説明

放射線撮影装置及び放射線撮影システム

【課題】被検者の被曝量を増加させることなく濃度補正用の画像を取得して診断用の放射線画像の画質の調整を行うことができる放射線撮影装置及び放射線撮影システムを提供する。
【解決手段】センサ部72を有する画素74が2次元状に複数配置された放射線検出器60と積層して、センサ部72よりも面積が大きいセンサ部146が2次元状に複数配置された放射線検出部62を配置し、放射線検出部62のセンサ部146による検出結果から得られる画像に基づいて、放射線検出器60の各画素74から電荷を読み出して放射線画像を生成する際の処理パラメータを調整した後、放射線検出器60の各画素74から電荷を読み出し、調整された処理パラメータに基づく処理を行って診断用の放射線画像を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線撮影装置及び放射線撮影システムに係り、特に、放射線源から射出されて被検者を透過した放射線により示される放射線画像の撮影を行う放射線撮影装置及び放射線撮影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、TFT(Thin Film Transistor)アクティブマトリクス基板上に放射線感応層を配置し、放射線を直接デジタルデータに変換できるFPD(Flat Panel Detector)等の放射線検出器が実用化されており、この放射線検出器を用いて、照射された放射線により表わされる放射線画像を撮影する放射線撮影装置が実用化されている。この放射線検出器を用いた放射線撮影装置は、従来のX線フィルムやイメージングプレートを用いた放射線撮影装置に比べて、即時に画像を確認でき、連続的に放射線画像の撮影を行う透視撮影(動画撮影)も行うことができるといったメリットがある。
【0003】
この種の放射線検出器は、種々のタイプのものが提案されており、例えば、放射線を一度CsI:Tl、GOS(GdS:Tb)などのシンチレータで光に変換し、変換した光をフォトダイオードなどのセンサ部で電荷に変換して蓄積する間接変換方式や、放射線をアモルファスセレン等の半導体層で電荷に変換する直接変換方式等があり、各方式でも半導体層に使用可能な材料が種々存在する。放射線撮影装置では、放射線検出器に蓄積された電荷を電気信号として読み出し、読み出した電気信号を増幅器で増幅した後にA/D(アナログ/デジタル)変換部でデジタルデータに変換している。
【0004】
ところで、放射線撮影装置では、放射線検出器とは別に放射線検出部を設けて放射線の照射の開始や終了、放射線の照射量を検出し、放射線を照射する放射線源の制御を行う技術が知られている
例えば、特許文献1には、放射線検出器(固体撮像装置と記載)とは別に、放射線を検出するセンサ部(放射線検出素子と記載)を設け、センサ部により放射線の出射の開始及び終了を検出して放射線検出器への電荷の蓄積、蓄積された電荷の読み出し制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−181942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、放射線撮影装置には、適切な濃度とコントラストの画像を得るために自動的に画像調整をする自動濃度補正機能(所謂、EDR:Exposure Data Recognizer)を有するものがある。
【0007】
この種の放射線撮影装置では、例えば、診断用の放射線画像の撮影前に濃度補正用の放射線画像を撮影し、濃度補正用の放射線画像を解析して、適切な濃度とコントラストの画像が得られるゲイン量などの各種パラメータを求め、各種パラメータをフィードバックさせて増幅器のゲイン量等を調整して診断用の放射線画像の撮影を行うことで濃度調整をしている。
【0008】
しかしながら、濃度補正用の放射線画像の撮影を診断用の放射線画像の撮影とは別に行った場合、被検者の被曝量が多くなる。
【0009】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、被検者の被曝量を増加させることなく濃度補正用の画像を取得して診断用の放射線画像の画質調整を行うことができる放射線撮影装置及び放射線撮影システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の放射線撮影装置は、放射線又は放射線が変換された光が照射されることにより電荷が発生する第1センサ部を有する画素が2次元状に複数配置された撮影部と、前記撮影部と積層して配置され、前記第1センサ部よりも面積が大きい第2センサ部が2次元状に複数配置された検出部と、前記検出部の各第2センサ部による検出結果から得られる画像に基づいて、前記撮影部の各画素から電荷を読み出して放射線画像を生成する際の処理パラメータを調整する調整手段と、前記撮影部の各画素から電荷を読み出し、前記調整手段により調整された処理パラメータに基づく処理を行って診断用の放射線画像を生成する生成手段と、を備えている。
【0011】
請求項1によれば、撮影部に、放射線又は放射線が変換された光が照射されることにより電荷が発生する第1センサ部を有する画素が2次元状に複数配置されており、第1センサ部よりも面積が大きい第2センサ部が2次元状に複数配置された検出部が撮影部と積層して配置されている。
【0012】
そして、調整手段により、検出部の各第2センサ部による検出結果から得られる画像に基づいて、撮影部の各画素から電荷を読み出して放射線画像を生成する際の処理パラメータが調整され、生成手段により、撮影部の各画素から電荷が読み出され、調整手段により調整された処理パラメータに基づく処理を行って診断用の放射線画像が生成される。
【0013】
このように、請求項1に記載の発明によれば、第1センサ部を有する画素が2次元状に複数配置された撮影部と積層して、第1センサ部よりも面積が大きい第2センサ部が2次元状に複数配置された検出部を配置し、検出部の各第2センサ部による検出結果から得られる画像に基づいて、撮影部の各画素から電荷を読み出して放射線画像を生成する際の処理パラメータを調整し、撮影部の各画素から電荷を読み出し、調整された処理パラメータに基づく処理を行って診断用の放射線画像を生成するので、被検者の被曝量を増加させることなく濃度補正用の画像を取得して診断用の放射線画像の画質調整を行うことができる。
【0014】
なお、本発明は、請求項2に記載の発明のように、前記調整手段が、前記生成手段により生成される放射線画像の被写体領域の主な濃度範囲が、所定の適正濃度範囲となるように処理パラメータを調整してもよい。
【0015】
また、本発明は、請求項3に記載の発明のように、前記生成手段が、前記撮影部の各画素から読み出される前記第1センサ部に発生した電荷量に応じた電気信号を増幅する増幅器を有し、前記調整手段が、前記処理パラメータとして前記増幅器のゲイン量を調整してもよい。
【0016】
また、本発明は、請求項4に記載の発明のように、前記生成手段が、前記撮影部の各画素から電荷を電気信号として読み出して当該電気信号を所定ビット数のデジタルデータに変換するA/D変換器を有し、前記A/D変換器により変換されたデジタルデータを前記所定ビット数よりも少ないビット数のデジタルデータに規格化する規格化処理を行うものとし、前記調整手段が、前記処理パラメータとして前記規格化処理の処理パラメータを調整してもよい。
【0017】
また、本発明は、請求項5に記載の発明のように、前記検出部の各第2センサ部による検出結果に基づいて放射線の照射開始、放射線の照射終了、及び放射線の照射量の少なくとも1つの検出を行う検出手段をさらに備えてもよい。
【0018】
また、本発明は、請求項6に記載の発明のように、前記撮影部が、放射線を光に変換する変換層を有し、前記第1センサ部が前記変換層で変換された光により表わされる放射線画像を撮影し、前記第2センサ部が、有機光電変換材料を含んで構成され、前記撮影部の放射線の照射面側に配置され、前記変換層で変換された光を検出してもよい。
【0019】
また、本発明は、請求項7に記載の発明のように、前記生成手段が、透視撮影の場合、透視撮影のフレームレートに応じた撮影周期で前記撮影部の各画素から電荷を読み出し、前記調整手段により調整された処理パラメータに基づく処理を行って放射線画像を生成し、前記調整手段が、前記撮影周期で前記検出部の各第2センサ部により放射線を検出し、検出結果から得られる画像に応じて前記処理パラメータを調整してもよい。
【0020】
また、本発明は、請求項8に記載の発明のように、前記検出部の各第2センサ部による検出結果から得られる画像を表示する表示手段をさらに備えてもよい。
【0021】
また、本発明は、請求項9に記載の発明のように、前記第2センサ部は、マトリクス状に複数配置されることが好ましい。
【0022】
一方、上記目的を達成するために、請求項10に記載の放射線撮影システムは、放射線又は放射線が変換された光が照射されることにより電荷が発生する第1センサ部を有する画素が2次元状に複数配置された、診断用の放射線画像を撮影するための撮影部と、前記撮影部と積層して配置され、前記第1センサ部よりも面積が大きい第2センサ部が2次元状に複数配置された検出部と、前記検出部の各第2センサ部による検出結果から得られる画像に応じて、前記撮影部の各画素から電荷を読み出して放射線画像を生成する際の処理パラメータを調整する調整手段と、前記撮影部の各画素から電荷を読み出し、前記調整手段により調整された処理パラメータに基づく処理を行って放射線画像を生成する生成手段と、を有している。
【0023】
