説明

放射線源の品質検査方法及び品質検査装置

【課題】 放射線源による医療事故の危険性や適切な治療、ひいては患者の負担を軽減することができる、個々の放射線源を全品検査するための、簡易かつ効率の良い放射線源の品質検査装置及び品質検査方法を提供すること。
【解決手段】 複数個の放射線源を整列保持させた線源整列保持具と、放射線感光フィルム等の放射線強度を検知する放射線検知手段3との位置合わせをすることにより、放射線源と放射線検知手段との位置関係を固定させた状態で、個々の放射線源の放射線強度を検知することにより、個々の放射線源の品質を簡易かつ効率よく判別する。また、線源整列保持具と放射線検知手段との間隔を、放射線を透過する材質からなる板材と吸収する材質からなる板材とが交互に配置されるように構成されているスペーサーにより10〜20mmに設定することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌治療等に使用される放射線源の品質検査方法及び品質検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
小線源治療は、密封放射性同位元素を利用し体内疾患部に埋め込むことによって、放射線を照射して治療する内部照射療法である。近年、欧米では前立腺がんの疾病率の増加とともに、副作用が少なく、術後の生活品質(QOL)が良好である小線源治療は広く普及している。前立腺癌の小線源治療に用いられる線源核種としては、低エネルギーで半減期が比較的短いヨウ素125(平均エネルギー28.5keV,半減期59.4日)や、パラジウム103(平均エネルギー20.6keV,半減期16.97日)のシード線源(長さ約4.5mm×直径約0.8mm)が知られている。この小さな金属カプセル状のシード線源は、麻酔をかけた上で超音波の画像を見ながら、予めコンピュータで決定された位置に穿刺により埋め込まれ、患者一人当たり約40〜100個程度利用されている。
【0003】
我が国における前立腺癌の発生頻度も、高齢化や食生活の欧米化及び診断技術の向上に伴い、今後急速に増加すると推計されている。近年、前立腺がんに対する治療として小線源治療は注目され、ヨウ素125のシード線源を利用した小線源治療は保険適用となった。それに伴い、多施設においてこの小線源治療は急速に普及が進んでいる。しかし、使用されるヨウ素125のシード線源は輸入に依存しているのが現状である。
【0004】
その他、小線源を用いる放射線療法に関しては、生体内へ放射線放射物質を埋め込むための小線源照射療法装置であって、 2つの開口端を有する管状支持物と、前記管状支持物の外表面上の放射線放射物質と、 体液と前記小線源照射療法装置の前記放射線放射物質との間の接触を防ぐために、前記放射線放射物質を密閉して包む手段と、 を備えることを特徴とする、小線源照射療法装置(例えば、特許文献1参照)や、前立腺癌の処置において利用される、間隔の開いた放射線源が中に配列される、本質的に硬質で細長い、1本のストランド状の生体吸収性担体物質からなる、小線源治療用の放射性部材、及びその部材の製造方法(例えば、特許文献2参照)や、密封小線源放射性同位元素で物体を撮像し、撮像された物体の形状より密封小線源放射性同位元素の位置を確認するための線源位置確認器具(例えば、特許文献3参照)等が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特表2000−502265号公報
【特許文献2】特表2002−541996号公報
【特許文献3】特開2003−38664号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
小線源治療には計画された正確な放射線量の照射が不可欠とされる。しかし、放射線源、特に微小な密封小線源の品質検査は、数が多く取扱いも煩雑であるため、現在の品質検査は抜き取りにより行われる場合がある。そのため、線源強度の違いによる照射事故の危険性が皆無とはいえず、また、密封容器内に放射線源が封入されていない不良品が混入した場合には想定どおりの治療効果が得られない可能性があり、再度の施術が必要となれば患者の負担が大きくなる等の問題がある。
【0007】
