説明

放射線計測装置および核医学診断装置

【課題】臭化タリウム放射線検出器の電極と臭化タリウム結晶の間のタリウム層挿入工程によるコスト上昇を回避しつつ、ポーラリゼーション無しに長時間安定して計測できる安価な放射線計測装置、およびそれを用いた安価な核医学診断装置を提供する。
【解決手段】半導体結晶として臭化タリウムを用いてなる半導体放射線検出器と、前記半導体放射線検出器に電圧を印加するコンデンサと、前記コンデンサの一方の電極に正電荷と負電荷を蓄積可能な少なくとも1つ以上の直流電源と、を備えた放射線計測装置であって、前記半導体放射線検出器のカソード電極およびアノード電極が金、白金、パラジウムのうちの少なくとも1つ以上の金属で構成され、前記直流電源が前記コンデンサの前記一方の電極に正電荷を蓄積する電圧と負電荷を蓄積する電圧を10分よりも短い時間毎に周期的に切換えて供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線計測装置および核医学診断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、γ線(ガンマ線)等の放射線を計測する放射線計測装置を用いた核医学診断装置が広く普及してきている。代表的な核医学診断装置がガンマカメラ装置、単光子放射断層撮像装置(SPECT(Single photon emission computed tomography)撮像装置)、陽電子放出型断層撮像装置(PET(Positron Emission Tomography)撮像装置)などである。また、放射線計測装置を用いた放射能爆弾テロ対策用線量計等で、ホームランドセキュリティ(Homeland Security、国土安全保障)における放射線計測装置の需要が増大しつつある。
【0003】
これらの放射線計測装置に搭載される放射線検出器は、従来、シンチレータ(Scintillator、放射線エネルギーを吸収して蛍光を発する機器)と光電子増倍管とを組み合わせたものであったが、近年、γ線等の放射線を検出する放射線検出器として、テルル化カドミウム(CdTe)、カドミウム(Cd)・亜鉛(Zn)・テルル(Te)、ガリウム砒素(GaAs)、臭化タリウム(TlBr)等の半導体結晶によって構成された半導体放射線検出器を用いた技術が注目されている。
【0004】
半導体放射線検出器は、放射線と半導体結晶との相互作用で生じた電荷を電気信号に変換する構成であるため、シンチレータを使用したものより電気信号への変換効率が良く、かつ小型化が可能である等、種々の特徴がある。
また、半導体放射線検出器は、前記の半導体結晶と、この半導体結晶の一面に形成されたカソード電極と、半導体結晶を挟んでこのカソード電極と対向するアノード電極とを備えている。これらのカソード電極とアノード電極との間に直流高圧電圧を印加することにより、X線、γ線等の放射線が半導体結晶内に入射したときに生成される電荷を、前記カソード電極あるいはアノード電極から信号として取出すようにしている。
【0005】
特に、前記の半導体結晶のうち、臭化タリウムは、テルル化カドミウム、カドミウム・亜鉛・テルル、ガリウム砒素等、他の半導体結晶に比べて光電効果による線減衰係数が大きく、薄い結晶で他の半導体結晶と同等のγ線感度を得ることができる。そのため、臭化タリウムによって構成された半導体放射線検出器を搭載した放射線計測装置、およびそれを用いた核医学診断装置は、他の半導体放射線検出器を搭載した放射線計測装置およびそれを用いた核医学診断装置に比べて、より小型化が可能である。
【0006】
また、臭化タリウムは、テルル化カドミウム、カドミウム・亜鉛・テルル、ガリウム砒素等他の半導体結晶に比べて安価であるため、臭化タリウムによって構成された半導体放射線検出器を搭載した放射線計測装置、およびそれを用いた核医学診断装置では、他の半導体放射線検出器を搭載した放射線計測装置、およびそれを用いた核医学診断装置に比べて、安価にすることが可能である。
【0007】
従来、臭化タリウム放射線検出器のカソード電極およびアノード電極の材料としては、金、白金、パラジウム等が用いられてきたが、金、白金、パラジウム等で電極を構成した臭化タリウム検出器にバイアス電圧を印加して長時間動作させた場合、カソード電極付近に陽イオン例えばTl(タリウムイオン)、アノード電極付近に陰イオン例えばBr(臭素イオン)が蓄積する傾向があると考えられる。イオンが電極付近に蓄積、すなわち電荷が電極付近に蓄積(ポーラリゼーションの一種)すると、印加したバイアス電圧と逆方向の電圧が発生してエネルギー分解能が劣化する。
【0008】
しかし、近年では、臭化タリウムによって構成された半導体放射線検出器の通常のカソード電極およびアノード電極と臭化タリウム結晶との間にタリウム層を挿入することで、タリウム金属および臭化タリウムの生成反応を利用し、ポーラリゼーションを防止して安定動作が可能なことが明らかになった(例えば、特許文献1および非特許文献1参照)。
すなわち、カソード電極付近では、Tl+e→Tl、アノード電極付近では、Br+Tl→TlBr+e、の電気化学反応によって、電極付近のイオンの蓄積が解消されると考えられる。
ここで、ポーラリゼーションとは結晶構造や電荷や特性の偏りを意味するものであって、詳しくは後記する。
【0009】
また、臭化タリウム放射線検出器のカソード電極およびアノード電極と臭化タリウム結晶の間にタリウム層を挿入することに加えて、検出器に印加する電荷収集用のバイアス電圧を2時間以上24時間以下の一定時間ごとに正負反転させることにより、検出器としてさらに長時間使用できることが明らかになった(例えば、特許文献1、非特許文献2および非特許文献3参照)。
この方法は、タリウム金属および臭化タリウムの生成反応が可逆反応であることを利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−156800号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Nucl. Instr. andMeth.A、vol.585(2008)の第102頁から第104頁
【非特許文献2】Nucl. Instr. andMeth.A、vol.607(2009)の第112頁から第115頁
【非特許文献3】IEEE Trans. Nucl. Sci. vol.56(2009)の第1859頁から第1862頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、臭化タリウム放射線検出器を搭載した放射線計測装置、あるいはそれを用いた核医学診断装置を長時間にわたって安定動作させる目的で、臭化タリウム放射線検出器を作製するにあたり、臭化タリウム結晶の2つの対向面にタリウム層を被着する工程が行われることがある。
この際、タリウム層の被着には、通常、真空容器内でタリウムを気化して臭化タリウム結晶表面に被着させる、抵抗加熱蒸着法等が用いられる。しかし、タリウムは急性毒性物質であり、取り扱いには細心の注意が必要である。タリウムを気化させると、臭化タリウム結晶表面だけでなく、真空容器内部や真空容器の排気ポンプ内部にもタリウムの一部が被着することになるため、真空装置全体を覆う局所排気設備や真空ポンプの排気からタリウムを除去する除害設備等が必要になる。
【0013】
したがって、臭化タリウム放射線検出器の電極として、毒性の少ないタリウム以外の金属を用いる場合に比べて、タリウムを用いる場合は、検出器作製のコストが大幅に増加することになる。その結果、臭化タリウム検出器を搭載した放射線計測装置およびそれを用いた核医学診断装置を、他の半導体放射線検出器を搭載した放射線計測装置およびそれを用いた核医学診断装置に比べて安価にすることが困難になる。
その一方、臭化タリウム検出器の電極と臭化タリウム結晶との間にタリウム層を挿入せず、従来のように金、白金、パラジウム等のみでカソード電極およびアノード電極を構成した場合、例えば金でカソード電極およびアノード電極を構成した場合、検出器に印加する電荷収集用のバイアス電圧を連続して長時間印加して計測を継続したときには、ポーラリゼーションが発生してエネルギースペクトルが劣化し、放射線計測が安定して行えないことが判明している。
