説明

放射線画像撮影装置

【課題】密着部材の経時劣化に伴って放射線画像中の白欠陥部に明確な増加傾向が現れる前に、放射線画像中の白欠陥部が増加する可能性が高くなったことを検知することが可能とする。
【解決手段】柱状結晶構造部を有し照射された放射線を吸収して光を射出するシンチレータと、シンチレータから射出された光を放射線画像として検出する光検出部と、を密着部材を介して貼り合わせた場合、シンチレータと密着部材との密着面(第1の密着面)に発生した空隙は放射線画像上に白欠陥として現れ、光検出部と密着部材との密着面(第2の密着面)に発生した空隙は放射線画像上に黒欠陥として現れる。白欠陥の方が影響が大きいため、密着部材の経時劣化に伴う空隙の発生が第1の密着面内よりも第2の密着面内で進行するように、第1の密着面の密着力及び第2の密着面の密着力を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放射線画像撮影装置に係り、特に、柱状結晶構造部を有し、照射された放射線を吸収して光を射出するシンチレータと、シンチレータから射出された光を放射線画像として検出する光検出部と、を密着部材を介して密着させる放射線画像撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、TFT(Thin Film Transistor)アクティブマトリクス基板上に放射線感応層を配置し、照射されたX線やγ線、α線等の放射線を検出し、照射放射線量の分布を表す放射線画像のデータへ直接変換して出力するFPD(Flat Panel Detector)が実用化されており、このFPD等のパネル型の放射線検出器と、画像メモリを含む電子回路及び電源部を内蔵し、放射線検出器から出力される放射線画像データを画像メモリに記憶する可搬型の放射線検出パネル(以下、電子カセッテともいう)も実用化されている。なお、上記の放射線感応層としては、例えば照射された放射線をCsI:Tl、GOS(GdS:Tb)等のシンチレータ(蛍光体層)で光に一旦変換し、シンチレータから放出された光をPD(Photodiode)等から成る光検出部によって電荷へ再変換して蓄積する構成(間接変換方式)が知られている。放射線検出パネルは可搬性に優れているので、ストレッチャーやベッドに載せたまま被撮影者を撮影できると共に、放射線検出パネルの位置を変更することで撮影部位の調整も容易であるため、動けない被撮影者を撮影する場合にも柔軟に対処することができる。
【0003】
上記の放射線検出パネルに関し、特許文献1には、蛍光体層と光電変換撮像素子基板とを粘着剤層によって接着した構成の放射線撮影装置において、蛍光体の発光量が光電変換撮像素子に伝わる量が減少して解像度が低下することなく、長期に渡って安定した性能を得ることを目的として、蛍光体層のバインダポリマーと粘着剤形成ポリマーを粘着剤層に含まれる架橋剤で架橋することで、蛍光体層と粘着剤層との密着力を向上させる技術が開示されている。
【0004】
また特許文献2には、放射線画像撮影装置において、画像欠陥検出用の画像から高周波ノイズを除去し、ノイズ除去画像から第1の閾値を用いて第1の画像欠陥を検出し、かつ、第1の閾値よりも大きい第2の閾値を用いて第2の画像欠陥を検出し、第1及び第2の画像欠陥を加算することで画像欠陥を検出し、データベースに記録された画像欠陥の増加履歴から欠陥画素の個数、サイズ及び単位面積当りの密集度の増加率を予測し、少なくとも1つの予測値が閾値を超えた場合に警告を発する技術が開示されている。
【0005】
また特許文献3には、放射線変換シートと光電変換センサとを接着剤層(中間層)によって接合した構成の放射線画像検出装置において、放射線変換シートと光電変換センサとの間の密着性を確保し、画像ムラの発生を防止することを目的として、中間層のヘイズ度を3〜50%の範囲とする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−309169号公報
【特許文献2】特開2009−267519号公報
【特許文献3】特開2010−025780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
放射線検出パネルのシンチレータとしてCsIを用い、シンチレータを柱状結晶構造部が形成された構成とした場合、放射線の照射に伴ってシンチレータで発生した光が柱状結晶中を進行していくことで、シンチレータから射出される光の散乱が抑制されるため、照射された放射線を画像として検出する場合の検出画像の鮮鋭度の低下を抑制できる、という利点を有する。そして上記構成において、更に、シンチレータの放射線入射側に光検出部を配置し、シンチレータと光検出部を粘着層を介して貼り合わせた構成では、シンチレータのうちの柱状結晶領域が主な発光領域となり、主発光領域と光検出部との距離が短くなることも相俟って鮮鋭度の高い放射線画像が得られるので望ましい。
【0008】
ところで、CsIから成るシンチレータはAl(アルミニウム)等から成る蒸着基板に蒸着することで形成され、光検出部はガラス等から成る基板上に形成されるが、Alとガラスは熱膨張率が大きく相違している(例えばAlの熱膨張率=30PPM程度に対し、ガラスの熱膨張率=3PPM程度)。このため、上記のようにシンチレータと光検出部とを粘着層を介して貼り合わせた構成では、温度変化に伴ってシンチレータ及び光検出部に反りが生じ、シンチレータ及び光検出部が剥離する方向への応力が粘着層に加わるので、粘着層が経時的に劣化する。
【0009】
また、上記のようにシンチレータの放射線入射側に光検出部及び粘着層を配置した構成では、光検出部及び粘着層を放射線が透過するので、この放射線の透過によっても粘着層の経時劣化が生ずる。更に、放射線検出パネルの薄型化を目的として、貼り合わせたシンチレータ及び光検出部を放射線検出パネルの筐体の天板の内面に貼り付ける構成を採用した場合には、放射線画像の撮影時に被撮影者の体の重みが筐体の天板に荷重として加わり、この荷重が粘着層に加わることによっても粘着層の経時劣化が生ずる。そして、上記のように粘着層が経時的に劣化すると、粘着層とシンチレータや光検出部との間に空隙が生じ、この空隙が放射線画像上に画像欠陥として現れることで、放射線画像を用いた診断における診断精度の低下に繋がる、という問題がある。
【0010】
これに対して特許文献1,3に記載の技術は、粘着層の粘着力を向上させる技術であり、経時劣化に伴って粘着層の粘着力が低下した場合に、粘着層とシンチレータや光検出部との間に生じた空隙に起因して放射線画像上に現れる画像欠陥により、放射線画像を用いた診断における診断精度の低下を回避することについて、何ら考慮されていない。
【0011】
また、特許文献2に記載の技術は、欠陥画素の個数、サイズ及び単位面積当りの密集度の増加率を予測し、少なくとも1つの予測値が閾値を超えた場合に警告を発するものであるので、欠陥画素の個数、サイズ及び単位面積当りの密集度の増加率のうちの少なくとも1つの値に明確な増加傾向が現れない限り、予測値が閾値を超えず警告が発せられないことになる。粘着層とシンチレータや光検出部との間に生じた空隙に起因して放射線画像上に現れる画像欠陥には、放射線画像上の濃度が本来の濃度よりも高い欠陥部(黒欠陥部という)と、放射線画像上の濃度が本来の濃度よりも低い欠陥部(白欠陥部という)があるが、このうち白欠陥部については、乳房の放射線撮影(マンモグラフィ(Mammography)ともいう)において、石灰化領域と見間違いされる恐れがある。このため、放射線画像上に現れる白欠陥部については、明確な増加傾向が現れる前に、白欠陥部増加の確率増大を検知することが望ましいが、特許文献2に記載の技術でこれを実現することは困難である。
【0012】
本発明は上記事実を考慮して成されたもので、密着部材の経時劣化に伴って放射線画像中の白欠陥部に明確な増加傾向が現れる前に、放射線画像中の白欠陥部が増加する可能性が高くなったことを検知することが可能な放射線画像撮影装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明に係る放射線画像撮影装置は、全体形状が平板状で、柱状結晶構造部を有し、照射された放射線を吸収して光を射出するシンチレータと、平板状で前記シンチレータの前記柱状結晶構造部と対向するように配置され、前記シンチレータから射出された光を放射線画像として検出する光検出部と、前記シンチレータと前記光検出部との間に配置され、前記シンチレータの前記柱状結晶構造部と第1の密着面で密着すると共に前記光検出部と第2の密着面で密着し、経時劣化に伴う密着面内の空隙の発生が前記第1の密着面内よりも前記第2の密着面内で進行するように、前記第1の密着面の密着力及び前記第2の密着面の密着力が各々設定された密着部材と、を含んで構成されている。
【0014】
請求項1記載の発明は、全体形状が平板状で、柱状結晶構造部を有し、照射された放射線を吸収して光を射出するシンチレータと、平板状でシンチレータの柱状結晶構造部と対向するように配置され、シンチレータから射出された光を放射線画像として検出する光検出部と、を備えている。また、シンチレータと光検出部との間には密着部材が配置されており、密着部材は、シンチレータの柱状結晶構造部と第1の密着面で密着すると共に光検出部と第2の密着面で密着している。
【0015】
ここで、本願発明者等は、上記構成において、シンチレータの柱状結晶構造部と密着部材との間(第1の密着面内)に空隙が生じた場合には、この空隙が放射線画像上で白欠陥部として現れることが多く、光検出部と密着部材との間(第2の密着面内)に空隙が生じた場合には、この空隙が放射線画像上で黒欠陥部として現れることが多いことを見出した。
【0016】
すなわち、シンチレータの柱状結晶構造部と密着部材との間(第1の密着面内)に生じる空隙は、例えばシンチレータを形成した基板に元々付いていた傷の影響を受けて密着性が低下し易くなっている部分に生じることが多く、第1の密着面内に生じる空隙の形状も基板に元々付いていた傷と同様に不定である。このため、図1に示すように、第1の密着面内に生じた空隙ではシンチレータから射出された光の散乱が生じ易く、光検出部へ入射する光の光量が減少することで、前記空隙は放射線画像上で白欠陥部として現れ易い。なお、一例として柱状結晶の平均径が10μm、1画素のサイズが100μmの場合、図1に示すように、柱状結晶数本分以上の範囲に亘って密着部材との間(第1の密着面内)に生じている空隙が放射線画像上で白欠陥として現れることになる。
【0017】
一方、光検出部と密着部材との間(第2の密着面内)に生じる空隙は、光検出部と密着部材との貼り合わせのむらが原因であることが多く、第2の密着面内に生じる空隙の形状はその殆どが円形状である。このため、図1に示すように、第2の密着面内に生じた空隙ではシンチレータから射出された光の集中が生じ易く、光検出部へ入射する光の光量が増大することで、前記空隙は放射線画像上で黒欠陥部として現れ易い。なお、第2の密着面内に生じて放射線画像上で黒欠陥として現れる空隙の大きさは、第1の密着面内に生じて放射線画像上で白欠陥として現れる空隙の大きさと同程度である。
