説明

放射線画像変換パネル、放射線画像検出装置及び放射線撮影装置

【課題】製造工程が簡潔化された放射線画像変換パネルを提供する。
【解決手段】第1のシンチレータ18Aと第2のシンチレータ18Bとを備える放射線画像変換パネル2である。第2のシンチレータ18Bは、蛍光組成物の結晶が柱状に成長してなる柱状結晶の群によって形成されている柱状部34Bと、柱状部34Bに連続し、この蛍光組成物の結晶により形成されるとともに、空隙率が0よりも大きく柱状部34Bの空隙率よりも小さい非柱状部36Bとを有する。第2のシンチレータ18Bの非柱状部36Bが、第1のシンチレータ18Aと第2のシンチレータ18Bの柱状部の間に介在する。第2のシンチレータ18Bの非柱状部36Bが介在する側とは反対側にある第2のシンチレータ18Bの蛍光出射面と、第2のシンチレータ18Bの非柱状部36Bが介在する側とは反対側にある第1のシンチレータ18Aの蛍光出射面とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像変換パネル、放射線画像検出装置及び放射線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、放射線画像を検出してデジタル画像データを生成するFPD(Flat Panel Detector)を用いた放射線画像検出装置が実用化されており、従来のイメージングプレートに比べて即時に画像を確認できるといった理由から急速に普及が進んでいる。この放射線画像検出装置には種々の方式のものがあり、その一つとして、間接変換方式のものが知られている。
【0003】
間接変換方式の放射線画像検出装置は、放射線露光によって蛍光を発するCsI:TlやGdS:Tbなどの蛍光組成物によって形成されたシンチレータを有する放射線画像変換パネルと、光電変換素子の2次元配列を有するセンサパネルとを備え、典型的には、シンチレータと光電変換素子の2次元配列とが密接するように、放射線画像変換パネルとセンサパネルとが貼り合わされている。被写体を透過した放射線は、放射線画像変換パネルのシンチレータによって一旦光に変換され、シンチレータから発せられた蛍光はセンサパネルの光電変換素子群によって光電変換され、電気信号(デジタル画像データ)が生成される。
【0004】
また、画像の鮮鋭度の向上を目的として、放射線画像検出装置のシンチレータがCsIからなる柱状結晶を有する放射線画像検出装置がある(特許文献1参照)。
【0005】
さらに、被写体の特定の構造物(例えば、患者の臓器、骨部又は血管)を強調するサブストラクション画像を取得することを目的として、異なる2つのシンチレータを積層した放射線画像検出装置がある(特許文献2参照)。この放射線画像検出装置では、被写体を透過した放射線の低エネルギー成分を一方のシンチレータで吸収し、この一方のシンチレータを透過した放射線の高エネルギー成分を他方のシンチレータで吸収する。各シンチレータから発せられた蛍光を対応するセンサパネルの光電変換素子群によって光電変換し、複数の電気信号を得る。この複数の電気信号の間で所定の減算処理(エネルギーサブトラクション処理)を行うことにより、被写体のサブトラクション画像を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−017683号公報
【特許文献2】特開2011−000235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
シンチレータから発せられる蛍光は、色々な方向に出射される。例えば、放射線が入射する方向とは反対方向に出射される光もあれば、放射線が入射する方向に沿った方向に出射される光もある。このため、放射線の主に低エネルギー成分を吸収するシンチレータから発せられる蛍光が、このシンチレータに対応するセンサパネルだけではなく、本来放射線の高エネルギー成分に基づいた蛍光を検出するセンサパネルによって検出されてしまうことがあった。また、逆に、放射線の主に高エネルギー成分を吸収するシンチレータから発せられる蛍光が、本来放射線の低エネルギー成分に基づいた蛍光を検出するセンサパネルによって検出されてしまうことがあった。結果として、いわゆるサブトラクション画像のコンタミネーションが起きていた。
【0008】
このため、特許文献1では、2つのシンチレータ間に金属板で形成された反射層を設けている。
【0009】
しかし、2つのシンチレータ間に金属板を設けるには、一つのシンチレータ上に金属板を載置して、さらにもう一つのシンチレータをその金属板の上に載置する作業が必要であるため、放射線画像変換パネルの製造工程が複雑となる。
【0010】
本発明は、上述した課題に鑑みなされたものであり、放射線画像変換パネルの製造工程を簡潔にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のある観点によれば、放射線露光によって蛍光を発する第1の蛍光組成物を含有する第1の蛍光体と、前記放射線露光によって蛍光を発する第2の蛍光組成物を含有する第2の蛍光体と、を備え、前記第2の蛍光体は、前記第2の蛍光組成物の結晶が柱状に成長してなる柱状結晶の群によって形成されている柱状部と、該柱状部に連続し、前記第2の蛍光組成物の結晶により形成されているとともに、空隙率が0よりも大きく前記柱状部の空隙率よりも小さい非柱状部とを有し、前記第2の蛍光体の非柱状部が、前記第1の蛍光体と前記第2の蛍光体の柱状部の間に介在し、前記第2の蛍光体の非柱状部が介在する側とは反対側にある前記第2の蛍光体の蛍光出射面と、前記第2の蛍光体の非柱状部が介在する側とは反対側にある前記第1の蛍光体の蛍光出射面とを有する放射線画像変換パネルが提供される。
【0012】
また、本発明の他の観点によれば、放射線露光によって蛍光を発する第1の蛍光組成物を含有する第1の蛍光体と、前記放射線露光によって蛍光を発する第2の蛍光組成物を含有する第2の蛍光体とを備える放射線画像変換パネルと、前記第1の蛍光体から発せられる蛍光を検出して電気信号に変換する第1のセンサパネルと、前記第2の蛍光体から発せられる蛍光を検出して電気信号に変換する第2のセンサパネルと、を備え、前記第2の蛍光体は、前記第2の蛍光組成物の結晶が柱状に成長してなる柱状結晶の群によって形成されている柱状部と、該柱状部に連続し、前記第2の蛍光組成物の結晶により形成されているとともに、空隙率が0よりも大きく前記柱状部の空隙率よりも小さい非柱状部とを有し、前記第2の蛍光体の非柱状部が、前記第1の蛍光体と前記第2の蛍光体の柱状部の間に介在し、前記第2の蛍光体の非柱状部が介在する側とは反対側にある前記第2の蛍光体の蛍光出射面と、前記第2の蛍光体の非柱状部が介在する側とは反対側にある前記第1の蛍光体の蛍光出射面とを有する放射線画像検出装置が提供される。
【0013】
また、本発明の他の観点によれば、上記の放射線画像検出装置と、前記第1のセンサパネルによって生成される第1の画像データ、及び前記第2のセンサパネルによって生成される第2の画像データを用いて、エネルギーサブトラクション画像を生成する画像処理部と、を備える放射線撮影装置が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、放射線画像変換パネルの製造工程を簡潔にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態を説明するための、放射線画像検出装置及び放射線撮影装置の一例の構成を示す。
【図2】図1の放射線撮影装置の制御ブロックを示す。
【図3】図1の放射線画像検出装置の構成を模式的に示す図である。
【図4】図3の放射線画像検出装置の詳細な構成を模式的に示す図である。
【図5】図3の放射線画像検出装置のセンサパネルの構成を模式的に示す図である。
【図6】図3の放射線画像検出装置の放射線画像変換パネルの構成を模式的に示す図である。
【図7】図6の放射線画像変換パネルの蛍光体のIV‐IV断面を示す図である。
【図8】図6の放射線画像変換パネルの蛍光体のV‐V断面を示す図である。
【図9】図6の放射線画像変換パネルの変形例を示す図である。
【図10】図9の放射線画像変換パネルに用いられるセンサパネルの変形例を示す図である。
【図11】図6の放射線画像変換パネルの変形例を示す図である。
【図12】図11の放射線画像変換パネルに用いられるセンサパネルの変形例を示す図である。
【図13】図11の放射線画像変換パネルの変形例を示す図である。
【図14】図3の放射線画像検出装置の変形例を示す図である。
【図15】図3の放射線画像検出装置の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の実施形態を説明するための、放射線画像検出装置及び放射線撮影装置の一例の構成を示し、図2は、図1の放射線撮影装置の制御ブロックを示す。
【0017】
