説明

放射線治療装置制御装置および放射線照射方法

【課題】所定の時間内に照射される放射線の線量をより高精度に制御すること。
【解決手段】互いに重ならないように診断用X線出射期間と治療用放射線出射期間とを決定するタイミング制御部102と、診断用X線出射期間に放射された診断用放射線35、36により撮像される被検体43の撮像イメージャ画像に基づいて被検体43の性状を算出する患部性状収集部103と、治療用放射線出射期間に治療用放射線照射装置16を用いて治療用放射線23を放射させる放射線照射部109とを備えている。このとき、放射線照射部109は、治療用放射線出射期間のうちの1つの期間での治療用放射線23の単位時間当たりの線量を性状に基づいて変更する。放射線治療装置制御装置2は、単位時間当たりの線量を増減させることにより、診断用X線出射期間と治療用放射線出射期間とを含む所定の時間内に治療用放射線23を所定の線量だけ照射することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線治療装置制御装置および放射線照射方法に関し、特に、患部に放射線を照射することにより患者を治療するときに利用される放射線治療装置制御装置および放射線照射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
患部(腫瘍)に治療用放射線を照射することにより患者を治療する放射線治療が知られている。その放射線治療は、治療効果が高いことが望まれ、その治療用放射線は、患部の細胞に照射される線量に比較して、正常な細胞に照射される線量がより小さいことが望まれている。その治療用放射線は、その患部に所定の線量だけをより高精度に照射されることが望まれている。
【0003】
特表平08−511452号公報には、高度に正確な放射線立案技術に容易に適する放射治療装置が開示されている。その放射治療装置は、高エネルギー放射線で患者を治療する放射治療装置であって、ガントリ平面内で回転するガントリと、ガントリの回転内で位置決めされている並進の軸線に沿って配置されていて、患者を支持するため、および並進の軸線に沿って患者を移動させるためのテーブルと、ガントリ平面に実質的に平行であるファンビーム平面内の放射線ビームを生じるようにガントリに配置された放射線給源であり、前記ビームが、1つの中央光線の周りでビーム平面内で広がる複数の光線を含み、前記中央光線がガントリ平面に沿ってさまざまなガントリ角度から患者に向けられている放射線給源;および放射線給源と患者との間に配置されていて、ガントリ角度の関数として各光線の強度を独立的に制御する減衰手段を具備してなる。
【0004】
特表2000−522129号公報には、患者の位置決めパラメータだけではく、例えば呼吸及び心臓の運動に起因するような生理学的な運動についても、患者の運動のリアルタイム補正を可能とする方法が開示されている。その方法は、患者について所定の角度範囲に配置可能である放射線ビーム軸に沿って方向付けられた個々にエネルギ及び/又はフルエンスが変調された放射線の放射線ビームを与える放射線療法機械を操作する方法であって、(a)第1の位置における患者に対して、行についての放射線ビーム軸の所定の角度についての異なる放射線のエネルギ及び/又はフルエンス、並びに列についての前記ビーム軸の異なる角度についての所定の放射線のエネルギ及び/又はフルエンスを与える行及び列の放射線治療シノグラムを受け入れるステップと、(b)前記第1の位置から第2の位置への患者の運動を示す患者運動データを展開するステップと、(c)前記放射線治療シノグラムの各所定のビーム軸角度について、前記所定のビーム軸に垂直な患者の運動の成分に従って前記治療シノグラムの対応する行をシフトし、且つ前記所定のビーム軸に平行な患者の運動の成分に従って前記放射線治療シノグラムの対応する行をスケールするステップとを有してなり、それによって治療放射線の扇状ビームの発散が適応される。
【0005】
特開2004−97646号公報には、放射線の照射治療中においても、リアルタイムに治療野の状態をモニタすることが可能な放射線治療装置が開示されている。その放射線治療装置は、被検体の治療野へ治療用放射線を照射する放射線照射ヘッドと、前記被検体の前記治療野に診断用X線を照射するX線源と、前記被検体を透過した前記診断用X線の透過X線を検出して、診断画像データとして出力するセンサアレイと、を具備し、前記センサアレイは、前記放射線照射ヘッドの移動に連動して動く。
【0006】
特開2004−166975号公報本発明の目的は、被検体に対して放射線治療がなされた後の治療計画を容易にすることのできる放射線治療装置が開示されている。その放射線治療装置は、治療用放射線を照射する放射線照射ヘッドと、前記放射線照射ヘッドからの前記治療用放射線が照射される被検体の患部を追尾しながら該患部の画像を生成する画像処理部と、前記画像処理部で生成された前記患部の画像を順次記録する記録部とを具備している。
【0007】
【特許文献1】特表平08−511452号公報
【特許文献2】特表2000−522129号公報
【特許文献3】特開2004−97646号公報
【特許文献4】特開2004−166975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、所定の時間内に照射される放射線の線量をより高精度に制御する放射線治療装置制御装置および放射線照射方法を提供することにある。
本発明の課題は、所定の時間内に照射される放射線の線量をより高精度に制御し、かつ、その放射線を放射する照射装置を小型化する放射線治療装置制御装置および放射線照射方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下に、発明を実施するための最良の形態・実施例で使用される符号を括弧付きで用いて、課題を解決するための手段を記載する。この符号は、特許請求の範囲の記載と発明を実施するための最良の形態・実施例の記載との対応を明らかにするために付加されたものであり、特許請求の範囲に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0010】
本発明による放射線治療装置制御装置(2)は、治療用放射線(23)を放射する治療用放射線照射装置(16)と、被検体(43)を透過する診断用放射線(35、36)により被検体(43)のイメージャ画像を生成するイメージャとを備える放射線治療装置(3)を制御する。本発明による放射線治療装置制御装置(2)は、互いに重ならないように診断用X線出射期間と治療用放射線出射期間とを決定するタイミング制御部(102)と、診断用X線出射期間に放射された診断用放射線(35、36)により撮像される被検体(43)の撮像イメージャ画像に基づいて被検体(43)の性状を算出する患部性状収集部(103)と、治療用放射線出射期間に治療用放射線照射装置(16)を用いて治療用放射線(23)を放射させる放射線照射部(110)とを備えている。このとき、放射線照射部(110)は、その性状に基づいて治療用放射線出射期間のうちの1つの期間での治療用放射線(23)の照射条件が適正であるかどうかを判別する。