【0018】
上記のように、放射線画像上で黒欠陥部として現れる空隙が、放射線画像上で白欠陥部として現れる空隙とは異なる密着面内に生じる空隙であることに着目し、請求項1記載の発明では、経時劣化に伴う密着面内の空隙の発生が第1の密着面内よりも第2の密着面内で進行するように、密着部材の第1の密着面の密着力及び第2の密着面の密着力が各々設定されている。これにより、密着部材の経時劣化に伴い、放射線画像に現れる白欠陥部及び黒欠陥部のうち黒欠陥部の増加が先に進行することになるので、請求項1記載の発明によれば、放射線画像中の黒欠陥部の増加を検知することで、密着部材の経時劣化に伴って放射線画像中の白欠陥部に明確な増加傾向が現れる前に、放射線画像中の白欠陥部が増加する可能性が高くなったことを検知することが可能となる。
【0019】
なお、請求項1記載の発明において、例えば請求項2に記載したように、光検出部によって検出された放射線画像に対し、第1の密着面内に発生した空隙に起因して放射線画像に現れる白欠陥部と、第2の密着面内に発生した空隙に起因して放射線画像に現れる黒欠陥部と、のうち少なくとも黒欠陥部を検出する欠陥部検出手段と、欠陥部検出手段によって検出された黒欠陥部の数及び面積の少なくとも一方が予め設定された閾値以上になったか否かを判定する判定手段と、を更に設けることが好ましい。これにより、検出された黒欠陥部の数及び面積の少なくとも一方が閾値以上になったか否かに基づいて、密着部材の経時劣化に伴って放射線画像中の白欠陥部に明確な増加傾向が現れる前に、放射線画像中の白欠陥部が増加する可能性が高くなったことを確実に検知することができる。
【0020】
また、請求項2記載の発明において、例えば請求項3に記載したように、判定手段によって黒欠陥部の数及び面積の少なくとも一方が予め設定された閾値以上になったと判定された場合に報知する報知手段を設けることが好ましい。これにより、放射線画像中の白欠陥部が増加する可能性が高くなったことを、密着部材の経時劣化に伴って放射線画像中の白欠陥部に明確な増加傾向が現れる前に利用者(例えば放射線技師等)に認識させることができる。なお、報知手段による報知は、例えば放射線画像撮影装置に設けられ、複数種の表示状態に切替可能な表示手段の表示状態を切り替えることで行ってもよいし、コンソール等の外部装置へ所定の情報を送信することで行ってもよい。
【0021】
また、請求項2又は請求項3に記載の発明において、例えば請求項4に記載したように、判定手段は、欠陥部検出手段によって検出された黒欠陥部の数及び面積の少なくとも一方が予め設定された第1の閾値以上になったか否かを判定すると共に、黒欠陥部の数及び面積の少なくとも一方が第1の閾値よりも大きい第2の閾値以上になったか否かも判定し、判定手段により、黒欠陥部の数及び面積の少なくとも一方が第2の閾値以上になったと判定された場合に、放射線画像の撮影を禁止させる撮影禁止処理を行う禁止処理手段を設けることが好ましい。
【0022】
黒欠陥部の数及び面積の少なくとも一方が第1の閾値を越えて第2の閾値以上になった場合、放射線画像中の白欠陥部も増加している可能性が高く、放射線画像を用いて診断を行う場合の診断の精度にも悪影響を及ぼす状態になっている可能性が高いと判断できる。請求項4記載の発明では、このような場合に放射線画像の撮影を禁止させることで、白欠陥部が増加している可能性が高い放射線画像を用いて診断が行われることを未然に防止することができる。なお、禁止処理手段による撮影禁止処理についても、例えば放射線画像撮影装置に設けられ、複数種の表示状態に切替可能な表示手段の表示状態を、撮影禁止を意味する表示状態へ切り替えることで行ってもよいし、コンソール等の外部装置へ撮影禁止を意味する所定の情報を送信することで行ってもよい。
【0023】
また、請求項2〜請求項4の何れかに記載の発明では、経時劣化に伴う密着面内の空隙の発生が第1の密着面内よりも第2の密着面内で進行するように、第1の密着面の密着力及び第2の密着面の密着力を各々設定しているものの、第1の密着面内における空隙発生の進行と第2の密着面内における空隙発生の進行との関係には多少のばらつきが生ずる可能性がある。これを考慮すると、例えば請求項5に記載したように、欠陥部検出手段は白欠陥部も検出し、判定手段は、欠陥部検出手段によって検出された白欠陥部の数及び面積の少なくとも一方が予め設定された閾値以上になったか否かも判定するように構成することが好ましい。これにより、第1の密着面内における空隙発生が比較的早期に進行し、放射線画像中の白欠陥部が比較的早期に増加してきた場合にも、これを確実に検知することができる。
【0024】
また、放射線画像を用いた診断で注目される領域は、診断対象の部位の放射線像が写っている領域であり、例えばマンモグラフィでは乳房の放射線像が放射線画像の周縁部に写る等のように、放射線画像中の注目領域は、診断対象の部位や診断目的等によって相違する。これを考慮すると、請求項4記載の発明において、例えば請求項6に記載したように、欠陥部検出手段は黒欠陥部と白欠陥部とを区別して検出し、判定手段は、欠陥部検出手段によって検出された白欠陥部の数及び面積の少なくとも一方が予め設定された閾値以上になったか否かを、放射線画像を複数の領域に区切ったときの個々の領域毎に判定し、禁止処理手段は、撮影禁止処理として、複数の領域のうち、判定手段によって白欠陥部の数及び面積の少なくとも一方が予め設定された閾値以上になったと判定された領域を用いる放射線画像の撮影を禁止させる処理を行うように構成してもよい。
【0025】
これにより、第1の密着面内に発生した空隙の影響で、放射線画像中の一部領域に白欠陥部が比較的多く現れる放射線画像撮影装置であっても、前記一部領域を用いない(前記一部領域が注目領域でない)放射線画像の撮影に用いることが可能となり、密着部材の交換等のメインテナンス作業の実施を待っている状態の放射線画像撮影装置を有効に利用することが可能となる。
【0026】
また、請求項2〜請求項6の何れかに記載の発明において、例えば請求項7に記載したように、判定手段による判定結果を記憶する記憶手段と、放射線画像の撮影条件として、撮影部位及び撮影される放射線画像の診断用途の少なくとも一方を表す撮影条件情報を取得する取得手段と、複数種の表示状態に切替可能な表示手段と、取得手段によって取得された撮影条件情報を記憶手段に記憶されている判定結果と照合することで、撮影条件情報が表す撮影条件での放射線画像の撮影の適否を判定し、判定結果に応じて表示手段の表示状態を切り替える表示制御手段と、を更に設けてもよい。
【0027】
上記の放射線画像の撮影の適否は撮影操作者等が判定することも可能であるが、例えば放射線画像撮影装置が複数存在している環境において、それぞれの放射線画像撮影装置における欠陥部の数やサイズは一定ではないので、撮影操作者等による上記判定に誤り等が生ずる可能性がある。これに対して請求項7記載の発明では、表示制御手段が上記判定を行、判定結果に応じて表示手段の表示状態が切り替わるので、放射線画像撮影装置が複数存在している環境においても、撮影条件情報が表す撮影条件での放射線画像の撮影に適した放射線画像撮影装置を誤りなく撮影に用いることができる。
【0028】
また、請求項7記載の発明において、例えば請求項8に記載したように、表示手段の複数種の表示状態の中には、放射線画像撮影時の前記放射線画像撮影装置の筐体の適正な向きを指示する表示状態が含まれており、欠陥部検出手段は黒欠陥部と白欠陥部とを区別して検出し、判定手段は、欠陥部検出手段によって検出された白欠陥部の数及び面積の少なくとも一方が予め設定された閾値以上になったか否かを、放射線画像を複数の領域に区切ったときの個々の領域毎に判定し、表示制御手段は、撮影条件情報が表す撮影条件が、筐体の放射線照射面のうちの一端側に被写体が撮影される撮影条件である場合には、記憶手段に記憶されている判定結果に基づいて放射線画像撮影時の前記筐体の適正な向きを判定し、表示手段の表示状態を、判定した適正な向きを指示する表示状態へ切り替えるように構成してもよい。
【0029】
上記のように、筐体の放射線照射面のうちの一端側に被写体が撮影される撮影条件としては、例えば乳房の撮影等が挙げられる。また、筐体の適正な向きとしては、複数の領域のうち白欠陥部の数及び面積が閾値未満の領域に被写体が撮影される向きが挙げられる。請求項8記載の発明では、上記の撮影条件で撮影が行われる場合に、筐体の適正な向きが判定され、表示手段の表示状態が筐体の適正な向きを指示する表示状態へ切り替わるので、上記の撮影条件で放射線画像の撮影が行われる際に、筐体を誤りなく適正な向きに向けた状態で撮影を行わせることができる。
【0030】
また、請求項1〜請求項8の何れかに記載の発明において、第1の密着面の密着力及び第2の密着面の密着力を各々設定することは、例えば請求項9に記載したように、密着部材を、支持体の一方の面にシンチレータと密着するための第1の粘着層が設けられると共に、支持体の他方の面に光検出部と密着するための第2の粘着層が設けられた構成とし、第1の粘着層及び第2の粘着層の粘着力を調整することによって実現することができる。
【0031】
また、請求項1〜請求項9の何れかに記載の発明において、例えば請求項10に記載したように、シンチレータ及び光検出部のうちの光検出部側から放射線が入射され、光検出部を透過した放射線がシンチレータに照射される構成であることが好ましい。この構成では、シンチレータ及び光検出部のうちのシンチレータ側から放射線が入射される場合と比較して、シンチレータのうち光検出部により近い部分が主発光領域となり、光検出部による受光量が増大するので、放射線画像撮影装置における放射線の検出感度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0032】
以上説明したように本発明は、シンチレータの柱状結晶構造部と密着部材とが第1の密着面で密着し、光検出部と密着部材とが第2の密着面で密着する構成において、経時劣化に伴う密着面内の空隙の発生が第1の密着面内よりも第2の密着面内で進行するように、第1の密着面の密着力及び第2の密着面の密着力を各々設定したので、密着部材の経時劣化に伴って放射線画像中の白欠陥部に明確な増加傾向が現れる前に、放射線画像中の白欠陥部が増加する可能性が高くなったことを検知することが可能になる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】密着部材とシンチレータ、光検出部との間に空隙が生じた場合に、放射線画像上に欠陥が生じることを説明するための説明図である。
【図2】実施形態で説明した放射線情報システムの構成を示すブロック図である。
【図3】放射線画像撮影システムの放射線撮影室における各装置の配置状態の一例を示す側面図である。
【図4】電子カセッテを一部破断して示す斜視図である。
【図5】放射線検出器の構成の一例を模式的に示した断面図である。
【図6】シンチレータの結晶構成の一例を模式的に示す概略図である。
【図7】電子カセッテの電気系の要部構成を示すブロック図である。