X線撮影装置100は、被写体(患者)Hを立位状態で撮影するX線診断装置であって、被写体HにコーンビームX線を放射するX線源200と、X線源200に対向配置されてX線源200から被写体Hを透過したX線を検出して画像データを生成するX線画像検出装置1と、操作者の操作に基づいてX線源200の曝射動作やX線画像検出装置1の撮影動作を制御するとともに、X線画像検出装置1により取得された画像データを処理するコンソール400とに大別される。X線源200は、天井から吊り下げられたX線源保持装置50により保持されている。X線画像検出装置1は、床に設置されたスタンド60により保持されている。
【0018】
X線源200は、X線源制御部210の制御に基づき、高電圧発生器211から印加される高電圧に応じてX線を発生するX線管212と、X線管212から発せられたX線のうち、被写体Hの検査領域に寄与しない部分を遮蔽するように照射野を制限する可動式のコリメータ213を有するコリメータユニット214とから構成されている。
【0019】
X線源保持装置50は、天井に設置された天井レール150に沿って水平方向(z方向)に移動自在に構成された台車部160と、互いに連結されて台車部160から下方向に延伸する複数の支柱部170と、台車部160を天井レールに沿って移動させるための駆動機構及び支柱部170を伸縮させるための駆動機構とを備えている。X線源200は、支柱部170の先端部に取り付けられている。X線源保持装置50が天井レール150に沿って移動することにより、X線源200とX線画像検出装置1との間の水平方向に関する距離SIDが変更され、また、支柱部170が伸縮することによって、X線源200の上下方向に関する位置が変更される。両駆動機構は、操作者の設定操作に基づき、コンソール400により制御される。
【0020】
スタンド60は、床に設置された本体180と、本体180に上下方向に移動自在に取り付けられた保持部190と、保持部190を上下移動させるための駆動機構を備えている。X線画像検出装置1は、保持部190に取り付けられている。駆動機構は、操作者の設定操作に基づき、後述するコンソール400の制御装置420により制御される。
【0021】
コンソール400には、CPU、ROM、RAM等からなる制御装置420が設けられている。
【0022】
制御装置420には、操作者が撮影指示やその指示内容を入力する入力装置421と、X線画像検出装置1により取得された画像データを処理してX線画像を生成する画像処理部422と、X線画像を記憶する画像記憶部423と、X線画像等を表示するモニタ424と、X線撮影装置100の各部と接続されるインターフェース(I/F)425とを備えている。制御装置420、入力装置421、画像処理部422、画像記憶部423、モニタ424、及びI/F425は、バス426を介して接続されている。
【0023】
入力装置421の操作により、X線源200−X線画像検出装置1間距離(撮影距離)SIDや管電圧等のX線撮影条件、撮影タイミング等が入力される。制御装置420は、X線源保持装置50から供給されるX線源200の水平方向位置に基づいて、上記の入力された撮影距離SIDとなる位置にX線源200を移動させるように、X線源保持装置50を駆動する。また、制御装置420は、スタンド60から供給されるX線画像検出装置1の上下方向位置に基づいて、X線画像検出装置1に対向する上下方向位置にX線源200を移動させるようにX線源保持装置5を駆動する。
【0024】
X線画像検出装置1は、X線露光によって蛍光を発する蛍光体組成物を含むX線画像変換パネル2と、X線画像変換パネル2を間に挟むように配置された第1のセンサパネル3A及び第2のセンサパネル3Bとを含んで構成される。
【0025】
本例のX線画像検出装置1は、第2のセンサパネル3BがX線源200側に位置するように保持部190(図1参照)に取り付けられており、X線は、第2のセンサパネル3B側からX線画像検出装置1に入射する。X線画像検出装置1に入射したX線(以下、入射X線という)は、第2のセンサパネル3Bを透過してX線画像変換パネル2に入射し、X線露光されたX線画像変換パネル2において蛍光が生じる。第1のセンサパネル3Aは、X線画像変換パネル2に生じた蛍光の一部を検出し、検出したX線に応じた画像データを生成する。第2のセンサパネル3Bもまた、X線画像変換パネル2に生じた蛍光の一部を検出し、検出したX線に応じた画像データを生成する。
【0026】
第1のセンサパネル3A及び第2のセンサパネル3Bによって生成された両画像データは、それぞれコンソール400の画像処理部422(図2参照)に送出される。画像処理部422は、例えば両画像データに適宜な重み付けを行い、一方の画像データから他方の画像データを減算することによって、エネルギーサブトラクション画像(被写体の特定の構造物を強調した被写体のX線画像)を生成する。
【0027】
なお、エネルギーサブトラクション画像を得るための具体的な構成については、例えば、特開平7−027865号公報や特開平7−084056等の記載が参考となる。
【0028】
図3は、図1の放射線画像検出装置の構成を模式的に示し、図4は、図3の放射線画像検出装置の詳細な構成を模式的に示す図である。
【0029】
X線画像検出装置1は、エネルギーサブトラクション用のX線画像検出装置であって、放射線露光によって蛍光を発する第1のシンチレータ18Aと第2のシンチレータ18Bを有するX線画像変換パネル2と、第1のシンチレータ18Aから発せられる蛍光を検出して電気信号に変換する第1のセンサパネル3Aと、第2のシンチレータ18Bから発せられる蛍光を検出して電気信号に変換する第2のセンサパネル3Bと、を含んで構成される。
【0030】
X線画像変換パネル2は、第1のシンチレータ18Aとその上に積層される第2のシンチレータ18Bと、第1のシンチレータ18Aと第2のシンチレータ18Bを覆うパリレン等の保護膜27とを含んで構成されており、X線画像変換パネル2は、第1のセンサパネル3Aに対応する蛍光出射面と、第2のセンサパネル3Bに対応する蛍光出射面の2つの異なる蛍光出射面を有している。
【0031】
第1のシンチレータ18Aは、第2のセンサパネル3B側から照射された放射線のうち、第2のシンチレータ18Bを透過した主に高エネルギー成分を吸収し、蛍光を発する。第1のシンチレータ18Aは、第1のセンサパネル3Aに直接蒸着されているが、後述する第2のシンチレータ18Bのように、接着層を介して第1のセンサパネル3Aに貼り合わせられてもよい。
【0032】
第2のシンチレータ18Bは、第2のセンサパネル3B側から照射された放射線のうち、主に低エネルギー成分を吸収し、蛍光を発する。第2のシンチレータ18Bは、第1のシンチレータ18Aに積層され、密接配置されている。また、第2のシンチレータ18Bは、接着層25を介して第2のセンサパネル3Bに張り合わされている。
【0033】
X線画像検出装置1において、放射線は、第2のセンサパネル3B側から照射され、第2のセンサパネル3Bを透過し、第2のシンチレータ18Bに入射する。放射線の主に低エネルギー成分が第2のシンチレータ18Bによって吸収され、蛍光が発生する。ここで発生した蛍光が、第2のシンチレータ18Bの蛍光出射面を介して第2のセンサパネル3Bで検出され、電気信号に変換されることで、画像データが生成される。一方、放射線の主に高エネルギー成分は、第2のシンチレータ18Bで吸収されることなく、第2のシンチレータ18Bを透過する。この放射線の高エネルギー成分は、第1のシンチレータ18Aで吸収され、蛍光が発生する。ここで発生した蛍光は、第1のシンチレータ18Aの蛍光出射面を介して第1のセンサパネル3Aで検出され、電気信号に変換されることで、画像データが生成される。
【0034】
図5は、図3の放射線画像検出装置のセンサパネルの構成を模式的に示す図である。
【0035】
X線画像検出装置1は、2つの異なるセンサパネルを有する。図4において、第1のセンサパネル3Aと第2のセンサパネル3Bのうち、同じ機能を有する構成には同じ符号を付している。以下において、主に第1のセンサパネル3Aの構成について説明し、第1のセンサパネル3Aと同じ構成・機能を有する第2のセンサパネル3Bの構成については適宜第1のセンサパネル3Aと同一として説明を省略する。
【0036】
第1のセンサパネル3Aは、絶縁性基板12と、絶縁性基板12に形成された薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)からなるスイッチ素子28と、スイッチ素子28と接続され2次元配列された光電変換素子26と、を有する。そして、光電変換素子26を覆い、第1のセンサパネル3Aの表面を平坦化するための平坦化層23が形成されている。
【0037】
絶縁性基板12としては、例えば、ガラス、石英、プラスチックフィルム等が挙げられる。プラスチックフィルムの具体例については後述する。
【0038】
