説明

放射線画像撮影システムおよびプログラム

【課題】グリッドや放射線検出器に構成上の制約を設けることなく、容易にモアレ縞の発生を防止することのできる放射線画像撮影システムおよびプログラムを得る。
【解決手段】電子カセッテ40に設けられた放射線検出器により撮影される放射線画像にグリッド46の吸収部材によって発生するモアレ縞の空間周波数が予め定められた空間周波数以上となる、放射線検出器の画素の配列方向に対するグリッド46の傾斜角度を取得し、グリッド46と放射線検出器(電子カセッテ40)との間の相対角度を取得した傾斜角度とするための予め定められた処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像撮影システムおよびプログラムに係り、特に、被写体による散乱線を除去するためのグリッドを用いて放射線画像の撮影を行う放射線画像撮影システムおよび当該放射線画像撮影システムにおいて実行されるプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、TFT(Thin Film Transistor)アクティブマトリクス基板上に放射線感応層を配置し、放射線を直接デジタルデータに変換できるFPD(Flat Panel Detector)等の放射線検出器が実用化されており、この放射線検出器を用いて、照射された放射線により表わされる放射線画像を撮影する放射線画像撮影装置が実用化されている。なお、この放射線画像撮影装置に用いられる放射線検出器には、放射線を変換する方式として、放射線をシンチレータで光に変換した後にフォトダイオード等の半導体層で電荷に変換する間接変換方式や、放射線をアモルファスセレン等の半導体層で電荷に変換する直接変換方式等があり、各方式でも半導体層に使用可能な材料が種々存在する。
【0003】
ところで、この種の放射線画像撮影装置では、被写体によって散乱した散乱線を除去するために、放射線の吸収率が高い物質と低い物質とを一定間隔で交互に平行に並べたグリッドが用いられているが、このグリッドの持つ空間的な周波数(放射線の吸収率が高い物質の配列方向に対する間隔)と放射線検出器の空間的サンプリング周期(検出画素間隔)の相違により、放射線検出器によって得られた画像にはモアレ縞が生じる場合があった。
【0004】
すなわち、画素間隔Δ[cm]の放射線検出器のナイキスト周波数f[本/cm]は次の(1)式で表される。
【0005】
【数1】

【0006】
例えば、画素間隔Δが150[μm]であれば、ナイキスト周波数fは33.33[本/cm]となる。そして、放射線の吸収率が高い物質(以下、「放射線吸収物質」という。)の配列方向に対する1cm当たりの本数がf[本/cm]のグリッドでは、放射線検出器に対してグリッドを当該放射線検出器の画素配列方向に対して放射線吸収物質の配列方向を一致させるように配置した場合には、放射線画像における放射線吸収物質の1cm当たりの本数f’ [本/cm]は次の(2)式で表され、f’の空間周波数(以下、単に「周波数」ともいう。)にモアレ縞が発生する。
【0007】
【数2】

【0008】
なお、(2)式におけるNは0(零)以上の整数であり、次の(3)式で表される。ここで、(3)式における[]は少数点以下切り捨てを表す記号である。
【0009】
【数3】

【0010】
そこで、以上のようなモアレ縞の発生を防止するために適用できる技術として、特許文献1には、被写体から透過したX線を2次元的にサンプリングすることにより画像を取得する画像取得装置において、X線を2次元的にサンプリングすることにより画像を取得する画像取得手段と、前記画像取得手段と前記被写体の間に配置され、前記画像取得手段によってサンプリングされるサンプリング周波数の30%以上かつ40%以下となる間隔の散乱線除去グリッドと、前記散乱線除去グリッドに起因するグリッド縞を除去する画像処理手段と、撮影部位の情報に基づいて前記画像処理手段でグリッド縞を除去するか自動に選択する手段と、を備えることを特徴とする画像取得装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第4500400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、前述した(2)式は一見複雑であるが、そのイメージは図20に示すように、単にナイキスト周波数fおよびf=0を壁として空間周波数f’が反射するだけのことである。
【0013】
例えば、本数fが60[本/cm]のグリッドに対するNは0(零)であり、f’は次の(4)式に示すように6.66[本/cm]となる。
【0014】
【数4】

【0015】
一方、人体を透過した放射線により示される放射線画像を示す画像情報をフーリエ変換して周波数空間にマッピングすることにより得られる人体信号の空間周波数の上限値fμは一般に低周波数であるため、部位にもよるが、20[本/cm]以上の情報は殆どないと考えられる。この上限値fμのナイキスト周波数fに対する比をμ(例えば、μ=0.6)とすると、次の(6)式を満足するとき、本数f’周辺の周波数の信号を画像処理で除去しても人体信号をあまり損ねることはない。
【0016】
【数5】

【0017】
なお、一例として図20に示すように、一般に、直接変換方式の放射線検出器では、200[本/cm]以上に渡って感度を有しており、間接変換方式の放射線検出器では、f≒80[本/cm]程度まではシンチレータが感度を有している(信号強度が0(零)より大きい)ため、直接変換方式の放射線検出器ではいつでも、間接変換方式の放射線検出器では次の式により表される高調波(例えば、N=2の場合、(2)式において本数fをf2G=2fとして解いたf2G’)が(5)式を満足する必要がある。
【0018】
【数6】

【0019】
間接変換方式の放射線検出器において、比較的本数の多いグリッド(例えば、f≒2f)を選択すれば、高調波は感度のない高周波数に追いやることができるが、折り返し周波数f’が無視できない低周波数(f’≒0<μf)に位置してしまう。比較的本数の少ないグリッド(例えば、f≒f)を選択すれば、折り返し周波数f’は高周波数となるが、シンチレータが感度を持つ周波数帯に高調波f2G’が来るため、その折り返し周波数f2G’が無視できない低周波数(f2G’≒0<μf)に位置してしまう。
【0020】
これに対し、特許文献1に記載の技術のように、高調波がNf’>fμ’を満足するようなグリッド、若しくは画素間隔を選択する技術もあるが、画素間隔等の設計が制約を受けることになる。
【0021】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、グリッドや放射線検出器に構成上の制約を設けることなく、容易にモアレ縞の発生を防止することのできる放射線画像撮影システムおよびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
ここで、本発明の原理について説明する。
【0023】
本発明では、グリッドによるモアレ縞を高調波も含めて高周波側に追いやることで放射線画像上の副作用を最小化するものである。
【0024】
一例として図20に示すように、直接変換方式の放射線検出器では潜像を電場で引張るため、200[本/cm]程度まで信号が得られるが、間接変換方式の放射線検出器では一旦光を経由するため、ぼけるので、80[本/cm]程度までしか信号が得られない。
【0025】
本発明では、一例として図21および図22に示すように、2次元の周波数空間では、斜め方向の信号の折り返しが1次元の周波数空間より複雑になることを利用する。
【0026】
ここで、斜め方向の空間周波数は、斜め方向の矢印を縦軸および横軸に対するナイキスト周波数fで囲まれる矩形の境界で折り返す。グリッドを縦縞の方向から角度θだけ傾けて斜めに設置すると、横方向の本数はfcosθ、縦方向の周波数はfsinθとなる。これは折り返すと画像上は横・縦の空間周波数がそれぞれ次の(7)式および(8)式で表される。
【0027】
【数7】

【0028】
【数8】

【0029】
(7)式および(8)式に示すように、この場合、1次元の周波数空間の場合に対して、sinθおよびcosθが各々付加されただけである。
【0030】
ここで、f’は次の式で表されるが、このとき、f’>μfを満足するように、放射線検出器の画素間隔およびグリッドの本数[本/cm]から角度θを演算する。
【0031】
【数9】

【0032】
これらの演算式は高調波(2×f,3×f,・・・)でも同様であり、高調波N毎に上記を満足する角度θの範囲は異なる。
【0033】
また、人体信号を表す最適なμは撮影部位毎に異なる。例えば、f=33.3[本/cm]のグリッドの場合、軟部構造(低周波)の多い胸部ではμが0.4程度であり、骨梁(高周波)の多い整形ではμが0.6程度である。このように、撮影部位毎にμが異なるため、上記演算によって得られる角度θの範囲も撮影部位毎に異なる。以下、μが0.6の場合を例に説明するが、μが0.6以外についても同様である。
【0034】
60[本/cm]のグリッドの場合、図25に示すように、放射線検出器の画素の配列方向に対して傾けずに設置すると、放射線画像上の周波数は6.66[本/cm]となり、低周波数の模様と人体信号を区別できず、除去が困難であるが、45度傾けて設置した場合には、放射線画像上の周波数はfGX’=fGY’=24.2[本/cm]となるので、f’=34.3[本/cm]となり、f’>μf=20[本/cm]を満足する。なお、第2高調波は、120[本/cm]として同様に演算できるが、それ以前にシンチレータの高周波の信号強度がほぼ0(零)なので、画像には現れない。
【0035】
一方、40[本/cm]のグリッドの場合、角度θ=0では第2高調波の80[本/cm]が13.33[本/cm]に画像化されるので、除去できなくなるが、角度θが次の条件を満足すれば、第2高調波の80[本/cm]も含めて除去可能な範囲の縞となる。(例えば、θ=45度は、sinθ=0.707なので、(9)式の範囲には含まれない。)
【0036】
【数10】

【0037】
なお、図23に示すように、折り返しの軌跡が原点を中心とする半径μfの円に接するようにすると、高調波が円内に含まれないようになるので、本数の少ないグリッドを使った場合の3倍高調波までも高周波側に追いやることができる。ここで、「半径μfの円に接する」とは、次の(10)式を満足する角度θだけ傾けた場合である。
【0038】
【数11】

