説明

放射線画像撮影装置および欠陥画素位置情報取得方法

【課題】被写体を相異なる複数の方向から撮影する放射線画像撮影装置において、その出力画像信号が担持する放射線画像に欠陥画素が生じることを防止する。
【解決手段】撮影台22と、被写体Pに放射線Rを照射する放射線源10と、画像信号を出力する放射線検出器11と、放射線源10を、その放射線照射軸Oと撮影台22とがなす角度が変化するように移動させる撮影部駆動手段15とを備え、前記角度が、複数の所定角度のうちのいずれかに設定される毎に撮影を行う放射線画像撮影装置3において、放射線検出面11a上で放射線強度の異常が発生する位置を、前記所定角度と対応付けて記憶したテーブルT21〜T2360と、前記角度をある所定角度として撮影がなされて放射線検出器11から画像信号が得られたとき、その所定角度と対応付けてテーブルT21〜T2360に記憶されている前記位置に基づいて、その位置に関する画像信号の欠陥を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放射線画像撮影装置に、特に詳細には、被写体を相異なる複数の方向から撮影する機能を備えた放射線画像撮影装置に関するものである。
【0002】
また本発明は、上述のような放射線画像撮影装置に適用される欠陥画素位置情報を取得する方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
従来、例えば特許文献1に示されるように、被写体に相異なる複数の方向から放射線を照射して、その都度被写体の透過放射線画像を撮影し、そうして得られた複数の放射線画像情報に基づいて被写体の3次元画像や断層画像を再構成する放射線CT装置が公知となっている。この放射線CT装置においては、2次元放射線検出器およびそれに対向配置された放射線源が被写体の周りを回転するように移動され、この回転移動の位置が変わる毎に被写体に向けて例えばコーンビーム状の放射線が照射され、そのとき被写体を透過した放射線が2次元放射線検出器により検出されて、複数の放射線画像が撮影されるようになっている。
【0004】
また、例えば特許文献2に示されるように、放射線検出器の方は移動させないで被写体の断層画像や3次元画像を再構成する放射線トモシンセシス装置も公知となっている。この放射線トモシンセシス装置においては、固定状態とされた2次元放射線検出器に対して間に被写体を置いて対向する放射線源が、弧状の軌跡に沿って移動され、この移動位置が変わる毎に被写体に向けて放射線が照射され、そのとき被写体を透過した放射線が2次元放射線検出器により検出されて、複数の放射線画像が撮影される。
【0005】
さらに、例えば特許文献3に示されるように、放射線画像撮影装置の1つとして、乳癌検診等に利用されるマンモグラフィ撮影装置が知られている。このマンモグラフィ撮影装置の多くは、基本的に、2次元放射線検出器を内蔵して被写体の撮影部位である乳房を支持する撮影台と、該撮影台に対向して配置され、乳房を撮影台に対して押圧する圧迫板と、該圧迫板を介して乳房に放射線を曝射する放射線源とを備えて構成されている。
【0006】
上に述べたCT装置やトモシンセシス装置、マンモグラフィ撮影装置においては、特許文献2や特許文献3にも示されているように2次元放射線検出器として、2次元マトリクス状に配設された微小画素単位で、入射放射線の強度に対応した電流を出力する放射線固体検出器(いわゆる「Flat Panel Detector」、以下「FPD」という)が適用されることが多い。
【0007】
このFPDにおいては、入射放射線強度と出力電流との対応関係が、他の正常画素と比べて特異的に相違する欠陥画素が存在することがある。この問題に対応するために、例えば特許文献4には、FPDの欠陥画素の位置を予め把握しておき、放射線画像撮影時にFPDが出力する欠陥画素に関する画像信号については、周辺画素に関する画像信号の平均値等で置き換えるようにした信号補正方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−152927号公報
【特許文献2】特開2008−110098号公報
【特許文献3】特開2008−264519号公報
【特許文献4】特開2008−229102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の信号補正方法によれば、放射線画像撮影装置により得られた画像信号から放射線画像を再生したとき、再生画像に欠陥画素が生じることを防止可能である。しかし、従来の放射線CT装置やトモシンセシス装置、マンモグラフィ撮影装置においては、得られた画像信号に上記の信号補正方法を適用しても、その画像信号が担持する放射線画像に依然として欠陥画素(信号レベルが特異的に高いかあるいは低い画素)が生じることがある。この欠陥画素が生じている放射線画像から3次元画像や断層画像を再構成すると、アーチファクトが生じて読影の際の障害陰影になり、診断に悪影響を与える可能性もある。
【0010】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、前述したように被写体を相異なる複数の方向から撮影する機能を備えた放射線画像撮影装置において、その出力画像信号が担持する放射線画像に欠陥画素が生じることを確実に防止することを目的とする。
【0011】
さらに本発明は、そのような放射線画像撮影装置に適用される欠陥画素位置情報、つまり放射線強度の異常が発生する放射線検出面上の位置を示す情報を取得できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による第1の放射線画像撮影装置は、
被写体を保持する撮影台と、
この被写体に放射線を照射する放射線源と、
被写体を透過した前記放射線を受ける放射線検出面を有して、該被写体の透過放射線画像を担持する画像信号を出力する放射線検出器と、
前記放射線源を、その放射線照射軸と前記撮影台とがなす角度が変化するように、撮影台に対して相対移動させる撮影部駆動手段とを備え、
前記角度が、互いに異なる複数の所定角度のうちのいずれかに設定される毎に前記放射線源が駆動されるようにした放射線画像撮影装置において、
前記放射線源と放射線検出器との間に存在する部材の欠陥に起因して、前記放射線検出面上で放射線強度の異常が発生する位置を、前記複数の所定角度の各々と対応付けて記憶した記憶手段と、
前記角度をある所定角度として放射線照射がなされて、放射線検出器から画像信号が得られたとき、その所定角度と対応付けて前記記憶手段に記憶されている前記位置に基づいて、その位置に関する画像信号の欠陥を補正する補正手段とが設けられたことを特徴とするものである。
