説明

放射能汚染検査装置

【課題】被検査構造物の表面の放射能汚染の計測、被検査構造物の内部からサンプル測定試料の放射能汚染の計測の双方を的確に行え、しかもクリアランス合否判別も行える具体的な構成の放射能汚染検査装置を実現する。
【解決手段】被検査構造物8の検査領域へ走行する検査台車5c上に可移動に搭載され被検査構造物の表面の放射能汚染を計測する表面汚染検出センサ1、検査台車上に可移動に搭載され被検査構造物の内部から測定試料をサンプルするサンプリング手段3、検査台車上に搭載されサンプリング手段によってサンプルされた測定試料から被検査構造物の材料内部の放射能汚染を計測する放射能汚染量を測定する放射能濃度測定部18、及び検査台車上に搭載され表面汚染検出センサによる測定結果および放射能濃度測定部による測定結果からクリアランス合否を出力するクリアランス合否判定部5,ST12を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、原子力発電所、加速器利用施設、核燃料再処理施設等の廃止措置を計画するために事前に施設の汚染を調査する場合等に使用される放射能汚染検査装置である。
【背景技術】
【0002】
例えば、発電用原子炉が建設されて30年以上の年月を経て機器の寿命を迎える時期になると、原子炉を廃止措置と言われる手続きをして、解体撤去することが必要になってくる。そのとき、放射能で汚染された廃棄物に混じって、全く汚染されていない大量の廃棄物が発生することになる。環境負荷低減、資源保護の観点から原子炉が解体撤去された際に発生する廃棄物の再利用、再使用が課題となっている。廃棄物の中で、再利用、再使用ができる部材は、放射能汚染のレベルがクリアランスレベル以下と定められており、その濃度が核種ごとに定められている。
【0003】
原子炉等の廃止措置において発生する廃棄物には、放射能による汚染の程度がいろいろなレベルで存在するので、その中からクリアランスレベル以下かどうかを調べる必要がある。放射能による汚染の程度を調べるのに使用されるモニタは、放射能汚染検査装置と言われている。
【0004】
廃棄物等の放射能による汚染には、放射能が表面に吸着する表面汚染と、物質そのものが中性子等によって放射化されて放射能となるもの(誘導放射能)の2種類がある。表面汚染は、構造物の表面のみの計測でよいけれども、誘導放射能については構造物の中の物質が放射能を持っているかどうか調べる必要があり、この測定に多大な労力と時間を要しているのが現状である。
【0005】
従来の関連技術としては、例えば、特許文献1(特開平7−35900号公報)に、原子力施設や放射線施設において、放射能汚染されたコンクリートの所定箇所を削孔手段で削孔しながら放射能測定手段で削孔に伴う粉塵の放射能レベルを測定すると共に粉塵回収手段で粉塵を回収し、放射能レベルが基準値以下になったところで前記削孔手段を退避させて削孔を停止し、その削孔された孔に静的破砕剤を充填し、この作業を放射能汚染されたコンクリートの所望箇所に施行して前記静的破砕剤により当該放射能汚染されたコンクリートをはつり取る放射能汚染コンクリートの除去方法および除去装置が記載されている。
【0006】
また、特許文献2(特開平7−229971公報)には、放射能汚染されたコンクリート構造物の除染時および解体時の何れか一方から生じるコンクリート粉を吸引し、この吸引されたコンクリート粉に含まれる放射性核種からの放射線を検出し、コンクリート構造物の汚染を判定するコンクリート汚染判定方法が記載されている。
【0007】
【特許文献1】特開平7−35900号公報(図1及びその説明)
【特許文献2】特開平7−229971公報(図1及びその説明)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
例えば、発電用原子炉は、数十年を経過すると施設の寿命を迎え、廃止措置という手続きを行って原子炉を解体する作業を実施することになる。廃止措置を行う際、放射能レベルの異なる放射性廃棄物、放射性でない一般の廃棄物が大量に発生する。これらの廃棄物の内、核種ごとに定められた一定の放射能濃度以下のもの(即ちクリアランスレベル以下のもの)は、一般の廃棄物と同様に扱っても良いという法令が施行されており、今後、原子炉解体時期がきた場合、資源の有効利用の観点からこの法令を適用することが考えられる。
【0009】
クリアランスを実施するには、まず(1)事前調査で原子炉施設内の汚染分布、汚染性状等の調査をし、次に、(2)測定・評価方法の設定で対象物の選定をし、(3)測定・評価計画を策定する。この時点で監督官庁の認可を受け、(4)測定・評価をして対象物に対して(5)クリアランス判断をする。この測定結果、クリアランス判断結果の(6)記録を作成してもう一度監督官庁の認可を受けることになる。その後、クリアランスされた検査対象物の保管・管理をしていくこととなる。以上の一連の原子炉の廃止措置は、放射性廃棄物の放射能の減弱する期間も考慮して施設の寿命到来から10年以上の期間で実施していくことが考えられる。
【0010】
従来では、前記(1)事前調査においては、原子力施設の床、壁および天井の表面の放射能汚染の検出を行う場合に、作業員がサーベイメータを検査対象物である被検査構造物に密着させて汚染サーベイする方法によって放射能汚染の検出をおこなっていた。このサーベイメータによる方法は、前記被検査構造物の面積が大きくなると、多大な労力を必要とするばかりでなく、作業員の放射線被曝量が増大するという問題がある。
また、放射能汚染がトリチウムによるものであった場合、通常は、被検査構造物の一部をサンプルした測定試料からトリチウムを含んだ水を分離し、液体シンチレータにこの水を混合して放射能濃度を測定するというプロセスを踏むことが必要である。そのため、トリチウムの放射能濃度は、連続的な測定により実時間で求めることは不可能なためバッチ方式といわれる方法で、実施されており、そのため、多大な時間を要していた。
前述の特許文献1および2は、切削によるコンクリート粉、除染時および解体時に生じるコンクリート粉をサンプルして放射能汚染の検出を行うものである。
また、放射能汚染がトリチウムによるものであった場合、該トリチウムは、前記被検査構造物表面の放射能汚染検査を行う表面汚染検出センサでは検出できないので、前記表面汚染検出センサによる放射能汚染検査とは別に、前記被検査構造物の一部をサンプルした測定試料からトリチウムの放射能濃度を測定する必要がある。
また、前記被検査構造物を一般の廃棄物と同様に扱えるためには、表面汚染検出センサにより検出の放射能濃度、および前記サンプルした測定試料の放射能濃度の各々が前記クリアランスレベル以下である必要があり、各放射能濃度の検出結果を基に、別途、総合的にクリアランス合否判断をする必要がある。
【0011】
この発明は、前述のような実情に鑑みてなされたもので、被検査構造物の表面の放射能汚染の計測、前記被検査構造物の内部からサンプル測定試料の放射能汚染の計測の双方を的確に行え、しかもクリアランス合否判別も行える具体的な構成の放射能汚染検査装置を実現することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明に係る放射能汚染検査装置は、被検査構造物の表面および被検査構造物の材料内部の放射能による汚染を計測し放射能汚染のレベルを判定する放射能汚染検査装置であって、前記被検査構造物の検査領域へ走行する検査台車、この検査台車上に前記検査台車に対して可移動に搭載され前記被検査構造物の表面の放射能汚染を計測する表面汚染検出センサ、前記検査台車上に前記検査台車に対して可移動に搭載され前記被検査構造物の内部から測定試料をサンプルするサンプリング手段、前記検査台車上に搭載され前記サンプリング手段によってサンプルされた測定試料から被検査構造物の材料内部の放射能汚染を計測する放射能汚染量を測定する放射能濃度測定部、及び前記検査台車上に搭載され前記表面汚染検出センサによる測定結果および前記放射能濃度測定部による測定結果からクリアランス合否を出力するクリアランス合否判定部を備えたものである。
