説明

放射線画像検出装置

【課題】シンチレータとして柱状結晶化した蛍光体を用いた場合でも、装置全体の厚みを厚くすることなく、十分な剛性を有し、シンチレータの破損を防止することのできる放射線画像検出装置を提供する。
【解決手段】可搬型の放射線画像検出装置1において、検出器ユニット2は、蛍光体を柱状結晶化することにより形成されたシンチレータ211が一面に設けられた第1のガラス基板213とシンチレータ211と対向する面に光電変換部212が形成された第2のガラス基板214とを有し、第1のガラス基板213と第2のガラス基板214とでシンチレータ211と光電変換部212とを挟み込むように積層されてなる検出パネル21と、剛性の高い材料で形成され検出パネル21を支持する基台22と、を備え、検出パネル21は、基台22における放射線入射面X側に、第1のガラス基板213が基台22側に位置するように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、病気診断等を目的として、X線画像に代表される、放射線を用いて撮影された放射線画像が広く用いられている。
こうした医療用の放射線画像は、従来スクリーンフィルムを用いて撮影されていたが、近年は、放射線画像のデジタル化が実現されており、例えば、被写体を透過した放射線を輝尽性蛍光体層が形成された輝尽性蛍光体シートに蓄積させた後、この輝尽性蛍光体シートをレーザ光で走査し、これにより輝尽性蛍光体シートから発光される輝尽光を光電変換して画像データを得るCR(Computed Radiography)装置が広く普及している。
【0003】
放射線画像撮影では、スクリーンフィルムや輝尽性蛍光体シート等の記録媒体を内部に収納したカセッテ(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)が用いられる。なお、CR装置での撮影に用いられるCR用のカセッテは、従来のスクリーン/フィルム用のカセッテに適合するものとして導入された既存の設備、例えばカセッテホルダーやブッキーテーブルを継続して使用可能となるように、当該スクリーン/フィルム用のカセッテにおけるJIS規格サイズに倣って、設計・製造されている。このため、CR用のカセッテでは、カセッテのサイズの互換性が維持され、施設の有効活用と画像データのデジタル化が達成されている。
【0004】
また、最近では、医療用の放射線画像を得る手段として、照射された放射線を検出しデジタル画像データとして取得する放射線画像検出装置としていわゆるフラットパネルディテクタ(Flat Panel Detector:FPD)が知られている。
このような放射線画像検出装置には、放射線検出素子として、a−Se(アモルファスセレン)のような光導電物質を用いて放射線エネルギーを直接電荷に変換し、この電荷を2次元的に配置されたTFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)等の信号読出し用のスイッチ素子によって画素単位に電気信号として読み出す直接方式のものや、放射線エネルギーをシンチレータ等で光に変換し、この光を2次元的に配置されたフォトダイオード等の光電変換素子で電荷に変換してTFT等によって電気信号として読み出す間接方式のもの等があることが知られている。
【0005】
さらに、近時、間接方式のFPDをハウジング(筐体)に収納した可搬型の放射線画像検出装置も実用化されるようになっている。このような可搬型の放射線画像検出装置は、持ち運びが可能であるために患者の病室等に行って撮影を行うこと等も可能であり、また、撮影部位の位置や角度等に応じて自在に位置や角度を調整することが可能であるため、広く活用されることが期待されている。
【0006】
間接方式の放射線画像検出装置の場合には、シンチレータとして柱状結晶化した蛍光体を用いると、蛍光体を塗布する塗布型のシンチレータを用いる場合と比較して、放射線の検出感度に優れ、被写体への照射線量の低減がはかれることが知られている。
しかし、柱状結晶化した蛍光体は外部からの圧力や衝撃に弱いため、シンチレータを放射線入射面側に配置すると、ベッドサイドにおいて患者の全体重がかかるような撮影に使用した場合や、放射線画像検出装置を誤って落下させた場合等に、ハウジングを介してシンチレータに大きな荷重や衝撃が作用し、個々の柱状結晶が破損してしまうおそれがある。
【0007】