【図8】コンソール及び放射線発生装置の電気系の要部構成を示すブロック図である。
【図9】コンソールで実行される電子カセッテ検査処理の内容を示すフローチャートである。
【図10】電子カセッテで実行される欠陥検査処理の内容を示すフローチャートである。
【図11】(A)は放射線画像に現れる白欠陥部及び黒欠陥部の一例、(B)は放射線画像を複数領域に分割する場合の一例を各々示すイメージ図である。
【図12】(A)は欠陥部の数とアラーム出力の関係の一例、(B)は欠陥部の最大サイズとアラーム出力の関係の一例を各々示す線図である。
【図13】本発明を適用しない場合の白欠陥部/黒欠陥部の数・サイズの経時変化の一例を示す線図である。
【図14】放射線検出器の構成の他の例を模式的に示した断面図である。
【図15】(A)は放射線画像を複数領域に分割する場合の他の例を示すイメージ図、(B)は筐体に設けた表示部の他の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。図2には本実施形態に係る放射線情報システム10(以下、「RIS10」(RIS:(Radiology Information System)という)が示されている。RIS10は病院内の放射線科部門における診療予約や診断記録等の情報管理を行うためのシステムであり、複数台の端末装置12、RISサーバ14、病院内の個々の放射線撮影室(或いは手術室)に設置された放射線画像撮影システム18(のコンソール42)が、有線又は無線のLAN(Local Area Network)から成る病院内ネットワーク16に各々接続されて構成されている。なお、RIS10は同じ病院内に設けられた病院情報システム(HIS:Hospital Information System)の一部を構成しており、病院内ネットワーク16にはHIS全体を管理するHISサーバ(図示省略)も接続されている。
【0035】
個々の端末装置12はパーソナル・コンピュータ(PC)等で構成され、医師や放射線技師によって操作される。医師や放射線技師は端末装置12を介して診断情報や施設予約の入力・閲覧を行い、放射線画像の撮影依頼(撮影予約)も端末装置12を介して入力される。また、RISサーバ14はRISデータベース(DB)を記憶する記憶部14Aを含んで構成されたコンピュータであり、RISデータベースには、患者の属性情報(例えば患者の氏名、性別、生年月日、年齢、血液型、患者ID等)や、病歴、受診歴、放射線画像撮影の履歴、過去に撮影した放射線画像のデータ等の患者に関する他の情報、個々の放射線画像撮影システム18の電子カセッテ32(後述)に関する情報(例えば識別番号、型式、サイズ、感度、使用可能な撮影部位(対応可能な撮影依頼の内容)、使用開始年月日、使用回数等)が登録されている。RISサーバ14はRISデータベースに登録されている情報に基づいて、RIS10全体を管理する処理(例えば各端末装置12からの撮影依頼を受け付け、個々の放射線画像撮影システム18における放射線画像の撮影スケジュールを管理する処理)を行う。
【0036】
個々の放射線画像撮影システム18は、RISサーバ14から指示された放射線画像の撮影を、医師や放射線技師の操作に従って行うシステムであり、患者(被写体)に照射する放射線を発生させる放射線発生装置34、患者を透過した放射線を検出し放射線画像データに変換・出力する放射線検出器を内蔵した電子カセッテ32、電子カセッテ32に内蔵されたバッテリ96A(図4参照)を充電するクレードル40、及び、上記各機器の動作を制御するコンソール42を各々備えている。なお、電子カセッテ32は本発明に係る放射線画像撮影装置の一例である。
【0037】
図3に示すように、放射線発生装置34の放射線源130(詳細は後述)が配置される放射線撮影室44には、立位での放射線撮影を行う際に用いられる立位台45と、臥位での放射線撮影を行う際に用いられる臥位台46とが設置されており、立位台45の前方空間は立位での放射線撮影を行う際の被撮影者の撮影位置48とされ、臥位台46の上方空間は臥位での放射線撮影を行う際の被撮影者の撮影位置50とされている。立位台45には電子カセッテ32を保持する保持部150が設けられており、立位での放射線画像の撮影を行う際には電子カセッテ32が保持部150に保持される。また、臥位での放射線画像の撮影を行う際には、臥位台46の天板152上に電子カセッテ32が載置される。
【0038】
また、放射線撮影室44には、単一の放射線源130からの放射線によって立位での放射線撮影も臥位での放射線撮影も可能とするために、放射線源130を、水平な軸回り(図3の矢印A方向)に回動可能で、鉛直方向(図3の矢印B方向)に移動可能で、かつ水平方向(図3の矢印C方向)に移動可能に支持する支持移動機構52が設けられている。支持移動機構52は、放射線源130を水平な軸回りに回動させる駆動源と、放射線源130を鉛直方向に移動させる駆動源と、放射線源130を水平方向に移動させる駆動源を各々備えており(何れも図示省略)、撮影条件情報で指定された撮影時姿勢が立位であれば、放射線源130を立位撮影用の位置54(射出した放射線が撮影位置48に位置している患者に側方から照射される位置)へ移動させ、撮影条件情報で指定された撮影時姿勢が臥位であれば、放射線源130を臥位撮影用の位置(射出した放射線が撮影位置50に位置している患者に上方から照射される位置)へ移動させる。
【0039】
また、クレードル40には電子カセッテ32を収納可能な収容部40Aが形成されている。電子カセッテ32は、未使用時にはクレードル40の収容部40Aに収納され、この状態でクレードル40によって内蔵バッテリへの充電が行われる。また、放射線画像の撮影時には放射線技師等によってクレードル40から取り出され、撮影姿勢が立位であれば立位台45の保持部150に保持され、撮影姿勢が臥位であれば臥位台46の天板152上に載置される。なお、電子カセッテ32は撮影時に上記2種類の位置の何れかに配置されることに限られるものではなく、電子カセッテ32は可搬性を有しているので、撮影時に放射線撮影室44内の任意の位置に自在に配置可能であることは言うまでもない。
【0040】
次に電子カセッテ32について説明する。図4に示すように、電子カセッテ32は、放射線Xを透過させる材料から成り、矩形状で放射線Xが照射される照射面56が形成された直方体状の筐体54を備えている。電子カセッテ32は、手術室等で使用される際に血液やその他の雑菌が付着することがある。このため、電子カセッテ32は筐体54によって密閉され、防水性も確保された構造とされており、必要に応じて殺菌洗浄することで同一の電子カセッテ32を繰り返し使用可能とされている。
【0041】
電子カセッテ32の筐体54内には、被撮影者を透過した放射線Xの到来方向に沿って、筐体54の放射線Xの照射面56側から順に、本発明の光検出部としての放射線検出器60、本発明のシンチレータとしてのシンチレータ71が積層配置されている。また、筐体54の内部には、照射面56の長手方向に沿った一端側に、マイクロコンピュータを含む各種の電子回路や、充電可能かつ着脱可能なバッテリ96Aを収容するケース31が配置されている。放射線検出器60や上記の各種電子回路は、ケース31内に収容されたバッテリ96Aから供給される電力によって作動する。ケース31内に収容された各種電子回路が放射線Xの照射に伴って損傷することを回避するため、筐体54内のうちケース31の照射面56側には鉛板等から成る放射線遮蔽部材が配設されている。
【0042】
また、筐体54の照射面56には、複数個のLEDから成り、電子カセッテ32の動作モード(例えば「レディ状態」や「データ送信中」等)やバッテリ96Aの残容量の状態等の動作状態を表示するための表示部56Aが設けられている。なお、表示部56AはLED以外の発光素子で構成してもよいし、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示手段で構成してもよい。また、表示部56Aは照射面56以外の部位に設けてもよい。
【0043】
次にシンチレータ71について説明する。シンチレータ71は、被撮影者の体を透過した筐体54の照射面56に照射され、筐体54の天板及び放射線検出器(TFT基板)60を透過して照射された放射線Xを吸収して光を放出する。一般に、シンチレータとしては、例えばCsI:Tl(タリウムを添加したヨウ化セシウム))や、CsI:Na(ナトリウム賦活ヨウ化セシウム)、GOS(GdS:Tb)等の材料を用いることができる。
【0044】
但し、本実施形態では、例として図6に示すように、シンチレータ71を、放射線入射/光射出側(放射線検出器60)に柱状結晶71Aから成る柱状結晶領域が形成され、シンチレータ71の放射線入射側と反対側に非柱状結晶71Bから成る非柱状結晶領域が形成された構成としており、シンチレータ71としてCsIを含む材料を用い、当該材料を蒸着基板75に蒸着させることで、柱状結晶領域及び非柱状結晶領域が形成されたシンチレータ71を得ている。なお、蒸着基板75としては耐熱性の高い材料が望ましく、例えば低コストという観点からアルミニウムが好適である。なお、本実施形態に係るシンチレータ71は、柱状結晶71Aの平均径が柱状結晶71Aの長手方向に沿っておよそ均一とされている。
【0045】
上記のように、シンチレータ71を柱状結晶領域及び非柱状結晶領域が形成された構成にすると共に、高効率の発光が得られる柱状結晶71Aから成る柱状結晶領域を放射線検出器60側に配置することで、シンチレータ71で発生された光は柱状結晶71A内を進行して放射線検出器60へ射出され、放射線検出器60側へ射出される光の拡散が抑制されることで、電子カセッテ32によって検出される放射線画像のボケが抑制される。また、シンチレータ71の深部(非柱状結晶領域)に到達した光も、非柱状結晶71Bによって放射線検出器60側へ反射されることで、放射線検出器60に入射される光の光量(シンチレータ71で発光された光の検出効率)が向上する。
【0046】
なお、シンチレータ71の放射線入射側に位置する柱状結晶領域の厚みをt1とし、シンチレータ71の蒸着基板75側に位置する非柱状結晶領域の厚みをt2としたときに、t1とt2が下記の関係式を満たすことが好ましい。
0.01≦(t2/t1)≦0.25
【0047】
柱状結晶領域の厚みt1と非柱状結晶領域の厚みt2とが上記関係式を満たすことで、発光効率が高く光の拡散を防止する領域(柱状結晶領域)と、光を反射する領域(非柱状結晶領域)と、のシンチレータ71の厚み方向に沿った比率が好適な範囲となり、シンチレータ71の発光効率、シンチレータ71で発光された光の検出効率、及び、放射線画像の解像度が向上する。非柱状結晶領域の厚みt2が厚過ぎると発光効率の低い領域が増え、電子カセッテ32の感度の低下に繋がることから、(t2/t1)は0.02以上かつ0.1以下の範囲であることがより好ましい。
【0048】
また、上記では柱状結晶領域と非柱状結晶領域が連続的に形成された構成のシンチレータ71を説明したが、例えば上記の非柱状結晶領域に代えてアルミニウム等から成る光反射層が設けられ、柱状結晶領域のみが形成された構成であってもよいし、他の構成であってもよい。