従って、本発明によれば、第1センサ部を有する画素が2次元状に複数配置された撮影部と積層して、第1センサ部よりも面積が大きい第2センサ部が2次元状に複数配置された検出部を配置し、検出部の各第2センサ部による検出結果から得られる画像に基づいて、撮影部の各画素から電荷を読み出して放射線画像を生成する際の処理パラメータを調整し、撮影部の各画素から電荷を読み出し、調整された処理パラメータに基づく処理を行って診断用の放射線画像を生成するので、請求項1に記載の発明と同様に、被検者の被曝量を増加させることなく濃度補正用の画像を取得して診断用の放射線画像の画質調整を行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、被検者の被曝量を増加させることなく濃度補正用の画像を取得して診断用の放射線画像の画質調整を行うことができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施の形態に係る放射線情報システムの構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態に係る放射線画像撮影システムの放射線撮影室における各装置の配置状態の一例を示す側面図である。
【図3】実施の形態に係る電子カセッテの内部構成を示す透過斜視図である。
【図4】実施の形態に係る放射線検出器及び放射線検出部の構成を模式的に示した断面図である。
【図5】実施の形態に係る放射線検出器の薄膜トランジスタ及びコンデンサの構成を示した断面図である。
【図6】実施の形態に係るTFT基板の構成を示す平面図である。
【図7】第1の実施の形態に係る放射線検出部のセンサ部の配置構成を示す平面図である。
【図8】実施の形態に係る電子カセッテの電気系の要部構成を示すブロック図である。
【図9】実施の形態に係る放射線検出器の1画素部分に注目した等価回路図である。
【図10】実施の形態に係るコンソール及び放射線発生装置の電気系の要部構成を示すブロック図である。
【図11】第1の実施の形態に係る撮影制御プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】(A)は放射線検出部の各センサ部により検出された放射線画像の一例を示す図であり、(B)は、(A)の累積ヒストグラムを示すグラフである。
【図13】第2の実施の形態に係る撮影制御プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図14】(A)は異なる撮影条件下で撮影された放射線画像の累積ヒストグラムa、bを示すグラフであり、(B)は(A)の累積ヒストグラムa、bの被写体領域の主な濃度範囲MIN0〜MAX0及びMIN1〜MAX1がそれぞれ適正濃度範囲MIN2〜MAX2となるように規格化処理した結果を示すグラフであり、(C)は規格化処理で用いる変換関の一例を示すグラフである。
【図15】放射線が照射された際のセンサ部から出力される電気信号のデジタルデータの値の変化を示すグラフである。
【図16】放射線が照射された際の累計値の変化を示すグラフである。
【図17】他の形態に係る放射線検出器及び放射線検出部の構成を模式的に示した断面図である。
【図18】他の形態に係る放射線検出器及び放射線検出部の構成を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、ここでは、本発明を、可搬型の放射線撮影装置(以下「電子カセッテ」ともいう。)を用いて放射線画像の撮影を行う放射線画像撮影システムに適用した場合の形態例について説明する。
【0027】
[第1の実施の形態]
まず、図1を参照して、本実施の形態に係る放射線情報システム(以下、「RIS(Radiology Information System)」と称する。)10の構成について説明する。
【0028】
RIS10は、放射線科部門内における、診療予約、診断記録等の情報管理を行うためのシステムであり、病院情報システム(以下、「HIS(Hospital Information System)」と称する。)の一部を構成する。
【0029】
RIS10は、複数台の撮影依頼端末装置(以下、「端末装置」と称する。)12、RISサーバ14、及び病院内の放射線撮影室(あるいは手術室)の個々に設置された放射線画像撮影システム(以下、「撮影システム」と称する。)18を有しており、これらが有線や無線のLAN(Local Area Network)等から成る病院内ネットワーク16に各々接続されて構成されている。なお、RIS10は、同じ病院内に設けられたHISの一部を構成しており、病院内ネットワーク16には、HIS全体を管理するHISサーバ(図示省略。)も接続されている。
【0030】
端末装置12は、医師や放射線技師が、診断情報や施設予約の入力、閲覧等を行うためのものであり、放射線画像の撮影依頼や撮影予約もこの端末装置12を介して行われる。各端末装置12は、表示装置を有するパーソナル・コンピュータを含んで構成され、RISサーバ14と病院内ネットワーク16を介して相互通信が可能とされている。
【0031】
一方、RISサーバ14は、各端末装置12からの撮影依頼を受け付け、撮影システム18における放射線画像の撮影スケジュールを管理するものであり、データベース14Aを含んで構成されている。
【0032】
データベース14Aは、患者(被検者)の属性情報(氏名、性別、生年月日、年齢、血液型、体重、患者ID(Identification)等)、病歴、受診歴、過去に撮影した放射線画像等の患者に関する情報、撮影システム18で用いられる、後述する電子カセッテ32の識別番号(ID情報)、型式、サイズ、感度、使用可能な撮影部位(対応可能な撮影依頼の内容)、使用開始年月日、使用回数等の電子カセッテ32に関する情報、及び電子カセッテ32を用いて放射線画像を撮影する環境、すなわち、電子カセッテ32を使用する環境(一例として、放射線撮影室や手術室等)を示す環境情報を含んで構成されている。
【0033】
撮影システム18は、RISサーバ14からの指示に応じて医師や放射線技師の操作により放射線画像の撮影を行う。撮影システム18は、放射線源130(図2も参照。)から曝射条件に従った線量とされた放射線X(図3も参照。)を被検者に照射する放射線発生装置34と、被検者の撮影部位を透過した放射線Xを吸収して電荷を発生する放射線検出器60(図3も参照。)を内蔵する電子カセッテ32と、電子カセッテ32に内蔵されているバッテリを充電するクレードル40と、電子カセッテ32,放射線発生装置34,及びクレードル40を制御するコンソール42と、を備えている。
【0034】
コンソール42は、RISサーバ14からデータベース14Aに含まれる各種情報を取得して後述するHDD110(図10参照。)に記憶し、当該情報に基づいて、電子カセッテ32、放射線発生装置34、及びクレードル40の制御を行う。
【0035】
図2には、本実施の形態に係る撮影システム18の放射線撮影室44における各装置の配置状態の一例が示されている。
【0036】
同図に示すように、放射線撮影室44には、立位での放射線撮影を行う際に用いられる立位台45と、臥位での放射線撮影を行う際に用いられる臥位台46とが設置されており、立位台45の前方空間は立位での放射線撮影を行う際の被検者の撮影位置48とされ、臥位台46の上方空間は臥位での放射線撮影を行う際の被検者の撮影位置50とされている。
【0037】
立位台45には電子カセッテ32を保持する保持部150が設けられており、立位での放射線画像の撮影を行う際には、電子カセッテ32が保持部150に保持される。同様に、臥位台46には電子カセッテ32を保持する保持部152が設けられており、臥位での放射線画像の撮影を行う際には、電子カセッテ32が保持部152に保持される。
【0038】
また、放射線撮影室44には、単一の放射線源130からの放射線によって立位での放射線撮影も臥位での放射線撮影も可能とするために、放射線源130を、水平な軸回り(図2の矢印A方向)に回動可能で、鉛直方向(図2の矢印B方向)に移動可能で、さらに水平方向(図2の矢印C方向)に移動可能に支持する支持移動機構52が設けられている。ここで、支持移動機構52は、放射線源130を水平な軸回りに回動させる駆動源と、放射線源130を鉛直方向に移動させる駆動源と、放射線源130を水平方向に移動させる駆動源を各々備えている(何れも図示省略。)。
【0039】
一方、クレードル40には、電子カセッテ32を収納可能な収容部40Aが形成されている。
【0040】
電子カセッテ32は、未使用時にはクレードル40の収容部40Aに収納された状態で内蔵されているバッテリに充電が行われ、放射線画像の撮影時には放射線技師等によってクレードル40から取り出され、撮影姿勢が立位であれば立位台45の保持部150に保持され、撮影姿勢が臥位であれば臥位台46の保持部152に保持される。
【0041】
ここで、本実施の形態に係る撮影システム18では、放射線発生装置34とコンソール42とをそれぞれケーブルで接続して有線通信によって各種情報の送受信を行うが、図2では、放射線発生装置34とコンソール42を接続するケーブルを省略している。また、電子カセッテ32とコンソール42との間は、無線通信によって各種情報の送受信を行う。なお、放射線発生装置34とコンソール42の間の通信も無線通信によって通信を行うものとしてもよい。
【0042】
なお、電子カセッテ32は、立位台45の保持部150や臥位台46の保持部152で保持された状態のみで使用されるものではなく、その可搬性から、保持部に保持されていない状態で使用することもできる。
【0043】
図3には、本実施の形態に係る電子カセッテ32の内部構成が示されている。
【0044】
同図に示すように、電子カセッテ32は、放射線Xを透過させる材料からなる筐体54を備えており、防水性、密閉性を有する構造とされている。電子カセッテ32は、手術室等で使用されるとき、血液やその他の雑菌が付着するおそれがある。そこで、電子カセッテ32を防水性、密閉性を有する構造として、必要に応じて殺菌洗浄することにより、1つの電子カセッテ32を繰り返し続けて使用することができる。