そこで、このようなシンチレータの破損を防止するために、蛍光体とハウジング(筐体)の光電変換部に対向する部分との間に緩衝手段を設ける構成が考案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、ハウジング(筐体)内にシンチレータを保護するための緩衝部材及び高剛性部材を配置する構成も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3815792号公報
【特許文献2】特許第4012182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前述のように、現在普及しているCR用のカセッテは従来のスクリーン/フィルム用のカセッテにおけるJIS規格サイズに従ったサイズとなっており、ブッキーテーブル等もJIS規格サイズに合わせて作られている。このため、可搬型FPDについても、このJIS規格サイズのカセッテと互換性のあるサイズとすることにより、施設に設置されている既存の設備を可搬型FPDを用いた撮影に利用することができ、撮影手段として可搬型FPDを導入する際の設備投資を最小限度に抑えられるようにすることが好ましい。
【0010】
この点、特許文献1及び特許文献2に記載されているようにシンチレータを保護するために緩衝部材や高剛性部材を別途設ける構成とすると、放射線画像検出装置全体の厚みが厚くなってしまい、他の実装部品、例えば制御用回路や駆動用電源等の配置に制約が生じ、放射線画像検出装置をJIS規格サイズのカセッテと互換性のあるサイズとすることが困難となるという問題がある。
【0011】
そこで、本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、シンチレータとして柱状結晶化した蛍光体を用いた場合でも、装置全体の厚みを厚くすることなく、十分な強度を有し、シンチレータの破損を抑制することのできる放射線画像検出装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の課題を解決するために、本発明の放射線画像検出装置は、
放射線を検出する検出器ユニットと、前記検出器ユニットを内部に収納するハウジングとを備える可搬型の放射線画像検出装置であって、
前記検出器ユニットは、
蛍光体を柱状結晶化することにより形成され入射した放射線を光に変換するシンチレータが一面に設けられた第1の基材と、前記シンチレータと対向する面に前記シンチレータにより変換された光を受けて電気信号に変換する光電変換部が形成された第2の基材と、を有し、前記第1の基材と前記第2の基材とで前記シンチレータと前記光電変換部とを挟み込むように積層されてなる検出パネルと、
剛性の高い材料で形成され、前記検出パネルを支持する基台と、を備え、
前記検出パネルは、前記基台における放射線入射面側に、前記第1の基材が前記基台側に位置するように配置されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、放射線画像検出装置が、蛍光体の柱状結晶からなるシンチレータを備える場合に、シンチレータが設けられている第1の基材を剛性の高い基台側に配置することにより、シンチレータの破損を防止することができる。
すなわち、柱状結晶からなるシンチレータは、撮影時に患者の体重等の負荷がかかったり、誤って放射線画像検出装置1が落下する等による衝撃が加わった際に破損しやすいが、基台側にシンチレータを配置すれば、ハウジングと基台との間に一般的に設けられる緩衝部材によって衝撃が緩和され、衝撃が直接的にシンチレータに作用せず、また患者の体重によるハウジングの捩れは、基台の剛性により、シンチレータへの伝達を阻止され、シンチレータを保護することができるため、シンチレータの破損を防ぐことができるとの効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態における放射線画像検出装置の外観を示す斜視図である。
【図2】図1に示す放射線画像検出装置のハウジングの分解斜視図である。
【図3】図1に示す放射線画像検出装置の内部構成を示す要部断面図である。
【図4】図1に示す放射線画像検出装置の検出器ユニットの回路構成を示す等価回路図である。
【図5】図1に示す放射線画像検出装置の一変形例の内部構成を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、本発明を適用可能な実施形態がこれに限定されるものではない。
【0016】
まず、図1から図4を参照しつつ、本発明に係る放射線画像検出装置の一実施形態について説明する。ただし、本発明は図示例のものに限定されるものではない。
【0017】