【0049】
続いて放射線検出器60について説明する。放射線検出器60は、シンチレータ71の光射出側から射出された光を検出するものであり、図5に示すように、フォトダイオード(PD:PhotoDiode)等から成る光電変換部72、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)70及び蓄積容量68を備えた画素部74が、図5に示すように、平板状で平面視における外形形状が矩形状とされた絶縁性基板64上にマトリクス状に複数形成されたTFTアクティブマトリクス基板(以下、「TFT基板」という)で構成されている。
【0050】
なお、本実施形態では、シンチレータ71の放射線照射面側に放射線検出器(TFT基板)60が配置されているが、シンチレータと光検出検出部(放射線検出器60)をこのような位置関係で配置する方式は「表面読取方式(ISS:Irradiation Side Sampling)」と称する(請求項10記載の発明に相当する構成)。シンチレータは放射線入射側がより強く発光するので、シンチレータの放射線入射側に光検出部(放射線検出器)を配置する表面読取方式(ISS)は、シンチレータの放射線入射側と反対側に光検出部(放射線検出器)を配置する「裏面読取方式(PSS:Penetration Side Sampling)」よりも光検出部とシンチレータの発光位置とが接近することから、撮影によって得られる放射線画像の分解能が高く、また光検出部(放射線検出器)の受光量が増大することで、結果として放射線画像撮影装置(電子カセッテ)の感度が向上する。
【0051】
光電変換部72は、下部電極72Aと上部電極72Bとの間に、シンチレータ71から放出された光を吸収し、吸収した光に応じた電荷を発生する光電変換膜72Cが配置されて構成されている。なお、下部電極72Aは、シンチレータ71から放出された光を光電変換膜72Cに入射させる必要があるため、少なくともシンチレータ71の発光波長に対して透明な導電性材料で構成することが好ましく、具体的には、可視光に対する透過率が高く、抵抗値が小さい透明導電性酸化物(TCO;Transparent Conducting Oxide)を用いることが好ましい。なお、下部電極72AとしてAuなどの金属薄膜を用いることもできるが、90%以上の光透過率を得ようとすると抵抗値が増大し易くなるため、TCOの方が好ましい。例えば、ITO、IZO、AZO、FTO、SnO、TiO、ZnO等を用いることが好ましく、プロセス簡易性、低抵抗性、透明性の観点からITOが最も好ましい。なお、下部電極72Aは、全画素部共通の一枚構成としてもよいし、画素部毎に分割してもよい。
【0052】
また、光電変換膜72Cはシンチレータ71から放出された光を吸収し、吸収した光に応じた電荷を発生する。光電変換膜72Cを構成する材料は光を吸収して電荷を発生する材料であればよく、例えば、アモルファスシリコンや有機光電変換材料等を用いることができる。光電変換膜72Cをアモルファスシリコンで構成した場合、シンチレータ71から放出された光を広い波長域に亘って吸収するように構成することができる。但し、アモルファスシリコンから成る光電変換膜72Cの形成には蒸着を行う必要があり、絶縁性基板64が合成樹脂製である場合、絶縁性基板64の耐熱性が不足する可能性がある。
【0053】
一方、光電変換膜72Cを有機光電変換材料を含む材料で構成した場合は、主に可視光域で高い吸収を示す吸収スペクトルが得られ、光電変換膜72Cによるシンチレータ71から放出された光以外の電磁波の吸収が殆ど無くなるので、X線やγ線等の放射線が光電変換膜72Cで吸収されることで発生するノイズを抑制できる。また、有機光電変換材料から成る光電変換膜72Cは、インクジェットヘッド等の液滴吐出ヘッドを用いて有機光電変換材料を被形成体上に付着させることで形成させることができ、被形成体に対して耐熱性は要求されない。このため、本実施形態では、光電変換部72の光電変換膜72Cを有機光電変換材料で構成している。
【0054】
光電変換膜72Cを有機光電変換材料で構成した場合、光電変換膜72Cで放射線が殆ど吸収されないので、放射線が透過するように放射線検出器60が配置される表面読取方式(ISS)において、放射線検出器60を透過することによる放射線の減衰を抑制することができ、放射線に対する感度の低下を抑えることができる。従って、光電変換膜72Cを有機光電変換材料で構成することは、特に表面読取方式(ISS)に好適である。
【0055】
光電変換膜72Cを構成する有機光電変換材料は、シンチレータ71から放出された光を最も効率良く吸収するために、その吸収ピーク波長が、シンチレータ71の発光ピーク波長と近いほど好ましい。有機光電変換材料の吸収ピーク波長とシンチレータ71の発光ピーク波長とが一致することが理想的であるが、双方の差が小さければシンチレータ71から放出された光を十分に吸収することが可能である。具体的には、有機光電変換材料の吸収ピーク波長と、シンチレータ71の放射線に対する発光ピーク波長との差が10nm以内であることが好ましく、5nm以内であることがより好ましい。
【0056】
このような条件を満たすことが可能な有機光電変換材料としては、例えばキナクリドン系有機化合物及びフタロシアニン系有機化合物が挙げられる。例えばキナクリドンの可視域における吸収ピーク波長は560nmであるため、有機光電変換材料としてキナクリドンを用い、シンチレータ71の材料としてCsI(Tl)を用いれば、上記ピーク波長の差を5nm以内にすることが可能となり、光電変換膜72Cで発生する電荷量をほぼ最大にすることができる。
【0057】
放射線画像撮影装置に適用可能な光電変換膜72Cについて具体的に説明する。放射線画像撮影装置における電磁波吸収/光電変換部位は、電極72A,72Bと、該電極72A,72Bに挟まれた光電変換膜72Cを含む有機層である。この有機層は、より具体的には、電磁波を吸収する部位、光電変換部位、電子輸送部位、正孔輸送部位、電子ブロッキング部位、正孔ブロッキング部位、結晶化防止部位、電極、及び、層間接触改良部位等を積み重ねるか、若しくは混合することで形成することができる。
【0058】
上記有機層は、有機p型化合物または有機n型化合物を含有することが好ましい。有機p型半導体(化合物)は、主に正孔輸送性有機化合物に代表されるドナー性有機半導体(化合物)であり、電子を供与しやすい性質を有する有機化合物である。さらに詳しくは2つの有機材料を接触させて用いたときにイオン化ポテンシャルの小さい方の有機化合物である。従って、ドナー性有機化合物としては、電子供与性を有する有機化合物であれば何れの有機化合物も使用可能である。有機n型半導体(化合物)は、主に電子輸送性有機化合物に代表されるアクセプター性有機半導体(化合物)であり、電子を受容し易い性質を有する有機化合物である。更に詳しくは2つの有機化合物を接触させて用いたときに電子親和力の大きい方の有機化合物である。従って、アクセプター性有機化合物は、電子受容性を有する有機化合物であれば何れの有機化合物も使用可能である。
【0059】
有機p型半導体及び有機n型半導体として適用可能な材料や、光電変換膜72Cの構成については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
【0060】
また、光電変換部72は、少なくとも電極対72A,72Bと光電変換膜72Cを含んでいればよいが、暗電流の増加を抑制するため、電子ブロッキング膜及び正孔ブロッキング膜の少なくとも何れかを設けることが好ましく、両方を設けることがより好ましい。
【0061】
電子ブロッキング膜は、上部電極72Bと光電変換膜72Cとの間に設けることができ、上部電極72Bと下部電極72Aとの間にバイアス電圧を印加したときに、上部電極72Bから光電変換膜72Cに電子が注入されて暗電流が増加してしまうことを抑制することができる。電子ブロッキング膜には電子供与性有機材料を用いることができる。実際に電子ブロッキング膜に用いる材料は、隣接する電極の材料及び隣接する光電変換膜72Cの材料等に応じて選択すればよく、隣接する電極の材料の仕事関数(Wf)より1.3eV以上電子親和力(Ea)が大きく、かつ、隣接する光電変換膜72Cの材料のイオン化ポテンシャル(Ip)と同等のIp、若しくはそれより小さいIpを有するものが好ましい。この電子供与性有機材料として適用可能な材料については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
【0062】
電子ブロッキング膜の厚みは、暗電流抑制効果を確実に発揮させると共に、光電変換部72の光電変換効率の低下を防ぐため、10nm以上200nm以下が好ましく、より好ましくは30nm以上150nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。
【0063】
正孔ブロッキング膜は、光電変換膜72Cと下部電極72Aとの間に設けることができ、上部電極72Bと下部電極72Aとの間にバイアス電圧を印加したときに、下部電極72Aから光電変換膜72Cに正孔が注入されて暗電流が増加してしまうことを抑制することができる。正孔ブロッキング膜には電子受容性有機材料を用いることができる。実際に正孔ブロッキング膜に用いる材料は、隣接する電極の材料及び隣接する光電変換膜72Cの材料等に応じて選択すればよく、隣接する電極の材料の仕事関数(Wf)より1.3eV以上イオン化ポテンシャル(Ip)が大きく、かつ、隣接する光電変換膜72Cの材料の電子親和力(Ea)と同等のEa、若しくはそれより大きいEaを有するものが好ましい。この電子受容性有機材料として適用可能な材料については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
【0064】
正孔ブロッキング膜の厚みは、暗電流抑制効果を確実に発揮させると共に、光電変換部72の光電変換効率の低下を防ぐため、10nm以上200nm以下が好ましく、より好ましくは30nm以上150nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。
【0065】
なお、光電変換膜72Cで発生した電荷のうち、正孔が下部電極72Aに移動し、電子が上部電極72Bに移動するようにバイアス電圧を設定する場合には、電子ブロッキング膜と正孔ブロッキング膜の位置を逆にすれば良い。また、電子ブロッキング膜と正孔ブロッキング膜は両方設けることは必須ではなく、何れかを設けておけば、或る程度の暗電流抑制効果を得ることができる。
【0066】
TFT70は、ゲート電極、ゲート絶縁膜及び活性層(チャネル層)が積層され、更に活性層上にソース電極とドレイン電極が所定の間隔を隔てて形成されている。活性層は、例えばアモルファスシリコンや非晶質酸化物、有機半導体材料、カーボンナノチューブ等のうちの何れかにより形成することができるが、活性層を形成可能な材料はこれらに限定されるものではない。
