糊代として複数枚のX線画像を合成し、一枚の長尺画像を生成する。
【0008】
長尺撮影では撮影範囲が広範囲にわたり、腰部と脚部等の体厚やX線があたらない素抜け領域の面積が極端に異なる部位を連続的に撮影するため、各撮影位置で被検体を透過したX線量を最適値に制御することが難しい。また、長尺画像を生成する際には、読影と診断をしやすくするために複数枚のX線画像の繋ぎ目(オーバーラップ領域)に滑らかな連続性をもたせ、一枚の画像として不自然にならないようにする必要がある。
【0009】
そこで特許文献1では、長尺撮影後に個々のX線画像のオーバーラップ領域の指標値(画素値の平均値等)を計算し、オーバーラップ領域の表示階調を揃えるように(濃度のばらつきを軽減するように)階調処理を補正している。階調処理の基準となる画像を指定し、指定した画像を元に連鎖的に他の画像の階調処理を補正することで、長尺画像の繋ぎ目の濃度差を目立たなくしている。
【0010】
また、特許文献2は、カメラで被検体を撮影してその輪郭を抽出し、これを元に長尺撮影の個々の撮影のAECの採光野を設定している。そして、FPDの画素をAEC用のセンサとし、設定された採光野に存在する画素からの信号を元に各撮影位置でのAECを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−057506号公報
【特許文献2】特開2011−139761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1に記載の発明は階調処理を補正する必要があり、処理が煩雑化してその分長尺画像の生成に時間が掛かるという問題がある。また、階調処理を補正することで画像の濃度を変えることはできるが、粒状性等の根本的な画質そのものを変えることはできない。このため各撮影のX線量が適正でない場合は、濃度は一致するが粒状性が均質でない不自然な長尺画像となってしまうおそれがある。
【0013】
特許文献2に記載の発明は、採光野の設定のためだけにカメラを設置して、そのうえカメラの画像から被検体の輪郭を抽出しなければならず、装置規模と装置コストの増大化、処理の煩雑化と長時間化は避けられない。
【0014】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたもので、装置規模と装置コストの増大化、処理の煩雑化と長時間化を招くことなく、粒状性が均質な診断に適した長尺画像を容易に得ることができる放射線撮影システムおよび放射線撮影システムの長尺撮影方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の放射線撮影システムは、放射線を被検体に向けて照射する放射線源と、被検体を透過した放射線を受けて信号電荷を蓄積し、スイッチング素子の駆動に応じて信号電荷を信号線に出力する複数の画素が配列された検出パネルを有する放射線画像検出装置と、前記検出パネルの前記画素が設けられた撮像面の略全面に採光野を有し、被検体を透過した放射線の線量を検出する線量検出センサとを備え、前記放射線源と前記放射線画像検出装置を相対的に移動させ、被検体の複数の部位を含む長尺な撮影範囲を前記撮像面が一部オーバーラップするように分けたn個(nは2以上の自然数)の撮影範囲でn回撮影し、これにより得られたn枚の放射線画像を合成して一枚の長尺画像を生成して表示する放射線撮影システムにおいて、前記長尺な撮影範囲を前記撮像面が一部オーバーラップするように分けたことにより生じる前記放射線画像のオーバーラップ領域の線量指標値を算出する線量指標値算出手段と、前記線量指標値算出手段で算出されたk−1回目(k=2、3、4、・・・、n)の撮影の線量指標値を元にk回目の撮影の照射停止閾値を設定する閾値設定手段と、k−1回目の撮影とk回目の撮影の前記オーバーラップ領域に存在する前記線量検出センサで検出された線量の積算値が、前記閾値設定手段で設定した照射停止閾値に達したら、k回目の撮影の前記放射線源による放射線の照射を停止させる自動露出制御手段とを備えることを特徴とする。
【0016】
前記n個の撮影範囲のうちの一回目に撮影する撮影範囲および前記線量検出センサの採光野と前記自動露出制御手段の照射停止閾値を予め記憶する記憶手段、または前記n個の撮影範囲のうちの一回目に撮影する撮影範囲および前記線量検出センサの採光野と前記自動露出制御手段の照射停止閾値を設定するための操作入力手段を備えることが好ましい。前記自動露出制御手段は、一回目の撮影は前記オーバーラップ領域と前記線量指標値を元に設定された照射停止閾値ではなく、前記記憶手段に記憶された採光野と照射停止閾値、または前記操作入力手段により設定された採光野と照射停止閾値で自動露出制御を行う。なお、記憶手段を備える場合は、一回目に撮影する撮影範囲は腰部を含み、採光野には腰部にあたる領域が記憶される。
【0017】
前記線量指標値算出手段は、前記オーバーラップ領域の画素値を線量指標値として算出する。
【0018】
前記線量検出センサは、信号線にスイッチング素子を介さず直接接続された前記画素である。また、前記放射線画像検出装置は、前記検出パネルが可搬型の筐体に収納された電子カセッテである。
【0019】
本発明の放射線撮影システムの長尺撮影方法は、放射線を被検体に向けて照射する放射線源と、被検体を透過した放射線を受けて信号電荷を蓄積し、スイッチング素子の駆動に応じて信号電荷を信号線に出力する複数の画素が配列された検出パネルを有する放射線画像検出装置と、前記検出パネルの前記画素が設けられた撮像面の略全面に採光野を有し、被検体を透過した放射線の線量を検出する線量検出センサとを備える放射線撮影システムで、前記放射線源と前記放射線画像検出装置を相対的に移動させ、被検体の複数の部位を含む長尺な撮影範囲を前記撮像面が一部オーバーラップするように分けたn個(nは2以上の自然数)の撮影範囲でn回撮影し、これにより得られたn枚の放射線画像を合成して一枚の長尺画像を生成して表示する長尺撮影方法であって、前記長尺な撮影範囲を前記撮像面が一部オーバーラップするように分けたことにより生じる前記放射線画像のオーバーラップ領域の線量指標値を算出する線量指標値算出ステップと、前記線量指標値算出ステップで算出されたk−1回目(k=2、3、4、・・・、n)の撮影の線量指標値を元にk回目の撮影の照射停止閾値を設定する閾値設定ステップと、k−1回目の撮影とk回目の撮影の前記オーバーラップ領域に存在する前記線量検出センサで検出された線量の積算値が、前記閾値設定ステップで設定した照射停止閾値に達したら、k回目の撮影の前記放射線源による放射線の照射を停止させる自動露出制御ステップとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、長尺撮影の各画像のオーバーラップ領域の線量が同じになるよう自動露出制御を行うので、装置規模と装置コストの増大化、処理の煩雑化と長時間化を招くことなく、粒状性が均質な診断に適した長尺画像を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】X線撮影システムの構成を示す概略図である。
【図2】線源制御装置の内部構成と線源制御装置と他の装置との接続関係を示す図である。
【図3】電子カセッテの内部構成を示すブロック図である。
【図4】電子カセッテのFPDの検出画素の配置および採光野を説明するための図である。
【図5】電子カセッテのAEC部および通信部の内部構成を示すブロック図である。
【図6】コンソールに設定された撮影条件を示す図である。