【0045】
筐体54の内部には、放射線Xが照射される筐体54の照射面56側から、被検者を透過した放射線Xによる放射線画像を撮影するための放射線検出器60、照射された放射線の検出を行う放射線検出部62が順に配設されている。
【0046】
また、筐体54の内部の一端側には、マイクロコンピュータを含む電子回路及び充電可能で、かつ着脱可能なバッテリ96Aを収容するケース31が配置されている。放射線検出器60、及び電子回路は、ケース31に配置されたバッテリ96Aから供給される電力によって作動する。ケース31内部に収容された各種回路が放射線Xの照射に伴って損傷することを回避するため、ケース31の照射面56側には鉛板等を配設しておくことが望ましい。なお、本実施の形態に係る電子カセッテ32は、照射面56の形状が長方形とされた直方体とされており、その長手方向一端部にケース31が配置されている。
【0047】
また、筐体54の外壁の所定位置には、‘レディ状態’,‘データ送信中’といった動作モード、バッテリ96Aの残容量の状態等の電子カセッテ32の動作状態を示す表示を行う表示部56Aが設けられている。なお、本実施の形態に係る電子カセッテ32では、表示部56Aとして、発光ダイオードを適用しているが、これに限らず、発光ダイオード以外の発光素子や、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の他の表示手段としてもよい。
【0048】
図4には、本実施形態に係る放射線検出器60及び放射線検出部62の構成を模式的に示した断面図が示されている。
【0049】
放射線検出器60は、絶縁性基板64に薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor、以下「TFT」という)70、及び蓄積容量68が形成されたTFTアクティブマトリクス基板(以下、「TFT基板」という)66を備えている。
【0050】
このTFT基板66上には、入射される放射線を光に変換するシンチレータ71が配置される。
【0051】
シンチレータ71としては、例えば、CsI:Tl、GOSを用いることができる。なお、シンチレータ71は、これらの材料に限られるものではない。
【0052】
絶縁性基板64としては、光透過性を有し且つ放射線の吸収が少ないものであれば何れでもよく、例えば、ガラス基板、透明セラミック基板、光透過性の樹脂基板を用いることができる。なお、絶縁性基板64は、これらの材料に限られるものではない。
【0053】
TFT基板66には、本発明の第1センサ部に対応し、シンチレータ71によって変換された光が入射されることにより電荷を発生するセンサ部72が形成されている。また、TFT基板66には、TFT基板66上を平坦化するための平坦化層67が形成されている。また、TFT基板66とシンチレータ71との間であって、平坦化層67上には、シンチレータ71をTFT基板66に接着するための接着層69が形成されている。
【0054】
センサ部72は、上部電極72A、下部電極72B、及び該上下の電極間に配置された光電変換膜72Cを有している。
【0055】
光電変換膜72Cは、シンチレータ71から発せられた光を吸収し、吸収した光に応じた電荷を発生する。光電変換膜72Cは、光が照射されることにより電荷を発生する材料により形成すればよく、例えば、アモルファスシリコンや有機光電変換材料などにより形成することができる。アモルファスシリコンを含む光電変換膜72Cであれば、幅広い吸収スペクトルを持ち、シンチレータ71による発光を吸収することができる。有機光電変換材料を含む光電変換膜72Cであれば、可視域にシャープな吸収スペクトルを持ち、シンチレータ71による発光以外の電磁波が光電変換膜72Cに吸収されることがほとんどなく、X線等の放射線が光電変換膜72Cで吸収されることによって発生するノイズを効果的に抑制することができる。
【0056】
本実施の形態では、光電変換膜72Cに有機光電変換材料を含んで構成する。有機光電変換材料としては、例えばキナクリドン系有機化合物及びフタロシアニン系有機化合物が挙げられる。例えばキナクリドンの可視域における吸収ピーク波長は560nmであるため、有機光電変換材料としてキナクリドンを用い、シンチレータ71の材料としてCsI(Ti)を用いれば、上記ピーク波長の差を5nm以内にすることが可能となり、光電変換膜72Cで発生する電荷量をほぼ最大にすることができる。この光電変換膜72Cとして適用可能な有機光電変換材料については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
【0057】
図5には、本実施の形態に係るTFT基板66に形成されたTFT70及び蓄積容量68の構成が概略的に示されている。
【0058】
絶縁性基板64上には、下部電極72Bに対応して、下部電極72Bに移動した電荷を蓄積する蓄積容量68と、蓄積容量68に蓄積された電荷を電気信号に変換して出力するTFT70が形成されている。蓄積容量68及びTFT70の形成された領域は、平面視において下部電極72Bと重なる部分を有しており、このような構成とすることで、各画素部における蓄積容量68及びTFT70とセンサ部72とが厚さ方向で重なりを有することとなり、少なく面積で蓄積容量68及びTFT70とセンサ部72を配置できる。
【0059】
蓄積容量68は、絶縁性基板64と下部電極72Bとの間に設けられた絶縁膜65Aを貫通して形成された導電性材料の配線を介して対応する下部電極72Bと電気的に接続されている。これにより、下部電極72Bで捕集された電荷を蓄積容量68に移動させることができる。
【0060】
TFT70は、ゲート電極70A、ゲート絶縁膜65B、及び活性層(チャネル層)70Bが積層され、さらに、活性層70B上にソース電極70Cとドレイン電極70Dが所定の間隔を開けて形成されている。また、放射線検出器60では、活性層70Bが非晶質酸化物により形成されている。活性層70Bを構成する非晶質酸化物としては、In、Ga及びZnのうちの少なくとも1つを含む酸化物(例えばIn−O系)が好ましく、In、Ga及びZnのうちの少なくとも2つを含む酸化物(例えばIn−Zn−O系、In−Ga系、Ga−Zn−O系)がより好ましく、In、Ga及びZnを含む酸化物が特に好ましい。In−Ga−Zn−O系非晶質酸化物としては、結晶状態における組成がInGaO(ZnO)(mは6未満の自然数)で表される非晶質酸化物が好ましく、特に、InGaZnOがより好ましい。
【0061】
TFT70の活性層70Bを非晶質酸化物で形成したものとすれば、X線等の放射線を吸収せず、あるいは吸収したとしても極めて微量に留まるため、ノイズの発生を効果的に抑制することができる。
【0062】
ここで、TFT70の活性層70Bを構成する非晶質酸化物や、光電変換膜72Cを構成する有機光電変換材料は、いずれも低温での成膜が可能である。従って、絶縁性基板64としては、半導体基板、石英基板、及びガラス基板等の耐熱性の高い基板に限定されず、プラスチック等の可撓性基板、アラミド、バイオナノファイバを用いることもできる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の可撓性基板を用いることができる。このようなプラスチック製の可撓性基板を用いれば、軽量化を図ることもでき、例えば持ち運び等に有利となる。なお、絶縁性基板64には、絶縁性を確保するための絶縁層、水分や酸素の透過を防止するためのガスバリア層、平坦性あるいは電極等との密着性を向上するためのアンダーコート層等を設けてもよい。
【0063】
アラミドは、200度以上の高温プロセスを適用できるために、透明電極材料を高温硬化させて低抵抗化でき、また、ハンダのリフロー工程を含むドライバICの自動実装にも対応できる。また、アラミドは、ITO(indium tin oxide)やガラス基板と熱膨張係数が近いため、製造後の反りが少なく、割れにくい。また、アラミドは、ガラス基板等と比べて薄く基板を形成できる。なお、超薄型ガラス基板とアラミドを積層して絶縁性基板64を形成してもよい。
【0064】
バイオナノファイバは、バクテリア(酢酸菌、Acetobacter Xylinum)が産出するセルロースミクロフィブリル束(バクテリアセルロース)と透明樹脂との複合したものである。セルロースミクロフィブリル束は、幅50nmと可視光波長に対して1/10のサイズで、かつ、高強度、高弾性、低熱膨である。バクテリアセルロースにアクリル樹脂、エポキシ樹脂等の透明樹脂を含浸・硬化させることで、繊維を60−70%も含有しながら、波長500nmで約90%の光透過率を示すバイオナノファイバが得られる。バイオナノファイバは、シリコン結晶に匹敵する低い熱膨張係数(3−7ppm)を有し、鋼鉄並の強度(460MPa)、高弾性(30GPa)で、かつフレキシブルであることから、ガラス基板等と比べて薄く絶縁性基板64を形成できる。
【0065】
図6には、本実施の形態に係るTFT基板66の構成を示す平面図が示されている。
【0066】
TFT基板66には、上述のセンサ部72、蓄積容量68、TFT70と、を含んで構成される画素74が一定方向(図6の行方向)及び一定方向に対する交差方向(図6の列方向)に2次元状に複数設けられている。例えば、放射線検出部62を、17インチ×17インチのサイズとした場合、画素74を行方向及び列方向に2880個ずつ配置する。
【0067】
また、放射線検出器60には、一定方向(行方向)に延設され各TFT70をオン・オフさせるための複数本のゲート配線76と、交差方向(列方向)に延設されオン状態のTFT70を介して電荷を読み出すための複数本のデータ配線78が設けられている。
【0068】