【0067】
活性層を形成可能な非晶質酸化物としては、例えば、In、Ga及びZnのうちの少なくとも1つを含む酸化物(例えばIn−O系)が好ましく、In、Ga及びZnのうちの少なくとも2つを含む酸化物(例えばIn−Zn−O系、In−Ga−O系、Ga−Zn−O系)がより好ましく、In、Ga及びZnを含む酸化物が特に好ましい。In−Ga−Zn−O系非晶質酸化物としては、結晶状態における組成がInGaO(ZnO)(mは6未満の自然数)で表される非晶質酸化物が好ましく、特に、InGaZnOがより好ましい。なお、活性層を形成可能な非晶質酸化物はこれらに限定されるものではない。
【0068】
また、活性層を形成可能な有機半導体材料としては、例えば、フタロシアニン化合物や、ペンタセン、バナジルフタロシアニン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、フタロシアニン化合物の構成については、特開2009−212389号公報で詳細に説明されているため、説明を省略する。
【0069】
TFT70の活性層を非晶質酸化物や有機半導体材料、カーボンナノチューブ等のうちの何れかによって形成すれば、X線等の放射線を吸収せず、或いは吸収したとしても極めて微量に留まるため、信号出力部104におけるノイズの発生を効果的に抑制することができる。
【0070】
また、活性層をカーボンナノチューブで形成した場合、TFT70のスイッチング速度を高速化することができ、また、TFT70における可視光域の光の吸収度合いを低下させることができる。なお、活性層をカーボンナノチューブで形成する場合、活性層にごく微量の金属性不純物が混入しただけでTFT70の性能が著しく低下するため、遠心分離等により非常に純度の高いカーボンナノチューブを分離・抽出して活性層の形成に用いる必要がある。
【0071】
なお、有機光電変換材料で形成した膜及び有機半導体材料で形成した膜は何れも十分な可撓性を有しているので、有機光電変換材料で形成した光電変換膜72Cと、活性層を有機半導体材料で形成したTFT70と、を組み合わせた構成であれば、患者の体の重みが荷重として加わる放射線検出器60の高剛性化は必ずしも必要ではなくなる。
【0072】
また、絶縁性基板64は光透過性を有し且つ放射線の吸収が少ないものであればよい。ここで、TFT70の活性層を構成する非晶質酸化物や、光電変換部72の光電変換膜72Cを構成する有機光電変換材料は、いずれも低温での成膜が可能である。従って、絶縁性基板64としては、半導体基板、石英基板、及びガラス基板等の耐熱性の高い基板に限定されず、合成樹脂製の可撓性基板、アラミド、バイオナノファイバを用いることもできる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の可撓性基板を用いることができる。このような合成樹脂製の可撓性基板を用いれば、軽量化を図ることもでき、例えば持ち運び等に有利となる。なお、絶縁性基板64には、絶縁性を確保するための絶縁層、水分や酸素の透過を防止するためのガスバリア層、平坦性あるいは電極等との密着性を向上するためのアンダーコート層等を設けてもよい。
【0073】
なお、アラミドは200度以上の高温プロセスを適用できるため、透明電極材料を高温硬化させて低抵抗化でき、また、ハンダのリフロー工程を含むドライバICの自動実装にも対応できる。また、アラミドはITO(indium tin oxide)やガラス基板と熱膨張係数が近いため、製造後の反りが少なく、割れにくい。また、アラミドは、ガラス基板等と比べて基板を薄型化できる。なお、超薄型ガラス基板とアラミドを積層して絶縁性基板64を形成してもよい。
【0074】
また、バイオナノファイバは、バクテリア(酢酸菌、Acetobacter Xylinum)が産出するセルロースミクロフィブリル束(バクテリアセルロース)と透明樹脂とを複合したものである。セルロースミクロフィブリル束は、幅50nmと可視光波長に対して1/10のサイズで、かつ、高強度、高弾性、低熱膨である。バクテリアセルロースにアクリル樹脂、エポキシ樹脂等の透明樹脂を含浸・硬化させることで、繊維を60〜70%も含有しながら、波長500nmで約90%の光透過率を示すバイオナノファイバが得られる。バイオナノファイバは、シリコン結晶に匹敵する低い熱膨張係数(3−7ppm)を有し、鋼鉄並の強度(460MPa)、高弾性(30GPa)で、かつフレキシブルであることから、ガラス基板等と比べて絶縁性基板64を薄型化できる。
【0075】
絶縁性基板64としてガラス基板を用いた場合、放射線検出器(TFT基板)60全体としての厚みは、例えば0.7mm程度になるが、本実施形態では電子カセッテ32の薄型化を考慮し、絶縁性基板64として、光透過性を有する合成樹脂から成る薄型の基板を用いている。これにより、放射線検出器(TFT基板)60全体としての厚みを、例えば0.1mm程度に薄型化できると共に、放射線検出器(TFT基板)60に可撓性をもたせることができる。また、放射線検出器(TFT基板)60に可撓性をもたせることで、電子カセッテ32の耐衝撃性が向上し、電子カセッテ32に衝撃が加わった場合にも破損し難くなる。また、プラスチック樹脂や、アラミド、バイオナノファイバ等は何れも放射線の吸収が少なく、絶縁性基板64をこれらの材料で形成した場合、絶縁性基板64による放射線の吸収量も少なくなるため、表面読取方式(ISS)により放射線検出器60を放射線が透過する構成であっても、放射線に対する感度の低下を抑えることができる。
【0076】
なお、電子カセッテ32の絶縁性基板64として合成樹脂製の基板を用いることは必須ではなく、電子カセッテ32の厚さは増大するものの、ガラス基板等の他の材料から成る基板を絶縁性基板64として用いるようにしてもよい。
【0077】
また、シンチレータ71と放射線検出器60との間には密着部材146が設けられている。密着部材146はフィルム状の支持体146Aを備え、支持体146Aの一方の面に粘着層146Bが形成され、支持体146Aの反対側の面に粘着層146Cが形成されて構成されている。図6にも示すように、密着部材146の粘着層146Bはシンチレータ71の全面に亘ってシンチレータ71の柱状結晶71Aの先端部に密着しており、密着部材146の粘着層146Cは放射線検出器60の全面に亘って放射線検出器60の表面に密着している。
【0078】
ここで、密着部材146は、温度変化に伴って加わる応力や、密着部材146を透過する放射線によって経時的に徐々に劣化し、粘着層146B,146Cの粘着力が徐々に低下する。また、放射線検出器60の裏面(粘着層146Cが密着している面と反対側の面)が筐体54の天板の内面に貼り付けられている構成であれば、放射線画像の撮影の度に加わる荷重によって密着部材146の劣化はより進行する。また、粘着層146Bの粘着力の低下に伴って粘着層146Bとシンチレータ71との密着面(本発明の第1の密着面の一例)内に空隙が生じた場合、当該空隙は撮影された放射線画像上に白欠陥部(図11(A)も参照)として現れ、粘着層146Cの粘着力の低下に伴って粘着層146Cと放射線検出器60との密着面(本発明の第2の密着面の一例)内に空隙が生じた場合、当該空隙は撮影された放射線画像上に黒欠陥部(図11(A)も参照)として現れる。そして、上記の白欠陥部及び黒欠陥部のうち、特に白欠陥部は放射線画像を用いた診断の精度に悪影響を与える。
【0079】
このため、本実施形態は、密着部材146の経時劣化に伴い、粘着層146Bとシンチレータ71との密着面内の空隙の発生よりも、粘着層146Cと放射線検出器60との密着面内の空隙の発生が先に進行し、例として図12に示すように、密着部材146の経時劣化に伴う欠陥部の数及び最大サイズの増加が、白欠陥部よりも黒欠陥部の方が先に進行するように、粘着層146B,146Cの粘着力を設定している。
【0080】
より詳しくは、粘着層146Bはシンチレータ71の柱状結晶71Aの先端部に密着しており、シンチレータ71の表面のうち、隣り合う柱状結晶71Aの間隙に相当する部分では粘着層146Bの粘着力が作用しないので、粘着層146B,146Cの粘着力が同等であっても粘着層146Bとシンチレータ71との密着面の方が粘着層146Cと放射線検出器60との密着面よりも空隙の発生が進行する。このため、本実施形態では、粘着層146Bとシンチレータ71との密着力が粘着層146Cと放射線検出器60との密着力よりも大きくなるように、粘着層146B,146Cの粘着力を設定している。
【0081】
具体的には、密着部材146として、例えば表裏面で粘着力が相違する両面テープ(一例としては住友3M株式会社製の4591HL(強粘着面=4.3N/cm・弱粘着面=0.2N/cm))を用いてもよいし、粘着層146Cとしては弱粘着の粘着剤(例えば住友3M株式会社製の4591HLで用いられている粘着剤)を、粘着層146Bとしては強粘着の粘着剤(例えば日東電工株式会社製の両面テープNo.5605等で用いられている粘着剤)を用いてもよい。また、粘着層146B,146Cとして同一種の粘着剤を用い、一方に対して表面処理(例えば大気圧プラズマ処理やシランカップリング剤の塗布等)を施すことで密着力を相違させるに差をつけても良い。また、密着部材146の交換等のリワークを考慮し、粘着層146Cとして必要時に剥離が可能な粘着剤(UV照射の解体型接着剤等)を用いてもよい。この場合、密着部材146の交換等を行う際には、UVを照射して密着部材146と放射線検出器60とを剥離し、密着部材146の交換等を行った後に、密着部材146と放射線検出器60とを再度密着させることを容易に実現できる。なお、上述した密着部材146は請求項1、より詳しくは請求項9に記載の密着部材の一例である。
【0082】
また、図7に示すように、放射線検出器(TFT基板)60には、一定方向(行方向)に沿って延設され個々のTFT70をオンオフさせるための複数本のゲート配線76と、前記一定方向と交差する方向(列方向)に沿って延設され、蓄積容量68(及び光電変換部72の上部電極72Aと下部電極72Bの間)に蓄積された電荷をオン状態のTFT70を介して読み出すための複数本のデータ配線78が設けられている。また図5に示すように、放射線検出器(TFT基板)60のうち、放射線の到来方向と反対側の端部には、TFT基板上を平坦にするための平坦化層67が形成されている。
【0083】
図7に示すように、放射線検出器60の個々のゲート配線76はゲート線ドライバ81に接続されており、個々のデータ配線78は信号処理部83に接続されている。被写体を透過した放射線(被写体の画像情報を担持した放射線)が電子カセッテ32に照射されると、シンチレータ71のうち照射面56上の各位置に対応する部分からは、前記各位置における放射線の照射量に応じた光量の光が放出され、個々の画素部74の光電変換部72では、シンチレータ71のうちの対応する部分から放出された光の光量に応じた大きさの電荷が発生され、この電荷が個々の画素部74の蓄積容量68(及び光電変換部72の上部電極72Aと下部電極72Bの間)に蓄積される。
【0084】