【0013】
また、この発明に係る放射能汚染検査装置は、被検査構造物の表面および被検査構造物の材料内部の放射能による汚染を計測し放射能汚染のレベルを判定する放射能汚染検査装置であって、放射能汚染の検査時期の設定および前記被検査構造物の検査領域の選定を行い放射能汚染検査スケジュールを設定する放射能汚染検査スケジュール設定装置、この放射能汚染検査スケジュールを設定装置によって設定された前記放射能汚染検査スケジュール基づいて前記被検査構造物の検査領域へ走行する検査台車、この検査台車上に前記検査台車に対して可移動に搭載され、前記放射能汚染検査スケジュールを設定装置によって設定された前記放射能汚染検査スケジュール基づいて前記被検査構造物の表面の放射能汚染を計測する表面汚染検出センサ、前記検査台車上に前記検査台車に対して可移動に搭載され、前記放射能汚染検査スケジュールを設定装置によって設定された前記放射能汚染検査スケジュール基づいて前記被検査構造物の内部から測定試料をサンプルするサンプリング手段、前記検査台車上に搭載され前記サンプリング手段によってサンプルされた測定試料から被検査構造物の材料内部の放射能汚染を計測する放射能汚染量を測定する放射能濃度測定部、および前記検査台車上に搭載され前記表面汚染検出センサによる測定結果および前記放射能濃度測定部による測定結果からクリアランス合否を出力するクリアランス合否判定部を備えたものである。
【0014】
また、この発明に係る放射能汚染検査装置は、被検査構造物の表面および被検査構造物の材料内部の放射能による汚染を計測し放射能汚染のレベルを判定する放射能汚染検査装置であって、前記被検査構造物の検査領域へ走行する検査台車、この検査台車上に前記検査台車に対して可移動に搭載され前記被検査構造物の表面の放射能汚染を計測する表面汚染検出センサ、前記検査台車上に前記検査台車に対して可移動に搭載され前記被検査構造物の内部から測定試料をサンプルするサンプリング手段、前記検査台車上に搭載され前記サンプリング手段によってサンプルされた測定試料から被検査構造物の材料内部の放射能汚染を計測する放射能汚染量を測定する放射能濃度測定部、前記検査台車上に搭載され前記表面汚染検出センサによる測定結果および前記放射能濃度測定部による測定結果からクリアランス合否を出力するクリアランス合否判定部、前記検査台車に設けられ表面汚染測定位置まで前記表面汚染検出センサを導く表面汚染測定アーム、および前記検査台車に設けられ前記測定試料をサンプルする位置に前記サンプリング手段を位置決めするサンプリング位置決めアームを備えたものである。
【発明の効果】
【0015】
この発明は、被検査構造物の表面および被検査構造物の材料内部の放射能による汚染を計測し放射能汚染のレベルを判定する放射能汚染検査装置であって、前記被検査構造物の検査領域へ走行する検査台車、この検査台車上に前記検査台車に対して可移動に搭載され前記被検査構造物の表面の放射能汚染を計測する表面汚染検出センサ、前記検査台車上に前記検査台車に対して可移動に搭載され前記被検査構造物の内部から測定試料をサンプルするサンプリング手段、前記検査台車上に搭載され前記サンプリング手段によってサンプルされた測定試料から被検査構造物の材料内部の放射能汚染を計測する放射能汚染量を測定する放射能濃度測定部、及び前記検査台車上に搭載され前記表面汚染検出センサによる測定結果および前記放射能濃度測定部による測定結果からクリアランス合否を出力するクリアランス合否判定部を備えているので、被検査構造物の表面の放射能汚染の計測、前記被検査構造物の内部からサンプル測定試料の放射能汚染の計測の双方を的確に行え、しかもクリアランス合否判別も行える具体的な構成の放射能汚染検査装置を実現することができる効果がある。
【0016】
また、この発明は、被検査構造物の表面および被検査構造物の材料内部の放射能による汚染を計測し放射能汚染のレベルを判定する放射能汚染検査装置であって、放射能汚染の検査時期の設定および前記被検査構造物の検査領域の選定を行い放射能汚染検査スケジュールを設定する放射能汚染検査スケジュール設定装置、この放射能汚染検査スケジュールを設定装置によって設定された前記放射能汚染検査スケジュール基づいて前記被検査構造物の検査領域へ走行する検査台車、この検査台車上に前記検査台車に対して可移動に搭載され、前記放射能汚染検査スケジュールを設定装置によって設定された前記放射能汚染検査スケジュール基づいて前記被検査構造物の表面の放射能汚染を計測する表面汚染検出センサ、前記検査台車上に前記検査台車に対して可移動に搭載され、前記放射能汚染検査スケジュールを設定装置によって設定された前記放射能汚染検査スケジュール基づいて前記被検査構造物の内部から測定試料をサンプルするサンプリング手段、前記検査台車上に搭載され前記サンプリング手段によってサンプルされた測定試料から被検査構造物の材料内部の放射能汚染を計測する放射能汚染量を測定する放射能濃度測定部、および前記検査台車上に搭載され前記表面汚染検出センサによる測定結果および前記放射能濃度測定部による測定結果からクリアランス合否を出力するクリアランス合否判定部を備えているので、放射能汚染の検査時期の間隔が比較的長期間であっても、前記設定された放射能汚染検査時期に、前記選定された前記被検査構造物の検査領域の表面の放射能汚染の計測、前記選定された被検査構造物の内部からサンプル測定試料の放射能汚染の計測の双方を的確に自動的に行え、しかもクリアランス合否判別も行える具体的な構成の放射能汚染検査装置を実現することができる効果がある。
【0017】
また、この発明は、被検査構造物の表面および被検査構造物の材料内部の放射能による汚染を計測し放射能汚染のレベルを判定する放射能汚染検査装置であって、前記被検査構造物の検査領域へ走行する検査台車、この検査台車上に前記検査台車に対して可移動に搭載され前記被検査構造物の表面の放射能汚染を計測する表面汚染検出センサ、前記検査台車上に前記検査台車に対して可移動に搭載され前記被検査構造物の内部から測定試料をサンプルするサンプリング手段、前記検査台車上に搭載され前記サンプリング手段によってサンプルされた測定試料から被検査構造物の材料内部の放射能汚染を計測する放射能汚染量を測定する放射能濃度測定部、前記検査台車上に搭載され前記表面汚染検出センサによる測定結果および前記放射能濃度測定部による測定結果からクリアランス合否を出力するクリアランス合否判定部、前記検査台車に設けられ表面汚染測定位置まで前記表面汚染検出センサを導く表面汚染測定アーム、および前記検査台車に設けられ前記測定試料をサンプルする位置に前記サンプリング手段を位置決めするサンプリング位置決めアームを備えているので、被検査構造物の表面の放射能汚染の計測の位置および前記被検査構造物の内部からサンプル測定試料の放射能汚染の計測位置の各々が、検査台車の位置だけに拘束されず各々個別に位置調整できるので、前記被検査構造物の表面の放射能汚染の計測および前記被検査構造物の内部からサンプル測定試料の放射能汚染の計測の双方を的確に行え、しかもクリアランス合否判別も行える具体的な構成の放射能汚染検査装置を実現することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
実施の形態1.