図1は、本実施形態における放射線画像検出装置1の斜視図である。
本実施形態において放射線画像検出装置1は、いわゆるフラットパネルディテクタ(Flat Panel Detector:以下「FPD」という。)をカセッテ型に構成した可搬型のカセッテ型FPDであり、放射線画像撮影に用いられ、放射線画像データ(以下、単に「画像データ」と称する。)を取得するものである。
本実施形態において、放射線画像検出装置1は、シンチレータ211(図3参照)等を備え、放射された放射線を可視光等の他の波長の電磁波に変換して電気信号を得るいわゆる間接型の放射線画像検出装置である。
【0018】
放射線画像検出装置1は、照射された放射線を検出してデジタル画像データとして取得する検出器ユニット2(図3参照)と、この検出器ユニット2を内部に収納し内部を保護するハウジング(筐体)3とを備えている。
【0019】
図2は、ハウジング3の分解斜視図である。
図2に示すように、ハウジング3は、両端部に開口部311、312を有する中空のハウジング本体部31と、ハウジング本体部31の各開口部311、312を閉塞する第1の蓋部材32及び第2の蓋部材33とを備えている。なお、図1及び図2では、ハウジング3が筒状のいわゆるモノコック状に形成されている場合が例示されているが、ハウジング3の形状、構成は特に限定されない。例えば、放射線入射側に配置されるフロント部材とその反対の側に配置されるバック部材とを備え、両部材を嵌め合わせることでハウジングを構成するようにしてもよい。
【0020】
ハウジング本体部31は、例えばカーボン繊維体(例えば炭素繊維強化プラスチック:CFRP)等の軽量かつ強度に優れた材料によって構成されている。このようなカーボン繊維体等を筒状にしてハウジング本体部31を構成することにより、ハウジング本体部31の厚みをCRカセッテ同等の寸法で放射線画像検出装置1の強度を保つことができる。
【0021】
また、第1の蓋部材32及び第2の蓋部材33は、蓋本体部321、331と、挿入部322、332とを備えており、例えばアルミニウムで形成されている。
挿入部322、332の各側面には、第1の蓋部材32及び第2の蓋部材33と、ハウジング本体部31と、を係合する係合片324、334が、開口部311、312に対する挿入方向に向かって延出している。係合片324、334の外側面には、それぞれ係合凸部325、335が設けられている。
【0022】
ハウジング本体部31の内側面であって、係合凸部325、335に対応する位置には、係合凸部325、335を受ける係合凹部315、316が形成されており、第1の蓋部材32と第2の蓋部材33がハウジング本体部31に挿入されると、係合凸部325、335がハウジング本体部31に設置された係合凹部315、316に係合するようになっている。
【0023】
第1の蓋部材32における蓋本体部321の一側面には、放射線画像検出装置1と外部の機器との間で無線により情報の送受信を行うための無線通信部(すなわち、アンテナ装置)41が埋め込まれている。なお、無線通信部41の形状や設ける位置等は、特に限定されない。
【0024】
また、蓋本体部321の一面であって、無線通信部41が形成されている面と同一面上には、ハウジング3の内部に設けられた充電池24(図3参照)を充電する際に外部の電源等と接続される充電用端子45と、放射線画像検出装置1の電源のON/OFFを切り替える電源スイッチ46が設けられている。更に、無線通信部41が形成されている面と放射線入射側の面とによって形成される角部には、例えばLED等で構成され充電池24の充電状況や各種の操作状況等を表示するインジケータ47が設けられている。
【0025】
本実施形態において、ハウジング3は、その放射線入射方向の厚さが15mmとなるように形成されている。なお、ハウジング3の放射線入射方向の厚さ寸法は15mmに限定されないが、16mm以下であることが好ましく、従来のスクリーン/フィルム用のカセッテにおけるJIS規格(JIS Z 4905)に準拠するサイズ(15mm+1mmであり、かつ15mm−2mm)の範囲内であることが好ましい。なお、このJIS規格(JIS Z 4905)に対応する国際規格は、IEC 60406である。
CR用のカセッテやブッキーテーブル等、既存の装置のほとんどがこのスクリーン/フィルム用のカセッテにおけるJIS規格サイズに合わせて作られているため、ハウジング3の寸法をJIS規格サイズに合わせることにより、カセッテ型のFPDである放射線画像検出装置1による撮影を行う場合でも既存の設備を利用することができる。