上記のようにして個々の画素部74の蓄積容量68に電荷が蓄積されると、個々の画素部74のTFT70は、ゲート線ドライバ81からゲート配線76を介して供給される信号により行単位で順にオンされ、TFT70がオンされた画素部74の蓄積容量68に蓄積されている電荷は、アナログの電気信号としてデータ配線78を伝送されて信号処理部83に入力される。従って、個々の画素部74の蓄積容量68に蓄積された電荷は行単位で順に読み出される。
【0085】
信号処理部83は、個々のデータ配線78毎に設けられた増幅器及びサンプルホールド回路を備えており、個々のデータ配線78を伝送された電気信号は増幅器で増幅された後にサンプルホールド回路に保持される。また、サンプルホールド回路の出力側にはマルチプレクサ、A/D(アナログ/デジタル)変換器が順に接続されており、個々のサンプルホールド回路に保持された電気信号はマルチプレクサに順に(シリアルに)入力され、A/D変換器によってデジタルの画像データへ変換される。
【0086】
信号処理部83には画像メモリ90が接続されており、信号処理部83のA/D変換器から出力された画像データは画像メモリ90に順に記憶される。画像メモリ90は複数フレーム分の画像データを記憶可能な記憶容量を有しており、放射線画像の撮影が行われる毎に、撮影によって得られた画像データが画像メモリ90に順次記憶される。
【0087】
画像メモリ90は電子カセッテ32全体の動作を制御するカセッテ制御部92と接続されている。カセッテ制御部92はマイクロコンピュータを含んで構成されており、CPU92A、ROM及びRAMを含むメモリ92B、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ等から成る不揮発性の記憶部92Cを備えている。
【0088】
また、カセッテ制御部92には無線通信部94が接続されている。無線通信部94は、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11a/b/g/n等に代表される無線LAN(Local Area Network)規格に対応しており、無線通信による外部機器との間での各種情報の伝送を制御する。カセッテ制御部92は、無線通信部94を介してコンソール42と無線通信が可能とされており、コンソール42との間で各種情報の送受信が可能とされている。
【0089】
また、電子カセッテ32には電源部96が設けられており、上述した各種電子回路(ゲート線ドライバ81や信号処理部83、画像メモリ90、無線通信部94、カセッテ制御部92、信号検出部162等)は電源部96と各々接続され(図示省略)、電源部96から供給された電力によって作動する。電源部96は、電子カセッテ32の可搬性を損なわないように、前述のバッテリ(二次電池)96Aを内蔵しており、充電されたバッテリ96Aから各種電子回路へ電力を供給する。
【0090】
図8に示すように、コンソール42はコンピュータから成り、装置全体の動作を司るCPU104、制御プログラムを含む各種プログラム等が予め記憶されたROM106、各種データを一時的に記憶するRAM108、及び、各種データを記憶するHDD110を備え、これらはバスを介して互いに接続されている。またバスには、通信I/F部132及び無線通信部118が接続され、ディスプレイ110がディスプレイドライバ112を介して接続され、更に、操作パネル102が操作入力検出部114を介して接続されている。
【0091】
通信I/F部132は接続端子42A及び通信ケーブル35を介して放射線発生装置34と接続されている。コンソール42(のCPU104)は、放射線発生装置34との間での曝射条件等の各種情報の送受信を通信I/F部132経由で行う。無線通信部118は電子カセッテ32の無線通信部94と無線通信を行う機能を備えており、コンソール42(のCPU104)は電子カセッテ32との間の画像データ等の各種情報の送受信を無線通信部118経由で行う。また、ディスプレイドライバ112はディスプレイ110への各種情報を表示させるための信号を生成・出力し、コンソール42(のCPU104)はディスプレイドライバ112を介して操作メニューや撮影された放射線画像等をディスプレイ110に表示させる。また、操作パネル102は複数のキーを含んで構成され、各種の情報や操作指示が入力される。操作入力検出部114は操作パネル102に対する操作を検出し、検出結果をCPU104へ通知する。
【0092】
また、放射線発生装置34は、放射線源130と、コンソール42との間で曝射条件等の各種情報の送受信を行う通信I/F部132と、コンソール42から受信した曝射条件(この曝射条件には管電圧、管電流の情報が含まれている)に基づいて放射線源130を制御する線源制御部134と、を備えている。
【0093】
次に本実施形態の作用を説明する。放射線画像撮影システム18では、放射線画像撮影システム18に装備された個々の電子カセッテ32が使用可能な状態か否かを確認するために、放射線技師等に指示に応じて、図9に示す電子カセッテ検査処理がコンソール42によって定期的(例えば毎日や一週間毎、1ヶ月毎等)に行われる。なお、この電子カセッテ検査処理は、始業時や終業時の時間帯に、個々の電子カセッテ32を単位として行われる。
【0094】
すなわち、電子カセッテ検査処理では、まずステップ300において、予め設定された電子カセッテ検査用の線源位置(例えば図3に示す臥位撮影用の位置)へ放射線源130を移動させる。次のステップ302では、所定のメッセージをディスプレイ110に表示させる等により、放射線技師等の検査指示者に対し、予め設定された電子カセッテ検査用のカセッテ位置(例えば図3に示す臥位台46の天板152上の位置)に電子カセッテ32を配置するよう指示する。次のステップ304では、電子カセッテ検査用のカセッテ位置への電子カセッテ32の配置が完了したか否か判定し、判定が肯定される迄ステップ304を繰り返す。
【0095】
検査指示者は、ステップ304の指示に従い電子カセッテ検査用のカセッテ位置に電子カセッテ32を配置した後に、配置完了を意味する情報を操作パネル102を介して入力する操作を行う。これにより、ステップ304の判定が肯定されてステップ306へ移行し、無線通信部118を介して電子カセッテ32へ所定の信号を送信することで、電子カセッテ32に対して欠陥検査処理の実行を指示する。これにより、電子カセッテ32のカセッテ制御部92では欠陥検査処理(詳細は後述)が行われる。
【0096】
またステップ308では、放射線発生装置34に対し、予め設定された電子カセッテ検査用の曝射条件(管電圧や管電流の値)を送信した後に、曝射を指示する指示信号を送信する。これにより、放射線発生装置34は、コンソール42から事前に受信した曝射条件に応じた管電圧、管電流で放射線源130から放射線を射出させる。なお、本実施形態における電子カセッテ32の検査は、放射線源130と電子カセッテ32の間に被写体(放射線を吸収する物体)が存在しない状態で行われるが、電子カセッテ検査用の曝射条件は、上記状態で放射線が照射された電子カセッテ32の放射線検出器60の個々の画素部74の中に、出力の飽和した画素部74や出力が過小となった画素部74が生じることのないように、管電圧や管電流の値が定められている。
【0097】
また、ステップ310では、電子カセッテ32で行われた欠陥検査処理の結果を電子カセッテ32から受信したか否か判定し、判定が肯定される迄ステップ310を繰り返す。欠陥検査処理の結果を電子カセッテ32から受信すると、ステップ310の判定が肯定されてステップ312へ移行し、電子カセッテ32から受信した欠陥検査処理の結果(詳細は後述)をディスプレイ110に表示し、電子カセッテ検査処理を終了する。
【0098】
続いて、コンソール42からの指示によって電子カセッテ32のカセッテ制御部92で行われる欠陥検査処理について、図10を参照して説明する。ステップ320では、放射線発生装置34による曝射(放射線の照射)が終了したか否か判定し、判定が肯定される迄ステップ320を繰り返す。なお、ステップ320の判定は、例えば一定時間が経過したか否かで判断することで行うことができる。また、放射線検出器60のうち照射面56の一端部側に位置している画素部74の列(同一のゲート配線76に接続された画素部74の列)を放射線検出に用い、この画素部74の列から放射線検出の結果を繰り返し読み出して放射線の照射終了を検知することでステップ320の判定を行うことも可能である。また、上記の画素部74の列に代えて、後述する放射線検出部200のセンサ部206を放射線検出に用いるようにしてもよい。
【0099】
ステップ320の判定が肯定された場合はステップ322へ移行し、ゲート線ドライバ81及び信号処理部83により、放射線検出器60の全画素部74に蓄積されている電荷を画像信号として読み出し、読み出した画像信号を、各画素毎の濃度(放射線の照射量)を表すデジタルの画像データ(放射線画像データ)へ変換して画像メモリ90に記憶させる。ステップ324では、画像メモリ90に記憶させた放射線画像データから単一の画素のデータを処理対象として取り出し、次のステップ326では、ステップ324で取り出したデータが表す処理対象の画素の濃度Dが予め設定された白欠陥画素判定用の閾値Dw以下か否か判定する。また、ステップ326の判定が否定された場合はステップ328へ移行し、ステップ324で取り出したデータが表す処理対象の画素の濃度Dが予め設定された黒欠陥画素判定用の閾値Db以上か否か判定する。
【0100】
ステップ328の判定も否定された場合はステップ334へ移行する。また、ステップ326の判定が肯定された場合はステップ330へ移行し、ステップ324でデータを取り出した処理対象の画素を白欠陥画素に設定し、ステップ334へ移行する。また、ステップ328の判定が肯定された場合はステップ332へ移行し、ステップ324でデータを取り出した処理対象の画素を黒欠陥画素に設定し、ステップ334へ移行する。ステップ334では、放射線画像の全ての画素のデータを取り出したか否か判定する。判定が否定された場合はステップ324に戻り、ステップ334の判定が肯定される迄ステップ324〜ステップ334を繰り返す。
【0101】
また、ステップ334の判定が肯定された場合はステップ336へ移行し、上述したステップ324〜ステップ334で白欠陥画素に設定された画素の中に、放射線画像上で隣接する画素が存在しているか否かを探索し、放射線画像上で隣接する白欠陥画素を単一の白欠陥部に統合する。これにより、放射線画像中の白欠陥部が全て検出される。また、次のステップ338では、ステップ324〜ステップ334で黒欠陥画素に設定された画素の中に、放射線画像上で隣接する画素が存在しているか否かを探索し、放射線画像上で隣接する黒欠陥画素を単一の黒欠陥部に統合する。これにより、放射線画像中の黒欠陥部が全て検出される。なお、上述したステップ324〜ステップ338は請求項2,5,6に記載の欠陥部検出手段による処理の一例である。
【0102】
