放射線撮影装置、放射線撮影システム及び放射線撮影方法
【課題】非破壊読み出しが可能なFPDの劣化及び故障を防ぎ、長寿命化する。
【解決手段】X線画像を非破壊に読み出す事が可能なFPDと、X線の照射途中に非破壊に読み出されたX線画像から、素抜け画素の画素値を検出する素抜け画素検出82と、素抜け画素の画素値等に基づいて、X線の照射終了時における素抜け画素の到達予想電荷量を算出する到達予想電荷量算出部83と、到達予想電荷量を所定閾値と比較し、到達予想電荷量が前記所定閾値を超える場合に、X線の照射終了時刻に前記素抜け画素に蓄積される信号電荷が所定閾値になるようにX線源を制御するための新たな撮影条件を算出する撮影条件算出部84と、最初の撮影条件に基づいたX線の照射途中で、新たな撮影条件に基づいたX線が照射されるように、X線源をフィードバック制御する線源制御装置19と、を備える。
【解決手段】X線画像を非破壊に読み出す事が可能なFPDと、X線の照射途中に非破壊に読み出されたX線画像から、素抜け画素の画素値を検出する素抜け画素検出82と、素抜け画素の画素値等に基づいて、X線の照射終了時における素抜け画素の到達予想電荷量を算出する到達予想電荷量算出部83と、到達予想電荷量を所定閾値と比較し、到達予想電荷量が前記所定閾値を超える場合に、X線の照射終了時刻に前記素抜け画素に蓄積される信号電荷が所定閾値になるようにX線源を制御するための新たな撮影条件を算出する撮影条件算出部84と、最初の撮影条件に基づいたX線の照射途中で、新たな撮影条件に基づいたX線が照射されるように、X線源をフィードバック制御する線源制御装置19と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像検出器を用いて被検体の放射線画像を撮影する放射線撮影装置、放射線撮影システム、及び放射線撮影方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、放射線撮影、例えばX線撮影の分野において、X線フィルムやイメージングプレート(IP)に代わり、半導体素子を用いたフラットパネルディテクタ(以下、FPDという)を検出器として用いたX線画像検出装置(以下、電子カセッテという)が普及している。FPDは、半導体素子を用いて形成されたいわゆる固体撮像素子からなるイメージセンサを利用したものであり、X線の入射量に応じた信号電荷を蓄積する画素がマトリクス状に配列される。FPDは、X線の入射によって画素毎に蓄積される信号電荷を電圧信号に変換することによって被検体の画像情報を表すX線画像を検出する。FPDで検出されたX線画像は、デジタルな画像データとして出力される。
【0003】
FPDとしては、ガラス基板上にTFT(Thin Film Transistor)を含む画素が形成されたTFT型の他に、特許文献1に記載されているように、シリコン基板上にCMOSの製造プロセスで画素を形成したCMOS型のものがある。TFT型とCMOS型の大きな違いの1つは、電圧信号の読み出し方式である。TFT型のFPDは、画素に蓄積された信号電荷を、信号線を介して積分アンプに転送し、積分アンプで積分された信号電荷に応じた電圧信号を読み出す方式であり、読み出しによって画素内の信号電荷が空になる、いわゆる破壊読み出し方式である。これに対して、CMOS型のFPDは、信号電荷を電圧信号に変換するアンプが画素毎に設けられており、画素に信号電荷を保持した状態で信号電荷に応じた電圧信号を読み出す、いわゆる非破壊読み出し方式である。
【0004】
TFT型及びCMOS型のいずれのFPDにおいても、当然ながら、画素に蓄積される信号電荷の蓄積量には上限があるので、画素に入射するX線の線量が多すぎると画素は飽和し、いわゆるオーバーフローが発生する。この場合、X線画像においては、黒く潰れた画素になる。一方、X線の線量が少なすぎる、いわゆるアンダーフローが発生すると、X線画像においては、白く潰れた画素になる。X線撮影においては、オーバーフローやアンダーフローが生じないように、被検体の撮影部位や体格に応じて、X線源が照射する線量を決める管電流や照射時間といった撮影条件が予め設定される。
【0005】
さらに、特許文献1には、X線照射中に非破壊読み出しにより得たX線画像から、被検体のなかでも観察対象となる部位が写し出された領域(いわゆる関心領域)の画素の画素値を取得し、関心領域の画素が飽和しそうな場合にはX線の照射を直ちに終了させ、関心領域の画素値が小さければX線の照射強度をより強くするようにX線源の制御をすることで、オーバーフローやアンダーフローがない観察に適したX線画像を得られやすくする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−344249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、非破壊読み出しが可能なCMOS型FPDは、結晶半導体(例えば単結晶シリコン)を用いて形成される。結晶半導体から形成した素子は、アモルファス半導体(例えばアモルファスシリコン)から形成した素子よりも電荷の移動度やスイッチング素子のON抵抗が桁違いに良い。このため、通常、アモルファス半導体から形成されるTFT型FPDと、結晶半導体から形成されるCMOS型FPDとを比較すると、CMOS型FPDは、読み出しの高速化や画素の高密度化に有利である。
【0008】
一方、CMOS型FPDは結晶半導体から形成されるために、アモルファス半導体から形成されるTFT型FPDよりも、放射線の照射による損傷を受けやすい。このため、CMOS型FPDは、TFT型FPDに比べて早期に劣化するとともに、長寿命化が難しいという問題がある。
【0009】
例えば、単結晶シリコンから形成したCMOS型FPDの場合、照射線量が数千R程度から、画素に関するノイズ(オフセットノイズ等)が顕著になりはじめ、総照射線量がさらに数千R程度累積すると、放射線画像の読み出しに用いられるアンプのゲインが不安定になるなど、劣化や故障が発生するようになる。これは、放射線の入射によって電荷対が発生し、単結晶シリコン基板と絶縁膜(シリコン酸化膜等)の界面に蓄積されることにより、絶縁膜が損傷したり、単結晶シリコン基板内でシリコンやその他の材料の結合が切れ、材料特性が劣化することが原因である。
【0010】
また、従来より、放射線の入射面側から、シンチレータ、FPDの順に配置し、放射線をシンチレータによって光に変換し、シンチレータが発光した光を検出面を前面側に向けたFPDで受けることにより放射線画像を検出する前面入射方式(PSS:Penetration Side Sampling)方式の間接変換型の電子カセッテが知られているが、近年では、さらなる画質向上等のために、シンチレータとFPDの配置順序を逆順にし、FPDの検出面を裏面側に向けた裏面入射方式(ISS:Irradiation Side Sampling)の間接変換型電子カセッテが知られている。
【0011】
PSS方式の場合もISS方式の場合も、前述のようにTFT型FPDに比べれば放射線の照射による劣化が早いことは変わらないが、PSS方式の場合、FPDの前面にシンチレータが配置されているため、放射線はシンチレータで減衰され、CMOS型FPDを用いても、放射線の照射によるFPDの劣化は多少抑えられる。一方、ISS方式の場合、FPDの前面には入射放射線を減衰させる部材はなく、入射放射線は全てFPDを透過してシンチレータに到達するので、ISS方式の電子カセッテでCMOS型FPDを用いる場合、放射線の照射によるFPDの劣化は特に深刻な問題である。
【0012】
さらに、シンチレータを介さずにX線変換層用いて入射放射線を直接信号電荷に変換する直接変換型FPDも知られている。直接変換型FPDで代表的なX線変換層であるアモルファスセレン(a−Se)は、代表的なシンチレータ材料よりも原子番号が小さく、特に高エネルギー側のX線の吸収が少ないため、入射放射線の減衰が小さいままFPDに到達するので、直接変換型FPDで非破壊読み出し可能にするために、CMOS型で形成すると、前述と同様、放射線の照射による劣化が特に深刻な問題となる。
【0013】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、非破壊読み出しが可能なFPDの劣化及び故障を防ぎ、これを用いる放射線撮影装置等の長寿命化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の放射線撮影装置は、撮影条件にしたがって放射線源から照射され被検体を透過した放射線を受けて、被検体の放射線画像を検出する放射線画像検出手段であり、単結晶半導体を用いて形成され、前記放射線の入射量に応じた信号電荷を蓄積する複数の画素を有し、前記画素から前記信号電荷の蓄積量に基づいた前記放射線画像を表すデータを非破壊に読み出す事が可能な放射線画像検出手段と、前記放射線の照射途中に非破壊に読み出された前記放射線画像から、前記被検体を経ずに直接前記放射線が到達する素抜け画素の画素値を検出する素抜け画素検出手段と、前記素抜け画素の画素値、前記放射線の照射開始時刻から前記放射線の照射途中に非破壊に読み出された前記放射線画像の取得時までの経過時間、及び、前記放射線の照射終了時刻に基づいて、前記放射線の照射終了時に前記素抜け画素に蓄積される前記信号電荷量を、到達予想電荷量として算出する到達予想電荷量算出手段と、前記到達予想電荷量を所定閾値と比較し、前記到達予想電荷量が前記所定閾値を超える場合に、前記放射線の照射終了時刻に前記素抜け画素に蓄積される信号電荷が前記所定閾値になるように前記放射線源を制御するための新たな前記撮影条件を算出する撮影条件算出手段と、最初の前記撮影条件に基づいた前記放射線の照射途中で、前記撮影条件算出手段によって算出された新たな前記撮影条件に基づいた前記放射線が照射されるように、前記放射線源をフィードバック制御する放射線源制御手段と、を備えることを特徴とする放射線撮影装置。
【0015】
前記撮影条件算出手段が算出する新たな撮影条件は、前記放射線のエネルギーを低下させる撮影条件であることが好ましい。
【0016】
前記撮影条件算出手段が算出する新たな撮影条件は、前記放射線の線量を低下させる撮影条件であることが好ましい。
【0017】
前記撮影条件算出手段が算出する新たな撮影条件は、前記放射線の照射時間を短縮する撮影条件であることが好ましい。
【0018】
前記撮影条件算出手段が算出する新たな撮影条件は、前記放射線の照射野を制限する撮影条件であることが好ましい。
【0019】
前記放射線検出手段から前記放射線画像を読み出す際に前記信号電荷に応じた信号を増幅するとともに、ゲインが可変な増幅手段と、前記放射線の照射終了後に、前記増幅手段のゲインを変えながら読み出された複数の前記放射線画像を合成して、前記被検体を観察するための合成放射線画像を生成する画像合成手段と、を備えることが好ましい。
【0020】
前記画像合成手段は、前記増幅手段のゲインを変えながら読み出された複数の前記放射線画像を、前記放射線画像の読み出し時のノイズが低減されるように合成することが好ましい。
【0021】
前記画像合成手段は、前記増幅手段のゲインを変えながら読み出された複数の前記放射線画像を、ダイナミックレンジが拡大されるように合成することが好ましい。
【0022】
前記画像合成手段は、前記増幅手段のゲインを変えながら読み出された複数の前記放射線画像を平均して、前記合成放射線画像を生成することが好ましい。
【0023】
前記放射線検出手段は、前記放射線を光に変換するシンチレータと、前記シンチレータが発する光を光電変換することにより前記放射線画像を検出するイメージセンサとを有し、前記放射線の入射側から、前記イメージセンサ、前記シンチレータの順に配置されていることが好ましい。
【0024】
本発明の放射線撮影システムは、放射線源と、撮影条件にしたがって放射線源から照射され被検体を透過した放射線を受けて、被検体の放射線画像を撮影する放射線撮影装置とからなる放射線撮影システムにおいて、前記放射線撮影装置は、単結晶半導体を用いて形成され、前記放射線の入射量に応じた信号電荷を蓄積する複数の画素を有し、前記画素から前記信号電荷の蓄積量に基づいた前記放射線画像を表すデータを非破壊に読み出す事が可能な放射線画像検出手段と、前記放射線の照射途中に非破壊に読み出された前記放射線画像から、前記被検体を経ずに直接前記放射線が到達する素抜け画素の画素値を検出する素抜け画素検出手段と、前記素抜け画素の画素値、前記放射線の照射開始時刻から前記放射線の照射途中に非破壊に読み出された前記放射線画像の取得時までの経過時間、及び、前記放射線の照射終了時刻に基づいて、前記放射線の照射終了時における前記素抜け画素の到達予想電荷量を算出する到達予想電荷量算出手段と、前記到達予想電荷量を所定閾値と比較し、前記到達予想電荷量が前記所定閾値を超える場合に、前記放射線の照射終了時刻に前記素抜け画素に蓄積される信号電荷が前記所定閾値になるように前記放射線源を制御する新たな前記撮影条件を算出する撮影条件算出手段と、前記放射線の照射途中で、前記撮影条件算出手段によって算出された新たな前記撮影条件に基づいた前記放射線が照射されるように、前記放射線源をフィードバック制御する放射線源制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0025】
本発明の放射線撮影方法は、単結晶半導体を用いて形成され、撮影条件にしたがって被検体に照射した放射線を受けて放射線画像を検出する複数の画素を有するとともに、前記画素から前記放射線画像を表すデータを非破壊に読み出す事が可能な放射線画像検出手段によって、前記画素に前記放射線の入射量に応じた信号電荷を蓄積する信号電荷蓄積ステップと、前記信号電荷蓄積ステップの途中で、前記放射線画像を非破壊に読み出す放射線画像読み出しステップと、前記放射線画像読み出しステップで得た前記放射線画像から、前記被検体を経ずに直接前記放射線が到達する素抜け画素の画素値を検出する素抜け画素検出ステップと、前記素抜け画素の画素値、前記放射線の照射開始時刻から前記放射線の照射途中に非破壊に読み出された前記放射線画像の取得時までの経過時間、及び、前記放射線の照射終了時刻に基づいて、前記放射線の照射終了時における前記素抜け画素の到達予想電荷量を算出する到達予想電荷量算出ステップと、前記到達予想電荷量を所定閾値と比較し、前記到達予想電荷量が前記所定閾値を超える場合に、前記放射線の照射終了時刻に前記素抜け画素に蓄積される信号電荷が前記所定閾値になるように前記放射線源を制御する新たな前記撮影条件を算出する撮影条件算出手ステップと、前記撮影条件算出ステップで算出された新たな前記撮影条件に基づいた前記放射線が照射されるように、前記信号電荷蓄積ステップの途中で前記放射線をフィードバック制御するフィードバック制御ステップと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、非破壊読み出しが可能なFPDの劣化及び故障を防ぎ、これを用いる放射線撮影装置等を長寿命化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】X線撮影システムの構成を概略的に示す説明図である。
【図2】X線源と電子カセッテの同期手順を示す説明図である。
【図3】電子カセッテの構成を示す分解斜視図である。
【図4】電子カセッテの構成を示す断面図である。
【図5】FPDの構成を示す説明図である。
【図6】コンソールの構成を示すブロック図である。
【図7】画素値の頻度分布を模式的に示すグラフである。
【図8】X線撮影システムの作用を示すフローチャートである。
【図9】線源のフィードバック制御を行わない比較例のX線照射及び素抜け画素値の変化態様を示す説明図である。
【図10】本発明のX線照射及び素抜け画素値の変化態様を示す説明図である。
【図11】X線の照射を停止する例を示す説明図である。
【図12】X線の照射終了後に、ゲインを徐々に下げながら複数回のX線画像の読み出しを行う例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1に示すように、X線撮影システム10は、撮影台11、電子カセッテ(放射線画像検出装置)12、X線源17、線源制御装置19、コンソール22、モニタ23等を備える。X線源17、線源制御装置19がX線発生装置を構成し、電子カセッテ12、コンソール22、モニタ23がX線撮影装置を構成する。
【0029】
撮影台11には被検体Hが載置され、被検体Hを透過したX線が入射するように、撮影台11の内部、あるいは撮影台11と被検体Hの間に電子カセッテ12がセットされる。
【0030】
電子カセッテ12は、撮影台11に対して着脱自在に設けられ、撮影台11を用いない場合にも使用可能な可搬型であり、ほぼ直方体状の筐体内に、FPD13、FPD13の動作を制御する各種回路、メモリ14、通信部16等を備える。FPD13は、マトリクス状に配列された画素を有し、各画素において入射X線量に応じた信号電荷を蓄積し、蓄積した信号電荷を電圧信号に変換して出力することでX線画像を検出する。また、FPD13は、非破壊読み出しが可能なCMOS型である。メモリ14には、FPD13が出力するX線画像が一時的に記憶される。通信部16は、コンソール22との間で制御信号の通信を行うとともに、メモリ14に記憶されたX線画像をコンソール22に送信する。また、電子カセッテ12は、FPD13等の各部に給電をするバッテリ(図示しない)を内蔵したワイヤレスタイプであり、通信部16は、例えば、赤外線等の光や電波等によってコンソール22と無線通信を行う。
【0031】
X線源17は、X線を発生するX線管とX線の照射野を限定するコリメータ等を備えており、X線焦点17aから被検体Hに向けてX線を照射する。X線源17は、撮影台11に対して移動自在に設けられており、X線の照射位置や角度を自在に調節可能である。また、X線源17には線源制御装置19が接続されている。線源制御装置19には、X線源17に対して電力を供給する高電圧発生部が設けられており、線源制御装置19に入力される撮影条件に応じた管電圧及び管電流をX線源17に与えることによってX線源17からX線を照射させる。