【0011】
放射線照射部(110)は、さらに、治療用放射線出射期間のうちの1つの期間での治療用放射線(23)の単位時間当たりの線量を性状に基づいて変更する。たとえば、治療用放射線(23)は、不具合があるときに、治療用放射線出射期間のうちの1つの期間に放射されないことがある。放射線治療装置制御装置(2)は、単位時間当たりの線量を増減させることにより、診断用X線出射期間と治療用放射線出射期間とを含む所定の時間内に治療用放射線(23)を所定の線量だけ照射することができる。
【0012】
治療用放射線照射装置(16)は、治療用放射線出射期間の各々に高周波を間欠的に生成する高周波電源(73)と、高周波により荷電粒子(57)を加速する加速管(64)と、荷電粒子(57)の制動放射により治療用放射線(23)を生成するターゲット(52)とを備えている。放射線照射部(110)は、治療用放射線出射期間の各々に生成される高周波の個数を制御する高周波電源制御部(109)を備えている。このとき、放射線治療装置制御装置(2)は、その高周波の個数を制御することにより、治療用放射線(23)の単位時間当たりの線量を制御している。このため、治療用放射線照射装置(16)のうちの荷電粒子(57)を放出する電子線発生部(63)は、荷電粒子(57)の放出量を制御するためのグリッド(67)を備える必要がなく、治療用放射線照射装置(16)は、小型化することができる。
【0013】
治療用放射線照射装置(16)は、治療用放射線出射期間の各々に高周波を間欠的に生成する高周波電源(73)と、高周波により荷電粒子(57)を加速する加速管(64)と、荷電粒子(57)の制動放射により治療用放射線(23)を生成するターゲット(52)とを備えている。放射線照射部(110)は、治療用放射線出射期間の各々に高周波が単位時間当たりに生成される個数を制御する高周波電源制御部(109)を備えている。このとき、放射線治療装置制御装置(2)は、その高周波の個数を制御することにより、治療用放射線(23)の単位時間当たりの線量を制御している。このため、荷電粒子(57)を放出する電子線発生部(63)は、荷電粒子(57)の放出量を制御するためのグリッド(67)を備える必要がなく、小型化することができる。
【0014】
放射線照射部(110)は、ある診断用X線出射期間において患部性状収集部(103)により算出された性状が所定範囲に含まれない場合には、その診断用X線出射期間に後続する治療用放射線出射期間における治療用放射線(23)の放射を停止することが好ましい。
【0015】
放射線照射部(110)は、ある診断用X線出射期間において患部性状収集部(103)が性状を算出することに失敗したときに、その診断用X線出射期間に後続する治療用放射線出射期間における治療用放射線(23)の放射を停止することが好ましい。
【0016】
放射線照射部(110)は、治療用放射線出射期間のうちの治療用放射線(23)の放射が停止される治療用放射線出射期間の個数が所定数以上であるときに、警告を発することが好ましい。
【0017】
本発明による放射線治療装置制御装置(2)は、放射線治療装置(3)が備える線量計(61)を用いて治療用放射線(23)の線量を測定する放射線強度モニタ部(106)をさらに備えている。放射線照射部(110)は、治療用放射線出射期間のうちの1つの期間での治療用放射線(23)の単位時間当たりの線量を線量にさらに基づいて変更する。このとき、放射線治療装置制御装置(2)は、被検体(43)に照射される治療用放射線(23)の線量をより高精度に制御することができる。
【0018】
放射線強度モニタ部(106)は、線量を測定する複数測定時間の1つの時間に含まれる治療用放射線出射期間の総和を算出する。放射線照射部(110)は、治療用放射線出射期間のうちの1つの期間での治療用放射線(23)の単位時間当たりの線量を総和にさらに基づいて変更する。その線量をその総和で除算した平均の線量率による制御は、その総和に独立にされる制御に比較して、より妥当であり、好ましい。
【0019】
本発明による放射線治療システムは、本発明による放射線治療装置制御装置(2)と、放射線治療装置(3)とを備えていることが好ましい。
【0020】
本発明による放射線治療システムは、本発明による放射線治療装置制御装置(2)と、放射線治療装置(3)とを備えている。線量計は、透過型電離箱であることが非破壊的検証可能である点で好ましい。
【0021】
本発明による放射線治療システムは、本発明による放射線治療装置制御装置(2)と、放射線治療装置(3)とを備えている。線量計は、透過する放射線により発光するシンチレータを用いて線量を測定するシンチレーション検出器であることが応答性がよい点で好ましい。
【0022】
本発明による放射線治療システムは、本発明による放射線治療装置制御装置(2)と、放射線治療装置(3)とを備えている。線量計は、半導体を用いて線量を測定する半導体検出器であることが応答性がよい点で好ましい。
【0023】
本発明による放射線照射方法は、治療用放射線(23)を放射する治療用放射線照射装置(16)と、被検体(43)を透過する診断用放射線(35、36)により被検体(43)のイメージャ画像を生成するイメージャとを備える放射線治療装置(3)を制御する。本発明による放射線照射方法は、互いに重ならないように診断用X線出射期間と治療用放射線出射期間とを決定するステップと、診断用X線出射期間に放射された診断用放射線(35、36)により撮像される被検体(43)の撮像イメージャ画像に基づいて被検体(43)の性状を算出するステップと、その性状に基づいて治療用放射線出射期間のうちの1つの期間での治療用放射線(23)の照射条件が適正であるかどうかを判別するステップとを備えている。
【0024】
本発明による放射線照射方法は、さらに、治療用放射線出射期間のうちの1つの期間での治療用放射線(23)の照射条件をその性状に基づいて算出するステップと、その1つの期間に治療用放射線照射装置(16)を用いて治療用放射線(23)をその照射条件で放射させるステップとを備えている。たとえば、治療用放射線(23)は、不具合があるときに、治療用放射線出射期間のうちの1つの期間に放射されないことがある。このような放射線照射方法によれば、単位時間当たりの線量を増減させることにより、診断用X線出射期間と治療用放射線出射期間とを含む所定の時間内に治療用放射線(23)を所定の線量だけ照射することができる。
【0025】
治療用放射線照射装置(16)は、治療用放射線出射期間の各々に高周波を間欠的に生成する高周波電源(73)と、高周波により荷電粒子(57)を加速する加速管(64)と、荷電粒子(57)の制動放射により治療用放射線(23)を生成するターゲット(52)とを備えている。本発明による放射線照射方法は、治療用放射線出射期間の各々に生成される高周波の個数を制御するステップを備えている。このとき、放射線照射方法は、その高周波の個数を制御することにより、治療用放射線(23)の単位時間当たりの線量を制御している。このため、治療用放射線照射装置(16)のうちの荷電粒子(57)を放出する電子線発生部(63)は、荷電粒子(57)の放出量を制御するためのグリッド(67)を備える必要がなく、治療用放射線照射装置(16)は、小型化することができる。