【0039】
ただし、μ<1なので、(10)式の角度θは30度より小さい。図24に示すように、μ=0.6の場合、θ=17.45度となり、例えば、放射線検出器の画素間隔が150μmで、f/cosθ=35[本/cm]のグリッドの場合、5倍高調波までは高周波側に追いやることができる。
【0040】
なお、図25には、60[本/cm]のグリッドを45度傾けて設置した場合と傾けない場合の2次元周波数空間が例示されており、図26には、40[本/cm]のグリッドをsinθ=0.25だけ傾けて設置した場合の2次元周波数空間が例示されており、図27には、40[本/cm]のグリッドをsinθ=0.6だけ傾けて設置した場合の2次元周波数空間が例示されている。
【0041】
ここまでの説明は、縦軸および横軸を逆にしても同様であり、この場合、(9)式および(10)式は、それぞれsinθをcosθに置き換えればよく、円に接する角度θは60度より大きくなる。
【0042】
放射線検出器とグリッドとの相対角度を角度θとすることにより、モアレ縞を人体信号より高周波側に追いやることができる結果、人体信号とモアレ縞との周波数域を異ならせることができるが、放射線画像の高周波域にはモアレ縞が発生するため、当該モアレ縞を除去する必要がある。このモアレ縞の除去対象とする空間周波数は、放射線画像をフーリエ変換してピーク値(極大値)を探すことで容易に求めることができる。この際、除去対象となる空間周波数が2次元周波数空間上で特定されれば、その部分の通過を阻止する2次元バンド・ストップ・フィルタは簡単に作成することができる。この場合、2次元ハイ・パス・フィルタを用いてもよいが、フィルタリングによる副作用を最小化するため、できるだけ周波数帯を絞ったバンド・ストップ・フィルタを用いることが好ましい。
【0043】
画素間隔は放射線検出器で決まっており、μは画質評価等によって決定した値を固定値で保持しておくものとすると、使用するグリッドの本数に応じて、角度θの範囲を決定することができる。
【0044】
なお、以上の説明では、モアレ縞を人体信号より高周波側に追いやることにより、人体信号とモアレ縞との周波数域を異ならせる場合について説明したが、モアレ縞の全体を必ずしも人体信号より高周波側に追いやる必要はなく、モアレ縞の空間周波数域を人体信号の空間周波数域の重心位置より離れる方向に移動させることによって、モアレ縞を除去した場合の人体信号への影響を軽減することができる。
【0045】
以上の原理に基づき、請求項1に記載の放射線画像撮影システムは、放射線または放射線が変換された光に対して感度を有する画素が予め定められた画素間隔で2次元状に設けられた放射線検出器が設けられ、撮影面に照射された放射線により示される画像を撮影する放射線画像撮影装置と、放射線を吸収する吸収部材が予め定められた間隔で設けられ、前記放射線検出器より放射線源側に配置されたグリッドと、前記放射線検出器により撮影される放射線画像に前記グリッドの吸収部材によって発生するモアレ縞の空間周波数が予め定められた空間周波数以上となる、前記放射線検出器の画素の配列方向に対する前記グリッドの傾斜角度を取得する取得手段と、前記グリッドと前記放射線検出器との間の相対角度を前記取得手段によって取得された傾斜角度とするための予め定められた処理を実行する実行手段と、を有している。
【0046】
請求項1記載の放射線画像撮影システムによれば、放射線または放射線が変換された光に対して感度を有する画素が予め定められた画素間隔で2次元状に設けられた放射線検出器が設けられた放射線画像撮影装置により、撮影面に照射された放射線により示される画像が撮影される。また、本発明では、放射線を吸収する吸収部材が予め定められた間隔で設けられたグリッドが、前記放射線検出器より放射線源側に配置される。
【0047】
ここで、本発明では、取得手段により、前記放射線検出器により撮影される放射線画像に前記グリッドの吸収部材によって発生するモアレ縞の空間周波数が予め定められた空間周波数以上となる、前記放射線検出器の画素の配列方向に対する前記グリッドの傾斜角度が取得される。そして、本発明では、実行手段により、前記グリッドと前記放射線検出器との間の相対角度を前記取得手段によって取得された傾斜角度とするための予め定められた処理が実行される。
【0048】
このように、請求項1に記載の放射線画像撮影システムによれば、放射線検出器により撮影される放射線画像にグリッドの吸収部材によって発生するモアレ縞の空間周波数が予め定められた空間周波数以上となる、放射線検出器の画素の配列方向に対するグリッドの傾斜角度を取得し、グリッドと放射線検出器との間の相対角度を取得した傾斜角度とするための予め定められた処理を実行しているので、グリッドや放射線検出器に構成上の制約を設けることなく、容易にモアレ縞の発生を防止することができる。
【0049】
なお、本発明は、請求項2に記載の発明のように、前記予め定められた空間周波数が、人体を表す放射線画像をフーリエ変換して周波数空間にマッピングすることにより得られる人体信号の空間周波数であるものとしてもよい。これにより、より確実にモアレ縞の発生を防止することができる。
【0050】
特に、請求項2に記載の発明は、請求項3に記載の発明のように、前記人体信号の空間周波数が、前記放射線画像撮影装置により撮影対象とされている部位毎に予め定められていてもよい。これにより、より確実にモアレ縞の発生を防止することができる。
【0051】
特に、請求項2または請求項3に記載の発明は、請求項4に記載の発明のように、前記取得手段が、fを前記グリッドに設けられた前記吸収部材の配列方向に対する1cm当たりの本数とし、fを前記放射線検出器の前記画素間隔によって規定されるナイキスト周波数[本/cm]とし、θを前記グリッドと前記放射線検出器との相対角度[度]として、次の演算式により得られる空間周波数f’と、前記人体信号の空間周波数の上限値fμのナイキスト周波数fに対する比μと、を用いて、f’>μfを満足する角度θを演算することにより、前記傾斜角度を取得してもよい。
【0052】
【数12】