本発明の課題は、放射線源による医療事故の危険性や適切な治療、ひいては患者の負担を軽減することができる、個々の放射線源を全品検査するための、簡易かつ効率の良い放射線源の品質検査装置及び品質検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、複数個の放射線源を整列保持させた線源整列保持具と、放射線強度を検知する放射線検知手段との位置合わせをすることにより、放射線源と放射線検知手段との位置関係を固定させた状態で、個々の放射線源の放射線強度を検知することにより、個々の放射線源の品質を簡易かつ効率よく判別することができることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、(1)線源整列保持具に複数個の放射線源を整列保持させた状態で、放射線検知手段により放射線強度を検知し、個々の放射線源の品質を判別することを特徴とする放射線源の品質検査方法や、(2)線源整列保持具と放射線検知手段とを検知手段固定具に固定し、線源整列保持具と検知手段固定具との位置合わせをすることにより、放射線源と放射線検知手段との位置関係を確定させることを特徴とする前記(1)に記載の放射線源の品質検査方法や、(3)線源整列保持具と放射線検知手段との間隔を、間隔設定機構により10〜20mmに設定することを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の放射線源の品質検査方法や、(4)間隔設定機構が、放射線を透過する材質からなる板材と吸収する材質からなる板材とが交互に配置されるように構成されているスペーサーであることを特徴とする前記(3)に記載の放射線源の品質検査方法や、(5)放射線源が、密封小線源であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の放射線源の品質検査方法や、(6)線源整列保持具により、放射線源単体を整列保持することを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の放射線源の品質検査方法や、(7)線源整列保持具により、複数個の放射線源が内蔵されたカートリッジを整列保持することを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の放射線源の品質検査方法や、(8)放射線検知手段により、放射線強度を光学的または電気的に変換して検知することを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の放射線源の品質検査方法や、(9)放射線検知手段が、放射線感光フィルムであることを特徴とする前記(8)に記載の放射線源の品質検査方法や、(10)放射線検知手段が、イメージングプレートであることを特徴とする前記(8)に記載の放射線源の品質検査方法や、(11)放射線検知手段が、蛍光ガラス線量計であることを特徴とする前記(8)に記載の放射線源の品質検査方法に関する。
【0010】
また本発明は、(12)複数個の放射線源を整列保持させる線源整列保持具と、放射線強度を検知する放射線検知手段とを備えたことを特徴とする放射線源の品質検査装置や、(13)線源整列保持具と放射線検知手段とを固定し、線源整列保持具と検知手段固定具との位置合わせをすることにより、放射線源と放射線検知手段との位置関係を確定させる位置決め機構を有する検知手段固定具を備えていることを特徴とする前記(12)に記載の放射線源の品質検査装置や、(14)線源整列保持具と検知手段固定具との間隔を任意に設定することができる間隔設定機構を備えていることを特徴とする前記(12)又は(13)に記載の放射線源の品質検査装置や、(15)間隔設定機構が、放射線を透過する材質からなる板材と吸収する材質からなる板材とが交互に配置されるように構成されているスペーサーであることを特徴とする前記(14)に記載の放射線源の品質検査装置や、(16)線源整列保持具が、密封小線源の整列保持具であることを特徴とする(12)〜(15)のいずれか1項に記載の放射線源の品質検査装置や、(17)線源整列保持具が、放射線源単体の整列保持具であることを特徴とする、前記(12)〜(16)のいずれか1項に記載の放射線源の品質検査装置や、(18)線源整列保持具が、複数個の放射線源が内蔵されたカートリッジの整列保持具であることを特徴とする前記(12)〜(16)のいずれか1項に記載の放射線源の品質検査装置や、(19)放射線検知手段が、放射線強度を光学的又は電気的な信号に変換して検知することを特徴とする前記(12)〜(18)のいずれか1項に記載の放射線源の品質検査装置や、(20)放射線検知手段が、放射線感光フィルムであることを特徴とする前記(19)に記載の放射線源の品質検査装置や、(21) 放射線検知手段が、イメージングプレートであることを特徴とする前記(19)に記載の放射線源の品質検査装置や、(22)放射線検知手段が、蛍光ガラス線量計であることを特徴とする前記(19)に記載の放射線源の品質検査装置に関する。
【発明の効果】
【0011】