以下この発明の実施の形態1を図1〜図3により説明する。図1は放射能汚染検査装置の事例を示す構成図、図2は放射能汚染検査装置のサンプリング手段の事例を具体的に示す構成図、図3は放射能汚染検査装置の動作の事例を表すフロー図である。なお、各図中、同一符合は同一部分を示す。
【0019】
図1において、表面汚染検出センサ1は、コンクリート構造物の床、壁、天井等や大型構造物の大面積部分の表面汚染を測定する検出器で、例えばストロンチューム90等のβ線を検出する。
この表面汚染検出センサ1は、測定対象である被検査構造物8に当該表面汚染検出センサ1を誘導する表面汚染測定アーム2を介して検査台車5cに対して可移動に搭載されている。
前記表面汚染検出センサ1は、前記表面汚染測定アーム2上で、前記検査台車5cの移動とは別にX軸方向,Y軸方向,Z軸方向の3次元に駆動され位置調整される。
【0020】
前記サンプリング手段3は、例えばドリル(図2の301)と測定試料であるサンプル粉塵を吸い込む吸引器(図2の302,16,37)とを伴った装置で、表面汚染検出センサ1では検出できないトリチウム等のエネルギーの小さいβ線を検出する場合に使用される。
このサンプリング手段3は、測定対象である被検査構造物8の任意の位置に移動することができるサンプリング位置決めアーム4を介して検査台車5cに対して可移動に搭載されている。
前記サンプリング手段3は、前記サンプリング位置決めアーム4上で、前記サンプリング位置決めアーム4のジョイント部4jを中心に被検査構造物8の測定対象面に沿って円周方向aに駆動され、また、前記被検査構造物8の測定対象面と直角をなす面に沿って前記ジョイント部4jを中心に円周方向bに駆動され、また、Y軸方向yにも駆動される。その結果として、前記サンプリング手段3は、前記検査台車5cの移動とは別にX軸方向,Y軸方向,Z軸方向の3次元に駆動され位置調整される。
【0021】
前記検査台車5cは、放射能汚染検査装置全体が床面を自由に移動出来るように移動手段6が装備されている。
前記検査台車5cは、後述の汚染測定信号処理部5を内蔵している。
【0022】
前記サンプリング手段3に隣接して前記サンプリング位置決めアーム4上に設置されたサンプリング位置検出器7は、例えばサンプリング対象である被検査構造物8に付けられたマーキング等を認識することにより、放射能汚染検査装置がサンプリング位置、或いはサンプリング開始位置の座標を認識することができる。
さらに、前記サンプリング位置検出器7は前記サンプリング手段3がサンプルするとき、邪魔なものがないかどうか監視する機能も合わせもっている。
【0023】
放射能汚染検査装置のサンプリング手段3の事例を具体的に示す構成図である図2において、前記サンプリング位置決めアーム4の先に固定されたドリル駆動部303によって、ドリル301に回転運動が伝達されドリル301が駆動される。ドリル301がサンプリング対象である例えばコンクリートの壁に削入した時に発生するコンクリート紛塵を周辺に飛散しないようにフード302で押さえ込み、そのコンクリート粉塵を管16を通して、ポンプ37により吸引することによって、コンクリート粉塵をサンプリングする。
【0024】
サンプリング手段3でサンプリングされた測定試料であるコンクリート紛塵は、放射能濃度測定器18に導入され、コンクリート中に含有されている放射エネルギーの比較的小さなトリチウム等の放射能濃度に関連した信号を検出する。この信号は信号処理ユニット501に導かれ放射能濃度に換算した値が信号処理ユニット501で導出される。
信号処理ユニット501には、表面汚染検出センサ1からの信号も入力される。
信号処理ユニット501では、前記サンプリング手段3による測定試料サンプリング系(後述の図3の51b参照)の測定放射能濃度および前記表面汚染検出センサ1による表面汚染測定系(後述の図3の51a参照)の測定放射能濃度の各クリアランスレベル判定を行い、双方の系の放射能濃度が何れも夫々のクリアランスレベル以下であればクリアランス合否出力を出す。つまり、検査対象の放射能レベルが再利用、再使用できるレベルであることを報知する信号を出力する。
【0025】
次に、放射能汚染検査装置の動作の事例を表すフロー図である図3により、放射能汚染検査装置の動作を以下に説明する。
【0026】
まず、測定計画マップを作成し(ステップST1)、放射能汚染検査装置に入力する。ステップST1における前記測定計画マップは、図中の吹き出しmex1に例示してあるように、原子力発電所、加速器利用施設、核燃料再処理施設等の被検査構造物における放射能汚染検査領域のマップ化のステップで、図示の例では、領域A,B,C,・・・中、領域A,Bの放射能汚染検査をすることを計画したものである。
【0027】
次に、ステップST1で計画された放射能汚染検査対象領域A,Bにおける放射能測定の日程や順番、測定時間等の測定の条件を作成し(ステップST2,ST3)、放射能汚染検査装置に入力する。
前記ステップST1〜ST3での各設定はスケジュール設定装置5bで実行される。
このスケジュール設定装置5bは、放射能汚染検査装置に搭載してあるが、放射能汚染検査装置とは別に設け、前記ステップST1〜ST3での各設定結果を、放射能汚染検査装置に送信し、送信された設定計画に沿って放射能汚染検査装置が自動的に放射能汚染検査を実行するようにしてもよい。
【0028】
前記ステップST1〜ST3での各設定結果(測定条件のデータ)は、汚染測定信号処理部5によって読み込まれる(ステップST4)。
【0029】
これで、測定するための必要な情報が揃ったので、測定がスタートする。
【0030】
表面汚染測定系51aにおいては、測定がスタートする(ステップST5a)と、先ず、検査台車5cが測定位置まで自走した後、表面汚染測定位置の是非の確認(座標は正しいか)をし(ステップST6a)、表面汚染検出センサ1が表面汚染測定アーム2上で検査台車5cに対して前記XYZ方向の三次元移動をし(ステップST7a)、所定位置でサンプリング(データ収集)し(ステップST8a)、表面汚染の測定が行われ(ステップST9a)、測定結果の出力が行われる(ステップST10a)。
【0031】