【0026】
治療用放射線照射装置(16)は、治療用放射線出射期間の各々に高周波を間欠的に生成する高周波電源(73)と、高周波により荷電粒子(57)を加速する加速管(64)と、荷電粒子(57)の制動放射により治療用放射線(23)を生成するターゲット(52)とを備えている。本発明による放射線照射方法は、治療用放射線出射期間の各々に高周波が単位時間当たりに生成される個数を制御するステップを備えている。このとき、放射線照射方法は、その高周波の個数を制御することにより、治療用放射線(23)の単位時間当たりの線量を制御している。このため、荷電粒子(57)を放出する電子線発生部(63)は、荷電粒子(57)の放出量を制御するためのグリッド(67)を備える必要がなく、小型化することができる。
【0027】
本発明による放射線治療方法は、ある診断用X線出射期間において算出された性状が所定範囲に含まれない場合には、その診断用X線出射期間に後続する治療用放射線出射期間における治療用放射線(23)の放射を停止するステップをさらに備えていることが好ましい。
【0028】
本発明による放射線照射方法は、ある診断用X線出射期間において患部性状収集部(103)が性状を算出することに失敗したときに、その診断用X線出射期間に後続する治療用放射線出射期間における治療用放射線(23)の放射を停止するステップをさらに備えていることが好ましい。
【0029】
本発明による放射線照射方法は、治療用放射線出射期間のうちの治療用放射線(23)の放射が停止される治療用放射線出射期間の個数が所定数以上であるときに、警告を発するステップをさらに備えていることが好ましい。
【0030】
本発明による放射線照射方法は、放射線治療装置(3)が備える線量計(61)を用いて治療用放射線(23)の線量を測定するステップと、治療用放射線出射期間のうちの1つの期間での治療用放射線(23)の単位時間当たりの線量を線量にさらに基づいて変更するステップとを更に備えている。このとき、放射線照射方法は、被検体(43)に照射される治療用放射線(23)の線量をより高精度に制御することができる。
【0031】
本発明による放射線照射方法は、線量を測定する複数測定時間の1つの時間に含まれる治療用放射線出射期間の総和を算出するステップと、治療用放射線出射期間のうちの1つの期間での治療用放射線(23)の単位時間当たりの線量を総和にさらに基づいて変更するステップとを備えている。その線量をその総和で除算した平均の線量率による制御は、その総和に独立にされる制御に比較して、より妥当であり、好ましい。
【発明の効果】
【0032】
本発明による放射線治療装置制御装置および放射線照射方法は、所定の時間内に照射される放射線の線量をより高精度に制御することができる。
本発明による放射線治療装置制御装置および放射線照射方法は、所定の時間内に照射される放射線の線量をより高精度に制御し、かつ、その放射線を放射する照射装置を小型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
図面を参照して、本発明による放射線治療システムの実施の形態を記載する。その放射線治療システム1は、図1に示されているように、放射線治療装置制御装置2と放射線治療装置3とを備えている。放射線治療装置制御装置2は、パーソナルコンピュータに例示されるコンピュータである。放射線治療装置制御装置2は、双方向に情報を伝送することができるように放射線治療装置3に接続されている。
【0034】
図2は、放射線治療装置3を示している。放射線治療装置3は、旋回駆動装置11とOリング12と走行ガントリ14と治療用放射線照射装置16とを備えている。旋回駆動装置11は、回転軸17を中心に回転可能にOリング12を土台に支持し、放射線治療装置制御装置2により制御されて回転軸17を中心にOリング12を回転させる。回転軸17は、鉛直方向に平行である。Oリング12は、回転軸18を中心とするリング状に形成され、回転軸18を中心に回転可能に走行ガントリ14を支持している。回転軸18は、鉛直方向に垂直であり、回転軸17に含まれるアイソセンタ19を通る。回転軸18は、さらに、Oリング12に対して固定され、すなわち、Oリング12とともに回転軸17を中心に回転する。走行ガントリ14は、回転軸18を中心とするリング状に形成され、Oリング12のリングと同心円になるように配置されている。放射線治療装置3は、さらに、図示されていない走行駆動装置を備えている。その走行駆動装置は、放射線治療装置制御装置2により制御されて回転軸18を中心に走行ガントリ14を回転させる。
【0035】
治療用放射線照射装置16は、放射線治療装置制御装置2により制御されて、治療用放射線23を放射する。治療用放射線照射装置16は、治療用放射線23がアイソセンタ19を通るように、走行ガントリ14に支持されている。治療用放射線23は、このように治療用放射線照射装置16が走行ガントリ14に支持されることにより、旋回駆動装置11によりOリング12が回転し、または、その走行駆動装置により走行ガントリ14が回転しても、常に概ねアイソセンタ19を通る。即ち、走行・旋回を行うことで任意方向からアイソセンタ19に向けて治療用放射線23の照射が可能になる。
【0036】
放射線治療装置3は、さらに、複数のイメージャシステムを備えている。すなわち、放射線治療装置3は、診断用X線源24、25とセンサアレイ32、33とを備えている。診断用X線源24は、走行ガントリ14に支持されている。診断用X線源24は、走行ガントリ14のリングの内側に配置され、アイソセンタ19から診断用X線源24を結ぶ線分とアイソセンタ19から治療用放射線照射装置16を結ぶ線分とがなす角が鋭角になるような位置に配置されている。診断用X線源24は、放射線治療装置制御装置2により制御されてアイソセンタ19に向けて診断用X線35を放射する。診断用X線35は、診断用X線源24が有する1点から放射され、その1点を頂点とする円錐状のコーンビームである。診断用X線源25は、走行ガントリ14に支持されている。診断用X線源25は、走行ガントリ14のリングの内側に配置され、アイソセンタ19から診断用X線源25を結ぶ線分とアイソセンタ19から治療用放射線照射装置16を結ぶ線分とがなす角が鋭角になるような位置に配置されている。診断用X線源25は、放射線治療装置制御装置2により制御されてアイソセンタ19に向けて診断用X線36を放射する。診断用X線36は、診断用X線源25が有する1点から放射され、その1点を頂点とする円錐状のコーンビームである。
【0037】
センサアレイ32は、走行ガントリ14に支持されている。センサアレイ32は、診断用X線源24により放射されてアイソセンタ19の周辺の被写体を透過した診断用X線35を受光して、その被写体の透過画像を生成する。センサアレイ33は、走行ガントリ14に支持されている。センサアレイ33は、診断用X線源25により放射されてアイソセンタ19の周辺の被写体を透過した診断用X線36を受光して、その被写体の透過画像を生成する。センサアレイ32、33としては、FPD(Flat Panel Detector)、X線II(Image Intensifier)が例示される。