【0013】
なお上記「放射線強度の異常が発生する位置」とは、その位置の近辺と比べて、放射線強度が特異的に低くなったり、あるいは高くなったりしている位置を指すものである。
【0014】
また上記「前記放射線源を、その放射線照射軸と前記撮影台とがなす角度が変化するように、撮影台に対して相対移動させる撮影部駆動手段」とは、撮影台は固定しておいて放射線源を移動させる手段、反対に放射線源は固定しておいて撮影台を移動させる手段、そして放射線源と撮影台の双方を移動させる手段の全てを指すものである。
【0015】
また上記の放射線検出器が、前述したFPDのように、放射線検出面と平行な面内において2次元マトリクス状に配置された複数の画素を有するものである場合は、上記記憶手段として、放射線強度の異常が発生する位置を上記画素の位置として記憶したものを好適に用いることができる。
【0016】
また本発明の好ましい態様においては、前記撮影台、放射線源、放射線検出器および撮影部駆動手段がCT装置を構成するものとされ、
前記撮影部駆動手段が、放射線源およびそれに対向配置された放射線検出器を、撮影台の周りに回転させるように構成される。
【0017】
また、本発明の別の好ましい態様においては、前記撮影台、放射線源、放射線検出器および撮影部駆動手段がトモシンセシス装置を構成するものとされ、
前記撮影部駆動手段が、固定されている放射線検出器に対して間に撮影台を置いて対向する放射線源を移動させるように構成される。
【0018】
また、本発明の別の好ましい態様においては、前記撮影台、放射線源、放射線検出器および撮影部駆動手段がマンモグラフィ撮影装置を構成するものとされ、
前記撮影部駆動手段が、放射線検出器に対して間に圧迫板を置いて対向する放射線源を移動させるように構成される。
【0019】
さらに、本発明による第2の放射線画像撮影装置は、
被写体を保持する撮影台と、
この被写体に放射線を照射する放射線源と、
被写体を透過した前記放射線を受ける放射線検出面を有して、該被写体の透過放射線画像を担持する画像信号を出力する放射線検出器と、
前記放射線源を、その放射線照射軸と直角または平行な方向の相対位置が変化するように、撮影台に対して相対移動させる撮影部駆動手段とを備え、
前記相対位置が、互いに異なる複数の所定位置のうちのいずれかに設定される毎に前記放射線源が駆動されるようにした放射線画像撮影装置において、
前記放射線源と放射線検出器との間に存在する部材の欠陥に起因して、前記放射線検出面上で放射線強度の異常が発生する位置を、前記複数の所定位置の各々と対応付けて記憶した記憶手段と、
前記相対位置をある所定位置として放射線照射がなされて、放射線検出器から画像信号が得られたとき、その所定位置と対応付けて前記記憶手段に記憶されている前記相対位置に基づいて、その相対位置に関する画像信号の欠陥を補正する補正手段とが設けられたことを特徴とするものである。
【0020】
この本発明による第2の放射線画像撮影装置においても、上記「放射線強度の異常が発生する位置」とは、その位置の近辺と比べて、放射線強度が特異的に低くなったり、あるいは高くなったりしている位置を指すものである。
【0021】
また、この本発明による第2の放射線画像撮影装置においても、上記「前記放射線源を、その放射線照射軸と直角または平行な方向の相対位置が変化するように、撮影台に対して相対移動させる撮影部駆動手段」とは、撮影台は固定しておいて放射線源を移動させる手段、反対に放射線源は固定しておいて撮影台を移動させる手段、そして放射線源と撮影台の双方を移動させる手段の全てを指すものである。
【0022】
また、この本発明による第2の放射線画像撮影装置においても、放射線検出器が、前述したFPDのように、放射線検出面と平行な面内において2次元マトリクス状に配置された複数の画素を有するものである場合は、上記記憶手段として、放射線強度の異常が発生する位置を上記画素の位置として記憶したものを好適に用いることができる。
【0023】
他方、本発明による第1の欠陥画素位置情報取得方法は、
上述した本発明による第1の放射線画像撮影装置において、放射線源と放射線検出器との間に存在する部材の欠陥に起因して、前記放射線検出面上で放射線強度の異常が発生する画素位置を求める欠陥画素位置情報取得方法であって、
放射線源と放射線検出器との間に前記部材を配置し、
放射線源を、その放射線照射軸と撮影台とがなす角度が変化するように、該撮影台に対して相対移動させ、
前記角度が変化する毎に放射線源を駆動して前記部材の透過放射線画像を撮影し、
この撮影によって得られた複数の放射線画像間において、前記部材の同一部分を示してかつ放射線強度の異常が発生している画素位置が、前記角度の変化に応じて変化している場合は、それらの画素位置の各々を、該画素位置を示す画像を撮影したときの前記角度と対応付けて取得することを特徴とするものである。
【0024】
なお、上記「放射線源を、その放射線照射軸と撮影台とがなす角度が変化するように、該撮影台に対して相対移動させ」とは、撮影台は固定しておいて放射線源を移動させること、反対に放射線源は固定しておいて撮影台を移動させること、そして放射線源と撮影台の双方を移動させることの全てを指すものである。
【0025】
また、本発明による第2の欠陥画素位置情報取得方法は、
上述した本発明による第2の放射線画像撮影装置において、放射線源と放射線検出器との間に存在する部材の欠陥に起因して、前記放射線検出面上で放射線強度の異常が発生する画素位置を求める欠陥画素位置情報取得方法であって、
前記放射線源と放射線検出器との間に前記部材を配置し、
前記放射線源を、その放射線照射軸と直角または平行な方向の相対位置が変化するように、該撮影台に対して相対移動させ、
前記相対位置が変化する毎に放射線源を駆動して前記部材の透過放射線画像を撮影し、
この撮影によって得られた複数の放射線画像間において、前記部材の同一部分を示してかつ放射線強度の異常が発生している画素位置が、前記相対位置の変化に応じて変化している場合は、それらの画素位置の各々を、該画素位置を示す画像を撮影したときの前記相対位置と対応付けて取得することを特徴とするものである。
【0026】