【0053】
また、本発明は、請求項5に記載の発明のように、前記放射線画像撮影装置と前記グリッドとの間の相対角度を変更する変更手段をさらに有し、前記実行手段が、前記予め定められた処理として、前記相対角度が前記取得手段によって取得された傾斜角度となるように前記変更手段を制御する処理を実行してもよい。これにより、人手によって放射線画像撮影装置とグリッドとの間の相対角度を設定する場合に比較して、より利便性を向上させることができる。
【0054】
また、本発明は、請求項6に記載の発明のように、前記実行手段が、前記予め定められた処理として、前記取得手段によって取得された傾斜角度を報知する処理を実行してもよい。これにより、当該傾斜角度を容易に把握することができる。
【0055】
さらに、本発明は、請求項7に記載の発明のように、前記放射線画像撮影装置によって撮影された放射線画像に前記吸収部材によって発生するモアレ縞の空間周波数を特定する特定手段と、前記特定手段によって特定された空間周波数の成分を前記放射線画像撮影装置によって撮影された放射線画像から除去する画像処理を行う画像処理手段と、をさらに有してもよい。これにより、より確実にモアレ縞の発生を防止することができる。
【0056】
一方、上記目的を達成するために、請求項8に記載の放射線画像撮影システムは、放射線または放射線が変換された光に対して感度を有する画素が予め定められた画素間隔で2次元状に設けられた放射線検出器が設けられ、撮影面に照射された放射線により示される画像を撮影する放射線画像撮影装置と、前記放射線検出器により撮影される放射線画像に、放射線を吸収する吸収部材が予め定められた間隔で設けられ、前記放射線検出器より放射線源側に配置されたグリッドの吸収部材によって発生するモアレ縞の空間周波数を予め定められた空間周波数以上とすることのできる前記グリッドの種類、および前記放射線検出器の画素の配列方向に対する前記グリッドの傾斜角度を取得する取得手段と、前記取得手段によって取得された前記グリッドの種類および前記傾斜角度を報知する報知手段と、を有している。
【0057】
請求項8記載の放射線画像撮影システムによれば、放射線または放射線が変換された光に対して感度を有する画素が予め定められた画素間隔で2次元状に設けられた放射線検出器が設けられた放射線画像撮影装置により、撮影面に照射された放射線により示される画像が撮影される。
【0058】
ここで、本発明では、取得手段により、前記放射線検出器により撮影される放射線画像に、放射線を吸収する吸収部材が予め定められた間隔で設けられ、前記放射線検出器より放射線源側に配置されたグリッドの吸収部材によって発生するモアレ縞の空間周波数を予め定められた空間周波数以上とすることのできる前記グリッドの種類、および前記放射線検出器の画素の配列方向に対する前記グリッドの傾斜角度が取得され、報知手段により、前記取得手段によって取得された前記グリッドの種類および前記傾斜角度が報知される。
【0059】
このように、請求項8に記載の放射線画像撮影システムによれば、放射線画像にグリッドの吸収部材によって発生するモアレ縞の空間周波数を予め定められた空間周波数以上とすることのできる前記グリッドの種類、および放射線検出器の画素の配列方向に対する前記グリッドの傾斜角度を取得し、取得した前記グリッドの種類および前記傾斜角度を報知しているので、グリッドや放射線検出器に構成上の制約を設けることなく、容易にモアレ縞の発生を防止することができる。
【0060】
なお、請求項8に記載の発明は、請求項9に記載の発明のように、前記取得手段が、前記放射線画像撮影装置により撮影対象とされている部位毎に前記グリッドの種類および前記傾斜角度を取得してもよい。これにより、より確実にモアレ縞の発生を防止することができる。
【0061】
一方、上記目的を達成するために、請求項10に記載のプログラムは、放射線または放射線が変換された光に対して感度を有する画素が予め定められた画素間隔で2次元状に設けられた放射線検出器が設けられ、撮影面に照射された放射線により示される画像を撮影する放射線画像撮影装置と、放射線を吸収する吸収部材が予め定められた間隔で設けられ、前記放射線検出器より放射線源側に配置されたグリッドと、を有する放射線画像撮影システムにおいて実行されるプログラムであって、コンピュータを、前記放射線検出器により撮影される放射線画像に前記グリッドの吸収部材によって発生するモアレ縞の空間周波数が予め定められた空間周波数以上となる、前記放射線検出器の画素の配列方向に対する前記グリッドの傾斜角度を取得する取得手段と、前記グリッドと前記放射線検出器との間の相対角度を前記取得手段によって取得された傾斜角度とするための予め定められた処理を実行する実行手段と、として機能させるためのものである。
【0062】
従って、請求項10に記載の発明によれば、コンピュータを請求項1に記載の発明と同様に作用させることができるので、請求項1に記載の発明と同様に、グリッドや放射線検出器に構成上の制約を設けることなく、容易にモアレ縞の発生を防止することができる。
【発明の効果】
【0063】
第1の発明によれば、放射線検出器により撮影される放射線画像にグリッドの吸収部材によって発生するモアレ縞の空間周波数が予め定められた空間周波数以上となる、放射線検出器の画素の配列方向に対するグリッドの傾斜角度を取得し、グリッドと放射線検出器との間の相対角度を取得した傾斜角度とするための予め定められた処理を実行しているので、グリッドや放射線検出器に構成上の制約を設けることなく、容易にモアレ縞の発生を防止することができる、という効果が得られる。
【0064】
また、第2の発明によれば、放射線画像にグリッドの吸収部材によって発生するモアレ縞の空間周波数を予め定められた空間周波数以上とすることのできる前記グリッドの種類、および放射線検出器の画素の配列方向に対する前記グリッドの傾斜角度を取得し、取得した前記グリッドの種類および前記傾斜角度を報知しているので、グリッドや放射線検出器に構成上の制約を設けることなく、容易にモアレ縞の発生を防止することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】実施の形態に係る放射線情報システムの構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態に係る放射線画像撮影システムの放射線撮影室における各装置の配置状態の一例を示す側面図である。
【図3】実施の形態に係る放射線検出器の3画素部分の概略構成を示す断面模式図である。
【図4】実施の形態に係る放射線検出器の1画素部分の信号出力部の構成を概略的に示した断面側面図である。
【図5】実施の形態に係る放射線検出器の構成を示す平面図である。
【図6】実施の形態に係る保持部の構成を示す平面図および側面図である。
【図7】実施の形態に係る電子カセッテの構成を示す斜視図である。
【図8】実施の形態に係る電子カセッテの構成を示す断面側面図である。
【図9】実施の形態に係る放射線画像撮影システムの電気系の要部構成を示すブロック図である。
【図10】実施の形態に係る画像生成部の構成を示す回路図である。
【図11】実施の形態に係る放射線照射検出部の構成を示す回路図である。
【図12】実施の形態に係る回転角度情報の構成を示す模式図である。
【図13】実施の形態に係る放射線画像撮影処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図14】実施の形態に係る初期情報入力画面の一例を示す概略図である。
【図15】実施の形態に係るカセッテ撮影処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図16】放射線画像の表面読取方式と裏面読取方式を説明するための断面側面図である。
【図17】実施の形態に係る保持部の他の構成例を示す平面図および側面図である。
【図18】実施の形態に係るグリッドおよび放射線検出器の他の構成例を示す平面図である。
【図19】実施の形態に係る報知画面の表示状態を示す概略図である。
【図20】課題の説明に供する図であり、一次元の周波数空間の一例を示すグラフである。
【図21】発明の原理の説明に供する図であり、二次元の周波数空間の一例を示すグラフである。
【図22】発明の原理の説明に供する図であり、二次元の周波数空間の他の例を示すグラフである。
【図23】発明の原理の説明に供する図であり、二次元の周波数空間の他の例を示すグラフである。
【図24】発明の原理の説明に供する図であり、二次元の周波数空間の他の例を示すグラフである。
【図25】発明の原理の説明に供する図であり、二次元の周波数空間の他の例を示すグラフである。
【図26】発明の原理の説明に供する図であり、二次元の周波数空間の他の例を示すグラフである。
【図27】発明の原理の説明に供する図であり、二次元の周波数空間の他の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0066】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、ここでは、本発明を、病院における放射線科部門で取り扱われる情報を統括的に管理するシステムである放射線情報システムに適用した場合の形態例について説明する。
【0067】
まず、図1を参照して、本実施の形態に係る放射線情報システム(以下、「RIS」(Radiology Information System)という。)100の構成について説明する。
【0068】
RIS100は、放射線科部門内における、診療予約、診断記録等の情報管理を行うためのシステムであり、病院情報システム(以下、「HIS」(Hospital Information System)という。)の一部を構成する。
【0069】
RIS100は、複数台の撮影依頼端末装置(以下、「端末装置」という。)140、RISサーバ150、および病院内の放射線撮影室(あるいは手術室)の個々に設置された放射線画像撮影システム(以下、「撮影システム」という。)104を有しており、これらが有線や無線のLAN(Local Area Network)等から成る病院内ネットワーク102に各々接続されて構成されている。なお、RIS100は、同じ病院内に設けられたHISの一部を構成しており、病院内ネットワーク102には、HIS全体を管理するHISサーバ(図示省略。)も接続されている。
【0070】
端末装置140は、医師や放射線技師が、診断情報や施設予約の入力、閲覧等を行うためのものであり、放射線画像の撮影依頼や撮影予約もこの端末装置140を介して行われる。各端末装置140は、表示装置を有するパーソナル・コンピュータを含んで構成され、RISサーバ150と病院内ネットワーク102を介して相互通信が可能とされている。
【0071】
一方、RISサーバ150は、各端末装置140からの撮影依頼を受け付け、撮影システム104における放射線画像の撮影スケジュールを管理するものであり、データベース150Aを含んで構成されている。
【0072】
データベース150Aは、患者(被検者)の属性情報(氏名、性別、生年月日、年齢、血液型、体重、患者ID(Identification)等)、病歴、受診歴、過去に撮影した放射線画像等の患者に関する情報、撮影システム104で用いられる、後述する電子カセッテ40の識別番号(ID情報)、型式、サイズ、感度、使用開始年月日、使用回数等の電子カセッテ40に関する情報、および電子カセッテ40を用いて放射線画像を撮影する環境、すなわち、電子カセッテ40を使用する環境(一例として、放射線撮影室や手術室等)を示す環境情報を含んで構成されている。
【0073】
撮影システム104は、RISサーバ150からの指示に応じて医師や放射線技師の操作により放射線画像の撮影を行う。撮影システム104は、放射線源121(図2も参照。)から曝射条件に従った線量とされた放射線X(図7も参照。)を被検者に照射する放射線発生装置120と、被検者の撮影対象部位を透過した放射線Xを吸収して電荷を発生し、発生した電荷量に基づいて放射線画像を示す画像情報を生成する放射線検出器20(図7も参照。)を内蔵する電子カセッテ40と、電子カセッテ40に内蔵されているバッテリを充電するクレードル130と、電子カセッテ40および放射線発生装置120を制御するコンソール110と、を備えている。
【0074】
コンソール110は、RISサーバ150からデータベース150Aに含まれる各種情報を取得して後述するHDD116(図9参照。)に記憶し、必要に応じて当該情報を用いて、電子カセッテ40および放射線発生装置120の制御を行う。
【0075】
図2には、本実施の形態に係る撮影システム104の放射線撮影室180における各装置の配置状態の一例が示されている。
【0076】
同図に示すように、放射線撮影室180には、立位での放射線撮影を行う際に用いられる立位台160と、臥位での放射線撮影を行う際に用いられる臥位台164とが設置されており、立位台160の前方空間は立位での放射線撮影を行う際の被検者の撮影位置170とされ、臥位台164の上方空間は臥位での放射線撮影を行う際の被検者の撮影位置172とされている。
【0077】
立位台160には電子カセッテ40およびグリッド46を保持する保持部162が設けられており、立位での放射線画像の撮影を行う際には、電子カセッテ40およびグリッド46が保持部162に保持される。同様に、臥位台164には電子カセッテ40およびグリッド46を保持する保持部166が設けられており、臥位での放射線画像の撮影を行う際には、電子カセッテ40およびグリッド46が保持部166に保持される。
【0078】
なお、グリッド46は、被検者によって散乱した散乱線を除去するためのものであり、放射線の吸収率が高い物質(本実施の形態では、鉛)と低い物質(本実施の形態では、空気)とを一定間隔で交互に平行に並べて構成されている。
【0079】
また、放射線撮影室180には、単一の放射線源121からの放射線によって立位での放射線撮影も臥位での放射線撮影も可能とするために、放射線源121を、水平な軸回り(図2の矢印a方向)に回動可能で、鉛直方向(図2の矢印b方向)に移動可能で、さらに水平方向(図2の矢印c方向)に移動可能に支持する支持移動機構124が設けられている。ここで、支持移動機構124は、放射線源121を水平な軸回りに回動させる駆動源と、放射線源121を鉛直方向に移動させる駆動源と、放射線源121を水平方向に移動させる駆動源を各々備えている(何れも図示省略。)。
【0080】
一方、クレードル130には、電子カセッテ40を収納可能な収容部130Aが形成されている。
【0081】
電子カセッテ40は、未使用時にはクレードル130の収容部130Aに収納された状態で内蔵されているバッテリに充電が行われ、放射線画像の撮影時には放射線技師等によってクレードル130から取り出され、撮影姿勢が立位であれば立位台160の保持部162に保持され、撮影姿勢が臥位であれば臥位台164の保持部166に保持される。
【0082】
ここで、本実施の形態に係る撮影システム104では、放射線発生装置120とコンソール110との間、および電子カセッテ40とコンソール110との間で、無線通信によって各種情報の送受信を行う。
【0083】
次に、本実施の形態に係る放射線検出器20の構成について説明する。図3は、本実施の形態に係る放射線検出器20の3画素部分の構成を概略的に示す断面模式図である。
【0084】
同図に示すように、本実施の形態に係る放射線検出器20は、絶縁性の基板1上に、信号出力部14、センサ部13、およびシンチレータ8が順次積層しており、信号出力部14、センサ部13により画素が構成されている。画素は、基板1上に複数配列されており、各画素における信号出力部14とセンサ部13とが重なりを有するように構成されている。
【0085】
シンチレータ8は、センサ部13上に透明絶縁膜7を介して形成されており、上方(基板1の反対側)または下方から入射してくる放射線を光に変換して発光する蛍光体を成膜したものである。このようなシンチレータ8を設けることで、被写体を透過した放射線を吸収して発光することになる。
【0086】
シンチレータ8が発する光の波長域は、可視光域(波長360nm〜830nm)であることが好ましく、この放射線検出器20によってモノクロ撮像を可能とするためには、緑色の波長域を含んでいることがより好ましい。
【0087】
シンチレータ8に用いる蛍光体としては、具体的には、放射線としてX線を用いて撮像する場合、ヨウ化セシウム(CsI)を含むものが好ましく、X線照射時の発光スペクトルが420nm〜700nmにあるCsI(Tl)(タリウムが添加されたヨウ化セシウム)を用いることが特に好ましい。なお、CsI(Tl)の可視光域における発光ピーク波長は565nmである。
【0088】
センサ部13は、上部電極6、下部電極2、および当該上下の電極間に配置された光電変換膜4を有し、光電変換膜4は、シンチレータ8が発する光を吸収して電荷が発生する有機光電変換材料により構成されている。
【0089】