放射線源を整列保持することにより、放射線源が微小かつ数の多い場合でも、容易に個々の放射線源の放射線強度を同時個別的に正確に検知することができる。特に、放射線検知手段として放射線感光フィルムを用いる場合は、感光時間を均一にする必要性が高く、線源整列保持具によりすべての放射線源を同時に移動させることが可能となる。また、カートリッジ内に整列保持された状態で内蔵されている放射線源の品質を同時個別的に判別することも可能であり、実際にカートリッジ内蔵線源を使用する病院内での利用に適している。さらに、簡易かつ効率の良い放射線源の品質検査により、全品検査が容易に行えるようになり、放射線源による医療事故の危険性や患者の負担が軽減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の放射線源の品質検査方法としては、線源整列保持具に複数個の放射線源を整列保持させた状態で、放射線検知手段により放射線強度を検知し、個々の放射線源の品質を判別する方法であれば特に制限されないが、線源整列保持具と検知手段固定具との位置合わせをすることにより、放射線源と放射線検知手段との位置関係を固定させる方法が好ましい。また、本発明の放射線源の品質検査装置としては、複数個の放射線源を整列保持させる線源整列保持具と、放射線強度を検知する放射線検知手段とを備えた装置であれば特に制限されないが、線源整列保持具と放射線検知手段とを固定し、線源整列保持具と検知手段固定具との位置合わせをすることにより、放射線源と放射線検知手段との位置関係を確定させる検知手段固定具を備えている装置が好ましい。
【0013】
品質検査対象となる放射線源としては、一般的に放射線治療に用いられる放射性同位元素を含有するものであればよく、ヨウ素、パラジウム、コバルト、セシウム、イリジウム、金等の放射性同位元素を使用することができるが、これらの中でもヨウ素125やパラジウム103等の低エネルギーで半減期が比較的短いものが好ましい。通常、これら放射性同位元素は、例えばチタニウム等のケーシング内に密封状態で収容されている。また、放射線源の形状や大きさも特に限定されず、形状としては線状(長棒状)、ラグビーボール状、球状等を具体的に例示することができる。放射線源が密封小線源の場合、特に本発明による効果を享受することができ、ここで、密封小線源とは、放射性同位元素が密封状態で収容されている長さ1〜10mm×直径約0.5〜1.5mmの小さなケーシングをいう。
【0014】
上記線源整列保持具としては、放射線源単体を整列保持させるタイプ(線源単体整列保持具)と、複数個の放射線源が内蔵されたカートリッジを整列保持させるタイプ(カートリッジ線源整列保持具)に大別することができる。これら線源整列保持具には、検知手段固定具との位置合わせをすることにより、放射線源と放射線検知手段との位置関係を確定させるための、検知手段固定具の位置決め機構と協働する位置決め係合部を設けることが好ましく、例えば、検知手段固定具から立設された固定棒を嵌入することができる嵌入孔を位置決め係合部として具体的に挙げることができる。また、かかる線源整列保持具の材質としては、放射線源単体やカートリッジを整列保持させることができる剛性を有し、放射線透過素材であれば特に制限されないが、加工の容易さからアクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の各種のプラスチックを好適に例示することができる。また、線源整列保持具の底面(検知手段側)が放射線透過素材であればよいので、金属板等に貫通孔を設け、放射線透過素材を貼り合わせてもよい。
【0015】
上記放射線源単体を整列保持させるタイプの線源整列保持具としては、放射線源単体を整列した状態で保持することができる凹部を有する線源単体整列保持具を挙げることができる。かかる線源単体整列保持具に設けられた凹部の形状や大きさとしては、放射線感光フィルム等の放射線検知手段に対して広い表面積から放射線を照射するような状態で、放射線源単体の半分程度が埋まった状態となるように保持する凹部を例示することができ、凹部の配置としては、縦横適宜間隔を空けて複数列(m×n列)に設けられた放射線源単体を1個ずつ収容する凹部を複数個(m×n)形成する配置(図1参照)や、1列に連続して複数(m個)の放射線源単体を収容する溝状凹部が複数列(n列)形成する配置(図2参照)を例示することができるが、いずれの配置においてもm×n個の放射線源の放射線強度を同時に測定することができる。この線源単体整列保持具を使用する場合、あらかじめ線源単体整列保持具に測定対象となる全ての放射線源を整列保持させた後、放射線検知手段により放射線強度を同時に測定することが、正確なデータを得る上で好ましい。
【0016】
上記複数個の放射線源が内蔵されたカートリッジを整列保持させるタイプの線源整列保持具としては、複数個の放射線源が内蔵されたカートリッジ、好ましくは複数のカートリッジを整列保持しうるように、密封小線源側を含むカートリッジの半分程度を装着して、カートリッジが整列して保持されるように成形加工したカートリッジ線源整列保持具(図3参照)例示することができる。このカートリッジ線源整列保持具を使用する場合、あらかじめカートリッジ線源整列保持具に測定対象となる全てのカートリッジを整列保持させた後、放射線検知手段により放射線強度を同時に測定することが、正確なデータを得る上で好ましい。