測定試料サンプリング系51bにおいては、測定がスタートする(ステップST5b)と、前述の検査台車5cの測定位置までの自走後、先ず、サンプル位置に間違いはないか(座標は正しいか)サンプル位置に異物がないか等の確認をして(ステップST6b)、サンプリング手段3がサンプリング位置決めアーム4上で検査台車5cに対して前記XYZ方向の三次元移動をし所定の測定位置まで移動する(ステップST7b)。次に所定位置でサンプリング(ドリル301で削孔し測定試料を収集)し(ステップST8b)、トリチウムの放射能濃度の測定が行われ(ステップST9b)、測定結果の出力が行われる(ステップST10b)。
【0032】
表面汚染測定系51aの測定結果の出力が行われ(ステップST10a)、測定試料サンプリング系51bの測定結果の出力が行われ(ステップST10b)ると、信号処理ユニット501では、各系51a,51bでの測定放射能濃度の各クリアランスレベル判定を行い(ステップST11)、双方の系51a,51bの放射能濃度が何れも夫々のクリアランスレベル以下であればクリアランス合否出力を出す(ステップST12)。つまり、検査対象の放射能レベルが再利用、再使用できるレベルであることを報知する信号を出力する。
【0033】
このように、この発明の実施の形態1によれば、表面汚染の濃度と測定対象深部の放射能濃度をひとつの機器で同時に測定できるので、データの信頼性が上がり、作業時間も短時間となり、原子炉の廃止措置等のコストを少なくできる効果がある。また、この汚染検査装置は無人で移動して放射能測定が可能であるので、作業者の被曝低減に効果がある。
【0034】
また、遠隔操作可能な汚染信号処理部に表面汚染測定アームによって誘導される表面汚染検出センサとサンプリング位置決めアームによって誘導されるサンプリング手段を装備したので、原子炉建屋の表面汚染とコンクリート中の誘導放射能を連続的に測定することが出来るので、原子炉の廃止措置等の事前調査等で大量のデータ集めが迅速にできるので、廃止措置等の計画等が容易に立案できる効果がある。その結果、原子炉廃止措置等のコストを少なくすることができる効果がある。
【0035】
また、被検査構造物の表面および被検査構造物の材料内部の放射能による汚染を計測し放射能汚染のレベルを判定する放射能汚染検査装置であって、前記被検査構造物の検査領域へ走行する検査台車、この検査台車上に前記検査台車に対して可移動に搭載され前記被検査構造物の表面の放射能汚染を計測する表面汚染検出センサ、前記検査台車上に前記検査台車に対して可移動に搭載され前記被検査構造物の内部から測定試料をサンプルするサンプリング手段、前記検査台車上に搭載され前記サンプリング手段によってサンプルされた測定試料から被検査構造物の材料内部の放射能汚染を計測する放射能汚染量を測定する放射能濃度測定部、及び前記検査台車上に搭載され前記表面汚染検出センサによる測定結果および前記放射能濃度測定部による測定結果からクリアランス合否を出力するクリアランス合否判定部を備えているので、被検査構造物の表面の放射能汚染の計測、前記被検査構造物の内部からサンプル測定試料の放射能汚染の計測の双方を的確に行え、しかもクリアランス合否判別も行える具体的な構成の放射能汚染検査装置を実現することができる効果がある。
【0036】
また、この発明は、被検査構造物の表面および被検査構造物の材料内部の放射能による汚染を計測し放射能汚染のレベルを判定する放射能汚染検査装置であって、放射能汚染の検査時期の設定および前記被検査構造物の検査領域の選定を行い放射能汚染検査スケジュールを設定する放射能汚染検査スケジュール設定装置、この放射能汚染検査スケジュールを設定装置によって設定された前記放射能汚染検査スケジュール基づいて前記被検査構造物の検査領域へ走行する検査台車、この検査台車上に前記検査台車に対して可移動に搭載され、前記放射能汚染検査スケジュールを設定装置によって設定された前記放射能汚染検査スケジュール基づいて前記被検査構造物の表面の放射能汚染を計測する表面汚染検出センサ、前記検査台車上に前記検査台車に対して可移動に搭載され、前記放射能汚染検査スケジュールを設定装置によって設定された前記放射能汚染検査スケジュール基づいて前記被検査構造物の内部から測定試料をサンプルするサンプリング手段、前記検査台車上に搭載され前記サンプリング手段によってサンプルされた測定試料から被検査構造物の材料内部の放射能汚染を計測する放射能汚染量を測定する放射能濃度測定部、および前記検査台車上に搭載され前記表面汚染検出センサによる測定結果および前記放射能濃度測定部による測定結果からクリアランス合否を出力するクリアランス合否判定部を備えているので、放射能汚染の検査時期の間隔が比較的長期間であっても、前記設定された放射能汚染検査時期に、前記選定された前記被検査構造物の検査領域の表面の放射能汚染の計測、前記選定された被検査構造物の内部からサンプル測定試料の放射能汚染の計測の双方を的確に自動的に行え、しかもクリアランス合否判別も行える具体的な構成の放射能汚染検査装置を実現することができる効果がある。
【0037】
また、この発明は、被検査構造物の表面および被検査構造物の材料内部の放射能による汚染を計測し放射能汚染のレベルを判定する放射能汚染検査装置であって、前記被検査構造物の検査領域へ走行する検査台車、この検査台車上に前記検査台車に対して可移動に搭載され前記被検査構造物の表面の放射能汚染を計測する表面汚染検出センサ、前記検査台車上に前記検査台車に対して可移動に搭載され前記被検査構造物の内部から測定試料をサンプルするサンプリング手段、前記検査台車上に搭載され前記サンプリング手段によってサンプルされた測定試料から被検査構造物の材料内部の放射能汚染を計測する放射能汚染量を測定する放射能濃度測定部、前記検査台車上に搭載され前記表面汚染検出センサによる測定結果および前記放射能濃度測定部による測定結果からクリアランス合否を出力するクリアランス合否判定部、前記検査台車に設けられ表面汚染測定位置まで前記表面汚染検出センサを導く表面汚染測定アーム、および前記検査台車に設けられ前記測定試料をサンプルする位置に前記サンプリング手段を位置決めするサンプリング位置決めアームを備えているので、被検査構造物の表面の放射能汚染の計測の位置および前記被検査構造物の内部からサンプル測定試料の放射能汚染の計測位置の各々が、検査台車の位置だけに拘束されず各々個別に位置調整できるので、前記被検査構造物の表面の放射能汚染の計測および前記被検査構造物の内部からサンプル測定試料の放射能汚染の計測の双方を的確に行え、しかもクリアランス合否判別も行える具体的な構成の放射能汚染検査装置を実現することができる効果がある。
【0038】
実施の形態2.