上部電極6は、シンチレータ8により生じた光を光電変換膜4に入射させる必要があるため、少なくともシンチレータ8の発光波長に対して透明な導電性材料で構成することが好ましく、具体的には、可視光に対する透過率が高く、抵抗値が小さい透明導電性酸化物(TCO;Transparent Conducting Oxide)を用いることが好ましい。なお、上部電極6としてAuなどの金属薄膜を用いることもできるが、透過率を90%以上得ようとすると抵抗値が増大し易いため、TCOの方が好ましい。例えば、ITO、IZO、AZO、FTO、SnO、TiO、ZnO等を好ましく用いることができ、プロセス簡易性、低抵抗性、透明性の観点からはITOが最も好ましい。なお、上部電極6は、全画素で共通の一枚構成としてもよく、画素毎に分割してもよい。
【0090】
光電変換膜4は、有機光電変換材料を含み、シンチレータ8から発せられた光を吸収し、吸収した光に応じた電荷を発生する。このように有機光電変換材料を含む光電変換膜4であれば、可視域にシャープな吸収スペクトルを持ち、シンチレータ8による発光以外の電磁波が光電変換膜4に吸収されることがほとんどなく、X線等の放射線が光電変換膜4で吸収されることによって発生するノイズを効果的に抑制することができる。
【0091】
光電変換膜4を構成する有機光電変換材料は、シンチレータ8で発光した光を最も効率よく吸収するために、その吸収ピーク波長が、シンチレータ8の発光ピーク波長と近いほど好ましい。有機光電変換材料の吸収ピーク波長とシンチレータ8の発光ピーク波長とが一致することが理想的であるが、双方の差が小さければシンチレータ8から発された光を十分に吸収することが可能である。具体的には、有機光電変換材料の吸収ピーク波長と、シンチレータ8の放射線に対する発光ピーク波長との差が、10nm以内であることが好ましく、5nm以内であることがより好ましい。
【0092】
このような条件を満たすことが可能な有機光電変換材料としては、例えばキナクリドン系有機化合物およびフタロシアニン系有機化合物が挙げられる。例えばキナクリドンの可視域における吸収ピーク波長は560nmであるため、有機光電変換材料としてキナクリドンを用い、シンチレータ8の材料としてCsI(Tl)を用いれば、上記ピーク波長の差を5nm以内にすることが可能となり、光電変換膜4で発生する電荷量をほぼ最大にすることができる。
【0093】
次に、本実施の形態に係る放射線検出器20に適用可能な光電変換膜4について具体的に説明する。
【0094】
本実施の形態に係る放射線検出器20における電磁波吸収/光電変換部位は、1対の電極2,6と、当該電極2,6間に挟まれた有機光電変換膜4を含む有機層により構成することができる。この有機層は、より具体的には、電磁波を吸収する部位、光電変換部位、電子輸送部位、正孔輸送部位、電子ブロッキング部位、正孔ブロッキング部位、結晶化防止部位、電極、および層間接触改良部位等の積み重ね、もしくは混合により形成することができる。
【0095】
上記有機層は、有機p型化合物または有機n型化合物を含有することが好ましい。
【0096】
有機p型半導体(化合物)は、主に正孔輸送性有機化合物に代表されるドナー性有機半導体(化合物)であり、電子を供与しやすい性質がある有機化合物をいう。さらに詳しくは2つの有機材料を接触させて用いたときにイオン化ポテンシャルの小さい方の有機化合物をいう。したがって、ドナー性有機化合物としては、電子供与性のある有機化合物であれば、いずれの有機化合物も使用可能である。
【0097】
有機n型半導体(化合物)は、主に電子輸送性有機化合物に代表されるアクセプター性有機半導体(化合物)であり、電子を受容しやすい性質がある有機化合物をいう。さらに詳しくは、2つの有機化合物を接触させて用いたときに電子親和力の大きい方の有機化合物をいう。したがって、アクセプター性有機化合物は、電子受容性のある有機化合物であれば、いずれの有機化合物も使用可能である。
【0098】
この有機p型半導体および有機n型半導体として適用可能な材料、および光電変換膜4の構成については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため、説明を省略する。なお、光電変換膜4は、さらにフラーレン若しくはカーボンナノチューブを含有させて形成してもよい。
【0099】
光電変換膜4の厚みは、シンチレータ8からの光を吸収する点では膜厚は大きいほど好ましいが、ある程度以上厚くなると光電変換膜4の両端から印加されるバイアス電圧により光電変換膜4に発生する電界の強度が低下して電荷が収集できなくなるため、30nm以上300nm以下が好ましく、より好ましくは、50nm以上250nm以下、特に好ましくは80nm以上200nm以下である。
【0100】
なお、図3に示す放射線検出器20では、光電変換膜4は、全画素で共通の一枚構成であるが、画素毎に分割してもよい。
【0101】
下部電極2は、画素毎に分割された薄膜とする。下部電極2は、透明または不透明の導電性材料で構成することができ、アルミニウム、銀等を好適に用いることができる。
【0102】
下部電極2の厚みは、例えば、30nm以上300nm以下とすることができる。
【0103】
センサ部13では、上部電極6と下部電極2の間に所定のバイアス電圧を印加することで、光電変換膜4で発生した電荷(正孔、電子)のうちの一方を上部電極6に移動させ、他方を下部電極2に移動させることができる。本実施の形態の放射線検出器20では、上部電極6に配線が接続され、この配線を介してバイアス電圧が上部電極6に印加されるものとする。また、バイアス電圧は、光電変換膜4で発生した電子が上部電極6に移動し、正孔が下部電極2に移動するように極性が決められているものとするが、この極性は逆であってもよい。
【0104】
各画素を構成するセンサ部13は、少なくとも下部電極2、光電変換膜4、および上部電極6を含んでいればよいが、暗電流の増加を抑制するため、電子ブロッキング膜3および正孔ブロッキング膜5の少なくともいずれかを設けることが好ましく、両方を設けることがより好ましい。
【0105】
電子ブロッキング膜3は、下部電極2と光電変換膜4との間に設けることができ、下部電極2と上部電極6間にバイアス電圧を印加したときに、下部電極2から光電変換膜4に電子が注入されて暗電流が増加してしまうのを抑制することができる。
【0106】
電子ブロッキング膜3には、電子供与性有機材料を用いることができる。
【0107】
実際に電子ブロッキング膜3に用いる材料は、隣接する電極の材料および隣接する光電変換膜4の材料等に応じて選択すればよく、隣接する電極の材料の仕事関数(Wf)より1.3eV以上電子親和力(Ea)が大きく、かつ、隣接する光電変換膜4の材料のイオン化ポテンシャル(Ip)と同等のIpもしくはそれより小さいIpを持つものが好ましい。この電子供与性有機材料として適用可能な材料については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため、説明を省略する。
【0108】
電子ブロッキング膜3の厚みは、暗電流抑制効果を確実に発揮させるとともに、センサ部13の光電変換効率の低下を防ぐため、10nm以上200nm以下が好ましく、さらに好ましくは30nm以上150nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。
【0109】
正孔ブロッキング膜5は、光電変換膜4と上部電極6との間に設けることができ、下部電極2と上部電極6間にバイアス電圧を印加したときに、上部電極6から光電変換膜4に正孔が注入されて暗電流が増加してしまうのを抑制することができる。
【0110】
正孔ブロッキング膜5には、電子受容性有機材料を用いることができる。
【0111】
正孔ブロッキング膜5の厚みは、暗電流抑制効果を確実に発揮させるとともに、センサ部13の光電変換効率の低下を防ぐため、10nm以上200nm以下が好ましく、さらに好ましくは30nm以上150nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。
【0112】
実際に正孔ブロッキング膜5に用いる材料は、隣接する電極の材料および隣接する光電変換膜4の材料等に応じて選択すればよく、隣接する電極の材料の仕事関数(Wf)より1.3eV以上イオン化ポテンシャル(Ip)が大きく、かつ、隣接する光電変換膜4の材料の電子親和力(Ea)と同等のEaもしくはそれより大きいEaを持つものが好ましい。この電子受容性有機材料として適用可能な材料については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため、説明を省略する。
【0113】
なお、光電変換膜4で発生した電荷のうち、正孔が上部電極6に移動し、電子が下部電極2に移動するようにバイアス電圧を設定する場合には、電子ブロッキング膜3と正孔ブロッキング膜5の位置を逆にすればよい。また、電子ブロッキング膜3と正孔ブロッキング膜5は両方設けなくてもよく、いずれかを設けておけば、ある程度の暗電流抑制効果を得ることができる。
【0114】
各画素の下部電極2下方の基板1の表面には信号出力部14が形成されている。図4には、信号出力部14の構成が概略的に示されている。
【0115】
同図に示すように、本実施の形態に係る信号出力部14は、下部電極2に対応して、下部電極2に移動した電荷を蓄積するコンデンサ9と、コンデンサ9に蓄積された電荷を電気信号に変換して出力する電界効果型薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、以下、単に薄膜トランジスタという場合がある。)10が形成されている。コンデンサ9および薄膜トランジスタ10の形成された領域は、平面視において下部電極2と重なる部分を有しており、このような構成とすることで、各画素における信号出力部14とセンサ部13とが厚さ方向で重なりを有することとなる。なお、放射線検出器20(画素)の平面積を最小にするために、コンデンサ9および薄膜トランジスタ10の形成された領域が下部電極2によって完全に覆われていることが望ましい。
【0116】
コンデンサ9は、基板1と下部電極2との間に設けられた絶縁膜11を貫通して形成された導電性材料の配線を介して対応する下部電極2と電気的に接続されている。これにより、下部電極2で捕集された電荷をコンデンサ9に移動させることができる。
【0117】
薄膜トランジスタ10は、ゲート電極15、ゲート絶縁膜16、および活性層(チャネル層)17が積層され、さらに、活性層17上にソース電極18とドレイン電極19が所定の間隔を開けて形成されている。
【0118】
活性層17は、例えば、アモルファスシリコンや非晶質酸化物、有機半導体材料、カーボンナノチューブなどにより形成することができる。なお、活性層17を構成する材料は、これらに限定されるものではない。
【0119】
活性層17を構成する非晶質酸化物としては、In、GaおよびZnのうちの少なくとも1つを含む酸化物(例えばIn−O系)が好ましく、In、GaおよびZnのうちの少なくとも2つを含む酸化物(例えばIn−Zn−O系、In−Ga−O系、Ga−Zn−O系)がより好ましく、In、GaおよびZnを含む酸化物が特に好ましい。In−Ga−Zn−O系非晶質酸化物としては、結晶状態における組成がInGaO(ZnO)(mは6未満の自然数)で表される非晶質酸化物が好ましく、特に、InGaZnOがより好ましい。
【0120】
活性層17を構成可能な有機半導体材料としては、フタロシアニン化合物や、ペンタセン、バナジルフタロシアニン等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。なお、フタロシアニン化合物の構成については、特開2009−212389号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
【0121】
薄膜トランジスタ10の活性層17を非晶質酸化物や有機半導体材料、カーボンナノチューブで形成したものとすれば、X線等の放射線を吸収せず、あるいは吸収したとしても極めて微量に留まるため、信号出力部14におけるノイズの発生を効果的に抑制することができる。
【0122】
また、活性層17をカーボンナノチューブで形成した場合、薄膜トランジスタ10のスイッチング速度を高速化することができ、また、可視光域での光の吸収度合の低い薄膜トランジスタ10を形成できる。なお、カーボンナノチューブで活性層17を形成する場合、活性層17に極微量の金属性不純物を混入するだけで、薄膜トランジスタ10の性能は著しく低下するため、遠心分離などにより極めて高純度のカーボンナノチューブを分離・抽出して形成する必要がある。
【0123】
ここで、薄膜トランジスタ10の活性層17を構成する非晶質酸化物、有機半導体材料、カーボンナノチューブや、光電変換膜4を構成する有機光電変換材料は、いずれも低温での成膜が可能である。従って、基板1としては、半導体基板、石英基板、およびガラス基板等の耐熱性の高い基板に限定されず、プラスチック等の可撓性基板や、アラミド、バイオナノファイバを用いることもできる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の可撓性基板を用いることができる。このようなプラスチック製の可撓性基板を用いれば、軽量化を図ることもでき、例えば持ち運び等に有利となる。
【0124】
また、基板1には、絶縁性を確保するための絶縁層、水分や酸素の透過を防止するためのガスバリア層、平坦性あるいは電極等との密着性を向上するためのアンダーコート層等を設けてもよい。
【0125】
一方、アラミドは、200度以上の高温プロセスを適用できるために透明電極材料を高温硬化させて低抵抗化でき、また、ハンダのリフロー工程を含むドライバICの自動実装にも対応できる。また、アラミドは、ITO(Indium Tin Oxide)やガラス基板と熱膨張係数が近いため、製造後の反りが少なく、割れにくい。また、アラミドは、ガラス基板等と比べて薄く基板を形成できる。なお、超薄型ガラス基板とアラミドを積層して基板を形成してもよい。
【0126】
また、バイオナノファイバは、バクテリア(酢酸菌、Acetobacter Xylinum)が産出するセルロースミクロフィブリル束(バクテリアセルロース)と透明樹脂との複合したものである。セルロースミクロフィブリル束は、幅50nmと可視光波長に対して1/10のサイズで、かつ高強度、高弾性、低熱膨張である。バクテリアセルロースにアクリル樹脂、エポキシ樹脂等の透明樹脂を含浸・硬化させることで、繊維を60〜70%も含有しながら、波長500nmで約90%の光透過率を示すバイオナノファイバが得られる。バイオナノファイバは、シリコン結晶に匹敵する低い熱膨張係数(3〜7ppm)を有し、鋼鉄並の強度(460MPa)、高弾性(30GPa)で、かつフレキシブルであることから、ガラス基板等と比べて薄く基板1を形成できる。
【0127】
本実施の形態では、基板1上に、信号出力部14、センサ部13、透明絶縁膜7を順に形成することによりTFT基板30を形成し、当該TFT基板30上に光吸収性の低い接着樹脂等を用いてシンチレータ8を貼り付けることにより放射線検出器20を形成している。
【0128】
図5に示すように、TFT基板30には、上述したセンサ部13、コンデンサ9、および薄膜トランジスタ10を含んで構成される画素32が一定方向(図5の行方向)、および当該一定方向に対する交差方向(図5の列方向)に2次元状に複数設けられている。
【0129】
また、放射線検出器20には、上記一定方向(行方向)に延設され、各薄膜トランジスタ10をオン・オフさせるための複数本のゲート配線34と、上記交差方向(列方向)に延設され、オン状態の薄膜トランジスタ10を介して電荷を読み出すための複数本のデータ配線36と、が設けられている。
【0130】
放射線検出器20は、平板状で、かつ平面視において外縁に4辺を有する四辺形状、より具体的には、矩形状に形成されている。
【0131】
ここで、本実施の形態に係る放射線検出器20では、画素32の一部が放射線の照射状態を検出するために用いられており、残りの画素32によって放射線画像の撮影を行う。なお、以下では、放射線の照射状態を検出するための画素32を放射線検出用画素32Aといい、残りの画素32を放射線画像取得用画素32Bという。
【0132】
本実施の形態に係る放射線検出器20では、画素32における放射線検出用画素32Aを除いた放射線画像取得用画素32Bにより放射線画像の撮影を行うため、放射線検出用画素32Aの配置位置における放射線画像の画素情報を得ることができない。このため、本実施の形態に係る放射線検出器20では、放射線検出用画素32Aを分散するように配置する一方、コンソール110により、放射線検出用画素32Aの配置位置における放射線画像の画素情報を、当該放射線検出用画素32Aの周囲に位置する放射線画像取得用画素32Bにより得られた画素情報を用いて補間することにより生成する欠陥画素補正処理を実行する。
【0133】
そして、放射線の照射状態を検出するため、本実施の形態に係る放射線検出器20には、図5に示すように、放射線検出用画素32Aにおけるコンデンサ9と薄膜トランジスタ10との接続部が接続された、当該コンデンサ9に蓄積された電荷を直接読み出すための直接読出配線38が上記一定方向(行方向)に延設されている。なお、本実施の形態に係る放射線検出器20では、上記一定方向に並ぶ複数の放射線検出用画素32Aに対して1本の直接読出配線38が割り当てられており、当該複数の放射線検出用画素32Aにおけるコンデンサ9と薄膜トランジスタ10との接続部が共通(単一)の直接読出配線38に接続されている。