【0026】
図3は、放射線画像検出装置1を図1に示す矢視A方向から見た所定箇所の断面図である。
【0027】
図3に示すように、検出器ユニット2は、基台22と、基台22の上方の面(すなわち、図1において放射線入射面X側の面)に支持された検出パネル21と、基台22の下方の面に取り付けられた各種の電気部品等を備えて構成されている。
基台22は検出パネル21等を保護するものである。本実施形態において、基台22は捻りや外部からの衝撃に耐えることのできる高い剛性を備えており、例えばポリカーボネイトとABSを混合した樹脂等の可撓性を有する材料により構成されている。尚、この高い剛性を有する基台22の上面(X線入射側)に検出パネル21を、下面に電装部(各種の電気部品等)を取り付ける構造は、カセッテ型FPDの一般的な構造である。
【0028】
基台22と検出パネル21との間には、検出パネル21を衝撃等から保護するための緩衝層としての緩衝部材215が設けられている。緩衝部材215は、例えば樹脂や不織布等で形成されている。なお、緩衝部材215は本発明の必須の構成要素ではなく、緩衝部材215を介さずに検出パネル21を直接基台22に固定する構成としてもよい。
【0029】
また、本実施形態では、電気部品として回路基板23、充電池24等が配置されている。
基台22の下側(電気部品が設けられている側)には、基台22に支持された電気部品とハウジング3との間に空間を確保し、外部からの衝撃等を吸収する緩衝部材25が設けられている。
なお、回路基板23、充電池24、緩衝部材25の形状、大きさ、個数、配置等は、図3に例示したものに限定されない。
【0030】
回路基板23上には、例えば各部の制御を行う制御装置50(図4参照)を構成するCPU(central processing unit)(図示せず)、ROM(read only memory)、RAM(Random Access Memory)等からなる記憶部51(図4参照)、走査駆動回路52(図4参照)、信号読出し回路53(図4参照)等が実装されている。なお、ROM、RAMとは別に、フラッシュメモリなどの書き換え可能な読出し専用メモリ等からなり検出パネル21から出力された画像信号を記憶する画像記憶部を備えていてもよい。
【0031】
充電池24は、放射線画像検出装置1を構成する複数の駆動部(例えば、走査駆動回路52(図4参照)、信号読出し回路53(図4参照)、通信部(図示せず)、記憶部51(図4参照)、インジケータ47、検出パネル21等)に電力を供給する電力供給部である。
【0032】
充電池24としては、例えばニッカド電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、小型シール鉛電池、鉛蓄電池等の充電自在な二次電池や、電気二重層コンデンサ、リチウムイオンキャパシタ(LIC)等の蓄電素子等を適用することができる。また、充電池24に代えて、燃料電池等を適用してもよい。
【0033】
回路基板23等の各電気部品は、柔軟性のある材料で構成されたフレキシブルハーネス(図示せず)によって、第1の蓋部材32に設けられているインターフェース用部品としての充電用端子45、電源スイッチ46、インジケータ47、及び無線通信部41と電気的に接続されている。なお、フレキシブルハーネスを第1の蓋部材32の各インターフェース用部品と接続する手法は、コネクタによってもよいし、半田付けによってもよい。
【0034】
検出パネル21は、入射した放射線を光に変換するシンチレータ211が一方の面に設けられた第1の基材としての第1のガラス基板213、シンチレータ211の上側(放射線入射面X側)に配置されシンチレータ211により変換された光を検出して電気信号に変換する光電変換部212が一方の面に形成された第2の基材としての第2のガラス基板214等を備えて構成されている。
【0035】
本実施形態において、光電変換部212は、第2のガラス基板214におけるシンチレータ211と対向する面に形成されており、検出パネル21は、第1のガラス基板213と第2のガラス基板214とで、シンチレータ211と光電変換部212とを挟み込むように積層された積層構造となっている。
本実施形態では、検出パネル21は、第1のガラス基板213が基台22の側に位置するように基台22の上に配置されている。
【0036】
第1のガラス基板213及び第2のガラス基板214は、ともに厚みが0.5mm程度であり、その面の寸法が基台22の面の寸法とほぼ同じ寸法に形成されている。なお、第1のガラス基板213及び第2のガラス基板214の厚みは0.5mmに限定されない。また、第1のガラス基板213と第2のガラス基板214とで厚みが異なるようにしてもよい。