各光電変換素子26は、第1のシンチレータ18Aから発せられる蛍光が入射されることにより電荷を生成する光導電層20と、この光導電層20の表裏面に設けられた一対の電極とを含んで構成される。光導電層20の第1のシンチレータ18A側の面に設けられた電極22は、光導電層20にバイアス電圧を印加するためのバイアス電極であり、反対側の面に設けられた電極24は、光導電層20で生成された電荷を収集する電荷収集電極である。また、X線画像検出装置1では、光導電層20として、アモルファスシリコン等の無機半導体材料が用いられる。
【0039】
平坦化層23は、樹脂層で形成される。この樹脂層として、透明な液体またはゲルからなるマッチングオイルなども用いることができる。樹脂層の厚みは、感度、及び画像の鮮鋭度の観点から、50μm以下であることが好ましく、5μm〜30μmであることがより好ましい。
【0040】
スイッチ素子28は、光電変換素子26の2次元配列に対応して絶縁性基板12上に2次元に配列されており、各光電変換素子26の電荷収集電極24は対応するスイッチ素子28に接続されている。各電荷収集電極24に収集された電荷は、スイッチ素子28を介して読み出される。
【0041】
第1のセンサパネル3Aには、一方向(行方向)に延設され各スイッチ素子28をオン/オフさせるための複数本のゲート線30と、ゲート線30と直交する方向(列方向)に延設されオン状態のスイッチ素子28を介して電荷を読み出すための複数の信号線(データ線)32が設けられている。そして、第1のセンサパネル3Aの周縁部には、個々のゲート線30及び個々の信号線32が接続された接続端子38が配置されている。この接続端子38は、図4に示すように、接続回路39を介して回路基板(図示せず)に接続される。この回路基板は、外部回路としてのゲート線ドライバ、及び信号処理部を有する。
【0042】
各スイッチ素子28は、ゲート線ドライバからゲート線30を介して供給される信号により行単位で順にオン状態とされる。そして、オン状態とされたスイッチ素子28によって読み出された電荷は、電荷信号として信号線32を伝送されて信号処理部に入力される。これにより、電荷が行単位で順に読み出され、上記の信号処理部において電気信号に変換され、画像データが生成される。
【0043】
また、X線画像変換パネル2と第2のセンサパネル3Bとを貼り合わせるための接着層25が放射線変換パネル2の保護膜27と第2のセンサパネル3Bの平坦化層23との間に設けられている。
【0044】
接着層25は樹脂層で形成される。この樹脂層として、透明な液体またはゲルからなるマッチングオイルなども用いることができる。樹脂層の厚みは、感度、及び画像の鮮鋭度の観点から、50μm以下であることが好ましく、5μm〜30μmであることがより好ましい。
【0045】
以下、X線画像変換パネル2、特に第1のシンチレータ18Aと第2のシンチレータ18Bについて詳細に説明する。
【0046】
図6は、図3の放射線画像検出装置の放射線画像変換パネルの構成を模式的に示す図である。
【0047】
X線画像変換パネル2の第1のシンチレータ18Aと第2のシンチレータ18Bは、蛍光を発する同じ蛍光組成物で形成される。蛍光組成物は、少なくともCsI等の蛍光剤を含み、必要に応じてTl等の賦活剤が添加される。
【0048】
例えば、第1のシンチレータ18A及び第2のシンチレータ18Bを形成する蛍光組成物としては、例えば、CsI:Tl、CsI:Na(ナトリウム賦活ヨウ化セシウム)等を用いることができる。なかでも、発光スペクトルがa−Siフォトダイオードの分光感度の極大値(550nm付近)と適合する点で、CsI:Tlが好ましい。なお、第1のシンチレータ18Aと第2のシンチレータ18Bは、Tl等の賦活剤のみが異なっていてもよい。
【0049】
第1のシンチレータ18Aは、第1のセンサパネル3Aの上に形成される柱状部34Aを有する。
【0050】
柱状部34Aは、蛍光組成物の結晶が柱状に成長してなる柱状結晶の群を有する。なお、近隣の複数の柱状結晶が結合して一つの柱状結晶を形成する場合もある。隣り合う柱状結晶の間には空隙が置かれ、各柱状結晶は互いに独立して存在する。
【0051】
柱状部34Aの各柱状結晶に発生した蛍光は、柱状結晶とその周囲の間隙(空気)との屈折率差に起因して柱状結晶内で全反射を繰り返すことで拡散を抑制され、その柱状結晶が対向する第1のセンサパネル3Aの光電変換素子26に導光される。それにより、画像の鮮鋭度が向上する。
【0052】
第2のシンチレータ18Bは、第1のシンチレータ18Aの上に連続して形成される非柱状部36Bと、非柱状部36B上に形成される柱状部34Bを有する。これにより、非柱状部36Bは、第1のシンチレータ18Aの柱状部34Aと、第2の柱状部34Bの間に介在するようになっている。
【0053】
柱状部34Bは、上記の蛍光組成物の結晶が柱状に成長してなる柱状結晶の群を有する。なお、近隣の複数の柱状結晶が結合して一つの柱状結晶を形成する場合もある。隣り合う柱状結晶の間には空隙が置かれ、各柱状結晶は互いに独立して存在する。
【0054】
柱状部34Bの各柱状結晶に発生した蛍光は、柱状結晶とその周囲の間隙(空気)との屈折率差に起因して柱状結晶内で全反射を繰り返すことで拡散を抑制され、その柱状結晶が対向する第2のセンサパネル3Bの光電変換素子26に導光される。それにより、画像の鮮鋭度が向上する。
【0055】
一方、非柱状部36Bは、蛍光組成物の結晶が比較的小径の略球状に成長してなる球状結晶の群を有する。球状結晶の群によって形成される非柱状部36Bにおいては、結晶同士が不規則に結合したり重なり合ったりするため、結晶間に明確な空隙は生じ難い。なお、非柱状部36Bには、上記の蛍光組成物の非晶質体が含まれる場合もある。
【0056】
この第2のシンチレータ18Bの非柱状部36Bは、第1のシンチレータ18Aで発生した蛍光を反射する反射層として機能する。すなわち、柱状部34Aの各柱状結晶に発生した蛍光のうち、第1のセンサパネル3Aとは反対側、即ち第2のシンチレータ18Bに向かう蛍光については、非柱状部36Bによって第1のセンサパネル3A側に向けて反射される。これにより、第1のシンチレータ18Aの蛍光出射面は、第2のシンチレータの非柱状部36Bが介在している側とは反対側となる。
【0057】
また、第2のシンチレータ18Bの非柱状部36Bは、第2のシンチレータ18Bで発生した蛍光を反射する反射層としても機能する。すなわち、柱状部34Bの各柱状結晶に発生した蛍光のうち、第2のセンサパネル3Bとは反対側、即ち第1のシンチレータ18Aに向かう蛍光については、非柱状部36Bによって第2のセンサパネル3B側に向けて反射される。これにより、第2のシンチレータ18Bの(柱状部34Bの)蛍光出射面は、非柱状部36B側とは反対側となる。
【0058】
図7は、図6の放射線画像変換パネルの蛍光体のIV‐IV断面を示す図である。
【0059】
図7に示すように、柱状部34Bにおいては、柱状結晶が結晶の成長方向に対しほぼ均一な断面径を示し、且つ、柱状結晶の周囲に間隙を有し、柱状結晶が互いに独立して存在することがわかる。柱状結晶の結晶径は、光ガイド効果、機械的強度、そして画素欠陥防止の観点から、2μm以上8μm以下であることが好ましい。結晶径が小さすぎると、各柱状結晶の機械的強度が不足し、衝撃等により損傷する懸念があり、結晶径が大きすぎると、光電変換素子26毎の柱状結晶の数が少なくなり、結晶にクラックが生じた際にその素子が欠陥となる確率が高くなる懸念がある。
【0060】
ここで、結晶径は、柱状結晶の成長方向上面から観察した結晶の最大径を示す。具体的な測定方法としては、柱状結晶の膜厚方向に対して垂直な面からSEM(走査型電子顕微鏡)で観察することで柱径(結晶径)を測定する。1回の撮影でシンチレータを表面から見た時に柱状結晶が100本から200本観察できる倍率(約2000倍程度)で観察し、1撮影に含まれる結晶全てに対し、柱状結晶の柱径の最大値を測定して平均した値を採用している。柱径(μm)は小数点以下2桁まで読み、平均値をJIS Z 8401に従い小数点以下2桁目を丸めた値とした。
【0061】
図8は、図6の放射線画像変換パネルの蛍光体のV‐V断面を示す図である。
【0062】
図8に示すように、非柱状部36Bにおいては、結晶同士が不規則に結合したり重なり合ったりして結晶間の明確な空隙は、柱状部34Bほどは認められず、柱状部34Bに比べて非柱状部36Bの空隙率は小さい。非柱状部36Bを形成する結晶の径は、密着性及び光反射の観点から、0.5μm以上7.0μm以下であることが好ましい。結晶径が小さすぎると、空隙率が0に近づき、光反射の機能が低下する懸念がある。光反射の機能が低下すると、第1のシンチレータ18Aからの光を反射せずに透過してしまい、この光が第2のセンサパネル3Bに検出されてしまう。また、第2のシンチレータ18Bからの光を反射せずに透過してしまい、この光が第1のセンサパネル3Aに検出されてしまう。一方、結晶径が大きすぎると、平坦性が低下し、第1のシンチレータ18Aとの密着性が低下する懸念がある。そこで、空隙率としては、5〜20%程度であればよい。また、非柱状部36Bを形成する結晶の形状は、光反射の観点から、略球状であることが好ましい。