【0134】
ところで、本実施の形態では、保持部162および保持部166が、電子カセッテ40に対するグリッド46の傾斜角度が変更可能に構成されている。以下、図6を参照して、本実施の形態に係る保持部162および保持部166の構成を説明する。なお、保持部162および保持部166の構成は同一であるので、ここでは、保持部166の構成について説明する。
【0135】
同図に示すように、本実施の形態に係る保持部166は、電子カセッテ40を固定的に保持する第1保持部165Aと、グリッド46を固定的に保持する第2保持部165Bと、を備えている。
【0136】
ここで、第1保持部165Aは、保持部166の筐体に固定して設けられている一方、第2保持部165Bは、平面視中央部を中心として同図矢印A方向に回転可能に構成されている。従って、本実施の形態に係る保持部166によれば、電子カセッテ40およびグリッド46を保持した状態において、電子カセッテ40とグリッド46との間の相対的な角度を変更することができる。
【0137】
なお、保持部162には後述するモータ162Aが設けられる一方、保持部166には後述するモータ166A(共に図9参照。)が設けられており、保持部162および保持部166の各々の第2保持部165Bは、対応するモータによって回転される。
【0138】
次に、本実施の形態に係る電子カセッテ40の構成について説明する。図7には、本実施の形態に係る電子カセッテ40の構成を示す斜視図が示されている。
【0139】
同図に示すように、本実施の形態に係る電子カセッテ40は、放射線を透過させる材料からなる筐体41を備えており、防水性、密閉性を有する構造とされている。電子カセッテ40は、手術室等で使用されるとき、血液やその他の雑菌が付着するおそれがある。そこで、電子カセッテ40を防水性、密閉性を有する構造として、必要に応じて殺菌洗浄することにより、1つの電子カセッテ40を繰り返し続けて使用することができる。
【0140】
筐体41の内部には、種々の部品を収容する空間Aが形成されており、当該空間A内には、放射線Xが照射される筐体41の照射面側から、被写体を透過した放射線Xを検出する放射線検出器20、および放射線Xのバック散乱線を吸収する鉛板43が順に配設されている。
【0141】
ここで、本実施の形態に係る電子カセッテ40では、筐体41の平板状の一方の面の放射線検出器20の配設位置に対応する領域が放射線を検出可能な四辺形状の撮影領域41Aとされている。この筐体41の撮影領域41Aを有する面が電子カセッテ40における天板41Bとされており、本実施の形態に係る電子カセッテ40では、放射線検出器20が、TFT基板30が天板41B側となるように配置され、当該天板41Bの筐体41における内側の面(天板41Bの放射線が入射される面の反対側の面)に貼り付けられている。
【0142】
一方、図7に示すように、筐体41の内部の一端側には、放射線検出器20と重ならない位置(撮影領域41Aの範囲外)に、後述するカセッテ制御部58や電源部70(共に図9参照。)を収容するケース42が配置されている。
【0143】
筐体41は、電子カセッテ40全体の軽量化を図るために、例えば、カーボンファイバ(炭素繊維)、アルミニウム、マグネシウム、バイオナノファイバ(セルロースミクロフィブリル)、または複合材料等で構成されている。
【0144】
複合材料としては、例えば、強化繊維樹脂を含む材料が用いられ、強化繊維樹脂には、カーボンやセルロース等が含まれる。具体的には、複合材料としては、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)や、発泡材をCFRPでサンドイッチした構造のもの、または発泡材の表面にCFRPをコーティングしたもの等が用いられる。なお、本実施の形態では、発泡材をCFRPでサンドイッチした構造のものが用いられている。これにより、筐体41をカーボン単体で構成した場合と比較して、筐体41の強度(剛性)を高めることができる。
【0145】
一方、図8に示すように、筐体41の内部には、天板41Bと対向する背面部41Cの内面に支持体44が配置されており、支持体44および天板41Bの間に、放射線検出器20および鉛板43が放射線Xの照射方向にこの順で並んで配置されている。支持体44は、軽量化の観点、寸法偏差を吸収する観点から、例えば、発泡材で構成されており、鉛板43を支持する。なお、同図では、錯綜を回避するために、グリッド46の図示を省略している。
【0146】
同図に示すように、天板41Bの内面には、放射線検出器20のTFT基板30を剥離可能に接着する接着部材80が設けられている。接着部材80としては、例えば、両面テープが用いられる。この場合、両面テープは、一方の接着面の接着力が他方の接着面の接着力よりも強くなるように形成されている。
【0147】
具体的には、接着力の弱い面(弱接着面)は、180°ピール接着力で1.0N/cm以下に設定されている。そして、接着力の強い面(強接着面)が天板41Bに接し、弱接着面がTFT基板30に接する。これにより、ねじ等の固定部材等によって放射線検出器20を天板41Bに固定する場合と比べて電子カセッテ40の厚みを薄くすることができる。また、衝撃や荷重で天板41Bが変形しても、放射線検出器20は剛性の高い天板41Bの変形に追従するため、大きな曲率(緩やかな曲がり)しか発生せず、局所的な低曲率で放射線検出器20が破損する可能性が低くなる。さらに、放射線検出器20が天板41Bの剛性の向上に寄与する。
【0148】
このように、本実施の形態に係る電子カセッテ40では、放射線検出器20を筐体41の天板41Bの内部に貼り付けているため、筐体41が、天板41B側と背面部41C側とで2つに分離可能とされており、放射線検出器20を天板41Bに貼り付けたり、放射線検出器20を天板41Bから剥離したりする際には、筐体41を天板41B側と背面部41C側とで2つに分離した状態とされる。
【0149】
なお、本実施の形態では、放射線検出器20の天板41Bへの接着をクリーンルーム等で行わなくてもよい。なぜなら、放射線検出器20および天板41Bの間に放射線を吸収する金属片等の異物が混入した場合に、放射線検出器20を天板41Bから剥離して当該異物を除去できるからである。
【0150】
次に、図9を参照して、本実施の形態に係る撮影システム104の電気系の要部構成について説明する。
【0151】
同図に示すように、電子カセッテ40に内蔵された放射線検出器20は、隣り合う2辺の一辺側にゲート線ドライバ52が配置され、他辺側に画像生成部54が配置されている。TFT基板30の個々のゲート配線34(図9では、ゲート配線34a,34b,・・・と個別に表記し、必要に応じてこの符号を用いる。)はゲート線ドライバ52に接続され、TFT基板30の個々のデータ配線36は画像生成部54に接続されている。
【0152】
また、筐体41の内部には、画像メモリ56と、カセッテ制御部58と、無線通信部60と、を備えている。
【0153】
TFT基板30の各薄膜トランジスタ10は、ゲート線ドライバ52からゲート配線34を介して供給される信号により行単位で順にオンされ、オン状態とされた薄膜トランジスタ10によって読み出された電荷は、電気信号としてデータ配線36を伝送されて画像生成部54に入力される。これにより、電荷は行単位で順に読み出され、二次元状の放射線画像が取得可能となる。
【0154】
ここで、本実施の形態に係る画像生成部54の構成について説明する。図10には、本実施の形態に係る画像生成部54の構成を示す回路図が示されている。
【0155】
同図に示すように、本実施の形態に係る画像生成部54は、データ配線36の各々に対応して、可変ゲインプリアンプ(チャージアンプ)82と、サンプルホールド回路84と、が備えられている。
【0156】
可変ゲインプリアンプ82は、正入力側が接地されたオペアンプ82Aと、オペアンプ82Aの負入力側と出力側との間に、それぞれ並列に接続されるコンデンサ82Bと、リセットスイッチ82Cとを含んで構成されており、リセットスイッチ82Cは、カセッテ制御部58により切り換えられる。
【0157】
また、本実施の形態に係る画像生成部54は、マルチプレクサ86およびA/D(アナログ/デジタル)変換器88が備えられている。なお、サンプルホールド回路84のサンプルタイミング、およびマルチプレクサ86に設けられたスイッチ86Aによる選択出力も、カセッテ制御部58により切り換えられる。
【0158】
放射線画像を検出する際に、カセッテ制御部58は、まず、可変ゲインプリアンプ82のリセットスイッチ82Cを所定期間オン状態とすることにより、コンデンサ82Bに蓄積されていた電荷を放電する。
【0159】
一方、放射線Xが照射されることによって放射線画像取得用画素32Bの各々のコンデンサ9に蓄積された電荷は、接続されている薄膜トランジスタ10がオン状態とされることにより電気信号として接続されているデータ配線36を伝送され、データ配線36を伝送された電気信号は、対応する可変ゲインプリアンプ82により、予め定められた増幅率で増幅される。
【0160】
一方、カセッテ制御部58は、上述した放電を行った後、サンプルホールド回路84を所定期間駆動させることより、可変ゲインプリアンプ82によって増幅された電気信号の信号レベルをサンプルホールド回路84に保持させる。
【0161】
そして、各サンプルホールド回路84に保持された信号レベルは、カセッテ制御部58による制御に応じてマルチプレクサ86により順次選択され、A/D変換器88によってA/D変換されることにより、撮影された放射線画像を示す画像データが生成される。
【0162】
なお、本実施の形態に係る電子カセッテ40には、画像生成部54に駆動用の電力を供給する画像生成部電源54Aが備えられている。本実施の形態に係る画像生成部電源54Aは、電力入力端が後述する電源部70に接続されたDC−DCコンバータによって構成されており、当該DC−DCコンバータの出力端は、画像生成部54の可変ゲインプリアンプ82、サンプルホールド回路84、マルチプレクサ86、およびA/D変換器88に接続されている。
【0163】
ここで、本実施の形態に係る画像生成部電源54Aの制御入力端にはカセッテ制御部58が接続されており、画像生成部電源54Aからの電力供給開始および電力供給停止はカセッテ制御部58によって制御される。
【0164】
一方、画像生成部54には画像メモリ56が接続されており、画像生成部54のA/D変換器88から出力された画像データは画像メモリ56に順に記憶される。画像メモリ56は所定枚分の画像データを記憶可能な記憶容量を有しており、放射線画像の撮影が行われる毎に、撮影によって得られた画像データが画像メモリ56に順次記憶される。
【0165】
画像メモリ56はカセッテ制御部58と接続されている。カセッテ制御部58はマイクロコンピュータを含んで構成され、CPU(中央処理装置)58A、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)を含むメモリ58B、フラッシュメモリ等からなる不揮発性の記憶部58Cを備えており、電子カセッテ40全体の動作を制御する。
【0166】
さらに、カセッテ制御部58には無線通信部60が接続されている。無線通信部60は、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11a/b/g/n等に代表される無線LAN(Local Area Network)規格に対応しており、無線通信による外部機器との間での各種情報の伝送を制御する。カセッテ制御部58は、無線通信部60を介して、放射線画像の撮影に関する制御を行うコンソール110などの外部装置と無線通信が可能とされており、コンソール110等との間で各種情報の送受信が可能とされている。
【0167】
また、電子カセッテ40には電源部70が設けられており、上述した各種回路や各素子(ゲート線ドライバ52、画像生成部54、画像メモリ56、無線通信部60、カセッテ制御部58として機能するマイクロコンピュータ等)は、電源部70から供給された電力によって作動する。電源部70は、電子カセッテ40の可搬性を損なわないように、バッテリ(充電可能な二次電池)を内蔵しており、充電されたバッテリから各種回路・素子へ電力を供給する。なお、図9では、電源部70と各種回路や各素子を接続する配線を省略している。
【0168】
一方、本実施の形態に係る放射線検出器20は、放射線の照射状態を検出するために、TFT基板30を隔ててゲート線ドライバ52の反対側に放射線照射検出部55が配置されており、TFT基板30の個々の直接読出配線38(図9では、直接読出配線38a,38c,・・・と個別に表記し、必要に応じてこの符号を用いる。)は放射線照射検出部55に接続されている。
【0169】
ここで、本実施の形態に係る放射線照射検出部55の構成について説明する。図11には、本実施の形態に係る放射線照射検出部55の構成を示す回路図が示されている。
【0170】
同図に示すように、本実施の形態に係る放射線照射検出部55は、放射線検出用画素32Aに接続された直接読出配線38の各々に対応して、可変ゲインプリアンプ(チャージアンプ)92が備えられている。
【0171】
可変ゲインプリアンプ92は、正入力側が接地されたオペアンプ92Aと、オペアンプ92Aの負入力側と出力側との間に、それぞれ並列に接続されるコンデンサ92Bと、リセットスイッチ92Cとを含んで構成されており、リセットスイッチ92Cは、カセッテ制御部58により切り換えられる。
【0172】
また、本実施の形態に係る放射線照射検出部55は、入力端が可変ゲインプリアンプ92の各々の出力端に接続され、出力端がカセッテ制御部58に接続された照射判定回路94が備えられている。
【0173】
放射線の照射状態を検出する際に、カセッテ制御部58は、まず、可変ゲインプリアンプ92のリセットスイッチ92Cを所定期間オン状態とすることにより、コンデンサ92Bに蓄積されていた電荷を放電する。
【0174】
一方、放射線Xが照射されることによって放射線検出用画素32Aの各々のコンデンサ9に蓄積された電荷は電気信号として接続されている直接読出配線38を伝送され、直接読出配線38を伝送された電気信号は、対応する可変ゲインプリアンプ92により、予め定められた増幅率で増幅された後に、照射判定回路94に入力される。
【0175】
本実施の形態に係る照射判定回路94では、可変ゲインプリアンプ92の各々から入力された電気信号に基づいて、放射線源121から照射された放射線Xの線量(以下、「放射線量」という。)を取得し、当該放射線量が予め定められた第1閾値に達したか否かを判定することにより、放射線の照射が開始されたか否かを判定して、判定結果を示す第1判定結果情報をカセッテ制御部58に出力する。
【0176】
また、本実施の形態に係る照射判定回路94では、上記放射線量が予め定められた第2閾値未満となったか否かを判定することにより、放射線の照射が終了されたか否かを判定して、判定結果を示す第2判定結果情報をカセッテ制御部58に出力する。
【0177】
なお、本実施の形態に係る照射判定回路94では、上記放射線の照射が開始されたか否かを判定する際には、各可変ゲインプリアンプ92からの出力信号に、当該出力信号によって示される放射線量が上記第1閾値に達したものが存在する場合に上記第1判定結果情報として放射線の照射が開始されたことを示す情報を出力するように制御する。
【0178】
また、本実施の形態に係る照射判定回路94では、上記放射線の照射が終了されたか否かを判定する際には、各可変ゲインプリアンプ92からの出力信号に、当該出力信号によって示される放射線量が上記第2閾値未満となったものが存在する場合に上記第2判定結果情報として放射線の照射が終了されたことを示す情報を出力するように制御する。
【0179】
なお、本実施の形態に係る電子カセッテ40には、放射線照射検出部55に駆動用の電力を供給する放射線照射検出部電源55Aが備えられている。本実施の形態に係る放射線照射検出部電源55Aは、電力入力端が電源部70に接続されたDC−DCコンバータによって構成されており、当該DC−DCコンバータの出力端は、放射線照射検出部55の可変ゲインプリアンプ92および照射判定回路94に接続されている。
【0180】
ここで、本実施の形態に係る放射線照射検出部電源55Aの制御入力端にはカセッテ制御部58が接続されており、放射線照射検出部電源55Aからの電力供給開始および電力供給停止はカセッテ制御部58によって制御される。
【0181】
一方、図9に示すように、コンソール110は、サーバ・コンピュータとして構成されており、操作メニューや撮影された放射線画像等を表示するディスプレイ111と、複数のキーを含んで構成され、各種の情報や操作指示が入力される操作パネル112と、を備えている。
【0182】