また、2時間の計測後にバイアス電圧を正負反転した場合も、エネルギースペクトルの特性は、一時的には回復しても、さらに2時間の計測を続けると次第に劣化することが判明している(例えば、非特許文献3参照)。
【0014】
したがって、臭化タリウム検出器のカソード電極およびアノード電極を金で構成した場合は、ポーラリゼーションが防止できず長時間の安定動作ができないため、臭化タリウム検出器を搭載した放射線計測装置、およびそれを用いた核医学診断装置を長時間安定して使用することができない。
【0015】
そこで、本発明はこのような問題点を解決するもので、その目的とするところは、低コストで安定した特性の放射線計測装置、およびそれを用いた安価な核医学診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記の課題を解決して、本発明の目的を達成するために、以下のように構成した。
すなわち、半導体結晶として臭化タリウムを用いてなる半導体放射線検出器と、前記半導体放射線検出器に電圧を印加するコンデンサと、前記コンデンサの一方の電極に正電荷と負電荷を蓄積可能な少なくとも1つ以上の直流電源と、を備えた放射線計測装置であって、前記半導体放射線検出器のカソード電極およびアノード電極が金、白金、パラジウムのうちの少なくとも1つ以上の金属で構成され、前記直流電源が前記コンデンサの前記一方の電極に正電荷を蓄積する電圧と負電荷を蓄積する電圧を10分よりも短い時間毎に周期的に切換えて供給する。
【0017】
かかる構成により、臭化タリウム放射線検出器のカソード電極およびアノード電極と臭化タリウム結晶の間にタリウム層を特に挿入すること無しに、ポーラリゼーションを防止して安定した放射線計測が可能となる。
【発明の効果】
【0018】
以上、本発明によれば、低コストで安定した特性の放射線計測装置、およびそれを用いた安価な核医学診断装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の放射線計測装置の第1実施形態の回路構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の放射線計測装置の第1実施形態に用いられる半導体放射線検出器に印加されるバイアス電圧の時間変化を示すタイムチャートである。
【図3】本発明の放射線計測装置の第1実施形態によるエネルギースペクトルの模式図である。それぞれ(a)バイアス電圧印加直後、(b)5分後、(c)535分後、(d)540分後の図である。
【図4】本発明の放射線計測装置の第2実施形態の回路構成を示すブロック図である。
【図5】比較例の放射線計測装置におけるバイアス印加時間と122keVのエネルギー分解能の関係を示す特性図である。それぞれ(a)最初に正のバイアス電圧を印加、(b)次に極性反転して負のバイアス電圧を印加、(c)極性反転して2回目の正のバイアス電圧を印加、(d)極性反転して2回目の負のバイアス電圧を印加、した際の特性を示している。
【図6】比較例の放射線計測装置を用いて計測した57Co線源のγ線エネルギースペクトルの模式図である。それぞれ(a)バイアス印加直後、(b)最初にバイアスを印加し始めてから合計78分後、の特性を示している。
【図7】本発明の放射線計測装置を核医学診断装置に備えた第1の適用例としての単光子放射断層撮像装置(SPECT装置)の概略の構成図である。
【図8】本発明の放射線計測装置を核医学診断装置に備えた第2の適用例としての陽電子放出型断層撮像装置(PET撮像装置)の概略の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の放射線計測装置およびそれを用いた核医学診断装置について、図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
(放射線計測装置の第1実施形態)
図1は本発明の放射線計測装置の第1実施形態の回路構成を示すブロック図である。図1において、放射線計測装置11は、臭化タリウムでなる半導体結晶111とその2つの対向面に金でなる第1電極112と同じく金でなる第2電極113を有する半導体放射線検出器(以下では単に、検出器ともいう)172と、検出器172に電圧を印加する平滑コンデンサ110と、平滑コンデンサ110の一方の電極に正電荷を蓄積可能な第1直流電源101と、平滑コンデンサ110の前記一方の電極に負電荷を蓄積可能な第2直流電源102と、を備えている。
【0022】
さらに、第1直流電源101から平滑コンデンサ110の前記一方の電極への電流を通流するように定電流特性の極性を合わせて接続した第1定電流ダイオード108と、平滑コンデンサ110の前記一方の電極から第2直流電源102への電流を通流するように定電流特性の極性を合わせて接続した第2定電流ダイオード109と、第1直流電源101と平滑コンデンサ110の前記一方の電極を接続する配線に接続された第1フォトモスリレー105と、第2直流電源102と平滑コンデンサ110の前記一方の電極を接続する配線に接続された第2フォトモスリレー106とを備えている。
【0023】
さらに、第1直流電源101と第1フォトモスリレー105との間には保護抵抗器103が、また、第2直流電源102と第2フォトモスリレー106との間には保護抵抗器104が過電流の防止用の抵抗として備えられている。
第1フォトモスリレー105と第2フォトモスリレー106の開閉は、スイッチ制御装置107によって制御される。
【0024】
また、検出器172の出力にはブリーダ抵抗114と結合コンデンサ115の一方の電極が接続され、結合コンデンサ115の他方の電極には検出器172の信号を増幅する増幅器116が接続されている。さらに、スイッチ制御装置107と増幅器116には、フォトモスリレー105、106の開閉および増幅器116の極性反転のタイミングを制御する極性統合制御装置117が接続されている。
【0025】
第1直流電源101の負極、第2直流電源102の正極、平滑コンデンサ110の前記一方の電極以外の他方の電極、およびブリーダ抵抗114の一方の電極は、それぞれ接地線に接続される。
また、第1フォトモスリレー105と第2フォトモスリレー106は、機能としてはリレー(継電器)であるが、高速の応答性を備えていること、およびチャタリング等による誤動作を防止するために構造上に機械的な接点が無く高い信頼性を備えていることで、フォトモスリレーが用いられている。
【0026】
なお、第1定電流ダイオード108と第2定電流ダイオード109は、互いに定電流特性の極性を逆にして直列に接続されて定電流装置171を構成している。この構成において、第1定電流ダイオード108と第2定電流ダイオード109とに用いられている現状の一般的な定電流ダイオードは、電界効果型トランジスタ(FET:Field effect transistor)のソース電極とゲート電極を短絡した構造で定電流特性が作り出されているので、逆電圧を加えた場合は電界効果型トランジスタの中で形成されているp−n接合が順方向にバイアスされ、大きな電流が流れる。つまり、定電流ダイオードの電流特性は極性を持っている。したがって、第1定電流ダイオード108と第2定電流ダイオード109とは、互いに定電流特性の極性を逆にして直列に接続されることによって、極性の差が無い定電流特性が得られる。このような理由から、定電流装置171は、第1定電流ダイオード108と第2定電流ダイオード109とを互いに定電流特性の極性を逆にして直列に接続された構成とすることにより、極性の差が無い定電流特性を有している。
【0027】
放射線計測装置11によってγ線等の放射線を計測する場合には、検出器172の第1電極112と第2電極113の電極間には、第1直流電源101あるいは第2直流電源102と平滑コンデンサ110によって、電荷収集用のバイアス電圧が印加されている(例えば、+500Vあるいは−500V)。