【0063】
ここで、結晶同士が結合している場合の結晶径の測定は、隣接する結晶間に生じる窪み(凹)同士を結んだ線を結晶間の境界と見なし、結合した結晶同士を最小多角形となるように分離して柱径および柱径に対応する結晶径を測定し、柱状部34Bにおける結晶径と同様にして平均値をとり、その値を採用した。
【0064】
柱状部34B及び非柱状部36Bの厚みについて、柱状部34Bの厚みをt1とし、非柱状部36Bの厚みをt2としたとき、(t2/t1)が0.01以上0.25以下であることが好ましく、0.02以上0.1以下であることがより好ましい。(t2/t1)が上記範囲にあることで、蛍光効率、光拡散防止及び光反射が好適な範囲となり、感度及び画像の鮮鋭度が向上する。
【0065】
また、柱状部34Bの厚みt1は、放射線のエネルギーにもよるが、柱状部34Bにおける十分な放射線吸収及び画像の鮮鋭度の観点から、200μm以上700μm以下であることが好ましい。柱状部34Bの厚みが小さすぎると、放射線を十分に吸収することができず、感度が低下する虞があり、厚みが大きすぎると光拡散が生じ、柱状結晶の光ガイド効果によっても画像の鮮鋭度が低下する懸念がある。
【0066】
非柱状部36Bの厚みt2は、光反射の観点から、5μm以上125μm以下であることが好ましい。厚みが大きすぎると、非柱状部36における蛍光の寄与、及び非柱状部36での光反射による拡散が増大し、画像の鮮鋭度が低下する懸念がある。
【0067】
なお、柱状部34Aの厚みについても、放射線のエネルギーにもよるが、柱状部34Bにおける十分な放射線吸収及び画像の鮮鋭度の観点から、200μm以上700μm以下であることが好ましい。
【0068】
次に、上述したX線画像変換パネル2の製造方法の一例について説明する。以下では、第1のシンチレータ18A及び第2のシンチレータ18Bの蛍光組成物としていずれもCsI:Tlを用いた場合を例に説明する。
【0069】
まず、第1のシンチレータ18Aの柱状部34Aを気相堆積法によって第1のセンサパネル3Aの表面に直接形成する。
【0070】
気相堆積法は常法により行うことができる。真空度0.01〜10Paの環境下、CsI:Tlを抵抗加熱式のるつぼに通電するなどの手段で加熱して気化させ、第1のセンサパネル3Aを室温(20℃)〜300℃としてCsI:Tlを第1のセンサパネル3A上に堆積させればよい。
【0071】
柱状部34Aを形成した後に、連続して非柱状部36Bを一体的に形成する。即ち、真空度を下げる、及び/又は第1のセンサパネル3Aの温度を低くすることで、第2のシンチレータ18Bの非柱状部36Bが形成される。
【0072】
非柱状部36Bを形成した後、連続して柱状部34Bを一体的に形成する。即ち、真空度を上げる、及び/又は第1のセンサパネル3Aの温度を高くすることで、第2のシンチレータ18Bの柱状部34Bが形成される。
【0073】
さらに、柱状部34Bを形成した後、第1のセンサパネル3Aとは反対側に位置する柱状部34Bの柱状結晶の端部を、結晶の成長方向とは直交する方向に切断することによって、柱状結晶の端部を平担化してもよい。
【0074】
さらに、柱状部34Bを形成した後、第1のシンチレータ18Aと第2のシンチレータ18Bを覆うように保護膜27を形成する。
【0075】
以上、X線画像変換パネル2によれば、第2のシンチレータ18Bの非柱状部36Bが反射層として機能するため、第1のシンチレータ18Aで発生した蛍光が第2のシンチレータ18Bに混入することがない。また、第2のシンチレータ18Bで発生した蛍光が第1のシンチレータ18Aに混入することがない。そして、X線画像変換パネル2は、第1のシンチレータ18Aと第2のシンチレータ18Bを連続して一体的に形成し、反射層を設ける工程を別途要しないため、製造工程を簡潔にすることができる。
【0076】
また、第1のシンチレータ18Aの蛍光組成物と第2のシンチレータ18Bの蛍光組成物を同じにすれば、製造工程をより簡潔にすることができる。
【0077】
また、第1のシンチレータ18A上に連続して、第2のシンチレータ18Bの非柱状部36B形成されるようにすれば、一連の工程でX線画像変換パネル2を製造することができ、製造工程をより簡潔にすることができる。
【0078】
なお、第1のセンサパネル3Aと第2のセンサパネル3Bには、CMOSセンサを用いてもよい。この場合、絶縁性基板として放射線耐性を有する、例えばSiC(炭化珪素)を用いることが好ましい。
【0079】
図9は、図6の放射線画像変換パネルの変形例を示す図である。
【0080】
図9に示すX線画像検出装置4は、第1のセンサパネル3Aと第2のセンサパネル3Bと、X線画像変換パネル42と、を含んで構成される。
【0081】
X線画像変換パネル42は、第1のシンチレータ418Aと、第2のシンチレータ18Bを有する。X線画像変換パネル2と異なり、第1のシンチレータ418Aの蛍光組成物は、第2のシンチレータ18Bの蛍光組成物と異なる。このため、第1のシンチレータ418Aと第2のシンチレータ18Bの発光波長ピークが異なる。蛍光剤そのものが異なっていてもよいし、同じ蛍光剤を用いてこの蛍光剤に添加する賦活剤のみが異なっていてもよい。例えば、第1のシンチレータ418Aと第2のシンチレータ18Bには、蛍光剤としていずれもCsIを用いる。そして、第1のシンチレータ418Aの蛍光剤に対してはNaの賦活剤を用いて、CsI:Naの蛍光組成物からなる柱状部434Aを有するようにする。また、第2のシンチレータ18Bの蛍光剤に対してはTlの賦活剤を用いて、CsI:Tlの蛍光組成物からなる柱状部34Bと非柱状部36Bを有するようにする。
【0082】
図10は、図9の放射線画像変換パネルに用いられるセンサパネルの変形例を示す図である。
【0083】
図10に示すX線画像検出装置5は、X線画像変換パネル42と、第1のセンサパネル53Aと、第2のセンサパネル53Bと、を含んで構成される。
【0084】
第1のセンサパネル53Aは、光電変換素子526Aを有し、第2のセンサパネル53Bは、光電変換素子526Bを有する。X線画像変換パネル2と異なり、光電変換素子526Aの光導電層520Aと光電変換素子526Bの光伝導層520Bは、それぞれ有機光電変換(OPC;Organic photoelectric conversion)材料を含む膜(以下、OPC膜という)で形成されている。OPC膜は、有機光電変換材料を含み、シンチレータから発せられた蛍光を吸収し、吸収した光に応じた電荷を発生する。このように有機光電変換材料を含むOPC膜であれば、可視域にシャープな吸収スペクトルを持ち、シンチレータによる発光以外の電磁波がOPC膜に吸収されることがほとんどなく、X線等の放射線がOPC膜で吸収されることによって発生するノイズを効果的に抑制することができる。
【0085】
OPC膜を構成する有機光電変換材料は、シンチレータで発光した光を最も効率良く吸収するために、その吸収ピーク波長が、シンチレータの発光ピーク波長と近いほど好ましい。有機光電変換材料の吸収ピーク波長とシンチレータの発光ピーク波長とが一致することが理想的であるが、双方の差が小さければシンチレータから発された光を十分に吸収することが可能である。具体的には、有機光電変換材料の吸収ピーク波長と、シンチレータの放射線に対する発光ピーク波長との差が、10nm以内であることが好ましく、5nm以内であることがより好ましい。
【0086】
従って、放射線変換検出装置5では、第1のシンチレータ418Aの発光ピーク波長の近傍に吸収ピーク波長を有する光導電層520Aをセンサパネル53Aに用いている。また、第2のシンチレータ18Bの発光ピーク波長の近傍に吸収ピーク波長を有する光導電層520Bをセンサパネル53Bに用いている。
【0087】
上述のように、例えば、第1のシンチレータ418Aの蛍光組成物として、CsI:Naを用いる。この第1のシンチレータ418Aは、青色領域の光を発する。これに合わせて第1のセンサパネル53Aには、青色領域の光を吸収するOPC膜で光導電層520Aを形成する。一方、第2のシンチレータ18Bの蛍光組成物として、CsI:Tlを用いる。この第2のシンチレータ18Bは、緑色領域の光を発する。これに合わせて第2のセンサパネル53Bには、緑色領域の光を吸収するOPC膜で光導電層520Bを形成する。
【0088】
これにより、第2のシンチレータ18B側で発生した緑色領域の光が非柱状部36Bを透過し、第1のセンサパネル53Aに届いてしまったとしても、光導電層520Aは、青色領域にシャープな吸収スペクトルを有するため、緑色領域の光が検出されない。同様に、第1のシンチレータ418A側で発生した青色領域の光が非柱状部36Bを透過し、第2のセンサパネル53Bに届いてしまったとしても、光導電層520Bは、緑色領域にシャープな吸収スペクトルを有するため、青色領域の光が検出されない。
【0089】