【0032】
X線の線質(エネルギー)は管電圧によって、線量は管電流と照射時間によって決まる。線源制御装置19には操作パネル19aが設けられており、この操作パネルを通じてX線管の管電圧,管電流,照射時間といった撮影条件が入力される。撮影条件は、撮影部位、被検体の体格、年齢等に応じて決定される。また、線源制御装置19には、照射開始信号を入力する照射スイッチ21が接続されている。線源制御装置19は、X線撮影装置のコンソール22と通信可能に接続されており、コンソール22と通信することによって電子カセッテ12とX線源17の同期をとる。
【0033】
図2に示すように、線源制御装置19は、照射スイッチ21が押圧されてオンされると、同期開始信号を検知して、X線管のフィラメント加熱やターゲットの回転などの動作を開始させることにより、X線源17を照射可能状態(以下、レディ状態という)に移行させる。X線源17がレディ状態になると、線源制御装置19は、蓄積開始信号をコンソール22に送信する。コンソール22は蓄積開始信号を受信すると、電子カセッテ12を待機動作から信号電荷を蓄積する蓄積動作に移行させる。電子カセッテ12が蓄積動作に移行すると照射開始信号が線源制御装置19に送信される。線源制御装置19は照射開始信号を受けると、撮影条件で設定された管電圧及び管電流に応じた電力をX線源17に対して供給することにより、X線源17から撮影条件に従った線質及び線量のX線が被検体Hに向けて照射が開始される。線源制御装置19は、X線の照射開始後、タイマを作動させて照射時間の計時を開始する。
【0034】
線源制御装置19は、タイマを監視して、撮影条件で設定された照射時間が経過すると、X線源17に対して終了同期信号を送り、照射を終了させる。また、線源制御装置19は、終了同期信号をコンソール22に送信する。コンソール22は終了同期信号を受信すると、電子カセッテ12を蓄積動作から読み出し動作に移行させる。
【0035】
なお、後述するように、線源制御装置19は、X線の照射中にコンソール22から新たな撮影条件の入力を受け、照射中のX線の線質や線量、エネルギー、照射時間等を変更することがある。
【0036】
図1において、コンソール22は通信部24を介して制御信号を送信することで電子カセッテ12の動作を制御する制御装置であり、キーボードやマウス等の図示しない入力デバイスと照射スイッチ21が接続されている。コンソール22には、例えば、入力デバイスを用いて予め線源制御装置19と同様の撮影条件が入力される。
【0037】
コンソール22は、図示しないHIS(病院情報システム)やRIS(放射線情報システム)といった医用情報システムと通信可能に接続されており、医用情報システムからX線撮影の撮影オーダを受信することも可能である。医師や診療放射線技師などのオペレータは、受信した撮影オーダで被検体情報や撮影部位等を確認して、それに適した撮影条件を決定して、X線制御部19及びコンソール22のそれぞれに入力することで、撮影条件の設定を行う。コンソール22に入力された撮影条件は、電子カセッテ12に設定される。設定された撮影条件は、後述するようにアンプのゲインの初期値の設定に利用される。
【0038】
電子カセッテ12には、X線源17から照射され被検体Hを透過したX線が入射する。電子カセッテ12は、蓄積動作においてX線の入射量に応じた信号電荷を蓄積することにより、被検体Hを表すX線画像を検出する。読み出し動作において蓄積された信号電荷に応じたX線画像が読み出される。読み出されたX線画像は、通信部24を介してコンソール22に送信される。
【0039】
コンソール22には画像処理部26が設けられている。画像処理部26は、受信したX線画像に対して各種画像処理を施してモニタ23に出力する。画像処理部26が行う画像処理は、例えば、欠陥補正処理やオフセット処理である。欠陥補正処理は、X線の照射量に応じた画素値が得られない欠陥画素の画素値を補間等により補正する処理である。オフセット処理は、被検体Hがない状態で予め撮影したX線画像(オフセット画像)を、被検体Hを撮影したX線画像から減算することにより、暗電流によるノイズ等を除去する画像処理である。なお、画像処理部26は、後述するようにX線画像の合成処理等、上記補正処理以外の画像処理を行うこともある。
【0040】
モニタ23は、X線画像を表示する他、コンソール22を操作するための操作画面の表示を行う。
【0041】
コンソール22は、画像処理終了後、処理済みのX線画像に対して、入力された撮影条件を付帯情報として付加して、DICOM形式などの医用画像ファイルの標準的なファイル形式に変換される。変換された画像ファイルは、図示しない画像サーバなどのストレージデバイスに送信される。
【0042】
図3及び図4に示すように、電子カセッテ12の筐体31は、X線が入射する入射面側からFPD13を覆う前面カバー31aと、背面からFPD13を覆う背面カバー31bとかなる。前面カバー31a及び背面カバー31bはいずれもX線透過率の低い金属材料(例えばステンレス等)から形成される。但し、前面カバー31aには、FPD13にX線が入射するように、X線透過率が高いカーボン等からなるX線透過窓32が設けられている。筐体31内には、前面カバー31a側から順に、FPD13、支持体33、FPD13の動作制御等をする各種回路基板34〜37が配置される。
【0043】
FPD13は、シンチレータ41とイメージセンサ42からなる間接変換型である。シンチレータ41は、X線の入射量に応じた光量の可視光を発する蛍光体であり、例えばCsI:Tl(タリウム賦活ヨウ化セシウム)やGOS(ガドリウムオキシサルファイド)等からなる。イメージセンサ42は、シンチレータ41が発光した可視光を光電変換する装置であり、例えば単結晶シリコン基板から形成された複数のCMOSセンサチップを貼り合わせて、検出面43aを大面積化したユニットである。光電変換を行う画素が配列された検出面43aは、シンチレータ41と対向するように配置される。また、FPD13は、前面カバー31aと支持体33の間に、イメージセンサ42が前面カバー31a側、シンチレータ41が支持体33側(背面カバー31b側)になるように配置される。すなわち、電子カセッテ12は裏面照射方式(ISS)であり、最も発光量が多くなるシンチレータ41のX線入射側表面と検出面43aが対向した状態となるようにFPD13を配置している。なお、シンチレータ41は支持体33とイメージセンサ42に、イメージセンサ42はシンチレータ41と前面カバー31aにそれぞれ接着されている。
【0044】
支持体33はFPD13の背面側に設けられ、筐体31内のスペースを二分する。支持体33の背面側には、各種回路基板34〜37が取り付けられる。支持体33は、例えばステンレス製であり、筐体31に固定される。また、支持体33の上端と下端には、それぞれ中央部分に切り欠き33a,33bが形成されており、FPD13と各種回路基板34〜37を繋ぐフレキシブルケーブル44が挿通される。フレキシブルケーブル44上には、TCP(テープキャリアパッケージ)型のICチップ46,47が実装されている。
【0045】
回路基板34は、FPD13を駆動する駆動回路51が形成された駆動用回路基板である。回路基板35は、A/D変換回路52を含む出力回路(図5参照)が形成されたA/D変換回路基板である。A/D変換回路52は、後述するICチップ47が出力するアナログ信号をデジタル信号に変換する。回路基板36は、メモリ14、制御部61が形成された基板である。制御部61は、FPD13の各部を制御するとともに、コンソール22との通信を制御する。回路基板37は電源回路が形成された電源回路基板である。電源回路は、各部に電力を供給する回路であり、交流を直流に変換するAC/DCコンバータや、直流電圧を各回路の動作に必要な電圧に変換するDC/DCコンバータ等の回路素子を有する。
【0046】
ICチップ46は、回路基板41に形成された回路素子とともに駆動回路51を構成するアンプやシフトレジスタであり、垂直操作回路63(図5参照)を含む。ICチップ47は、後述するCDS回路68(図5参照)等からなる読み出し回路を構成するASICである。
【0047】
図5に示すように、FPD13の画素PXは、フォトダイオードPDとトランジスタM1〜M3等の回路素子からなり、各トランジスタM1〜M3の駆動状態に応じて、蓄積動作、読み出し動作、リセット動作を行う。蓄積動作は光電変換により発生した信号電荷を蓄積する動作であり、読み出し動作は蓄積された信号電荷量に応じた電圧信号の出力する動作である。リセット動作は、蓄積した信号電荷を破棄する動作である。
【0048】
フォトダイオードPDは、光電変換によりシンチレータ41からの入射光量に応じた信号電荷を発生する素子であり、増幅用トランジスタM1のゲート電極と、リセット用トランジスタM3のソース電極に接続されている。信号電荷を蓄積する場合と画素PXから電圧信号を読み出す場合には、リセット用トランジスタM3がオフにされ、増幅用トランジスタM1のゲート電極には、フォトダイオードPDに蓄積された信号電荷量に応じた電圧が印加される。
【0049】
増幅用トランジスタM1のソース電極には電源電圧が印加され、ドレイン電極には画素選択用トランジスタM2が接続されており、ゲート電極に印加される信号電荷量に応じた電圧を所定の増幅率で増幅して画素選択用トランジスタM2のソース電極に印加する。画素選択トランジスタM2のゲート電極は、行選択線GLに接続され、ドレイン電極は信号線SLに接続されており、行選択線GLからゲート信号が入力されると、ソース電極の電圧を信号線SLに出力する。これにより、画素PXの電圧信号が信号線SLを通じて読み出される。なお、FPD13は非破壊読み出しが可能なCMOS型であるため、画素PXから電圧信号の読み出しを行なっても、リセットを行うまで、各画素PXは信号電荷を保持している。
【0050】
フォトダイオードPDに蓄積した信号電荷を破棄する場合は、リセット用トランジスタM3がオンにされる。リセット用トランジスタM3のゲート電極は、リセット線RSTに接続されており、リセット線RSTを通じてリセット信号が入力される。リセット信号が入力されたことによりリセット用トランジスタM3がオンになると、この行の画素PXは、フォトダイオードPDに蓄積された信号電荷をリセット用トランジスタM3のドレイン電極側に破棄する。
【0051】
また、FPD13は、制御部61、タイミングジェネレータ(TG)62、垂直走査回路63、水平走査回路64等を備える。
【0052】
制御部61は、FPD13の各部を統括的に制御する。TG62は、制御部61からの指示に基づいてタイミング信号を発生する。また、制御部61は、読み出し動作時に、後述する出力回路71のアンプ72のゲインを、コンソール22から指示された値に設定する。垂直走査回路63や水平走査回路64は、TG62から入力されるクロック信号に基づいて動作する。
【0053】
垂直走査回路63は、画素PXの駆動回路であり、駆動する画素PXの行を選択し、選択した行の行選択線GLやリセット線RSTにゲート信号やリセット信号を入力することにより、画素PXに蓄積動作、読み出し動作、リセット動作を行わせる。水平走査回路64は、電圧信号の読み出しを行う画素PXの列を選択する回路であり、各信号線SL上に設けられた列選択トランジスタ67のうちひとつをオンにすることにより読み出しを行う列を選択する。
【0054】
行選択線GLは、垂直走査回路63から、画素PXの動作を制御するゲート信号を入力するための配線であり、画素PXの行毎に設けられている。行選択線GLを通じて入力されるゲート信号に基づいて、画素PXは蓄積動作や読み出し動作を行う。リセット線RSTは、画素PXにリセット信号を入力するための配線であり、画素PXの行毎に設けられている。リセット信号が入力されたリセット線RST上の画素PXは信号電荷が破棄され、リセットされる。
【0055】
信号線SLは、各画素PXから信号電荷量に応じた電圧信号(撮像信号)を読み出すための配線であり、画素PXの列毎に設けられている。また、信号線SLの末端には、相関二重サンプリング(CDS)回路68と列選択トランジスタ67が接続されている。CDS回路68は、TG62から入力されるクロック信号に基づいて動作し、垂直走査回路63によって選択された行選択線GL上の画素PXから、読み出しにともなうノイズが除去されるように電圧信号をサンプリングし、保持する。CDS回路68が保持する電圧信号は、水平走査回路64によって列選択トランジスタ67がオンにされることによって、出力バスライン69を介して出力回路71に入力される。
【0056】
出力回路71は、アンプ72とA/D変換回路52を備える。アンプ72は、CDS回路68から入力される電圧信号を増幅し、A/D変換回路52に入力する。A/D変換回路52は、アンプ72により増幅された電圧信号をデジタルデータに変換する。A/D変換回路52から出力されるデジタルデータは、X線画像としてメモリ14に一時的に記憶され、通信部16を介してコンソール22に送信される。アンプ72は、ゲインを自在に調節可能な可変ゲインアンプであり、読み出し動作における、1回目のX線画像の読み出しにおいては、撮影条件に基づいて設定される所定値(初期値γ1)に設定され、X線画像を再度読み出す場合には、制御部61によって設定された新たな値に設定される。また、出力回路71から出力されるデータは、上述のようにメモリ14に記憶され、通信部16を介してコンソール22に送信される。
【0057】
図6に示すように、コンソール22は、前述の通信部24と画像処理部26とともに、フレームメモリ81を備える。フレームメモリ81は、複数のX線画像を一時的に記憶することが可能な記憶装置であり、後述するようにアンプ72のゲインを変更して読み出された複数のX線画像が順次記憶される。
【0058】
また、画像処理部26は、素抜け画素検出部82、到達予想電荷量算出部83、撮影条件算出部84、画像合成部85、オフセット処理部86、欠陥補正処理部87等を備える。
【0059】
素抜け画素検出部82は、フレームメモリ81から、X線の照射中に非破壊読み出しされたX線画像(以下、素抜け検出用画像という)を取得し、被検体Hを介さずに直接X線が入射した画素を検出する。具体的には、図7に示すように、素抜け画素検出部82は、全画素の画素値の分布を求める。画素値の分布態様は、アンプ72のゲインによらず、撮影部位(頭部、胸部、腹部など)に応じて概ね一定の分布形状を有する。図7は、一例として成人の胸部X線画像の場合の画素値の頻度分布を示しており、2つのピークを有する分布Aは胸部組織等(肺や心臓、肋骨等)の領域を表しており、分布Bは主に被検体Hを経ないで直接X線が検出面43aに到達した画素(いわゆる素抜け画素)を表している。
【0060】
素抜け画素検出部82は、画素値の頻度分布形状から分布Bを検出する。そして、分布Bのピーク位値の画素値Dを求め、これを素抜け画素の画素値の代表値Dとして、到達予想電荷量算出部83に入力する。
【0061】
なお、画素値の分布形状自体は撮影部位に応じてほぼ不変であるが、アンプ72のゲインが小さい場合、図7に示すような画素値の頻度分布は全体的に左側にシフトし、逆にアンプ72のゲインが大きい場合には全体的に右側にシフトするため、読み出し時のゲインが異なるX線画像同士を比較すれば、分布Bのピーク値である代表値Dの具体的な値は異なる。
【0062】
また、後述するように素抜け画素の線量を監視するという観点から言えば、画素値の頻度分布によらず、素抜け検出用画像全体最大の画素値を代表値Dとすることが考えられるが、単に画素値が最大の画素を判定用画素に選出すると、入射X線量によらない値を出力する欠陥画素の画素値となってしまうことがある。このため、素抜け画素検出部82は、欠陥のない素抜け画素の画素値を確実に得るために、分布Bのピークに対応する画素値を求め、代表値Dとしている。
【0063】
到達予想電荷量算出部83は、素抜け画素検出部82から入力される代表値Dに基づいて、X線の照射終了時に素抜け画素に蓄積される信号電荷量の予想量(以下、到達予想電荷量という)Qを算出する。例えば、X線の照射開始時刻をTs、X線の照射終了時刻をTe、素抜け検出用画像を読み出した時刻をt1とすると、Q=D(t1−Ts)/(Te−Ts)により到達予想電荷量Qを見積もる。X線の照射開始時刻Tsは開始同期信号の入力時刻であり、X線の照射終了時刻Teは、撮影条件から定まる。到達予想電荷量算出部83は、算出した到達予想電荷量Qを撮影条件算出部84に入力する。
【0064】
なお、ここでは、X線照射期間中、X線の線量が一定であり、到達予想電荷量Qが時間に比例して増加することを前提としたが、X線の照射開始時前後や照射終了時前後は、単位時間当たりのX線の照射量が変動する。したがって、これらを考慮してより正確に到達予想電荷量Qを算出しても良い。いずれにしても、到達予想電荷量Qは、代表値D、素抜け検出用画像の読み出し時刻t1、X線の照射開始時刻Ts及び照射終了時刻Teから算出することができる。
【0065】
撮影条件算出部84は、到達予想電荷量算出部83から素抜け画素の到達予想電荷量Qが入力されると、まず、到達予想電荷量Qを所定閾値Thと比較する。所定閾値Thは、1回のX線撮影でイメージセンサ42に入射して良いX線量を定める値であり、実験により予め定められる。1回のX線撮影で、素抜け画素(及び全ての画素)が受けるX線量が閾値Th以下であれば、X線の照射によるイメージセンサ42の損傷が抑えられるので、一定回数の撮影が保証される。
【0066】
到達予想電荷量Qが所定閾値Th以下の場合(Q≦Th)、撮影条件算出部84は現在の撮影条件でのX線照射を継続して良い旨を示す制御信号を、線源制御装置19に入力する。この場合、線源制御装置19は、撮影開始前に操作パネル19aから入力された撮影条件にしたがったX線の照射を継続する。
【0067】