【0017】
前記放射線検知手段としては、1回の検知(測定)で平面状の分解能をもった検知(測定)が可能であればよく、放射線感光フィルムやイメージングプレート、蛍光ガラス線量計のように面全体に検知能力があるものを好適に例示することができる。また、蛍光ガラス線量計のように小さい検知端子をもつ検知手段であって、検知端子を面全体に配置させることもできる。これら放射線検知手段は、対象となる放射線源の強度によって、検知手段の感度と、検知時間とを調節して検査を行うことが好ましい。例えば、放射線感光フィルムを解析する場合、不良品の中でも極端なもの(例えばdead seed:線源が封入されていないもの)であれば、目視による判断も可能であるが、放射線強度が所定の範囲内であるかを判断するには、コンピュータにより変色の程度を解析することが好ましい。また、放射線検知手段は、線源整列保持具に整列保持されている線源との位置関係を対応させて配置することが好ましく、そのため、検知手段固定具に固定して用いることが好ましい。
【0018】
上記検知手段固定具としては、放射線感光フィルム、イメージングプレート、蛍光ガラス線量計等の放射線検知手段を固定しうるものであればよく、例えば、放射線感光フィルムやイメージングプレート、蛍光ガラス線量計のように面全体に検知能力がある放射線検知手段を用いる場合、検知手段固定具本体の上面中央に放射線検知手段と同形の凹部を設け、検知手段固定部とすることができる。また、放射線検知手段が蛍光ガラス線量計の場合、検知端子を面状に配置することも可能である。また、後方散乱による測定誤差を除くための信頼できる領域を確保しうるように構成することが好ましい。そして、放射線検知手段を固定する検知手段固定具には、線源整列保持具との位置合わせをすることにより、放射線源と放射線検知手段との位置関係を確定させるための位置決め機構を設けることが好ましい。かかる位置決め機構としては、検知手段固定具本体両端部近傍から立設した2〜4本の円柱状又は角柱状の固定ロッドや、検知手段固定具本体角部から立設した対角状の2本の固定フレーム又は4隅の4本の固定フレームや、線源整列保持具を固定状態で把持することができるクランプ等を例示することができる。位置決め機構として固定ロッドを用いる場合は、線源整列保持具に固定棒を嵌入することができる嵌入孔を設けておく必要があり、位置決め機構として固定フレームを用いる場合は、線源整列保持具の形状を固定フレームで固定しうるように構成しておく必要がある。
【0019】
ところで、放射線強度は、線源からの距離dの二乗に逆比例する(a/d)。測定距離が遠いほど、測定対象となる線は平行に近くなり、測定の誤差による影響が小さくなる(図4参照)。線源と検知手段との距離が近すぎると、密封小線源のケーシング内で線源の位置に偏りがあった場合に測定値への影響が大きくなる。例えば、偏りが0.1mmあったとして、放射線強度の差は、
d=1.0mmのとき、a/1.0−a/(1.1)=a×0.1735,
d=10mmのとき、a/10−a/(10.1)=a×0.000197
となる。このような点からして、放射線源と放射線検知手段との間隔を設定する間隔設定機構を設けることが好ましい。
【0020】
線源の位置に偏りがあった場合の測定値への影響を少なくするため、放射線源と放射線検知手段との間隔は、通常、間隔設定機構により5〜30mm、特に10〜20mmに設定することが好ましい。かかる間隔設定機構としては、線源整列保持具と検知手段固定具との間で挟持される、所定の厚みをもつスペーサーを好適に例示することができるが、高さの調節ができるステージとしてもよい。また、スペーサーの材質としては、アクリル等の吸収線量が水に近いプラスチックを好適に例示することができる。また、このスペーサーを、放射線を透過する材質からなる板材と吸収する材質からなる板材とが交互に配置されるように構成し、線源からの散乱光を除去する散乱X線除去用グリッドと同様の機能をもたせることで、分解能が向上する(図5参照)。
【0021】
以下、図面により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。図3は、複数個の放射線源が内蔵されたカートリッジ及び該カートリッジを整列保持させるタイプの線源整列保持具の斜視図であり、図6は、放射線検知手段としての反射型フィルム線量計における検知結果を示す図と、検知手段固定具の斜視図であり、図7は、放射線を透過する材質からなる板材と吸収する材質からなる板材とが交互に配置されるように構成されているスペーサーの斜視図であり、図8は、本発明のスペーサーを備えた放射線源の品質検査装置の縦断面図である。