放射線検出器60は、平板状で平面視において外縁に4辺を有する四辺形状をしている。具体的には矩形状に形成されている。
【0069】
本実施形態に係る放射線検出器60は、図4に示すように、このようなTFT基板66の表面にシンチレータ71が貼り付けられて形成される。
【0070】
シンチレータ71は、例えば、CsI:Tl等の柱状結晶で形成しようとする場合、蒸着基板73への蒸着によって形成される。このように蒸着によってシンチレータ71を形成する場合、蒸着基板73は、X線の透過率、コストの面からAlの板がよく使用され、蒸着の際のハンドリング性、自重による反り防止、輻射熱による変形等からある程度(数mm程度)の厚みが必要となる。
【0071】
このような放射線検出器60のシンチレータ71側の面には、放射線検出部62が貼り付けられている。
【0072】
放射線検出部62は、例えば、樹脂性の支持基板140上に、後述する配線160(図8)がパターニングされた配線層142及び絶縁層144が形成されており、その上に、本発明の第2センサ部に対応する複数のセンサ部146が形成され、当該センサ部146上に、GOS等からなるシンチレータ148が形成されている。センサ部146は、上部電極147A、下部電極147B、及び該上下の電極間に配置された光電変換膜147Cを有している。光電変換膜147Cには、シンチレータ148によって変換された光が入射されることにより電荷を発生する。この光電変換膜147Cは、アモルファスシリコンを用いたPIN型、MIS型フォトダイオードよりも、上述の有機光電変換材料が含有された光電変換膜が好ましい。これは、PIN型フォトダイオードやMIS型フォトダイオードを用いた場合と比較して、製造コストの削減や、フレキシブル化への対応の点で有機光電変換材料が含有された光電変換膜を用いたほうが有利だからである。この放射線検出部62のセンサ部146は、放射線検出器60の各画素74に設けられたセンサ部72ほど細かく形成する必要はなく、放射線検出器60の数十から数百画素のサイズで形成すればよい。
【0073】
図7には、本実施の形態に係る放射線検出部62のセンサ部146の配置構成を示す平面図が示されている。
【0074】
放射線検出部62には、センサ部146が一定方向(図7の行方向)及び一定方向に対する交差方向(図7の列方向)に多数配置されており、例えば、センサ部146を行方向及び列方向に16個ずつマトリクス状に配置する。
【0075】
図8には、本実施の形態に係る電子カセッテ32の電気系の要部構成を示すブロック図が示されている。
【0076】
放射線検出器60は、上述したように、センサ部72、蓄積容量68、TFT70を備えた画素74がマトリクス状に多数個配置されており、電子カセッテ32への放射線Xの照射に伴ってセンサ部72で発生された電荷は、個々の画素74の蓄積容量68に蓄積される。これにより、電子カセッテ32に照射された放射線Xに担持されていた画像情報は電荷情報へ変換されて放射線検出器60に保持される。
【0077】
また、放射線検出器60の個々のゲート配線76はゲート線ドライバ80に接続されており、個々のデータ配線78は信号処理部82に接続されている。個々の画素74の蓄積容量68に電荷が蓄積されると、個々の画素74のTFT70は、ゲート線ドライバ80からゲート配線76を介して供給される信号により行単位で順にオンされ、TFT70がオンされた画素74の蓄積容量68に蓄積されている電荷は、アナログの電気信号としてデータ配線78を伝送されて信号処理部82に入力される。従って、個々の画素74の蓄積容量68に蓄積されている電荷は行単位で順に読み出される。
【0078】
図9には、本実施の形態に係る放射線検出器60の1画素部分に注目した等価回路図が示されている。
【0079】
同図に示すように、TFT70のソースは、データ配線78に接続されており、このデータ配線78は、信号処理部82に接続されている。また、TFT70のドレインは蓄積容量68及び光電変換部72に接続され、TFT70のゲートはゲート配線76に接続されている。
【0080】
信号処理部82は、個々のデータ配線78毎にサンプルホールド回路84を備えている。個々のデータ配線78を伝送された電気信号はサンプルホールド回路84に保持される。サンプルホールド回路84はオペアンプ84Aとコンデンサ84Bを含んで構成され、電気信号をアナログ電圧に変換する。また、サンプルホールド回路84にはコンデンサ84Bの両電極をショートさせ、コンデンサ84Bに蓄積された電荷を放電させるリセット回路としてスイッチ84Cが設けられている。オペアンプ84Aは、後述するカセッテ制御部92からの制御によりゲイン量を調整可能とされている。
【0081】
サンプルホールド回路84の出力側にはマルチプレクサ86、A/D変換器88が順に接続されており、個々のサンプルホールド回路に保持された電気信号はアナログ電圧に変換されてマルチプレクサ86に順に(シリアルに)入力され、A/D変換器88によってデジタルの画像情報へ変換される。
【0082】
信号処理部82には画像メモリ90が接続されており(図8参照。)、信号処理部82のA/D変換器88から出力された画像データは画像メモリ90に順に記憶される。画像メモリ90は複数フレーム分の画像データを記憶可能な記憶容量を有しており、放射線画像の撮影が行われる毎に、撮影によって得られた画像データが画像メモリ90に順次記憶される。
【0083】
画像メモリ90は電子カセッテ32全体の動作を制御するカセッテ制御部92と接続されている。カセッテ制御部92はマイクロコンピュータを含んで構成されており、CPU(中央処理装置)92A、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を含むメモリ92B、HDD(ハードディスク・ドライブ)やフラッシュメモリ等からなる不揮発性の記憶部92Cを備えている。
【0084】
また、カセッテ制御部92には無線通信部94が接続されている。本実施の形態に係る無線通信部94は、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11a/b/g等に代表される無線LAN(Local Area Network)規格に対応しており、無線通信による外部機器との間での各種情報の伝送を制御する。カセッテ制御部92は、無線通信部94を介してコンソール42と無線通信が可能とされており、コンソール42との間で各種情報の送受信が可能とされている。
【0085】
一方、放射線検出部62は、上述したように、センサ部146がマトリクス状に多数個配置されている。また、放射線検出部62には、各センサ部146とそれぞれ個別に接続された複数の配線160が設けられており、各配線160は信号検出部162に接続されている。
【0086】
信号検出部162は、配線160毎に設けられた増幅器及びA/D変換器を備えており、カセッテ制御部92と接続されている。信号検出部162は、カセッテ制御部92からの制御により、所定の周期で各配線160のサンプリングを行って各配線160を伝送される電気信号をデジタルデータに変換し、変換したデジタルデータを順次、カセッテ制御部92へ出力する。
【0087】
また、電子カセッテ32には電源部96が設けられており、上述した各種回路や各素子(ゲート線ドライバ80、信号処理部82、画像メモリ90、無線通信部94、カセッテ制御部92、信号検出部162等)は、電源部96から供給された電力によって作動する。電源部96は、電子カセッテ32の可搬性を損なわないように、前述したバッテリ(二次電池)96Aを内蔵しており、充電されたバッテリ96Aから各種回路や各素子へ電力を供給する。なお、図8では、電源部96と各種回路や各素子を接続する配線の図示を省略している。
【0088】
図10には、本実施の形態に係るコンソール42及び放射線発生装置34の電気系の要部構成を示すブロック図が示されている。
【0089】
コンソール42は、サーバ・コンピュータとして構成されており、操作メニューや撮影された放射線画像等を表示するディスプレイ100と、複数のキーを含んで構成され、各種の情報や操作指示が入力される操作パネル102と、を備えている。
【0090】
また、本実施の形態に係るコンソール42は、装置全体の動作を司るCPU104と、制御プログラムを含む各種プログラム等が予め記憶されたROM106と、各種データを一時的に記憶するRAM108と、各種データを記憶して保持するHDD110と、ディスプレイ100への各種情報の表示を制御するディスプレイドライバ112と、操作パネル102に対する操作状態を検出する操作入力検出部114と、を備えている。また、コンソール42は、接続端子42A及び通信ケーブル35を介して放射線発生装置34との間で後述する曝射条件等の各種情報の送受信を行う通信インタフェース(I/F)部116と、電子カセッテ32との間で無線通信により曝射条件や画像データ等の各種情報の送受信を行う無線通信部118と、を備えている。
【0091】
CPU104、ROM106、RAM108、HDD110、ディスプレイドライバ112、操作入力検出部114、通信インタフェース部116、及び無線通信部118は、システムバスBUSを介して相互に接続されている。従って、CPU104は、ROM106、RAM108、HDD110へのアクセスを行うことができると共に、ディスプレイドライバ112を介したディスプレイ100への各種情報の表示の制御、通信I/F部116を介した放射線発生装置34との各種情報の送受信の制御、及び無線通信部118を介した放射線発生装置34との各種情報の送受信の制御を各々行うことができる。また、CPU104は、操作入力検出部114を介して操作パネル102に対するユーザの操作状態を把握することができる。
【0092】