一方、到達予想電荷量Qが所定閾値Thを超える場合(Q>Th)、撮影条件算出部84は、閾値Th、到達予想電荷量Q、素抜け検出用画像の読み出し時刻t1、X線の照射終了時刻Teに基づいて、X線の照射終了時Teに素抜け画素に蓄積される信号電荷量が閾値Th(あるいは閾値Th以下の所定値)になるように新たな撮影条件を算出し、X線源制御装置19に入力する。撮影条件算出部84が算出する新たな撮影条件は、例えばX線管の管電圧である。撮影条件算出部84から入力された新たな撮影条件が入力されると、X線制御部19は直ちに新たな撮影条件にしたがったX線をX線源17から照射させる。
【0068】
なお、ここでは、撮影条件算出部84は、到達予想電荷量Qが所定閾値Thを超える場合に、新たな撮影条件として管電圧を算出する例を挙げたが、撮影条件算出部84が算出する新たな撮影条件は、X線管の管電流でも良い。また、X線管の管電流や管電圧をともに変更する撮影条件を算出しても良い。管電圧を下げることで、照射するX線のエネルギーが低減される。また、管電流を下げると、イメージセンサ42に到達するX線量が低減される。照射するX線の線量やエネルギーが低減されることにより、X線の照射終了時Teに素抜け画素に蓄積される信号電荷量が閾値Thに抑えられる。
【0069】
X線管の管電流を変更して照射するX線の線量を低減する場合と、X線管の管電圧を下げて照射するX線のエネルギーを低減する場合を比較すると、どちらもX線の照射終了時に素抜け画素に蓄積される信号電荷量が閾値Thに低減され、イメージセンサ42の損傷が低減されることは自体は変わらない。但し、同じ線量でもエネルギーが低いほど、イメージセンサ42の損傷は少ない。このため、撮影条件算出部84は、新たな撮影条件を算出するときに、少なくともX線のエネルギーを低減することが特に好ましい。このため、本例では、管電圧を下げることで、照射するX線のエネルギーを低減する。
【0070】
上述のように、素抜け画素検出部82、到達予想電荷量算出部83、撮影条件算出部84は、X線撮影時に機能する。一方、画像合成部85、オフセット処理部86、欠陥補正処理部87は、X線画像の読み出し後に機能する。
【0071】
また、X線撮影装置10は、少なくとも上述のように、X線の照射途中に非破壊に読み出した素抜け検出用画像に基づいて、X線の線量等を制御した場合、X線照射終了後、X線撮影装置10は、アンプ72のゲインを変更しながら、複数回のX線画像の読み出しを行う。このX線照射終了後の読み出し回数は、撮影部位等により予め定められる。
【0072】
画像合成部85は、これらの複数のX線画像を合成して合成X線画像を生成し、オフセット処理部86は、合成X線画像に対してオフセット処理を施す。また、欠陥補正処理部84は、オフセット処理後の合成X線画像に欠陥補正処理を施す。欠陥補正処理後の合成X線画像は、モニタ23に表示されたり、画像サーバ(図示しない)に送信される。
【0073】
画像合成部85は、X線の照射終了後に得た複数のX線画像をフレームメモリ81から取得し、これらを合成して合成X線画像を生成する。最初に入力した撮影条件に基づくX線照射の途中で、素抜け画素の画素値が閾値Th以下になるように算出した新たな撮影条件に基づくX線の照射に切り替えると、画素PXに蓄積される信号電荷量は当初の撮影条件に基づくX線の照射を継続した場合よりも減少する。このため、X線の照射途中で撮影条件を変更してX線画像を検出した場合、FPD13からX線画像を読み出すと、読出し回路71等のノイズ成分が相対的に大きくなり、読み出したX線画像そのままでは被検体Hの観察に適さないことがある。このため、X線撮影装置10では、アンプ72のゲインを変更しながら複数回、X線画像を読み出し、これらを画像合成部85で合成することにより、読み出し回路71等によるノイズを低減し、また、ダイナミックレンジを拡大し、被検体Hの観察により適した合成X線画像を生成する。
【0074】
画像合成部85は、例えば、複数のX線画像を平均することにより、合成X線画像を生成する。ここでは、画像合成部85は、単純平均により合成X線画像を生成することとするが、各X線画像の読み出し時のゲインの値に応じて重み付けをして平均することによって合成X線画像を生成しても良い。また、高低二種類のゲインでX線画像を読み出した高感度画像と低感度画像を合成する場合、本出願人の特許4054263号に倣い、高感度画像Xh、低感度画像Xl、高感度画像Xhの重みwh、低感度画像の重みwl、合成開始レベルを示す閾値t、高感度画像Xhと低感度画像Xlの感度比Sを用いて、合成X線画像Xcを、Xc={wh・Xh+wl・(Xl−t/S+t)}/(wh+wl)にしたがって算出しても良い。この場合、wh+wl=1としても良い。
【0075】
以下、上述のように構成されるX線撮影システム10の作用を図8に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0076】
図8に示すように、X線撮影システム10によってX線撮影を行う場合、まず、線源制御部19とコンソール22に撮影条件を入力する(ステップS11)。線源制御装置19には、X線管の管電圧,管電流,照射時間が撮影条件として入力される。線源制御装置19に入力される撮影条件は、コンソール22が受信した撮影オーダで確認される、撮影部位、被検体Hの体格や年齢等の被検体情報に基づいて決定される。
【0077】
コンソール22に入力された撮影条件は、通信部24を介して電子カセッテ12に送信される。電子カセッテ12は、コンソール22から撮影条件が入力されると、待機動作を開始する(ステップS12)。待機動作は、所定のタイミングでリセット動作を繰り返し行うことにより、X線の照射開始を待ち受ける動作である。
【0078】
照射スイッチ21が押圧されると、線源制御装置19を介してX線源17に同期開始信号が送信され、X線源17はレディ状態に移行される。X線源17がレディ状態になると、線源制御装置19は蓄積開始信号をコンソール22に送信し、電子カセッテ12は蓄積動作を開始する(ステップS13)。
【0079】
また、電子カセッテ12が蓄積動作に移行すると、線源制御部19は、コンソール22から照射開始信号を受け、X線源17から撮影条件に応じた管電圧及び管電流でX線の照射を開始させる(ステップS14)。
【0080】
電子カセッテ12は、蓄積動作を開始すると、X線の照射中に、所定のタイミングで非破壊読み出しをする(ステップS15)。ここで得られるX線画像は、素抜け検出用画像としてコンソール22に送信され、フレームメモリ81に蓄積される。
【0081】
素抜け検出用画像は、素抜け画素検出部82によってフレームメモリ81から読み出され、素抜け検出用画像に基づいて素抜け画素が検出される(ステップS16)。より具体的には、素抜け検出用画像をヒストグラム解析することにより、素抜け画素が属する分布B(図7参照)のピーク位置の画素値Dが、素抜け画素の画素値の代表値Dとして検出される。
【0082】
そして、到達予想電荷量算出部83により、代表値Dに基づいて、素抜け画素の到達予想電荷量Qが算出される(ステップS17)。到達予想電荷量Qは、前述の通り、最初に入力した撮影条件にしたがってX線を照射し続けた場合、X線の照射終了時に素抜け画素に蓄積される信号電荷量である。
【0083】
その後、撮影条件算出部84において、到達予想電荷量Qは閾値Thと比較される(ステップS18)。到達予想電荷量Qが閾値Thを超える場合、撮影条件算出部84はX線の照射終了時に、素抜け画素に蓄積される信号電荷量が閾値Th(あるいは閾値Th以下の所定値)になるように、新たな撮影条件を算出する(ステップS19)。ここで算出する撮影条件は、最初の撮影条件に対して管電圧を低減させたものである。
【0084】
こうして撮影条件算出部84が算出した新たな撮影条件が算出されると、この新たな撮影条件に基づいて照射するX線がフィードバック制御される(ステップS20)。具体的には、線源制御装置19は、撮影条件算出部84から新たな撮影条件の入力を受けると、直ちにその撮影条件にしたがったX線をX線源17から照射させる。これにより、最初に入力した撮影条件に基づくX線と比較して、エネルギーが低減されたX線が、X線の照射途中から照射されるようになる。
【0085】
一方、到達予想電荷量Qが閾値Th以下の場合(S18:No)、新たな撮影条件の算出(S19)及びX線のエネルギーを低下させるフィードバック制御(S20)は行われず、X線制御装置19は、撮影条件算出部84からの制御信号の入力に基づき、最初に入力した撮影条件にしたがったX線の照射を継続する。
【0086】
線源制御装置19は、タイマを監視して撮影条件で設定された照射時間が経過すると、X線源17に対して終了同期信号を送り、X線の照射を終了させる(ステップS21)。同時に、線源制御装置19は終了同期信号をコンソール22に送信し、コンソール22は電子カセッテ12を蓄積動作から読み出し動作に移行させる(ステップS22)。このX線照射終了後に行う読み出し動作では、アンプ72のゲインを変えながら所定回数、X線画像が読み出される。例えば、読み出し動作における最初(1回目)の読み出しでは、出力回路71のアンプ72のゲインは、撮影条件に応じた所定値(初期値)γ1に設定されており、その状態で全ての画素が非破壊読み出しされる。また、次(2回目)の読み出しでは、アンプ72のゲインは、初期値γ1とは異なる値γ2(γ1≠γ2)に設定される。その後も同様であり、所定回数の読み出しで各々ゲインの値は異なる。
【0087】
読み出された複数のX線画像は、コンソール22に送信され、フレームメモリ81に記憶される。そして、画像合成部85によって、これらのX線画像が合成(平均)され、合成X線画像が生成される(ステップS23)。生成された合成X線画像は、オフセット処理(ステップS24)、欠陥補正処理(ステップS25)が施され、モニタ23に表示されたり、画像サーバ(図示しない)に送信されたりする。同時に、電子カセッテ12ではリセット動作を行い、画素PXに蓄積した信号電荷を破棄する(ステップS26)。
【0088】
上述のように、X線撮影システム10では、X線の照射中に非破壊に読み出した素抜け画素の画素値(代表値D)に基づいて、照射するX線をフィードバック制御し、X戦傷者終了時の素抜け画素の画素値が閾値Thを超えないように動作する。
【0089】
図9に示すように、X線源17のフィードバック制御を行なわず、最初に入力した撮影条件にしたがってX線を照射する場合、照射スイッチ21がオンされることにより線源制御装置19に照射開始信号が入力された時刻TsからX線の照射を開始し、撮影条件で定められた照射時間の経過時である時刻TeにX線の照射を終了する。電子カセッテ12は、X線の照射開始前(〜Ts)は待機動作を、X線の照射中(Ts〜Te)は蓄積動作を、X線の照射終了後(Te〜)は読み出し動作を行う。
【0090】
この間の素抜け画素の画素値(以下、素抜け画素値という)は、次のように変化する。X線の照射開始前は、暗電流によるノイズによって若干の信号電荷が発生することがあるが、電子カセッテ12が待機動作中であり、所定間隔でリセット動作を繰り返し行なっているので、素抜け画素値はほぼ0である。X線の照射が開始されると、素抜け画素値は、X線の照射時間にほぼ比例して増大する。そして、X線の照射終了時には、例えば、素抜け画素値は、閾値Thを超えるとする。
【0091】
イメージセンサ42は単結晶シリコン基板を用いているため、X線の照射量の累積値が多いほど劣化や故障が発生するので、1回のX線撮影で素抜け画素値が閾値Thを超えると、劣化や故障が発生し、使用できなくなるまでに行える撮影の回数が減少する。当然、閾値Thを超えた量が多いほど、イメージセンサ42の劣化や故障の発生確率が上がり、電子カセッテ12は短命化する。
【0092】
一方、図10に示すように、X線撮影システム10では、X線の照射開始後(Ts〜)、所定のタイミングt1で、X線画像を素抜け検出用画像として非破壊に読み出し、素抜け画素値Dを求める。そして、素抜け画素値Dに基づいて、X線源17をフィードバック制御し、X線の照射エネルギーを低減する。t1以降のX線の照射エネルギーは、X線の照射終了時Teの素抜け画素値が閾値Thになるように定められるので、X線撮影システム10では、1回のX線撮影で素抜け画素値が閾値Thを超えることがない。
【0093】
このため、X線撮影システム10では、上述のように、X線の照射途中での素抜け画素値に基づいて照射するX線のフィードバック制御を行わない比較例と比べると、イメージセンサ42の劣化や故障の発生を抑えられ、電子カセッテ12を長寿命化することができる。具体的には、電子カセッテ12による最低撮影回数が定められているとすると、上述の比較例の場合には、素抜け画素値が閾値Thを超えるようなX線撮影を行うと最低撮影回数の撮影を行う前にイメージセンサ42の劣化・故障が発生するが、X線撮影システム10では最低撮影回数の撮影を確実に行うことができる。
【0094】
また、いわゆる関心領域の画素を監視して、X線のフィードバック制御を行う場合と比較すると、関心領域は通常被検体部分であるため、関心領域の画素値が飽和しないようにX線をフィードバックしても、被検体Hがない素抜け画素では画素値が閾値Thを超える。素抜け画素の位置は被検体Hに応じて変わり、被検体Hが変われば、以前の撮影で素抜け画素であった画素が、次の撮影では関心領域の画素になることもある。このため、関心領域の画素を監視しても、電子カセッテ12を長寿命化することはできない。一方、X線撮影装置10では、素抜け画素を監視しているので、被検体Hが変わって素抜け画素が関心領域の画素になったとしても、電子カセッテ12の寿命には影響がない。
【0095】
なお、上述の実施形態では、照射するX線のフィードバック制御をするときに、X線管の管電圧を下げ、X線のエネルギーを低減する例を説明した。また、管電流を下げ、X線の線量を低減する例にも言及した。しかし、図11に示すように、X線の照射時間をTeからTe’に短縮し、X線の照射終了時の素抜け画素値を閾値Thとなる時刻でX線の照射を停止することにより、素抜け画素値が閾値Thを超えることを防いでも良い。X線の照射時間だけを短縮する場合、X線の線量やエネルギーは最初に入力した撮影条件に基づいたものである。前述のように、X線の入射量による単結晶シリコン基板の劣化や故障を防ぐためには、X線のエネルギーを低下させることが最も効果的であるため、上述のように照射時間を短縮する場合、これと同時にX線管の管電圧を下げ、X線のエネルギーを低下させることがより好ましい。
【0096】
なお、上述の実施形態では、X線のフィードバック制御する例として、X線のエネルギーを低下させる例を説明したが、X線の照射範囲を狭くするようにX線源17を制御して、素抜け画素の信号電荷量が増加しないようにしても良い。こうすると、最初に入力した撮影条件に応じたX線の照射を継続しつつ、イメージセンサ42の損傷を防止することができる。
【0097】
なお、上述の実施形態では、X線のエネルギーをフィードバック制御する例を説明したが、X線源17のコリメータを制御して照射野を制限しても良い。例えば、素抜け検出用画像から代表値Dを算出するのと同様に、ヒストグラム解析により、被検体Hを表す分布Aに属する画素を検出する。そして分布Aに属する画素が全て含まれる所定範囲(例えば長方形)が新たな照射野となるように、コリメータを制御して、照射野を被検体Hの部分に限定する。こうすると、到達予想線量Qが閾値Thを超えやすい素抜け画素にはX線が照射されなくなるので、閾値Thを超える過剰なX線の照射によるイメージセンサ42の破損が防止される。また、この場合、素抜け画素へのX線の照射量が低減されれば良いので、新たな照射野に被検体Hの全体が含まれている必要はなく、被検体Hの一部分(関心領域)に照射野を限定しても良い。
【0098】
なお、上述の実施形態では、X線の照射中に1回だけ非破壊読み出しをして素抜け検出用画像を得る例を説明したが、X線の照射中に複数回の非破壊読み出しをしても良い。X線の照射中に複数回の非破壊読み出しをして、素抜け検出用画像を複数得る場合には、これらのそれぞれについて代表値Dを算出し、代表値Dの変化に基づいて到達予想電荷量Qを算出する。こうすると、上述の実施形態のように、1回だけ非破壊読み出しを行う場合よりも、より精度良く到達予想電荷量Qを算出することができる。
【0099】
なお、上述の実施形態では、X線の照射中に素抜け検出用画像を得る場合にも、X線の照射終了後と同様の読み出しをするが、素抜け検出用画像を得るタイミングでは、X線の照射量がまだ少なく、画素値が小さいので、複数の画素をビニングすることにより、感度を上げた読み出しをし、読み出しによるノイズを低減することが好ましい。このように、画素をビニングして読み出すようにすると、読み出し速度も向上するので、X線がフィードバック制御されるまでの時間も短縮され、より制御精度良くなる。また、X線のフィードバック制御を高速にするだけであれば、素抜け検出用画像を得るときに、一部の画素のデータを読み出さない、いわゆる間引き読み出しをしても良い。但し、ビニングや間引きによる読み出しは、いずれも解像度が低下するがフィードバック制御をするためには解像度はそれほど必要ないため十分な精度を持つ。
【0100】
また、このようにビニングや間引き読み出しをしても良いことからも分かるとおり、全述の実施形態では、素抜け画素検出部82において、素抜け検出用画素の全画素を用いたヒストグラム解析により代表値Dを決定するが、必ずしも全画素を用いる必要はない。具体的には、前述のヒストグラム解析を行うことができる程度に、X線画像の全領域から満遍なく画素値を取得すれば足りる。ヒストグラム解析を行うことができる程度とは、最終的に観察に用いるX線画像と解像度が極端に相違しない程度である。
【0101】