ステップ340では、ステップ338で検出された黒欠陥部の総数Nbと黒欠陥部の最大サイズSbを算出する。ステップ342では、ステップ340で算出した黒欠陥部の総数Nbが黒欠陥部の数についての閾値Nbth以上か否か判定する。この判定が否定された場合はステップ346へ移行し、電子カセッテ32の検査結果として「使用可」を意味する情報を暫定的に設定し、ステップ350へ移行する。また、ステップ342の判定が肯定された場合はステップ344へ移行し、黒欠陥部の総数Nbが黒欠陥部の数についての許容最大値Nbmax以上(但し、許容最大値Nbmax>閾値Nbth)か否か判定する。この判定が否定された場合はステップ348へ移行し、電子カセッテ32の検査結果として「使用注意」を意味する情報を暫定的に設定し、ステップ350へ移行する。
【0103】
ステップ350では、ステップ340で算出した黒欠陥部の最大サイズSbが、黒欠陥部の最大サイズについての閾値Sbth以上か否か判定する。ステップ350の判定が行われる場合は黒欠陥部の総数Nbが許容最大値Nbmax未満であるので、ステップ350の判定が否定された場合は、電子カセッテ32の検査結果を変更することなくステップ356へ移行する。また、ステップ350の判定が肯定された場合はステップ352へ移行し、では、黒欠陥部の最大サイズSbが黒欠陥部の最大サイズについての許容最大値Sbmax以上(但し、許容最大値Sbmax>閾値Sbth)か否か判定する。この判定が否定された場合はステップ354へ移行し、電子カセッテ32の検査結果として「使用注意」を意味する情報を設定し、ステップ356へ移行する。また、前述のステップ344又はステップ352の判定が肯定された場合はステップ358へ移行し、電子カセッテ32の検査結果として「使用禁止」を意味する情報を設定し、ステップ368で検査結果をコンソール42へ送信して欠陥検査処理を終了する。
【0104】
上述した処理について更に説明する。例えば密着部材146の粘着層146B,146Cの粘着力を同等とした場合、前述のように、粘着層146Bとシンチレータ71との密着面の方が粘着層146Cと放射線検出器60との密着面よりも空隙の発生が進行することから、密着部材146の経時劣化に伴い、例として図13(B)に示すように、白欠陥部の方が黒欠陥部よりも先に数やサイズが増加する。また、粘着層146Bとシンチレータ71との密着力が粘着層146Cと放射線検出器60との密着力と同等となるように、密着部材146の粘着層146B,146Cの粘着力を設定した場合には、密着部材146の経時劣化に伴い、例として図13(A)に示すように、白欠陥部の数やサイズは黒欠陥部の数やサイズと同様に増加する。図13(A),(B)の何れの場合も、放射線画像中の黒欠陥部の数やサイズの増加に基づき、放射線画像中の白欠陥部の数やサイズが明確に増加する前に、放射線画像中の白欠陥部の数やサイズが増加する可能性が高くなったことを検知することは困難である。
【0105】
これに対して本実施形態では、粘着層146Bとシンチレータ71との密着力が粘着層146Cと放射線検出器60との密着力よりも高くなり、粘着層146Bとシンチレータ71との密着面内の空隙の発生よりも、粘着層146Cと放射線検出器60との密着面内の空隙の発生が先に進行するように、密着部材146の粘着層146B,146Cの粘着力を設定している。これにより、例として図12(A),(B)に示すように、放射線画像中の白欠陥部の数や最大サイズが明確に増加する前に、放射線画像中の黒欠陥部の数や最大サイズが増加する。
【0106】
本実施形態ではこれを利用し、黒欠陥部の総数Nbが黒欠陥部の数についての閾値Nbth未満、かつ、黒欠陥部の最大サイズSbが黒欠陥部の最大サイズについての閾値Sbth未満の場合には、電子カセッテ32の検査結果を「使用可」とする一方、「黒欠陥部の総数Nbが閾値Nbth以上」と「黒欠陥部の最大サイズSbが閾値Sbth以上」の少なくとも一方の条件を満たした場合には電子カセッテ32の検査結果を「使用注意」とし、更に「黒欠陥部の総数Nbが許容最大値Nbmax以上」と「黒欠陥部の最大サイズSbが許容最大値Sbmax以上」の少なくとも一方の条件を満たした場合には電子カセッテ32の検査結果を「使用禁止」としている。これにより、放射線画像中の黒欠陥部の総数Nbや最大サイズSbの増加に基づき、放射線画像中の白欠陥部の数や最大サイズが明確に増加する前に、放射線画像中の白欠陥部の数や最大サイズが増加する可能性が高くなったことを検知することができる。
【0107】
また、上記で設定した検査結果は、先に説明した電子カセッテ検査処理(図9)によりコンソール42のディスプレイ110に表示される。これにより、検査指示者は、放射線画像中の白欠陥部の数や最大サイズが増加する可能性が高くなったことを認識し、例えば検査結果が「使用可」の電子カセッテ32は、高精細な放射線画像が必要とされる癌の診断を含むあらゆる用途に用い、検査結果が「使用注意」の電子カセッテ32は、放射線画像の画質に対する要求レベルが比較的低い骨折の診断等の用途にのみ用い、検査結果が「使用禁止」の電子カセッテ32は使用せず、密着部材146の交換等のリワークの実施を手配する等のように、検査を行った電子カセッテ32に対し検査結果に応じた適切な対処を行うことができる。
【0108】
なお、上記の閾値Nbth,Sbthは請求項2,3に記載の閾値、請求項4に記載の第1の閾値の一例であり、許容最大値Nbmax,Sbmaxは請求項4に記載の第2の閾値の一例である。また、ステップ340〜344,350,352は請求項2,4,6に記載の判定手段による処理の一例であり、ステップ348,,354,368は請求項3に記載の報知手段による処理の一例であり、ステップ358,368は請求項4に記載の禁止処理手段による処理の一例である。
【0109】
また、粘着層146Bとシンチレータ71との密着面内における空隙発生の進行度合いと、粘着層146Cと放射線検出器60との密着面内における空隙発生の進行度合いとの関係は、図12に示す関係に正確に一致するとは限らず、多少のばらつきが生ずる可能性がある。これを考慮し、電子カセッテ32の検査結果として「使用可」又は「使用注意」を設定した場合はステップ356において、放射線画像の中央部領域及び周縁部領域(図11(B)参照)を単位として白欠陥部の数Nw、最大サイズSwを各々算出する。
【0110】
また、次のステップ360では、ステップ340で算出した中央部領域における白欠陥部の総数Nwが白欠陥部の数についての閾値Nwth以上か、又は、ステップ340で算出した中央部領域における白欠陥部の最大サイズSwが、白欠陥部の最大サイズについての閾値Swth以上か否かを判定する。この判定は「中央部領域における白欠陥部の総数Nwが閾値Nwth未満」かつ「中央部領域における白欠陥部の最大サイズSwが閾値Swth未満」の場合は否定されてステップ364へ移行する。また「中央部領域における白欠陥部の総数Nwが閾値Nwth以上」及び「中央部領域における白欠陥部の最大サイズSwが閾値Swth以上」の何れかの条件を満足した場合には、ステップ360の判定が肯定されてステップ362へ移行し、電子カセッテ32の検査結果に「中央部領域は使用禁止」を意味する情報を追加設定した後にステップ364へ移行する。
【0111】
またステップ364では、ステップ340で算出した周縁部領域における白欠陥部の総数Nwが閾値Nwth以上か、又は、ステップ340で算出した周縁部領域における白欠陥部の最大サイズSwが閾値Swth以上か否かを判定する。この判定は「周縁部領域における白欠陥部の総数Nwが閾値Nwth未満」かつ「周縁部領域における白欠陥部の最大サイズSwが閾値Swth未満」の場合は否定されてステップ368へ移行する。
【0112】
また「周縁部領域における白欠陥部の総数Nwが閾値Nwth以上」及び「周縁部領域における白欠陥部の最大サイズSwが閾値Swth以上」の何れかの条件を満足した場合には、ステップ364の判定が肯定されてステップ366へ移行し、電子カセッテ32の検査結果に「周縁部領域は使用禁止」を意味する情報を追加設定した後にステップ368へ移行する。なお、白欠陥部の数についての閾値Nwthについては、中央部領域と周縁部領域の面積比に応じて中央部領域と周縁部領域とで相違させるようにしてもよい。そしてステップ368では電子カセッテ32の検査結果をコンソール42へ送信し、欠陥検査処理を終了する。
【0113】
なお、上記の閾値Nwth,Swthは請求項5,6に記載の閾値の一例である。また、ステップ356,360,364は請求項5,6に記載の判定手段による処理の一例であり、ステップ362,366,368は請求項6に記載の禁止処理手段による処理の一例である。
【0114】
上述したステップ356〜ステップ366の処理により、粘着層146Bとシンチレータ71との密着面内における空隙発生が比較的早期に進行し、放射線画像中の白欠陥部が比較的早期に増加してきた場合にも、これを確実に検知できると共に、検査指示者にも認識させることができる。また、放射線画像を中央部領域と周縁部領域とに分割し、各領域毎に白欠陥部の数Nw、最大サイズSwを算出して閾値(Nwth, Swth)と比較することで、例えば検査結果が「中央部領域は使用禁止」となった電子カセッテ32であっても、放射線画像中の注目領域が周縁部領域に位置する乳房の撮影には使用できる等のように、一部領域で白欠陥部が増加してきたことで密着部材146の交換等のリワークの実施を待っている状態の電子カセッテ32を、白欠陥部が比較的少ない領域を注目領域とする撮影に有効に利用することが可能となる。
【0115】
なお、上記では放射線画像を中央部領域と周縁部領域に分割し、各領域毎に白欠陥部の数Nw、最大サイズSwを算出して閾値(Nwth, Swth)と比較する態様を説明したが、放射線画像を3以上の数の領域に分割してもよいし、各領域毎に、黒欠陥部の数Nb、最大サイズSbを算出して閾値(Nbth,Sbth)と比較する処理も併せて行うようにしてもよい。
【0116】
また、上記ではシンチレータ71から射出された光を単一の光検出部(放射線検出器60)で検出する態様を説明したが、これに限られるものではない。例として図14には、放射線検出器60に加えて、シンチレータ71から射出された光を検出する光検出部としての放射線検出部200が、放射線検出器60を挟んでシンチレータ71の反対側に設けられた構成を示している。放射線検出部200は、配線がパターニングされた配線層202、絶縁層204が順に形成され、その上層に、シンチレータ71から射出され放射線検出器60を透過した光を検出するセンサ部206が複数形成され、更に当該センサ部206の上層に保護層212が形成されて構成されている。なお、放射線検出部200の厚みは例えば0.05mm程度である。
【0117】
センサ部206は、上部電極210A及び下部電極210Bを備え、上部電極210Aと下部電極210Bとの間に、シンチレータ71からの光を吸収して電荷を発生する光電変換膜210Cが配置されて構成されている。センサ部206(光電変換膜210C)としては、アモルファスシリコンを用いたPIN型、MIS型フォトダイオードを適用することも可能であるが、本実施形態では、光電変換部72の光電変換膜72Cと同様に、光電変換膜210Cを有機光電変換材料で構成している。これにより、インクジェットヘッド等の液滴吐出ヘッドを用いて有機光電変換材料を被形成体上に付着させることで光電変換膜210Cを形成させることが可能となり、絶縁性基板64として、光透過性を有する合成樹脂製で薄型の基板を用いることが可能となる。
