説明

放射線検出装置

【課題】放射線検出器を稠密に配置した場合でも不感領域を低減することができる放射線検出装置を提供する。
【解決手段】放射線検出装置は、基板20を挟む半導体素子10間の距離をXG1、一の放射線検出器1の半導体素子10から、当該半導体素子10に対向し、一の放射線検出器1に隣接する他の放射線検出器1の半導体素子10までの距離をXG2、Y方向に配列している半導体素子10間の距離をYG1、半導体素子ピッチ110の横ピッチをa、縦ピッチをb、半導体素子10の放射線が入射する面の幅をc、長さをd、半導体素子10の両端部に位置する素子内ピクセル領域10aの長さをe、複数の半導体素子10の両端部に位置する素子内ピクセル領域10aに挟まれる複数の素子内ピクセル領域10aの長さをfとした場合に、
c=a−(XG1+XG2)/2
d=b−YG1=2e+(n−2)f
e=b/n−YG1/2
f=b/nの関係を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線検出装置に関する。特に、本発明は、γ線、X線等の放射線を検出するエッジオン型の放射線検出器を用いる放射線検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の放射線検出器として、複数のコモン電極板と、複数の半導体セルと、複数の電極板とを、コモン電極板、半導体セル、電極板、半導体セル、コモン電極板・・・のように積層させた積層体を2つのフレームの間に設け、一方のフレームと他方のフレームとをピンで固定することにより構成される放射線検出器が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に記載の放射線検出器は、横方向に隣接する一対の半導体セルがコモン電極板を共有するので、放射線を検出できない領域を従来より減少させることができ、放射線の検出効率を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6236051号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に係る放射線検出器は、コモン電極板、半導体セル等の複数の構成部材を積層させて放射線検出装置が構成されることから、構成部材を積み重ねるごとに各構成部材が有する寸法誤差が加算されるので、複数の半導体セルを高密度で並べつつ、放射線を検出することのできない領域(例えば、コモン電極板が存在する領域等)を低減させることは困難である。
【0006】
したがって、本発明の目的は、放射線検出器を稠密に配置した場合でも、放射線を検出することのできない領域を低減することができる放射線検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するため、放射線を検出可能な複数の半導体素子が固定される基板を有するエッジオン型の放射線検出器を備える放射線検出装置であって、複数の半導体素子それぞれが、放射線が入射する面に複数の素子内ピクセル領域を有し、平面視にてX方向と、X方向に直交するY方向とを規定した場合に、複数の放射線検出器それぞれの基板が平行になる配置で複数の放射線検出器がX方向に沿って配列され、複数の放射線検出器のそれぞれが、基板の一方の面及び他方の面のそれぞれにY方向に配列する複数の半導体素子を有し、基板を挟んで設けられる半導体素子間の距離をXG1、一の放射線検出器の半導体素子から、当該半導体素子に対向し、一の放射線検出器に隣接する他の放射線検出器の半導体素子までの距離をXG2とし、Y方向に配列している半導体素子間の距離をYG1とし、放射線検出器が用いられる所定のピクセルピッチの横ピッチをa、縦ピッチをbとし、複数の半導体素子それぞれの放射線が入射する面の幅をc、長さをdとし、複数の半導体素子それぞれの複数の素子内ピクセル領域のうち、複数の半導体素子それぞれの両端部に位置する素子内ピクセル領域の長さをそれぞれe、複数の半導体素子それぞれの両端部に位置する素子内ピクセル領域に挟まれる複数の素子内ピクセル領域のそれぞれの長さをfとした場合に、
c=a−(XG1+XG2)/2
d=b−YG1=2e+(n−2)f
e=b/n−YG1/2
f=b/n (ただし、nは正の整数)の関係を満たす放射線検出装置が提供される。
【0008】
また、上記放射線検出装置において、放射線検出器上に設置可能なマッチドコリメーターのセプタ幅をCdとした場合に、