また、本実施の形態に係るコンソール110は、装置全体の動作を司るCPU113と、制御プログラムを含む各種プログラム等が予め記憶されたROM114と、各種データを一時的に記憶するRAM115と、各種データを記憶して保持するHDD(ハードディスク・ドライブ)116と、ディスプレイ111への各種情報の表示を制御するディスプレイドライバ117と、操作パネル112に対する操作状態を検出する操作入力検出部118と、を備えている。また、コンソール110は、無線通信により、放射線発生装置120との間で後述する曝射条件等の各種情報の送受信を行うと共に、電子カセッテ40との間で画像データ等の各種情報の送受信を行う無線通信部119と、保持部162に設けられたモータ162Aおよび保持部166に設けられたモータ166Aに接続され、これらのモータの回転駆動を行うインタフェース部(I/F)108と、を備えている。
【0183】
CPU113、ROM114、RAM115、HDD116、ディスプレイドライバ117、操作入力検出部118、無線通信部119、およびインタフェース部108は、システムバスBUSを介して相互に接続されている。従って、CPU113は、ROM114、RAM115、HDD116へのアクセスを行うことができると共に、ディスプレイドライバ117を介したディスプレイ111への各種情報の表示の制御、無線通信部119を介した放射線発生装置120および電子カセッテ40との各種情報の送受信の制御、およびインタフェース部108を介したモータ162Aおよびモータ166Aの回転駆動の制御を各々行うことができる。また、CPU113は、操作入力検出部118を介して操作パネル112に対するユーザの操作状態を把握することができる。
【0184】
一方、放射線発生装置120は、放射線源121と、コンソール110との間で曝射条件等の各種情報を送受信する無線通信部123と、受信した曝射条件に基づいて放射線源121を制御する線源制御部122と、を備えている。
【0185】
線源制御部122もマイクロコンピュータを含んで構成されており、受信した曝射条件等を記憶する。このコンソール110から受信する曝射条件には管電圧、管電流等の情報が含まれている。線源制御部122は、受信した曝射条件に基づいて放射線源121から放射線Xを照射させる。
【0186】
ところで、本実施の形態に係る撮影システム104には、グリッド46に起因して電子カセッテ40による撮影によって得られた放射線画像に生じるモアレ縞の発生を防止するために、電子カセッテ40とグリッド46との相対角度を調整する角度調整機能が設けられている。本実施の形態に係る角度調整機能では、使用する電子カセッテ40の種類とグリッド46の種類との組み合わせに応じて上記相対角度の範囲が予め決定されている。
【0187】
このため、本実施の形態に係るコンソール110のHDD116には、一例として図12に模式的に示される回転角度情報が予め記憶されている。
【0188】
同図に示すように、本実施の形態に係る回転角度情報は、電子カセッテの種類とグリッドの種類との組み合わせ毎に上記相対角度の範囲を示す角度範囲が予め記憶されている。なお、本実施の形態に係る撮影システム104では、対応対象とする電子カセッテの種類とグリッドの種類の組み合わせ毎の上記角度範囲として、前述した(7)式および(8)式に基づいて算出される空間周波数f’を用いてf’>μfを満足する角度θの範囲を導出し、回転角度情報の対応する記憶領域に予め記憶しておく。ここで、μは、実際の放射線画像により得られた人体信号を用いた画質評価等によって予め定められた値を用いる。
【0189】
次に、本実施の形態に係る撮影システム104の作用を説明する。
【0190】
まず、図13を参照して、放射線画像の撮影を行う際のコンソール110の作用を説明する。なお、図13は、操作パネル112を介して実行する旨の指示入力が行われた際にコンソール110のCPU113によって実行される放射線画像撮影処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムはROM114の所定領域に予め記憶されている。
【0191】
同図のステップ300では、予め定められた初期情報入力画面をディスプレイ111により表示させるようにディスプレイドライバ117を制御し、次のステップ302にて所定情報の入力待ちを行う。
【0192】
図14には、上記ステップ300の処理によってディスプレイ111により表示される初期情報入力画面の一例が示されている。同図に示すように、本実施の形態に係る初期情報入力画面では、これから放射線画像の撮影を行う被検者の氏名、撮影対象部位、撮影時の姿勢、撮影時の放射線Xの曝射条件(本実施の形態では、放射線Xを曝射する際の管電圧、管電流、および曝射期間)、および使用する電子カセッテとグリッドの種類の入力を促すメッセージと、これらの情報の入力領域が表示される。
【0193】
同図に示す初期情報入力画面がディスプレイ111に表示されると、撮影者は、撮影対象とする被検者の氏名、撮影対象部位、撮影時の姿勢、曝射条件、電子カセッテの種類、およびグリッドの種類を、各々対応する入力領域に操作パネル112を介して入力する。
【0194】
そして、撮影者は、撮影時の姿勢に対応する立位台160の保持部162または臥位台164の保持部166に、使用する電子カセッテ40およびグリッド46を保持させると共に放射線源121を対応する位置に位置決めした後、被検者を所定の撮影位置に位置させる。その後、撮影者は、初期情報入力画面の下端近傍に表示されている終了ボタンを、操作パネル112を介して指定する。撮影者によって終了ボタンが指定されると、上記ステップ302が肯定判定となってステップ304に移行する。
【0195】
ステップ304では、上記初期情報入力画面において入力された情報(以下、「初期情報」という。)における電子カセッテの種類およびグリッドの種類に対応する角度範囲を回転角度情報(図12参照。)から読み出すことにより取得し、次のステップ306にて、電子カセッテ40とグリッド46との相対角度が取得した角度範囲内の角度となるように、立位での撮影の場合はモータ162Aを制御する一方、臥位での撮影の場合はモータ166Aを制御する。なお、本実施の形態に係る撮影システム104では、本ステップ306の処理によって設定する相対角度として、上記角度範囲における中心角度を適用しているが、これに限らず、上記角度範囲内の角度であれば何れの角度としてもよい。
【0196】
次のステップ308では、上記初期情報を電子カセッテ40に無線通信部119を介して送信した後、次のステップ310にて、上記初期情報に含まれる曝射条件を放射線発生装置120へ無線通信部119を介して送信することにより当該曝射条件を設定する。これに応じて放射線発生装置120の線源制御部122は、受信した曝射条件での曝射準備を行う。
【0197】
次のステップ312では、曝射開始を指示する指示情報を放射線発生装置120へ無線通信部119を介して送信する。
【0198】
これに応じて、放射線源121は、放射線発生装置120がコンソール110から受信した曝射条件に応じた管電圧、管電流、および曝射期間での放射線Xの射出を開始する。放射線源121から射出された放射線Xは、被検者を透過した後にグリッド46を介して電子カセッテ40に到達する。
【0199】
一方、電子カセッテ40のカセッテ制御部58は、上記初期情報を受信すると、照射判定回路94から出力されている第1判定結果情報が放射線の照射が開始されたことを示す情報となるまで待機した後に放射線画像の撮影動作を開始する。次いで、電子カセッテ40は、照射判定回路94から出力されている第2判定結果情報が放射線の照射が終了されたことを示す情報となるまで待機した後に撮影動作を終了する。
【0200】
そして、電子カセッテ40は、放射線画像の撮影動作を終了すると、当該撮影によって得られた画像データをコンソール110に送信する。
【0201】
そこで、次のステップ314では、上記画像データが電子カセッテ40から受信されるまで待機し、次のステップ316にて、受信した画像データに対し、前述した欠陥画素補正処理を施した後、モアレ縞除去処理を施し、その後にシェーディング補正等の各種の補正を行う画像処理を実行する。
【0202】
本実施の形態に係る撮影システム104では、上記モアレ縞除去処理として、まず、上記画像データをフーリエ変換し、これによって得られる2次元周波数空間における空間周波数のピーク値(極大値)を検出する。そして、検出したピーク値を含む予め定められた周波数範囲の通過を阻止する2次元バンド・ストップ・フィルタを構成し、当該フィルタを用いて上記画像データに対してフィルタリング処理を施す。
【0203】
なお、ここで、上記2次元バンド・ストップ・フィルタに代えて、2次元ハイ・パス・フィルタを適用することもできるが、放射線画像に対するフィルタリング処理による副作用を極力回避するため、2次元バンド・ストップ・フィルタの方が、より好ましい。また、本実施の形態に係る撮影システム104では、上記予め定められた周波数範囲として、検出したピーク値の空間周波数を中心として、2次元周波数空間における人体信号の空間周波数を含まない範囲を適用している。
【0204】
次のステップ318では、上記画像処理が行われた画像データ(以下、「補正画像データ」という。)をHDD116に記憶し、次のステップ320にて、補正画像データにより示される放射線画像を、確認等を行うためにディスプレイ111によって表示させるようにディスプレイドライバ117を制御する。
【0205】
次のステップ322では、補正画像データをRISサーバ150へ病院内ネットワーク102を介して送信し、その後に本放射線画像撮影処理プログラムを終了する。なお、RISサーバ150へ送信された補正画像データはデータベース150Aに格納され、医師が撮影された放射線画像の読影や診断等を行うことが可能となる。
【0206】
次に、図15を参照して、コンソール110から上記初期情報を受信した際の電子カセッテ40の作用を説明する。なお、図15は、この際に電子カセッテ40のカセッテ制御部58におけるCPU58Aにより実行されるカセッテ撮影処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムはメモリ58Bの所定領域に予め記憶されている。
【0207】
同図のステップ400では、画像生成部電源54Aから画像生成部54への電力供給を開始するように画像生成部電源54Aを制御した後、次のステップ402にて、放射線照射検出部電源55Aから放射線照射検出部55への電力供給を開始するように放射線照射検出部電源55Aを制御し、次のステップ403にて、ゲート線ドライバ52を制御してゲート線ドライバ52から各ゲート配線34a,34b,34c,・・・に1ラインずつ順にオン信号を出力させ、放射線検出器20の各画素32におけるコンデンサ9に蓄積された電荷を放電させることにより、放射線検出用画素32Aおよび放射線画像取得用画素32Bの各画素32をリセットする。なお、本ステップ403の処理によって行われる各画素32のリセット動作は1回のみでもよく、複数回繰り返してもよい。
【0208】
次のステップ404では、照射判定回路94から前述した第1判定結果情報を取得し、次のステップ406にて、取得した第1判定結果情報が、放射線の照射が開始されたことを示すものであるか否かを判定して、否定判定となった場合は上記ステップ404に戻る一方、肯定判定となった時点でステップ408に移行する。
【0209】
ステップ408では、放射線検出器20の各画素32におけるコンデンサ9への電荷の蓄積を開始することにより、放射線画像の撮影動作を開始する。
【0210】
次のステップ410では、照射判定回路94から前述した第2判定結果情報を取得し、次のステップ412にて、取得した第2判定結果情報が、放射線の照射が終了されたことを示すものであるか否かを判定して、否定判定となった場合は上記ステップ410に戻る一方、肯定判定となった時点でステップ414に移行する。
【0211】
ステップ414では、上記ステップ402の処理によって開始した放射線照射検出部電源55Aから放射線照射検出部55への電力供給を停止するように放射線照射検出部電源55Aを制御し、次のステップ416にて、上記ステップ408の処理によって開始した撮影動作を終了する。
【0212】
次のステップ418では、ゲート線ドライバ52を制御してゲート線ドライバ52から各ゲート配線34a,34b,34c,・・・に1ラインずつ順にオン信号を出力させ、各ゲート配線34に接続された各薄膜トランジスタ10を1ラインずつ順にオンさせる。
【0213】
放射線検出器20は、各ゲート配線34に接続された各薄膜トランジスタ10を1ラインずつ順にオンされると、1ラインずつ順に各コンデンサ9に蓄積された電荷が電気信号として各データ配線36に流れ出す。各データ配線36に流れ出した電気信号は画像生成部54でデジタルの画像データに変換されて、画像メモリ56に記憶される。
【0214】
そこで、本ステップ418では、画像メモリ56に記憶された画像データを読み出し、次のステップ420にて、放射線検出器20の各画素32におけるコンデンサ9の上記ステップ418の処理による電荷の読み出しが終了した後の残留電荷や暗電流が蓄積された電荷を放電させることにより、放射線検出用画素32Aおよび放射線画像取得用画素32Bの各画素32をリセットした後、上記ステップ400の処理によって開始した画像生成部電源54Aから画像生成部54への電力供給を停止するように画像生成部電源54Aを制御し、次のステップ422にて、読み出した画像データをコンソール110に無線通信部60を介して送信した後に本カセッテ撮影処理プログラムを終了する。
【0215】
ところで、本実施の形態に係る電子カセッテ40は、図8に示すように、放射線検出器20がTFT基板30側から放射線Xが照射されるように内蔵されている。
【0216】
ここで、放射線検出器20は、図16に示すように、シンチレータ8が形成された側から放射線が照射されて、当該放射線の入射面の裏面側に設けられたTFT基板30により放射線画像を読み取る、いわゆる裏面読取方式とされた場合、シンチレータ8の同図上面側(TFT基板30の反対側)でより強く発光し、TFT基板30側から放射線が照射されて、当該放射線の入射面の表面側に設けられたTFT基板30により放射線画像を読み取る、いわゆる表面読取方式とされた場合、TFT基板30を透過した放射線がシンチレータ8に入射してシンチレータ8のTFT基板30側がより強く発光する。TFT基板30に設けられた各センサ部13には、シンチレータ8で発生した光により電荷が発生する。このため、放射線検出器20は、表面読取方式とされた場合の方が裏面読取方式とされた場合よりもTFT基板30に対するシンチレータ8の発光位置が近いため、撮影によって得られる放射線画像の分解能が高い。
【0217】
また、放射線検出器20は、光電変換膜4を有機光電変換材料により構成しており、光電変換膜4で放射線がほとんど吸収されない。このため、本実施の形態に係る放射線検出器20は、表面読取方式により放射線がTFT基板30を透過する場合でも光電変換膜4による放射線の吸収量が少ないため、放射線に対する感度の低下を抑えることができる。表面読取方式では、放射線がTFT基板30を透過してシンチレータ8に到達するが、このように、TFT基板30の光電変換膜4を有機光電変換材料により構成した場合、光電変換膜4での放射線の吸収が殆どなく放射線の減衰を少なく抑えることができるため、表面読取方式に適している。
【0218】
また、薄膜トランジスタ10の活性層17を構成する非晶質酸化物や光電変換膜4を構成する有機光電変換材料は、いずれも低温での成膜が可能である。このため、基板1を放射線の吸収が少ないプラスチック樹脂、アラミド、バイオナノファイバで形成することができる。このように形成された基板1は放射線の吸収量が少ないため、表面読取方式により放射線がTFT基板30を透過する場合でも、放射線に対する感度の低下を抑えることができる。
【0219】
また、本実施の形態によれば、図8に示すように、放射線検出器20をTFT基板30が天板41B側となるように筐体41内の天板41Bに貼り付けているが、基板1を剛性の高いプラスチック樹脂、アラミド、バイオナノファイバで形成した場合、放射線検出器20自体の剛性が高いため、筐体41の天板41Bを薄く形成することができる。また、基板1を剛性の高いプラスチック樹脂やアラミド、バイオナノファイバで形成した場合、放射線検出器20自体が可撓性を有するため、撮影領域41Aに衝撃が加わった場合でも放射線検出器20が破損しづらい。
【0220】
以上詳細に説明したように、本実施の形態では、放射線検出器(本実施の形態では、放射線検出器20)により撮影される放射線画像にグリッド(本実施の形態では、グリッド46)の吸収部材によって発生するモアレ縞の空間周波数が予め定められた空間周波数以上となる、放射線検出器の画素の配列方向に対するグリッドの傾斜角度を取得し、グリッドと放射線検出器との間の相対角度を取得した傾斜角度とするための予め定められた処理を実行しているので、グリッドや放射線検出器に構成上の制約を設けることなく、容易にモアレ縞の発生を防止することができる。
【0221】
また、本実施の形態では、前記予め定められた空間周波数として人体信号の空間周波数を適用しているので、より確実にモアレ縞の発生を防止することができる。