【0038】
このようなイメージャシステムによれば、センサアレイ32、33により得た画像信号に基づき、アイソセンタ19を中心とする透過画像を生成することができる。
【0039】
なお、診断用X線源24は、アイソセンタ19から診断用X線源24を結ぶ線分とアイソセンタ19から治療用放射線照射装置16を結ぶ線分とがなす角が鈍角になるような位置に配置されることもできる。すなわち、センサアレイ32は、アイソセンタ19からセンサアレイ32を結ぶ線分とアイソセンタ19から治療用放射線照射装置16を結ぶ線分とがなす角が鋭角になるような位置に配置される。診断用X線源25は、アイソセンタ19から診断用X線源25を結ぶ線分とアイソセンタ19から治療用放射線照射装置16を結ぶ線分とがなす角が鈍角になるような位置に配置されることもできる。すなわち、センサアレイ33は、アイソセンタ19からセンサアレイ33を結ぶ線分とアイソセンタ19から治療用放射線照射装置16を結ぶ線分とがなす角が鋭角になるような位置に配置される。このとき、センサアレイ32、33は、治療用放射線照射装置16から放射される治療用放射線23に照射されにくく、好ましい。
【0040】
放射線治療装置3は、さらに、カウチ41とカウチ駆動装置42とを備えている。カウチ41は、放射線治療システム1により治療される患者43が横臥することに利用される。カウチ41は、図示されていない固定具を備えている。その固定具は、その患者が動かないように、その患者をカウチ41に固定する。カウチ駆動装置42は、カウチ41を土台に支持し、放射線治療装置制御装置2により制御されてカウチ41を移動させる。
【0041】
図3は、治療用放射線照射装置16を示している。治療用放射線照射装置16は、電子ビーム加速装置51とX線ターゲット52と1次コリメータ53とフラットニングフィルタ54と線量計61と2次コリメータ55とマルチリーフコリメータ56とを備えている。電子ビーム加速装置51は、電子を加速して生成される電子ビーム57をX線ターゲット52に照射する。X線ターゲット52は、高原子番号材(タングステン、タングステン合金等)から形成され、電子ビーム57が照射された際の制動放射により生成される放射線59を放出する。放射線59は、X線ターゲット52が内部に有する点である仮想的点線源58を通る直線に概ね沿って放射される。。1次コリメータ53は、高原子番号材(鉛、タングステン等)から形成され、所望の部位以外に放射線59が照射されないように放射線59を遮蔽する。フラットニングフィルタ54は、アルミニウム等から形成され、概ね円錐形の突起が形成される板に形成されている。フラットニングフィルタ54は、その突起がX線ターゲット側に面するように配置される。フラットニングフィルタ形状は、本フラットニングフィルタを通過した後に、その放射方向に垂直である平面の所定領域における線量が概ね一様に分布するように形成される。2次コリメータ55は、高原子番号材(鉛、タングステン等)から形成され、放射線60が所望の部位以外に照射されないように放射線60を遮蔽する。このようにして形成された一様強度分布を持つ放射線60は、放射線治療装置制御装置2により制御を受けたマルチリーフコリメータ56により、一部が遮蔽されて、別途構築した治療計画に基づく性状である治療用放射線23を生成することになる。すなわち、マルチリーフコリメータ56は、放射線治療装置制御装置2により制御されて、放射線60の一部を遮蔽して治療用放射線23が患者に照射されるときの照射野の形状を制御する。
【0042】
線量計61は、透過する放射線の強度を測定する透過型電離箱であり、放射線60が透過するように、1次コリメータ53と2次コリメータ55との間に配置されている。線量計61は、透過する放射線60の線量を測定し、その強度を放射線治療装置制御装置2に出力する。このような線量計61は、非破壊的検証可能である点で好ましい。なお、線量計61は、透過型電離箱と異なる他のX線強度検出器を適用することもできる。そのX線強度検出器としては、半導体検出器、シンチレーション検出器が例示される。半導体検出器またはシンチレーション検出器は、透過型電離箱のように放射線軌道上に代替設置することが困難であるためにその軌道外に配置することが好ましく、たとえば、アイソセンタ19を隔てて治療用放射線照射装置16に対向する位置に配置されるように走行ガントリ14に固定される。電離箱は、一般に、時定数が数秒程度であり、応答性が悪い。半導体検出器またはシンチレーション検出器は、軌道外に配置されるときに電離箱より信号強度が低いという欠点があるが、電離箱より応答性がよくなり、好ましい。
【0043】
電子ビーム加速装置51は、電子線発生部63と加速管64とを備えている。電子線発生部63は、カソード66とグリッド67とを備えている。加速管64は、円筒形に形成され、その円筒の内部に適切な間隔で並ぶ複数の電極68を備えている。放射線治療装置3は、さらに、カソード電源71とグリッド電源72と高周波電源73とを備えている。カソード電源71は、放射線治療装置制御装置2により制御されて、カソード66が加熱されてカソード66から所定の量の電子が放出されるように(すなわち、カソード66が所定の温度で維持されるように)、カソード66に電力を供給する。グリッド電源72は、放射線治療装置制御装置2により制御されて、電子線発生部63から所定の量の電子だけが放出されるように、グリッド67とカソード66との間に所定の電圧を印加する。高周波電源73は、導波管74を介して加速管64に接続されている。高周波電源73は、放射線治療装置制御装置2により制御されて、加速管64が電子線発生部63から放出される電子を所定のエネルギーを有するまで加速するように、導波管74を介して加速管64にマイクロ波を入射する。
【0044】
図4は、放射線治療装置制御装置2を示している。放射線治療装置制御装置2は、コンピュータであり、図示されていないCPUと記憶装置と入力装置と出力装置とインターフェースとを備えている。そのCPUは、放射線治療装置制御装置2にインストールされるコンピュータプログラムを実行して、その記憶装置と入力装置と出力装置とを制御する。その記憶装置は、そのコンピュータプログラムを記録し、そのCPUに利用される情報を記録し、そのCPUにより生成される情報を記録する。その入力装置は、ユーザに操作されることにより生成される情報をそのCPUに出力する。その入力装置としては、キーボード、マウスが例示される。その出力装置は、そのCPUにより生成された情報をユーザに認識可能に出力する。その出力装置としては、ディスプレイが例示される。そのインターフェースは、放射線治療装置制御装置2に接続される外部機器により生成される情報をそのCPUに出力し、そのCPUにより生成された情報をその外部機器に出力する。
【0045】