一方、放射線発生装置34は、放射線源130と、コンソール42との間で曝射条件等の各種情報を送受信する通信I/F部132と、受信した曝射条件に基づいて放射線源130を制御する線源制御部134と、を備えている。
【0093】
線源制御部134もマイクロコンピュータを含んで構成されており、受信した曝射条件等を記憶する。このコンソール42から受信する曝射条件には管電圧、管電流の情報が含まれている。線源制御部134は、受信した曝射条件に基づいて放射線源130から放射線Xを照射させる。
【0094】
次に、本実施の形態に係る撮影システム18の作用を説明する。
【0095】
本実施の形態に係る撮影システム18は、1回ずつ撮影を行う静止画撮影と、連続的に撮影を行う透視撮影が可能とされており、撮影モードとして静止画撮影又は透視撮影が選択可能とされている。
【0096】
端末装置12(図1参照。)は、放射線画像の撮影する場合、医師又は放射線技師からの撮影依頼を受け付ける。当該撮影依頼では、撮影対象とする患者、撮影対象とする撮影部位、撮影モードが指定され、管電圧、管電流などが必要に応じて指定される。
【0097】
端末装置12は、受け付けた撮影依頼の内容をRISサーバ14に通知する。RISサーバ14は、端末装置12から通知された撮影依頼の内容をデータベース14Aに記憶する。
【0098】
コンソール42は、RISサーバ14にアクセスすることにより、RISサーバ14から撮影依頼の内容及び撮影対象とする患者の属性情報を取得し、撮影依頼の内容及び患者の属性情報をディスプレイ100(図10参照。)に表示する。
【0099】
撮影者は、ディスプレイ100に表示された撮影依頼の内容に基づいて放射線画像の撮影を開始する。
【0100】
例えば、図2に示すように、臥位台46上に横臥した被検者の患部の撮影を行う際、臥位台46の保持部152に電子カセッテ32を配置する。
【0101】
そして、撮影者は、操作パネル102に対して撮影モードとして静止画撮影又は透視撮影を指定し、さらに、操作パネル102に対して放射線Xを照射する際の管電圧及び管電流等を指定する。なお、撮影者は、透視撮影の場合、被検者の被曝を抑えるため、静止画撮影の場合と比べて単位時間当たりの放射線の照射量を低く指定する(例えば、静止画撮影の場合の1/10程度)。
【0102】
ここで、放射線検出器60は、X線が照射されていない状態であっても暗電流等によってセンサ部72に電荷が発生して各画素74の蓄積容量68に電荷が蓄積される。
【0103】
このため、本実施の形態に係る電子カセッテ32では、放射線画像の撮影を行う際に、放射線検出部62により放射線の検出を行い、放射線を照射開始を検出すると放射線検出器60の各画素74の蓄積容量68に蓄積された電荷を取り出して除去するリセット動作を行った後に撮影を開始する。
【0104】
また、本実施の形態に係る撮影システム18では、撮影の際、放射線検出部62により電子カセッテ32に照射された放射線量を検出し、放射線源130からの放射線の照射を制御する自動照射制御(所謂AEC(automatic exposure control))を行っている。具体的には、静止画撮影の場合、検出された放射線量が許容量となった場合に放射線源130からの放射線の照射を終了させると共に放射線検出器60から画像の読み出し開始し、透視撮影の場合、所定のフレームレートで連続的に撮影を行い、放射線検出部62により検出された放射線量が許容量となった場合に放射線源130からの放射線の照射を終了させる。静止画撮影の許容量は、撮影部位の放射線画像が鮮明に撮るための適切な線量であり、透視撮影の許容量は、被検者の被曝を適切な範囲内に抑えるための線量であり、それぞれ目的が異なる。
【0105】
静止画撮影の許容量及び透視撮影の許容量は、それぞれ撮影の際に撮影者により操作パネル102から入力されもよい。また、撮影部位毎に、静止画撮影の許容量及び透視撮影の許容量を撮影部位別許容量情報としてHDD110に予め記憶しておき、撮影者が操作パネル102に対して撮影部位が指定を行い、撮影部位が指定された際に撮影部位別許容量情報から指定された撮影モード及び撮影部位に対応する許容量と得るものとしてもよい。また、透視撮影の許容量は、RISサーバ14のデータベース14Aに、患者毎に日別の被曝量を記憶しておき、RISサーバ14が所定期間(例えば、直近3ヶ月間)での被曝量の合計値から患者の許容される被曝量を求めて当該許容される被曝量を許容量としてコンソール42へ通知されるものとしてもよい。
【0106】
コンソール42は、指定された管電圧、管電流を曝射条件として放射線発生装置34へ送信し、指定された撮影モード、管電圧、管電流、許容量を撮影条件として電子カセッテ32へ送信する。放射線発生装置34の線源制御部134は、コンソール42から曝射条件を受信すると、受信した曝射条件を記憶し、電子カセッテ32のカセッテ制御部92は、コンソール42から撮影条件を受信すると、受信した撮影条件を記憶部92Cに記憶する。
【0107】
撮影者は、撮影準備完了すると、コンソール42の操作パネル102に対して撮影を指示する撮影指示操作を行う。
【0108】
コンソール42は、操作パネル102に対して撮影開始操作が行なわれた場合、曝射開始を指示する指示情報を放射線発生装置34及び電子カセッテ32へ送信する。
【0109】
放射線発生装置34は、コンソール42から受信した曝射条件に応じた管電圧、管電流で放射線の発生・射出を開始する。
【0110】
電子カセッテ32のカセッテ制御部92は、曝射開始を指示する指示情報を受信すると、記憶部92Cに撮影条件として記憶された撮影モードに応じて撮影制御を行う。
【0111】
ところで、本実施の形態に係る電子カセッテ32では、上述のように、放射線画像の撮影を行う際に、放射線検出部62により放射線の検出を行い、放射線を照射開始を検出した場合にリセット動作を行った後に撮影を開始し、撮影中、電子カセッテ32に照射された放射線量を検出している。
【0112】
また、本実施の形態に係る電子カセッテ32では、放射線画像の撮影を行う際に、放射線検出部62により放射線の検出を行って濃度補正用の放射線画像を取得し、その濃度補正用の放射線画像を解析して、適切な濃度の画像が得られるオペアンプ84Aのゲイン量を求め、求めたゲイン量をフィードバックさせてオペアンプ84Aのゲイン量等を調整して放射線検出器60から放射線画像の読み出しを行っている。
【0113】
図11にはカセッテ制御部92のCPU92Aにより実行される撮影制御プログラムの処理の流れを示すフローチャートが示されている。なお、当該プログラムはメモリ92B(ROM)の所定の領域に予め記憶されている。
【0114】
同図のステップS10では、信号検出部162を制御して各配線160のサンプリングを開始させる。
【0115】
これにより、信号検出部162は、所定の周期で各配線160のサンプリングを行って各配線160を伝送される電気信号をデジタルデータに変換し、変換したデジタルデータを順次、カセッテ制御部92へ出力する。
【0116】
放射線検出部62に設けられた各センサ部146には、放射線が照射されると電荷が発生する。発生した電荷は、それぞれ配線160に電気信号として流れ出す。
【0117】
次のステップS12では、信号検出部162から入力する各センサ部146により検出されたデジタルデータの値を予め定めた放射線検知用の所定のしきい値と比較し、しきい値以上となった否かにより放射線の照射開始の検出を行っており、デジタルデータの値がしきい値以上となった場合は放射線の照射が開始されたものとしてステップS14へ移行し、デジタルデータの値がしきい値未満の場合はステップS12へ再度移行して、放射線の照射開始待ちを行う。
【0118】
次のステップS14では、ゲート線ドライバ80を制御してゲート線ドライバ80から各ゲート配線76にTFT70をオン状態とさせる制御信号を出力させ、各ゲート配線76に接続された各TFT70を1ラインずつ順にONさせて電荷の取り出しを行う。これにより、1ラインずつ順に各画素74の蓄積容量68に蓄積された電荷が電気信号として各データ配線78に流れ出し、暗電流等によって各画素74の蓄積容量68に蓄積された電荷が除去される。
【0119】
次のステップS16では、記憶部92Cに記憶された撮影条件で撮影モードとして静止画撮影が指定されたか否かを判定し、肯定判定となった場合はステップS18へ移行し、否定判定の場合(撮影モードとして透視撮影が指定された場合)はステップS40へ移行する。
【0120】
ステップS18では、ゲート線ドライバ80を制御してゲート線ドライバ80から各ゲート配線76にTFT70をオフ状態とさせる制御信号を出力させる。
【0121】
次のステップS20では、信号検出部162から入力する各センサ部146により検出されたデジタルデータの値を各センサ部146の感度に応じて補正し、補正した値をセンサ部146毎にそれぞれ累計する。この累計値は、照射された放射線量と見なすことができる。
【0122】
次のステップS22では、何れかのセンサ部146の累計値が許容量以上となったか否かを判定し、肯定判定となった場合はステップS24へ移行し、否定判定となった場合はステップS20へ移行する。
【0123】
ステップS24では、コンソール42に対して曝射終了を指示する指示情報を送信する。
【0124】
コンソール42は電子カセッテ32から曝射終了を指示する指示情報を受信すると、曝射終了を指示する指示情報を放射線発生装置34へ送信する。放射線発生装置34は曝射終了を指示する指示情報を受信すると、放射線の照射を終了する。
【0125】
次のステップS26では、放射線検出部62に設けられた各センサ部146の累計値をそれぞれ各センサ部146の配列に対応して2次元状に配列し、各累計値を画素値として放射線検出部62の各センサ部146により検出された放射線画像の画像データを生成する。この放射線画像は、放射線検出部62の各センサ部146が放射線検出器60の数十から数百画素のサイズで形成されるため、放射線検出器60により撮影される画像の間引き画像となる。