【図7】コンソールの内部構成を示すブロック図である。
【図8】コンソールの機能および情報の流れを示すブロック図である。
【図9】(A)は長尺撮影時の各撮影位置を示す図であり、(B)は各撮影位置で取得される画像データを示す図である。
【図10】長尺撮影の各回の撮影の採光野および照射停止閾値を示す図である。
【図11】長尺撮影の処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】AECの処理の流れを示すフローチャートである。
【図13】FPDの別の態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1において、X線撮影システム2は、X線源10と、X線源10の動作を制御する線源制御装置11と、X線の照射開始を指示するための照射スイッチ12と、被検体Mを透過したX線を検出してX線画像を出力する電子カセッテ13と、電子カセッテ13の動作制御やX線画像の画像処理を担うコンソール14と、被検体Mを立位姿勢で撮影するための立位撮影台15とを有する。X線源10、線源制御装置11、および照射スイッチ12はX線発生装置、電子カセッテ13、およびコンソール14はX線撮影装置をそれぞれ構成する。この他にもX線源10を所望の方向および位置にセットするための線源移動機構16等が設けられている。
【0023】
X線源10は、X線を放射するX線管17と、X線管17が放射するX線の照射野を矩形状に限定する照射野限定器(コリメータ)18とを有する。X線管17は、熱電子を放出するフィラメントからなる陰極と、陰極から放出された熱電子が衝突してX線を放射する陽極(ターゲット)とを有している。照射野限定器18は、例えば、X線を遮蔽する複数枚の鉛板を井桁状に配置し、X線を透過させる照射開口が中央に形成されたものであり、線源制御装置11の制御の下、鉛板の位置を移動することで照射開口の大きさを変化させて、照射野を限定する。
【0024】
線源制御装置11は、X線の照射野が電子カセッテ13のFPD40の撮像面41(ともに図3参照)と略一致するように、照射野限定器18から出射されるX線の角度範囲(以下、コリメータ角度という)を撮影室の床面と垂直なZ方向と撮像面41の幅方向であるX方向(紙面に垂直な方向)の二方向で調整する。図中の「θ」はZ方向に関するコリメータ角度を示している。
【0025】
また、線源制御装置11は、長尺撮影の際に立位撮影台15のホルダ19のZ方向の上下動に追従してX線源11を上下動させるよう、線源移動機構16の駆動を制御する。線源移動機構16は、例えばX線源10を撮影室の天井から懸下保持し、且つZ方向に伸縮自在なアームと、該アームが取り付けられてアーム毎X線源10をXY方向(Y方向は撮影室の床面と平行且つX方向に垂直な方向)に移動させるレールと、モータ等の駆動源とからなり、線源制御装置11の制御の下に自動で、または放射線技師等のオペレータにより手動でX線源10の位置を変えることが可能である。
【0026】
図2に示すように、線源制御装置11は、トランスによって入力電圧を昇圧して高圧の管電圧を発生し、高電圧ケーブルを通じてX線源10に供給する高電圧発生器30と、X線源10が照射するX線のエネルギースペクトルを決める管電圧、単位時間当たりの照射量を決める管電流、およびX線の照射時間を制御する制御部31と、コンソール14との主要な情報、信号の送受信を媒介する通信I/F32とを備える。
【0027】
制御部31には照射スイッチ12とメモリ33とタッチパネル34が接続されている。照射スイッチ12は、オペレータによって操作される例えば二段階押しのスイッチであり、一段階押しでX線源10のウォームアップを開始させるためのウォームアップ開始信号を発生し、二段階押しでX線源10に照射を開始させるための照射開始信号を発生する。これらの信号は信号ケーブルを通じて線源制御装置11に入力される。制御部31は、照射スイッチ12から照射開始信号を受けたときに高電圧発生器30からX線源10への電力供給を開始させる。
【0028】
メモリ33は、管電圧、管電流照射時間積(mAs値)といった撮影条件を予め数種類格納している。撮影条件はタッチパネル34を通じてオペレータにより手動で設定される。線源制御装置11は、設定された撮影条件の管電圧や管電流照射時間積でX線を照射しようとする。AECはこれに対して必要十分な線量に到達したことを検出すると、線源制御装置11側で照射しようとしていた管電流照射時間積(照射時間)以下であってもX線の照射を停止するように機能する。なお、目標線量に達してAECによる照射停止の判断がされる前にX線の照射が終了して線量不足に陥ることを防ぐために、X線源10の撮影条件には電流照射時間積(照射時間でも可)の最大値が設定される。
【0029】
照射信号I/F35は、電子カセッテ13の検出画素65(図3参照)の出力を元にX線の照射停止タイミングを規定する場合に電子カセッテ13と接続される。この場合、制御部31は、照射スイッチ12からウォームアップ開始信号を受けたときに、照射信号I/F35を介して問い合わせ信号を電子カセッテ13に送信させる。電子カセッテ13は問い合わせ信号を受信するとリセット処理の完了や蓄積開始処理等の準備処理を行う。そして、電子カセッテ13から問い合わせ信号の応答である照射許可信号を照射信号I/F35で受け、さらに照射スイッチ12から照射開始信号を受けたときに高電圧発生器30からX線源10への電力供給を開始させる。また、制御部31は、電子カセッテ13から発せられる照射停止信号を照射信号I/F35で受けたときに、高電圧発生器30からX線源10への電力供給を停止させ、X線の照射を停止させる。
【0030】
電子カセッテ13は、周知の如くFPD40とFPD40を収容する可搬型の筐体(図示せず)とからなる。電子カセッテ13の筐体は略矩形状で偏平な形状を有し、平面サイズはフイルムカセッテやIPカセッテ(CRカセッテとも呼ばれる)と同様の大きさ(国際規格ISO4090:2001に準拠した大きさ)である。このため、フイルムカセッテやIPカセッテ用の既存の撮影台にも取り付け可能である。
【0031】
電子カセッテ13は、FPD40の撮像面41がX線源10と対向する姿勢で保持されるよう、立位撮影台15のホルダ19に着脱自在にセットされる。電子カセッテ13は、立位撮影台15にセットするのではなく、被検体Mが仰臥するベッド上に置いたり被検体M自身に持たせたりして単体で使用することも可能である。
【0032】
図1において、立位撮影台15は、電子カセッテ13のFPD40の撮像面41の向きを変えずにホルダ19をZ方向に上下動させるホルダ移動機構20と、被検体Mの撮影範囲Wを設定するための操作部21とを備えている。ホルダ移動機構20によって、コンソール14の制御の下に自動で、またはオペレータにより手動でホルダ19の位置を変えることができる。撮影範囲Wは、全脊椎撮影を行う場合の撮影範囲の一例であり、被検体Mの首から腰までの上半身を略カバーする範囲である。
【0033】
操作部21は、ホルダ19を上下に移動させるための移動ボタン22と、撮影範囲Wの上端位置Zを設定するための第一設定ボタン23と、撮影範囲Wの下端位置Zを設定するための第二設定ボタン24とを備えている。
【0034】
ホルダ19の側面には、FPD40の撮像面41の上端位置を示す第一マーク25と、撮像面41の下端位置を示す第二マーク26とが印刷等により形成されている。オペレータは、操作部21の移動ボタン22を操作してホルダ19を上方向に移動させ、所望の位置で第一設定ボタン23を押下することにより、第一マーク25に対応する位置を撮影範囲Wの上端位置Zに設定する。また、移動ボタン22を操作してホルダ19を下方向に移動させ、所望の位置で第二設定ボタン24を押下することにより、第二マーク26に対応する位置を撮影範囲Wの下端位置Zに設定する。この操作部21により設定された撮影範囲Wの情報はコンソール14に送信される。