バイアス電圧が印加された検出器172にγ線が入射すると、検出器172を構成する半導体結晶111と入射したγ線との間で相互作用が起こり、電子および正孔といった電荷が生成される。
【0028】
生成された電荷は、検出器172からγ線検出信号として出力される。このγ線検出信号は、結合コンデンサ115を介して、増幅器116に入力される。ブリーダ抵抗114は、結合コンデンサ115に電荷が蓄積し続けることを防止し、検出器172の出力電圧が上がり過ぎないようにする働きをする。増幅器116は、微小な電荷であるγ線検出信号を電圧に変換し増幅する働きをする。
増幅器116によって増幅されたγ線検出信号は、後段のアナログ・デジタル変換器(図示せず)でデジタル信号に変換され、γ線のエネルギー毎にデータ処理装置(図示せず)によってカウントされる。
【0029】
(ポーラリゼーションについて)
ところで、半導体結晶111が臭化タリウムでなる検出器172に対して、第1直流電源101を用いて例えば+500Vのバイアス電圧を連続して印加すると、半導体結晶111にポーラリゼーション(polarization、半導体結晶内の電荷の偏り)が発生し、放射線計測装置11としてγ線のエネルギー分解能が劣化する。
ポーラリゼーションが発生する時間は、検出器172の部材である第1電極112と第2電極113の種類や半導体結晶111の出来不出来によってばらつきがあり、10分から50時間まで様々である。
なお、検出器172の第1電極112と第2電極113は、カソード電極もしくはアノード電極の役目をするが、どちらに相当するかは正負のバイアス電圧の方向によって異なる。ポーラリゼーションの発生を防止するには、次に述べるように、カソード電極の役目とアノード電極の役目を交互にバランスよく担うことが望ましい。
【0030】
(ポーラリゼーションの防止法)
ポーラリゼーションを防止するには、検出器172に印加するバイアス電圧の極性を短時間で周期的に反転する必要がある。すなわち、例えば+500Vから−500V、−500Vから+500Vに極性反転する必要がある。反転の周期は、10分よりも短くする必要がある。
反転の周期を10分以上にした場合は、エネルギー分解能の劣化が起こる可能性があり、バイアス電圧を反転してもエネルギー分解能が充分には回復しない場合がある。
【0031】
さらに、バイアス電圧の極性を反転させる際、バイアス電圧の絶対値が電荷収集用として不充分となり、γ線によって生成された電荷を信号として充分に取出せなくなる時間、すなわち放射線計測の途切れ時間が生じる。放射線計測装置を核医学診断装置やホームランドセキュリティに応用する場合、計測の途切れ時間はなるべく短い方が良いので、極性反転に要する時間はなるべく短い方が良い。
【0032】
その一方、増幅器116には、平滑コンデンサ110の電圧の時間変化と結合コンデンサ115の静電容量値との積に相当する電流が流れる。したがって、平滑コンデンサ110の電圧の時間変化が大きい場合、増幅器116に対して制限電流値よりも大きな電流が流れ、増幅器116を損傷させる可能性がある。そのため、バイアス電圧の極性を反転させる際には、バイアス電圧の変化率の絶対値が所定の値を超えないように制限する必要がある。
【0033】
(ポーラリゼーション防止の制御方法、第1例)
以下に、本実施形態の放射線計測装置11において、ポーラリゼーションを防止するための制御方法を第1例として、図1および図2を用いて説明する。
なお、図2は半導体放射線検出器172に印加されるバイアス電圧の時間変化を示すタイムチャートであり、横軸は時間、縦軸は電圧を示している。
まず、最初、検出器172に+500Vのバイアス電圧を印加する場合について説明する。正の直流バイアス電圧は、直流電圧500Vを正極から出力する第1直流電源101によって供給される。第1直流電源101から検出器172に対して+500Vの電圧を直接印加するとノイズが発生するため、平滑コンデンサ110を用いて検出器172に電圧を印加する。すなわち、検出器172へ印加するバイアス電圧は、実質的に平滑コンデンサ110から印加されている。
【0034】
スイッチ制御装置107は、検出器172に正のバイアス電圧を印加するときに、フォトモスリレー105を閉じている(フォトモスリレー105がオンの状態)と共にフォトモスリレー106を開いている(フォトモスリレー106がオフの状態)。
【0035】
平滑コンデンサ110は、定電流ダイオード108(および定電流ダイオード109)を介して充電され、平滑コンデンサ110の電圧は+500Vとなる。それに伴って、検出器172に印加されるバイアス電圧も+500Vとなる。逆に、検出器172に−500Vのバイアス電圧を印加する場合、負の直流バイアス電圧は、直流電圧500Vを負極から出力する第2直流電源102によって供給される。
【0036】
スイッチ制御装置107は、検出器172に負のバイアス電圧を印加するときに、フォトモスリレー105を開くと共にフォトモスリレー106を閉じている。平滑コンデンサ110は、定電流ダイオード109を介して充電され、平滑コンデンサ110の電圧は−500Vとなる。本実施形態は、平滑コンデンサ110の一方の電極に正電荷あるいは負電荷を蓄積することで、検出器172へ印加するバイアス電圧を正負反転させている。
【0037】
極性統合制御装置117は、予め設定された極性反転の時間情報に基づいて、スイッチ制御装置107と増幅器116に「正バイアス」、「負バイアス」、「正から負へのバイアス反転」、「負から正へのバイアス反転」の指令信号を送信する。スイッチ制御装置107は、この指令信号に基づいてフォトモスリレー105、106を開閉する。
【0038】
(第1実施形態の特性)
本実施形態では、平滑コンデンサ110の静電容量値が0.1μF、定電流ダイオード108および109の制限電流値が0.5mA、結合コンデンサ115の静電容量値が1000pF、増幅器116の制限電流値が10μA、バイアス電圧反転の周期を5分、とする場合を説明する。
まず、極性統合制御装置117から「正バイアス」の指令信号が送信されているときは、スイッチ制御装置107によってフォトモスリレー105が閉じられ、フォトモスリレー106が開かれている状態である。したがって、平滑コンデンサ110は定電流ダイオード108を介して正電荷が蓄積され、検出器172に印加されるバイアス電圧は+500Vとなっている(図2の符号201)。
検出器172に対して最初にバイアス電圧を印加してから4分と59.7秒間(5分−0.3秒間)は符号201の状態である。
【0039】
次に、極性統合制御装置117から「正から負へのバイアス反転」の指令信号が送信されると、スイッチ制御装置107によってフォトモスリレー105が開かれた直後にフォトモスリレー106が閉じられる。したがって、平滑コンデンサ110に蓄積された正電荷は、定電流ダイオード109を介して第2直流電源102へ流れ、逆に負電荷が平滑コンデンサ110に蓄積されて、0.3秒(図2の符号206)後には平滑コンデンサ110の電圧は−500V(図2の符号203)となっている。
平滑コンデンサ110の電圧の極性が反転する時に、検出器172に印加されるバイアス電圧の時間変化(図2の符号202)が直線的な勾配となり短時間で−500Vになるのは、定電流ダイオード109による効果である。
なお、図2において、符号201に示す時間が約5分(5分−0.3秒間)であるのに対し、符号206が示す時間が0.3秒であるのは、図2における長さと時間が比例した表記ではないが、これは符号206が示す0.3秒の時間における電圧の極性が反転する様子を示すために敢えて、符号206の区間を誇張して表現したものである。
【0040】
その後、極性統合制御装置117から「負バイアス」の指令信号が送信されているときは、スイッチ制御装置107によってフォトモスリレー105が開かれフォトモスリレー106が閉じられている状態である。したがって、平滑コンデンサ110は定電流ダイオード109(および定電流ダイオード108)を介して負電荷が蓄積され、検出器172に印加されるバイアス電圧が−500Vとなっている(図2の符号203)。