なお、上述の実施形態では、X線の照射終了後に、アンプ72のゲインを変えながら所定回数のX線画像の読み出しを行うが、X線の照射終了後にX線画像の読み出す回数を素抜け検出用画像に基づいて決定するようにしても良い。例えば、撮影条件算出部84において、到達予想電荷量Qに比例するように、X線照射終了後の読み出し回数を決定する。到達予想電荷量Qが多い場合、X線のフィードバック制御により素抜け画素値が閾値Thに抑えられると、到達予想電荷量Qと実際の信号電荷量の差が大きく、実際に得られる信号電荷量及びX線画像の画素値は小さくなる。このため、最初に入力した撮影条件で撮影した場合と同等の画質のX線画像を得るためには、到達予想電荷量Qが大きいほど、X線照射終了後の読み出し回数を多くし、得られる複数のX線画像から生成される合成X線画像のノイズを低減する必要があるからである。
【0102】
また、X線の照射終了後に最初に得たX線画像に基づいて、読み出し回数を決定しても良い。例えば、X線照射終了後に最初に得たX線画像の画素値が小さく、画素PXに蓄積された信号電荷量が少ない場合には、読み出し回数を多くする。こうすると、上述と同様、合成X線画像のノイズが低減され、X線をフィードバック制御しない場合と比較して画質の低下を最小限にすることができる。
【0103】
なお、上述の実施形態では、X線画像の読み出し毎にアンプ72のゲインを変える例を説明したが、読み出すX線画像を複数の領域に分割し、各領域毎にアンプ72のゲインを変えてX線画像を読み出しても良い。
【0104】
なお、上述の実施形態では、X線の照射終了後に複数回のX線画像の読み出しを行う例を説明したが、例えば撮影条件として関心領域を定め、関心領域の画素が飽和せず、かつ、最も低ノイズになるようにアンプ72のゲインを定めて、1回だけX線画像を読み出しても良い。関心領域の画素が飽和せず、かつ、最も低ノイズになるようにアンプ72のゲインは、例えば、素抜け検出用画像における関心領域の画素の画素値に基づいて定めれば良い。また、この場合には、破壊読み出しを行なっても良い。
【0105】
なお、上述の実施形態では、X線の照射終了後に画素PXに信号電荷を保持したまま、複数回のX線画像の読み出しをする例を説明したが、CDS回路68で電圧信号をサンプリングし、保持した状態で、同じ画素PXについてアンプ72のゲインを変えながら複数のデータを取得するようにしても良い。これは、複数回の読み出しを行なって得る各X線画像を、行毎に取得することに対応する。こうすると、読み出しと同時に画素PXの信号電荷を破棄することができる。
【0106】
なお、上述の実施形態では、アンプ72のゲインの値は任意であるが、アンプ72のゲインは、例えば、初期値γ1の2n(nは0を除く整数)倍であることが好ましい。これは合成X線画像の生成の画素値の演算をビットシフトによって行うことができ、容易かつ高速だからである。また、上述の実施形態では説明を省略したが、X線画像には読み出し時のゲインの値を示すヘッダ情報を付加しておくことが好ましい。
【0107】
なお、上述の実施形態では、アンプ72のゲインの値は任意であるが、複数回の読み出しを行う毎に、アンプ72のゲインは徐々に小さくなるようにすることが好ましい。例えば、図12に示すように、合計で5回のX線画像の読み出しを行う場合、2回目の読み出し時に設定するゲインγ2は、最初(1回目)の読み出し時のゲインγ1よりも小さい範囲内の値にする。また、3回目の読み出し時に設定するゲインγ3は、2回目の読み出し時のゲインγ2よりも小さい範囲内の値にする。4回目以降の読み出し時も同様であり、γ1>γ2>γ3>γ4>γ5>・・・である。これは、X線の照射がない状態であっても、時間の経過とともに暗電流によるノイズ成分が増大するため、高感度(ゲインが高い)の読み出しを後から行うとノイズ成分が大きくなってしまうからである。このように、再読み出しの度にゲインを徐々に低くする場合、最初(1回目)の読み出し時のゲインγ1は前述の通り撮影条件によって予め定める値であるが、最初の読み出し時のゲインγ1を意図的に適正値よりも高く設定しておく。こうすれば、上述の条件を容易に満たすことができる。
【0108】
なお、上述の実施形態では、読み出し時のゲインが異なる複数のX線画像から合成X線画像を生成した後に、オフセット処理及び欠陥補正処理を施す例を説明したが、フレームメモリ81から読み出した複数のX線画像にオフセット処理や欠陥補正処理を施してから合成X線画像を生成しても良い。オフセット処理をしてから合成X線画像を生成し、その後欠陥補正処理をしたり、欠陥補正処理をしてから合成X線画像を生成し、その後オフセット処理をしても良い。また、オフセット処理と欠陥補正処理を行う順序も任意である。
【0109】
なお、上述の実施形態では、出力回路71のアンプ72のゲインを変更しながら再読み出しを行う例を説明したが、各画素PXのトランジスタM1のゲインを可変とし、各画素PXから電圧信号を出力する段階でゲインを調節しても良い。FPD13の画素PXはデジタルカメラ等に用いる小型の固体撮像素子よりも画素サイズが大きいので、FPD13の各画素PXに可変ゲインアンプを用いることは可能である。
【0110】
なお、上述の実施形態では、素抜け検出用画像を得るときに、検出面43aの全体の画像を得る例を説明したが、素抜け検出用画像は、検出面43aの一部の画素から読み出した画像であっても良い。例えば、撮影条件が定まると、被検体Hがなく、素抜け画素になりやすい領域(以下、非関心領域という)が定まる。素抜け検出用画像は、素抜け画素の画素値を検出するためのものであるので、この非関心領域の画像だけを得るようにしても、代表値D等を決定し、上述の実施形態のように、X線をフィードバック制御することができる。このように素抜け検出用画像として、非関心領域の画像を得るようにすると、検出面43aの全体の画像を読み出す場合よりも、取得する画素数が少ないので、X線のフィードバック制御をより早く行うことができる。但し、非関心領域の画像を得る場合には、前述のようにヒストグラム解析を行うことができないので、例えば、非関心領域の画像の画素値の平均値を代表値Dとすれば良い。
【0111】
なお、上述の実施形態では、閾値Thは、撮影条件によらずに予め定められた所定値であるが、閾値Thは、撮影条件に応じて定められることが好ましい。すなわち、閾値Thは、撮影条件毎に異なる値であることが好ましい。例えば、X線のエネルギーや線量が大きいほどイメージセンサ42の損傷が大きいため、照射するX線が高エネルギー(高線量)の場合には閾値Thを低く設定することが好ましく、低エネルギー(低線量)の場合には閾値Thを高く設定して、より多くの信号電荷の蓄積を許容することができるからである。
【0112】
なお、上述の実施形態では、線源制御装置19がコンソール22と通信することによって電子カセッテ12とX線源17の同期をとる例を説明したが、線源制御部19とコンソール22が通信をせず、電子カセッテでX線の照射開始や照射終了、入射X線量等を検出し、自動露光制御(AEC)をするX線撮影システムも知られている。こうしたX線撮影システムでは、例えば、X線画像を検出するための画素PXの他に、入射X線量等を測定するためのフォトタイマーが、イメージセンサ42の前面(X線の入射側の面)に設けられることがある。しかし、X線撮影システム10では、X線画像検出用の画素PXを用いてX線の入射量を算出するので、フォトタイマーは不要であり、フォトタイマーによる入射X線のエネルギー等の損失はない。このため、X線撮影システム10では、X線のエネルギー等を低減し、被検体Hの被曝量を抑えやすい。
【0113】
なお、上述の実施形態では、到達予想電荷量Qに基づいてX線をフィードバック制御する例を説明したが、X線のフィードバック制御をするために算出する量は到達予想電荷量Qに限らない。例えば、代表値Dに基づいて、X線の照射終了時点における素抜け画素への到達線量(到達予想線量)を算出しても良い。この場合も制御態様等は、上述の実施形態と同様である。
【0114】
なお、上述の実施形態では、素抜け検出用画像をヒストグラム解析することにより、素抜け画素及び素抜け画素の画素値(代表値D)を検出したが、素抜け検出用画像に写し出された像を、被検体Hと素抜けに分ける画像解析により、素抜け画素を検出しても良い。この場合、例えば、検出した素抜け画素の平均値を上述の実施形態の代表値Dとすれば良い。
【0115】
なお、上述の実施形態では、イメージセンサ42を、単結晶シリコン基板を用いて形成する例を説明したが、イメージセンサ42にシリコン以外の結晶半導体や化合物半導体、有機物半導体を用いる場合も本発明は好適である。
【0116】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0117】
例えば、上記各実施形態では裏面照射型の電子カセッテ12を例に説明したが、X線の入射側からシンチレータ,FPDの順に配置される表面入射(PSS)方式の電子カセッテも好適に用いることができる。また、上述の実施形態では、FPD13がCMOS型の例を説明したが、非破壊読み出しをすることができればその他の態様のイメージセンサを用いても良い。さらに、シンチレータ41を用いる間接変換型のFPD13を例に説明したが、シンチレータを介さずにアモルファスセレン等のX線変換層によりX線を直接電荷に変換する直接変換型のFPDを用いることもできる。
【0118】
また、X線源と線源制御装置からなるX線発生装置と、電子カセッテとコンソールからなるX線撮影装置との間で、X線の照射開始及び終了に関する同期制御を、同期信号の通信によって行う例で説明したが、照射検知センサなどを設けてX線の照射開始及び終了を自己検知する機能をX線撮影装置に設けてもよい。こうすれば、X線発生装置とX線撮影装置の間の同期信号の通信は不要となる。この場合には、FPDの画素を照射検知センサとして利用してもよい。
【0119】
また、X線撮影装置を電子カセッテとコンソールで構成する例で示したが、コンソールの機能のうち電子カセッテを制御する機能をコンソールとは別の撮影制御装置として構成して、電子カセッテ、撮影制御装置、コンソールの3つの装置でX線撮影装置を構成してもよい。また、撮影制御装置の機能を電子カセッテに内蔵したり、それに代えて又は加えて、画像処理部26の機能を電子カセッテに内蔵したりしてもよい。また、撮影制御装置に加えてコンソールの機能を電子カセッテに内蔵する等、電子カセッテと、撮影制御装置やコンソールを一体化してもよい。
【0120】
また、本発明のX線撮影装置は、電子カセッテの形態に限らず、FPDが撮影台に内蔵された据え置き型のX線撮影装置でもよい。
【0121】
また、回路基板41に形成された回路素子や駆動回路51をICチップ46として、CDS回路68等からなる読み出し回路を構成するASICをICチップ47として、各々イメージセンサ42とは別体に実装する例を説明したが、これらはイメージセンサ42の基板上に形成されていても良い。すなわち、上記各種回路等は、画素PX等と一体に、単結晶シリコン基板上に形成されていても良い。このように、駆動回路51やCDS回路68等の各種回路を画素PX等と一体に、同一基板上に設けると、ICチップやフレキシブルケーブルを削減でき、また、組み立ても容易になるため、コストダウンを図ることができる。
【0122】
本発明は、X線に限らず、γ線等の他の放射線を使用する撮影システムにも適用することができる。
【符号の説明】
【0123】
10 X線撮影システム
12 電子カセッテ
13 FPD
17 X線源
22 コンソール
26 画像処理部
31 筐体
41 シンチレータ
42 イメージセンサ
52 A/D変換回路
71 出力回路
72 アンプ
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像検出器を用いて被検体の放射線画像を撮影する放射線撮影装置、放射線撮影システム、及び放射線撮影方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、放射線撮影、例えばX線撮影の分野において、X線フィルムやイメージングプレート(IP)に代わり、半導体素子を用いたフラットパネルディテクタ(以下、FPDという)を検出器として用いたX線画像検出装置(以下、電子カセッテという)が普及している。FPDは、半導体素子を用いて形成されたいわゆる固体撮像素子からなるイメージセンサを利用したものであり、X線の入射量に応じた信号電荷を蓄積する画素がマトリクス状に配列される。FPDは、X線の入射によって画素毎に蓄積される信号電荷を電圧信号に変換することによって被検体の画像情報を表すX線画像を検出する。FPDで検出されたX線画像は、デジタルな画像データとして出力される。
【0003】
FPDとしては、ガラス基板上にTFT(Thin Film Transistor)を含む画素が形成されたTFT型の他に、特許文献1に記載されているように、シリコン基板上にCMOSの製造プロセスで画素を形成したCMOS型のものがある。TFT型とCMOS型の大きな違いの1つは、電圧信号の読み出し方式である。TFT型のFPDは、画素に蓄積された信号電荷を、信号線を介して積分アンプに転送し、積分アンプで積分された信号電荷に応じた電圧信号を読み出す方式であり、読み出しによって画素内の信号電荷が空になる、いわゆる破壊読み出し方式である。これに対して、CMOS型のFPDは、信号電荷を電圧信号に変換するアンプが画素毎に設けられており、画素に信号電荷を保持した状態で信号電荷に応じた電圧信号を読み出す、いわゆる非破壊読み出し方式である。
【0004】
TFT型及びCMOS型のいずれのFPDにおいても、当然ながら、画素に蓄積される信号電荷の蓄積量には上限があるので、画素に入射するX線の線量が多すぎると画素は飽和し、いわゆるオーバーフローが発生する。この場合、X線画像においては、黒く潰れた画素になる。一方、X線の線量が少なすぎる、いわゆるアンダーフローが発生すると、X線画像においては、白く潰れた画素になる。X線撮影においては、オーバーフローやアンダーフローが生じないように、被検体の撮影部位や体格に応じて、X線源が照射する線量を決める管電流や照射時間といった撮影条件が予め設定される。
【0005】
さらに、特許文献1には、X線照射中に非破壊読み出しにより得たX線画像から、被検体のなかでも観察対象となる部位が写し出された領域(いわゆる関心領域)の画素の画素値を取得し、関心領域の画素が飽和しそうな場合にはX線の照射を直ちに終了させ、関心領域の画素値が小さければX線の照射強度をより強くするようにX線源の制御をすることで、オーバーフローやアンダーフローがない観察に適したX線画像を得られやすくする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−344249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、非破壊読み出しが可能なCMOS型FPDは、結晶半導体(例えば単結晶シリコン)を用いて形成される。結晶半導体から形成した素子は、アモルファス半導体(例えばアモルファスシリコン)から形成した素子よりも電荷の移動度やスイッチング素子のON抵抗が桁違いに良い。このため、通常、アモルファス半導体から形成されるTFT型FPDと、結晶半導体から形成されるCMOS型FPDとを比較すると、CMOS型FPDは、読み出しの高速化や画素の高密度化に有利である。
【0008】
一方、CMOS型FPDは結晶半導体から形成されるために、アモルファス半導体から形成されるTFT型FPDよりも、放射線の照射による損傷を受けやすい。このため、CMOS型FPDは、TFT型FPDに比べて早期に劣化するとともに、長寿命化が難しいという問題がある。
【0009】
例えば、単結晶シリコンから形成したCMOS型FPDの場合、照射線量が数千R程度から、画素に関するノイズ(オフセットノイズ等)が顕著になりはじめ、総照射線量がさらに数千R程度累積すると、放射線画像の読み出しに用いられるアンプのゲインが不安定になるなど、劣化や故障が発生するようになる。これは、放射線の入射によって電荷対が発生し、単結晶シリコン基板と絶縁膜(シリコン酸化膜等)の界面に蓄積されることにより、絶縁膜が損傷したり、単結晶シリコン基板内でシリコンやその他の材料の結合が切れ、材料特性が劣化することが原因である。
【0010】
また、従来より、放射線の入射面側から、シンチレータ、FPDの順に配置し、放射線をシンチレータによって光に変換し、シンチレータが発光した光を検出面を前面側に向けたFPDで受けることにより放射線画像を検出する前面入射方式(PSS:Penetration Side Sampling)方式の間接変換型の電子カセッテが知られているが、近年では、さらなる画質向上等のために、シンチレータとFPDの配置順序を逆順にし、FPDの検出面を裏面側に向けた裏面入射方式(ISS:Irradiation Side Sampling)の間接変換型電子カセッテが知られている。
【0011】
PSS方式の場合もISS方式の場合も、前述のようにTFT型FPDに比べれば放射線の照射による劣化が早いことは変わらないが、PSS方式の場合、FPDの前面にシンチレータが配置されているため、放射線はシンチレータで減衰され、CMOS型FPDを用いても、放射線の照射によるFPDの劣化は多少抑えられる。一方、ISS方式の場合、FPDの前面には入射放射線を減衰させる部材はなく、入射放射線は全てFPDを透過してシンチレータに到達するので、ISS方式の電子カセッテでCMOS型FPDを用いる場合、放射線の照射によるFPDの劣化は特に深刻な問題である。
【0012】
さらに、シンチレータを介さずにX線変換層用いて入射放射線を直接信号電荷に変換する直接変換型FPDも知られている。直接変換型FPDで代表的なX線変換層であるアモルファスセレン(a−Se)は、代表的なシンチレータ材料よりも原子番号が小さく、特に高エネルギー側のX線の吸収が少ないため、入射放射線の減衰が小さいままFPDに到達するので、直接変換型FPDで非破壊読み出し可能にするために、CMOS型で形成すると、前述と同様、放射線の照射による劣化が特に深刻な問題となる。