なお、ここでも上記「放射線源を、その放射線照射軸と直角または平行な方向の相対位置が変化するように、該撮影台に対して相対移動させ」とは、撮影台は固定しておいて放射線源を移動させること、反対に放射線源は固定しておいて撮影台を移動させること、そして放射線源と撮影台の双方を移動させることの全てを指すものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明者の研究によると、従来の放射線CT装置や放射線トモシンセシス装置、マンモグラフィ撮影装置において、得られた画像信号に対して特許文献4が示す信号補正方法を適用しても、その画像信号が担持する画像に依然として欠陥画素が生じるのは、以下の理由によるものであることが分かった。
【0028】
放射線画像撮影装置においては放射線源と放射線検出器との間に撮影台等の部材が存在するが、そのような部材中には、放射線を吸収する異物が混入していることがある。具体的には、撮影台中の異物(ベッドの塗膜中の気泡や、放射線遮蔽板中の気泡、金属片、欠陥等)や、マンモグラフィ撮影装置の圧迫板(この圧迫板も、広い意味での撮影台の一部を構成するものである)中の異物、散乱線除去グリッド中の異物などが挙げられる。そのような異物が存在していると、そこを経て放射線検出器の放射線検出面に到達する放射線は強度が特異的に低くなったり、反対に高くなったりするので、欠陥画素の発生を招く。そして、そのような異物を経た放射線が放射線検出面に到達する位置は、放射線照射軸と撮影台とがなす角度が変化するように放射線源あるいは撮影台が移動するのに伴って変化するので、先に説明した特許文献4に示される信号補正方法を適用しても、正しい補正がなされ得ないのである。
【0029】
上述のように異物を経た放射線が放射線検出面に到達する位置は、放射線照射軸と直角または平行な方向の相対位置が変化するように放射線源あるいは撮影台が移動した場合も、その移動に伴って変化するので、上記と同様の問題が生じることになる。
【0030】
本発明による第1の放射線画像撮影装置は上記の知見に基づいて、放射線源と放射線検出器との間に存在する部材の欠陥に起因して、放射線検出面上で放射線強度の異常が発生する位置を、複数の所定角度(放射線照射軸と撮影台とがなす角度)の各々と対応付けて記憶した記憶手段と、上記角度をある所定角度として放射線照射がなされて、放射線検出器から画像信号が得られたとき、その所定角度と対応付けて記憶手段に記憶されている位置に基づいて、その位置に関する画像信号の欠陥を補正する補正手段とが設けられたものである。そこでこの放射線画像撮影装置によれば、異物を経た放射線が放射線検出面に到達する位置が放射線源あるいは撮影台の移動に伴って変化しても、画像信号の欠陥を適正に補正して、この画像信号が担持する放射線画像に欠陥画素が発生することを確実に防止可能となる。
【0031】
他方、本発明による第1の欠陥画素位置情報取得方法によれば、
放射線源と放射線検出器との間に前記部材を配置し、
放射線源を、その放射線照射軸と撮影台とがなす角度が変化するように、該撮影台に対して相対移動させ、
前記角度が変化する毎に放射線源を駆動して前記部材の透過放射線画像を撮影し、
この撮影によって得られた複数の放射線画像間において、前記部材の同一部分を示してかつ放射線強度の異常が発生している画素位置が、前記角度の変化に応じて変化している場合は、それらの画素位置の各々を、該画素位置を示す画像を撮影したときの前記角度と対応付けて取得するようにしたので、
上述した本発明による第1の放射線画像撮影装置において、放射線源と放射線検出器との間に存在する部材の欠陥に起因して、放射線検出面上で放射線強度の異常が発生する画素位置を正確に示す情報を取得可能となる。
【0032】
また、本発明による第2の放射線画像撮影装置は上記の知見に基づいて、放射線源と放射線検出器との間に存在する部材の欠陥に起因して、放射線検出面上で放射線強度の異常が発生する位置を、複数の所定の相対位置(放射線照射軸と直角または平行な方向の放射線源と撮影台との相対位置)の各々と対応付けて記憶した記憶手段と、上記相対位置をある所定位置として放射線照射がなされて、放射線検出器から画像信号が得られたとき、その所定位置と対応付けて記憶手段に記憶されている位置に基づいて、その位置に関する画像信号の欠陥を補正する補正手段とが設けられたものである。そこでこの放射線画像撮影装置によれば、異物を経た放射線が放射線検出面に到達する位置が放射線源あるいは撮影台の移動に伴って変化しても、画像信号の欠陥を適正に補正して、この画像信号が担持する放射線画像に欠陥画素が発生することを確実に防止可能となる。
【0033】
他方、本発明による第2の欠陥画素位置情報取得方法によれば、
放射線源と放射線検出器との間に前記部材を配置し、
放射線源を、その放射線照射軸と直角または平行な方向の相対位置が変化するように、該撮影台に対して相対移動させ、
前記相対位置が変化する毎に放射線源を駆動して前記部材の透過放射線画像を撮影し、
この撮影によって得られた複数の放射線画像間において、前記部材の同一部分を示してかつ放射線強度の異常が発生している画素位置が、前記相対位置の変化に応じて変化している場合は、それらの画素位置の各々を、該画素位置を示す画像を撮影したときの前記相対位置と対応付けて取得するようにしたので、
上述した本発明による第2の放射線画像撮影装置において、放射線源と放射線検出器との間に存在する部材の欠陥に起因して、放射線検出面上で放射線強度の異常が発生する画素位置を正確に示す情報を取得可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態による放射線画像撮影装置を備えたCT装置を示す概略側面図
【図2】上記CT装置の信号処理に関わる構成を示すブロック図
【図3】欠陥画素が発生する原因を説明する図
【図4】欠陥画素補正テーブルの取得方法を説明する図
【図5】本発明の放射線画像撮影装置が適用され得るトモシンセシス装置を示す概略正面図
【図6】本発明の放射線画像撮影装置が適用され得るトモシンセシス装置の別の例を示す概略正面図
【図7】本発明が適用され得るマンモグラフィ撮影装置の一例を示す概略正面図
【図8】欠陥画素が発生する別の原因を説明する図
【図9】欠陥画素が発生するさらに別の原因を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態による放射線画像撮影装置を適用した放射線CT装置の概略構成を示すものである。この放射線CT装置1は、撮影部2等から構成された放射線画像撮影装置3と、撮影部2に接続されて、撮影装置の制御や撮影により得られた画像の処理を行うコンピュータ30と、このコンピュータ30に接続された画像表示手段31とから構成されている。
【0036】
