説明

放熱システム

【課題】電子部品の上に重ねられた放熱シートの上に隙間無く金属板を押し付ける必要があるため、金属板に落下衝撃などによる外力が加わると、その衝撃が放熱シートおよび電子部品に直接伝わるため、電子部品が破損してしまうという課題があった。
【解決手段】電子部品113上に放熱シート109を挟んで設置され、電子部品113からの熱を受熱する受熱部104と、受熱部104から鋭角を成して受熱部104と一体成形される長バネ部102及び短バネ部103と、から構成される板バネ101と、板バネ101を外面から覆う放熱シート109と、放熱シート109に覆われた長バネ部102と短バネ部103とを上方から押圧する金属板115と、からなる放熱システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に実装されたICなどの電子部品の熱を放熱するための放熱システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器に使用されるICなどの電子部品は、その電子部品自体の発熱や周囲温度の上昇による影響などによってその電子部品が高温になると破損してしまうため、その熱を放熱する必要がある。
【0003】
上記課題を解決するために、特許文献1において、放熱シートを用いた放熱構造が提案されている。
【0004】
図7は、上記放熱シートを用いた放熱構造を示しており、(a)はその斜視図、(b)はその断面図である。
【0005】
特許文献1によれば、基板に実装された電子部品の外面にこの電子部品の熱を放熱する放熱シートを固定する固定機構において、基板或いは基板を収容する筐体内に設けられ放熱シートを電子部品に弾性的に押し付けるための押し付け手段と、放熱シートとの間に設けられその押し付け手段の押圧力を分散させる押圧力分散手段と、を備えた構成を提供している。
【0006】
電子部品3上に重ねて設けられた放熱シート10を覆っている金属板44が、放熱シート10側に向けて、その金属板44の両側と筐体1の内壁との間に設けられた板バネ45により押し付けられる構成である。このようにすれば、放熱シート10は電子部品3及び金属板44に確実に密着させることが可能であるため、電子部品3の熱を金属板44に効果的に放熱させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−281790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら従来の放熱シートを用いた放熱構造は、電子部品3の上に重ねられた放熱シート10の上に隙間無く金属板44を押し付ける必要があるため、例えば金属板が外郭部品である場合などに、金属板44に落下衝撃などによる外力が加わると、その衝撃が放熱シート44および電子部品3に直接伝わるため、電子部品3が破損してしまうという課題があった。
【0009】
本発明は前記従来の課題を解決するもので、電子部品から一定量離れた距離に位置する金属板に放熱することによって、金属板に加わった外力の電子部品への伝達を抑えることで電子部品の破損を軽減させ且つ、電子部品の熱を放熱することを可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記従来の課題を解決するために本発明に係わる放熱システムは、電子部品上に該放熱シートを挟んで設置され、前記電子部品からの熱を受熱する受熱部と、前記受熱部から鋭角を成して前記受熱部と一体成形される長バネ部及び短バネ部と、から構成される板バネと、前記板バネを外面から覆う放熱シートと、前記放熱シートに覆われた前記長バネ部と前記短バネ部とを上方から押圧する金属板と、からなる。
【0011】
本発明に係わる放熱システムによれば、電子部品から一定量離れた距離に位置する金属板に放熱することによって、金属板に加わった外力の電子部品への伝達を抑えることで電子部品の破損を軽減させ且つ、電子部品の熱を放熱することが可能となる。
【0012】
また、本発明に係わる放熱システムにおいて、前記金属板は、下方に凸の突起部を備え、前記突起部は、前記金属板が前記放熱シートに覆われた前記長バネ部と前記短バネ部を押圧する際生じる前記長バネ及び前記短バネ間の溝においても、前記放熱シートを前記長バネ部と前記短バネ部に密着させて押圧することを特徴とする。
【0013】
本発明に係わる放熱システムによれば、金属板の突起部が、金属板が放熱シートに覆われた長バネ部と短バネ部を押圧する際生じる長バネ及び短バネ間の溝においても、放熱シートを長バネ部と短バネ部に密着させて押圧することにより、電子部品から一定量離れた距離に位置する金属板に放熱することによって、金属板に加わった外力の電子部品への伝達を抑えることで電子部品の破損を軽減させ且つ、電子部品の熱をより効率的に放熱することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係わる放熱システムによれば、電子部品から一定量離れた距離に位置する金属板に放熱することによって、金属板に加わった外力の電子部品への伝達を抑えることで電子部品の破損を軽減させ且つ、電子部品の熱を放熱することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例1に係わる板バネの(a)正面図(b)平面図(c)側面図(d)斜視図
【図2】本発明の実施例1に係わる(a)放熱シートを板バネに固定する方法を表す側面図(b)放熱シートを板バネに固定した後の状態を表す側面図(c)板バネを斜め上から見た平面図
【図3】本発明の実施例1に係わる放熱シートが固定された板バネを電子部品上に取り付けた際の(a)平面図(b)側面図(c)背面図