【0037】
シンチレータ211は、例えば、蛍光体を主たる成分とし、入射した放射線に基づいて、波長が300nmから800nmの電磁波、すなわち、可視光線を中心に紫外光から赤外光にわたる電磁波(光)を出力するようになっている。
【0038】
このシンチレータ211で用いられる蛍光体は、例えば、CaWO等を母体材料とするものや、CsI:TlやGd22S:Tb、ZnS:Ag等の母体材料内に発光中心物質が付活されたものを用いることができる。また、希土類元素をMとしたとき、(Gd,M,Eu)の一般式で示される蛍光体を用いることができる。特に、放射線吸収及び発光効率が高いことよりCsI:TlやGd22S:Tbが好ましく、これらを用いることで、ノイズの低い高画質の画像を得ることができる。
【0039】
シンチレータ211は、例えば、セルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等の各種高分子材料(ポリマー)により形成された支持体(図示せず)の上に、例えば気相成長法により蛍光体を層状に形成したものであり、第1のガラス基板213の上側(撮影時に放射線が入射する側)に貼付されている。なお、支持体を介さず、第1のガラス基板213の上に直接シンチレータ211を形成するようにしてもよい。
シンチレータ211における蛍光体の層は、蛍光体の柱状結晶からなっており、その厚みは特に限定されないが、例えば0.3〜0.4mm程度である。
気相成長法としては、蒸着法、スパッタ法、化学蒸着(CVD:chemical vapor deposition)法等が好ましく用いられる。いずれの手法においても、蛍光体の層を支持体上に独立した細長い柱状結晶に気相成長させることができる。
【0040】
第2のガラス基板214の下側(シンチレータ211と対向する側)には、シンチレータ211から出力された電磁波(光)を電気エネルギーに変換して蓄積し、蓄積された電気エネルギーに基づく画像信号の出力を行う検出手段としての光電変換部212が形成されている。
【0041】
このように、本実施形態においては、光電変換部212が、シンチレータ211の上側に積層されており、光電変換部212の上側に配置された第2のガラス基板214と、シンチレータ211の下側に配置された第1のガラス基板213との間に、光電変換部212とシンチレータ211とが対向した状態で挟み込まれる構成となっている。
第2のガラス基板214と第1のガラス基板213との間には、スペーサ216が配置されており、第2のガラス基板214と第1のガラス基板213との間に空間を保持するようになっている。なお、第2のガラス基板214と第1のガラス基板213との間の空間は空隙となっていてもよいし、導光性(透明)の樹脂等が充填されていてもよい。
【0042】
また、第1のガラス基板213と第2のガラス基板214との外周縁に沿って図示しない封止部材が設けられており、この封止部材によって第1のガラス基板213と第2のガラス基板214とが接着され、結合されている。
なお、第2のガラス基板214と第1のガラス基板213との間の空間が空隙となっている場合には、第2のガラス基板214と第1のガラス基板213との間の空間から空気を吸引する等により脱気した後に封止部材による接着、結合を行うことが好ましい。これにより、空気に含まれる湿気がシンチレータ211等に影響を及ぼすのを防ぐことができ、シンチレータ211等の長寿命化を図ることができる。
【0043】
ここで、検出器ユニット2の回路構成について説明する。
【0044】
光電変換部212には、複数の光電変換素子61(図4参照)が2次元状に複数配列されており、この各光電変換素子61の一方の電極にはそれぞれ信号読出し用のスイッチ素子であるTFT62のソース電極が接続されている。光電変換素子61は、例えばフォトダイオード等であり、シンチレータ211等と共に、被写体を透過した放射線を電気信号に変換する放射線検出素子を構成する。
なお、TFT62は、液晶ディスプレイ等に使用されている無機半導体系のもの、有機半導体を用いたもののいずれであってもよい。
また、本実施形態では、光電変換素子61としてフォトダイオードを用いた場合を例示しているが、光電変換素子はフォトダイオード以外の固体撮像素子を用いてもよい。
【0045】
光電変換部212の側部には、各光電変換素子61にパルスを送って当該各光電変換素子61を走査・駆動させる走査駆動回路52と、各光電変換素子に蓄積された電気エネルギーを読み出す信号読出し回路53とが配されている。