【0035】
図3において、電子カセッテ13にはアンテナ42、およびバッテリ43が内蔵されており、コンソール14との無線通信が可能である。アンテナ42は、無線通信のための電波をコンソール14との間で送受信する。バッテリ43は、電子カセッテ13の各部を動作させるための電力を供給する。バッテリ43は、薄型の電子カセッテ13内に収まるよう比較的小型のものが使用される。また、バッテリ43は、電子カセッテ13から外部に取り出して専用のクレードルにセットして充電することも可能である。バッテリ43を無線給電可能な構成としてもよい。
【0036】
電子カセッテ13には、アンテナ42に加えてソケット44が設けられている。ソケット44はコンソール14と有線接続するために設けられており、バッテリ43の残量不足等で電子カセッテ13とコンソール14との無線通信が不可能になった場合に使用される。ソケット44にコンソール14からのケーブルを接続した場合、コンソール14との有線通信が可能になる。この際、コンソール14から電子カセッテ13に給電してもよい。
【0037】
アンテナ42およびソケット44は、通信部45に設けられている。通信部45は、アンテナ42またはソケット44と制御部46、メモリ47間の画像データを含む各種情報、信号(通信が正常に行われているか否かを検査するためのライフチェック信号等)の送受信を媒介する。
【0038】
FPD40は、TFTアクティブマトリクス基板を有し、この基板上にX線の入射量に応じた信号電荷を蓄積する複数の画素50を配列してなる撮像面41を備えている。複数の画素50は、所定のピッチで二次元にi行(X方向)×j列(Z方向)のマトリクス状に配列されている。
【0039】
FPD40はさらに、X線を可視光に変換するシンチレータ(蛍光体、図示せず)を有し、シンチレータによって変換された可視光を画素50で光電変換する間接変換型である。シンチレータは、CsI(ヨウ化セシウム)やGOS(ガドリウムオキシサルファイド)等からなり、画素50が配列された撮像面41の全面と対向するように配置されている。なお、シンチレータとFPD40は、X線の入射する側からみてシンチレータ、FPD40の順に配置されるPSS(Penetration Side Sampling)方式でもよいし、逆にFPD40、シンチレータの順に配置されるISS(Irradiation Side sampling)方式でもよい。また、シンチレータを用いず、X線を直接電荷に変換する変換層(アモルファスセレン等)を用いた直接変換型のFPDを用いてもよい。
【0040】
画素50は、可視光の入射によって電荷(電子−正孔対)を発生する光電変換素子であるフォトダイオード51、フォトダイオード51が発生した電荷を蓄積するキャパシタ(図示せず)、およびスイッチング素子として薄膜トランジスタ(TFT)52を備える。
【0041】
フォトダイオード51は、電荷を発生する半導体層(例えばPIN型)とその上下に上部電極および下部電極を配した構造を有している。フォトダイオード51は、下部電極にTFT52が接続され、上部電極にはバイアス線53が接続されており、バイアス線53は撮像面41内の画素50の行数分(i行分)設けられて結線54に結束されている。結線54はバイアス電源55に繋がれている。結線54、バイアス線53を通じて、バイアス電源55からフォトダイオード51の上部電極にバイアス電圧Vbが印加される。バイアス電圧Vbの印加により半導体層内に電界が生じ、光電変換により半導体層内で発生した電荷(電子−正孔対)は、一方がプラス、他方がマイナスの極性を持つ上部電極と下部電極に移動し、キャパシタに電荷が蓄積される。
【0042】
TFT52は、ゲート電極が走査線56に、ソース電極が信号線57に、ドレイン電極がフォトダイオード51にそれぞれ接続される。走査線56と信号線57は格子状に配線されており、走査線56は撮像面41内の画素50の行数分(i行分)、信号線57は画素50の列数分(j列分)それぞれ設けられている。走査線56はゲートドライバ58に接続され、信号線57は信号処理回路59に接続される。
【0043】
ゲートドライバ58は、TFT52を駆動することにより、X線の入射量に応じた信号電荷を画素50に蓄積する蓄積動作と、画素50から信号電荷を読み出す読み出し(本読み)動作と、リセット(空読み)動作とを行わせる。制御部46は、ゲートドライバ58によって実行される上記各動作の開始タイミングを制御する。
【0044】
蓄積動作ではTFT52がオフ状態にされ、その間に画素50に信号電荷が蓄積される。読み出し動作では、ゲートドライバ58から同じ行のTFT52を一斉に駆動するゲートパルスG1〜Giを順次発生して、走査線56を一行ずつ順に活性化し、走査線56に接続されたTFT52を一行分ずつオン状態とする。画素50のキャパシタに蓄積された電荷は、TFT52がオン状態になると信号線57に読み出されて、信号処理回路59に入力される。
【0045】
フォトダイオード51の半導体層には、X線の入射の有無に関わらず暗電荷が発生する。この暗電荷はバイアス電圧Vbが印加されているためにキャパシタに蓄積される。画素50において発生する暗電荷は、画像データに対してはノイズ成分となるので、これを除去するためにリセット動作が行われる。リセット動作は、画素50において発生する暗電荷を、信号線57を通じて掃き出す動作である。
【0046】
リセット動作は、例えば、一行ずつ画素50をリセットする順次リセット方式で行われる。順次リセット方式では、信号電荷の読み出し動作と同様、ゲートドライバ58から走査線56に対してゲートパルスG1〜Giを順次発生して、画素50のTFT52を一行ずつオン状態にする。TFT52がオン状態になっている間、画素50から暗電荷が信号線57を通じて積分アンプ60に流れる。リセット動作では、読み出し動作と異なり、マルチプレクサ(MUX)61による積分アンプ60に蓄積された電荷の読み出しは行われず、各ゲートパルスG1〜Giの発生と同期して、制御部46からリセットパルスRSTが出力され、積分アンプ60がリセットされる。
【0047】
順次リセット方式に代えて、配列画素の複数行を一グループとしてグループ内で順次リセットを行い、グループ数分の行の暗電荷を同時に掃き出す並列リセット方式や、全行にゲートパルスを入れて全画素の暗電荷を同時に掃き出す全画素リセット方式を用いてもよい。並列リセット方式や全画素リセット方式によりリセット動作を高速化することができる。
【0048】
信号処理回路59は、積分アンプ60、MUX61、およびA/D変換器62等を備える。積分アンプ60は、各信号線57に対して個別に接続される。積分アンプ60は、オペアンプとオペアンプの入出力端子間に接続されたキャパシタとからなり、信号線57はオペアンプの一方の入力端子に接続される。積分アンプ60のもう一方の入力端子はグランド(GND)に接続される。積分アンプ60は、信号線57から入力される電荷を積算し、電圧信号D1〜Djに変換して出力する。各列の積分アンプ60の出力端子には、増幅器63、サンプルホールド(S/H)部64を介してMUX61が接続される。MUX61の出力側には、A/D変換器62が接続される。
【0049】