【図4】本発明の実施例1に係わるプリント基板や板バネが固定された筐体に金属板を(a)取り付ける前の状態を表す構成図(b)取り付けた後の状態を表す構成図
【図5】本発明の実施例2に係わるプリント基板や板バネが固定された筐体に金属板を(a)取り付ける前の状態を表す構成図(b)取り付けた後の状態を表す構成図
【図6】本発明の実施例2に係わる(a)金属板に備える三角形状の突起部を示す図(b)金属板に備える四角形状の突起部を示す図
【図7】従来例に係わる放熱シートを用いた放熱構造の(a)斜視図(b)断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は、本発明の実施例1に係わる板バネであり、(a)は板バネの正面図、(b)は板バネの平面図、(c)は板バネの側面図、(d)は板バネの斜視図である。
【0018】
図1において、板バネ101は、4本の長バネ部102と、長バネ部102より長さが短い3本の短バネ部103と、電子部品側に構成される受熱部104とを備えている。
【0019】
長バネ部102及び短バネ部103は、受熱部104から鋭角を成して受熱部104と一体成形されており、受熱部104は電子部品(図示せず)上に放熱シート(図示せず)を挟んで設置される。
【0020】
ここで、板バネ101には、例えばステンレスのような弾性のある材質が用いられている。
【0021】
また、板バネ101における長バネ部102の受熱面104からの曲げ角度105と、短バネ部103の受熱面104からの曲げ角度106は略等しいことが望ましいが、後述する長バネ部102及び短バネ部103の作用を妨げない範囲において異なっていても良い。
【0022】
また、長バネ部102と短バネ部103の長さ、及びその差107、長バネ部102と短バネ部103の幅108は、後述する長バネ部102及び短バネ部103の作用を妨げない範囲であれば特に限定されない。
【0023】
なお、本実施例1において、長バネ部102を4本と、短バネ部103を3本備えることとしたが、後述する長バネ部102及び短バネ部103の作用を妨げない範囲であれば本数は上記に限定されない。
【0024】
図2は、本発明の実施例1に係わる放熱シートを板バネに固定する方法、放熱シートを板バネに固定した後の状態を表す図であり、(a)は放熱シートを板バネに固定する方法を表す側面図、(b)は放熱シートを板バネに固定した後の状態を表す側面図、(c)は板バネを斜め上から見た平面図である。
【0025】
図2において、放熱シート109は、グラファイトシートのような熱伝導性の高い材質からなり、板バネ101の受熱部104から長バネ部102および短バネ部103の根元にかけての範囲110で、粘着剤などによる貼付けなどで固定されている一方、長バネ部102および短バネ部103の根元から先端部までは粘着剤などにより固定されていない。
【0026】
なお、放熱シート107は、長バネ部102の略先端部までの長さを備えていれば良く、またその幅は、長バネ102および短バネ103の全体を覆う幅であることが望ましいが、これに限定されない。
【0027】
図3は、本発明の実施例1に係わる放熱シートが固定された板バネを電子部品上に取り付けた際の構成図であり、(a)がその平面図、(b)がその側面図、(c)がその背面図である。
【0028】
図3において、底板111に取り付けられたプリント基板112の上に電子部品113が実装されている。
【0029】
ここで、この電子部品113の上に、板バネ101の受熱部104側に固定された放熱シート109を電子部品113に密着するように設置し、板バネ101を底板111などにビス114によって確実に固定する。なお板バネ101の固定はビス114による底板111への固定のみとは限定されず、他の固定方法でもよい。
【0030】
図4は、図3においてプリント基板や板バネが固定された筐体に、金属板を取り付ける際の構成図であり、(a)は金属板を取り付ける前の状態を表す構成図、(b)は金属板を取り付けた後の状態を表す構成図である。
【0031】
図4のように、電子部品113上に取り付けられた板バネ101の上に、金属板115を取り付け、底板111へビス116などによって確実に固定する。なお、金属板115の固定方法は、底板111へビス116での固定のみには限定されず、他の固定方法でもよい。
【0032】
この際、電子部品113と金属筐体115の間には一定量の隙間117を有している。また板バネ101の長バネ部102および短バネ部103が、金属板115に押されることによってプリント基板112側へ撓み、金属板115と板バネ101の長バネ部102および短バネ部103の間に放熱シート109が挟まれた状態になる。
【0033】
この構成により、金属板115が板バネ101の長バネ部102と短バネ部103を押し付ける圧力によって板バネ101の長バネ部102と短バネ部103が撓むため、長バネ部102および短バネ部103が元の形状に戻ろうとする反発力により、放熱シート109の長バネ部102と短バネ部103の間の範囲118において、放熱シート109が金属板115に押し付けられ、確実に密着することになる。
【0034】
これにより電子部品113から発生した熱は、放熱シート109によって板バネ101の受熱部104側から金属板115に押し付けられている範囲118へ伝わり、金属板115への放熱が可能となる。
【0035】
また、金属板15に落下衝撃などによる外力が加わった場合であっても、板バネ101の弾性力により、金属板15に加わった外力の電子部品113への伝達を抑えることが可能となり、電子部品113の破損を軽減することが可能となる。
【0036】