【0013】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、非破壊読み出しが可能なFPDの劣化及び故障を防ぎ、これを用いる放射線撮影装置等の長寿命化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の放射線撮影装置は、撮影条件にしたがって放射線源から照射され被検体を透過した放射線を受けて、被検体の放射線画像を検出する放射線画像検出手段であり、単結晶半導体を用いて形成され、前記放射線の入射量に応じた信号電荷を蓄積する複数の画素を有し、前記画素から前記信号電荷の蓄積量に基づいた前記放射線画像を表すデータを非破壊に読み出す事が可能な放射線画像検出手段と、前記放射線の照射途中に非破壊に読み出された前記放射線画像から、前記被検体を経ずに直接前記放射線が到達する素抜け画素の画素値を検出する素抜け画素検出手段と、前記素抜け画素の画素値、前記放射線の照射開始時刻から前記放射線の照射途中に非破壊に読み出された前記放射線画像の取得時までの経過時間、及び、前記放射線の照射終了時刻に基づいて、前記放射線の照射終了時に前記素抜け画素に蓄積される前記信号電荷量を、到達予想電荷量として算出する到達予想電荷量算出手段と、前記到達予想電荷量を所定閾値と比較し、前記到達予想電荷量が前記所定閾値を超える場合に、前記放射線の照射終了時刻に前記素抜け画素に蓄積される信号電荷が前記所定閾値になるように前記放射線源を制御するための新たな前記撮影条件を算出する撮影条件算出手段と、最初の前記撮影条件に基づいた前記放射線の照射途中で、前記撮影条件算出手段によって算出された新たな前記撮影条件に基づいた前記放射線が照射されるように、前記放射線源をフィードバック制御する放射線源制御手段と、を備えることを特徴とする放射線撮影装置。
【0015】
前記撮影条件算出手段が算出する新たな撮影条件は、前記放射線のエネルギーを低下させる撮影条件であることが好ましい。
【0016】
前記撮影条件算出手段が算出する新たな撮影条件は、前記放射線の線量を低下させる撮影条件であることが好ましい。
【0017】
前記撮影条件算出手段が算出する新たな撮影条件は、前記放射線の照射時間を短縮する撮影条件であることが好ましい。
【0018】
前記撮影条件算出手段が算出する新たな撮影条件は、前記放射線の照射野を制限する撮影条件であることが好ましい。
【0019】
前記放射線検出手段から前記放射線画像を読み出す際に前記信号電荷に応じた信号を増幅するとともに、ゲインが可変な増幅手段と、前記放射線の照射終了後に、前記増幅手段のゲインを変えながら読み出された複数の前記放射線画像を合成して、前記被検体を観察するための合成放射線画像を生成する画像合成手段と、を備えることが好ましい。
【0020】
前記画像合成手段は、前記増幅手段のゲインを変えながら読み出された複数の前記放射線画像を、前記放射線画像の読み出し時のノイズが低減されるように合成することが好ましい。
【0021】
前記画像合成手段は、前記増幅手段のゲインを変えながら読み出された複数の前記放射線画像を、ダイナミックレンジが拡大されるように合成することが好ましい。
【0022】
前記画像合成手段は、前記増幅手段のゲインを変えながら読み出された複数の前記放射線画像を平均して、前記合成放射線画像を生成することが好ましい。
【0023】
前記放射線検出手段は、前記放射線を光に変換するシンチレータと、前記シンチレータが発する光を光電変換することにより前記放射線画像を検出するイメージセンサとを有し、前記放射線の入射側から、前記イメージセンサ、前記シンチレータの順に配置されていることが好ましい。
【0024】
本発明の放射線撮影システムは、放射線源と、撮影条件にしたがって放射線源から照射され被検体を透過した放射線を受けて、被検体の放射線画像を撮影する放射線撮影装置とからなる放射線撮影システムにおいて、前記放射線撮影装置は、単結晶半導体を用いて形成され、前記放射線の入射量に応じた信号電荷を蓄積する複数の画素を有し、前記画素から前記信号電荷の蓄積量に基づいた前記放射線画像を表すデータを非破壊に読み出す事が可能な放射線画像検出手段と、前記放射線の照射途中に非破壊に読み出された前記放射線画像から、前記被検体を経ずに直接前記放射線が到達する素抜け画素の画素値を検出する素抜け画素検出手段と、前記素抜け画素の画素値、前記放射線の照射開始時刻から前記放射線の照射途中に非破壊に読み出された前記放射線画像の取得時までの経過時間、及び、前記放射線の照射終了時刻に基づいて、前記放射線の照射終了時における前記素抜け画素の到達予想電荷量を算出する到達予想電荷量算出手段と、前記到達予想電荷量を所定閾値と比較し、前記到達予想電荷量が前記所定閾値を超える場合に、前記放射線の照射終了時刻に前記素抜け画素に蓄積される信号電荷が前記所定閾値になるように前記放射線源を制御する新たな前記撮影条件を算出する撮影条件算出手段と、前記放射線の照射途中で、前記撮影条件算出手段によって算出された新たな前記撮影条件に基づいた前記放射線が照射されるように、前記放射線源をフィードバック制御する放射線源制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0025】
本発明の放射線撮影方法は、単結晶半導体を用いて形成され、撮影条件にしたがって被検体に照射した放射線を受けて放射線画像を検出する複数の画素を有するとともに、前記画素から前記放射線画像を表すデータを非破壊に読み出す事が可能な放射線画像検出手段によって、前記画素に前記放射線の入射量に応じた信号電荷を蓄積する信号電荷蓄積ステップと、前記信号電荷蓄積ステップの途中で、前記放射線画像を非破壊に読み出す放射線画像読み出しステップと、前記放射線画像読み出しステップで得た前記放射線画像から、前記被検体を経ずに直接前記放射線が到達する素抜け画素の画素値を検出する素抜け画素検出ステップと、前記素抜け画素の画素値、前記放射線の照射開始時刻から前記放射線の照射途中に非破壊に読み出された前記放射線画像の取得時までの経過時間、及び、前記放射線の照射終了時刻に基づいて、前記放射線の照射終了時における前記素抜け画素の到達予想電荷量を算出する到達予想電荷量算出ステップと、前記到達予想電荷量を所定閾値と比較し、前記到達予想電荷量が前記所定閾値を超える場合に、前記放射線の照射終了時刻に前記素抜け画素に蓄積される信号電荷が前記所定閾値になるように前記放射線源を制御する新たな前記撮影条件を算出する撮影条件算出手ステップと、前記撮影条件算出ステップで算出された新たな前記撮影条件に基づいた前記放射線が照射されるように、前記信号電荷蓄積ステップの途中で前記放射線をフィードバック制御するフィードバック制御ステップと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、非破壊読み出しが可能なFPDの劣化及び故障を防ぎ、これを用いる放射線撮影装置等を長寿命化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】X線撮影システムの構成を概略的に示す説明図である。
【図2】X線源と電子カセッテの同期手順を示す説明図である。
【図3】電子カセッテの構成を示す分解斜視図である。
【図4】電子カセッテの構成を示す断面図である。
【図5】FPDの構成を示す説明図である。
【図6】コンソールの構成を示すブロック図である。
【図7】画素値の頻度分布を模式的に示すグラフである。
【図8】X線撮影システムの作用を示すフローチャートである。
【図9】線源のフィードバック制御を行わない比較例のX線照射及び素抜け画素値の変化態様を示す説明図である。
【図10】本発明のX線照射及び素抜け画素値の変化態様を示す説明図である。
【図11】X線の照射を停止する例を示す説明図である。
【図12】X線の照射終了後に、ゲインを徐々に下げながら複数回のX線画像の読み出しを行う例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1に示すように、X線撮影システム10は、撮影台11、電子カセッテ(放射線画像検出装置)12、X線源17、線源制御装置19、コンソール22、モニタ23等を備える。X線源17、線源制御装置19がX線発生装置を構成し、電子カセッテ12、コンソール22、モニタ23がX線撮影装置を構成する。
【0029】
撮影台11には被検体Hが載置され、被検体Hを透過したX線が入射するように、撮影台11の内部、あるいは撮影台11と被検体Hの間に電子カセッテ12がセットされる。
【0030】
電子カセッテ12は、撮影台11に対して着脱自在に設けられ、撮影台11を用いない場合にも使用可能な可搬型であり、ほぼ直方体状の筐体内に、FPD13、FPD13の動作を制御する各種回路、メモリ14、通信部16等を備える。FPD13は、マトリクス状に配列された画素を有し、各画素において入射X線量に応じた信号電荷を蓄積し、蓄積した信号電荷を電圧信号に変換して出力することでX線画像を検出する。また、FPD13は、非破壊読み出しが可能なCMOS型である。メモリ14には、FPD13が出力するX線画像が一時的に記憶される。通信部16は、コンソール22との間で制御信号の通信を行うとともに、メモリ14に記憶されたX線画像をコンソール22に送信する。また、電子カセッテ12は、FPD13等の各部に給電をするバッテリ(図示しない)を内蔵したワイヤレスタイプであり、通信部16は、例えば、赤外線等の光や電波等によってコンソール22と無線通信を行う。
【0031】
X線源17は、X線を発生するX線管とX線の照射野を限定するコリメータ等を備えており、X線焦点17aから被検体Hに向けてX線を照射する。X線源17は、撮影台11に対して移動自在に設けられており、X線の照射位置や角度を自在に調節可能である。また、X線源17には線源制御装置19が接続されている。線源制御装置19には、X線源17に対して電力を供給する高電圧発生部が設けられており、線源制御装置19に入力される撮影条件に応じた管電圧及び管電流をX線源17に与えることによってX線源17からX線を照射させる。
【0032】
X線の線質(エネルギー)は管電圧によって、線量は管電流と照射時間によって決まる。線源制御装置19には操作パネル19aが設けられており、この操作パネルを通じてX線管の管電圧,管電流,照射時間といった撮影条件が入力される。撮影条件は、撮影部位、被検体の体格、年齢等に応じて決定される。また、線源制御装置19には、照射開始信号を入力する照射スイッチ21が接続されている。線源制御装置19は、X線撮影装置のコンソール22と通信可能に接続されており、コンソール22と通信することによって電子カセッテ12とX線源17の同期をとる。
【0033】
図2に示すように、線源制御装置19は、照射スイッチ21が押圧されてオンされると、同期開始信号を検知して、X線管のフィラメント加熱やターゲットの回転などの動作を開始させることにより、X線源17を照射可能状態(以下、レディ状態という)に移行させる。X線源17がレディ状態になると、線源制御装置19は、蓄積開始信号をコンソール22に送信する。コンソール22は蓄積開始信号を受信すると、電子カセッテ12を待機動作から信号電荷を蓄積する蓄積動作に移行させる。電子カセッテ12が蓄積動作に移行すると照射開始信号が線源制御装置19に送信される。線源制御装置19は照射開始信号を受けると、撮影条件で設定された管電圧及び管電流に応じた電力をX線源17に対して供給することにより、X線源17から撮影条件に従った線質及び線量のX線が被検体Hに向けて照射が開始される。線源制御装置19は、X線の照射開始後、タイマを作動させて照射時間の計時を開始する。
【0034】
線源制御装置19は、タイマを監視して、撮影条件で設定された照射時間が経過すると、X線源17に対して終了同期信号を送り、照射を終了させる。また、線源制御装置19は、終了同期信号をコンソール22に送信する。コンソール22は終了同期信号を受信すると、電子カセッテ12を蓄積動作から読み出し動作に移行させる。
【0035】
なお、後述するように、線源制御装置19は、X線の照射中にコンソール22から新たな撮影条件の入力を受け、照射中のX線の線質や線量、エネルギー、照射時間等を変更することがある。
【0036】
図1において、コンソール22は通信部24を介して制御信号を送信することで電子カセッテ12の動作を制御する制御装置であり、キーボードやマウス等の図示しない入力デバイスと照射スイッチ21が接続されている。コンソール22には、例えば、入力デバイスを用いて予め線源制御装置19と同様の撮影条件が入力される。
【0037】
コンソール22は、図示しないHIS(病院情報システム)やRIS(放射線情報システム)といった医用情報システムと通信可能に接続されており、医用情報システムからX線撮影の撮影オーダを受信することも可能である。医師や診療放射線技師などのオペレータは、受信した撮影オーダで被検体情報や撮影部位等を確認して、それに適した撮影条件を決定して、X線制御部19及びコンソール22のそれぞれに入力することで、撮影条件の設定を行う。コンソール22に入力された撮影条件は、電子カセッテ12に設定される。設定された撮影条件は、後述するようにアンプのゲインの初期値の設定に利用される。
【0038】
電子カセッテ12には、X線源17から照射され被検体Hを透過したX線が入射する。電子カセッテ12は、蓄積動作においてX線の入射量に応じた信号電荷を蓄積することにより、被検体Hを表すX線画像を検出する。読み出し動作において蓄積された信号電荷に応じたX線画像が読み出される。読み出されたX線画像は、通信部24を介してコンソール22に送信される。
【0039】
コンソール22には画像処理部26が設けられている。画像処理部26は、受信したX線画像に対して各種画像処理を施してモニタ23に出力する。画像処理部26が行う画像処理は、例えば、欠陥補正処理やオフセット処理である。欠陥補正処理は、X線の照射量に応じた画素値が得られない欠陥画素の画素値を補間等により補正する処理である。オフセット処理は、被検体Hがない状態で予め撮影したX線画像(オフセット画像)を、被検体Hを撮影したX線画像から減算することにより、暗電流によるノイズ等を除去する画像処理である。なお、画像処理部26は、後述するようにX線画像の合成処理等、上記補正処理以外の画像処理を行うこともある。
【0040】
モニタ23は、X線画像を表示する他、コンソール22を操作するための操作画面の表示を行う。
【0041】
コンソール22は、画像処理終了後、処理済みのX線画像に対して、入力された撮影条件を付帯情報として付加して、DICOM形式などの医用画像ファイルの標準的なファイル形式に変換される。変換された画像ファイルは、図示しない画像サーバなどのストレージデバイスに送信される。
【0042】
図3及び図4に示すように、電子カセッテ12の筐体31は、X線が入射する入射面側からFPD13を覆う前面カバー31aと、背面からFPD13を覆う背面カバー31bとかなる。前面カバー31a及び背面カバー31bはいずれもX線透過率の低い金属材料(例えばステンレス等)から形成される。但し、前面カバー31aには、FPD13にX線が入射するように、X線透過率が高いカーボン等からなるX線透過窓32が設けられている。筐体31内には、前面カバー31a側から順に、FPD13、支持体33、FPD13の動作制御等をする各種回路基板34〜37が配置される。
【0043】
FPD13は、シンチレータ41とイメージセンサ42からなる間接変換型である。シンチレータ41は、X線の入射量に応じた光量の可視光を発する蛍光体であり、例えばCsI:Tl(タリウム賦活ヨウ化セシウム)やGOS(ガドリウムオキシサルファイド)等からなる。イメージセンサ42は、シンチレータ41が発光した可視光を光電変換する装置であり、例えば単結晶シリコン基板から形成された複数のCMOSセンサチップを貼り合わせて、検出面43aを大面積化したユニットである。光電変換を行う画素が配列された検出面43aは、シンチレータ41と対向するように配置される。また、FPD13は、前面カバー31aと支持体33の間に、イメージセンサ42が前面カバー31a側、シンチレータ41が支持体33側(背面カバー31b側)になるように配置される。すなわち、電子カセッテ12は裏面照射方式(ISS)であり、最も発光量が多くなるシンチレータ41のX線入射側表面と検出面43aが対向した状態となるようにFPD13を配置している。なお、シンチレータ41は支持体33とイメージセンサ42に、イメージセンサ42はシンチレータ41と前面カバー31aにそれぞれ接着されている。
【0044】
支持体33はFPD13の背面側に設けられ、筐体31内のスペースを二分する。支持体33の背面側には、各種回路基板34〜37が取り付けられる。支持体33は、例えばステンレス製であり、筐体31に固定される。また、支持体33の上端と下端には、それぞれ中央部分に切り欠き33a,33bが形成されており、FPD13と各種回路基板34〜37を繋ぐフレキシブルケーブル44が挿通される。フレキシブルケーブル44上には、TCP(テープキャリアパッケージ)型のICチップ46,47が実装されている。
【0045】
回路基板34は、FPD13を駆動する駆動回路51が形成された駆動用回路基板である。回路基板35は、A/D変換回路52を含む出力回路(図5参照)が形成されたA/D変換回路基板である。A/D変換回路52は、後述するICチップ47が出力するアナログ信号をデジタル信号に変換する。回路基板36は、メモリ14、制御部61が形成された基板である。制御部61は、FPD13の各部を制御するとともに、コンソール22との通信を制御する。回路基板37は電源回路が形成された電源回路基板である。電源回路は、各部に電力を供給する回路であり、交流を直流に変換するAC/DCコンバータや、直流電圧を各回路の動作に必要な電圧に変換するDC/DCコンバータ等の回路素子を有する。
【0046】