【0041】
極性統合制御装置117から「負バイアス」の指令信号が送信され始めてから4分と59.7秒後、すなわち「正から負へのバイアス反転」の指令信号が送信されてから5分後、逆に「負から正へのバイアス反転」の指令信号が送信される。
すると、スイッチ制御装置107によってフォトモスリレー106が開かれた直後にフォトモスリレー105が閉じられる。したがって、平滑コンデンサ110に蓄積された負電荷は、定電流ダイオード108を介して第1直流電源101へ流れ、逆に正電荷が平滑コンデンサ110に蓄積されて、0.3秒後には平滑コンデンサ110の電圧が+500Vとなる。
【0042】
なお、平滑コンデンサ110の電圧の極性が反転する時に、検出器172に印加されるバイアス電圧の時間変化(図2の符号204)が直線的な勾配となり短時間で+500Vになるのは、定電流ダイオード108による効果である。
その後、再び極性統合制御装置117から「正バイアス」の指令信号が送信され、検出器172に印加されるバイアス電圧は+500Vが保持される(図2の符号205)。
【0043】
以上により、計測の途切れ時間206および207(図2の符号206、207)は、共に0.3秒となる。したがって、10分の放射線計測中に途切れ時間が合計で0.6秒発生するが、放射線計測装置を核医学診断装置やホームランドセキュリティに応用する場合には、充分に短い時間であって、問題とはならない。
一方、ここで、増幅器116に対して、その制限電流値よりも大きな電流が流れないように制限をして、増幅器116の損傷を防止する必要がある。
【0044】
本実施形態の場合、結合コンデンサ115の静電容量値が1000pF、増幅器116の制限電流値が10μAであるため、平滑コンデンサ110の電圧の変化率の絶対値が、最大で10000V/秒を超えないように制限する必要がある。
図2に示した例では、変化率の絶対値が最大で約3300V/秒(500×2/0.3)となる。結合コンデンサ115の静電容量値が1000pFであるため、増幅器116には最大で3.3μA(1000×10−12×3300)の電流が流れることになる。この値は、増幅器116の制限電流値(10μA)に比べて低い値であるため、増幅器116を損傷することは無い。
【0045】
なお、計測の途切れ時間206および207(図2の符号206、207)は、漏れなく計測する観点からは短い方が望ましいが、その分、極性の反転時における電圧変化率が大きくなり、増幅器116に流れる電流が大きくなるので、増幅器116を含めた図1の機器、部品の信頼性、コストの観点からは望ましくないことも起きる。
計測の途切れ時間が短いことが望まれる分野に応用される場合においては、このような観点も含めて、図2における計測の途切れ時間206および207(図2の符号206、207)は設定される。
【0046】
増幅器116に入力されるγ線検出信号は、検出器172に印加されるバイアス電圧の正負に対応して、正電荷か負電荷かが決まるが、それによって増幅器の極性を切換える必要がある。極性統合制御装置117から増幅器116に送信される「正バイアス」、「負バイアス」、「正から負へのバイアス反転」、「負から正へのバイアス反転」の指令信号により、増幅器116の極性はそれぞれ「負電荷対応」、「正電荷対応」、「負電荷対応から正電荷対応に反転」、「正電荷対応から負電荷対応に反転」と切換えられる。
【0047】
図3は、本実施形態の放射線計測装置11を用いて計測した57Co線源のγ線エネルギースペクトルの模式図である。図3(a)、(b)、(c)、(d)は、それぞれ(a)バイアス電圧印加直後、(b)5分後、(c)535分後、(d)540分後の図である。
図3(a)、(b)、(c)、(d)において、横軸はエネルギーチャンネルのチャンネル番号を示している。各番号のエネルギーチャンネルには、様々なエネルギーのγ線がエネルギー別(所定のエネルギー範囲)に、各チャンネル(エネルギーチャンネル)に対応づけて割り当てられている。
例えば図3(a)において、略430チャンネル近辺のエネルギーチャンネルに対して、略122KeVのγ線エネルギーが割り当てられている。γ線エネルギーの増加とともに番号の大きいエネルギーチャンネルが順に割り当てられている。
【0048】
図3(a)、(b)、(c)、(d)において、縦軸は各エネルギーチャンネルのγ線の計数率(counts per min、1分当たりのカウント数)である。γ線エネルギーは連続的に分布しているが、計測としては、所定のエネルギー範囲(幅)においてカウントすることが現実的である。したがって、所定のエネルギー範囲に対応したエネルギーチャンネル毎に離散的に計測されることが、一般的な計測手法となっている。
なお、図3(a)、(b)、(c)、(d)においては、エネルギーチャンネル毎に離散的に計測されたものが、横軸をエネルギーチャンネルとして連続的に表記されている。
【0049】
図3(a)において、略122keVに対応したエネルギーチャンネルの計数率にピークがみられる。このようなピークにおけるエネルギー分解能は、ピークが最高値の計数率の半分となる計数率のチャンネル数の範囲(幅)を半値幅と表記すれば、次のように表せる。
エネルギー分解能=(半値幅のチャンネル数)/(ピーク直下のチャンネル数)
なお、百分率(%)で表記する場合には、上記のエネルギー分解能の式に100を掛ける。
また、エネルギー分解能は、識別可能なエネルギーの目安であるので、エネルギー分解能が小さい値ほど、検出能力が高いことを意味している。
【0050】
なお、図3(a)、(b)、(c)、(d)の4つの図において、122keVのエネルギー分解能は全て略8%である。少なくとも540分間(9時間)にわたって、エネルギー分解能は、略8%を維持し、ポーラリゼーション無く、安定して放射線計測が可能である。
後記するようなSPECT撮像装置600(図7)やPET撮像装置700(図8)のような核医学診断装置においては、1日で540分間(9時間)以上、連続して使用されることは一般的にはないので、540分間(9時間)エネルギー分解能の特性が変化なければ、事実上、長年にわたって初期の特性が確保できると期待される。
【0051】
以上、本実施形態の放射線計測装置11によれば、臭化タリウム放射線検出器のカソード電極およびアノード電極と臭化タリウム結晶の間にタリウム層を挿入すること無しに、ポーラリゼーションを防止し安定して放射線計測が可能となる。
【0052】
(バイアス電圧の極性反転周期を長くした比較例の場合の特性)
放射線計測装置の第1実施形態では、検出器172に印加するバイアス電圧反転の周期を10分よりも短く、例として5分とした。これに対して、バイアス電圧反転の周期を10分以上とした場合の比較例を次に示し、その結果と対比することにより、バイアス電圧反転の周期を10分よりも短くした本発明の特徴と優位性を示す。
本発明の第1実施形態では、放射線計測装置11の検出器172に印加するバイアス電圧反転の周期を5分としたが、比較例では周期を20分とした以外の構成は第1実施形態の放射線計測装置11と同じである。
【0053】
図5は、この比較例の放射線計測装置におけるバイアス印加時間と122keVのエネルギー分解能との関係を示す図である。図5(a)、(b)、(c)、(d)はそれぞれ、(a)最初に正のバイアス電圧を印加した時、(b)次に極性反転して負のバイアス電圧を印加した時、(c)極性反転して2回目の正のバイアス電圧を印加した時、(d)極性反転して2回目の負のバイアス電圧を印加した時の図である。
図5(a)、(b)、(c)、(d)において、横軸はバイアス印加時間(min)であり、縦軸は122KeVのエネルギー分解能(%)である。
【0054】
また、図6は、比較例の放射線計測装置を用いて計測した57Co線源のγ線エネルギースペクトルの模式図である。それぞれ(a)バイアス印加直後、(b)最初にバイアスを印加し始めてから合計78分後の図である。
図6(a)、(b)において、横軸は、エネルギーチャンネルである。また、縦軸は計数率(counts per min)である。