以下、この発明の実施の形態2を図4に基づいて説明する。図4は表面汚染検出センサの事例を示す構成図であり、同図において、前記表面汚染検出センサ1は、シンチレーションファイバを平面状に接続したシンチレーションファイバプレート9を複数個組合せて接続して大面積のセンサを構成してある。光集光部10は、シンチレーションファイバ9の中で発光した光を集光し、光電子増倍管11に導く。光電子増倍管11は、光信号を電気信号に変換して、汚染測定信号処理部に導く。
【0039】
換言すれば、前記表面汚染検出センサ1が、複数のシンチレーションファイバを束ねてシート状に形成されたシンチレーションファイバプレート9と、このシンチレーションファイバプレート9の光導出端に接続され前記シンチレーションファイバが発光した光を電気信号に変換する光電変換器11とを備えている放射能汚染検査装置である。
【0040】
このように、この発明の実施の形態2では、表面汚染検出センサ1をシンチレーションファイバープレートを用いて大面積に構成したので、従来、大面積の表面汚染を測定する場合、小面積の表面汚染検出器を使って、何回にも分割して測定していたが、大面積型の表面汚染センサを使用すると、表面汚染を迅速に効率的に計測できる効果がある。そのため、原子炉廃止措置等のコストを低減できる効果がある。
【0041】
実施の形態3.
以下、この発明の実施の形態3を図5に基づいて説明する。図5は表面汚染検出センサの他の事例を示す構成図で、同図において、表面汚染検出センサ1は、シンチレーションファイバを平面状に接続したシンチレーションファイバプレート9から、1本づつシンチレーションファイバを取り出し、シンチレーションファイバの端面を画像検出素子12に光学的に接続している。
【0042】
画像検出素子は、検出した画像の光の強度分布から、シンチレーションファイバが光学的に接続された位置がわかっているので、個々のシンチレーションファイバについて光の強度を知ることが出来る。光の強度と表面汚染の度合いは比例するので、それぞれのシンチレーションファイバの光の強度を測定することにより、表面汚染の1次元分布がファイバの発光強度分布測定により計測することができる。
【0043】
換言すれば、前記表面汚染検出センサ1が、複数のシンチレーションファイバを束ねてシート状に形成されたシンチレーションファイバプレートと、このシンチレーションファイバプレートの光導出端に接続され前記シンチレーションファイバが発光した光を導出する画像検出素子12とを備えている放射能汚染検査装置である。
【0044】
このように、この発明の実施の形態3によれば、光の強度を画像検出素子を用いて測定することにより、多数の光電子増倍管を用いないで少数の画像検出素子で測定可能となり、コストが低減できる効果がある。また、1次元の表面汚染検出の位置分解能が向上する。
【0045】
実施の形態4.
以下、この発明の実施の形態4を図6および図7に基づいて説明する。図6は表面汚染検出センサの他の事例を示す構成図、図7は放射能汚染検査装置の表面汚染検出センサと表面汚染測定アームの接続法の事例を示す構成図である。
【0046】
図6において、前記表面汚染検出センサ1は、コンクリート構造物の床、壁、天井等や大型構造物の大面積部分の表面汚染を測定する検出器で、測定対象に検出器を誘導する表面汚染測定アーム2に接続されている。表面汚染測定アーム2は、図に示すように床に沿った方向、壁に沿った方向、天井に沿った方向に連続して伸びており、そのアームに沿って、表面汚染検出センサ1が移動することができる。床の表面汚染を測定する場合は、床計測位置1-1のように移動し、壁の表面汚染を測定する場合は、壁計測位置1-2のように移動する。表面汚染検出センサは、可とう性を持つシンチレーションファイバプレートで構成されているので、その有用な性質を利用するため、表面汚染検出センサ1自身も前述の図4、図5に示すように構成しているので、可撓性を持っている。表面汚染検出センサ1が移動する際、センサの可撓性を利用して、曲面(曲線)に沿って変形しながら移動するように構成してある。
【0047】
図7において、表面汚染検出センサ1に表面汚染測定アーム2とかみ合って誘導するためのガイド101が2箇所、同じく表面汚染測定アーム2とかみ合って表面汚染検出センサ1の移動する動力を供給する駆動部102を2箇所備えている。
【0048】
換言すれば、前記表面汚染検出センサ1が可撓性の表面汚染検出センサであり、当該表面汚染検出センサが前記被検査構造物8に沿って移動する過程に前記被検査構造物8に角部や湾曲部が存在する場合に当該角部や湾曲部に対応して前記表面汚染検出センサ1が湾曲しながら移動する放射能汚染検査装置である。
【0049】
このように、この発明の実施の形態4では表面汚染検出センサ1をフレキシブルに変形するように構成したので、従来、(1)床、(2)側壁、(3)天井の3箇所に分けて測定することが必要であったが、この発明の実施の形態4によれば一度に全ての箇所を測定することができるようになる。大面積型の検出器では測定が困難な曲面の場所でも測定可能となり、測定可能領域を増やすことが出来たことにより、原子炉の廃止措置等に伴う作業を効率的に実施することが可能となり、コスト低減の効果がある。
【0050】
実施の形態5.
以下、この発明の実施の形態5を図8に基づいて説明する。図8は放射能汚染検査装置の事例を示す構成図で、同図において、壁14に挿入されたサンプリング手段3により、測定対象物の粉塵を採取し、その粉塵を管16を通して、ポンプ37で吸引することによって前処理部17に導く。前処理部17では、サンプルした粉塵を加熱器30により加熱することにより粉塵に内包した気体成分を抽出し、サンプル供給管19を通して放射能濃度測定器18に供給される。
【0051】
換言すれば、前記サンプリング手段3によってサンプルされた測定試料から気体成分を抽出し当該抽出した気体成分を前記放射能濃度測定部18に供給する前処理部17を備えている放射能汚染検査装置である。
【0052】
この発明の実施の形態5によれば、構造物を破壊することなしに、構造物の表面から深部までの放射能濃度の測定がその場で可能であるので、原子炉建屋の構造物等の汚染検査が迅速に行うことができ、廃炉措置等のコストを低減することができる。
【0053】
実施の形態6.