ICチップ46は、回路基板41に形成された回路素子とともに駆動回路51を構成するアンプやシフトレジスタであり、垂直操作回路63(図5参照)を含む。ICチップ47は、後述するCDS回路68(図5参照)等からなる読み出し回路を構成するASICである。
【0047】
図5に示すように、FPD13の画素PXは、フォトダイオードPDとトランジスタM1〜M3等の回路素子からなり、各トランジスタM1〜M3の駆動状態に応じて、蓄積動作、読み出し動作、リセット動作を行う。蓄積動作は光電変換により発生した信号電荷を蓄積する動作であり、読み出し動作は蓄積された信号電荷量に応じた電圧信号の出力する動作である。リセット動作は、蓄積した信号電荷を破棄する動作である。
【0048】
フォトダイオードPDは、光電変換によりシンチレータ41からの入射光量に応じた信号電荷を発生する素子であり、増幅用トランジスタM1のゲート電極と、リセット用トランジスタM3のソース電極に接続されている。信号電荷を蓄積する場合と画素PXから電圧信号を読み出す場合には、リセット用トランジスタM3がオフにされ、増幅用トランジスタM1のゲート電極には、フォトダイオードPDに蓄積された信号電荷量に応じた電圧が印加される。
【0049】
増幅用トランジスタM1のソース電極には電源電圧が印加され、ドレイン電極には画素選択用トランジスタM2が接続されており、ゲート電極に印加される信号電荷量に応じた電圧を所定の増幅率で増幅して画素選択用トランジスタM2のソース電極に印加する。画素選択トランジスタM2のゲート電極は、行選択線GLに接続され、ドレイン電極は信号線SLに接続されており、行選択線GLからゲート信号が入力されると、ソース電極の電圧を信号線SLに出力する。これにより、画素PXの電圧信号が信号線SLを通じて読み出される。なお、FPD13は非破壊読み出しが可能なCMOS型であるため、画素PXから電圧信号の読み出しを行なっても、リセットを行うまで、各画素PXは信号電荷を保持している。
【0050】
フォトダイオードPDに蓄積した信号電荷を破棄する場合は、リセット用トランジスタM3がオンにされる。リセット用トランジスタM3のゲート電極は、リセット線RSTに接続されており、リセット線RSTを通じてリセット信号が入力される。リセット信号が入力されたことによりリセット用トランジスタM3がオンになると、この行の画素PXは、フォトダイオードPDに蓄積された信号電荷をリセット用トランジスタM3のドレイン電極側に破棄する。
【0051】
また、FPD13は、制御部61、タイミングジェネレータ(TG)62、垂直走査回路63、水平走査回路64等を備える。
【0052】
制御部61は、FPD13の各部を統括的に制御する。TG62は、制御部61からの指示に基づいてタイミング信号を発生する。また、制御部61は、読み出し動作時に、後述する出力回路71のアンプ72のゲインを、コンソール22から指示された値に設定する。垂直走査回路63や水平走査回路64は、TG62から入力されるクロック信号に基づいて動作する。
【0053】
垂直走査回路63は、画素PXの駆動回路であり、駆動する画素PXの行を選択し、選択した行の行選択線GLやリセット線RSTにゲート信号やリセット信号を入力することにより、画素PXに蓄積動作、読み出し動作、リセット動作を行わせる。水平走査回路64は、電圧信号の読み出しを行う画素PXの列を選択する回路であり、各信号線SL上に設けられた列選択トランジスタ67のうちひとつをオンにすることにより読み出しを行う列を選択する。
【0054】
行選択線GLは、垂直走査回路63から、画素PXの動作を制御するゲート信号を入力するための配線であり、画素PXの行毎に設けられている。行選択線GLを通じて入力されるゲート信号に基づいて、画素PXは蓄積動作や読み出し動作を行う。リセット線RSTは、画素PXにリセット信号を入力するための配線であり、画素PXの行毎に設けられている。リセット信号が入力されたリセット線RST上の画素PXは信号電荷が破棄され、リセットされる。
【0055】
信号線SLは、各画素PXから信号電荷量に応じた電圧信号(撮像信号)を読み出すための配線であり、画素PXの列毎に設けられている。また、信号線SLの末端には、相関二重サンプリング(CDS)回路68と列選択トランジスタ67が接続されている。CDS回路68は、TG62から入力されるクロック信号に基づいて動作し、垂直走査回路63によって選択された行選択線GL上の画素PXから、読み出しにともなうノイズが除去されるように電圧信号をサンプリングし、保持する。CDS回路68が保持する電圧信号は、水平走査回路64によって列選択トランジスタ67がオンにされることによって、出力バスライン69を介して出力回路71に入力される。
【0056】
出力回路71は、アンプ72とA/D変換回路52を備える。アンプ72は、CDS回路68から入力される電圧信号を増幅し、A/D変換回路52に入力する。A/D変換回路52は、アンプ72により増幅された電圧信号をデジタルデータに変換する。A/D変換回路52から出力されるデジタルデータは、X線画像としてメモリ14に一時的に記憶され、通信部16を介してコンソール22に送信される。アンプ72は、ゲインを自在に調節可能な可変ゲインアンプであり、読み出し動作における、1回目のX線画像の読み出しにおいては、撮影条件に基づいて設定される所定値(初期値γ1)に設定され、X線画像を再度読み出す場合には、制御部61によって設定された新たな値に設定される。また、出力回路71から出力されるデータは、上述のようにメモリ14に記憶され、通信部16を介してコンソール22に送信される。
【0057】
図6に示すように、コンソール22は、前述の通信部24と画像処理部26とともに、フレームメモリ81を備える。フレームメモリ81は、複数のX線画像を一時的に記憶することが可能な記憶装置であり、後述するようにアンプ72のゲインを変更して読み出された複数のX線画像が順次記憶される。
【0058】
また、画像処理部26は、素抜け画素検出部82、到達予想電荷量算出部83、撮影条件算出部84、画像合成部85、オフセット処理部86、欠陥補正処理部87等を備える。
【0059】
素抜け画素検出部82は、フレームメモリ81から、X線の照射中に非破壊読み出しされたX線画像(以下、素抜け検出用画像という)を取得し、被検体Hを介さずに直接X線が入射した画素を検出する。具体的には、図7に示すように、素抜け画素検出部82は、全画素の画素値の分布を求める。画素値の分布態様は、アンプ72のゲインによらず、撮影部位(頭部、胸部、腹部など)に応じて概ね一定の分布形状を有する。図7は、一例として成人の胸部X線画像の場合の画素値の頻度分布を示しており、2つのピークを有する分布Aは胸部組織等(肺や心臓、肋骨等)の領域を表しており、分布Bは主に被検体Hを経ないで直接X線が検出面43aに到達した画素(いわゆる素抜け画素)を表している。
【0060】
素抜け画素検出部82は、画素値の頻度分布形状から分布Bを検出する。そして、分布Bのピーク位値の画素値Dを求め、これを素抜け画素の画素値の代表値Dとして、到達予想電荷量算出部83に入力する。
【0061】
なお、画素値の分布形状自体は撮影部位に応じてほぼ不変であるが、アンプ72のゲインが小さい場合、図7に示すような画素値の頻度分布は全体的に左側にシフトし、逆にアンプ72のゲインが大きい場合には全体的に右側にシフトするため、読み出し時のゲインが異なるX線画像同士を比較すれば、分布Bのピーク値である代表値Dの具体的な値は異なる。
【0062】
また、後述するように素抜け画素の線量を監視するという観点から言えば、画素値の頻度分布によらず、素抜け検出用画像全体最大の画素値を代表値Dとすることが考えられるが、単に画素値が最大の画素を判定用画素に選出すると、入射X線量によらない値を出力する欠陥画素の画素値となってしまうことがある。このため、素抜け画素検出部82は、欠陥のない素抜け画素の画素値を確実に得るために、分布Bのピークに対応する画素値を求め、代表値Dとしている。
【0063】
到達予想電荷量算出部83は、素抜け画素検出部82から入力される代表値Dに基づいて、X線の照射終了時に素抜け画素に蓄積される信号電荷量の予想量(以下、到達予想電荷量という)Qを算出する。例えば、X線の照射開始時刻をTs、X線の照射終了時刻をTe、素抜け検出用画像を読み出した時刻をt1とすると、Q=D(t1−Ts)/(Te−Ts)により到達予想電荷量Qを見積もる。X線の照射開始時刻Tsは開始同期信号の入力時刻であり、X線の照射終了時刻Teは、撮影条件から定まる。到達予想電荷量算出部83は、算出した到達予想電荷量Qを撮影条件算出部84に入力する。
【0064】
なお、ここでは、X線照射期間中、X線の線量が一定であり、到達予想電荷量Qが時間に比例して増加することを前提としたが、X線の照射開始時前後や照射終了時前後は、単位時間当たりのX線の照射量が変動する。したがって、これらを考慮してより正確に到達予想電荷量Qを算出しても良い。いずれにしても、到達予想電荷量Qは、代表値D、素抜け検出用画像の読み出し時刻t1、X線の照射開始時刻Ts及び照射終了時刻Teから算出することができる。
【0065】
撮影条件算出部84は、到達予想電荷量算出部83から素抜け画素の到達予想電荷量Qが入力されると、まず、到達予想電荷量Qを所定閾値Thと比較する。所定閾値Thは、1回のX線撮影でイメージセンサ42に入射して良いX線量を定める値であり、実験により予め定められる。1回のX線撮影で、素抜け画素(及び全ての画素)が受けるX線量が閾値Th以下であれば、X線の照射によるイメージセンサ42の損傷が抑えられるので、一定回数の撮影が保証される。
【0066】
到達予想電荷量Qが所定閾値Th以下の場合(Q≦Th)、撮影条件算出部84は現在の撮影条件でのX線照射を継続して良い旨を示す制御信号を、線源制御装置19に入力する。この場合、線源制御装置19は、撮影開始前に操作パネル19aから入力された撮影条件にしたがったX線の照射を継続する。
【0067】
一方、到達予想電荷量Qが所定閾値Thを超える場合(Q>Th)、撮影条件算出部84は、閾値Th、到達予想電荷量Q、素抜け検出用画像の読み出し時刻t1、X線の照射終了時刻Teに基づいて、X線の照射終了時Teに素抜け画素に蓄積される信号電荷量が閾値Th(あるいは閾値Th以下の所定値)になるように新たな撮影条件を算出し、X線源制御装置19に入力する。撮影条件算出部84が算出する新たな撮影条件は、例えばX線管の管電圧である。撮影条件算出部84から入力された新たな撮影条件が入力されると、X線制御部19は直ちに新たな撮影条件にしたがったX線をX線源17から照射させる。
【0068】
なお、ここでは、撮影条件算出部84は、到達予想電荷量Qが所定閾値Thを超える場合に、新たな撮影条件として管電圧を算出する例を挙げたが、撮影条件算出部84が算出する新たな撮影条件は、X線管の管電流でも良い。また、X線管の管電流や管電圧をともに変更する撮影条件を算出しても良い。管電圧を下げることで、照射するX線のエネルギーが低減される。また、管電流を下げると、イメージセンサ42に到達するX線量が低減される。照射するX線の線量やエネルギーが低減されることにより、X線の照射終了時Teに素抜け画素に蓄積される信号電荷量が閾値Thに抑えられる。
【0069】
X線管の管電流を変更して照射するX線の線量を低減する場合と、X線管の管電圧を下げて照射するX線のエネルギーを低減する場合を比較すると、どちらもX線の照射終了時に素抜け画素に蓄積される信号電荷量が閾値Thに低減され、イメージセンサ42の損傷が低減されることは自体は変わらない。但し、同じ線量でもエネルギーが低いほど、イメージセンサ42の損傷は少ない。このため、撮影条件算出部84は、新たな撮影条件を算出するときに、少なくともX線のエネルギーを低減することが特に好ましい。このため、本例では、管電圧を下げることで、照射するX線のエネルギーを低減する。
【0070】
上述のように、素抜け画素検出部82、到達予想電荷量算出部83、撮影条件算出部84は、X線撮影時に機能する。一方、画像合成部85、オフセット処理部86、欠陥補正処理部87は、X線画像の読み出し後に機能する。
【0071】
また、X線撮影装置10は、少なくとも上述のように、X線の照射途中に非破壊に読み出した素抜け検出用画像に基づいて、X線の線量等を制御した場合、X線照射終了後、X線撮影装置10は、アンプ72のゲインを変更しながら、複数回のX線画像の読み出しを行う。このX線照射終了後の読み出し回数は、撮影部位等により予め定められる。
【0072】
画像合成部85は、これらの複数のX線画像を合成して合成X線画像を生成し、オフセット処理部86は、合成X線画像に対してオフセット処理を施す。また、欠陥補正処理部84は、オフセット処理後の合成X線画像に欠陥補正処理を施す。欠陥補正処理後の合成X線画像は、モニタ23に表示されたり、画像サーバ(図示しない)に送信される。
【0073】
画像合成部85は、X線の照射終了後に得た複数のX線画像をフレームメモリ81から取得し、これらを合成して合成X線画像を生成する。最初に入力した撮影条件に基づくX線照射の途中で、素抜け画素の画素値が閾値Th以下になるように算出した新たな撮影条件に基づくX線の照射に切り替えると、画素PXに蓄積される信号電荷量は当初の撮影条件に基づくX線の照射を継続した場合よりも減少する。このため、X線の照射途中で撮影条件を変更してX線画像を検出した場合、FPD13からX線画像を読み出すと、読出し回路71等のノイズ成分が相対的に大きくなり、読み出したX線画像そのままでは被検体Hの観察に適さないことがある。このため、X線撮影装置10では、アンプ72のゲインを変更しながら複数回、X線画像を読み出し、これらを画像合成部85で合成することにより、読み出し回路71等によるノイズを低減し、また、ダイナミックレンジを拡大し、被検体Hの観察により適した合成X線画像を生成する。
【0074】
画像合成部85は、例えば、複数のX線画像を平均することにより、合成X線画像を生成する。ここでは、画像合成部85は、単純平均により合成X線画像を生成することとするが、各X線画像の読み出し時のゲインの値に応じて重み付けをして平均することによって合成X線画像を生成しても良い。また、高低二種類のゲインでX線画像を読み出した高感度画像と低感度画像を合成する場合、本出願人の特許4054263号に倣い、高感度画像Xh、低感度画像Xl、高感度画像Xhの重みwh、低感度画像の重みwl、合成開始レベルを示す閾値t、高感度画像Xhと低感度画像Xlの感度比Sを用いて、合成X線画像Xcを、Xc={wh・Xh+wl・(Xl−t/S+t)}/(wh+wl)にしたがって算出しても良い。この場合、wh+wl=1としても良い。
【0075】
以下、上述のように構成されるX線撮影システム10の作用を図8に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0076】
図8に示すように、X線撮影システム10によってX線撮影を行う場合、まず、線源制御部19とコンソール22に撮影条件を入力する(ステップS11)。線源制御装置19には、X線管の管電圧,管電流,照射時間が撮影条件として入力される。線源制御装置19に入力される撮影条件は、コンソール22が受信した撮影オーダで確認される、撮影部位、被検体Hの体格や年齢等の被検体情報に基づいて決定される。
【0077】
コンソール22に入力された撮影条件は、通信部24を介して電子カセッテ12に送信される。電子カセッテ12は、コンソール22から撮影条件が入力されると、待機動作を開始する(ステップS12)。待機動作は、所定のタイミングでリセット動作を繰り返し行うことにより、X線の照射開始を待ち受ける動作である。
【0078】
照射スイッチ21が押圧されると、線源制御装置19を介してX線源17に同期開始信号が送信され、X線源17はレディ状態に移行される。X線源17がレディ状態になると、線源制御装置19は蓄積開始信号をコンソール22に送信し、電子カセッテ12は蓄積動作を開始する(ステップS13)。
【0079】
また、電子カセッテ12が蓄積動作に移行すると、線源制御部19は、コンソール22から照射開始信号を受け、X線源17から撮影条件に応じた管電圧及び管電流でX線の照射を開始させる(ステップS14)。
【0080】
電子カセッテ12は、蓄積動作を開始すると、X線の照射中に、所定のタイミングで非破壊読み出しをする(ステップS15)。ここで得られるX線画像は、素抜け検出用画像としてコンソール22に送信され、フレームメモリ81に蓄積される。
【0081】
素抜け検出用画像は、素抜け画素検出部82によってフレームメモリ81から読み出され、素抜け検出用画像に基づいて素抜け画素が検出される(ステップS16)。より具体的には、素抜け検出用画像をヒストグラム解析することにより、素抜け画素が属する分布B(図7参照)のピーク位置の画素値Dが、素抜け画素の画素値の代表値Dとして検出される。
【0082】
そして、到達予想電荷量算出部83により、代表値Dに基づいて、素抜け画素の到達予想電荷量Qが算出される(ステップS17)。到達予想電荷量Qは、前述の通り、最初に入力した撮影条件にしたがってX線を照射し続けた場合、X線の照射終了時に素抜け画素に蓄積される信号電荷量である。
【0083】
その後、撮影条件算出部84において、到達予想電荷量Qは閾値Thと比較される(ステップS18)。到達予想電荷量Qが閾値Thを超える場合、撮影条件算出部84はX線の照射終了時に、素抜け画素に蓄積される信号電荷量が閾値Th(あるいは閾値Th以下の所定値)になるように、新たな撮影条件を算出する(ステップS19)。ここで算出する撮影条件は、最初の撮影条件に対して管電圧を低減させたものである。
【0084】
こうして撮影条件算出部84が算出した新たな撮影条件が算出されると、この新たな撮影条件に基づいて照射するX線がフィードバック制御される(ステップS20)。具体的には、線源制御装置19は、撮影条件算出部84から新たな撮影条件の入力を受けると、直ちにその撮影条件にしたがったX線をX線源17から照射させる。これにより、最初に入力した撮影条件に基づくX線と比較して、エネルギーが低減されたX線が、X線の照射途中から照射されるようになる。