放射線画像撮影装置3は、円錐状(コーンビーム状)の放射線Rを発する放射線源10と、放射線源10から発せられて被写体Pを透過した放射線Rを検出する放射線検出器11と、放射線源10および放射線検出器11を保持するCアーム12からなる撮影部2と、この撮影部2を回転させる撮影部駆動手段15と、撮影部駆動手段15を保持するアーム20と、被写体Pを支持する撮影台22とを有している。なお、放射線源10としては上述のものの他に、扇状(ファンビーム状)や線状(ペンシルビーム状)の放射線を発するものが用いられてもよい。
【0037】
上記撮影部2は、回転軸Cの周りに360°回転可能である。また、可動部20aを備えたアーム20は、天井に対し移動可能に取り付けられた基部21に保持されている。なお撮影部2は、360°以外の例えば180°等の角度範囲を回転可能とされてもよい。
【0038】
放射線源10と放射線検出器11とは、回転軸Cを間に挟んで所定距離離れた状態に対向配置されている。放射線検出器11は一例としてFPDからなるものであり、その放射線検出面11aと平行な面内に、放射線Rを検出する最小単位である画素が2次元マトリクス状に配置されている。なおこの種のFPDについては、前述した特許文献2にも詳しい記載がなされている。
【0039】
コンピュータ30は、それぞれ不図示の中央処理装置(CPU)、HDDやSSD等のストレージデバイス、マウスやキーボード等の操作入力手段を備えている。上記CPUは、連続撮影により得られた複数の画像信号に対して画像再構成演算を行って被写体Pの3次元放射線CT像や断層画像を得る画像処理手段としての機能や、放射線源10の動作制御、放射線検出器11の検出動作および画像信号読出動作の制御、撮影部駆動手段15による撮影部2の回転移動制御等を行う機能を備える。
【0040】
以下、この放射線CT装置1の基本的な作用について説明する。まず、被写体Pを撮影台22上に仰臥させ、被写体Pの体の略中心を回転軸Cとして、この回転軸Cを挟んで放射線源10と放射線検出器11とが対称位置に配されるように撮影部2の位置決めがなされる。撮影部2の移動は、撮影者によるコンピュータ30の操作に基づいて行なわれる。
【0041】
撮影が開始されると、撮影部2が回転軸Cの周りに回転される。このように撮影部2が回転されて、放射線源10の放射線照射軸Oと撮影台22とがなす角度(つまり被写体Pに対する放射線照射方向)が所定角度となる毎に、放射線源10が駆動される。こうして放射線源10から発せられて被写体Pを透過した放射線Rは、放射線検出器11に入射する。放射線検出器11は、前述の画素単位で入射放射線の強度を示す、つまり被写体Pの透過放射線画像を担持する画像信号を出力する。
【0042】
以上のようにして、被写体Pを互いに異なる方向から撮影した複数の放射線画像を示す画像信号が取得される。これらの画像信号はコンピュータ30に入力され、後述する第1補正および第2補正を受けた後、ストレージデバイスに蓄積される。
【0043】
連続撮影が終了するとコンピュータ30のCPUは、ストレージデバイスに蓄積されている上記画像信号から画像再構成演算を行って、3次元放射線CT像やあるいは断層画像を生成し、それらの像を画像表示手段31上に表示させる。
【0044】
次に、上記画像信号が担持する放射線画像において欠陥画素が生じることを防止する点について説明する。まず図3を参照して、このような欠陥画素が生じる原因について説明する。なおこの図3において、図1中の要素と同等の要素には同番号を付してあり、それらについての説明は特に必要のない限り省略する(以下、同様)。
【0045】
図3の(1)は、放射線検出器11に欠陥画素Fdが有る場合、該放射線検出器11から得られる画像信号のレベルが変化する様子を説明するものである。ここでは欠陥画素Fdが、例えば検出器表面に付着した放射線を大きく吸収する異物のために欠陥画素となっているものとすると、その画素に関する画像信号のレベルは特異的に低くなる。放射線検出器11における欠陥画素Fdの位置は不変であるから、同図(1)に示した欠陥画素Fdによる信号レベルの低下は、同図(2)、(3)の場合も同様に発生する。
【0046】
放射線検出器11の欠陥画素Fdは、シンチレータや光導電体といったX線変換膜やフォトダイオードの異常、さらには検出器表面の傷等によっても発生し得るものである。そして、その欠陥画素Fdからの画像信号のレベルは、欠陥の原因に応じて特異的に高くなったり反対に低くなったりするが、とにかく異常値を示すので、該信号のレベルに基づいて欠陥画素Fdを識別可能である。
【0047】
他方、同図(2)に示すように、放射線源10と放射線検出器11との間に位置する部材、ここでは一例として撮影台22に、放射線を大きく吸収する欠陥Feが存在する場合を考える。その場合、該欠陥Feを透過した放射線が入射する放射線検出器11上の位置では、入射放射線強度が特異的に低下する。そこで、その位置の画素に関する画像信号のレベルは特異的に低くなる。
【0048】
次に、図3の(2)に示す状態から、放射線源10および放射線検出器11が前述のように回転移動された状態を、同図(3)に示す。こうして放射線照射軸Oと撮影台22とがなす角度が変わると、撮影台22の欠陥Feを透過した放射線が入射する放射線検出器11上の位置が変化するので、この欠陥Feに起因して画像信号のレベルが低下する画素位置も変化する。
【0049】
上述のような欠陥Feとしては、放射線を大きく吸収する異物等に限らず、反対に放射線を通常よりも多く透過させるものも存在し得る。その種の欠陥Feとして具体的には、例えば撮影台22に残された気泡からなるものが存在する。そのような欠陥Feが存在する場合は、該欠陥Feを透過した放射線が入射する放射線検出器11上の位置では、入射放射線強度が特異的に増大する。そこで、その位置の画素に関する画像信号のレベルは特異的に高くなる。
【0050】
次に図2は、放射線CT装置1の信号処理に関わる構成を示すものである。なおこの図2においてコンピュータ30の中に「○○部」として示す各要素は、ハードウェアとして個別に存在するものではなく、ソフトウェアに基づいて各処理を実行する構成を分かりやすく示すものである。なお勿論ながら、上記各要素は個別のハードウェアから構成されてもよい。また、ここでは一例として、撮影部2の回転角度つまりは放射線源10の回転角度が1°変化する毎に撮影動作がなされ、したがって一連の撮影では合計360枚の放射線画像が撮影されるものとする。
【0051】
この一連の放射線画像の撮影時、放射線検出器11の出力はまず前処理部40に入力され、ここで増幅、A/D変換等の処理を受けて所定規格の画像信号とされ、この画像信号は次に書込/読出部41に入力される。書込/読出部41は1枚の放射線画像についての画像信号が入力される都度、それをメモリ42に一時的に格納し、後述する補正処理のためにタイミングを調整してメモリ42から画像信号を随時読み出し、それを第1補正部43に入力する。