MUX61は、パラレルに接続される複数の積分アンプ60から順に一つの積分アンプ60を選択し、選択した積分アンプ60から出力される電圧信号D1〜DjをシリアルにA/D変換器62に入力する。A/D変換器62は、入力された電圧信号D1〜Djをデジタルデータに変換して、電子カセッテ13に内蔵されるメモリ47に出力する。なお、MUX61とA/D変換器62の間に増幅器を接続してもよい。
【0050】
MUX61によって積分アンプ60から一行分の電圧信号D1〜Djが読み出されると、制御部46は、積分アンプ60に対してリセットパルスRSTを出力し、積分アンプ60のリセットスイッチ60aをオンする。これにより、積分アンプ60に蓄積された一行分の信号電荷がリセットされる。積分アンプ60がリセットされると、ゲートドライバ58から次の行のゲートパルスが出力され、次の行の画素50の信号電荷の読み出しを開始させる。これらの動作を順次繰り返して全行の画素50の信号電荷を読み出す。
【0051】
全行の読み出しが完了すると、一画面分のX線画像を表す画像データがメモリ47に記録される。この画像データはメモリ47から読み出され、通信部45を通じてコンソール14に出力される。こうして被検体MのX線画像が検出される。
【0052】
制御部46は、線源制御装置11の制御部31からの問い合わせ信号を受信したタイミングで、FPD40にリセット動作を行わせて線源制御装置11に照射許可信号を返信する。そして、照射開始信号を受信したタイミングでFPD40の動作をリセット動作から蓄積動作へ移行させる。
【0053】
FPD40は、上述のようにTFT52を介して信号線57に接続された画素50の他に、TFT52を介さず信号線57に短絡して接続された検出画素65を同じ撮像面41内に複数備えている。検出画素65は、被検体Mを透過して撮像面41に入射するX線の線量を検出するために利用される画素であり、照射開始検出センサとして機能したり、照射終了検出センサおよびAECセンサとして機能する。検出画素65は撮像面41内の画素50の数%程度を占める。
【0054】
図4に示すように、検出画素65は、撮像面41内で局所的に偏ることなく撮像面41内に満遍なく散らばるよう、撮像面41の中心に関して左右対称な点線で示す波形の軌跡66に沿って設けられている。検出画素65は、同じ信号線57が接続された画素50の列に一個ずつ設けられ、検出画素65が設けられた列は、検出画素65が設けられない列を例えば二〜三列挟んで設けられる。検出画素65の位置はFPD40の製造時に既知であり、FPD40は全検出画素65の位置(座標)を不揮発性のメモリ(図示せず)に予め記憶している。なお、ここで示した検出画素65の配置は一例であり、適宜変更可能である。
【0055】
検出画素65は信号線57との間にTFT52が設けられておらず、信号線57に直に接続されているので、検出画素65で発生した信号電荷は、直ちに信号線57に読み出される。同列にある通常の画素50がTFT52をオフ状態とされ、信号電荷を蓄積する蓄積動作中であっても同様である。このため検出画素65が接続された信号線57上の積分アンプ60には、検出画素65で発生した電荷が常に流入する。蓄積動作時、積分アンプ60に蓄積された検出画素65からの電荷は、所定のサンプリング周期でMUX61を介して電圧値としてA/D変換器62に出力される。
【0056】
図3において、AEC部67は、制御部46により駆動制御される。AEC部67は、検出画素65が接続された信号線57からの電圧値(AEC検出信号という)をA/D変換器62を介して取得する。
【0057】
図5において、AEC部67は、採光野選択回路75、積分回路76、比較回路77、および閾値発生回路78を有する。採光野選択回路75は、コンソール14からの採光野の情報に基づき、撮像面41内に散らばった複数の検出画素65のうち、どの検出画素65のAEC検出信号をAECに用いるかを選択する。積分回路76は、採光野選択回路75で選択された検出画素65からのAEC検出信号を積算する。比較回路77は、X線の照射開始が検出されたときに積分回路76からのAEC検出信号の積算値のモニタリングを開始する。そして、積算値と閾値発生回路78から与えられる照射停止閾値とを適宜のタイミングで比較する。積算値が閾値に達したとき、比較回路77は照射停止信号を出力する。
【0058】
通信部45には、上述のアンテナ42とソケット44の他に照射信号I/F80が設けられている。照射信号I/F80には線源制御装置11の照射信号I/F35が接続される。照射信号I/F80は、問い合わせ信号の受信、問い合わせ信号に対する照射許可信号の送信、比較回路77の出力、すなわち照射停止信号の送信を行う。
【0059】
コンソール14は、有線方式や無線方式により電子カセッテ13と通信可能に接続されており、電子カセッテ13の動作を制御する。具体的には、電子カセッテ13に対して撮影条件を送信して、FPD40の信号処理の条件(蓄積される信号電荷に応じた電圧を増幅するアンプのゲイン等)を設定させるとともに、電子カセッテ13の電源のオンオフ、省電力モードや撮影準備状態へのモード切り替え等の制御を行う。
【0060】
コンソール14は、電子カセッテ13から送信されるX線画像データに対してオフセット補正やゲイン補正、欠陥補正等の各種画像処理を施す。欠陥補正では、検出画素65がある列の画素値を隣り合う検出画素65がない列の画素値で補間する。画像処理済みのX線画像はコンソール14のディスプレイ89(図7参照)に表示される他、そのデータがコンソール14内のストレージデバイス87やメモリ86(ともに図7参照)、あるいはコンソール14とネットワーク接続された画像蓄積サーバといったデータストレージに記憶される。
【0061】
コンソール14は、患者の性別、年齢、撮影部位、撮影目的といった情報が含まれる検査オーダの入力を受け付けて、検査オーダをディスプレイ89に表示する。検査オーダは、HIS(病院情報システム)やRIS(放射線情報システム)といった患者情報や放射線検査に係る検査情報を管理する外部システムから入力されるか、オペレータにより手動入力される。検査オーダには、頭部、胸部、腹部、全脊椎、全下肢等の撮影部位、正面、側面、斜位、PA(X線を被検体Mの背面から照射)、AP(X線を被検体Mの正面から照射)といった撮影方向が含まれる。オペレータは、検査オーダの内容をディスプレイ89で確認し、その内容に応じた撮影条件をディスプレイ89の操作画面を通じて入力する。
【0062】
図6に示すように、コンソール14では撮影部位毎に撮影条件を設定可能である。撮影条件には、検出画素65の採光野、および検出画素65のAEC検出信号の積算値と比較してX線の照射停止を判断するための照射停止閾値等が記憶されている。この撮影条件の情報はストレージデバイス87に格納されている。全脊椎撮影における検出画素65の採光野aは、図4に一点鎖線のハッチングで示す下側約3/5の領域、全下肢撮影における採光野bは実線のハッチングで示す上側約3/5の領域に設定されており、いずれも一回目の撮影の腰部にあたる部分である。二回目の撮影以降は採光野がオーバーラップ領域110(図9参照)となるので一回目の撮影の採光野のみが設定されている。なお、ここでは撮影部位として長尺撮影の全脊椎、全下肢のみを例示しているが、実際には胸部AP、胸部PA、頭部、腹部といった他の撮影部位とそれらに対応する撮影条件も記憶されている。
【0063】
図7において、コンソール14を構成するコンピュータは、CPU85、メモリ86、ストレージデバイス87、通信I/F88、ディスプレイ89、および入力デバイス90を備えている。これらはデータバス91を介して相互接続されている。