Cd≧XG1
Cd≧XG2
の関係を満たすことが好ましい。
【0009】
また、上記放射線検出装置において、XG1=XG2の関係を満たすことが好ましい。
【0010】
また、上記放射線検出装置において、XG1=XG2=YG1の関係を満たすことが好ましい。
【0011】
また、上記放射線検出装置において、複数の半導体素子のそれぞれが、放射線が入射する面に垂直な一の面に(n−1)個の溝を有すると共に、複数の溝間、及び一の面の反対側の面に電極を有することにより、n個の素子内ピクセル領域が構成されることができる。
【0012】
また、上記放射線検出装置において、複数の半導体素子のそれぞれが、基板の一方の面及び他方の面に、基板を対称面として設けられることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る放射線検出装置によれば、放射線検出器を稠密に配置した場合でも、放射線を検出することのできない領域を低減することができる放射線検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る放射線検出器の斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る半導体素子の斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る放射線検出装置の斜視図である。
【図4】本実施の形態に係る複数の放射線検出器が配列した状態の概要図である。
【図5】本実施の形態に係る放射線検出器上にマッチドコリメーターを備え付けた場合の模式的な上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係る放射線検出器の斜視図の概要を示す。
【0016】
(放射線検出器1の構成の概要)
本実施の形態に係る放射線検出器1は、γ線、X線等の放射線を検出可能な複数の半導体素子10が固定された基板20を有し、カード型の形状を呈する放射線検出器である。図1において放射線100は、紙面の上方から下方に沿って入射してくる。すなわち、放射線100は、放射線検出器1の半導体素子10からカードホルダ30及びカードホルダ31に向かう方向に沿って伝搬して放射線検出器1に到達する。そして、放射線検出器1は、半導体素子10の側面(つまり、図1の上方に面している面)に放射線100が入射する。したがって、半導体素子10の側面が放射線100の入射面となっている。このように、半導体素子10の側面を放射線100の入射面とする放射線検出器を、本実施の形態ではエッジオン型の放射線検出器と称する。
【0017】
なお、放射線検出器1は、特定の方向(例えば、放射線検出器1に向かう方向)に沿って伝搬してくる放射線100が通過する複数の開口を有するコリメータ(例えば、マッチドコリメーター、ピンホールコリメーター等)を介して放射線100を検出する複数の放射線検出器1が並べられて構成される放射線検出装置用の放射線検出器1として用いることができる。
【0018】
図1を参照すると、放射線検出器1は、放射線100を検出可能な一対の半導体素子10と、薄い基板20と、一対の半導体素子10の隣接部分にて基板20を挟み込むことにより基板20を支持するカードホルダ30及びカードホルダ31とを備える。そして、本実施の形態においては、一対の半導体素子10が4組、基板20を挟み込む位置において基板20に固定される。すなわち、各組の一対の半導体素子10は、基板20の一方の面と他方の面とのそれぞれに基板20を対称面として対称の位置に固定される。
【0019】
また、基板20はカードホルダ30とカードホルダ31とに挟み込まれて支持される。カードホルダ30とカードホルダ31とはそれぞれ同一形状を有して形成され、カードホルダ30が有する溝付穴34にカードホルダ31が有する突起部36が嵌め合うと共に、カードホルダ31が有する溝付穴34(図示しない)にカードホルダ30が有する突起部36(図示しない)が嵌め合うことにより基板20を支持する。
【0020】
また、弾性部材実装部32及び凹部32aは、複数の放射線検出器1を支持する放射線検出器立てに放射線検出器1が挿入された場合に、放射線検出器1を放射線検出器立てに押し付けて固定する弾性部材が設けられる部分である。なお、放射線検出器立てはカードエッジ部29が挿入されるコネクタを有しており、放射線検出器1は、カードエッジ部29がコネクタに挿入され、コネクタとパターン29aとが電気的に接続することにより外部の電気回路としての制御回路、外部からの電源線、グランド線等に電気的に接続される。