【0052】
この第1補正部43は、コンピュータ30の内部メモリに保存されているテーブルT1を参照して、放射線検出器11に存在する欠陥画素Fdの位置を求め、その欠陥画素Fdに関する画像信号を補正する。なお、放射線検出器11における欠陥画素の存在状態は当然1通りであるから、1つだけのテーブルT1が用いられる。図4の(2)は、このようなテーブルT1を模式的に示すものである。同図中のマス目の一つ一つは、放射線検出器11における画素を示しており、黒く塗り潰されたマス目が欠陥画素(図3に示した欠陥画素Fd)を示している。つまりこの例では、画素マトリクスの原点を左上隅とすると、第5行第3列目の画素が欠陥画素となっている。
【0053】
上記補正は具体的には、欠陥画素に関する信号を、該欠陥画素の周囲に有る所定数(複数)の画素に関する各信号の平均値や中央値で置き換えることによってなされる。この補正は、360枚の放射線画像を各々担持する画像信号に対して共通に行われる。なお、上記所定数の画素の中に別の欠陥画素が存在する場合は、その別の欠陥画素に関する画像信号は除外した上で上記平均値や中央値等を求めるのが望ましい。ただし、欠陥画素の補正はそれらに限定されるものではなく、その他の方法によってなされてもよい。
【0054】
上記補正を受けた画像信号は、次に第2補正部44に送られる。第2補正部44はまず、コンピュータ30の内部メモリに保存されている例えば360個のテーブルT21〜T2360の中から1つを選択する。以下、この選択について説明する。
【0055】
本例では、前述した放射線照射軸Oが撮影台22に対して第1の所定角度(例えば90°)となる状態で1回目の撮影がなされ、それから放射線源10の回転位置が1°変えられる毎に2回目、3回目・・・として合計360回の撮影がなされる。360個のテーブルT21〜T2360は各々、この撮影順番と対応付けて、つまりは放射線照射軸Oの撮影台22に対する角度と対応付けて記憶されている。
【0056】
図4の(3)は、このようなテーブルT21〜T2360を模式的に示すものである。同図中のマス目の一つ一つは、放射線検出器11における画素を示しており、斜線が付されたマス目が、図3に示した撮影台22の欠陥Feに起因して入射放射線強度が特異的に低くなるか、あるいは高くなる位置に有る画素を示している。つまりこの例のテーブルT21では、画素マトリクスの原点を左上隅とすると、第3行第3列目の画素および第2行第6列目の画素において入射放射線強度が特異的に低くなるか、あるいは高くなっている。第2補正部44は、補正にかける画像信号がn番目に撮影された放射線画像に関するものであるとすると、撮影順番nと対応付けて記憶されているテーブルT2を選択する。
【0057】
第2補正部44は、その選択したテーブルT2を参照して、入射放射線強度が特異的に低くなるか、あるいは高くなる画素の位置を求め、その画素に関する画像信号を補正する。この補正は、基本的に第1補正部43が行う補正と同様にしてなされる。
【0058】
第2補正部44による補正を受けた後の画像信号は次に再構成処理部45に送られ、そこで前述のストレージデバイスに一旦蓄積された後、再構成処理を受ける。こうして再構成処理にかけられる画像信号は、前述した通り第1補正部43および第2補正部44による補正処理がなされたものであるから、この画像信号が担持する放射線画像において、放射線検出器11の欠陥画素Fdや、撮影台22の欠陥Feに起因して欠陥画素が生じることを防止できる。本発明によれば、特に従来技術では防止できなかった、撮影台22の欠陥Feに起因する欠陥画素の発生も確実に防止可能となる。
【0059】
次に、上述したテーブルT1およびテーブルT21〜T2360の作成について、図2および図4を参照して説明する。これらのテーブルを作成する際には、撮影台22に被写体Pを置かない状態にして、放射線源10から放射線検出器11に向けて一様強度の放射線Rを照射する、いわゆるベタ照射がなされる。このベタ照射も、例えば放射線源10および放射線検出器11の回転位置を1°変える毎に行って、合計360回なされる。このとき図2の放射線検出器11が発する出力信号は、前述した被写体画像撮影の場合と同様に前処理部40、書込/読出部41を通して、メモリ42に記憶される。なお前処理部40においては、上記出力信号に対して、信号レベルを全体的に動かすオフセット補正や、ゲインおよび/またはシェーディング補正を施すようにしてもよい。
【0060】
テーブル作成部46は、1枚の放射線画像を担持する画像信号に対して閾値処理を施すことにより、信号レベルが特異的に高くなっているか、あるいは低くなっている画素を抽出する。テーブル作成部46はこの処理を、360枚の放射線画像を担持する画像信号全てに対して行う。図4の(1)は、このようにして抽出された画素を、撮影順番が1番目の画像D1、2番目の画像D2、・・・360番目の画像D360について示すものである。なお、この図におけるマス目が意味するところは、図4の(2)および(3)について先に説明したものと同じである。また、抽出画素は図4の(1)において黒く塗り潰された画素と、斜線が付された画素の双方である。
【0061】
ここで、上記の黒く塗り潰された画素の位置は、撮影順番が変わっても、つまり放射線照射軸Oと撮影台22とがなす角度が変わっても不変である。それに対して斜線を付した画素の位置は、撮影順番が変わると変化している。先に説明した図3によれば、前者の画素に関する信号レベルが特異的に高くなるか、あるいは低くなるのは、放射線検出器11の欠陥画素Fdに起因すると考えられる。一方、後者の画素に関する信号レベルが特異的に高くなるか、あるいは低くなるのは、撮影台22の欠陥Feに起因すると考えられる。そこでテーブル作成部46は、前者の画素の位置に基づいて同図(2)のテーブルT1を作成し、後者の画素の位置に基づいて同図(3)のテーブルT21〜T2360を作成する。
【0062】
こうして作成されたテーブルT1およびテーブルT21〜T2360は、それぞれ前述した通り、第1補正部43が行う補正、第2補正部44が行う補正において、補正を行うべき画素の位置を求めるために利用される。
【0063】
なお、上記テーブルT1だけを作成する場合は、放射線のベタ照射はしないで、放射線検出器11をいわゆる空読みをするように作動させ、そのときの放射線検出器11の出力信号からテーブルT1を求めることも可能である。