【0055】
図5(a)と図6(a)に示すように、最初に正のバイアス電圧を印加した際には、122KeVのエネルギー分解能は略8%である。
そして、図5(a)に示すように、最初に正のバイアス電圧を印加してから10分間は122KeVのエネルギー分解能を略8%に維持できる。しかし、10分を経過して以降は次第にエネルギー分解能が劣化する。この分解能の劣化は、図5(a)において、10分を経過して以降で、特性線が上昇していることに対応している。
【0056】
図5(a)のバイアス印加時間20分(min)においては、分解能は非常に劣化するが、この時点である20分後にバイアス電圧の極性を反転して負のバイアス電圧を印加すると、エネルギー分解能が部分的に回復し、略9%になる。このように略9%までには回復するが、当初の略8%までには回復しない。なお、この回復過程は、図5においては、図示していない。
【0057】
エネルギー分解能が略9%に回復した状態は、図5(b)のバイアス印加時間0分(min)に対応している。
図5(b)に示すように、エネルギー分解能が略9%に回復した状態から負のバイアス電圧を印加し続けると、8分間はエネルギー分解能を略9%に維持する。しかし、その後、エネルギー分解能が劣化し、概ね10分(min)を経過するとその劣化は顕著になる。この分解能の劣化は、図5(b)において、バイアス印加時間が概ね10分以降の特性線が上昇していることに対応している。
【0058】
図5(b)のバイアス印加時間20分(min)においては、分解能は非常に劣化するが、この時点である20分後にバイアス電圧の極性を反転して正のバイアス電圧を印加すると、エネルギー分解能が部分的に回復し、略11%になる。このように略11%までには回復するが、当初の略8%までには回復しないとともに、図5(b)のバイアス印加時間0分(min)における略9%にも回復しない。
【0059】
エネルギー分解能が略11%に回復した状態は、図5(c)のバイアス印加時間0分(min)に対応している。
図5(c)に示すように、エネルギー分解能が略11%に回復した状態から、再び正のバイアス電圧を印加し続けると、6分間はエネルギー分解能が略11%を維持する。しかし、その後はエネルギー分解能が劣化し、時間の経過とともにその劣化は顕著になる。この分解能の劣化は、図5(c)において、概ね10分(min)を経過して以降で、特性線が上昇していることに対応している。
【0060】
図5(c)のバイアス印加時間20分(min)においては、エネルギー分解能は非常に劣化するが、この時点である20分後にバイアス電圧の極性を反転して負のバイアス電圧を印加すると、エネルギー分解能が部分的に回復し、略12%になる。
【0061】
エネルギー分解能が略12%に回復した状態は、図5(d)のバイアス印加時間0分(min)に対応している。
また、図5(d)に示すように、略12%に回復した状態から、再び負のバイアス電圧を印加し続けると、5分間はエネルギー分解能が略12%を維持する。しかし、その後はエネルギー分解能が劣化し、時間の経過とともにその劣化は顕著になる。
そして18分後には、図6(b)に示すようにエネルギースペクトルから略122KeVのピークが消滅する。
【0062】
このように、バイアス印加時間20分の周期の場合には、エネルギー分解能がバイアス印加時間の反転の周期内において劣化するとともに、バイアス電圧の極性を正負反転しても、エネルギー分解能は回復せずに劣化が蓄積されていく。
【0063】
以上、比較例の放射線計測装置では、良好なエネルギー分解能を維持できず、安定した放射線計測ができない。
これに対して、本発明の第1実施形態の放射線計測装置11では、少なくとも540分間(9時間)にわたって、エネルギー分解能が略8%を維持し、ポーラリゼーション無く安定して放射線計測が可能である。
これは、比較例の放射線計測装置で検出器に印加するバイアス電圧反転の周期を10分以上としているのに対して、本発明の第1実施形態の放射線計測装置11で検出器172に印加するバイアス電圧反転の周期を10分よりも短い時間としたことによる。
【0064】
(放射線計測装置の第2実施形態)
図4は、本発明の放射線計測装置の第2実施形態の回路構成を示すブロック図である。図4において、放射線計測装置21は、臭化タリウムでなる半導体結晶312とその2つの対向面に金でなる第1電極313と同じく金でなる第2電極314を有する半導体放射線検出器(以下では単に、検出器という)372と、検出器372に電圧を印加する平滑コンデンサ311と、平滑コンデンサ311の一方の電極に正電荷または負電荷を蓄積可能な直流電源301と、を備えている。
【0065】
さらに、直流電源301から平滑コンデンサ311の前記一方の電極への電流を通流するように定電流特性の極性を合わせて接続した第1定電流ダイオード309と、平滑コンデンサ311の前記一方の電極から直流電源301への電流を通流するように定電流特性の極性を合わせて接続した第2定電流ダイオード310と、直流電源301の正極と平滑コンデンサ311の前記一方の電極を接続する配線に接続された第1フォトモスリレー304と、直流電源301の負極と平滑コンデンサ311の前記一方の電極を接続する配線に接続された第2フォトモスリレー305と、直流電源301の正極からの接地線に接続された第3フォトモスリレー306と、直流電源301の負極からの接地線に接続された第4フォトモスリレー307とを備えている。
【0066】
なお、第1定電流ダイオード309と第2定電流ダイオード310は前記した理由により、互いに定電流特性の極性を逆にして直列に接続されて定電流装置371を構成している。
また、直流電源301の正極と第1フォトモスリレー304、第3フォトモスリレー306との間には保護抵抗器302が、また、直流電源301の負極と第2フォトモスリレー305、第4フォトモスリレー307との間には保護抵抗器303が過電流防止用の抵抗として備えられている。
フォトモスリレー304〜307の開閉は、スイッチ制御装置308によって制御される。
【0067】
また、検出器372にはブリーダ抵抗315と結合コンデンサ316の一方の電極が接続され、結合コンデンサ316の他方の電極には検出器372の信号を増幅する増幅器317が接続されている。
さらに、スイッチ制御装置308と増幅器317には、フォトモスリレー304〜307の開閉および増幅器317の極性反転のタイミングを制御する極性統合制御装置318が接続されている。
平滑コンデンサ311の他方の電極、およびブリーダ抵抗315の一方の電極はそれぞれ接地線に接続される。
【0068】
放射線計測装置21によってγ線等の放射線を計測する場合には、検出器372の第1電極313と第2電極314の電極間には、直流電源301と平滑コンデンサ311によって、電荷収集用の正あるいは負のバイアス電圧が印加されている(例えば、+500Vあるいは−500V)。
検出器372にγ線が入射した時のγ線検出信号の処理機能については、第1実施形態の場合と同様である。
【0069】
ところで、半導体結晶312が臭化タリウムでなる検出器372に対して、例えば+500Vのバイアス電圧を連続して印加するとポーラリゼーションが発生するのは、第1実施形態の場合と同様である。
以下に、本実施形態の放射線計測装置21においてポーラリゼーションを防止するための制御方法を、第2例として、図4および図2を用いて説明する。
【0070】
(ポーラリゼーション防止の制御方法、第2例)
まず、最初、検出器372に+500Vのバイアス電圧を印加する場合について説明する。直流電源301から検出器372に対して+500Vの電圧を直接印加するとノイズが発生するため、平滑コンデンサ311を用いて検出器372に電圧を印加する。
スイッチ制御装置308は、検出器372に正のバイアス電圧を印加する時にフォトモスリレー304、307を閉じると共にフォトモスリレー305、306を開いている。
【0071】