【0021】
また、放射線検出器1は、一対の半導体素子10の基板20の反対側に、各半導体素子10の電極パターンと複数の基板端子22とのそれぞれを電気的に接続する配線パターン(なお、半導体素子10の基板20の反対側の素子表面の電極パターン、及びフレキシブル基板40の半導体素子10側の配線パターンは図示しない)を有するフレキシブル基板40を更に備える。
【0022】
フレキシブル基板40は、一対の半導体素子10の一方の半導体素子10側、及び他方の半導体素子10側の双方に設けられる(なお、本実施の形態においては、4組の一対の半導体素子10の一方の半導体素子10側のそれぞれと、他方の半導体素子10側のそれぞれとの双方に、フレキシブル基板40がそれぞれ設けられる)。そして、フレキシブル基板40の複数の配線パターンの一端はそれぞれ、カードホルダ30及びカードホルダ31の複数のフレキリード結合部のそれぞれにおいて基板端子22に電気的に接続する。具体的に、フレキシブル基板40の配線パターンの一方の端は、半導体素子10の素子表面に導電性接着剤等で接続される。そして、当該配線パターンの他方の端は、基板端子22の端子表面に導電性接着剤等を用いて電気的に接続される。なお、基板端子22は基板20の表面に設けられており、基板20の配線パターンに電気的に接続されている。
【0023】
(基板20の詳細)
基板20は、金属導体等の導電性材料からなる導電性薄膜(例えば、銅箔)が表面に形成された薄肉基板(例えば、FR4等のガラスエポキシ基板)を、ソルダーレジスト等の絶縁材料からなる絶縁層で挟んで可撓性を有して形成される。なお、基板20は、一例として、幅広の方向、すなわち長手方向は40mm程度の長さを有して形成される。そして、基板20は、幅広の部分の端部から幅が狭くなっている部分の端部までの短手方向において、20mm程度の長さを有して形成される。ここで、基板20は放射線を検出できない領域であるので、一対の半導体素子10によって挟まれる基板20の領域は不感領域になる。よって、基板20の厚さは、薄いことが好ましい。具体的に、基板20は、0.4mm以下の厚さを有することが好ましい。本実施の形態では、一例として、基板20は、0.2mmの厚さを有する。
【0024】
また、基板20は、半導体素子10の電極パターンに電気的に接続する第1の配線パターンを有する。第1の配線パターンは、カードエッジ部29のパターン29aに電気的に接続するように形成される。更に、基板20は、基板端子22とカードエッジ部29のパターン29aとを電気的に接続する第2の配線パターンを有する。これにより、基板20において、半導体素子10の基板20側の面の電極は、基板20の第1の配線パターンによりカードエッジ部29のパターン29aに電気的に接続される。また、半導体素子10の基板20側の反対側の面の電極は、フレキシブル基板40の配線パターンと、基板端子22と、基板20の第2の配線パターンとを経由してカードエッジ部29のパターン29aに電気的に接続される。ここで、例えば、半導体素子10の基板20側の電極をアノード電極、半導体素子10の基板20側の反対側の面の電極をカソード電極とする。この場合、アノード電極からの信号とカソード電極からの信号とはそれぞれ、カードエッジ部29のパターン29aを介し、外部の電気回路へ出力される。
【0025】
(半導体素子10の詳細)
図2は、本実施の形態に係る放射線検出器が備える1つの半導体素子の斜視図の概要である。
【0026】
半導体素子10は、略直方体状に形成され、素子表面10cと、この素子表面10cの反対側の素子表面とのそれぞれに電極パターンが設けられる(図示しない)。放射線は各半導体素子10の端部から入射して、カードエッジ部29側に向かって半導体素子10中を走行する。また、本実施の形態に係る半導体素子10は、放射線が入射する面に垂直な一の面である素子表面10cに複数の溝10bが設けられる。溝10bの幅は、一例として、0.2mmである。
【0027】