以上、X線画像検出装置5によれば、X線画像変換パネル42の非柱状部36Bの反射機能が不十分であっても、第1のシンチレータ418Aと第2のシンチレータ418Bのそれぞれから発せられる蛍光に応じた光電変換素子526A,526Bを設けるようにしたため、コンタミネーションを防ぐことができる。
【0090】
図11は、図6の放射線画像変換パネルの変形例を示す図であり、図12は、図11の放射線画像変換パネルに用いられるセンサパネルの変形例を示す図である。
【0091】
図11に示すX線画像検出装置6では、これに用いるX線画像変換パネル62を構成する第1のシンチレータ618Aが、柱状結晶を成長させることができない蛍光組成物で形成されている点がX線画像変換パネル2と異なる。第1のシンチレータ618Aに用いる蛍光組成物としては、例えば、GOS(GdS:Tb)や、CaWOを用いることができる。
【0092】
第1のシンチレータ618Aは、第1のセンサパネル3Aに直接蒸着することで形成することができる。
【0093】
また、図12に示すX線画像検出装置7のように、X線画像変換パネル62に有機光電変換材料を用いた第1のセンサパネル53Aと第2のセンサパネル53Bと組み合わせてもよい。
【0094】
図13は、図11の放射線画像変換パネルの変形例を示す図である。
【0095】
X線画像検出装置8のX線画像変換パネル82は、第1のシンチレータ618Aと第2のシンチレータ18Bの間に支持体11が介在するように設けられている点でX線画像変換パネル2と異なる。
【0096】
支持体11は、第2のシンチレータ18Bを気相堆積法等により蒸着させるための蒸着基板である。
【0097】
支持体11としては、カーボン板、CFRP(carbon fiber reinforced plastic)、ガラス板、石英基板、サファイア基板、鉄、スズ、クロム、アルミニウムなどから選択される金属シート、等を用いることができるが、その上に第1のシンチレータ18Bを形成することができる限りにおいて上記のものに限定されない。
【0098】
X線画像変換パネル8は、例えば、次のように製造することができる。
【0099】
まず、第1のシンチレータ618Aは、第1のセンサパネル3A上に直接蒸着する。第2のシンチレータ18Bは、別途支持体11上に直接蒸着する。そして、第2のシンチレータ18Bが形成された支持体11を第1のシンチレータ18A上に載置する。
【0100】
以上、X線画像変換パネル8によれば、第2のシンチレータ18Bを蒸着基板上に蒸着する場合であっても、第2のシンチレータ18Bを支持体11から取り外す必要がない。これにより、X線画像変換パネル8の製造工程が簡略化されている。また、支持体11を設けることによって、第2のシンチレータ18Bの非柱状部36Bの反射機能が不十分であっても、支持体11が反射機能を補填することができる。
【0101】
図14は、図3の放射線画像検出装置の変形例を示す図である。
【0102】
X線画像検出装置9は、X線画像変換パネル2と第2のセンサパネル3Bを接着する部分がX線画像検出装置1と異なる。
【0103】
すなわち、X線画像変換パネル2の周縁部のみに設けられ、第2のセンサパネル3BとX線画像変換パネル2を接着する接着部925を有する。
【0104】
以上により、X線画像検出装置9によれば、X線画像変換パネル2の第2のシンチレータ18Bと第2のセンサパネル3Bが対向する部分が接着されていないため、第2のセンサパネル3Bが第2のシンチレータ18Bから発せられる蛍光をより多く検出する。これにより、画像の鮮鋭度が向上する。
【0105】
図15は、図3の放射線画像検出装置の変形例を示す図である。
【0106】
X線画像検出装置10は、X線画像変換パネル102が第1のセンサパネル3Aに直接蒸着されていない点で、X線画像検出装置1と異なる。
【0107】
X線画像変換パネル102は、接着層1025を介して第1のセンサパネル3Aに接着されている。
【0108】
接着層1025は接着層25と同様に、樹脂層で形成される。この樹脂層として、透明な液体またはゲルからなるマッチングオイルなども用いることができる。樹脂層の厚みは、感度、及び画像の鮮鋭度の観点から、50μm以下であることが好ましく、5μm〜30μmであることがより好ましい。
【0109】
また、X線画像変換パネル102では、第1のシンチレータ18Aが接着層1025と対向する部分も保護されている。具体的には、第1のシンチレータ18Aと第2のシンチレータ18Bの全体を覆う保護膜1027が形成されている。すなわち、X線画像変換パネル102の第1のシンチレータ18Aは、第1のセンサパネル3Aに直接蒸着されておらず、保護膜1027及び接着層1025を介して第1のセンサパネル3Aに貼り合わせられている。
【0110】
以上により、X線画像検出装置10によれば、第1のセンサパネル3Aや第2のセンサパネル3Bとは独立に、別途X線画像変換パネル102を製造しているため、X線画像変換パネル102のみが故障した場合でも、接着層25及び接着層1025を取り除くだけ別のX線画像変換パネル102に交換することができる。従って、X線画像検出装置10のリワーク性を向上させることができる。
【0111】
以下、第1のセンサパネル3Aと第2のセンサパネル3Bを構成する各要素に用いることのできる材料について説明する。
【0112】
[光電変換素子]
上述した、光導電層520A及び520Bに用いられる有機光電変換材料としては、例えば、アリーリデン系有機化合物、キナクリドン系有機化合物、及びフタロシアニン系有機化合物が挙げられる。例えばキナクリドンの可視域における吸収ピーク波長は560nmであるため、有機光電変換材料としてキナクリドンを用い、シンチレータの材料としてCsI(Tl)を用いれば、上記ピーク波長の差を5nm以内にすることが可能となり、OPC膜で発生する電荷量をほぼ最大にすることができる。
【0113】
バイアス電極22および電荷収集電極24の間に設けられる有機層の少なくとも一部をOPC膜によって構成することができる。この有機層は、より具体的には、電磁波を吸収する部位、光電変換部位、電子輸送部位、正孔輸送部位、電子ブロッキング部位、正孔ブロッキング部位、結晶化防止部位、電極、及び層間接触改良部位等の積み重ねもしくは混合により形成することができる。
【0114】
上記有機層は、有機p型化合物または有機n型化合物を含有することが好ましい。有機p型半導体(化合物)は、主に正孔輸送性有機化合物に代表されるドナー性有機半導体(化合物)であり、電子を供与しやすい性質がある有機化合物をいう。さらに詳しくは2つの有機材料を接触させて用いたときにイオン化ポテンシャルの小さい方の有機化合物をいう。したがって、ドナー性有機化合物としては、電子供与性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。例えば、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物、ピラゾリン化合物、スチリルアミン化合物、ヒドラゾン化合物、トリフェニルメタン化合物、カルバゾール化合物、ポリシラン化合物、チオフェン化合物、フタロシアニン化合物、シアニン化合物、メロシアニン化合物、オキソノール化合物、ポリアミン化合物、インドール化合物、ピロール化合物、ピラゾール化合物、ポリアリーレン化合物、縮合芳香族炭素環化合物(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)、含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体等を用いることができる。なお、これらに限らず、n型(アクセプター性)化合物として用いた有機化合物よりもイオン化ポテンシャルの小さい有機化合物であればドナー性有機半導体として用いることができる。
【0115】
有機n型半導体(化合物)は、主に電子輸送性有機化合物に代表されるアクセプター性有機半導体(化合物)であり、電子を受容しやすい性質がある有機化合物をいう。さらに詳しくは2つの有機化合物を接触させて用いたときに電子親和力の大きい方の有機化合物をいう。したがって、アクセプター性有機化合物は、電子受容性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。例えば、縮合芳香族炭素環化合物(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含有する5ないし7員のヘテロ環化合物(例えばピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、イソキノリン、プテリジン、アクリジン、フェナジン、フェナントロリン、テトラゾール、ピラゾール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、トリアゾロピリダジン、トリアゾロピリミジン、テトラザインデン、オキサジアゾール、イミダゾピリジン、ピラリジン、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン、ジベンズアゼピン、トリベンズアゼピン等)、ポリアリーレン化合物、フルオレン化合物、シクロペンタジエン化合物、シリル化合物、含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体などが挙げられる。なお、これらに限らず、ドナー性有機化合物として用いた有機化合物よりも電子親和力の大きな有機化合物であればアクセプター性有機半導体として用いることができる。