【0064】
また、放射線のベタ照射を行ってテーブルT1およびテーブルT21〜T2360を作成する場合、放射線照射軸Oと撮影台22とがなす角度を変える毎に、放射線量を互いに変えたベタ照射を少なくとも2回行い、そうして得られた複数画像間のリニアリティ(放射線検出器の出力信号レベル対放射線量の関係)を画素毎に求め、それと所定の閾値との大小関係に基づいて、図4の(1)に示した抽出画素を求めることも可能である。さらには、上記ベタ照射を少なくとも2回行う代わりに、上記の空読みを例えばゲインを変えて少なくとも2回行い、それ以後は上述と同様にして、図4の(1)に示した抽出画素を求めることも可能である。
【0065】
さらに、同様に放射線のベタ照射を行ってテーブルT1およびテーブルT21〜T2360を作成する場合、放射線照射軸Oと撮影台22とがなす角度を変える毎に、放射線照射時間を互いに変えたベタ照射を少なくとも2回行い、そうして得られた複数画像間のリニアリティ(放射線検出器の出力信号レベル対放射線照射時間の関係)を画素毎に求め、それと所定の閾値との大小関係に基づいて、図4の(1)に示した抽出画素を求めることも可能である。
【0066】
なお、以上説明した欠陥画素が頻出する状態となっているのに、3次元画像や断層画像の再構成を行うのは、それらの画像の読影性能を高く保つ上で好ましくない。そこで、図4の(1)に示した抽出画素の合計数が所定の閾値を超えた場合や、それらの抽出画素の連続長が所定の閾値を超えた場合や、さらにはそれらの抽出画素の群面積(密集度)が所定の閾値を超えた場合には警告を発生させるようにして、必要な処置を取らせるようにするのが望ましい。その必要な処置としては、新たな補正用テーブルを作成するためのキャリブレーションを行う、放射線画像撮影装置の保守・修理を依頼する、といったことが挙げられる。
【0067】
本発明の欠陥画素位置情報取得方法によれば、放射線画像における欠陥画素の発生が放射線検出器11の欠陥画素Fdに起因するのか、あるいは撮影台22の欠陥Feに起因するのかが分かるので、上記必要な処置としてどの処置を行えばよいのかが直ちに判断可能となり、よって、この処置を決定するために長時間を要することを防止できる。
【0068】
以上、放射線CT装置に適用された放射線画像撮影装置について説明したが、本発明の放射線画像撮影装置は前述した放射線トモシンセシス装置を構成するために適用することも可能である。図5はそのような放射線トモシンセシス装置の一例を示すものである。この装置においては、撮影台22上の被写体Pの中に設定された点Qを中心とする弧状の軌跡Mに沿って放射線源10が移動され、その移動位置が変わる毎に、つまり放射線照射軸Oと撮影台22とがなす角度が変わる毎に放射線画像の撮影がなされる。こうして得られた複数の放射線画像に基づけば、被写体Pの3次元画像や断層画像を再構成することができる。
【0069】
また図6は、放射線トモシンセシス装置の別の例を示すものである。この装置においては、例えば図示外の天井走行系に保持された放射線源10が撮影台22と平行な方向に、つまり直線状の軌跡Nに沿って移動する。そして、その移動位置が変わる毎に放射線源10の煽り角度、つまり放射線照射軸Oと撮影台22とがなす角度が変えられて、その都度放射線画像の撮影がなされる。この場合も、撮影によって得られた複数の放射線画像に基づけば、被写体Pの3次元画像や断層画像を再構成することができる。
【0070】
このような放射線トモシンセシス装置においても、上述のようにして撮影された複数画像を各々担持する画像信号に対して、図1の放射線CT装置1においてなされたのと同様の補正処理を施せば、その放射線CT装置1において得られた効果を同様に奏することができる。
【0071】
次に図7を参照して、本発明が適用され得るマンモグラフィ撮影装置の一例について説明する。この装置においては、既に説明したような放射線検出器11が撮影台22の内部に配置され、被写体としての乳房Pmがこの撮影台22の上に配置され、その上から圧迫板50によって乳房Pmが圧迫される。この状態を保った上で、図6の装置におけるのと同様に放射線源10が撮影台22と平行な方向に移動され、その移動位置が変わる毎に放射線源10の煽り角度、つまり放射線照射軸Oと撮影台22とがなす角度が変えられて、その都度放射線画像が撮影される。
【0072】
上記圧迫板50は、広い意味での撮影台の一部を構成するものであるが、その内部や表面に異物や気泡、傷等が存在することがある。そのような異物や気泡、傷等が存在すると、そこを経て放射線検出器11の放射線検出面(図中の上面)に到達する放射線は強度が特異的に低くなったり、反対に高くなったりするので、欠陥画素の発生を招く。そして、そのような異物等を経た放射線が放射線検出器11の放射線検出面に到達する位置は、放射線源10が移動して、放射線照射軸Oと圧迫板50とがなす角度が変化するのに伴って変化する。
【0073】
このようなマンモグラフィ撮影装置においても、上述の通りにして撮影された複数画像を各々担持する画像信号に対して、図1の放射線CT装置1においてなされたのと同様の補正処理を施せば、その放射線CT装置1において得られた効果を同様に奏することができる。
【0074】
なお図7に示したマンモグラフィ撮影装置は、複数回の放射線画像撮影の都度、放射線照射軸Oと放射線検出器11の放射線検出面とがなす角度が変化するものであるが、この角度が複数回の放射線画像撮影を通して一定とされてもよい。そのような場合においても、異物や気泡、傷等が存在し得る圧迫板50と放射線照射軸Oとがなす角度が撮影の都度変わるので、位置を変えて欠陥画素が発生する問題が起き得るが、本発明を適用することにより、そのような欠陥画素の発生を防止することができる。
【0075】
また放射線検出器11としては、先に説明したように特許文献2に開示されているもの、すなわち画像情報を担う放射線の照射を受けてその画像を静電潜像として記録する記録層と、この記録層を読取光で走査して上記静電潜像に対応した電荷を発生させる読出部とを備えてなるものに限らず、その他の公知のものも適宜利用可能である。例えば、特開2009−212377号公報には、画像情報を担う放射線をシンチレータにより可視光に変換し、ファイバープレートによりこの可視光をCCD型あるいはCMOSのイメージセンサに導き、ここで可視光を光電変換して、放射線画像を示す画像信号を得る撮像素子が開示されているが、本発明においてはその種の撮像素子を放射線検出器として適用することも可能である。シンチレータとしては、例えば、特開2011−17683号公報に記載されているような、CsIなどの柱状結晶により構成されたものを用いることが好ましい。このようなシンチレータを用いることによって、より鮮鋭度の高い放射線画像を取得することができ、特に連続して複数の放射線画像を撮影する際にその効果が顕著である。