放射線治療装置制御装置2は、コンピュータプログラムである治療計画部101とタイミング制御部102と患部性状収集部103と照射位置制御部104とMLC制御部105と放射線強度モニタ部106とカソード通電量制御部107と放射線照射部110とを備えている。放射線照射部110は、グリッド電圧制御部108と高周波電源制御部109とから形成されている。
【0046】
治療計画部101は、患者43の患部とその患部の周辺の臓器と位置関係を示す3次元データとユーザにより入力された情報とに基づいて、治療計画を作成して、その治療計画を患者43の識別情報に対応付けて記憶装置に記録する。その治療計画は、患者43の患部に治療用放射線23を照射する照射角度と、その各照射角度から照射する治療用放射線23の線量および照射野の形状とを示している。その治療計画は、さらに、治療用放射線23を各照射角度から照射するときに、診断用X線35、36が患者43を透過して撮像される透過画像が患者43の患部をより詳細に映し出すような診断用X線35、36を照射する撮像角度を示している。なお、その撮像角度は、その治療計画が示さなくてもよく、その治療計画と別途に放射線治療装置制御装置2に入力されることもできる。このとき、その撮像角度は、そのユーザと異なるユーザにより決定されてもよい。
【0047】
タイミング制御部102は、放射線治療システム1を用いて患者43を放射線治療する時間を治療用放射線出射期間と診断用X線出射期間とに分割する。このとき、治療用放射線出射期間と診断用X線出射期間とは、共通の期間を含んでいないで、すなわち、治療用放射線出射期間に含まれる任意の時刻は、診断用X線出射期間に含まれない。
【0048】
患部性状収集部103は、イメージャシステムを用いて患者43の患部の位置と患部の3次元形状と性状とを算出する。すなわち、患部性状収集部103は、タイミング制御部102により分割された診断用X線出射期間に診断用X線源24を用いて診断用X線35を放射し、センサアレイ32を用いて診断用X線35に基づいて生成される患者43の透過画像を撮像する。患部性状収集部103は、さらに、タイミング制御部102により分割された診断用X線出射期間に診断用X線源25を用いて診断用X線36を放射し、センサアレイ33を用いて診断用X線36に基づいて生成される患者43の透過画像を撮像する。患部性状収集部103は、その透過画像に基づいて患者43の患部の3次元位置と性状とを算出する。
【0049】
照射位置制御部104は、患部性状収集部103により算出される患部の3次元位置を治療用放射線23が透過するように、治療用放射線照射装置16を移動させる。
【0050】
MLC制御部105は、治療計画部101により作成された治療計画により示される照射野の形状に治療用放射線23の断面形状が一致するように、マルチリーフコリメータ56を制御する。なお、MLC制御部105は、患部性状収集部103により算出された患部の三次元形状に基づいて、その患部のみが治療用放射線23に照射されるように、マルチリーフコリメータ56を制御することも可能である。
【0051】
放射線強度モニタ部106は、所定期間に線量計61により計測された放射線60の線量を線量計61から周期的に収集する。その所定期間の長さは、線量計61の仕様に基づいて決定される。放射線強度モニタ部106は、さらに、その所定期間に含まれる治療用放射線出射期間の総和を算出する。放射線強度モニタ部106は、その収集された線量をその総和で除算した平均の線量率を算出する。
【0052】
カソード通電量制御部107は、カソード電源71を用いて、カソード66が加熱されてカソード66から一定の量の電子が放出されるように、カソード66に電力を供給し、カソード66を所定の温度に維持する。
【0053】
放射線照射部110は、治療計画部101により作成された治療計画により示される治療用放射線23の線量に基づいて、照射条件を算出する。放射線照射部110は、放射線強度モニタ部106により収集された強度と患部性状収集部103により算出される性状とに基づいて、その照射条件が適正であるかどうかを判別する。放射線照射部110は、その照射条件が適正であるときに、治療用放射線照射装置16を用いてその照射条件で治療用放射線23を放射させる。放射線照射部110は、その照射条件が適正でないときに、その照射条件を適正になるように変更して、その変更された照射条件で治療用放射線照射装置16を用いて治療用放射線23を放射させる。
【0054】
グリッド電圧制御部108は、放射線強度モニタ部106により収集された強度と患部性状収集部103により算出される性状とに基づいて、線量率を算出し、その線量率に基づいてグリッド電圧値を算出する。その線量率は、治療計画に示される線量を患者43の患部に照射するときに、次の治療用放射線出射期間で照射すべき治療用放射線23の線量率を示している。たとえば、その線量率は、患部性状収集部103により患者43の患部の位置が予め設定された許容範囲から外れていることが観測されるときに0を示し、線量計61により測定された線量が想定される値より小さいときに、予定される線量率より大きい値を示す。そのグリッド電圧値は、治療用放射線照射装置16がその線量率の治療用放射線23を放射するときのグリッド67とカソード66との電位差を示している。たとえば、そのグリッド電圧値は、その線量率を増加するときに、通常時より絶対値が小さくなるように算出される。グリッド電圧制御部108は、グリッド電源72を用いて、グリッド67とカソード66との電位差がそのグリッド電圧値になるように、次の治療用放射線出射期間でグリッド67とカソード66との間に当該電圧を印加する。
【0055】
高周波電源制御部109は、放射線強度モニタ部106により収集された強度と患部性状収集部103により算出される性状とに基づいて線量率を算出し、その線量率に基づいてパルス周波数、パルス幅及びパルス出力を算出する。なお、各要素は、放射線治療装置制御装置2での算出内容に応じて適宜選定されるものとする。その線量率は、治療計画に示される線量を患者43の患部に照射するときに、次の治療用放射線出射期間で照射すべき治療用放射線23の線量率を示している。たとえば、その線量率は、患部性状収集部103により患者43の患部の位置が予め設定された許容範囲から外れていることが観測されるときに0を示し、線量計61により測定された線量が想定される値より小さいときに、予定される線量率より大きい値を示している。そのパルス周波数は、治療用放射線照射装置16がその線量率の治療用放射線23を放射するときのマイクロ波を入射するタイミングの単位時間当たりの回数を示している。そのパルス幅は、そのマイクロ波の各々を入射する時間を示している。そのパルス出力は、そのマイクロ波のマイクロ波強度を示している。たとえば、そのパルス周波数は、その線量率を増加するときに、通常時より大きくなるように算出される。たとえば、そのパルス幅は、その線量率を増加するときに、通常時より大きくなるように算出される。たとえば、そのパルス出力は、その線量率を増加するときに、通常時より大きくなるように算出される。高周波電源制御部109は、高周波電源73を用いて、次の治療用放射線出射期間でそのパルス周波数、パルス幅及びパルス強度とに対応するマイクロ波を加速管64に入射する。