【0116】
p型有機色素又はn型有機色素としては、公知のものを用いることができるが、好ましくは、シアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、メロシアニン色素(ゼロメチンメロシアニン(シンプルメロシアニン)を含む)、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、アロポーラー色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素、スクアリウム色素、クロコニウム色素、アザメチン色素、クマリン色素、アリーリデン色素、アントラキノン色素、トリフェニルメタン色素、アゾ色素、アゾメチン色素、スピロ化合物、メタロセン色素、フルオレノン色素、フルギド色素、ペリレン色素、フェナジン色素、フェノチアジン色素、キノン色素、インジゴ色素、ジフェニルメタン色素、ポリエン色素、アクリジン色素、アクリジノン色素、ジフェニルアミン色素、キナクリドン色素、キノフタロン色素、フェノキサジン色素、フタロペリレン色素、ポルフィリン色素、クロロフィル色素、フタロシアニン色素、金属錯体色素、縮合芳香族炭素環系色素(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)等が挙げられる。
【0117】
1対の電極間に、p型半導体層とn型半導体層とを有し、該p型半導体とn型半導体の少なくともいずれかが有機半導体であり、かつ、それらの半導体層の間に、該p型半導体およびn型半導体を含むバルクヘテロ接合構造層を中間層として有する光電変換膜(感光層)を好適に用いることができる。このように、光電変換膜において、バルクへテロ接合構造層を含ませることにより有機層のキャリア拡散長が短いという欠点を補い、光電変換効率を向上させることができる。なお、上記バルクへテロ接合構造については、特開2005−303266号公報において詳細に説明されている。
【0118】
光電変換膜の厚みは、シンチレータからの光を吸収する点では膜厚は大きいほど好ましいが、電荷分離に寄与しない割合を考慮すると、30nm以上300nm以下が好ましく、より好ましくは、50nm以上250nm以下、特に好ましくは80nm以上200nm以下である。上述したOPC膜に関するその他の構成は、例えば、特開2009−32854号公報の記載が参考となる。
【0119】
[スイッチ素子]
スイッチ素子28の活性層としては、例えばアモルファスシリコン等の無機半導体材料が使われることが多いが、例えば特開2009−212389号公報に記載されたように、有機材料を使用することができる。有機TFTはいかなるタイプの構造でもよいが、最も好ましいのは電界効果型トランジスタ(FET)構造である。このFET構造は、絶縁性基板上面の一部にゲート電極を設け、さらに該電極を覆い、かつ電極以外の部分で基板と接するように絶縁体層を設けている。さらに絶縁体層の上面に半導体活性層を設け、その上面の一部に透明ソース電極と透明ドレイン電極とを隔離して配置している。なお、この構成はトップコンタクト型素子と呼ばれるが、ソース電極とドレイン電極とが半導体活性層の下部にあるボトムコンタクト型素子も好ましく用いることができる。また、キャリアが有機半導体膜の膜厚方向に流れる縦型トランジスタ構造であってもよい。
【0120】
(活性層)
ここでいう有機半導体材料とは、半導体の特性を示す有機材料のことであり、無機材料からなる半導体と同様に、正孔(ホール)をキャリアとして伝導するp型有機半導体材料(あるいは単にp型材料、正孔輸送材料とも言う。)と、電子をキャリアとして伝導するn型有機半導体材料(あるいは単にn型材料、電子輸送材料とも言う。)がある。有機半導体材料は一般にp型材料の方が良好な特性を示すものが多く、また、一般に大気下でのトランジスタ動作安定性もp型トランジスタの方が優れているため、ここでは、p型有機半導体材料について説明する。
【0121】
有機薄膜トランジスタの特性の一つに、有機半導体層中のキャリアの動きやすさを示すキャリア移動度(単に移動度とも言う)μがある。用途によっても異なるが、一般に移動度は高い方がよく、1.0×10-7cm2/Vs以上であることが好ましく、1.0×10-6cm2/Vs以上であることがより好ましく、1.0×10-5cm2/Vs以上であることがさらに好ましい。移動度は電界効果トランジスタ(FET)素子を作製したときの特性や飛行時間計測(TOF)法により求めることができる。
【0122】
前記p型有機半導体材料は、低分子材料でも高分子材料でも良いが、好ましくは低分子材料である。低分子材料は、昇華精製や再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの様々な精製法が適用できるため高純度化が容易であること、分子構造が定まっているため秩序の高い結晶構造を取りやすいこと、などの理由から高い特性を示すものが多い。低分子材料の分子量は、好ましくは100以上5000以下、より好ましくは150以上3000以下、さらに好ましくは200以上2000以下である。
【0123】
このようなp型有機半導体材料としては、フタロシアニン化合物又はナフタロシアニン化合物を例示することができ、具体例を以下に示す。なお、Mは金属原子、Buはブチル基、Prはプロピル基、Etはエチル基、Phはフェニル基をそれぞれ表す。
【0124】
【化1】

【0125】
(活性層以外のスイッチ素子の構成要素)
ゲート電極、ソース電極、又はドレイン電極を構成する材料としては、必要な導電性を有するものであれば特に制限はないが、例えば、ITO(インジウムドープ酸化スズ)、IZO(インジウムドープ酸化亜鉛)、SnO2、ATO(アンチモンドープ酸化スズ)、ZnO、AZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)、GZO(ガリウムドープ酸化亜鉛)、TiO2、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)などの透明導電性酸化物、PEDOT/PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸)などの透明導電性ポリマー、カーボンナノチューブなどの炭素材料が挙げられる。これらの電極材料は、例えば真空蒸着法、スパッタリング、溶液塗布法等の方法で成膜することができる。
【0126】
絶縁層に用いられる材料としては、必要な絶縁効果を有するものであれば特に制限はないが、例えば、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、アルミナなどの無機材料、ポリエステル(PEN(ポリエチレンナフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)など)、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリアクリレート、エポキシ樹脂、ポリパラキシリレン樹脂、ノボラック樹脂、PVA(ポリビニルアルコール)、PS(ポリスチレン)、などの有機材料が挙げられる。これらの絶縁膜材料は、例えば真空蒸着法、スパッタリング、溶液塗布法等の方法で成膜することができる。
上述した有機TFTに関するその他の構成は、例えば、特開2009−212389号公報の記載が参考となる。
【0127】
また、スイッチ素子28の活性層には、例えば特開2010−186860号公報に記載された非晶質酸化物も使用することができる。ここで、特開2010−186860号に記載された電界効果型トランジスタが有する非晶質酸化物含有の活性層について示す。この活性層は、電子またはホールの移動する電界効果型トランジスタのチャネル層として機能する。
【0128】
活性層は、非晶質酸化物半導体を含んだ構成とされている。この非晶質酸化物半導体は、低温で成膜可能であるために、可撓性のある基板上に好適に形成される。活性層に用いられる非晶質酸化物半導体としては、好ましくはIn、Sn、Zn、又はCdよりなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含む非晶質酸化物であり、より好ましくは、In、Sn、Znよりなる群より選ばれる少なくとも1種を含む非晶質酸化物、さらに好ましくは、In、Znよりなる群より選ばれる少なくとも1種を含む非晶質酸化物である。
【0129】