以下、この発明の実施の形態6を図9に基づいて説明する。図9は放射能汚染検査装置の事例を示す構成図で、同図において吸着ガスサンプリング手段3−1は、壁14などの構造物表面に吸着したガスをサンプルするための手段であり、管16につながれたポンプ20で排気することにより、壁14などに吸着したガスが脱離し管16の中を通過して、前処理部17に誘導される。前処理部17では、サンプルしたガスから測定対象のガス(例えばトリチウムを含んだ水蒸気)を抽出し、サンプル供給管19を通して放射能濃度測定器18に供給される。
【0054】
換言すれば、前記サンプリング手段3が、前記被検査構造物の表面に吸着した被測定物質を吸引してサンプルする放射能汚染検査装置である。
【0055】
この発明の実施の形態6の方法によれば、表面汚染検出センサ1で計測できない、低エネルギーβ線を放出するガス状の核種によって構造物の表面が汚染されている場合でも、吸着した放射性ガス分子を含んだ粉塵または、放射性ガス分子自体をサンプリング手段3−1によりサンプルできるので、表面汚染検出センサ1では検出できない飛程が短い低エネルギーβ線も、本実施例によれば検出でき、低エネルギβ核種によって汚染された表面汚染を測定することができる。また、サンプリング手段3を用いて構造物の表面にキズをつけることがないので、まったく非破壊で原子炉等を廃止措置等する場合の事前調査等が迅速に実施できる効果がある。結果的に原子炉等の廃止措置等のコスト低減につながる。
【0056】
実施の形態7.
以下、この発明の実施の形態7をサンプリング手段の事例を示す構成図である図10に基づいて説明する。本実施例の形態7は、前述のこの発明の実施の形態1のサンプリング手段3のドリル301を、回転ドラム33とピン34で置き換えたもので、ドリル駆動部303は、駆動手段36とそれに接続された動力伝達手段35に置き換えられる。
【0057】
図10において、サンプリング手段3は、回転ドラム33と、壁14にあたって壁を砕いていく機能を持った、ドラムに固定されたピン34を備えている。回転ドラム33は、駆動手段36のモータ38で発生させた動力を動力伝達手段35により回転ドラム33に伝えてドラムを回転させる。
なお、駆動手段36の回転軸を、例えば回転ドラムと同一方向とし、駆動手段の回転軸とドラムの回転軸を、動力伝達手段35としてチェ−ンでつなぐことにより、回転ドラム33が壁に沿った方向の回転軸で回転させることもできる。
回転ドラム33とピン34で生成したサンプルの処理については、図10では図示省略してあるが、前述のこの発明の実施の形態1で示した方法と同様にして、図2に示されるようにフード302により収集され、管16を通ってポンプ37により吸引されて収集される。
【0058】
回転ドラム33は、図示省略してあるが、動力駆動系とは別にサンプリング位置決めアーム4に接続されており、サンプリング位置決めアーム4の誘導により回転ドラムの回転軸に沿った方向(図8中に矢印で示す。)にも移動しながら、壁14を掘り進めていくことが出来る。
【0059】
この発明の実施の形態7は、換言すれば、前記サンプリング手段3が、外周面に切削ピン34が設けられた回転ドラム33を有し、前記回転ドラム33の回転により前記被検査構造物8の表面部を前記切削ピン34で切削して前記測定試料をサンプルする放射能汚染検査装置である。
【0060】
この発明の実施の形態7によれば、測定対象の材料(測定試料)が通常のドリルによる方式に比べて大量にサンプルすることができ、放射能濃度測定の感度を向上することができる。その結果、測定された放射能濃度の信頼性と測定速度が速くなるので、廃炉措置等のコストが低減できる効果がある。
【0061】
実施の形態8.
以下、この発明の実施の形態8を放射能濃度測定器の事例を示す構成図である図11に基づいて説明する。本実施の形態8は、前述のこの発明の実施の形態1の放射能濃度測定器18を、通気式電離箱20と微小電流計22と計測装置23で置換えたものである。
【0062】
図11において放射能濃度測定器18は、放射能を帯びたサンプルが供給されるサンプル供給管19と、サンプルの放射能による電離電流を検出する通気式電離箱20と、放射能を帯びたサンプルを排気するサンプル排気管21がつながっている。通気式電離箱20には、電離電流を測定する微小電流計22と、計測された電流値から信号処理によって放射能濃度の測定結果を導き出す計測装置23が接続されている。
【0063】
換言すれば、前記放射能濃度測定部18が、サンプリング手段によってサンプルされた測定試料が供給される電離箱20と、この電離箱20が発生する電離電流から放射能濃度を導出する計測装置23とを備えている放射能汚染検査装置である。
【0064】
本実施の形態8によれば、サンプルしたガス、粉塵等を液体シンチレータに混合して、液体シンチレータからの発光を検出する必要がないため、放射能濃度を連続的に測定できる効果があるので、測定された放射能濃度の信頼性が向上し測定速度も向上する。その結果、廃炉措置等のコストを低減できる効果がある。
【0065】
実施の形態9.
以下、この発明の実施の形態9を放射能濃度測定器の事例を示す構成図である図12に基づいて説明する。本実施の形態9は、前述のこの発明の実施の形態1の放射能濃度測定器18を、通気式電離箱20とチャージアンプ24と波形整形アンプ25と計測装置23で置換えたものである。
【0066】
図10において放射能濃度測定器18は、放射能を帯びたサンプルが供給されるサンプル供給管19と、サンプルの放射能による電離電流を検出する通気式電離箱20と、放射能を帯びたサンプルを排気するサンプル排気管21がつながっている。通気式電離箱20には、放射能による電離によって生じる電荷を積分するチャージアンプ24と、チャージアンプの出力からパルス信号を生成する波形整形アンプ25と計測されたパルス信号の頻度からレート演算をする信号処理の結果、または、計測されたパルス信号の数を所定時間の間カウントした結果から、パルスレートを求める演算をする信号処理の結果から放射能濃度の測定結果を導き出す計測装置23が接続されている。
【0067】
換言すれば、前記放射能濃度測定部18が、サンプリング手段3によってサンプルされた測定試料が供給される電離箱20と、この電離箱20が発生する電離電流が積分されパルス化されたパルスをカウントすることにより放射能濃度を導出する計測装置23とを備えている放射能汚染検査装置である。
【0068】
本実施の形態9によれば、微小電流計で測定不可能な領域の微小電流でもパルス計測の方法で電流が測定できるので、放射能濃度の測定の感度を向上させることができ、さらに測定の信頼性を向上させることができる。
【0069】
実施の形態10.