【0056】
なお、高周波電源制御部109は、パルス周波数、パルス幅及びパルス出力の一部だけを算出することができる。たとえば、高周波電源制御部109は、パルス幅とパルス出力とを変更しないで、パルス周波数だけを算出する。または、高周波電源制御部109は、パルス周波数とパルス出力とを変更しないで、パルス幅だけを算出する。または、高周波電源制御部109は、パルス周波数とパルス幅とを変更しないで、パルス出力だけを算出する。または、高周波電源制御部109は、パルス出力を変更しないで、パルス周波数とパルス幅とだけを算出する。または、高周波電源制御部109は、パルス幅を変更しないで、パルス周波数とパルス出力とだけを算出する。または、高周波電源制御部109は、パルス周波数を変更しないで、パルス幅とパルス出力とだけを算出する。
【0057】
図5は、治療用放射線23が患者43に照射されるタイミングと診断用X線35、36が患者43に照射されるタイミングとを示している。タイミング制御部102は、治療時間を分割した治療用放射線出射期間と診断用X線出射期間とのいずれかを示す高周波パルス信号を生成する。その高周波パルス信号は、ONを示すときに治療用放射線出射期間を示し、OFFを示すときに診断用X線出射期間を示している。すなわち、その治療用放射線出射期間と診断用X線出射期間とは、交互に開始される。たとえば、その治療用放射線出射期間と診断用X線出射期間とは、66.6ms周期で交互に開始され、その治療用放射線出射期間は、28ms間継続し、その診断用X線出射期間は、38.6ms間継続する。高周波電源制御部109は、治療用放射線出射期間に、算出されるパルス周波数とパルス幅とに対応するパルス(通常時に、300ppsのパルス)を出力し、高周波電源73は、そのパルスに応答してマイクロ波を加速管64に入射する。電子ビーム加速装置51は、そのマイクロ波に応答して電子線57を放射し、治療用放射線照射装置16は、電子線57に応答して治療用放射線23を放射する。患部性状収集部103は、パルスを生成し、放射線治療装置3のイメージャシステムは、そのパルスに応答して診断用X線35、36を放射して患者43の透過画像を撮像する。
【0058】
放射線照射部110は、ある診断用X線出射期間において患部性状収集部103により算出された患部の位置が所定範囲に含まれないときに、その診断用X線出射期間に後続する治療用放射線出射期間における治療用放射線23の放射を停止する。放射線照射部110は、さらに、ある診断用X線出射期間において患部性状収集部103が性状を算出することに失敗したときに、その診断用X線出射期間に後続する治療用放射線出射期間における治療用放射線23の放射を停止する。その失敗としては、放射線治療装置3のイメージャシステムが誤動作すること、ノイズが所定の量より大きいことが例示される。放射線照射部110は、治療用放射線出射期間のうちの治療用放射線23の放射が停止される治療用放射線出射期間の個数が所定数以上であるときに、放射線治療装置制御装置2の出力装置を用いてその旨を示す警告をユーザに通知し、後続する治療用放射線出射期間における治療用放射線23の放射を停止し、患部性状収集部103による患者43の透過画像の撮像を停止させる。
【0059】
本発明による放射線照射方法の実施の形態は、放射線治療システム1により実行される。ユーザは、まず、放射線治療装置制御装置2を活用して治療計画を作成し、その治療計画を放射線治療装置制御装置2に入力する。その治療計画は、患者43の患部に治療用放射線23を照射する照射角度と、その各照射角度から照射する治療用放射線23の線量および照射野の形状とを示している。なお、その治療計画は、治療用放射線23を各照射角度から照射するときに、診断用X線35、36を照射する撮像角度を示すことも可能である。
【0060】
ユーザは、放射線治療装置3のカウチ41に患者43を固定する。放射線治療装置制御装置2は、診断用X線源24を用いて診断用X線35を放射し、センサアレイ32を用いて診断用X線35に基づいて生成される患者43の透過画像を撮像する。放射線治療装置制御装置2は、さらに、診断用X線源25を用いて診断用X線36を放射し、センサアレイ33を用いて診断用X線36に基づいて生成される患者43の透過画像を撮像する。放射線治療装置制御装置2は、その透過画像に基づいて、治療用放射線23が患者43の患部に照射されるようにカウチ41を移動させる。または、ユーザは、放射線治療装置制御装置2を用いて、ディスプレイの透過画像を見ながら治療用放射線23が患者43の患部に照射されるように、カウチ駆動装置42を制御して患者43を移動させる。即ち、患部がアイソセンタ相当箇所にほぼ位置するようにカウチの調整を行う。
【0061】
放射線治療装置制御装置2は、次いで、治療に割り当てられる時間を治療用放射線出射期間と診断用X線出射期間とに分割する。たとえば、その治療用放射線出射期間と診断用X線出射期間とは、66.6ms周期で交互に開始され、その治療用放射線出射期間は、28ms間継続し、その診断用X線出射期間は、38.6ms間継続する。このように患者及び機器の位置が同一の状態で同一平面内にて診断用X線及び治療用放射線の出射を短時間周期にて交互に行うことにより、患部性状の変化に敏感に対応した高精度照射の実現に繋ぎ得ることとなる。
【0062】
その診断用X線出射期間では、放射線治療装置制御装置2は、放射線治療装置3のイメージャシステムにより診断用X線35、36を放射して患者43の透過画像を撮像する。放射線治療装置制御装置2は、その透過画像に基づいて患者43の患部の位置と形状とを算出する。更に本算出結果が、比較対象(治療計画時評価結果、当該治療機会のアイソセンタ同定時撮像結果等)に対して、予め設定した許容範囲内にあるか否かの評価を行う。本許容範囲外となる事例としてはパターンマッチング率、位置偏差等の異常、エリア異常などが例示される。
【0063】
当該評価結果が許容範囲外である場合及びノイズ等により透過画像評価そのものを行い得なかった場合、引き続く治療用放射線出射期間において治療用放射線を照射した際には治療計画とおりの患部照射を担保し得ない。このため、その諸例に相当する場合には、引き続く治療用放射線出射期間では治療用放射線23の出射を行わないようにする。そして引き続く次なる診断用X線出射期間において、同様に患部性状評価を行うものとする。
【0064】
なお、その諸例に相当する結果が引き続き発生する場合には、患部位置が多少の調整では担保し得ないほどに変化している、または、イメージャ構成要素に不具合を発生していることも考えられる。このため、一定期間に予め設定した回数以上にその諸例相当にいたる場合には、放射線治療装置制御装置2によりユーザの見える位置にアラーム表示を行うと共に一連の照射行為を停止してしまうことも有効である。
【0065】