活性層に用いられる非晶質酸化物としては、具体的には、In、ZnO,SnO、CdO,Indium−Zinc−Oxide(IZO)、Indium−Tin−Oxide(ITO)、Gallium−Zinc−Oxide(GZO)、Indium−Gallium−Oxide(IGO)、Indium−Gallium−Zinc−Oxide(IGZO)が挙げられる。
【0130】
活性層の成膜方法としては、酸化物半導体の多結晶焼結体をターゲットとして、気相成膜法を用いるのが好ましい。気相成膜法の中でも、スパッタリング法、パルスレーザー蒸着法(PLD法)が適している。さらに、量産性の観点から、スパッタリング法が好ましい。例えば、RFマグネトロンスパッタリング蒸着法により、真空度及び酸素流量を制御して成膜される。
【0131】
成膜された活性層は、周知のX線回折法によりアモルファス膜であることが確認される。活性層の組成比は、RBS(ラザフォード後方散乱)分析法により求められる。
【0132】
また、この活性層の電気伝導度は、好ましくは10−4Scm−1以上10Scm−1未満であり、より好ましくは10−1Scm−1以上10Scm−1未満である。この活性層の電気伝導度の調整方法としては、公知の酸素欠陥による調整方法や、組成比による調整方法、不純物による調整方法、酸化物半導体材料による調整方法が挙げられる。
上述した非晶質酸化物に関するその他の構成は、例えば、特開2010−186860号公報の記載が参考となる。
【0133】
[絶縁性基板]
絶縁性基板12としては、例えば、ガラス、石英、プラスチックフィルムなどが挙げられる。プラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルム等が挙げられる。また、これらのプラスチックフィルムに、有機あるいは無機のフィラーを含有させてもよい。また、フレキシブルでかつ低熱膨張、高強度といった、既存のガラスやプラスチックでは得られない特性を有するアラミド、バイオナノファイバーなどを用いて形成されたフレキシブル基板も好適に使用しうる。
【0134】
(アラミド)
アラミド材料は、ガラス転移温度315℃という高い耐熱性、ヤング率が10GPaという高い剛性、熱膨張率が−3〜5ppm/℃という高い寸法安定性を有する。このため、アラミド製のフィルムを用いると、一般的な樹脂フィルムを用いる場合と比べて、半導体層の高品質の成膜が容易に行える。また、アラミド材料の高耐熱性により、電極材料を高温硬化させて低抵抗化できる。さらに、ハンダのリフロー工程を含むICの自動実装にも対応できる。またさらに、ITO(indium tin oxide)やガス・バリア膜、ガラス基板と熱膨張係数が近いために、製造後の反りが少ない。そして、割れにくい。ここで、ハロゲンを含まないハロゲンフリー(JPCA−ES01−2003の規定に適合)なアラミド材料を用いることが環境負荷低減の点で好ましい。アラミドフィルムは、ガラス基板やPET基板と積層されてもよいし、デバイスの筐体に貼り付けられてもよい。
【0135】
アラミドの分子間の凝集力(水素結合力)の高さによる溶媒への低溶解性を分子設計によって解決することにより、無色透明で薄いフィルムへの成形が容易とされたアラミド材料についても、好適に用いることができる。モノマーユニットの秩序性、および芳香環上の置換基種・位置を制御する分子設計により、アラミド材料の高剛性や寸法安定性に繋がる直線性の高い棒状の分子構造を維持しつつ、溶解性が良い成形の容易さが得られる。この分子設計により、ハロゲンフリーをも実現できる。
【0136】
また、フィルムの面内方向の特性が最適化されたアラミド材料についても、好適に用いることができる。成型中に逐次変化するアラミドフィルムの強度に応じて、溶液キャスト、縦延伸、横延伸の工程ごとに張力条件を制御することにより、直線性の高い棒状分子構造であって物性に異方性が生じやすいアラミドフィルムの面内方向の特性をバランスできる。
【0137】
具体的に、溶液キャスト工程では、溶媒の乾燥速度の制御による面内厚み方向の物性の等方化、溶媒を含んだ状態のフィルムの強度とキャスト・ドラムからの剥離強度の最適化、を図る。縦延伸工程では、延伸中に逐次変化するフィルムの強度、溶媒の残留量に応じた延伸条件を精密に制御する。横延伸工程では、加熱によって変化するフィルム強度の変化に応じた横延伸の条件の制御、フィルムの残留応力を緩和するための横延伸の条件の制御を図る。このようなアラミド材料の使用により、成型後のアラミドフィルムがカールしてしまう問題を解決できる。
【0138】
上記の成形容易さに対する工夫、およびフィルム面内方向の特性のバランスに対する工夫のいずれにおいても、アラミドならではの直線性の高い棒状の分子構造が維持されているので、熱膨張係数を低く維持できる。製膜時の延伸条件の変更などにより、熱膨張係数をさらに低減することも可能である。
【0139】
(バイオナノファイバー)
ナノファイバーは、光の波長に対して十分に小さなコンポーネントは光散乱を生じないことから、透明でフレキシブルな樹脂材料の補強として用いることができる。そして、ナノファイバーの中でも、バクテリア(酢酸菌、Acetobacter Xylinum)が産出するセルロースミクロフィブリル束は、幅50nmと、可視光波長に対して約1/10のサイズでかつ、高強度、高弾性、低熱膨である特徴を有しており、このバクテリアセルロースと透明樹脂との複合材料(バイオナノファイバーということがある)を好適に用いることができる。
【0140】
バクテリアセルロースシートにアクリル樹脂、エポキシ樹脂等の透明樹脂を含浸・硬化させることで、繊維を約60〜70%と高い比率で含有しながら、波長500nmで約90%の光透過率を示す透明バイオナノファイバーが得られる。このバイオナノファイバーにより、シリコン結晶に匹敵する低い熱膨張係数(約3〜7ppm)、鋼鉄並の強度(約460MPa)、および高弾性(約30GPa)が得られる。
【0141】
上述したバイオナノファイバーに関する構成は、例えば、特開2008−34556号公報の記載が参考となる。
【0142】
[平坦化層及び接着層]
第1のシンチレータ18A(418A,618A)又は第2のシンチレータ18Bと光電変換素子26とを光学的に結合させる樹脂層としての平坦化層23及び接着層25(925,1025)は、第1のシンチレータ18Aや第2のシンチレータ18Bから発せられた蛍光を減衰させることなく光電変換素子26に到達させ得るものであれば特に制限はない。平坦化層23としては、ポリイミドやパリレンなどの樹脂を用いることができ、製膜性が良好なポリイミドを用いることが好ましい。接着層25としては、例えば、熱可塑性樹脂、UV硬化接着剤、加熱硬化型接着剤、室温硬化型接着剤、両面接着シート、等が挙げられるが、画像の鮮鋭度を低下させないという観点から、素子サイズに対して十分に薄い接着層を形成し得る低粘度エポキシ樹脂製の接着剤を用いることが好ましい。
【0143】
以上、説明したように、本明細書には、下記の事項が開示されている。
(1)放射線露光によって蛍光を発する第1の蛍光組成物を含有する第1の蛍光体と、前記放射線露光によって蛍光を発する第2の蛍光組成物を含有する第2の蛍光体と、を備え、前記第2の蛍光体は、前記第2の蛍光組成物の結晶が柱状に成長してなる柱状結晶の群によって形成されている柱状部と、該柱状部に連続し、前記第2の蛍光組成物の結晶により形成されているとともに、空隙率が0よりも大きく前記柱状部の空隙率よりも小さい非柱状部とを有し、前記第2の蛍光体の非柱状部が、前記第1の蛍光体と前記第2の蛍光体の柱状部の間に介在し、前記第2の蛍光体の非柱状部が介在する側とは反対側にある前記第2の蛍光体の蛍光出射面と、前記第2の蛍光体の非柱状部が介在する側とは反対側にある前記第1の蛍光体の蛍光出射面とを有する放射線画像変換パネル。
(2)(1)に記載の放射線画像変換パネルにおいて、前記第2の蛍光体の非柱状部は、前記第2の蛍光組成物の結晶が比較的小径の略球状に成長してなる球状結晶の群によって形成されている放射線画像変換パネル。
(3)(1)または(2)に記載の放射線画像変換パネルにおいて、前記第1の蛍光体は、前記第1の蛍光組成物の結晶が柱状に成長してなる柱状結晶の群によって形成されている柱状部を有し、前記第2の蛍光体の非柱状部は、前記第1の蛍光体の柱状部と前記第2の蛍光体の柱状部の間に介在する放射線画像変換パネル。
(4)(1)から(3)のいずれか一つに記載の放射線画像変換パネルにおいて、前記第1の蛍光体と前記第2の蛍光体は発光ピーク波長が異なる放射線画像変換パネル。
(5)(1)から(3)のいずれか一つに記載の放射線画像変換パネルにおいて、前記第1の蛍光組成物と前記第2の蛍光組成物は、それぞれに含まれる賦活剤の添加量のみが異なる放射線画像変換パネル。
(6)(1)から(5)のいずれか一つに記載の放射線画像変換パネルにおいて、前記第2の蛍光体の非柱状部は、前記第1の蛍光体に連続して形成されている放射線画像変換パネル。
(7)(1)から(5)のいずれか一つに記載の放射線画像変換パネルにおいて、前記第2の蛍光体は、前記第1の蛍光体に接着されることなく密接配置される放射線画像変換パネル。