【0046】
各光電変換素子61の他方の電極にはバイアス線Lbが接続されており、バイアス線Lbはバイアス電源56に接続されていて、バイアス電源56から各光電変換素子61に逆バイアス電圧が印加されるようになっている。
【0047】
各TFT62のゲート電極はそれぞれ走査駆動回路52から延びる走査線Llに接続されており、TFT62のゲート電極には、この走査線Llを介して図示しないTFT電源から読み出し電圧(ON電圧)又はOFF電圧が印加されるようになっている。また、各TFT62のドレイン電極はそれぞれ信号線Lrに接続されている。各信号線Lrは、それぞれ信号読出し回路53内の増幅回路57に接続されており、各増幅回路57の出力線はそれぞれサンプルホールド回路58を経てアナログマルチプレクサ59に接続されている。
また、信号読出し回路53には信号をデジタル信号に変換処理する処理手段としてのA/D変換部60が接続されており、アナログマルチプレクサ59から送り出されたアナログの画像信号は、A/D変換部60によりデジタルの画像信号に変換される。信号読出し回路53は、このA/D変換部60を介して制御装置50に接続されており、デジタルの画像信号が制御装置50に出力される。
制御装置50には、記憶部51が接続されており、制御装置50は、A/D変換部60から送られたデジタルの画像信号を画像データとして記憶部51に記憶させるようになっている。
【0048】
次に、本実施形態における放射線画像検出装置1の作用について説明する。
【0049】
本実施形態においては、まず、一方の面に光電変換部212を形成した第2のガラス基板214と、一方の面にシンチレータ211を貼付した第1のガラス基板213とを、シンチレータ211と光電変換部212とが対向するようにスペーサ216を介して積層し、第1のガラス基板213と第2のガラス基板214との間の空間の脱気処理を行った後、封止部材によって両ガラス基板213,214を接着、結合させる。これにより検出パネル21が完成する。
次に、回路基板23及び充電池24を所定の位置に搭載した基台22を、回路基板23及び充電池24が搭載された側が下になるようにして配置し、その上に緩衝部材215を介して検出パネル21を固定する。このとき、第1のガラス基板213の裏面側(シンチレータ211が貼付されている側とは反対の面)が基台22側に配置されるようにする。これにより、検出器ユニット2が完成する。
【0050】
検出器ユニット2が完成すると、検出器ユニット2の回路基板23に接続されている電子部品や充電池24と、第1の蓋部材32に設けられている充電用端子45、電源スイッチ46、インジケータ47、無線通信部41とを、フレキシブルハーネスにより電気的に接続する。
【0051】
第1の蓋部材32をハウジング本体部31の開口部311に嵌め込む際には、第1の蓋部材32とフレキシブルハーネスにより接続された検出器ユニット2を開口部311から挿入し、検出器ユニット2を第1の蓋部材32により押圧しつつハウジング本体部31内に収納する。
係合片324の係合凸部325がハウジング本体部31の係合凹部315と係合するまで第1の蓋部材32を押し込み、これにより第1の蓋部材32の装着が完了する。
検出器ユニット2の収納及び第1の蓋部材32の装着が完了すると、第2の蓋部材33を開口部312に嵌め込む。これにより放射線画像検出装置1の組み立てが完了する。
【0052】
放射線画像検出装置1を撮影に使用する場合には、例えば、撮影対象である患者をベッドに寝かせ、ベッドと患者の身体との間に検出パネル21の設けられている側を上にして放射線画像検出装置1を差し込み、撮影を行う。また、放射線画像検出装置1を既存のCR用のカセッテによる撮影の際に用いられるブッキーテーブル等にセットして使用することも可能である。
【0053】
本実施形態では、シンチレータ211が貼付されている第1のガラス基板213を基台22の上に配置し、シンチレータ211を上から覆うように光電変換部212の設けられた第2のガラス基板を配置しているため、撮影時に患者の体重等の負荷がかかったり、誤って放射線画像検出装置1が落下したりすることにより衝撃が加わっても、シンチレータ211が直接衝撃を受けることがなく、シンチレータ211の破損を防止することができる。
【0054】