単一治療用放射線出射期間には複数のパルス状のマイクロ波が加速管64に入射することにより、当該パルスに呼応して図5に示すような治療用X線の出射が行われる。治療計画とおりの照射遂行の有無を確認するために、治療用放射線の線量率を基にした照射時間制御で行う。このため、X線出力の経時的変動への対応に加え、前述のように治療用放射線出射期間における出射を意図的に取止めた場合には、線量率低下への対応を図るために、単一期間内におけるX線強度を増加させることが必要になる。本手法への対応として、放射線治療装置制御装置2は、線量計61により測定された強度に基づいて、線量率を算出する。放射線治療装置制御装置2は、その線量率に基づいて線量率が一定となるようなグリッド電圧値を算出する。具体的には線量率の低下を生じた場合にはグリッド電圧の増加による電子ビーム電流量増加を行うこととする。また、この場合、本対応に呼応して、マイクロ波強度を増加させる必要がある。
【0066】
このような放射線照射方法によれば、放射線治療装置制御装置2は、所定の時間内に照射される放射線の線量をより高精度に制御することができる。このため事前に作成した治療計画に沿った放射線照射を行うことが可能になる。
【0067】
放射線治療装置制御装置2は、ある診断用X線出射期間において撮像された透過画像に基づいて算出された患部の位置が所定範囲に含まれないときに、その診断用X線出射期間に後続する治療用放射線出射期間における治療用放射線23の放射を停止する。放射線治療装置制御装置2は、さらに、ある診断用X線出射期間において透過画像の撮像に失敗したときに、その診断用X線出射期間に後続する治療用放射線出射期間における治療用放射線23の放射を停止する。放射線治療装置制御装置2は、治療用放射線23の放射が停止される治療用放射線出射期間が連続して所定数以上継続するときに、放射線治療装置制御装置2の出力装置を用いてその旨をユーザに通知し、後続する治療用放射線出射期間における治療用放射線23の放射を停止し、患者43の透過画像の撮像を停止させる。さらに、放射線治療装置制御装置2は、治療用放射線23の放射が停止される治療用放射線出射期間の個数が所定数以上であるときに、放射線治療装置制御装置2の出力装置を用いてその旨を示す警告をユーザに通知し、後続する治療用放射線出射期間における治療用放射線23の放射を停止し、患者43の透過画像の撮像を停止させる。
【0068】
患部の位置が所定範囲に所定の期間以上に含まれないことは、患者43の患部が如何ともし難いほどに許容位置から離れていることを示している。透過画像の撮像を所定の回数以上に失敗することは、イメージャシステムの検出系に支障を来したことを示している。すなわち、このような場合には、いつまでたっても患部に治療用放射線23の放射を所定の線量だけ照射することができなくなり、患者43がカウチ41に固定されたまま待ち続けることになる。ユーザは、このような警告がされたときに、放射線治療を中止し、または、患者43を所定の位置に移動し、または、イメージャシステムの検出系を修理する。このような動作によれば、患者43がカウチ41に固定されたまま待ち続けることを防止することができる。
【0069】
また、放射線治療装置制御装置2は、グリッド制御ではなく、単一期間内におけるマイクロ波パルス数(またはパルス周波数)、具体的には単一治療用放射線出射期間におけるX線出射回数の制御を行うことでも本発明の目的を達成し得る。さらには本対応は単一パルスにおけるパルス幅の制御またはパルス幅及びマイクロ波数両方の制御でも同様な目的を達成し得る。このような放射線治療装置制御装置によれば、治療用放射線照射装置16は、グリッドを備えていない電子ビーム加速装置51を適用することができ、規模を小さくすることができ、好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】図1は、放射線治療システムの実施の形態を示すブロック図である。
【図2】図2は、放射線治療装置を示す斜視図である。
【図3】図3は、治療用放射線照射装置を示す断面図である。
【図4】図4は、放射線治療装置制御装置を示すブロック図である。
【図5】図5は、治療用放射線が照射されるタイミングと診断用X線が照射されるタイミングとを示すグラフである。
【符号の説明】
【0071】
1 :放射線治療システム
2 :放射線治療装置制御装置
3 :放射線治療装置
11:旋回駆動装置
12:Oリング
14:走行ガントリ
16:治療用放射線照射装置
17:回転軸
18:回転軸
19:アイソセンタ
23:治療用放射線
24:診断用X線源
25:診断用X線源
32:センサアレイ
33:センサアレイ
35:診断用X線
36:診断用X線
41:カウチ
42:カウチ駆動装置
43:患者
51:電子ビーム加速装置
52:X線ターゲット
53:1次コリメータ
54:フラットニングフィルタ
55:2次コリメータ
56:マルチリーフコリメータ
57:電子線
58:仮想的点線源
59:電子ビーム
59:放射線
60:放射線
61:線量計
62:リーフ
63:電子線発生部
64:加速管
66:カソード
67:グリッド
68:複数の電極
71:カソード電源
72:グリッド電源
73:高周波電源
74:導波管
101:治療計画部
102:タイミング制御部
103:患部性状収集部
104:照射位置制御部
105:MLC制御部
106:放射線強度モニタ部
107:カソード通電量制御部
110:放射線照射部
108:グリッド電圧制御部
109:高周波電源制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療用放射線を放射する治療用放射線照射装置と、
被検体を透過する診断用放射線により前記被検体のイメージャ画像を生成するイメージャとを備える放射線治療装置を制御する放射線治療装置制御装置であり、
互いに重ならないように診断用X線出射期間と治療用放射線出射期間とを決定するタイミング制御部と、
前記診断用X線出射期間に放射された前記診断用放射線により撮像される前記被検体の撮像イメージャ画像に基づいて前記被検体の性状を算出する患部性状収集部と、
前記治療用放射線出射期間に前記治療用放射線照射装置を用いて前記治療用放射線を放射させる放射線照射部とを具備し、
前記放射線照射部は、前記性状に基づいて前記治療用放射線出射期間のうちの1つの期間での前記治療用放射線の照射条件が適正であるかどうかを判別する
放射線治療装置制御装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記放射線照射部は、前記治療用放射線出射期間のうちの1つの期間での前記治療用放射線の照射条件を前記性状に基づいて変更する
放射線治療装置制御装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記治療用放射線照射装置は、
前記治療用放射線出射期間の各々に高周波を間欠的に生成する高周波電源と、
前記高周波により荷電粒子を加速する加速管と、
前記荷電粒子の制動放射により前記治療用放射線を生成するターゲットとを備え、
前記放射線照射部は、前記治療用放射線出射期間の各々に生成される前記高周波の個数を制御する高周波電源制御部を備える
放射線治療装置制御装置。
【請求項4】
請求項2において、
前記治療用放射線照射装置は、