【0126】
次のステップS28では、上記ステップS26で生成した画像データの解析を行い、オペアンプ84Aの適切なゲイン量を導出する。
【0127】
ここで、この画像の解析について説明する。
【0128】
図12(A)には、放射線検出部62の各センサ部146により検出された放射線画像の一例が示されており、図12(B)には、図12(A)に示す放射線画像の累積ヒストグラムが示されている。累積ヒストグラムとは、1枚の放射線画像を成す全画像データについて、画素値を横軸に、その画素値の画素の出現率(頻度)を縦軸にして表した図である。
【0129】
放射線画像は、撮影部位の像(図12(A)では顔)が写った被写体領域と、撮影部位の写っていない所謂、素抜け領域で画素数が多いため、累積ヒストグラムにおいても被写体領域及び素抜け領域の累積値でピークとなり、また、被写体領域の方が濃度変化が大きいため、累積ヒストグラムにおいても幅が広くなる。
【0130】
この累積ヒストグラムにおいて、撮影部位の像によるデータ値の範囲を特定する。この特定方法としては、公知の技術を用いることができる。本実施の形態では、スネークスアルゴリズムなどの動的輪郭抽出処理、ハフ変換などを利用した輪郭抽出処理を行い、輪郭点に沿った線で囲まれる領域を被写体領域と認識する。なお、例えば、特開平4−11242号に記載の技術を用いて、被写体領域を認識するものとしてもよく、また、例えば、撮影部位毎に標準的な形状を示すパターン画像をメモリ92B(ROM)に記憶しておき、撮影された放射線画像内で撮影部位に応じたパターン画像の位置や拡大率を変えつつ、放射線画像とパターン画像との類似度を求めるパターンマッチングを行い、類似度の最も高い領域を被写体領域と認識するものとしてもよい。
【0131】
放射線画像の認識された被写体領域の累積ヒストグラムを求め、例えば、当該累積ヒストグラムにおいてピーク値の半値幅を被写体領域の主な濃度範囲として、当該濃度範囲の中心が所定の適正濃度範囲の中心になるようなオペアンプ84Aのゲイン量を求める。このゲイン量は、濃度範囲の中心と適正濃度範囲の中心との差毎に適正なゲイン量をゲイン量情報としてメモリ92B(ROM)に予め記憶しておき、濃度範囲の中心と適正濃度範囲の中心との差に対応するゲイン量をゲイン量情報から求めるものとしてもよく、また、濃度範囲の中心と所定の適正濃度範囲の中心との差と、適正なゲイン量との関係を定めた演算式をメモリ92B(ROM)に記憶しておき、濃度範囲の中心と適正濃度範囲の中心との差から演算式によりゲイン量を算出するものとしてもよい。
【0132】
次のステップS30では、オペアンプ84Aのゲイン量を上記ステップS28で導出したゲイン量に調整する。
【0133】
次のステップS32では、ゲート線ドライバ80を制御してゲート線ドライバ80から1ラインずつ順に各ゲート配線76にオン信号を出力させる。
【0134】
放射線検出器60は、各ゲート配線76に接続された各TFT70を1ラインずつ順にオンされると、1ラインずつ順に各蓄積容量68に蓄積された電荷が電気信号として各データ配線78に流れ出す。各データ配線78に流れ出した電気信号は信号処理部82のオペアンプ84Aで増幅された後、マルチプレクサ86を介してA/D変換器88に順に入力され、デジタルの画像データに変換されて、画像メモリ90に記憶される。
【0135】
このように、オペアンプ84Aのゲイン量を調整して放射線検出器60から放射線画像の読み出しを行うことにより、読み出された放射線画像において被写体領域の濃度範囲を適正濃度範にすることができる。
【0136】
次のステップS34では、画像メモリ90に記憶された画像データをコンソール42へ送信し、処理を終了する。
【0137】
一方、ステップS40では、透視撮影のフレームレートに応じた撮影周期を求める。
【0138】
次のステップS42では、信号検出部162から入力する各センサ部146により検出されたデジタルデータの値を各センサ部146の感度に応じて補正し、補正した値をセンサ部146毎にそれぞれ累計する。なお、本実施の形態では、各センサ部146毎に、デジタルデータの累計値を記憶する記憶領域を2つ用意しており、一方を透視撮影撮影開始からのデジタルデータの累計値を記憶する記憶領域としており、他方を透視撮影の連続的な撮影において、前回の撮影からのデジタルデータの累計値を記憶する記憶領域している。本ステップS42では、各センサ部146毎に、デジタルデータの値を2つの記憶領域にそれぞれ累計する
次のステップS44では、何れかのセンサ部146で、透視撮影撮影開始からのデジタルデータの累計値を記憶する記憶領域に記憶された累計値が許容量以上となったか否かを判定し、肯定判定となった場合はステップS60へ移行し、否定判定となった場合はステップS46へ移行する。
【0139】
ステップS46では、前回、放射線検出器60の各画素74の電荷の読み出しを行ってから撮影周期以上の期間を経過したか否かを判定し、肯定判定となった場合はステップS48へ移行し、否定判定となった場合はステップS42へ移行する。
【0140】
次のステップS48では、放射線検出部62に設けられた各センサ部146の、前回の撮影からのデジタルデータの累計値を記憶する各記憶領域に記憶された累計値をそれぞれ各センサ部146の配列に対応して2次元状に配列し、各累計値を画素値として放射線検出部62の各センサ部146により検出された放射線画像の画像データを生成する。
【0141】
次のステップS50では、上記ステップS28と同様に、上記ステップS48で生成した画像データの解析を行い、オペアンプ84Aの適切なゲイン量を導出する。
【0142】
次のステップS52では、オペアンプ84Aのゲイン量を上記ステップS50で導出したゲイン量に調整する。
【0143】
次のステップS54では、ゲート線ドライバ80を制御してゲート線ドライバ80から1ラインずつ順に各ゲート配線76にオン信号を出力させる。
【0144】
これにより、放射線検出器60は、各ゲート配線76に接続された各TFT70を1ラインずつ順にオンされ、1ラインずつ順に各蓄積容量68に蓄積された電荷が電気信号として各データ配線78に流れ出す。各データ配線78に流れ出した電気信号は信号処理部82のオペアンプ84Aで増幅された後、マルチプレクサ86を介してA/D変換器88に順に入力され、デジタルの画像データに変換されて、画像メモリ90に記憶される。
【0145】
このように、オペアンプ84Aのゲイン量を調整して放射線検出器60から放射線画像の読み出しを行うことにより、読み出された放射線画像において被写体領域の濃度範囲を適正濃度範することができる。
【0146】
次のステップS56では、各センサ部146毎のデジタルデータの累計値を記憶する2つの記憶領域のうち、前回の撮影からのデジタルデータの累計値を記憶する記憶領域に記憶された累計値を全てゼロに初期化する。
【0147】
次のステップS58では、画像メモリ90に記憶された画像データをコンソール42へ送信を行い、画像データの送信後、ステップS42へ移行する。
【0148】
一方、ステップS60では、コンソール42に対して曝射終了を指示する指示情報を送信し、処理を終了する。
【0149】
放射線発生装置34は、曝射終了を指示する指示情報を受信すると、放射線の発生・射出を終了する。なお、本実施の形態では、透視撮影中に、何れかのセンサ部146の累計値が許容量となった場合に、透視撮影を停止する場合について説明したが、コンソール42へ許容量を超えたことを通知して、コンソール42で警告を表示させるものとしてもよい。また、コンソール42が放射線発生装置34へ管電圧、管電流の少なくとも一方を低下させた曝射条件を送信して放射線発生装置34の放射線源130から照射される単位時間あたりの放射線量を低下させるようにしてもよい。
【0150】
コンソール42は、電子カセッテ32から画像情報を受信すると、受信した画像情報に対してシェーディング補正などの各種の補正する画像処理を行ない、画像処理後の画像情報をHDD110に記憶する。
【0151】
HDD110に記憶された画像情報は、撮影した放射線画像の確認等のためにディスプレイ100に表示されると共に、RISサーバ14に転送されてデータベース14Aにも格納される。これにより、医師が撮影された放射線画像の読影や診断等を行うことが可能となる。
【0152】
なお、センサ部146により検出されたデジタルデータの値の累計値は、被検者の被曝量と見なすことができる。このため、RISサーバ14のデータベース14Aに、患者毎に日別の被曝量を記憶させている場合、電子カセッテ32は、コンソール42を介してRISサーバ14へ送信してデータベース14Aに記憶させる。このように患者毎に日別の被爆量を記憶管理することにより、特定期間の総被爆量の把握が可能となる。また、被爆量と撮影条件とを併せてデータベース14Aに記憶させてもよい。この場合、電子カセッテ32が累計値(被爆量)をコンソール42に転送し、コンソール42が累計量(被爆量)と撮影条件を関連付けたデータとし、データベース14Bに記憶させる。このように被爆量と撮影条件とを併せて記憶した場合、データベース14Bの利用価値が一層高まる。
【0153】
以上のように、本実施の形態によれば、センサ部72を有する画素74が2次元状に複数配置された放射線検出器60と積層して、センサ部72よりも面積が大きいセンサ部146が2次元状に複数配置された放射線検出部62を配置し、放射線検出部62のセンサ部146による検出結果から得られる画像に基づいて、放射線検出器60の各画素74から電荷を読み出して放射線画像を生成する際の処理パラメータを調整した後、放射線検出器60の各画素74から電荷を読み出し、調整された処理パラメータに基づく処理を行って診断用の放射線画像を生成するので、被検者の被曝量を増加させることなく濃度補正用の画像を取得して診断用の放射線画像の画質調整を行うことができる。