【0064】
ストレージデバイス87は、例えばHDD(Hard Disk Drive)である。ストレージデバイス87には、制御プログラムやアプリケーションプログラム(以下、APという)92が記憶される。AP92は、検査オーダやX線画像の表示処理、X線画像に対する画像処理、撮影条件の設定等、X線撮影に関する様々な機能をコンソール14に実行させるためのプログラムである。
【0065】
メモリ86は、CPU85が処理を実行するためのワークメモリである。CPU85は、ストレージデバイス87に記憶された制御プログラムをメモリ86へロードして、プログラムに従った処理を実行することにより、コンピュータの各部を統括的に制御する。通信I/F88は、RIS、HIS、画像蓄積サーバ、電子カセッテ13等の外部装置との無線または有線による伝送制御を行うネットワークインターフェースである。入力デバイス90は、キーボードやマウス、あるいはディスプレイ89と一体となったタッチパネル等である。入力デバイス90は、撮影条件を設定する際や、FPD40の撮像面41の位置YからX線管17の焦点の位置Yまでの距離(SID;Source Image Distance、図1参照)を入力する際等に操作される。
【0066】
図8において、コンソール14のCPU85は、AP92を起動して長尺撮影を選択すると、駆動条件設定部100、駆動制御部101、カセッテ制御部(閾値設定手段に相当)102、線量指標値算出部103、画像処理部104、および表示制御部105として機能する。駆動条件設定部100は、長尺撮影時のホルダ19およびX線源10の移動範囲や、その移動範囲内での撮影位置、照射野限定器18によるコリメータ角度を設定する。駆動制御部101は、駆動条件設定部100で設定された各種駆動条件に応じて、線源制御装置11を介して線源移動機構16、照射野限定器18を駆動させたり、ホルダ移動機構20を駆動させる。画像処理部104は、上述のオフセット補正、ゲイン補正、欠陥補正等の各種画像処理の他、長尺撮影の各撮影位置で得られた画像データを収集して、これらを合成することにより長尺画像データを作成する。表示制御部105は、長尺画像データに基づく合成X線画像(長尺画像)や、撮影に必要な操作メニュー等をディスプレイ89に表示させる。
【0067】
駆動条件設定部100は、ホルダ19およびX線源10の移動範囲を設定する移動範囲設定部106と、コリメータ角度を設定するコリメータ角度設定部107と、上記移動範囲内での撮影位置を設定する撮影位置設定部108とから構成されている。
【0068】
移動範囲設定部106は、操作部21から入力された撮影範囲Wの上端および下端位置Z、Zをホルダ19およびX線源10の移動範囲に設定する。全脊椎撮影の場合、ホルダ移動機構20は、ホルダ19の第二マーク26の高さが下端位置Zに一致する位置を移動開始位置とし、第一マーク25の高さが上端位置Zに一致する位置を移動終了位置として、ホルダ19を移動開始位置と移動終了位置の間で移動させる。腰からつま先までを撮影範囲Wとする全下肢撮影の場合は、逆に第一マーク25の高さが上端位置Zに一致する位置を移動開始位置、第二マーク26の高さが下端位置Zに一致する位置を移動終了位置とする。従って、全脊椎撮影、全下肢撮影いずれの場合も腰部が最初に撮影する部位となる。線源移動機構16も同様に、ホルダ19と連動するようX線源10を移動開始位置と移動終了位置の間で移動させる。
【0069】
コリメータ角度設定部107は、入力デバイス90を介して入力されるSIDと、FPD40の撮像面41のサイズ(既知)とに基づいてコリメータ角度を算出する。撮像面41のZ方向の長さをFOV(図9参照)とした場合、Z方向に関するコリメータ角度θは、次式(1)で求められる。X方向に関するコリメータ角度についても同様に算出可能である。
θ=2×tan−1{(FOV/2)/SID} ・・・式(1)
【0070】
ホルダ19とX線源10の移動が連動して行われるため、各撮影位置でのホルダ19とX線源10の位置関係は変わらない。このため上記式(1)で求めたコリメータ角度θは各撮影位置で共通して適用される。線源制御装置11は、コリメータ角度θが上記式(1)で求めた値となるように照射野限定器18を駆動する。
【0071】
撮影位置設定部108は、上端位置Zおよび下端位置Zの間の距離と、撮像面41のZ方向の長さFOVに基づいて、長尺撮影時の各撮影位置を設定する。具体的には、まず、次式(2)
(Z−Z)/FOV・・・式(2)
を計算する。そして、隣接する撮影位置で撮像面41を重複させるため、上式(2)の計算結果が割り切れる場合は商に1を加え、割り切れない場合は小数点以下を切り上げることにより撮影回数nを算出する。撮影回数nが決まったら、図9(A)に示すように、第二マーク26の高さが下端位置Zに一致する移動開始位置(一回目の撮影位置)P1と、第一マーク25の高さが上端位置Zに一致する移動終了位置(n回目の撮影位置)Pnとを定め(全脊椎撮影の場合、全下肢撮影の場合はこの逆)、移動開始位置P1と移動終了位置Pnとの間を、(n−1)の数で等分する位置をその他の撮影位置とする。
【0072】
例えば、Z−Z=100cm、FOV=25cmの場合には、(Z−Z)/FOV=4で割り切れるため、撮影回数nは4+1で「5」と算出される。各撮影位置P1、P2、P3、P4、P5の間隔d=18.75cmとなる。Z−Z=100cm、FOV=30cmの場合には(Z−Z)/FOV=3.33・・・で割り切れないため、小数点以下を切り上げて撮影回数nは「4」となる。各撮影位置P1、P2、P3、P4の間隔d≒23.3cmとなる。
【0073】
図9(B)は、各撮影位置P1、P2、・・・、Pnで得られる画像データI1、I2、・・・、Inを示している。撮影位置が隣接する画像データは、隣接する撮影位置での撮像面41の重複により、オーバーラップ領域110が生じる。オーバーラップ領域110は、二回目の撮影以降の検出画素65の採光野となるとともに、画像処理部104で長尺画像データを生成する際の糊代となる。このオーバーラップ領域110の重複量γは、次式(3)で算出される。
γ={n×FOV−(Z−Z)}/(n−1) ・・・式(3)
前述のZ−Z=100cm、FOV=25cmの場合はγ=(5×25−100)/2=12.5cm、Z−Z=100cm、FOV=30cmの場合はγ=(4×30−100)/3≒6.7cmとなる。
【0074】
撮影位置設定部108は、算出した撮影回数nおよび各撮影位置の間隔dの情報を駆動制御部101に出力する。駆動制御部101の制御の下、ホルダ移動機構20および線源移動機構16は間隔dでホルダ19およびX線源10をZ方向に順次撮影位置P1からPnに移動させる。各撮影位置では、撮像面41の中心からY方向に引いた垂線の延長線上にX線管17の焦点が位置する。線源制御装置11は二回目の撮影以降は各撮影位置にX線源10が移動して停止したときにX線が照射されるようX線源10の駆動を制御する。
【0075】
また、撮影位置設定部108は、算出したオーバーラップ領域110の重複量γの情報をカセッテ制御部102、画像処理部104、および線量指標値算出部103に出力する。画像処理部104は、重複量γの情報に基づき各撮影位置での画像データをオーバーラップ領域110で繋ぎ合わせて長尺画像データを生成する。
【0076】