そして、放射線が入射する半導体素子10の面であって、各溝10bから、溝10bが設けられている面の反対側の面への仮想的な垂線により区切られる領域、及び当該仮想的な垂線と半導体素子10の端部とで区切られる領域を、本実施の形態では素子内ピクセル領域10aとして表す。半導体素子10が、(n−1)個の溝10bを有すると共に、複数の溝10b間、及び素子表面10cの反対側の面にそれぞれ電極を有することにより、n個の素子内ピクセル領域10aが構成される。複数の素子内ピクセル領域10aのそれぞれが、放射線を検出する実効的な1つの画素(ピクセル)に対応する。これにより、一の半導体素子10は、複数の画素を有することになる。
【0028】
そして、一例として、1つの放射線検出器1が8つの半導体素子10(4組の一対の半導体素子10)を備え、1つの半導体素子10がそれぞれ8つの素子内ピクセル領域10aを有する場合、1つの放射線検出器1は、64ピクセルの解像度を有することになる。溝10bの数を増減させることにより、一の半導体素子10のピクセル数を増減させることができる。
【0029】
ここで、半導体素子10の放射線が入射する面の幅を「c」、放射線が入射する面の長さを「d」、半導体素子10の高さを「h」とする。平面視にてX方向と、X方向に直交するY方向とを規定した場合に、幅についてはX方向に、長さについてはY方向で規定することにする。なお、一例として、幅cは1.2mm程度、長さdは11.2mm程度、高さhは5mm程度である。
【0030】
そして、半導体素子10の複数の素子内ピクセル領域10aのうち、複数の半導体素子10それぞれの両端部に位置する素子内ピクセル領域10aの長さをそれぞれ「e」、半導体素子10の両端部に位置する素子内ピクセル領域10aに挟まれる複数の素子内ピクセル領域10aそれぞれの長さを「f」とする。すなわち、半導体素子10の長さ方向において、半導体素子10の端部から一番目の溝10bまでの距離を「e」と規定し、一の溝10bから、当該一の溝10bに隣接する他の溝10bまでの距離を「f」と規定する。したがって、「d=2e+(n−2)f (ただし、nは正の整数)」という関係式が成り立つ。図2の例においては、「n=8」の例、すなわち、一つの半導体素子10に8つの素子内ピクセル領域10aが形成されている例を示している。
【0031】
半導体素子10を構成する材料としては、CdTeを用いることができる。また、γ線等の放射線を検出できる限り、半導体素子10はCdTe素子に限られない。例えば、半導体素子10として、CdZnTe(CZT)素子、HgI素子等の化合物半導体素子を用いることもできる。なお、半導体素子10はそれぞれ、Agペースト等の導電性接着材により基板20の配線パターンに電気的に接続される。
【0032】
(放射線検出装置の概要)
図3は、本発明の実施の形態に係る放射線検出装置の斜視図の一例を示す。
【0033】
放射線検出器1は、例えば、複数の放射線検出器1を放射線検出器立て5によって保持することにより構成される放射線検出装置119の放射線検出器1として用いることができる。一例として、複数の放射線検出器1が並べられる間隔に応じて予め定められた距離をおいて並び、複数の放射線検出器1が挿入される複数の溝が形成された複数の支持体2と、支持体2を搭載する支持板3と、複数の支持体2の間に設けられ、複数の放射線検出器1のカードエッジ部29のそれぞれが接続されて外部の制御回路と複数の放射線検出器1のそれぞれとを接続する複数のコネクタ4とを備える放射線検出器立て5に複数の放射線検出器1を保持することができる。図3においては、X方向に沿って、放射線検出器立て5に16枚の放射線検出器1が挿入、保持されている例を示す。また、放射線検出器1の弾性部材実装部32及び凹部32aには、例えば、板金からなるばね部材が組み込まれ、支持体2の溝に放射線検出器1が挿入された場合に、このばね部材により放射線検出器1が支持体2に押し付けられて固定される。
【0034】
本実施の形態においては、複数の放射線検出器1が、X方向に沿って配置されることにより、平面視にてマトリックス状に配列され、1つの放射線検出装置119として構成される。なお、複数の放射線検出器1をY方向に沿って配置することもできる。
【0035】
(放射線検出器1の配列の概要)
図4は、本実施の形態に係る複数の放射線検出器が配列した状態の概要の一部を示す。
【0036】
図4は、複数の放射線検出器を放射線が入射する側(すなわち、上面側)からの図であり、説明の便宜上、半導体素子10の溝10b、基板20の配線パターン、フレキシブル基板40等の図示は省略する。
【0037】
本実施の形態においては、複数の放射線検出器1それぞれの基板20が平行になる配置で複数の放射線検出器1がX方向に沿って配列される。そして、複数の放射線検出器1のそれぞれが、基板20の一方の面及び他方の面のそれぞれにY方向に直列に配列する複数の半導体素子10を有する。