なお、本実施形態では、光電変換部212が表面に形成された第2のガラス基板214がハウジング3の放射線入射面X側に配置されることとなるが、光電変換部212を構成する光電変換素子61やTFT62は厚みが10μm程度と薄いものであるため、捩れや衝撃に対してある程度の強度を有している。このため、光電変換部212及び第2のガラス基板214がハウジング3の放射線入射面X側に配置されても患者の荷重等による変形で光電変換素子61やTFT62がピクセル単位の剥離等を生じることはなく、画質に影響を与えない。
【0055】
以上のように、本実施形態によれば、放射線画像検出装置1が、蛍光体の柱状結晶からなるシンチレータ211を備える場合でも、シンチレータ211が貼付されている第1のガラス基板213を基台22側に配置することにより、シンチレータ211の破損を防止することができる。
すなわち、柱状結晶からなるシンチレータ211は、蛍光体を塗布することにより構成される塗布型のシンチレータと比較して、撮影時に患者の体重等の負荷がかかったり、誤って放射線画像検出装置1が落下する等による衝撃が加わった際に破損しやすい。この点、本実施形態のように、剛性を有する基台22の側にシンチレータ211を配置すれば、ハウジング3と基台22との間に一般的に設けられる緩衝部材によって衝撃が緩和され、衝撃が直接的にシンチレータ211に作用せず、また患者の体重によるハウジング3の捩れは、基台22の剛性により、シンチレータ211への伝達を阻止され、シンチレータ211を保護することができる。このため、別途剛性を有する部材を設けて保護しなくてもシンチレータ211の破損を防ぐことができる。
【0056】
また、2枚のガラス基板(第1のガラス基板213、第2のガラス基板214)でシンチレータ211及び光電変換部212を挟み込んでいるので、外部からの負荷がかかった際等に、シンチレータ211や光電変換部212が破損するのを防ぐことができる。
【0057】
また、本実施形態では、放射線画像検出装置1の寸法が、従来のスクリーン/フィルム用のカセッテにおけるJIS規格サイズの範囲内に収まる寸法となっているため、カセッテ型のFPDである放射線画像検出装置1による撮影を行う場合でもCR用のカセッテ用に設けられているブッキーテーブル等、既存の装置、設備を利用することができる。
【0058】
また、ハウジング本体部31が、継ぎ目の無い一体成型の筒状となっているので、薄型(厚さ15mm以下)でありながら、患者の実撮影に充分耐え、患者に起因する荷重の方向(撮影方向)に対し、全方向的な強度を有することができるとともに、放射線画像検出装置1のハウジング3を構成する部品による継ぎ目が少ないので、粉塵、患者の汗、消毒液等の水分や異物の浸入確率がさがり、ハウジング3内部のシンチレータ211や各種電気部品等の長寿命化を図ることができる。
【0059】
また、本実施形態では、予め検出器ユニット2と第1の蓋部材32とを電気的に接続しておき、第1の蓋部材32を開口部311に嵌め込むことによりハウジング本体部31への検出器ユニット2の挿入も完了し、さらに第2の蓋部材33を開口部312に嵌め込むことによりハウジング3の組み立てが完了するので、工場における生産過程において、効率的に作業を行うことができるとともに、検出器ユニット2の組み付け作業精度等についてあまり厳密さが要求されず、歩留まりの向上が期待できる。
【0060】
なお、本実施形態では、第1のガラス基板213及び第2のガラス基板214の面の寸法が、基台22の面の寸法とほぼ同じ寸法に形成されている場合を例として説明したが、両ガラス基板213,214及び基台22の寸法はこれに限定されない。
例えば、図5に示すように、第1のガラス基板213のみ、または第1のガラス基板213及び第2のガラス基板214の双方を、基台22の面の寸法よりも僅かに小さい寸法に形成してもよい。この場合、第1のガラス基板213、第2のガラス基板214の寸法を、基台22と比較してどの程度小さくするかは特に限定されないが、例えば、縦横の各辺がいずれも基台22よりも1mmずつ内側に位置する程度の寸法に形成する。
この場合、図5に示すように、基台22の端部がハウジング3の内側面に接するように構成してもよい。基台22の端部をハウジング3の内側面と接触させることにより、検出器ユニット2がハウジング3の内部でがたつかないように支持することができる。なお、この場合、基台22の端部は直接ハウジング3の内側面に接していてもよいし、緩衝部材等を介して接するように構成してもよい。
【0061】