【0022】
検査対象の放射線源として、図3に示される、ヨウ素125を密封した治療用密封小線源1「オンコシード(登録商標)」を内蔵したカートリッジ2を使用した。また、放射線検知手段として、図6(左)に示される、放射線感光フィルムである反射型フィルム線量計3「Gafchromic(登録商標) film」を使用した。「オンコシード(登録商標)」は、銀製短線表面に化学的に結合した放射性ヨウ素125を、長さ約4.5mm×直径約0.8mmのごく小さな純チタン製カプセルに密封した密封小線源であり、密封小線源を10個内蔵したカートリッジとしても販売されている。また、上記反射型フィルム線量計3がセットされる
【0023】
カートリッジを整列保持させるタイプの線源整列保持具4(アクリル製)には、図3に示すように、6個のカートリッジ2を整列保持しうるように、密封小線源側を含むカートリッジの半分程度を装着しうるカートリッジ装着凹部5が6箇所形成されている。また、線源整列保持具4には、図6に示される、検知手段固定具6との位置合わせをすることにより、放射線源と放射線検知手段との位置関係を確定させるための、検知手段固定具の位置決め機構と協働する位置決め係合部として、検知手段固定具6から立設された固定棒7に嵌入することができる嵌入孔8が形成されている。また、図7に示すように、放射線を透過する材質からなる板材9aと吸収する材質からなる板材9bとが交互に配置されるように構成されているスペーサー9にも、上記固定棒7に嵌入することができる嵌入孔10が形成されている。
【0024】
まず、線源整列保持具4に6個のカセットを装着する。これとは別に、検知手段固定具6の放射線検知手段載置部11に反射型フィルム線量計3をセットし、次ぎに、スペーサー9を検知手段固定具6から立設された位置決め機構としての2本の固定棒7に、嵌入孔10を介して嵌入する。放射線検知手段載置部11は、反射型フィルム線量計3が固定されるように、検知手段固定具6の中央に、反射型フィルム線量計の厚み分を掘り下げて加工したものである。このスペーサー9を装着した検知手段固定具6に、前記6個のカセットを装着した線源整列保持具4を検知手段固定具6から立設された固定棒7に、嵌入孔8を介して嵌入する。上記スペーサーは、図8に示すように、カートリッジ内の線源の中心から反射型フィルム線量計まで20mmとなるように厚みが調整されている(図8には、スペーサー9が強調されて描かれているが、通常は2〜3mm程度)。上記のように、整列保持具と検知手段固定具との位置を合わせて60分間感光させた後、反射型フィルム線量計の変色の程度を解析し、カートリッジに内蔵されている個々の密封小線源の品質を判別する。図6(左)に示される反射型フィルム線量計における検知結果は、左下のカートリッジ内の上から5番目の密封小線源が不良品であることを示している。 また、スキャナ解析システム(DD-System Custom, R-Tech社)により解析した結果では、フィルムに関する濃度測定精度は±1%以内であり、線源強度の違いに関する測定精度は±5%以内であった。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明における放射線源単体を整列保持させるタイプの線源整列保持具の斜視図である。
【図2】本発明における他の態様の放射線源単体を整列保持させるタイプの線源整列保持具の斜視図である。
【図3】本発明における複数個の放射線源が内蔵されたカートリッジ及びカートリッジ該を整列保持させるタイプの線源整列保持具の斜視図である。
【図4】本発明において、間隔設定機構を設けた場合の効果を説明する図である。
【図5】散乱X線除去用グリッド及びその分解能が向上作用を示す図である。
【図6】本発明における放射線検知手段としての反射型フィルム線量計における検知結果を示す図(左)と、検知手段固定具の斜視図である。
【図7】本発明における放射線を透過する材質からなる板材と吸収する材質からなる板材とが交互に配置されるように構成されているスペーサーの斜視図である。
【図8】本発明のスペーサーを備えた放射線源の品質検査装置の縦断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 治療用密封小線源
2 カートリッジ
3 反射型フィルム線量計
4 線源整列保持具
5 線源整列保持具のカートリッジ装着凹部
6 検知手段固定具
7 検知手段固定具から立設された固定棒
8 線源整列保持具の嵌入孔
9 スペーサー
9a 放射線を透過する材質からなる板材
9b 放射線を吸収する材質からなる板材
10 スペーサーの嵌入孔
11 検知手段固定具の放射線検知手段載置部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線源整列保持具に複数個の放射線源を整列保持させた状態で、放射線検知手段により放射線強度を検知し、個々の放射線源の品質を判別することを特徴とする放射線源の品質検査方法。