線量指標値算出部103は、各撮影位置で撮影を行う毎に各撮影位置での画像データを画像処理部104から受け取る。そして、撮影位置設定部108からの重複量γの情報に基づきオーバーラップ領域110に相当する画像データの領域を特定する。線量指標値算出部103は、特定したオーバーラップ領域110に相当する領域の線量指標値を算出する。線量指標値はオーバーラップ領域110に入射したX線の線量を表すものであれば如何なるものでもよく、オーバーラップ領域110に相当する領域の画素値の平均値や、画像データをヒストグラム解析して得られるS値、あるいはEI値、REX値等の周知の線量指標値を用いることができる。
【0077】
線量指標値算出部103は、算出した線量指標値をAECの照射停止閾値に換算し、この換算結果をカセッテ制御部102に出力する。線量指標値と照射停止閾値の換算式はストレージデバイス87に予め記憶されており、線量指標値算出部103はストレージデバイス87から換算式を読み出して線量指標値から照射停止閾値への換算を行う。
【0078】
カセッテ制御部102は、長尺撮影の一回目の撮影では、ストレージデバイス87に格納された撮影条件にて設定された採光野と照射停止閾値の情報を電子カセッテ13に提供する。全脊椎撮影の場合は図10の最下部に示すように採光野aと照射停止閾値th1の情報、全下肢撮影の場合は採光野bと照射停止閾値th2の情報である。採光野の情報は、具体的には左上の画素50の座標を原点(0、0)とする、画素50(検出画素65も含む)の撮像面41内における位置と対応する平面座標で表され、採光野が矩形の場合は例えば対角線で結ぶ二点の座標で表す。
【0079】
二回目の撮影以降、カセッテ制御部102は、採光野の情報としてオーバーラップ領域110を、照射停止閾値の情報として線量指標値算出部103から出力された照射停止閾値を電子カセッテ13に提供する。つまり、図10の最上部に示すように、k回目(k=2、3、4、・・・、n)の撮影では、k−1回目の撮影の撮影範囲とのオーバーラップ領域110(OLk−1、k)が採光野となり、k−1回目の撮影におけるオーバーラップ領域110の線量指標値Rk−1から換算した照射停止閾値thRk−1がAECの照射停止閾値に設定される。従って、k−1回目の撮影とk回目の撮影とでは、オーバーラップ領域110に入射するX線量が同じになるようAECが行われる。なお、図10は全脊椎撮影の例であるため一回目の撮影の腰部から上側(首側)に向かって撮影位置が移動する。全下肢撮影の場合はこの逆である。
【0080】
採光野選択回路75は、カセッテ制御部102から提供される採光野の情報を元に、長尺撮影における各回の撮影の採光野を選択する。また、閾値発生回路78は、カセッテ制御部102提供される照射停止閾値の情報を元に、長尺撮影における各回の撮影毎に照射停止閾値を変更する。
【0081】
次に、図11、図12のフローチャートを参照しながら、X線撮影システム2において長尺撮影(全脊椎撮影)を行う場合の処理手順を説明する。
【0082】
まず、X線源10、立位撮影台15を撮影に適切な位置に配置した後、図11のステップ10(S10)に示すように、SIDを計測してこの値を入力デバイス90にてコンソール14に入力する。続いて被検体Mを立位撮影台15の前の所定位置に立たせ、この状態で操作部21の移動ボタン22を操作し、所望とする被検体Mの撮影範囲Wの上端にホルダ19の第一マーク25の位置を合わせて第一設定ボタン23を押下することにより上端位置Zを設定し、所望とする被検体Mの撮影範囲Wの下端に第二マーク26の位置を合わせて第二設定ボタン24を押下することにより下端位置Zを設定する(S11)。
【0083】
SIDが不変で既に入力されていた場合、またはX線源10、立位撮影台15の水平位置を検出するポテンショメータ等からなる位置センサが設けられ、位置センサの出力に基づきSIDを自動計算可能な場合はS10の手順を省いてもよい。
【0084】
SIDの計測値、および上端位置Zと下端位置Zの設定値は、駆動条件設定部100に入力される。駆動条件設定部100では、移動範囲設定部106、コリメータ角度設定部107、および撮影位置設定部108の各設定部にて、移動範囲、コリメータ角度θ、撮影回数n、撮影位置P1、P2、・・・、Pnとその間隔d、さらにはオーバーラップ領域110の重複量γが算出される(S12)。これらの情報は駆動制御部101等に出力される。
【0085】
次いで、駆動制御部101の制御の下、線源移動機構16およびホルダ移動機構20が駆動されて、X線源10とホルダ19とが一回目の撮影位置P1に移動される。また、線源制御装置11により照射野限定器18が駆動されて、コリメータ角度設定部107で算出されたコリメータ角度θとなるよう照射野が調整される(S13)。
【0086】
この後、X線撮影システム10は、照射開始指示の待ち受け状態となる(S14)。オペレータにより照射スイッチ12が操作されて照射開始指示がなされると(S14でYES)、
X線源10からX線の照射が開始され、これに伴いFPD40では電荷の蓄積動作が開始されて一回目の撮影が行われる(S15)。
【0087】
電子カセッテ13ではFPD40の蓄積動作と同時にAEC部67で検出画素65の出力に基づくAECが行われている。図12に示すように、採光野選択回路75は、コンソール14のカセッテ制御部102から与えられた採光野の情報に基づき、A/D変換器62から入力される複数の検出画素65のAEC検出信号のうち、採光野(一回目の撮影では採光野a)に存在する検出画素65からのAEC検出信号を選別し、選別したAEC検出信号を積分回路76に出力する(S30)。積分回路76は検出信号を積算する(S31)。
【0088】
閾値発生回路78は、カセッテ制御部102から与えられた照射停止閾値(一回目の撮影では照射停止閾値th1)を発生し、これを比較回路77に出力する。比較回路77は、積分回路76からの検出信号の積算値と閾値発生回路78からの照射停止閾値とを比較(S32)し、積算値が閾値に達したとき(S33でYES)に照射停止信号を出力する。比較回路77から出力された照射停止信号は照射信号I/F80を介して線源制御装置11の照射信号I/F35に向けて送信される(S34)。
【0089】
照射信号I/F35で照射停止信号を受けた場合、線源制御装置11では、制御部31により高電圧発生器30からX線源10への電力供給が停止され、これによりX線の照射が停止される。電子カセッテ13では、FPD40の動作が蓄積動作から読み出し動作に移行し、この読み出し動作により画像データが出力される。
【0090】
FPD40から出力された画像データは、通信部45を介してコンソール14に有線または無線送信されて画像処理部104で各種画像処理が施される。一回目の撮影では画像データI1が取得される(図11のS16)。画像データI1は画像処理部104から線量指標値算出部103に送られる。線量指標値算出部103では、一回目と二回目の撮影のオーバーラップ領域OL1、2の線量指標値Rが画像データI1から算出される。そして、該線量指標値Rが照射停止閾値thR1に換算される(S17)。
【0091】
一回目の撮影後、X線源10とホルダ19とが二回目の撮影位置P2に移動され(S18)、撮影位置P2にて二回目の撮影が行われる(S19)。このとき、AEC部67では、採光野が一回目と二回目の撮影のオーバーラップ領域OL1、2、照射停止閾値がthR1に設定されて図12のS30〜S34と同じ処理が行われる。
【0092】