以下、この発明の実施の形態10を放射能濃度測定器の事例を示す構成図である図13に基づいて説明する。本実施の形態10は、前述のこの発明の実施の形態5の前記前処理部17と前記放射能濃度測定器18と前記加熱器30とを、通気式電離箱20と加熱装置26とに置換えたもので、図13において通気式電離箱20の周りを、たとえば電気炉のような加熱装置26で囲うことにより、通気式電離箱のサンプルを加熱できるようにしたものである。
【0070】
換言すれば、前記電離箱20の内部が、加熱装置26によって加熱される放射能汚染検査装置である。
【0071】
この発明の実施の形態10によれば、サンプルされた粉塵に含まれた水分が粉塵の内部から通気式電離箱内に水蒸気となって出てくることにより、放射能測定が可能となり放射能濃度測定の感度向上につながる。さらに測定の信頼性を向上させることができる。
【0072】
実施の形態11.
図14に示すように、通気式電離箱20に導波路31を介して加熱器(ヒータまたはマグネトロン)30と、加熱器用電源32を備えるようにしても、前述のこの発明の実施の形態10と同様の効果を奏する。
【0073】
実施の形態12.
図15に示すように、通気式電離箱20とともに前処理部17も加熱装置26の中に囲うことにより、前処理部17で発生する水蒸気を結露することなしに、水蒸気供給管27を通して通気式電離箱に供給することにより放射能測定が可能となり、前述のこの発明の実施の形態10と同様の効果を奏する。
【0074】
実施の形態13.
以下、この発明の実施の形態13を前処理部の事例を示す構成図である図16に基づいて説明する。本実施の形態13は、前述のこの発明の実施の形態5の前処理部17を、前処理部筐体17−1、加熱器(ヒータまたはマグネトロン)17−2、フィルター17−3、水蒸気供給管27で置き換えたものである。
【0075】
図16において、前処理部17は、ポンプ37によって吸入し、サンプル供給管19を通して放射能を含んだ粉塵であるサンプル28を、前処理部筐体17−1内に供給し、前処理部筐体17−1に設置した加熱器(ヒータまたはマグネトロン)で加熱することによりガス化した水蒸気29が発生しフィルター17−3を通して水蒸気供給管27に排出される。
【0076】
本実施の形態13によれば、前処理部でサンプルから水蒸気を分離した上で、通気式電離箱で水蒸気の放射能を測定する構成にしたので、通気式電離箱の内側をサンプルの粉塵による汚れが付着しないので、絶縁劣化が起こりにくくなるため、粉塵による性能劣化を防ぐことが可能となり、原子炉の廃止措置のコスト低減につながる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】この発明の実施の形態1を示す図で、放射能汚染検査装置の事例を示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1を示す図で、放射能汚染検査装置のサンプリング手段の事例を具体的に示す構成図である。
【図3】この発明の実施の形態1を示す図で、放射能汚染検査装置の動作の事例を表すフロー図である。
【図4】この発明の実施の形態2を示す図で、表面汚染検出センサの事例を示す構成図である。
【図5】この発明の実施の形態3を示す図で、表面汚染検出センサの他の事例を示す構成図である。
【図6】この発明の実施の形態4を示す図で、放射能汚染検査装置の事例を示す構成図である。
【図7】この発明の実施の形態4を示す図で、放射能汚染検査装置の表面汚染検出センサと表面汚染測定アームの接続法の事例を示す構成図である。
【図8】この発明の実施の形態5を示す図で、放射能汚染検査装置の事例を示す構成図である。
【図9】この発明の実施の形態6を示す図で、放射能汚染検査装置の事例を示す構成図である。
【図10】この発明の実施の形態7を示す図で、サンプリング手段の事例を示す構成図である。
【図11】この発明の実施の形態8を示す図で、放射能濃度測定器の事例を示す構成図である。
【図12】この発明の実施の形態9を示す図で、放射能濃度測定器の事例を示す構成図である。
【図13】この発明の実施の形態10を示す図で、放射能濃度測定器の事例を示す構成図である。
【図14】この発明の実施の形態11を示す図で、放射能濃度測定器の事例を示す構成図である。
【図15】この発明の実施の形態12を示す図で、放射能濃度測定器の事例を示す構成図である。
【図16】この発明の実施の形態13を示す図で、前処理部の事例を示す構成図である。
【符号の説明】
【0078】
1 表面汚染検出センサ、
1−1 床計測位置、
1−2 壁計測位置、
2 表面汚染測定アーム、
3 サンプリング手段、
3−1 吸着ガスサンプリング手段、
4 サンプリング位置決めアーム、
4j ジョイント、
5 汚染測定信号処理部、
5b スケジュール設定装置、
51a 表面汚染測定系、
51b トリチウム濃度測定系、
6 移動手段、
7 サンプリング位置検出器、
8 サンプリング対象、
9 シンチレーションファイバプレート、
10 光集光部、
11 光電子増倍管(光電変換器)、
12 画像検出素子、
13 床、
14 壁、
15 天井、
16 管、
17 前処理部、
17−1 前処理部筐体、
17−2 加熱器(ヒータまたはマグネトロン)、
17−3 フィルター、
18 放射能濃度測定器、
19 サンプル供給管、
20 通気式電離箱、
21 サンプル排気管、
22 微小電流計、
23 計測装置、
24 チャージアンプ、
25 波形整形アンプ、
26 加熱装置、
27 水蒸気供給管、
28 サンプル、
29 水蒸気、
30 加熱器(ヒータまたはマグネトロン)、
31 導波路、
32 加熱器用電源、
33 回転ドラム、
34 ピン、
35 動力伝達手段、
36 駆動手段、
37 ポンプ、
38 モータ、
101 ガイド、
102 駆動部、
301 ドリル、
302 フード、
303 ドリル駆動部、
501 信号処理ユニット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査構造物の表面および被検査構造物の材料内部の放射能による汚染を計測し放射能汚染のレベルを判定する放射能汚染検査装置であって、
前記被検査構造物の検査領域へ走行する検査台車、
この検査台車上に前記検査台車に対して可移動に搭載され前記被検査構造物の表面の放射能汚染を計測する表面汚染検出センサ、
前記検査台車上に前記検査台車に対して可移動に搭載され前記被検査構造物の内部から測定試料をサンプルするサンプリング手段、
前記検査台車上に搭載され前記サンプリング手段によってサンプルされた測定試料から被検査構造物の材料内部の放射能汚染を計測する放射能汚染量を測定する放射能濃度測定部、
及び前記検査台車上に搭載され前記表面汚染検出センサによる測定結果および前記放射能濃度測定部による測定結果からクリアランス合否を出力するクリアランス合否判定部
を備えた放射能汚染検査装置。
【請求項2】
被検査構造物の表面および被検査構造物の材料内部の放射能による汚染を計測し放射能汚染のレベルを判定する放射能汚染検査装置であって、
前記被検査構造物の検査領域の選定および放射能汚染の検査時期の設定を行い放射能汚染検査スケジュールを設定する放射能汚染検査スケジュール設定装置、