【請求項2】
線源整列保持具と放射線検知手段とを検知手段固定具に固定し、線源整列保持具と検知手段固定具との位置合わせをすることにより、放射線源と放射線検知手段との位置関係を確定させることを特徴とする請求項1に記載の放射線源の品質検査方法。
【請求項3】
線源整列保持具と放射線検知手段との間隔を、間隔設定機構により10〜20mmに設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の放射線源の品質検査方法。
【請求項4】
間隔設定機構が、放射線を透過する材質からなる板材と吸収する材質からなる板材とが交互に配置されるように構成されているスペーサーであることを特徴とする請求項3に記載の放射線源の品質検査方法。
【請求項5】
放射線源が、密封小線源であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の放射線源の品質検査方法。
【請求項6】
線源整列保持具により、放射線源単体を整列保持することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の放射線源の品質検査方法。
【請求項7】
線源整列保持具により、複数個の放射線源が内蔵されたカートリッジを整列保持することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の放射線源の品質検査方法。
【請求項8】
放射線検知手段により、放射線強度を光学的または電気的に変換して検知することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の放射線源の品質検査方法。
【請求項9】
放射線検知手段が、放射線感光フィルムであることを特徴とする請求項8に記載の放射線源の品質検査方法。
【請求項10】
放射線検知手段が、イメージングプレートであることを特徴とする請求項8に記載の放射線源の品質検査方法。
【請求項11】
放射線検知手段が、蛍光ガラス線量計であることを特徴とする請求項8に記載の放射線源の品質検査方法。
【請求項12】
複数個の放射線源を整列保持させる線源整列保持具と、放射線強度を検知する放射線検知手段とを備えたことを特徴とする放射線源の品質検査装置。
【請求項13】
線源整列保持具と放射線検知手段とを固定し、線源整列保持具と検知手段固定具との位置合わせをすることにより、放射線源と放射線検知手段との位置関係を確定させる位置決め機構を有する検知手段固定具を備えていることを特徴とする請求項12に記載の放射線源の品質検査装置。
【請求項14】
線源整列保持具と検知手段固定具との間隔を任意に設定することができる間隔設定機構を備えていることを特徴とする請求項12又は13に記載の放射線源の品質検査装置。
【請求項15】
間隔設定機構が、放射線を透過する材質からなる板材と吸収する材質からなる板材とが交互に配置されるように構成されているスペーサーであることを特徴とする請求項14に記載の放射線源の品質検査装置。
【請求項16】
線源整列保持具が、密封小線源の整列保持具であることを特徴とする請求項12〜15のいずれか1項に記載の放射線源の品質検査装置。
【請求項17】
線源整列保持具が、放射線源単体の整列保持具であることを特徴とする、請求項12〜16のいずれか1項に記載の放射線源の品質検査装置。
【請求項18】
線源整列保持具が、複数個の放射線源が内蔵されたカートリッジの整列保持具であることを特徴とする請求項12〜16のいずれか1項に記載の放射線源の品質検査装置。
【請求項19】
放射線検知手段が、放射線強度を光学的又は電気的な信号に変換して検知することを特徴とする請求項12〜18のいずれか1項に記載の放射線源の品質検査装置。
【請求項20】
放射線検知手段が、放射線感光フィルムであることを特徴とする請求項19に記載の放射線源の品質検査装置。
【請求項21】
放射線検知手段が、イメージングプレートであることを特徴とする請求項19に記載の放射線源の品質検査装置。
【請求項22】
放射線検知手段が、蛍光ガラス線量計であることを特徴とする請求項19に記載の放射線源の品質検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−263353(P2006−263353A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−89527(P2005−89527)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(304020292)国立大学法人徳島大学 (307)
【Fターム(参考)】