以下同様にして、k−1回目の撮影で画像データIk−1を取得し(S20)、この画像データIk−1のk回目の撮影とのオーバーラップ領域OLk−1、kの線量指標値Rk−1を線量指標値算出部103で算出して、照射停止閾値thRk−1に換算する(S21)。そして、X線源10とホルダ19とをk回目の撮影位置Pkに移動させ(S22)、採光野をk−1回目とk回目の撮影のオーバーラップ領域OLk−1、k、照射停止閾値をthRk−1としてk回目の撮影を行い(S23)、これにより画像データIkを取得する(S24)。これらの処理は撮影回数がnになるまで(k=n、S25でYES)続けられる。
【0093】
n回目の撮影終了後、画像処理部104により、各撮影位置P1、P2、・・・、Pnで得られた画像データI1、I2、・・・、Inをオーバーラップ領域110で繋ぎ合わせて一枚分の長尺画像データとする合成処理が行われる(S26)。生成された長尺画像データは表示制御部105によりディスプレイ89に表示される(S27)。
【0094】
以上説明したように、本発明によれば、長尺撮影の各回の撮影におけるオーバーラップ領域110の入射線量が同じになるようAECを行うので、長尺画像の繋ぎ目の粒状性が均質となり、診断しやすい長尺画像を提供することができる。
【0095】
一回目の撮影では予め記憶された採光野と照射停止閾値でAECを行うので、一回目の撮影で最適な画質を確保することができる。続く二回目の撮影以降もある程度その状態を引き継ぐので、全体的に画質がよく合成の跡が不自然でない長尺画像を得ることができる。
【0096】
画像処理としては線量指標値の算出だけで済み、しかも撮影後ではなく撮影の最中に算出するため長尺画像の生成に時間が掛からない。また、採光野は予め記憶されたものかオーバーラップ領域110に限られるので、簡単且つ迅速に採光野を選択することができる。
【0097】
本発明は、上記実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない限り種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【0098】
上記実施形態では、予め記憶された採光野と照射停止閾値で一回目に撮影する部位を全脊椎、全下肢撮影ともに腰部としている。その理由としては、腰部は骨盤があるため診断時に最も注目すべき部位となりやすいためである。但し本発明はこれに限定されず、腰部以外の部位を一回目に撮影してもよい。また、一回目に撮影する部位とその採光野および照射停止閾値を、入力デバイス90等を介してオペレータが設定可能に構成してもよい。例えば全下肢撮影で膝関節症の検査を行う場合は膝を一回目に撮影する部位とし、マウスやタッチペンの範囲指定でディスプレイ89に表示された人体図の両膝関節の領域を採光野に設定する。
【0099】
上記実施形態の第一および第二マーク25、26に代えて、撮像面41の上端位置および下端位置に対応するホルダ19の位置に、Y方向に可視光ビームまたはレーザビームを出射する照準器を設け、ビーム照射位置を目安として撮影範囲Wを設定させてもよい。あるいは照準器等を設けずに、撮影範囲Wを物差しで実測して入力デバイス90から実測値を入力させる構成としてもよい。
【0100】
オーバーラップ領域110の重複量γの撮像面41のZ方向の長さFOVに対する割合が大きくなると、オーバーラップ領域110の部分で被検体Mの被曝量が大きくなるため、重複量γに上限を設ける(例えば、FOVの10%の長さ)ことが好ましい。そして、上記式(3)を用いて算出した重複量γと所定の上限値を比較して、重複量γが上限値より大きい場合には、重複量γが上限値となるよう各撮影位置P1、P2、・・・、Pnを上下方向に均等にずらす。
【0101】
あるいは重複量γを常に一定の値としてもよい。この場合はn回目の撮影で撮像面41が撮影範囲Wからはみ出ることがあるが、その際にはX線の照射野を撮影範囲Wの上端または下端に限定して対処する。
【0102】
上記実施形態では、画像検出用の画素50とAECセンサとして働く検出画素65が各々独立して存在するため、検出画素65がある列の画素値を隣り合う検出画素65がない列の画素値で補間する欠陥補正を行う必要がある。このためX線画像の画質低下を招くおそれがある。そこで、FPDを図13に示すFPD150のような構成とすることで、欠陥補正を不要とする。
【0103】
図13において、FPD150は、画像検出専用の第一画素151と画像検出兼AEC用の第二画素152とを備えている。第一、第二画素151、152は、上記実施形態の画素50と検出画素65同様、適当な割合でマトリクス状に配列されている。第一、第二画素151、152は、それぞれ二つのフォトダイオード153、154を有する。第一画素151のフォトダイオード153、154は並列に接続され、一端がTFT52を介して信号線57に接続されている。一方、第二画素152のフォトダイオード153は第一画素151と同様に一端がTFT52を介して信号線57に接続されているが、フォトダイオード154はTFT52を介さずに信号線57に直接接続されている。つまり第二画素152のフォトダイオード154は上記実施形態の検出画素65と同じ構成である。
【0104】
第一画素151からは二つのフォトダイオード153、154で蓄積された電荷が読み出される。一方、第二画素152からはフォトダイオード153で蓄積された電荷のみが読み出される。第二画素152はフォトダイオード154がAECに用いられてX線画像の生成に寄与しない分、フォトダイオード153、154の開口面積が同じ場合は同じ入射線量では第一画素151よりも蓄積電荷量が略半分になるが、検出画素65の場所からは画素値が得られず、欠陥補正を行うしかない上記実施形態と比べれば、X線画像の画質劣化が抑えられる。フォトダイオード153、154の開口面積等に基づいて、第二画素152の画素値に乗算すると第一画素151の画素値相当になる係数等を予め求めておき、第二画素152の出力に該係数を乗算して補正すれば、欠陥補正を行わずにX線画像を生成することができ、FPDを構成する画素の一部をAEC用としたことによるX線画像の画質への悪影響を略完全に排除することができる。
【0105】
上記実施形態では、立位姿勢の被検体Mに対してホルダ19を上下方向に移動させる立位撮影の場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、臥位撮影台に横たわる被検体Mに対してホルダを水平方向に移動させる臥位撮影にも適用することができる。また、上記実施形態では、ホルダ19を被検体Mの体軸方向に沿って移動させているが、被検体Mの体軸方向とは異なる方向に移動させて長尺撮影を行ってもよい。
【0106】
また、上記実施形態では、電子カセッテ13を装着したホルダ19の移動に伴ってX線源10を直線的に移動させる直線移動方式を例示しているが、電子カセッテを装着したホルダの移動に伴ってX線の照射方向を変更するようにX線源の角度を変更する首振り方式に本発明を適用してもよい。さらに、ホルダ19とX線源10を各撮影位置で停止させずに移動させたままで撮影を行ってもよい。
【0107】
電子カセッテ13の検出画素65に不具合が発生したり、線源制御装置11と電子カセッテ13の間の通信が配線断等で撮影中に途絶えたりすると、照射停止信号が正しく送受信されず、AECが効かなくなる場合も考えられる。特に線源制御装置11側は撮影条件として電流照射時間積の最大値が設定されるため、AECが効かなくなると患者への被曝量が上限値以上になってしまうおそれもある。そこで、電子カセッテ13にテストモードを設け、設置直後や一日の撮影前にコンソール14がもつ全撮影条件にてテスト撮影を行わせる。そして、電子カセッテ13が照射停止信号を線源制御装置11に送信してからも検出画素65でX線の検出を続行し、所定時間内にX線の照射停止が検出された場合は正常にAECが行われていると判断し、検出されなかった場合は何らかの故障が発生したと判断してコンソール14のディスプレイ89に警告メッセージを表示する。