このように、第1のガラス基板213のみ、または第1のガラス基板213及び第2のガラス基板214の双方を基台22の面の寸法よりも小さい寸法に形成することにより、放射線画像検出装置1を誤って落下させた場合等、外部から衝撃が加わった際に、この衝撃がまず基台22に伝わり、基台22が衝撃を緩和または吸収する。これにより、第1のガラス基板213、第2のガラス基板214及び第1のガラス基板213上に形成されているシンチレータ211が衝撃により破損することをより確実に防止することができる。
【0062】
また、本実施形態では、シンチレータ211を1層のみ有する構成について説明したが、検出パネル21に設けられるシンチレータ211の数はこれに限定されず、例えば2層のシンチレータを備える構成としてもよい。
なお、シンチレータが2層設けられている場合には、蛍光体層の厚みの厚い方が設けられているガラス基板を基台22側に配置する。また、一方のシンチレータが気相成長法により形成された蛍光体の柱状結晶からなるものであり、他方のシンチレータが塗布型のものである場合には、気相成長法により形成された蛍光体の柱状結晶からなるシンチレータが設けられているガラス基板を基台側に配置する。
これは、シンチレータは、塗布型のものよりも気相成長法により形成されたものの方が破損しやすく、また、同じ気相成長法により形成されたものであれば、厚みが厚くなるほど捻りや衝撃に弱く破損しやすくなるため、剛性の高い基台22によって保護する必要が高いためである。
【0063】
また、本実施形態では、第1の基材、第2の基材がともにガラスで形成されている場合を例として示したが、第1の基材、第2の基材を形成する材料は透明なものであればよく、ガラスに限定されない。
例えば、シンチレータ211を設ける第1の基材を樹脂で形成してもよい。第1の基材を樹脂で形成した場合には、これをガラスで形成する場合と比較して厚みを薄くすることが可能となる。そして、このように、第1の基材の厚みを薄くしても、これを基台22側に設置することにより、十分な剛性を確保することができる。
【0064】
その他、本発明が本実施の形態に限定されず、適宜変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0065】
1 放射線画像検出装置
2 検出器ユニット
3 ハウジング
21 検出パネル
22 基台
23 回路基板
24 充電池
61 光電変換素子
62 TFT
211 シンチレータ
212 光電変換部
213 第1のガラス基材
214 第2のガラス基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を検出する検出器ユニットと、前記検出器ユニットを内部に収納するハウジングとを備える可搬型の放射線画像検出装置であって、
前記検出器ユニットは、
蛍光体を柱状結晶化することにより形成され入射した放射線を光に変換するシンチレータが一面に設けられた第1の基材と、前記シンチレータと対向する面に前記シンチレータにより変換された光を受けて電気信号に変換する光電変換部が形成された第2の基材と、を有し、前記第1の基材と前記第2の基材とで前記シンチレータと前記光電変換部とを挟み込むように積層されてなる検出パネルと、
剛性の高い材料で形成され、前記検出パネルを支持する基台と、を備え、
前記検出パネルは、前記基台における放射線入射面側に、前記第1の基材が前記基台側に位置するように配置されていることを特徴とする放射線画像検出装置。
【請求項2】
前記第1の基材の面の寸法は、前記基台の面の寸法よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の放射線画像検出装置。
【請求項3】
前記第1の基材は、樹脂により形成され、前記第2の基材は、ガラスにより形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の放射線画像検出装置。
【請求項4】
前記第1の基材と前記基台との間に、緩衝層を設けたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の放射線画像検出装置。
【請求項5】
前記シンチレータは、蛍光体としてCsIを用いたものであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の放射線画像検出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−141154(P2011−141154A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1085(P2010−1085)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】