平滑コンデンサ311は、定電流ダイオード309(および定電流ダイオード310)を通じて充電され、平滑コンデンサ311の電圧は+500Vとなる。それに伴って、検出器372に印加されるバイアス電圧も+500Vとなる。
逆に、検出器372に−500Vのバイアス電圧を印加する場合、スイッチ制御装置308はフォトモスリレー304、307を開くと共にフォトモスリレー305、306を閉じている。平滑コンデンサ311は、定電流ダイオード310を介して充電され、平滑コンデンサ311の電圧は−500Vとなる。
【0072】
極性統合制御装置318は、予め設定された極性反転の時間情報に基づいて、スイッチ制御装置308と増幅器317に「正バイアス」、「負バイアス」、「正から負へのバイアス反転」、「負から正へのバイアス反転」の指令信号を送信する。スイッチ制御装置308は、この指令信号に基づいてフォトモスリレー304〜307を開閉する。
【0073】
(第2実施形態の特性)
本実施形態では、平滑コンデンサ311の静電容量値が0.1μF、定電流ダイオード309および310の制限電流値が0.5mA、結合コンデンサ316の静電容量値が1000pF、増幅器317の制限電流値が10μAとし、バイアス電圧反転の周期を5分とする場合を説明する。
まず、極性統合制御装置318から「正バイアス」の指令信号が送信されている時は、スイッチ制御装置308によってフォトモスリレー304、307が閉じられ、フォトモスリレー305、306が開かれている状態なので、平滑コンデンサ311は定電流ダイオード309を介して正電荷が蓄積され、検出器372に印加されるバイアス電圧は+500Vとなっている(図2の符号201)。検出器372に対して最初にバイアス電圧を印加してから4分と59.7秒間は符号201の状態である。
【0074】
次に、極性統合制御装置318から「正から負へのバイアス反転」の指令信号が送信されると、スイッチ制御装置308によってフォトモスリレー304、307が開かれた直後にフォトモスリレー305、306が閉じられる。したがって、平滑コンデンサ311に蓄積された正電荷は、定電流ダイオード310を介して直流電源301へ流れ、逆に負電荷が平滑コンデンサ311に蓄積されて、0.3秒後には平滑コンデンサ311の電圧は−500Vとなっている。
平滑コンデンサ311の電圧の極性が反転する時に、検出器372に印加されるバイアス電圧の時間変化(図2の符号202)が直線的な勾配となり短時間で−500Vになるのは、定電流ダイオード310による効果である。
【0075】
その後、極性統合制御装置318から「負バイアス」の指令信号が送信されているときは、スイッチ制御装置308によってフォトモスリレー304、307が開かれフォトモスリレー305、306が閉じられている状態である。したがって、平滑コンデンサ311は定電流ダイオード310を介して負電荷が蓄積され、検出器372に印加されるバイアス電圧は−500Vとなっている(図2の符号203)。
【0076】
極性統合制御装置318から「負バイアス」の指令信号が送信され始めてから4分と59.7秒後、すなわち「正から負へのバイアス反転」の指令信号が送信されてから5分後、逆に「負から正へのバイアス反転」の指令信号が送信されると、スイッチ制御装置308によってフォトモスリレー305、306が開かれた直後にフォトモスリレー304、307が閉じられる。
これによって、平滑コンデンサ311に蓄積された負電荷は、定電流ダイオード309を介して直流電源301へ流れ、逆に正電荷が平滑コンデンサ311に蓄積されて、0.3秒後には平滑コンデンサ311の電圧は+500Vとなっている。
平滑コンデンサ311の電圧の極性が反転する時に、検出器372に印加されるバイアス電圧の時間変化(図2の符号204)が直線的な勾配となり短時間で+500Vになるのは、定電流ダイオード309による効果である。
【0077】
その後、再び極性統合制御装置318から「正バイアス」の指令信号が送信され、検出器372に印加されるバイアス電圧は+500Vが保持される(図2の符号205)。
以上により、計測の途切れ時間206および207は、第1の実施形態と同じく、共に0.3秒となる。10分の放射線計測中に途切れ時間が合計で0.6秒発生するが、充分に短い時間であり、放射線計測装置を核医学診断装置やホームランドセキュリティに応用する場合に問題とはならない。
平滑コンデンサ311の電圧の変化率の絶対値は最大で約3300V/秒となるので増幅器317に流れる最大の電流値は3.3μAであり、増幅器317の制限電流値に比べて低い値である。
【0078】
増幅器317に入力されるγ線検出信号は、検出器372に印加されるバイアス電圧の正負に対応して、正電荷か負電荷かが決まるが、それによって増幅器の極性を切換える必要がある。極性統合制御装置318から増幅器317に送信される「正バイアス」、「負バイアス」、「正から負へのバイアス反転」、「負から正へのバイアス反転」の指令信号により、増幅器317の極性はそれぞれ「負電荷対応」、「正電荷対応」、「負電荷対応から正電荷対応に反転」、「正電荷対応から負電荷対応に反転」と切換えられる。
【0079】
本実施形態の放射線計測装置21を用いて計測した57Co線源による略122keVγ線のエネルギー分解能は、第1実施形態の放射線計測装置11を用いた場合と同様に、バイアス電圧印加直後から少なくとも540分(9時間)後まで略8%を維持し、ポーラリゼーション無く安定して放射線計測が可能である。
【0080】
以上、本実施形態の放射線計測装置21においては、第1実施形態の放射線計測装置11と比較して、フォトモスリレーの数は多くなるが、直流電源の数を減らすことができる。一般には、フォトモスリレーよりも直流電源にかかるコストの方が高いので、本実施形態の放射線計測装置21では、第1実施形態の放射線計測装置と比較して、製作コストを下げることが可能になる。
【0081】
(本実施形態の放射線計測装置の核医学診断装置への第1の適用例)
以上説明した第1実施形態の放射線計測装置11と第2実施形態の放射線計測装置21は、核医学診断装置に適用することができる。
図7に示すのは、核医学診断装置としてのSPECT撮像装置600に、第1実施形態の放射線計測装置11、もしくは第2実施形態の放射線計測装置21を適用した場合の構成図である。
図7において、SPECT撮像装置600は、中央部分に円柱状の計測領域602を取り囲むようにして、2台の上下に位置した放射線検出ブロック601A、601Bと、回転支持台606と、ベッド31と、画像情報作成装置603を備えている。
【0082】
ここで、上側に位置する放射線検出ブロック601Aは、複数の放射線計測ユニット611とユニット支持部材615と遮光・電磁シールド613とを備えている。この放射線計測ユニット611は、複数の放射線計測装置11(もしくは21)と配線基板612とコリメータ614とを備えている。また、下側に位置する放射線検出ブロック601Bも同様の構成である。また、画像情報作成装置603は、データ処理装置32と表示装置33から構成されている。
【0083】
放射線検出ブロック601A、601Bは、回転支持台606において周方向に180度ずれた位置に配置されている。具体的には、それぞれの放射線検出ブロック601A、601Bの各ユニット支持部材615(一方のみ図示)が、周方向に180度隔てた位置で回転支持台606に取り付けられる。そして、ユニット支持部材615に、配線基板612を含む複数の放射線計測ユニット611が着脱可能に取り付けられている。
【0084】
複数の放射線計測装置11は、コリメータ614で仕切られる領域Kに、配線基板612に取り付けられた状態で多段にそれぞれ配置される。コリメータ614は、放射線遮蔽材(例えば、鉛、タングステン等)から形成され、放射線(例えば、γ線)を通過する多数の放射線通路を形成している。
全ての配線基板612およびコリメータ614は、回転支持台606に設置された遮光・電磁シールド613内に配置される。この遮光・電磁シールド613は、γ線以外の電磁波の放射線計測装置11等への影響を遮断している。
【0085】