前記治療用放射線出射期間の各々に高周波を間欠的に生成する高周波電源と、
前記高周波により荷電粒子を加速する加速管と、
前記荷電粒子の制動放射により前記治療用放射線を生成するターゲットとを備え、
前記放射線照射部は、前記治療用放射線出射期間の各々に前記高周波が単位時間当たりに生成される個数を制御する高周波電源制御部を備える
放射線治療装置制御装置。
【請求項5】
請求項2〜請求項4のいずれかにおいて、
前記放射線照射部は、前記診断用X線出射期間のうちのある診断用X線出射期間において前記患部性状収集部により算出された前記性状が所定範囲に含まれない場合には、前記ある診断用X線出射期間に後続する治療用放射線出射期間における前記治療用放射線の放射を停止する
放射線治療装置制御装置。
【請求項6】
請求項2〜請求項4のいずれかにおいて、
前記放射線照射部は、前記診断用X線出射期間のうちのある診断用X線出射期間において前記患部性状収集部が前記性状を算出することに失敗したときに、前記ある診断用X線出射期間に後続する治療用放射線出射期間における前記治療用放射線の放射を停止する
放射線治療装置制御装置。
【請求項7】
請求項5または請求項6のいずれかにおいて、
前記放射線照射部は、前記治療用放射線出射期間のうちの前記治療用放射線の放射が停止される治療用放射線出射期間の個数が所定数以上であるときに、警告を発する
放射線治療装置制御装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれかにおいて、
前記放射線治療装置が備える線量計を用いて前記治療用放射線の線量を測定する放射線強度モニタ部を更に具備し、
前記放射線照射部は、前記治療用放射線出射期間のうちの1つの期間での前記治療用放射線の照射条件を前記線量に更に基づいて変更する
放射線治療装置制御装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記放射線強度モニタ部は、前記線量を測定する複数測定時間の1つの時間に含まれる前記治療用放射線出射期間の総和を算出し、
前記放射線照射部は、前記治療用放射線出射期間のうちの1つの期間での前記治療用放射線の照射条件を前記総和に更に基づいて変更する
放射線治療装置制御装置。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれかに記載される放射線治療装置制御装置と、
前記放射線治療装置
とを具備する放射線治療システム。
【請求項11】
請求項8または請求項9のいずれかに記載される放射線治療装置制御装置と、
前記放射線治療装置とを具備し、
前記線量計は、透過型電離箱である
放射線治療システム。
【請求項12】
請求項8または請求項9のいずれかに記載される放射線治療装置制御装置と、
前記放射線治療装置とを具備し、
前記線量計は、シンチレーション検出器である
放射線治療システム。
【請求項13】
請求項8または請求項9のいずれかに記載される放射線治療装置制御装置と、
前記放射線治療装置とを具備し、
前記線量計は、半導体検出器である
放射線治療システム。
【請求項14】
治療用放射線を放射する治療用放射線照射装置と、
被検体を透過する診断用放射線により前記被検体のイメージャ画像を生成するイメージャとを備える放射線治療装置を制御する放射線照射方法であり、
互いに重ならないように診断用X線出射期間と治療用放射線出射期間とを決定するステップと、
前記診断用X線出射期間に放射された前記診断用放射線により撮像される前記被検体の撮像イメージャ画像に基づいて前記被検体の性状を算出するステップと、
前記性状に基づいて前記治療用放射線出射期間のうちの1つの期間での前記治療用放射線の照射条件が適正であるかどうかを判別するステップ
とを具備する放射線照射方法。
【請求項15】
請求項14において、
前記治療用放射線出射期間のうちの1つの期間での前記治療用放射線の照射条件を前記性状に基づいて算出するステップと、
前記1つの期間に前記治療用放射線照射装置を用いて前記治療用放射線を前記照射条件で放射させるステップ
とを更に具備する放射線照射方法。
【請求項16】
請求項15において、
前記治療用放射線照射装置は、
前記治療用放射線出射期間の各々に高周波を間欠的に生成する高周波電源と、
前記高周波により荷電粒子を加速する加速管と、
前記荷電粒子の制動放射により前記治療用放射線を生成するターゲットとを備え、
更に、
前記治療用放射線出射期間の各々に生成される前記高周波の個数を制御するステップ
とを具備する放射線照射方法。
【請求項17】
請求項15において、
前記治療用放射線照射装置は、
前記治療用放射線出射期間の各々に高周波を間欠的に生成する高周波電源と、
前記高周波により荷電粒子を加速する加速管と、
前記荷電粒子の制動放射により前記治療用放射線を生成するターゲットとを備え、
更に、
前記治療用放射線出射期間の各々に前記高周波が単位時間当たりに生成される個数を制御するステップ
とを具備する放射線照射方法。
【請求項18】
請求項15〜請求項17のいずれかにおいて、
前記診断用X線出射期間のうちのある診断用X線出射期間において算出された前記性状が所定範囲に含まれない場合には、前記ある診断用X線出射期間に後続する治療用放射線出射期間における前記治療用放射線の放射を停止するステップ
を更に具備する放射線照射方法。
【請求項19】
請求項15〜請求項17のいずれかにおいて、
前記診断用X線出射期間のうちのある診断用X線出射期間において前記患部性状収集部が前記性状を算出することに失敗したときに、前記ある診断用X線出射期間に後続する治療用放射線出射期間における前記治療用放射線の放射を停止するステップ
を更に具備する放射線照射方法。
【請求項20】
請求項18または請求項19のいずれかにおいて、
前記放射線照射部は、前記治療用放射線出射期間のうちの前記治療用放射線の放射が停止される治療用放射線出射期間の個数が所定数以上であるときに、警告を発するステップ
を更に具備する放射線照射方法。
【請求項21】
請求項14〜請求項20のいずれかにおいて、
前記放射線治療装置が備える線量計を用いて前記治療用放射線の線量を測定するステップと、
前記治療用放射線出射期間のうちの1つの期間での前記治療用放射線の照射条件を前記線量に更に基づいて変更するステップ
とを更に具備する放射線照射方法。
【請求項22】
請求項21において、
前記線量を測定する複数測定時間の1つの時間に含まれる前記治療用放射線出射期間の総和を算出するステップと、
前記治療用放射線出射期間のうちの1つの期間での前記治療用放射線の照射条件を前記総和に更に基づいて変更するステップ
とを更に具備する放射線照射方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−319439(P2007−319439A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−153188(P2006−153188)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】