【0085】
一方、到達予想電荷量Qが閾値Th以下の場合(S18:No)、新たな撮影条件の算出(S19)及びX線のエネルギーを低下させるフィードバック制御(S20)は行われず、X線制御装置19は、撮影条件算出部84からの制御信号の入力に基づき、最初に入力した撮影条件にしたがったX線の照射を継続する。
【0086】
線源制御装置19は、タイマを監視して撮影条件で設定された照射時間が経過すると、X線源17に対して終了同期信号を送り、X線の照射を終了させる(ステップS21)。同時に、線源制御装置19は終了同期信号をコンソール22に送信し、コンソール22は電子カセッテ12を蓄積動作から読み出し動作に移行させる(ステップS22)。このX線照射終了後に行う読み出し動作では、アンプ72のゲインを変えながら所定回数、X線画像が読み出される。例えば、読み出し動作における最初(1回目)の読み出しでは、出力回路71のアンプ72のゲインは、撮影条件に応じた所定値(初期値)γ1に設定されており、その状態で全ての画素が非破壊読み出しされる。また、次(2回目)の読み出しでは、アンプ72のゲインは、初期値γ1とは異なる値γ2(γ1≠γ2)に設定される。その後も同様であり、所定回数の読み出しで各々ゲインの値は異なる。
【0087】
読み出された複数のX線画像は、コンソール22に送信され、フレームメモリ81に記憶される。そして、画像合成部85によって、これらのX線画像が合成(平均)され、合成X線画像が生成される(ステップS23)。生成された合成X線画像は、オフセット処理(ステップS24)、欠陥補正処理(ステップS25)が施され、モニタ23に表示されたり、画像サーバ(図示しない)に送信されたりする。同時に、電子カセッテ12ではリセット動作を行い、画素PXに蓄積した信号電荷を破棄する(ステップS26)。
【0088】
上述のように、X線撮影システム10では、X線の照射中に非破壊に読み出した素抜け画素の画素値(代表値D)に基づいて、照射するX線をフィードバック制御し、X戦傷者終了時の素抜け画素の画素値が閾値Thを超えないように動作する。
【0089】
図9に示すように、X線源17のフィードバック制御を行なわず、最初に入力した撮影条件にしたがってX線を照射する場合、照射スイッチ21がオンされることにより線源制御装置19に照射開始信号が入力された時刻TsからX線の照射を開始し、撮影条件で定められた照射時間の経過時である時刻TeにX線の照射を終了する。電子カセッテ12は、X線の照射開始前(〜Ts)は待機動作を、X線の照射中(Ts〜Te)は蓄積動作を、X線の照射終了後(Te〜)は読み出し動作を行う。
【0090】
この間の素抜け画素の画素値(以下、素抜け画素値という)は、次のように変化する。X線の照射開始前は、暗電流によるノイズによって若干の信号電荷が発生することがあるが、電子カセッテ12が待機動作中であり、所定間隔でリセット動作を繰り返し行なっているので、素抜け画素値はほぼ0である。X線の照射が開始されると、素抜け画素値は、X線の照射時間にほぼ比例して増大する。そして、X線の照射終了時には、例えば、素抜け画素値は、閾値Thを超えるとする。
【0091】
イメージセンサ42は単結晶シリコン基板を用いているため、X線の照射量の累積値が多いほど劣化や故障が発生するので、1回のX線撮影で素抜け画素値が閾値Thを超えると、劣化や故障が発生し、使用できなくなるまでに行える撮影の回数が減少する。当然、閾値Thを超えた量が多いほど、イメージセンサ42の劣化や故障の発生確率が上がり、電子カセッテ12は短命化する。
【0092】
一方、図10に示すように、X線撮影システム10では、X線の照射開始後(Ts〜)、所定のタイミングt1で、X線画像を素抜け検出用画像として非破壊に読み出し、素抜け画素値Dを求める。そして、素抜け画素値Dに基づいて、X線源17をフィードバック制御し、X線の照射エネルギーを低減する。t1以降のX線の照射エネルギーは、X線の照射終了時Teの素抜け画素値が閾値Thになるように定められるので、X線撮影システム10では、1回のX線撮影で素抜け画素値が閾値Thを超えることがない。
【0093】
このため、X線撮影システム10では、上述のように、X線の照射途中での素抜け画素値に基づいて照射するX線のフィードバック制御を行わない比較例と比べると、イメージセンサ42の劣化や故障の発生を抑えられ、電子カセッテ12を長寿命化することができる。具体的には、電子カセッテ12による最低撮影回数が定められているとすると、上述の比較例の場合には、素抜け画素値が閾値Thを超えるようなX線撮影を行うと最低撮影回数の撮影を行う前にイメージセンサ42の劣化・故障が発生するが、X線撮影システム10では最低撮影回数の撮影を確実に行うことができる。
【0094】
また、いわゆる関心領域の画素を監視して、X線のフィードバック制御を行う場合と比較すると、関心領域は通常被検体部分であるため、関心領域の画素値が飽和しないようにX線をフィードバックしても、被検体Hがない素抜け画素では画素値が閾値Thを超える。素抜け画素の位置は被検体Hに応じて変わり、被検体Hが変われば、以前の撮影で素抜け画素であった画素が、次の撮影では関心領域の画素になることもある。このため、関心領域の画素を監視しても、電子カセッテ12を長寿命化することはできない。一方、X線撮影装置10では、素抜け画素を監視しているので、被検体Hが変わって素抜け画素が関心領域の画素になったとしても、電子カセッテ12の寿命には影響がない。
【0095】
なお、上述の実施形態では、照射するX線のフィードバック制御をするときに、X線管の管電圧を下げ、X線のエネルギーを低減する例を説明した。また、管電流を下げ、X線の線量を低減する例にも言及した。しかし、図11に示すように、X線の照射時間をTeからTe’に短縮し、X線の照射終了時の素抜け画素値を閾値Thとなる時刻でX線の照射を停止することにより、素抜け画素値が閾値Thを超えることを防いでも良い。X線の照射時間だけを短縮する場合、X線の線量やエネルギーは最初に入力した撮影条件に基づいたものである。前述のように、X線の入射量による単結晶シリコン基板の劣化や故障を防ぐためには、X線のエネルギーを低下させることが最も効果的であるため、上述のように照射時間を短縮する場合、これと同時にX線管の管電圧を下げ、X線のエネルギーを低下させることがより好ましい。
【0096】
なお、上述の実施形態では、X線のフィードバック制御する例として、X線のエネルギーを低下させる例を説明したが、X線の照射範囲を狭くするようにX線源17を制御して、素抜け画素の信号電荷量が増加しないようにしても良い。こうすると、最初に入力した撮影条件に応じたX線の照射を継続しつつ、イメージセンサ42の損傷を防止することができる。
【0097】
なお、上述の実施形態では、X線のエネルギーをフィードバック制御する例を説明したが、X線源17のコリメータを制御して照射野を制限しても良い。例えば、素抜け検出用画像から代表値Dを算出するのと同様に、ヒストグラム解析により、被検体Hを表す分布Aに属する画素を検出する。そして分布Aに属する画素が全て含まれる所定範囲(例えば長方形)が新たな照射野となるように、コリメータを制御して、照射野を被検体Hの部分に限定する。こうすると、到達予想線量Qが閾値Thを超えやすい素抜け画素にはX線が照射されなくなるので、閾値Thを超える過剰なX線の照射によるイメージセンサ42の破損が防止される。また、この場合、素抜け画素へのX線の照射量が低減されれば良いので、新たな照射野に被検体Hの全体が含まれている必要はなく、被検体Hの一部分(関心領域)に照射野を限定しても良い。
【0098】
なお、上述の実施形態では、X線の照射中に1回だけ非破壊読み出しをして素抜け検出用画像を得る例を説明したが、X線の照射中に複数回の非破壊読み出しをしても良い。X線の照射中に複数回の非破壊読み出しをして、素抜け検出用画像を複数得る場合には、これらのそれぞれについて代表値Dを算出し、代表値Dの変化に基づいて到達予想電荷量Qを算出する。こうすると、上述の実施形態のように、1回だけ非破壊読み出しを行う場合よりも、より精度良く到達予想電荷量Qを算出することができる。
【0099】
なお、上述の実施形態では、X線の照射中に素抜け検出用画像を得る場合にも、X線の照射終了後と同様の読み出しをするが、素抜け検出用画像を得るタイミングでは、X線の照射量がまだ少なく、画素値が小さいので、複数の画素をビニングすることにより、感度を上げた読み出しをし、読み出しによるノイズを低減することが好ましい。このように、画素をビニングして読み出すようにすると、読み出し速度も向上するので、X線がフィードバック制御されるまでの時間も短縮され、より制御精度良くなる。また、X線のフィードバック制御を高速にするだけであれば、素抜け検出用画像を得るときに、一部の画素のデータを読み出さない、いわゆる間引き読み出しをしても良い。但し、ビニングや間引きによる読み出しは、いずれも解像度が低下するがフィードバック制御をするためには解像度はそれほど必要ないため十分な精度を持つ。
【0100】
また、このようにビニングや間引き読み出しをしても良いことからも分かるとおり、全述の実施形態では、素抜け画素検出部82において、素抜け検出用画素の全画素を用いたヒストグラム解析により代表値Dを決定するが、必ずしも全画素を用いる必要はない。具体的には、前述のヒストグラム解析を行うことができる程度に、X線画像の全領域から満遍なく画素値を取得すれば足りる。ヒストグラム解析を行うことができる程度とは、最終的に観察に用いるX線画像と解像度が極端に相違しない程度である。
【0101】
なお、上述の実施形態では、X線の照射終了後に、アンプ72のゲインを変えながら所定回数のX線画像の読み出しを行うが、X線の照射終了後にX線画像の読み出す回数を素抜け検出用画像に基づいて決定するようにしても良い。例えば、撮影条件算出部84において、到達予想電荷量Qに比例するように、X線照射終了後の読み出し回数を決定する。到達予想電荷量Qが多い場合、X線のフィードバック制御により素抜け画素値が閾値Thに抑えられると、到達予想電荷量Qと実際の信号電荷量の差が大きく、実際に得られる信号電荷量及びX線画像の画素値は小さくなる。このため、最初に入力した撮影条件で撮影した場合と同等の画質のX線画像を得るためには、到達予想電荷量Qが大きいほど、X線照射終了後の読み出し回数を多くし、得られる複数のX線画像から生成される合成X線画像のノイズを低減する必要があるからである。
【0102】
また、X線の照射終了後に最初に得たX線画像に基づいて、読み出し回数を決定しても良い。例えば、X線照射終了後に最初に得たX線画像の画素値が小さく、画素PXに蓄積された信号電荷量が少ない場合には、読み出し回数を多くする。こうすると、上述と同様、合成X線画像のノイズが低減され、X線をフィードバック制御しない場合と比較して画質の低下を最小限にすることができる。
【0103】
なお、上述の実施形態では、X線画像の読み出し毎にアンプ72のゲインを変える例を説明したが、読み出すX線画像を複数の領域に分割し、各領域毎にアンプ72のゲインを変えてX線画像を読み出しても良い。
【0104】
なお、上述の実施形態では、X線の照射終了後に複数回のX線画像の読み出しを行う例を説明したが、例えば撮影条件として関心領域を定め、関心領域の画素が飽和せず、かつ、最も低ノイズになるようにアンプ72のゲインを定めて、1回だけX線画像を読み出しても良い。関心領域の画素が飽和せず、かつ、最も低ノイズになるようにアンプ72のゲインは、例えば、素抜け検出用画像における関心領域の画素の画素値に基づいて定めれば良い。また、この場合には、破壊読み出しを行なっても良い。
【0105】
なお、上述の実施形態では、X線の照射終了後に画素PXに信号電荷を保持したまま、複数回のX線画像の読み出しをする例を説明したが、CDS回路68で電圧信号をサンプリングし、保持した状態で、同じ画素PXについてアンプ72のゲインを変えながら複数のデータを取得するようにしても良い。これは、複数回の読み出しを行なって得る各X線画像を、行毎に取得することに対応する。こうすると、読み出しと同時に画素PXの信号電荷を破棄することができる。
【0106】
なお、上述の実施形態では、アンプ72のゲインの値は任意であるが、アンプ72のゲインは、例えば、初期値γ1の2n(nは0を除く整数)倍であることが好ましい。これは合成X線画像の生成の画素値の演算をビットシフトによって行うことができ、容易かつ高速だからである。また、上述の実施形態では説明を省略したが、X線画像には読み出し時のゲインの値を示すヘッダ情報を付加しておくことが好ましい。
【0107】
なお、上述の実施形態では、アンプ72のゲインの値は任意であるが、複数回の読み出しを行う毎に、アンプ72のゲインは徐々に小さくなるようにすることが好ましい。例えば、図12に示すように、合計で5回のX線画像の読み出しを行う場合、2回目の読み出し時に設定するゲインγ2は、最初(1回目)の読み出し時のゲインγ1よりも小さい範囲内の値にする。また、3回目の読み出し時に設定するゲインγ3は、2回目の読み出し時のゲインγ2よりも小さい範囲内の値にする。4回目以降の読み出し時も同様であり、γ1>γ2>γ3>γ4>γ5>・・・である。これは、X線の照射がない状態であっても、時間の経過とともに暗電流によるノイズ成分が増大するため、高感度(ゲインが高い)の読み出しを後から行うとノイズ成分が大きくなってしまうからである。このように、再読み出しの度にゲインを徐々に低くする場合、最初(1回目)の読み出し時のゲインγ1は前述の通り撮影条件によって予め定める値であるが、最初の読み出し時のゲインγ1を意図的に適正値よりも高く設定しておく。こうすれば、上述の条件を容易に満たすことができる。
【0108】
なお、上述の実施形態では、読み出し時のゲインが異なる複数のX線画像から合成X線画像を生成した後に、オフセット処理及び欠陥補正処理を施す例を説明したが、フレームメモリ81から読み出した複数のX線画像にオフセット処理や欠陥補正処理を施してから合成X線画像を生成しても良い。オフセット処理をしてから合成X線画像を生成し、その後欠陥補正処理をしたり、欠陥補正処理をしてから合成X線画像を生成し、その後オフセット処理をしても良い。また、オフセット処理と欠陥補正処理を行う順序も任意である。
【0109】
なお、上述の実施形態では、出力回路71のアンプ72のゲインを変更しながら再読み出しを行う例を説明したが、各画素PXのトランジスタM1のゲインを可変とし、各画素PXから電圧信号を出力する段階でゲインを調節しても良い。FPD13の画素PXはデジタルカメラ等に用いる小型の固体撮像素子よりも画素サイズが大きいので、FPD13の各画素PXに可変ゲインアンプを用いることは可能である。
【0110】
なお、上述の実施形態では、素抜け検出用画像を得るときに、検出面43aの全体の画像を得る例を説明したが、素抜け検出用画像は、検出面43aの一部の画素から読み出した画像であっても良い。例えば、撮影条件が定まると、被検体Hがなく、素抜け画素になりやすい領域(以下、非関心領域という)が定まる。素抜け検出用画像は、素抜け画素の画素値を検出するためのものであるので、この非関心領域の画像だけを得るようにしても、代表値D等を決定し、上述の実施形態のように、X線をフィードバック制御することができる。このように素抜け検出用画像として、非関心領域の画像を得るようにすると、検出面43aの全体の画像を読み出す場合よりも、取得する画素数が少ないので、X線のフィードバック制御をより早く行うことができる。但し、非関心領域の画像を得る場合には、前述のようにヒストグラム解析を行うことができないので、例えば、非関心領域の画像の画素値の平均値を代表値Dとすれば良い。
【0111】
なお、上述の実施形態では、閾値Thは、撮影条件によらずに予め定められた所定値であるが、閾値Thは、撮影条件に応じて定められることが好ましい。すなわち、閾値Thは、撮影条件毎に異なる値であることが好ましい。例えば、X線のエネルギーや線量が大きいほどイメージセンサ42の損傷が大きいため、照射するX線が高エネルギー(高線量)の場合には閾値Thを低く設定することが好ましく、低エネルギー(低線量)の場合には閾値Thを高く設定して、より多くの信号電荷の蓄積を許容することができるからである。
【0112】
なお、上述の実施形態では、線源制御装置19がコンソール22と通信することによって電子カセッテ12とX線源17の同期をとる例を説明したが、線源制御部19とコンソール22が通信をせず、電子カセッテでX線の照射開始や照射終了、入射X線量等を検出し、自動露光制御(AEC)をするX線撮影システムも知られている。こうしたX線撮影システムでは、例えば、X線画像を検出するための画素PXの他に、入射X線量等を測定するためのフォトタイマーが、イメージセンサ42の前面(X線の入射側の面)に設けられることがある。しかし、X線撮影システム10では、X線画像検出用の画素PXを用いてX線の入射量を算出するので、フォトタイマーは不要であり、フォトタイマーによる入射X線のエネルギー等の損失はない。このため、X線撮影システム10では、X線のエネルギー等を低減し、被検体Hの被曝量を抑えやすい。
【0113】
なお、上述の実施形態では、到達予想電荷量Qに基づいてX線をフィードバック制御する例を説明したが、X線のフィードバック制御をするために算出する量は到達予想電荷量Qに限らない。例えば、代表値Dに基づいて、X線の照射終了時点における素抜け画素への到達線量(到達予想線量)を算出しても良い。この場合も制御態様等は、上述の実施形態と同様である。
【0114】
なお、上述の実施形態では、素抜け検出用画像をヒストグラム解析することにより、素抜け画素及び素抜け画素の画素値(代表値D)を検出したが、素抜け検出用画像に写し出された像を、被検体Hと素抜けに分ける画像解析により、素抜け画素を検出しても良い。この場合、例えば、検出した素抜け画素の平均値を上述の実施形態の代表値Dとすれば良い。