本発明の実施例1に係わる放熱システムによれば、電子部品から一定量離れた距離に位置する金属板に放熱することによって、金属板に加わった外力の電子部品への伝達を抑えることで電子部品の破損を軽減し且つ、電子部品の熱を放熱することが可能となる。
【実施例2】
【0037】
図5は、本発明の実施例2に係わるプリント基板や板バネが固定された筐体に、金属板を取り付ける際の構成図であり、(a)は金属板を取り付ける前の状態を表す構成図、(b)は金属板を取り付けた後の状態を表す構成図である。
【0038】
図5のように、電子部品113上に取り付けられた板バネ101の上に、下方に向かって凸の円弧状の突起部119を有する金属板115を取り付け、底板111へビス116などによって確実に固定する。なお金属板115の固定方法は、底板111へビス116での固定のみとは限定されず、他の固定方法でもよい。
【0039】
この際、電子部品113と金属筐体115の間には一定量の隙間117を有している。また板バネ101の長バネ部102および短バネ部103は、金属板115に押されることによって、プリント基板112側へ撓み、金属板115と板バネ101の長バネ部102および短バネ部103の間に放熱シート109が挟まれた状態になる。
【0040】
この構成により、金属板115が板バネ101の長バネ部102と短バネ部103を押し付ける圧力によって板バネ101の長バネ部102と短バネ部103が撓むため、その長バネ部102および短バネ部103が元の形状に戻ろうとする反発力により、放熱シート109の長バネ部102と短バネ部103の間の範囲118が金属板115に押し付けられ、且つ金属板115に備えられた円弧状の突起部119によって長バネ部102と短バネ部103の間の範囲118に生じた溝に放熱シート109を押し付けることにより、放熱シート109と金属板115の円弧状の突起部119が確実に密着することになる。
【0041】
これにより電子部品113から発生した熱は、放熱シート109によって板バネ101の受熱部104側から金属板115に備えられた円弧状の突起部119に押し付けられている範囲118へ伝わり、金属板115へのより効率的な放熱が可能となる。
【0042】
また、金属板15に落下衝撃などによる外力が加わった場合であっても、板バネ101の弾性力により、金属板15に加わった外力の電子部品113への伝達を抑えることが可能となり、電子部品113の破損を軽減することが可能となる。
【0043】
なお、本実施例2において金属板115に備えられている突起部119は円弧状としたが、これに限定されず、例えば図6(a)に示す三角形状や図6(b)に示す四角形状などのような多角形でもよい。
【0044】
本発明の実施例2に係わる放熱システムによれば、金属板の突起部が、金属板が放熱シートに覆われた長バネ部と短バネ部を押圧する際生じる長バネ及び短バネ間の溝においても、放熱シートを長バネ部と短バネ部に密着させて押圧することにより、電子部品から一定量離れた距離に位置する金属板に放熱することによって、金属板に加わった外力の電子部品への伝達を抑えることで電子部品の破損を軽減させ且つ、電子部品の熱をより効率的に放熱することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、電子部品から一定量離れた距離に位置する金属板に放熱することによって、金属板に加わった外力の電子部品への伝達を抑えることで電子部品の破損を軽減させ且つ、電子部品の熱を放熱することが可能となるので、放熱システムとして有用である。
【符号の説明】
【0046】
101 板バネ
102 長バネ部
103 短バネ部
104 受熱部
105 長バネ部102の曲げ角度
106 短バネ部103の曲げ角度
107 長バネ部102と短バネ部103の長さの差
108 長バネ部102と短バネ部103の幅
109 放熱シート
110 放熱シートを貼り付ける範囲
111 底板
112 プリント基板
113 電子部品
114、116 ビス
115 金属板
117 電子部品113と金属板115の間の一定量の距離
118 長バネ部102と短バネ部103の間の範囲
119 突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品上に該放熱シートを挟んで設置され、前記電子部品からの熱を受熱する受熱部と、前記受熱部から鋭角を成して前記受熱部と一体成形される長バネ部及び短バネ部と、から構成される板バネと、
前記板バネを外面から覆う放熱シートと、
前記放熱シートに覆われた前記長バネ部と前記短バネ部とを上方から押圧する金属板と、
からなる放熱システム。
【請求項2】
前記金属板は、
下方に凸の突起部を備え、前記突起部は、前記金属板が前記放熱シートに覆われた前記長バネ部と前記短バネ部を押圧する際生じる前記長バネ及び前記短バネ間の溝においても、前記放熱シートを前記長バネ部と前記短バネ部に密着させて押圧する
ことを特徴とする請求項1記載の放熱システム。
【請求項3】
前記放熱シートは、前記長バネ部と前記短バネ部とに接着固定されない
ことを特徴とする請求項1又は2記載の放熱システム。
【請求項4】
前記突起部は、円弧状、三角形状、四角形状、その他多角形のいずれかの形状からなる
ことを特徴とする請求項2記載の放熱システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−171332(P2011−171332A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30952(P2010−30952)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】