【0154】
また、本実施の形態によれば、放射線検出部62のセンサ部146による検出結果から得られる画像から処理パラメータとしてオペアンプ84Aのゲイン量を調整することにより、被写体領域の画像をA/D変換器88で飽和させずに適切な濃度範囲に調整することができる。
【0155】
また、本実施の形態によれば、放射線検出部62のセンサ部14により、放射線の照射開始や放射線の照射量の検出を並行して行うことができる。
【0156】
さらに、本実施の形態によれば、濃度補正用の画像の取得を行うために撮影周期を早める必要がない。これにより、例えば、透視撮影中に関心部位が変わり、随時、濃度調整を行う必要があるため、随時、濃度補正用の画像を取得する必要がある場合でも、フレームレートを早くする必要がない。
【0157】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態について説明する。
【0158】
第2の実施の形態に係るRIS10、撮影システム18、電子カセッテ32、放射線検出器60の構成は、上記第1の実施の形態(図1〜図10参照)と同一であるので、ここでの説明は省略する。
【0159】
ここで、本実施の形態に係る電子カセッテ32では、信号処理部82のオペアンプ84Aで増幅された電気信号をA/D変換器88により、所定のビット数(例えば、16ビット)のデジタルデータに変換し、カセッテ制御部92において、16ビットの画像データを規格化処理において12ビットの画像データに変換するようにしており、放射線画像の撮影を行う際に、放射線検出部62により放射線の検出を行って濃度補正用の放射線画像を取得し、その濃度補正用の放射線画像を解析して、被写体領域の主な濃度範囲が、適正濃度範囲となるように規格化処理の各種パラメータを求め、放射線検出器60から読み出された16ビットの放射線画像の画像データに対して、求めた各種パラメータを用いて規格化処理を行って12ビットの画像データに変換するものとしている。
【0160】
なお、本実施の形態に係る電子カセッテ32では、各データ配線78に流れ出した電気信号がA/D変換器88で飽和せずに16ビットのデジタルデータに変換可能な範囲となるようにオペアンプ84Aのゲイン量が所定の値に調整されいるものとする。
【0161】
図13には、第2の実施の形態に係る撮影制御プログラムの処理の流れを示すフローチャートが示されている。なお、第1の実施の形態の撮影制御プログラム(図11参照)と同一処理部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0162】
ステップS29では、上記ステップS26で生成した画像データの解析を行い、規格化処理の各種パラメータの適切な値を導出する。
【0163】
ここで、この画像の解析について説明する。
【0164】
例えば、図14(A)に示すように、ある撮影条件の下に撮影された放射線画像の累積ヒストグラムaにおいて被写体領域の主な濃度範囲がMIN0〜MAX0であり、上記撮影条件とは異なる撮影条件の下に撮影された放射線画像の累積ヒストグラムbにおいて被写体領域の主な濃度範囲がMIN1〜MAX1であるものとする。
【0165】
本実施の形態では、このようなaまたはbで示す累積ヒストグラムとなる16ビットの画像データを規格化処理により12ビットの画像データの変換しており、その変換の際に、16ビットの画像データにおいて、被写体領域の主な濃度範囲MIN0〜MAX0及びMIN1〜MAX1がそれぞれ、12ビットの画像データにおいて、適正濃度範囲MIN2〜MAX2となるように変換する。
【0166】
図14(B)は、このようにして、16ビットの画像データにおいてMIN0〜MAX0及びMIN1〜MAX1が、12ビットの画像データにおいて適正濃度範囲MIN2〜MAX2となるように変換した場合の累積ヒストグラムa、bが示されている。
【0167】
16ビットの画像データから12ビットの画像データへの規格化処理の方法としては、公知の技術を用いることができる。本実施の形態では、所定の変換関数に基づいて入力データである16ビットの画像データD0を出力である12ビットの画像データD1に変換しており、具体的には、変換関数として、図14(C)にa,bで示すような一次関数を用いて変換を行う。
【0168】
この一次関数は、D1=D0×Gain+Offsetと表わすことができ、Gainの値を変えることにより傾きが変わり、Offsetの値を変えることにより、直線全体をシフトさせることができる。
【0169】
本実施の形態では、規格化処理の各種パラメータとして、被写体領域の主な濃度範囲(例えば、MIN0〜MAX0)が適正濃度範囲MIN2〜MAX2となるGain及びOffsetの値を導出する。
【0170】
ステップS33では、画像メモリ90に記憶された16ビットの画像データに対して、ステップS29で導出したパラメータを用いて規格化処理を行って12ビットの画像データに変換し、変換後の画像データを画像メモリ90に記憶させる。
【0171】
このように、被写体領域の主な濃度範囲が適正濃度範囲となるように規格化処理の各種パラメータを求めて画像データの規格化処理を行うことにより、規格化処理された放射線画像において被写体領域の濃度範囲を適正濃度範にすることができる。
【0172】
ステップS34では、画像メモリ90に記憶されたステップS33による変換後に画像データをコンソール42へ送信し、処理を終了する。
【0173】
一方、透視撮影に関においても、ステップS51では、上記ステップS29と同様に、上記ステップS48で生成した画像データの解析を行い、規格化処理の各種パラメータの適切な値を導出し、ステップS55では、上記ステップS33と同様に、上記ステップ54の処理により読み出され、画像メモリ90に記憶された16ビットの画像データに対して、ステップS51で導出したパラメータを用いて規格化処理を行って12ビットの画像データに変換し、変換後の画像データを画像メモリ90に記憶させる。ステップS58では、画像メモリ90に記憶されたステップS55による変換後に画像データをコンソール42へ送信する。
【0174】
以上のように、本実施の形態によれば、放射線検出部62のセンサ部146による検出結果から得られる画像に基づいて、被写体領域の主な濃度範囲が適正濃度範囲となるように規格化処理の各種パラメータを求めて画像データの規格化処理を行うことにより、規格化処理された放射線画像において被写体領域の濃度範囲を適正濃度範にすることができる。
【0175】
以上、本発明を第1及び第2の実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記各実施の形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記各実施の形態に多様な変更または改良を加えることができ、当該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0176】
また、上記の実施の形態は、クレーム(請求項)にかかる発明を限定するものではなく、また実施の形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組み合わせにより種々の発明を抽出できる。実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0177】
例えば、上記各実施の形態では、可搬型の放射線撮影装置である電子カセッテ32に本発明を適応した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、据置型の放射線撮影装置に適用してもよい。
【0178】
また、上記第1の実施の形態では、オペアンプ84Aのゲイン量を調整し、第2の実施の形態では、規格化処理のパラメータを調整する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、オペアンプ84Aのゲイン量と規格化処理のパラメータを調整を共に調整するものとしてもよく、さらに、他の処理のパラメータを調整するものとしてもよい。
【0179】
また、上記第2の実施の形態では、規格化処理の変換関数として一次関数を用いた場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、2次関数や3次関数等の高次の関数で表される変換関数を使用してもよい。また、想定される複数の累積ヒストグラムと、この累積ヒストグラムの各々に対応するルックアップテーブルを用意しておき、想定される累積ヒストグラムの中から、求めた累積ヒストグラムに近いものに対応するルックアップテーブルを規格化処理特性として決定し、当該ルックアップテーブルに基づいて、画像データの変換を行わせるようにしてもよい。
【0180】
また、上記各実施の形態では、放射線の照射開始と放射線の照射量を検出する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、放射線の照射終了の検出を行うものとしてもよい。放射線の照射終了は、図15(A)に示すように、信号検出部162から入力する各センサ部146のデジタルデータの値を、予め定めた放射線検知用の所定のしきい値と比較し、しきい値未満となった否かにより検出できる。なお、図15(B)に示すように、照射開始と照射終了の検出でしきい値を異ならせてもよい。図15(B)では、照射開始のしきい値を照射終了のしきい値よりも大きくているが、照射開始のしきい値を照射終了のしきい値よりも小さくしてもよい。このように照射開始と照射終了の検出にヒステリシス性を持たせることにより、ノイズの影響等を抑えて照射開始や照射終了の検出をことができる。例えば、照射線が照射されることによりセンサ部146に電荷が発生するが、センサ部146内で発生した電荷の一部が一時的にトラップされ、放射線の照射終了後もセンサ部146からトラップされた電荷が配線160に電気信号として流れ出す場合、照射終了のしきい値を大きくすることにより、照射終了をすみやかに検出できる。