【0222】
また、本実施の形態では、前記放射線画像撮影装置と前記グリッドとの間の相対角度を変更する変更手段(本実施の形態では、保持部162および保持部166)を有し、前記予め定められた処理として、前記相対角度が取得された傾斜角度となるように前記変更手段を制御する処理を実行しているので、人手によって放射線画像撮影装置とグリッドとの間の相対角度を設定する場合に比較して、より利便性を向上させることができる。
【0223】
さらに、本実施の形態では、前記放射線画像撮影装置によって撮影された放射線画像に前記吸収部材によって発生するモアレ縞の空間周波数を特定し、特定した空間周波数の成分を前記放射線画像撮影装置によって撮影された放射線画像から除去する画像処理を行っているので、より確実にモアレ縞の発生を防止することができる。
【0224】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施の形態に多様な変更または改良を加えることができ、当該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0225】
また、上記の実施の形態は、クレーム(請求項)にかかる発明を限定するものではなく、また実施の形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組み合わせにより種々の発明を抽出できる。実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0226】
例えば、上記実施の形態では、電子カセッテ40とグリッド46との相対角度を変更するための手段としてターンテーブル方式を採用した保持部162および保持部166を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、一例として図17に示すように、保持部162および保持部166として、電子カセッテ40の周囲を所定間隔で保持すると共に、各々同図矢印B方向に突出/引込可能に構成された複数のピンを有するものを適用する形態としてもよい。この場合、各ピンの突出/引込動作をコンソール110のCPU113によって制御可能に構成すると共に、回転角度情報から取得された角度範囲内の角度でグリッド46が電子カセッテ40の天板41B側に載置されるように各ピンの突出/引込状態を制御する。
【0227】
また、上記実施の形態では、電子カセッテ40に対してグリッド46を傾ける場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、一例として図18(A)に示すように、グリッドとして放射線吸収物質の配列方向を斜め方向に傾けたものを用いる形態としてもよく、一例として図18(B)に示すように、グリッドを傾けずに、斜め方向に画素が配列された放射線検出器を用いる形態としてもよい。後者の場合、被検者の体軸とグリッドの方向を揃え易くなるため、被検者の身長に応じてグリッド縞方向に放射線源の位置を微調整し易くなる。
【0228】
この場合、ユーザに余計な手間をかけさせずに済むという効果が得られると共に、斜め方向の画像を縦横方向の画像に変換する処理は必要となるが、画像の縦横方向に高分解能を持たせることができる。TFTを45度傾斜させて放射線検出器を作製する技術は従来既知であり、当該技術とグリッドとの組み合わせにより、この効果を奏することができる。例えば、マンモグラフィの場合で、かつ放射線検出器の画素間隔が125[μm]の場合、この傾斜によって80[μm]相当の画像とすることができる。
【0229】
また、上記実施の形態では、本発明の予め定められた処理として、電子カセッテ40とグリッド46との相対角度が取得された傾斜角度となるように保持部162および保持部166を制御する処理を実行する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、当該傾斜角度を報知する処理を実行する形態としてもよい。
【0230】
図19には、この形態におけるコンソール110のディスプレイ111によって上記傾斜角度を報知する場合の報知画面の一例が示されている。この場合、放射線画像撮影処理プログラム(図13も参照。)のステップ306の処理に代えて、ステップ304の処理によって取得された角度範囲をディスプレイ111にて表示する処理を実行する。この場合、ユーザに対して、上記傾斜角度を容易に把握することができる。この場合、表示される角度範囲は比較的広いので、グリッドの設置角度にロバストネスがあり、当該角度に手置きすることも可能である。
【0231】
また、上記実施の形態によれば、使用する電子カセッテとグリッドが決まれば、角度範囲もまた決まるので、グリッドを設置する位置にマーカを付けておくことで手置きの場合の再現性を上げることができる。電子カセッテの場合、強化ジャケットとグリッドを組み合わせて用いることがあるが、強化ジャケットのグリッド部と電子カセッテが相対的に回転するレール部(ロック部を含む)を強化ジャケットに取り付ける、または最初から電子カセッテを斜めに取り付ける枠を強化ジャケットに設けてもよい。なお、比較的大きなサイズのグリッドの周辺部分が痛んできたときに、該当箇所を切断して小サイズのグリッドとして用いることがあるが、その際に、グリッドを斜めに切断し、電子カセッテや撮影台に設けて用いることもできる。
【0232】
位相イメージングでは、斜めにグリッドを設置する場合があるが、以上の方法を適用することで、高調波が画像に現れない本数のグリッドや、高調波を画像処理で除去することのできる本数のグリッドが選択可能となる。
【0233】
また、上記実施の形態では、電子カセッテの種類およびグリッドの種類の組み合わせ毎の角度範囲を回転角度情報(図12参照。)として予め記憶しておき、対応する角度範囲を読み出すことにより角度θを取得する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、空間周波数f’を算出するための演算式と、比μの値とを予め記憶しておき、これらを用いて演算することによって角度θを取得する形態としてもよい。
【0234】
また、上記実施の形態では、電子カセッテの種類およびグリッドの種類の組み合わせ毎の角度範囲を回転角度情報として予め記憶しておく一方、入力された電子カセッテの種類およびグリッドの種類に対応する角度範囲を読み出すことにより角度θを取得する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、人体信号を表す最適なμが撮影部位毎に異なることに鑑み、電子カセッテの種類、グリッドの種類、および撮影部位の種類の組み合わせ毎の角度範囲を回転角度情報として予め記憶しておく一方、電子カセッテの種類、グリッドの種類、および撮影部位の種類を入力するものとして、入力されたこれらの種類に対応する角度範囲を読み出すことにより角度θを取得する形態等としてもよい。
【0235】
また、上記実施の形態では、電子カセッテ40とグリッド46との相対角度が取得された傾斜角度となるように保持部162および保持部166を制御する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、放射線画像にグリッド46の吸収部材によって発生するモアレ縞の空間周波数を予め定められた空間周波数以上とすることのできるグリッドの種類、および当該グリッドの傾斜角度を取得し、取得したグリッドの種類および傾斜角度を報知する形態としてもよい。
【0236】
さらに、この形態において、撮影部位毎にグリッドの種類および傾斜角度を取得して報知する形態としてもよい。なお、この形態におけるグリッドの種類および傾斜角度は、対応対象とする電子カセッテの種類および撮影部位の組み合わせ毎のグリッドの種類と傾斜角度との組み合わせとして、前述した(7)式および(8)式に基づいて算出される空間周波数f’を用いてf’>μfを満足するものを導出することにより得ることができる。なお、この形態における報知には、ディスプレイ装置等の表示手段による報知の他、スピーカ等の音声生成手段による報知や、プリンタ等の画像形成手段による報知が含まれる。
【0237】
この形態により、胸部専用の撮影室と整形専用の撮影室等で、それぞれ専用のグリッドを用いたり、同一のグリッドを融通し合ったりすることが容易となる結果、少ないグリッドでも有効に運用することができる。
【0238】
また、上記実施の形態では、放射線検出器20に設けられた画素32の一部を放射線検出用画素32Aとして用いているため、隣接する放射線検出用画素32Aが欠陥画素補正を実施可能な程度に離間していることが好ましいことは言うまでもない。
【0239】
また、上記実施の形態では、放射線検出用画素32Aを、放射線の照射開始および放射線の照射終了を検出するために用いる場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、可変ゲインプリアンプ92の出力を積分、若しくは累積加算することにより放射線の照射量を求めて適正な照射量のタイミングを検出することや、可変ゲインプリアンプ92の出力の最大値を求めることにより透視撮影等における被曝管理のための放射線源の管電圧や管電流に依存する放射線の単位時間当たりの照射線量率を検出するために放射線検出用画素32Aを用いる形態としてもよい。
【0240】
また、上記実施の形態では、放射線検出器20において行方向に並んだ放射線検出用画素32Aを共通の直接読出配線38に接続した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、全ての放射線検出用画素32Aについて異なる直接読出配線38に個別に接続する形態としてもよい。
【0241】
また、上記実施の形態では、初期情報の入力が終了したタイミングで放射線照射検出部55への電力供給を開始する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、放射線を曝射させる際に撮影者等によって押圧操作されるスイッチを設け、当該スイッチが押圧操作されたタイミングで放射線照射検出部55への電力供給を開始する形態としてもよい。
【0242】
また、上記実施の形態では、放射線発生装置120により、コンソール110から曝射条件が設定され、曝射開始が指示された際に放射線源121による放射線の曝射を行う場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、放射線発生装置120に対し、放射線の曝射を開始させる際と当該曝射を終了させる際に撮影者等によって操作されるスイッチを設けておき、当該スイッチに対する操作に応じて放射線の曝射の開始および終了を行うように、放射線発生装置120の線源制御部122により制御する形態としてもよい。
【0243】
また、上記実施の形態では、放射線検出器20に設けられた画素32の一部を放射線検出用画素32Aとして用いる場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、一例として特許第4217443号公報に開示されているように、放射線検出用画素32Aを、画素32とは別層として放射線検出器20に積層する形態としてもよく、一例として特許第4217506号公報に開示されているように、画素32とは別に放射線検出用画素32Aと同様に作用する放射線検出素子を設ける形態としてもよい。この場合、欠陥画素が生じることがないため、上記実施の形態に比較して、放射線画像の品質を向上させることができる。
【0244】
また、上記実施の形態では、放射線検出用画素32Aを、放射線を検出する専用の画素とした場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、放射線検出用画素32Aを放射線画像取得用画素32Bと兼用する形態としてもよい。この場合の形態例としては、一例として特開2009−219538号公報に開示されているように、各画素に流れるバイアス電流の変化に基づいて放射線の照射状態を検出する形態が例示される。
【0245】
また、上記実施の形態では、センサ部13が、シンチレータ8で発生した光を受光することにより電荷が発生する有機光電変換材料を含んで構成されている場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、センサ部13として有機光電変換材料を含まずに構成されたものを適用する形態としてもよい。
【0246】
また、上記実施の形態では、電子カセッテ40の筐体41の内部にカセッテ制御部58や電源部70を収容するケース42と放射線検出器20とを重ならないように配置した場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、放射線検出器20とカセッテ制御部58や電源部70を重なるように配置してもよい。
【0247】
また、上記実施の形態では、電子カセッテ40とコンソール110との間、放射線発生装置120とコンソール110との間で、無線にて通信を行う場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、これらの少なくとも一方を有線にて通信を行う形態としてもよい。
【0248】
また、上記実施の形態では、放射線としてX線を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、γ線等の他の放射線を適用する形態としてもよい。
【0249】
その他、上記実施の形態で説明したRIS100の構成(図1参照。)、放射線撮影室の構成(図2参照。)、電子カセッテ40の構成(図3〜図5,図7,図8参照。)、撮影システム104の構成(図9参照。)は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、不要な部分を削除したり、新たな部分を追加したり、接続状態等を変更したりすることができることは言うまでもない。
【0250】
また、上記実施の形態で説明した回転角度情報(図12)の構成も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、不要な情報を削除したり、新たな情報を追加したりすることができることは言うまでもない。
【0251】
また、上記実施の形態で説明した各種プログラムの処理の流れ(図13,図15参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ換えたりすることができることは言うまでもない。
【0252】
また、上記実施の形態で説明した初期情報入力画面の構成(図14参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、不要な情報を削除したり、新たな情報を追加したりすることができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0253】
20 放射線検出器
40 電子カセッテ(放射線画像撮影装置)
46 グリッド
110 コンソール
113 CPU(取得手段,実行手段,特定手段,画像処理手段)
120 放射線発生装置
162 保持部(変更手段)
162A モータ
165A 第1保持部
165B 第2保持部
166 保持部(変更手段)
166A モータ
X 放射線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線または放射線が変換された光に対して感度を有する画素が予め定められた画素間隔で2次元状に設けられた放射線検出器が設けられ、撮影面に照射された放射線により示される画像を撮影する放射線画像撮影装置と、
放射線を吸収する吸収部材が予め定められた間隔で設けられ、前記放射線検出器より放射線源側に配置されたグリッドと、
前記放射線検出器により撮影される放射線画像に前記グリッドの吸収部材によって発生するモアレ縞の空間周波数が予め定められた空間周波数以上となる、前記放射線検出器の画素の配列方向に対する前記グリッドの傾斜角度を取得する取得手段と、
前記グリッドと前記放射線検出器との間の相対角度を前記取得手段によって取得された傾斜角度とするための予め定められた処理を実行する実行手段と、
を有する放射線画像撮影システム。
【請求項2】
前記予め定められた空間周波数は、人体を表す放射線画像をフーリエ変換して周波数空間にマッピングすることにより得られる人体信号の空間周波数である
請求項1記載の放射線画像撮影システム。
【請求項3】
前記人体信号の空間周波数は、前記放射線画像撮影装置により撮影対象とされている部位毎に予め定められている
請求項2記載の放射線画像撮影システム。
【請求項4】
前記取得手段は、fを前記グリッドに設けられた前記吸収部材の配列方向に対する1cm当たりの本数とし、fを前記放射線検出器の前記画素間隔によって規定されるナイキスト周波数[本/cm]とし、θを前記グリッドと前記放射線検出器との相対角度[度]として、次の演算式により得られる空間周波数f’と、前記人体信号の空間周波数の上限値fμのナイキスト周波数fに対する比μと、を用いて、f’>μfを満足する角度θを演算することにより、前記傾斜角度を取得する
【数1】