このようなSPECT撮像装置600では、放射性薬剤を投与された被検体Hが載置されるベッド31が移動され、被検体Hは、一対の放射線検出ブロック601A、601Bの間に移動される。そして、回転支持台606が回転されることによって、各放射線検出ブロック601A、601Bが被検体Hの周囲を旋回して検出が開始される。
そして、放射性薬剤が集積した被検体H内の集積部(例えば、患部)Dからγ線が放出されると、放出されたγ線がコリメータ614の放射線通路を通って対応する放射線計測装置11に入射する。そして、放射線計測装置11は、γ線検出信号を出力する。このγ線検出信号は、γ線のエネルギー毎にデータ処理装置32によってカウントされ、その情報等が表示装置33に表示される。
【0086】
なお、図7において、放射線検出ブロック601A、601Bは、回転支持台606に支えられながら、太い矢印で示したように回転し、被検体Hとの角度を変えながら、撮像、および計測を行う。また、放射線検出ブロック601A、601Bは、細い矢印で示したように上下に移動可能であり、被検体Hとの距離を変えることができる。
このようなSPECT撮像装置600に用いられた放射線計測装置11(もしくは21)は、臭化タリウム放射線検出器のカソード電極およびアノード電極と臭化タリウム結晶の間にタリウム層を挿入すること無しに、ポーラリゼーションを防止し長時間安定して放射線計測が可能である。したがって、タリウム層被着工程によるコスト上昇無しに、低コストの放射線計測装置を実現でき、それを用いた核医学診断装置を安価に提供することが可能になる。
【0087】
以上説明した第1、第2実施形態の放射線計測装置11、21は、前記したSPECT撮像装置600に限られることではなく、核医学診断装置としての、ガンマカメラ装置、PET撮像装置等に対しても用いることができる。次に、PET撮像装置に適用する例を示す。
【0088】
(本実施形態の放射線計測装置の核医学診断装置への第2の適用例)
図8は、核医学診断装置としてのPET撮像装置700に、第1実施形態の放射線計測装置11、もしくは第2実施形態の放射線計測装置21を適用した場合の構成を示す図である。
図8において、このPET撮像装置700は、中央部分に円柱状の計測領域702を有する撮像装置701、被検体Hを支持して長手方向に移動可能なベッド31、画像情報作成装置703を備えて構成される。なお、画像情報作成装置703は、データ処理装置32および表示装置33を備えて構成されている。
【0089】
撮像装置701には、計測領域702を取り囲むようにして、前記放射線計測装置11(または21)を配線基板に多数搭載したプリント基板Pが、配置されている。
このようなPET撮像装置700では、データ処理機能を有するデジタルASIC(デジタル回路用のApplication Specific Integrated Circuit、デジタルデータ処理回路、図示せず)等を備え、γ線のエネルギー値、時刻、放射線計測装置11(または21)の検出チャンネルID(Identification)を有するパケットが作成され、この作成されたパケットがデータ処理装置32に入力されるようになっている。
【0090】
検査時には、被検体Hの体内から放射性薬剤に起因して放射されたγ線が、放射線計測装置11(または21)によって検出される。すなわち、PET撮像用の放射性薬剤から放出された陽電子の消滅時に、一対のγ線が約180度の反対方向に放出され、多数の放射線計測装置11(または21)のうち別々の検出チャンネルで検出される。検出されたγ線検出信号は、該当する前記デジタルASICに入力されて、前記したように信号処理が行われ、γ線を検出した検出チャンネルの位置情報およびγ線の検出時刻情報が、データ処理装置32に入力される。
【0091】
そして、データ処理装置32によって、1つの陽電子の消滅により発生した一対のγ線を1個として計数(同時計数)し、その一対のγ線を検出した2つの検出チャンネルの位置を、それらの位置情報を基に特定する。また、データ処理装置32は、同時計数で得た計数値および検出チャンネルの位置情報を用いて、放射性薬剤の集積位置、すなわち腫瘍位置での被検体Hの断層像情報(画像情報)を作成する。この断層像情報は表示装置33に表示される。
【0092】
このようなPET撮像装置700に用いた放射線計測装置11(もしくは21)は、臭化タリウム放射線検出器のカソード電極およびアノード電極と臭化タリウム結晶との間にタリウム層を挿入すること無しに、ポーラリゼーションを防止し、長時間安定して放射線計測が可能である。したがって、タリウム層被着工程によるコスト上昇無しに、低コストの放射線計測装置を実現でき、この放射線計測装置を用いた核医学診断装置を、安価に提供することが可能になる。
【0093】
(その他の実施形態)
以上、放射線計測装置において、図1、図4のそれぞれ第1実施形態、第2実施形態において、第1電極(112、313)および第2電極(113、314)の材料として、金を用いたが、白金またはパラジウムを用いてもよい。
【0094】
また、放射線計測装置において、図1、図4のそれぞれ第1実施形態、第2実施形態において、第1定電流ダイオード(108、309)、第2定電流ダイオード(109、310)は互いに直列に接続して用いたが、3個以上の定電流ダイオードを組み合わせて構成してもよい。また、定電流特性を示すものであれば、他のデバイスや回路で構成してもよい。
【0095】
また、放射線計測装置において、図1、図4のそれぞれ第1実施形態、第2実施形態において、フォトモスリレー105、106、304、305、306、307を用いた例を示したが、機能としてはリレーであるので、必ずしもフォトモスリレーでなくともよい。信頼性を確保できれば、一般のリレーを用いることができる。
【0096】
また、図1に示した第1実施形態においては、図2のバイアス電圧の時間変化を示すタイムチャートで、半導体放射線検出器172に印加するバイアス電圧を5分毎に正負反転する例を示したが、10分以内であれば、他の時間を選択してもよい。
また、正負に反転する時間を0.3秒で設定したが、他の時間(例えば0.1秒以内、1秒以内等)を設定してもよい。これは放射線計測装置、あるいはそれを用いた核医学診断装置の応用分野やコストをどのように選択するかによって、総合的に検討されて、設定される。
また、半導体放射線検出器172に印加するバイアス電圧は、500V以外の電圧でもよい。半導体放射線検出器172の形状、構造によって、適切な電圧を設定することができる。
【0097】
また、核医学診断装置において、図7、図8において、画像情報作成装置603、703として、データ処理装置32と表示装置33の例を示したが、データ処理の形態は様々にあるので、このデータ処理装置32と表示装置33との組み合わせでなくともよい。
【0098】
以上、本発明によれば、タリウム層被着によるコスト上昇無しに、臭化タリウム放射線検出器で安定した放射線計測が可能になり、低コストの放射線計測装置、およびそれを用いた安価な核医学診断装置を提供できる。
【0099】
(本発明、本実施形態の補足)
前述したように、臭化タリウムによって構成された半導体放射線検出器の通常のカソード電極およびアノード電極と臭化タリウム結晶との間にタリウム層を挿入することにより、タリウム金属および臭化タリウムの生成反応を利用し、ポーラリゼーションを防止して安定動作が可能なことが明らかになった。しかしながら、タリウムは急性毒性物質であり、取り扱いには細心の注意が必要であって、検出器作製のコストが大幅に増加する。
そこで、本発明は、臭化タリウム放射線検出器のカソード電極およびアノード電極と臭化タリウム結晶の間にタリウム層を挿入すること無く、タリウム層挿入工程によるコスト上昇を回避しつつ、ポーラリゼーション無しに長時間安定して計測できる安価な放射線計測装置、およびこの放射線計測装置を用いた安価な核医学診断装置を提供することを課題としたものである。
【0100】