【0038】
ここで、基板20を挟んで設けられる半導体素子10間の距離を「XG1」、一の放射線検出器1の半導体素子10から、当該半導体素子10に対向し、一の放射線検出器1に隣接する他の放射線検出器1の半導体素子10までの距離を「XG2」とする。また、Y方向に配列している半導体素子10間の距離を「YG1」とし、放射線検出器1が用いられる所定の半導体素子ピッチ110の横ピッチを「a」、縦ピッチを「b」とする。なお、図4において、破線で区切られる長方形状の一つ一つが本実施の形態に係る半導体素子ピッチ110に該当する。
【0039】
ここで、複数の放射線検出器1が有する複数の半導体素子10それぞれのサイズを以下の4つの関係式を満たすサイズに規定する。
c=a−(XG1+XG2)/2
d=b−YG1=2e+(n−2)f
e=b/n−YG1/2
f=b/n (ただし、nは正の整数)
【0040】
ここで、複数の放射線検出器1が配列された放射線検出装置の上方にマッチドコリメーターを設置する場合は、以下の関係式を満たす配置にすることが好ましい。なお、以下の2つの関係式においてマッチドコリメーターのセプタ幅をCdとする。セプタ幅は、一例として、0.2mm以上0.3mm以下程度である。また、XG1は0.18mm以上0.2mm以下程度であり、XG2は0.20mm以上0.24mm以下程度である。
【0041】
Cd≧XG1
Cd≧XG2
【0042】
また、マッチドコリメーターのセプタ幅と、放射線検出器1の基板20等の存在により、若しくは複数の放射線検出器1が配列された場合に各放射線検出器1間の隙間により生じる放射線を検出することができない不感領域の幅とを一致させることを目的とした場合、XG1=XG2の関係を満たすことがより好ましく、XG1=XG2=YG1の関係を満たすことが更に好ましい。
【0043】
図5は、本実施の形態に係る放射線検出器上にマッチドコリメーターを備え付けた場合の模式的な上面図である。
【0044】
マッチドコリメーター50は、複数の放射線検出器1が配列されて構成される1つ以上の放射線検出装置を覆うように設けられる。そして、マッチドコリメーター50を用いる場合において、マッチドコリメーター50の複数の開口51それぞれの位置と、半導体素子10の複数の素子内ピクセル領域10aそれぞれの位置とを対応させることが要求される。この対応関係がずれた場合、素子内ピクセル領域10aの位置にマッチドコリメーター50の複数の開口51を隔てるセプタ52(「隔壁」という場合もある)が位置することになる。この場合、素子内ピクセル領域10aとセプタ52とが重なった領域は、放射線を検出することができない不感領域になる。
【0045】
そこで、上述した4つの関係式、すなわち、
c=a−(XG1+XG2)/2
d=b−YG1=2e+(n−2)f
e=b/n−YG1/2
f=b/n (ただし、nは正の整数)
という関係式を満たすように複数の半導体素子10のサイズを決定し、複数の放射線検出器1を配列することにより、複数の放射線検出器1に内包される不可避的な不感領域(例えば、半導体素子10の電極が存在する領域、基板20の配線パターンが存在する領域、基板20が存在する領域、フレキシブル基板40が存在する領域、一の放射線検出器1と一の放射線検出器に隣接する他の放射線検出器1との間の領域等)とセプタ52の位置とを対応させることができる。
【0046】
(実施の形態の効果)
本発明の実施の形態に係る放射線検出器1は、特定の関係式により半導体素子10のサイズを規定すると共に、素子内ピクセル領域10aの幅を規定したので、放射線検出器1に由来する不感領域と、例えば、マッチドコリメーター50のセプタ52幅とを容易に一致させることができる。これにより不感領域を低減できるので、放射線検出器1を稠密に配置した場合でも不感領域を低減でき、放射線検出感度の高い放射線検出器1及び放射線検出器1を備える放射線検出装置を提供することができる。
【0047】
また、本実施の形態に係る放射線検出器1はエッジオン型であり、平面寸法が比較的大きなプラナー形状の半導体素子を製造することを要さない。したがって、本実施の形態においては、プラナー形状の半導体素子を製造する場合に比べ、より均質な結晶の半導体素子1を歩留り良く得られるので放射線検出器1の製造コストを低減できる。また、放射線検出器1がエッジオン型であることから、small pixel effect及びco−planar grid技術が不要となり、small pixel effectに伴うCharge sharingがないという利点もある。