請求項2または請求項3記載の放射線画像撮影システム。
【請求項5】
前記放射線画像撮影装置と前記グリッドとの間の相対角度を変更する変更手段をさらに有し、
前記実行手段は、前記予め定められた処理として、前記相対角度が前記取得手段によって取得された傾斜角度となるように前記変更手段を制御する処理を実行する
請求項1から請求項4の何れか1項記載の放射線画像撮影システム。
【請求項6】
前記実行手段は、前記予め定められた処理として、前記取得手段によって取得された傾斜角度を報知する処理を実行する
請求項1から請求項5の何れか1項記載の放射線画像撮影システム。
【請求項7】
前記放射線画像撮影装置によって撮影された放射線画像に前記吸収部材によって発生するモアレ縞の空間周波数を特定する特定手段と、
前記特定手段によって特定された空間周波数の成分を前記放射線画像撮影装置によって撮影された放射線画像から除去する画像処理を行う画像処理手段と、
をさらに有する請求項1から請求項6の何れか1項記載の放射線画像撮影システム。
【請求項8】
放射線または放射線が変換された光に対して感度を有する画素が予め定められた画素間隔で2次元状に設けられた放射線検出器が設けられ、撮影面に照射された放射線により示される画像を撮影する放射線画像撮影装置と、
前記放射線検出器により撮影される放射線画像に、放射線を吸収する吸収部材が予め定められた間隔で設けられ、前記放射線検出器より放射線源側に配置されたグリッドの吸収部材によって発生するモアレ縞の空間周波数を予め定められた空間周波数以上とすることのできる前記グリッドの種類、および前記放射線検出器の画素の配列方向に対する前記グリッドの傾斜角度を取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された前記グリッドの種類および前記傾斜角度を報知する報知手段と、
を有する放射線画像撮影システム。
【請求項9】
前記取得手段は、前記放射線画像撮影装置により撮影対象とされている部位毎に前記グリッドの種類および前記傾斜角度を取得する
請求項8記載の放射線画像撮影システム。
【請求項10】
放射線または放射線が変換された光に対して感度を有する画素が予め定められた画素間隔で2次元状に設けられた放射線検出器が設けられ、撮影面に照射された放射線により示される画像を撮影する放射線画像撮影装置と、放射線を吸収する吸収部材が予め定められた間隔で設けられ、前記放射線検出器より放射線源側に配置されたグリッドと、を有する放射線画像撮影システムにおいて実行されるプログラムであって、
コンピュータを、
前記放射線検出器により撮影される放射線画像に前記グリッドの吸収部材によって発生するモアレ縞の空間周波数が予め定められた空間周波数以上となる、前記放射線検出器の画素の配列方向に対する前記グリッドの傾斜角度を取得する取得手段と、
前記グリッドと前記放射線検出器との間の相対角度を前記取得手段によって取得された傾斜角度とするための予め定められた処理を実行する実行手段と、
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2012−200455(P2012−200455A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68659(P2011−68659)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】