半導体結晶として臭化タリウムを用いた半導体放射線検出器のカソード電極およびアノード電極に印加する電圧の切替えの周期を10分以上にした場合、例えば周期を2時間とした場合は、非特許文献3に記載されている通り、ポーラリゼーションが防止できず、長時間安定して放射線計測することができなかった。
臭化タリウム放射線検出器のカソード電極およびアノード電極を金、白金、パラジウムのうちの少なくとも1つ以上の金属で構成した場合、カソード電極付近では、
Tl+ e →Tl
の反応が起こるが、アノード電極付近ではBrイオンが金、白金、パラジウムの原子に複数配位した錯体等が生成して、Brイオンの蓄積は、ある程度解消されるとしても、錯体の生成反応自体の速度が遅いため、長時間動作させた場合はBrイオンが蓄積すると考えられる。
【0101】
したがって、ポーラリゼーションを防止するためには、アノード電極付近にBrイオンが蓄積する前にバイアス電圧の極性を反転させる必要がある。
この極性を反転させる電圧の切替えの周期を10分より短い時間にした場合は、ポーラリゼーションが防止でき、エネルギー分解能が劣化しないことを、発明者は見出した。
【0102】
この原理にしたがって、前記半導体放射線検出器のカソード電極およびアノード電極を金、白金、パラジウムのうちの少なくとも1つ以上の金属で構成し、かつ前記直流電源は、前記コンデンサの前記一方の電極に正電荷を蓄積する電圧と、負電荷を蓄積する電圧を、10分よりも短い時間毎に周期的に切換えて供給することが可能な構成とした。
この構成によって、本発明は臭化タリウム放射線検出器のカソード電極およびアノード電極と臭化タリウム結晶との間にタリウム層を挿入すること無しに、低コストで安定した特性の放射線計測装置、およびそれを用いた安価な核医学診断装置を提供することができるようになった。
【0103】
また、本発明の放射線計測装置、およびそれを搭載した核医学診断装置は、これら装置の安定動作を確保しつつ、価格低減を図ることができるため、これら装置の普及に貢献して、放射線計測装置、核医学診断装置の分野で広く利用、採用される可能性がある。
【符号の説明】
【0104】
11、21 放射線計測装置
31 ベッド
32 データ処理装置
33 表示装置
101 第1直流電源(直流電源)
102 第2直流電源(直流電源)
103、104、302、303 保護抵抗器
105、304 第1フォトモスリレー、フォトモスリレー
106、305 第2フォトモスリレー、フォトモスリレー
107、308 スイッチ制御装置
108、309 第1定電流ダイオード、定電流ダイオード
109、310 第2定電流ダイオード、定電流ダイオード
110、311 平滑コンデンサ
111、312 半導体結晶
112、313 第1電極
113、314 第2電極
114、315 ブリーダ抵抗
115、316 結合コンデンサ
116、317 増幅器
117、318 極性統合制御装置
171、371 定電流装置
172、372 半導体放射線検出器、検出器
206、207 計測の途切れ時間
301 直流電源
306 第3フォトモスリレー、フォトモスリレー
307 第4フォトモスリレー、フォトモスリレー
600 SPECT撮像装置(核医学診断装置)
601A、601B 放射線検出ブロック
602、702 計測領域
603、703 画像情報作成装置
606 回転支持台
611 放射線計測ユニット
612 配線基板
613 遮光・電磁シールド
614 コリメータ
615 ユニット支持部材
700 PET撮像装置(核医学診断装置)
701 撮像装置
D 集積部
H 被検体
K コリメータで仕切られる領域
P プリント基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体結晶として臭化タリウムを用いてなる半導体放射線検出器と、前記半導体放射線検出器に電圧を印加するコンデンサと、前記コンデンサの一方の電極に正電荷と負電荷を蓄積可能な少なくとも1つ以上の直流電源と、を備えた放射線計測装置であって、
前記半導体放射線検出器のカソード電極およびアノード電極が金、白金、パラジウムのうちの少なくとも1つ以上の金属で構成され、
前記直流電源が前記コンデンサの前記一方の電極に正電荷を蓄積する電圧と負電荷を蓄積する電圧を10分よりも短い時間毎に周期的に切換えて供給することを特徴とする放射線計測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線計測装置において、
さらに、
前記直流電源から前記コンデンサの前記電極への電流を通流する定電流装置と、
前記直流電源と前記コンデンサの前記電極を接続する配線に接続された少なくとも2つ以上の開閉装置と、
を備えたことを特徴とする放射線計測装置。
【請求項3】
請求項2に記載の放射線計測装置において、
さらに、
前記半導体放射線検出器の出力信号を増幅する増幅器と、
前記開閉装置の開閉を制御するスイッチ制御装置と、
前記増幅器と前記スイッチ制御装置に正バイアス、負バイアス、正から負へのバイアス反転、負から正へのバイアス反転の指令信号を送信する極性統合制御装置と、
を備えたことを特徴とする放射線計測装置。
【請求項4】
前記コンデンサの前記一方の電極に正電荷を蓄積可能な第1の直流電源と、
前記コンデンサの前記一方の電極に負電荷を蓄積可能な第2の直流電源と、
前記第1の直流電源、または第2の直流電源から前記コンデンサの前記電極への電流を通流する定電流装置と、
前記第1の直流電源と前記コンデンサの前記電極を接続する配線に接続された第1の開閉装置と、
前記第2の直流電源と前記コンデンサの前記電極を接続する配線に接続された第2の開閉装置と、
を備えたことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の放射線計測装置。
【請求項5】
前記コンデンサの前記一方の電極に正電荷と負電荷を蓄積可能な1つの直流電源と、
前記直流電源から前記コンデンサの前記電極への電流を通流する定電流装置と、
前記直流電源の正極と前記コンデンサの前記電極を接続する配線に接続された第1の開閉装置と、
前記直流電源の負極と前記コンデンサの前記電極を接続する配線に接続された第2の開閉装置と、
前記直流電源の正極とグラウンドとを接続する配線に接続された第3の開閉装置と、
前記直流電源の負極とグラウンドとを接続する配線に接続された第4の開閉装置と、
を備えたことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の放射線計測装置。
【請求項6】
前記定電流装置が2つの定電流ダイオードが互いに定電流特性の極性を逆にして直列に接続された構成からなることを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれか一項に記載の放射線計測装置。
【請求項7】
前記開閉装置がフォトモスリレーで構成されたことを特徴とする請求項2乃至請求項6のいずれか一項に記載の放射線計測装置。
【請求項8】
前記半導体放射線検出器のカソード電極およびアノード電極を金で構成したことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の放射線計測装置。
【請求項9】
被検体を支持するベッドと、該被検体を計測領域に含む複数の放射線計測装置と、複数の前記放射線計測装置から出力された放射線検出信号を基に得られた情報を用いて画像を生成する画像情報作成装置と、を備えた核医学診断装置であって、
前記放射線計測装置が請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の放射線計測装置であることを特徴とする核医学診断装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−167938(P2012−167938A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26706(P2011−26706)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】