【0115】
なお、上述の実施形態では、イメージセンサ42を、単結晶シリコン基板を用いて形成する例を説明したが、イメージセンサ42にシリコン以外の結晶半導体や化合物半導体、有機物半導体を用いる場合も本発明は好適である。
【0116】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0117】
例えば、上記各実施形態では裏面照射型の電子カセッテ12を例に説明したが、X線の入射側からシンチレータ,FPDの順に配置される表面入射(PSS)方式の電子カセッテも好適に用いることができる。また、上述の実施形態では、FPD13がCMOS型の例を説明したが、非破壊読み出しをすることができればその他の態様のイメージセンサを用いても良い。さらに、シンチレータ41を用いる間接変換型のFPD13を例に説明したが、シンチレータを介さずにアモルファスセレン等のX線変換層によりX線を直接電荷に変換する直接変換型のFPDを用いることもできる。
【0118】
また、X線源と線源制御装置からなるX線発生装置と、電子カセッテとコンソールからなるX線撮影装置との間で、X線の照射開始及び終了に関する同期制御を、同期信号の通信によって行う例で説明したが、照射検知センサなどを設けてX線の照射開始及び終了を自己検知する機能をX線撮影装置に設けてもよい。こうすれば、X線発生装置とX線撮影装置の間の同期信号の通信は不要となる。この場合には、FPDの画素を照射検知センサとして利用してもよい。
【0119】
また、X線撮影装置を電子カセッテとコンソールで構成する例で示したが、コンソールの機能のうち電子カセッテを制御する機能をコンソールとは別の撮影制御装置として構成して、電子カセッテ、撮影制御装置、コンソールの3つの装置でX線撮影装置を構成してもよい。また、撮影制御装置の機能を電子カセッテに内蔵したり、それに代えて又は加えて、画像処理部26の機能を電子カセッテに内蔵したりしてもよい。また、撮影制御装置に加えてコンソールの機能を電子カセッテに内蔵する等、電子カセッテと、撮影制御装置やコンソールを一体化してもよい。
【0120】
また、本発明のX線撮影装置は、電子カセッテの形態に限らず、FPDが撮影台に内蔵された据え置き型のX線撮影装置でもよい。
【0121】
また、回路基板41に形成された回路素子や駆動回路51をICチップ46として、CDS回路68等からなる読み出し回路を構成するASICをICチップ47として、各々イメージセンサ42とは別体に実装する例を説明したが、これらはイメージセンサ42の基板上に形成されていても良い。すなわち、上記各種回路等は、画素PX等と一体に、単結晶シリコン基板上に形成されていても良い。このように、駆動回路51やCDS回路68等の各種回路を画素PX等と一体に、同一基板上に設けると、ICチップやフレキシブルケーブルを削減でき、また、組み立ても容易になるため、コストダウンを図ることができる。
【0122】
本発明は、X線に限らず、γ線等の他の放射線を使用する撮影システムにも適用することができる。
【符号の説明】
【0123】
10 X線撮影システム
12 電子カセッテ
13 FPD
17 X線源
22 コンソール
26 画像処理部
31 筐体
41 シンチレータ
42 イメージセンサ
52 A/D変換回路
71 出力回路
72 アンプ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影条件にしたがって放射線源から照射され被検体を透過した放射線を受けて、被検体の放射線画像を検出する放射線画像検出手段であり、単結晶半導体を用いて形成され、前記放射線の入射量に応じた信号電荷を蓄積する複数の画素を有し、前記画素から前記信号電荷の蓄積量に基づいた前記放射線画像を表すデータを非破壊に読み出す事が可能な放射線画像検出手段と、
前記放射線の照射途中に非破壊に読み出された前記放射線画像から、前記被検体を経ずに直接前記放射線が到達する素抜け画素の画素値を検出する素抜け画素検出手段と、
前記素抜け画素の画素値、前記放射線の照射開始時刻から前記放射線の照射途中に非破壊に読み出された前記放射線画像の取得時までの経過時間、及び、前記放射線の照射終了時刻に基づいて、前記放射線の照射終了時に前記素抜け画素に蓄積される前記信号電荷量を、到達予想電荷量として算出する到達予想電荷量算出手段と、
前記到達予想電荷量を所定閾値と比較し、前記到達予想電荷量が前記所定閾値を超える場合に、前記放射線の照射終了時刻に前記素抜け画素に蓄積される信号電荷が前記所定閾値になるように前記放射線源を制御するための新たな前記撮影条件を算出する撮影条件算出手段と、
最初の前記撮影条件に基づいた前記放射線の照射途中で、前記撮影条件算出手段によって算出された新たな前記撮影条件に基づいた前記放射線が照射されるように、前記放射線源をフィードバック制御する放射線源制御手段と、
を備えることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項2】
前記撮影条件算出手段が算出する新たな撮影条件は、前記放射線のエネルギーを低下させる撮影条件であることを特徴とする請求項1記載の放射線撮影装置。
【請求項3】
前記撮影条件算出手段が算出する新たな撮影条件は、前記放射線の線量を低下させる撮影条件であることを特徴とする請求項1または2記載の放射線撮影装置。
【請求項4】
前記撮影条件算出手段が算出する新たな撮影条件は、前記放射線の照射時間を短縮する撮影条件であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項5】
前記撮影条件算出手段が算出する新たな撮影条件は、前記放射線の照射野を制限する撮影条件であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項6】
前記放射線検出手段から前記放射線画像を読み出す際に前記信号電荷に応じた信号を増幅するとともに、ゲインが可変な増幅手段と、
前記放射線の照射終了後に、前記増幅手段のゲインを変えながら読み出された複数の前記放射線画像を合成して、前記被検体を観察するための合成放射線画像を生成する画像合成手段と、
を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項7】
前記画像合成手段は、前記増幅手段のゲインを変えながら読み出された複数の前記放射線画像を、前記放射線画像の読み出し時のノイズが低減されるように合成することを特徴とする請求項6記載の放射線撮影装置。
【請求項8】
前記画像合成手段は、前記増幅手段のゲインを変えながら読み出された複数の前記放射線画像を、ダイナミックレンジが拡大されるように合成することを特徴とする請求項6または7記載の放射線撮影装置。
【請求項9】
前記画像合成手段は、前記増幅手段のゲインを変えながら読み出された複数の前記放射線画像を平均して、前記合成放射線画像を生成することを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項10】
前記放射線検出手段は、前記放射線を光に変換するシンチレータと、前記シンチレータが発する光を光電変換することにより前記放射線画像を検出するイメージセンサとを有し、前記放射線の入射側から、前記イメージセンサ、前記シンチレータの順に配置されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項11】
放射線源と、撮影条件にしたがって放射線源から照射され被検体を透過した放射線を受けて、被検体の放射線画像を撮影する放射線撮影装置とからなる放射線撮影システムにおいて、
前記放射線撮影装置は、
単結晶半導体を用いて形成され、前記放射線の入射量に応じた信号電荷を蓄積する複数の画素を有し、前記画素から前記信号電荷の蓄積量に基づいた前記放射線画像を表すデータを非破壊に読み出す事が可能な放射線画像検出手段と、
前記放射線の照射途中に非破壊に読み出された前記放射線画像から、前記被検体を経ずに直接前記放射線が到達する素抜け画素の画素値を検出する素抜け画素検出手段と、
前記素抜け画素の画素値、前記放射線の照射開始時刻から前記放射線の照射途中に非破壊に読み出された前記放射線画像の取得時までの経過時間、及び、前記放射線の照射終了時刻に基づいて、前記放射線の照射終了時における前記素抜け画素の到達予想電荷量を算出する到達予想電荷量算出手段と、
前記到達予想電荷量を所定閾値と比較し、前記到達予想電荷量が前記所定閾値を超える場合に、前記放射線の照射終了時刻に前記素抜け画素に蓄積される信号電荷が前記所定閾値になるように前記放射線源を制御する新たな前記撮影条件を算出する撮影条件算出手段と、
前記放射線の照射途中で、前記撮影条件算出手段によって算出された新たな前記撮影条件に基づいた前記放射線が照射されるように、前記放射線源をフィードバック制御する放射線源制御手段と、
を備えることを特徴とする放射線撮影システム。
【請求項12】
単結晶半導体を用いて形成され、撮影条件にしたがって被検体に照射した放射線を受けて放射線画像を検出する複数の画素を有するとともに、前記画素から前記放射線画像を表すデータを非破壊に読み出す事が可能な放射線画像検出手段によって、前記画素に前記放射線の入射量に応じた信号電荷を蓄積する信号電荷蓄積ステップと、
前記信号電荷蓄積ステップの途中で、前記放射線画像を非破壊に読み出す放射線画像読み出しステップと、
前記放射線画像読み出しステップで得た前記放射線画像から、前記被検体を経ずに直接前記放射線が到達する素抜け画素の画素値を検出する素抜け画素検出ステップと、
前記素抜け画素の画素値、前記放射線の照射開始時刻から前記放射線の照射途中に非破壊に読み出された前記放射線画像の取得時までの経過時間、及び、前記放射線の照射終了時刻に基づいて、前記放射線の照射終了時における前記素抜け画素の到達予想電荷量を算出する到達予想電荷量算出ステップと、
前記到達予想電荷量を所定閾値と比較し、前記到達予想電荷量が前記所定閾値を超える場合に、前記放射線の照射終了時刻に前記素抜け画素に蓄積される信号電荷が前記所定閾値になるように前記放射線源を制御する新たな前記撮影条件を算出する撮影条件算出手ステップと、
前記撮影条件算出ステップで算出された新たな前記撮影条件に基づいた前記放射線が照射されるように、前記信号電荷蓄積ステップの途中で前記放射線をフィードバック制御するフィードバック制御ステップと、
を備えることを特徴とする放射線撮影方法。
【請求項1】
撮影条件にしたがって放射線源から照射され被検体を透過した放射線を受けて、被検体の放射線画像を検出する放射線画像検出手段であり、単結晶半導体を用いて形成され、前記放射線の入射量に応じた信号電荷を蓄積する複数の画素を有し、前記画素から前記信号電荷の蓄積量に基づいた前記放射線画像を表すデータを非破壊に読み出す事が可能な放射線画像検出手段と、
前記放射線の照射途中に非破壊に読み出された前記放射線画像から、前記被検体を経ずに直接前記放射線が到達する素抜け画素の画素値を検出する素抜け画素検出手段と、
前記素抜け画素の画素値、前記放射線の照射開始時刻から前記放射線の照射途中に非破壊に読み出された前記放射線画像の取得時までの経過時間、及び、前記放射線の照射終了時刻に基づいて、前記放射線の照射終了時に前記素抜け画素に蓄積される前記信号電荷量を、到達予想電荷量として算出する到達予想電荷量算出手段と、
前記到達予想電荷量を所定閾値と比較し、前記到達予想電荷量が前記所定閾値を超える場合に、前記放射線の照射終了時刻に前記素抜け画素に蓄積される信号電荷が前記所定閾値になるように前記放射線源を制御するための新たな前記撮影条件を算出する撮影条件算出手段と、
最初の前記撮影条件に基づいた前記放射線の照射途中で、前記撮影条件算出手段によって算出された新たな前記撮影条件に基づいた前記放射線が照射されるように、前記放射線源をフィードバック制御する放射線源制御手段と、
を備えることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項2】
前記撮影条件算出手段が算出する新たな撮影条件は、前記放射線のエネルギーを低下させる撮影条件であることを特徴とする請求項1記載の放射線撮影装置。
【請求項3】
前記撮影条件算出手段が算出する新たな撮影条件は、前記放射線の線量を低下させる撮影条件であることを特徴とする請求項1または2記載の放射線撮影装置。
【請求項4】
前記撮影条件算出手段が算出する新たな撮影条件は、前記放射線の照射時間を短縮する撮影条件であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項5】
前記撮影条件算出手段が算出する新たな撮影条件は、前記放射線の照射野を制限する撮影条件であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項6】
前記放射線検出手段から前記放射線画像を読み出す際に前記信号電荷に応じた信号を増幅するとともに、ゲインが可変な増幅手段と、
前記放射線の照射終了後に、前記増幅手段のゲインを変えながら読み出された複数の前記放射線画像を合成して、前記被検体を観察するための合成放射線画像を生成する画像合成手段と、
を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項7】
前記画像合成手段は、前記増幅手段のゲインを変えながら読み出された複数の前記放射線画像を、前記放射線画像の読み出し時のノイズが低減されるように合成することを特徴とする請求項6記載の放射線撮影装置。
【請求項8】
前記画像合成手段は、前記増幅手段のゲインを変えながら読み出された複数の前記放射線画像を、ダイナミックレンジが拡大されるように合成することを特徴とする請求項6または7記載の放射線撮影装置。
【請求項9】
前記画像合成手段は、前記増幅手段のゲインを変えながら読み出された複数の前記放射線画像を平均して、前記合成放射線画像を生成することを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項10】
前記放射線検出手段は、前記放射線を光に変換するシンチレータと、前記シンチレータが発する光を光電変換することにより前記放射線画像を検出するイメージセンサとを有し、前記放射線の入射側から、前記イメージセンサ、前記シンチレータの順に配置されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項11】
放射線源と、撮影条件にしたがって放射線源から照射され被検体を透過した放射線を受けて、被検体の放射線画像を撮影する放射線撮影装置とからなる放射線撮影システムにおいて、
前記放射線撮影装置は、
単結晶半導体を用いて形成され、前記放射線の入射量に応じた信号電荷を蓄積する複数の画素を有し、前記画素から前記信号電荷の蓄積量に基づいた前記放射線画像を表すデータを非破壊に読み出す事が可能な放射線画像検出手段と、
前記放射線の照射途中に非破壊に読み出された前記放射線画像から、前記被検体を経ずに直接前記放射線が到達する素抜け画素の画素値を検出する素抜け画素検出手段と、
前記素抜け画素の画素値、前記放射線の照射開始時刻から前記放射線の照射途中に非破壊に読み出された前記放射線画像の取得時までの経過時間、及び、前記放射線の照射終了時刻に基づいて、前記放射線の照射終了時における前記素抜け画素の到達予想電荷量を算出する到達予想電荷量算出手段と、
前記到達予想電荷量を所定閾値と比較し、前記到達予想電荷量が前記所定閾値を超える場合に、前記放射線の照射終了時刻に前記素抜け画素に蓄積される信号電荷が前記所定閾値になるように前記放射線源を制御する新たな前記撮影条件を算出する撮影条件算出手段と、
前記放射線の照射途中で、前記撮影条件算出手段によって算出された新たな前記撮影条件に基づいた前記放射線が照射されるように、前記放射線源をフィードバック制御する放射線源制御手段と、
を備えることを特徴とする放射線撮影システム。
【請求項12】
単結晶半導体を用いて形成され、撮影条件にしたがって被検体に照射した放射線を受けて放射線画像を検出する複数の画素を有するとともに、前記画素から前記放射線画像を表すデータを非破壊に読み出す事が可能な放射線画像検出手段によって、前記画素に前記放射線の入射量に応じた信号電荷を蓄積する信号電荷蓄積ステップと、
前記信号電荷蓄積ステップの途中で、前記放射線画像を非破壊に読み出す放射線画像読み出しステップと、
前記放射線画像読み出しステップで得た前記放射線画像から、前記被検体を経ずに直接前記放射線が到達する素抜け画素の画素値を検出する素抜け画素検出ステップと、
前記素抜け画素の画素値、前記放射線の照射開始時刻から前記放射線の照射途中に非破壊に読み出された前記放射線画像の取得時までの経過時間、及び、前記放射線の照射終了時刻に基づいて、前記放射線の照射終了時における前記素抜け画素の到達予想電荷量を算出する到達予想電荷量算出ステップと、
前記到達予想電荷量を所定閾値と比較し、前記到達予想電荷量が前記所定閾値を超える場合に、前記放射線の照射終了時刻に前記素抜け画素に蓄積される信号電荷が前記所定閾値になるように前記放射線源を制御する新たな前記撮影条件を算出する撮影条件算出手ステップと、
前記撮影条件算出ステップで算出された新たな前記撮影条件に基づいた前記放射線が照射されるように、前記信号電荷蓄積ステップの途中で前記放射線をフィードバック制御するフィードバック制御ステップと、
を備えることを特徴とする放射線撮影方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−94454(P2013−94454A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240516(P2011−240516)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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