【0108】
また、線源制御装置11と電子カセッテ13の照射信号I/F35、80を有線と無線の両方で接続可能な構成とした場合、電波強度等のモニタリングの結果、無線による通信が不安定な状態であると判断したときに有線に切り替えるよう警告表示をしてもよい。
【0109】
上記実施形態では、AECセンサとしてTFT52を介さず信号線57に短絡して接続された検出画素65を用いているが、各画素50にバイアス電圧Vbを供給するバイアス線53に画素50で発生する電荷に基づく電流が流れることを利用して、ある特定の画素50に繋がるバイアス線53の電流をモニタリングして線量を検出してもよく、全てのTFT52をオフ状態にしたときに画素50から漏れるリーク電荷に基づき線量を検出してもよい。さらに画素50とは別に構成が異なり出力が独立したAEC用の検出画素を撮像面41と同一平面に設けてもよい。
【0110】
上記実施形態では、コンソール14と電子カセッテ13が別体である例で説明したが、コンソール14は独立した装置である必要はなく、電子カセッテ13にコンソール14の機能を搭載してもよい。同様に、線源制御装置11とコンソール14を一体化した装置としてもよい。また、可搬型のX線画像検出装置である電子カセッテに限らず、撮影台に据え付けるタイプのX線画像検出装置に適用してもよい。
【0111】
本発明は、X線に限らず、γ線等の他の放射線を使用する撮影システムにも適用することができる。
【符号の説明】
【0112】
2 X線撮影システム
10 X線源
11 線源制御装置
13 電子カセッテ
14 コンソール
35 照射信号I/F
40、150 FPD
50 画素
65 検出画素
67 AEC部
80 照射信号I/F
85 CPU
89 ディスプレイ
90 入力デバイス
102 カセッテ制御部
103 線量指標値算出部
151、152 第一、第二画素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を被検体に向けて照射する放射線源と、
被検体を透過した放射線を受けて信号電荷を蓄積し、スイッチング素子の駆動に応じて信号電荷を信号線に出力する複数の画素が配列された検出パネルを有する放射線画像検出装置と、
前記検出パネルの前記画素が設けられた撮像面の略全面に採光野を有し、被検体を透過した放射線の線量を検出する線量検出センサとを備え、
前記放射線源と前記放射線画像検出装置を相対的に移動させ、被検体の複数の部位を含む長尺な撮影範囲を前記撮像面が一部オーバーラップするように分けたn個(nは2以上の自然数)の撮影範囲でn回撮影し、これにより得られたn枚の放射線画像を合成して一枚の長尺画像を生成して表示する放射線撮影システムにおいて、
前記長尺な撮影範囲を前記撮像面が一部オーバーラップするように分けたことにより生じる前記放射線画像のオーバーラップ領域の線量指標値を算出する線量指標値算出手段と、
前記線量指標値算出手段で算出されたk−1回目(k=2、3、4、・・・、n)の撮影の線量指標値を元にk回目の撮影の照射停止閾値を設定する閾値設定手段と、
k−1回目の撮影とk回目の撮影の前記オーバーラップ領域に存在する前記線量検出センサで検出された線量の積算値が、前記閾値設定手段で設定した照射停止閾値に達したら、k回目の撮影の前記放射線源による放射線の照射を停止させる自動露出制御手段とを備えることを特徴とする放射線撮影システム。
【請求項2】
前記n個の撮影範囲のうちの一回目に撮影する撮影範囲および前記線量検出センサの採光野と前記自動露出制御手段の照射停止閾値を予め記憶する記憶手段を備え、
前記自動露出制御手段は、一回目の撮影は前記オーバーラップ領域と前記線量指標値を元に設定された照射停止閾値ではなく、前記記憶手段に記憶された採光野と照射停止閾値で自動露出制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の放射線撮影システム。
【請求項3】
一回目の撮影範囲は腰部を含み、採光野には腰部にあたる領域が記憶されることを特徴とする請求項2に記載の放射線撮影システム。
【請求項4】
前記n個の撮影範囲のうちの一回目に撮影する撮影範囲および前記線量検出センサの採光野と前記自動露出制御手段の照射停止閾値を設定するための操作入力手段を備え、
前記自動露出制御手段は、一回目の撮影は前記オーバーラップ領域と前記線量指標値を元に設定された照射停止閾値ではなく、前記操作入力手段により設定された採光野と照射停止閾値で自動露出制御を行うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の放射線撮影システム。
【請求項5】
前記線量指標値算出手段は、前記オーバーラップ領域の画素値を線量指標値として算出することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の放射線撮影システム。
【請求項6】
前記線量検出センサは、信号線にスイッチング素子を介さず直接接続された前記画素であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の放射線撮影システム。
【請求項7】
前記放射線画像検出装置は、前記検出パネルが可搬型の筐体に収納された電子カセッテであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の放射線撮影システム。
【請求項8】
放射線を被検体に向けて照射する放射線源と、
被検体を透過した放射線を受けて信号電荷を蓄積し、スイッチング素子の駆動に応じて信号電荷を信号線に出力する複数の画素が配列された検出パネルを有する放射線画像検出装置と、
前記検出パネルの前記画素が設けられた撮像面の略全面に採光野を有し、被検体を透過した放射線の線量を検出する線量検出センサとを備える放射線撮影システムで、
前記放射線源と前記放射線画像検出装置を相対的に移動させ、被検体の複数の部位を含む長尺な撮影範囲を前記撮像面が一部オーバーラップするように分けたn個(nは2以上の自然数)の撮影範囲でn回撮影し、これにより得られたn枚の放射線画像を合成して一枚の長尺画像を生成して表示する長尺撮影方法であって、
前記長尺な撮影範囲を前記撮像面が一部オーバーラップするように分けたことにより生じる前記放射線画像のオーバーラップ領域の線量指標値を算出する線量指標値算出ステップと、
前記線量指標値算出ステップで算出されたk−1回目(k=2、3、4、・・・、n)の撮影の線量指標値を元にk回目の撮影の照射停止閾値を設定する閾値設定ステップと、
k−1回目の撮影とk回目の撮影の前記オーバーラップ領域に存在する前記線量検出センサで検出された線量の積算値が、前記閾値設定ステップで設定した照射停止閾値に達したら、k回目の撮影の前記放射線源による放射線の照射を停止させる自動露出制御ステップとを備えることを特徴とする放射線撮影システムの長尺撮影方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−66530(P2013−66530A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205746(P2011−205746)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】