【0118】
センサ部206による放射線量の検出結果は、電極210A,210Bと接続された図示しない信号処理部を介して読み出され、例えば電子カセッテ32への放射線の照射開始/終了タイミングの検知や、電子カセッテ32への放射線照射量の積算値の検知等に用いられる。なお、放射線画像の検出(撮影)は放射線検出器60によって行われるので、放射線検出部200のセンサ部206は、放射線検出器60の画素部74よりも配置ピッチが大きく(配置密度が低く)されており、単一のセンサ部206の受光領域は、放射線検出器60の画素部74の数個〜数百個分のサイズでよい。
【0119】
また、上記では電子カセッテ32の検査結果をコンソール42へ送信し、ディスプレイ110に表示させる態様を説明したが、これに限られるものではなく、例えば電子カセッテ32の検査結果を記憶部92Cに記憶しておき、電子カセッテ32を用いた放射線画像の撮影が行われる際に、カセッテ制御部92により、放射線画像の撮影条件として、撮影部位及び撮影される放射線画像の診断用途の少なくとも一方を表す撮影条件情報をコンソール42から受信することで取得し、取得した撮影条件情報を電子カセッテ32の検査結果と照合することで、取得した撮影条件情報が表す撮影条件での放射線画像の撮影の適否を判定し、判定結果に応じて電子カセッテ32の筐体54に設けた表示部(この態様に好適な表示部の一例を図15(B)に符号「220」を付して示す)の表示状態を切り替える処理を行うように構成してもよい。
【0120】
図15(B)に示す表示部220は、放射線画像の撮影の適否度合いを複数のレベルに分けて表示可能な表示部220Aと、撮影時の筐体54の適正な向きを表示可能な表示部220Bと、から構成されている。表示部220Aは、LED等から成る複数個のランプを備え、撮影の適否度合いに応じて点灯させるランプの個数を変化させることで撮影の適否度合いを複数のレベルに分けて表示可能とされている。なお、複数個のランプのうちの1つについて、他のランプと発光色を相違させることで撮影禁止ランプとして用い、例えば放射線画像の撮影の適否度合いの判定結果が「撮影不適」の場合は上記の撮影禁止ランプのみを点灯させ、撮影可能であれば撮影禁止ランプを消灯させて他のランプを点灯させるようにしてもよい。
【0121】
また表示部220Bは、LED等から成り撮影時の筐体54の向きとして互いに異なる向きを指示するための複数個のランプを備えている。電子カセッテ32を用いた放射線画像の撮影では、被写体(撮影対象部位)が筐体54の照射面56のうちの中央部に位置するように電子カセッテ32が配置されることが多く、この場合は表示部220Bによる撮影時の筐体54の適正な向きの表示は不要であるが、例えば乳房の撮影では、筐体54の一辺を被撮影者の体に突当てて撮影されることで、照射面56のうち被撮影者の体に突当てた一辺側へ偏った位置に被写体が撮影される。
【0122】
このため、カセッテ制御部92は、コンソール42から取得した撮影条件情報が表す撮影条件が、例えば「撮影部位が乳房」等のように、照射面56のうちの一端側に被写体が撮影される撮影条件である場合には、電子カセッテ32の検査結果に基づいて撮影時の筐体54の適正な向き(白欠陥部の数及び面積が閾値未満の領域に被写体が撮影される向き)を判定し、判定結果に応じて表示部220Bの複数個のランプのうちの何れか1個のランプ(例えば乳房の撮影であれば被撮影者の体に突当てる一辺を指し示すランプ等)を点灯させることで、撮影時の筐体54の適正な向きを表示させる。なお、図15(B)に示す表示部220Bのように、撮影時の筐体54の適正な向きを4方向に分けて表示する場合は、例として図15(A)に示すように、放射線画像の周縁部領域を4個又はそれ以上の個数の部分領域に分割し、各部分領域毎に白欠陥部の数及びサイズを判定するように構成すればよい。
【0123】
上記態様では、電子カセッテ32の検査結果(を撮影条件と照合した結果)が電子カセッテ32の筐体54に設けられた表示部220に表示されるので、特に電子カセッテ32が複数存在している環境において、撮影に適した電子カセッテ32を取り違えたり、筐体54を適切でない向きに向けた状態で撮影されたりすることを防止することができる。なお、上記態様は請求項7,8に記載の発明の一例である。
【0124】
その他、上記の実施形態で説明した本発明に係る放射線画像撮影装置としての電子カセッテ32の構成は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0125】
18 放射線画像撮影システム
32 電子カセッテ
34 放射線発生装置
42 コンソール
60 放射線検出器
71 シンチレータ
71A 柱状結晶
146 密着部材
146A 支持体
146B,146C 粘着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体形状が平板状で、柱状結晶構造部を有し、照射された放射線を吸収して光を射出するシンチレータと、
平板状で前記シンチレータの前記柱状結晶構造部と対向するように配置され、前記シンチレータから射出された光を放射線画像として検出する光検出部と、
前記シンチレータと前記光検出部との間に配置され、前記シンチレータの前記柱状結晶構造部と第1の密着面で密着すると共に前記光検出部と第2の密着面で密着し、経時劣化に伴う密着面内の空隙の発生が前記第1の密着面内よりも前記第2の密着面内で進行するように、前記第1の密着面の密着力及び前記第2の密着面の密着力が各々設定された密着部材と、
を含む放射線画像撮影装置。
【請求項2】
前記光検出部によって検出された放射線画像に対し、前記第1の密着面内に発生した空隙に起因して前記放射線画像に現れる白欠陥部と、前記第2の密着面内に発生した空隙に起因して前記放射線画像に現れる黒欠陥部と、のうち、少なくとも前記黒欠陥部を検出する欠陥部検出手段と、
前記欠陥部検出手段によって検出された前記黒欠陥部の数及び面積の少なくとも一方が予め設定された閾値以上になったか否かを判定する判定手段と、
を更に備えた請求項1記載の放射線画像撮影装置。
【請求項3】
前記判定手段によって前記黒欠陥部の数及び面積の少なくとも一方が予め設定された閾値以上になったと判定された場合に報知する報知手段を更に備えた請求項2記載の放射線画像撮影装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記欠陥部検出手段によって検出された前記黒欠陥部の数及び面積の少なくとも一方が予め設定された第1の閾値以上になったか否かを判定すると共に、前記黒欠陥部の数及び面積の少なくとも一方が前記第1の閾値よりも大きい第2の閾値以上になったか否かも判定し、
前記判定手段により、前記黒欠陥部の数及び面積の少なくとも一方が前記第2の閾値以上になったと判定された場合に、放射線画像の撮影を禁止させる撮影禁止処理を行う禁止処理手段を更に備えた請求項2又は請求項3の記載の放射線画像撮影装置。
【請求項5】
前記欠陥部検出手段は前記白欠陥部も検出し、
前記判定手段は、前記欠陥部検出手段によって検出された前記白欠陥部の数及び面積の少なくとも一方が予め設定された閾値以上になったか否かも判定する請求項2〜請求項4の何れか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項6】
前記欠陥部検出手段は前記黒欠陥部と前記白欠陥部とを区別して検出し、
前記判定手段は、前記欠陥部検出手段によって検出された前記白欠陥部の数及び面積の少なくとも一方が予め設定された閾値以上になったか否かを、前記放射線画像を複数の領域に区切ったときの個々の領域毎に判定し、
前記禁止処理手段は、前記撮影禁止処理として、前記複数の領域のうち、前記判定手段によって前記白欠陥部の数及び面積の少なくとも一方が予め設定された閾値以上になったと判定された領域を用いる放射線画像の撮影を禁止させる処理を行う請求項4記載の放射線画像撮影装置。
【請求項7】
前記判定手段による判定結果を記憶する記憶手段と、
放射線画像の撮影条件として、撮影部位及び撮影される放射線画像の診断用途の少なくとも一方を表す撮影条件情報を取得する取得手段と、
複数種の表示状態に切替可能な表示手段と、
前記取得手段によって取得された前記撮影条件情報を前記記憶手段に記憶されている前記判定結果と照合することで、前記撮影条件情報が表す撮影条件での放射線画像の撮影の適否を判定し、判定結果に応じて前記表示手段の表示状態を切り替える表示制御手段と、
を更に備えた請求項2〜請求項6の何れか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項8】
前記表示手段の複数種の表示状態の中には、放射線画像撮影時の前記放射線画像撮影装置の筐体の適正な向きを指示する表示状態が含まれており、
前記欠陥部検出手段は前記黒欠陥部と前記白欠陥部とを区別して検出し、
前記判定手段は、前記欠陥部検出手段によって検出された前記白欠陥部の数及び面積の少なくとも一方が予め設定された閾値以上になったか否かを、前記放射線画像を複数の領域に区切ったときの個々の領域毎に判定し、
前記表示制御手段は、前記撮影条件情報が表す撮影条件が、前記筐体の放射線照射面のうちの一端側に被写体が撮影される撮影条件である場合には、前記記憶手段に記憶されている前記判定結果に基づいて放射線画像撮影時の前記筐体の適正な向きを判定し、前記表示手段の表示状態を、判定した適正な向きを指示する表示状態へ切り替える請求項7記載の放射線画像撮影装置。
【請求項9】
前記密着部材は、支持体の一方の面に前記シンチレータと密着するための第1の粘着層が設けられると共に、前記支持体の他方の面に前記光検出部と密着するための第2の粘着層が設けられた構成であり、前記第1の粘着層及び前記第2の粘着層の粘着力が調整されることで、前記第1の密着面の密着力及び前記第2の密着面の密着力が各々設定されている請求項1〜請求項8の何れか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項10】
前記シンチレータ及び前記光検出部のうちの前記光検出部側から放射線が入射され、前記光検出部を透過した放射線が前記シンチレータに照射される請求項1〜請求項9の何れか1項記載の放射線画像撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−98206(P2012−98206A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247478(P2010−247478)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】