【0076】
以上、固定されている撮影台22に対して放射線源10が、その放射線照射軸Oが撮影台22となす角度が変化するように移動する構成とされた実施形態について説明したが、それとは反対に、固定された放射線源10に対して撮影台22が移動することにより上記角度を変化させることも可能である。さらには、放射線源10と撮影台22の双方が移動して上記角度を変化させることも可能である。本発明はそれらの場合にも適用可能であり、適用された場合は前述と同様の効果を奏するものである。
【0077】
さらに本発明は、放射線源10および撮影台22のいずれか一方あるいは双方が、放射線照射軸Oと直角あるいは平行な方向の相対位置を変えるように移動する場合にも同様に適用可能である。以下、それらの場合について、図8および図9を参照して説明する。
【0078】
図8は、先に説明した図3と同様に、撮影台22の欠陥画素Feに起因して画像信号のレベルが特異的に変化することを示しており、その(1)および(2)は図3のものとそれぞれ同じである。この図8の(2)に示す状態で放射線画像撮影がなされた後、撮影台22が放射線照射軸Oと直角な方向に移動した同図(3)の状態で放射線画像撮影がなされると、それら2回の撮影時に放射線検出器11上で入射放射線強度が特異的に低下する位置は、図示の通り互いに異なることになる。つまり、放射線照射軸Oと直角な方向に関する放射線源10と撮影台22との相対位置が変化すれば、撮影された放射線画像において、上記欠陥Feに起因して画像信号のレベルが低下する画素位置が異なることになる。
【0079】
そこでこの場合は、上記相対位置を変えた放射線画像が例えば10回なされるとすれば、各回の撮影毎に画像信号のレベルが特異的に低下あるいは増大する画素位置を示すテーブル(前記実施形態におけるテーブルT2に相当するものである)が10個作成され、それらのテーブルを用いて、例えば図2の第2補正部44において前述と同様の補正処理が行われる。それにより、撮影台22の欠陥Feに起因して放射線画像に欠陥画素が生じることが確実に防止される。
【0080】
上記テーブルの作成も、前述した場合と同様にして行うことができる。すなわちこのテーブルを作成する際には、撮影台22に被写体Pを置かない状態にして、放射線源10から放射線検出器11に向けて一様強度の放射線Rを照射する、いわゆるベタ照射がなされる。このベタ照射は、放射線源10と撮影台22の、放射線照射軸Oに直角な方向に沿った相対位置を10通り(各々、放射線画像撮影時に設定される相対位置と同じである)に変えて行われる。このとき放射線検出器11が発する出力信号は、前述した被写体画像撮影の場合と同様に、例えば図2の前処理部40、書込/読出部41を通して、メモリ42に記憶され、その記憶内容に基づいて10通りのテーブルが作成される。
【0081】
なお、以上は、固定された放射線源10に対して、撮影台22が放射線照射軸Oと直角な方向に移動する場合について説明したが、それとは反対に、固定された撮影台22に対して放射線源10が移動することにより、両者の放射線照射軸Oと直角な方向に関する相対位置を変化させることも可能である。さらには、放射線源10と撮影台22の双方が移動して上記相対位置を変化させることも可能である。本発明はそれらの場合にも適用可能であり、適用された場合は前述と同様の効果を奏するものである。
【0082】
次に、放射線照射軸Oと平行な方向に関する放射線源10と撮影台22との相対位置が変えられる場合について説明する。図9は、前述の図3と同様に、撮影台22の欠陥画素Feに起因して画像信号のレベルが特異的に変化することを示しており、その(1)および(2)は図3のものとそれぞれ同じである。この図9の(2)に示す状態で放射線画像撮影がなされた後、撮影台22が放射線照射軸Oと平行な方向に移動した同図(3)の状態で放射線画像撮影がなされると、それら2回の撮影時に放射線検出器11上で入射放射線強度が特異的に低下する位置は、図示の通り互いに異なることになる。つまり、放射線照射軸Oと平行な方向に関する放射線源10と撮影台22との相対位置が変化すれば、撮影された放射線画像において、上記欠陥Feに起因して画像信号のレベルが低下する画素位置が異なることになる。さらにこの場合は、画像信号のレベルが低下する画素範囲も異なることになる。つまり、放射線源10と撮影台22との相対位置がより近くなるほど、画像信号のレベルが低下する画素範囲が広くなる。
【0083】
そこでこの場合は、上記相対位置を変えた放射線画像が例えば10回なされるとすれば、各回の撮影毎に画像信号のレベルが特異的に低下あるいは増大する画素位置を示すテーブルが10個作成され、それらのテーブルを用いて例えば図2の第2補正部44において前述と同様の補正処理が行われる。それにより、撮影台22の欠陥Feに起因して放射線画像に欠陥画素が生じることが確実に防止される。なお、上記テーブルは基本的に前記実施形態におけるテーブルT2に相当するものであるが、この場合は画像信号のレベルが特異的に変化する全ての画素位置を示すことにより、画像信号のレベルが低下する画素範囲も示されることになる。
【0084】
上記テーブルの作成も、前述した場合と同様にして行うことができる。すなわちこのテーブルを作成する際には、撮影台22に被写体Pを置かない状態にして、放射線源10から放射線検出器11に向けて一様強度の放射線Rを照射する、いわゆるベタ照射がなされる。このベタ照射は、放射線源10と撮影台22の、放射線照射軸Oに平行な方向に沿った相対位置を10通り(各々、放射線画像撮影時に設定される相対位置と同じである)に変えて行われる。このとき放射線検出器11が発する出力信号は、前述した被写体画像撮影の場合と同様に、例えば図2の前処理部40、書込/読出部41を通して、メモリ42に記憶され、その記憶内容に基づいて10通りのテーブルが作成される。
【0085】
なお、以上は、固定された放射線源10に対して、撮影台22が放射線照射軸Oと平行な方向に移動する場合について説明したが、それとは反対に、固定された撮影台22に対して放射線源10が移動することにより、両者の放射線照射軸Oと直角な方向に関する相対位置を変化させることも可能である。さらには、放射線源10と撮影台22の双方が移動して上記相対位置を変化させることも可能である。本発明はそれらの場合にも適用可能であり、適用された場合は前述と同様の効果を奏するものである。