この放射能汚染検査スケジュールを設定装置によって設定された前記放射能汚染検査スケジュール基づいて前記被検査構造物の検査領域へ走行する検査台車、
この検査台車上に前記検査台車に対して可移動に搭載され、前記放射能汚染検査スケジュールを設定装置によって設定された前記放射能汚染検査スケジュール基づいて前記被検査構造物の表面の放射能汚染を計測する表面汚染検出センサ、
前記検査台車上に前記検査台車に対して可移動に搭載され、前記放射能汚染検査スケジュールを設定装置によって設定された前記放射能汚染検査スケジュール基づいて前記被検査構造物の内部から測定試料をサンプルするサンプリング手段、
前記検査台車上に搭載され前記サンプリング手段によってサンプルされた測定試料から被検査構造物の材料内部の放射能汚染を計測する放射能汚染量を測定する放射能濃度測定部、
および前記検査台車上に搭載され前記表面汚染検出センサによる測定結果および前記放射能濃度測定部による測定結果からクリアランス合否を出力するクリアランス合否判定部、
を備えている放射能汚染検査装置。
【請求項3】
被検査構造物の表面および被検査構造物の材料内部の放射能による汚染を計測し放射能汚染のレベルを判定する放射能汚染検査装置であって、
前記被検査構造物の検査領域へ走行する検査台車、
この検査台車上に前記検査台車に対して可移動に搭載され前記被検査構造物の表面の放射能汚染を計測する表面汚染検出センサ、
前記検査台車上に前記検査台車に対して可移動に搭載され前記被検査構造物の内部から測定試料をサンプルするサンプリング手段、
前記検査台車上に搭載され前記サンプリング手段によってサンプルされた測定試料から被検査構造物の材料内部の放射能汚染を計測する放射能汚染量を測定する放射能濃度測定部、
前記検査台車上に搭載され前記表面汚染検出センサによる測定結果および前記放射能濃度測定部による測定結果からクリアランス合否を出力するクリアランス合否判定部、
前記検査台車に設けられ表面汚染測定位置まで前記表面汚染検出センサを導く表面汚染測定アーム、
および前記検査台車に設けられ前記測定試料をサンプルする位置に前記サンプリング手段を位置決めするサンプリング位置決めアーム
を備えている放射能汚染検査装置。
【請求項4】
被検査構造物の表面および被検査構造物の材料内部の放射能による汚染を計測し放射能汚染のレベルを判定する放射能汚染検査装置であって、
放射能汚染の検査時期の設定および前記被検査構造物の検査領域の選定を行い放射能汚染検査スケジュールを設定する放射能汚染検査スケジュール設定装置、
この放射能汚染検査スケジュールを設定装置によって設定された前記放射能汚染検査スケジュール基づいて前記被検査構造物の検査領域へ走行する検査台車、
この検査台車上に前記検査台車に対して可移動に搭載され、前記放射能汚染検査スケジュールを設定装置によって設定された前記放射能汚染検査スケジュール基づいて前記被検査構造物の表面の放射能汚染を計測する表面汚染検出センサ、
前記検査台車上に前記検査台車に対して可移動に搭載され、前記放射能汚染検査スケジュールを設定装置によって設定された前記放射能汚染検査スケジュール基づいて前記被検査構造物の内部から測定試料をサンプルするサンプリング手段、
前記検査台車上に搭載され前記サンプリング手段によってサンプルされた測定試料から被検査構造物の材料内部の放射能汚染を計測する放射能汚染量を測定する放射能濃度測定部、
前記検査台車上に搭載され前記表面汚染検出センサによる測定結果および前記放射能濃度測定部による測定結果からクリアランス合否を出力するクリアランス合否判定部、
前記検査台車に設けられ表面汚染測定位置まで前記表面汚染検出センサを導く表面汚染測定アーム、
および前記検査台車に設けられ前記測定試料をサンプルする位置に前記サンプリング手段を位置決めするサンプリング位置決めアーム
を備えている放射能汚染検査装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか一に記載の放射能汚染検査装置において、前記表面汚染検出センサが、複数のシンチレーションファイバを束ねてシート状に形成されたシンチレーションファイバプレートと、このシンチレーションファイバプレートの光導出端に接続され前記シンチレーションファイバが発光した光を導出する光電変換器または画像検出素子とを備えていることを特徴とする放射能汚染検査装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか一に記載の放射能汚染検査装置において、前記表面汚染検出センサが可撓性の表面汚染検出センサであり、当該表面汚染検出センサが前記被検査構造物に沿って移動する過程に前記被検査構造物に角部や湾曲部が存在する場合に当該角部や湾曲部に対応して前記表面汚染検出センサが湾曲しながら移動することを特徴とする放射能汚染検査装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6の何れか一に記載の放射能汚染検査装置において、前記サンプリング手段によってサンプルされた測定試料から気体成分を抽出し当該抽出した気体成分を前記放射能濃度測定部に供給する前処理部を備えていることを特徴とする放射能汚染検査装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7の何れか一に記載の放射能汚染検査装置において、前記サンプリング手段が、前記被検査構造物の表面に吸着した被測定物質を吸引してサンプルすることを特徴とする放射能汚染検査装置。
【請求項9】
請求項1〜請求項7の何れか一に記載の放射能汚染検査装置において、前記サンプリング手段が、外周面に切削ピンが設けられた回転ドラムを有し、前記回転ドラムの回転により前記被検査構造物の表面部を前記切削ピンで切削して前記測定試料をサンプルすることを特徴とする放射能汚染検査装置。
【請求項10】
請求項1〜請求項7の何れか一に記載の放射能汚染検査装置において、前記放射能濃度測定部が、サンプリング手段によってサンプルされた測定試料が供給される電離箱と、この電離箱が発生する電離電流から放射能濃度を導出する計測装置とを備えていることを特徴とする放射能汚染検査装置。
【請求項11】
請求項1〜請求項7の何れか一に記載の放射能汚染検査装置において、前記放射能濃度測定部が、サンプリング手段によってサンプルされた測定試料が供給される電離箱と、この電離箱が発生する電離電流が積分されパルス化されたパルスをカウントすることにより放射能濃度を導出する計測装置とを備えていることを特徴とする放射能汚染検査装置。
【請求項12】
請求項10および請求項11の何れか一に記載の放射能汚染検査装置において、前記電離箱の内部が、加熱装置によって加熱されることを特徴とする放射能汚染検査装置。
【請求項13】
請求項7に記載の放射能汚染検査装置において、前記前処理部の内部が、加熱装置によって加熱されることを特徴とする放射能汚染検査装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−333419(P2007−333419A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−162337(P2006−162337)
【出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】