(8)(1)から(5)のいずれか一つに記載の放射線画像変換パネルにおいて、さらに、前記第2の蛍光体の非柱状部を直接蒸着させる支持体を備え、前記支持体上に、前記第2の蛍光体の非柱状部及び前記第2の蛍光体の柱状部がこの順に形成され、前記支持体は、前記第1の蛍光体と前記第2の蛍光体の間に介在する放射線画像変換パネル。
(9)放射線露光によって蛍光を発する第1の蛍光組成物を含有する第1の蛍光体と、前記放射線露光によって蛍光を発する第2の蛍光組成物を含有する第2の蛍光体とを備える放射線画像変換パネルと、前記第1の蛍光体から発せられる蛍光を検出して電気信号に変換する第1のセンサパネルと、前記第2の蛍光体から発せられる蛍光を検出して電気信号に変換する第2のセンサパネルと、を備え、前記第2の蛍光体は、前記第2の蛍光組成物の結晶が柱状に成長してなる柱状結晶の群によって形成されている柱状部と、該柱状部に連続し、前記第2の蛍光組成物の結晶により形成されているとともに、空隙率が0よりも大きく前記柱状部の空隙率よりも小さい非柱状部とを有し、前記第2の蛍光体の非柱状部が、前記第1の蛍光体と前記第2の蛍光体の柱状部の間に介在し、前記第2の蛍光体の非柱状部が介在する側とは反対側にある前記第2の蛍光体の蛍光出射面と、前記第2の蛍光体の非柱状部が介在する側とは反対側にある前記第1の蛍光体の蛍光出射面とを有する放射線画像検出装置。
(10)(9)に記載の放射線画像検出装置において、前記第1のセンサパネルは、前記第1の蛍光体から発せられる蛍光を光電変換する有機材料を用いた第1の光電変換部を有し、前記第2のセンサパネルは、前記第2の蛍光体から発せられる蛍光を光電変換する有機材料を用いた第2の光電変換部を有し、前記第1の光電変換部と前記第2の光電変換部の吸収ピーク波長が異なる放射線画像検出装置。
(11)(10)に記載の放射線画像検出装置において、前記第1の光電変換部の吸収ピーク波長と前記第1の蛍光組成物の発光ピーク波長の差、及び前記第2の光電変換部の吸収ピーク波長と前記第2の蛍光組成物の発光ピーク波長との差がいずれも10nm以内である放射線画像検出装置。
(12)(9)から(11)のいずれか一つに記載の放射線画像検出装置において、前記第1の蛍光組成物及び前記第2の蛍光組成物のいずれか一方が緑色領域に発光ピーク波長を有し、もう一方が青色領域に発光ピーク波長を有する蛍光組成物である放射線画像検出装置。
(13)(9)から(12)のいずれか一つに記載の放射線画像検出装置と、前記第1のセンサパネルによって生成される第1の画像データ、及び前記第2のセンサパネルによって生成される第2の画像データを用いて、エネルギーサブトラクション画像を生成する画像処理部と、を備える放射線撮影装置。
【符号の説明】
【0144】
1,4,5,6,7,8,9,10 X線画像検出装置
2,42,62,82,102 X線画像変換パネル
3A,53A 第1のセンサパネル
3B,53B 第2のセンサパネル
18A,418A,618A 第1のシンチレータ
18B 第2のシンチレータ
34A,434A,34B 柱状部
36B 非柱状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線露光によって蛍光を発する第1の蛍光組成物を含有する第1の蛍光体と、
前記放射線露光によって蛍光を発する第2の蛍光組成物を含有する第2の蛍光体と、を備え、
前記第2の蛍光体は、前記第2の蛍光組成物の結晶が柱状に成長してなる柱状結晶の群によって形成されている柱状部と、該柱状部に連続し、前記第2の蛍光組成物の結晶により形成されているとともに、空隙率が0よりも大きく前記柱状部の空隙率よりも小さい非柱状部とを有し、
前記第2の蛍光体の非柱状部が、前記第1の蛍光体と前記第2の蛍光体の柱状部の間に介在し、
前記第2の蛍光体の非柱状部が介在する側とは反対側にある前記第2の蛍光体の蛍光出射面と、前記第2の蛍光体の非柱状部が介在する側とは反対側にある前記第1の蛍光体の蛍光出射面とを有する放射線画像変換パネル。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線画像変換パネルにおいて、
前記第2の蛍光体の非柱状部は、前記第2の蛍光組成物の結晶が比較的小径の略球状に成長してなる球状結晶の群によって形成されている放射線画像変換パネル。
【請求項3】
請求項1または2に記載の放射線画像変換パネルにおいて、
前記第1の蛍光体は、前記第1の蛍光組成物の結晶が柱状に成長してなる柱状結晶の群によって形成されている柱状部を有し、
前記第2の蛍光体の非柱状部は、前記第1の蛍光体の柱状部と前記第2の蛍光体の柱状部の間に介在する放射線画像変換パネル。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の放射線画像変換パネルにおいて、
前記第1の蛍光体と前記第2の蛍光体は発光ピーク波長が異なる放射線画像変換パネル。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項に記載の放射線画像変換パネルにおいて、
前記第1の蛍光組成物と前記第2の蛍光組成物は、それぞれに含まれる賦活剤の添加量のみが異なる放射線画像変換パネル。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の放射線画像変換パネルにおいて、
前記第2の蛍光体の非柱状部は、前記第1の蛍光体に連続して形成されている放射線画像変換パネル。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか一項に記載の放射線画像変換パネルにおいて、
前記第2の蛍光体は、前記第1の蛍光体に接着されることなく密接配置される放射線画像変換パネル。
【請求項8】
請求項1から5のいずれか一項に記載の放射線画像変換パネルにおいて、
さらに、前記第2の蛍光体の非柱状部を直接蒸着させる支持体を備え、
前記支持体上に、前記第2の蛍光体の非柱状部及び前記第2の蛍光体の柱状部がこの順に形成され、
前記支持体は、前記第1の蛍光体と前記第2の蛍光体の間に介在する放射線画像変換パネル。
【請求項9】
放射線露光によって蛍光を発する第1の蛍光組成物を含有する第1の蛍光体と、前記放射線露光によって蛍光を発する第2の蛍光組成物を含有する第2の蛍光体とを備える放射線画像変換パネルと、
前記第1の蛍光体から発せられる蛍光を検出して電気信号に変換する第1のセンサパネルと、
前記第2の蛍光体から発せられる蛍光を検出して電気信号に変換する第2のセンサパネルと、を備え、
前記第2の蛍光体は、前記第2の蛍光組成物の結晶が柱状に成長してなる柱状結晶の群によって形成されている柱状部と、該柱状部に連続し、前記第2の蛍光組成物の結晶により形成されているとともに、空隙率が0よりも大きく前記柱状部の空隙率よりも小さい非柱状部とを有し、
前記第2の蛍光体の非柱状部が、前記第1の蛍光体と前記第2の蛍光体の柱状部の間に介在し、
前記第2の蛍光体の非柱状部が介在する側とは反対側にある前記第2の蛍光体の蛍光出射面と、前記第2の蛍光体の非柱状部が介在する側とは反対側にある前記第1の蛍光体の蛍光出射面とを有する放射線画像検出装置。
【請求項10】
請求項9に記載の放射線画像検出装置において、
前記第1のセンサパネルは、前記第1の蛍光体から発せられる蛍光を光電変換する有機材料を用いた第1の光電変換部を有し、
前記第2のセンサパネルは、前記第2の蛍光体から発せられる蛍光を光電変換する有機材料を用いた第2の光電変換部を有し、
前記第1の光電変換部と前記第2の光電変換部の吸収ピーク波長が異なる放射線画像検出装置。
【請求項11】
請求項10に記載の放射線画像検出装置において、
前記第1の光電変換部の吸収ピーク波長と前記第1の蛍光組成物の発光ピーク波長の差、及び前記第2の光電変換部の吸収ピーク波長と前記第2の蛍光組成物の発光ピーク波長との差がいずれも10nm以内である放射線画像検出装置。
【請求項12】
請求項9から11のいずれか一項に記載の放射線画像検出装置において、
前記第1の蛍光組成物及び前記第2の蛍光組成物のいずれか一方が緑色領域に発光ピーク波長を有し、もう一方が青色領域に発光ピーク波長を有する蛍光組成物である放射線画像検出装置。
【請求項13】
請求項9から12のいずれか一項に記載の放射線画像検出装置と、
前記第1のセンサパネルによって生成される第1の画像データ、及び前記第2のセンサパネルによって生成される第2の画像データを用いて、エネルギーサブトラクション画像を生成する画像処理部と、
を備える放射線撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−233780(P2012−233780A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102262(P2011−102262)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】