【符号の説明】
【0086】
1 放射線CT装置
2 撮影部
3 放射線画像撮影装置
10 放射線源
11 放射線検出器
11a 放射線検出器の検出面
12 Cアーム
15 撮影部駆動手段
22 撮影台
30 コンピュータ
31 画像表示手段
43 第1補正部
44 第2補正部
45 再構成処理部
46 テーブル作成部
O 放射線照射軸
R 放射線
T1、T21、T22、T2360 テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を保持する撮影台と、
この被写体に放射線を照射する放射線源と、
被写体を透過した前記放射線を受ける放射線検出面を有して、該被写体の透過放射線画像を担持する画像信号を出力する放射線検出器と、
前記放射線源を、その放射線照射軸と前記撮影台とがなす角度が変化するように、撮影台に対して相対移動させる撮影部駆動手段とを備え、
前記角度が、互いに異なる複数の所定角度のうちのいずれかに設定される毎に前記放射線源が駆動されるようにした放射線画像撮影装置において、
前記放射線源と放射線検出器との間に存在する部材の欠陥に起因して、前記放射線検出面上で放射線強度の異常が発生する位置を、前記複数の所定角度の各々と対応付けて記憶した記憶手段と、
前記角度をある所定角度として放射線照射がなされて、放射線検出器から画像信号が得られたとき、その所定角度と対応付けて前記記憶手段に記憶されている前記位置に基づいて、その位置に関する画像信号の欠陥を補正する補正手段とが設けられたことを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項2】
前記放射線検出器が、放射線検出面と平行な面内において2次元マトリクス状に配置された複数の画素を有するものであり、
前記記憶手段が、前記放射線強度の異常が発生する位置を前記画素の位置として記憶したものであることを特徴とする請求項1記載の放射線画像撮影装置。
【請求項3】
前記撮影台、放射線源、放射線検出器および撮影部駆動手段がCT装置を構成するものであって、
前記撮影部駆動手段が、放射線源およびそれに対向配置された放射線検出器を、撮影台の周りに回転させるものであることを特徴とする請求項1または2記載の放射線画像撮影装置。
【請求項4】
前記撮影台、放射線源、放射線検出器および撮影部駆動手段がトモシンセシス装置を構成するものであって、
前記撮影部駆動手段が、固定されている放射線検出器に対して間に前記撮影台を置いて対向する放射線源を移動させるものであることを特徴とする請求項1または2記載の放射線画像撮影装置。
【請求項5】
前記撮影台、放射線源、放射線検出器および撮影部駆動手段がマンモグラフィ撮影装置を構成するものであって、
前記撮影部駆動手段が、放射線検出器に対して間に圧迫板を置いて対向する放射線源を移動させるものであることを特徴とする請求項1または2記載の放射線画像撮影装置。
【請求項6】
被写体を保持する撮影台と、
この被写体に放射線を照射する放射線源と、
被写体を透過した前記放射線を受ける放射線検出面を有して、該被写体の透過放射線画像を担持する画像信号を出力する放射線検出器と、
前記放射線源を、その放射線照射軸と直角または平行な方向の相対位置が変化するように、撮影台に対して相対移動させる撮影部駆動手段とを備え、
前記相対位置が、互いに異なる複数の所定位置のうちのいずれかに設定される毎に前記放射線源が駆動されるようにした放射線画像撮影装置において、
前記放射線源と放射線検出器との間に存在する部材の欠陥に起因して、前記放射線検出面上で放射線強度の異常が発生する位置を、前記複数の所定位置の各々と対応付けて記憶した記憶手段と、
前記相対位置をある所定位置として放射線照射がなされて、放射線検出器から画像信号が得られたとき、その所定位置と対応付けて前記記憶手段に記憶されている前記相対位置に基づいて、その相対位置に関する画像信号の欠陥を補正する補正手段とが設けられたことを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項7】
前記放射線検出器が、放射線検出面と平行な面内において2次元マトリクス状に配置された複数の画素を有するものであり、
前記記憶手段が、前記放射線強度の異常が発生する位置を前記画素の位置として記憶したものであることを特徴とする請求項6記載の放射線画像撮影装置。
【請求項8】
請求項1から5いずれか1項記載の放射線画像撮影装置において、放射線源と放射線検出器との間に存在する部材の欠陥に起因して、前記放射線検出面上で放射線強度の異常が発生する画素位置を求める欠陥画素位置情報取得方法であって、
前記放射線源と放射線検出器との間に前記部材を配置し、
前記放射線源を、その放射線照射軸と撮影台とがなす角度が変化するように、該撮影台に対して相対移動させ、
前記角度が変化する毎に放射線源を駆動して前記部材の透過放射線画像を撮影し、
この撮影によって得られた複数の放射線画像間において、前記部材の同一部分を示してかつ放射線強度の異常が発生している画素位置が、前記角度の変化に応じて変化している場合は、それらの画素位置の各々を、該画素位置を示す画像を撮影したときの前記角度と対応付けて取得することを特徴とする欠陥画素位置情報取得方法。
【請求項9】
請求項6または7記載の放射線画像撮影装置において、放射線源と放射線検出器との間に存在する部材の欠陥に起因して、前記放射線検出面上で放射線強度の異常が発生する画素位置を求める欠陥画素位置情報取得方法であって、
前記放射線源と放射線検出器との間に前記部材を配置し、
前記放射線源を、その放射線照射軸と直角または平行な方向の相対位置が変化するように、該撮影台に対して相対移動させ、
前記相対位置が変化する毎に放射線源を駆動して前記部材の透過放射線画像を撮影し、
この撮影によって得られた複数の放射線画像間において、前記部材の同一部分を示してかつ放射線強度の異常が発生している画素位置が、前記相対位置の変化に応じて変化している場合は、それらの画素位置の各々を、該画素位置を示す画像を撮影したときの前記相対位置と対応付けて取得することを特徴とする欠陥画素位置情報取得方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−224351(P2011−224351A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57361(P2011−57361)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】