【0181】
また、各センサ部146のデジタルデータの値を累計している場合、図16のT1に示すように、累計値の増加量が大きく減少する変曲点があった場合に照射終了と検出することもできる。
【0182】
また、上記各実施の形態では、放射線検出部62にシンチレータ148が形成されている場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、放射線検出器60は、シンチレータ71が形成された蒸着基板73が光透過性を有するものとした場合、図17に示すように、係る放射線検出部62にシンチレータ148を設けずに、放射線検出器60のTFT基板66とは逆側の面(シンチレータ71側の面)に貼り付けて、係る放射線検出部62の各センサ部146がシンチレータ71の光を検出するものとしてもよい。このように、本実施の形態によれば、放射線検出部62をシンチレータ71に貼り付けることにより、シンチレータ148が不要となるため、放射線検出部62をより薄く形成できる。この場合、撮影の際に放射線XがTFT基板66側から入射するように筐体54内に配置すると、シンチレータ71のTFT基板66とは逆側の面に放射線検出部62を設けたことにより、放射線Xが放射線検出器60を透過した後に放射線検出部62を透過するため、放射線検出器60で撮影される放射線画像に放射線検出部62を設けたことによる影響が及ぶことを防ぐことができる。
【0183】
また、例えば、TFT基板66が光透過性を有する場合、図18に示すように、放射線検出器60のTFT基板66側の面に放射線検出部62を貼り付けてもよい。放射線Xは、図18の上方又は下方の何れから入射してもよいが、下方から入射する場合、放射線検出部62のセンサ部146での放射線の吸収を抑えるため、センサ部146は有機光電変換材料が含有された光電変換膜で形成することが好ましい。
【0184】
また、上記各実施の形態では、放射線検出器60が、放射線を一度光に変換し、変換した光をセンサ部72で電荷に変換して蓄積する間接変換方式であるものとした場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、放射線検出器60が、放射線をアモルファスセレン等の半導体層で電荷に変換する直接変換方式であるものとしてもよい。
【0185】
また、上記各実施の形態では、放射線検出部62の各センサ部146により検出された放射線画像により、放射線検出器60から生成される放射線画像の画質の調整を行う場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、電子カセッテ32が放射線検出部62の各センサ部146により検出された放射線画像をコンソール42へ転送し、コンソール42がディスプレイ100に表示させるものとしてもよい。これにりより、表示された放射線画像から被写体のぶれやポジショニングの確認を速やかに行うことができる。
【0186】
また、上記では、電子カセッテ32のカセッテ制御部92において、放射線検出部62の各センサ部146により検出された放射線画像からの各種のパラメーラの決定処理、放射線検出器60から生成される放射線画像の規格化処理、放射線の照射開始、放射線の照射終了、及び放射線の照射量の検出処理を行う場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、カセッテ制御部92が信号検出部162から入力するデジタルデータを随時コンソール42へ送信するものとし、コンソール42において何れかの処理を行うものとしてもよい。
【0187】
また、上記各実施の形態では、放射線としてX線を検出することにより放射線画像を撮影する放射線撮影装置に本発明を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、検出対象とする放射線は、X線の他や可視光、紫外線、赤外線、ガンマ線、粒子線等いずれであってもよい。
【0188】
その他、上記各実施の形態で説明した構成は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、不要な部分を削除したり、新たな部分を追加したり、接続状態等を変更したりすることができることは言うまでもない。
【0189】
さらに、上記第1の実施の形態で説明した各種プログラムの処理の流れ(図11、図13参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ換えたりすることができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0190】
18 撮影システム
32 電子カセッテ
60 放射線検出器(撮影部)
62 放射線検出部(検出部)
72 センサ部(第1センサ部)
74 画素
80 ゲート線ドライバ(生成手段)
82 信号処理部(生成手段)
84A オペアンプ(増幅器)
88 A/D変換器
92 カセッテ制御部(調整手段、検出手段)
92A CPU(調整手段、検出手段)
100 ディスプレイ(表示手段)
146 センサ部(第2センサ部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線又は放射線が変換された光が照射されることにより電荷が発生する第1センサ部を有する画素が2次元状に複数配置された撮影部と、
前記撮影部と積層して配置され、前記第1センサ部よりも面積が大きい第2センサ部が2次元状に複数配置された検出部と、
前記検出部の各第2センサ部による検出結果から得られる画像に基づいて、前記撮影部の各画素から電荷を読み出して放射線画像を生成する際の処理パラメータを調整する調整手段と、
前記撮影部の各画素から電荷を読み出し、前記調整手段により調整された処理パラメータに基づく処理を行って診断用の放射線画像を生成する生成手段と、
を備えた放射線撮影装置。
【請求項2】
前記調整手段は、前記生成手段により生成される放射線画像の被写体領域の主な濃度範囲が、所定の適正濃度範囲となるように処理パラメータを調整する
請求項1記載の放射線撮影装置。
【請求項3】
前記生成手段は、前記撮影部の各画素から読み出される前記第1センサ部に発生した電荷量に応じた電気信号を増幅する増幅器を有し、
前記調整手段は、前記処理パラメータとして前記増幅器のゲイン量を調整する
請求項1又は請求項2記載の放射線撮影装置。
【請求項4】
前記生成手段は、前記撮影部の各画素から電荷を電気信号として読み出して当該電気信号を所定ビット数のデジタルデータに変換するA/D変換器を有し、前記A/D変換器により変換されたデジタルデータを前記所定ビット数よりも少ないビット数のデジタルデータに規格化する規格化処理を行うものとし、
前記調整手段は、前記処理パラメータとして前記規格化処理の処理パラメータを調整する
請求項1〜請求項3の何れか1項記載の放射線撮影装置。
【請求項5】
前記検出部の各第2センサ部による検出結果に基づいて放射線の照射開始、放射線の照射終了、及び放射線の照射量の少なくとも1つの検出を行う検出手段をさらに備えた
請求項1〜請求項4の何れか1項記載の放射線撮影装置。
【請求項6】
前記撮影部は、放射線を光に変換する変換層を有し、前記第1センサ部が前記変換層で変換された光により表わされる放射線画像を撮影し、
前記第2センサ部は、有機光電変換材料を含んで構成され、前記撮影部の放射線の照射面側に配置され、前記変換層で変換された光を検出する
請求項1〜請求項5の何れか1項記載の放射線撮影装置。
【請求項7】
前記生成手段は、透視撮影の場合、透視撮影のフレームレートに応じた撮影周期で前記撮影部の各画素から電荷を読み出し、前記調整手段により調整された処理パラメータに基づく処理を行って放射線画像を生成し、
前記調整手段は、前記撮影周期で前記検出部の各第2センサ部により放射線を検出し、検出結果から得られる画像に応じて前記処理パラメータを調整する
請求項1〜請求項6の何れか1項記載の放射線撮影装置。
【請求項8】
前記検出部の各第2センサ部による検出結果から得られる画像を表示する表示手段をさらに備えた請求項1〜請求項7の何れか1項記載の放射線撮影装置。
【請求項9】
前記第2センサ部は、マトリクス状に複数配置された
請求項1〜請求項9の何れか1項記載の放射線撮影装置。
【請求項10】
放射線又は放射線が変換された光が照射されることにより電荷が発生する第1センサ部を有する画素が2次元状に複数配置された、診断用の放射線画像を撮影するための撮影部と、
前記撮影部と積層して配置され、前記第1センサ部よりも面積が大きい第2センサ部が2次元状に複数配置された検出部と、
前記検出部の各第2センサ部による検出結果から得られる画像に応じて、前記撮影部の各画素から電荷を読み出して放射線画像を生成する際の処理パラメータを調整する調整手段と、
前記撮影部の各画素から電荷を読み出し、前記調整手段により調整された処理パラメータに基づく処理を行って放射線画像を生成する生成手段と、
を有する放射線撮影システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−45331(P2012−45331A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192850(P2010−192850)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】