【0048】
また、エッジオン型の放射線検出器1であることから、半導体素子1の高さhを高くしても(すなわち、放射線が走行する深さを深くしても)、電極間距離は変わらないので電荷収集効率の低下が少ない。これにより、本実施の形態に係る放射線検出器1は、高エネルギーのγ線を効率よく検出できる。なお、本実施の形態に係る放射線検出器1及び放射線検出器1を備える放射線検出装置において、ガンマカメラ等に用いられる放射線核種の一例を表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0051】
1 放射線検出器
2 支持体
3 支持板
4 コネクタ
10 半導体素子
10a 素子内ピクセル領域
10b 溝
10d 素子表面
20 基板
22 基板端子
29 カードエッジ部
29a パターン
30、31 カードホルダ
32 弾性部材実装部
32a 凹部
34 溝付穴
36 突起部
40 フレキシブル基板
50 マッチドコリメーター
51 開口
52 セプタ
100 放射線
110 半導体素子ピッチ
119 放射線検出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を検出可能な複数の半導体素子が固定される基板を有するエッジオン型の放射線検出器を備える放射線検出装置であって、
前記複数の半導体素子それぞれが、前記放射線が入射する面に複数の素子内ピクセル領域を有し、
平面視にてX方向と、前記X方向に直交するY方向とを規定した場合に、複数の前記放射線検出器それぞれの前記基板が平行になる配置で複数の前記放射線検出器が前記X方向に沿って配列され、
複数の前記放射線検出器のそれぞれが、前記基板の一方の面及び他方の面のそれぞれに前記Y方向に配列する前記複数の半導体素子を有し、
前記基板を挟んで設けられる前記半導体素子間の距離をXG1、一の前記放射線検出器の前記半導体素子から、当該半導体素子に対向し、前記一の放射線検出器に隣接する他の放射線検出器の前記半導体素子までの距離をXG2とし、
前記Y方向に配列している前記半導体素子間の距離をYG1とし、
前記放射線検出器が用いられる所定のピクセルピッチの横ピッチをa、縦ピッチをbとし、前記複数の半導体素子それぞれの放射線が入射する面の幅をc、長さをdとし、前記複数の半導体素子それぞれの前記複数の素子内ピクセル領域のうち、前記複数の半導体素子それぞれの両端部に位置する素子内ピクセル領域の長さをそれぞれe、前記複数の半導体素子それぞれの両端部に位置する素子内ピクセル領域に挟まれる複数の素子内ピクセル領域のそれぞれの長さをfとした場合に、
c=a−(XG1+XG2)/2
d=b−YG1=2e+(n−2)f
e=b/n−YG1/2
f=b/n (ただし、nは正の整数)
の関係を満たす放射線検出装置。
【請求項2】
放射線検出器上に設置可能なマッチドコリメーターのセプタ幅をCdとした場合に、
Cd≧XG1
Cd≧XG2
の関係を満たす請求項1に記載の放射線検出装置。
【請求項3】
XG1=XG2の関係を満たす請求項2に記載の放射線検出装置。
【請求項4】
XG1=XG2=YG1の関係を満たす請求項3に記載の放射線検出装置。
【請求項5】
前記複数の半導体素子のそれぞれが、前記放射線が入射する面に垂直な一の面に(n−1)個の溝を有すると共に、前記複数の溝間、及び前記一の面の反対側の面に電極を有することにより、n個の前記素子内ピクセル領域が構成される請求項4に記載の放射線検出装置。
【請求項6】
前記複数の半導体素子のそれぞれが、前記基板の一方の面及び他方の面に、前記基板を対称面として設けられる請求項5に記載の放射線検出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−21906(P2012−21906A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160582(P2010−160582)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(509189444)日立コンシューマエレクトロニクス株式会社 (998)
【Fターム(参考)】